説明

組成物、及び、塗装物品

【課題】透明性、耐候性及び基材との密着性、耐ブロッキング性に優れ、更に凍結融解性にも優れる塗膜を作製することができる組成物を提供する。
【解決手段】含フッ素重合体の粒子をシード粒子とし、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体をシード重合して得られる重合体粒子(A)と、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤(B)とからなることを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、特にサイディング材用の塗料として好適に用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系単量体をシード重合用の単量体とする含フッ素シード重合体は、含まれるフッ素重合体の耐候性、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、防汚性と、アクリル系重合体の加工性、透明性、密着性、造膜性を活かし、各種の製品の原料、あるいは塗料の塗膜形成成分として、自動車工業、半導体工業、化学工業、塗料等の広い産業分野において使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビニリデンフルオライド単量体と特定の構造を有する反応性乳化剤とのビニリデンフルオライド系共重合体の存在下にエチレン性不飽和単量体を乳化重合させて得られるビニリデンフルオライド系シード重合体の水性分散液において、水性分散液の固形分濃度が30〜60重量%であり、かつ該シード重合体の平均粒子径が200nm以下であることを特徴とするビニリデンフルオライド系シード重合体水性分散液が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、水性媒体中においてフッ素系重合体をシードポリマーとし、これらフッ素系重合体粒子の存在下にエチレン性不飽和単量体を乳化重合させることが記載されている。
【0005】
ところで、特許文献3には、フッ素含有量が10重量%以上であり、かつカルボキシル基および/またはスルホン酸基を有する含フッ素樹脂の水性分散液とアジリジン基、カルボジイミド基またはオキサゾリン基を有する架橋剤とからなる架橋性含フッ素樹脂水性分散液組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−67795号公報
【特許文献2】特公平4−55441号公報
【特許文献3】特開2001−72819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フッ素系重合体をシード粒子として、その存在下にアクリル系単量体等のエチレン性不飽和単量体を乳化重合させた場合、シード重合に用いるアクリル系単量体の割合が多くなると、成膜したときに白濁してしまうという問題があった。また、従来のシード重合法により得られた重合体を用いた塗料は、基材との密着性、耐ブロッキング性、耐凍結融解性の点でも改善の余地があった。
【0008】
本発明は、透明性、耐候性及び基材との密着性、耐ブロッキング性に優れ、更に凍結融解性にも優れる塗膜を作製することができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、透明性、耐候性及び基材との密着性、耐ブロッキング性に優れ、更に凍結融解性にも優れる塗膜を作製することができる組成物について鋭意検討したところ、特定の重合体粒子と特定の架橋剤とを含む組成物から得られる塗膜が透明性に優れること、また、基材との優れた密着性、耐ブロッキング性を示すことを見出した。また、凍結融解性にも優れることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、含フッ素重合体の粒子をシード粒子とし、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体をシード重合して得られる重合体粒子(A)と、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤(B)とからなる組成物に関する。
【0011】
上記重合体粒子(A)は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量が、シード粒子に対して40〜400質量%であり、かつ加水分解性シリル基含有単量体に基づく重合単位の含有量が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量に対して0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0012】
上記シード粒子は、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンに基づく重合単位を含む含フッ素重合体の粒子であることが好ましい。
【0013】
上記加水分解性シリル基含有単量体が、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記組成物を基材に塗装して得られる塗装物品にも関する。
【0015】
