説明

組成物

【課題】様々な成形体の製造に好適に用いることのできる組成物(樹脂組成物)を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、表面付近が下記式(1)および/または下記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成されている充填材と、式(1)、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分とを含有することを特徴とする。




(式(1)、式(2)中、Rは、水素原子、アセチル基を表し、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な成形体の製造には、樹脂材料を含む組成物(樹脂組成物)が用いられている。このような組成物は、通常、機械的強度の向上等の目的で、無機材料で構成されたフィラー等の添加剤を含んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の組成物では、製造される成形体の寸法安定性に劣る、成形体の軽量化が不十分である、成形体の透明性を十分に優れたものとするのが困難である、成形体を廃棄した際の環境負荷が大きい等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−323634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、様々な成形体の製造に好適に用いることのできる組成物(樹脂組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(6)に記載の本発明により達成される。
(1) 表面付近が下記式(1)および/または下記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成されている充填材と、
式(1)中のR、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分とを含有することを特徴とする組成物。
【化1】

【化2】

(式(1)、式(2)中、Rは、水素原子、アセチル基を表し、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0007】
(2) 前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分と、前記樹脂成分の構成モノマーとは、同種のモノマーである上記(1)に記載の組成物。
【0008】
(3) 前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、アクリル系モノマーであり、
前記樹脂成分は、アクリル系樹脂である上記(1)または(2)に記載の組成物。
【0009】
(4) 前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、芳香族系モノマーである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の組成物。
【0010】
(5) 前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、エポキシ基を含有するモノマーである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の組成物。
【0011】
(6) 前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、フェノール性水酸基を含有するモノマーである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、様々な成形体の製造に好適に用いることのできる組成物(樹脂組成物)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
<組成物(樹脂組成物)>
本発明の組成物(樹脂組成物)は、表面付近が下記式(1)および/または下記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成されている充填材と、式(1)中のR、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分とを含有するものである。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

