説明

組成物における黄色形成および過酸化物形成を阻害する方法

本発明は、組成物における黄色形成または過酸化物形成を防ぐか、または遅らせる(すなわち阻害する)方法に関する。本発明は、組成物における黄色の量もしくは過酸化物の量を低下または減少させる方法にも関する。さらに具体的に言うと、本発明は、本発明の方法における抗酸化剤、脱酸素剤、pH、キレート剤、および/または少なくとも2つの因子の使用に関する。本発明は、組成物における黄色形成速度または過酸化物形成速度を予測する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医薬用タンパク質製剤の分野に関する。具体的には、本発明は、組成物における黄色形成を防ぐか、または遅らせる(すなわち、阻害する)方法に関する。本発明は、組成物における黄色の量を低下または減少させる方法にも関する。本発明は、組成物における黄色形成の速度を予測することにも関する。一実施形態において、本発明の方法は、黄色形成を阻害するか、または低下させるために、抗酸化剤、脱酸素剤、pH、および/またはキレート剤の使用を含む。別の実施形態において、本発明の方法は、黄色形成を阻害するか、または低下させるために、2つ以上の因子の使用を含む。別の実施形態において、本発明は、その組成物中の2つ以上の因子の存在に基づいて、組成物における黄色形成の速度を予測する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、スクシネート、アセテート、およびトリスは、医薬用タンパク質製剤の緩衝液として一般に用いられている。ヒスチジンは、バイオ医薬品に典型的に使用されるpH範囲、pH5.5〜7.4において優れた緩衝能を有し、分解に対して、一部のタンパク質を安定化させることがわかっている。液剤の緩衝液としてヒスチジンを使用することの欠点は、保管中に透明から黄色に色が変わるその性質である。黄色の形成にも関わらず、多数の医薬用タンパク質製剤が、NORDITROPIN(登録商標)、XOLAIR(登録商標)、KEPIVANCE(登録商標)、RECOMBINATE(商標)、KOGENATE(登録商標)、SYNAGIS(登録商標)、RAPTIVA(登録商標)、およびHERCEPTIN(登録商標)を含むが、これらに限定されない緩衝液としてヒスチジンを使用する。これらの医薬用タンパク質製剤のうち、RECOMBINATE(商標)、KOGENATE(登録商標)、RAPTIVA(登録商標)、およびHERCEPTIN(登録商標)の処方情報が、凍結乾燥または再構成したタンパク質製剤は淡黄色であり得ると述べている。さらに、ヨーロッパ薬局方のヒスチジンの研究書が、ヒスチジンは特定の色度標準を満たす必要があるが、無色である必要はないと示す。
【0003】
少なくともいくぶんか黄色に着色しているヒスチジン緩衝液を含む、多くのFDAに承認された市販のタンパク質製剤は、黄色形成がこれらのバイオ医薬品の有効性に害を及ぼすわけでなく、または有効性の喪失を示すわけでもないことを意味すると考えられる。しかし、いくつかの産業、例えば、織物産業、塗装産業、およびプラスチック産業において、黄色形成は、焦げ、汚れ、および一般の製品劣化と関連する。さらに、化学分野において、純粋である時に特に透明か白色である化合物、例えば、ラパマイシンなどは、純粋ではない時に黄色に着色し得る。例えば、米国特許第7,384,953号を参照されたい。
【0004】
少なくとも1グループは、ヒスチジン緩衝液を含むタンパク質製剤の効力の喪失の加速が酸化に起因したと主張している。Subramanian,M.,et al.,AAPS PharmSci.2001:3(S1)1884,AAPSデンバーにおけるポスター発表を参照されたい。Subramanian,M.らは、ヒスチジン緩衝液およびTWEEN(登録商標)80で製剤化したヒト化IgG2モノクローナル抗体の効力の喪失の加速を分析し、この効力の喪失が、ヒスチジン緩衝液およびこのモノクローナル抗体の両方の過酸化物による酸化に起因することを見出した。さらに、Subramanianらは、フリーラジカルおよび4(5)−イミダゾールカルボキシアルデヒド(4(5)−ICA)を含むヒスチジン酸化生成物が、効力の喪失の加速の一因であることを見出した。Subramanian,M.らは、ヒスチジン酸化生成物4(5)−ICAの形成に対するO、N、およびEDTAの影響を調べ、Nは4(5)−ICAの形成を防ぐが、Oは4(5)−ICAの形成を加速させ、EDTAは4(5)−ICAの形成に影響しないことを見出した。しかし、Subramanian,M.らは、ヒスチジン緩衝液の酸化と黄色形成との間のいかなる関係も開示せず、ヒスチジンなどの保管中に黄色になる緩衝液の黄色形成を防ぐか、または低下させる方法も開示しなかった。したがって、タンパク質製剤に使用するヒスチジン緩衝液などの緩衝液において、黄色形成を防ぐ、遅らせる、または低下させる方法の(かかる方法が、美的価値のためだけに実行されるとしても)必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、組成物における黄色形成を防ぐか、または低下させる新しい有用な方法を対象にする。これらの方法は、黄色形成を防ぐか、または低下させるために、抗酸化剤、脱酸素剤、または少なくとも2つの因子の使用を含む。本発明は、組成物における黄色形成の速度を予測する新しい有用な方法も対象にする。
【0006】
一実施形態において、本発明は、組成物における黄色形成を防ぐか、または遅くする(すなわち、阻害する)方法を提供し、この方法は、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の使用を含む。別の実施形態において、本発明は、組成物における黄色の量を低下または減少させる方法を提供し、この方法は、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の使用を含む。特定の実施形態において、本発明の方法に適用される組成物は、緩衝溶液、タンパク質製剤、タンパク質を含む溶液、および抗体を含む溶液などの溶液または製剤を含む。
【0007】
特定の実施形態において、これらの組成物は、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、スクシネート、トリス、アセテート、またはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせを含む。好ましい実施形態において、この組成物はヒスチジンを含む。別の実施形態において、この組成物は、ポリソルベート化合物、ポリソルベート20、ポリソルベート80、NaCl、ショ糖、グリセロール、アルギニン、グリシン、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ラクトース、ソルビトール、ポロキサマー、グリコール、CaCl、イミダゾール、ベンジルアルコール、尿素、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グルタメートまたはグルタミン酸、フェニルアラニン、クレゾール、またはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明の方法で使用する抗酸化剤または脱酸素剤は、メチオニン、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、パルミチン酸レチニル、システイン、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、チオグリコール酸、メタ重亜硫酸、またはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせなどの化合物である。好ましい実施形態において、抗酸化剤または脱酸素剤はメチオニンである。いくつかの実施形態において、この抗酸化剤または脱酸素剤の濃度は、約0.0001mM〜約10000mM、約0.001mM〜約1000mM、約0.01mM〜約100mM、および約0.1mM〜約10mMの範囲である。
【0009】
本発明の実施形態は、組成物における黄色形成を阻害するか、または低下させるキレート剤の使用も含む。キレート剤は当業で知られており、例えば、溶液から微量金属を除去するために一般に使用される。例示的なキレート剤として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール四酢酸)、アスコルビン酸、イミノジアセテート、イミノジコハク酸四ナトリウム、クエン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、EDDS(エチレンジアミンジコハク酸)、DTPMP・Na(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)七ナトリウム塩)、リンゴ酸、NTA(ニトリロ三酢酸)、(メチオニンを含むが、これに限定されない)無極性アミノ酸、シュウ酸、リン酸、(アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、リシン、およびオルニチンを含む、これに限定されない)極性アミノ酸、(デスフェリオキサミンBを含むが、これに限定されない)シデロホア、ならびにコハク酸が挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤には、加水分解されたウールまたはキレート樹脂、例えば、CHELEX(登録商標)20樹脂またはCHELEX(登録商標)100樹脂(例えば、Bio−Rad Laboratories Hercules,CA,USA)などの溶液処理に用いられるキレート剤も含まれ得るが、これらに限定されない。
