組成物
新生物疾患の治療のための、ドセタキセルなどのタキサンとCYP3A4阻害剤、例えばリトナビルとの組み合わせを含む医薬組成物および方法。タキサンの投与およびCYP3A4阻害剤の同時または別々の投与を組み込んだ新生物疾患の治療方法も含まれる。さらに、この方法を実施するためのキットが含まれる。実質的に非晶質のタキサン、担体および界面活性剤を含む経口投与用固体タキサン医薬組成物も含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関する。具体的には、限定するものではないが、新生物疾患を治療するための組成物および方法に関する。
【0002】
経口形態での薬物の投与には、いくつかの利点がある。効果が最適であるように治療を慢性的に適用しなければならないとき、経口抗癌剤、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)プロドラッグ(例えば、カペシタビン)およびシグナル伝達経路または血管形成プロセスを妨害する薬物の利用性は重要である[1]。さらに、経口薬は、外来患者への投与または自宅投与が可能なので、ますます便利で、患者のクォリティオブライフが向上し、ことによると入院患者を減少させることによって経費を削減することができる[2]。したがって、抗癌剤の経口投与を試みることは有利である。
【0003】
一般的に、薬剤の経口投与は、便利で、実用的である。しかし、抗癌剤の大部分は、残念ながら経口によるバイオアベイラビリティーが低く、変動しやすい[1]。一般的な例は、広く使用されているタキサン、ドセタキセルおよびパクリタキセルであるが、経口によるバイオアベイラビリティーは10%未満である[3、4]。バイオアベイラビリティーがより高いいくつかのその他の抗癌剤は、高い変動性を示す。例には、トポイソメラーゼI阻害剤、ビンカアルカロイドおよびミトキサントロンが含まれる[1、5、6]。治療域が狭いため、バイオアベイラビリティーが変動しやすいと、治療的血漿レベルが実現しないとき予期せぬ毒性または効果の低下が生じ得る。Hellriegelらは、経口投与後の血漿レベルは一般的に、i.v.投与後の血漿レベルよりも変動しやすいことを研究で示した[7]。適切な経口バイオアベイラビリティーは、薬剤曝露の期間が抗癌剤治療の主要な決定要素のとき、重要である[8]。経口による適切なバイオアベイラビリティーはまた、局所的毒性をもたらす可能性がある胃腸管において局所的薬剤濃度の上昇を抑えるのに重要である。
【0004】
Chenら[95]は、抗癌剤、ドセタキセルのバイオアベイラビリティーを改善するために、その溶解度を高めようと実験を実施した。Chenらは、様々な担体、すなわち、モノステアリン酸グリセリル、PVP−K30またはポロキサマー188と共にドセタキセルの固体分散物を使用することを試みた。Chenらは、ポロキサマー188は、ドセタキセル対ポロキサマーの比5:95で使用したとき、ドセタキセルの溶解度は20分後に約3.3μg/mlにまで増加し(標準的溶解試験)、約120分後には最大約5.5μg/mlにまで増加することを発見した。PVP−K30のみでは、ドセタキセルの溶解度は20分後に約0.8μg/mlまで増加し、約300分後には最大約4.2μg/mlまで増加した。モノステアリン酸グリセロールは、ドセタキセルの溶解度を全く増加させなかった。したがって、ドセタキセルの溶解度および溶解速度は、あまり高レベルまでは増加しなかった。
【0005】
抗癌剤の経口バイオアベイラビリティーが変動しやすく、かつ/または低いことを説明できる重要な機構はいくつかあり、例えば、胃腸管における薬物輸送体の親和性が高く吸収を制限すること、および小腸および/または肝臓における活発な代謝(初回通過効果)によって薬物の除去が高いことである[1、4、9]。その他の重要な要素には、構造的不安定性および胃腸液における薬物の溶解度の限界、薬物−薬物および薬物−食品相互作用、運動障害、閉塞性障害、吐き気および嘔吐の存在または胃腸管における局所的毒性が含まれる。
【0006】
薬物輸送体および経口薬物のバイオアベイラビリティーに影響を及ぼす代謝酵素に関して、主要な薬物輸送体および抗癌剤の経口バイオアベイラビリティーの低さ/変動しやすさに関与する代謝酵素は、P−糖タンパク質(P−gp)およびチトクロームP450(CYP)アイソザイムであると推測されてきた。
【0007】
P−糖タンパク質(P−gp)は、エネルギー依存性輸送または細胞から生体異物を排出することによって薬物の細胞内蓄積を減少させる流出ポンプとして機能する膜結合性多剤輸送体である。P−gpは、排除機能を有する通常組織、例えば、肝細胞の胆汁小細管膜、血液脳関門および血液−精巣関門における内皮細胞の管腔膜、胎盤のシンシチウム栄養芽細胞の頂端膜、小腸の内皮頂端膜、ならびに腎近位尿細管で同定されてきた。P−gpは、異物毒素に対して組織を保護する重要な障壁機能を有することができる[9〜12]。
【0008】
P−gpは、特定の医薬化合物が小腸の粘膜細胞を通過し、したがって、体循環に吸収されるのを妨げると考えられている。異なる物理化学的特性および薬理学的活性を有する多種多様な薬剤、例えば、ベラパミル、キニジンおよびシクロスポリンA(CsA)ならびに新規活性ブロッカーGF120918(エラクリダール)、LY335979(ゾスキダル)およびR101933は、P−gpを調節することが臨床研究で示された[13〜18]。P−gp調節因子がi.v.投与後に抗癌剤の薬物動態に影響を及ぼし得る機構は、チトクロームP450(CYP)媒介性の小腸または肝臓代謝との競合、P−gp媒介性胆汁排出の阻害、小腸輸送および腎排除の阻害である[19、20]。抗癌剤と調節因子を一緒にした、または一緒にしない前向き無作為化試験が少しだけ実施された。これらの試験によって、調節因子と一緒にしたときの抗癌剤の用量低減は、重篤な薬剤関連毒性を防御するために必要であることが明らかになった。さらに、これらの試験では、抗癌剤と調節因子の組み合わせの生存上のいかなる利点も示されなかった[21〜23]。
【0009】
多くの抗癌剤では、チトクロームP450(CYP)は主要な酸化的薬物代謝酵素系である。CYPアイソザイムは、肝臓および小腸で強く発現するが、薬物代謝における各アイソザイムの正確な関与は知られていない。この酵素系による小腸での除去は、薬物の経口バイオアベイラビリティーの制限で重要な役割を果たすと認識されている[31]。ヒトでは、主要な薬物代謝酵素であり、肝臓CYPの約30%、小腸CYP発現の70%超を占めている4種類の機能的CYP3A酵素が同定されている[24、30、32、33]。
【0010】
いくつかのP−gp調節因子はまた、CYP系のアイソザイム、CYP3Aの基質であると思われる。P−gpおよびCYP3Aの基質選択性の重複は、組織における局在と合わせて考えると、これらの2種類のタンパク質が協力して、毒性のある生体異物に対する吸収障壁となっていることを示唆している[24〜26]。Cumminsらは、このことを確かめ、P−gpが薬物の細胞内代謝酵素系への接近を制御することによって小腸での薬物代謝(特に、アイソザイムCYP3A4)に影響を及ぼし得ることを示した[27]。したがって、CYP3AおよびP−gpは、小腸における共通基質薬物の制限された、および/または変化しやすい経口バイオアベイラビリティーの一因となり得るものと考えられる。
【0011】
タキサン、パクリタキセルおよびドセタキセルは、数種の腫瘍(例えば、乳癌、卵巣癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌[NSCLC])における抗癌活性が証明された。現在では、薬物は様々な用量および用法で静脈内投与される[34]。しかし、経口製剤では、タキサンのバイオアベイラビリティーは非常に低い。これはP−gpおよびCYP3Aの作用によるものと推測される。経口投与薬物のバイオアベイラビリティー増加を試みる研究は、マウスおよびヒトにおいていくつかの抗癌剤(例えば、タキサン)で実施されてきた。
【0012】
パクリタキセルを経口投与すると、バイオアベイラビリティーは非常に低い(<10%)。これは、胃腸管に存在するP−gpに対してパクリタキセルの親和性が高いことが原因である[4、10、35、36]。さらに、腸壁および肝臓におけるCYPアイソザイム3A4および2C8による体循環前(presystemic)排除はまた、パクリタキセルの低い経口バイオアベイラビリティーの一因となり得る[37〜39]。野生型マウスおよびmdrla P−gpノックアウトマウスによる最近の研究は、P−gpがパクリタキセルの吸収を制限することを明白に示した。野生型マウスと比較したノックアウトマウスにおける概念実証研究では、本研究者らは、パクリタキセルの血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)が経口投与後では6倍増加し、i.v.投与後では2倍増加することを示した[4]。経口投与後の野生型マウスの糞便から回収した無変化パクリタキセルの画分は、mdrla P−gpノックアウトマウスにおける用量の3%と比較して用量の87%であった。胃腸管から完全に吸収されたにもかかわらず、おそらく小腸/肝臓での初回通過除去のため、バイオアベイラビリティーは100%までは増加しなかった[4、40]。
【0013】
この所見に基づいて、経口バイオアベイラビリティーを高めるため、パクリタキセルと組み合わせたP−gp阻害剤によるいくつかの新たな研究が開始された。マウスにおける研究で、SDZ PSC833、シクロスポリンD類似体および強力なP−gp阻害剤をパクリタキセルと共投与すると、全身曝露の10倍増加が引き起こされた[41]。同程度の効果を示す類似の研究が、CsAおよびパクリタキセルで実施された[42]。CsAを共投与すると、野生型マウスにおける経口バイオアベイラビリティーが9%から67%に増加した。CsAで一緒に治療した野生型マウスで得られたパクリタキセルの血漿レベルは、CsAを含まない経口パクリタキセルで治療したノックアウトマウスで得られたレベルよりもさらに高かった。これは、胃腸管におけるP−gpの阻害によって摂取が増加すること、およびCYP3Aの阻害によって排除が減少することによって説明することができる[42〜45]。しかし、その他のまだ確認されていない薬剤輸送体または薬剤排除経路の遮断も無視することはできない。
【0014】
長期経口投与のためのCsAの使用は、患者の健康に有害な免疫抑制効果と関連してきた。したがって、パクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーを高めるために、他の非免疫抑制型P−gpブロッカー、GF120918を検討した。GF120918はそもそも、腫瘍におけるP−gp媒介多剤耐性を逆行させるために開発された[16]。最近公表された研究では、Bardelmeijerらは、GF120918がパクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーを著しく高めることを示した[46]。野生型マウスにおけるパクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーは8.5%から40%に増加し、GF120918を投与された野生型マウスにおけるパクリタキセルの薬物動態はmdrla/b P−gpノックアウトマウスで見出された薬物動態と類似していた。したがって、GF120918は、小腸においてP−gpを効果的に遮断し、パクリタキセルの摂取または排除に関与するその他の経路にはおそらく影響を及ぼさない。注目すべきことに、近年、GF120918はまた、ABC薬剤輸送体BCRP(ABCG2)の効果的な阻害剤であることが示された[28、29]。
【0015】
ドセタキセルはまた、P−gpの基質であることが1994年、Wilsらによって初めて示された[47、48]。p−gp阻害剤と組み合わせたパクリタキセルで有望な結果が得られたため、マウスにおいてドセタキセルの研究も行われた。これらの研究によって、P−gpはまた、ドセタキセルの低いバイオアベイラビリティーにおいて重要な役割を果たすことが確認された。経口ドセタキセルのAUCは、CsAとの共投与によって9倍増加した[49]。さらに、P−gpを少し阻害する特性を備えたCYP3A4の阻害剤、リトナビルとの共投与をマウスで試験した。CYP3A4は、ヒトにおけるドセタキセルの代謝分解に関与する主要な酵素である[50]。本発明者らは、マウスにおいてリトナビルをドセタキセルと共投与する前臨床試験を実施し、見かけ上のバイオアベイラビリティーが4%から183%に増加することを示した。活発な初回通過代謝はまた、マウスにおける経口ドセタキセルの低いバイオアベイラビリティーに大きく関与し得る[49]。マウスの小腸におけるチトクロームP450酵素(Cypと称する)は、ヒトに見出されるものとは異なり、異なる基質特異性を有する。さらに、マウスとヒトとの間のCYPの発現の調節は、転写因子、例えば、ヒトCYP3AではPXRの活性、発現および調節の差によってかなり異なる[88〜92]。したがって、マウスにおけるこれらの研究は、マウスの生理、酵素などがヒトとは完全に異なるため、ヒトにおける結果を示唆する拠り所とはなり得ない。したがって、マウスでのデータは単純にヒトに当てはめることはできない。さらに、マウスにおけるこの研究では、ヒト対象では致死的な極めて高用量のドセタキセル(10〜30mg/kg)および高用量のリトナビル(12.5mg/kg)も使用した。72kgの個体では、これはドセタキセル720〜2160mgを意味する。しかし、現在では、患者は通常、臨床では100と200mgとの間の投薬量のドセタキセルで治療される(静脈内)。明らかに、投与された薬物のレベルが高いので、この取り組みはヒトでは不可能である。さらに、マウスでのデータは、ヒトにおけるこの組み合わせによる経口での取り組みの安全性についてはいかなる証拠ももたらしていない。
【0016】
マウスにおける広範な前臨床結果に基づいて、いくつかの臨床的概念実証試験が開始された。固形腫瘍を有する患者に、単一薬剤として経口パクリタキセル60mg/m2を、またはCsA15mg/kgと組み合わせた経口パクリタキセル60mg/m2を1クール投与した。経口CsAの共投与は、経口的パクリタキセルの全身曝露の8倍増加をもたらし、この研究における経口的パクリタキセルの見かけ上のバイオアベイラビリティーはCsAなしの4%からCsAありの47%まで増加した[3]。全身曝露のこの増加はおそらく、胃腸管におけるP−gpの阻害が原因であるが、パクリタキセル代謝の阻害はまた、パクリタキセル研究から判断されたように[41、42]、この効果に関与し得る。パクリタキセルの全身曝露をさらに増加させるために、CsAと組み合わせた経口的パクリタキセルの用量漸増試験によって、最大許容用量は300mg/m2で、高用量でのAUCの増加は用量に比例しないことが明らかになった[52]。この最高用量レベルでは、糞便への排除を測定するためマスバランス試験を実施した。最高用量レベル300mg/m2では、全糞便排除は76%で、そのうちの61%は親薬物であり、このことは、経口投与パクリタキセルの胃腸管からの吸収が不完全であることによって説明することができる[53]。経口投与のために使用されたパクリタキセルi.v.製剤中の多量の補助溶媒Cremophor ELは、経口的に投与されたパクリタキセルの完全な吸収を妨害したと考えられる。さらに、i.v.パクリタキセルの非線形薬物動態および重篤な過敏性反応の原因となるCremophor ELは、血漿レベルは検出されなかったので、パクリタキセルの経口投与では吸収されなかった[54〜56]。これは、パクリタキセルの経口投与のさらなる利点となり得る[51、52]。その後、閾値レベル0.1μMを上回る経口パクリタキセルの全身曝露期間を延長させるために、CsAと組み合わせた経口パクリタキセルの1日2回(b.i.d.)用法を患者に使用した。2×90mg/m2の用量レベルでは、パクリタキセルの長期間全身曝露は適切に0.1μMを上回るレベルに達し、良好な安全性プロファイルが認められた[57]。これらの研究では、患者は静脈内パクリタキセル製剤(Cremophor ELおよびエタノールも含有する)を経口摂取した[57]。さらに、CsAを用いた経口パクリタキセルの用量設定試験によって、CsAによるP−gp阻害は、10mg/kgの単回投与で最大であることが示された[58]。
【0017】
別の第I相試験では、患者に経口パクリタキセルの1時間前にGF120918を1000mg投与した[59]。パクリタキセルに対する全身曝露の増加は、CsA併用と同程度であった。これらの第I相試験の結果に基づいて、パクリタキセルの反復経口投与が実行可能で、有効であるかどうかを調べるために第II相試験を開始した。経口パクリタキセルを数種類の腫瘍に、すなわち、NSCLCでは初回および二次治療として[60]、進行胃癌では初回治療として[99]、進行乳癌では二次治療として[100]、週1回b.i.d.で投与した。患者は全て、90mg/m2の経口パクリタキセルを用量でb.i.d.で毎週治療した。CsAは、10mg/kgの用量で、各パクリタキセル投与の30分前に投与した。進行NSCLCの患者において、奏効率(ORR)は評価可能な患者23人において26%であった[60]。無増悪期間中央値は3.5ヶ月、生存期間中央値は6ヶ月であったので、以前の試験と同程度であった。ビノレルビン、ゲムシタビンおよびタキサンなどのいくつかの単一薬剤を使用したこれらの試験によって、奏効率は8%〜40%で、生存期間中央値は6〜11ヶ月の範囲であることが明らかになった[61〜66]。
【0018】
進行胃癌では、対症療法的意図で化学療法が施される。マイトマイシンまたはメトトレキセートと組み合わせた5−FU/ドキソルビシンなどの薬剤による併用化学療法あるいはエピルビシン/シスプラチン/5−FU用法は、しばしば使用される計画で、奏効率が20%〜50%の間であることが示された[67〜70]。パクリタキセルはまた、進行胃癌の患者において、初回および二次治療で抗癌活性を示した(ORR:5%〜23%)[71〜73]。この試験におけるORRは、評価可能な患者24人において32%であった。このb.i.d.週間計画の毒性プロファイルは、良く管理されている[99]。NSCLCの患者群において最も一般的な毒性は、患者の54%で認められるグレード3/4の好中球減少であった。これは、標準的な3週間間隔のパクリタキセルi.v.計画と同程度である[65、66]。
【0019】
神経毒性の発生は3週間間隔の計画と比較して低く、これは、この試験ではパクリタキセル血漿濃度のピークが低いことによって説明することができる。これはまた、パクリタキセル3時間注入に対して24時間で注入投与された患者で認められたが[74]、i.v.投与後(したがって、Cremophor ELの存在下)のパクリタキセル血漿レベルが経口パクリタキセル後(したがって、Cremophor ELを含まない)と同等であり得るかどうか問われる可能性がある。
【0020】
ドセタキセルについては、類似の臨床的概念実証研究が固形腫瘍の患者で実施された。患者に、CsA15mg/kgの経口単回投与と共に、または共にせずに経口ドセタキセル75mg/m2を1クール投与した。薬物動態の結果によって、経口CsAの共投与は、ドセタキセルの全身曝露の7.3倍増加を生じることが示された。経口ドセタキセルの見かけ上のバイオアベイラビリティーは、CsAを伴わない8%からCsAを伴う90%まで増加した[75]。この全身曝露の増加は、CYP3A4の阻害、ならびに胃腸管におけるCsAによるP−gpの阻害によって説明することができるが、両機構の大きさは正確に決定することはできない。ドセタキセルのバイオアベイラビリティーに対するCsAの効果は、ヒト[75]と比較してマウス[49]ではあまり著しくないが、このマウスにおける効果軽減の理由は明らかではない。進行乳癌において経口ドセタキセルおよびCsAの毎週投与による第II相試験も実施した。この計画では、毎週6週間投与して、その後2週間休薬した。ドセタキセル100mg用量を毎週経口投与すると、40mg/m2の毎週i.v.投与と同等のAUCがもたらされ、適度に良好な耐容性を示した[76]。CsAは、経口ドセタキセル15mg/kg用量を摂取する30分前に投与した。ドセタキセルのi.v.製剤は、飲用溶液として使用された。応答を評価可能な25人の患者では、ORR52%が認められた。
【0021】
最も頻繁に記録された毒性は、好中球減少、下痢、爪毒性および疲労であった。しかし、血液学的毒性の重症度は、i.v.投与後よりも少ないようである[77]。この試験における奏効率は、文献で記載された結果の上部範囲内である[76〜79]。
【0022】
経口投与後のドセタキセルのAUCの患者間および患者内の変動は、ドセタキセルのi.v.投与後に認められた範囲と同じであった(29%〜53%)[80、81]。
【0023】
経口ドセタキセルまたはパクリタキセルと組み合わせて毎週または2日に1回CsAを経口投与すると、腎毒性または免疫抑制による感染が生じる可能性があった[82]。したがって、本発明者らの見解では、経口ドセタキセルまたはパクリタキセルの臨床バイオアベイラビリティーを改善するためには、他の薬剤が好ましい。
【0024】
タキサンの集中的な毎週経口投与計画は実行可能で、進行乳癌、胃癌およびNSCLCで臨床的に有意義な活性を示す。経口投与計画は簡便で、有利な血液学的毒性プロファイルを有し、非血液学的毒性は許容できる。
【0025】
従来技術は、抗癌剤のバイオアベイラビリティーおよび薬物動態特性を改善するために、P−gpの作用を阻害することに主に注目しているようである。これは、様々な薬物、例えば、CsAおよびGF120918を使用して実施されてきた。P−gpは、経口薬のバイオアベイラビリティーを高めるために、遮断する最も重要なタンパク質として認められたようである。
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は、タキサンおよびCYP3A4の阻害剤、例えば、リトナビルを1種または複数の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む経口投与用医薬組成物を提供する。
【0027】
タキサンと組み合わせてリトナビルを使用する利点は、タキサンの経口バイオアベイラビリティーが増加し、したがってより多くの薬物が小腸から血流に吸収されることである。これは、薬剤の代謝を阻止するCYP3A4の阻害およびわずかなP−gp阻害特性による。リトナビルはまた、肝臓におけるCYP3A4代謝を阻害することによってタキサンの体からの排除を抑制する。これは、長期間にわたってタキサンが高い血漿レベルに達することを意味する。例えば、ドセタキセル代謝物は、ドセタキセル自体よりも薬理学的活性が少ない。したがって、ドセタキセルの代謝を阻害することによって、最も薬理学的に活性のある形態がより高レベルで、またより長期にわたって血流中に存在する。これによって、より大きな治療効果がもたらされる。その結果、用量当たりのタキサンの量を抑制することが可能になり得る。さらに、CYP3A4の阻害は、様々な患者におけるCYP活性レベルの違いによるバイオアベイラビリティーおよび排除の患者間変動を減少させる。
【0028】
リトナビルによるCYP3A4の標的化および阻害は、P−gpの標的化よりも、代謝を阻止することによって経口タキサンのバイオアベイラビリティーを高める。これは、全体的に見て、従来技術によるものとは異なる取り組みである。
【0029】
本発明の医薬組成物には、任意の薬学的に許容される担体、補助剤または媒体と一緒にした任意のタキサン、またはそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、ならびにリトナビル(またはそれらの薬学的に許容される塩およびエステル)が含まれる。本発明の医薬組成物で使用できる薬学的に許容される担体、補助剤および媒体には、限定はしないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝剤物質、例えば、リン酸塩、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、3ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースにした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。本発明の医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤または媒体を含有することができる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、粉末または被覆された顆粒を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。好ましくは水性媒体に溶かした懸濁液、溶液およびエマルジョンも使用できる。錠剤は、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。あるいはまた、発泡性、2層および/または被覆錠剤であってもよい。遅効性、反復放出性および徐放性製剤は、1種または両方の活性成分についてであってもよい。錠剤は、タキサンおよび/またはリトナビルの固体分散物または固溶体から形成することができる。カプセルは、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。固体充填または液体充填カプセルであってもよい。遅効性、反復放出性および徐放性製剤は、1種または両方の活性成分についてであってもよい。カプセルは、タキサンおよび/またはリトナビルの固体分散物または固溶体から形成することができ、あるいは、タキサンおよび/またはリトナビルは液体に溶解するか、または分散することができる。例えば、液体充填カプセルの可能性のある溶媒はトリアセチンである。これは、パクリタキセルに特に優れた溶媒であると考えられる。水性溶液は、粉末または粉末類から調製して、固体分散物または分散物類から調製して、あるいはタキサンおよびリトナビルの溶液を混合することによって、「すぐに使用」できる。水性溶液はまた、その他の医薬品添加物、例えば、ポリソルベート80およびエタノールを含むことができる。経口使用するための錠剤およびカプセルの場合、通常使用される担体には、スクロース、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、マンニトール、イヌリン、糖類(デキストース、ガラクトース、スクロース、フルクトースまたは乳糖)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびコーンスターチが含まれる。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも通常添加される。カプセル形態で経口投与するために、有用な希釈剤には、乳糖および乾燥コーンスターチが含まれる。錠剤およびカプセルのためには、添加できるその他の医薬品添加物は、結合剤、充填剤、充填剤/結合剤、吸着剤、湿潤剤、崩壊剤、潤沢剤、流動促進剤、界面活性剤などである。錠剤およびカプセルは、錠剤およびカプセルの外見または特性を改変するために、例えば、味を改変するため、または錠剤もしくはカプセルを着色被覆するため、被覆することができる。水性懸濁液を経口的に投与するとき、活性成分は乳化剤および懸濁剤と一緒にする。所望するならば、特定の甘味剤および/または矯臭剤および/または着色剤を添加することができる。
【0031】
タキサンおよびリトナビルの固体分散物および固溶体は、任意の適切な方法を使用して形成することができ、担体、例えば、ポリマーを含むことができる。このような方法は、当業者には周知である[93、94]。固体分散物中のタキサンおよびリトナビルは、非晶質、結晶または部分的非晶質/部分的結晶状態であってもよい。固体分散物の調製では、有機溶媒を使用することが多い。これらは、任意の適切な有機溶媒、例えば、TBA(3級ブチルアルコール)、エタノール、メタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)およびIPA(イソプロピルアルコール)であってもよい。固体分散物溶液から有機溶媒および/または水性溶媒を除去するために任意の方法、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥および真空乾燥を使用することができる。
【0032】
経口投与用の組成物、特に固体組成物において、タキサンおよびリトナビルは、同一投与形態中に存在していてよく、別々の投与形態中に存在していてもよい。同一の投与形態中に存在する場合、タキサンおよびリトナビルは、一緒に製剤化してよく、または、多区画投与形態、例えば、多層錠剤もしくは多区画カプセルの別々の区画に存在していてもよい。
【0033】
放出調節製剤、例えば、遅効性、反復放出性および徐放性製剤を含む組成物では、投与後長期にわたって1種または両方の活性成分の適切な血中レベルを維持することが目的である。
【0034】
反復放出性製剤、例えば、錠剤またはカプセルは、すぐに(例えば、t=0h時に)適切な用量のタキサン(例えば、ドセタキセル)およびリトナビルを放出することができ、後で(例えば、リトナビルのCmaxが通常達成されるt=4h時に)さらに追加用量のリトナビルを放出できるものである。これは、例えば、コーティングを小腸での分解および溶解を可能にする酵素切断結合を含有する腸溶コーティングまたポリマーコーティングによって、初回用量のドセタキセルおよびリトナビルを追加用量のリトナビルから分離することで実現することができる。あるいは、これは、コーティングされた、およびコーティングされていない顆粒をカプセルに充填し、コーティングされた顆粒がリトナビルのみを含有し、コーティングされていない顆粒がドセタキセルおよびリトナビルを含有することによって実現することができる。これはまた、もちろん、即放性ドセタキセル錠剤/カプセルをリトナビルの反復放出性錠剤/カプセルと一緒にすることによって実現することができるであろう。任意の適切な腸溶コーティング、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニルおよび適切なアクリル酸誘導体、例えば、ポリメタクリレートを使用することができる。
【0035】
一実施形態では、リトナビルの第2の追加投与(したがって、全部で3回の投与)は、同様の原理、すなわち、第1の追加投与の数時間後(例えば、リトナビルの第1の追加投与がCmaxに達したとき)に反復放出することによって実施することができた。
【0036】
徐放性製剤は、例えば、適切な用量のタキサンおよび最初の初回/負荷用量のリトナビルを放出し、その後持続用量のリトナビルをゆっくり放出する製剤である。例えば、これは、ドセタキセルおよびリトナビルの単回経口剤形によって、またはドセタキセルの即放性錠剤/カプセルとリトナビルの徐放性錠剤/カプセルを一緒にすることによって達成することができる。
【0037】
放出調節製剤は、例えば、不活性な不溶性基質、親水性基質、イオン交換樹脂、浸透圧制御製剤および貯蔵体系を利用することができる。一般的な放出調節系は、例えば、以下の物質、活性薬物(複数可)、放出制御剤(複数可)(例えば、マトリクス形成剤、膜形成剤)、マトリクスもしくは膜調節剤、可溶化剤、pH調節剤、潤滑剤および流動助剤、補助コーティング剤および密度調節剤から構成される[84]。適切な不活性賦形剤には、リン酸水素カルシウム、エチルセルロース、メタクリレートコポリマーポリアミド、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルが含まれる。適切な脂質賦形剤には、カルナウバロウ、アセチルアルコール、水素化植物油、微結晶性ワックス、モノおよびトリグリセリド、モノステアリン酸PEGおよびPEGが含まれる。適切な親水性賦形剤には、アルギン酸塩、カルボポール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースが含まれる[84]。
【0038】
本発明の一実施形態では、タキサンおよびリトナビルを含む組成物は、リトナビルがタキサンよりも少し早くまたは速く放出されるように製剤化することができる。これは、実質的な量のタキサンが組成物から放出される前に、腸内におけるCYP3A4酵素を阻害する効果を有するだろう。したがって、タキサンが血流に達する前にCYP3A4酵素によって分解される量を減少させ、肝臓内のCYP3A4に対するリトナビルの効果によって、タキサンの吸収早期段階中に血流に達するタキサンの代謝および排除を減少させる効果も有する。この効果は、図1に示されており、ドセタキセルの60分前にリトナビルを投与すると経口バイオアベイラビリティーおよびAUCが増加することを示している。この結果は実施例2では統計学的に有意ではないが、この傾向が認められた。
【0039】
タキサンは、植物のTaxus属(イチイ)由来のジテルペン化合物である。しかし、現在、いくつかのタキサンは合成によって生成されている。タキサンは、細胞分裂を阻止することによって細胞増殖を阻害し、癌の治療に使用される。タキサンは、微小管形成を混乱させることによって細胞分裂を阻止する。タキサンは、血管新生阻害剤として作用することもできる。本明細書では、「タキサン」という用語には、天然に生じたものであろうと、または人工的に生じたものであろうとジテルペンタキサン全て、機能的誘導体およびチューブリンに結合し、かつ/またはCYP3A4の基質である薬学的に許容される塩またはエステルが含まれる。好ましいタキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである。BMS−275183は、パクリタキセルのC−3’−t−ブチル−3’−N−t−ブチルオキシカルボニル類似体である[83]。最も好ましいタキサンは、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステル、特にCYP3A4の基質である誘導体である。
【0040】
生理化学的特性を改変する基を含有するタキサンの誘導体はまた、本発明内に含まれる。したがって、溶解特性が改善されるか、または改変されたタキサンのポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)または糖結合体は含まれる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、タキサンおよびリトナビルそれぞれの適量を含むことができる。好ましくは、組成物は、約0.1mgと約1000mgの間のタキサンを含む。好ましくは、組成物はまた、約0.1mgと約1200mgの間のリトナビルを含む。タキサンおよびリトナビルそれぞれの量は、組成物投与の企図した頻度に左右される。例えば、組成物は、1日3回、1日2回または毎日、2日に1回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回または任意のその他の適切な投与間隔で投与することができる。これらの用法の組み合わせを使用することもでき、例えば、組成物は、週に1回または2週間に1回または3週間に1回、1日2回投与用であってもよい。例えば、パクリタキセルまたはドセタキセルは、週に1回、1日2回投与することができる。通常の週投与量は分割され、したがって対象は、例えば、週に1回、朝に用量の半分を、夜に残りの半分を摂取する。これには、血漿中の薬剤のピークレベルを低下させる効果があり、副作用を抑制する一助となり得る。また、薬物の全身曝露の総時間を増加させる。
