説明

組成物を製造するための梅エキスの使用

【課題】本発明の目的は、痛風を治療・予防する新規な物質を提供することにある。
【解決手段】痛風、痛風性関節炎、高尿酸血症を治療・予防し、血脂を降下させ、及び/或いは炎症を抑制する組成物を製造するための、梅エキスの使用が開示される。さらに、上述の効果を有する抽出物と組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・健康食品分野に関し、より具体的には、高尿酸血症と痛風の予防・治療薬及び健康食品を製造するための、梅花、梅枝、梅幹、梅根、梅葉のエキスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
梅はバラ科(Rosaceae)の植物で、学名はPrunus mume Sieb. Et Zuccであり、園芸学では、梅が花梅と実梅に分かれ、実梅が白梅と青梅と紅梅に分かれる。
【0003】
WO00/39249(PCT/JP99/07285)では、薬効を持つ梅エキス及びそれを含有する組成物が開示されており、5倍の体積のメタノールで梅の茎・葉部、梅の核及び梅花から製造されたエキスは、酸化防止作用、胃粘膜傷害抑制作用、アルドースリダクターゼ阻害作用、血糖値上昇抑制作用、血小板凝集促進作用、アルコール吸収抑制作用及び炎症抑制作用を有することが開示されている。係る梅エキスはアルコール抽出法或いは乾留法によって得られるもので、梅の茎・葉部のメタノール抽出物は五環トリテルペノイド系化合物、梅花のメタノール抽出物はケルセチン配糖体などのフラボン系物質を含有するが、抽出プロセスへの系統的な探究が少ないだけでなく、梅エキスの可能な有効成分に対する定量的データもなく、有効画分の特定及び製剤の基準化も勿論ない。こんなメタノール粗抽出物は分離精製されていなく、不純物の含有量が高く、有効成分の含有量が低く、色が深く、製品の吸湿性が強く、保管が困難で、加工に対する適応性が劣る。それに、使用される梅の品種が明確ではなく、エキスを医薬分野に適用する場合、植物の由来を特定しないと、薬品の有効性、安全性、安定性という三つの基本要求を満たすことができない。また、この文献は、梅エキスの高尿酸血症と痛風の予防・治療における作用に関しない。
【0004】
痛風はプリン代謝障害によって、高尿酸血症及び/或いは腎臓から排泄される尿酸の低減を引き起こすことで、尿酸塩が組織に蓄積する疾病である。その臨床的特徴は、高尿酸血症、特徴的に重積発作の関節炎、痛風石沈積、痛風石性慢性関節炎及び関節畸形であって、腎臓に影響を与えて慢性間質性腎炎と尿酸性腎結石の生成を引き起こすことが多いので、現在世界中の中年・老年男性の多発病になっている。
【0005】
痛風の発症機序と治療方法については、未だに完全に解明されていないが、原発性痛風と続発性痛風はいずれも、少数の薬物によるものを除き、その多くは病因に対する治療が欠けているので、徹底治療することができない。現在、医薬品市場では抗痛風薬の種類は少なく、例えば、痛風の急性発作の治療薬としては、コルヒチン、非ステロイド系鎮痛薬及び糖質コルチコイドがあり、痛風の発作間欠期と慢性期の治療薬としては、尿酸排泄促進薬(例えばプロベネシド、スルフィンピラゾン)と尿酸生成抑制薬(例えばアロプリノール)がある。これらの薬物は、消炎・鎮痛の効果が早いが、消炎・鎮痛とともに尿酸降下作用がなく、且つ大部分の薬物の毒副作用がかなり顕著であり、例えばコルヒチンの有効投与量は下痢などの胃腸管症状を引き起こす投与量に接近し、それに骨髄抑制、肝臓・腎臓損傷、中枢神経系損傷などの全身的な不良反応もある。非ステロイド系抗炎症薬は、活動性消化管潰瘍、胃腸管出血がある場合に絶対に使用禁止であり、例えばフェニルブタゾンは3週間投与するだけで顆粒球減少症や再生不良性貧血を引き起こしてしまう。高尿酸血症治療の面では、尿酸降下薬はいずれも解熱、鎮痛、抗炎症の作用がなく、急性発作の関節炎に寄与がないだけでなく、逆に症状の重篤化や病気経過の延長を招いてしまい、且つ尿酸降下薬のみによる治療の早期で痛風の急性発作を誘発する恐れがある。
【0006】
CN97116712.5には、茶色素は高尿酸血症を抑制し、痛風の発作を予防し、且つ治療作用を有することが開示されている。CN98110667.6には、木通、益母草、車前子、米仁、蒼朮、黄柏、牛膝からなる物質であって、清熱利湿と活血化濁の作用を有し、血中尿酸を降下し、痛風性関節炎を治療し、関節畸形及び腎臓病変を予防することができるものが開示されている。CN200410034933.9には、主に全フラボン、全生物、揮発油からなる組成物であって、高尿酸を降下させる効果を有するが、抗炎症・鎮痛における薬効を示していないものが開示されている。
【0007】
痛風の治療では、まずそれによる疼痛を軽減し、それから高すぎる尿酸を通常範囲まで低減するとともに、病気があれば治療、病気がなければ予防という目的を達成するように、積極的に痛風の誘発や重篤化の要因を予防することも必要であるため、痛風の予防・治療の戦略としては、「未然に防ぐ」ことが重要である。しかし、急性痛風の病症特徴に対しては、抗炎症、鎮痛及び尿酸降下のいずれにも顕著な治療効果を有する薬物はまだない。
【0008】
したがって、本分野では、抗炎症、鎮痛及び尿酸降下などの面で効果を発揮し、痛風を有効に治療・予防することができる新規な物質が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/39249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、痛風を治療・予防する新規な物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一は、痛風を治療・予防する組成物を製造するための梅エキスの使用を提供する。
【0012】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物はさらに、血中尿酸の降下、血脂の降下及び/或いは炎症の抑制に用いられる。
【0013】
本発明の第二は、高尿酸血症を治療・予防する組成物を製造するための梅エキスの使用を提供する。
【0014】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)痛風性関節炎の治療に用いられる。
【0015】