【0010】
別の実施形態において、本発明の方法は、この組成物の酸素への曝露を減少させることを含む。いくつかの実施形態において、この組成物の酸素への曝露の減少を、この組成物の表面と容器の封止部との間のヘッドスペースのガス含有量を低下させること、周囲酸素含有量を低下させること、この組成物を窒素で覆うこと、この組成物に窒素を散布すること、またはこれらのうちの任意の組み合わせなどの手段によって実施する。別の実施形態において、この組成物の酸素への曝露の減少を、ヘッドスペースのガスを酸素以外のガスで置換することによって行う。好ましい実施形態において、このヘッドスペースのガスを(例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンであるが、これらに限定されない)1種類以上の不活性ガスで置換する。
【0011】
一実施形態において、本発明の方法は、組成物のpHを調整することを含む。いくつかの実施形態において、この調整されたpHは、約7.5〜約7.0、約7.0〜約6.5、約6.0未満、約5.5未満、および約5.0未満の範囲である。
【0012】
別の実施形態において、本発明の方法は、組成物が光に曝されることから保護するために、容器の着色または包装の使用を含む。一実施形態において、本発明の方法は、組成物が光に曝されることから保護するために、容器の着色および包装の使用を含む。
【0013】
本発明は、組成物における黄色形成を防ぐか、または遅らせる(すなわち、阻害する)方法を提供し、この方法は、黄色形成を阻害するために少なくとも2つの因子の使用を含む。本発明は、組成物における黄色の量を低下または減少させる方法も提供し、この方法は、黄色形成を低下または減少させるために少なくとも2つの因子の使用を含む。一実施形態において、本発明の方法を、緩衝溶液、タンパク質製剤、タンパク質を含む溶液、および抗体を含む溶液などの溶液または製剤を含む組成物に適用する。
【0014】
いくつかの実施形態において、この少なくとも2つの因子の使用には、メチオニン、酸素曝露の減少、NaCl、ポリソルベート化合物、ポリソルベート20、ポリソルベート80、アルギニン、約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、約6.5のpH、約7.0のpHの使用などの2つ以上の因子の任意の組み合わせの使用が含まれる。特定の実施形態において、この少なくとも2つの因子の使用には、メチオニンおよび酸素曝露の減少、メチオニンと約5.0のpH、メチオニンと約5.5のpH、メチオニンと約6のpH、NaClとポリソルベート80、およびアルギニンと約7.0のpHの使用などの1つ以上の組み合わせの使用が含まれる。
【0015】
一実施形態において、組成物における黄色の量の低下または減少をb*値の減少率(%)として測定する。いくつかの実施形態において、このb*値の減少率(%)は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%である(b*値の説明については、以下のさらなる記述を参照されたい)。
【0016】
本発明は、組成物における黄色形成の速度を予測または決定する方法を提供し、この予測または決定は、特定の範囲の温度でこの組成物をインキュベートするステップ、時間および温度の関数として、形成した黄色の量を定量化するステップ、ならびに、特定の範囲の温度内または特定の範囲の温度外の任意の温度について、前記組成物における黄色形成の速度の予測または決定を推定するステップを含む。一実施形態において、本方法の組成物は、緩衝溶液、タンパク質製剤、タンパク質を含む溶液、および抗体を含む溶液などの溶液または製剤を含む。
【0017】
一実施形態において、黄色形成の速度を予測または決定する方法は、この組成物の濃度範囲を準備するステップ、および特定の範囲の濃度内または特定の範囲の濃度外の任意の濃度について、この組成物における黄色形成の速度の予測または決定を推定するステップをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、この組成物は、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、スクシネート、トリス、アセテート、またはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせなどの化合物を含む。一実施形態において、この組成物における黄色形成の速度を、溶液保管温度の関数として予測または決定する。好ましい実施形態において、この組成物における黄色形成の速度を、約−80℃(マイナス80℃)〜約+100℃の間の1℃の増加分における任意の温度の溶液保管温度の関数として予測または決定する。別の実施形態において、この予測または決定は、2つの因子の相互作用に基づいて計算されるか、または2つの因子の相互作用に基づく。一実施形態において、この予測または決定は、アレニウスモデル(Arrhenius modeling)に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】色度標準の希釈系列に対するHunterLab ColorQuest XE分光光度計によって測定したY(■)EP色度標準およびBY(◆)EP色度標準についてのb*値のグラフ、ならびに、色度標準の希釈系列の各セットを視覚的に表した挿入図である。
【図1B】Y EP色度標準の最も近い希釈系列に対するHunterLab ColorQuest XE分光光度計によって測定したb*値のグラフである。
【図2A】b*値の変化に対するインタクトな抗体の割合を示すグラフである。△は、抗体を含むヒスチジン緩衝液に相当する。○は、抗体およびポリソルベート80を含むヒスチジン緩衝液に相当する。●は、抗体およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。▼は、抗体、ポリソルベート80、およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。
【図2B】b*値の変化に対する抗体の高分子量の凝集物の割合を示すグラフである。△は、抗体を含むヒスチジン緩衝液に相当する。○は、抗体およびポリソルベート80を含むヒスチジン緩衝液に相当する。●は、抗体およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。▼は、抗体、ポリソルベート80、およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。
【図2C】b*値の変化に対する酸化した抗体の割合を示すグラフである。△は、抗体を含むヒスチジン緩衝液に相当する。○は、抗体およびポリソルベート80を含むヒスチジン緩衝液に相当する。●は、抗体およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。▼は、抗体、ポリソルベート80、およびメチオニンを含むヒスチジン緩衝液に相当する。
【図3A】1/T(絶対温度)に対してkの自然対数(ボルツマン定数)をプロットすることによって200mMにおけるヒスチジンの活性化エネルギー(Ea)を決定する200mMヒスチジン、pH7.0のアレニウス解析のグラフである。
【図3B】ヒスチジン濃度の自然対数に対して黄変速度の自然対数をプロットすることによって決定する、25℃におけるヒスチジンの反応次数を示すグラフである。
【図3C】ヒスチジン濃度の自然対数に対して黄変速度の自然対数をプロットすることによって決定する、55℃におけるヒスチジンの反応次数を示すグラフである。
【図4】pH5.0またはpH7.0のいずれかにおけるポリソルベート80の存在下または非存在下で、200mMヒスチジン緩衝液を40℃でインキュベートした時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。■はpH7.0におけるポリソルベート80を有するヒスチジン緩衝液に相当する◆はpH7.0におけるヒスチジン緩衝液に相当する。●はpH5.0におけるポリソルベート80を有するヒスチジン緩衝液に相当する。▲はpH5.0におけるヒスチジン緩衝液に相当する。
【図5】ヘッドスペース内の様々なガスの存在下で、200mMヒスチジン緩衝液を40℃でインキュベートした時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。×印(×)は、ヘッドスペースの60%を酸素で覆うことに相当する。□は、ヘッドスペースの100%を酸素で覆うことに相当する。▲は、ヘッドスペース内の周囲ガス含有量に相当する。■は、ヘッドスペースをNで覆うことに相当する。◆は、Nを有するヒスチジン緩衝液の散布に相当する。
