説明

組合せ

【課題】糖尿病の予防、進行の遅延若しくは処置用医薬の製造のための、または微量アルブミン尿症の改善用医薬の製造のための薬剤の提供。
【解決手段】バルサルタンまたはその医薬上許容される塩および(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたはその医薬上許容される塩との組合せ薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有効成分として
(i) AT1レセプターアンタゴニストまたはその医薬上許容される塩、
(ii) (a)インスリン分泌促進剤もしくはその医薬上許容される塩、または
(b)インスリン増感剤もしくはその医薬上許容される塩、および
医薬組成物の場合には、医薬上許容される担体
を含む組合せ、特に医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
AT1レセプターアンタゴニスト(アンギオテンシンIIレセプターアンタゴニストまたはブロッカーとも称する)は、AT1レセプターサブタイプのアンギオテンシンIIレセプターと結合するが、そのレセプターの活性化をもたらさない有効成分であると理解される。AT1レセプターが遮断された結果、これらのアンタゴニストは例えば抗高血圧薬として、あるいは鬱血性心不全の処置に使用することができる。
【0003】
AT1レセプターアンタゴニスト種は構造特徴の異なる化合物を含み、非ペプチド系のものが基本的に好ましい。例えば、バルサルタン(EP 443983参照)、ロサルタン(EP 253310参照)、カンデサルタン(EP 459136参照)、エプロサルタン(EP 403159参照)、イルベサルタン(EP 454511参照)、オルメサルタン(US 5616599参照)、タソサルタン(EP 539086参照)およびテルミサルタン(EP 502314参照)、または各場合においてその医薬上許容される塩からなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0004】
好ましいAT1レセプターアンタゴニストとしてはすでに市販されている薬剤があり、最も好ましいのはバルサルタンまたはその医薬上許容される塩である。
【0005】
インスリン分泌促進剤は膵β細胞からのインスリンの分泌を促す特性を有する有効成分である。インスリン分泌促進剤の例としてはスルホニル尿素(SU)(特に、細胞膜のSUレセプターを介してインスリン分泌のシグナルを伝達することで膵β細胞からのインスリンの分泌を促すもの)があり、限定されるものではないが、トルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、4−クロロ−N−[(1−ピロリジニルアミノ)カルボニル]−ベンゼンスルホンアミド(グリコピラミド)、グリベンクラミド(グリブリド)、グリクラジド、1−ブチル−3−メタニリル尿素、カルブタミド、グリボヌリド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリヘキサミド、グリミジン、グリピナミド、フェンブタミド、およびトリルシクラミド、またはその医薬上許容される塩が挙げられる。
【0006】
インスリン分泌促進剤としてはさらに、式:
【化1】

の新規なフェニルアラニン誘導体ナテグリニド[N−(trans−4−イソプロピルシクロヘキシル−カルボニル)−D−フェニルアラニン](EP 196222およびEP 526171参照)、レパグリニド[(S)−2−エトキシ−4−{2−[[3−メチル−1−[2−(1−ピペリジニル)フェニル]ブチル]アミノ]−2−オキソエチル}安息香酸−EP 589874参照]、(2S)−2−ベンジル−3−(cis−ヘキサヒドロ−2−イソインドリニルカルボニル)−プロピオン酸カルシウム二水和物(ミチグリニド−EP 507534参照)などの速効型インスリン分泌促進剤、さらにグリメピリド(EP 31058参照)などの新世代のSUを代表するもの、およびその遊離形態または医薬上許容される塩の形態が含まれる。
【0007】
同様にインスリン分泌促進剤には持続型インスリン分泌促進剤DPP−IV阻害剤である、GLP1アゴニストおよびGLP1アゴニストが含まれる。
【0008】