(式(1)、式(2)中、Rは、水素原子、アセチル基を表し、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0016】
上記のようなセルロースブロック共重合体で構成されている充填材を含むことにより、本発明の組成物を用いて製造される成形体の強度を優れたものとすることができる。
【0017】
また、前記充填材を含むことにより、本発明の組成物を用いて製造される成形体の熱膨張係数を小さいものとすることができるため、成形体の形状の安定性、成形体の寸法精度を優れたものとすることができる。
【0018】
また、前記充填材は、従来用いられてきたフィラーに比べて比重が小さいため、成形体の軽量化を図るうえで有利である。
【0019】
また、前記充填材は、後に詳述するように、セルロースを原料として製造することができるものであり、廃棄する場合においても、環境への負荷が小さい。
【0020】
前記充填材(表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されている充填材)は、前記樹脂成分との親和性に優れており、本発明の組成物を用いて製造される成形体を、光の透過性、透明性の高いものとすることができる。
【0021】
また、アセチル化したセルロースブロック共重合体で構成される充填材を含むことにより、本発明の組成物を用いて製造される成形体の吸水による寸法変化を小さいものとすることができため、成形体の形状の安定性、成形体の寸法精度を優れたものとすることができる。また、熱による着色を抑えることができるため、光の透過性、透明性をより高いものとすることができる。
【0022】
また、前記充填材(表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されている充填材)は、前記樹脂成分との親和性に優れているため、組成物中において、前記充填材は、均一に分散することができる。その結果、本発明の組成物を用いて製造される成形体において、各部位での不本意な組成のばらつきの発生を効果的に防止することができ、安定した特性を発揮することができる。
【0023】
なお、本発明において、「相溶性を有する」とは、成分間の親和性が高いことであり、高い親和性を有することで、各成分同士が溶解もしくは接着しやすくなり、均一に分散する。従って、本発明において、前記樹脂成分と前記充填材とが均一に分散した組成物を得るには、成分間で相溶性を有する必要がある。成分間の相溶性を表わす目安の一つとして、溶解度パラメータがあり、成分間の溶解度パラメータを近づけることで、相溶性を付与することができる。各成分の溶解度パラメータを計算により求める方法として、例えば、Fedorの方法(Fedor法)等が知られている。この方法では成分の溶解度パラメータδは、δ=(ΣE/ΣV)1/2によって求めることが出来る。E、Vは、各成分の繰り返し単位に関して、各成分の各構成成分毎の決められた凝集エネルギー密度と、モル分子容であり、例えば、株式会社情報機構が発行している「SP値基礎・応用と計算方法」山本秀樹著の67頁に記載されている値を前記式にあてはめることで溶解度パラメータ求めることが出来る。本発明においては、前記樹脂成分と前記充填材とを均一に分散させるためには、前記式で求めた成分間の溶解度パラメータの差の絶対値が5.0[J1/2/cm3/2]以下であることが好ましく、3.5[J1/2/cm3/2]以下であることがより好ましい。
【0024】
(充填材)
まず、本発明の組成物を構成する充填材について説明する。
【0025】
上記のように、本発明の組成物を構成する充填材は、少なくとも表面付近が上記式(1)および/または上記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成されたものである。
【0026】
このような充填材は、後に詳述するように再生可能な天然資源であるセルロースを用いて好適に製造することができる。
【0027】
式(1)、式(2)中、Rは、水素原子またはアセチル基を表すが、Rが水素原子である場合、特に、セルロースブロック共重合体の親水性をより高いものとすることができ、防曇や印刷適性が高くなるという効果が得られる。また、原料が天然資源であることから生分解性が高くなる。また、Rがアセチル基である場合、特に、吸水性を抑えることができ、形状の安定性がさらに向上する。また、熱による着色を低減できることから、透明性をより高いものとすることができる。
【0028】
式(1)、式(2)中、Rは、水素原子またはアセチル基を表すが、同一の式中において、水素原子とアセチル基とが混在していてもよい。
【0029】
上記のように、式(1)、式(2)中、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表す。
【0030】
前記親水性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(オキシエチレンメタクリレート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、親水性モノマーは、これらに限られるものではなく、その他の親水性を有するラジカル重合性モノマーを用いることもできる。
【0031】
また、前記疎水性モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマー(メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等)、オレフィン系モノマー(エチレン、ブタジエン、スチレン等)等が挙げられる。なお、疎水性モノマーは、これらに限られるものではなく、その他の疎水性を有するラジカル重合性モノマーを用いることもできる。
【0032】
また、前記両親媒性モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。なお、両親媒性モノマーは、これらに限られるものではなく、その他の両親媒性を有するラジカル重合性モノマーを用いることもできる。
【0033】
後に詳述する樹脂成分が構成モノマーとしてビニル基を有するものを含むものである場合、前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、ビニル基を有するものであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材と構成モノマーとしてビニル基を有する樹脂成分との相溶性がさらに向上し、前記充填材が構成モノマーとしてビニル基を有する樹脂中により均一に分散することで、形状の安定性や透明性などがさらに向上する。
【0034】
後に詳述する樹脂成分がアクリル系樹脂である場合、前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、アクリル系モノマーであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材とアクリル系樹脂成分との相溶性がさらに向上し、前記充填材がアクリル系樹脂中により均一に分散することで、形状の安定性や透明性などがさらに向上する。なお、アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、これら酸成分(アクリル酸、メタクリル酸)のエステルに加え、これら酸成分(アクリル酸、メタクリル酸)の塩が挙げられる。
【0035】
特に、後に詳述する樹脂成分がポリメチルメタクリレートである場合、前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、メチルメタクリレートであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材とポリメチルメタクリレートとの相溶性がさらに向上し、前記充填材がポリメチルメタクリレート中により均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。
【0036】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、芳香族系モノマーであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材と芳香環を含有する樹脂成分との相溶性がさらに向上し、前記充填材が芳香環を含有する樹脂中により均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。なお、本発明において、芳香族系モノマーとは、化学構造中に少なくとも1つの芳香環構造を有する重合可能な成分をいう。芳香族系モノマーの具体例としては、スチレン等が挙げられる。
【0037】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、ラジカル重合が可能な官能基に加え、他の反応性のある官能基を含有したモノマーであるのが好ましい。これにより、本発明に係る組成物を用いて製造される成形体の機械的強度、形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0038】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、エポキシ基を含有するモノマーであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材とエポキシ基を含有する樹脂成分との相溶性が向上し、前記充填材がエポキシ基を含有する樹脂中に均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。また、エポキシ基を含有することで熱硬化時のエポキシ基に由来する架橋の密度が高くなり、本発明の組成物を用いて製造される成形体の機械強度がさらに向上する。