本発明の塗装物品は、サイディング材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、上記構成を有することから、透明性、耐候性及び基材との密着性、耐ブロッキングに優れ、更に凍結融解性にも優れる塗膜を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物は、含フッ素重合体の粒子をシード粒子とし、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体をシード重合して得られる重合体粒子(A)からなる。アクリル酸又はメタクリル酸のエステルと、加水分解性シリル基含有単量体とをシード重合することによって、透明性に優れる塗膜を形成することができる。
本発明の組成物は、基材に塗装して塗装物品を得る観点から、水を含むことが好ましい。例えば、重合体粒子(A)が水性溶媒に分散した水性分散体、水に溶解した水性溶液であることも好ましい。水性溶媒は、通常水であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコール、グリコールエーテル、エステル等の有機溶媒を含有していてもよい。
【0018】
シード粒子は、含フッ素重合体の粒子である。シード粒子を構成する含フッ素重合体は、少なくとも1種のフルオロオレフィン単位を含むものであればよい。
【0019】
フルオロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、
【化1】

などのパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどの非パーフルオロオレフィンがあげられる。PAVEとしてはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などがあげられる。
【0020】
また、官能基含有フルオロオレフィンも使用できる。官能基含有フルオロオレフィンとしては、たとえば式(1):
CX=CX−(Rf)−Y (1)
(式中、Yは−OH、−COOH、−SOF、−SO(Mは水素原子、NH基またはアルカリ金属)、カルボン酸塩、カルボキシエステル基、エポキシ基またはシアノ基;XおよびXは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基;mは0または1)で示される化合物があげられる。
【0021】
官能基含有フルオロオレフィンの具体例としては、たとえば
【化2】

【化3】

などがあげられる。
【0022】
フルオロオレフィンとしては、ヨウ素含有モノマー、たとえば特公平5−63482号公報や特開昭62−12734号公報に記載されているパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのパーフルオロビニルエーテルのヨウ素化物も使用できる。
【0023】
シード粒子は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能なフッ素非含有単量体とを共重合した含フッ素重合体の粒子であってもよい。フルオロオレフィンと共重合可能なフッ素非含有単量体としては、たとえばエチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;ビニルエーテル系単量体、アリルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体などが挙げられる。
【0024】
シード粒子は、耐候性が良好な点、透明性が優れる塗膜が得られる点から、VdFに由来する重合単位を含む含フッ素共重合体の粒子であることが好ましい。アクリル系重合体との相溶性の観点からは、シード粒子は、VdFに由来する重合単位が、シード粒子の全重合単位に対して50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。また、例えば、95モル%以下であることが好ましい。
VdFに由来する重合単位を含む含フッ素共重合体として具体的には、VdF/TFE/CTFE共重合体、VdF/TFE共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、及び、VdF/HFP共重合体、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素共重合体の粒子が好ましく、VdF/TFE/CTFE=40〜99/1〜50/0〜30(モル%)、VdF/TFE=50〜99/1〜50(モル%)、VdF/TFE/HFP=45〜99/0〜35/5〜50(モル%)、VdF/CTFE=40〜99/1〜30(モル%)、VdF/HFP=50〜99/1〜50(モル%)がより好ましい。
【0025】
シード粒子の製造方法は特に限定されず、従来公知の乳化重合法で行うことができる。
【0026】
つぎにシード重合用の単量体について説明する。シード重合は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体を用いるが、そのほか、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体を併用してもよい。
【0027】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリル酸アルキルエステル、又は、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、n−ブチルアクリレート、及び、メチルメタクリレートであることが好ましい。