本発明の第三は、痛風性関節炎を治療する組成物を製造するための梅エキスの使用を提供する。
【0016】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)血中尿酸の降下に用いられる。
【0017】
本発明の第四は、血脂を降下させる組成物を製造するための梅エキスの使用を提供する。
【0018】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)血中尿酸の降下に用いられる。
【0019】
本発明の第五は、痛風発症頻度を低減する組成物を製造するための梅エキスの使用を提供する。
【0020】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物はさらに、(a)血中尿酸の降下、(b)血脂の降下及び/或いは(c)炎症の抑制に用いられる。
【0021】
本発明の第六は、痛風の治療・予防、高い血中尿酸の降下、痛風性関節炎の治療及び/或いは血脂の降下に用いられる梅エキスを提供する。
【0022】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは、梅の花、枝、葉、根及び/或いは幹の水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物を含む。
【0023】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは、梅の非果実部の抽出物、特に梅の花、枝及び/或いは葉の抽出物である。
【0024】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは、超臨界CO2抽出物、有機溶媒抽出物、水抽出物或いはそれらの混合物である。
【0025】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは、スクアレンを抽出物の全重量に対して0.5−50wt%含有する。
【0026】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは、下記の十種の化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
もう一つの好ましい例において、前述の梅は、バラ科の梅であり、好ましくは青梅である。
【0034】
本発明の第七は、痛風の治療・予防、高い血中尿酸の降下、痛風性関節炎の治療及び/或いは血脂の降下に用いられる梅組成物を提供する。
【0035】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、薬物組成物、食品組成物または健康食品組成物を含む。
【0036】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、梅果実エキス、茶エキス、ビタミン及びそれらの組合せからなる群から選ばれる追加の成分を含む。
【0037】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、さらに追加の血中尿酸を降下させる成分を含む。
【0038】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、さらに追加の血脂を降下させる成分を含む。
【0039】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、さらに追加の炎症を抑制する成分を含む。
【0040】
もう一つの好ましい例において、前述の組成物は、
(i)粉剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、内用液、錠剤またはトローチ剤と、
(ii)ドリンク又はワインと、
からなる群から選ばれるものである。
【0041】
本発明の第八は、必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風を治療・予防する方法を提供する。
【0042】
本発明の第九は、必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、高い血中尿酸を降下させる方法を提供する。
【0043】
本発明の第十は、必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風性関節炎を治療する方法を提供する。
【0044】
本発明の第十一は、必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、血脂を降下させる方法を提供する。
【0045】
本発明の第十二は、必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風発症頻度を低減する方法を提供する。
【0046】
もう一つの好ましい例において、前述の投与量は平均で一日あたり500−1000mg/60kg体重であり、投与時間は1週間−1年間またはそれ以上である。
【0047】
もう一つの好ましい例において、前述の対象は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0048】
もう一つの好ましい例において、前述の梅エキスは梅非果実エキスである。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、抗炎症、鎮痛及び尿酸降下などの面で効果を発揮し、痛風を有効に治療・予防することができる新規な物質が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明者は幅広く深く研究したところ、意外なことに、梅エキス、特に梅の非果実部の水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物(例えば、超臨界CO2抽出物、有機溶媒抽出物及び/或いは水溶液抽出物)は、有効に血中尿酸を降下させ、痛風性関節炎を治療し、血脂を降下させ、痛風発症回数を低減し、またはUA(血中尿酸)、LPO(血漿過酸化脂質)、SOD(超酸化物不均化酵素)、NO2-/NO3-の変化に影響を与えるなどの多種の経路で痛風を治療することができるため、痛風の予防や高尿酸血症の抑制などの分野に用いられることを見出した。
