説明

組成物

【課題】油溶性有効成分を配合した皮膚に吸収がよく使用感も充分満足し、さらに刺激性の少ない皮膚に適用する組成物を提供する。
【解決手段】油溶性有効成分を含む油分と、ホスホコリン様基を含有する特定な共重合体と、脂肪酸とポリグリセリンのエステルと、多価アルコールを配合し、油溶性有効成分の配合量が、該共重合体の配合量を1とした場合0.5〜5.0の比率で配合し、高圧乳化機で処理した組成物であり、さらにリン脂質を配合した組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油溶性ビタミン、セラミド等の油溶性有効成分を少量の界面活性剤で微細粒子として皮膚に吸収がよく使用感も充分満足する皮膚に適用する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に吸収がよく使用感も充分満足する皮膚に適用する組成物を作成するために種々の検討がなされている。
また、肌の弱い人に対して、界面活性剤の量を減らしたり、界面活性剤以外の物質を用いた刺激性の少ない組成物が求められており、界面活性剤に代えて高分子化合物を用いて様々な研究が進められている。
その1つとして、式(1)の物質も利用は皮膚に適用する組成物にすでに利用されている。しかしながら、油溶性有効成分を多く配合しようとすると、式(1)の物質も多く配合しなければならず、官能面での制約があり、また、これを避けるために界面活性剤の量を増加させれば本来の目的を達することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は油溶性有効成分を配合した皮膚に吸収がよく使用感も充分満足し、さらに刺激性の少ない皮膚に適用する組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、
油溶性有効成分を含む油分と、式(1)の共重合体と、脂肪酸とポリグリセリンのエステルと、多価アルコールを配合し、油溶性有効成分の配合量が、式(1)の共重合体の配合量を1とした場合1.0〜3.0の比率で配合し、高圧乳化機で処理することによって得られた。
【0005】
まず応用したい油溶性有効成分を選択する。油溶性有効成分には特に制限はなく、例示すれば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、トコフェロール、カロチノイド、レチノール等及びその類似体と油溶性誘導体、セラミド、油溶性甘草、グリチルレチン酸、油溶性ヨクイニンエキス及び油溶性ローズマリーエキス、クロニジン、スコポラミン、プロプラノロール、エストラジオール、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、ウアバイン、アトロピン、ハロペリドール、イソソルビド、ニトログリセリン、イブプロフェン、ユビキノン、インドメタシン、ステロイド等が挙げられる。このほかにも油分を配合することはなんら問題はない。
油分を例示すれば、天然動植物油脂例えば、オリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、月見草油、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油等;蝋例えば、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等;高級アルコール例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等;高級脂肪酸例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸ィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等;合成エステル油例えば、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートイソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;シリコーン誘導体例えば、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0006】
これに式(1)の共重合体を配合する。このなかでも特に好ましいのはmが20〜200、nが30〜500、Rの炭素数が12〜20であり、油溶性有効成分を含む油分との配合比率は、共重合体の配合量を1とした場合0.5〜5.0の比率で油溶性有効成分を含む油分を配合する。さらに好ましい比率は1.0〜3.0である。勿論比率が0.5以下でもまったく問題はないが、油溶性有効成分を含む油分に対して式(1)の共重合体の配合量を少なくして、或いは界面活性剤の量を少なくして使用感や安全性を確保するという目的からずれる。
【0007】
【化2】

【0008】
脂肪酸とポリグリセリンのエステルは脂肪酸が炭素数12〜22の直鎖、分岐、飽和、不飽和の脂肪酸で、ポリグリセリンの平均重合度は2〜15のものを用いるが、好ましくはHLBが12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルが本発明の目的に合致する。
配合量は好ましくは組成物の0.001〜1.0%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
これ以外の界面活性剤も配合できるが、本発明の主旨に反しない程度に配合する。種々ある界面活性剤のなかで、リン脂質を少量すなわち、組成物に対して0.001〜0.5%程度配合すると脂肪酸とポリグリセリンのエステルとの組合せで、粒子径がより小さくなり、使用感も非常によくなる。
【0009】
これに多価アルコールを配合する。多価アルコールを例示すれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上のポリグリセリン類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコール類、グリセリン類のエチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)付加物、糖アルコール類のEO、PO付加物、ガラクトース、グルコース、フルクトース等の単糖類とそのEO、PO付加物、マルトース、ラクトース等の多糖類とそのEO、PO付加物などの多価アルコールが挙げられる。
このなかでもグリセリンや1,3−ブチレングリコールが好ましい。
【0010】
これ以外に水、水溶性有効成分等を配合する。
これを高圧乳化機で乳化する。本発明で使用する高圧ホモジナイザーとしては、マントンゴーリン(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデック社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製)、DeBEE(日本ビーイーイー社製)などが挙げられる。
これらの高圧乳化機で乳化するが、処理圧は処方や製剤の目的、機械の種類によって異なるが、55MPa(8000psi)以上で処理すれば目的を達する。
【0011】
以上にようにして得られた組成物を皮膚にそのまま適用してもよいが、よりひろい応用範囲を得るためには、これらの組成物を他の組成物に配合することによって、
【実施例】
【0012】
以下に実施例を記載する。なお、実施例、比較例の数字は重量部である。
実施例1

式(2)の共重合体 2.23
グリセリン 21.185
1,3−ブチレングリコール 21.185
モノステアリン酸ポリグリセリル 0.25
水添大豆リン脂質 0.05