透明性、造膜性が優れる塗膜が得られる点から、なかでも、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、及び、シクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、加水分解性シリル基を含有しないものである。
2−エチルへキシルメタクリレートは、塗膜の凍結融解性を向上させる作用を有する。
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、透明性、耐ブロッキング性及び耐温水性に優れることから、n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートとの組合せ又はn−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとの組合せが更に好ましく、凍結溶解性が優れる塗膜が得られる点からn−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2−エチルへキシルメタクリレートとの組合せが特に好ましい。
【0028】
上記重合体粒子(A)は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量が、シード粒子に対して40〜400質量%であることが好ましい。40質量%より少ないと、本発明の組成物を基材に塗装して得られる塗膜の可とう性、耐ブロッキング性が不充分となるおそれがあり、また、400質量%を超えると耐候性が低下するおそれがある。耐候性が良好な点から、好ましい上限は400質量%であり、より好ましくは300質量%である。可とう性、耐ブロッキング性が良好な点から、好ましい下限は40質量%であり、より好ましくは45質量%である。
【0029】
不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、ウンデシレン酸などがあげられる。なかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくい点、カルボキシル基の導入を制御しやすい点から、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸、及び、ウンデシレン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0030】
上記重合体粒子(A)は、酸価が2.5〜20mgKOH/gであることが好ましく、5〜15mgKOH/gであることがより好ましい。酸価は、重合体粒子(A)の不飽和カルボン酸の含有量により調整することができる。ガラス転移温度は、20℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。
【0031】
加水分解性シリル基含有単量体としては、
CH=CHSi(OCH
CH=CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)Si(OCH
CH=C(CH)Si(CH)(OCH
CH=CHSi(OC
CH=CHSi(OC
CH=CHSi(OC
CH=CHSi(OC13
CH=CHSi(OC17
CH=CHSi(OC1021
CH=CHSi(OC1225
CH=CHCOO(CHSi(OCH
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
CH=CHCOO(CHSi(OC
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OC
CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(OC
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OC
CH=C(CH)COO(CHO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CH(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CH11Si(OCH
CH=C(CH)COO(CH11Si(CH)(OCH
CH=CHCHOCO(o−C)COO(CHSi(OCH
CH=CHCHOCO(o−C)COO(CHSi(CH)(OCH
CH=CH(CHSi(OCH
CH=CH(CHSi(OCH
CH=CHO(CHSi(OCH
CH=CHCHO(CHSi(OCH
CH=CHCHOCO(CH10Si(OCH
などがあげられる。これらの加水分解性シリル基含有単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
耐水性、耐温水性、貯蔵安定性が良好な点から、なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0032】
上記重合体粒子(A)は、加水分解性シリル基含有単量体に基づく重合単位の含有量が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量に対して0.1〜2質量%であることが好ましい。0.1質量%より少ないと耐温水性、耐水性、密着性、相溶性が不充分となるおそれがあり、2質量%を超えると造膜性、貯蔵安定性が不安定となるおそれがある。造膜性、貯蔵安定性が良好な点から、より好ましい上限は1.5質量%である。耐温水性、密着性が良好な点から、より好ましい下限は0.2質量%である。