【0039】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、フェノール性水酸基を含有するモノマーであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材とフェノール性水酸基を含有する樹脂成分との相溶性がさらに向上し、前記充填材がフェノール性水酸基を含有する樹脂中により均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。また、フェノール性水酸基を含有することで熱硬化時のフェノール性水酸基に由来する架橋の密度が高くなり、本発明の組成物を用いて製造される成形体の機械強度が向上する。
【0040】
本発明の組成物を構成する充填材は、粒子状、繊維状、シート状、不定形状等、いかなる形状を有するものであってもよい。
【0041】
前記充填材(表面付近がセルロースブロック共重合体で構成された充填材)が粒子状をなすものである場合、当該充填材の平均粒径は、特に限定されないが、10nm以上20μm以下であることが好ましく、10nm以上10μm以下であることがより好ましい。前記充填材の平均粒径が、前記範囲内の値であると、樹脂中に均一に分散しやすくなり、形状の安定性や透明性などがさらに向上する。また、組成物中における充填剤の分散安定性を特に優れたものとすることができる。特に、透明性が求められる光学部材用途の充填材として用いる場合、当該充填材を抽出法等により粗粒子を除去し、微粒子を選択的に用いてもよい。微粒子の抽出は、例えば、公知のソックスレー抽出法により濾液を採取した後、この濾液中の分散媒を蒸発させて残留物を得る方法により行うことができる。この場合、微粒子(充填材)の平均粒径は、特に限定されないが、10nm以上500nm以下であるのが好ましく、10nm以上200nm以下であるのがより好ましい。前記充填材の平均粒径が、前記範囲内の値であると、特に透明性を大きく向上させることができる。また、組成物中における充填材の含有率が比較的低いものであっても、上述したような効果を十分に発揮させることができる。なお、本明細書中において、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径を表す。
【0042】
本発明の組成物(樹脂組成物)中における前記充填材の含有率は、0.1wt%以上99.9wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以上70wt%以下であるのがより好ましい。前記充填材の含有率が前記範囲内の値であると、組成物を用いた成形体の成形性を特に優れたものとしつつ、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0043】
(樹脂成分)
次に、本発明の組成物を構成する樹脂成分について説明する。
【0044】
前述した充填材を構成するセルロースブロック共重合体を表す化学式中での前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分と、樹脂成分の構成モノマーとは、同種のモノマーであるのが好ましい。これにより、セルロースブロック共重合体で構成される充填材と樹脂成分との相溶性がさらに向上し、前記充填材が樹脂中により均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。なお、本発明において、「同種のモノマー」とは、互いに、同一の主骨格(主鎖)を有するモノマーのことをいう。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、および、これらのエステル、塩等は、同種のモノマーである。
【0045】
前述した充填材を構成するセルロースブロック共重合体の前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分がビニル基を有するものである場合、樹脂成分は、構成モノマーとしてビニル基を有するものであるのが好ましい。これにより、構成モノマーとしてビニル基を有する樹脂とセルロースブロック共重合体で構成される充填材との相溶性がさらに向上し、構成モノマーとしてビニル基を有する樹脂中に前記充填材がより均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。
【0046】
前述した充填材を構成するセルロースブロック共重合体の前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分がアクリル系モノマーである場合、樹脂成分は、アクリル系樹脂であるのが好ましい。これにより、アクリル系樹脂とセルロースブロック共重合体で構成される充填材との相溶性がさらに向上し、アクリル系樹脂中に前記充填材がより均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。
【0047】
特に、前述した充填材を構成するセルロースブロック共重合体の前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分がメチルメタクリレートである場合、樹脂成分は、ポリメチルメタクリレートであるのが好ましい。これにより、ポリメチルメタクリレートとセルロースブロック共重合体で構成される充填材との相溶性がさらに向上し、ポリメチルメタクリレート中に前記充填材がより均一に分散することで、本発明の組成物を用いて製造される成形体の形状の安定性や透明性などがさらに向上する。
【0048】
本発明の組成物(樹脂組成物)中における前記樹脂成分の含有率は、0.1wt%以上99.9wt%以下であるのが好ましく、30wt%以上99.0wt%以下であるのがより好ましい。前記樹脂成分の含有率が前記範囲内の値であると、組成物を用いた成形体の成形性を特に優れたものとしつつ、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0049】
また、本発明の組成物(樹脂組成物)中における前記樹脂成分の含有率をX[wt%]、前記充填材の含有率をY[wt%]としたとき、0.001≦X/Y≦999の関係を満足するのが好ましく、0.01≦X/Y≦2.33の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、組成物を用いた成形体の成形性を特に優れたものとしつつ、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0050】
(その他の成分)
本発明に係る組成物(樹脂組成物)は、上述した充填材および樹脂成分を含むものであればよいが、これら以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤、重合禁止剤、溶剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0051】
上記のような組成物を用いることにより、様々な成形体を好適に製造することができる。
【0052】
本発明の組成物を用いて製造することのできる成形体は、特に限定されないが、例えば、光学フィルム、レンズ、プリズム、導光部材等の光学部材、自動車用部品、各種容器、ガラス代替品等が挙げられる。また、本発明の組成物は、例えば、接着剤、封止剤等として用いることもできる。また、食品や薬などの包装用パッケージシートとして用いることもできる。
【0053】
<組成物(樹脂組成物)の製造方法>
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
【0054】
本発明の組成物は、セルロースを原料として用いて、表面付近が上記式(1)および/または上記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成された充填材を製造する充填材製造工程と、上記のようにして得られた充填材を、式(1)中のR、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分と混合する混合工程とを有する方法により製造することができる。
【0055】
(充填材製造工程)
充填材製造工程は、セルロースと、式(1)中のRおよび/または式(2)中のRに対応するモノマー成分とを混合し、空気が1kPa以下の雰囲気中、好ましくは無酸素状態、すなわち、アルゴンや窒素等の不活性ガス中か、より好ましくは真空中(好ましくは1Pa以下、より好ましくは0.6Pa以下)であって、モノマーが固体として存在できる温度以下、好ましくは極低温下(好ましくは−150℃以下、より好ましくは液体窒素温度(−196℃)以下)において、セルロースを機械的に破壊した後、前述のモノマーをラジカル重合させることにより行うことができる。ここで、無酸素状態にする有効な手段としては、モノマー内の酸素を、例えば、凍結−排気−融解により除去する方法(Freeze−pump−thaw法)が好適に用いられる。
【0056】
なお、あらかじめモノマーを混合するのは、下記式(3)、下記式(4)で示される主鎖末端型アルキルラジカル(中間体)を経由し、該中間体を分離・採取することなく、ワンポットで上記式(1)、式(2)のセルロースブロック共重合体を連続的に製造することができるためである。
【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

