説明

組成物及び該組成物を用いてなる発光素子

【課題】発光素子等に用いた場合に発光効率が優れた発光材料を提供する。
【解決手段】下記式(1−1)〜(1−4):


[式中、Rは水素原子又は置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。]
で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物と、燐光発光性化合物とを含む組成物、並びに前記式(1−1)〜(1−4)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基と、燐光発光性化合物の残基とを含む高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び該組成物を用いてなる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の発光層に用いる発光材料として、三重項励起状態からの発光を示す化合物(以下、「燐光発光性化合物」ということがある。)を発光層に用いた素子は発光効率が高いことが知られている。燐光発光性化合物を発光層に用いる場合、通常は、該化合物をマトリックスに添加してなる組成物を発光材料として用いる。マトリックスとしては、塗布によって薄膜が形成できることから、ポリビニルカルバゾールが使用されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、この化合物は、最低非占分子軌道(以下、「LUMO」という。)のエネルギーレベルが高いため、電子を注入しにくい。一方、ポリフルオレン等の共役系高分子化合物は、LUMOが低いため、これをマトリックスとして用いると、比較的容易に低駆動電圧が実現できる。ところが、このような共役系高分子化合物は、最低三重項励起エネルギー(以下、「T1エネルギー」という。)の値が小さいために、特に緑色よりも短波長発光のためのマトリックスとしての使用には適さない(特許文献2)。例えば、共役系高分子化合物であるポリフルオレンと三重項発光化合物とからなる発光材料は、三重項発光化合物からの発光が弱いため、発光効率が低い(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−50483号公報
【特許文献2】特開2002−241455号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS, 80, 13, 2308(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、発光素子等に用いた場合に発光効率が優れた発光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4):

[式中、Rは水素原子又は置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。]
で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物と、燐光発光性化合物とを含む組成物を提供する。
本発明は第二に、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基と、燐光発光性化合物の残基とを含む高分子化合物を提供する。
本発明は第三に、前記組成物又は前記高分子化合物を用いてなる薄膜及び発光素子を提供する。
本発明は第四に、前記発光素子を備えた面状光源、表示装置及び照明を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物、高分子化合物(以下、「本発明の組成物等」という)は、発光効率が高い。したがって、本発明の組成物等は、発光素子等の作製に用いた場合、発光効率が優れた発光素子が得られるものである。また、本発明の組成物等は、比較的短波長の領域の発光において、通常、比較的優れた発光性を有するが、本発明の組成物に含まれる含窒素化合物、本発明の高分子化合物のT1エネルギーの値が大きいためである。また、本発明の組成物に含まれる含窒素化合物、本発明の高分子化合物は、LUMOのエネルギーレベルも比較的低く、電子を注入し易い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<組成物>
本発明の組成物は、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)(以下、「式(1−1)〜(1−4)」と言う。)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物(以下、「前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物」ということがある。)と、燐光発光性化合物とを含む組成物である。本発明において、例えば、前記式(1−1)〜(1−4)で表される化合物の残基とは、前記式(1−1)〜(1−4)で表される化合物におけるRの一部又は全部(特には、1〜3個)を取り除いてなる基を意味する。また、「高分子化合物」は、同じ構造(繰り返し単位)が少なくとも2個化合物中に存在するものを意味する。
【0010】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、前記式(1−2)、(1−3)、(1−4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物であることがより好ましく、前記式(1−2)、(1−3)、(1−4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも3種の含窒素化合物の残基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0011】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が高分子化合物であってもよく、その場合、該含窒素化合物の残基を主鎖及び/又は側鎖に有する高分子化合物であることが好ましく、前記式(1−1)〜(1−4)で表される含窒素化合物の残基を含む繰り返し単位を有する高分子化合物や、前記式(1−1)〜(1−4)で表される含窒素化合物の残基を含む繰り返し単位に加え、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、及び後述の式(4)で表される構造から選ばれる構造のいずれかを含む繰り返し単位を有する高分子化合物が特に好ましい。
【0012】
前記式(1−1)〜(1−4)中、Rは、水素原子又は置換基を表し、好ましくは複数存在するRの少なくとも1個が置換基であり、より好ましくは複数存在するRの少なくとも2個が置換基であり、更に好ましくは複数存在するRのすべてが置換基である。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基、シアノ基等が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基である。なお、N価の複素環基(Nは1又は2)とは、複素環式化合物からN個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、本明細書において、同様である。なお、1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0014】
前記Rの少なくとも1個は、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましい。前記Rの少なくとも1個が、炭素数3〜10のアルキル基、又は炭素数3〜10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0015】
前記Rの少なくとも1個が、水素原子以外の原子の総数が3以上の置換基であることが好ましく、水素原子以外の原子の総数が5以上の置換基であることが更に好ましく、水素原子以外の原子の総数が7以上の置換基であることが特に好ましい。Rが2個存在する場合には、少なくとも1個のRは置換基であることが好ましく、2個のRが共に置換基であることがより好ましい。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物としては、下記式(A−1)又は(A−2):