【図6】空気または窒素(N)ガスのいずれかを含むヘッドスペースの様々な体積を有する様々な200mMヒスチジン含有溶液をpH6.5で保管した時の時間(日)に対する過酸化物濃度の変化を示すグラフである。
【図7】空気または窒素(N)ガスを含むヘッドスペースの様々な体積で保管した様々な200mMヒスチジン含有溶液を、バイアルの中で測定した時の時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。
【図8】空気または窒素(N)ガスを含むヘッドスペースの様々な体積で保管した様々な200mMヒスチジン含有溶液を、キュベットの中で測定した時の時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。
【図9】様々な量のEDTAを含む、200mMヒスチジン、100mMグリシン、100mMグリセロール、0.05%Tween80のpH7の溶液を、60℃でインキュベートした時の時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。溶液の色を、Hunter LAB ColorQuest XE装置を用いて測定した。
【図10】様々な量のメチオニンを含む、200mMヒスチジン、100mMグリシン、100mMグリセロール、0.05%Tween80のpH7の溶液を、60℃でインキュベートした時の時間(日)に対するb*値の変化を示すグラフである。溶液の色を、Hunter LAB ColorQuest XE装置を用いて測定した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
当業で一般に使用される用語を本明細書で使用し、特に定義されない限り、以下のとおりである。当業で使用されかつ/または受け入れられている用語の2つ以上の定義がある場合において、本明細書で使用する用語の定義は、それとは反対のことを明確に述べない限り、全てのかかる意味を含むことを意図する。本明細書で言及する全ての公表文献、特許および他の参考文献は、全ての目的のために、参照によりその全体が組込まれる。
【0021】
「黄色」という用語は、可視スペクトルにおける主な色の1つを表す。例えば、黄変した物質は、およそ420〜430nmの範囲の光を吸収することができる。黄色を、主観的に、例えば、視覚的に、もしくは客観的に、例えば、分光光度計または比色計を用いて評価することができる。主観的および客観的の両方で色を評価するために、多数の標準物質および式が開発されており、それらを用いて黄色を測定することができる。黄色を測定するために使用することができるカラースケールの例として、CIE(国際照明委員会)L*a*b*カラースケール、CIE L*c*h*カラースケール、およびHunter L、a、bカラースケールが挙げられるが、これらに限定されない。これらのカラースケールは、反対の一組み:暗い−明るい(L*値)、赤−緑(a*値)、および黄色−青(b*値)として、ヒトの眼の受容体が色を認知することを前提とする反対色説に基づく(「Hunter L,a,b Versus CIE 1976 L*a*b*」,Application Notes,Insight on Color Vol.13,No.2(2008)参照)。したがって、本明細書で使用する「b*値」という用語は、組成物の黄色さまたは青さを表す。正のb*(+b*)値は組成物の黄色さを表し、負のb*(−b*)値は組成物の青さを表す。カラースケールおよび測色に関するさらなる情報は、例えば、CIE(www.cie.co.at)またはHunterLab(www.hunterlab.com)(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,VA,USA)から入手できる。
【0022】
本明細書で使用する「抗酸化剤」という用語は、酸素および過酸化物によって促進される酸化もしくは反応を阻害するか、または遅らせる任意の化合物または物質を表す。
【0023】
本明細書で使用する「脱酸素剤」という用語は、組成物中の酸素不純物を消費するか、または不活性にする任意の化合物または物質を表す。
【0024】
「緩衝液」という用語は、その酸塩基共役成分の作用によってpHの変化に耐える化合物を表す。
【0025】
「製剤」と言う用語には、異なる物質を組み合わせた任意の溶液、懸濁液、または剤形が含まれる。本発明の文脈で使用する1製剤には、例えば、タンパク質製剤が含まれる。
【0026】
「溶液」という用語は、ガス、固体またはガスと固体の両方を有する1つ以上の液体の混合物を表す。本発明の文脈で使用する溶液には緩衝溶液が含まれ、溶液はタンパク質を含むことできるか、または溶液は抗体を含むことができる。
【0027】
本明細書で使用する「タンパク質」という用語は、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、「アミノ酸鎖」または2個以上のアミノ酸の(1つまたは複数の)鎖を表すのに使用される任意の他の用語を包含し、「タンパク質」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に使用され得る。したがって、タンパク質は、単数の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、(ペプチド結合としても知られる)アミド結合によって直線的に結合したモノマー(アミノ酸)でできている分子を表す。タンパク質という用語は、2個以上のアミノ酸の任意の(1つまたは複数の)鎖を表し、タンパク質は特定の長さの生成物を表すわけではない。したがって、タンパク質という用語が、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基(protecting group)/保護基(blocking group)による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含むが、これらに限定されないポリペプチドの発現後修飾の生成物を表すことも意図する。タンパク質は、天然の生物源に由来するか、または組換え技術によって産生されてもよく、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されない。タンパク質は、化学合成を含む任意の方法で生成されてもよい。抗体は2個以上のアミノ酸の鎖を包含し、タンパク質という用語は抗体を含む。
【0028】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、またはその抗原結合断片を意味する。(本発明の方法に適用する組成物、溶液、または製剤の一部であってもよい)抗体、抗原結合断片、変異体、またはそれらの誘導体には、ポリクローナル、モノクローナル、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、プライム化(primatized)抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生した断片、ならびに抗イディオタイプ(抗−Id)抗体
が含まれるが、これらに限定されない。免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(限定されることなく、例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、任意のクラス(限定されることなく、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)または任意のサブクラスであり得る。多特異性抗体および抗原結合断片(例えば、二重特異性、三重特異性、またはより大きな多特異性)には、1種類以上の異なる抗原(例えば、タンパク質)上に存在する2種類以上の異なるエピトープを同時に認識し、結合するそれらの抗体および抗原結合断片が含まれる。したがって、抗体が「単一特異性」であるか、または「多特異性」、例えば、「二重特異性」であるかは、結合ポリペプチドが反応する異なるエピトープの数(すなわち、「bi」=2、「多」=2以上)を表す。
【0029】
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、組成物中の有効成分以外のもの、例えば、タンパク質または抗体を意味すると意図する。したがって、例えば、賦形剤は、組成物に適切な一貫性、形態、または安定性を与えるために組成物に加えられる、多かれ少なかれ不活性の任意の物質を表す。賦形剤は、有効成分の媒介物または担体としても用いることができる。賦形剤の種類には、抗接着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、香料、着色料、流動促進剤、滑剤、保存剤、吸着剤、圧縮剤、懸濁剤、分散剤、界面活性剤、および甘味料が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