DPP−IVはGLP−1を不活性化する働きをする。より詳しくは、DPP−IVはGLP−1レセプターアンタゴニストを作り出し、それによりGLP−1に対する生理応答を短縮する。GLP−1は膵臓のインスリン分泌の主要な刺激剤であり、グルコース処理に対して直接的な有効作用を持つ。
【0009】
DPP−IV阻害剤はペプチド系のものであり得るが、非ペプチド系のものが好ましい。DPP−IV阻害剤はそれぞれ例えば、WO 98/19998、DE 19616486A1、WO 00/34241およびWO 95/15309に、各場合において特に化合物クレームおよび実施例の最終生成物で包括的かつ具体的に開示されており、最終生成物、医薬製剤およびクレームの内容は出典明示により本願の一部とする。それぞれWO 98/19998の実施例3およびWO 00/34241の実施例1に明示されている化合物が好ましい。
【0010】
GLP−1は、W.E. SchmidtらがDiabetologia 28, 1985, 704−707およびUS 5,705,483で述べている、インスリン分泌促進性タンパク質である。
【0011】
本明細書で用いられる「GLP−1アゴニスト」とは、特にUS 5,120,712、US 5,118666、US 5,512,549、WO 91/11457およびC. OrskovらによるJ. Biol. Chem. 264 (1989) 12826で開示されているGLP−1(7−36)NH2の変異体および類似体を意味する。用語「GLP−1アゴニスト」は、特にGLP−1(7−36)NH2分子の37位においてArg36のカルボキシ末端アミド官能基がGlyで置換されているGLP−1(7−37)のような化合物、ならびにGLN9−GLP−1(7−37)、D−GLN9−GLP−1(7−37)、アセチルLYS9−GLP−1(7−37)、LYS18−GLP−1(7−37)、および特にGLP−1(7−37)OH、VAL8−GLP−1(7−37)、GLY8−GLP−1(7−37)、THR8−GLP−1(7−37)、MET8−GLP−1(7−37)および4−イミダゾプロピオニル−GLP−1をはじめとするその変異体および類似体を含む。また、特に好ましいものとして、GreigらによりDiabetologia 1999, 42, 45−50に記載されているGLPアゴニスト類似体エキセンジン−4が挙げられる。
【0012】
好ましいインスリン分泌促進剤としてはレパグリニドがあり、ナテグリニドが最も好ましい。
【0013】
同様にナテグリニドとは、それぞれEP 0526171 B1またはUS 5,488,510に開示されているものなどの結晶変形を含み、両者の内容は、特に結晶変形の同定、製造および特性決定、特に請求項8〜10の内容(H型結晶変形についてのもの)ならびにB型結晶変形に関する該当する記載に関しては出典明示により本願の一部とする。
【0014】
一般名または商標名で同定される有効薬剤の構造は標準的な概論「The Merck Index」またはデータベース、例えば、Patents International(例えば、IMS World Publications)の最新版で参照することができる。その該当する内容は出典明示により本願の一部とする。当業者ならばこれらを参照することで有効薬剤を同定することが十分でき、また、製造したり、医学的適応やin vitroおよびin vivoの双方の標準的な試験モデルにおける特性を試験したりすることができる。
【0015】
「速効型インスリン分泌促進剤」には、薬剤投与後1時間以内、好ましくは30分以内、最も好ましくは20分以内にインスリンの最大分泌が得られ、生物学的半減期T1/2が好ましくは2時間未満、好ましくは1.5時間未満である該当薬が含まれる。「持続型インスリン分泌促進剤」には、薬剤投与後1時間以上経ってからインスリンの最大分泌が得られる該当薬が含まれる。
【0016】
好ましいインスリン増感剤としてはメトホルミン、または一塩酸塩のようなその医薬上許容される塩がある。
【0017】
特に好ましいものとしては、バルサルタンまたはその医薬上許容される塩、およびナテグリニドまたはその医薬上許容される塩の組み合わせがある。
【0018】
また、当該有効成分またはその医薬上許容される塩は水和物、または結晶化に用いた他の溶媒を含むものなど、溶媒和物の形態で用いてもよい。
【0019】