【0042】
組成物が毎日投与用である場合、組成物は、好ましくはタキサンを約0.1mgと約100mgの間、より好ましくは、タキサンを約5mgと約40mgの間、より好ましくはタキサンを約5mgと約30mgの間、より好ましくはタキサンを約10mgと約20mgの間、最も好ましくはタキサンを約15mg含む。好ましくは、組成物はまた、リトナビルを約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビルを約100mg含む。
【0043】
組成物が毎週投与用である場合、組成物は、好ましくはタキサンを約30mgと約500mgの間、より好ましくは、タキサンを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはタキサンを約100mg含む。好ましくは、組成物はまた、リトナビルを約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビルを約100mg含む。
【0044】
驚くべきことに、リトナビルを低用量、例えば、100mgで使用しても、タキサンのバイオアベイラビリティーを増加させ、治療効果の増強をもたらす所望する特性がある。これは、低用量のリトナビルが所望する効果をもたらし、一方で副作用の危険性を最小限に抑えるために使用できることを意味している。
【0045】
本発明はまた、治療で使用するための、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む組成物を提供する。
【0046】
さらに、本発明はまた、新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む組成物を提供する。
【0047】
本発明によって治療される新生物疾患は、好ましくは固形腫瘍である。固形腫瘍は、好ましくは、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。固形腫瘍は、より好ましくは、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される。
【0048】
一実施形態では、新生物疾患の治療には、組成物の投与と、その後所定の期間後の追加用量のリトナビルの投与が含まれる。追加投与は、好ましくは組成物投与の約0時間後と約12時間後の間、より好ましくは、組成物投与の約1時間後と約10時間後の間、より好ましくは組成物投与の約2時間後と約8時間後の間、より好ましくは組成物投与の約3時間後と約5時間後の間、最も好ましくは組成物投与の約4時間後である。追加投与は、好ましくは、リトナビル約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビル約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビル約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビル約100mgである。
【0049】
驚くべきことに、追加用量のリトナビルの投与は、長期間血流中においてタキサンの治療レベルをもたらし、それによってより大きな治療効果を有することが発見された。
【0050】
関連した態様では、本発明はまた、新生物疾患の治療方法であって、有効量のタキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤の、このような治療を必要とする対象の投与を含む方法を提供する。
【0051】
前記組成物と同様に、タキサンは任意の適切なタキサンであってもよい。好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルから選択され、より好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルである。
【0052】
タキサンおよびリトナビルを対象に投与するとき、互いに実質的に同時に投与することができる。あるいは、互いに別々に投与することができる。別々に投与するとき、リトナビルは、好ましくはタキサンの前に、より好ましくは、タキサンの約60分前に投与する。
【0053】
本明細書では、「実質的に同時に」とは、タキサンもしくはリトナビル投与は、約20分以内、より好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内、さらにより好ましくは5分以内、最も好ましくはリトナビルもしくはタキサンは2分以内の投与であることを意味する。一般的に、リトナビルはタキサンと同時に、または前に投与するべきである。リトナビルおよびタキサンは、いくつかの実施形態では、同時に、すなわち、1製剤中で一緒に、または2つの別々の製剤で同時に投与することができる。
【0054】
タキサンまたはリトナビルのいかなる適切な量も、この方法にしたがって投与することができる。タキサンおよび/またはリトナビルの用量は、固定用量(すなわち、体重または体表面積に関わりなく、全患者に対して同じ)または体重ベースまたは体表面積ベースの用量で投与することができる。好ましくは、タキサンおよび/またはリトナビルは、固定用量で投与する。好ましくは、タキサンを約0.1mgと約1000mgの間で投与する。好ましくは、リトナビルを約0.1mgと約1200mgの間で投与する。投与されたタキサンおよびリトナビルそれぞれの量は、タキサンおよびリトナビルの企図した投与頻度に左右される。例えば、投与は、1日3回、1日2回または毎日、2日に1回、週に1回、2週間に2回、3週間に1回または任意のその他の適切な投与間隔であってもよい。これらの用法の組み合わせ、例えば、週に1回または2週間に1回または3週間に1回、1日2回投与を使用することもできる。
【0055】
方法にタキサンおよびリトナビルの毎日投与が関与する場合、好ましくはタキサンを約0.1mgと約100mgの間で投与し、より好ましくは、タキサンを約5mgと約40mgの間で投与し、より好ましくはタキサンを約5mgと約30mgの間で投与し、より好ましくはタキサンを約10mgと約20mgの間で投与し、最も好ましくはタキサンは約15mgである。好ましくは、リトナビルも約50mgと約1200mgの間で投与し、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間で投与し、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはリトナビルを約100mg投与する。
【0056】
方法にタキサンおよびリトナビルの毎週投与が関与する場合、好ましくはタキサンを約30mgと約500mgの間で投与し、より好ましくは、タキサンを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはタキサンを約100mg投与する。好ましくは、リトナビルも約50mgと約1200mgの間で投与し、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間で投与し、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはリトナビルを約100mg投与する。
【0057】
方法は、任意の新生物疾患を治療するためであってもよい。好ましくは、新生物疾患は固形腫瘍である。好ましくは、固形腫瘍は、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される。より好ましくは、固形腫瘍は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される。
【0058】
好ましくは、方法はヒト対象を治療するために使用される。
【0059】
一実施形態では、方法にはさらに、初回用量のリトナビルの投与(すなわち、タキサンの用量と一緒にしたリトナビルの用量)から所定の期間後の追加用量のリトナビルなどのCYP3A4阻害剤の投与が含まれる。追加用量は、好ましくは組成物の約0時間後と約12時間後の間、より好ましくは、組成物投与の約1時間後と約10時間後の間、より好ましくは組成物投与の約2時間後と約8時間後の間、より好ましくは組成物投与の約3時間後と約5時間後の間、最も好ましくは組成物投与の約4時間後に投与する。追加用量は、好ましくは、リトナビル約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビル約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビル約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビル約100mgである。
【0060】
本発明はまた、新生物疾患の治療方法を提供し、この方法は、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与されている対象に投与するステップを含む。
【0061】
本発明はさらに、新生物疾患の治療方法を提供し、この方法は、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、タキサンをリトナビルなどのCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与されている対象に投与するステップを含む。
【0062】
さらに、本発明は、タキサンを含む第1の医薬組成物およびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含み、第1および第2の医薬組成物が新生物疾患治療のための同時投与、別々の投与または連続投与に適しているキットを提供する。
【0063】
一実施形態では、キットはさらに、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物の後で投与するのに適している、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第3の医薬組成物を含むことができる。それぞれリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含むキットの第2および第3の医薬組成物は、実質的に同じ組成物の単一投与形態であってもよいことを理解されたい。
【0064】
あるいは、キットは、新生物疾患の治療のために、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第1の医薬組成物を含むことができる。この場合、キットはさらに、第1の医薬組成物の後に投与するために適しているリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含むことができる。
【0065】
さらに、本発明は、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0066】
さらにまた、本発明は、タキサンをリトナビルなどのCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0067】
当業者であれば、リトナビルを使用した組成物、方法またはキットに関連した前述の好ましい特性のいずれかまたは全てが等しく、その他のCYP3A4阻害剤、例えば、グレープフルーツジュースまたはセイヨウオトギリソウ(またはいずれかの成分)、ロピナビルまたはイミダゾール化合物、例えば、ケトコナゾールを使用している人に適用できることを理解するであろう。
【0068】
従来技術に関連した別の問題は、高いバイオアベイラビリティーと低い変動性を備えたタキサンを含む経口組成物を開発できなかったことである。i.v.タキサン製剤(Cremophor ELおよびエタノール、またはポリソルベート80およびエタノールなどの賦形剤も含有する)を経口摂取する経口パクリタキセル[例えば、3]および経口ドセタキセル[例えば、75]による臨床試験が実施された。悪心、吐き気および不快な味覚がしばしば患者によって報告されている。
【0069】
以前に検討されたように、Chenら[95]は、ポロキサマー188またはPVP−K30と組み合わせたドセタキセルの固形分散物を使用して、ドセタキセルの溶解度および溶解速度の改善を試みた。ポロキサマーは、ドセタキセル対ポロキサマー比5:95を使用したとき、20分後にドセタキセルの溶解度を約3.3μg/mlまで増加させ、約120分後には最大約5.5μg/mlまで増加させた(chenの文献の図7参照)。PVP−K30は、ドセタキセルの溶解度を20分後に約0.8μg/mlまで増加させ、約300分後には最大約4.2μg/mlまで増加させた(図2参照)。良好な経口バイオアベイラビリティーを実現するため、薬物は、比較的高い溶解度および溶解速度を有し、したがって、最初の約0.5から1.5時間で溶液中に十分多量の薬剤が存在するようにしなければならない。
【0070】
別の態様では、本発明は、実質的に非晶質のタキサン、親水性であり、好ましくは重合した担体および界面活性剤を含む経口投与用固形医薬組成物を提供する。
【0071】
この態様の組成物によってもたらされた利点は、タキサンの溶解度が驚異的な程度で増加することである。さらに、タキサンの溶解速度も驚異的な程度まで増加する。これらの要素のいずれも、タキサンのバイオアベイラビリティーの著しい増大を引き起こす。これは、少なくとも部分的に、タキサンが非晶質状態であるためと考えられる。結晶性タキサンは、溶解度が非常に低い。さらに、臨床試験では、本発明の経口組成物のAUCは高く、個体間変動は、液体製剤によって示された個体間変動よりも著しく低いことが発見された。これによって、経口化学療法計画において安全性の点で非常に望ましい、ずっと優れた予測可能性を備えたタキサン曝露がもたらされる。個体内変動はまた、著しく低いようである。他の利点は、本発明の経口組成物はおそらく液体経口用タキサン溶液と少なくとも同等であるか、またはより優れた忍容性があるように思われること(すなわち、副作用に関して)である。
【0072】
担体によってもたらされる利点は、水性媒体に入れたとき、タキサンを非晶質状態で維持するのに役立つことである。これは、タキサンの結晶化を阻止するか、または溶液中でタキサンの結晶化が開始するまでの時間を延長させるために役立つ。したがって、タキサンの溶解度および溶解速度は高く維持される。さらに、担体は、組成物に優れた物理的および化学的安定性を与える。タキサンの分解を防ぐのに役立ち、実質的に非晶質状のタキサンが徐々に固形状態中でより結晶性の構造に変化するのを防ぐのにも役立つ。良好な物理的安定性によって、タキサンの溶解度は確実に高く維持される。
【0073】
界面活性剤はまた、水性媒体中に入れたとき、非晶質状態のタキサンを維持するために役立ち、驚くべきことに、非晶質タキサンおよび担体を含む組成物と比較してタキサンの溶解度を実質的に増加させる。
【0074】
「実質的に非晶質」という用語は、タキサン分子の位置の秩序が広範囲にわたってほとんど、または全くないことを意味している。大部分の分子が、ランダムな方向を向いているであろう。完全な非晶質構造は、広範囲にわたって秩序がなく、結晶構造を全く含有しておらず、結晶個体とは正反対である。しかし、いくつかの個体は完全な非晶質構造を得ることが困難なことがある。したがって、多くの「非晶質」構造は完全に非晶質ではないが、まだ広範囲にわたる秩序または結晶性を一定量含有している。例えば、固体は、主に非晶質であるが、結晶構造のポケットを有していてもよく、または本当の非晶質と言ってもいいようにごく少量の結晶を含有していてもよい。したがって、「実質的に非晶質」という用語は、いくらか非晶質構造を有するが、いくらか結晶構造も同様に有する固体を包含する。実質的に非晶質であるタキサンの結晶化度は50%未満である。好ましくは、実質的に非晶質であるタキサンの結晶化度は40%未満で、さらにより好ましくは、30%未満で、さらにより好ましくは25%未満で、さらにより好ましくは20%未満で、さらにより好ましくは15%未満で、さらにより好ましくは12.5%未満で、さらにより好ましくは10%未満で、さらにより好ましくは7.5%未満で、さらにより好ましくは5%未満で、最も好ましくは2.5%未満である。結晶性タキサンは溶解度が低く、実質的に非晶質のタキサンの結晶化度が低ければ低いほど、実質的に非晶質のタキサンの溶解度は高くなる。
【0075】
実質的に非晶質のタキサンは、当業者に明らかな任意の適切な方法および技術で調製することができる。例えば、溶媒留去方法または凍結乾燥を使用して調製することができる。好ましくは、非晶質タキサンは、凍結乾燥によって調製する。驚くべきことに、凍結乾燥を使用して非晶質タキサンを調製すると、留去法と比較して溶解度および溶解速度が優れた組成物を生じる。これは、凍結乾燥法が溶媒留去法と比較してより多くの非晶質タキサンを生成することによるものと考えられる。
【0076】
経口投与用組成物は、固形形態である。固形組成物は、タキサンが実質的に非晶質の状態である限り、任意の適切な形態であってもよい。例えば、組成物は、非晶質タキサン、担体および界面活性剤の物理的混合物を含むことができる。好ましくは、タキサンおよび担体は、固形分散物の形態である。「固形分散物」という用語は、当業者には周知で、タキサンが担体中において部分的に分子的に分散していることを意味する。より好ましくは、タキサンおよび担体は、固溶体の形態である。「固溶体」という用語は、当業者には周知で、タキサンが担体中において実質的に完全に分子的に分散していることを意味する。固溶体は天然では固形分散物よりも非晶質状であると考えられる。固体分散物および固溶体の調製方法は、当業者には周知である[93、94]。これらの方法を使用して、タキサンおよび担体の両方を非晶質状態にする。タキサンおよび担体が固体分散物または固溶体の形態であるとき、タキサンの溶解度および溶解速度は、非晶質タキサンおよび担体の物理的混合物よりも大きい。タキサンが固体分散物または固溶体であるとき、タキサンは非晶質タキサン自体と比較してより非晶質状態になると考えられる。これによって溶解度および溶解性の改善がもたらされると考えられる。固体分散物または固溶体の結晶化度は50%未満である。好ましくは、固体分散物または固溶体の結晶化度は40%未満で、さらにより好ましくは30%未満で、さらにより好ましくは25%未満で、さらにより好ましくは20%未満で、さらにより好ましくは15%未満で、さらにより好ましくは12.5%未満で、さらにより好ましくは10%未満で、さらにより好ましくは7.5%未満で、さらにより好ましくは5%未満で、最も好ましくは2.5%未満である。
【0077】
タキサンおよび担体が固体分散物であるとき、界面活性剤は固体分散物または固溶体との物理的混合物であってもよい。しかし、好ましくは、組成物は、固体分散物、より好ましくは固溶体の形態でタキサン、担体および界面活性剤を含む。3種類の成分全てを固体分散物または固溶体で有する利点は、溶解度および溶解速度の同様の改善を実現するために、少量の界面活性剤の使用が可能になることである。
【0078】
一実施形態では、組成物は経口投与のためのカプセルに含めることができる。カプセルは、いくつかの異なる方法で充填することができる。例えば、非晶質タキサンは、凍結乾燥し、粉末化し、担体および界面活性剤と混合し、次いでカプセルに分注することによって調製することができる。他の好ましい実施形態では、非晶質タキサンは、経口投与のためにカプセル内でタキサン溶液を凍結乾燥することによって調製する。必要量のタキサンを含有するタキサン溶液をカプセルに分注し、次いでカプセル内に含有されている間に凍結乾燥する。粉末よりも液体の分注の方が容易なので、これによって必要量のタキサンのカプセル内への分注が容易になる。また、カプセル充填ステップが省かれ、工程がより効果的になる。次に、粉末化された担体および界面活性剤を添加することができる。好ましくは、カプセルはHPMCカプセルである。
【0079】
タキサンおよび担体が固体分散物または固溶体の形態である場合、タキサンおよび担体を含有する溶液は好ましくはカプセルに分注され、次いでカプセル内にある間に凍結乾燥される。この方法では、固体分散物または固溶体は、経口投与用カプセル内でタキサンおよび担体溶液を凍結乾燥することによって調製する。これによってまた、カプセル充填ステップが省かれる。次に、粉末化された界面活性剤を添加することができる。
【0080】
タキサン、担体および界面活性剤が固体分散物または固溶体の形態である場合、タキサン、担体および界面活性剤を含有する溶液は好ましくはカプセルに分注され、次いでカプセル内で凍結乾燥される。この方法では、固体分散物または固溶体は、経口投与用のカプセル内でタキサン、担体および界面活性剤溶液を凍結乾燥することによって調製する。これによってまた、カプセル充填ステップが省かれ、処理の困難な粉末を扱う必要性が省かれる。
【0081】
組成物のタキサンは、前記で定義した通り、任意の適切なタキサンであってもよい。好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される。より好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される。
【0082】
親水性の、好ましくは重合した組成物の担体は、pH7.4の水性媒体中で少なくとも部分的に溶解でき、かつ/またはこのような水性媒体で膨潤またはゼラチン化することができる有機性の、好ましくは重合した化合物である。担体は、組成物中におけるタキサンの非晶質状態を確実に維持し、タキサンの溶解度および溶解速度を確実に増加させる任意の適切な親水性の、好ましくは重合した担体であってもよい。好ましくは、担体は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、クロスポビドン(PVP−CL)、ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテートコポリマー(PVP−PVA)、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、糖類、ポリオールおよびそれらのポリマー、例えば、マンニトール、スクロース、ソルビトール、デキストロースおよびキトサンおよびシクロデキストリンから選択される。より好ましくは、担体は、PVP、PEGおよびHPMCから選択され、最も好ましくは担体はPVPである。
【0083】
担体がPVPである場合、担体として作用し、非晶質状態のタキサンの維持を促進するため、任意の適切なPVP[98]であってもよい。例えば、PVPは、PVP−K12、PVP−K15、PVP−K17、PVP−K25、PVP−K30、PVP−K60、PVP−K90およびPVPK120から選択することができる。好ましくは、PVPは、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される。
【0084】
組成物は、担体が非晶質タキサンの非晶質状態を維持するように、非晶質タキサンに対して任意の適切な量の担体を含有することができる。好ましくは、タキサンと担体との重量比は、約0.01:99.99w/wと約75:25w/wの間である。より好ましくは、タキサンと担体との重量比は、約0.01:99.99w/wと約50:50w/wの間、さらにより好ましくは約0.01:99.99w/wと約40:60w/wの間、さらにより好ましくは約0.01:99.99w/wと約30:70w/wの間、さらにより好ましくは約0.1:99.9w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約1:99w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約2.5:97.5w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約2.5:97.5w/wと約15:85w/wの間、さらにより好ましくは約5:95w/wと約15:85w/wの間、最も好ましくは約10:90w/wである。
【0085】
界面活性剤は、任意の適切な薬学的に許容される界面活性剤であってもよく、このような界面活性剤は、当業者には周知である。好ましくは、界面活性剤は、トリエタノールアミン、ヒマワリ油、ステアリン酸、リン酸2水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム2水和物、アルギン酸プロピレングリコール、オレイン酸、モノエタノールアミン、鉱物油およびラノリンアルコール、メチルセルロース、中鎖トリグリセリド、レシチン、含水ラノリン、ラノリン、ヒドロキシプロピルセルロース、モノステアリン酸グリセリル、パミトステアリン酸エチレングリコール、ジエタノールアミン、ラノリンアルコール、コレステロール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される。より好ましくは、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される。最も好ましくは、界面活性剤はSDSである。
【0086】
タキサンの溶解度および溶解速度を高めるために、界面活性剤の任意の適切な量を組成物中で使用することができる。好ましくは、界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比は、約1:99w/wと約50:50w/wの間、より好ましくは、約1:99w/wと約44:56w/wの間、さらにより好ましくは、約1:99w/wと約33:67w/wの間、さらにより好ましくは約2:98w/wと約33:67w/wの間、さらにより好ましくは、約2:98w/wと約17:83w/wの間、さらにより好ましくは、約5:95w/wと約17:83w/wの間、最も好ましくは約9:91w/wである。
【0087】
あるいは、界面活性剤とタキサンとの重量比は、約1:100w/wと約60:1w/wの間、より好ましくは、約1:50w/wと約40:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:20w/wと約20:1w/wの間、さらにより好ましくは約1:10w/wと約10:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:5w/wと約5:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:3w/wと約3:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:2w/wと約2:1の間、最も好ましくは約1:1w/wである。
【0088】
組成物中に含有されるタキサンの単位用量は、組成物投与の企図した頻度に左右される。適切な投薬量および投与頻度は、タキサンおよびリトナビル組成物に関して前述されている。
【0089】
一実施形態では、組成物は腸溶コーティングを含む。適切な腸溶コーティングについては、前述されている。腸溶コーティングは、胃におけるタキサンの放出を防御し、それによってタキサンの酸媒介性分解を防御する。さらに、タキサンが吸収される腸へのタキサンの標的化輸送が可能になり、したがって、(結晶化が生じる前に)タキサンが溶液中に存在する限られた時間が吸収の可能な部位でのみ確実に費やされる。
【0090】
一実施形態では、組成物はさらに、1種または複数の他の薬学的に活性のある成分を含むことができる。好ましくは、1種または複数の他の薬学的に活性のある成分は、CYP3A4阻害剤である。適切なCYP3A4阻害剤は、前述されている。好ましくは、CYP3A4阻害剤はリトナビルである。
【0091】
医薬組成物は、当業者に周知の他の薬学的に許容される補助剤および媒体をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物で使用できる薬学的に許容される補助剤および媒体には、限定はしないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝剤物質、例えば、リン酸塩、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、3ケイ酸マグネシウムおよび羊毛脂が含まれる。
【0092】
医薬組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、粉末または被覆された顆粒を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。錠剤は、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。あるいはまた、発泡性、2層および/または被覆錠剤であってもよい。カプセルは、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも、一般的に添加される。カプセル形態で経口投与するために、有用な希釈剤には、乳糖および乾燥コーンスターチが含まれる。錠剤およびカプセルのため、添加できるその他の医薬品添加物は、結合剤、充填剤、充填剤/結合剤、吸着剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤などである。錠剤およびカプセルは、錠剤およびカプセルの外見または特性を改変するために、例えば、味を改変するため、または錠剤もしくはカプセルを着色被覆するため、被覆することができる。
【0093】
組成物に添加できるその他の薬学的に許容される添加物は当業者には周知で、そのいくつかは本発明の最初の態様にしたがって組成物に関して前述されている。
【0094】
本発明はまた、治療に使用するための前記組成物を提供する。
【0095】
さらに、本発明は、新生物疾患の治療に使用するための前記組成物を提供する。適切な新生物疾患については、前述されている。
【0096】
本発明はまた、有効量の前記組成物をこのような治療を必要とする対象に投与することを含む新生物疾患の治療方法を提供する。
【0097】
好ましくは、この方法はヒト対象を治療するために使用される。
【0098】
実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む本発明の組成物は、適切ならばタキサンおよびCYP3A4阻害剤またはリトナビルの使用に関して前述した方法で使用できることを当業者は理解するであろう。
【0099】
別の態様では、本発明は、実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む経口投与用医薬組成物を提供し、実質的に非晶質のタキサンは凍結乾燥によって調製される。
【0100】
この組成物によってもたらされる利点は、タキサンの溶解度の増加およびまた溶解速度の増加がもたらされることである。これは、非晶質タキサンを生成するその他の方法と比較して凍結乾燥方法がより多くの非晶質タキサンを生成するためと考えられる。タキサンの性質がより非晶質であると、溶解度および溶解速度の増加がもたらされるものと考えられる。
【0101】
この組成物の他の任意選択の特徴は、非晶質タキサン、担体および界面活性剤を含む組成物と同様である。例えば、実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む組成物であって、実質的に非晶質なタキサンが凍結乾燥によって調製される組成物は、好ましくはさらに界面活性剤を含む。タキサン、担体、タキサンの結晶化度、タキサンと担体の比、タキサンおよび担体の状態などの好ましい実施形態は、前述した通りである。
【0102】
本発明をこれから、単なる例として添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】i.v.投与(リトナビルなし)に対してリトナビルの経口投与(RTV)(同時に、およびドセタキセルの60分前にリトナビルを投与)を比較した、時間に対するドセタキセル血漿濃度を示した図である。ドセタキセル経口用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセル当たりリトナビル(Norvir(登録商標))100mg。
【図2】経口ドセタキセルと同時または経口ドセタキセルの60分前のリトナビル経口投与(用量100mg:Norvir(登録商標)、カプセル)と比較した、時間に対するリトナビル血漿濃度を示した図である。T=0はドセタキセルの投与時である。したがって、ドセタキセルの前に投与したリトナビルに対応する曲線の最初の部分は見えない。経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセル当たりリトナビル(Norvir(登録商標))100mg。
【図3】リトナビル(RTV)と組み合わせた経口ドセタキセルの薬物動態モデルを示した図である。薬物動態モデルにおける様々な区画は以下の通りである。 C1−胃腸管(経口ドセタキセルの投入部分) C2−中央部分(ドセタキセル) C3−第1末梢部分(ドセタキセル) C4−第2末梢部分(ドセタキセル) C5−胃腸管(リトナビルの投入部分) C6−中央部分(リトナビル) C7−活性型CYP3A4酵素 C8−不活性型CYP3A4酵素
【図4】数人の対象について、リトナビルと組み合わせた経口ドセタキセルの時間に対する活性型CYP3A4酵素の相対量を示した図で、各線は1対象を表す。
【図5】パクリタキセル物理的混合物に対するパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:900mL WfI、37℃、75rpm)。
【図6】ドデシル硫酸ナトリウムを含む、および含まないパクリタキセル(PCT)固体分散物カプセルの溶解試験の結果を示した図である(条件:900mL WfI、37℃、75rpm)。
【図7】ドデシル硫酸ナトリウムが固体分散物に組み込まれた、またはカプセルに添加されたパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL WfI、37℃、75rpm(SDSをカプセルに添加した場合は100rpm))。
【図8】様々な担体を有するパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL WfI、37℃、100rpm)。
【図9】様々な薬剤−担体比のパクリタキセル/PVP−K17固体分散物の溶解度試験の結果を示した図である(条件:25mL WfI、37℃、7200rpm)。
【図10】様々な媒体に溶かしたパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL FaSSIF(淡灰色)、37℃、75rpmまたは500mL SGFspおよび629mL SIFsp、37℃、75rpm(濃灰色))。
