説明

組成物

【課題】ポリプロピレンとの接着性が優れた組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)と(B)と(C)とを含む組成物。(A):プロピレン由来の構造単位70〜99モル%及び1−ブテン由来の構造単位1〜30モル%を含有し、融解ピークが実質的に観測されない重合体(A−1)又は(A−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(A−2)。(B):エチレン由来の構造単位5〜20モル%及びプロピレン由来の構造単位80〜95モル%を含有し、融解ピークが観測される重合体(B−1)又は(B−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(B−2)。(C):プロピレン由来の構造単位60〜90モル%及び1−ブテン由来の構造単位10〜40モル%を含有し、融解ピークが観測される重合体(C−1)又は(C−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(C−2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体を含む組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンなどから形成された成形体は、表面の傷つきやすさを改善したり、例えば金属部材と接着したりするため、表面コーティングがなされることがある。かかる表面コーティング用の組成物として、特許文献1には、プロピレン・1−ブテン共重合体に無水マレイン酸をグラフト重合して得られる重合体を含む組成物が記載されている。
また、特許文献2には、エチレン・プロピレン共重合体に無水マレイン酸をグラフト重合して得られる重合体を含む組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1764号公報
【特許文献2】特開2009−287034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の重合体を含む組成物は、ポリプロピレンに対する接着性が必ずしも満足できるものではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 下記(A)と(B)と(C)とを含む組成物。
(A):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(A−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して70〜99モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して1〜30モル%であり、融解ピークが実質的に観測されない重合体(A−1)、又は
該重合体(A−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(A−2)
(B):エチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位を含有する重合体(B−1)であって、エチレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して5〜20モル%であり、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して80〜95モル%であり、融解ピークが観測される重合体(B−1)、又は
該重合体(B−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(B−2)
(C):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(C−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して60〜90モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して10〜40モル%であり、融解ピークが観測される重合体(C−1)、又は
該重合体(C−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(C−2)
【0006】
[2] 組成物100重量部に対して、(A)を10〜90重量部と(B)を1〜50重量部と(C)を1〜89重量部とを含む[1]記載の組成物。
【0007】
[3] 重合体(A−1)の極限粘度が0.1〜10dl/gである[1]又は[2]記載の組成物。
【0008】
[4] さらに有機溶剤を含む[1]〜[3]のいずれか記載の組成物。
【0009】
[5] さらに水と乳化剤を含む[1]〜[3]のいずれか記載の組成物。
【0010】
[6] 被着体及び[1]〜[5]のいずれか記載の組成物を含む接着層を有する積層体。
【0011】
[7] 被着体がプラスチック材料からなる被着体である[6]記載の積層体。
【0012】
[8] プラスチック材料がポリオレフィンである[7]記載の積層体。
【0013】
[9] [1]〜[5]のいずれか記載の組成物を被着体に塗工し、乾燥させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、ポリプロピレンに対する接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物は、下記(A)と(B)と(C)とを含む組成物である。
(A):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(A−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して70〜99モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して1〜30モル%であり、融解ピークが実質的に観測されない重合体(A−1)、又は
該重合体(A−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(A−2)
(B):エチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位を含有する重合体(B−1)であって、エチレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して5〜20モル%であり、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して80〜95モル%であり、融解ピークが観測される重合体(B−1)、又は
該重合体(B−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(B−2)