α−オレフィンオリゴマー 0.05
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 0.05
酢酸トコフェロール 5.00

精製水 50.00
製法は1)A,B,Cをそれぞれ計量した。
2)A,Bを各々80℃まで加温溶解、均一混合した。
3)Bを撹拌しながらAに加えた。
4)これを高圧乳化装置(マイクロフルイディックス社製、型番M−110−E/H)処理圧55MPaで乳化した。
5)撹拌しながら冷却し、50℃でCを加えた後、35℃まで冷却した。
【0013】
【化3】

【0014】
実施例2 化粧水

実施例1 30.00

1,2ペンタンジオール 3.00
フェノキシエタノール 0.30
カルボキシビニルポリマー 0.15
キサンタンガム 0.05
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
精製水 63.98

10%L−アルギニン水溶液 2.00

加水分解コラーゲン 0.50
製法は、
1)A,B,C,Dをそれぞれ計量した。
2)Bを撹拌しながらAを加えた。
3)これに撹拌しながらCを加えた後、Dを加えた。
【0015】
実施例3 クリーム

スクワラン 10.00
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.00
パルミチン酸セチル 2.00
バチルアルコール 3.00
ステアリルアルコール 2.00
ステアリン酸 0.50
シリコン油 0.50

6.0%コロイド性含水ケイ酸塩水溶液 10.00
2.0%結晶性セルロース水溶液 10.00
グリセリン 8.00
1,3−ブチレングリコール 6.00
ポリエチレングリコール 2.00
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10
フェノキシエタノール 0.20
パラオキシ安息香酸メチル 0.20
精製水 35.00

実施例1 10.00

1%加水分解コンキオリン水溶液 0.50
製法は、
1)A,B,C,Dをそれぞれ計量した。
2)A,Bを各々80℃まで加温溶解、均一混合した。
3)Aを撹拌しながらBに加えた。
4)これを高圧乳化装置(マイクロフルイディックス社製、型番M−110−E/H)処理圧50MPaで乳化した。
5)撹拌しながら冷却し、50℃でCを加えた。
6)さらに40℃でDを加え、35℃まで冷却した。
【0016】
有効性試験1(経皮吸収性)
フランツ型セル(有効透過断面積1.77cm2)の真皮側(レシーバー側)に40%ポリエチレングリコール400PBS(−)溶液を満たし32℃に保った。HR−1系へアレスマウス(7週齢、雌)の皮膚を装着し、角層側(ドナー側)に試験品1mlを適用し、25時間後、皮膚表面に付着している試験品を除去し、皮膚を精製水で洗浄した後、メタノールを用いて常温で4時間抽出し、レシーバー液とともに酢酸トコフェロール濃度をHPLCで測定した。
なお、フランツ型セルはHanson Research社製Microette Plus(セルはManual Diffusion Cell 58-001-459)を用いた。
HPLCの条件は、カラムは野村化学社製、ODS−5(4.6mmΦ×150mmL)、カラム温度、50℃、移動相はメタノール、流速1.2ml/minで検出器はUV検出器(280nm)で行った。なお、試験品は実施例1と、実施例1から式(2)の共重合体を除き、他は同一に作成した、比較例1を各3回実験した。
結果は実施例1が4.34μg/cm2、比較例1が3.54μg/cm2であった。(なお、この数値は有効透過断面積の単位面積当り皮膚を透過した酢酸トコフェロールの量である)
このように比較例と比べるとはるかに実施例1の方が経皮吸収性が向上していることがわかる。
なお、参考に平均粒子径を測定したところ、実施例1が189nm、比較例が1250nmであった。
【0017】
有効性試験2(官能試験)
女性10名に顔面の左右の一方を実施例2を、もう一方を比較例2を使用してもらい、「肌とのなじみ」、「しっとり感」の2つの項目で、判定基準を以下のような基準でアンケートに回答したもらった。
実施例の方が非常によい 3
実施例の方がかなりよい 2
実施例の方がややよい 1
差がない 0
比較例の方がややよい −1
比較例の方がかなりよい −2
比較例の方が非常によい −3
その結果の平均は、
「肌とのなじみ」は1.8、「しっとり感」は2.3であった。
なお、比較例2は、実施例2の中の実施例1を比較例1に変更してに作成したもの。
【0018】
以上のように油溶性有効成分を配合した皮膚に吸収がよく使用感も充分満足し、さらに刺激性の少ない皮膚に適用する組成物を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性有効成分を含む油分と、式(1)の共重合体と、脂肪酸とポリグリセリンのエステルと、多価アルコールを配合し、油溶性有効成分を含む油分の配合量が、式(1)の共重合体の配合量を1とした場合0.5〜5.0の比率で配合し、高圧乳化機で処理した組成物
【化1】

【請求項2】
さらにリン脂質を配合した請求項1の組成物
【請求項3】
脂肪酸とポリグリセリンのエステルの配合量が組成物の0.001〜1.0%である請求項1乃至請求項2の組成物
【請求項4】
高圧乳化機で処理が55MPa(8000psi)以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の組成物
【請求項5】
油溶性有効成分が油溶性ビタミン、セラミド、コレステロールエステルである請求項1乃至請求項4の組成物
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の組成物を配合した組成物

【公開番号】特開2011−111397(P2011−111397A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267104(P2009−267104)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】