【0051】
本文に用いられるように、用語の「組成物」は、(a)痛風を治療・予防する組成物、(b)高い血中尿酸を降下させる組成物、及び/或いは(c)尿酸を降下させる組成物を含む。
【0052】
本文に用いられるように、梅(Prunus mume Sieb. Et Zucc)はバラ科(Rosaceae)の植物である。本発明に使用される梅は、白梅、青梅、紅梅を含み、好ましくは青梅である。
【0053】
本発明により提供される梅エキスは、梅の全体に由来してもよいが、そのうちの非果実部に由来することが好ましい。前述の非果実部は、花、枝、幹、根又は葉を含む。梅花は、主に着果していない花であり、人工的に採取してから、晒す、炒めるまたはベークすることで乾燥した後、使用に備える。梅枝は、春に枝抜きされた栄養枝や秋に剪定された枝であってもよく、梅樹が伐採された後の枝であってもよいが、晒して乾燥し、切断、粉砕した後、使用に備える。梅幹と梅根は、伐採された梅樹に由来する。梅葉は通常、夏と秋に二回収集し、晒して乾燥した後、使用に備える。
【0054】
本文に用いられるように、用語の「抽出物」は、水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物を含む。また、この用語は、アルコール抽出物や水抽出物も含む。さらに、有効画分群、即ち脂溶性有効画分及び水溶性有効画分の抽出物或いはそれらの混合物も含む。
【0055】
本発明に適用する梅エキスは特に限定されず、梅の果実或いは非果実部を原料として通常方法により得られる水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物であればよい。
【0056】
好ましい例において、脂溶性有効画分とは、上述の非果実部を超臨界CO2または非極性有機溶媒で抽出して得られる、長鎖アルカン、ポリエン、VE及びステロール系化合物を含有する抽出物である。水溶性有効画分とは、超臨界CO2で抽出したまたは有機溶媒で浸出したものから溶媒を揮発させ、水性溶媒で浸出し、且つ他の高速の抽出・分離手段を併用して得られる、フラボンとトリテルペノイドサポニンを含有するものである。
【0057】
好ましくは、梅非果実部有効画分群の製造方法は、梅花、梅枝、梅幹、梅根、梅葉などをそれぞれ原料として、階段的に抽出するものである。
【0058】
(1)梅花、梅枝、梅幹、梅根、梅葉をそれぞれ原料として、乾燥、粉砕してから、超臨界CO2または非極性有機溶媒で抽出し、長鎖アルカン、ポリエン、VE、トリテルペノイド及びステロール系化合物を多量含有する抽出物、即ち花、枝、幹、根、葉の脂溶性有効画分を得る。
【0059】
(2)超臨界CO2で抽出したまたは有機溶媒で浸出したものから溶媒を揮発させ、体積百分率が0−50%のエタノール−水溶液で浸出し、且つマイクロ波支援抽出や超音波支援抽出及びメンブレン分離などの手段を併用しフラボンとトリテルペノイドサポニンを多量含有する抽出物、即ち花、枝、幹、根、葉の水溶性有効画分を得る。
【0060】
(3)上述の花、枝、幹、根、葉の脂溶性有効画分と水溶性有効画分を実際の生薬抽出量で合併して均一に混合し、梅非果実部有効画分群を得る。
【0061】
具体的には、梅非果実部アルコール抽出物の製造方法は、梅花、梅枝、梅幹、梅根、梅葉などを原料として、任意の方法で乾燥・粉砕した後、所定の体積のメタノールまたはエタノール溶液を添加し、浸出、熱還流抽出、マイクロ波支援抽出または超音波支援抽出を行うことによって抽出した抽出液をろ過し、濃縮し、乾燥して、梅非果実部アルコール抽出物を得るものである。メタノールまたはエタノール溶液の体積濃度は70−95%であることが好ましい。
【0062】
具体的には、梅非果実部水抽出物の製造方法は、梅花、梅枝、梅幹、梅根、梅葉などを原料として、水で浸漬して膨潤させてから熱還流抽出を行い、抽出液を所定の体積(普通は1:1の生薬量)に濃縮した後、食用アルコールを加えてエタノール沈殿し(エタノールの最終濃度は50−70%)、上澄みを取り、エタノールを減圧回収し、原料液を所定の固形分含有量(普通は15−30%)に濃縮した後、スプレー乾燥や真空乾燥して、梅非果実部水抽出物を得るものである。
【0063】
梅果実部の抽出物は、本分野で常用な方法によって得られる。
用途
梅エキスは痛風を治療・予防する組成物における有効成分として用いることができる。前述の梅エキスは、梅非果実部脂溶性有効画分、梅非果実部水溶性有効画分、梅非果実部アルコール抽出物、梅非果実部水抽出物、梅果実部抽出物或いはそれらの混合物を含んでもよい。梅非果実部の脂溶性有効画分、水溶性有効画分及び梅果実部抽出物を含むことが好ましく、梅非果実部の脂溶性有効画分と水溶性有効画分を含むことがより好ましい。
【0064】
組成物における前述の梅エキスは下記の十種の化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する。
I スクアレン(Squalene)
II フリーデリン(Friedelin)
III フィトール(Phytol)
IV シトステロール(Sitosterol)
V クエン酸(Citric acid)
VI 酒石酸(Tartaric acid)
VII リンゴ酸(Malic acid)
VIII クロロゲン酸(Chlorogenic acid)
IX コハク酸(Succinic acid)
X ケルセチン(Quercetin)及びその誘導体。
【0065】
組成物における活性成分として、前述の梅非果実抽出物の他に、例えば梅果実エキス、茶エキス、ビタミン或いはそれらの組合せのような痛風の治療・予防に寄与する追加成分を含有してもよい。
【0066】
本発明に係る組成物において、さらに痛風治療・予防、血中尿酸降下、尿酸生成抑制、尿酸排泄促進、血脂降下または消炎・鎮痛の効果を有する茶葉エキス、プリン系化合物(例えばアロプリノール)、プロベネシド、スルフィンピラゾン、スタチン系化合物(例えば、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン)、ホルモン(例えば糖質コルチコイド、ステロイドホルモン)のような他の物質(エキスや化合物)を含んでもよい。
【0067】
