説明

組合せ蒸気弁および蒸気タービン

【課題】蒸気弁を通過した後の蒸気流の乱れが少なく、レイアウト時の省スペース化を容易に行いうる組合せ蒸気弁およびこれを備える蒸気タービンを提供する。
【解決手段】組合せ蒸気弁1では、止め弁10および加減弁20が共通の弁ケーシング40に設けられている。止め弁10は、第1弁体12、第1弁体12が閉弁時に当接する第1弁座14及び第1弁体12に取り付けられた第1弁棒16を有する。加減弁20は、第2弁体22、第2弁体22が閉弁時に当接する第2弁座24及び第2弁体22に取り付けられた第2弁棒26を有する。弁ケーシング40は、止め弁10を収納する止め弁室42、加減弁20を収納する加減弁室44、止め弁室42に蒸気を供給する蒸気入口部46、止め弁室42と加減弁室44との間に設けられるストレート形状の中間流路48、および、加減弁室44からの蒸気を排出する蒸気出口部50を有する。止め弁10の第1弁棒16と、加減弁20の第2弁棒26とは、中間流路48を挟んで反対方向に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所や原子力発電所等で用いられる組合せ蒸気弁およびこれを備えた蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所等の蒸気タービンは、異常時に蒸気の供給を遮断したり、負荷変化に応じて蒸気量を調節したりするために、多数の蒸気弁が設けられている。このうち、異常時に蒸気の供給を遮断するものは止め弁と称され、負荷変化に応じて蒸気量を調節するものは加減弁と称される。
【0003】
これら止め弁及び加減弁は、高圧かつ大流量の蒸気量を扱うため大型である。このため、止め弁及び加減弁のレイアウトを効率的に行って、省スペース化を図ることが望まれる。そこで、止め弁及び加減弁を共通の弁ケーシングに設けた組合せ蒸気弁が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、加減弁として機能する第1弁体と、この第1弁体の下流側に配置され、止め弁として機能する第2弁体とが共通の弁ケーシングに組み込まれた組合せ蒸気弁が記載されている。この組合せ蒸気弁では、1個の弁室に第1弁体(加減弁)及び第2弁体(止め弁)の両方が設けられており、上流側の第1弁体により蒸気の流量を制御するとともに、下流側の第2弁体により蒸気を緊急時に遮断するようになっている。
【0005】
また、特許文献2及び3には、止め弁と、この止め弁の下流側に配置される加減弁とが共通の弁ケーシングに組み込まれた組合せ蒸気弁が記載されている。この組合せ蒸気弁では、2個の弁室に止め弁と加減弁とがそれぞれ配置され、該2つの弁室の間に連通路が設けられている。そして、上流側の止め弁により蒸気を緊急時に遮断するとともに、下流側の加減弁によりタービン負荷に応じて蒸気量を調節するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−105130号公報
【特許文献2】特開2010−43591号公報
【特許文献3】特開昭61−92371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、組合せ蒸気弁では、蒸気量の調節機能を有するという性質上、加減弁は常に途中開度(微開状態)で運転されるから、加減弁の通過後に蒸気流が乱れやすい傾向がある。そして、この蒸気流の乱れは、組合せ蒸気弁各部の振動の原因となるから、加減弁を通過した後の蒸気流の乱れが少ない組合せ蒸気弁の開発が望まれる。
【0008】
この点、特許文献1に記載の組合せ蒸気弁では、第1弁体(加減弁)及び第2弁体(止め弁)が同一の弁室に設けられ、第1弁体の直後に第2弁体が配置されているため、第2弁体が障害物となって、第1弁体を通過後の蒸気流を乱す場合がある。もちろん、第2弁体を常に大きくリフトしておくことで、第2弁体による蒸気流の干渉を抑制できるが、止め弁としての第2弁体のリフト量を大きくすると、緊急時における迅速な蒸気の遮断が困難になってしまう。
【0009】
一方、特許文献2に記載の組合せ蒸気弁では、止め弁の下流側に加減弁が配置されており、加減弁を通過した後の蒸気流を乱す障害物はないから、蒸気流の乱れは比較的少ない。
