説明

組合せバタフライ弁、及びこれを備えた蒸気タービンプラント

【課題】構造を簡素化し、設置スペースを少なくし、圧力損失を低減できる組合せバタフライ弁と組合せバタフライ弁を備えた蒸気タービンプラントを提供する。
【解決手段】 本発明に係る組合せバタフライ弁は、管状のケーシング3と、前記ケーシング3に蒸気の流れる方向に沿って配置された2つのバタフライ弁弁体と、前記2つのバタフライ弁弁体の中間部の前記ケーシング3に取り付けられ、前記バタフライ弁弁体のうち一方のバタフライ弁弁体の上側に接触して当該一方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持するとともに、他方のバタフライ弁弁体の下側に接触して当該他方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持する、棒状の全開ストッパー6を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンなどに適用される弁装置に係り、特に2つのバタフライ弁弁体を組合せた組合せバタフライ弁及びこれを備えた蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの低圧蒸気タービンの入口には、蒸気タービンの停止あるいは調速のために、中間蒸気止め弁とインターセプト弁を組合せた組合せバタフライ弁が設置されている。(例えば、特許文献1参照。)図7は、従来の組合せバタフライ弁の断面図である。なお、図7は弁が全開した状態を示している。
【0003】
ケーシング3は、管状となっており、上流側の配管と接続するための入口フランジ4と、下流側の配管と接続するための出口フランジ5が設けられている。ケーシング3は内部に蒸気の流れる方向に沿って2つのバタフライ弁の弁体を備える。この例では、上流側に中間蒸気止め弁のための中間蒸気止め弁弁体1、下流側にインターセプト弁のためのインターセプト弁弁体2が設置されている。駆動装置10aは、ケーシング3の下部に取り付けられ、中間蒸気止め弁弁体1の弁シャフト9aを回転させて弁を開閉させる。同様に、駆動装置10bは、ケーシング3の下部に取り付けられ、インターセプト弁弁体2の弁シャフト9bを回転させて弁を開閉させる。全開ストッパー6aは、ケーシング3の長手方向に対して垂直な方向に、その両端をケーシング3に取り付けられて設置されている。この全開ストッパー6aは中間蒸気止め弁弁体1が全開となる位置で中間蒸気止め弁弁体1と接触して中間蒸気止め弁弁体1を全開保持させる。全開ストッパー6bも全開ストッパー6aと同様に設置され、インターセプト弁弁体2が全開となる位置でインターセプト弁弁体2と接触してインターセプト弁弁体2を全開保持させる。
【特許文献1】特開昭63−135662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気タービンの運転中は、ほとんどの期間で中間蒸気止め弁弁体およびインターセプト弁弁体は全開状態であり、全開状態の弁体のふらつきを抑制するために、それぞれの全開ストッパーに弁体が接触して弁体を全開保持している。このとき、全開ストッパーの中央部には駆動装置による荷重が片側からかかることによってたわみが発生する虞がある。このため、これを防ぐために、全開ストッパーを太くする必要があった。しかしながら、全開ストッパーを太くすると、棒状の全開ストッパーの前後に蒸気の渦流が発生して圧力損失が大きくなり、プラントの運転効率が悪化する虞があった。
【0005】
また、従来の組合せバタフライ弁は2つのバタフライ弁弁体で構成されており、設計が簡素でバタフライ弁弁体や全開ストッパー等、部品も共通化できるが、ケーシングの出入口フランジの近くには全開ストッパーを設置することができないため、ケーシングを長くする必要があった。
【0006】
本発明の目的は、構造を簡素化し、設置スペースを少なくし、圧力損失を低減できる組合せバタフライ弁とこれを備えた蒸気タービンプラントを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における組合せバタフライ弁は、管状のケーシングと、前記ケーシングに蒸気の流れる方向に沿って配置された2つのバタフライ弁弁体と、前記2つのバタフライ弁弁体の中間部の前記ケーシングに取り付けられ、前記バタフライ弁弁体のうち一方のバタフライ弁弁体の上側に接触して当該一方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持するとともに、他方のバタフライ弁弁体の下側に接触して当該他方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持する、棒状の全開ストッパーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つのバタフライ弁弁体の全開ストッパーを1本にすることで構造を簡素化した組合せバタフライ弁、あるいは、これを備えた蒸気タービンプラントを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1乃至図3に、本発明の第1の実施の形態に係る組合せバタフライ弁を示す。図1は本実施の形態に係る組合せバタフライ弁の長手方向の断面図であり、図2は本実施の形態に係る組合せバタフライ弁の全開ストッパー6を含む断面での断面図、図3は図1のA部の拡大図である。なお、図1乃至図3においては、全開ストッパー6以外の構成は背景技術として示した図7と同様であるため、全開ストッパー6以外の構成要素については、図7と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0010】