(C):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(C−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して60〜90モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して10〜40モル%であり、融解ピークが観測される重合体(C−1)、又は
該重合体(C−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(C−2)
【0016】
以下、重合体(A−1)及び重合体(A−2)を総称して「重合体(A)」といい、重合体(B−1)及び重合体(B−2)を総称して「重合体(B)」という場合がある。
【0017】
〈重合体(A−1)〉
重合体(A−1)は、プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有し、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して70〜99モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して1〜30モル%であり、融解ピークが実質的に観測されない重合体である。
【0018】
プロピレンに由来する構造単位の含有率は、重合体(A−1)の全構造単位に対して70〜99モル%であり、71〜99モル%であることが好ましく、80〜99モル%であることがより好ましく、90〜99モル%であることが更に好ましく、95〜99モル%であることが特に好ましい。
1−ブテンに由来する構造単位の含有率は、重合体(A−1)の全構造単位に対して1〜29モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましく、1〜10モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが特に好ましい。
【0019】
重合体(A−1)は、示差走査熱量測定(DSC)によって融解ピークが実質的に観測されない重合体である。融解ピークが実質的に観測されないとは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。より好ましくは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピーク及び結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されないことをいう。
【0020】
重合体(A−1)の極限粘度は、本発明の組成物の引張強度及び耐受傷性を高める観点から、好ましくは0.1dl/g以上であり、より好ましくは0.3dl/g以上であり、更に好ましくは0.5dl/g以上であり、特に好ましくは0.7dl/g以上である。また、極限粘度は、本発明の組成物の成形加工時における加工性を高める観点から、好ましくは10dl/g以下であり、より好ましくは7dl/g以下であり、更に好ましくは5dl/g以下であり、特に好ましくは4dl/g以下である。なお、極限粘度は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
【0021】
重合体(A−1)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の組成物のべたつきを少なくする観点から1〜4であり、より好ましくは1〜3である。なお、分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0022】
重合体(A−1)は、プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位とは異なるその他の構造単位を含有していてもよい。
その他の構造単位としては、例えば、エチレン、炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィン(ただし、プロピレン及び1−ブテンを除く。)環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物に由来する構造単位が挙げられ、具体的には例えば特開2008−63557号公報に記載された構造単位が挙げられる。
【0023】
重合体(A−1)は、公知のチーグラー・ナッタ型触媒又は公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて製造することができるが、本発明の組成物の耐熱性を高める観点から、公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて製造することが好ましく、かかるシングルサイト触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開平11−71420号公報等に記載の非メタロセン系の錯体触媒が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、好ましくはメタロセン触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体である。また、メタロセン触媒を用いた製造方法としては、例えば欧州特許公開第1211287号明細書の方法が挙げられる。
【0024】
〈重合体(A−2)〉
重合体(A−2)は、重合体(A−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体である。重合体(A−2)は、示差走査熱量測定(DSC)によって融解ピークが実質的に観測されない重合体である。
【0025】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量は、得られる重合体(A−2)100重量%に対して、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%である。
【0026】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量が0.1重量%以上であると、得られる重合体(A−2)の取り扱いが容易となり、また、10重量%以下であると、得られる組成物の接着力が向上する傾向にあり、好ましい。
【0027】
α,β−不飽和カルボン酸類としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等)、α,β−不飽和カルボン酸エステル(マレイン酸メチル、イタコン酸メチル、シトラコン酸メチル等)、α,β−不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等)が挙げられる。また、上記のα,β−不飽和カルボン酸類を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