ところが、止め弁の弁棒及びこれを進退させるアクチュエータが弁室間の連通路に沿って延在する一方で、加減弁の弁棒及びアクチュエータは連通路に直交する方向に沿って延在している。ここで、止め弁と加減弁の弁棒及びアクチュエータは、組合せ蒸気弁のサイズ全体に占める割合が比較的大きい。このため、特許文献2に記載の組合せ蒸気弁のように、止め弁の弁棒及びアクチュエータと加減弁の弁棒及びアクチュエータとが互いに直交するように配置すると、組合せ蒸気弁の全体形状が略T字状になってしまい、複数の組合せ蒸気弁をレイアウトする際に、省スペース化することが難しい。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、蒸気弁を通過した後の蒸気流の乱れが少なく、レイアウト時の省スペース化を容易に行いうる組合せ蒸気弁およびこれを備える蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る組合せ蒸気弁は、止め弁および加減弁が共通の弁ケーシングに設けられた組合せ蒸気弁であって、第1弁体、前記第1弁体が閉弁時に当接する第1弁座および前記第1弁体に取り付けられた第1弁棒を有する止め弁と、前記止め弁の下流側に配置され、第2弁体、前記第2弁体が閉弁時に当接する第2弁座および前記第2弁体に取り付けられた第2弁棒を有する加減弁と、前記止め弁を収納する止め弁室、前記加減弁を収納する加減弁室、前記止め弁室に蒸気を供給する蒸気入口部、前記止め弁室と前記加減弁室との間に設けられるストレート形状の中間流路、および、前記加減弁室からの蒸気を排出する蒸気出口部を有する弁ケーシングとを備え、前記止め弁の前記第1弁棒と、前記加減弁の前記第2弁棒とは、前記中間流路を挟んで反対方向に延在していることを特徴とする。
【0012】
この組合せ蒸気弁によれば、止め弁と加減弁を別々の弁室に収納するとともに、止め弁を加減弁の上流側に配置したので、加減弁を通過した後の蒸気流の乱れを抑制できる。
また、止め弁の第1弁棒と加減弁の第2弁棒とを、中間流路を挟んで反対方向に延在するように配置したので、組合せ蒸気弁の全体形状は中間流路に沿って延びる略直線状となる。よって、複数の組合せ蒸気弁をレイアウトする際に、省スペース化を図ることが可能となる。
【0013】
上記組合せ蒸気弁において、前記弁ケーシングの内壁には、前記中間流路の全長にわたって、前記第1弁座および前記第2弁座が一体化された共通弁座が設けられていることが好ましい。
【0014】
このように、止め弁の第1弁座と加減弁の第2弁座を共通化することで、部品数が減少し、組合せ蒸気弁の組立て作業の効率が向上する。また、第1弁座と第2弁座との間に継ぎ目がなく平滑面であるから、継ぎ目部分で蒸気流が乱れてしまうことがない。
【0015】
この場合、前記共通弁座は、前記第1弁座のシート部よりも蒸気流れ方向における上流側においてのみ、前記弁ケーシングの内壁に固定されていることが好ましい。
【0016】
このように、共通弁座の弁ケーシングの内壁への固定は、止め弁(第1弁座)のシート部よりも上流側においてのみ行い、止め弁のシート部よりも下流側では行わないようにすることで、固定用の締結部材等によって蒸気流が乱れることがない。
【0017】
上記組合せ蒸気弁において、前記第2弁座は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径していることが好ましい。
【0018】
このように、加減弁の第2弁座を、蒸気流の上流側から下流側に向かって拡径する形状とすれば、第2弁座のシート部の上流側よりも該シート部の下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、中間流路から供給される蒸気は、第2弁座のシート部を通過する際に流速が遅くなり、第2弁座のシート部の下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、第2弁座のシート部を通過した蒸気流が第2弁座に付着したままのアニュラーフローの状態が維持され、組合せ蒸気弁の各部の振動を抑制できる。
なお、アニュラーフローとは、蒸気流が弁座に沿って環状に流れることをいう。一般的に、アニュラーフローの形成によって、蒸気流が安定化し、組合せ蒸気弁各部の振動を抑制可能であると言われている。
【0019】
この場合、前記第2弁体の弁頭部は凹形状であることが好ましい。
【0020】
これにより、シート部の上流側において弁頭部の凹部に蒸気流が一旦滞留し、蒸気流が弁座に沿うように整流されるので、アニュラーフローをより一層安定化することができる。
