説明

組成物、フィルム及びこれらの調製方法

本発明は、少なくとも以下:A)第一のエチレン系ポリマーを含む第一の組成物(この場合、比I21(第一の組成物)/I21(第一のエチレン系ポリマー)が、30以上である);及びB)10μg/g〜40μg/g(組成物の重量に基づいて)の量の1つ又はそれ以上のアジド化合物;を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月23日に出願され、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国仮特許出願第61/263613号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、改善されたバブル安定性(BS)及び落槍衝撃強さ(DIS)を有し、同時にフィルム外観等級(FAR)値を維持するフィルムを形成するのに使用される組成物であって、未処理ポリマーの本質的な特性の変化を最小限にする組成物に関する。酸素テーラリング(oxygen tailoring)は、製品に長鎖分岐(LCB)を組み込み、ポリマーの落槍衝撃強さを低下させ、ポリマーのレオロジー特性、特にtanδを変化させることが知られている。国際公開第2006/065651号には、フィルムは、アジド化合物を用いて変性させた樹脂を使用して製造できることが示された。しかし、典型的には、高濃度のアジド(例えば、100μg/gのポリ(スルホニルアジド))が、良好なバブル安定性と落槍衝撃強さとのバランスを得るために必要であった。このような高いカップリング剤濃度は、典型的には、著しく架橋したポリマー構造をもたらすこともあり、これは同様に、より高い粘度並びにより高い加工圧及びエネルギー必要量をもたらす。
【0003】
さらなるアジド変性及び/又は架橋ポリマー又はブレンドが、下記:米国特許第6,552,129号明細書(同第6,143,829号明細書も参照);同第6,777,502号明細書(同第6,528,136号明細書も参照);同第6,506,848号明細書(同第6,376,623号明細書も参照);同第6,325,956号;同第5,869,591号;同第6,531,546号;同第6,040,351号;同第5,973,017号;同第5,242,971号;同第6,521,306号;同第6,776,924号各明細書;及び国際公開第00/26268号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、改善されたバブル安定性及び落槍衝撃強さを有し、同時に良好なフィルム外観等級(FAR)値を維持するフィルムを形成するのに使用できる組成物に対する要求が依然としてある。未処理ポリマーの本質的な特性にわずかな変化しかもたらさないこのような組成物に対するさらなる要求がある。また、匹敵する従来のフィルム組成物と比較してコストが低いこのようなフィルム組成物に対する要求もある。これらの要求は、以下の発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも下記(A及びB):A)第一のエチレン系ポリマーを含む第一の組成物(この場合、比I21(第一の組成物)/I21(第一のエチレン系ポリマー)は、30以上である);及びB)10μg/g〜40μg/g(組成物の重量に基づく)の量の1つ又はそれ以上のアジド化合物を含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】tanδを樹脂Iのアジド濃度の関数として表す図である。
【図2】「tanδの低下%」を樹脂Iのアジド濃度の関数として表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記のように、本発明は、少なくとも下記(A及びB):
A)エチレン系ポリマー(又は第一のエチレン系ポリマー)を含む第一の組成物(この場合、比I21(第一の組成物)/I21(第一のエチレン系ポリマー)は、30以上である);及び
B)10μg/g〜40μg/g(組成物の重量に基づく)の量の1つ又はそれ以上のアジド化合物;
を含む組成物を提供する。
【0008】
1つの実施形態において、1つ又はそれ以上のアジド化合物は、10μg/g〜35μg/g、好ましくは10μg/g〜30μg/g(組成物の重量に基づく)の量で存在する。
【0009】
1つの実施形態において、1つ又はそれ以上のアジド化合物は、15μg/g〜35μg/g、好ましくは20μg/g〜30μg/g(組成物の重量に基づく)の量で存在する。
【0010】
1つの実施形態において、第一の組成物は、0.940g/cmよりも大きい、好ましくは0.945g/cmよりも大きい密度を有する。
【0011】
1つの実施形態において、第一の組成物は、25〜45、好ましくは30〜40の流量比(I21/I)を有する。
【0012】
1つの実施形態において、第一の組成物は、6dg/分〜12dg/分、好ましくは7dg/分〜10dg/分の高荷重メルトインデックス(I21)を有する。
【0013】
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、0.920g/cm以上、好ましくは0.924g/cm(1cm=1cc)以上の密度を有する。
【0014】
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、0.40dg/分以下、好ましくは0.38dg/分以下、より好ましくは0.35dg/分以下の高荷重メルトインデックス(I21)を有する。
【0015】
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、0.20dg/分以上、好ましくは0.25dg/分以上の高荷重メルトインデックス(I21)を有する。
【0016】
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態において、α−オレフィンは、C−C12α−オレフィン類からなる群から選択される。さらなる実施形態において、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群から選択され、より好ましくは1−ヘキセン及び1−オクテンからなる群から選択され、さらにより好ましくは1−ヘキセンである。
【0017】
第一のエチレン系ポリマーは、本明細書に記載の2又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0018】
1つの実施形態において、第一の組成物は、第一の組成物の重量に基づいて第一のエチレン系ポリマーを50〜60重量%、好ましくは50〜58重量%、より好ましくは52〜58重量%を含む。
【0019】
1つの実施形態において、第一の組成物は、第二のエチレン系ポリマーを含む。さらなる実施形態において、第二のエチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態において、α−オレフィンは、C−C12α−オレフィン類からなる群から選択される。さらなる実施形態において、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群から選択され、より好ましくは1−ヘキセン及び1−オクテンからなる群から選択され、さらにより好ましくは1−ヘキセンである。第二のエチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマー(又は第一のエチレン系ポリマー)とは、下記の特性:メルトインデックス(I)、高荷重メルトインデックス(I21)、及び/又は密度の1つ又はそれ以上において異なる。
【0020】
1つの実施形態において、第二のエチレン系ポリマーは、前記第一のエチレン系ポリマー(又は第一のエチレン系ポリマー)の密度よりも大きい密度を有する。さらなる実施形態において、第二のエチレン系ポリマーは、第一のエチレン系ポリマーよりも少なくとも「0.010g/cm」大きい密度を有する。さらなる実施形態において、第二のエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)は、第一のエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)よりも大きい。
【0021】
第一のエチレン系ポリマーは、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0022】
1つの実施形態において、第一の組成物は、第一の組成物の重量に基づいて、第一のエチレン系ポリマーと第二のエチレン系ポリマーとを合計で95重量%よりも多く、好ましくは98重量%よりも多く、より好ましくは99重量%よりも多く含む。
【0023】
1つの実施形態において、前記組成物は、前記組成物の重量に基づいて第一の組成物を80重量%よりも多く、好ましくは90重量%よりも多く、より好ましくは95重量%よりも多く含む。さらなる実施形態において、第一の組成物は、第一の組成物の重量に基づいて、第一のエチレン系ポリマーと第二のエチレン系ポリマーとを合計で95重量%よりも多く、好ましくは98重量%よりも多く、より好ましくは99重量%よりも多く含む。