ここで留意すべきは、「1つ(a)」または「1つ(an)」という用語が、用語の単数形および複数形の両方を表し、例えば、「1つの抗酸化剤」は、1種類以上の抗酸化剤を表すと理解される。そのようなものとして、「1つ(a)」(または「1つ(an)」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で互換的に使用することができる。
【0031】
本明細書で使用する「約」という用語は、測定または定量に使用される方法および計測手段に固有の変動の程度を認める。例えば、用いる計測手段の精度のレベル、測定される試料の数に基づく標準誤差、および丸め誤差に応じて、「約」という用語は、限定されることなく±10%を含む。
【0032】
方法の記述
いくつかの医薬用タンパク質製剤は黄色を有すると記載されており、RECOMBINATE(商標)、KOGENATE(登録商標)、RAPTIVA(登録商標)、およびHERCEPTIN(登録商標)を含むが、これらに限定されない。これらの製剤の各々は、少なくともヒスチジン緩衝液を共通して含み、ヨーロッパ薬局方にしたがって、黄色を形成することができる。例えば、シトレート製剤を含む他の製剤は、高温まで加熱した時に、黄色を形成することが示されている。本発明は、かかる製剤における黄色形成を防ぐか、遅らせるか、または低下させる新しい有用な方法を提供する。したがって、本発明の方法は、組成物における黄色形成を防ぐか、遅らせるか、または低下させる方法を含み、この方法は、前記組成物における抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の使用を含む。本発明は、組成物における黄色の量を低下または減少させる方法も提供し、この方法は、前記組成物における抗酸化剤、脱酸素剤、またはキレート剤の使用を含む。
【0033】
本発明の方法に含まれる組成物は、限定されることなく、緩衝溶液、タンパク質製剤、タンパク質を含む溶液、および抗体を含む溶液などの溶液または製剤を包含する。しかし、本発明の方法によって防ぐか、または減少させることができる、黄色を形成する他の組成物は、本発明の範囲に含まれる。特定の実施形態において、これらの組成物には緩衝液が含まれる。緩衝溶液、タンパク質製剤、またはタンパク質もしくは抗体を含む溶液に使用するための多くの緩衝液が当業で知られており、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、スクシネート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、ッセテート、グリシン、アコニット酸、マレイン酸、フタル酸、カコジル酸、バルビトール(barbitol)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)メタン(ビストリス)、N−(2−アセトアミド)イミノ2酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)−メチルアミノ]プロパン(ビストリスプロパン)、N−(アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノ−エタンスルホン酸(BES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、グリシルグリシン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノ−プロパンスルホン酸(TAPS)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)−メチルアミノ]プロパン(ビストリスプロパン)を含むが、これらに限定されない。非経口用組成物に適する緩衝液には、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、スクシネート、トリス、アセテート、およびこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択されるそれらの化合物が含まれる。好ましい実施形態において、この組成物はヒスチジンを含む。
【0034】
本発明の方法に含まれる組成物は、賦形剤をさらに包含することができる。緩衝溶液、タンパク質製剤、タンパク質を含む溶液、または抗体を含む溶液に使用するための多くの賦形剤が当業で知られており、以下の群から選択される賦形剤を含むが、これらに限定されない:抗接着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、香料、着色料、流動促進剤、滑剤、保存剤、吸着剤、圧縮剤、懸濁剤、分散剤、界面活性剤、および甘味料。かかる賦形剤の制限のない例として、ポリソルベート化合物、ポリソルベート20、ポリソルベート80、NaCl、ショ糖、グリセロール、アルギニン、グリシン、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ラクトース、ソルビトール、ポロキサマー、グリコール、CaCl、イミダゾール、ベンジルアルコール、尿素、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グルタメートまたはグルタミン酸、フェニルアラニン、クレゾール、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、デンプン(トウモロコシ)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、ステアリン酸、グリコール酸ナトリウムデンプン、ゼラチン、タルク、ステアリン酸カルシウム、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、OPA生成物(コーティングおよびインク)、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、リン酸カルシウム(二塩基)、クロスポビドン、ならびにセラック(およびグレーズ)が挙げられる。本明細書に使用するポリソルベート化合物には、一連のソルビトールの部分的脂肪酸エステル、ならびにソルビトールおよびその無水物の各々のモルについておよそ20、5、または4モルのエチレンオキシドで共重合したその無水物であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの群の中に包含されるポリソルベートの化合物が含まれる(Handbook of Pharmaceutical Excipients 580(Rowe,R.C.,et al.eds 5th ed.2006))。本明細書で使用するポロキサマーには、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの一連の密接に関わるブロック共重合体が含まれる(Handbook of Pharmaceutical Excipients 535(Rowe,R.C.,et al.eds 5th ed.2006))。本明細書で使用するグリコールは、アルコールファミリーに属する有機化合物の類のいずれかを表し、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0035】
いくつかの実施形態において、好ましい賦形剤には、ポリソルベート化合物、ポリソルベート20、ポリソルベート80、NaCl、ショ糖、グリセロール、アルギニン、グリシン、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ラクトース、ソルビトール、ポロキサマー、グリコール、CaCl、イミダゾール、ベンジルアルコール、尿素、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、グルタメートまたはグルタミン酸、フェニルアラニン、クレゾール、またはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせなどの化合物が含まれる。
【0036】
本発明の方法は、組成物の黄色形成を防ぐか、または減少させるために、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の使用を含む。多くの抗酸化剤または脱酸素剤が当業で知られており、ビタミンE、αトコフェノール、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、キレート剤、クエン酸、エリソルビン酸、オレイン酸エチル、フマル酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、リン酸、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チモール、メチオニン、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンA、セレン、パルミチン酸レチニル、システイン、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、チオグリコール酸、メタ重亜硫酸を含むが、これらに限定されない。本発明の方法の一実施形態において、抗酸化剤または脱酸素剤は、メチオニン、アスコルビン酸、グルタチオン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、パルミチン酸レチニル、システイン、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、チオグリコール酸、メタ重亜硫酸、およびこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態において、この抗酸化剤または脱酸素剤はメチオニンである。