【0021】
また、上記組合せ蒸気弁は、前記第2弁体の外周に設けられ、前記第2弁体を案内する円筒状の弁体ガイドをさらに備え、前記第2弁体の弁頭部には、前記第2弁体及び前記弁体ガイドで囲まれた内部空間を前記中間流路に連通するバランス穴が形成されており、前記第2弁座のシート部の直径よりも、前記弁体ガイドの内径が大きいことが好ましい。
【0022】
このように、バランス穴を設けることで、第2弁体及び弁体ガイドで囲まれた内部空間と、第2弁体の上流側の中間流路とにおける蒸気圧力が同等になる。ここで、第2弁座のシート部の直径よりも、弁体ガイドの内径のほうが大きいから、全体として第2弁体に作用する正味の蒸気力は、蒸気流の下流側から上流側に向かう方向(すなわち、加減弁の閉弁方向)である。こうして、加減弁の第2弁体に作用する正味の蒸気力によって、加減弁が閉まる方向に第2弁体が常に引っ張られるから、第2弁体の調心性が向上し、蒸気流の乱れをより一層抑制できる。
【0023】
本発明に係る蒸気タービンは、複数の上記組合せ蒸気弁と、前記複数の組合せ蒸気弁が接続されるとともに、ロータを収納するタービン車室とを備え、前記複数の組合せ蒸気弁は、前記タービン車室の両側にロータ軸方向に沿って配置されることを特徴とする。
【0024】
上述のように、上記組合せ蒸気弁は、止め弁の第1弁棒と加減弁の第2弁棒とを、中間流路を挟んで反対側に、略同一の軸線上に延在するように配置したので、組合せ蒸気弁の全体形状は中間流路に沿って延びる略直線状である。
本発明に係る蒸気タービンは、略直線状の複数の組合せ蒸気弁をタービン車室の両側にロータ軸方向に沿って配置したので、設置スペースを削減できる。
【0025】
上記蒸気タービンにおいて、前記複数の組合せ蒸気弁は、前記タービン車室の両側に少なくとも一対ずつ設けられており、前記少なくとも一対の組合せ蒸気弁は、鉛直方向および前記ロータ軸方向に直交する方向にずらして配置されていることが好ましい。
【0026】
一対の組合せ蒸気弁をレイアウトするにあたって、組合せ蒸気弁の設置スペース(水平面上の設置面積)の削減が望まれる一方、それぞれの組合せ蒸気弁のメンテナンス性を確保する必要がある。
この点、上記組合せ蒸気弁は略直線状であるから、略直線状の少なくとも一対の組合せ蒸気弁をタービン車室の両側のそれぞれに設けるにあたって、組合せ蒸気弁を鉛直方向および前記ロータ軸方向に直交する方向にずらして配置することができる。そして、このように組合せ蒸気弁をずらして配置することで、設置スペースの削減とメンテナンス性の向上とを両立できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、止め弁と加減弁を別々の弁室に収納するとともに、止め弁を加減弁の上流側に配置したので、加減弁を通過した後の蒸気流の乱れを抑制できる。
また、止め弁の第1弁棒と加減弁の第2弁棒とを、中間流路を挟んで反対方向に延在するように配置したので、組合せ蒸気弁の全体形状は中間流路に沿って延びる略直線状である。よって、複数の組合せ蒸気弁をレイアウトする際に、省スペース化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】組合せ蒸気弁の構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示す組合せ蒸気弁の加減弁周辺の拡大図である。
【図3】図1に示す組合せ蒸気弁を備える蒸気タービンの構成例を示す上面図である。
【図4】図3に示す蒸気タービンをA方向から視た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
図1は、組合せ蒸気弁の構成例を示す断面図である。図2は、図1に示す組合せ蒸気弁の加減弁周辺の拡大図である。
【0031】
図1に示すように、組合せ蒸気弁1は、止め弁10及び加減弁20が共通の弁ケーシング40に設けられた構成を有する。止め弁10が緊急時に蒸気流を遮断する役割を担う一方で、加減弁20は負荷変化に応じて蒸気量を調節するようになっている。
【0032】
弁ケーシング40は、蒸気流れの上流側から順に、蒸気入口部46、止め弁室42、中間流路48、加減弁室44及び蒸気出口部50を有する。止め弁室42には止め弁10が収納され、加減弁室44には加減弁20が収納される。止め弁室42及び加減弁室44は、それぞれ、弁ケーシング40に取り付けられたボンネット52によって閉じられている。
