説明

組成物で材料を処理する装置及び方法

組成物で対象材料を処理する装置及び方法は、シラン含有材料及び炭化水素溶剤の組成物で対象材料を処理して、処理された材料を形成する材料処理セクションと、処理された材料が約7〜約8の範囲のpHを有するように処理された材料を中和する中和セクションとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に材料を処理することに関し、より詳細には、組成物で材料を処理する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の材料は、例えば、水、火及び/又は虫(例えばシロアリ、ある特定の種類のアリ、及び他の穿孔性害虫)により引き起こされる損傷を受けやすい。例えば水への曝露により、典型的には、様々な木製製品、紙、セルロース材料、絶縁体、新聞紙、乾式壁、織物及び建築用れんがのような多くの材料に、亀裂、反り、割れ、又は変色が生じる。水への曝露により、材料上にカビ及び白カビが増殖することもある。火への曝露により、典型的には、これらの材料に、焼け、焦げ、及び/又は黒焦げが生じる。材料が自然発火する場合には特にそうである。加えて、水、火及び/又は虫による損傷により、これらの材料に腐敗及び腐食が生じることが多い。典型的には、水、火及び/又は虫による損傷は、多大なる費用、労力及び不便をかけての、材料の損傷した部分の最終的な取替えを引き起こす。
【0003】
市場には、処理製品を塗布する対象である材料に対して、水、カビ、火及び/又は虫による損傷の可能性を防止又は低減すると考えられる様々な処理製品が存在する。これらの製品は、手作業で塗布され得る。しかし、これらの処理製品は、特に有効性と、費用面と、塗布の簡便性と、処理期間と、保護がもたらされる期間とに関して、完全に満足できるものではない。
【0004】
したがって、組成物で様々な材料を処理する装置を提供することが望ましい。組成物で様々な材料を処理する方法を提供することも望ましい。さらに、水の浸入、虫の侵入、カビ及び白カビの増殖、及び/又は火による損傷に対する様々な材料を処理する組成物を提供することが望ましい。加えて、様々な材料を処理して、紙のような材料を安定化させる組成物を提供することが望ましい。またさらには、組成物で紙を処理し、塩酸(HCl)のように、処理物からの副生成物を回収する装置及び方法を提供することが望ましい。組成物で紙を処理し、組成物での処理後に紙の酸性度を中和する装置及び方法を提供することも望ましい。さらに、組成物で紙を処理し、反応の完了度を増大させる装置及び方法を提供することが望ましい。したがって、当該技術分野において、これらの要望の少なくとも1つを満足させる装置及び方法を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
したがって、組成物で様々な材料を処理する新規な装置及び方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0006】
材料が水、カビ、白カビ、火及び/又は虫による損傷に耐性を有するように、組成物で様々な材料を処理する新規な装置及び方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0007】
前述の目的を実現するために、本発明は、組成物で対象材料を処理する装置である。この装置は材料処理セクションを含み、材料処理セクションは、シラン含有材料及び炭化水素溶剤を含む組成物で対象材料を処理して、処理された材料を形成する。この装置は中和セクションも含み、中和セクションは、処理された材料を、約7〜約8の範囲のpHを有するように中和する。
【0008】
付加的には、本発明は、組成物で対象材料を処理する方法である。この方法は、材料処理セクション及び中和セクションを有する装置を準備する工程を含む。この方法は、材料処理セクションにおいてシラン含有材料及び炭化水素溶剤を含む組成物で対象材料を処理して、処理された材料を形成する工程も含む。この方法は、処理された材料が約7〜約8の範囲のpHを有するように、中和セクションにおいて処理された材料を中和する工程も含む。
【0009】
本発明の1つの利点は、装置及び方法が、組成物で様々な材料を処理するために提供されることである。本発明の別の利点は、該組成物が、水の浸入及び損傷、カビ及び白カビ、虫の侵入、及び/又は火による損傷に対して効果的に、様々な材料を処理することである。本発明のさらに別の利点は、装置及び方法が紙のような様々な材料を処理し、HClのように、処理物からの副生成物を回収することである。本発明の付加的な利点は、装置及び方法が紙のような様々な材料を処理し、組成物での処理後に紙の酸性度を中和することである。本発明のさらに別の利点は、装置及び方法が組成物で紙のような様々な材料を処理し、処理された材料に対する組成物の反応の完了度を増大させることである。本発明のさらなる利点は、装置及び方法が組成物で様々な材料を処理し、且つ比較的安価なことである。また本発明のさらなる利点は、装置及び方法が組成物で様々な材料を処理し、且つ比較的容易に塗布できることである。本発明のまたさらなる利点は、装置及び方法が組成物で様々な材料を処理し、且つ比較的処理時間が短いことである。