【0037】
本発明の方法において使用する抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の濃度は、ある程度、選択される特定の抗酸化剤(複数可)、脱酸素剤(複数可)、および/またはキレート剤によって決まるが、そうでなければ、当業者が容易に決定することができる。例えば、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の濃度は、本発明の方法の範囲内の組成物のフェムトモル量〜モル量の範囲に及び得る。いくつかの実施形態において、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤の濃度は、約0.0001mM〜約10000mM、約0.001〜約1000mM、約0.01〜約100mM、約0.1mM〜約10mMの範囲である。
【0038】
組成物の黄色形成を防ぐか、または低下させるために、抗酸化剤、脱酸素剤、および/またはキレート剤を用いることに加えて、本発明の方法は、組成物の酸素への曝露を減少させることをさらに含む。組成物の酸素への曝露を減少させる様々な手段は当業で知られており、気密の容器を用いることから容器のヘッドスペース内のガスを低下または交換することなどの手段に及ぶ。組成物の酸素への曝露を減少させるのに適する手段には、組成物の表面と容器の封止部との間のヘッドスペースのガス含有量を低下させること、周囲酸素含有量を低下させること、組成物を窒素で覆うこと、組成物に窒素を散布すること、またはこれらのうちの1つ以上の任意の組み合わせなどの手段が含まれる。一実施形態において、組成物の酸素への曝露の減少は、酸素以外のガスでヘッドスペースのガスを交換することによって行われる。別の実施形態において、ヘッドスペースを(例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンが含まれるが、これらに限定されない)不活性ガスで満たす。
【0039】
組成物の黄色形成を防ぐか、または低下させるために考えられる他の手段には、組成物のpHを調整することが含まれる。タンパク質製剤またはタンパク質もしくは抗体を含む溶液がpHの変化に耐えることができる範囲まで、このタンパク質の構造および機能もしくは抗体の構造および機能を維持しながら、黄色形成を防ぐか、または低下させるpHを選択することができる。一実施形態において、このpHを生理学的pHに調整する。いくつかの実施形態において、調整されたpHは、約7.5〜約7.0、約7.0〜約6.5、約6.0未満、約5.5未満、および約5.0未満の範囲にある。
【0040】
組成物の黄色形成を阻害するか、または低下させるために考えられるさらなる手段には、この溶液の光への曝露を低下させるか、制限することが含まれる。組成物を光から保護するのに適する手段には、容器の着色および/または包装の使用が含まれるが、これらに限定されない。組成物を光から保護するためのかかる手段の制限のない例は当業で知られており、例えば、茶色もしくは他の暗い色のガラス容器またはプラスチック容器、ならびにホイルまたは類似の囲いが含まれる。
【0041】
本発明の方法は、組成物の黄色形成を防ぐか、または低下させるキレート剤の使用を含む。キレート剤は当業で知られており、例えば、溶液から微量金属を除去するために一般に用いられる。例示的なキレート剤には、EDTA((エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール四酢酸)、アスコルビン酸、イミノジアセテート、イミノジコハク酸四ナトリウム、クエン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、EDDS(エチレンジアミンジコハク酸)、DTPMP・Na(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)七ナトリウム塩)、リンゴ酸、NTA(ニトリロ三酢酸)、(メチオニンを含むが、これに限定されない)無極性アミノ酸、シュウ酸、リン酸、(アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、リシン、およびオルニチンを含む)極性アミノ酸、(デスフェリオキサミンBを含むが、これに限定されない)シデロホア、ならびにコハク酸が含まれるが、これらに限定されない。キレート剤には、加水分解されたウールまたはキレート樹脂、例えば、CHELEX(登録商標)20樹脂またはCHELEX(登録商標)100樹脂などの溶液処理に用いられるキレート剤も含まれ得るが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の方法には、組成物における黄色形成を防ぐか、または低下させる方法も含まれ、この方法は、黄色形成を防ぐか、または遅らせるために少なくとも2つの因子の使用を含む。本発明は、組成物における黄色の量を低下または減少させる方法も提供し、この方法は、黄色形成を低下または減少させるために少なくとも2つの因子の使用を含む。驚くべきことに、1つの因子の使用が、組成物の黄色形成を阻害するか、または低下させなかった場合において、第2の因子の添加が組成物の黄色形成を阻害するか、または低下させたことが分かっている(表2参照)。したがって、一実施形態において、少なくとも2つの因子の使用には、メチオニン、酸素曝露の減少、NaCl、ポリソルベート化合物、ポリソルベート20、ポリソルベート80、アルギニン、約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、約6.5のpH、約7.0のpHの使用などの2つ以上の因子の任意の組み合わせの使用が含まれる。別の実施形態において、この少なくとも2つの因子の使用には、メチオニンおよび酸素曝露の減少、メチオニンと約5.0のpH、メチオニンと約5.5のpH、メチオニンと約6のpH、NaClとポリソルベート80、およびアルギニンと約7.0のpHの使用などの因子の1つ以上の組み合わせの使用が含まれる。
【0043】
本発明の方法には、組成物における黄色の量の低下または減少を、b*値の減少率(%)として測定する方法が含まれる。b*値の変化の測定は、比色計または分光光度計を用いて、当業で知られる技術を用いて実行され得る。一実施形態において、このb*値の減少率(%)は0%を超え、1%ずつの増加で100%まである。いくつかの実施形態において、b*値の減少率(%)は、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%および約99%である。
【0044】
本発明の方法には、組成物の黄色形成の速度を予測または決定する方法も含まれ、この予測または決定は、特定の範囲の温度で組成物をインキュベートするステップ、時間および温度の関数として、形成される黄色の量を定量化するステップ、および特定の範囲の温度内または特定の範囲の温度外の任意の温度について、前記組成物における黄色形成の速度の予測または決定を推定するステップを含む。一実施形態において、黄色形成の速度を予測または決定する方法は、組成物の濃度範囲を準備するステップ、および特定の範囲の濃度内または特定の範囲の濃度外の任意の濃度について、前記組成物における黄色形成の速度の予測または決定を推定するステップをさらに含む。かかるステップを実行する方法は当業で知られている。
【0045】
さらなる実施形態において、組成物における黄色形成の速度を、溶液保管温度の関数として、予測または決定する。溶液保管温度は、黄色形成の速度を減少することができる温度から、黄色形成の速度を増加させることができる温度にわたって広がり得る。しかし、かかる温度は、緩衝溶液、タンパク質製剤、およびタンパク質もしくは抗体を含む溶液の安定性を妨げるべきではない。したがって、好ましい実施形態において、組成物における黄色形成の速度を、約−80℃(マイナス80℃)〜約+100℃の間の1℃の増加分における任意の温度の溶液保管温度の関数として、予測または決定する。
【0046】
別の実施形態において、この予測または決定は、2つの因子の相互作用に基づいて計算されるか、2つの因子の相互作用に基づく。一実施形態において、この予測または決定は、アレニウスモデルに基づく。
【0047】
実施例
実施例1
黄色標準に基づく黄色形成の測定のためのシステム