本発明に係る梅エキスは血中尿酸を降下させる組成物における活性成分として用いてもよい。前述の梅エキスは、梅非果実部脂溶性有効画分、梅非果実部水溶性有効画分、梅非果実部アルコール抽出物、梅非果実部水抽出物、梅果実部抽出物或いはそれらの混合物を含んでもよい。梅非果実部の脂溶性有効画分、水溶性有効画分及び梅果実部抽出物を含むことが好ましく、梅非果実部の脂溶性有効画分と水溶性有効画分を含むことがより好ましい。
【0068】
本発明に係る組成物においては、さらに他の血中尿酸降下作用を有する物質を含んでもよい。
【0069】
本発明に係る梅エキスは血脂を降下させる組成物における活性成分として用いてもよい。前述の梅エキスは、梅非果実部脂溶性有効画分、梅非果実部水溶性有効画分、梅非果実部アルコール抽出物、梅非果実部水抽出物、梅果実部抽出物或いはそれらの混合物を含んでもよい。梅非果実部の脂溶性有効画分、水溶性有効画分及び梅果実部抽出物を含むことが好ましく、梅非果実部の脂溶性有効画分と水溶性有効画分を含むことがより好ましい。
【0070】
本発明に係る組成物においては、さらに他の血脂降下作用を有する物質を含んでもよい。
【0071】
本発明に係る梅エキスは痛風性関節炎を治療する組成物における活性成分として用いてもよい。前述の梅エキスは、梅非果実部脂溶性有効画分、梅非果実部水溶性有効画分、梅非果実部アルコール抽出物、梅非果実部水抽出物、梅果実部抽出物或いはそれらの混合物を含んでもよい。梅非果実部の脂溶性有効画分、水溶性有効画分及び梅果実部抽出物を含むことが好ましく、梅非果実部の脂溶性有効画分と水溶性有効画分を含むことがより好ましい。
【0072】
本発明に係る組成物においては、さらに他の痛風性関節炎治療作用を有する物質を含んでもよい。
【0073】
本発明において、各種の組成物は本分野に良く知られる方法で調製することができ、活性成分を通常の賦形剤、矯味剤、崩壊剤、防腐剤、滑沢剤、湿潤剤、バインダー、溶媒、増粘剤または相溶化剤などの薬物佐剤と混合し、粉剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、経口液体製剤などの臨床に適用する剤形とすることができる。
【0074】
前述の組成物は健康食品や機能性食品またはサプリメントであってもよく、健康ドリンク、ワインなどであってもよい。
【0075】
本発明により提供される痛風を治療・予防するための組成物は、その有効投与量が、それに含まれる活性成分(梅非果実エキス)で一日あたり0.01−5グラム/60キロ体重で、好ましくは0.1−2.0グラム/60キロ体重である。
【0076】
本発明の主な利点は、
1.梅エキスは顕著な痛風治療・予防機能を有する。
2.梅エキスは顕著な血中尿酸降下機能を有する。
3.梅エキスは顕著な血脂降下機能を有する。
4.梅エキスは顕著な痛風性関節炎治療機能を有する。
5.従来捨てられる梅非果実部を十分に利用し、資源の浪費を低減し、環境保全に寄与する。
6.梅資源の利用率を向上させ、梅林の経済的便益を向上させ、農民の収入増加に寄与する。
【0077】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるものだけで、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。特に説明しない限り、すべての%と部は重量基準である。
【0078】
別途に定義しない限り、文中に使用されるすべての専門・科学用語は、本分野の熟練者によく知られる意味と同じである。また、記載される内容に類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明の方法に使用することができる。文中に記載の好ましい実施形態及び材料は列挙だけのためである。
【実施例】
【0079】
[実施例1]
青梅花抽出物
蕭山大青梅の品種である大葉青(Prunus mume‘Da Ye Qing’)の花を採取、乾燥して、10メッシュ程度の粗粉末に粉砕し、15kgを取り、超臨界抽出用クレーブに入れて抽出した。
【0080】
抽出圧力35MPa、抽出温度60℃、分離温度40℃、分離圧力4MPaの抽出条件で動的循環抽出を2時間行い、分離用クレーブ中で梅花の脂溶性抽出物を720g得た(Dietmate(登録商標)(杭州尤美特科技株式会社の商標)-F01)。
【0081】
GC−MS分析により、この抽出物には主に長鎖アルカン、ポリエン、V、植物ステロール及びトリテルペノイド系化合物が含まれ、そのうちの特性化合物であるスクアレン(テトラコサヘキサエン)は、脂溶性有効画分における含有量が質量分数で1.04%であった。
【0082】
抽出用クレーブから抽出残分を取り出し、30%エタノール−水溶液で熱還流抽出を行った。
【0083】
温度80℃、原料−溶液比1:10(W/V)の抽出条件で熱還流抽出を2時間行い、梅花の水溶性抽出物を1140g得た(Dietmate(登録商標)-F02)。
【0084】
分析により、全フラボン含有量は18.84%、全トリテルペノイドサポニン含有量は7.08%、全酸は5.64%であった。赤外スペクトルにより、この抽出物は3404、2929、1606、1516、1403、1270、1078、868、818、780、612cm−1付近に特性吸収ポークを有した。紫外スペクトルにより、この抽出物は327nmに強い吸收を示し、290nmに2番目の強い吸收を示した。
【0085】
F01とF02を合併して、梅花の有効画分群を得た(Dietmate(登録商標)-F0)。
[実施例2]
青梅枝抽出物
蕭山大青梅の品種である細葉青(Prunus mume‘Xi Ye Qing’)の枝を採取、乾燥して、10メッシュ程度の粗粉末に粉砕し、15kgを取り、超臨界抽出用クレーブに入れて抽出した。
【0086】
抽出圧力30MPa、抽出温度55℃、分離温度45℃、分離圧力4MPaの抽出条件で動的循環抽出を2時間行い、梅枝の脂溶性抽出物を645g得た(Dietmate(登録商標)-B01)。
【0087】
GC−MS分析により、この抽出物には主に長鎖アルカン、ポリエン、V、植物ステロール及びトリテルペノイド系化合物が含まれ、そのうちの特性化合物であるスクアレン(テトラコサヘキサエン)は、脂溶性有効画分における含有量が質量分数で4.87%であった。
【0088】
抽出用クレーブから抽出残分を取り出し、30%エタノール−水溶液で熱還流抽出を行った。
【0089】
温度80℃、原料−溶液比1:15(W/V)の抽出条件で還流抽出を2時間行い、梅枝の水溶性抽出物を2400g得た(Dietmate(登録商標)-B02)。