【0033】
他の共重合可能なラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体としては、水酸基含有アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、α−オレフィン類などが好ましい。
【0034】
水酸基含有アルキルビニルエーテル類の具体例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどがあげられる。重合反応性が優れる点で、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0035】
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどがあげられる。カルボン酸ビニルエステル類を用いることで、本発明の組成物から得られる塗膜に、光沢の向上、ガラス転移温度の上昇などの特性を付与できる。
【0036】
α−オレフィン類としては、たとえばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、スチレンなどがあげられる。α−オレフィン類を用いることで、本発明の組成物から得られる塗膜に、可とう性の向上などの特性を付与できる。
【0037】
上記重合体粒子(A)は、他の共重合可能なラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体に基づく重合単位の含有量が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量に対して0〜4質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3質量%であり、更に好ましくは0.1〜2.5質量%である。
【0038】
上記重合体粒子(A)は、乳化剤の存在下、シード重合用の単量体と重合開始剤を含フッ素重合体のシード粒子の水性分散液に添加し、乳化重合して得られるものであってよい。
【0039】
シード重合用の単量体の重合温度は、10〜90℃であってよく、重合時間は、0.5〜6時間であってよい。
【0040】
乳化剤としては、反応性乳化剤でも非反応性乳化剤でも、またはそれらの併用でもよい。非反応性乳化剤としては、従来公知のアニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤を単独またはこれらの併用が挙げられる。場合によっては両性乳化剤を用いることもできる。乳化剤としては、たとえばニューコール707SF(日本乳化剤(株)製)、エマルゲン120(花王(株)製)等が挙げられる。
【0041】
重合開始剤としては、水中でフリーラジカル反応に供し得るものであれば特に限定されず、場合によっては、還元剤と組み合せて用いることも可能である。使用可能な水溶性の重合開始剤としては、たとえば過硫酸塩、過酸化水素等が挙げられ、過硫酸塩であることが好ましい。過硫酸塩としては、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられ、過硫酸アンモニウムがより好ましい。使用可能な還元剤としては、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、ロンガリット等が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、シード重合用の単量体100質量部あたり、0.0001〜2.0質量部であることが好ましい。
【0042】
得られる重合体粒子(A)のフッ素含有量は、25〜80質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0043】
得られる重合体粒子(A)の粒子径は、50〜500nmが好ましく、150〜250nmがより好ましい。
【0044】
重合体粒子(A)を含有する水性分散液には、必要に応じ、水、造膜補助剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、その他所要の添加剤を加えて公知方法で撹拌混合してよい。
【0045】
造膜補助剤としては、たとえばジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、テキサノール、Rhodiasolv DEE等が挙げられ、DEDGが好ましい。
【0046】
消泡剤としては、たとえばBYK028(ビッグケミー社製)、FSアンチフォーム013B(東レ・ダウコーニング社製)、SN8034(サンノプコ社製)等が挙げられる。
【0047】
pH調整剤としては、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられ、トリエチルアミン、アンモニアが好ましい。
【0048】
重合体粒子(A)を含有する水性分散液の最低造膜温度は、−5〜60℃が好ましく、15〜40℃がより好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤(B)を含む。
【0050】
アジリジン基を有する架橋剤の例としては、BF−グッドリッチ(BF−Goodrich)社から供給されるXAMA2、XAMA7などが例示される。