組み合わされるべき化合物は医薬上許容される塩として存在し得る。これらの化合物が例えば少なくとも一つの塩基中心を有している場合には、これらは酸付加塩を形成していてもよい。また、所望により付加的な塩基中心を有する当該酸付加塩を形成することもできる。酸性基(例えば、COOH)を有する化合物は、また、塩基と塩を形成することができる。
【0020】
代表的なAT1レセプターアンタゴニストまたはインスリン分泌促進剤それぞれの投与、あるいは本発明に従って用いられる有効薬剤の組合せの投与によって作用した医薬活性は、例えば当技術分野で公知の対応する薬理モデルを用いることで証明され得る。当業者ならば上記および下記で示される治療適応および有益な作用を明らかにするために適切な動物試験モデルを選択することが十分に可能である。
【0021】
本発明の組合せの抗高血圧活性を評価するには、例えばLovenberg W: Animal models for hypertension research. Prog. Clin. Biol. Res. 1987, 229, 225−240に記載の方法を用いればよい。本発明の組合せが鬱血性心不全の処置に用いられ得るかどうかを評価するには、例えばSmith HJ, Nuttall A: Experimental models of heart failure. Cardiovasc Res 1985, 19, 181−186により開示されている方法を用いればよい。またトランスジェニック法などの分子的アプローチも例えばLuft et al.: Hypertension−induced end−organ damage. “A new transgemic approach for an old problem.”Hypertension 1999, 33, 212−218により記載されている。
【0022】
本発明の組合せのインスリン分泌促進特性は、例えばT.Ikenoue et al. Biol.Pharm.Bull. 29(4), 354−359 (1997)の文献に開示されている方法に従って調べることができる。
【0023】
これらの4つの参照文献の当該の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明の組合せは例えばAT1レセプターの阻害によって阻害され、インスリン分泌の促進によって阻害され、かつ、インスリン増感作用によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置に使用できる。特に本発明の組合せは、高血圧症、鬱血性心不全、糖尿病、特に2型糖尿病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経疾患、X症候群、月経前症候群、冠動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、高血糖症、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、糖代謝異常、耐糖能異常(IGT)症状、空腹時血糖異常症状、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経疾患、勃起障害、月経前症候群、皮膚・結合組織疾患、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮障害および血管コンプライアンス障害からなる群から選択される疾患および障害の予防、進行の遅延または処置のために使用できる。好ましくは、該組合せは高血圧症、特にISH、鬱血性心不全、内皮障害、血管コンプライアンス障害、IGTおよびII型糖尿病の処置に用いられる。
【0025】
本願で定義される「AT1レセプターの阻害によって阻害され得る疾患または状態」としては、限定されるものではないが、高血圧症、鬱血性心不全、糖尿病、特に2型糖尿病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経疾患、X症候群、月経前症候群、冠動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、内皮障害などが含まれる。
【0026】