α,β−不飽和カルボン酸類としては、α,β−不飽和カルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0029】
重合体(A−2)の製造方法としては、例えば、重合体(A−1)を溶融させたのち、α,β−不飽和カルボン酸類を添加してグラフト重合せしめる方法、重合体(A−1)をトルエン、キシレンなどの溶媒に溶解したのち、α,β−不飽和カルボン酸類を添加してグラフト重合せしめる方法などが挙げられる。
【0030】
重合体(A−1)を溶融させたのち、α,β−不飽和カルボン酸類を添加してグラフト重合せしめる方法は、押出機を用いて溶融混練することで、樹脂同士あるいは樹脂と固体もしくは液体の添加物を混合するための公知の各種方法が採用可能であることから好ましい。さらに好ましい例としては、各成分の全部もしくはいくつかを組み合わせて別々にヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等により混合して均一な混合物とした後、該混合物を溶融混練する等の方法を挙げることができる。溶融混練の手段としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機等の従来公知の混練手段が広く採用可能である。好ましいのは、連続生産が可能であり、生産性が向上するという観点から、一軸又は二軸押出機を用い、予め十分に予備混合した重合体(A−1)、α,β−不飽和カルボン酸類、ラジカル開始剤を押出機の供給口より供給して混練を行う方法である。
【0031】
また、トルエン、キシレンなどの溶媒に溶解したのち、α,β−不飽和カルボン酸類を添加してグラフト重合せしめる方法は、溶媒中に、重合体(A−1)、α,β−不飽和カルボン酸類、ラジカル開始剤を、適宜任意の順序で、もしくは同時に仕込み、重合体(A−1)を溶媒に溶解もしくは懸濁させ、通常加熱下に、α,β−不飽和カルボン酸類とグラフト重合させることにより、重合体(A−2)を製造することができる。
【0032】
溶媒の使用量は重合体(A−1)を溶解若しくは懸濁できる量であればよい。通常重合体(A−1)1部(質量部:以下特に断りのない限り同じ)に対して、溶媒0.5〜50部、好ましくは1〜30部程度、場合により1〜10部程度でもよい。
【0033】
ラジカル開始剤の添加量は、重合体(A−1)100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。添加量が0.1重量部以下であると重合体(A−1)へのグラフト量が減少して高粘度により取り扱いが困難になり、添加量が10重量部以下であると得られる変性物中における未反応のラジカル開始剤が低減され、接着力が向上する傾向があることから好ましい。
【0034】
ラジカル開始剤は、通常、有機過酸化物であり、好ましくは半減期が1時間となる分解温度が110〜160℃である有機過酸化物である。分解温度が110℃以上であるとグラフト量が向上する傾向があることから好ましく、分解温度が160℃以下であると重合体(A−1)の分解が低減される傾向があることから好ましい。また、これらの有機過酸化物は分解してラジカルを発生した後、重合体(A−1)からプロトンを引き抜く作用があることが好ましい。
【0035】
半減期が1時間となる分解温度が110〜160℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカボネート化合物等があげられる。具体的には、ジセチル パーオキシジカルボネート、ジ−3−メトキシブチル パーオキシジカルボネート,ジ−2−エチルヘキシル パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピル パーオキシジカルボネート、t−ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカルボネート、1,1,3,3−テトラメチル ブチル ネオデカノエート,α―クミル パーオキシ ネオデカノエート,t−ブチル パーオキシ ネオデカノエート、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン,t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート,t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート,t−ブチルパーオキシラウレート,2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン,t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン,t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等があげられる。分解温度が110〜160℃であると、グラフト量が向上するため好ましい。
【0036】
これらの有機過酸化物の中で好ましいのはジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物、アルキルパーエステル化合物である。有機過酸化物の添加量は、重合体(A−1)100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。
【0037】
かくして得られた重合体(A−2)に含まれるα,β−不飽和カルボン酸類に由来する構造単位は、酸無水物基(−CO−O−CO−)が閉環したものであっても、保持されたものであってもよく、閉環したものと保持されたものがいずれも含有されていてもよい。
【0038】
重合体(A−2)の重量平均分子量は、30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000である。30,000以上であれば、適当な接着力がを確保することができ、200,000以下であれば、高粘度になり過ぎず、取り扱いが容易となる。
【0039】
重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR)の値を、JIS K 7210に準拠し、メルトインデクサ(L217−E14011、テクノ・セブン社製)を用いて、130℃、2.16kgfの条件下で測定すれば、通常0.1〜100、好ましくは0.5〜80、より好ましくは1〜50である。
【0040】
〈重合体(B−1)〉
重合体(B−1)は、エチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位を含有し、エチレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して5〜20モル%であり、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して80〜95モル%であり、融解ピークが観測される重合体である。
【0041】
