説明

組換えエリスロポエチンと部分的に組合されたIL−1インヒビターおよびTNFアンタゴニストの貧血治療用途

【課題】哺乳動物における血液障害を治療するために有効な医薬組成物の提供。
【解決手段】インターロイキン1(IL−1)インヒビターを含む治療的に有効な量の医薬組成物及びその使用。さらには、IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびエリスロポエチン(EPO)受容体アゴニストを使用する哺乳動物における血液障害の治療方法。本発明はまた、IL−1インヒビターの組成物、ならびにIL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストの組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン1(IL−1)インヒビターを使用する血液障害の治療に関する。本発明はまた、IL−1インヒビター、腫瘍壊死因子(TNF)インヒビターおよびエリスロポエチン(EPO)受容体アゴニストを使用する、哺乳動物における血液障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の障害は多数の重要な健康問題を引き起こす。例えば、ヘマトクリットの減少、例えば少ない赤血球数、赤血球容積の減少またはヘモグロビン濃度の減少は、貧血(これに限定されるものではない)のような病態の指標となる。貧血の症状には、疲労、眩暈、頭痛、胸痛、息切れ及び抑うつが含まれうる。
【0003】
貧血のような血液障害の治療は、患者のヘマトクリットを増加させることを含みうる。貧血の治療方法の1つは赤血球輸血を行うことである。しかし、この方法は、それに伴うリスクを有しうる。ドナーと患者との間で血液が正しく且つ完全に一致しなければ、輸血反応が生じる可能性があり、輸血されている血液は幾つかの疾患、特にウイルス疾患を伴う可能性がある。未だ証明されていない理論的な懸念は、感染症から身体を防御する免疫系を頻繁な輸血が損ないうることである。
【0004】
慢性腎不全(CRF)に伴う貧血、HIV感染患者におけるAZT(ジドブジン)での治療に関連した貧血、化学療法を受けている非骨髄性悪性疾患の患者における貧血、および同種血輸血の必要性を減少させるための手術を受けている患者における貧血の治療のための組換えヒトエリスロポエチンが、規制機関により承認されている。
【0005】
ヘマトクリットの減少に関連した状態のような血液障害から生じる重篤な健康問題のため、これらの障害を治療しうる他の物質を開発することに関心が持たれている。これらの物質には、ヘマトクリットレベルを増加させる物質(これに限定されるものではない)が含まれる。
【発明の概要】
【0006】
ある実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のIL−1インヒビターを投与することを含んでなる、哺乳動物においてヘマトクリットを上昇させる方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、哺乳動物においてヘマトクリットを維持するための方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のIL−1インヒビターを投与することを含んでなる、哺乳動物における血液障害の治療方法を提供する。
【0007】
ある実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物における血液障害の治療方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物においてヘマトクリットを上昇させ及び/又は維持する方法を提供する。ある実施形態においては、該IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを別々に、または同時に又は異なる時点で投与することができる。ある実施形態においては、該IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを同時に一緒に投与することができる。
【0008】
ある実施形態においては、本発明は、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物における血液障害の治療方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物においてヘマトクリットを上昇させ及び/又は維持する方法を提供する。ある実施形態においては、該TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを別々に、または同時に又は異なる時点で投与することができる。ある実施形態においては、該TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを同時に一緒に投与することができる。
【0009】
更なる実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物における血液障害の治療方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物においてヘマトクリットを上昇させ及び/又は維持する方法を提供する。ある実施形態においては、該IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを別々に、または同時に又は異なる時点で投与することができる。ある実施形態においては、該IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを同時に一緒に投与することができる。更なる実施形態においては、該TNFインヒビターおよびIL−1インヒビターの代わりに、TNFおよびIL−1の両方を抑制する単一の分子(例えば、P38インヒビター)を使用することができる。
【0010】
また、IL−1インヒビターを含んでなる医薬組成物、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを含んでなる医薬組成物、IL−1インヒビター、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを含んでなる医薬組成物、ならびにIL−1およびTNFのインヒビター(例えば、P38インヒビター)とEPO受容体アゴニストとを含んでなる医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者のベースラインデモグラフィックスおよび病歴を示す。
【図2】本出願の実施例1、2および3に記載の研究におけるアナキンラ(anakinra)での治療およびプラセボでの治療に関するヘマトクリットにおけるベースラインからの変化の分布を比較している。
【図3】関節リウマチおよび貧血を有していた本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者のベースラインデモグラフィックスおよび病歴を示す。
【図4】第24週でヘマトクリットの改善を示し関節リウマチおよび貧血を有していた本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数および割合(%)を示す。
【図5】ヘマトクリットレベルの増加を示しACR20応答基準をも満たし関節リウマチおよび貧血を有していた本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数および割合(%)を示す。
【図6】ヘマトクリットの改善およびACR20応答の両方を示し関節リウマチおよび貧血を有する本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数と、ヘマトクリットの改善を示し関節リウマチおよび貧血を有する被験者の総数とを比較している。
【図7】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均血液ヘモグロビン濃度に対するARANESP(商標)(ダルベポイエインα)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図8】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの脚の浮腫に対するARANESP(商標)のみ及びFc−IL−1raまたはTNFインヒビター(PEGs TNF R1)の効果を示す。