【0010】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付した図面と共に提供される以下の説明を読んだ後にはより良く理解されるので、容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】組成物で様々な材料を処理するための本発明による装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面、特に図1を参照して、組成物で様々な対象材料を処理するための、本発明による装置10の一実施形態が示されている。本発明の組成物は、対象材料を処理し、水、白カビ、カビ、火及び/又は虫が挙げられるがこれらに限定されない様々な損傷の原因に対する安定性及び/又は保護を与えるために、使用される。使用される場合の「処理する」という用語は、水、白カビ、カビ、火及び/又は虫が挙げられるがこれらに限定されないいずれかの原因により引き起こされる損傷からの安定化及び/又は保護のために対象材料を処理することを意味する。本明細書で使用する場合の「対象材料」という用語は、木製製品(すなわち任意の量の木を含有する製品)、セルロース材料(例えば織物、綿、布等)、紙(例えば段ボール紙、屋根用紙、絶縁体をコーティングに使用した紙、シートロック紙、新聞紙、紙タオル等)、絶縁体、乾式壁、岩、建築材料(例えばれんが)及び砂糖が挙げられるがこれらに限定されない、本発明の組成物で処理され得るいずれかの材料又は物体を含むことを意味する。組成物は対象材料に浸透することを理解すべきである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つのシラン含有材料と、炭化水素溶剤のようなキャリアとを含んでいる。シラン含有材料は、防水のために水分の侵入を防止する。虫の侵入を防止するために、組成物は、ホウ素含有材料を含む場合がある。燃焼を防止するために、組成物は、耐火性材料を含む場合がある。
【0014】
ホウ素含有材料は、ホウ酸無水物(化学式:B23)の形態であることが好ましいが、他の形態のホウ素含有材料も許容される。非限定的な例示として、ホウ砂(化学式:Na247・10H2O)及び八ホウ酸二ナトリウム四水和物(化学式:Na2813.4H2O)が同様に使用され得る。処理された材料の総重量を基準としてホウ素を0.1重量%配合することで、効果的な真菌耐性及び耐火性を得ることができる。しかし、木食い虫の侵入(例えばアリ及びシロアリによる)を防止するために、1重量%〜2重量%のホウ素を配合することが一般的に必要とされる。台湾シロアリのような、より問題のある虫のために、7重量%のホウ素を配合することが一般的に必要とされる。したがって本発明は、少なくとも約0.1重量%〜少なくとも約7重量%のレベルで材料中にホウ素を導入し、且つそれを封入することにより、環境因子(例えば雨)が、処理された材料の内部からそれを浸出させることを防止する組成物を提供する。
【0015】
シランは、シリコン系材料の1つのクラス、すなわち一般式SiN2N+2を有する(Nは1以上の整数である)、直鎖状飽和パラフィン炭化水素であるアルカンの類縁体と一般的に定義される。このシラン含有材料は、トリクロロメチルシラン(化学式:CH3Cl3Si)の形態であることが好ましいが、他の形態のシラン含有材料も許容される。本発明を実施するのに有用な他のシラン含有材料の例は、以下を含むがこれらに限定されない:
(クロロメチル)トリクロロシラン、
[3−(ヘプタフルオロイソプロキシ)プロピル]トリクロロシラン、
1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、
3−ブロモプロピルトリクロロシラン、
アリルブロモジメチルシラン、
アリルトリクロロシラン、
ブロモメチルクロロジメチルシラン、
ブロモトリメチルシラン、
クロロ(クロロメチル)ジメチルシラン、
クロロジイソプロピルオクチルシラン、
クロロジイソプロピルシラン、
クロロジメチルエチルシラン、
クロロジメチルフェニルシラン、
クロロジメチルシラン、
クロロジフェニルメチルシラン、
クロロトリエチルシラン、
クロロトリメチルシラン、
ジクロロジメチルシラン、
ジクロロメチルシラン、
ジクロロメチルビニルシラン、
ジフェニルジクロロシラン、
ジ−t−ブチルクロロシラン、
エチルトリクロロシラン、
ヨードトリメチルシラン、
ペンチルトリクロロシラン、
フェニルトリクロロシラン、
トリクロロ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、
トリクロロ(ジクロロメチル)シラン、
トリクロロビニルシラン。
【0016】
キャリアは、炭化水素溶剤、好ましくは炭化水素アルカンの形態であるが、他の炭化水素溶剤も許容される。例えば、室温で液体である炭化水素が許容される。これらの炭化水素の例は、ペンタン、ヘキサン及びヘプタンを含むがこれらに限定されない。加えて、幾つかの用途については、低級炭化水素が使用され得る。