本願で定義される「インスリン分泌の促進によって阻害され得る疾患または状態」としては、限定されるものではないが、高血糖症、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、糖代謝異常、耐糖能異常(IGT)症状、空腹時血糖異常症状、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経疾患、勃起機能不全、月経前症候群、冠動脈性心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚・結合組織疾患、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮障害および血管コンプライアンス障害が含まれる。
【0027】
本願で定義される「インスリン増感作用によって阻害され得る疾患または状態」としては、限定されるものではないが、高血糖症、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、糖代謝異常、耐糖能異常(IGT)症状、空腹時血糖異常症状、肥満、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性神経疾患、勃起機能不全、月経前症候群、冠動脈性心疾患、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、卒中、血管再狭窄、皮膚・結合組織疾患、足部潰瘍および潰瘍性大腸炎、内皮障害および血管コンプライアンス障害が含まれる。
【0028】
「AT1レセプターの阻害によって阻害され得る疾患または状態」、「インスリン分泌の促進によって阻害され得る疾患または状態」、「インスリン増感作用によって阻害され得る疾患または状態」に関する高血圧症としては、限定されるものではないが、Journal of Hypertension 1999, 17:151−183の特に162頁に記載されているように軽度、中度、および重度高血圧症を含む。とりわけ好ましいものは、「孤立性収縮期高血圧」(isolated systolic hypertension, ISH)である。
【課題を解決するための手段】
【0029】
好ましくは、併用治療上有効量の、本発明の組合せの有効薬剤は同時またはいずれかの順序で逐次に、例えば個別に、または一定の組合せで投与することができる。
【0030】
ある状況下では、作用機構の異なる薬剤を組み合わせてもよい。しかし、作用機構は異なるが、類似の領域で作用する薬剤の組合せを考慮するだけでは必ずしも有利な作用を有する組合せにつながらない。
【0031】
なおさら意外であったのは、AT1レセプターアンタゴニストおよびインスリン分泌促進剤および/またはインスリン増感剤、または各場合においてその医薬上許容される形態の併用投与は有効な、特に増強された、または相乗作用的な治療作用をもたらすだけでないという実験結果である。それとは独立に、著しい有効性の延長、より広範な治療的処置、および糖尿病に関連する疾患または状態に対する著しい有効作用、例えば体重増加の減少など、併用治療からもたらされるさらなる利点が達成できる。本発明のさらなる好ましい態様は、孤立性収縮期高血圧症および血管の弾性の低下を意味する血管コンプライアンス障害の予防、進行の遅延または処置である。
【0032】
「増強」とは、それぞれ対応する薬理活性または治療作用が高まることを意味する。本発明に従うその他の成分の同時投与による本発明の組合せのある成分の増強とは、その成分単独で達成されるものよりも高い作用が達成されることを意味する。
【0033】
「相乗作用的」とは、それらの薬剤を共に服用した際に、各薬剤を単独で服用した際の作用の総和よりも高い総組合せ作用を生じることを意味する。
【0034】
ISHは50歳以上の人に最も多い形態の高血圧である。これは正常な拡張期血圧(最低血圧)(90mmHg未満)に対して収縮期血圧(最高血圧)が高い(140mmHgを超える)ことと定義される。収縮期血圧の上昇は心血管疾患の独立したリスク因子であり、例えば心筋肥大や心不全を引き起こす可能性がある。さらにISHは、収縮期血圧と拡張期血圧の間の違いとして定義される脈圧の上昇を特徴とする。脈圧上昇は最も管理しにくい種類の高血圧と考えられている。高い収縮期血圧の低下とそれに応じた脈圧の低下は心血管関連の死亡における著しいリスク軽減と関連している。驚くべきことに、AT1レセプターアンタゴニストとインスリン分泌促進剤またはインスリン増感剤との組合せは、2型糖尿病である高血圧患者でも2型糖尿病ではない高血圧患者でもISHと脈拍の低下をもたらすことが分かった。
【0035】