蒸気入口部46から供給される蒸気は、止め弁室42を流れた後、中間流路48を経て加減弁室44に流入し、最終的に蒸気出口部50から排出される。
【0033】
止め弁室42に収納された止め弁10は、第1弁体12と、第1弁体12が閉弁時に当接する第1弁座14と、第1弁体12に取り付けられた第1弁棒16と、第1弁棒16を案内するガイドブシュ18とを有する。
【0034】
第1弁体12は、止め弁10の閉弁時に第1弁座14のシート部14Aに当接する主弁12Aと、この主弁12Aに内包された副弁12Bとにより構成される。なお、主弁12Aの内壁面13は、副弁12Bにとっての弁座として機能する。
【0035】
第1弁棒16は、一端が第1弁体12の副弁12Bに取り付けられ、他端がアクチュエータ(図3のアクチュエータ8)に連結されている。この第1弁棒16を介して、アクチュエータの駆動力が第1弁体12の副弁12Bに伝わるようになっている。
【0036】
第1弁棒16を案内するガイドブシュ18は、ボンネット52に埋設されている。これにより、アクチュエータによって駆動される第1弁棒16は、ガイドブシュ18内を摺動し、第1弁棒16の中心軸Cに沿って移動する。
【0037】
止め弁10では、第1弁棒16が取り付けられた副弁12Bは、所定のリフト量までは単独で進退するが、所定のリフト量に達すると主弁12Aとともに進退するようになっている。このため、アクチュエータによって第1弁棒16を介して副弁12Bを開弁方向(図1の上方向)に移動させると、所定のリフト量までは副弁12Bのみが移動し、副弁12Bが先に開く。この後、さらにアクチュエータによって第1弁棒16を介して副弁12Bを開弁方向に移動させると、所定のリフト量において副弁12Bが主弁12Aとともに移動するようになり、主弁12Aも開かれる。このように、最初に副弁12Bを開くことで、主弁12Aの前後の圧力差を低減することができ、副弁12Bよりもシート径の大きい主弁12Aを小さな駆動力で開くことができる。
【0038】
止め弁10の外周には、蒸気に含まれる異物を除去する円筒状のストレーナ17が設けられている。ストレーナ17によって、所定のサイズ以上の異物が除去されるので、ストレーナ17よりも下流側の組合せ蒸気弁1の各部(止め弁10及び加減弁20)および組合せ蒸気弁1が接続される蒸気タービンを異物による故障から保護することができる。
また、止め弁室42の蒸気入口部46から遠い側にはバッフルプレート19が設けられている。バッフルプレート19は、ストレーナ17の外周面と止め弁室42の内壁面との間に配置され、ストレーナ17の外周を迂回してきた蒸気流を整流するようになっている。
【0039】
止め弁10の下流側には加減弁20が設けられている。加減弁20は、図1及び2に示すように、第2弁体22と、第2弁体22が閉弁時に当接する第2弁座24と、第2弁体22に取り付けられた第2弁棒26と、第2弁棒26を案内するガイドブシュ28とを有する。
【0040】
従来から、上流側から下流側に向かって徐々に縮径する弁座を用い、弁体の基部から弁頭部に向かって蒸気を流すようにした蒸気弁が当業者間で定着していた。これに対し、本実施形態では、アニュラーフローの安定化の観点から、加減弁20の第2弁座24を上流側から下流側に向かって拡径する形状にするとともに、第2弁体22の弁頭部23から基部に向かって蒸気を流すようにしている。
このように、加減弁20の第2弁座24は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって徐々に拡径する形状を有するから、第2弁座24のシート部24Aの上流側よりも該シート部24Aの下流側のほうが蒸気の流路面積が大きい。このため、中間流路48から供給される蒸気は、第2弁座24のシート部24Aを通過する際に流速が遅くなり、第2弁座24のシート部の下流側における蒸気流の乱れが抑制される。よって、第2弁座24のシート部24Aを通過した蒸気流が第2弁座24に付着したままのアニュラーフローの状態が維持され、組合せ蒸気弁1の各部の振動を抑制できる。
なお、本願発明者が行った数値流体力学(Computational Fluid Dynamics:CFD)を用いた計算結果によれば、本実施形態の加減弁20は、従来の構成の加減弁に比べて約10dBの騒音(振動)低下効果が得られた。
【0041】