【0017】
一実施形態では、シラン含有材料及び炭化水素溶剤は、異なる沸点又は異なる範囲の沸点のいずれかを有し、液体組成物を形成する液体である。液体形態の組成物は、その後、材料を処理するために塗布される。別の実施形態では、シラン含有材料及び炭化水素溶剤は、同じか又は同じ範囲のいずれかである沸点を有する。この実施形態では、シラン含有材料及び炭化水素溶剤は、ガス状形態又は蒸気形態で蒸発する又は押出される。蒸気形態の組成物は、その後、材料を処理するために塗布される。
【0018】
図1を参照して、装置10の一実施形態は、組成物セクション12と、供給セクション14と、材料処理セクション16と、除去セクション18と、中和セクション20と、乾燥セクション22と、収集セクション24とを備えている。組成物セクション12において、装置10は、少なくとも1つのタンクを備えている。少なくとも1つのタンクは、対象材料に塗布される組成物又は組成物の1つの成分のいずれかを保有している。例示された実施形態では、装置10は、シラン含有材料のような組成物の1つの成分を保有するための第1のタンク25と、炭化水素溶剤のような組成物の別の成分を保有するための第2のタンク26とを備えている。一実施形態では、シラン含有材料はメチルトリクロロシラン(MTS)であり、炭化水素溶剤はペンタンである。装置10は、第2のタンク26中の炭化水素溶剤の温度を制御するために、第2のタンク26に電気的に接続される温度制御器のような制御器27も備えている。組成物は、少なくともシラン含有材料及び炭化水素溶剤から形成されることを理解すべきである。該タンクが、タンクの温度を変化させる加熱器のような(図示しない)機器を含むことも理解すべきである。
【0019】
組成物セクション12において、装置10は、第1のタンク25に流体的に接続された流量制御弁28を備えている。流量制御弁28は、0〜1.1m3/hr(0〜5GPM)のような所定の流量に設定され得る。組成物セクション12において、装置10は、第2のタンク26に流体的に接続された流量制御弁29を備えている。流量制御弁28は、0〜1.1m3/hr(0〜5GPM)のような所定の流量に設定され得る。装置10は、成分の所望の百分率を設定するために、流量制御弁28と流量制御弁29とに電気的に接続された流量制御器のような制御器30も備えている。装置10は、炭化水素溶剤とシラン含有材料とを共に混合して組成物を形成する混合器32を、流量制御弁28の下流にさらに備えている。混合器32は静的タイプのものである。組成物が一度形成されると、その後、組成物は、装置10の材料処理セクション16に送達されることを理解すべきである。
【0020】
供給セクション14において、装置10は、対象材料を材料処理セクション16に供給するための供給器34を備えている。例示される実施形態では、処理される対象材料は紙であり、供給器34は、ブレーキを有するバックスタンドである。供給速度は、記載された巻取り器のような収集器62により制御される。装置10は、所定の温度まで材料を加熱する加熱器36を備えている。一実施形態では、加熱器36は、その全体で炭化水素溶剤の沸点近くの温度まで紙を加熱する、少なくとも1つの加熱されたローラである。加熱器36は、加熱器36を制御する制御器30に接続されることを理解すべきである。
【0021】
材料処理セクション16において、装置10は、対象材料に組成物を塗布するための少なくとも1つの塗布器38を備えている。一実施形態では、組成物は液体タイプのものであり、塗布器38は、対象材料に塗布される液体組成物を受容及び含有する浸漬タンクのような液体タイプのものである。この実施形態では、加熱された対象材料は、一定レベルの組成物を有する浸漬タンクを通過する。その一定レベルは、装置10を通る対象材料の速度と、浸漬タンクへの組成物の流量とにより制御される。液体組成物を使用する別の実施形態では、塗布器38は、組成物を受容及び塗布する流体スロットダイである。加熱された対象材料は、スロットダイの上を通り、材料の飽和は、スロット幅と組成物の圧力とにより制御される。別の実施形態では、組成物はガス状形態又は蒸気形態であり、塗布器38は、蒸気組成物を対象材料に塗布する蒸気タイプのものである。対象材料は、組成物で完全に飽和しなければならないことを理解すべきである。材料処理セクション16は、対象材料を塗布器38に通過させるための1つ又は複数のローラ39を含み得ることも理解すべきである。浸漬タンク及びスロットダイは従来のものであり、市販されていることも理解すべきである。
【0022】
材料処理セクション16において、装置10は、処理チャンバ40を備えている。処理チャンバ40は、筺体により形成されている。処理チャンバ40は、乾燥雰囲気に維持されなければならない。一実施形態では、処理チャンバ40は、窒素及び/又は乾燥空気のような乾燥不活性ガスを使用することにより乾燥状態が維持される。例示された実施形態では、処理チャンバ40は、窒素のような供給源41に接続されている。この例の場合、窒素は、0.08Sm3/hr(3SCFH)の流量を有している。装置10は、処理チャンバ40の下流に真空チャンバ42も備えている。真空チャンバ42は、筺体により形成されている。真空チャンバ42において、処理された材料が通過し、組成物が対象材料に浸透することを確実にし、且つ炭化水素溶剤蒸気及び/又は塩酸(HCl)蒸気のような組成物の過剰成分及び/又は副生成物をそれぞれ除去する。HCl蒸気は、送風器49により、記載されたHClスクラバ50へ排出される。対象材料が飽和した後、処理された材料は、真空チャンバ42にわたって供給され、組成物が対象材料に完全に浸透することを確実にし、且つ炭化水素溶剤及び塩酸(HCl)の除去を助けることを理解すべきである。