さらにまた、インスリン増感剤またはインスリン分泌促進剤の慢性的な同時投与は血管の形態および機能に対する有益な作用を与え、血管の剛性を低下させ、それに応じて血管のコンプライアンスを維持および向上させることが分かった。
【発明の効果】
【0036】
よって、AT1レセプターアンタゴニストの付加に加えてのインスリン増感剤および/またはインスリン分泌促進剤の付加は収縮期血圧に対する作用を増強し、さらに血管の剛性/コンプライアンスを改善することが分かった。これに対し、この明らかとなった収縮期および拡張期血圧に対するAT1レセプターアンタゴニストの抗高血圧作用は、インスリン増感剤および/またはインスリン分泌促進剤の付加によって増強され得る。これらの組合せの有用性は、また、内皮機能に対する付加的な、あるいは増強された作用にまで至り、腎臓、心臓、眼および脳をはじめとする種々の臓器/組織の血管機能および構造を改善し得る。グルコースレベルの低下を通じ、抗血栓作用および抗アテローム性動脈硬化作用もまた証明することができる。グルコースの低下は心腎系内の構造タンパク質または機能性タンパク質のグリコシル化を防ぐか、または最小限にする。この作用は、それ単独でも独自の機構によって心血管機能および構造を改善するAT1レセプターアンタゴニストを投与した際に血管の機能/構造に対し相加的あるいは相乗的作用を生じることで極めて有用であることが明らかである。
【0037】
さらなる有用性としては、本発明に従って組み合わされるべき個々の薬剤をより低用量にすることで投与形を小さくできることであり、例えば多くの場合で投与形を小さくする必要がなくなるだけでなく、頻度も減らすことができ、あるいはまたこれを使用すれば副作用の発生率を減らすことができる。これは処置される患者の望みや要求に応じたものである。
【0038】
例えば、本発明の組合せは、高血圧状態に関わらず全ての糖尿病患者に有用な中度高血圧症または孤立性収縮期高血圧症の処置に特に恩恵をもたらし、例えば、2つの異なる作用様式で心血管の悪化のリスクを小さくすることが分かった。
【0039】
AT1レセプターアンタゴニスト、特にバルサルタンは例えば微量アルブミン尿症の改善における血圧の低下の他、2型糖尿病の処置にも有用であることが分かった。高血圧症の処置に関しては、治療用量より少ない量で本発明の組合せを糖尿病、特に2型糖尿病の処置に用いるだけでよい。AT1レセプターアンタゴニストが低用量であるという点で、この組合せの著しく安全なプロフィールは、第一線の治療に好適なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、AT1レセプターの阻害およびインスリン分泌の増強によって阻害され得る疾患および障害、例えば高血圧症、特に中度高血圧症、ISH、鬱血性心不全、内皮障害、血管コンプライアンス障害、IGTおよびII型糖尿病の予防、進行の遅延または処置に用いる薬剤の製造のための、有効成分として
(i) AT1レセプターアンタゴニストまたはその医薬上許容される塩、
(ii) (a)インスリン分泌促進剤もしくはその医薬上許容される塩、または
(b)インスリン増感剤もしくはその医薬上許容される塩、
を含む組合せの使用に関する。
【0041】
本発明はまた、AT1レセプターの阻害および/またはインスリン分泌の増強によって阻害され得る疾患および障害の予防、進行の遅延または処置方法に関し、それを必要とするヒトをはじめとする温血動物に、治療上有効量の
(i) AT1レセプターアンタゴニストまたはその医薬上許容される塩、
(ii) (a)インスリン分泌促進剤もしくはその医薬上許容される塩、または
(b)インスリン増感剤もしくはその医薬上許容される塩
をともに投与することを含む方法に関する。
【0042】
上記および下記の本発明の医薬組成物は同時使用またはいずれかの順序での逐次使用、個別使用または一定の組合せとして用いることができる。
【0043】
本発明の医薬組成物は、該成分を独立して投与できる、あるいは異なる時点で個別量の成分を含む異なる一定の組合せを用いて投与できるという意味で「複数パーツのキット」を含む。そしてこの「複数パーツのキット」のパーツは、例えば同時投与で、または逐次交互投与で、つまり異なる時点で、「複数パーツのキット」のいずれかのパーツを同じ時間間隔または異なる時間間隔で、投与され得る。好ましくはこの時間間隔は複数パーツの併用使用において処置される疾患または状態に対する作用がこれらのいずれかの成分単独で用いる場合に得られる作用よりも大きいように選択する。好ましくは、少なくとも1つの有用な作用、例えば