【図11】5種類の異なる製剤のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。A:無水ドセタキセル、B:非晶質ドセタキセル、C:無水ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物、D:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物、E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WFI、37℃、720rpm)。
【図12】異なる担体を有する固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物、F:非晶質ドセタキセル、HPβ−CDおよびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図13】様々な鎖長のPVPを有する固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物、G:非晶質ドセタキセル、PVP−K12およびSDSの固体分散物、H:非晶質ドセタキセル、PVP−K17およびSDSの固体分散物、I:非晶質ドセタキセル、PVP−K25およびSDSの固体分散物、J:非晶質ドセタキセル、PVP−K90およびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図14】様々な薬物負荷の固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:1/11ドセタキセル、K:5/7ドセタキセル、L:1/3ドセタキセル、M:1/6ドセタキセル、N:1/21ドセタキセル(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図15】ドセタキセルおよびPVP−K30の固体分散物の文献データ[Chenら、95]と比較した、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの相対量による溶解性の結果を示した図である。
【図16】ドセタキセルおよびPVP−K30の固体分散物の文献データ[Chenら、95]と比較した、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの絶対量による溶解性の結果を示した図である。
【図17】文献データ[Chenら、[95]と比較した、ドセタキセルカプセル(PVP−K30+SDSを含むカプセル当たりドセタキセル(DXT)15mg)の溶解試験の結果を示した図である。
【図18】ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの絶対量による溶解性の結果を示した図である。溶解試験は、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で実施した。
【図19】ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの相対量による溶解性の結果を示した図である。溶解試験は、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で実施した。
【図20】第1クールでドセタキセルおよびリトナビルを同時に投与された患者の薬物動態曲線を示した図である。第2クールでは、患者にt=0にドセタキセルおよびリトナビルを同時に投与し、次にt=4hに追加用量のリトナビルをさらに投与した。
【図21】ドセタキセルの液体製剤および/またはドセタキセルを含む固体分散物(MODRAと称する)を投与された患者4人の薬物動態曲線を示した図である。
【図22】ドセタキセルの固体経口製剤(MODRA)を投与された患者と比較したドセタキセルの液体経口製剤を投与された患者の薬物動態曲線を示した図である。
【図23】ドセタキセルのi.v.投与および経口投与後の薬物動態曲線を示した図である。i.v.および経口の両方によるドセタキセル投与は、リトナビルの投与と組み合わせた。N.B.算出されたバイオアベイラビリティーは、投与用量に対して補正する。
【実施例1】
【0104】
リトナビル用量100mgは、ドセタキセル用量100mgと一緒にして、患者22人に同時に経口投与した。1時間i.v.注入(標準的方法)として投与されたi.v.投与ドセタキセル(100mg)(Taxotere(登録商標))(リトナビルなし)と比較した。
【0105】
経口リトナビル:1カプセルにはリトナビル(Norvir(登録商標))100mgが含まれる。経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。
【0106】
得られた薬物動態データは以下の通りである。
リトナビルを含まない経口ドセタキセルのAUC 0.29±0.26(mg.h/L)
リトナビルを含む経口ドセタキセルのAUC 2.4±1.5(mg.h/L)
リトナビルを含まない静脈内ドセタキセルのAUC 1.9±0.4(mg.h/L)
【0107】
この結果によって、ドセタキセル吸収および排除の両方に対するリトナビルの2重効果が示される。リトナビルと組み合わせて経口投与するとドセタキセルAUCは、8.2倍増加する。驚くべきことに、曝露は、静脈内投与後に到達したものよりもさらに多く、リトナビル追加のドセタキセル排除阻害に対する効果を反映している。
【0108】
結論
リトナビルが経口ドセタキセルの全身曝露を同用量レベルのドセタキセルの静脈内投与後のレベルと同程度であるか、またはより高いレベルまで増加させることができるという概念が患者においてはっきりと立証された。組み合わせは、安全で、非常に好ましい薬物動態特性を示すようである。
【実施例2】
【0109】
経口によるドセタキセルおよびリトナビルの組み合わせによる固形悪性腫瘍の治療。
【0110】
患者は、2種類の治療群、XおよびYに無作為抽出した。X群は、第1週にリトナビル100mgおよび60分後に経口ドセタキセル100mgを投与し、第2週に、これらの患者にリトナビル100mgおよび経口ドセタキセル100mgを同時投与した。Y群の患者には、第1週にリトナビル100mgおよび経口ドセタキセル100mgを同時投与し、第2週に、リトナビル100mgおよび60分後に経口ドセタキセル100mgを投与した。X群およびY群にはいずれも、経口投与開始15日後にリトナビルを含まないi.v.ドセタキセル(Taxotere(登録商標)、標準的方法、1時間注入)100mgを投与した。
【0111】
経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセルにはリトナビル(Norvir(登録商標))100mgが含まれる。
【0112】
薬物動態の結果を以下に挙げる。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
結論
ドセタキセル60分前にリトナビルを投与する場合とドセタキセルとリトナビルの同時投与の間には有意差はなかった。経口投与のAUCは、静脈内投与のAUCよりも大きい(図1参照)。これは、ドセタキセル排除の阻害に対するリトナビルの効果によって説明される。
【0116】
所見
この臨床試験は、比較的低用量のドセタキセルで実施されたが、高いAUC値(2.4±1.5mg.h/L、ドセタキセル100mg)が生じ、同用量の静脈内投与後のAUC値よりもさらに高かった。それによって、静脈内投与後には存在するが、経口投与後では体内循環に到達しない医薬媒体がドセタキセルの組織分布を制限するため、当然のことながら経口経路後(投与直後)の分布量は静脈内経路後よりも大きくなる。本発明者らは、これらの効果を理解するための薬物動態モデルを構築した(以下参照)。このモデルはまた、ドセタキセル排除に対するリトナビルの効果が、リトナビルが血流中にもはや存在しないときなくなることを示している。リトナビルは、ドセタキセル排除をリトナビルがない場合のレベルの35%まで阻害する。
【0117】
マウスにおける従来技術の前臨床試験で使用した用量と比較すると、この臨床試験はリトナビル100mgおよびドセタキセル100mgを使用しており、一方、マウスにおける前臨床試験はリトナビル12.5mg/kgおよびドセタキセル10〜30mg/kgを使用した。ドセタキセル用量10〜30mg/kgは、ヒトにおいて極めて毒性がある(生命を危うくする)。リトナビル用量12.5mg/kgは、ヒトにおいてCYP3A4を阻害するために通常使用されるものよりも実質的に高い。
【0118】
従来の前臨床試験では、リトナビルはドセタキセルより30分前に投与された。臨床試験では、薬剤はまた同時に投与されたが、同時投与とリトナビルの投与60分前投与との間ではドセタキセル薬物動態の改善に有意な差はなかった。これは、両薬物が単独の薬剤形態(例えば、ドセタキセルおよびリトナビルの両方を含有する錠剤、カプセルまたは飲用溶液)で与えることができることを示している。
【0119】
リトナビル100mgを共投与したとき(ドセタキセル用量100mgで)得られるドセタキセルAUC値(2.4±1.5mg.h/L)は、例えば、転移性乳癌において、週間計画で治療効果があると考えることができる。これは、週間計画でドセタキセル100mgを15mg/kgの用量のCsAと共に経口投与した以前の第II相試験と全く同程度で、転移性乳癌を有する患者の奏効率50%、ドセタキセルAUC約2.3mg.h/Lをもたらす。
【0120】
完全を期してリトナビル薬物動態データを以下に挙げる(図2参照)。
【0121】
【表3】
薬物動態プロファイル
前記の試験から得られたデータの薬物動態(PK)分析は、薬物動態プロファイルを作製するためのNONMEN(非線形混合効果モデリング)プログラム(GloboMax LLC、Hanover、MD、USA)を使用して実施した。これは、様々な区画を使用した薬物の吸収、排除および分布をモデル化したものである。経口投与と静脈内投与の間の薬理学的な違いを以下に提示する。
【0122】
経口ドセタキセル曝露は、ドセタキセル単独およびリトナビルとの組み合わせの単回投与後に調べた。リトナビルは経口ドセタキセルと同時に、または1時間前に投与した。
【0123】
薬物投与後、血液試料を薬物動態分析用に採取した。盲検試料は投与前に採取した。血液試料は遠心して、結晶を分離し、すぐに−20℃で分析するまで保存した。分析は、GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)認定研究所において有効なHPLC法で実施された。これは、本発明者によって本明細書で提示した薬物動態試験全てに関与する。
【0124】
PKモデル
PKモデルは、i.v.ドセタキセルのPKモデルをベースにした。このモデルは、3種類の区画を使用しており、Brunoらによって詳しく記載されている[85]。経口投与ドセタキセルから得られたデータは、胃腸管をモデル化した貯蔵区画がさらに追加されているこのモデル内で実装された。リトナビルの薬物動態モデルは、Kappelhoffら[87]によって記載された2区画モデルを使用して最も良く記載された。図3は、最終的な薬物動態モデルを図示したものである。ドセタキセルの薬物動態に対するリトナビルの影響は、2種類の異なる機構、a)リトナビル存在下でのドセタキセルの吸収の改善(リトナビル(RTV)区画とC1からC2へのドセタキセル吸収とを連結するライン)、b)リトナビルは活性型CYP3A4を阻害し(C6とC7とを連結するライン)、活性型CYP3A4はドセタキセルの排除に関与する(C7とドセタキセルの排除経路とを連結するライン)によってモデル化された。
【0125】
吸収
ドセタキセルの吸収は、リトナビルと共投与すると著しく改善された。経口ドセタキセル単独のバイオアベイラビリティー計算値は14%(ドセタキセル100mgを経口投与された患者3人のデータに基づく)である。リトナビルと組み合わせた経口ドセタキセルのバイオアベイラビリティーは56%で4倍高かった。この効果は、GI管に存在するCYP3A4酵素のリトナビルによる阻害によるものと考えることができる。
【0126】
排除
ドセタキセルは、主にCYP3A4によって代謝される。リトナビルはCYP3A4を阻害する。これによって、リトナビルをドセタキセルと共投与すると排除の抑制が引き起こされる。ドセタキセルの除去は、CYP3A4量と関連しており、したがって徐々に変化する。図4は、経時的な相対的推定酵素濃度を示す。ドセタキセルの除去は、酵素濃度と1:1で相関する。したがって、ドセタキセルの除去対時間は図4と類似するだろう。
【0127】
分布量
中心区画(図3のC2)の量は、i.v.投与(±6L)と経口投与(±60L)とでは著しく異なる。これはおそらく、ドセタキセル製剤の主要な賦形剤の1つ、ポリソルベート80によるものである。ポリソルベート80は、ドセタキセルを捕捉できるミセルを形成する[86]。ポリソルベート80は、i.v.投与の場合は循環に入るが、経口投与の場合は吸収されない。したがって、ポリソルベートは、吸収されないという事実によって、経口投与後、ドセタキセルの薬物動態の性質に影響を及ぼさない。
【0128】
結論
経口ドセタキセルのバイオアベイラビリティーは、リトナビルと共投与すると約4倍に増加した。全身曝露は、GI管および肝臓(すなわち、吸収および排除それぞれ)におけるCYP3A4に対するリトナビルの併用効果によって、AUCに関しては、8.2倍増加した。
【0129】
ドセタキセルの排除は、リトナビルと併用すると減少する。
【0130】
分布量(中央区画の量)は、ポリソルベート80が存在すると少なく、ポリソルベート80がないと多い。
【0131】
前述の経口ドセタキセル試験では、ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。薬剤師によって調製されたこの溶液は、水道水100mlと一緒にした飲用溶液(用量100mgでは10mg/ml溶液10ml)として患者に経口的に摂取された。研究目的では、これは実行可能であるが、所定の使用および自宅では用いられない。この飲用溶液の薬剤師による調製は時間がかかる。この溶液は安定性が限られている。患者は(おそらくポリソルベートおよびエタノール賦形剤のため)この飲用溶液のまずくて不快な味に苦情を言うことが多かった。明らかに、(例えば、カプセルまたは錠剤として摂取される)経口固体投与剤形が好ましく、患者には非常に支持される。
【0132】
要約すると、本発明はタキサンのバイオアベイラビリティーおよび全身曝露を改善し、タキサン、特に経口タキサンの臨床効果を改善し、治療に関連した可能性のある副作用もおそらく軽減する。これは経済的および臨床的に有益である。
【実施例3】
【0133】
パクリタキセルの経口製剤
3.1:固体分散物および物理的混合物
この実験では、SDSと混合したパクリタキセルおよびPVP−K17の固体分散物を含む組成物の溶解度および溶解速度を無水パクリタキセル、PVP−K17およびSDSの物理的混合物と比較した。
【0134】
PVP−K17に入れたパクリタキセル固体分散物の5mgカプセル
PVP−K17に入れたパクリタキセル20%の固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 400mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(条件は表3参照)。パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表4参照)。
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
PVP−K17との物理的混合物に入れたパクリタキセルの5mgカプセル
物理的混合物は、無水パクリタキセル5mgをPVP20mg、乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合することによって調製した。得られた粉末混合物をカプセル化した。
【0138】
【表6】
【0139】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水900mL中で回転速度75rpmで試験した。第1の実験では、各製剤のカプセル1個を使用した。第2の実験では、各製剤のカプセル2個を使用した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表4参照)。
【0140】
【表7】
【0141】
結果および結論
結果を図5に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(5および10mg)に対して表す。パクリタキセルの溶解は、PVPを含む固体分散物に組み込むことによって非常に改善されることは明らかに確認できる。物理的混合物を使用すると、溶解したパクリタキセルの最大量は表示量の20%未満に維持される。固体分散物を使用すると、溶解度は約65%(パクリタキセル5mg)または70%超(パクリタキセル10mg)である。パクリタキセル10mgの実験では、これは約8μg/mlの絶対溶解度に対応し、これは約15分後に実現する。したがって、固体分散物は溶解度が著しく増加し、バイオアベイラビリティーに重要な迅速な溶解速度ももたらす。
【0142】
固溶体または固体分散物では、非晶質状態の担体は担体およびタキサンの十分な混合を可能にする。担体は、保存中および水性媒体に溶解中の結晶化を防御する。
【0143】
3.2:カプセル製剤に対するドデシル硫酸ナトリウムの添加
この実験では、カプセル中の界面活性剤SDSの有無の溶解度に対する効果を測定した。
【0144】
PVP−K17に入れた20%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 400mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0145】
ドデシル硫酸ナトリウムを含まない5mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mgと混合し、カプセル化した(表7参照)。
【0146】
【表8】
【0147】
ドデシル硫酸ナトリウムを含む5mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表8参照)。
【0148】
【表9】
【0149】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水900mL中で回転速度75rpmで試験した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0150】
結果および結論
結果を表6に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合5mg)に対して表す。凍結乾燥したタキサンおよび担体固体分散物の空隙率は十分高く、粉末形態のとき確実に迅速に溶解する(結果は示さず)。しかし、粉末をカプセルに圧縮するとき、水和性は劇的に減少する。したがって、カプセルまたは錠剤に圧縮するとき、固体分散物を湿らせるために界面活性剤が必要である。
【0151】
パクリタキセルの溶解は、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムを添加することによって非常に改善されることが図6から明らかに確認できる。以前の実験によって、クロスカルメロースナトリウムやより多くの乳糖を添加したり、大きなカプセルを使用したりしても、カプセル製剤の溶解速度は増加しないことが示されている。また、SDSなどの界面活性剤で、最大の溶解が約10〜15分で実現することが示された。
【0152】
3.3:固体分散物製剤へのドデシル硫酸ナトリウムの添加
この実験では、固体分散物へのSDSの添加の溶解度に対する効果を測定した。
【0153】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0154】
PVP−K17およびドデシル硫酸ナトリウム10%に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 375mgおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)62.5mgは水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0155】
パクリタキセル/PVP−K17固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル40%/PVP−K17固体分散物62.5mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表9参照)。
【0156】
【表10】
【0157】
パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル40%/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム10%固体分散物68.75mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表10参照)。
【0158】
【表11】
【0159】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水500mL中で試験した。回転速度は、パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物のカプセルでは75rpmに、パクリタキセル/PVP−K17固体分散物のカプセルでは100rpmに設定した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0160】
結果および結論
結果を表7に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。固体分散物に組み込んだ、ドデシル硫酸ナトリウムを含むカプセルからのパクリタキセルの溶解は、カプセルに添加したドデシル硫酸ナトリウムのカプセルからのパクリタキセルの溶解と同程度である。さらに、固体分散物に組み込む場合は、ドデシル硫酸ナトリウムは6.25mgだけ使用し、一方、カプセル製剤に添加する場合はドデシル硫酸ナトリウムは30mgを使用した。このことは、類似の結果を実現するためには、カプセルよりも固体分散物に組み込むときの方が必要な界面活性剤が少ないことを示している。この実験の別の驚くべき結果は、両組成物はパクリタキセルの絶対溶解度が約26μg/mlであり、このレベルは20〜30分で到達されることである。この結果は、今までに実現されたものよりも溶解度が高く、溶解速度が速い。
【0161】
3.4:担体の影響
最初の実験で薬剤負荷間の明らかな差が示さなかった後で、実施例3.4の実験で使用した固体分散物は生成された。これらの製剤は、前述の実験の20%薬剤負荷製剤と同等に作用し、1個の錠剤またはカプセルでより多くのタキサンを送達する可能性がもたらされたので、40%薬剤負荷を選択した。
【0162】
PVP−K12に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K12 375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K12水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0163】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0164】
PVP−K30に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K30 375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K30水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0165】
HP−シクロデキストリンに入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、HP−シクロデキストリン375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらHP−シクロデキストリン水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0166】
25mgパクリタキセル固体分散物カプセル
パクリタキセル/担体固体分散物62.5mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表11参照)。
【0167】
【表12】
【0168】
溶解試験
全カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水500mL中で回転速度100rpmで試験した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0169】
結果および結論
2から3の実験の平均結果を図8に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。PVP−K30固体分散物からのパクリタキセルの溶解は、PVP−K17固体分散物からのパクリタキセルの溶解の速さと同じくらいであることを明らかに認めることができる。しかし、溶解したパクリタキセルの量は、PVP−K30固体分散物の場合、4時間の実験中高く維持される。
【0170】
ポリマー担体の鎖長は、水性環境での結晶化時間を決定する。
【0171】
3.5:薬物/担体比の影響
実施例3.5の実験で使用した固体分散物は、最初の実験で担体間の明らかな差が示されなかった後で生成された。これらの最初の実験は、実施例3.4のより詳細な実験の前に実施された。結果として、PVP−K17は、さらに実験するために担体として任意に選択された。
【0172】
PVP−K17に入れた10%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0173】
PVP−K17に入れた25%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 750mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0174】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0175】
PVP−K17に入れた75%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 83mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0176】
パクリタキセル100%固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら水16.67mLに添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0177】
溶解試験
パクリタキセル約4mgに等しい固体分散物粉末の量を50mLビーカーに入れた。磁石撹拌棒および水25mLをビーカーに添加した。溶液は7200rpmで撹拌した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0178】
結果および結論
2から3の実験の平均結果を図9に示す。溶解したパクリタキセル(PCT)の量は表示量(この場合約4mg)に対して表す。薬物/担体比の影響は、図9からすぐに明らかである。パクリタキセルのピーク濃度の値は、薬物/担体比に反比例する。最高ピーク濃度には、最低の薬物/担体比(10%)で到達し、最低ピーク濃度には最高の薬物/担体比(100%)で到達する。さらに、10%薬物/担体比の固体分散物のAUC値が最高で、25、40、75および100%薬物/担体比の固体分散物のAUC値がそれに続く。
【0179】
薬物の量に対する担体の量は、水性環境での結晶化時間を決定する。
【0180】
3.6:腸溶コーティングの影響
PVP−K17およびドデシル硫酸ナトリウム10%に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 375mgおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)62.5mgは水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0181】
パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム10%固体分散物68.75mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表12参照)。
【0182】
【表13】
【0183】
溶解試験
カプセルは、重複して異なる2種類の溶解試験を行った。第1の試験は、2段階の溶解試験で、ペプシンを含まない模擬胃液(SGFsp;表13)500mL中における2時間の溶解試験、その後のペプシンを含まない模擬腸液(SIFsp;表13)629mLにおける2時間の溶解試験から構成される。第2の試験は、絶食状態の模擬腸液(FaSSIF;表14)媒体500mLで4時間実施された。
【0184】
両溶解試験は、37℃に維持した媒体500mLを有するUSP2(パドル)溶解装置およびパドル回転速度75rpmで実施した。SGFsp媒体は、変換媒体129mLを添加することによってSIFsp媒体に交換した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0185】
【表14】
【0186】
【表15】
【0187】
結果および結論
結果を図10に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。絶食状態模擬腸液におけるパクリタキセルの溶解は、模擬胃液(SGFsp)よりも約20%多い。SGFspにおいて2時間後、溶液中のパクリタキセルの量は媒体を模擬腸液(SIFsp)に交換すると少しだけ増加する。
【0188】
腸溶コーティングは、胃におけるタキサンの放出を防御し、それによって活性成分の溶解を防御する。さらに、タキサンが吸収される腸への標的化輸送が可能になり、したがって、(結晶化が生じる前に)タキサンが溶液中に存在する限られた時間が吸収の可能な部位においてのみ確実に費やされる。
【実施例4】
【0189】
ドセタキセルの経口製剤
材料および方法
以下の実験で使用した製剤は、以下に概略した方法および表15に記載した組成物によって調製した。
【0190】
純粋な無水ドセタキセル
無水ドセタキセルは、ScinoPharm、Taiwanから入手して使用した。
【0191】
純粋な非晶質ドセタキセル
ドセタキセルは、無水ドセタキセル300mgをt−ブタノール30mL中に溶解することによって非晶質化した。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら注射用水(WfI)20mLに添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/9)に移し、その後t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によって除去した(表16参照)。
【0192】
物理的混合物
物理的混合物は、ドセタキセル150mgおよび対応する量の担体および界面活性剤(表15参照)を乳鉢および乳棒で混合することによって調製した。
【0193】
固体分散物
固体分散物は、無水ドセタキセル300mgをt−ブタノール30mLに溶解し、対応する量の担体および界面活性剤(表15参照)を注射用水20mLに溶解することによって得られた。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら担体/界面活性剤/WfI溶液に添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/9)に移し、その後t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によって除去した(表16参照)。
【0194】
【表16】
【0195】
【表17】
【0196】
溶解試験
ドセタキセル約6mgに等しい粉末の量を50mLビーカーに入れた。磁石撹拌棒および水25mLをビーカーに添加した。溶液は720rpmで撹拌し、約37℃に維持した。試料は様々な時点で採取し、0.45μmフィルターで濾過してからメタノールおよびアセトニトリル1:4v/v混合物で希釈した。濾過し、希釈した試料をその後HPLC−UVによって分析した(表17参照)。
【0197】
【表18】
【0198】
4.1:製剤の種類
第1の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する製剤の種類の影響を調べた。製剤AからEで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図11に示す。製剤Eは、4連で試験し、製剤AからDは2連で試験した。
【0199】
結果
製剤A(純粋な無水ドセタキセル)は、5分間撹拌した後、最高濃度約12μg/mL(存在する全ドセタキセルの4.7%)に達し、15分間撹拌した後、平衡濃度約6μg/mL(2%)に達する。
【0200】
製剤B(純粋な非晶質ドセタキセル)は、0.5分後に最高32μg/mL(13%)に達し、10分から60分では、溶解度は製剤Aと同程度である。
【0201】
製剤C(無水ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物)は、5分後に約85μg/mL(37%)の濃度に達する。15分と25分の間に、ドセタキセル濃度は、85μg/mL(37%)から30μg/mL(12%)に急に減少し、その後、60分ではさらに20μg/mL(9%)まで減少する。
【0202】
製剤D(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物)は、7.5分後に最大ドセタキセル濃度約172μg/mL(70%)に達する。7.5分と20分の間に、溶液中のドセタキセルの量は24μg/mL(10%)に減少する。60分では、平衡濃度19μg/mL(7%)に達する。
【0203】
製剤E(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物)は、5分後に最高の最大濃度約213μg/mL(90%)に達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0204】
結論