【0024】
第一の組成物は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0025】
また、本発明は、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの層(又はプライ)を含むフィルムを提供する。さらなる実施形態において、前記フィルムは、ASTM D1709−04、方法Aにより測定される400gよりも大きい、好ましくは450gよりも大きい、より好ましくは470gよりも大きい落槍衝撃強さを有する。
【0026】
また、本発明は、本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成部品を含む物品を提供する。さらなる実施形態において、前記物品は、パイプ、容器、又は成形品(例えば、射出成形品、吹込成形品、又は圧縮成形品)から選択される。
【0027】
また、本発明は、本発明の組成物から形成される物品を提供する。
【0028】
1つの実施形態において、本発明の組成物は、ペレット又は粉末の形態である。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、ペレットの形態である。別の実施形態において、本発明の組成物は、粉末の形態である。
【0029】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0030】
本発明のフィルムは、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0031】
本発明の物品は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせからを含んでもよい。
【0032】
組成物
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー、均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー、又は均一に分岐した実質的に線状のエチレン系インターポリマーであり、好ましくは不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー又は均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマーであり、より好ましくは不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマーである。当分野で公知のように、不均一に分岐した線状のインターポリマー及び均一に分岐した線状のインターポリマーは、成長するポリマー鎖へのコモノマーの組み込みによる短鎖分岐を有する。これらの線状インターポリマーは、当分野で公知の技法、例えばNMR分光分析法(例えば、Randall, Rev. Macromal. Chem. Phys., C29 (2 & 3)), 1989, pp. 285-293(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような1C NMR)で測定されるような、長鎖分岐、又は測定可能な量の長鎖分岐がない。
【0033】
1つの実施形態において、第二のエチレン系ポリマーは、不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー、均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー、又は均一に分岐した実質的に線状のエチレン系インターポリマーであり、好ましくは不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマー又は均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマーであり、より好ましくは不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマーである。
【0034】
不均一に分岐した線状のエチレンインターポリマーは、チーグラー・ナッタ型触媒を使用して溶液法、スラリー法、又は気相法で製造できる。例えば、米国特許第4,339,507号明細書(これは、参照により本明細書に完全に組み込まれる)を参照のこと。不均一に分岐した線状のエチレン系インターポリマーは、均一に分岐したエチレン系インターポリマーとは、主にこれらのコモノマーの分岐分布において異なる。不均一ポリマーについては、分子量分布と短鎖分岐分布の両方が、均一に分岐した線状のエチレンインターポリマー及び均一に分岐した線状の実質的に線状のエチレンインターポリマーと比べて比較的幅広い。例えば、不均一に分岐したインターポリマーは、そのポリマー分子が同じコモノマー対エチレン比を有していない分岐分布を有する。例えば、不均一に分岐したLLDPE(線状低密度ポリエチレン)ポリマーは、典型的に高分岐部分(超低密度ポリエチレンに類似している)、中分岐部分(中密度ポリエチレンに類似している)及び本質的に線状部分(線状ホモポリマーポリエチレンに類似している)を含む分岐の分布を有する。
【0035】
「均一な」及び「均一に分岐した」という用語は、コモノマーが、所定のポリマー分子内に不規則に分布しており、全てのポリマー分子が、同じコモノマー対エチレン比又は実質的に同じコモノマー対エチレン比を有するエチレン系インターポリマー(例えば、エチレン/α−オレフィンコポリマー)に関連して使用する。「均一に分岐した実質的に線状のインターポリマー」の幾つかの例は、米国特許第5,272,236号明細書及び同第5,278,272号明細書に記載されている。上記で論じたように、不均一に分岐した線状のインターポリマー及び均一に分岐した線状のインターポリマーは、成長するポリマー鎖へのコモノマーの組み込みによる短鎖分岐を有する。均一に分岐した実質的に線状のインターポリマーの長鎖分岐は、成長するポリマー鎖への1つのコモノマーの組み込みによるものよりも長い。
【0036】
1つの実施形態において、第一のエチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。好ましい実施形態において、α−オレフィンは、C−C20α−オレフィン、好ましくはC−C12α−オレフィン、より好ましくはC−Cα−オレフィン、最も好ましくはC−Cα−オレフィンである。α−オレフィンとしては、以下に限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、及び1−オクテンが挙げられる。好ましいα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンとしては、1−ヘキセン及び1−オクテンが挙げられ、より好ましくは1−ヘキセンが挙げられる。好ましいインターポリマーとしては、以下のコポリマー:エチレン/ブテン(EB)コポリマー、エチレン/ヘキセン−1(EH)、エチレン/オクテン−1(EO)コポリマー、より好ましくは、EH及びEOコポリマー、最も好ましくはEHコポリマーが挙げられる。
【0037】
1つの実施形態において、第二のエチレン系ポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、好ましくはエチレン/α−オレフィンコポリマーである。好ましい実施形態において、α−オレフィンは、C−C20α−オレフィン、好ましくはC−C12α−オレフィン、より好ましくはC−Cα−オレフィン、最も好ましくはC−Cα−オレフィンである。α−オレフィンとしては、以下に限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、及び1−オクテンが挙げられる。好ましいα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンとしては、1−ヘキセン及び1−オクテンが挙げられ、より好ましくは1−ヘキセンが挙げられる。好ましいインターポリマーとしては、以下のコポリマー:エチレン/ブテン(EB)コポリマー、エチレン/ヘキセン−1(EH)、エチレン/オクテン−1(EO)コポリマー、より好ましくは、EH及びEOコポリマー、最も好ましくはEHコポリマーが挙げられる。
【0038】
第一のエチレン系ポリマーは、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0039】
第二のエチレン系ポリマーは、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0040】
第一の組成物は、1つ又はそれ以上の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤としては、例えば、安定剤、例えば酸化防止剤、例えばIRGANOX−1076及び/又はIRGANOX−1010;並びに1つ又はそれ以上のステアリン酸金属塩、例えばステアリン酸亜鉛及び/又はステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0041】