[式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される含窒素化合物の残基を表す。Y1は、−C(Ra)(Rb)−、−N(Rc)−、−O−、−Si(Rd)(Re)−、−P(Rf)−又は−S−を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRfはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。mは0〜8の整数、好ましくは0〜5の整数である。Y1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Y2は、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。nは1〜5の整数である。Y2が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物、その残基を有する化合物も挙げられる。
【0017】
a、Rb、Rc、Rd、Re、Rfで表される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0018】
a、Rb、Rc、Rd、Re、Rfで表されるアリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0019】
a、Rb、Rc、Rd、Re、Rfで表される1価の複素環基としては、複素環式化合物から水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。ここで、複素環式化合物とは、環式構造を有する有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0020】
前記式(A−1)で表される化合物の残基を有する化合物は、T1エネルギーの観点から、下記式(A−1−1):

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0021】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、高分子化合物である場合には、T1エネルギーの観点から、前記式(A−1)又は(A−2)で表される化合物の残基を含む繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0022】
前記式(A−1)で表される化合物の残基を含む繰り返し単位を有する高分子化合物は、T1エネルギーの観点から、下記式(A−1−2):

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0023】
また、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、T1エネルギーの観点から、下記式(A−3):

[式中、RINGは前記式(1−1)〜(1−4)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の残基を意味する。Z環は、炭素原子、X1及びX2を含む環状構造である。X1及びX2はそれぞれ独立に、−C(R)=を表す。Rは前記と同じ意味を有する。]
で表される化合物の残基を有することも好ましい。
【0024】
前記式(A−3)中、前記環状構造としては、置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよい非芳香環が挙げられ、ベンゼン環、複素環、脂環式炭化水素環、これらの環が複数縮合してなる環、これらの環の水素原子の一部が置換された環が好ましい。
【0025】
前記式(A−1)〜(A−3)で表される化合物の残基とは、該化合物における水素原子、Rの一部又は全部を取り除いてなる基を意味する。
【0026】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、異なるHOMO/LUMOの含窒素化合物の残基を用いることによりエネルギーレベルを調整することが可能であり、電荷注入輸送性に優れる。また、対称性の観点から、非晶質性が向上し、成膜性を向上させることもできる。
【0027】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、その他の部分構造を含んでいてもよい。その他の部分構造の種類は、それが末端に存在するか否かによって好ましいその他の部分構造の種類は異なる。
【0028】
その他の部分構造が末端に存在しない場合は、LUMOのエネルギーレベルの点で、共役性の多価の基が好ましい。このような基としては、2価の芳香族基、3価の芳香族基が挙げられる。ここで、芳香族基とは、芳香族性を示す有機化合物から誘導される基である。そのような芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、キノリン、イソキノリン等の芳香環からn’個(n’は2又は3)の水素原子を結合手に置き換えてなる基が挙げられる。
【0029】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物に含まれていてもよい好ましいその他の部分構造の一例として、下記式(4):