製剤は全て、最初は高い溶解度を示し、45分から60分撹拌すると平衡溶解度まで減少する。溶解度の減少は、過飽和溶液の結果であるドセタキセルの結晶化によって引き起こされる。過飽和の程度は、薬物の物理的状態、すなわち、非晶質であるか、または結晶であるかによって左右される。PVP−K30が担体のとき、過飽和状態は長く維持され、したがって、ドセタキセルの溶解度はあまり急速には減少しない。さらに、この結果は、非晶質ドセタキセルを使用すると、無水ドセタキセルと比較してドセタキセルの溶解度が著しく増加することを示している。さらに、非晶質ドセタキセルは、比較的速い溶解速度を示し、約5分から7.5分でピークに達する。
【0205】
この実験は、溶液中のドセタキセルの量は、無水ドセタキセルとPVP−K30およびSDSを物理的に混合することによって著しく増加し、非晶質ドセタキセルとPVP−K30およびSDSを物理的に混合することによってさらに増加することを示している。しかし、溶解度の最大の増加は、ドセタキセルをPVP−K30およびSDSの固体分散物中に組み込むことによって実現する。
【0206】
4.2:担体の種類
第2の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する担体の種類の影響を調べた。製剤EおよびFで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図12に示す。製剤Eは、4連で試験し、製剤Fは2連で試験した。
【0207】
結果
製剤E(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物)の最大濃度は最高で213μg/mL(存在する全ドセタキセルの90%)であり、5分後に到達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0208】
製剤F(非晶質ドセタキセル、HPβ−CDおよびSDSの固体分散物)は、約2分後に最大ドセタキセル濃度約200μg/mL(81%)に達する。5分と10分の間に、溶液中のドセタキセルの量は16μg/mL(6%)の値に減少し、45分後に平衡濃度11μg/mL(4%)に達する。
【0209】
結論
この実験は、PVP−K30およびHPβ−CDの両方がドセタキセルの溶解度を増加させることを示している。HPβ−CDと比較してPVP−K30を担体として使用するとき、ドセタキセル最大濃度は少し高く、過飽和状態は長く維持され、したがって、ドセタキセルの溶解度は時間と共に急速には減少しない。さらに、ドセタキセル沈殿後に達する平衡濃度はHPβ−CDと比較してPVP−K30の方が高い。
【0210】
4.3:鎖長
第3の実験では、ドセタキセルの溶解度に対するPVP鎖長の種類の影響を調べた。製剤EおよびGからJで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を以下の図13に示す。製剤Eは4連で試験し、製剤GからJは2連で試験した。
【0211】
結果
製剤G(PVP−K12)は、5分後にドセタキセル最大濃度206μg/mL(存在する全ドセタキセルの77%)に達する。5分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は20μg/mL(7%)の値に減少し、45分後のドセタキセル濃度は17μg/mL(6%)である。
【0212】
製剤H(PVP−K17)は、5分後にドセタキセル最大濃度200μg/mL(83%)に達し、この濃度は撹拌して10分まで維持され、その後溶液中のドセタキセルの量は15分で44μg/mL(18%)に、30分で22μg/mL(9%)に急速に減少する。45分と60分の間の平衡濃度は、約21μg/mL(8%)である。
【0213】
製剤I(PVP−K25)は、撹拌して5分後にドセタキセル最大濃度214μg/mL(88%)に達する。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は22μg/mL(9%)の値に減少し、60分後のドセタキセル濃度は19μg/mL(8%)である。
【0214】
製剤E(PVP−K30)のドセタキセル最大濃度は、213μg/mL(90%)で、5分後に到達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0215】
製剤J(PVP−K90)は、撹拌して10分後にドセタキセル最大濃度214μg/mL(88%)に達する。15分後、溶液中のドセタキセルの量はまだ151μg/mL(61%)である。60分後、ドセタキセル濃度は19μg/mL(7%)に減少した。
【0216】
結論
この実験は、PVPの鎖長は、過飽和の程度および過飽和が維持される期間の両方に影響を及ぼすことを示している。使用するPVP鎖長が長ければ長いほど、ドセタキセル最大濃度はより高く、過飽和期間はより長くなり、したがって、より長い期間より高い溶解度がもたらされる。
【0217】
4.4:薬物負荷
第4の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する薬物負荷の影響を調べた。製剤EおよびKからNで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図14に示す。製剤Eは4連で試験し、製剤KからNは2連で試験した。
【0218】
製剤N(ドセタキセルは全組成物の重量の1/21、ドセタキセル対PVPは5:95w/w)は、10分後にドセタキセル最大濃度197μg/mL(存在する総ドセタキセルの79%)に達する。15分後に、溶液中のドセタキセルの量は、まだ120μg/mL(48%)で、15分と30分の間に、ドセタキセル濃度は24μg/mL(12%)に減少する。60分後では、ドセタキセル濃度は20μg/mL(8%)である。
【0219】
製剤E(ドセタキセルは全組成物の重量の1/11、ドセタキセル対PVPは10:90w/w)のドセタキセル濃度は213μg/mL(90%)で、5分後に到達する。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)に達する。
【0220】
製剤M(ドセタキセルは全組成物の重量の1/6、ドセタキセル対PVPは20:80w/w)のドセタキセル濃度は、撹拌して10分後に196μg/mL(80%)である。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は25μg/mL(10%)に減少し、60分後ではドセタキセル濃度は18μg/mL(7%)である。
【0221】
製剤L(ドセタキセルは全組成物の重量の1/3、ドセタキセル対PVPは40:60w/w)はドセタキセル濃度176μg/mL(71%)に達する。10分と15分の間に、溶液中のドセタキセルの量は46μg/mL(18%)に急速に減少し、60分後の溶液中のドセタキセルの量は18μg/mL(7%)である。
【0222】
製剤K(ドセタキセルは全組成物の重量の5/7、ドセタキセル対PVPは75:25w/w)は撹拌して5分後にドセタキセル最大値172μg/mL(71%)に達する。5分と10分の間に、ドセタキセル濃度は42μg/mL(17%)に急に減少し、60分後にドセタキセル濃度は18μg/mL(7%)に達する。
【0223】
結論
この実験は、固体分散物中で使用したドセタキセルの量に対するPVP−K30の量は、過飽和の程度および過飽和が維持される期間の両方に影響を及ぼすことを示している。薬物負荷の使用が高ければ高いほど、ドセタキセル最大濃度は低くなり、過飽和期間は短くなり、したがって、徐々に溶解度が低くなる。
【0224】
4.5:従来技術の組成物との溶解度の比較
この実験では、ドセタキセル15mg、PVP−K30 135mgおよびSDS15mgの固体分散物を含有する組成物を、Chenら[95]で開示したドセタキセル5mgおよびPVP−K30の固体分散物を含む組成物の文献データと比較した。溶解度の結果は、Chenら[95]で記載された溶解試験を使用して得られ、図15および16に示す。溶解試験はまた、模擬腸液で実施され、Chenの文献データと比較した。結果を図17に示す。
【0225】
結果
図15から、Chenらの組成物は水900mlにおいて組成物中のドセタキセル5mgの最大約80%を溶解できることを認めることができる。この最大値に達するためには5時間超かかる。ドセタキセル、PVP−K30およびSDS組成物は、約60分でドセタキセル15mgの100%を溶解した。
【0226】
図16では、ドセタキセルの絶対濃度を示す。Chenの組成物は、約5時間後にドセタキセル最大濃度約4.2μg/mlを示した。ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物は、約60分後にドセタキセル最大濃度約16.7μg/mlを示した。
【0227】
図17では、ドセタキセルカプセルは28μg/mlの溶解度(溶解度>90%)に達する。Chenらによって記載された固体分散物(ドセタキセル+PVPK30)は、4.2μg/ml(900mlでの溶解で試験したドセタキセル5mg固体分散物の80%未満)の溶解度に達する。カプセル製剤はしたがって、より速い溶解速度で、6.6倍高い溶解度に達する(30分後に最大に達するのに対してChenでは90〜120分)。
【0228】
結論
これらの結果から、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物はChenの組成物と比較して溶解速度が速く、溶解度が高いことを認めることができる。バイオアベイラビリティーについては、どのくらい速く薬物が溶解し、0.5hから1.5hでどの溶解度に達するかを観察することが重要である。
【0229】
Chenの結果から、当業者は、組成物中のドセタキセルの量が増加してもドセタキセルの絶対溶解度は増加しないと考えるだろう。Chenの組成物は水900mlにはドセタキセル5mgの80%(すなわち、4mg)しか溶解しないので、ドセタキセルの量を15mgに増加しても溶解するドセタキセルは4mgを上回らないことが予測される。したがって、Chenによるドセタキセル15mg組成物は、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物の100%と比較して最大約27%のドセタキセルが溶解すると予測される。したがって、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物によって得られた結果は、Chenと比較して驚くほど優れている。
【0230】
4.6:パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)における溶解試験
この実験では、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物を含有するカプセルの溶解を、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で試験した。このカプセルは、製剤Eにしたがってドセタキセル15mgを含有した(表15参照)。SIFspはUSP28にしたがって調製した。ドセタキセル15mgを含有するカプセルは、37℃で75rpmで撹拌しながらUSP SIFsp 500mLに溶解した。結果は、図18および19に示す。
【0231】
図18および19は、ドセタキセルのほぼ100%が溶解したことを示している。これは、ドセタキセルの絶対濃度約29μg/mLと等しく、約30分で達成される。したがって、この組成物は、比較的短い期間で比較的高い溶解度をもたらす。
【0232】
4.7:安定性
臨床試験(以後の実施例参照)のためのカプセルで使用された、製剤E(表15参照)によるドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物は、4〜8℃で保存したとき、少なくとも80日間、化学的(分解なし)および物理的(溶解特性に変化なし)に安定であることが分かった。
【実施例5】
【0233】
製剤の臨床試験データ
材料および方法
患者10人が進行中の第1相臨床試験に参加した。
【0234】
これらの患者には以下の番号をつけた。
301、302、303、304、305、306、307、308、309および310。
【0235】
これらの患者は、ドセタキセルの液体製剤またはドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物を含む固体組成物(以後、MODRAと称する)から構成される治療薬を与えられた。
【0236】
液体製剤
ドセタキセル用量:全患者に対して30mg(ドセタキセル20mgを投与された患者306以外)。30mgの用量は以下のように調製した。静脈内投与用Taxotere(登録商標)プレミックス3.0ml(ポリソルベート80(25%v/v)、エタノール(10%(w/w)および水の1ml当たりドセタキセル10mgを含有する)を水と混合して、最終体積25mLにした。この溶液を水道水100mLと共に患者に経口摂取させた。
【0237】
MODRA
ドセタキセル用量:30mg。カプセル当たりドセタキセル15mgのカプセル2個を摂取した。臨床試験でさらに試験するために、前の実施例の製剤E(ドセタキセル1/11、PVP−K30 9/11およびSDS1/11)を選択した。製剤Eの新しいバッチは、無水ドセタキセル1200mgをt−ブタノール120mLに溶解し、PVP−K30 10800mgおよびSDS 1200mg(表15参照)を注射用水80mLに溶解することによって作製した。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K30/SDS/WfI溶液に添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/3)に移し、t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によってすぐに除去した(表16参照)。
【0238】
サイズ0のゼラチンカプセル60個全てにドセタキセル15mgに対応する固体分散物の量を充填し、固体分散物mg当たりのドセタキセルの正確な量を測定するためにHPLCアッセイを使用した。アッセイによって、カプセルはドセタキセル15mgを含有することが確認された。
【0239】
患者は、朝空腹時に水道水100mLと共に経口的に治療薬を投与された。
【0240】
患者の治療
患者301、302、303、304および305は液体製剤のみを投与された。
【0241】
患者306は、第1クールで液体製剤としてドセタキセル20mg+リトナビルを投与され、第2クールで、同様の治療薬を投与されたが、ドセタキセルを摂取して4時間後にさらにリトナビルを投与された。
【0242】
患者307、308、309および310は液体製剤および/またはMODRAを投与された。クールは、1週間間隔で投与された。
【0243】
施設の指針にしたがって、経口およびi.v.ドセタキセルの両方について、患者全てを経口デキサメタゾンで治療した。デキサメタゾン用量4mgを被験薬の1時間前、その後は12時間毎(2回)に4mg投与した。ドセタキセルによる治療の1時間前に、患者はまた、悪心および吐き気を抑えるため、グラニセトロン(Kytril(登録商標))1mgを投与された。
【0244】
薬物投与後、血液試料を薬物動態分析用に採取した。盲検試料は投与前に採取した。血液試料は遠心して、血漿を分離し、分析するまですぐに−20℃で保存した。分析は、GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)認定研究所において有効なHPLC法で実施された[101]。
【0245】
結果
【0246】
【表19】
【0247】
患者301、302、303、304、305、307、309および310は液体製剤を投与された。平均およびAUCの平均の95%信頼区間(無限大まで外挿)は、1156(±348)ng*/mLである。個体間変動は85%である。
【0248】
患者306は、第1クールでリトナビル100mgと同時に(液体製剤として)ドセタキセル20mgを投与され、1週間後、第2クールでは、同じ組み合わせであるが、ドセタキセルの摂取4時間後にリトナビル100mgをさらに投与され、すなわち、リトナビルは2回、1回目はt=0、2回目はt=4hに摂取された。薬物動態曲線を図20に示す。
【0249】
患者307、308、309および310は液体製剤および/またはMODRAを投与された。薬物動態曲線を図21に示す。
【0250】
図22は、液体製剤(307、309および310)を投与された患者の薬物動態曲線およびMODRAを投与された4人の患者(307、308、309および310)の全経過(n=6)を示している。
【0251】
いずれもリトナビル100mgと組み合わせた液体製剤対MODRAの薬物動態の結果を以下にまとめて示す。
液体製剤(ドセタキセル30mg)
AUCinf(平均の95%信頼区間):1156(808〜1504)ng*h/ml
個体間変動:85%(n=8)
【0252】
MODRA(ドセタキセル30mg)
AUCinf(平均の95%信頼区間):756(568〜968)ng*h/ml
個体間変動:29%(n=4)
個体内変動:33%(n=2)
【0253】
MODRAの平均AUCは、患者4人の6曲線を使用して計算した。各患者に投与したMODRAの最初の用量は、個体間変動を計算するために使用した。個体内変動は、MODRAを2回投与された患者307および308のデータに基づく。
【0254】
結論
試験したドセタキセル液体製剤は、新規カプセル製剤(MODRA)で得られた同用量(30mg)よりも約1.5倍のAUC値を生じた。
【0255】
液体製剤の個体間変動は高く(85%)、カプセル製剤の個体間変動は大幅に低い(29%)。これは、新規カプセル製剤の重要な特徴で、より優れたドセタキセル曝露をもたらすと予測できる。安全性の理由からも、個体間変動が低いことは、経口化学療法計画に非常に望ましい。
【0256】
個体内変動(限られたデータ)は、個体間変動と同様の大きさである。
【0257】
ドセタキセル投与の4時間後に摂取された2回目のリトナビル100mgの追加投与によって、ドセタキセルAUCは1.5倍に増加する。
【0258】
i.v.投与に対する経口カプセル製剤の比較
図23は、ドセタキセルのi.v.投与後(i.v.による1時間注入としてドセタキセル20mg、Taxotere(登録商標))(患者n=5)および経口投与(ドセタキセル30mg、MODRAカプセル、前記参照)(患者n=4、6クール)後の薬物動態曲線を示す。i.v.および経口の両方によるドセタキセル投与は、リトナビル(カプセル、Norvir(登録商標))100mgの投与と組み合わせた。施設の指針にしたがって、経口およびi.v.ドセタキセルの両方について、患者全てを経口デキサメタゾンで治療した。デキサメタゾン用量4mgを被験薬の1時間前、その後は12時間毎(2回)に4mg投与した。ドセタキセルによる治療の1時間前に、患者はまた、悪心および吐き気を抑えるため、グラニセトロン(Kytril(登録商標))1mgを投与された。
【0259】
MODRAカプセルのバイオアベイラビリティーは、
(AUC30mg経口/AUC20mg iv)×(20/30)×100%=73%(SD18%)によって計算した。
【0260】
カプセルのバイオアベイラビリティーは比較的高く、個体間変動は低いことが示された。
【0261】
前述の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するものであって、その範囲を制限するものではなく、範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。本明細書で引用した文書は全て、全体を参照により本明細書に組み込む。
(参考文献)
【0262】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関する。具体的には、限定するものではないが、新生物疾患を治療するための組成物および方法に関する。
【0002】
経口形態での薬物の投与には、いくつかの利点がある。効果が最適であるように治療を慢性的に適用しなければならないとき、経口抗癌剤、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)プロドラッグ(例えば、カペシタビン)およびシグナル伝達経路または血管形成プロセスを妨害する薬物の利用性は重要である[1]。さらに、経口薬は、外来患者への投与または自宅投与が可能なので、ますます便利で、患者のクォリティオブライフが向上し、ことによると入院患者を減少させることによって経費を削減することができる[2]。したがって、抗癌剤の経口投与を試みることは有利である。
【0003】
一般的に、薬剤の経口投与は、便利で、実用的である。しかし、抗癌剤の大部分は、残念ながら経口によるバイオアベイラビリティーが低く、変動しやすい[1]。一般的な例は、広く使用されているタキサン、ドセタキセルおよびパクリタキセルであるが、経口によるバイオアベイラビリティーは10%未満である[3、4]。バイオアベイラビリティーがより高いいくつかのその他の抗癌剤は、高い変動性を示す。例には、トポイソメラーゼI阻害剤、ビンカアルカロイドおよびミトキサントロンが含まれる[1、5、6]。治療域が狭いため、バイオアベイラビリティーが変動しやすいと、治療的血漿レベルが実現しないとき予期せぬ毒性または効果の低下が生じ得る。Hellriegelらは、経口投与後の血漿レベルは一般的に、i.v.投与後の血漿レベルよりも変動しやすいことを研究で示した[7]。適切な経口バイオアベイラビリティーは、薬剤曝露の期間が抗癌剤治療の主要な決定要素のとき、重要である[8]。経口による適切なバイオアベイラビリティーはまた、局所的毒性をもたらす可能性がある胃腸管において局所的薬剤濃度の上昇を抑えるのに重要である。
【0004】
Chenら[95]は、抗癌剤、ドセタキセルのバイオアベイラビリティーを改善するために、その溶解度を高めようと実験を実施した。Chenらは、様々な担体、すなわち、モノステアリン酸グリセリル、PVP−K30またはポロキサマー188と共にドセタキセルの固体分散物を使用することを試みた。Chenらは、ポロキサマー188は、ドセタキセル対ポロキサマーの比5:95で使用したとき、ドセタキセルの溶解度は20分後に約3.3μg/mlにまで増加し(標準的溶解試験)、約120分後には最大約5.5μg/mlにまで増加することを発見した。PVP−K30のみでは、ドセタキセルの溶解度は20分後に約0.8μg/mlまで増加し、約300分後には最大約4.2μg/mlまで増加した。モノステアリン酸グリセロールは、ドセタキセルの溶解度を全く増加させなかった。したがって、ドセタキセルの溶解度および溶解速度は、あまり高レベルまでは増加しなかった。
【0005】
抗癌剤の経口バイオアベイラビリティーが変動しやすく、かつ/または低いことを説明できる重要な機構はいくつかあり、例えば、胃腸管における薬物輸送体の親和性が高く吸収を制限すること、および小腸および/または肝臓における活発な代謝(初回通過効果)によって薬物の除去が高いことである[1、4、9]。その他の重要な要素には、構造的不安定性および胃腸液における薬物の溶解度の限界、薬物−薬物および薬物−食品相互作用、運動障害、閉塞性障害、吐き気および嘔吐の存在または胃腸管における局所的毒性が含まれる。
【0006】
薬物輸送体および経口薬物のバイオアベイラビリティーに影響を及ぼす代謝酵素に関して、主要な薬物輸送体および抗癌剤の経口バイオアベイラビリティーの低さ/変動しやすさに関与する代謝酵素は、P−糖タンパク質(P−gp)およびチトクロームP450(CYP)アイソザイムであると推測されてきた。
【0007】
P−糖タンパク質(P−gp)は、エネルギー依存性輸送または細胞から生体異物を排出することによって薬物の細胞内蓄積を減少させる流出ポンプとして機能する膜結合性多剤輸送体である。P−gpは、排除機能を有する通常組織、例えば、肝細胞の胆汁小細管膜、血液脳関門および血液−精巣関門における内皮細胞の管腔膜、胎盤のシンシチウム栄養芽細胞の頂端膜、小腸の内皮頂端膜、ならびに腎近位尿細管で同定されてきた。P−gpは、異物毒素に対して組織を保護する重要な障壁機能を有することができる[9〜12]。
【0008】
P−gpは、特定の医薬化合物が小腸の粘膜細胞を通過し、したがって、体循環に吸収されるのを妨げると考えられている。異なる物理化学的特性および薬理学的活性を有する多種多様な薬剤、例えば、ベラパミル、キニジンおよびシクロスポリンA(CsA)ならびに新規活性ブロッカーGF120918(エラクリダール)、LY335979(ゾスキダル)およびR101933は、P−gpを調節することが臨床研究で示された[13〜18]。P−gp調節因子がi.v.投与後に抗癌剤の薬物動態に影響を及ぼし得る機構は、チトクロームP450(CYP)媒介性の小腸または肝臓代謝との競合、P−gp媒介性胆汁排出の阻害、小腸輸送および腎排除の阻害である[19、20]。抗癌剤と調節因子を一緒にした、または一緒にしない前向き無作為化試験が少しだけ実施された。これらの試験によって、調節因子と一緒にしたときの抗癌剤の用量低減は、重篤な薬剤関連毒性を防御するために必要であることが明らかになった。さらに、これらの試験では、抗癌剤と調節因子の組み合わせの生存上のいかなる利点も示されなかった[21〜23]。
【0009】
多くの抗癌剤では、チトクロームP450(CYP)は主要な酸化的薬物代謝酵素系である。CYPアイソザイムは、肝臓および小腸で強く発現するが、薬物代謝における各アイソザイムの正確な関与は知られていない。この酵素系による小腸での除去は、薬物の経口バイオアベイラビリティーの制限で重要な役割を果たすと認識されている[31]。ヒトでは、主要な薬物代謝酵素であり、肝臓CYPの約30%、小腸CYP発現の70%超を占めている4種類の機能的CYP3A酵素が同定されている[24、30、32、33]。
【0010】
いくつかのP−gp調節因子はまた、CYP系のアイソザイム、CYP3Aの基質であると思われる。P−gpおよびCYP3Aの基質選択性の重複は、組織における局在と合わせて考えると、これらの2種類のタンパク質が協力して、毒性のある生体異物に対する吸収障壁となっていることを示唆している[24〜26]。Cumminsらは、このことを確かめ、P−gpが薬物の細胞内代謝酵素系への接近を制御することによって小腸での薬物代謝(特に、アイソザイムCYP3A4)に影響を及ぼし得ることを示した[27]。したがって、CYP3AおよびP−gpは、小腸における共通基質薬物の制限された、および/または変化しやすい経口バイオアベイラビリティーの一因となり得るものと考えられる。
【0011】
タキサン、パクリタキセルおよびドセタキセルは、数種の腫瘍(例えば、乳癌、卵巣癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌[NSCLC])における抗癌活性が証明された。現在では、薬物は様々な用量および用法で静脈内投与される[34]。しかし、経口製剤では、タキサンのバイオアベイラビリティーは非常に低い。これはP−gpおよびCYP3Aの作用によるものと推測される。経口投与薬物のバイオアベイラビリティー増加を試みる研究は、マウスおよびヒトにおいていくつかの抗癌剤(例えば、タキサン)で実施されてきた。
【0012】
パクリタキセルを経口投与すると、バイオアベイラビリティーは非常に低い(<10%)。これは、胃腸管に存在するP−gpに対してパクリタキセルの親和性が高いことが原因である[4、10、35、36]。さらに、腸壁および肝臓におけるCYPアイソザイム3A4および2C8による体循環前(presystemic)排除はまた、パクリタキセルの低い経口バイオアベイラビリティーの一因となり得る[37〜39]。野生型マウスおよびmdrla P−gpノックアウトマウスによる最近の研究は、P−gpがパクリタキセルの吸収を制限することを明白に示した。野生型マウスと比較したノックアウトマウスにおける概念実証研究では、本研究者らは、パクリタキセルの血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)が経口投与後では6倍増加し、i.v.投与後では2倍増加することを示した[4]。経口投与後の野生型マウスの糞便から回収した無変化パクリタキセルの画分は、mdrla P−gpノックアウトマウスにおける用量の3%と比較して用量の87%であった。胃腸管から完全に吸収されたにもかかわらず、おそらく小腸/肝臓での初回通過除去のため、バイオアベイラビリティーは100%までは増加しなかった[4、40]。
【0013】
この所見に基づいて、経口バイオアベイラビリティーを高めるため、パクリタキセルと組み合わせたP−gp阻害剤によるいくつかの新たな研究が開始された。マウスにおける研究で、SDZ PSC833、シクロスポリンD類似体および強力なP−gp阻害剤をパクリタキセルと共投与すると、全身曝露の10倍増加が引き起こされた[41]。同程度の効果を示す類似の研究が、CsAおよびパクリタキセルで実施された[42]。CsAを共投与すると、野生型マウスにおける経口バイオアベイラビリティーが9%から67%に増加した。CsAで一緒に治療した野生型マウスで得られたパクリタキセルの血漿レベルは、CsAを含まない経口パクリタキセルで治療したノックアウトマウスで得られたレベルよりもさらに高かった。これは、胃腸管におけるP−gpの阻害によって摂取が増加すること、およびCYP3Aの阻害によって排除が減少することによって説明することができる[42〜45]。しかし、その他のまだ確認されていない薬剤輸送体または薬剤排除経路の遮断も無視することはできない。
【0014】
長期経口投与のためのCsAの使用は、患者の健康に有害な免疫抑制効果と関連してきた。したがって、パクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーを高めるために、他の非免疫抑制型P−gpブロッカー、GF120918を検討した。GF120918はそもそも、腫瘍におけるP−gp媒介多剤耐性を逆行させるために開発された[16]。最近公表された研究では、Bardelmeijerらは、GF120918がパクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーを著しく高めることを示した[46]。野生型マウスにおけるパクリタキセルの経口バイオアベイラビリティーは8.5%から40%に増加し、GF120918を投与された野生型マウスにおけるパクリタキセルの薬物動態はmdrla/b P−gpノックアウトマウスで見出された薬物動態と類似していた。したがって、GF120918は、小腸においてP−gpを効果的に遮断し、パクリタキセルの摂取または排除に関与するその他の経路にはおそらく影響を及ぼさない。注目すべきことに、近年、GF120918はまた、ABC薬剤輸送体BCRP(ABCG2)の効果的な阻害剤であることが示された[28、29]。
【0015】
ドセタキセルはまた、P−gpの基質であることが1994年、Wilsらによって初めて示された[47、48]。p−gp阻害剤と組み合わせたパクリタキセルで有望な結果が得られたため、マウスにおいてドセタキセルの研究も行われた。これらの研究によって、P−gpはまた、ドセタキセルの低いバイオアベイラビリティーにおいて重要な役割を果たすことが確認された。経口ドセタキセルのAUCは、CsAとの共投与によって9倍増加した[49]。さらに、P−gpを少し阻害する特性を備えたCYP3A4の阻害剤、リトナビルとの共投与をマウスで試験した。CYP3A4は、ヒトにおけるドセタキセルの代謝分解に関与する主要な酵素である[50]。本発明者らは、マウスにおいてリトナビルをドセタキセルと共投与する前臨床試験を実施し、見かけ上のバイオアベイラビリティーが4%から183%に増加することを示した。活発な初回通過代謝はまた、マウスにおける経口ドセタキセルの低いバイオアベイラビリティーに大きく関与し得る[49]。マウスの小腸におけるチトクロームP450酵素(Cypと称する)は、ヒトに見出されるものとは異なり、異なる基質特異性を有する。さらに、マウスとヒトとの間のCYPの発現の調節は、転写因子、例えば、ヒトCYP3AではPXRの活性、発現および調節の差によってかなり異なる[88〜92]。したがって、マウスにおけるこれらの研究は、マウスの生理、酵素などがヒトとは完全に異なるため、ヒトにおける結果を示唆する拠り所とはなり得ない。したがって、マウスでのデータは単純にヒトに当てはめることはできない。さらに、マウスにおけるこの研究では、ヒト対象では致死的な極めて高用量のドセタキセル(10〜30mg/kg)および高用量のリトナビル(12.5mg/kg)も使用した。72kgの個体では、これはドセタキセル720〜2160mgを意味する。しかし、現在では、患者は通常、臨床では100と200mgとの間の投薬量のドセタキセルで治療される(静脈内)。明らかに、投与された薬物のレベルが高いので、この取り組みはヒトでは不可能である。さらに、マウスでのデータは、ヒトにおけるこの組み合わせによる経口での取り組みの安全性についてはいかなる証拠ももたらしていない。
【0016】
マウスにおける広範な前臨床結果に基づいて、いくつかの臨床的概念実証試験が開始された。固形腫瘍を有する患者に、単一薬剤として経口パクリタキセル60mg/m2を、またはCsA15mg/kgと組み合わせた経口パクリタキセル60mg/m2を1クール投与した。経口CsAの共投与は、経口的パクリタキセルの全身曝露の8倍増加をもたらし、この研究における経口的パクリタキセルの見かけ上のバイオアベイラビリティーはCsAなしの4%からCsAありの47%まで増加した[3]。全身曝露のこの増加はおそらく、胃腸管におけるP−gpの阻害が原因であるが、パクリタキセル代謝の阻害はまた、パクリタキセル研究から判断されたように[41、42]、この効果に関与し得る。パクリタキセルの全身曝露をさらに増加させるために、CsAと組み合わせた経口的パクリタキセルの用量漸増試験によって、最大許容用量は300mg/m2で、高用量でのAUCの増加は用量に比例しないことが明らかになった[52]。この最高用量レベルでは、糞便への排除を測定するためマスバランス試験を実施した。最高用量レベル300mg/m2では、全糞便排除は76%で、そのうちの61%は親薬物であり、このことは、経口投与パクリタキセルの胃腸管からの吸収が不完全であることによって説明することができる[53]。経口投与のために使用されたパクリタキセルi.v.製剤中の多量の補助溶媒Cremophor ELは、経口的に投与されたパクリタキセルの完全な吸収を妨害したと考えられる。さらに、i.v.パクリタキセルの非線形薬物動態および重篤な過敏性反応の原因となるCremophor ELは、血漿レベルは検出されなかったので、パクリタキセルの経口投与では吸収されなかった[54〜56]。これは、パクリタキセルの経口投与のさらなる利点となり得る[51、52]。その後、閾値レベル0.1μMを上回る経口パクリタキセルの全身曝露期間を延長させるために、CsAと組み合わせた経口パクリタキセルの1日2回(b.i.d.)用法を患者に使用した。2×90mg/m2の用量レベルでは、パクリタキセルの長期間全身曝露は適切に0.1μMを上回るレベルに達し、良好な安全性プロファイルが認められた[57]。これらの研究では、患者は静脈内パクリタキセル製剤(Cremophor ELおよびエタノールも含有する)を経口摂取した[57]。さらに、CsAを用いた経口パクリタキセルの用量設定試験によって、CsAによるP−gp阻害は、10mg/kgの単回投与で最大であることが示された[58]。