【0023】
除去セクション18において、処理された材料から炭化水素溶剤を洗い流さなければならず、処理された材料中の水分は低減しなければならない。装置10は、少なくとも1つの乾燥チャンバ44を備えている。乾燥チャンバ44において、処理された材料の温度は、炭化水素溶剤の沸点を超えて上昇する。乾燥チャンバ44は、筺体により形成され、乾燥器セクション46及びオーブンセクション48を備えている。一実施形態では、装置10は、乾燥器セクション46中に、少なくとも1つのスチームロール、好ましくは複数のスチームロール50を備えている。スチームロール50は、飽和スチームの供給源52に配管により接続されている。一実施形態では、供給源52は、スチームボイラーのようなスチーム発生器であり、スチーム圧制御器のような制御器53により制御される。スチームロール50は、スチームロール50に必要な熱を生成するために、飽和スチーム又は熱水の供給源に接続されることを理解すべきである。
【0024】
乾燥チャンバ44において、乾燥器セクション46は、不活性雰囲気を有さなければならない。これは、立上げ時及び停止時に窒素のような不活性ガスの組合せを使用することにより、且つ操作時に爆発上限(UEL)を超える炭化水素溶剤の蒸気レベルを維持することにより達成される。オーブンセクション48において、加熱された乾燥空気が、処理された材料中の水分を低減する。オーブンセクション48は、高温乾燥空気の供給源54と、高温乾燥空気を加熱する空気加熱器55とに配管により接続されている。一実施形態では、空気加熱器55は、空気温度制御器のような制御器56により制御される。乾燥チャンバ44は、処理された材料を除去セクション18に通過させる1つ又は複数のロール50を備え得ることを理解すべきである。
【0025】
除去セクション18において、HCl蒸気は、反応の副生成物として形成される。過剰の炭化水素溶剤及び/又はHClは、乾燥チャンバ44及び/又は真空チャンバ42においてわずかな陰圧を維持することにより除去される。除去された炭化水素溶剤及びHClは、蒸気の流れからHClを除去するために、HClスクラバ57に配管を通じて供給される。HClは、HClスクラバ57から回収され、その後の移行のために濃縮される。炭化水素溶剤は、蒸気の流れから炭化水素溶剤を除去するために、溶剤回収システム58を通じて供給される。炭化水素溶剤は、溶剤回収システム58から回収され、組成物を製造するために使用される。
【0026】
中和セクション20において、処理された材料は、炭化水素溶剤を含まないが、いくらかの未反応のシラン含有材料と共に、処理された材料中において捕捉されたいくらかの液体形態のHCl及び/又は塩化物を含有し得る。一実施形態では、装置10は、中和チャンバ60を備えている。中和チャンバ60は、筺体により形成され、加熱された乾燥空気の供給源52に接続されている。中和チャンバ60において、処理された材料は、少なくとも1つの、好ましくは複数の段階でさらに処理される。第1段階において、処理された材料は、いずれかの潜在的なシラン含有材料を除去するために、且つ処理された材料を加熱して反応を完了まで駆動するために、供給源52からのスチームで水和される。装置10において、スチームは、塗布器62により、処理された材料に塗布される。第2段階において、処理された材料は中和される。例示された実施形態では、処理された材料は、供給源64からの塩基含有材料で中和される。好ましくは塩基含有材料は、苛性液体又はガス(強度は、材料中に残存するHCl/塩化物に依存する)である。装置10において、塩基含有材料は、塗布器66による直接の接触を通じて処理された材料に塗布され、又は塗布器62からのスチームの流れにおいて送達される。一実施形態では、塩基含有材料は、中和チャンバ60において処理された材料に、アンモニア処理したスチームを送達するための、スチームに添加されるアンモニア(NH3)である。過剰の塩基含有蒸気は、送風器68により大気中に排出される。中和セクション20は、対象材料を中和チャンバ60に通過させるための1つ又は複数のローラ70を含み得ることを理解すべきである。処理された材料を水和することと、処理された材料中においていずれかの潜在的なシラン含有材料とスチームとを反応させることとに加えて、スチームは、処理された材料の温度を上昇させ、反応完了の割合を増大させることも理解すべきである。塩基含有材料は、処理された材料中のいずれかの潜在的なHClを中和し、処理された材料のpHレベルを約7〜8とすることを理解すべきである。処理された材料はその後、装置10の乾燥セクション22に入り、顧客向けの仕様まで水分が低減されることをさらに理解すべきである。乾燥セクション22の後、処理された材料は、収集セクション24で収集され、試験され、顧客への出荷用に調製されることをまたさらに理解すべきである。