HunterLabカラーシステムを用いて、キュベットまたはバイアルの中で黄変した溶液の程度を分光光度法で測定することができる。EP色度標準を、ヨーロッパ薬局方「液体の着色の程度(Degree of Coloration of Liquids)」の2.2.2節に記載されたとおりに作った。EP標準色の原液をRicca Chemical Companyから購入した。YおよびBYのEP標準を、1cmの光路長の石英キュベットおよび10mLのガラスバイアルの両方で、HunterLab ColorQuest XE装置を用いて測定した。b*明度を、色度標準を作るために用いられる希釈系列に対してプロットした。
【0048】
Y(■)およびBY(◆)のEP色度標準の解析は、黄色の溶液が次第に45のb*値になるまでb*値の直線的増加を示した(図1A)。試料の視覚的評価は、装置の直線性が減少する非常に黄色の試料を除いて、b*値と関連している(図1B)。HunterLab側色システムは、従来の外観試験よりも、時間と共に変化する色の定量的な、高感度の監視を促す。したがって、かかる分光光度システムを用いて、組成物の黄色を決定することができる。
【0049】
実施例2
一般的な賦形剤を含むヒスチジン組成物の黄色形成のスクリーニングのための実験計画法
任意の組成物の黄変に対する賦形剤および他の製剤因子の効果を見つけ出すために、スクリーニングを、統計的分析プログラムを含む多数の方法によって設計することができる。ヒスチジン黄変に対する9個の製剤因子の効果を試験するために、Design Expert 6.0.5(Stat−Ease)を用いて、D−最適実験的設計(D−Optimal experimental design)を作成した(表1参照)。この設計は55個の製剤を含み、2因子相互作用の解析を可能する検出力を有していた。以下の試薬を用いて、複数の製剤を作った:L−ヒスチジン(J.T.Baker)、L−ヒスチジンモノハイドロクロライド(J.T.Baker)、塩化ナトリウム(Sigma−AldrichまたはFisher Scientific)、ショ糖(高純度、低内毒素のビート、Ferro Pfanstiehl)、L−メチオニン(シグマ)、L−アルギニンハイドロクロライド(J.T.Baker)、グリシン(J.T.Baker)、グリセロール(J.T.Baker)、ポリソルベート80(J.T.Baker(Phillipsburg,NJ,USA))、およびNOF America(White Plains,NY,USA))、ポリソルベート20(EMD Chemicals(Gibbstown,NJ,USA)およびNOF America)、ならびにバイオジェンアイデック(Biogen Idec)によって生産された典型的なモノクローナル抗体。
【0050】
【表1】

【0051】
各製剤10mLを、Schott社製8412−Bガラス棒つき20mm開口の10mLガラスバイアルに入れた。これらのバイアルを、West Pharmaceutical Services社の灰色ブチルゴムの、TEFLON(登録商標)−2でコーティングされた20mmストッパーを用いて栓をした。これらのバイアルを、18カ月間、2〜8℃、25oC/60%RH、または40oC/75%RHでインキュベートし、黄変の程度を、傷のないバイアルのHunter Lab分析によって定期的に試験した。
【0052】
表2に示すように、ヒスチジン緩衝液に個別に加えられる時、ヒスチジン緩衝液の黄変はタンパク質、ポリソルベート80、グリセロール、グリシン、および高いpH(pH7.0は、pH5.0よりも黄色であった)によって加速されるが、ほとんどの場合、メチオニンが黄変を遅らせることを、DOEパラメータスクリーニングが明らかにした。2因子相互作用をみると、アルギニンおよびpH7.0の組み合わせと同様に、NaClおよびポリソルベート80の組み合わせがヒスチジン緩衝液の黄変を減少させることが分かった。
【0053】
表2.25oC/60%RHにおいてインキュベートしたバイアルについてのDOEパラメータスクリーニングの結果
Prob>Fは、その結果がノイズに起因する可能性を示す。P値<0.05だけは、有意であると考えられた。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例3
黄色形成に関する生成物の品質分析
ヒスチジン緩衝液の黄色形成が、バイオジェンアイデック社が産生した典型的なモノクローナル抗体(mAb)の生成物の品質に影響を与えるかどうかを判定するために、mAbの試料を追加の賦形剤を含むヒスチジン緩衝液中でインキュベートした。mAbの他の試料を、同じヒスチジン緩衝液とポリソルベート80、ヒスチジン緩衝液とメチオニン、またはポリソルベート80とメチオニンの中でインキュベートした。インタクトな抗体の分析を、LABCHIP(登録商標)90ゲルチップ分析によって行った。高分子量の凝集物の分析を、TSK−GEL(登録商標)G3000SWXLカラムおよびTosoh Bioscience社のガードカラム(0.1Mのリン酸ナトリウム/0.2Mの塩化ナトリウム、移動相pH6.8、流速0.5mL/分、60分の分離、280nmにおける検出)を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによって行った。酸化した抗体を、ペプチドマップ分析に焦点を合わせたLC−MSによって特定した。
【0056】
図2に示すように、溶液の色の著しい変化が、必ずしも他の生成物の品質特性の変化に関連するわけではない。視覚的に検出可能な変化がb*値にあるが、ヒスチジン緩衝液(△)、ヒスチジン緩衝液とポリソルベート80(○)、ヒスチジン緩衝液とメチオニン(●)、またはヒスチジン緩衝液とポリソルベート80とメチオニン(▼)の中でインキュベートしたmAbの試料について、mAb断片化における著しい変化はなかった(図2A)。色に同様の変化のある製剤は、著しく異なるレベルの凝集したmAb(図2B)または酸化したmAb(図2C)を有した。例えば、ヒスチジン緩衝液とポリソルベート80(○)中でインキュベートしたmAb試料は、より高いレベルの酸化したmAbを示した(図2C)。しかし、溶液の黄変と他の生成物の品質特性との間の弱い相互関係は、生成物の色が必ずしも生成物の品質の予想にならないことを示唆する。
【0057】
実施例4.タンパク質の非存在下における黄色形成の動力学的評価
ヒスチジン緩衝液の黄色形成の動態を評価するために、濃度および溶液保管温度などのヒスチジン緩衝液の黄変に影響を与える因子を、タンパク質の非存在下で分析した。20mM、100mM、または200mMのヒスチジンのいずれかを含む動態分析用の製剤をバイアルに入れ、2〜8℃、25oC/60%RH、40oC/75%RH、または55℃でインキュベートした。色の値を、HunterLab ColorQuest XE装置を用いて、分光光度法で定期的に測定した。傷のないバイアルの中で測定を行い、その後、これらのバイアルをインキュベーションチャンバーに戻した。
【0058】
色変化率を経時的に監視し、アレニウス解析で各温度における最初の線形速度を用いて、この反応の活性化エネルギー(Ea)を推定した。例えば、図3Aに示すように、200mMヒスチジン、pH7のアレニウス解析から推定されたEaは、73.3kJ/molであると決定した。20mMおよび100mMのヒスチジンについての推定Eaは、それぞれ、72.6および82.6であると決定した(表3)。その後、ヒスチジンの各濃度についてこのEaを用いて、観察された色変化の温度予測モデルを作った(表3参照)。したがって、ヒスチジン緩衝液の黄変はアレニウスモデルに当てはまるので、冷蔵保存した試料の色変化は、高温実験から予測することができる。
【0059】
【表3】

【0060】
様々なヒスチジン濃度を含む製剤の色変化の速度を比較して、反応次数も決定した。図3Bに示すように、ヒスチジン緩衝液の黄変は、およそ25℃で1次である(黄変速度=k(ヒスチジン))。しかし、55℃の湾曲はより複雑な反応次数を示唆する(図3C)。同様の実験を行い、様々な賦形剤、例えば、限定されないが、ポリソルベート80、グリシン、グリセロール、および/または酸素の含有量に関して反応次数を決定することができる。
【0061】
実施例5.酸化機構の結果としての黄色形成の評価
ポリソルベート80は過酸化物源であるの、ヒスチジン緩衝液の黄色形成に対する酸化効果を評価した。200mMヒスチジン緩衝液の黄色形成速度を、pH5.0およびpH7.0で、ポリソルベート80の存在下または非存在下のいずれかにおいて監視した。図4に示すように、ポリソルベート80およびより高い7.0のpHは、pH5.0のヒスチジン緩衝液(▲)と比較した場合、独立して調べた場合(ポリソルベート80の●とpH7.0の◆との比較)と組み合わせて調べた場合(■)の両方において、溶液の黄変を増加させた。
【0062】
黄色形成における酸化の影響をさらに分析するために、ヒスチジン緩衝液の酸素含有量および容器のヘッドスペースを変化させて調べた。200mMヒスチジン緩衝液の黄色形成速度を、エアガスから100%窒素ガスで表面を覆うか、もしくは散布した製剤、または60%酸素ガスもしくは100%酸素ガスで覆った製剤のいくつかと共に40℃で監視した。図5に示すように、ヘッドスペースの酸素の存在は、溶液の黄変を著しく増加させることが分かった。周囲ガスのヘッドスペース(▲)を有しキャップをした溶液、窒素を散布する(◆)か、または窒素で覆って(■)キャップをした溶液は、60%酸素(×)または100%酸素(□)で覆った溶液よりも黄色形成がはるかに低いこと示した。したがって、任意の特定の理論によって制約されることを意図しないが、pH、ポリソルベート80、およびヘッドスペースのガス含有量の影響は、ヒスチジンの黄変の酸化経路を示唆する。