【0017】
別の第I相試験では、患者に経口パクリタキセルの1時間前にGF120918を1000mg投与した[59]。パクリタキセルに対する全身曝露の増加は、CsA併用と同程度であった。これらの第I相試験の結果に基づいて、パクリタキセルの反復経口投与が実行可能で、有効であるかどうかを調べるために第II相試験を開始した。経口パクリタキセルを数種類の腫瘍に、すなわち、NSCLCでは初回および二次治療として[60]、進行胃癌では初回治療として[99]、進行乳癌では二次治療として[100]、週1回b.i.d.で投与した。患者は全て、90mg/m2の経口パクリタキセルを用量でb.i.d.で毎週治療した。CsAは、10mg/kgの用量で、各パクリタキセル投与の30分前に投与した。進行NSCLCの患者において、奏効率(ORR)は評価可能な患者23人において26%であった[60]。無増悪期間中央値は3.5ヶ月、生存期間中央値は6ヶ月であったので、以前の試験と同程度であった。ビノレルビン、ゲムシタビンおよびタキサンなどのいくつかの単一薬剤を使用したこれらの試験によって、奏効率は8%〜40%で、生存期間中央値は6〜11ヶ月の範囲であることが明らかになった[61〜66]。
【0018】
進行胃癌では、対症療法的意図で化学療法が施される。マイトマイシンまたはメトトレキセートと組み合わせた5−FU/ドキソルビシンなどの薬剤による併用化学療法あるいはエピルビシン/シスプラチン/5−FU用法は、しばしば使用される計画で、奏効率が20%〜50%の間であることが示された[67〜70]。パクリタキセルはまた、進行胃癌の患者において、初回および二次治療で抗癌活性を示した(ORR:5%〜23%)[71〜73]。この試験におけるORRは、評価可能な患者24人において32%であった。このb.i.d.週間計画の毒性プロファイルは、良く管理されている[99]。NSCLCの患者群において最も一般的な毒性は、患者の54%で認められるグレード3/4の好中球減少であった。これは、標準的な3週間間隔のパクリタキセルi.v.計画と同程度である[65、66]。
【0019】
神経毒性の発生は3週間間隔の計画と比較して低く、これは、この試験ではパクリタキセル血漿濃度のピークが低いことによって説明することができる。これはまた、パクリタキセル3時間注入に対して24時間で注入投与された患者で認められたが[74]、i.v.投与後(したがって、Cremophor ELの存在下)のパクリタキセル血漿レベルが経口パクリタキセル後(したがって、Cremophor ELを含まない)と同等であり得るかどうか問われる可能性がある。
【0020】
ドセタキセルについては、類似の臨床的概念実証研究が固形腫瘍の患者で実施された。患者に、CsA15mg/kgの経口単回投与と共に、または共にせずに経口ドセタキセル75mg/m2を1クール投与した。薬物動態の結果によって、経口CsAの共投与は、ドセタキセルの全身曝露の7.3倍増加を生じることが示された。経口ドセタキセルの見かけ上のバイオアベイラビリティーは、CsAを伴わない8%からCsAを伴う90%まで増加した[75]。この全身曝露の増加は、CYP3A4の阻害、ならびに胃腸管におけるCsAによるP−gpの阻害によって説明することができるが、両機構の大きさは正確に決定することはできない。ドセタキセルのバイオアベイラビリティーに対するCsAの効果は、ヒト[75]と比較してマウス[49]ではあまり著しくないが、このマウスにおける効果軽減の理由は明らかではない。進行乳癌において経口ドセタキセルおよびCsAの毎週投与による第II相試験も実施した。この計画では、毎週6週間投与して、その後2週間休薬した。ドセタキセル100mg用量を毎週経口投与すると、40mg/m2の毎週i.v.投与と同等のAUCがもたらされ、適度に良好な耐容性を示した[76]。CsAは、経口ドセタキセル15mg/kg用量を摂取する30分前に投与した。ドセタキセルのi.v.製剤は、飲用溶液として使用された。応答を評価可能な25人の患者では、ORR52%が認められた。
【0021】
最も頻繁に記録された毒性は、好中球減少、下痢、爪毒性および疲労であった。しかし、血液学的毒性の重症度は、i.v.投与後よりも少ないようである[77]。この試験における奏効率は、文献で記載された結果の上部範囲内である[76〜79]。
【0022】
経口投与後のドセタキセルのAUCの患者間および患者内の変動は、ドセタキセルのi.v.投与後に認められた範囲と同じであった(29%〜53%)[80、81]。
【0023】
経口ドセタキセルまたはパクリタキセルと組み合わせて毎週または2日に1回CsAを経口投与すると、腎毒性または免疫抑制による感染が生じる可能性があった[82]。したがって、本発明者らの見解では、経口ドセタキセルまたはパクリタキセルの臨床バイオアベイラビリティーを改善するためには、他の薬剤が好ましい。
【0024】
タキサンの集中的な毎週経口投与計画は実行可能で、進行乳癌、胃癌およびNSCLCで臨床的に有意義な活性を示す。経口投与計画は簡便で、有利な血液学的毒性プロファイルを有し、非血液学的毒性は許容できる。
【0025】
従来技術は、抗癌剤のバイオアベイラビリティーおよび薬物動態特性を改善するために、P−gpの作用を阻害することに主に注目しているようである。これは、様々な薬物、例えば、CsAおよびGF120918を使用して実施されてきた。P−gpは、経口薬のバイオアベイラビリティーを高めるために、遮断する最も重要なタンパク質として認められたようである。
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は、タキサンおよびCYP3A4の阻害剤、例えば、リトナビルを1種または複数の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む経口投与用医薬組成物を提供する。
【0027】
タキサンと組み合わせてリトナビルを使用する利点は、タキサンの経口バイオアベイラビリティーが増加し、したがってより多くの薬物が小腸から血流に吸収されることである。これは、薬剤の代謝を阻止するCYP3A4の阻害およびわずかなP−gp阻害特性による。リトナビルはまた、肝臓におけるCYP3A4代謝を阻害することによってタキサンの体からの排除を抑制する。これは、長期間にわたってタキサンが高い血漿レベルに達することを意味する。例えば、ドセタキセル代謝物は、ドセタキセル自体よりも薬理学的活性が少ない。したがって、ドセタキセルの代謝を阻害することによって、最も薬理学的に活性のある形態がより高レベルで、またより長期にわたって血流中に存在する。これによって、より大きな治療効果がもたらされる。その結果、用量当たりのタキサンの量を抑制することが可能になり得る。さらに、CYP3A4の阻害は、様々な患者におけるCYP活性レベルの違いによるバイオアベイラビリティーおよび排除の患者間変動を減少させる。
【0028】
リトナビルによるCYP3A4の標的化および阻害は、P−gpの標的化よりも、代謝を阻止することによって経口タキサンのバイオアベイラビリティーを高める。これは、全体的に見て、従来技術によるものとは異なる取り組みである。
【0029】
本発明の医薬組成物には、任意の薬学的に許容される担体、補助剤または媒体と一緒にした任意のタキサン、またはそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、ならびにリトナビル(またはそれらの薬学的に許容される塩およびエステル)が含まれる。本発明の医薬組成物で使用できる薬学的に許容される担体、補助剤および媒体には、限定はしないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝剤物質、例えば、リン酸塩、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、3ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースにした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。本発明の医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤または媒体を含有することができる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、粉末または被覆された顆粒を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。好ましくは水性媒体に溶かした懸濁液、溶液およびエマルジョンも使用できる。錠剤は、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。あるいはまた、発泡性、2層および/または被覆錠剤であってもよい。遅効性、反復放出性および徐放性製剤は、1種または両方の活性成分についてであってもよい。錠剤は、タキサンおよび/またはリトナビルの固体分散物または固溶体から形成することができる。カプセルは、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。固体充填または液体充填カプセルであってもよい。遅効性、反復放出性および徐放性製剤は、1種または両方の活性成分についてであってもよい。カプセルは、タキサンおよび/またはリトナビルの固体分散物または固溶体から形成することができ、あるいは、タキサンおよび/またはリトナビルは液体に溶解するか、または分散することができる。例えば、液体充填カプセルの可能性のある溶媒はトリアセチンである。これは、パクリタキセルに特に優れた溶媒であると考えられる。水性溶液は、粉末または粉末類から調製して、固体分散物または分散物類から調製して、あるいはタキサンおよびリトナビルの溶液を混合することによって、「すぐに使用」できる。水性溶液はまた、その他の医薬品添加物、例えば、ポリソルベート80およびエタノールを含むことができる。経口使用するための錠剤およびカプセルの場合、通常使用される担体には、スクロース、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、マンニトール、イヌリン、糖類(デキストース、ガラクトース、スクロース、フルクトースまたは乳糖)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、PVP(ポリビニルピロリドン)およびコーンスターチが含まれる。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも通常添加される。カプセル形態で経口投与するために、有用な希釈剤には、乳糖および乾燥コーンスターチが含まれる。錠剤およびカプセルのためには、添加できるその他の医薬品添加物は、結合剤、充填剤、充填剤/結合剤、吸着剤、湿潤剤、崩壊剤、潤沢剤、流動促進剤、界面活性剤などである。錠剤およびカプセルは、錠剤およびカプセルの外見または特性を改変するために、例えば、味を改変するため、または錠剤もしくはカプセルを着色被覆するため、被覆することができる。水性懸濁液を経口的に投与するとき、活性成分は乳化剤および懸濁剤と一緒にする。所望するならば、特定の甘味剤および/または矯臭剤および/または着色剤を添加することができる。
【0031】
タキサンおよびリトナビルの固体分散物および固溶体は、任意の適切な方法を使用して形成することができ、担体、例えば、ポリマーを含むことができる。このような方法は、当業者には周知である[93、94]。固体分散物中のタキサンおよびリトナビルは、非晶質、結晶または部分的非晶質/部分的結晶状態であってもよい。固体分散物の調製では、有機溶媒を使用することが多い。これらは、任意の適切な有機溶媒、例えば、TBA(3級ブチルアルコール)、エタノール、メタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)およびIPA(イソプロピルアルコール)であってもよい。固体分散物溶液から有機溶媒および/または水性溶媒を除去するために任意の方法、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥および真空乾燥を使用することができる。
【0032】
経口投与用の組成物、特に固体組成物において、タキサンおよびリトナビルは、同一投与形態中に存在していてよく、別々の投与形態中に存在していてもよい。同一の投与形態中に存在する場合、タキサンおよびリトナビルは、一緒に製剤化してよく、または、多区画投与形態、例えば、多層錠剤もしくは多区画カプセルの別々の区画に存在していてもよい。
【0033】
放出調節製剤、例えば、遅効性、反復放出性および徐放性製剤を含む組成物では、投与後長期にわたって1種または両方の活性成分の適切な血中レベルを維持することが目的である。
【0034】
反復放出性製剤、例えば、錠剤またはカプセルは、すぐに(例えば、t=0h時に)適切な用量のタキサン(例えば、ドセタキセル)およびリトナビルを放出することができ、後で(例えば、リトナビルのCmaxが通常達成されるt=4h時に)さらに追加用量のリトナビルを放出できるものである。これは、例えば、コーティングを小腸での分解および溶解を可能にする酵素切断結合を含有する腸溶コーティングまたポリマーコーティングによって、初回用量のドセタキセルおよびリトナビルを追加用量のリトナビルから分離することで実現することができる。あるいは、これは、コーティングされた、およびコーティングされていない顆粒をカプセルに充填し、コーティングされた顆粒がリトナビルのみを含有し、コーティングされていない顆粒がドセタキセルおよびリトナビルを含有することによって実現することができる。これはまた、もちろん、即放性ドセタキセル錠剤/カプセルをリトナビルの反復放出性錠剤/カプセルと一緒にすることによって実現することができるであろう。任意の適切な腸溶コーティング、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニルおよび適切なアクリル酸誘導体、例えば、ポリメタクリレートを使用することができる。
【0035】
一実施形態では、リトナビルの第2の追加投与(したがって、全部で3回の投与)は、同様の原理、すなわち、第1の追加投与の数時間後(例えば、リトナビルの第1の追加投与がCmaxに達したとき)に反復放出することによって実施することができた。
【0036】
徐放性製剤は、例えば、適切な用量のタキサンおよび最初の初回/負荷用量のリトナビルを放出し、その後持続用量のリトナビルをゆっくり放出する製剤である。例えば、これは、ドセタキセルおよびリトナビルの単回経口剤形によって、またはドセタキセルの即放性錠剤/カプセルとリトナビルの徐放性錠剤/カプセルを一緒にすることによって達成することができる。
【0037】
放出調節製剤は、例えば、不活性な不溶性基質、親水性基質、イオン交換樹脂、浸透圧制御製剤および貯蔵体系を利用することができる。一般的な放出調節系は、例えば、以下の物質、活性薬物(複数可)、放出制御剤(複数可)(例えば、マトリクス形成剤、膜形成剤)、マトリクスもしくは膜調節剤、可溶化剤、pH調節剤、潤滑剤および流動助剤、補助コーティング剤および密度調節剤から構成される[84]。適切な不活性賦形剤には、リン酸水素カルシウム、エチルセルロース、メタクリレートコポリマーポリアミド、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルが含まれる。適切な脂質賦形剤には、カルナウバロウ、アセチルアルコール、水素化植物油、微結晶性ワックス、モノおよびトリグリセリド、モノステアリン酸PEGおよびPEGが含まれる。適切な親水性賦形剤には、アルギン酸塩、カルボポール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロースが含まれる[84]。
【0038】
本発明の一実施形態では、タキサンおよびリトナビルを含む組成物は、リトナビルがタキサンよりも少し早くまたは速く放出されるように製剤化することができる。これは、実質的な量のタキサンが組成物から放出される前に、腸内におけるCYP3A4酵素を阻害する効果を有するだろう。したがって、タキサンが血流に達する前にCYP3A4酵素によって分解される量を減少させ、肝臓内のCYP3A4に対するリトナビルの効果によって、タキサンの吸収早期段階中に血流に達するタキサンの代謝および排除を減少させる効果も有する。この効果は、図1に示されており、ドセタキセルの60分前にリトナビルを投与すると経口バイオアベイラビリティーおよびAUCが増加することを示している。この結果は実施例2では統計学的に有意ではないが、この傾向が認められた。
【0039】
タキサンは、植物のTaxus属(イチイ)由来のジテルペン化合物である。しかし、現在、いくつかのタキサンは合成によって生成されている。タキサンは、細胞分裂を阻止することによって細胞増殖を阻害し、癌の治療に使用される。タキサンは、微小管形成を混乱させることによって細胞分裂を阻止する。タキサンは、血管新生阻害剤として作用することもできる。本明細書では、「タキサン」という用語には、天然に生じたものであろうと、または人工的に生じたものであろうとジテルペンタキサン全て、機能的誘導体およびチューブリンに結合し、かつ/またはCYP3A4の基質である薬学的に許容される塩またはエステルが含まれる。好ましいタキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである。BMS−275183は、パクリタキセルのC−3’−t−ブチル−3’−N−t−ブチルオキシカルボニル類似体である[83]。最も好ましいタキサンは、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステル、特にCYP3A4の基質である誘導体である。
【0040】
生理化学的特性を改変する基を含有するタキサンの誘導体はまた、本発明内に含まれる。したがって、溶解特性が改善されるか、または改変されたタキサンのポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)または糖結合体は含まれる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、タキサンおよびリトナビルそれぞれの適量を含むことができる。好ましくは、組成物は、約0.1mgと約1000mgの間のタキサンを含む。好ましくは、組成物はまた、約0.1mgと約1200mgの間のリトナビルを含む。タキサンおよびリトナビルそれぞれの量は、組成物投与の企図した頻度に左右される。例えば、組成物は、1日3回、1日2回または毎日、2日に1回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回または任意のその他の適切な投与間隔で投与することができる。これらの用法の組み合わせを使用することもでき、例えば、組成物は、週に1回または2週間に1回または3週間に1回、1日2回投与用であってもよい。例えば、パクリタキセルまたはドセタキセルは、週に1回、1日2回投与することができる。通常の週投与量は分割され、したがって対象は、例えば、週に1回、朝に用量の半分を、夜に残りの半分を摂取する。これには、血漿中の薬剤のピークレベルを低下させる効果があり、副作用を抑制する一助となり得る。また、薬物の全身曝露の総時間を増加させる。
【0042】
組成物が毎日投与用である場合、組成物は、好ましくはタキサンを約0.1mgと約100mgの間、より好ましくは、タキサンを約5mgと約40mgの間、より好ましくはタキサンを約5mgと約30mgの間、より好ましくはタキサンを約10mgと約20mgの間、最も好ましくはタキサンを約15mg含む。好ましくは、組成物はまた、リトナビルを約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビルを約100mg含む。
【0043】
組成物が毎週投与用である場合、組成物は、好ましくはタキサンを約30mgと約500mgの間、より好ましくは、タキサンを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはタキサンを約100mg含む。好ましくは、組成物はまた、リトナビルを約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビルを約100mg含む。
【0044】
驚くべきことに、リトナビルを低用量、例えば、100mgで使用しても、タキサンのバイオアベイラビリティーを増加させ、治療効果の増強をもたらす所望する特性がある。これは、低用量のリトナビルが所望する効果をもたらし、一方で副作用の危険性を最小限に抑えるために使用できることを意味している。
【0045】
本発明はまた、治療で使用するための、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む組成物を提供する。
【0046】
さらに、本発明はまた、新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む組成物を提供する。
【0047】
本発明によって治療される新生物疾患は、好ましくは固形腫瘍である。固形腫瘍は、好ましくは、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。固形腫瘍は、より好ましくは、乳癌、胃癌、卵巣癌、前立腺癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される。
【0048】
一実施形態では、新生物疾患の治療には、組成物の投与と、その後所定の期間後の追加用量のリトナビルの投与が含まれる。追加投与は、好ましくは組成物投与の約0時間後と約12時間後の間、より好ましくは、組成物投与の約1時間後と約10時間後の間、より好ましくは組成物投与の約2時間後と約8時間後の間、より好ましくは組成物投与の約3時間後と約5時間後の間、最も好ましくは組成物投与の約4時間後である。追加投与は、好ましくは、リトナビル約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビル約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビル約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビル約100mgである。
【0049】
驚くべきことに、追加用量のリトナビルの投与は、長期間血流中においてタキサンの治療レベルをもたらし、それによってより大きな治療効果を有することが発見された。
【0050】
関連した態様では、本発明はまた、新生物疾患の治療方法であって、有効量のタキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤の、このような治療を必要とする対象の投与を含む方法を提供する。
【0051】
前記組成物と同様に、タキサンは任意の適切なタキサンであってもよい。好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルから選択され、より好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルである。
【0052】
タキサンおよびリトナビルを対象に投与するとき、互いに実質的に同時に投与することができる。あるいは、互いに別々に投与することができる。別々に投与するとき、リトナビルは、好ましくはタキサンの前に、より好ましくは、タキサンの約60分前に投与する。
【0053】
本明細書では、「実質的に同時に」とは、タキサンもしくはリトナビル投与は、約20分以内、より好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内、さらにより好ましくは5分以内、最も好ましくはリトナビルもしくはタキサンは2分以内の投与であることを意味する。一般的に、リトナビルはタキサンと同時に、または前に投与するべきである。リトナビルおよびタキサンは、いくつかの実施形態では、同時に、すなわち、1製剤中で一緒に、または2つの別々の製剤で同時に投与することができる。
【0054】
タキサンまたはリトナビルのいかなる適切な量も、この方法にしたがって投与することができる。タキサンおよび/またはリトナビルの用量は、固定用量(すなわち、体重または体表面積に関わりなく、全患者に対して同じ)または体重ベースまたは体表面積ベースの用量で投与することができる。好ましくは、タキサンおよび/またはリトナビルは、固定用量で投与する。好ましくは、タキサンを約0.1mgと約1000mgの間で投与する。好ましくは、リトナビルを約0.1mgと約1200mgの間で投与する。投与されたタキサンおよびリトナビルそれぞれの量は、タキサンおよびリトナビルの企図した投与頻度に左右される。例えば、投与は、1日3回、1日2回または毎日、2日に1回、週に1回、2週間に2回、3週間に1回または任意のその他の適切な投与間隔であってもよい。これらの用法の組み合わせ、例えば、週に1回または2週間に1回または3週間に1回、1日2回投与を使用することもできる。
【0055】
方法にタキサンおよびリトナビルの毎日投与が関与する場合、好ましくはタキサンを約0.1mgと約100mgの間で投与し、より好ましくは、タキサンを約5mgと約40mgの間で投与し、より好ましくはタキサンを約5mgと約30mgの間で投与し、より好ましくはタキサンを約10mgと約20mgの間で投与し、最も好ましくはタキサンは約15mgである。好ましくは、リトナビルも約50mgと約1200mgの間で投与し、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間で投与し、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはリトナビルを約100mg投与する。
【0056】
方法にタキサンおよびリトナビルの毎週投与が関与する場合、好ましくはタキサンを約30mgと約500mgの間で投与し、より好ましくは、タキサンを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはタキサンを約100mg投与する。好ましくは、リトナビルも約50mgと約1200mgの間で投与し、より好ましくは、リトナビルを約50mgと約500mgの間で投与し、より好ましくはリトナビルを約50mgと約200mgの間で投与し、最も好ましくはリトナビルを約100mg投与する。
【0057】
方法は、任意の新生物疾患を治療するためであってもよい。好ましくは、新生物疾患は固形腫瘍である。好ましくは、固形腫瘍は、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される。より好ましくは、固形腫瘍は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される。
【0058】
好ましくは、方法はヒト対象を治療するために使用される。
【0059】
一実施形態では、方法にはさらに、初回用量のリトナビルの投与(すなわち、タキサンの用量と一緒にしたリトナビルの用量)から所定の期間後の追加用量のリトナビルなどのCYP3A4阻害剤の投与が含まれる。追加用量は、好ましくは組成物の約0時間後と約12時間後の間、より好ましくは、組成物投与の約1時間後と約10時間後の間、より好ましくは組成物投与の約2時間後と約8時間後の間、より好ましくは組成物投与の約3時間後と約5時間後の間、最も好ましくは組成物投与の約4時間後に投与する。追加用量は、好ましくは、リトナビル約50mgと約1200mgの間、より好ましくは、リトナビル約50mgと約500mgの間、より好ましくはリトナビル約50mgと約200mgの間、最も好ましくはリトナビル約100mgである。
【0060】
本発明はまた、新生物疾患の治療方法を提供し、この方法は、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与されている対象に投与するステップを含む。
【0061】
本発明はさらに、新生物疾患の治療方法を提供し、この方法は、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、タキサンをリトナビルなどのCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与されている対象に投与するステップを含む。
【0062】
さらに、本発明は、タキサンを含む第1の医薬組成物およびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含み、第1および第2の医薬組成物が新生物疾患治療のための同時投与、別々の投与または連続投与に適しているキットを提供する。
【0063】
一実施形態では、キットはさらに、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物の後で投与するのに適している、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第3の医薬組成物を含むことができる。それぞれリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含むキットの第2および第3の医薬組成物は、実質的に同じ組成物の単一投与形態であってもよいことを理解されたい。
【0064】
あるいは、キットは、新生物疾患の治療のために、タキサンおよびリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第1の医薬組成物を含むことができる。この場合、キットはさらに、第1の医薬組成物の後に投与するために適しているリトナビルなどのCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含むことができる。
【0065】
さらに、本発明は、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0066】
さらにまた、本発明は、タキサンをリトナビルなどのCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、リトナビルなどのCYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0067】
当業者であれば、リトナビルを使用した組成物、方法またはキットに関連した前述の好ましい特性のいずれかまたは全てが等しく、その他のCYP3A4阻害剤、例えば、グレープフルーツジュースまたはセイヨウオトギリソウ(またはいずれかの成分)、ロピナビルまたはイミダゾール化合物、例えば、ケトコナゾールを使用している人に適用できることを理解するであろう。
【0068】
従来技術に関連した別の問題は、高いバイオアベイラビリティーと低い変動性を備えたタキサンを含む経口組成物を開発できなかったことである。i.v.タキサン製剤(Cremophor ELおよびエタノール、またはポリソルベート80およびエタノールなどの賦形剤も含有する)を経口摂取する経口パクリタキセル[例えば、3]および経口ドセタキセル[例えば、75]による臨床試験が実施された。悪心、吐き気および不快な味覚がしばしば患者によって報告されている。
【0069】
以前に検討されたように、Chenら[95]は、ポロキサマー188またはPVP−K30と組み合わせたドセタキセルの固形分散物を使用して、ドセタキセルの溶解度および溶解速度の改善を試みた。ポロキサマーは、ドセタキセル対ポロキサマー比5:95を使用したとき、20分後にドセタキセルの溶解度を約3.3μg/mlまで増加させ、約120分後には最大約5.5μg/mlまで増加させた(chenの文献の図7参照)。PVP−K30は、ドセタキセルの溶解度を20分後に約0.8μg/mlまで増加させ、約300分後には最大約4.2μg/mlまで増加させた(図2参照)。良好な経口バイオアベイラビリティーを実現するため、薬物は、比較的高い溶解度および溶解速度を有し、したがって、最初の約0.5から1.5時間で溶液中に十分多量の薬剤が存在するようにしなければならない。
【0070】
別の態様では、本発明は、実質的に非晶質のタキサン、親水性であり、好ましくは重合した担体および界面活性剤を含む経口投与用固形医薬組成物を提供する。
【0071】
この態様の組成物によってもたらされた利点は、タキサンの溶解度が驚異的な程度で増加することである。さらに、タキサンの溶解速度も驚異的な程度まで増加する。これらの要素のいずれも、タキサンのバイオアベイラビリティーの著しい増大を引き起こす。これは、少なくとも部分的に、タキサンが非晶質状態であるためと考えられる。結晶性タキサンは、溶解度が非常に低い。さらに、臨床試験では、本発明の経口組成物のAUCは高く、個体間変動は、液体製剤によって示された個体間変動よりも著しく低いことが発見された。これによって、経口化学療法計画において安全性の点で非常に望ましい、ずっと優れた予測可能性を備えたタキサン曝露がもたらされる。個体内変動はまた、著しく低いようである。他の利点は、本発明の経口組成物はおそらく液体経口用タキサン溶液と少なくとも同等であるか、またはより優れた忍容性があるように思われること(すなわち、副作用に関して)である。
【0072】
担体によってもたらされる利点は、水性媒体に入れたとき、タキサンを非晶質状態で維持するのに役立つことである。これは、タキサンの結晶化を阻止するか、または溶液中でタキサンの結晶化が開始するまでの時間を延長させるために役立つ。したがって、タキサンの溶解度および溶解速度は高く維持される。さらに、担体は、組成物に優れた物理的および化学的安定性を与える。タキサンの分解を防ぐのに役立ち、実質的に非晶質状のタキサンが徐々に固形状態中でより結晶性の構造に変化するのを防ぐのにも役立つ。良好な物理的安定性によって、タキサンの溶解度は確実に高く維持される。
【0073】
界面活性剤はまた、水性媒体中に入れたとき、非晶質状態のタキサンを維持するために役立ち、驚くべきことに、非晶質タキサンおよび担体を含む組成物と比較してタキサンの溶解度を実質的に増加させる。
【0074】