【0027】
乾燥セクション22において、装置10は、筺体により形成された乾燥チャンバ72を備えている。一実施形態では、装置10は、乾燥チャンバ72中に、少なくとも1つのスチームロール、好ましくは複数のスチームロール74を備えている。スチームロール74は、配管により飽和スチームの供給源52に接続されている。スチームロール74は、スチームロール74に必要な熱を生成するために、飽和スチーム又は熱水の供給源に接続されることを理解すべきである。乾燥セクション22は、対象材料を乾燥チャンバ72に通過させるための1つ又は複数のローラ76を備え得ることも理解すべきである。
【0028】
収集セクション24において、装置10は、処理された材料を収集するための収集器78を備えている。一実施形態では、収集器78は巻取り器である。収集器78は、供給速度を制御するための供給速度制御器のような制御器80に接続されている。処理された材料は、収集器78から除去され、試験され、顧客への出荷用に調製されることを理解すべきである。
【0029】
装置10及び装置10のためのプロセス条件は、制御器27と、制御器30と、制御器53と、制御器56と、制御器80とにより制御される。一実施形態では、対象材料は紙である。プロセス条件及び範囲は以下の通りである。
プロセス設定
材料速度 : 0.051〜1.02m/sec(10〜200フィート/min)
組成物流量 : 0.2〜0.9m3/hr(1〜4ガロン/分)
スチーム圧力 : 0.14〜1.04MPaG(20〜150PSIG)
ポンプ速度 : 0Hz〜60Hz
組成物圧力 : 0〜0.41MPaG(0〜60PSIG)
スクラバ送風器設定点 : 0Hz〜60Hz
熱チャンバ真空 : 0〜2(w.c.で)
高温空気温度 SP/PV : 100〜300/100〜300
高温空気送風器設定点 : 0Hz〜60Hz
飽和真空チャンバ SP : 0〜2(w.c.で)
装置温度 : 37.8〜121℃(華氏100〜250度)
組成物温度 TK/PM : −18〜43.3℃/−18〜43.3℃
(華氏0〜110度/華氏0〜110度)
水和スチーム PSI : 0〜1.04MPaG(0PSIG〜150PSIG)
水和空気 PSI : 0〜0.35MPaG(0PSIG〜50PSIG)
水和/中和(Neut)真空 : 0〜0.85Sm3/hr
(0SCFH〜30SCFH)
真空(最終) : 0〜30(w.c.で)
温度 最終真空チャンバ : 37.8〜121℃(華氏100〜250度)
紙 水分(最初) : 0%〜12%
紙 水分(最終) : 0%〜10%
【0030】
操作において、炭化水素溶剤は、第2のタンク26中に投入され、該溶剤の沸点よりわずかに低い所定の温度まで、(図示しない)加熱器により加熱される。第2のタンク26中の炭化水素溶剤の圧力は、所定の圧力に設定される。一実施形態では、炭化水素溶剤はペンタンであり、ペンタンは第2のタンク26中に投入され、沸点(大気圧での温度)よりも2.8〜5.6℃(華氏5〜10度)低い温度に加熱される。第2のタンク26中のペンタンの圧力は、0.10〜0.28MPaG(15〜40PSIG)に設定される。流量制御弁29は、0〜1.1m3/hr(0〜5GPM)に設定される(対象材料に依存する)。制御器30は、対象材料により必要とされる、MTSのような所望のシラン含有材料の百分率(0.1体積%〜30体積%)に設定される。MTSの流れは、制御器30及び制御弁28により制御され、ペンタンの流れに混合され、静的混合器32を通り、組成物を形成する。組成物は、その後、装置10の材料処理セクション16における塗布器38に送達される。
【0031】
対象材料は、供給器34上に装荷される。例示された実施形態では、対象材料は紙であり、紙のロールが供給器34上に装荷され、装置10を通って収集器78まで供給される。制御器80は収集器78に接続され、供給器34は所望の速度で紙を供給して塗布器38に通す。紙が材料処理セクション16を通り、除去セクション18に移動する際に、塗布器38は、組成物を紙に塗布する。過剰のペンタンと、材料処理セクション16における反応の副生成物HClとは、HClスクラバ57及び溶剤回収システム58へ流れ、回収される。
【0032】
処理後の紙は、除去セクション18に移動する。除去セクション18において、供給源54からの加熱された乾燥空気は、乾燥セクションを加熱するために使用され、熱水又はスチームが供給源52からスチームロール50まで塗布されて、紙を通過する熱を生成する。これが起こると、除去セクション18における過剰のペンタンと副生成物HClとは、それぞれ、HClスクラバ57及び溶剤回収システム58へ流れ、回収される。紙は、中和セクション20へ移動する。
【0033】