で表される構造が挙げられる。
【0030】
前記式(4)中、P環、Q環は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。この置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基が好ましい。
【0031】
前記式(4)中、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2本の結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上又はQ環上に存在する。また、前記P環、Q環、Yを含む5員環若しくは6員環上に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。この置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基が好ましい。Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R0)−、−Si(R2)(R3)−、−P(R4)−、−P(R5)(=O)−、−C(R6)(R7)−、−N(R8)−、−C(R9)(R10)−C(R11)(R12)−、−O−C(R13)(R14)−、−S−C(R15)(R16)−、−N−C(R17)(R18)−、−Si(R19)(R20)−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−Si(R25)(R26)−、−C(R27)=C(R28)−、−N=C(R29)−、又は−Si(R30)=C(R31)−を表す。ここで、R0、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30及びR31はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。この中では、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基が更に好ましく、アルキル基、アリール基が特に好ましい。
【0032】
上記式(4)で表される構造としては、下記式(4−1)、(4−2)又は(4−3):

(式中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に芳香環を表す。式(4−1)、(4−2)及び(4−3)は、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Yは前記と同じ意味を表す。)
で表される構造、及び下記式(4−4)又は(4−5):

(式中、D環、E環、F環及びG環はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい芳香環を表す。Yは前記と同じ意味を表す。)
で表される構造が挙げられる。
【0033】
上記式(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)及び(4−5)中、A環、B環、C環、D環、E環、F環及びG環で表される芳香環としては、非置換のものを一例として示すと、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、フェナントレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ビピリジン環、フェナントロリン環、キノリン環、イソキノリン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等の複素芳香環が挙げられる。これらの芳香環は、前記置換基を有していてもよい。
【0034】
また、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物に含まれていてもよい好ましいその他の部分構造として、以下の式:

(式中、Ar6、Ar7、Ar8及びAr9はそれぞれ独立にアリーレン基又は2価の複素環基を示す。Ar10、Ar11及びAr12はそれぞれ独立にアリール基又は1価の複素環基を示す。Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11及びAr12は置換基を有していてもよい。x及びyはそれぞれ独立に0又は1を示し、0≦x+y≦1である。)
で表される構造の芳香族アミン構造が挙げられる。
【0035】
Ar6、Ar7、Ar8、Ar9で表されるアリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた残りの原子団である。芳香族炭化水素としては、縮合環をもつ化合物、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン基等を介して結合した化合物が含まれる。
【0036】
Ar6、Ar7、Ar8、Ar9で表される2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団である。2価の複素環基の炭素数は、通常、4〜60である。複素環式化合物とは、環式構造を持つ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素等のヘテロ原子を環内に含む化合物を意味する。2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。
【0037】
Ar10、Ar11、Ar12で表されるアリール基とは、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた残りの原子団である。芳香族炭化水素は、前述のとおりである。
【0038】
Ar10、Ar11、Ar12で表される1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。1価の複素環基の炭素数は、通常、4〜60である。複素環式化合物は、前述のとおりである。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0039】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が高分子化合物である場合、該化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、成膜性の観点から、3×102以上が好ましく、3×102〜1×107がより好ましく、1×103〜1×107が更に好ましく、1×104〜1×107が特に好ましい。
【0040】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、広い発光波長領域にて用いることができるが、該化合物のT1エネルギーの値が3.0eV以上であることが好ましく、3.2eV以上であることがより好ましく、3.4eV以上であることが更に好ましく、3.5eV以上であることが特に好ましい。また、通常、上限は5.0eVである。
【0041】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の最高占有分子軌道(以下、「HOMO」という。)のエネルギーレベルの絶対値は、特に限定されない。
【0042】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物のLUMOのエネルギーレベルの絶対値は、1.5eV以上が好ましく、1.7eV以上がより好ましく、1.9eV以上が更に好ましく、2.0eV以上がとりわけ好ましく、2.2eV以上が特に好ましい。また、通常、上限は4.0eVである。
【0043】
本明細書において、各化合物のT1エネルギーの値、LUMOのエネルギーレベルの値は、計算科学的手法にて算出した値である。本明細書において、計算科学的手法として、量子化学計算プログラムGaussian03を用い、HF(Hartree-Fock)法により、基底状態の構造最適化を行い、該最適化された構造において、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法を用いて、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値を算出した。その際、基底関数として6−31g*を用いた。基底関数として前記6−31g*が利用できない場合は、LANL2DZを用いる。本発明では、その「LUMOのエネルギーレベルの値」の絶対値(即ち、LUMOのエネルギーレベルの値が負の場合、絶対値とは当該負の符号を取った値を意味する。)が重要である。
【0044】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物を構成する繰り返し単位が1種類の場合、該単位をAとすると、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、下記式:

(式中、nは重合度を表す。)
で表される。ここで、n=1、2及び3の構造に対して、T1エネルギーの値、LUMOのエネルギーレベルの値を算出し、算出されたT1エネルギーの値、LUMOのエネルギーレベルの値を(1/n)の関数として線形近似した場合のn=∞の値を、該高分子化合物のT1エネルギーの値、LUMOのエネルギーレベルの値と定義する。
【0045】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物を構成する繰り返し単位が複数存在する場合、すべての場合についてn=∞(ここで、nは繰り返し単位の重合度)におけるT1エネルギーの値を前記と同様の方法で算出し、その中で最低のT1エネルギーの値を該化合物のT1エネルギーの値と定義する。LUMOのエネルギーレベルの値は、最低のT1エネルギーの値を与える繰り返し単位におけるn=∞の値を、該高分子化合物のLUMOのエネルギーレベルの値と定義する。
【0046】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物は、該含窒素化合物を構成する複素環構造と、該複素環構造に隣接する部分構造(ここで、該部分構造は少なくとも2個のπ共役電子を有する)が存在することが好ましい。該複素環構造と、該複素環構造に隣接する該部分構造との間の2面角は40°以上が好ましく、55°以上がより好ましく、70°以上が更に好ましく、80°以上が特に好ましい。
【0047】
更に、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物において、該複素環構造を含むあらゆる芳香環及びヘテロ芳香環の間の2面角が、すべて40°以上であることが好ましく、55°以上であることがより好ましく、70°以上であることが更に好ましく、80°以上であることが特に好ましい。また、このような2面角を得るためには、前記式(A−3)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0048】
また、本明細書において、2面角とは、基底状態における最適化構造から算出される角度を意味する。2面角は、例えば、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物を構成する複素環構造において結合位置にある炭素原子(a1)とa1に隣接する炭素原子又は窒素原子(a2)、及び該複素環構造と結合している構造の結合位置にある原子(a3)とa3に隣接する原子(a4)で定義される。ここで、原子(a2)又は原子(a4)が複数選択可能な場合は、すべての場合について2面角を算出し、その中で値が最低の値(90°以下である)を2面角とする。原子(a3)及び(a4)は、π共役電子を有する原子であり、より好ましくは、炭素原子、窒素原子、珪素原子、リン原子である。本明細書においては、計算科学的手法により求められるn=3(nは重合度)の構造の基底状態における最適化構造(即ち、該構造の生成エネルギーが最小となる構造)から算出する。前記複素環構造を有する化合物においては、該2面角も複数存在する。その場合、該化合物における該2面角のすべてが、前記条件を満たしていることが好ましい。
【0049】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物としては、以下の式(2−1)〜(2−36)、(3−1)〜(3−18)で表される化合物が挙げられる。下式中、R*は水素原子又は置換基を表す。R*で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基、シアノ基が例示される。複数個のR*は同一であっても異なっていてもよい。R*としては、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基がより好ましい。複数存在するR*は、同一であっても異なっていてもよい。
【0050】

【0051】


【0052】

【0053】

【0054】

【0055】

(式中、nは重合度を表す。)
【0056】
また、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物としては、以下の化合物も挙げられる。
【0057】