カルボジイミド基を有する架橋剤の例としては、ユニオンカーバイド社から供給されるUCARLNK Crosslinker XL−29SE、日清紡ケミカル社のカルボジライトE−02,E−04、SV−02,V−02V−02−L2、V−04、V−10などが例示され、カルボジライトE−02が好ましい。
オキサゾリン基を有する架橋剤の例としては、(株)日本触媒から供給されるエポクロスK−1010E、エポクロスK−1020E、エポクロスK−1030E、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスWS−500などが例示でき、エポクロスWS−500が好ましい。
【0051】
本発明の組成物から得られる塗膜の透明性及び基材との密着性、取り扱い安全性との観点から、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤(B)は、オキサゾリン基及びカルボジイミド基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤であることがより好ましい。
【0052】
上記架橋剤(B)を添加する方法としては、例えば、上記架橋剤(B)を水中に溶解または分散させたものを、重合体粒子(A)の水性分散液に添加する方法、上記架橋剤(B)を少量の水溶性有機溶剤に溶解させたものを、重合体粒子(A)の水性分散液に添加する方法、上記架橋剤(B)を直接、重合体粒子(A)の水性分散液に添加する方法などが挙げられる。
【0053】
架橋剤(B)は、重合体粒子(A)に導入されている、カルボキシル基と反応して架橋構造を形成する。その結果、耐温水性や、初期耐水性、耐汚染性等の耐水性の向上、塗膜の硬度の向上という作用を果たす。
【0054】
本発明の組成物において、架橋剤(B)の含有量は、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基の合計が、重合体粒子(A)のカルボキシル基に対して0.1〜4当量程度となる含有量であることが好ましい。0.1当量より少ないと、架橋による塗膜の耐温水性の向上効果、硬度向上効果による耐ブロッキング性、汚染付着防止性、汚染除去性の向上効果が小さく、4当量を超えると塗膜の耐水性、組成物の貯蔵安定性、耐候性が低下する傾向がある。カルボキシル基の量はシード重合時の仕込み量に対して計算から求めている。
【0055】
本発明の組成物には、必要に応じ、造膜補助剤、凍結防止剤、充填剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、つや消し剤、潤滑剤、防藻剤、上記の架橋剤(B)以外の架橋剤等を添加してよい。
【0056】
本発明の組成物は、種々の用途に適用することができる。代表的な用途としては、たとえば、各種塗料のほか、フィルムやシートの成形材料などとして有用である。
【0057】
本発明の組成物は、膜形成材として重合体粒子(A)を用いるほかは、従来公知の添加剤や配合割合が採用できる。たとえば、本発明の組成物は、重合体粒子(A)が10〜60質量%であることが好ましい。
【0058】
本発明の組成物が、顔料入りの塗料組成物である場合、例えば、重合体粒子(A)を含有する水性分散液に、あらかじめサンドミル等の顔料分散機で水、酸化チタンなどの顔料、消泡剤、顔料分散剤、pH調整剤等を分散した顔料分散体の所定量と造膜補助剤の所定量を撹拌混合したのち、増粘剤を所定量加えて混合し、その他必要な添加剤を適宜加えればよい。顔料を加えない水性塗料組成物を調製する場合は、重合体粒子(A)の水性分散液に、必要に応じ、水、造膜補助剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、その他所要の添加剤を加えて公知方法で撹拌混合すればよい。
【0059】
塗料用途の添加剤としては、必要に応じ、造膜補助剤、凍結防止剤、顔料、充填剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、つや消し剤、潤滑剤、上記の架橋剤(B)以外の架橋剤等を添加することもできる。
【0060】
本発明の塗装物品は、基材と、上記組成物を基材に塗装して得られる塗膜と、を有するものである。本発明の塗装物品は、上記組成物を塗装して得られる塗膜を表面に有することから、耐温水性に優れ、製膜時に塗膜が白濁することを抑制することができる。また、耐温水性が向上することから、温水にさらした後であっても、上記塗膜と基材との密着性が優れたものである。
【0061】
上記基材としては、後述する用途にあわせて適宜選択すればよい。例えば、窯業系基材、スレート基材等が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物を塗装する方法としては従来公知の方法と条件が採用できる。たとえば、基材にスプレーコーティングやロールコーティング、フローコーティング、ローラー、刷毛による塗装などの塗装方法により塗布して塗膜を形成した後、5〜200℃で乾燥する方法が挙げられる。このような方法によって、耐候性、光沢、透明性に優れ、発泡が少なく、耐温水性に富み、凍結と融解が繰り返されても容易に劣化することがない塗膜を形成することができる。
【0063】