中和セクション20において、紙は、直接のスチームで再び加熱される。スチームは、中和剤(塩基/苛性の液体又はガス)を含んでもよい。供給源52からの加熱された乾燥空気と、水と、アンモニアとは、紙を通過して紙の酸性度を中和又は低減し且つpHレベルを約7〜8に回復させるスチームを製造するために、中和チャンバ60に塗布される。紙を水和することと、処理された材料中におけるいずれかの潜在的なシラン含有材料とスチームとを反応させることとに加え、スチームは、紙の温度を上昇させ、反応完了の割合を増大させる。スチームは、紙の温度を上昇させ、紙の反応及び水和の割合を増大させ、それにより、処理後の紙におけるいずれかの潜在的なシラン含有材料を反応させることを理解すべきである。中和剤は、中和セクション20におけるスチームとは別に塗布され得ることも理解すべきである。紙は、そのpHレベルを約7〜約8に回復させるために中和されることをさらに理解すべきである。
【0034】
乾燥セクション22において、紙は再び加熱される。供給源52からの加熱された乾燥空気及び水は、紙を通過するスチームを製造するために適用される。紙は、その後、収集器78上でロール状に収集される。装置10の乾燥チャンバ72は、処理された材料における水分を、顧客向けの仕様まで低減することを理解すべきである。乾燥チャンバ72の後、処理された材料は、収集セクション24の収集器78で収集され、試験され、顧客への出荷用に調製されることも理解すべきである。プロセスが生産レベルまでスケールアップされるにつれて、プロセスパラメータ(例えば速度、流速等)は増大することをさらに理解すべきである。
【0035】
別の実施形態では、第1のタンク25中のシラン含有材料と、第2のタンク26中の炭化水素溶剤とは、同じか又は同じ範囲のいずれかである沸点を有する。この実施形態では、シラン含有材料及び炭化水素溶剤は、タンク25及び26のための(図示しない)加熱器により、ガス状形態又は蒸気形態で蒸発する又は押出される。蒸気形態の組成物は、その後、材料を処理するために塗布器38により塗布される。蒸気形態の組成物は、液体形態の組成物とは対照的に、紙、布等のような材料に効果的に浸透させるために使用することを理解すべきである。
【0036】
本発明は、例示的に記載されている。使用される用語は、限定ではなく説明の表現の性質を帯びていることが意図されることを理解すべきである。
【0037】
本発明の修正形態及び変形形態の多くは、上記教示に照らして考え得るものである。したがって本発明は、具体的に説明した形態以外の形態で実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物でセルロース材料を処理する装置であって、
シラン含有材料及び炭化水素溶剤を含む組成物でセルロース材料を処理して、処理された材料を形成する材料処理セクションと、
前記処理された材料が約7〜約8の範囲のpHを有するように、該処理された材料を中和する中和セクションと
を備える装置。
【請求項2】
水分と、炭化水素溶剤と、反応の副生成物とのうちの少なくとも1つを、前記処理された材料から除去する除去セクションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記セルロース材料を前記材料処理セクションに供給する供給セクションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記中和セクションの後に、前記処理された材料から水分を除去する乾燥セクションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記除去セクションから前記処理された材料を収集する収集セクションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記組成物を形成する組成物セクションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記材料処理セクションは、前記組成物を前記処理された材料に塗布する塗布器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記塗布器は、液体組成物を前記セルロース材料に塗布する液体塗布器である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記塗布器は、蒸気組成物を前記セルロース材料に塗布する蒸気塗布器である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記中和セクションは、塩基含有材料を前記処理された材料に塗布して、前記処理された材料を中和する中和チャンバを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記除去セクションは、少なくとも1つのスチームローラを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項12】
前記除去セクションは、乾燥チャンバと、加熱された乾燥空気の供給源とを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記供給セクションは、前記セルロース材料のロールを前記材料処理セクションに供給する供給器を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項14】