本実施の形態に係る組合せバタフライ弁においては、全開ストッパー6は、1本のみが中間蒸気止め弁弁体1とインターセプト弁弁体2の間に設置されている。この全開ストッパー6は、断面形状を円形に形成した棒であり、ケーシング3の中央部にケーシング3の長手方向に対して垂直に貫通して、その両端を全開ストッパーフランジ7によってケーシング3に取り付けられている。本実施の形態においては、全開ストッパー6は中間蒸気止め弁弁体1及びインターセプト弁弁体2の回転軸に対して平行に設置され、中間蒸気止め弁弁体1の全開時には、中間蒸気止め弁弁体1の上側に接触して中間蒸気止め弁弁体1を保持する。さらに、全開ストッパー6は、インターセプト弁弁体2の全開時には、インターセプト弁弁体2の下側に接触してインターセプト弁弁体2を保持する。中間蒸気止め弁弁体1とインターセプト弁弁体2の両者が全開となっているときには、全開ストッパー6へ、下方から中間蒸気止め弁弁体1の駆動装置(図示せず)による開方向荷重11が加わり、上方からはインターセプト弁弁体2の駆動装置(図示せず)による開方向荷重12が加わっている。すなわち、全開ストッパー6は、中間蒸気止め弁弁体1とインターセプト弁弁体2が全開状態のときにそれぞれの弁の駆動装置の荷重を1本で両側から受ける構成となっている。このように、本実施の形態に係る組合せバタフライ弁では、2つの弁体の全開時に1つの全開ストッパー6がそれぞれの弁体の駆動装置の荷重を両側から受けるのでたわみが発生しない。よって、1本のみ設置された全開ストッパー6を従来よりも細くすることができ、さらに、全開ストッパー6を細くできることで、全開ストッパー6周りに生ずる渦流による圧力損失も低減できる。
【0011】
また本実施の形態においては、全開ストッパー6が1本で済むので、組合せバタフライ弁の入口フランジ4の中央から出口フランジ5の中央までの面間Lを、中間蒸気止め弁弁体1およびインターセプト弁弁体2の弁口径Dの2倍よりも小さくすることができる。よって、組合せバタフライ弁が小さくなり、弁の設置スペースが小さくなり、プラント全体をコンパクトにすることができる。さらに、本実施の形態においては、上述のように組合せバタフライ弁のケーシングが小さくできるので、図7に示したような従来の組合せバタフライ弁及びバタフライ弁弁体を用いない従来の組合せ蒸気弁を交換する場合でも、元の弁の設置スペースに十分に収納でき、既存プラントの改修にも容易に対応できる。
【0012】
なお、図1では、中間蒸気止め弁弁体1が全開ストッパー6の下に、インターセプト弁弁体2が全開ストッパー6の上に接触しているが、上下を逆にしてもよい。
【0013】
次に、本発明の組合せバタフライ弁の第2の実施の形態を図4乃至図6を用いて説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の水平方向の断面図である。図5は、図4における全開ストッパー6周りのAA断面の断面図である。また、図6は、全開ストッパー6周りのBB断面の断面図である。なお、これらの図において、全開ストッパー6以外の構成は図1と同様であるため、全開ストッパー6以外の構成要素については、図1と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図6に示すように、本実施の形態においては、図4の全開ストッパー6の断面形状は、両端部において流線形となっている。本実施の形態においては、全開ストッパー6の両端部のうち、いずれの弁体にも接触しない部分の断面形状を流線形に形成し、弁体に接する部分の断面形状を円形とし たので、全開ストッパー6の周りに生じる抵抗が少なくなる。このため、組合せバタフライ弁の圧力損失を低減することができる。
【0014】
なお、本発明の組合せバタフライ弁は、中間蒸気止め弁弁体1、インターセプト弁弁体2を組合せた組合せバタフライ弁だけでなく、蒸気タービンプラントに用いられるその他の組合せ弁にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の長手方向の断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の全開ストッパーを含む断面での断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の全開ストッパー周りの拡大断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の水平方向の断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の全開ストッパー周りのAA断面の断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る組合せバタフライ弁の全開ストッパー周りのBB断面の断面図。
【図7】従来の組合せバタフライ弁。
【符号の説明】
【0016】
1…中間蒸気止め弁弁体、2…インターセプト弁弁体、3…ケーシング、4…入口フランジ、5…出口フランジ、6…全開ストッパー、6a…中間蒸気止め弁弁体用全開ストッパー、6b…インターセプト弁弁体用全開ストッパー、7…全開ストッパーフランジ、8…流線形全開ストッパー、9a…中間蒸気止め弁弁体用弁シャフト、9b…インターセプト弁弁体用弁シャフト、10a…中間蒸気止め弁弁体用駆動装置、10b…インターセプト弁弁体用駆動装置、11…中間蒸気止め弁弁体用駆動装置による開方向荷重、12…インターセプト弁弁体用駆動装置による開方向荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のケーシングと、
前記ケーシングに蒸気の流れる方向に沿って配置された2つのバタフライ弁弁体と、
前記2つのバタフライ弁弁体の中間部の前記ケーシングに取り付けられ、前記バタフライ弁弁体のうち一方のバタフライ弁弁体の上側に接触して当該一方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持するとともに、他方のバタフライ弁弁体の下側に接触して当該他方のバタフライ弁弁体を全開位置に保持する、棒状の全開ストッパーを備えたことを特徴とする組合せバタフライ弁。
【請求項2】
前記全開ストッパーは、少なくとも両端部の断面が流線形であることを特徴とする請求項1記載の組合せバタフライ弁。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載された組合せバタフライ弁を備えたことを特徴とする蒸気タービンプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−292129(P2007−292129A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118155(P2006−118155)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】