本発明の組成物を塗装して得られる塗装物品は、幅広い用途で使用可能である。例えば、電気製品(電子レンジ、トースター、冷蔵庫、洗濯機、ヘアードライアー、テレビ、ビデオ、アンプ、ラジオ、電気ポット、炊飯機、ラジオカセット、カセットデッキ、コンパクトディスクプレーヤー、ビデオカメラなど)の内外装、エアーコンディショナーの室内機、室外機、吹き出口およびダクト、空気清浄機、暖房機などのエアーコンディショナーの内外装、蛍光燈、シャンデリア、反射板などの照明器具、家具、機械部品、装飾品、くし、めがねフレーム、天然繊維、合成繊維(糸状のもの、およびこれらから得られる織物)、事務機器(電話機、ファクシミリ、複写機(ロールを含む)、写真機、オーバーヘッドプロジェクター、実物投影機、時計、スライド映写機、机、本棚、ロッカー、書類棚、いす、ブックエンド、電子白板など)の内外装、自動車(ホイール、ドアミラー、モール、ドアのノブ、ナンバープレート、ハンドル、インスツルメンタルパネルなど)、あるいは厨房器具類(レンジフード、流し台、調理台、包丁、まな板、水道の蛇口、ガスレンジ、換気扇など)の塗装用として、間仕切り、バスユニット、シャッター、ブラインド、カーテンレール、アコーディオンカーテン、壁、天井、床などの屋内塗装用として、外装用としては外壁、手摺り、門扉、シャッターなどの一般住宅外装、ビル外装など、窯業系サイジング材、発泡コンクリートパネル、コンクリートパネル、アルミカーテンウォール、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩ビシート、PETフィルム、ポリカーボネート、アクリルフィルムなどの建築用外装材、サイディング材、窓ガラス、その他に広い用途を有する。
【0064】
本発明の組成物を基材に塗装して得られる塗装物品としては、特にサイディング材が好ましい。サイディング材としては、例えば、窯業系サイディング材、金属系サイディング材、プラスチック系サイディング材等が挙げられる。
特に、窯業系サイディング材では、耐水性、耐候性や外観の向上等のため、表面にアクリル系、アクリルシリコン系、アクリルウレタン系の塗膜が形成されることが多いが、本発明の組成物から得られる塗膜は、アクリル系の塗膜にも強固に接着し、耐温水性に優れ、更に透明性にも優れる。すなわち、本発明の塗装物品は、窯業系サイディング材として特に好適である。窯業系サイディング材は、例えば、窯業系基材と、上記組成物を窯業系基材に塗装して得られる塗膜とを有するものであり、窯業系基材は、表面がアクリル樹脂からなるものであってもよい。
【0065】
窯業系基材としては、従来公知のものを用いることができる。たとえばセメントを主とする水性スラリーの抄造により湿潤シートを得て、これを脱水プレス成形し、乾燥、養生硬化させたものや、セメント等の水性混練物を、押し出し成形、注型成形等することにより得られた成形体を硬化させたもの等、従来より公知の組成のものを使用することができる。窯業系基材は、成形体の表面にアクリル樹脂層を有するものであってもよい。
【実施例】
【0066】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
なお、特性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
【0068】
(1)フッ素含有量
イオンクロマトグラフ(DIONEX社製 ICS−1500 Ion Chromatography System)が内蔵された自動試料燃焼装置(三菱化学(株)製 AQF−100)を用いて測定した。
【0069】
(2)最低造膜温度
最低造膜温度(MFT)を熱勾配式MFT測定装置(日本理化機器(株)製)を用いて測定した。
【0070】
(3)平均粒子径
測定する乳濁液を純水で計測可能な濃度に希釈して試料とし、マイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)を用いて、室温にて動的光散乱法により測定を行った。得られたデータの個数平均径を粒子径とした。
【0071】
(4)耐温水性
得られた組成物をスレート板(予めプライマーとしてアクリル系塗料(日本合成化学(株)製のモビニール7151(商品名)を120g/mとなるように塗装し、室温で1日間乾燥させたもの)に90g/mとなるようにスプレー塗装し、35℃で3日間乾燥させ、被験塗板を作製した。
60℃の温水に14日間浸漬後取り出して塗膜に異常がないか目視で確認。
塗膜白化のないものを○、塗板の一部にわずかな白化がみられるものを△、塗板全体に白化がみられるものを×とした。
【0072】
(5)凍結融解性
得られた組成物をスレート板(予めプライマーとしてアクリル系塗料(日本合成化学(株)製のモビニール7151(商品名)を120g/mとなるように塗装し、室温で1日間乾燥させたもの)に90g/mとなるようにスプレー塗装し、35℃で3日間乾燥させ、被験塗板を作製した。
−20℃の気中に2時間、その後常温の水中に1.5時間を1サイクルとして、200サイクル行った。試験後塗膜の異常を目視にて確認。割れのないものを○、塗板の一部にわずかな割れがあるものを△、塗板全体に割れがみられるものを×とした。
【0073】
(6)耐ブロッキング性
アルミ板に6ミルアプリケーターで塗装し、100℃で3分加熱乾燥。乾燥後すぐ発泡ポリウレタンをのせて2.5kg/cmの加重をかけ40℃で保管した。16時間後、目視で塗膜にポリウレタンの跡が確認できなければ○、わずかについていれば△、くっきりとついていれば×とした。
【0074】
(7)透明性
得られた組成物をスレート板(予めプライマーとしてアクリル系塗料(日本合成化学(株)製のモビニール7151(商品名)を120g/mとなるように塗装し、室温で1日間乾燥させたもの)に90g/mとなるようにスプレー塗装し、35℃で3日間乾燥させ、被験塗板を作製した。