【0090】
分析により、全フラボン含有量は40.59%、全トリテルペノイドサポニン含有量は19.07%、全酸は3.70%であった。赤外スペクトルにより、この抽出物は3406、2926、1609、1519、1447、1394、1284、1070、611cm−1付近に特性吸収ポークを有した。紫外スペクトルにより190−700nmの波長範囲内でこの抽出物に走査した結果、280nmに強い吸收を示し、320nmに2番目の強い吸收を示した。
【0091】
B01とB02を合併して、梅枝の有効画分群を得た(Dietmate(登録商標)-B0)。
[実施例3]
青梅葉抽出物
蕭山大青梅の品種である紅頂(Prunus mume ‘Hong Ding’)の葉を採取、乾燥して、10メッシュ程度の粗粉末に粉砕し、15kgを取り、超臨界抽出用クレーブに入れて抽出した。
【0092】
抽出圧力35MPa、抽出温度55℃、分離温度40℃、分離圧力6MPaの抽出条件で動的循環抽出を2時間行い、梅葉の脂溶性抽出物を975g得た(Dietmate(登録商標)-L01)。
【0093】
GC−MS分析により、この抽出物には主に長鎖アルカン、ポリエン、V、植物ステロール及びトリテルペノイド系化合物が含まれ、そのうちの特性化合物であるスクアレン(トリアコンタヘキサエン)は、脂溶性有効画分における含有量が質量分数で44.15%であった。
【0094】
抽出用クレーブから抽出残分を取り出し、30%エタノール−水溶液で熱還流抽出を行った。
【0095】
温度70℃、原料−溶液比1:12(W/V)の抽出条件で抽出を3時間行い、梅葉の水溶性抽出物を1680g得た(Dietmate(登録商標)-L02)。分析により、全フラボン含有量は30.46%、全トリテルペノイドサポニン含有量は4.93%、全酸は5.96%であった。赤外スペクトルにより、この抽出物は3386、2932、1596、1516、1404、1314、1074、776、721、611、527cm−1付近に特性吸収ポークを有した。紫外スペクトルにより、この抽出物は322nmに強い吸收を示し、285nmに2番目の強い吸收を示した。
【0096】
L01とL02を合併して、梅葉の有効画分群を得た(Dietmate(登録商標)-L0)。
[実施例4]
青梅幹抽出物
蕭山大青梅の品種である紅豊(Prunus mume ‘Hong Feng’)の梅幹を原料として、採取、乾燥して、10メッシュ程度の粗粉末に粉砕し、15kgを取り、30%エタノール溶液150Lを加え、熱還流抽出した。
【0097】
温度70℃、原料−溶液比1:10(W/V)の抽出条件で抽出を3時間行って得られた抽出液をろ過、減圧濃縮、スプレー乾燥して、梅幹のアルコール抽出物を584g得た(Dietmate(登録商標)-H1)。
[実施例5]
青梅根抽出物
蕭山大青梅の品種である大葉青(Prunus mume‘Da Ye Qing’)の根を原料として、採取、乾燥して、10メッシュ程度の粗粉末に粉砕し、15kgを取り、純水250Lを加えて3時間含浸した後、マイクロ波支援抽出を行った。
【0098】
出力1000W、原料−溶液比1:10(W/V)、1時間の抽出条件で得られた抽出液をろ過して、1:1程度の生薬体積に濃縮し、3倍体積の食用アルコールを加え、均一に攪拌してから、4℃程度の冷蔵庫に一晩放置し、上澄みを取り、エタノールを減圧回収し、抽出液を固形分含有量が20%になるように濃縮し、スプレー乾燥して、梅根の水抽出物(Dietmate(登録商標)-R2)を467g得た。
[実施例6]
実施例1、2、3で製造したDietmate(登録商標)-F02、B02、L02と、ビタミンA、Bなどの材料とを、表1の配合で混合し、1瓶につき100mLの内用液とした。
【0099】
【表1】

【0100】
[実施例7]
梅非果実部抽出物による抗痛風動物試験
1.実験材料
ラット用足蹠容積測定装置(浙江中医薬大学より購入)、4℃の冷蔵庫、1mL注射器、6注射針、ろ紙;尿酸、NaOH、HCl、生理食塩水、蒸留水など。
【0101】
雄SDラット(浙江省医学科学院実験動物センターより購入)
梅非果実部抽出物サンプル:実施例1、2、3でそれぞれ製造したDietmate(登録商標)-F0、B0、L0。
2.実験方法
(1)尿酸ナトリウム結晶及び尿酸ナトリウム溶液の調製
蒸留水194mLを取り、NaOH(1mol/L) 6mLを加え、沸かして尿酸1gを加え、HCl(1mol/L)でpHを7.2に調整し、室温で攪拌して冷却し、4℃の冷蔵庫中で24時間保管し、上澄みを捨て、ろ紙で沈殿における水分を吸収し、オーブン(70℃)で2時間乾燥し、粉末を取り、乳鉢に入れて細粉末に研磨し、目開き250μmの金属製メッシュでろ過し、瓶に入れて使用に供する。
【0102】
尿酸ナトリウム結晶(MSU)500mgを取り、生理食塩水9mLを加えるとともに1mLのTween-80を加え、加熱攪拌を行い、尿酸ナトリウム溶液10mLを調製して使用に供する。
【0103】
(2)動物モデルの構築
注射針を用いて被験ラットの右後肢脛足根骨関節背側45℃方向から脛骨前部腱内側に挿入し、MSU懸濁液0.1mL(50mg/mL)を足関節腔注入した。
【0104】
(3)動物試験
雄SDラットを30匹取り、1群につき5匹でランダムに5群(Dietmate(登録商標)-F0、B0、L0群、モデル対照群、正常対照群)に分け、モデル構築前2日から、一日一回で胃灌流投与(500mg/kg)を開始した。モデル対照群、正常対照群では、同様な体積の生理食塩水で胃灌流を行った。
【0105】
実験当日に、胃灌流投与から1時間後、6注射針を用いて被験ラットの右後肢脛足根骨関節背側45℃方向から脛骨前部腱内側に挿入し、MSU懸濁液0.1mL(50mg/mL)を足関節腔注入し、起炎させた。
【0106】
各群のラットについて、それぞれモデル構築前、モデル構築から1時間、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間、72時間で、被験ラットの足蹠容積を計測した。起炎前後の足蹠容積の差を腫脹率として、群間比較を行った。
【0107】
【数1】

【0108】
3.試験の結果及び分析
表2に示すように、モデル対照群、Dietmate(登録商標)-B0、F0、L0群では、6時間で腫脹度が一番高く、24時間或いは48時間で顕著に消褪したが、Dietmate(登録商標)-B0群では、4時間で腫脹度が一番高く、6時間で消褪しつつあり、24時間で顕著に消褪した。