第2弁座24のシート部24Aから上流側に延ばしたシート部24Aにおける接線Tが、第2弁体22の中心軸(すなわち、第2弁棒26の中心軸C)に対してなす角度θ(図2参照)は、25〜50度であることが好ましい。このように、シート部24Aの接線Tが第2弁体22の中心軸に対してなす角度θを25度以上にすることで、シート部24Aを境に流路面積を急拡大させて、シート部24Aの上流側に比べて下流側の蒸気流の流速を十分遅くして、蒸気流の干渉をより確実に抑制できる。一方、同角度θを50度以下にすることで、噴流衝突が回避でき、流体騒音が低下し騒音を小さくすることができる。
【0042】
また、加減弁20の第2弁座24は、図1に示すように、止め弁10の第1弁座14と一体化された共通弁座4として設けられている。共通弁座4は、中間流路48の全長にわたって設けられ、弁ケーシング40の内壁に固定される。
このように、止め弁10の第1弁座14と加減弁20の第2弁座24を共通化することで、部品数が減少し、組合せ蒸気弁1の組立て作業の効率が向上する。また、第1弁座14と第2弁座24との間に継ぎ目がなく平滑面であるから、継ぎ目部分で蒸気流が乱れてしまうことがない。
【0043】
共通弁座4は、第1弁座14のシート部14Aよりも蒸気流れ方向における上流側においてのみ、弁ケーシング40の内壁に固定されていることが好ましい。例えば、シート部14Aよりも上流側の位置で、締結部材6によって共通弁座4を弁ケーシング40の内壁に固定してもよい。
このように、共通弁座4の弁ケーシング40の内壁への固定は、止め弁10のシート部14Aよりも上流側においてのみ行い、止め弁10のシート部14Aよりも下流側では行わないようにすることで、固定用の締結部材6によって蒸気流が乱れることがない。また、共通弁座4の片側(止め弁10側)のみが締結部材6により固定され、共通弁座4の反対側は締結部材6による固定点を始点として自由に熱膨張可能であるから、加減弁20の起動停止時に、急激な温度変化によって発生する熱応力に起因した共通弁座4の損傷を防止できる。さらに、組合せ蒸気弁1を縦置き(鉛直方向に沿って配置)する場合、共通弁座4を止め弁10側から抜き取ることで、下方の加減弁20の第2弁体22等を止め弁10側に抜くことができ、組合せ蒸気弁1の分解作業が容易になる。
【0044】
第2弁座24に対して閉弁時に当接する第2弁体22は、先端側(第2弁座24に近い側)に凹形状の弁頭部23を有する。このように、第2弁体22の弁頭部23を凹形状とすることで、図2の流線100で示すように、第2弁座24のシート部24Aの上流側において弁頭部23の凹部に蒸気流が一旦滞留し、蒸気流が第2弁座24に沿うように整流される。よって、アニュラーフローをより一層安定化することができる。
【0045】
図2に示すように、第2弁体22の外周には、第2弁体22を案内する円筒状の弁体ガイド30が設けられている。この弁体ガイド30の内径Dは、第2弁座24のシート部24Aの直径(シート径)Dよりも大きい。また、第2弁体22の弁頭部23には、第2弁体22及び弁体ガイド30で囲まれた内部空間32を中間流路48に連通するバランス穴34が形成されている。
【0046】
このように、バランス穴34を設けることで、第2弁体22及び弁体ガイド30で囲まれた内部空間32と、第2弁体22の上流側の中間流路48とにおける蒸気圧力が同等になる。ここで、第2弁座24のシート部24Aの直径Dよりも、弁体ガイド30の内径Dのほうが大きいから、全体として第2弁体22に作用する正味の蒸気力は、蒸気流の下流側から上流側に向かう方向(すなわち、加減弁の閉弁方向)である。こうして、加減弁20の第2弁体22に作用する正味の蒸気力によって、加減弁20が閉まる方向に第2弁体22が常に引っ張られるから、第2弁体22の調心性が向上し、蒸気流の乱れをより一層抑制できる。
【0047】
第2弁体22には第2弁棒26が取り付けられる。加減弁20の第2弁棒26と、止め弁10の第1弁棒16とは、図1に示すように、中間流路48を挟んで反対方向に延在している。なお、図1に示す例では、加減弁20の第2弁棒26は、その中心軸Cが、止め弁10の第1弁棒16の中心軸Cと略一致するように配置されている。
【0048】
また第2弁棒26は、第2弁体22が取り付けられた端部とは反対側の端部で、アクチュエータ(図3のアクチュエータ9)に連結されている。この第2弁棒26を介して、アクチュエータの駆動力が第2弁体22に伝わるようになっている。