【0058】

【0059】

【0060】
前記燐光発光性化合物としては、三重項発光錯体、低分子系のEL発光性材料として利用されてきた化合物が挙げられる。これらは、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852、 Inorg. Chem., (2003), 42, 8609、 Inorg. Chem., (2004), 43, 6513、Journal of the SID 11/1、161 (2003)、WO2002/066552、WO2004/020504、WO2004/020448等に開示されている。これらの中でも、金属錯体のHOMOにおける、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和において占める割合が1/3以上であることが、高発光効率を得る観点で好ましい。例えば、中心金属が第6周期に属する遷移金属である、オルトメタル化錯体等が挙げられる。
【0061】
前記三重項発光錯体の中心金属としては、通常、原子番号50以上の原子で、該錯体にスピン−軌道相互作用があり、一重項状態と三重項状態間の項間交差を起こし得る金属であり、好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステン、ユーロピウム、テルビウム、ツリウム、ディスプロシウム、サマリウム、プラセオジム、ガドリニウム、イッテルビウムの原子であり、より好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステンの原子であり、更に好ましくは、金、白金、イリジウム、レニウムの原子であり、特に好ましくは、白金及びイリジウムの原子である。
【0062】
前記三重項発光錯体の配位子としては、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体等が挙げられる。
【0063】
前記燐光発光性化合物は、溶解性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基等の置換基を有する化合物であることが好ましい。更に、該置換基は、水素原子以外の原子の総数が3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。また、該置換基は、各配位子に少なくとも1個存在することが好ましく、該置換基の種類は、配位子毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
前記燐光発光性化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0065】