(式(3)中のn、式(4)中のmは、繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0059】
セルロースとしては、例えば、リンターパルプ、バクテリアセルロース(BC)、微結晶セルロース(MCC)等を好適に用いることができるが、木質系セルロース等、その他のセルロースを用いてもよい。
【0060】
次に、前述のセルロースの機械的破壊について説明すると、セルロースと重合させるモノマーとを同じ容器に入れ、これらに粉砕子を加え、真空装置を用いて真空にしたり、不活性ガスと置換したりして、内部が無酸素状態となるようにして該容器を密閉し、例えば、容器を液体窒素中に浸漬し、振とう器等を用いて加振しながら容器内のセルロースに対して機械的エネルギーを付加し、該セルロースを破壊する。なお、容器や粉砕子は、モノマーが固体として存在できる温度以下で使用できるものであればよく、容器にあっては、例えば、ガラス製、ステンレス製等の金属容器が好適に用いられ、粉砕子にあっては、例えば、ガラス製、陶製、ジルコニア系等のボールが好適に用いられる。
ところで、セルロースは、下記式(5)で表されるものである。
【0061】
【化7】

(式中、A、Bは、セルロースの主鎖であり、それぞれ下記式(5a)で表される繰り返し単位を有する基である)
【0062】
【化8】

【0063】
そして、セルロースは、上記式(5)中の波線1、波線2で示される結合部位においてβ−1、4グリコシド結合が切断して破壊され、下記式(3)と下記式(6)で表されるラジカル、下記式(4)と下記式(7)で表されるラジカルが生成する。
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

(式(3)、式(4)中、Cは、不対電子を有する炭素原子を表し、n、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数であり、式(6)、式(7)中、Oは、不対電子を有する酸素原子を表し、nは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数である。)
【0068】
そして、式(3)、式(4)の主鎖末端型アルキルラジカルは、ラジカル重合性モノマーの重合開始剤となり、容器中に共存しているモノマーとラジカル重合するもので、このラジカル重合の結果、下記式(1A)、下記式(2A)のセルロースブロック共重合体が生成される。
【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

(式(1A)、式(2A)中、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0071】
なお、式(3)、式(4)の主鎖末端型アルキルラジカルの生成確認は、電子スピン共鳴(以下、「ESR」ともいう)によるESRスペクトルの解析により行うことができ、式(1A)、式(2A)のセルロースブロック共重合体の生成確認は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた公知の化学種同定方法により行うことができる。
【0072】
そして、製造すべき充填材の表面付近を構成するセルロースブロック共重合体が、式(1)、式(2)中のRがアセチル基で表されるものである場合、さらに、式(1A)、式(2A)中の水酸基(グルコピラノース環上の側鎖の水酸基)をアセチル化し、下記式(1B)、下記式(2B)で表されるものとする。
【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