前記乾燥セクションは、乾燥チャンバと、該乾燥チャンバ内の少なくとも1つのスチームローラとを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項15】
前記収集セクションは、前記処理された材料を収集する収集器を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項16】
組成物でセルロース材料を処理する方法であって、
材料処理セクション及び中和セクションを有する装置を準備する工程と、
前記材料処理セクションにおいて、シラン含有材料及び炭化水素溶剤を含む組成物でセルロース材料を処理し、処理された材料を形成する工程と、
前記中和セクションにおいて、前記処理された材料が約7〜約8の範囲のpHを有するように、前記処理された材料を中和する工程と
を含む方法。
【請求項17】
前記装置の除去セクションにおいて、前記処理された材料から、水分と、炭化水素溶剤と、反応の副生成物とのうちの少なくとも1つを除去する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記装置のために供給セクションを準備し、前記セルロース材料を前記材料処理セクションに供給する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記装置のために収集セクションを準備し、前記処理された材料を収集する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記装置のために乾燥セクションを準備し、前記処理された材料を乾燥する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記装置のために組成物セクションを準備し、前記組成物を形成する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記材料処理セクションにおいて、塗布器で前記組成物を前記セルロース材料に塗布する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記塗布する工程が、液体塗布器で液体組成物を前記セルロース材料に塗布することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記塗布する工程が、蒸気塗布器で蒸気組成物を前記セルロース材料に塗布することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記中和する工程が、前記中和セクションの中和チャンバにおいて、前記処理された材料にスチームを塗布することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記中和する工程が、前記中和セクションの中和チャンバにおいて、塩基含有材料を前記処理された材料に塗布して、前記処理された材料を中和することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記供給セクションは、前記セルロース材料のロールを前記材料処理セクションに供給する供給器を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記収集セクションにおける収集器で、前記処理された材料を収集する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記装置の除去セクションにおいて、前記処理された材料に対して、過剰の炭化水素溶剤を除去する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記装置の除去セクションにおいて、前記処理された材料に対して、反応の副生成物を除去する工程を含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530033(P2010−530033A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507461(P2010−507461)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/005912
【国際公開番号】WO2008/140743
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509309385)ウッドホールディングズ・エンヴァイロンメンタル・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】WOODHOLDINGS ENVIRONMENTAL, INC.
【住所又は居所原語表記】2325 Colorow Road, Edwards, CO 81632, United States of America
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】