また、第一の組成物は、1つ又はそれ以上の追加ポリマーを含有していてもよい。追加ポリマーが存在する場合には、追加ポリマーは、本明細書に記載の変性又は未変性ポリマーのいずれか及び/又はその他の種類の任意の変性又は未変性ポリマーから選択され得る。
【0042】
本発明の組成物は、1つ又はそれ以上の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤としては、例えば、安定剤、例えば酸化防止剤、例えばIRGANOX−1076及び/又はIRGANOX−1010;並びに1つ又はそれ以上のステアリン酸金属塩、例えばステアリン酸亜鉛及び/又はステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0043】
本発明の組成物は、1つ又はそれ以上の追加ポリマーを含有していてもよい。追加ポリマーが存在する場合には、追加ポリマーは、本明細書に記載の変性又は未変性ポリマーのいずれか及び/又はその他の種類の任意の変性又は未変性ポリマーから選択され得る。
【0044】
前記第一の組成物は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0045】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0046】
重合
前記新規組成物は、種々の方法で製造できる。例えば、前記新規組成物は、ポリマー成分を配合又は混合することによって製造してもよいし、又は個々に溶融した成分を溶融ブレンドすることによって製造してもよい。あるいは、前記新規組成物は、その場で、1つ又はそれ以上の重合反応器で製造してもよい。
【0047】
1つの実施形態において、二重反応器構成が使用される。さらなる実施形態において、触媒前駆物質と助触媒が、第一の反応器に導入され、その重合混合物がさらなる重合のために第二の反応器に移される。触媒系が関わる限りは、助触媒だけが、必要に応じて、外部供給源から第二の反応器に添加される。場合により、触媒前駆物質は、反応器への添加の前に部分的に活性化され、次いで助触媒によってさらに「反応器内で」活性化されてもよい。
【0048】
好ましい二重反応器構成において、比較的高い分子量(低い「高荷重メルトインデックス」)のポリマーが、第一の反応器で調製され、それよりも低い分子量のポリマー(高メルトインデックス)が、第二の反応器で生成される。それぞれの反応器での重合は、連続流動床法を使用して気相で行うことが好ましい。
【0049】
多段気相法は、米国特許第5,047,468号明細書及び同第5,149,738号明細書(両方の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。2つ又はそれ以上の反応器は、並列で又は直列で、あるいはこれらを組み合わせて運転してもよい。
【0050】
本発明の組成物を製造するプロセスで使用する好ましい触媒は、マグネシウム/チタン型の触媒である。1つの実施形態において、触媒は、電子供与性溶媒中で塩化マグネシウム及び塩化チタンを含む前駆物質から製造される。この溶液は、多くの場合、多孔質触媒支持体表面に沈着させるか、又は充填剤が添加される。充填剤は、その後の噴霧乾燥により、粒子にさらなる機械的強度を提供する。いずれかの支持法からの固体粒子は、多くの場合、希釈剤中でスラリー化され、高粘度混合物を生成し、次いでこれが触媒前駆物質として使用される。例示的な触媒系は、米国特許第6,187,866号明細書及び同第5,290,745号明細書(それぞれは、参照により本明細書に完全に組み込まれる)に記載されている。また、沈降/結晶化触媒系、例えば米国特許第6,511,935号明細書及び同第6,248,831号明細書(それぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている沈降/結晶化触媒系を、使用してもよい。
【0051】
助触媒、又は活性剤も、重合を行うために反応器に供給される。追加の助触媒による完全な活性化が、十分な活性を得るために必要とされる。また、完全な活性化は、通常は、重合反応器で生じるが、欧州特許第1,200,483号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている技法を使用してもよい。
【0052】
触媒供給材料は、幾つかの構成、例えば、以下に限定されないが、担持触媒系、噴霧乾燥触媒系、あるいは溶液又は液体供給触媒系から選択してもよい。重合触媒は、典型的には、担持遷移金属化合物と、前記遷移金属化合物を触媒活性遷移金属錯体に変換できる活性剤とを含有する。
【0053】
また、異なる分子構造の2つ又はそれ以上の触媒系を含有する混合金属触媒系を、1つの反応器で使用してもよい。例えば異なる2種類のチーグラー・ナッタ触媒を含有する混合系を、1つの反応器で使用してもよい。
【0054】
好ましい実施形態において、各反応器での重合は、連続流動床法を使用して気相で行われる。典型的な流動床反応器において、流動床は、通常は、反応器内で生成させるべきである同じ粒状樹脂から構成される。従って、重合の経過中に、流動床は、形成されたポリマー粒子、成長するポリマー粒子、重合によって流動化された触媒粒子、及び変性ガス成分を含み、この変性ガス成分は、前記粒子を分離させ、流体として作用させるのに十分な流量又は速度で導入される。流動化ガスは、初期供給材料、補給供給材料、及び循環(再循環)ガス、すなわちコモノマー、並びに必要に応じて、変性剤及び/又は不活性キャリアガスから構成される。
【0055】
反応系の基本部分は、容器、流動床、ガス分配プレート、入口及び出口配管、コンプレッサ、循環ガス冷却器、及び製品排出系である。反応容器において、流動床の上に、速度低下帯域があり、流動床には、反応帯域がある。両方共に、ガス分配板プレートの上にある。典型的な流動床反応器は、さらに米国特許第4,482,687号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0056】
エチレン、その他のガス状α−オレフィン、及び水素(使用する場合)のガス供給流は、好ましくは、液状α−オレフィン及び助触媒溶液と同様に、反応器再循環ラインに供給される。場合により、液状助触媒を、流動床に直接に供給できる。部分的に活性化された触媒前駆物質が、好ましくは、鉱油スラリーとして流動床に注入される。活性化は、一般に、反応器で助触媒によって完結される。生成物の組成は、流動床に導入されるモノマーのモル比を変えることによって変化させることができる。生成物は、流動床レベルが重合と共に高まるのにつれて、反応器から粒状又は微粒状で連続的に排出される。生産速度は、両方の反応器の触媒供給速度及び/又はエチレン分圧を調節することによって制御される。
【0057】
好ましい様式は、バッチ量の生成物を第一の反応器から取り出し、これらを循環ガス圧縮システムで生じさせた差圧を使用して第二の反応器に移すことである。米国特許第4,621,952号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているシステムと同様のシステムが、特に有用である。
【0058】
圧力は、第一の反応器と第二の反応器の両方においてほぼ同じである。ポリマーと含有される触媒との混合物を第一の反応器から第二の反応器に移すのに使用される具体的な方法に応じて、第二の反応器の圧力は、第一の反応器の圧力よりも高くてもよいし又は幾分低くてもよい。第二の反応器の圧力の方が低い場合には、この圧力差を、ポリマー触媒混合物の反応器1から反応器2への移動を促進するのに使用できる。第二の反応器の圧力の方が高い場合には、循環ガスコンプレッサー全体にわたる差圧を、ポリマーを移動させる駆動力として使用してもよい。圧力、すなわち、反応器内の全圧は、約200psig〜約500psig(1380kPaゲージ〜3450kPaゲージ)の範囲内にあることができ、好ましくは約250psig〜約450psig(1720kPaゲージ〜3100kPaゲージ)の範囲内にある。第一の反応器内のエチレン分圧は、約10psig〜約150psig(70kPaゲージ〜1030kPaゲージ)の範囲内にあることができ、好ましくは約20psig〜約80psig(140kPaゲージ〜550kPaゲージ)の範囲内にある。第二の反応器内のエチレ分圧は、所望のスプリット(split)を達成するために、この反応器で生成すべきコポリマーの所望の量に従って設定される。第一の反応器内のエチレン分圧が上昇すると、第二の反応器内のエチレン分圧の上昇をもたらすことが注目される。全圧のバランスは、エチレン以外のα−オレフィンと、不活性ガス、例えば窒素とによって提供される。その他の不活性炭化水素、例えば誘導された縮合剤、例えばイソペンタン又はヘキサンも、反応器内で直面する温度及び圧力下でのこれらの蒸気圧に従って反応器内の全圧力に寄与する。
【0059】
水素対エチレンのモル比は、平均分子量を制御するために調整できる。1つの実施形態において、α−オレフィン(エチレン以外)は、コポリマーの最大15重量%までの全体量で存在させることができ、使用する場合には、好ましくはコポリマー中にコポリマーの重量に基づいて約1〜約10重量%の全体量で含まれる。