エチレンに由来する構造単位の含有率は、重合体(B−1)の全構造単位に対して5〜20モル%であり、5〜19モル%であることが好ましく、10〜19モル%であることがより好ましく、11〜18モル%であることが更に好ましく、11〜17モル%であることが特に好ましい。
プロピレンに由来する構造単位の含有率は、重合体(B−1)の全構造単位に対して81〜95モル%であることが好ましく、81〜90モル%であることがより好ましく、82〜89モル%であることが更に好ましく、84〜89モル%であることが特に好ましい。
【0042】
重合体(B−1)は、示差走査熱量測定(DSC)によって融解ピークが観測される重合体である。融解ピークが観測されるとは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されることをいう。より好ましくは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピーク又は結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークが観測されることをいう。
【0043】
重合体(B−1)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の組成物のべたつきを少なくする観点から1〜4であり、より好ましくは1〜3である。なお、分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0044】
重合体(B−1)は、エチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位とは異なるその他の構造単位を含有していてもよい。
その他の構造単位としては、例えば、炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィン(ただし、プロピレンを除く。)環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物に由来する構造単位が挙げられ、素数3〜20の直鎖状α−オレフィン(ただし、プロピレンを除く。)環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物としては、重合体(A−1)において挙げたものと同じものが挙げられる。
【0045】
重合体(B−1)は、重合体(A−1)において挙げたものと同じ触媒を用いて製造することができる。
【0046】
〈重合体(B−2)〉
重合体(B−2)は、重合体(B−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体である。重合体(B−2)は、示差走査熱量測定(DSC)によって融解ピークが観測される重合体である。
【0047】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量は、得られる重合体(B−2)100重量%に対して、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%である。
【0048】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量が0.1重量%以上であると、得られる重合体(B−2)の取り扱いが容易となり、また、10重量%以下であると、得られる組成物の接着力が向上する傾向にあり、好ましい。
【0049】
α,β−不飽和カルボン酸類としては、重合体(A−1)において挙げたものと同じものが挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0050】
重合体(B−2)の製造方法としては、重合体(A−2)の製造方法において、重合体(A−1)を重合体(B−1)に置き換えた製造方法が挙げられる。
【0051】
重合体(B−2)の重量平均分子量は、10,000〜150,000、好ましくは15,000〜100,000である。10,000以上であれば、接着力を確保することができ、150,000以下であれば、高粘度になり過ぎず、取り扱いが容易になる。
【0052】
〈重合体(C−1)〉
重合体(C−1)は、プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有し、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して60〜90モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して10〜40モル%であり、融解ピークが観測される重合体である。
【0053】
重合体(C−1)は、プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位とは異なるその他の構造単位を含有していてもよい。
その他の構造単位としては、例えば、炭素数3〜20の直鎖状α−オレフィン(ただし、プロピレン及び1−ブテンを除く。)環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物に由来する構造単位が挙げられ、素数3〜20の直鎖状α−オレフィン(ただし、プロピレンを除く。)環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物としては、重合体(A−1)において挙げたものと同じものが挙げられる。
【0054】
〈重合体(C−2)〉
重合体(C−2)は、重合体(C−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体である。重合体(C−2)は、融解ピークが観測される重合体である。
【0055】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量は、得られる重合体(C−2)100重量%に対して、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%である。
【0056】
α,β−不飽和カルボン酸類のグラフト重合量が0.1重量%以上であると、得られる重合体(C−2)の取り扱いが容易となり、また、10重量%以下であると、得られる組成物の接着力が向上する傾向にあり、好ましい。
【0057】
α,β−不飽和カルボン酸類としては、重合体(A−1)において挙げたものと同じものが挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0058】
重合体(C−2)の製造方法としては、重合体(A−2)の製造方法において、重合体(A−1)を重合体(C−1)に置き換えた製造方法が挙げられる。
【0059】
重合体(A)と重合体(B)と重合体(C)とは、任意の割合で混合される。組成物100重量部に対して、重合体(A)を10〜90重量部と重合体(B)を1〜50重量部と重合体(C)を1〜89重量部とを含むことが好ましく、重合体(A)を20〜80重量部と重合体(B)を3〜40重量部と重合体(C)を10〜77重量部とを含むことがより好ましく、重合体(A)を25〜70重量部と重合体(B)を5〜35重量部と重合体(C)を15〜70重量部とを含むことがさらに好ましい。