(式(1B)、式(2B)中、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0075】
水酸基(グルコピラノース環上の側鎖の水酸基)のアセチル化は、例えば、酢酸および無水トリフルオロ酢酸を添加し、加熱しつつ撹拌することにより行うことができる。この場合、加熱温度は、40℃以上70℃以下であるのが好ましく、加熱時間は5時間以上20時間以下であるのが好ましい。
【0076】
なお、式(1B)、式(2B)のセルロースブロック共重合体の生成確認は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、水素原子の核磁気共鳴(H−NMR)を用いた公知の化学種同定方法により行うことができる。
【0077】
ところで、上述した製造方法にあっては、式(1A)、式(2A)のセルロースブロック共重合体を経由し、その後、グルコピラノース環上の側鎖をアセチル化する例について示したが、下記式(8)、下記式(9)で表される中間体(側鎖がアセチル化した主鎖末端型アルキルラジカル)を生成した後、この中間体を重合開始剤として、ラジカル重合性モノマーを重合させてもよい。かかる製造方法によれば、入手の容易なトリアセチルセルロース(以下、「セルローストリアセテート」ともいう)を原料として用いることができる。
【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

(式(8)、式(9)中、Cは、不対電子を有する炭素原子を表し、n、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数である。)
【0080】
ここで、式(8)、式(9)の中間体の製造方法について説明すると、この中間体は、公知の技術(例えば、特開平10−130301号公報に記載されているセルローストリアセテートの製造方法等)により製造された下記式(10)で表されるトリアセチルセルロースを使用できるもので、このトリアセチルセルロースは、前述したセルロースの機械的破壊と同様な方法により、式(10)中の波線1、波線2で示される結合部位においてβ−1、4グリコシド結合を切断して破壊し、下記式(11)と下記式(12)、および、下記式(13)と下記式(14)で表されるラジカルが生成する。
【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
【化21】

【0084】
【化22】

【0085】
【化23】

(式(10)中、A、Bは、トリアセチルセルロースの主鎖であり、それぞれ下記式(10a)で表される繰り返し単位を有する基である。式(12)、式(14)中、Oは、不対電子を有する酸素原子を表し、nは、繰り返し単位の数を示す自然数である。式(11)、式(13)中、Cは、不対電子を有する炭素原子を表し、n、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数である。)
【0086】
【化24】

【0087】
そして、得られた式(11)、式(13)の中間体に、親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかをラジカル重合させるもので、このラジカル重合の結果、前述の式(1B)、式(2B)のセルロースブロック共重合体が生成される。なお、式(11)、式(13)の中間体の生成確認は、電子スピン共鳴(ESR)によるESRスペクトルの解析により行うことができ、式(1B)、式(2B)のセルロースブロック共重合体の生成確認は、前記したように、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、水素原子の核磁気共鳴(H−NMR)を用いて行うことができる。
【0088】
上記のようにして得られた充填材は、そのまま次工程に用いるものであってもよいが、抽出法等により粗粒子を除去し、微粒子を選択的に用いてもよい。微粒子の抽出は、例えば、上記のようにして得られた粉末を用い、公知のソックスレー抽出法により濾液を採取した後、この濾液中の分散媒を蒸発させて残留物を得る方法により行うことができる。これにより、例えば、粒径が200nm以下の充填材(ナノ粒子)を好適に得ることができる。
【0089】
(混合工程)
その後、上記のようにして得られた充填材を、式(1)中のR、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分と混合する。これにより、本発明の組成物を得ることができる。
【0090】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を具体的な実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
[1]充填材の調製
(調製例1)
微結晶セルロース(MCC)1.43gをガラス製ボールミル(容器、粉砕子共にガラス製)に入れ、100℃で6時間真空乾燥した後、これに真空下でモノマーとして疎水性のメチルメタクリレート(MMA)0.2mlを導入した。内部が真空状態の容器を液体窒素中(−196℃)に浸漬し、7時間、振とう器を用いてセルロースの機械的破壊を行った。その結果、真空中−196℃で下記式(15)(式(1)のRが疎水性モノマーであるものに相当)、および、下記式(16)(式(2)のRが疎水性モノマーであるものに相当)で表されるセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体)の生成が確認された。なお、このセルロースブロック共重合体の生成確認は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて行った。
【0093】
【化25】