【0060】
反応物質、例えばガス状及び液状の反応物質、触媒、及び樹脂の混合物の、各流動床での滞留時間は、約1時間〜約12時間の範囲内にあることができ、好ましくは約1.5時間〜約5時間の範囲内にある。
【0061】
反応器は、必要に応じて、凝縮モードで操作できる。凝縮モードは、米国特許第4,543,399号明細書;同第4,588,790号明細書;及び同第5,352,749号明細書(それぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。最も好ましい二重反応器構成では、比較的低い「高荷重メルトインデックス」(又は高分子量)のポリマーが、通常は、第一の反応器で調製される。あるいは、低分子量ポリマーは、第一の反応器で調製でき、高分子量ポリマーは、第二の反応器で調製できる。この開示のために、諸条件が高分子量ポリマーを製造することを促進する反応器は、「高分子量反応器」として公知である。あるいは、諸条件が低分子量ポリマーを製造することを促進する反応器は、「低分子量反応器」として公知である。何れの成分が最初に製造されるかに関係なく、ポリマーと活性触媒との混合物は、好ましくは、移動媒体として窒素又は第二の反応器再循環ガスを使用して、相互連結デバイスを介して第一の反応器から第二の反応器に移される。直列の追加の反応器が、場合により、さらに変性を行い製品加工性、落槍衝撃、又はバブル安定性を改善するために使用される。2つを超える反応器がある構成では、「高分子量反応器」と呼ばれる反応器は、最も高い分子量のポリマーが調製される反応器であり、「低分子量反応器」は、最も低い分子量のポリマーが調製される反応器である。2つを超える反応器の使用は、他の2つの反応器で製造される2つの分子量に、中間の分子量の少量、例えば約1%〜10%のポリマーを加えるのに有用である。
【0062】
高分子量反応器:
1つの実施形態において、このHMW反応器でのα−オレフィン対エチレンのモル比は、有利には約0.01:1〜約0.8:1の範囲内にあり、好ましくは約0.02:1〜約0.35:1の範囲内にある。
【0063】
この反応器での水素(使用される場合)対エチレンのモル比は、約0.001:1〜約0.3:1、好ましくは約0.01〜約0.2:1の範囲内にあり得る。
【0064】
好ましい運転温度は、所望の密度に応じて変動する、すなわち、低密度については低い温度であり、高密度については高い温度である。運転温度は、有利には、約70℃から約115℃まで変動する。
【0065】
この反応器で製造されるHMWエチレン系ポリマーの高荷重メルトインデックス(I21)は、有利には約0.01dg/分〜約50dg/分、好ましくは約0.2dg/分〜約12dg/分、より好ましくは約0.2dg/分〜約2dg/分、さらにより好ましくは約0.2dg/分〜約0.4dg/分の範囲内にある。さらなる実施形態において、HMWエチレン系ポリマーは、第一のエチレン系ポリマーである。
【0066】
1つの実施形態において、有利にはHMWエチレン系ポリマーのメルトフロー比(I21/I)は、約5〜約15、好ましくは約7〜約13の範囲内にある。さらなる実施形態において、HMWエチレン系ポリマーは、第一のエチレン系ポリマーである。
【0067】
このポリマーの分子量(Mw)(ゲル透過クロマトグラフィーによって測定される)は、有利には約135,000g/モル〜約445,000g/モルの範囲内にある。さらなる実施形態において、HMWエチレン系ポリマーは、第一のエチレン系ポリマーである。
【0068】
ポリマーの密度は、有利には少なくとも0.860g/cmであり、好ましくは約0.890g/cm〜約0.940g/cmの範囲内にあり、より好ましくは約0.920g/cm〜約0.930g/cmの範囲内にある。さらなる実施形態において、HMWエチレン系ポリマーは、第一のエチレン系ポリマーである。
【0069】
低分子量反応器:
好ましくは、α−オレフィン対エチレンのモル比は、高分子量反応器で使用されるモル比よりも小さく、有利には少なくとも約0.0005:1であり、好ましくは少なくとも約0.001:1であり、有利には約0.6:1以下であり、より有利には約0.42:1以下であり、好ましくは約0.01:1以下であり、より好ましくは約0.007:1以下であり、最も好ましくは約0.006:1以下である。典型的には、少なくとも幾つかのα−オレフィンは、高分子量反応器内容物を伴う。
【0070】
水素対エチレンのモル比は、約0.01:1〜約3:1の範囲内にあり得、好ましくは約0.5:1〜約2.2:1の範囲内にある。
【0071】
運転温度は、一般に約70℃〜約115℃の範囲内にある。運転温度は、好ましくは反応器での生成物の粘着を避けるために所望の密度と共に変動する。
【0072】
1つの実施形態において、この反応器で製造される低分子量ポリマー成分のメルトインデックス(I)は、約0.5dg/分〜約3000dg/分の範囲内にあり、好ましくは約1dg/分〜約1000dg/分、又は約10dg/分〜約1000dg/分、又は約50dg/分〜約1000dg/分、又は約100dg/分〜約1000dg/分、又は約250dg/分〜約1000dg/分、あるいは約500dg/分〜約900dg/分の範囲内にある。さらなる実施形態において、LMWエチレン系ポリマーは、第二のエチレン系ポリマーである。
【0073】
低分子量ポリマー成分のメルトフロー比(I21/I)は、約5〜約15、好ましくは約7〜約13の範囲内にあり得る。さらなる実施形態において、LMWエチレン系ポリマーは、第二のエチレン系ポリマーである。
【0074】
このポリマーの分子量(Mw)(ゲル透過クロマトグラフィーによって測定される)は、一般に約15,800g/モル〜約35,000g/モルの範囲内にある。さらなる実施形態において、LMWエチレン系ポリマーは、第二のエチレン系ポリマーである。
【0075】
1つの実施形態において、このLMWポリマーの密度は、少なくとも0.900g/cmであり、好ましくは約0.910g/cm〜約0.975g/cmの範囲内にあり、より好ましくは約0.950g/cm〜約0.975g/cmの範囲内にあり、最も好ましくは約0.965g/cm〜約0.975g/cmの範囲内にある。さらなる実施形態において、LMWエチレン系ポリマーは、第二のエチレン系ポリマーである。
【0076】
最終生成物(第一の組成物)
「高分子量反応器」で調製されるポリマーと「低分子量反応器」で調製されるポリマーとの重量比は、約30:70〜約70:30の範囲内にあり得、好ましくは約40:60〜約60:40の範囲内にある。これもまた、スプリットとして知られている。
【0077】
最終生成物の密度は、少なくとも0.940g/cmであり得、好ましくは約0.945g/cm〜約0.955g/cmの範囲内にある。
【0078】
第二の反応器から取り出される最終生成物は、約0.2dg/分〜約1.5dg/分、好ましくは約0.2dg/分〜約1.0dg/分、より好ましくは約0.2dg/分〜約0.5dg/分の範囲内のメルトインデックス(I)を有することができる。
【0079】
1つの実施形態において、メルトフロー比(I21/I)は、約15〜約50、好ましくは約20〜約40、より好ましくは約20〜約30の範囲内にある。
【0080】
最終生成物は、典型的に、多峰性として特徴付けることができる幅広い分子量分布(M/M)を有する。1つの実施形態において、分子量分布は、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定される約10〜約40、好ましくは約15〜約35のM/M比に反映される。
【0081】
アジド化合物
アジド化合物は、少なくとも1個のN部分、好ましくは少なくとも2個のN部分を含有する。アジド化合物としては、米国特許第6,521,306号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような多官能価スルホニルアジドが挙げられる。好ましい多官能価スルホニルアジドは、ポリオレフィン(例えば、エチレン系ポリマー)と反応する少なくとも2個のスルホニルアジド基(−SO)を有する。1つの実施形態において、多官能価スルホニルアジドは、構造X−R−Xを有する(式中、それぞれのXは、SOであり、及びRは、非置換又は不活性置換ヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテル又はケイ素含有基であって、好ましくはポリオレフィンと多官能価スルホニルアジドとの間の容易な反応を可能にするために、スルホニルアジド基を十分に隔てるのに十分な炭素原子、酸素原子又はケイ素原子、好ましくは炭素原子を有する非置換又は不活性置換ヒドロカルビル、ヒドロカルビルエーテル又はケイ素含有基を表す)。
【0082】