【0049】
第2弁棒26を案内するガイドブシュ28は、ボンネット52に埋設されている。これにより、アクチュエータによって駆動される第2弁棒26は、ガイドブシュ28内を摺動し、第2弁棒26の中心軸Cに沿って移動する。
【0050】
上記構成の組合せ蒸気弁1によれば、止め弁10と加減弁20を別々の弁室(42,44)に収納するとともに、止め弁10を加減弁20の上流側に配置したので、加減弁20を通過した後の蒸気流の乱れを抑制できる。
また、止め弁10の第1弁棒16と加減弁20の第2弁棒26とを、中間流路48を挟んで反対方向に延在するように配置したので、組合せ蒸気弁1の全体形状は中間流路48に沿って延びる略直線状である。よって、複数の組合せ蒸気弁1をレイアウトする際に、省スペース化を図ることが可能となる。
また、組合せ蒸気弁の場合、蒸気タービンの起動時や、止め弁による蒸気遮断時には、中間流路が低温となり結露が発生して、下流側の加減弁の開度不良を招くことがある。この点、上記構成の組合せ蒸気弁1によれば、止め弁10と加減弁20の間にある中間流路48を短くしたので、結露発生による加減弁20の開度不良が極めて少なくなる。更に、共通弁座4が、中間流路48の全長に亘って(第1弁座14から第2弁座24まで)延在しているため、熱伝導による加熱効果のため、中間流路48内における結露の発生が少なくなる。
【0051】
次に、上述の組合せ蒸気弁1を備える蒸気タービンについて説明する。図3は、組合せ蒸気弁1を備える蒸気タービンの構成例を示す上面図である。図4は、図3に示す蒸気タービンをA方向から視た正面図である。
なお、以下で説明する蒸気タービンは左右対称の形状であるから、図3及び4では蒸気タービンの左半分のみを示している。
【0052】
蒸気タービン60は、複数の組合せ蒸気弁1(1A,1B)と、ロータが収納されたタービン車室62とを備える。組合せ蒸気弁1は、タービン車室62の上流側に設けられている。これにより、タービン車室62に流入する蒸気流は、組合せ蒸気弁1の止め弁10によって緊急時に遮断されるとともに、組合せ蒸気弁1の加減弁20によって負荷変化に応じて蒸気量が調節される。
【0053】
組合せ蒸気弁1は、上述のとおり、第1弁棒16及び第2弁棒26が中間流路48を挟んで反対方向に延在する構成を有するため、組合せ蒸気弁1の全体形状は中間流路48に沿って延びる略直線状である。このことは、第1弁棒16に連結されるアクチュエータ8および第2弁棒26に連結されるアクチュエータ9を含めた組合せ蒸気弁1の全体形状を示した図3から明らかである。
したがって、略直線状の複数の組合せ蒸気弁1をタービン車室62の両側にロータ軸方向に沿って配置することができる。これにより、蒸気タービン60の設置スペースを削減できる。
また、組合せ蒸気弁1が略直線状であることから、タービン車室62のすぐ近くに組合せ蒸気弁1を配置することができる。これにより、タービン車室62への配管を短くして、配管における圧力損失を低減できる。
【0054】
複数の組合せ蒸気弁1(1A,1B)は、図3及び4に示すように、タービン車室62の左右両側に一対ずつ設けられている。そして、これら一対の組合せ蒸気弁1A及び1Bは、鉛直方向および前記ロータ軸方向に直交する方向にずらして配置されている。
【0055】
一対の組合せ蒸気弁をレイアウトするにあたって、組合せ蒸気弁の設置スペース(水平面上の設置面積)の削減が望まれる一方、それぞれの組合せ蒸気弁のメンテナンス性を確保する必要がある。
この点、本実施形態に係る組合せ蒸気弁1(1A,1B)は略直線状であるから、一対の組合せ蒸気弁1A及び1Bを鉛直方向および前記ロータ軸方向に直交する方向にずらして配置することができる。そして、このように組合せ蒸気弁1A及び1Bをずらして配置することで、設置スペースの削減とメンテナンス性の向上とを両立できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、図1に示す全体構成を有する組合せ蒸気弁1について説明したが、組合せ蒸気弁1は、止め弁10と加減弁20が別々の弁室に設けられ、止め弁10の第1弁棒16と加減弁20の第2弁棒26とが中間流路48を挟んで反対方向に延在する構成であれば特に限定されない。特に、止め弁10の第1弁体12および加減弁20の第2弁体22の構成は、上述の例に限定されない。
【0058】