【0094】
【化26】

(式(15)、式(16)中、n、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数である。)
【0095】
そして、この表面付近がセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体)で構成された充填材からなる粉末を用い、クロロホルムを分散媒とし、ソックスレー抽出法により濾液(クロロホルム分散媒中に上記粉末の微粒子(分散質)が分散したもの)を採取したところ、その濾液は透明であった。そして、この濾液中の分散媒を蒸発させて透明なフィルム状の残留物を得た。
【0096】
なお、残留物の粒径の確認にあっては、得られた残留物をクロロホルムの分散媒中に再分散させ、この分散液を動的光散乱測定装置(堀場製作所製SZ−100)を用いて温度25℃で測定を行い、分散質である上記粉末の平均粒径および粒度分布を求めた。その結果、平均粒径は48.8nmであり、最大粒径は120nm以下であった。
【0097】
また、残留物は、FT−IR測定により、セルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体であると同定され、上記動的光散乱測定の結果と併せて、表面付近がセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体)で構成されたナノ粒子であることが確認された。なお、Fedor法によるメチルメタクリレート(MMA)がラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは20.48[J1/2/cm3/2]である。
【0098】
(調製例2)
モノマーとして親水性のメタクリル酸(MAA)0.2mlを用いた以外は、前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリメタクリル酸ブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるメタクリル酸(MAA)がラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは25.65[J1/2/cm3/2]である。
【0099】
(調製例3)
モノマーとして疎水性のスチレン0.2mlを用いた以外は、前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリスチレンブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるスチレンがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは21.59[J1/2/cm3/2]である。
【0100】
(調製例4)
モノマーとして疎水性の塩化ビニル0.2mlを用いた以外は、前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(セルロース−ポリ塩化ビニルブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法による塩化ビニルがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは22.57[J1/2/cm3/2]である。
【0101】
(調製例5)
モノマーとして疎水性のメタクリル酸グリシジル(和光純薬株式会社)0.2mlを用いた以外は前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるメタクリル酸グリシジルがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは23.68[J1/2/cm3/2]である。
【0102】
(調製例6)
モノマーとして疎水性の4−ビニルフェノール(和光純薬株式会社)0.2mlを用いた以外は、前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法による4−ビニルフェノールがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは27.79[J1/2/cm3/2]である。
【0103】
(調製例7)
微結晶セルロース(MCC)1.43gをガラス製ボールミル(容器、粉砕子共にガラス製)に入れ、100℃で6時間真空乾燥した後、これに真空下でモノマーとして疎水性のメチルメタクリレート(MMA)0.2mlを導入した。内部が真空状態の容器を液体窒素中(−196℃)に浸漬し、7時間、振とう器を用いてセルロースの機械的破壊を行った。その結果、真空中−196℃で式(15)(式(1)のRが疎水性モノマーであるものに相当)、および、式(16)(式(2)のRが疎水性モノマーであるものに相当)の生成が確認された。なお、このセルロースブロック共重合体の生成確認は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて行った。
【0104】
そして、容器から生成したセルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体(50mg)を採取し、これに無水トリフルオロ酢酸(4.1ml)および酢酸(2.2ml)を添加し、50℃で12時間反応させてアセチル化を行い、下記式(17)(式(1)のRが疎水性モノマーであるものに相当)および、下記式(18)(式(2)のRが疎水性モノマーであるものに相当)で表されるトリアセチルセルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体を得た。なお、アセチル化の確認は、生成物を重クロロホルム溶媒に溶解させ、水素原子の核磁気共鳴(H−NMR)観測をすることにより行った。
【0105】
【化27】