得られた塗膜の透明性を目視で確認し、塗膜の濁りのないものを○、塗膜に僅かな濁りがあるものを△、塗膜全体が白濁したものを×とした。
【0075】
合成例1
攪拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量0.5リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、含フッ素重合体のシード粒子の水性分散液としてVdF/TFE/CTFE共重合体(VdF/TFE/CTFE=72.1/14.9/13(モル%))の粒子の水性分散液(固形分濃度45.5質量%)199.68質量部に、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製)12.75質量部、イオン交換水35質量部を加え、充分に混合して水性分散液を調製した。
【0076】
つぎに攪拌下に水浴中で加温し内温が75℃にまで達したところで、メチルメタクリレート(MMA)70.26質量部、ブチルアクリレート(BA)16.83質量部、アクリル酸(AA)2.15質量部及びγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン0.893質量部の混合モノマーと、過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)14質量部とを3時間かけて連続して滴下し重合を進めた。(各モノマーの添加量はイオン交換水添加前の水性分散液199.68質量部に対する量である。)混合モノマーの滴下終了後、さらに80℃で2時間熟成を行った。熟成後反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、エマルゲン120(花王(株)製)の50質量%溶液を7.14質量部加え、トリエチルアミンでpH7.5になるまで中和を行ない、重合体粒子の水性分散体を得た(固形分濃度51質量%)。得られた重合体粒子のフッ素含有量は30質量%であり、粒子径は210nm、ガラス転移温度40℃、最低造膜温度は45℃であった。得られた水性分散体を水性分散体1とする。
【0077】
合成例2
攪拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量0.5リットルガラス製四つ口セパラブルフラスコに、含フッ素重合体シード粒子としてVdF/TFE/CTFE共重合体(=72.1/14.9/13(モル%))の粒子の水性分散液(固形分濃度45.5質量%)199.68質量部にニューコール707SF(日本乳化剤(株)製)12.75質量部、イオン交換水35質量部を加えて充分に混合して水性分散液を調製した。
【0078】
つぎに攪拌下に水浴中で加温し内温が75℃にまで達したところで、メチルメタクリレート(MMA)61.89質量部、ブチルアクリレート(BA)25.2質量部、アクリル酸(AA)2.15質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン0.893質量部の混合モノマーと過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)14質量部を3時間連続滴下し重合を進めた。(各モノマーの添加量はイオン交換水添加前の水性分散液199.68質量部に対する量である。)混合モノマー滴下終了後さらに80℃で2時間熟成を行った。熟成後反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、エマルゲン120(花王(株)製)の50質量%溶液を7.14質量部加え、トリエチルアミンでpH7.5になるまで中和を行ない、重合体粒子の水性分散体を得た(固形分濃度51質量%)。得られた重合体粒子のフッ素含有量は30質量%であり、粒子径は200nm、ガラス転移温度30℃、最低造膜温度は35℃であった。
得られた水性分散体を水性分散体2とする。
【0079】
合成例3
攪拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルガラス製四つ口セパラブルフラスコに、含フッ素重合体シード粒子としてVdF/TFE/CTFE共重合体(=72.1/14.9/13(モル%))の粒子の水性分散液(固形分濃度45.5質量%)591.62質量部にニューコール707SF(日本乳化剤(株)製)37.88質量部、イオン交換水100質量部を加えて充分に混合して水性分散液を調製した。
【0080】
つぎに攪拌下に水浴中で加温し内温が75℃にまで達したところで、メチルメタクリレート(MMA)174.10質量部、ブチルアクリレート(BA)73.31質量部、2ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)12.27質量部、アクリル酸(AA)6.50質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン2.60質量部の混合モノマーと過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)14質量部を3時間連続滴下し重合を進めた。(各モノマーの添加量はイオン交換水添加前の水性分散液591.62質量部に対する量である。)混合モノマー滴下終了後さらに80℃で2時間熟成を行った。熟成後反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、エマルゲン120(花王(株)製)の50質量%溶液を21.25質量部加え、トリエチルアミンでpH7.5になるまで中和を行ない、重合体粒子の水性分散体を得た(固形分濃度51質量%)。得られた重合体粒子のフッ素含有量は30質量%であり、粒子径は200nm、最低造膜温度は35℃であった。