【0060】
本発明の組成物の第1の製造方法は、重合体(A−1)、重合体(B−1)及び重合体(C−1)を混合して、α,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合する方法である。
本発明の組成物の第2の製造方法は、重合体(A−1)及び重合体(B−1)を混合して、α,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合してから、さらに重合体(C−1)又は重合体(C−2)を混合する方法である。
本発明の組成物の第3の製造方法は、重合体(A−1)及び重合体(C−1)を混合して、α,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合してから、さらに重合体(B−1)又は重合体(B−2)を混合する方法である。
本発明の組成物の第4の製造方法は、重合体(B−1)及び重合体(C−1)を混合して、α,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合してから、さらに重合体(A−1)又は重合体(A−2)を混合する方法である。
本発明の組成物の第5の製造方法は、重合体(A−1)又は重合体(A−2)、重合体(B−1)又は重合体(B−2)、及び、重合体(C−1)又は重合体(C−2)を混合する方法である。
グラフト重合は、ラジカル開始剤の存在下で行なうことが好ましい。
【0061】
本発明の組成物は、例えば、接着剤、粘着剤、接着剤の改質剤、ヒートシール剤、塗料、塗料用プライマー、フィルム、シート、構造材料、建築材料、自動車部品、電気・電子製品、包装材料などに使用し得る。中でも、その優れた接着性から、接着剤、粘着剤、接着剤の改質剤、ヒートシール剤、塗料、塗料用プライマーなどに好適に用いられる。
【0062】
本発明の組成物は、接着性を損なわない範囲でフェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤;揺変剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、耐候剤、顔料、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料などの添加剤;酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料;ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤等を含有していてもよい。
【0063】
さらに本発明の組成物は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;メタノ−ル、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;等の有機溶剤を含有していてもよい。本発明の組成物における溶剤の含有量は、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)の合計を1重量部として、通常、1〜30重量部、好ましくは1.5〜20重量部である。本発明の組成物が溶媒を含有する場合には、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)並びに、安定剤、添加剤、顔料及び充填剤等が、溶媒に溶解していても分散していてもよい。
【0064】
また、本発明の組成物は、例えば、水と乳化剤を含有していてもよい。本発明の組成物における水と乳化剤の含有量は、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)との合計を100重量部として、通常、乳化剤は1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部である。乳化剤の含有量が1重量部以上であると、分散状態が良好であり、30重量部以下であると得られた水分散体の接着力が向上することから好ましい。水は60〜900重量部、好ましくは100〜900重量部である。60部以上であると得られた組成物の安定性が良好であり、900重量部以下であれば、ポリプロピレン等の被着体へのハジキも少なく好ましい。
【0065】
乳化剤の種類としては、特に限定されることはなく、ノニオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性系乳化剤が使用できる。
【0066】
乳化方法としては、特に限定されることはなく、例えば、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)、水及び乳化剤を溶融混練する方法;例えば、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)を加熱する加熱工程、加熱工程で得られた加熱された重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)に乳化剤を混合する混合工程とを有する方法;例えば、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)、乳化剤を加熱及び混練する工程、前記工程で得られた混練物を水に分散させる工程を含む方法;例えば、重合体(A)、重合体(B)及び重合体(C)をトルエンなどの有機溶媒に溶解させる溶解工程、前記溶解工程で得られた溶解物を乳化剤に混合する混合工程、前記混合工程で得られた混合物から前記有機溶媒を除去する除去工程を含む方法などが挙げられる。
【0067】
本発明の組成物が被着される被着体としては、例えば、木材、合板、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、ファイバーボード等の木質系材料;綿布、麻布、レーヨン等のセルロース系材料;ポリエチレン(エチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン、以下同じ)、ポリプロピレン(プロピレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン、以下同じ)、ポリスチレン(スチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン、以下同じ)等のポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、(メタ)アクリル樹脂ポリエステル、ポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、発泡ウレタン等のプラスチック材料;ガラス、陶磁器等のセラミック材料;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属材料;が挙げられる。