多官能価スルホニルアジド物質としては、化合物、例えば1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド);1,8−オクタンビス(スルホニルアジド);1,10−デカンビス(スルホニルアジド);1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド);1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド);4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド);1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン;2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド);分子当たり平均で1〜8個の塩素原子と、2〜5個のスルホニルアジド基を含有する塩素化脂肪族炭化水素の混成スルホニルアジド;並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい多官能価スルホニルアジド物質としては、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン);2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド);4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル;4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)(ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルホニルアジドとしても知られている);及びビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン;並びにこれらの混合物が挙げられる。最も好ましいのは、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルホニルアジド(本明細書ではDPO−BSAと表記する)である。
【0083】
スルホニルアジドは、アジ化ナトリウムと、対応する塩化スルホニルとの反応によって好都合には調製されるが、種々の試薬(亜硝酸、四酸化二窒素、テトラフルオロホウ酸ニトロソニウム)によるスルホニルヒドラジンの酸化が使用されている。また、多官能価スルホニルアジドは、米国特許第6,776,924号明細書(参照により本明細書に完全に組み込まれる)にも記載されている。
【0084】
レオロジー変性のために、多官能価スルホニルアジドを、ポリマーと混合し、少なくとも多官能価スルホニルアジドの分解温度まで加熱する。多官能価スルホニルアジドの分解温度とは、多官能価スルホニルアジドが、このプロセスで窒素と熱を脱離してスルホニルナイトレンに転化する温度であって、DSCで決定される温度を意味する。1つの実施形態において、多官能価スルホニルアジドは、DSC(10℃/分で走査)において、約130℃の温度で動力学的に有意な速度(本発明の実施に際して使用するのに好都合である)で反応し始め、約160℃でほぼ完全に反応する。1つの実施形態において、分解の開始は、2℃/時間で走査する加速熱量測定法(Accelerated Rate Calorimetry)(ARC)で約100℃であると認められた。
【0085】
反応の度合いは、時間と温度の関数である。本発明の実施に際して使用する温度はまた、ポリマー出発原料の軟化温度又は溶融温度によっても決定される。これらの理由から、温度は、有利には90℃よりも高い、好ましくは120℃よりも高い、より好ましくは150℃よりも高い、最も好ましくは180℃よりも高い。所望の分解温度での好ましい反応時間は、ポリマーマトリックスの望ましくない熱分解を生じることなくアジド化合物とポリマーとの反応を生じさせるのに十分な時間である。
【0086】
ポリマーとアジド化合物の混合は、当業者の範囲内の任意の手段で達成される。望ましい分布は、どのような流動学的性質を変性すべきであるかに依存して多くの場合に異なる。できる限り均一な分布を有することが望ましく、好ましくはポリマー溶融中にアジドの溶解を達成することが望ましい。
【0087】
「溶融加工」という用語は、ポリマーを軟化又は溶融させる任意のプロセス、例えば押出し、ペレット化、インフレーション及びフィルム流延、熱成形、ポリマー溶融形態での配合、及びその他の溶融法を意味するのに使用する。
【0088】
ポリマーとアジド化合物は、これらの望ましい反応を生じる任意の様式で、好ましくはアジド化合物とポリマーとを、不均一な量の局所反応を避けるために反応の前に十分な混合を可能にする条件下で混合し、次いで得られる混合物を反応に十分な加熱に供することによって好適に混合される。
【0089】
任意の装置、好ましくは同一装置で十分な混合と温度制御を提供する装置が、好適に使用される。好ましくは、連続ポリマー加工装置、例えば押出機、又は半連続ポリマー加工装置、例えばBANBURYミキサーが使用される。本発明のために、押出機という用語は、その最も広い意味のために、ペレットを押出すデバイス、並びにポリマー材料をシート又はその他の所望の形状及び/又は形材の形態で押出すデバイスのようなデバイスを含むのに使用する。
【0090】
押出機及び押出プロセスは、米国特許第4,814,135号明細書;同第4,857,600号明細書;同第5,076,988号明細書;及び同第5,153,382号明細書(それぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ペレットを形成するのに使用できる種々の押出機の例は、単軸スクリュー及び多軸スクリュー型である。好都合には、ポリマーの製造とその使用の間に溶融押出工程がある場合には、このプロセスの少なくとも1つの工程は、溶融押出工程で行う。反応を溶媒又はその他の媒体中で行うことは本発明の範囲内にあるが、反応は、後で溶媒又はその他の媒体を除去するための工程を避けるためにバルク相中で行うことが好ましい。このためには、結晶溶融温度よりも高いポリマーが、均一な混合のために及び反応温度(アジド化合物の分解温度)に到達するために有利である。
【0091】
好ましい実施形態において、アジド変性ポリマーは、実質的にゲルを含んでいない。ポリマー組成物中の不溶性ゲルの存在を検出し、望ましい場合には定量するために、組成物は、ASTM D2765−90、方法Bに記載のように、好適な溶媒、例えば還流キシレンに12時間浸漬する。次いで、組成物の任意の不溶性部分を、単離し、乾燥し、秤量し、組成物についての情報に基づいて好適な補正を行う。例えば、「非ポリマー溶媒可溶性成分」の重量を、初期重量から引き算し;「非ポリマー溶媒不溶性成分」の重量を、初期重量及び最終重量から引き算する。回収された不溶性ポリマーは、「%ゲル]含有率(組成物の重量に基づいて)として報告する。本発明のために、「実質的にゲルを含んでいない」とは、10%未満、好ましくは8%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは3%未満、いっそうより好ましくは2%未満、いっそうより好ましくは0.5%未満、最も好ましくはキシレンを溶媒として使用した場合には検出可能限界よりも低い%ゲル含有率を意味する。ゲルを許容できる特定の最終使用用途については、%ゲル含有量は、それよりも高いものであることができる。
【0092】
好ましくは、本発明の組成物は、過酸化物及び/又は他の種類のカップリング剤を含有していない。他の種類のカップリング剤の例としては、フェノール類;アルデヒド−アミン反応生成物;置換尿素類; 置換グアニジン類;置換キサンテート類;置換ジチオカルバメート類;硫黄含有化合物、例えばチアゾール類、イミダゾール類、スルフェンアミド類、チウラミジスルフィド類、元素状硫黄;パラキノンジオキシム;ジベンゾパラキノンジオキシム;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
フィルム
フィルム及びフィルム構造は、本発明から特に恩恵を受け、従来のインフレートフィルム製造技術を使用して製造できる。従来のインフレートフィルム法は、例えば、The Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol. 16, pp. 416-417及びVol. 18, pp. 191-192(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0094】
フィルムは、単層フィルム又は多層フィルムであってもよい。本発明を使用して製造されるフィルムはまた、他の層と共に同時押出しすることもできるし、又はフィルムは、別の層の表面に、第二の操作、例えばPackaging Foods With Plastics, Wilmer A. Jenkins and James P. Harrington (1991)に記載されている操作、又は「Coextrusion For Barrier Packaging」W. J. Schrenk and C. R. Finch, Society of Plastics Engineers RETEC Proceedings, June 15-17 (1981), pp. 211-229(それぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている操作で積層することができる。