【0063】
実施例6.メチオニンの使用がヒスチジン緩衝液の黄変を遅らせる。
DOEパラメータスクリーニングにおいて、メチオニンがヒスチジン緩衝液の黄変を遅らせることを示した(表2参照)。メチオニンが、様々な容器の封止系において、ポリソルベート80およびグリシンを含む一般的なタンパク質製剤の賦形剤を含むヒスチジン緩衝液の黄変を同様に遅らせることができるかどうかを判定するために、表4に示すとおりに比較スクリーニングを設定した。
【0064】
【表4】

【0065】
50mMヒスチジン(pH6.0)、100mMグリシン、NOF America社またはJ.T.Baker社のいずれかの0.05%ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、および10mMメチオニンを含む製剤をガラスバイアル、LUER−LOK(商標)のHypak SCF(商標)の1mL注射器(Becton Dickinson)、または固定針(staked−needle)のHypak SCF(商標)の1mL注射器(Becton Dickinson)に入れた。注射器およびバイアルを40oC/75%RHでインキュベートし、6か月間光から保護した。HunterLab ColorQuest XEを用いて測定するために、注射器から溶液を排出するか、またはバイアルから溶液を除去し、1cmセル光路の石英キュベットに移すことによって、溶液の色を分析した。
【0066】
DOEパラメータスクリーニングにおいて示したように、試験した全ての容器の封止系において、ポリソルベート80の非存在下および存在下の両方で、メチオニンがヒスチジン緩衝液の黄変を著しく遅らせることができた(表5参照)。表2および図4に同様に示すように、ポリソルベート80はヒスチジン緩衝液の黄変を増加させた(表5参照)。ヒスチジン緩衝液におけるNOF America社の超高純度ポリソルベート80の使用は、J.T.Baker社から入手した低純度ポリソルベート80と比較して、黄色形成を著しくはもたらさなかった。上記で論じたとおり、黄色形成は、少なくとも一部において、酸化機構の結果であるように思われる。任意の特定の理論によって制約されることをのぞまないが、抗酸化剤であるものは、おそらく脱酸素剤として作用することによってヒスチジン緩衝液の黄変を遅らせるように思われる。
【0067】
【表5】

【0068】
表5は、50mMヒスチジン(pH6.0)と100mMグリシン(「ヒスチジンとグリシン」)を含むLUER−LOK(商標)のHypak SCF(商標)の1mL注射器(「LUER−LOK(商標)」)、固定針のHypak SCF(商標)の1mL注射器(「固定針注射器」)およびガラスバイアル(「バイアル」)を40oC/75%RHでインキュベートし、6か月間光から保護した結果を示す。10mMメチオニンをさらに含む注射器およびバイアル(「+メチオニン」)も評価した。NOF America社の0.05%ポリソルベート80を含む(「+NOF TWEEN(商標)80」)注射器およびバイアル、ならびにNOF America社の0.05%ポリソルベート80および10mMメチオニンを含む(+NOF TWEEN(商標)80とメチオニン)印のついた注射器およびバイアルを評価した。J.T.Baker社の0.05%ポリソルベート80を含む(「+J.T.Baker TWEEN(商標)80」)注射器およびバイアル、ならびにJ.T.Baker社の0.05%ポリソルベート80および10mMメチオニンを含む(+J.T.Baker TWEEN(商標)80とメチオニン)注射器およびバイアルも評価した。
【0069】
実施例7.黄変と過酸化物形成、ヘッドスペース体積、ヘッドスペースガス、および溶液含有量との関係
200mMヒスチジン、0.05%(w/v)ポリソルベート80、pH5.0の溶液を、ヘッドスペースガス含有量を変えて、60℃で、10mLガラスバイアル中でインキュベートした。溶液の色を、(十分な体積が利用できない場合、10mLバイアルまたはキュベットのいずれかの中で)Hunter LAB ColorQuest XE装置を用いて測定し(図7〜10参照)、溶液の過酸化物含有量をPEROXOQUANT(商標)Kit(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)を用いて決定した(図6参照)。
【0070】
一般に、溶液が黄変すると二相形成が起き、黄変の初速度は、後の速度よりも速い。同時に、溶液中の過酸化物レベルは最初に増加し、その後、時間と共に減少する。黄変速度における観察される変化がやがて過酸化物含有量の減少におおよそ関連することは、過酸化物が、少なくとも部分的に、色変化を促進している可能性があることを示唆する。
【0071】
ヘッドスペースガス含有量も、溶液の黄変および過酸化物含有量の両方に寄与する。図6〜10を参照されたい。ヘッドスペース内の空気と共に溶液の体積を変えて(6、8、10または12mL)バイアルを満たした。液体の少ない(したがって、ヘッドスペースが広い)試料はより認め得るほどに黄色になり、より多くの過酸化物を含んでいた。ヘッドスペース内が空気よりむしろ窒素を含む1セットの試料を製剤化した。これらの溶液は著しく黄色にならず、過酸化物含有量も取るに足らなかった。
【0072】
ポリソルベートは溶液の黄変を著しく増加し、ポリソルベートを含まなかった溶液も過酸化物含有量が取るに足らなかったことが示された。図6〜8を参照されたい。これらの結果は、ポリソルベート80による溶液の黄変の加速は、ポリソルベートが含むと知られる過酸化物の不純物と関連する可能性があることを示唆する。
【0073】
対照的に、EDTAは溶液の黄変を効果的に遅らせた。50μM程度のEDTAが、溶液の黄変を著しく遅らせることができた。図9を参照されたい。同様に、メチオニンも溶液の黄変を効果的に遅らせた。10μM程度のメチオニンが溶液の黄変を著しく遅らせることができた。図10を参照されたい。
【0074】
特定の実施形態の前述の記載は本発明の一般的性質を完全に明らかにするので、本発明の一般概念から逸脱することなく、当業者の知識を適用することによって、過度の実験をすることなく、他人がかかる特定の実施形態を様々な適用に容易に変更および/または適用することができる。したがって、かかる適応および変更は、本明細書に提示される教示およびガイダンスに基づいて、開示された実施形態の意味および開示された実施形態の様々な範囲の同等物の中に入ると意図される。本明細書の用語すなわち専門用語は記載の目的のためであり、制限はなく、その結果、本明細書の専門用語すなわち用語は、教示およびガイダンスを考慮して当業者によって解釈されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物における黄色形成もしくは過酸化物形成を防ぐか、または遅らせる方法であって、前記方法は、前記組成物における抗酸化剤または脱酸素剤の使用を含み、前記組成物が、
a)緩衝溶液
b)タンパク質製剤
c)タンパク質を含む溶液、および
d)抗体を含む溶液
からなる群から選択される溶液もしくは製剤を含む方法。
【請求項2】
組成物における黄色の量もしくは過酸化物の量を低下または減少させる方法であって、前記方法は、前記組成物における抗酸化剤または脱酸素剤の使用を含み、前記組成物が、
a)緩衝溶液
b)タンパク質製剤
c)タンパク質を含む溶液、および
d)抗体を含む溶液
からなる群から選択される溶液もしくは製剤を含む方法。
【請求項3】
前記組成物が、
a)ヒスチジン
b)シトレート
c)ホスフェート
d)スクシネート
e)アセテート
f)トリス、および
g)a、b、c、d、e、およびfのうちの2つ以上の任意の組み合わせ
からなる群から選択される化合物を含む、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物がヒスチジンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が賦形剤を含み、前記賦形剤が、
a)ポリソルベート化合物
b)ポリソルベート20
c)ポリソルベート80
d)NaCl
e)ショ糖
f)グリセロール
g)アルギニン
h)グリシン
i)トレハロース
j)マンニトール
k)キシリトール
l)ラクトース
m)ソルビトール
n)ポロキサマー
o)グリコール
p)CaCl
q)イミダゾール
r)ベンジルアルコール
s)尿素
t)ロイシン
u)イソロイシン
v)スレオニン
w)グルタメートまたはグルタミン酸
x)フェニルアラニン
y)クレゾール、および
z)a〜yのうちの2つ以上の任意の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗酸化剤または脱酸素剤が、
a)メチオニン
b)アスコルビン酸