【0068】
かかる被着体は、複数の材料からなる複合材料であってもよい。また、タルク、シリカ、活性炭などの無機充填剤、炭素繊維等とプラスチック材料との混練成形品であってもよい。
【0069】
ここで、ポリウレタンとは、ウレタン結合によって架橋された高分子であり、通常、アルコール(−OH)とイソシアネート(−NCO)の反応によって得られる。また発泡ウレタンとは、イソシアネートと、架橋剤として用いられる水との反応によって生じる二酸化炭素かフレオンのように揮発性溶剤によって発泡されるポリウレタンである。自動車の内装用には、半硬質のポリウレタンが用いられ、塗料には硬質のポリウレタンが用いられる。
【0070】
被着体の材料としては、木質系材料、セルロース系材料、プラスチック材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましく、中でも、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、ガラス、アルミニウム、ポリウレタンが好ましく、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ガラス、アルミニウム、ポリウレタンがより好ましい。
【0071】
本発明の積層体は、上記の被着体と本発明の組成物に由来する層とを有する。かかる積層体の製造方法としては、例えば、シート状に形成された本発明の組成物及び被着体を共押出し成形により積層する方法;第1の被着体に、シート状に形成された本発明の組成物と、第2の被着体とを順次積層したのち熱プレスする方法;本発明の組成物を被着体に塗工し、乾燥させる工程を含む方法が挙げられる。
本発明の組成物を被着体に塗工し、乾燥させる工程を含む方法とは、被着体に本発明の組成物を塗工し、該被着体と該組成物を含む層とを有する塗工品を得る第1工程と、第1工程で得られた塗工品を乾燥させて、前記被着体と該組成物を含む層とを有する積層体を得る第2工程とを含む製造方法である。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中の部及び%は、特に断らないかぎり重量基準を意味する。
【0073】
以下の実施例において、物性測定は以下の方法で行った。
(1)重合体の構造単位含有率
(1−1)重合体の構造単位含有率
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、下記条件にて測定した13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。
13C−NMR(Hデカップリング)
13C周波数:150.9MHz
パルス幅:6.00μ秒
パルス繰り返し時間:4.0秒
積算回数:256回
測定温度:137℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン−d4(濃度 約20%)
(A−1−1)および(C−1−1)
プロピレンに由来する構造単位のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテンに由来する構造単位のメチル炭素のスペクトル強度との比からプロピレンに由来する構造単位と1−ブテンに由来する構造単位の組成比を算出した。
(B−1−1)
Kakugoらの報告(Macromolecules、1982年、15号、1150ページ〜1152ページ)に記載の方法に準拠して、重合体成分中のエチレン含量を求めた。
【0074】
(2)極限粘度[η]
135℃において、ウベローデ粘度計を用いて行った。テトラリン単位体積あたりの重合体の濃度cが、0.6、1.0、1.5mg/mlである重合体のテトラリン溶液を調整し、135℃における極限粘度を測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度での比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度[η]として求めた。
【0075】
(3)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定を行った。
装置:東ソー社製 HLC−8121GPC/HT
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−H(S)HT 4本
温度:145℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:300μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0076】
(4)結晶融解ピーク及び結晶化ピーク
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い以下の条件で測定した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。この(ii)で観察されるピークが結晶化ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の結晶化ピークの有無を確認した。
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。この(iii)で観察されるピークが結晶の融解ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の融解ピークの有無を確認した。
【0077】
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS−K−7210に従い、重合体(A−2)については、荷重2.16kgf、温度130℃の条件で測定を行った。
【0078】
(6)グラフト量
無水マレイン酸のグラフト量は、サンプル1.0gをキシレン20mlに溶解させ、サンプルの溶液をメタノール300mlに攪拌しながら滴下してサンプルを再沈殿させて回収したのち、回収したサンプルを真空乾燥した後(80℃、8時間)、熱プレスにより厚さ100μmのフィルムを作製し、得られたフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1付近の吸収より無水マレイン酸グラフト量を定量した。
【0079】
<重合体(A−1−1)の製造例>