【0109】
【表2】

【0110】
表3に示すように、足蹠腫脹率に対する影響について、起炎から1時間では、Dietmate(登録商標)-F0群とモデル対照むれの差は極めて有意であり、起炎から2時間では、Dietmate(登録商標)-F0、L0群とモデル対照むれの差は極めて有意であり、起炎から4時間、48時間では、Dietmate(登録商標)-F0群とモデル対照むれの差は極めて有意であり、起炎から6時間では、Dietmate(登録商標)-B0、F0、L0群とモデル対照むれの差はいずれも極めて有意であった。
【0111】
【表3】

【0112】
結果から明らかなように、梅花有効画分群Dietmate(登録商標)-F0は痛風性関節炎ラットの足蹠腫脹度を顕著に降下させることができるとともに、足蹠腫脹が6時間で顕著に消褪し、48時間で起炎前のレベルに達し、且つ足蹠腫脹が起炎から2時間で開始したので、腫脹期間が大幅に短縮した。
【0113】
梅葉有効画分群Dietmate(登録商標)-L0は起炎から2時間で痛風性関節炎ラットの足蹠腫脹度を極めて顕著に降下させたが、起炎から6時間ではその抑制作用が低減しつつあった。
【0114】
梅枝有効画分群Dietmate(登録商標)-B0は起炎から6時間で痛風性関節炎ラットの足蹠腫脹度を顕著に降下させたが、起炎から48時間ではその抑制作用が低減しつつあった。
[実施例8]
梅花抽出物による高尿酸血症治療に関する臨床的観察
1.症例の選択
すべての症例は、選択される前に二回以上の採血によって高血脂が確証されており、且つ血中尿酸含有量が正常値より高かった。合計で60例選択し、そのうち、男性は45例で、女性は15例で、年齢は38−75歳で、平均で58.6歳であった。選択された症例には、高血糖のものは10例、高血圧のものは25例、冠動脈性心疾患のものは9例含まれた。
【0115】
2.診断基準
血中尿酸(HUA)濃度:男性≧417μmol/L、女性≧339μmol/L(血中尿酸は酵素法で測定された)。
【0116】
3.投与方法
治療前四週間から血脂降下薬及びプリン代謝に影響する薬物の投与を一切停止させた。実施例1で製造した梅花有効画分群(Dietmate(登録商標)-F0)含有カプセルを一日2粒、Dietmate(登録商標)-F0投与量換算で400mg/日/人で30日間投与し続けた。
【0117】
4.観察方法
すべての症例について、投与前後の血中尿酸、血脂、血液レオロジー、血糖、肝臓・腎臓機能、血・尿ルーチン検査、心電図、眼底、さらに左手薬指の爪の微小循環に対する検査を行った。
【0118】
5.結果
Dietmate(登録商標)-F0投与後、58例は血中尿酸が顕著に降下したが(p<0.01)、2例は有意な変化がなかった。治療効果は表4に示す。すべての症例はDietmate(登録商標)-F0投与期間で、症状と生化学検査の面では不良反応がなかった。
【0119】
【表4】

【0120】
尿酸はトリオキシプリンであり、プリンの合成代謝の増強及び尿酸排泄の低減は血中尿酸増加の重要な機序である。高尿酸血症は内科でよく見られる病症であり、原発性と続発性の二種に分けられる。通常は、アルカリ性薬物とアロプリノールで治療される。
【0121】
本発明は、梅花抽出物Dietmate(登録商標)-F0を適用することにより高尿酸血症を治療したが、結果から明らかなように、Dietmate(登録商標)-F0による治療の前後では、血中尿酸レベルが極めて有意な差があり、且つ何の副作用もない。Dietmate(登録商標)-F0は痛風を治療・予防する効果を有することが示唆された。
[実施例9]
梅非果実部抽出物による高尿酸血症の抑制及び痛風発作の予防に関する臨床的観察
1.実験方法
米国リウマチ協会の痛風の診断基準に従って、原発性痛風の患者を観察対象として、数は合計60例で、全て男性で、年齢は42−65歳で、平均で50.2±7.6歳であった。高血脂症を伴うものは42例、高血圧症を伴うものは10例、冠動脈性心疾患を伴うものは6例であった。糖尿病患者は3例で、肝臓・腎臓機能が正常であった。
【0122】
2.治療方法
痛風の急性発作期を抑えた後、観察対象を受診番号でランダムに2群に分けた。
【0123】
イ群は実験群で、数は30例で、実施例6で製造した内用液を一日二回、一回につき10mL(一日あたり抽出物投与量1.2グラム/60キロ体重に相当)で60日間経口投与し続けた。
【0124】
ロ群は対照群で、数は30例で、プロベネシド(500mg、一日3回、60日間続けた)、アロプリノール(0.1g、一日2回、60日間)を経口投与した。
【0125】
二群はいずれも、患者に飲酒をやめさせ、高プリン食を避けさせた。3ヶ月後、二群の患者に対する治療効果を比較するように、患者の痛風急性発作の状況を追跡調査した。
【0126】
3.実験室検査
治療前後で、観察対象の末梢静脈血サンプルを取り、以下のように試験による検査を行った。
【0127】
血脂は、酵素結合試薬比色法(キットは上海十八製薬工場より購入)で血清総コレステロール(CH)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパクコレステロール(HDL−C)を測定し、フリードワルドの式で低密度リポタンパクコレステロール(LDL−C)を算出した。血中尿酸(UA)は、りんタングステン酸還元法で測定した。血中クレアチニン(CRE)はピクリン酸法で測定した。血清総タンパク(SP)はビウレット法で測定した。血清アルブミン(A)はブロモクレゾールグリーン法で測定した。グロブリン(G)は血清総タンパクからアルブミンを引いて得た。グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)はライトマン・フランケル法で測定した。ビリルビンは酵素法で測定した。血清ブドウ糖は酸化酵素法で測定した。血漿過酸化脂質(LPO)はチオバルビツール酸蛍光法で測定した。赤血球内における超酸化物不均化酵素(SOD)はピロガロール自動酸化法で測定した。血漿一酸化炭素(NO)は銅カドミウムカラム還元法により血漿サンプルのNO2-/NO3-濃度を検出した。
【0128】
4.結果及び分析(治療前後の痛風発作頻度の比較)