また、図3及び4には、タービン車室62の左右両側にそれぞれ一対ずつ組合せ蒸気弁1(1A,1B)を設けた蒸気タービン60について説明したが、組合せ蒸気弁1(1A,1B)の数はこの例に限定されない。例えば、タービン車室62の左右両側にn個(ただしn≧3)ずつ組合せ蒸気弁1を配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 組合せ蒸気弁
4 共通弁座
6 締結部材
10 止め弁
12 第1弁体
12A 主弁
12B 副弁
14 第1弁座
14A シート部
16 第1弁棒
17 ストレーナ
18 ガイドブシュ
19 バッフルプレート
20 加減弁
22 第2弁体
23 弁頭部
24 第2弁座
24A シート部
26 第2弁棒
28 ガイドブシュ
30 弁体ガイド
32 内部空間
34 バランス穴
40 弁ケーシング
42 止め弁室
44 加減弁室
46 蒸気入口部
48 中間流路
50 蒸気出口部
52 ボンネット
60 蒸気タービン
62 タービン車室
100 流線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止め弁および加減弁が共通の弁ケーシングに設けられた組合せ蒸気弁であって、
第1弁体、前記第1弁体が閉弁時に当接する第1弁座および前記第1弁体に取り付けられた第1弁棒を有する止め弁と、
前記止め弁の下流側に配置され、第2弁体、前記第2弁体が閉弁時に当接する第2弁座および前記第2弁体に取り付けられた第2弁棒を有する加減弁と、
前記止め弁を収納する止め弁室、前記加減弁を収納する加減弁室、前記止め弁室に蒸気を供給する蒸気入口部、前記止め弁室と前記加減弁室との間に設けられるストレート形状の中間流路、および、前記加減弁室からの蒸気を排出する蒸気出口部を有する弁ケーシングとを備え、
前記止め弁の前記第1弁棒と、前記加減弁の前記第2弁棒とは、前記中間流路を挟んで反対方向に延在していることを特徴とする組合せ蒸気弁。
【請求項2】
前記弁ケーシングの内壁には、前記中間流路の全長にわたって、前記第1弁座および前記第2弁座が一体化された共通弁座が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の組合せ蒸気弁。
【請求項3】
前記共通弁座は、前記第1弁座のシート部よりも蒸気流れ方向における上流側においてのみ、前記弁ケーシングの内壁に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の組合せ蒸気弁。
【請求項4】
前記第2弁座は、蒸気流れ方向における上流側から下流側に向かって拡径していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組合せ蒸気弁。
【請求項5】
前記第2弁体の弁頭部は凹形状であることを特徴とする請求項4に記載の組合せ蒸気弁。
【請求項6】
前記第2弁体の外周に設けられ、前記第2弁体を案内する円筒状の弁体ガイドをさらに備え、
前記第2弁体の弁頭部には、前記第2弁体及び前記弁体ガイドで囲まれた内部空間を前記中間流路に連通するバランス穴が形成されており、
前記第2弁座のシート部の直径よりも、前記弁体ガイドの内径が大きいことを特徴とする請求項4又は5に記載の組合せ蒸気弁。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された複数の組合せ蒸気弁と、
前記複数の組合せ蒸気弁が接続されるとともに、ロータを収納するタービン車室とを備え、
前記複数の組合せ蒸気弁は、前記タービン車室の両側にロータ軸方向に沿って配置されることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項8】
前記複数の組合せ蒸気弁は、前記タービン車室の両側に少なくとも一対ずつ設けられており、
前記少なくとも一対の組合せ蒸気弁は、鉛直方向および前記ロータ軸方向に直交する方向にずらして配置されていることを特徴とする請求項7に記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−112270(P2012−112270A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260628(P2010−260628)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】