(i) AT1レセプターアンタゴニストまたはその医薬上許容される塩、
(ii) (a)インスリン分泌促進剤もしくはその医薬上許容される塩、または
(b)インスリン増感剤もしくはその医薬上許容される塩
の作用の相互作用の向上(特に増強または相乗作用)、例えば1以上の付加的作用、さらに有利な作用、副作用の軽減、有効でない一成分または各成分用量での組合せによる治療作用(特に増強または強力な相乗作用)がある。
【0044】
本発明はさらに、本発明の組合せを同時、個別または逐次使用に関する使用説明書とともに含む市販パッケージに関する。
【0045】
これらの医薬製剤は、薬理活性化合物を単独または通常の製薬補助物質とともに含む製剤の、恒温動物への経口など腸内投与、また、直腸もしくは非経腸投与に向けたものである。例えば、該医薬製剤は約0.1%から90%、好ましくは約1%から約80%の有効化合物からなる。腸内または非経腸および眼用投与のための医薬製剤は例えばコーティング錠剤、錠剤、カプセル剤または坐剤およびアンプル剤などの単位投与形である。これらは、例えば従来の混合、造粒、コーティング、可溶化または凍結乾燥法を用いるなど、それ自体公知の方法で調製する。従って経口用医薬製剤は、有効化合物を、固形賦形剤と混合し、所望により得られた混合物を粒状にし、必要に応じて、好適な補助物質を加えた後に錠剤またはコーティング錠剤核(core)へと混合物を加工または造粒することにより得ることができる。
【0046】
有効化合物の投与量は投与様式、恒温動物の種、齢および/または個々の状態など種々の因子によって異なり得る。
【0047】
本発明の医薬組合せの有効成分の好ましい投与量とは、治療上有効な投与量、特に商業的に入手可能なものである。
【0048】
通常、経口投与の場合、例えば体重約75kgの患者にはおよその一日用量は約1mgから約360mgと見積もられる。
【0049】
本有効化合物の投与量は投与様式、恒温動物の種、齢および/または個々の状態など種々の因子によって異なり得る。
【0050】
AT1レセプターアンタゴニスト種の代表的なものとしてのバルサルタンは、患者に適用され得る治療上有効量のバルサルタン(例えば、約20から約320mg)を含む、例えばカプセル剤または錠剤などの好適な単位投与形の形態で提供される。有効成分の適用は一日に三回まで行ってよく、例えばバルサルタン一日用量20mgまたは40mgで始め、一日80mgを経て、さらに一日160mgと、一日320mgまで増加させる。好ましくはバルサルタンはそれぞれ80mgまたは160mg量で一日二回適用する。低用量製剤では、20mgまたは40mg量のバルサルタンが用いられ得る。例えば朝、昼または晩に相当する量を服用すればよい。一日二回投与が好ましい。
【0051】
インスリン分泌促進剤ナテグリニド(I)は温血動物に、温血動物が体重約70kgのヒトである場合、約5から1200、より好ましくは25から800mg/日の範囲の投与量で投与するのが好ましい。好ましい投与量は好ましくは食事前投与でナテグリニド30mg、60mg、120mgまたは180mgを含む。低用量型の組合せでは、ナテグリニドの投与量は好ましくは30mg、40mgまたはさらに60mgである。食事の回数にもよるが、一日二回(BID)または一日三回(TID)または一日四回(QID)の投与計画がある。
【0052】
インスリン分泌促進剤レパグリニドは好ましくは約0.01mgから約8mg、より好ましくは約0.5から約6mgの用量範囲で投与する。
【0053】
インスリン増感剤メトホルミンは好ましくは約100mgから約1200mg/単位投与形、特に500mg、850mgまたは1000mgの用量範囲で投与する。低用量型の組合せでは、メトホルミンは好ましくは125mg、250mgまたは500mgの用量で投与する。
【実施例】
【0054】
製剤例1:
フィルムコート錠剤:
【表1】

【0055】
フィルムコート錠剤は、例えば以下のようにして製造する。
バルサルタン、微晶質セルロース、クロスポビドン、コロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化珪素/エアロジル200の一部、二酸化珪素およびステアリン酸マグネシウムを拡散ミキサーで予め混合した後、選別ミルにかける。得られた混合物を再び拡散ミキサーで予め混合しローラーコンパクターで粉末成形した後、選別ミルにかける。得られた混合物に残りのコロイド状無水シリカ/コロイド状二酸化珪素/エアロジル200を加え、拡散ミキサーで最終的な混合を行う。全混合物を回転式打錠機にかけ、孔あきパンにてDiolackペールレッドを用いて錠剤をフィルムコーティングする。