【0095】
押出コーティングは、本明細書に記載の新規組成物を使用して多層フィルム構造を製造するためのさらに別の技法である。新規組成物は、フィルム構造の少なくとも1つの層を構成する。キャストフィルムと同様に、押出しコーティングは、フラットダイ技法である。シーラントは、基材表面に単層又は同時押出しされた押出物の形態で押出しコーティングすることができる。
【0096】
一般に、多層フィルム構造について、本明細書に記載の新規組成物は、全多層フィルム構造の少なくとも1つの層を構成する。多層構造のその他の層としては、以下に限定されないが、遮断層、及び/又は結合層、及び/又は構造層が挙げられ得る。種々の材料がこれらの層に使用できるが、これらの層の幾つかは、同一フィルム構造の1つを超える層として使用される。これらの材料の幾つかとしては、以下:箔、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PETE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ナイロン、グラフト接着ポリマー(例えば、無水マレイン酸グラフトポリエチレン)、及び紙が挙げられる。一般に、多層フィルム構造は、2〜7層から構成される。
【0097】
定義
用語「ポリマー」は、本明細書において、ホモポリマー(微量の不純物がポリマー構造に取り込まれることができるという理解のもとで、1種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び本明細書に記載されるようなインターポリマーを示すために使用する。
【0098】
本明細書で使用する用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。従って、インターポリマーという一般用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び2つを超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0099】
本明細書で使用する用語「エチレン系ポリマー」は、重合した形態で、大部分を占める重量%(majority weight percent)のエチレン(ポリマーの重量に基づく)と、場合により1つ又はそれ以上の追加コモノマーを含むポリマーを指す。
【0100】
本明細書で使用する用語「エチレン系インターポリマー」は、重合した形態で、大部分を占める重量%のエチレン(インターポリマーの重量に基づく)と、1つ又はそれ以上の追加コモノマーを含むインターポリマーを指す。
【0101】
本明細書で使用する用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、重合した形態で、大部分を占める重量%のエチレン(インターポリマーの重量に基づく)と、α−オレフィンと、場合により1つ又はそれ以上の追加コモノマーを含むエチレン系インターポリマーを指す。
【0102】
本明細書で使用する用語「エチレン/α−オレフィンコポリマー」は、重合した形態で、大部分を占める重量%のエチレン(コポリマーの重量に基づく)と、α−オレフィンを含み、その他のコモノマーを含んでいないエチレン系コポリマーを指す。
【0103】
本明細書で使用する用語「カップリング量」は、ポリマー鎖を結合するのに有効であり、上記で定義したように「実質的にゲルを含んでいない」組成物をもたらす1つ又はそれ以上のアジド化合物の量を指す。
【0104】
本明細書で使用する用語「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」は、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンドを意味する。このようなブレンドは、混和性であってもよいし又は混和性でなくてもよい(分子レベルで分離した層ではない)。このようなブレンドは、層分離していてもよいし又は層分離していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子顕微鏡法、光散乱法、X線散乱法、及び当分野で公知のその他の方法から決定される1つ又はそれ以上のドメイン配置を含んでいてもよいし又は含んでいなくてもよい。
【0105】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」及びこれらの派生語は、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を、これらが具体的に開示されているか否かに関わらず除外することを意図しない。いかなる誤解も避けるために、用語「含む(comprising)」を使用することによって特許請求される全ての組成物は、特に明記しない限りは、ポリマーであろうとなかろうと任意の追加の添加剤、補助剤、又は化合物を含んでいてもよい。反対に、用語「から本質的になる」は、実施可能性に必須でないものを除いて、任意の後述の範囲から任意のその他の成分、工程又は手順を除外する。用語「からなる」は、具体的に記述又は列記されていない任意の成分、工程又は手順を除外する。
【0106】
試験方法
樹脂の密度は、イソプロパノール中で、アルキメデス置換法、ASTM D792−03、方法Bで測定した。試験片は、測定の前に熱平衡を達成するように、イソプロパノール浴中で、23℃で8分間状態調節した後に、成形の1時間以内に測定した。試験片は、ASTM D−4703−00、Annex Aに従って、約190℃及び100psig(690kPaゲージ)で5分の初期加熱時間、約190℃及び1500psig(10.3MPaゲージ)で3分間の加熱時間で圧縮成形し、次いで手順Cによって15℃/分の冷却速度で冷却した。試験片(直径約45mm及び厚み約2mm)を、プレス(1500psig下で)で45℃に冷却し、「触れると冷たくなる」まで冷却し続けた。
【0107】
メルトフローレート測定は、ASTM D−1238−04、条件190℃/2.16kg、条件190℃/5.0kg及び条件190℃/21.6kg(これらは、それぞれI、I及びI21として知られている)に従って行った。メルトフローレートは、ポリマーの分子量に反比例する。従って、分子量が大きければ大きいほど、メルトフローレートが低いが、相関は直線的ではない。I21はまた、「高荷重メルトインデックス」ともいう。メルトフローレート(MFR)は、特に明記しない限りはI21対Iの比である。例えば、ある場合には、MFRは、特に高分子量ポリマーについては、I21/Iと表し得る。
【0108】
落槍衝撃強さは、ASTM D1709−04、方法Aに従って、フィルム試料の円周の周りに落下させる槍を用いて、階段法で測定した。フィルム試験片は、次の厚み:0.0005インチ(0.5ミル;13μm)を有していた。試験片は、フィルム引っかき傷を避けるために清浄なダイリップを用いてフィルムを少なくとも3分吹き込み成形した後に、インフレートフィルムラインから採取した。老化の影響を避けるために、落槍衝撃強さは、試料の採取後1時間以内に測定した。
【0109】
FAR
フィルム外観等級(FAR)値は、「0.001インチ(1ミル;25μm)厚」の押出フィルムを、「0.015インチ(1.5ミル;38μm)」フィルム標準と比較することによって得た。6枚の標準フィルム(それぞれ60,000mm(それぞれ200mm×300mm)の概算面積を有する)を使用した。各標準フィルムは、高密度ポリエチレン樹脂から調製した。第一の標準(#1)は、FAR等級−50(極めて悪い外観並びに極めて過剰な量の小さいゲル、中間的大きさのゲル及び大きなゲル;例えば、フィルムのm当たり40を超える大きなゲル(500μmよりも大きい)含有量)を有していた。第二の標準(#2)は、FAR等級−30(極めて悪い外観並びに極めて多量の小さいゲル、中間的大きさのゲル及び大きなゲル;例えば、フィルムのm当たり21〜40の大きなゲル含有量)を有していた。第三の標準(#3)は、FAR等級−10(悪い外観並びに多量の小さいゲル、中間的大きさのゲル及び大きなゲル;例えば、フィルムのm当たり11〜20の大きなゲル含有量)を有していた。第四の標準(#4)は、FAR等級+10(かろうじて要件を満たす外観並びに中間量の小さいゲル、中間的大きさのゲル及び大きなゲル;例えば、フィルムのm当たり4よりも大きく10までの大きなゲル含有量)を有していた。第五の標準(#5)は、FAR等級+30(許容できる外観並びに極めて少ない量の小さいゲル、中間的大きさのゲル及び大きなゲル;例えば、フィルムのm当たり1〜3の大きなゲル含有量)を有していた。第六の標準(#6)は、FAR等級+50(極めて良好な外観並びに極めて少ない量の小さいゲル及び中間的大きさのゲル、及び本質的に大きなゲルを含んでいない)を有していた。
【0110】
バブル安定性
バブル安定性の不良は、バブルを制御できないこと及び優れたゲージ(厚み)均一性を有するフィルムを形成できないこととして定義される。バブル安定性は、Hosokawa Alpine Corporationから市販されている以下のインフレートフィルムラインについて、以下の条件下で測定した:
押出機及びフィルムライン運転パラメーター
バレル帯域1 390°F (199℃)
バレル帯域2 400°F (204℃)
アダプター下部 400°F (204℃)
アダプター頂部 410°F (210℃)
下部ダイ 410°F (210℃)
中間ダイ 410°F (210℃)
上部ダイ 410°F (210℃)
押出速度 100lb/時 (45.4kg/時)
ブローアップ比(BUR)4:1
ネック高さ 32インチ (0.81m)
フロストラインの高さ 42インチ (1.07m)
溶融温度 410°F (210℃)
折り径 25.25インチ (0.64m)
フィルムの厚み 0.001インチ (1.0ミル) (25μm)
0.0005インチ (0.5ミル) (13μm)
インフレートフィルム装置の説明
Alpine HS50S据置型押出装置
・50mm 21:1 L/D溝付き供給押出機
・60hp(44.8kW)DC駆動
・押出機は、円筒状スクリーンチェンジャーを有する
・9個のRKC温度制御装置を有する標準制御パネル
Alpine Die BF10−25
・12スパイラルデザイン
・100mmダイ径を構成するインサートを備える
Alpine Air Ring HK300
・シングルリップデザイン
・100mmダイ径用のエアリップ
・変速AC駆動を有する7.5hp(5.6kW)ブロアー
バブル較正Iris Model KI10−65
・折り径(LFW)範囲7インチ〜39インチ(0.178m〜0.991m)
Alpine Take−Off Model A8
・硬材スラットを有するサイドガイドを有する案内板
・最大折り径(LFW):31インチ(0.787m)
・ローラー面幅:35インチ(0.889m)
・最大引取速度:500ft/分(2.54m/s)
・4個のアイドラーロール
Alpine表面巻取機Model WS8
・最大LFW:31インチ(0.787m)
・ローラー表面の幅:35インチ(0.889m)
・最大ライン速度:500フィート/分(2.54m/s)
・自動カットオーバー
【0111】
特に明記しない限りは、重量計量供給を使用した。ブロー成形及び巻取りは、32.0インチ(0.81m)のネック高さ、24.5インチ(0.622m)の折り径、フィルムの厚み約0.001インチ(1.0ミル;25μm)を生成する対称バブルを用いて、100lb/時(45.4kg/時)の押出速度及び82.5フィート/分(0.42m/s)の巻取りで開始し、確立した。これらの条件を、少なくとも20分間維持し、その後に、10フィート(3.05m)の試料を、前述のようにフィルム外観等級(FAR)のために収集した。次いで、引取速度を、フィルムの厚みが0.0005インチ(0.5ミル;13μm)に減少するように、165フィート/分(0.84m/s)に増大させた。ネックの高さと折り径の両方を維持した。上記のように、少なくとも8個の「落槍衝撃強さ」試料を収集するために、十分なフィルムを、シワを避けるためにロール上で採取した。試料は、少なくとも3分の運転時間の後に、引っかき傷を避けるために清浄なダイリップを用いて採取した。100lb/時間(45.4kg/時間)の押出速度、165フィート/分(0.84m/s)の引取速度、32.0インチ(0.81m)のネック高さ、及び24.5インチ(0.622m)の折り、0.5ミルのフィルム厚(13μm)の条件を継続しながら、このプロセスでブローされるバブルを、ヘリカル不安定性又はバブル径変動について目視観察した。ヘリカル不安定性は、バブルの周りのヘリカルパターンの直径の低下を含む。バブル径変動は、大きな直径及び小さい直径が交互に繰り返すことを含む。バブルは、安定であるとみなす、言い換えると、例え若干のバブルチャター(bubble chatter)を観察し得るとしても、これらの状態(ヘリカル不安定性及びバブル径変動)のどちらも、完全なロールフィルムの形成中(フィルム約1650フィートについて約10分)に観察されない限りは合格であるとみなす。
【0112】
樹脂レオロジー
樹脂レオロジーは、ARES I(Advanced Rheometric Expansion System)レオメーターで測定した。試料組成物を、レオロジー測定用のディスクに圧縮成形した。ディスクは、試料を0.071インチ(1.8mm)厚のプラックにプレスすることにより調製し、その後に「1インチ(25.4mm)の直径の」のディスクに切断した。圧縮成形手順は、次のとおりであった:365°F(185℃)で、100psig(689kPaゲージ)で5分間圧縮;365°F(185℃)で、1500psig(10.3MPaゲージ)で3分間圧縮;1500psig(10.3MPaゲージ)下で、45℃まで27°F(15℃)/分で冷却し、次いで圧力を開放し、試料をプレスから取り出し、周囲温度(約23℃)に冷却した。
【0113】
ARESは、歪制御型レオメーターである。回転型アクチュエーター(サーボモーター)が、試料に歪みの形で剪断変形を加える。それに応じて、試料は、トルクを生じ、それを変換器で測定する。歪みとトルクは、動的機械的性質、例えば弾性率及び粘度を算出するのに使用される。試料の粘弾性を、平行板セットアップを使用して溶融物において、一定の歪み(10%)及び温度(190℃)で、変動周波数(0.01s−1〜100s−1)の関数として測定した。樹脂の貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、tanδ、及び複素粘度(η)は、Rheometrics Orchestratorソフトウエア(v.6.5.8)を使用して測定した。
【0114】
Rheotens(Goettfert Inc.,Rock Hill,SC,USA)溶融強度実験は、190℃で行った。溶融物は、フラット30/2ダイを有するGottfert Rheotester 2000キャピラリーレオメーターで38.2s−1の剪断速度で生成した。レオメーターのバレル(直径:12mm)を、1分未満以内にファイルした(filed)。10分の遅れが、適切な溶融を可能にした。Rheotensホイールの巻取り速度を、2.4mm/secの一定加速度で変化させた。延伸ストランドの張力を、ストランドが破断するまで経時的に監視した。定常状態力及び破断時速度を報告した。
【実施例】
【0115】
実験
触媒前駆物質の調製
典型的な触媒前駆物質の調製は、以下のとおりであるが、当業者は、製造するのに必要なポリマーの量に応じて、用いる量を容易に変化させることができる。
【0116】
三塩化チタン触媒成分を、圧力及び温度制御装置、並びにタービン攪拌機を備えた「1900リットル」の反応容器で調製した。窒素雰囲気(HOが5ppm(100万当たり重量部)未満)を、常に維持した。
【0117】
1480リットルの無水テトラヒドロフラン(40ppm未満のHO)を、前記反応容器に加えた。テトラヒドロフランを、50℃の温度に加熱し、粒状金属マグネシウム(1.7kg;70.9モル)を加え、次いで27.2kgの四塩化チタン(137モル)を加えた。金属マグネシウムは、0.1mm〜4mmの範囲内の粒径を有していた。四塩化チタンは、約30分間にわたって加えた。
【0118】
得られた混合物を、連続的に攪拌した。四塩化チタンの添加により生じた発熱により、混合物の温度が、約3時間にわたって約70℃まで上昇した。温度は、さらに約4時間加熱することによって約70℃に保った。この時間の終わりに、61.7kgの二塩化マグネシウム(540モル)を加え、加熱を70℃でさらに8時間続けた。次いで、混合物を「100μmフィルター」に通して濾過して、未溶解二塩化マグネシウムと任意の未反応マグネシウム(0.5%未満)を除去した。
【0119】
100kgのヒュームドシリカ(Cabot Corporation製のCAB−O−SIL(登録商標)TS−610)を、前駆物質溶液に約2時間にわたって加えた。この混合物を、この時間中タービン攪拌機で攪拌し、その後数時間攪拌して、シリカを溶液に十分に分散させた。混合物の温度は、この時間中、70℃に保ち、乾燥窒素雰囲気を常に保った。
【0120】
得られたスラリーを、NIRO FS−15回転噴霧器を備えた直径8フィート(2.4m)の密閉サイクル噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。回転噴霧器を、20μm〜30μmの程度のD50を有する触媒粒子が得られるように調整した。D50は、回転噴霧器の速度を調整することによって調節した。噴霧乾燥機のスクラバー部分は、約−5℃に維持した。
【0121】
窒素ガスを、前記噴霧乾燥機に140℃〜165℃の入口温度で導入し、約1700kg/時〜1800kg/時の速度で循環させた。触媒スラリーを、前記噴霧乾燥機に、約35℃の温度、及び65kg/時〜100kg/時の速度、すなわち100℃〜125℃の範囲の入口ガス温度を得るのに十分な速度で供給した。噴霧圧力は、大気圧よりもわずかに高かった。
【0122】
次いで、離散触媒前駆物質粒子を、タービン攪拌機を備えた400リットルの反応容器で、窒素雰囲気下で鉱油と混合して、約28重量%の固形触媒前駆物質を含有するスラリーを形成した。
【0123】
重合