「実質的に非晶質」という用語は、タキサン分子の位置の秩序が広範囲にわたってほとんど、または全くないことを意味している。大部分の分子が、ランダムな方向を向いているであろう。完全な非晶質構造は、広範囲にわたって秩序がなく、結晶構造を全く含有しておらず、結晶個体とは正反対である。しかし、いくつかの個体は完全な非晶質構造を得ることが困難なことがある。したがって、多くの「非晶質」構造は完全に非晶質ではないが、まだ広範囲にわたる秩序または結晶性を一定量含有している。例えば、固体は、主に非晶質であるが、結晶構造のポケットを有していてもよく、または本当の非晶質と言ってもいいようにごく少量の結晶を含有していてもよい。したがって、「実質的に非晶質」という用語は、いくらか非晶質構造を有するが、いくらか結晶構造も同様に有する固体を包含する。実質的に非晶質であるタキサンの結晶化度は50%未満である。好ましくは、実質的に非晶質であるタキサンの結晶化度は40%未満で、さらにより好ましくは、30%未満で、さらにより好ましくは25%未満で、さらにより好ましくは20%未満で、さらにより好ましくは15%未満で、さらにより好ましくは12.5%未満で、さらにより好ましくは10%未満で、さらにより好ましくは7.5%未満で、さらにより好ましくは5%未満で、最も好ましくは2.5%未満である。結晶性タキサンは溶解度が低く、実質的に非晶質のタキサンの結晶化度が低ければ低いほど、実質的に非晶質のタキサンの溶解度は高くなる。
【0075】
実質的に非晶質のタキサンは、当業者に明らかな任意の適切な方法および技術で調製することができる。例えば、溶媒留去方法または凍結乾燥を使用して調製することができる。好ましくは、非晶質タキサンは、凍結乾燥によって調製する。驚くべきことに、凍結乾燥を使用して非晶質タキサンを調製すると、留去法と比較して溶解度および溶解速度が優れた組成物を生じる。これは、凍結乾燥法が溶媒留去法と比較してより多くの非晶質タキサンを生成することによるものと考えられる。
【0076】
経口投与用組成物は、固形形態である。固形組成物は、タキサンが実質的に非晶質の状態である限り、任意の適切な形態であってもよい。例えば、組成物は、非晶質タキサン、担体および界面活性剤の物理的混合物を含むことができる。好ましくは、タキサンおよび担体は、固形分散物の形態である。「固形分散物」という用語は、当業者には周知で、タキサンが担体中において部分的に分子的に分散していることを意味する。より好ましくは、タキサンおよび担体は、固溶体の形態である。「固溶体」という用語は、当業者には周知で、タキサンが担体中において実質的に完全に分子的に分散していることを意味する。固溶体は天然では固形分散物よりも非晶質状であると考えられる。固体分散物および固溶体の調製方法は、当業者には周知である[93、94]。これらの方法を使用して、タキサンおよび担体の両方を非晶質状態にする。タキサンおよび担体が固体分散物または固溶体の形態であるとき、タキサンの溶解度および溶解速度は、非晶質タキサンおよび担体の物理的混合物よりも大きい。タキサンが固体分散物または固溶体であるとき、タキサンは非晶質タキサン自体と比較してより非晶質状態になると考えられる。これによって溶解度および溶解性の改善がもたらされると考えられる。固体分散物または固溶体の結晶化度は50%未満である。好ましくは、固体分散物または固溶体の結晶化度は40%未満で、さらにより好ましくは30%未満で、さらにより好ましくは25%未満で、さらにより好ましくは20%未満で、さらにより好ましくは15%未満で、さらにより好ましくは12.5%未満で、さらにより好ましくは10%未満で、さらにより好ましくは7.5%未満で、さらにより好ましくは5%未満で、最も好ましくは2.5%未満である。
【0077】
タキサンおよび担体が固体分散物であるとき、界面活性剤は固体分散物または固溶体との物理的混合物であってもよい。しかし、好ましくは、組成物は、固体分散物、より好ましくは固溶体の形態でタキサン、担体および界面活性剤を含む。3種類の成分全てを固体分散物または固溶体で有する利点は、溶解度および溶解速度の同様の改善を実現するために、少量の界面活性剤の使用が可能になることである。
【0078】
一実施形態では、組成物は経口投与のためのカプセルに含めることができる。カプセルは、いくつかの異なる方法で充填することができる。例えば、非晶質タキサンは、凍結乾燥し、粉末化し、担体および界面活性剤と混合し、次いでカプセルに分注することによって調製することができる。他の好ましい実施形態では、非晶質タキサンは、経口投与のためにカプセル内でタキサン溶液を凍結乾燥することによって調製する。必要量のタキサンを含有するタキサン溶液をカプセルに分注し、次いでカプセル内に含有されている間に凍結乾燥する。粉末よりも液体の分注の方が容易なので、これによって必要量のタキサンのカプセル内への分注が容易になる。また、カプセル充填ステップが省かれ、工程がより効果的になる。次に、粉末化された担体および界面活性剤を添加することができる。好ましくは、カプセルはHPMCカプセルである。
【0079】
タキサンおよび担体が固体分散物または固溶体の形態である場合、タキサンおよび担体を含有する溶液は好ましくはカプセルに分注され、次いでカプセル内にある間に凍結乾燥される。この方法では、固体分散物または固溶体は、経口投与用カプセル内でタキサンおよび担体溶液を凍結乾燥することによって調製する。これによってまた、カプセル充填ステップが省かれる。次に、粉末化された界面活性剤を添加することができる。
【0080】
タキサン、担体および界面活性剤が固体分散物または固溶体の形態である場合、タキサン、担体および界面活性剤を含有する溶液は好ましくはカプセルに分注され、次いでカプセル内で凍結乾燥される。この方法では、固体分散物または固溶体は、経口投与用のカプセル内でタキサン、担体および界面活性剤溶液を凍結乾燥することによって調製する。これによってまた、カプセル充填ステップが省かれ、処理の困難な粉末を扱う必要性が省かれる。
【0081】
組成物のタキサンは、前記で定義した通り、任意の適切なタキサンであってもよい。好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される。より好ましくは、タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される。
【0082】
親水性の、好ましくは重合した組成物の担体は、pH7.4の水性媒体中で少なくとも部分的に溶解でき、かつ/またはこのような水性媒体で膨潤またはゼラチン化することができる有機性の、好ましくは重合した化合物である。担体は、組成物中におけるタキサンの非晶質状態を確実に維持し、タキサンの溶解度および溶解速度を確実に増加させる任意の適切な親水性の、好ましくは重合した担体であってもよい。好ましくは、担体は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、クロスポビドン(PVP−CL)、ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテートコポリマー(PVP−PVA)、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、糖類、ポリオールおよびそれらのポリマー、例えば、マンニトール、スクロース、ソルビトール、デキストロースおよびキトサンおよびシクロデキストリンから選択される。より好ましくは、担体は、PVP、PEGおよびHPMCから選択され、最も好ましくは担体はPVPである。
【0083】
担体がPVPである場合、担体として作用し、非晶質状態のタキサンの維持を促進するため、任意の適切なPVP[98]であってもよい。例えば、PVPは、PVP−K12、PVP−K15、PVP−K17、PVP−K25、PVP−K30、PVP−K60、PVP−K90およびPVPK120から選択することができる。好ましくは、PVPは、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される。
【0084】
組成物は、担体が非晶質タキサンの非晶質状態を維持するように、非晶質タキサンに対して任意の適切な量の担体を含有することができる。好ましくは、タキサンと担体との重量比は、約0.01:99.99w/wと約75:25w/wの間である。より好ましくは、タキサンと担体との重量比は、約0.01:99.99w/wと約50:50w/wの間、さらにより好ましくは約0.01:99.99w/wと約40:60w/wの間、さらにより好ましくは約0.01:99.99w/wと約30:70w/wの間、さらにより好ましくは約0.1:99.9w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約1:99w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約2.5:97.5w/wと約20:80w/wの間、さらにより好ましくは約2.5:97.5w/wと約15:85w/wの間、さらにより好ましくは約5:95w/wと約15:85w/wの間、最も好ましくは約10:90w/wである。
【0085】
界面活性剤は、任意の適切な薬学的に許容される界面活性剤であってもよく、このような界面活性剤は、当業者には周知である。好ましくは、界面活性剤は、トリエタノールアミン、ヒマワリ油、ステアリン酸、リン酸2水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム2水和物、アルギン酸プロピレングリコール、オレイン酸、モノエタノールアミン、鉱物油およびラノリンアルコール、メチルセルロース、中鎖トリグリセリド、レシチン、含水ラノリン、ラノリン、ヒドロキシプロピルセルロース、モノステアリン酸グリセリル、パミトステアリン酸エチレングリコール、ジエタノールアミン、ラノリンアルコール、コレステロール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される。より好ましくは、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される。最も好ましくは、界面活性剤はSDSである。
【0086】
タキサンの溶解度および溶解速度を高めるために、界面活性剤の任意の適切な量を組成物中で使用することができる。好ましくは、界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比は、約1:99w/wと約50:50w/wの間、より好ましくは、約1:99w/wと約44:56w/wの間、さらにより好ましくは、約1:99w/wと約33:67w/wの間、さらにより好ましくは約2:98w/wと約33:67w/wの間、さらにより好ましくは、約2:98w/wと約17:83w/wの間、さらにより好ましくは、約5:95w/wと約17:83w/wの間、最も好ましくは約9:91w/wである。
【0087】
あるいは、界面活性剤とタキサンとの重量比は、約1:100w/wと約60:1w/wの間、より好ましくは、約1:50w/wと約40:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:20w/wと約20:1w/wの間、さらにより好ましくは約1:10w/wと約10:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:5w/wと約5:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:3w/wと約3:1w/wの間、さらにより好ましくは、約1:2w/wと約2:1の間、最も好ましくは約1:1w/wである。
【0088】
組成物中に含有されるタキサンの単位用量は、組成物投与の企図した頻度に左右される。適切な投薬量および投与頻度は、タキサンおよびリトナビル組成物に関して前述されている。
【0089】
一実施形態では、組成物は腸溶コーティングを含む。適切な腸溶コーティングについては、前述されている。腸溶コーティングは、胃におけるタキサンの放出を防御し、それによってタキサンの酸媒介性分解を防御する。さらに、タキサンが吸収される腸へのタキサンの標的化輸送が可能になり、したがって、(結晶化が生じる前に)タキサンが溶液中に存在する限られた時間が吸収の可能な部位でのみ確実に費やされる。
【0090】
一実施形態では、組成物はさらに、1種または複数の他の薬学的に活性のある成分を含むことができる。好ましくは、1種または複数の他の薬学的に活性のある成分は、CYP3A4阻害剤である。適切なCYP3A4阻害剤は、前述されている。好ましくは、CYP3A4阻害剤はリトナビルである。
【0091】
医薬組成物は、当業者に周知の他の薬学的に許容される補助剤および媒体をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物で使用できる薬学的に許容される補助剤および媒体には、限定はしないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝剤物質、例えば、リン酸塩、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、3ケイ酸マグネシウムおよび羊毛脂が含まれる。
【0092】
医薬組成物は、限定はしないが、カプセル、錠剤、粉末または被覆された顆粒を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。錠剤は、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。あるいはまた、発泡性、2層および/または被覆錠剤であってもよい。カプセルは、即放性、遅効性、反復放出性または徐放性に製剤化することができる。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも、一般的に添加される。カプセル形態で経口投与するために、有用な希釈剤には、乳糖および乾燥コーンスターチが含まれる。錠剤およびカプセルのため、添加できるその他の医薬品添加物は、結合剤、充填剤、充填剤/結合剤、吸着剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤などである。錠剤およびカプセルは、錠剤およびカプセルの外見または特性を改変するために、例えば、味を改変するため、または錠剤もしくはカプセルを着色被覆するため、被覆することができる。
【0093】
組成物に添加できるその他の薬学的に許容される添加物は当業者には周知で、そのいくつかは本発明の最初の態様にしたがって組成物に関して前述されている。
【0094】
本発明はまた、治療に使用するための前記組成物を提供する。
【0095】
さらに、本発明は、新生物疾患の治療に使用するための前記組成物を提供する。適切な新生物疾患については、前述されている。
【0096】
本発明はまた、有効量の前記組成物をこのような治療を必要とする対象に投与することを含む新生物疾患の治療方法を提供する。
【0097】
好ましくは、この方法はヒト対象を治療するために使用される。
【0098】
実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む本発明の組成物は、適切ならばタキサンおよびCYP3A4阻害剤またはリトナビルの使用に関して前述した方法で使用できることを当業者は理解するであろう。
【0099】
別の態様では、本発明は、実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む経口投与用医薬組成物を提供し、実質的に非晶質のタキサンは凍結乾燥によって調製される。
【0100】
この組成物によってもたらされる利点は、タキサンの溶解度の増加およびまた溶解速度の増加がもたらされることである。これは、非晶質タキサンを生成するその他の方法と比較して凍結乾燥方法がより多くの非晶質タキサンを生成するためと考えられる。タキサンの性質がより非晶質であると、溶解度および溶解速度の増加がもたらされるものと考えられる。
【0101】
この組成物の他の任意選択の特徴は、非晶質タキサン、担体および界面活性剤を含む組成物と同様である。例えば、実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む組成物であって、実質的に非晶質なタキサンが凍結乾燥によって調製される組成物は、好ましくはさらに界面活性剤を含む。タキサン、担体、タキサンの結晶化度、タキサンと担体の比、タキサンおよび担体の状態などの好ましい実施形態は、前述した通りである。
【0102】
本発明をこれから、単なる例として添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】i.v.投与(リトナビルなし)に対してリトナビルの経口投与(RTV)(同時に、およびドセタキセルの60分前にリトナビルを投与)を比較した、時間に対するドセタキセル血漿濃度を示した図である。ドセタキセル経口用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセル当たりリトナビル(Norvir(登録商標))100mg。
【図2】経口ドセタキセルと同時または経口ドセタキセルの60分前のリトナビル経口投与(用量100mg:Norvir(登録商標)、カプセル)と比較した、時間に対するリトナビル血漿濃度を示した図である。T=0はドセタキセルの投与時である。したがって、ドセタキセルの前に投与したリトナビルに対応する曲線の最初の部分は見えない。経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセル当たりリトナビル(Norvir(登録商標))100mg。
【図3】リトナビル(RTV)と組み合わせた経口ドセタキセルの薬物動態モデルを示した図である。薬物動態モデルにおける様々な区画は以下の通りである。 C1−胃腸管(経口ドセタキセルの投入部分) C2−中央部分(ドセタキセル) C3−第1末梢部分(ドセタキセル) C4−第2末梢部分(ドセタキセル) C5−胃腸管(リトナビルの投入部分) C6−中央部分(リトナビル) C7−活性型CYP3A4酵素 C8−不活性型CYP3A4酵素
【図4】数人の対象について、リトナビルと組み合わせた経口ドセタキセルの時間に対する活性型CYP3A4酵素の相対量を示した図で、各線は1対象を表す。
【図5】パクリタキセル物理的混合物に対するパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:900mL WfI、37℃、75rpm)。
【図6】ドデシル硫酸ナトリウムを含む、および含まないパクリタキセル(PCT)固体分散物カプセルの溶解試験の結果を示した図である(条件:900mL WfI、37℃、75rpm)。
【図7】ドデシル硫酸ナトリウムが固体分散物に組み込まれた、またはカプセルに添加されたパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL WfI、37℃、75rpm(SDSをカプセルに添加した場合は100rpm))。
【図8】様々な担体を有するパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL WfI、37℃、100rpm)。
【図9】様々な薬剤−担体比のパクリタキセル/PVP−K17固体分散物の溶解度試験の結果を示した図である(条件:25mL WfI、37℃、7200rpm)。
【図10】様々な媒体に溶かしたパクリタキセル固体分散物の溶解試験の結果を示した図である(条件:500mL FaSSIF(淡灰色)、37℃、75rpmまたは500mL SGFspおよび629mL SIFsp、37℃、75rpm(濃灰色))。
【図11】5種類の異なる製剤のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。A:無水ドセタキセル、B:非晶質ドセタキセル、C:無水ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物、D:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物、E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WFI、37℃、720rpm)。
【図12】異なる担体を有する固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物、F:非晶質ドセタキセル、HPβ−CDおよびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図13】様々な鎖長のPVPを有する固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物、G:非晶質ドセタキセル、PVP−K12およびSDSの固体分散物、H:非晶質ドセタキセル、PVP−K17およびSDSの固体分散物、I:非晶質ドセタキセル、PVP−K25およびSDSの固体分散物、J:非晶質ドセタキセル、PVP−K90およびSDSの固体分散物(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図14】様々な薬物負荷の固体分散物のドセタキセル溶解度を示した図である(表15参照)。E:1/11ドセタキセル、K:5/7ドセタキセル、L:1/3ドセタキセル、M:1/6ドセタキセル、N:1/21ドセタキセル(溶解条件:ドセタキセル±6mg、25mL WfI、37℃、720rpm)。
【図15】ドセタキセルおよびPVP−K30の固体分散物の文献データ[Chenら、95]と比較した、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの相対量による溶解性の結果を示した図である。
【図16】ドセタキセルおよびPVP−K30の固体分散物の文献データ[Chenら、95]と比較した、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの絶対量による溶解性の結果を示した図である。
【図17】文献データ[Chenら、[95]と比較した、ドセタキセルカプセル(PVP−K30+SDSを含むカプセル当たりドセタキセル(DXT)15mg)の溶解試験の結果を示した図である。
【図18】ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの絶対量による溶解性の結果を示した図である。溶解試験は、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で実施した。
【図19】ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物の溶解したドセタキセルの相対量による溶解性の結果を示した図である。溶解試験は、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で実施した。
【図20】第1クールでドセタキセルおよびリトナビルを同時に投与された患者の薬物動態曲線を示した図である。第2クールでは、患者にt=0にドセタキセルおよびリトナビルを同時に投与し、次にt=4hに追加用量のリトナビルをさらに投与した。
【図21】ドセタキセルの液体製剤および/またはドセタキセルを含む固体分散物(MODRAと称する)を投与された患者4人の薬物動態曲線を示した図である。
【図22】ドセタキセルの固体経口製剤(MODRA)を投与された患者と比較したドセタキセルの液体経口製剤を投与された患者の薬物動態曲線を示した図である。
【図23】ドセタキセルのi.v.投与および経口投与後の薬物動態曲線を示した図である。i.v.および経口の両方によるドセタキセル投与は、リトナビルの投与と組み合わせた。N.B.算出されたバイオアベイラビリティーは、投与用量に対して補正する。
【実施例1】
【0104】
リトナビル用量100mgは、ドセタキセル用量100mgと一緒にして、患者22人に同時に経口投与した。1時間i.v.注入(標準的方法)として投与されたi.v.投与ドセタキセル(100mg)(Taxotere(登録商標))(リトナビルなし)と比較した。
【0105】
経口リトナビル:1カプセルにはリトナビル(Norvir(登録商標))100mgが含まれる。経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。
【0106】
得られた薬物動態データは以下の通りである。
リトナビルを含まない経口ドセタキセルのAUC 0.29±0.26(mg.h/L)
リトナビルを含む経口ドセタキセルのAUC 2.4±1.5(mg.h/L)
リトナビルを含まない静脈内ドセタキセルのAUC 1.9±0.4(mg.h/L)
【0107】
この結果によって、ドセタキセル吸収および排除の両方に対するリトナビルの2重効果が示される。リトナビルと組み合わせて経口投与するとドセタキセルAUCは、8.2倍増加する。驚くべきことに、曝露は、静脈内投与後に到達したものよりもさらに多く、リトナビル追加のドセタキセル排除阻害に対する効果を反映している。
【0108】
結論
リトナビルが経口ドセタキセルの全身曝露を同用量レベルのドセタキセルの静脈内投与後のレベルと同程度であるか、またはより高いレベルまで増加させることができるという概念が患者においてはっきりと立証された。組み合わせは、安全で、非常に好ましい薬物動態特性を示すようである。
【実施例2】
【0109】
経口によるドセタキセルおよびリトナビルの組み合わせによる固形悪性腫瘍の治療。
【0110】
患者は、2種類の治療群、XおよびYに無作為抽出した。X群は、第1週にリトナビル100mgおよび60分後に経口ドセタキセル100mgを投与し、第2週に、これらの患者にリトナビル100mgおよび経口ドセタキセル100mgを同時投与した。Y群の患者には、第1週にリトナビル100mgおよび経口ドセタキセル100mgを同時投与し、第2週に、リトナビル100mgおよび60分後に経口ドセタキセル100mgを投与した。X群およびY群にはいずれも、経口投与開始15日後にリトナビルを含まないi.v.ドセタキセル(Taxotere(登録商標)、標準的方法、1時間注入)100mgを投与した。
【0111】
経口ドセタキセル用量:100mg。患者が水道水100mlと一緒に飲用した(10mg/ml溶液の10ml)ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。リトナビル用量:1カプセルにはリトナビル(Norvir(登録商標))100mgが含まれる。
【0112】
薬物動態の結果を以下に挙げる。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
結論
ドセタキセル60分前にリトナビルを投与する場合とドセタキセルとリトナビルの同時投与の間には有意差はなかった。経口投与のAUCは、静脈内投与のAUCよりも大きい(図1参照)。これは、ドセタキセル排除の阻害に対するリトナビルの効果によって説明される。
【0116】
所見
この臨床試験は、比較的低用量のドセタキセルで実施されたが、高いAUC値(2.4±1.5mg.h/L、ドセタキセル100mg)が生じ、同用量の静脈内投与後のAUC値よりもさらに高かった。それによって、静脈内投与後には存在するが、経口投与後では体内循環に到達しない医薬媒体がドセタキセルの組織分布を制限するため、当然のことながら経口経路後(投与直後)の分布量は静脈内経路後よりも大きくなる。本発明者らは、これらの効果を理解するための薬物動態モデルを構築した(以下参照)。このモデルはまた、ドセタキセル排除に対するリトナビルの効果が、リトナビルが血流中にもはや存在しないときなくなることを示している。リトナビルは、ドセタキセル排除をリトナビルがない場合のレベルの35%まで阻害する。
【0117】
マウスにおける従来技術の前臨床試験で使用した用量と比較すると、この臨床試験はリトナビル100mgおよびドセタキセル100mgを使用しており、一方、マウスにおける前臨床試験はリトナビル12.5mg/kgおよびドセタキセル10〜30mg/kgを使用した。ドセタキセル用量10〜30mg/kgは、ヒトにおいて極めて毒性がある(生命を危うくする)。リトナビル用量12.5mg/kgは、ヒトにおいてCYP3A4を阻害するために通常使用されるものよりも実質的に高い。
【0118】
従来の前臨床試験では、リトナビルはドセタキセルより30分前に投与された。臨床試験では、薬剤はまた同時に投与されたが、同時投与とリトナビルの投与60分前投与との間ではドセタキセル薬物動態の改善に有意な差はなかった。これは、両薬物が単独の薬剤形態(例えば、ドセタキセルおよびリトナビルの両方を含有する錠剤、カプセルまたは飲用溶液)で与えることができることを示している。
【0119】
リトナビル100mgを共投与したとき(ドセタキセル用量100mgで)得られるドセタキセルAUC値(2.4±1.5mg.h/L)は、例えば、転移性乳癌において、週間計画で治療効果があると考えることができる。これは、週間計画でドセタキセル100mgを15mg/kgの用量のCsAと共に経口投与した以前の第II相試験と全く同程度で、転移性乳癌を有する患者の奏効率50%、ドセタキセルAUC約2.3mg.h/Lをもたらす。
【0120】
完全を期してリトナビル薬物動態データを以下に挙げる(図2参照)。
【0121】
【表3】
薬物動態プロファイル
前記の試験から得られたデータの薬物動態(PK)分析は、薬物動態プロファイルを作製するためのNONMEN(非線形混合効果モデリング)プログラム(GloboMax LLC、Hanover、MD、USA)を使用して実施した。これは、様々な区画を使用した薬物の吸収、排除および分布をモデル化したものである。経口投与と静脈内投与の間の薬理学的な違いを以下に提示する。
【0122】
経口ドセタキセル曝露は、ドセタキセル単独およびリトナビルとの組み合わせの単回投与後に調べた。リトナビルは経口ドセタキセルと同時に、または1時間前に投与した。
【0123】
薬物投与後、血液試料を薬物動態分析用に採取した。盲検試料は投与前に採取した。血液試料は遠心して、結晶を分離し、すぐに−20℃で分析するまで保存した。分析は、GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)認定研究所において有効なHPLC法で実施された。これは、本発明者によって本明細書で提示した薬物動態試験全てに関与する。
【0124】
PKモデル
PKモデルは、i.v.ドセタキセルのPKモデルをベースにした。このモデルは、3種類の区画を使用しており、Brunoらによって詳しく記載されている[85]。経口投与ドセタキセルから得られたデータは、胃腸管をモデル化した貯蔵区画がさらに追加されているこのモデル内で実装された。リトナビルの薬物動態モデルは、Kappelhoffら[87]によって記載された2区画モデルを使用して最も良く記載された。図3は、最終的な薬物動態モデルを図示したものである。ドセタキセルの薬物動態に対するリトナビルの影響は、2種類の異なる機構、a)リトナビル存在下でのドセタキセルの吸収の改善(リトナビル(RTV)区画とC1からC2へのドセタキセル吸収とを連結するライン)、b)リトナビルは活性型CYP3A4を阻害し(C6とC7とを連結するライン)、活性型CYP3A4はドセタキセルの排除に関与する(C7とドセタキセルの排除経路とを連結するライン)によってモデル化された。
【0125】
吸収
ドセタキセルの吸収は、リトナビルと共投与すると著しく改善された。経口ドセタキセル単独のバイオアベイラビリティー計算値は14%(ドセタキセル100mgを経口投与された患者3人のデータに基づく)である。リトナビルと組み合わせた経口ドセタキセルのバイオアベイラビリティーは56%で4倍高かった。この効果は、GI管に存在するCYP3A4酵素のリトナビルによる阻害によるものと考えることができる。
【0126】
排除
ドセタキセルは、主にCYP3A4によって代謝される。リトナビルはCYP3A4を阻害する。これによって、リトナビルをドセタキセルと共投与すると排除の抑制が引き起こされる。ドセタキセルの除去は、CYP3A4量と関連しており、したがって徐々に変化する。図4は、経時的な相対的推定酵素濃度を示す。ドセタキセルの除去は、酵素濃度と1:1で相関する。したがって、ドセタキセルの除去対時間は図4と類似するだろう。
【0127】
分布量
中心区画(図3のC2)の量は、i.v.投与(±6L)と経口投与(±60L)とでは著しく異なる。これはおそらく、ドセタキセル製剤の主要な賦形剤の1つ、ポリソルベート80によるものである。ポリソルベート80は、ドセタキセルを捕捉できるミセルを形成する[86]。ポリソルベート80は、i.v.投与の場合は循環に入るが、経口投与の場合は吸収されない。したがって、ポリソルベートは、吸収されないという事実によって、経口投与後、ドセタキセルの薬物動態の性質に影響を及ぼさない。
【0128】
結論
経口ドセタキセルのバイオアベイラビリティーは、リトナビルと共投与すると約4倍に増加した。全身曝露は、GI管および肝臓(すなわち、吸収および排除それぞれ)におけるCYP3A4に対するリトナビルの併用効果によって、AUCに関しては、8.2倍増加した。
【0129】
ドセタキセルの排除は、リトナビルと併用すると減少する。
【0130】
分布量(中央区画の量)は、ポリソルベート80が存在すると少なく、ポリソルベート80がないと多い。
【0131】
前述の経口ドセタキセル試験では、ドセタキセル溶液10mg/mlを形成するために、市販のi.v.ドセタキセル製剤(Taxotere(登録商標);2ml=ドセタキセル80mg、賦形剤ポリソルベート80)をエタノール95%:水(13:87)で希釈した。薬剤師によって調製されたこの溶液は、水道水100mlと一緒にした飲用溶液(用量100mgでは10mg/ml溶液10ml)として患者に経口的に摂取された。研究目的では、これは実行可能であるが、所定の使用および自宅では用いられない。この飲用溶液の薬剤師による調製は時間がかかる。この溶液は安定性が限られている。患者は(おそらくポリソルベートおよびエタノール賦形剤のため)この飲用溶液のまずくて不快な味に苦情を言うことが多かった。明らかに、(例えば、カプセルまたは錠剤として摂取される)経口固体投与剤形が好ましく、患者には非常に支持される。
【0132】
要約すると、本発明はタキサンのバイオアベイラビリティーおよび全身曝露を改善し、タキサン、特に経口タキサンの臨床効果を改善し、治療に関連した可能性のある副作用もおそらく軽減する。これは経済的および臨床的に有益である。
【実施例3】
【0133】
パクリタキセルの経口製剤
3.1:固体分散物および物理的混合物
この実験では、SDSと混合したパクリタキセルおよびPVP−K17の固体分散物を含む組成物の溶解度および溶解速度を無水パクリタキセル、PVP−K17およびSDSの物理的混合物と比較した。
【0134】
PVP−K17に入れたパクリタキセル固体分散物の5mgカプセル
PVP−K17に入れたパクリタキセル20%の固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 400mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(条件は表3参照)。パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表4参照)。
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
PVP−K17との物理的混合物に入れたパクリタキセルの5mgカプセル
物理的混合物は、無水パクリタキセル5mgをPVP20mg、乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合することによって調製した。得られた粉末混合物をカプセル化した。