c)グルタチオン
d)ビタミンA
e)ビタミンE
f)セレン
g)パルミチン酸レチニル
h)システイン
i)亜硫酸ナトリウム
j)チオグリセロール
k)チオグリコール酸
l)メタ重亜硫酸、および
m)a〜lのうちの2つ以上の任意の組み合わせ
からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗酸化剤または脱酸素剤がメチオニンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗酸化剤または脱酸素剤の濃度が、
a)約0.0001mM〜約10000mM
b)約0.001mM〜約1000mM
c)約0.01mM〜約100mM
d)約0.1mM〜約10mM
からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物がキレート剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記キレート剤が、
a)EDTA(エチレンジアミン四酢酸)
b)EGTA(エチレングリコール四酢酸)
c)アスコルビン酸
d)イミノジアセテート
e)イミノジコハク酸四ナトリウム
f)クエン酸
g)ジカルボキシメチルグルタミン酸
h)EDDS(エチレンジアミンジコハク酸)
i)DTPMP・Na(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)の七ナトリウム塩)
j)リンゴ酸
k)NTA(ニトリロ三酢酸)
l)無極性アミノ酸
m)メチオニン
n)シュウ酸
o)リン酸
p)極性アミノ酸
q)アルギニン
r)アスパラギン
s)アスパラギン酸
t)グルタミン酸
u)グルタミン
v)リシン
w)オルニチン
x)シデロホア
y)デスフェリオキサミンB
z)コハク酸
aa)加水分解されたウール
bb)キレート樹脂、および
cc)CHELEX(登録商標)樹脂
からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物の酸素への曝露を減少させることをさらに含み、前記曝露の減少が、
a)前記組成物の表面と容器の封止部との間のヘッドスペースのガス含有量を低下させること
b)周囲酸素含有量を低下させること
c)前記組成物を窒素で覆うこと
d)前記組成物に窒素を散布すること、および
e)a、b、c、またはdのうちの任意の組み合わせ
からなる群から選択される手段によって行われる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
酸素への曝露の減少が、ヘッドスペースのガスを酸素以外のガスで置換することによって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素以外のガスが不活性ガスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物のpHを調整することをさらに含み、前記調整されたpHが約6.0以外である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物のpHを調整することをさらに含み、前記調整されたpHが、
a)約7.5〜約7.0
b)約7.0〜約6.5
c)約6.0以下
d)約5.5以下、および
e)約5.0以下
からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を光から保護するために、容器の着色および/または容器の包装の使用をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物におけるキレート剤の使用をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
組成物における黄色の形成または過酸化物の形成を防ぐか、または遅らせる方法であって、前記方法が、黄色の形成または過酸化物の形成を防ぐか、または遅らせるために少なくとも2つの因子の使用を含み、前記組成物が、
a)緩衝溶液
b)タンパク質製剤
c)タンパク質を含む溶液、および
d)抗体を含む溶液
からなる群から選択される方法。
【請求項19】
組成物における黄色の量もしくは過酸化物の量を低下または減少させる方法であって、前記方法が、黄色形成もしくは過酸化物形成を低下または減少させるために少なくとも2つの因子の使用を含み、前記組成物が
a)緩衝溶液
b)タンパク質製剤
c)タンパク質を含む溶液、および
d)抗体を含む溶液
からなる群から選択される方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの因子の使用が、
a)メチオニン
b)酸素曝露の減少
c)NaCl
d)ポリソルベート化合物
e)ポリソルベート20
f)ポリソルベート80
g)アルギニン
h)約5.0のpH
i)約5.5のpH
j)約6.0のpH
k)約6.5のpH
l)約7.0のpH
からなる群から選択される2つ以上の因子の任意の組み合わせの使用を含む、請求項18または19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの因子の使用が、
a)メチオニンおよび酸素曝露の減少
b)メチオニンと約5のpH
c)メチオニンと約6のpH
d)NaClとポリソルベート80、および
e)アルギニンと約7のpH
からなる群から選択される1つ以上の組み合わせの使用を含む、請求項18または19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物における黄色の量の前記低下または減少が、b*値の減少率として測定される、請求項2または19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記b*値の減少率が、
a)約10%
b)約20%
c)約30%
d)約40%
e)約50%
f)約60%
g)約70%
h)約80%
i)約85%
j)約90%
k)約95%、および
l)約99%
からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物における黄色形成もしくは酸化物形成の速度を予測または決定する方法であって、前記組成物が、
a)緩衝溶液
b)タンパク質製剤
c)タンパク質を含む溶液、および
d)抗体を含む溶液
からなる群から選択される溶液または製剤を含み、
前記予測または決定が、特定の範囲の温度で前記組成物をインキュベートするステップ、時間および温度の関数として、形成される黄色の量または過酸化物の量を定量化するステップ、および特定の範囲の温度内または特定の範囲の温度外の任意の温度について、前記組成物における黄色形成速度もしくは過酸化物形成速度の予測または決定を推定するステップを含む方法。
【請求項25】
前記方法が、組成物の濃度範囲を準備するステップ、および特定の範囲の濃度内または特定の範囲の濃度外の任意の濃度について、前記組成物における黄色形成速度もしくは過酸化物形成速度の予測または決定を推定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、
a)ヒスチジン
b)シトレート
c)ホスフェート
d)スクシネート
e)トリス
f)アセテート、および
g)a、b、c、d、e、およびfのうちの2つ以上の任意の組み合わせ
からなる群から選択される化合物を含む、請求項24または25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物における黄色形成速度もしくは過酸化物形成速度が、組成物保管温度の関数として予測または決定される、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物における黄色形成速度もしくは過酸化物形成速度が、約−80℃〜約100℃の間の1℃の増加分における任意の温度の組成物保管温度の関数として予測または決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記予測または決定が、2つの因子の相互作用に基づいて計算される、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記予測または決定が、アレニウスモデルに基づく、請求項24〜29のいずれか1項に記載の方法。

【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1A】
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【公表番号】特表2012−533548(P2012−533548A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520723(P2012−520723)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/041842
【国際公開番号】WO2011/008770
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】