拌羽根を備えた100リットルのSUS製重合器を用いて以下の通り連続的にプロピレン及び1−ブテンの共重合を行った。重合器下部からヘキサンを46.3リットル/時間、プロピレンを12.96Kg/時間、1-ブテンを1.05Kg/時間の速度で連続的に供給した。一方、重合器上部から重合器中の重合液が100リットルとなるように連続的に重合液を抜き出す。触媒としてジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びトリイソブチルアルミニウムをそれぞれ0.0181g/時間、0.1670g/時間及び2.4713g/時間の速度で重合器下部から重合器中に連続的に供給した。また、分子量調節を水素により行った。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることで57℃に制御して行った。重合器から抜き出した重合液に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させ、脱モノマー及び水洗浄後、大量の水中でスチームにより溶媒を除去して共重合体を取り出し、80℃で昼夜減圧乾燥した。以上の操作により、プロピレン含有量が96mol%のプロピレン−1−ブテン共重合が3.57Kg/時間の速度で得られた。
得られた重合体の極限粘度[η]は2.0dl/gで、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピーク及び結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されなかった。この重合体を重合体(A−1−1)とした。
【0080】
<重合体(A−2−1)の製造例>
容量1lのセパラブルフラスコ反応器に、攪袢器、温度計、滴下ロート、還流冷却管をつけて窒素で置換する。ここに溶媒としてキシレン600部、重合体(A−1−1)100部、無水マレイン酸15部を入れ140℃に加熱、撹拌し、系内を溶解させた後、ジーtertブチルパーオキサイド2部を添加し、5時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。なお、加熱はオイルバスを用いた。反応終了後、内容物を室温まで下げ、アセトン1000部に投じ、沈殿した白色固体を濾取した。該固体をアセトンで洗浄後、減圧乾燥した結果、無水マレイン酸をグラフト重合してなる重合体を得た。得られた重合体のMwは112285、Mnは51240、分子量分布(Mw/Mn)は2.2、MFRは4.2g/10min、マレイン酸グラフト量は0.50%であった。この重合体を重合体(A−2−1)とした。
【0081】
<重合体(B−2−1)の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて、重合体(B−1−1)[エチレン・プロピレン共重合体(クラリアントジャパン株式会社製LICOCENE PP 2602、エチレン:プロピレン=15mol%:85mol%)]を用いる以外は、重合体(A−2−1)の製造例と同様にして、無水マレイン酸をグラフト重合してなる重合体を得た。得られた重合体(B)のMwは55115、Mnは25386、分子量分布(Mw/Mn)は2.2、マレイン酸グラフト量は0.84%であった。この重合体を重合体(B−2−1)とした。
また重合体(B−1−1)は、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピーク及び結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークが観測された。

<重合体(C−2−1)の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて、重合体(C−1−1)[プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン:1−ブテン=74mol%:26mol%、Mw=356135、Mn=174245、Mw/Mn=2.0、極限粘度[η]=1.5dl/g、融点(Tm)=73℃、ガラス転移点(Tg)=−24℃、結晶融解熱量:1J/g以上の結晶融解ピーク]を用いる以外は、重合体(A−2−1)の製造例と同様にして、無水マレイン酸をグラフト重合してなる重合体を得た。得られた重合体(C)のMwは225491、Mnは121490、分子量分布(Mw/Mn)は1.9、マレイン酸グラフト量は0.47%であった。この重合体を重合体(C−2−1)とした。
【0082】
<重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)の濃度が20重量%となるように、重合体(A−1−1)とメチルシクロヘキサンとを混合し、得られた混合物に、該メチルシクロヘキサン100重量部に対して25重量部の酢酸エチルを混合し、重合体(A−1−1)を含む溶液を得た。
【0083】
<重合体(A−2−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて重合体(A−2−1)を用いる以外は重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例と同様にして、重合体(A−2−1)を含む溶液を得た。
【0084】
<重合体(B−1−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて重合体(B−1−1)を用いる以外は重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例と同様にして、重合体(B−1−1)を含む溶液を得た。
【0085】
<重合体(B−2−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて重合体(B−2−1)を用いる以外は重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例と同様にして、重合体(B−2−1)を含む溶液を得た。
【0086】
<重合体(C−1−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて重合体(C−1−1)を用いる以外は重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例と同様にして、重合体(C−1−1)を含む溶液を得た。
【0087】
<重合体(C−2−1)を含む溶液の製造例>
重合体(A−1−1)に替えて重合体(C−2−1)を用いる以外は重合体(A−1−1)を含む溶液の製造例と同様にして、重合体(C−2−1)を含む溶液を得た。
【0088】
<水分散体の製造例1>
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた容器2lのセパラブルフラスコ反応容器に、溶媒としてトルエン200部、重合体(A−2−1)40部、重合体(B−2−1)50部、重合体(C−2−1)を入れ、80℃にて攪拌、溶解した。次いで、乳化剤液として、ラテムルE−1000A(花王株式会社製)17部、ノイゲンEA−177(第一工業製薬株式会社製)5部、イソプロパノール5部の混合液を10分間かけて滴下した。さらに5分間攪拌後、ジメチルエタノールアミン5部を投入し、さらに5分間攪拌した。