【0138】
【表6】
【0139】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水900mL中で回転速度75rpmで試験した。第1の実験では、各製剤のカプセル1個を使用した。第2の実験では、各製剤のカプセル2個を使用した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表4参照)。
【0140】
【表7】
【0141】
結果および結論
結果を図5に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(5および10mg)に対して表す。パクリタキセルの溶解は、PVPを含む固体分散物に組み込むことによって非常に改善されることは明らかに確認できる。物理的混合物を使用すると、溶解したパクリタキセルの最大量は表示量の20%未満に維持される。固体分散物を使用すると、溶解度は約65%(パクリタキセル5mg)または70%超(パクリタキセル10mg)である。パクリタキセル10mgの実験では、これは約8μg/mlの絶対溶解度に対応し、これは約15分後に実現する。したがって、固体分散物は溶解度が著しく増加し、バイオアベイラビリティーに重要な迅速な溶解速度ももたらす。
【0142】
固溶体または固体分散物では、非晶質状態の担体は担体およびタキサンの十分な混合を可能にする。担体は、保存中および水性媒体に溶解中の結晶化を防御する。
【0143】
3.2:カプセル製剤に対するドデシル硫酸ナトリウムの添加
この実験では、カプセル中の界面活性剤SDSの有無の溶解度に対する効果を測定した。
【0144】
PVP−K17に入れた20%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 400mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0145】
ドデシル硫酸ナトリウムを含まない5mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mgと混合し、カプセル化した(表7参照)。
【0146】
【表8】
【0147】
ドデシル硫酸ナトリウムを含む5mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17固体分散物25mg(=パクリタキセル5mg)を乳糖125mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム30mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表8参照)。
【0148】
【表9】
【0149】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水900mL中で回転速度75rpmで試験した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0150】
結果および結論
結果を表6に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合5mg)に対して表す。凍結乾燥したタキサンおよび担体固体分散物の空隙率は十分高く、粉末形態のとき確実に迅速に溶解する(結果は示さず)。しかし、粉末をカプセルに圧縮するとき、水和性は劇的に減少する。したがって、カプセルまたは錠剤に圧縮するとき、固体分散物を湿らせるために界面活性剤が必要である。
【0151】
パクリタキセルの溶解は、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムを添加することによって非常に改善されることが図6から明らかに確認できる。以前の実験によって、クロスカルメロースナトリウムやより多くの乳糖を添加したり、大きなカプセルを使用したりしても、カプセル製剤の溶解速度は増加しないことが示されている。また、SDSなどの界面活性剤で、最大の溶解が約10〜15分で実現することが示された。
【0152】
3.3:固体分散物製剤へのドデシル硫酸ナトリウムの添加
この実験では、固体分散物へのSDSの添加の溶解度に対する効果を測定した。
【0153】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0154】
PVP−K17およびドデシル硫酸ナトリウム10%に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 375mgおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)62.5mgは水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0155】
パクリタキセル/PVP−K17固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル40%/PVP−K17固体分散物62.5mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表9参照)。
【0156】
【表10】
【0157】
パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル40%/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム10%固体分散物68.75mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表10参照)。
【0158】
【表11】
【0159】
溶解試験
両カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水500mL中で試験した。回転速度は、パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物のカプセルでは75rpmに、パクリタキセル/PVP−K17固体分散物のカプセルでは100rpmに設定した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0160】
結果および結論
結果を表7に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。固体分散物に組み込んだ、ドデシル硫酸ナトリウムを含むカプセルからのパクリタキセルの溶解は、カプセルに添加したドデシル硫酸ナトリウムのカプセルからのパクリタキセルの溶解と同程度である。さらに、固体分散物に組み込む場合は、ドデシル硫酸ナトリウムは6.25mgだけ使用し、一方、カプセル製剤に添加する場合はドデシル硫酸ナトリウムは30mgを使用した。このことは、類似の結果を実現するためには、カプセルよりも固体分散物に組み込むときの方が必要な界面活性剤が少ないことを示している。この実験の別の驚くべき結果は、両組成物はパクリタキセルの絶対溶解度が約26μg/mlであり、このレベルは20〜30分で到達されることである。この結果は、今までに実現されたものよりも溶解度が高く、溶解速度が速い。
【0161】
3.4:担体の影響
最初の実験で薬剤負荷間の明らかな差が示さなかった後で、実施例3.4の実験で使用した固体分散物は生成された。これらの製剤は、前述の実験の20%薬剤負荷製剤と同等に作用し、1個の錠剤またはカプセルでより多くのタキサンを送達する可能性がもたらされたので、40%薬剤負荷を選択した。
【0162】
PVP−K12に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K12 375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K12水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0163】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0164】
PVP−K30に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K30 375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K30水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0165】
HP−シクロデキストリンに入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、HP−シクロデキストリン375mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらHP−シクロデキストリン水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0166】
25mgパクリタキセル固体分散物カプセル
パクリタキセル/担体固体分散物62.5mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mg、ドデシル硫酸ナトリウム30mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表11参照)。
【0167】
【表12】
【0168】
溶解試験
全カプセル製剤をUSP2(パドル)溶解装置内において、37℃に維持した注射用水500mL中で回転速度100rpmで試験した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0169】
結果および結論
2から3の実験の平均結果を図8に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。PVP−K30固体分散物からのパクリタキセルの溶解は、PVP−K17固体分散物からのパクリタキセルの溶解の速さと同じくらいであることを明らかに認めることができる。しかし、溶解したパクリタキセルの量は、PVP−K30固体分散物の場合、4時間の実験中高く維持される。
【0170】
ポリマー担体の鎖長は、水性環境での結晶化時間を決定する。
【0171】
3.5:薬物/担体比の影響
実施例3.5の実験で使用した固体分散物は、最初の実験で担体間の明らかな差が示されなかった後で生成された。これらの最初の実験は、実施例3.4のより詳細な実験の前に実施された。結果として、PVP−K17は、さらに実験するために担体として任意に選択された。
【0172】
PVP−K17に入れた10%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル100mgをt−ブタノール10mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水40mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0173】
PVP−K17に入れた25%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 750mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0174】
PVP−K17に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル600mgをt−ブタノール60mLに溶解し、PVP−K17 900mgを水6.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0175】
PVP−K17に入れた75%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 83mgを水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0176】
パクリタキセル100%固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら水16.67mLに添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0177】
溶解試験
パクリタキセル約4mgに等しい固体分散物粉末の量を50mLビーカーに入れた。磁石撹拌棒および水25mLをビーカーに添加した。溶液は7200rpmで撹拌した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0178】
結果および結論
2から3の実験の平均結果を図9に示す。溶解したパクリタキセル(PCT)の量は表示量(この場合約4mg)に対して表す。薬物/担体比の影響は、図9からすぐに明らかである。パクリタキセルのピーク濃度の値は、薬物/担体比に反比例する。最高ピーク濃度には、最低の薬物/担体比(10%)で到達し、最低ピーク濃度には最高の薬物/担体比(100%)で到達する。さらに、10%薬物/担体比の固体分散物のAUC値が最高で、25、40、75および100%薬物/担体比の固体分散物のAUC値がそれに続く。
【0179】
薬物の量に対する担体の量は、水性環境での結晶化時間を決定する。
【0180】
3.6:腸溶コーティングの影響
PVP−K17およびドデシル硫酸ナトリウム10%に入れた40%パクリタキセル固体分散物
固体分散物は、パクリタキセル250mgをt−ブタノール25mLに溶解し、PVP−K17 375mgおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)62.5mgは水16.67mLに溶解することによって調製した。パクリタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム/水溶液に添加した。最終混合物を8mLバイアルに移し、最大充填レベルを2mLとした。t−ブタノールおよび水はその後凍結乾燥によって除去した(表3参照)。
【0181】
パクリタキセル/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム固体分散物の25mgパクリタキセルカプセル
パクリタキセル20%/PVP−K17/ドデシル硫酸ナトリウム10%固体分散物68.75mg(=パクリタキセル25mg)を乳糖160mgおよびクロスカルメロースナトリウム10mgと混合した。得られた粉末混合物をカプセル化した(表12参照)。
【0182】
【表13】
【0183】
溶解試験
カプセルは、重複して異なる2種類の溶解試験を行った。第1の試験は、2段階の溶解試験で、ペプシンを含まない模擬胃液(SGFsp;表13)500mL中における2時間の溶解試験、その後のペプシンを含まない模擬腸液(SIFsp;表13)629mLにおける2時間の溶解試験から構成される。第2の試験は、絶食状態の模擬腸液(FaSSIF;表14)媒体500mLで4時間実施された。
【0184】
両溶解試験は、37℃に維持した媒体500mLを有するUSP2(パドル)溶解装置およびパドル回転速度75rpmで実施した。SGFsp媒体は、変換媒体129mLを添加することによってSIFsp媒体に交換した。試料は、様々な時点で採取し、HPLC−UVによって分析した(表6参照)。
【0185】
【表14】
【0186】
【表15】
【0187】
結果および結論
結果を図10に示す。溶解したパクリタキセルの量は表示量(この場合25mg)に対して表す。絶食状態模擬腸液におけるパクリタキセルの溶解は、模擬胃液(SGFsp)よりも約20%多い。SGFspにおいて2時間後、溶液中のパクリタキセルの量は媒体を模擬腸液(SIFsp)に交換すると少しだけ増加する。
【0188】
腸溶コーティングは、胃におけるタキサンの放出を防御し、それによって活性成分の溶解を防御する。さらに、タキサンが吸収される腸への標的化輸送が可能になり、したがって、(結晶化が生じる前に)タキサンが溶液中に存在する限られた時間が吸収の可能な部位においてのみ確実に費やされる。
【実施例4】
【0189】
ドセタキセルの経口製剤
材料および方法
以下の実験で使用した製剤は、以下に概略した方法および表15に記載した組成物によって調製した。
【0190】
純粋な無水ドセタキセル
無水ドセタキセルは、ScinoPharm、Taiwanから入手して使用した。
【0191】
純粋な非晶質ドセタキセル
ドセタキセルは、無水ドセタキセル300mgをt−ブタノール30mL中に溶解することによって非晶質化した。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら注射用水(WfI)20mLに添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/9)に移し、その後t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によって除去した(表16参照)。
【0192】
物理的混合物
物理的混合物は、ドセタキセル150mgおよび対応する量の担体および界面活性剤(表15参照)を乳鉢および乳棒で混合することによって調製した。
【0193】
固体分散物
固体分散物は、無水ドセタキセル300mgをt−ブタノール30mLに溶解し、対応する量の担体および界面活性剤(表15参照)を注射用水20mLに溶解することによって得られた。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながら担体/界面活性剤/WfI溶液に添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/9)に移し、その後t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によって除去した(表16参照)。
【0194】
【表16】
【0195】
【表17】
【0196】
溶解試験
ドセタキセル約6mgに等しい粉末の量を50mLビーカーに入れた。磁石撹拌棒および水25mLをビーカーに添加した。溶液は720rpmで撹拌し、約37℃に維持した。試料は様々な時点で採取し、0.45μmフィルターで濾過してからメタノールおよびアセトニトリル1:4v/v混合物で希釈した。濾過し、希釈した試料をその後HPLC−UVによって分析した(表17参照)。
【0197】
【表18】
【0198】
4.1:製剤の種類
第1の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する製剤の種類の影響を調べた。製剤AからEで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図11に示す。製剤Eは、4連で試験し、製剤AからDは2連で試験した。
【0199】
結果
製剤A(純粋な無水ドセタキセル)は、5分間撹拌した後、最高濃度約12μg/mL(存在する全ドセタキセルの4.7%)に達し、15分間撹拌した後、平衡濃度約6μg/mL(2%)に達する。
【0200】
製剤B(純粋な非晶質ドセタキセル)は、0.5分後に最高32μg/mL(13%)に達し、10分から60分では、溶解度は製剤Aと同程度である。
【0201】
製剤C(無水ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物)は、5分後に約85μg/mL(37%)の濃度に達する。15分と25分の間に、ドセタキセル濃度は、85μg/mL(37%)から30μg/mL(12%)に急に減少し、その後、60分ではさらに20μg/mL(9%)まで減少する。
【0202】
製剤D(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの物理的混合物)は、7.5分後に最大ドセタキセル濃度約172μg/mL(70%)に達する。7.5分と20分の間に、溶液中のドセタキセルの量は24μg/mL(10%)に減少する。60分では、平衡濃度19μg/mL(7%)に達する。
【0203】
製剤E(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物)は、5分後に最高の最大濃度約213μg/mL(90%)に達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0204】
結論
製剤は全て、最初は高い溶解度を示し、45分から60分撹拌すると平衡溶解度まで減少する。溶解度の減少は、過飽和溶液の結果であるドセタキセルの結晶化によって引き起こされる。過飽和の程度は、薬物の物理的状態、すなわち、非晶質であるか、または結晶であるかによって左右される。PVP−K30が担体のとき、過飽和状態は長く維持され、したがって、ドセタキセルの溶解度はあまり急速には減少しない。さらに、この結果は、非晶質ドセタキセルを使用すると、無水ドセタキセルと比較してドセタキセルの溶解度が著しく増加することを示している。さらに、非晶質ドセタキセルは、比較的速い溶解速度を示し、約5分から7.5分でピークに達する。
【0205】
この実験は、溶液中のドセタキセルの量は、無水ドセタキセルとPVP−K30およびSDSを物理的に混合することによって著しく増加し、非晶質ドセタキセルとPVP−K30およびSDSを物理的に混合することによってさらに増加することを示している。しかし、溶解度の最大の増加は、ドセタキセルをPVP−K30およびSDSの固体分散物中に組み込むことによって実現する。
【0206】
4.2:担体の種類
第2の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する担体の種類の影響を調べた。製剤EおよびFで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図12に示す。製剤Eは、4連で試験し、製剤Fは2連で試験した。
【0207】
結果
製剤E(非晶質ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物)の最大濃度は最高で213μg/mL(存在する全ドセタキセルの90%)であり、5分後に到達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0208】
製剤F(非晶質ドセタキセル、HPβ−CDおよびSDSの固体分散物)は、約2分後に最大ドセタキセル濃度約200μg/mL(81%)に達する。5分と10分の間に、溶液中のドセタキセルの量は16μg/mL(6%)の値に減少し、45分後に平衡濃度11μg/mL(4%)に達する。
【0209】
結論
この実験は、PVP−K30およびHPβ−CDの両方がドセタキセルの溶解度を増加させることを示している。HPβ−CDと比較してPVP−K30を担体として使用するとき、ドセタキセル最大濃度は少し高く、過飽和状態は長く維持され、したがって、ドセタキセルの溶解度は時間と共に急速には減少しない。さらに、ドセタキセル沈殿後に達する平衡濃度はHPβ−CDと比較してPVP−K30の方が高い。
【0210】
4.3:鎖長
第3の実験では、ドセタキセルの溶解度に対するPVP鎖長の種類の影響を調べた。製剤EおよびGからJで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を以下の図13に示す。製剤Eは4連で試験し、製剤GからJは2連で試験した。
【0211】
結果
製剤G(PVP−K12)は、5分後にドセタキセル最大濃度206μg/mL(存在する全ドセタキセルの77%)に達する。5分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は20μg/mL(7%)の値に減少し、45分後のドセタキセル濃度は17μg/mL(6%)である。
【0212】
製剤H(PVP−K17)は、5分後にドセタキセル最大濃度200μg/mL(83%)に達し、この濃度は撹拌して10分まで維持され、その後溶液中のドセタキセルの量は15分で44μg/mL(18%)に、30分で22μg/mL(9%)に急速に減少する。45分と60分の間の平衡濃度は、約21μg/mL(8%)である。
【0213】
製剤I(PVP−K25)は、撹拌して5分後にドセタキセル最大濃度214μg/mL(88%)に達する。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は22μg/mL(9%)の値に減少し、60分後のドセタキセル濃度は19μg/mL(8%)である。
【0214】
製剤E(PVP−K30)のドセタキセル最大濃度は、213μg/mL(90%)で、5分後に到達する。10分と25分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)を生じる。
【0215】
製剤J(PVP−K90)は、撹拌して10分後にドセタキセル最大濃度214μg/mL(88%)に達する。15分後、溶液中のドセタキセルの量はまだ151μg/mL(61%)である。60分後、ドセタキセル濃度は19μg/mL(7%)に減少した。
【0216】
結論
この実験は、PVPの鎖長は、過飽和の程度および過飽和が維持される期間の両方に影響を及ぼすことを示している。使用するPVP鎖長が長ければ長いほど、ドセタキセル最大濃度はより高く、過飽和期間はより長くなり、したがって、より長い期間より高い溶解度がもたらされる。
【0217】
4.4:薬物負荷
第4の実験では、ドセタキセルの溶解度に対する薬物負荷の影響を調べた。製剤EおよびKからNで実施した溶解試験のデータを比較した。結果を図14に示す。製剤Eは4連で試験し、製剤KからNは2連で試験した。
【0218】
製剤N(ドセタキセルは全組成物の重量の1/21、ドセタキセル対PVPは5:95w/w)は、10分後にドセタキセル最大濃度197μg/mL(存在する総ドセタキセルの79%)に達する。15分後に、溶液中のドセタキセルの量は、まだ120μg/mL(48%)で、15分と30分の間に、ドセタキセル濃度は24μg/mL(12%)に減少する。60分後では、ドセタキセル濃度は20μg/mL(8%)である。
【0219】
製剤E(ドセタキセルは全組成物の重量の1/11、ドセタキセル対PVPは10:90w/w)のドセタキセル濃度は213μg/mL(90%)で、5分後に到達する。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は急速に減少し、45分後に平衡濃度20μg/mL(8%)に達する。
【0220】
製剤M(ドセタキセルは全組成物の重量の1/6、ドセタキセル対PVPは20:80w/w)のドセタキセル濃度は、撹拌して10分後に196μg/mL(80%)である。10分と30分の間に、溶液中のドセタキセルの量は25μg/mL(10%)に減少し、60分後ではドセタキセル濃度は18μg/mL(7%)である。
【0221】
製剤L(ドセタキセルは全組成物の重量の1/3、ドセタキセル対PVPは40:60w/w)はドセタキセル濃度176μg/mL(71%)に達する。10分と15分の間に、溶液中のドセタキセルの量は46μg/mL(18%)に急速に減少し、60分後の溶液中のドセタキセルの量は18μg/mL(7%)である。
【0222】
製剤K(ドセタキセルは全組成物の重量の5/7、ドセタキセル対PVPは75:25w/w)は撹拌して5分後にドセタキセル最大値172μg/mL(71%)に達する。5分と10分の間に、ドセタキセル濃度は42μg/mL(17%)に急に減少し、60分後にドセタキセル濃度は18μg/mL(7%)に達する。
【0223】
結論
この実験は、固体分散物中で使用したドセタキセルの量に対するPVP−K30の量は、過飽和の程度および過飽和が維持される期間の両方に影響を及ぼすことを示している。薬物負荷の使用が高ければ高いほど、ドセタキセル最大濃度は低くなり、過飽和期間は短くなり、したがって、徐々に溶解度が低くなる。
【0224】
4.5:従来技術の組成物との溶解度の比較
この実験では、ドセタキセル15mg、PVP−K30 135mgおよびSDS15mgの固体分散物を含有する組成物を、Chenら[95]で開示したドセタキセル5mgおよびPVP−K30の固体分散物を含む組成物の文献データと比較した。溶解度の結果は、Chenら[95]で記載された溶解試験を使用して得られ、図15および16に示す。溶解試験はまた、模擬腸液で実施され、Chenの文献データと比較した。結果を図17に示す。
【0225】
結果
図15から、Chenらの組成物は水900mlにおいて組成物中のドセタキセル5mgの最大約80%を溶解できることを認めることができる。この最大値に達するためには5時間超かかる。ドセタキセル、PVP−K30およびSDS組成物は、約60分でドセタキセル15mgの100%を溶解した。
【0226】
図16では、ドセタキセルの絶対濃度を示す。Chenの組成物は、約5時間後にドセタキセル最大濃度約4.2μg/mlを示した。ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物は、約60分後にドセタキセル最大濃度約16.7μg/mlを示した。
【0227】
図17では、ドセタキセルカプセルは28μg/mlの溶解度(溶解度>90%)に達する。Chenらによって記載された固体分散物(ドセタキセル+PVPK30)は、4.2μg/ml(900mlでの溶解で試験したドセタキセル5mg固体分散物の80%未満)の溶解度に達する。カプセル製剤はしたがって、より速い溶解速度で、6.6倍高い溶解度に達する(30分後に最大に達するのに対してChenでは90〜120分)。
【0228】
結論
これらの結果から、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物はChenの組成物と比較して溶解速度が速く、溶解度が高いことを認めることができる。バイオアベイラビリティーについては、どのくらい速く薬物が溶解し、0.5hから1.5hでどの溶解度に達するかを観察することが重要である。
【0229】
Chenの結果から、当業者は、組成物中のドセタキセルの量が増加してもドセタキセルの絶対溶解度は増加しないと考えるだろう。Chenの組成物は水900mlにはドセタキセル5mgの80%(すなわち、4mg)しか溶解しないので、ドセタキセルの量を15mgに増加しても溶解するドセタキセルは4mgを上回らないことが予測される。したがって、Chenによるドセタキセル15mg組成物は、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物の100%と比較して最大約27%のドセタキセルが溶解すると予測される。したがって、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの組成物によって得られた結果は、Chenと比較して驚くほど優れている。
【0230】
4.6:パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)における溶解試験
この実験では、ドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物を含有するカプセルの溶解を、パンクレアチンを含まない模擬腸液(SIFsp)で試験した。このカプセルは、製剤Eにしたがってドセタキセル15mgを含有した(表15参照)。SIFspはUSP28にしたがって調製した。ドセタキセル15mgを含有するカプセルは、37℃で75rpmで撹拌しながらUSP SIFsp 500mLに溶解した。結果は、図18および19に示す。
【0231】
図18および19は、ドセタキセルのほぼ100%が溶解したことを示している。これは、ドセタキセルの絶対濃度約29μg/mLと等しく、約30分で達成される。したがって、この組成物は、比較的短い期間で比較的高い溶解度をもたらす。
【0232】
4.7:安定性
臨床試験(以後の実施例参照)のためのカプセルで使用された、製剤E(表15参照)によるドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物は、4〜8℃で保存したとき、少なくとも80日間、化学的(分解なし)および物理的(溶解特性に変化なし)に安定であることが分かった。
【実施例5】
【0233】
製剤の臨床試験データ
材料および方法
患者10人が進行中の第1相臨床試験に参加した。
【0234】
これらの患者には以下の番号をつけた。
301、302、303、304、305、306、307、308、309および310。
【0235】
これらの患者は、ドセタキセルの液体製剤またはドセタキセル、PVP−K30およびSDSの固体分散物を含む固体組成物(以後、MODRAと称する)から構成される治療薬を与えられた。
【0236】
液体製剤
ドセタキセル用量:全患者に対して30mg(ドセタキセル20mgを投与された患者306以外)。30mgの用量は以下のように調製した。静脈内投与用Taxotere(登録商標)プレミックス3.0ml(ポリソルベート80(25%v/v)、エタノール(10%(w/w)および水の1ml当たりドセタキセル10mgを含有する)を水と混合して、最終体積25mLにした。この溶液を水道水100mLと共に患者に経口摂取させた。
【0237】
MODRA
ドセタキセル用量:30mg。カプセル当たりドセタキセル15mgのカプセル2個を摂取した。臨床試験でさらに試験するために、前の実施例の製剤E(ドセタキセル1/11、PVP−K30 9/11およびSDS1/11)を選択した。製剤Eの新しいバッチは、無水ドセタキセル1200mgをt−ブタノール120mLに溶解し、PVP−K30 10800mgおよびSDS 1200mg(表15参照)を注射用水80mLに溶解することによって作製した。ドセタキセル/t−ブタノール溶液を常に撹拌しながらPVP−K30/SDS/WfI溶液に添加した。最終混合物をステンレススチール凍結乾燥箱(ガストロノームサイズ1/3)に移し、t−ブタノールおよび水を凍結乾燥によってすぐに除去した(表16参照)。
【0238】
サイズ0のゼラチンカプセル60個全てにドセタキセル15mgに対応する固体分散物の量を充填し、固体分散物mg当たりのドセタキセルの正確な量を測定するためにHPLCアッセイを使用した。アッセイによって、カプセルはドセタキセル15mgを含有することが確認された。
【0239】
患者は、朝空腹時に水道水100mLと共に経口的に治療薬を投与された。
【0240】
患者の治療
患者301、302、303、304および305は液体製剤のみを投与された。
【0241】
患者306は、第1クールで液体製剤としてドセタキセル20mg+リトナビルを投与され、第2クールで、同様の治療薬を投与されたが、ドセタキセルを摂取して4時間後にさらにリトナビルを投与された。
【0242】
患者307、308、309および310は液体製剤および/またはMODRAを投与された。クールは、1週間間隔で投与された。
【0243】
施設の指針にしたがって、経口およびi.v.ドセタキセルの両方について、患者全てを経口デキサメタゾンで治療した。デキサメタゾン用量4mgを被験薬の1時間前、その後は12時間毎(2回)に4mg投与した。ドセタキセルによる治療の1時間前に、患者はまた、悪心および吐き気を抑えるため、グラニセトロン(Kytril(登録商標))1mgを投与された。