(1)治療前後の痛風発作頻度の比較の結果は表5に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
結果から明らかなように、イ群は、実施例6で製造した内用液により治療された後、痛風発作回数が治療前より少なく、有意差があり(P<0.05)、且つ陽性対照群とは比較可能性があった。
【0131】
(2)治療前後の血脂の変化の結果は表6に示す。
【0132】
【表6】

【0133】
結果から明らかなように、イ群の患者の治療前後の血脂は有意差があり(P<0.05)、治療後のイ群の患者の血脂はロ群の患者の血脂に比べて有意差があった(P<0.05)。
【0134】
(3)治療前後の血中UA、LPO、SOD、NOの変化の結果は表7に示す。
【0135】
【表7】

【0136】
結果から明らかなように、イ群の患者の治療前後のUA、LPO、SOD、NO2-/NO3-は有意差があり、治療後のイ群の患者のUA、LPO、SOD、NO2-/NO3-はロ群の患者のUA、LPO、SOD、NO2-/NO3-に比べて有意差があった。
【0137】
(4)痛風発作と血脂、UA、LPO、NOの関連性分析
関連性分析から明らかなように、痛風発作は血脂、UA、LPO、NOの含有量に正相関を示した。
【0138】
痛風はプリン代謝障害及び尿酸ナトリウム塩から形成される痛風石の沈積によって生じるものであって、痛風石性慢性関節炎と痛風性腎症を臨床的特徴とし、且つ高脂血症、高血圧症、糖尿病、動脈硬化、冠動脈性心疾患などを伴うことが多い。本発明により提供される梅エキス、特に梅非果実部抽出物は、主成分がフラボン配糖体、トリテルペノイドサポニン、有機酸などの活性物質であり、脂質過酸化防止、血脂降下、免疫増強などの薬理作用を有する。
【0139】
発明者はこれを原発性痛風の重積発作の予防に適用することにより、高脂血症を伴う、肝臓・腎臓機能が正常の原発性痛風患者に実施例6で製造した内用液を3ヶ月投与させてから追跡調査したところ、この内用液が投与された患者の痛風再発回数は治療前よりも顕著に低減した、この内用液が投与された患者の血脂、UA、LPO、NOなどの指標も全面的に改善された。
【0140】
結果から明らかなように、本発明により提供される梅エキス、特に梅非果実部有効画分群(脂溶性有効画分と水溶性有効画分)は顕著な抗痛風作用を有し、且つその血脂降下作用に関する可能性がある。
[実施例10]
実施例1で製造したDietmate(登録商標)-F0 500gと薬用澱粉500gを原料として、何の他の成分も添加せず、正味重量で1粒につき300mgの0カプセルに製作した。
【0141】
痛風患者9名にこのカプセルを一日二回、一回につき2粒で投与した。1ヶ月後、それらの飲食・活動習慣を変更させない場合は、10名の痛風患者の平均痛風発作回数が顕著に低減したことから、梅花有効画分群(Dietmate(登録商標)-F0)500gが顕著に痛風発作回数を低減する機能を有することが示唆された。
[実施例11]
実施例1、2、3で製造したDietmate(登録商標)-F0、B0、L0と、こんにゃく精粉、筍食物繊維微粉末、薬用澱粉などの材料とを、表8に示す配合にしたがって複方配合して、錠剤にした。
【0142】
【表8】

【0143】
痛風患者5名に該当錠剤を一日二回、一回につき1錠(1錠につき2グラム)で投与した。1ヶ月後、他の飲食・活動習慣を変更させない場合は、6名の痛風患者の痛風症状が顕著に改善されたことから、上記錠剤が顕著な抗痛風効果を有することが示唆された。
[実施例12]
実施例4で製造したDietmate(登録商標)-H1(100g)を原料として、そのままアルコール度が18%の紹興酒1000Lに添加して、十分に溶解させ、均一に混合し、缶に入れて得られた梅健康酒を常に少量飲むと、顕著な抗痛風効果が発揮する。
【0144】
以上で記述されたのは本発明の好適な実施例に過ぎないものであり、本発明に係る実質的な技術内容の範囲はこれによって限定されるものではない。本発明の実質的な技術内容は、広汎に特許請求の範囲内に定義される。他人に完成された如何なる技術実体や方法は、特許請求の範囲に定義されたものとまったく同一であり、又は同等効果の変更であれば、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痛風を治療・予防する組成物を製造するための梅エキスの使用。
【請求項2】
前述の組成物はさらに、血中尿酸の降下、血脂の降下及び/或いは炎症の抑制に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
高尿酸血症を治療・予防する組成物を製造するための梅エキスの使用。
【請求項4】
前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)痛風性関節炎の治療に用いられることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
痛風性関節炎を治療する組成物を製造するための梅エキスの使用。
【請求項6】
前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)血中尿酸の降下に用いられることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
血脂を降下させる組成物を製造するための梅エキスの使用。
【請求項8】
前述の組成物はさらに、(a)痛風の治療及び/或いは(b)血中尿酸の降下に用いられることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
痛風発症頻度を低減する組成物を製造するための梅エキスの使用。
【請求項10】