【0106】
【化28】

(式(17)、式(18)中、n、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【0107】
そして、この表面付近がセルロースブロック共重合体(トリアセチルセルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体)で構成された充填材からなる粉末を用い、クロロホルムを分散媒とし、ソックスレー抽出法により濾液(クロロホルム分散媒中に上記粉末の微粒子(分散質)が分散したもの)を採取したところ、その濾液は透明であった。そして、この濾液中の分散媒を蒸発させて透明なフィルム状の残留物を得た。
【0108】
なお、残留物の粒径の確認にあっては、得られた残留物をクロロホルムの分散媒中に再分散させ、この分散液を動的光散乱測定装置(堀場製作所製SZ−100)を用いて温度25℃で測定を行い、分散質である上記粉末の平均粒径および粒度分布を求めた。その結果、平均粒径は56.3nmであり、最大粒径は120nm以下であった。なお、Fedor法によるメチルメタクリレート(MMA)がラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは20.48[J1/2/cm3/2]である。
【0109】
(調製例8)
モノマーとして親水性のメタクリル酸(MAA)0.2mlを用いた以外は、前記調製例7と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(トリアセチルセルロース−ポリメタクリル酸ブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるメタクリル酸(MAA)がラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは25.65[J1/2/cm3/2]である。
【0110】
(調製例9)
モノマーとして疎水性のスチレン0.2mlを用いた以外は、前記調製例7と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(トリアセチルセルロース−ポリスチレンブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるスチレンがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは21.59[J1/2/cm3/2]である。
【0111】
(調製例10)
モノマーとして疎水性の塩化ビニル0.2mlを用いた以外は、前記調製例7と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(トリアセチルセルロース−ポリ塩化ビニルブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法による塩化ビニルがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは22.57[J1/2/cm3/2]である。
【0112】
(調製例11)
モノマーとして疎水性のメタクリル酸グリシジル(和光純薬株式会社)0.2mlを用いた以外は、前記調製例7と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法によるメタクリル酸グリシジルがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは23.68[J1/2/cm3/2]である。
【0113】
(調製例12)
モノマーとして疎水性の4−ビニルフェノール(和光純薬株式会社)0.2mlを用いた以外は、前記調製例7と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。なお、Fedor法による4−ビニルフェノールがラジカル重合した分子のモノマー単位の溶解度パラメータは27.79[J1/2/cm3/2]である。
【0114】
(調製例13)
微結晶セルロース(MCC)の代わりに、トリアセチルセルロースとしてのセルローストリアセテート(和光純薬工業製、CTA)2.54gを用いた以外は、前記調製例1と同様にして表面付近がセルロースブロック共重合体(トリアセチルセルロース−ポリメチルメタクリレートブロック共重合体)で構成されたナノ粒子としての充填材を調製した。
【0115】
[2]組成物(樹脂組成物)の製造
(実施例1)
前記調製例1で調製したナノ粒子(充填材)と、樹脂成分としてのポリメチルメタクリレートとを混合し、組成物を得た。なお、Fedor法によるポリメチルメタクリレート(PMMA)の溶解度パラメータは20.48[J1/2/cm3/2]であり、充填材の溶解度パラメータも20.48[J1/2/cm3/2]であることから、充填材と樹脂成分の溶解度パラメータの差は0.00[J1/2/cm3/2]である。
【0116】
(実施例2〜13)
ナノ粒子(充填材)と樹脂成分との組み合わせを表1に示すように変更するとともに、これらの配合比率を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0117】
(比較例1)
セルロースブロック共重合体と混合することなく、樹脂成分としてのポリスチレンそのものを単独で用いた以外は、前記実施例3と同様にして組成物を得た。
【0118】
(比較例2)
セルロースブロック共重合体の代わりに無機フィラーとしての酸性型コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスO、濃度20%)を用いた以外は、前記実施例3と同様にして組成物を得た。
【0119】
(比較例3)
セルロースブロック共重合体で構成された充填材の代わりにセルロースで構成された充填材を用いた以外は、前記実施例3と同様にして組成物を得た。
【0120】
(比較例4〜5)
ナノ粒子としての充填材と樹脂成分との組み合わせを表1に示すように変更するとともに、これらの配合比率を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして組成物を製造した。
【0121】
各実施例および比較例の組成物の組成等を表1に示した。なお、表1中、R、Rについて、メチルメタクリレートに対応する構造を「R−A」、メタクリル酸に対応する構造を「R−B」、スチレンに対応する構造を「R−C」、塩化ビニルに対応する構造を「R−D」、メタクリル酸グリシジルに対応する構造を「R−E」、4−ビニルフェノールに対応する構造を「R−F」で示した。また、表1中、「SP値」の欄には、Fedor法による溶解度パラメータの値を示し、「SP値の差の絶対値」の欄には、R、RについてのFedor法による溶解度パラメータの値と、組成物を構成する樹脂成分についてのFedor法による溶解度パラメータの値との差の絶対値を示した。また、表1中、R、R、Rは、式(1)、式(2)中のR、R、Rを示す。
【0122】
【表1】