得られた水性分散体を水性分散体3とする。
【0081】
合成例4
攪拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量0.5リットルガラス製四つ口セパラブルフラスコに、含フッ素重合体シード粒子としてVdF/TFE/CTFE共重合体(=72.1/14.9/13(モル%))の粒子の水性分散液(固形分濃度45.8質量%)280質量部にニューコール707SF(日本乳化剤(株)製)26.75質量部、イオン交換水35質量部を加えて充分に混合して水性分散液を調製した。
【0082】
つぎに攪拌下に水浴中で加温し内温が75℃にまで達したところで、メチルメタクリレート(MMA)100.16質量部、ブチルアクリレート(BA)23.97質量部、アクリル酸(AA)3.08質量部の混合モノマーと過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)20.3質量部を3時間連続滴下し重合を進めた。(各モノマーの添加量はイオン交換水添加前の水性分散液280質量部に対する量である。)混合モノマー滴下終了後さらに80℃で2時間熟成を行った。熟成後反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、エマルゲン120(花王(株)製)の50質量%溶液を7.14質量部加え、トリエチルアミンでpH7.5になるまで中和を行ない、重合体粒子の水性分散体を得た(固形分濃度51質量%)。得られた重合体粒子のフッ素含有量は30質量%であり、粒子径は200nm、最低造膜温度は45℃であった。
得られた水性分散体を水性分散体4とする。
【0083】
比較例1〜4
100質量部の水性分散体1〜4に、3.57質量部のジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を攪拌しながら加え、クリアー塗料1〜4を作成した。
【0084】
実施例1〜7
100質量部のクリアー塗料1〜3に対し、カルボジイミド基を有する架橋剤(カルボジライトE−02(商品名))、又は、オキサゾリン基を有する架橋剤(エポクロスWS−500)を添加し、混合して、重合体粒子及び架橋剤からなる組成物を得た。架橋剤の添加量を表1に示す。
【0085】
比較例5
100質量部のクリアー塗料4に対し、オキサゾリン基を有する架橋剤(エポクロスWS−500)を添加し、混合して、重合体粒子及び架橋剤からなる組成物を得た。架橋剤の添加量を表1に示す。
【0086】
得られた組成物を用いて試験を行なった結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の組成物は、透明性に優れ、また、耐温水性が優れることにより、基材との密着性、耐ブロッキング性に優れた塗膜を形成することができるため、塗料組成物として、特にサイディング材に用いられる塗料組成物として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素重合体の粒子をシード粒子とし、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体をシード重合して得られる重合体粒子(A)と、
アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤(B)と
からなることを特徴とする組成物。
【請求項2】
重合体粒子(A)は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量が、シード粒子に対して40〜400質量%であり、かつ
加水分解性シリル基含有単量体に基づく重合単位の含有量が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルに基づく重合単位の含有量に対して0.1〜2質量%である
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
シード粒子は、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンに基づく重合単位を含む含フッ素重合体の粒子である
請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
加水分解性シリル基含有単量体は、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の組成物。
【請求項5】
基材と、請求項1、2、3又は4記載の組成物を前記基材に塗装して得られる塗膜と、を有する塗装物品。
【請求項6】
サイディング材である請求項5記載の塗装物品。

【公開番号】特開2013−82925(P2013−82925A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219890(P2012−219890)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】