次いで攪拌装置をTKロボミクス(株式会社PRIMIX製)に変更し、本反応マスをディスパー翼にて攪拌しながら、イソプロパノール100部、イオン交換水100部の混合液を30分間かけて滴下した。さらにイオン交換水300部を滴下し、得られた乳白色の分散体を2Lナスフラスコに投入し、エバポレーターにて減圧留去を行い、200メッシュナイロン網にて濾過し、重合体(A−2−1)、重合体(B−2−1)、重合体(C−2−1)及び乳化剤とを含む水性分散体を得る。
【0089】
<水分散体の製造例2>
乳化剤液としてジェファーミンM1000(三井ファインケミカル株式会社製)10部、イソプロパノール5部の混合液を用いる以外は、<水分散体の製造例1>と同様に実施する。
【0090】
<実施例1>
重合体(A−2−1)を含む溶液と、重合体(B−2−1)を含む溶液と、重合体(C−2−1)を含む溶液を、重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)との重合比が37.5:25:37.5となるよう混合し、得られた混合物をスリーワンモーターにて5分攪拌し、重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)とを含む組成物を得た。該組成物は目視で相分離を起こしておらず均一な溶液であった。
【0091】
<実施例2>
重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)との重量比を60:15:25にした以外は実施例1と同様にして、重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)を含む組成物を得た。該組成物は目視で相分離しておらず均一な溶液であった。
【0092】
<実施例3>
重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)の重量比を44.5:11:44.5にした以外は実施例1と同様にして、重合体(A−2−1)と重合体(B−2−1)と重合体(C−2−1)とを含む組成物を得た。該組成物は目視で相分離しておらず均一な溶液であった。
【0093】
<比較例1>
重合体(A−2−1)を含む溶液を組成物とした。
【0094】
<比較例2>
重合体(B−2−1)を含む溶液を組成物とした。
【0095】
<比較例3>
重合体(C−2−1)を含む溶液を組成物とした。
【0096】
<試験例1>
実施例及び比較例でそれぞれ得られた組成物を、ポリプロピレン板(肉厚3mm)からなる被着体に乾燥後の膜厚が10μmになるようにアプリケーターにて塗工した。熱風乾燥機で50℃、5分間乾燥させて、接着層を作製し、被着体と接着層を有する積層体を得た。乾燥させた後、積層体の接着層の上に2液ウレタン塗料を膜厚が100μmになるようスプレーにて塗布した。塗布後、室温にて10分以上養生し、所定温度で30分間熱処理を行い、サンプルを得た。熱処理後3日以上養生した後に、1cm間隔で塗膜を切り出し、引張り試験機(島津製作所社製 オートグラフ)を用い、剥離速度50mm/分、剥離角度180度で塗膜の、50℃での剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例の組成物は、剥離強度が良好であり、ポリプロピレンに対する接着性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の組成物は、ポリプロピレンに対する接着性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と(B)と(C)とを含む組成物。
(A):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(A−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して70〜99モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(A−1)の全構造単位に対して1〜30モル%であり、融解ピークが実質的に観測されない重合体(A−1)、又は
該重合体(A−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(A−2)
(B):エチレンに由来する構造単位及びプロピレンに由来する構造単位を含有する重合体(B−1)であって、エチレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して5〜20モル%であり、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(B−1)の全構造単位に対して80〜95モル%であり、融解ピークが観測される重合体(B−1)、又は
該重合体(B−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(B−2)
(C):プロピレンに由来する構造単位及び1−ブテンに由来する構造単位を含有する重合体(C−1)であって、プロピレンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して60〜90モル%であり、1−ブテンに由来する構造単位の含有率が重合体(C−1)の全構造単位に対して10〜40モル%であり、融解ピークが観測される重合体(C−1)、又は
該重合体(C−1)にα,β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合して得られる重合体(C−2)
【請求項2】
組成物100重量部に対して、(A)を10〜90重量部と(B)を1〜50重量部と(C)を1〜89重量部とを含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
重合体(A−1)の極限粘度が0.1〜10dl/gである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
さらに有機溶剤を含む請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに水と乳化剤を含む1〜3のいずれか記載の組成物
【請求項6】
被着体及び請求項1〜5のいずれか記載の組成物を含む接着層を有する積層体。
【請求項7】
被着体がプラスチック材料からなる被着体である請求項6記載の積層体。
【請求項8】
プラスチック材料がポリオレフィンである請求項7記載の積層体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか記載の組成物を被着体に塗工し、乾燥させる工程を含む積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−144692(P2012−144692A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128919(P2011−128919)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】