【0056】
製剤例2:
フィルムコート錠剤:
【表2】

フィルムコート錠剤は、例えば製剤例1に記載のように製造する。
【0057】
製剤例3:
フィルムコート錠剤:
【表3】

Opadry(登録商標)の組成:
【表4】

フィルムコート錠剤は例えば製剤例1に記載のようにして製造する。
【0058】
製剤例4:
カプセル剤:
【表5】

錠剤は例えば以下のようにして製造する。
造粒/乾燥
バルサルタンおよび微晶質セルロースを、流動槽式造粒機にて、純水に溶かしたポビドンおよびラウリル硫酸ナトリウムからなる造粒液を用いて噴霧造粒する。得られた顆粒を流動槽式乾燥機で乾燥させる。
粉砕/配合
乾燥した顆粒をクロスポビドンおよびステアリン酸マグネシウムとともに粉砕する。次にこの粉砕塊を円錐スクリュー型ミキサーで約10分間混合する。
カプセル化
混合したバルク顆粒を温度・湿度条件制御下で空のゼラチン硬カプセルに充填する。充填したカプセルはダスト除去し、目視検査を行い、重量を確認し、品質評価部門に送るまで隔離する。
【0059】
製剤例5:
カプセル剤:
【表6】

この製剤は例えば製剤例4に記載のようにして製造する。
【0060】
製剤例6:
ゼラチン硬カプセル剤:
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
実施例12:
各120mgのナテグリニドを含有する108,000個の錠剤を以下のように調製する。
組成: ナテグリニド 12.960 kg
ラクトース, NF 30.564 kg
微晶質セルロース, NF 15.336 kg
ポビドン, USP 2.592 kg
クロスカーメロースナトリウム, NF 3.974 kg
コロイド状二酸化珪素, NF 1.382 kg
ステアリン酸マグネシウム, NF 1.231 kg
コーティング:opadry yellow 1.944 kg
純水, USP* Q.S.
*: 処理中に除去される。
調製法:微晶質セルロース、ポビドン、クロスカーメロースナトリウムの一部、ナテグリニドおよびラクトースを高剪断ミキサーで混合した後、純水を用いて造粒する。あるいはまた、微晶質セルロース、ポビドン、クロスカーメロースナトリウムの一部、ナテグリニドおよびラクトースをコレット・グラル(collette gral)造粒機で純水を加えて造粒する。含水顆粒を流動槽式乾燥機で乾燥させ、篩いに通す。コロイド状二酸化珪素および残りのクロスカーメロースナトリウムを混合し、篩いに通し、Vブレンダーにて乾燥顆粒と混合する。ステアリン酸マグネシウムを篩いに通し、Vブレンダー中の混合物と混合した後、全混合物を打錠する。opadry yellowを純水に懸濁し、そのコーティング懸濁液で錠剤をコーティングする。
【0063】
実施例13〜15:
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病の予防、進行の遅延または処置用医薬の製造のための、(i)バルサルタンまたはその医薬上許容される塩および(ii)(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたはその医薬上許容される塩の組合せの使用。
【請求項2】
微量アルブミン尿症の改善用医薬の製造のための、(i)バルサルタンまたはその医薬上許容される塩および(ii)(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたはその医薬上許容される塩の組合せの使用。

【公開番号】特開2013−49683(P2013−49683A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230073(P2012−230073)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2002−520854(P2002−520854)の分割
【原出願日】平成13年8月20日(2001.8.20)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】