前述の組成物はさらに、(a)血中尿酸の降下、(b)血脂の降下及び/或いは(c)炎症の抑制に用いられることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前述の組成物は、薬物組成物、食品組成物または健康食品組成物を含むことを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前述の梅エキスは、梅の花、枝、葉、根及び/或いは幹の水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物を含むことを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前述の梅は、バラ科の梅であり、好ましくは青梅であることを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前述の組成物は、梅果実エキス、茶エキス、ビタミン及びそれらの組合せからなる群から選ばれる追加の成分を含むことを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前述の梅エキスは、下記の十種の化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項16】
前述の組成物は、
(i)粉剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、内用液、錠剤またはトローチ剤と、
(ii)ドリンク又はワインと、
からなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
痛風の治療・予防、高い血中尿酸の降下、痛風性関節炎の治療及び/或いは血脂の降下に用いられる梅エキス。
【請求項18】
前述の梅エキスは、梅の花、枝、葉、根及び/或いは幹の水溶性及び/或いは脂溶性の抽出物を含むことを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【請求項19】
前述の梅エキスは、梅の非果実部の抽出物、特に梅の花、枝及び/或いは葉の抽出物であることを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【請求項20】
前述の梅エキスは、超臨界CO2抽出物、有機溶媒抽出物、水抽出物或いはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【請求項21】
前述の梅エキスは、スクアレンを抽出物の全重量に対して0.5−50wt%含有することを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【請求項22】
前述の梅エキスは、下記の十種の化合物から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【請求項23】
前述の梅は、バラ科の梅であり、好ましくは青梅であることを特徴とする、請求項17に記載の梅エキス。
【請求項24】
痛風の治療・予防、高い血中尿酸の降下、痛風性関節炎の治療及び/或いは血脂の降下に用いられる梅組成物。
【請求項25】
前述の組成物は、薬物組成物、食品組成物または健康食品組成物を含むことを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項26】
前述の組成物は、梅果実エキス、茶エキス、ビタミン及びそれらの組合せからなる群から選ばれる追加の成分を含むことを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項27】
前述の組成物は、さらに追加の血中尿酸を降下させる成分を含むことを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項28】
前述の組成物は、さらに追加の血脂を降下させる成分を含むことを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項29】
前述の組成物は、さらに追加の炎症を抑制する成分を含むことを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項30】
前述の組成物は、
(i)粉剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、内用液、錠剤またはトローチ剤と、
(ii)ドリンク又はワインと、
からなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項24に記載の梅組成物。
【請求項31】
必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風を治療・予防する方法。
【請求項32】
必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、高い血中尿酸を降下させる方法。
【請求項33】
必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風性関節炎を治療する方法。
【請求項34】
必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、血脂を降下させる方法。
【請求項35】
必要とする対象に梅エキスを投与する工程を含む、痛風発症頻度を低減する方法。
【請求項36】
前述の投与量は平均で一日あたり500−1000mg/60kg体重であり、投与時間は1週間−1年間またはそれ以上であることを特徴とする、請求項31−35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前述の対象は哺乳動物、好ましくはヒトであることを特徴とする、請求項31−35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前述の梅エキスは梅非果実エキスであることを特徴とする、請求項31−35のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2011−522791(P2011−522791A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507772(P2011−507772)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070874
【国際公開番号】WO2009/135351
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510292788)ハンゾウ ユー‐メイト サイエンス アンド テクニック カンパニー., リミテッド (2)
【出願人】(510292799)ヤンタイ ニュー エラ ヘルス インダストリー カンパニー, リミテッド (2)
【Fターム(参考)】