【0066】
本発明の組成物中における前記燐光発光性化合物の量は、組み合わせる有機化合物の種類や、最適化したい特性により異なるが、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の量を100重量部としたとき、通常、0.01〜80重量部であり、好ましくは0.1〜30重量部であり、より好ましくは0.1〜15重量部であり、特に好ましくは0.1〜10重量部である。なお、本発明の組成物において、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物、前記燐光発光性化合物は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物、前記燐光発光性化合物以外の任意成分を含んでいてもよい。この任意成分としては、正孔輸送材料、電子輸送材料、酸化防止剤等が挙げられる。
【0068】
前記正孔輸送材料としては、有機EL素子の正孔輸送材料として公知の芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等が挙げられる。
【0069】
前記電子輸送材料としては、有機EL素子の電子輸送材料として公知のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体が挙げられる。
【0070】
本発明の組成物において、前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物のT1エネルギーの値(ETH)と前記燐光発光性化合物のT1エネルギーの値(ETG)とが、下記式:
ETH > ETG (eV)
を満たすことが高効率発光の観点から好ましく、
ETH > ETG+0.1(eV)
を満たすことがより好ましく、
ETH > ETG+0.2(eV)
を満たすことが更に好ましい。
【0071】
本発明の薄膜は、本発明の組成物等を用いて作製することができる。薄膜の作製には、溶液の塗布、蒸着、転写等を用いることができる。溶液の塗布には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いればよい。
【0072】
溶媒としては、組成物を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。該溶媒としては、塩素系溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等)、多価アルコール及びその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、アミド系溶媒(N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等)が例示され、これらの中から選択して用いることができる。また、これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0073】
インクジェット印刷法を用いる場合には、ヘッドからの吐出性、ばらつき等の改善のために、溶液中の溶媒の選択、添加剤として公知の方法を用いることができる。この場合、溶液の粘度が、25℃において1〜100mPa・sであることが好ましい。また、あまり蒸発が著しいとヘッドから吐出を繰り返すことが難しくなる傾向がある。上記のような観点で、溶媒としては、アニソール、ビシクロヘキシル、キシレン、テトラリン、ドデシルベンゼンを含む単独又は混合の溶媒が好ましい。一般的には、複数の溶媒を混合する方法、組成物の溶液中での濃度を調整する方法等によって用いた組成物に合ったインクジェット印刷用の溶液を得ることができる。
【0074】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基と、燐光発光性化合物の残基とを含む高分子化合物である。前記燐光発光性化合物及び前記含窒素化合物は、前記組成物の項で説明し例示したものと同様である。本発明の高分子化合物としては、(1)主鎖に燐光発光性化合物の残基を有する高分子化合物、(2)末端に燐光発光性化合物の残基を有する高分子化合物、(3)側鎖に燐光発光性化合物の残基を有する高分子化合物等が挙げられる。
【0075】
<発光素子>
次に、本発明の発光素子について説明する。
本発明の発光素子は、本発明の組成物等を用いてなるものであり、通常、陽極及び陰極からなる電極間に設けられた層の少なくとも一部に本発明の組成物等を含むが、それらを前記発光性薄膜の形態で発光層として含むことが好ましい。また、発光効率、耐久性等の性能を向上させる観点から、他の機能を有する公知の層を含んでいてもよい。このような層としては、電荷輸送層(即ち、正孔輸送層、電子輸送層)、電荷阻止層(即ち、正孔阻止層、電子阻止層)、電荷注入層(即ち、正孔注入層、電子注入層)、バッファ層等が挙げられる。なお、本発明の発光素子において、発光層、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層、バッファ層等は、各々、一層からなるものでも二層以上からなるものでもよい。
【0076】
発光層は、発光する機能を有する層である。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層である。これら電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う。また、電荷阻止層は、正孔又は電子を発光層に閉じ込める機能を有する層であり、電子を輸送し、かつ正孔を閉じ込める層を正孔阻止層と言い、正孔を輸送し、かつ電子を閉じ込める層を電子阻止層と言う。
【0077】
バッファ層としては、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0078】
本発明の発光素子としては、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同じである。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。)
【0079】
本発明の発光素子が正孔輸送層を有する場合(通常、正孔輸送層は、正孔輸送材料を含有する)、正孔輸送材料としては公知の材料、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子正孔輸送材料が挙げられるが、特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されている化合物も挙げられる。
【0080】
本発明の発光素子が電子輸送層を有する場合(通常、電子輸送層は、電子輸送材料を含有する)、電子輸送材料としては公知の材料、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0081】
正孔輸送層及び電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層及び電子輸送層の膜厚は、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0082】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(即ち、正孔注入層、電子注入層の総称である。以下、同じである。)と呼ばれることがある。
【0083】
更に電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は絶縁層(通常、平均膜厚で0.5nm〜4nmであり、以下、同じである。)を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファ層を挿入してもよい。
【0084】
積層する層の順番や数、及び各層の厚さは、発光効率や素子寿命を勘案して選択することができる。
【0085】
電荷注入層としては、導電性高分子化合物を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が挙げられる。
【0086】
電荷注入層に用いる材料としては、電極や隣接する層の材料との関係で選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子化合物、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。
【0087】
絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0088】
本発明の発光素子は、通常、基板上に形成される。基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0089】
本発明の発光素子が有する陽極及び陰極の少なくとも一方は、通常、透明又は半透明である。その中でも、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
【0090】
陽極の材料としては、通常、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性無機化合物を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。なお、陽極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0091】
陰極の材料としては、通常、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2種以上の合金、或いはそれらのうち1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。なお、陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0092】
本発明の発光素子は、面状光源、表示装置(セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置等)、そのバックライト(発光素子をバックライトとして備えた液晶表示装置)等として用いることができる。
【0093】
本発明の発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる材料を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0094】
更に、面状の発光素子は、通常、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、照明(面状の照明、該照明用の光源等)等として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源、照明、表示装置等としても使用できる。
【0095】
本発明の組成物等は、有機半導体材料等の半導体材料、発光材料、光学材料、導電性材料(例えば、ドーピングにより適用する。)として用いることもできる。更に、本発明の組成物等を用いて、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜等の薄膜を作製することができる。
【0096】
本発明の組成物等は、前記発光素子の発光層に用いられる発光性薄膜の作製方法と同様の方法で、導電性薄膜及び半導体薄膜を成膜、素子化することができる。半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のいずれか大きい方が、10-5cm2/V/秒以上であることが好ましい。また、有機半導体薄膜は、有機太陽電池、有機トランジスタ等に用いることができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
<実施例1>
下記式:

(式中、nは重合度である。)
で表される高分子化合物(P−1)のnをn=∞に外挿して算出したT1エネルギーの値は3.1eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.4eVであり、最小の2面角は50°であった。
パラメータの計算は、前述の計算科学的手法で行った。具体的には、高分子化合物(P−1)における下記式:

で表される繰り返し単位(M−1)を用い、n=1、2及び3の場合に対して、HF法により構造最適化を行った。
その際、基底関数としては、6−31G*を用いた。その後、同一の基底関数を用い、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法により、LUMOのエネルギーレベルの値、及びT1エネルギーの値を算出した。各nにおいて算出されたLUMOのエネルギーレベルの値、及びT1エネルギーの値を、nの逆数(1/n)の関数とし、n=∞における外挿値は、該関数の1/n=0での値とした。
また、2面角は、n=3(nは重合度)における構造最適化された構造から算出した。環構造が複数存在するため、2面角も複数存在する。ここでは、複数存在する2面角の中で最小の値のみを記載した(以下、実施例2、3及び比較例1も同様である。)。
そして、高分子化合物(P−1)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0099】
<実施例2>
下記式:

(式中、nは重合度である。)
で表される高分子化合物(P−2)のnをn=∞に外挿して算出したT1エネルギーの値は3.0eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは3.1eVであり、最小の2面角は45°であった。
パラメータの計算は、前述の計算科学的手法で行った。具体的には、高分子化合物(P−2)における下記式(M−2)で表される繰り返し単位(M−2)を下記式(M−2a)のとおり簡略化して算出した。化学構造を簡略化したことの妥当性は、特開2005−126686号公報に記載の方法で、T1エネルギーの値、及びLUMOのエネルギーレベルの値に対するアルキル側鎖長依存性が小さいことにより確認した。簡略化した繰り返し単位(M−2a)を用い、n=1、2及び3の場合に対して、HF法により構造最適化を行った。

その際、基底関数としては、6−31G*を用いた。その後、同一の基底関数を用い、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法により、LUMOのエネルギーレベルの値、及びT1エネルギーの値を算出した。各nにおいて算出されたLUMOのエネルギーレベルの値、及びT1エネルギーの値を、nの逆数(1/n)の関数とし、n=∞における外挿値は、該関数の1/n=0での値とした。
また、2面角は、n=3(nは重合度)における構造最適化された構造から算出し、複数存在する2面角の中で最小の値のみを記載した。
そして、高分子化合物(P−2)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0100】
<実施例3>
下記式:

(式中、nは重合度である。)
で表される高分子化合物(P−3)のnをn=∞に外挿して算出したT1エネルギーの値は3.2eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.3eVであり、最小の2面角は51°であった。
パラメータの計算は、前述の計算科学的手法で行った。具体的には、高分子化合物(P−3)における下記式(M−3)で表される繰り返し単位(M−3)を下記式(M−3a)のとおり簡略化し、実施例2と同様にして算出した。

そして、高分子化合物(P−3)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0101】
<実施例4>
下記式:

で表される化合物(C−1)のT1エネルギーの値は3.2eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.1eVであった。
パラメータの計算は、前述の計算科学的手法で行った。具体的には、化合物(C−1)に対して、HF法により構造最適化を行った。その際、基底関数としては、実施例1と同様に、6−31G*を用いた。その後、同一の基底関数を用いて、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法により、LUMOのエネルギーレベルの値及びT1エネルギーの値を算出した。
そして、化合物(C−1)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0102】
<実施例5>
下記式:

で表される化合物(C−2)のT1エネルギーの値は3.1eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.6eVであった。パラメータの計算は、実施例4と同様にして行った。
そして、化合物(C−2)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0103】
<実施例6>
下記式:

で表される化合物(C−3)のT1エネルギーの値は3.2eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは1.9eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−3)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0104】
<実施例7>
下記式:

で表される化合物(C−4)のT1エネルギーの値は3.2eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは1.9eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−4)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0105】
<実施例8>
下記式:

で表される化合物(C−5)のT1エネルギーの値は3.0eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは1.5eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−5)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0106】
<実施例9>
下記式:

で表される化合物(C−6)のT1エネルギーの値は3.0eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.1eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−6)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0107】
<実施例10>
下記式:

で表される化合物(C−7)のT1エネルギーの値は2.9eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは1.9eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−7)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0108】
<実施例11>
下記式:

で表される化合物(C−8)のT1エネルギーの値は2.9eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは1.8eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
化合物(C−8)と燐光発光性化合物とからなる組成物を用いて発光素子を作製すると、発光効率が優れることが確認できる。
【0109】
<実施例12>
WO02/066552に記載の方法で合成した下記式:

で表される燐光発光性化合物(MC−1)のTHF溶液(0.05重量%)に対して、約5倍重量の下記式:

で表される化合物(C−9)のTHF溶液(約1重量%)を混合し、混合物(溶液)を調製した。この混合物10μlをスライドガラスに滴下し風乾し固体膜を得た。この固体膜に、365nmの紫外線を照射したところ、燐光発光性化合物(MC−1)からの強い緑色発光が得られたことから、前記混合物の発光効率が高いことが認められた。
化合物(C−9)のT1エネルギーの値は2.9eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMOは2.4eVであった。なお、T1エネルギーの値及びLUMOのエネルギーレベルの値の算出は、実施例4と同様にして計算科学的手法で行った。
また、計算科学的手法により算出した燐光発光性化合物(MC−1)のT1エネルギーの値は2.7eVであった。
【0110】
<比較例1>
下記式:

(式中、nは重合度である。)
で表される高分子化合物(CP−1)のnをn=∞に外挿して算出したT1エネルギーの値は2.6eVであり、LUMOのエネルギーレベルの絶対値ELUMO(1/n=0)は2.1eVであり、最小の2面角は45°であった。パラメータの計算は、高分子化合物(CP−1)における下記繰り返し単位(CM−1)を(CM−1a)と簡略化し、実施例1と同様にして算出した。

次いで、高分子化合物(CP−1)及び燐光発光性化合物(MC−1)からなる混合溶液10μlを調製し、それをスライドガラスに滴下し風乾させることにより固体膜を得た。この固体膜に、365nmの紫外線を照射したところ、燐光発光性化合物(MC−1)からの発光が弱かったことから、前記混合物の発光効率が低いことが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4):

[式中、Rは水素原子又は置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。]
で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物と、燐光発光性化合物とを含む組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が、前記式(1−2)、(1−3)、(1−4)で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Rの少なくとも1個が、アルキル基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Rの少なくとも1個が、水素原子以外の原子の総数が3以上の置換基である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Rの少なくとも1個が、炭素数3〜10のアルキル基、又は炭素数3〜10のアルコキシ基である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が、下記式(A−1)若しくは(A−2):

[式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される含窒素化合物の残基を表す。Y1は、−C(Ra)(Rb)−、−N(Rc)−、−O−、−Si(Rd)(Re)−、−P(Rf)−又は−S−を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRfはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。mは0〜8の整数である。Y1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Y2は、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。nは1〜5の整数である。Y2が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物、又はその残基を有する化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(A−1)で表される化合物の残基を有する化合物が、下記式(A−1−1):

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
で表される化合物である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が高分子化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が、前記式(A−1)又は(A−2)で表される化合物の残基を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(A−1)で表される化合物の残基を含む繰り返し単位を有する高分子化合物が、下記式(A−1−2):

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の計算科学的手法により算出した最低三重項励起エネルギーの値が3.0eV以上である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の計算科学的手法により算出した最低非占有分子軌道のエネルギーレベルの絶対値が1.5eV以上である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物の最低三重項励起エネルギーの値(ETH)と、前記燐光発光性化合物の最低三重項励起エネルギーの値(ETG)とが、下記式:
ETH > ETG (eV)
を満たす請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも2種の含窒素化合物の残基を有する化合物が、該含窒素化合物を構成する複素環構造と、該複素環構造に隣接する部分構造を有し、該部分構造は少なくとも2個のπ共役電子を有するものであって、該複素環構造と該部分構造との間の2面角が40°以上である化合物である請求項8〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記燐光発光性化合物が、イリジウム錯体又は白金錯体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記燐光発光性化合物が、イリジウム又は白金を中心金属とし、8−キノリノール若しくはその誘導体、ベンゾキノリノール若しくはその誘導体、又は2−フェニル−ピリジン若しくはその誘導体を配位子とする金属錯体である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4):

[式中、Rは水素原子又は置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。]
で表される含窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種の含窒素化合物の残基と、燐光発光性化合物の残基とを含む高分子化合物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物又は請求項17に記載の高分子化合物を用いてなる薄膜。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物又は請求項17に記載の高分子化合物を用いてなる発光素子。
【請求項20】
請求項19に記載の発光素子を備えた面状光源。
【請求項21】
請求項19に記載の発光素子を備えた表示装置。
【請求項22】
請求項19に記載の発光素子を備えた照明。

【公開番号】特開2010−31248(P2010−31248A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145145(P2009−145145)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】