【0123】
[3]成形体の製造
前記各実施例および各比較例の組成物を用いて、以下のようにして後述する評価に用いる成形体(成形体A、成形体Bおよび成形体C)を製造した。
【0124】
[3.1]成形体Aの製造
樹脂成分として熱可塑性樹脂を含む実施例1、3、4、7、9、10、13および比較例1〜4については、当該樹脂材料の融点をTmとしたとき、Tm+100℃に組成物を加熱し、長さ20mm×幅3mm×厚み0.5mmのフィルム状に成型し、成形体Aを得た。
【0125】
樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む実施例2、5、6、8、11、12および比較例5については、175℃で、長さ20mm×幅3mm×厚み0.5mmのフィルム状に成型し、その状態で、180秒の加熱処理を施すことにより、樹脂成分を硬化させ、成形体Aを得た。
【0126】
[3.2]成形体Bの製造
樹脂成分として熱可塑性樹脂を含む実施例1、3、4、7、9、10、13および比較例1〜4については、当該樹脂材料の融点をTmとしたとき、Tm+100℃に組成物を加熱し、長さ50mm×幅50mm×厚さ0.03mmのフィルム状に成型し、成形体Bを得た。
【0127】
樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む実施例2、5、6、8、11、12および比較例5については、175℃で、長さ50mm×幅50mm×厚さ0.03mmのフィルム状に成型し、その状態で、180秒の加熱処理を施すことにより、樹脂成分を硬化させ、成形体Bを得た。
【0128】
[3.3]成形体Cの製造
樹脂成分として熱可塑性樹脂を含む実施例1、3、4、7、9、10、13および比較例1〜4については、当該樹脂材料の融点をTmとしたとき、Tm+100℃に組成物を加熱し、長さ20mm×幅5mm×厚み0.5mmのフィルム状に成型し、成形体Cを得た。
【0129】
樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む実施例2、5、6、8、11、12および比較例5については、175℃で、長さ20mm×幅5mm×厚み0.5mmのフィルム状に成型し、その状態で、180秒の加熱処理を施すことにより、樹脂成分を硬化させ、成形体Cを得た。
【0130】
[4]成形体の評価
[4.1]線膨張係数αの測定
上記[3.1]で得られた各実施例および比較例についての成形体Aについて、熱機械測定装置 TMA Q400(TAインスツルメンツ社製)を用いて、35〜50℃における線膨張係数αの測定を行った。
【0131】
[4.2]密度の測定
上記[3.1]で得られた各実施例および比較例についての成形体Aについて、25℃における密度の測定を行った。
【0132】
[4.3]機械的強度
上記[3.2]で得られた各実施例および比較例についての成形体Cについて、オートグラフ AG−IS 200N(島津製作所社製)を用いて、JIS K7171に準拠した測定により、引張強度を求めた。
【0133】
[4.4]全光線透過率
上記[3.3]で得られた各実施例および比較例についての成形体Bについて、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用いて、全光線透過率の測定を行った。
【0134】
[4.5]凝集物の存在の有無
上記[3.1]で得られた各実施例および比較例についての成形体Aをイオンレーザーにより、厚さ方向に切断し、その切断面について、SEM(走査電子顕微鏡)による観察を行い、また、上記[3.3]で得られた各実施例および比較例についての成形体Cについて、TEM(透過電子顕微鏡)による観察を行い、凝集物の存在の有無を確認した。
上記の評価の結果を表2に示した。
【0135】
【表2】

【0136】
表から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面付近が下記式(1)および/または下記式(2)で表されるセルロースブロック共重合体で構成されている充填材と、
式(1)中のR、式(2)中のRに対応するモノマー成分と相溶性を有する樹脂成分とを含有することを特徴とする組成物。
【化1】

【化2】

(式(1)、式(2)中、Rは、水素原子、アセチル基を表し、R、Rは、それぞれ親水性モノマー、疎水性モノマー、両親媒性モノマーのいずれかがラジカル重合した基を表し、R、Rは同じであってもよく、n、n、m、mは、それぞれ繰り返し単位の数を示す自然数を表している。)
【請求項2】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分と、前記樹脂成分の構成モノマーとは、同種のモノマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、アクリル系モノマーであり、
前記樹脂成分は、アクリル系樹脂である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、芳香族系モノマーである請求項1ないし3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、エポキシ基を含有するモノマーである請求項1ないし4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記Rおよび/または前記Rに対応するモノマー成分は、フェノール性水酸基を含有するモノマーである請求項1ないし5のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2013−40311(P2013−40311A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179927(P2011−179927)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】