【0244】
薬物投与後、血液試料を薬物動態分析用に採取した。盲検試料は投与前に採取した。血液試料は遠心して、血漿を分離し、分析するまですぐに−20℃で保存した。分析は、GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)認定研究所において有効なHPLC法で実施された[101]。
【0245】
結果
【0246】
【表19】
【0247】
患者301、302、303、304、305、307、309および310は液体製剤を投与された。平均およびAUCの平均の95%信頼区間(無限大まで外挿)は、1156(±348)ng*/mLである。個体間変動は85%である。
【0248】
患者306は、第1クールでリトナビル100mgと同時に(液体製剤として)ドセタキセル20mgを投与され、1週間後、第2クールでは、同じ組み合わせであるが、ドセタキセルの摂取4時間後にリトナビル100mgをさらに投与され、すなわち、リトナビルは2回、1回目はt=0、2回目はt=4hに摂取された。薬物動態曲線を図20に示す。
【0249】
患者307、308、309および310は液体製剤および/またはMODRAを投与された。薬物動態曲線を図21に示す。
【0250】
図22は、液体製剤(307、309および310)を投与された患者の薬物動態曲線およびMODRAを投与された4人の患者(307、308、309および310)の全経過(n=6)を示している。
【0251】
いずれもリトナビル100mgと組み合わせた液体製剤対MODRAの薬物動態の結果を以下にまとめて示す。
液体製剤(ドセタキセル30mg)
AUCinf(平均の95%信頼区間):1156(808〜1504)ng*h/ml
個体間変動:85%(n=8)
【0252】
MODRA(ドセタキセル30mg)
AUCinf(平均の95%信頼区間):756(568〜968)ng*h/ml
個体間変動:29%(n=4)
個体内変動:33%(n=2)
【0253】
MODRAの平均AUCは、患者4人の6曲線を使用して計算した。各患者に投与したMODRAの最初の用量は、個体間変動を計算するために使用した。個体内変動は、MODRAを2回投与された患者307および308のデータに基づく。
【0254】
結論
試験したドセタキセル液体製剤は、新規カプセル製剤(MODRA)で得られた同用量(30mg)よりも約1.5倍のAUC値を生じた。
【0255】
液体製剤の個体間変動は高く(85%)、カプセル製剤の個体間変動は大幅に低い(29%)。これは、新規カプセル製剤の重要な特徴で、より優れたドセタキセル曝露をもたらすと予測できる。安全性の理由からも、個体間変動が低いことは、経口化学療法計画に非常に望ましい。
【0256】
個体内変動(限られたデータ)は、個体間変動と同様の大きさである。
【0257】
ドセタキセル投与の4時間後に摂取された2回目のリトナビル100mgの追加投与によって、ドセタキセルAUCは1.5倍に増加する。
【0258】
i.v.投与に対する経口カプセル製剤の比較
図23は、ドセタキセルのi.v.投与後(i.v.による1時間注入としてドセタキセル20mg、Taxotere(登録商標))(患者n=5)および経口投与(ドセタキセル30mg、MODRAカプセル、前記参照)(患者n=4、6クール)後の薬物動態曲線を示す。i.v.および経口の両方によるドセタキセル投与は、リトナビル(カプセル、Norvir(登録商標))100mgの投与と組み合わせた。施設の指針にしたがって、経口およびi.v.ドセタキセルの両方について、患者全てを経口デキサメタゾンで治療した。デキサメタゾン用量4mgを被験薬の1時間前、その後は12時間毎(2回)に4mg投与した。ドセタキセルによる治療の1時間前に、患者はまた、悪心および吐き気を抑えるため、グラニセトロン(Kytril(登録商標))1mgを投与された。
【0259】
MODRAカプセルのバイオアベイラビリティーは、
(AUC30mg経口/AUC20mg iv)×(20/30)×100%=73%(SD18%)によって計算した。
【0260】
カプセルのバイオアベイラビリティーは比較的高く、個体間変動は低いことが示された。
【0261】
前述の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するものであって、その範囲を制限するものではなく、範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。本明細書で引用した文書は全て、全体を参照により本明細書に組み込む。
(参考文献)
【0262】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に非晶質のタキサン、親水性であり、好ましくは重合した担体および界面活性剤を含む経口投与用固体医薬組成物。
【請求項2】
前記タキサンおよび前記担体が固体分散物の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タキサン、前記担体および前記界面活性剤が固体分散物の形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記担体がPVPである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記PVPが、PVP−K12、PVP−K15、PVP−K17、PVP−K25、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記PVPが、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤がSDSである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記タキサンと担体との重量比が、約0.01:99.99w/wと約72:25w/wの間である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記タキサンと担体との重量比が、約0.01:99.99w/wと約30:70w/wの間である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比が、約1:99w/wと約50:50w/wの間である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比が、約2:98w/wと約17:83w/wの間である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記実質的に非晶質のタキサンが凍結乾燥によって調製される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
実質的に非晶質のタキサンが、経口投与用カプセル内でのタキサン溶液の凍結乾燥によって調製される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1種または複数の他の薬学的に活性のある成分をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
1種または複数の他の薬学的に活性のある成分がCYP3A4阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
治療で使用するための、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
新生物疾患の治療に使用するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
新生物疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象への、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物の有効量の投与を含む方法。
【請求項23】
タキサン、親水性重合担体および界面活性剤を溶媒に溶解するステップと、
溶液を凍結乾燥して組成物を形成するステップと
を含む、請求項2から17のいずれか一項に記載する組成物の調製方法。
【請求項24】
実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む経口投与用医薬組成物であって、実質的に非晶質のタキサンが凍結乾燥によって調製される組成物。
【請求項25】
タキサンおよびCYP3A4阻害剤を、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む経口投与用医薬組成物。
【請求項26】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項25または請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記タキサンが、ドセタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記タキサンを約0.1mg〜約1000mg含む、請求項25から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
毎週投与することが意図され、前記タキサンを約30mg〜約500mg含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
毎日投与することが意図され、前記タキサンを約0.1mg〜約100mg含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
リトナビルを約0.1mg〜約1200mg含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
毎週投与することが意図され、リトナビルを約50mg〜約1200mg含む、請求項26から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
毎日投与することが意図され、リトナビルを約50mg〜約1200mg含む、請求項26から29および請求項31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
毎週投与することが意図され、前記タキサン約100mgおよびリトナビル約100mgを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
治療で使用するための、請求項25から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
新生物疾患の治療に使用するための、請求項25から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記新生物疾患が固形腫瘍である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記固形腫瘍が、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記治療が、前記組成物の投与と、その後所定の期間後の追加用量のCYP3A4阻害剤の投与とを含む、請求項37から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
追加用量のCYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
リトナビルの追加用量が約100mgである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
新生物疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象への、タキサンおよびCYP3A4阻害剤の有効量の投与を含む方法。
【請求項45】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記タキサンが、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記タキサンが前記CYP3A4阻害剤と実質的に同時に投与される、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記CYP3A4阻害剤が前記タキサンの約60分前に投与される、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記タキサンが約30mg〜500mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記タキサンが約0.1mg〜100mgの用量で1日毎に投与される、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記リトナビルが約50mg〜1200mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記リトナビルが約50mg〜1200mgの用量で1日毎に投与される、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記タキサンおよびリトナビルが、前記タキサン約100mgおよびリトナビル約100mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項45から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記新生物疾患が固形腫瘍である、請求項44から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記固形腫瘍が、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記対象がヒトである、請求項44から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
初回用量のCYP3A4阻害剤の投与から所定の期間後の追加用量のCYP3A4阻害剤の投与をさらに含む、請求項44から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
追加用量のCYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
リトナビルの追加用量が約100mgである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
新生物疾患の治療方法であって、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、CYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象に投与するステップを含む方法。
【請求項63】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
タキサンを含む前記組成物が、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項65】
新生物疾患の治療方法であって、CYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、タキサンをCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象に投与するステップを含む方法。
【請求項66】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
対象に投与される前記タキサンが、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物の形態である、請求項65または請求項66に記載の方法。
【請求項68】
タキサンを含む第1の医薬組成物およびCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含み、前記第1および第2の医薬組成物が新生物疾患治療のための同時投与、別々の投与または連続投与に適しているキット。
【請求項69】
CYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物の後で投与するのに適しているCYP3A4阻害剤を含む第3の医薬組成物をさらに含む、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記第1の医薬組成物が請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項68または請求項69に記載のキット。
【請求項71】
タキサンおよびCYP3A4阻害剤を含む第1の医薬組成物、ならびにCYP3A4阻害剤を含み、第1の医薬組成物の後で投与するのに適している第2の医薬組成物を含む、新生物疾患治療のためのキット。
【請求項72】
前記第1の医薬組成物が請求項18または請求項19に記載の組成物である、請求項71に記載のキット。
【請求項73】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項68から72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
CYP3A4阻害剤を前記タキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項75】
タキサンを含む前記組成物が、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
タキサンをCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、CYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項77】
対象に投与される前記タキサンが、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物の形態である、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項74から77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項1】
実質的に非晶質のタキサン、親水性であり、好ましくは重合した担体および界面活性剤を含む経口投与用固体医薬組成物。
【請求項2】
前記タキサンおよび前記担体が固体分散物の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タキサン、前記担体および前記界面活性剤が固体分散物の形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記担体がPVPである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記PVPが、PVP−K12、PVP−K15、PVP−K17、PVP−K25、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記PVPが、PVP−K30、PVP−K60およびPVP−K90から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポロキサマー、モノオレイン酸グリセリル、ドキュセートナトリウム、セトリミド、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒプロメロース、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックスおよびクエン酸トリエチルから選択される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤がSDSである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記タキサンと担体との重量比が、約0.01:99.99w/wと約72:25w/wの間である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記タキサンと担体との重量比が、約0.01:99.99w/wと約30:70w/wの間である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比が、約1:99w/wと約50:50w/wの間である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤と、一緒にしたタキサンおよび担体との重量比が、約2:98w/wと約17:83w/wの間である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記実質的に非晶質のタキサンが凍結乾燥によって調製される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
実質的に非晶質のタキサンが、経口投与用カプセル内でのタキサン溶液の凍結乾燥によって調製される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1種または複数の他の薬学的に活性のある成分をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
1種または複数の他の薬学的に活性のある成分がCYP3A4阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
治療で使用するための、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
新生物疾患の治療に使用するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
新生物疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象への、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物の有効量の投与を含む方法。
【請求項23】
タキサン、親水性重合担体および界面活性剤を溶媒に溶解するステップと、
溶液を凍結乾燥して組成物を形成するステップと
を含む、請求項2から17のいずれか一項に記載する組成物の調製方法。
【請求項24】
実質的に非晶質のタキサンおよび担体を含む経口投与用医薬組成物であって、実質的に非晶質のタキサンが凍結乾燥によって調製される組成物。
【請求項25】
タキサンおよびCYP3A4阻害剤を、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む経口投与用医薬組成物。
【請求項26】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項25または請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記タキサンが、ドセタキセル、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記タキサンを約0.1mg〜約1000mg含む、請求項25から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
毎週投与することが意図され、前記タキサンを約30mg〜約500mg含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
毎日投与することが意図され、前記タキサンを約0.1mg〜約100mg含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
リトナビルを約0.1mg〜約1200mg含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
毎週投与することが意図され、リトナビルを約50mg〜約1200mg含む、請求項26から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
毎日投与することが意図され、リトナビルを約50mg〜約1200mg含む、請求項26から29および請求項31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
毎週投与することが意図され、前記タキサン約100mgおよびリトナビル約100mgを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
治療で使用するための、請求項25から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
新生物疾患の治療に使用するための、請求項25から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記新生物疾患が固形腫瘍である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記固形腫瘍が、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記治療が、前記組成物の投与と、その後所定の期間後の追加用量のCYP3A4阻害剤の投与とを含む、請求項37から40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
追加用量のCYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
リトナビルの追加用量が約100mgである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
新生物疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする対象への、タキサンおよびCYP3A4阻害剤の有効量の投与を含む方法。
【請求項45】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記タキサンが、ドセタキセル、パクリタキセル、BMS−275183、それらの機能的誘導体およびそれらの薬学的に許容される塩またはエステルから選択される、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記タキサンが、ドセタキセル、それらの機能的誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩またはエステルである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記タキサンが前記CYP3A4阻害剤と実質的に同時に投与される、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記CYP3A4阻害剤が前記タキサンの約60分前に投与される、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記タキサンが約30mg〜500mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記タキサンが約0.1mg〜100mgの用量で1日毎に投与される、請求項44から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記リトナビルが約50mg〜1200mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記リトナビルが約50mg〜1200mgの用量で1日毎に投与される、請求項45から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記タキサンおよびリトナビルが、前記タキサン約100mgおよびリトナビル約100mgの用量で1週間間隔で投与される、請求項45から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記新生物疾患が固形腫瘍である、請求項44から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記固形腫瘍が、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、頭頚部癌、食道癌、肝癌、腎癌、膵癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌およびNHLから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、頭頚部癌および非小細胞肺癌から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記対象がヒトである、請求項44から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
初回用量のCYP3A4阻害剤の投与から所定の期間後の追加用量のCYP3A4阻害剤の投与をさらに含む、請求項44から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
追加用量のCYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
リトナビルの追加用量が約100mgである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
新生物疾患の治療方法であって、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、CYP3A4阻害剤をタキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象に投与するステップを含む方法。
【請求項63】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
タキサンを含む前記組成物が、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項65】
新生物疾患の治療方法であって、CYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を、タキサンをCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象に投与するステップを含む方法。
【請求項66】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
対象に投与される前記タキサンが、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物の形態である、請求項65または請求項66に記載の方法。
【請求項68】
タキサンを含む第1の医薬組成物およびCYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物を含み、前記第1および第2の医薬組成物が新生物疾患治療のための同時投与、別々の投与または連続投与に適しているキット。
【請求項69】
CYP3A4阻害剤を含む第2の医薬組成物の後で投与するのに適しているCYP3A4阻害剤を含む第3の医薬組成物をさらに含む、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記第1の医薬組成物が請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項68または請求項69に記載のキット。
【請求項71】
タキサンおよびCYP3A4阻害剤を含む第1の医薬組成物、ならびにCYP3A4阻害剤を含み、第1の医薬組成物の後で投与するのに適している第2の医薬組成物を含む、新生物疾患治療のためのキット。
【請求項72】
前記第1の医薬組成物が請求項18または請求項19に記載の組成物である、請求項71に記載のキット。
【請求項73】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項68から72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
CYP3A4阻害剤を前記タキサンと同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、タキサンおよび1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項75】
タキサンを含む前記組成物が、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物である、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
タキサンをCYP3A4阻害剤と同時に、別々に、または連続して投与された対象における新生物疾患の治療で使用するための、CYP3A4阻害剤および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項77】
対象に投与される前記タキサンが、請求項1から16および24のいずれか一項に記載の組成物の形態である、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記CYP3A4阻害剤がリトナビルである、請求項74から77のいずれか一項に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−536837(P2010−536837A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521478(P2010−521478)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002854
【国際公開番号】WO2009/027644
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510050188)スティヒティング ヘット ネーデルランド カンケル インスティテュート (3)
【出願人】(510050177)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002854
【国際公開番号】WO2009/027644
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510050188)スティヒティング ヘット ネーデルランド カンケル インスティテュート (3)
【出願人】(510050177)
【Fターム(参考)】
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