触媒前駆物質スラリー、トリエチルアルミニウム助触媒、エチレン、α−オレフィン、及び水素を、第一の反応器に連続的に供給した;得られるポリマー/活性触媒の混合物を、連続的に第一の反応器から第二の反応器に移した;エチレン、水素、及びトリエチルアルミニウム助触媒を、第二の反応器に連続的に供給した。最終生成物を、第二の反応器から連続的に取り出した。
【0124】
2種類の樹脂の重合条件を、表1に示す。それぞれの重合は、直列に配置した2つの反応器で操作した。チーグラー・ナッタ型触媒(上記参照)を、それぞれの重合で使用した。各組成物の選択した特性を、表2に示す。
【表1】


【表2】

【0125】
アジド処理
樹脂I及び樹脂IIを、添加剤、例えばIRGANOX−1076、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウムの存在下で、分子溶融物(MM)の形態のDPO−BSA(ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルホニルアジド)で変性させた。前記アジドは、25μg/g〜150μg/gの範囲内で使用した。
【0126】
「分子溶融物」(MM)は、Dynamit Nobel GmbHから受け入れたアジド組成物の特定の形態である。これは、物理的混合物ではなく、むしろDPO−BSAとIRGANOX−1010との粒状溶融物である。
【0127】
前記分子溶融物は、他の添加剤と共に各樹脂に加え、得られた樹脂配合物を、ギアポンプに直接連結され、溶融濾過デバイス及び水中ペレット化装置を備えた連続ミキサー(Kobe Steel,Ltd.LCM−100連続ミキサー)に供給した。目に見えるゲルは、形成されておらず、75重量%を超えるIRGANOX−1076が、その元の化学形態を維持していた。
【0128】
アジド変性用の配合物(又は組成物)、及び押出し条件を、以下の表3に示す。市販の樹脂A(比較樹脂A)は、ALATHON L5005高密度ポリエチレン(Equistarから入手できる)であり、市販の樹脂B(比較樹脂B)は、The Dow DGDC−2100 NT7高密度ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手できる)である。両方共に、フィルム製品に使用される高分子量、高密度樹脂である。アジド変性樹脂は、非アジド変性試料と比べて、低剪断速度で高い粘度、及び高い溶融強度を有していた。
【0129】
各「非アジド変性」樹脂(対照試料)、アジド変性樹脂、及び市販樹脂を、インフレートフィルムに形成した。フィルム装置及び条件については、上記の「バブル安定性」についての試験法を参照のこと。追加操作条件を、表3に示す。また、フィルム特性も表3に示す。
【表3】


【表4】

【0130】
表3に示すように、本発明の組成物(実施例1)から形成されたフィルムは、他の比較フィルムと比べて意外にも高い落槍衝撃強さと、良好なバブル安定性とを有していた。本発明のフィルムの落槍衝撃強さは、比較試料Eの落槍衝撃強さと比べて40%より大きく高められた。本発明のフィルムの「486g」の落槍衝撃強さは、市販の樹脂Bから調製されたフィルムの「350g」よりも約39%の上昇であり、市販の樹脂Aから調製されたフィルムの「333g」よりも約46%の上昇である。
【0131】
本発明の組成物に使用されるはるかに少ない量のアジド化合物は、この組成物のI21(第一の組成物)/I21(第一のエチレン系ポリマー)と一緒に、良好なバブル安定性(溶融強度)、良好なFAR(フィルム外観等級)結果、及び高い落槍衝撃強さを生じることが、意外にも見出された。アジド変性組成物から形成されたフィルムのFARは、+30の最小限許容できるFARよりも少なくとも「10FAR単位」高かった。
【0132】
横方向(side-to-side)バブル試験(合格/不合格)は、典型的にバブル安定性のゲージとして使用される。未処理の比較試料A及びD(0μg/gのアジド)のバブル安定性は、許容されなかったが、これに対して本発明の組成物から形成されたフィルムは、良好なバブル安定性(商業的に許容できるレベル)を有していた。
【0133】
図1(樹脂I)から分かるように、アジド濃度が上昇するにつれて、tanδが低下し、分子構造が長鎖分岐の付加により大きくなったことを示す。50ppm以上のアジド濃度で、tanδは、著しく低下し(11+%)、従って、ポリマー構造の著しい変化が生じた(図2も参照)。アジドの量を40μg/g、好ましくは30μg/g以下に減らすと、バブル安定性が維持され、またポリマーの分子構造に対して最小限の/無視できる変化がもたらされ、それによってアジド処理の前の樹脂の原料特性が保存/維持されることが知見された。
【0134】
本発明の変性組成物は、非変性ベース樹脂と比べて、低剪断速度でより高い溶融粘度、従ってより高い溶融強度をもたらす。この強化は、より高い溶融強度を必要とする多数の用途、例えば「重合させたままの(as polymerized)」原料の落槍衝撃強さを犠牲にすることなく、高められたバブル安定性を必要とするインフレートフィルムにおいて重要である。また、この改善は、10s−1(中間剪断速度)、及び100s−1(高剪断速度)の剪断速度(これらは典型的な押出条件に相当する)で粘度に著しく影響を及ぼすことなく得られ、それによって非変性樹脂の押出特性応答と同様の押出特性応答、例えば機械押出量(フィルム押出機に極めて望まれる)を維持する。表3参照。
【0135】
本発明は、先の実施例においてかなり詳細に説明したが、この詳細は、例証を目的とするものであり、以下の特許請求の範囲に記載した本発明を限定すると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記:
A)第一のエチレン系ポリマーを含む第一の組成物(この場合、比I21(第一の組成物)/I21(第一のエチレン系ポリマー)は、30以上である);及び
B)10μg/g〜40μg/g(組成物の重量に基づく)の量の1つ又はそれ以上のアジド化合物;
を含む組成物。
【請求項2】
前記第一のエチレン系ポリマーが、0.40dg/分以下の高荷重メルトインデックス(I21)を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一のエチレン系ポリマーが、0.20dg/分以上、好ましくは0.25dg/分以上の高荷重メルトインデックス(I21)を有する、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記第一の組成物が、0.940g/cmよりも大きい、好ましくは0.945g/cmよりも大きい密度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第一の組成物が、25〜45、好ましくは30〜40のメルトフロー比(I21/I)を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第一の組成物が、6dg/分〜12dg/分の高荷重メルトインデックス(I21)を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記組成物の重量に基づいて前記第一の組成物を80重量%よりも多く含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一のエチレン系ポリマーが、0.920g/cm以上の密度を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第一のエチレン系ポリマーが、エチレン/α−オレフィンインターポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第一の組成物が、前記第一の組成物の重量に基づいて50〜58重量%を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
先行請求項のいずれか1項に記載の組成物から形成される少なくとも1つの層を含むフィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、ASTM D1709−04、方法Aにより測定される400gよりも大きい落槍衝撃強さを有する、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の前記組成物から形成される少なくとも1つの構成部品を含む物品。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1項に記載の前記組成物から形成される物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511596(P2013−511596A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539994(P2012−539994)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/056984
【国際公開番号】WO2011/062961
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】