【図9】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均網状赤血球数に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図10】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの赤血球数(RBC)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図11】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均赤血球容積(MCV)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図12】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図13】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの全血清鉄濃度(TSI)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図14】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの全鉄結合能(TIBC)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【図15】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均血液ヘモグロビン濃度に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図16A】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのMCHに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図16B】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのMCVに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図17A】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのRBC数に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図17B】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均網状赤血球数に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図18A】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのTSIに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図18B】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのTSI変化に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図19】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの未結合鉄結合能(UIBC)、例えば血清トランスフェリンレベルに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【図20】本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのトランスフェリン飽和(TSAT)レベル(飽和率(%)で表されている)に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(図面の説明)
図1は、本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者のベースラインデモグラフィックスおよび病歴を示す。該データは、治療の種類およびレベルにより分類されている。
【0013】
図2は、本出願の実施例1、2および3に記載の研究におけるアナキンラ(anakinra)での治療およびプラセボでの治療に関するヘマトクリットにおけるベースラインからの変化の分布を比較している。
【0014】
図3は、関節リウマチおよび貧血を有していた本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者のベースラインデモグラフィックスおよび病歴を示す。該データは、治療の種類およびレベルにより分類されている。
【0015】
図4は、第24週でヘマトクリットの改善を示し関節リウマチおよび貧血を有していた本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数および割合(%)を示す。
【0016】
図5は、ヘマトクリットレベルの増加を示しACR20応答基準をも満たす関節リウマチおよび貧血を有していた、本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数および割合(%)を示す。該データは、ヘマトクリットの増加のレベルにより分類されている。
【0017】
図6は、ヘマトクリットの改善およびACR20応答の両方を示し関節リウマチおよび貧血を有する、本出願の実施例1、2および3に記載の研究における被験者の数と、ヘマトクリットの改善を示し関節リウマチおよび貧血を有する被験者の総数とを比較している。
【0018】
図7は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均血液ヘモグロビン濃度に対するARANESP(商標)(ダルベポイエインα)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、血液Hbレベルの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.02)。
【0019】
図8は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの脚の浮腫に対するARANESP(商標)のみ及びFc−IL−1raまたはTNFインヒビター(PEGs TNF R1)の効果を示す。
【0020】
図9は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均網状赤血球数に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、網状赤血球レベルの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.004)。
【0021】
図10は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの赤血球数(RBC)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、RBC数の上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.03)。
【0022】
図11は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均赤血球容積(MCV)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、MCVの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.04)。
【0023】
図12は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、MCVの上昇において、ARANESPでの単独療法より有意に良好であった(p<0.01)。
【0024】
図13は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの全血清鉄濃度(TSI)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。Fc−IL−1RA 100mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、TSIの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.02)。
【0025】
図14は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの全鉄結合能(TIBC)に対するARANESP(商標)およびFc−IL−1raの効果を示す。
【0026】
図15は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均血液ヘモグロビン濃度に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、血液Hbレベルの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.01)。
【0027】
図16は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのMCHおよびMCVに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、MCH(p<0.0009)およびMCV(p<0.01)の上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった。
【0028】
図17は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの平均網状赤血球数およびRBC数に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、網状赤血球レベル(p<0.002)の上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.00X)。
【0029】
図18は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのTSIおよびTSI変化に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、血清鉄レベルの上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.02)。
【0030】
図19は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットの未結合鉄結合能(UIBC)、例えば血清トランスフェリンレベルに対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、いずれか一方での単独療法より有意に低いUIBCを与えた(p<0.015)。
【0031】
図20は、本出願の実施例4に記載の研究における慢性障害の貧血に罹患したラットのトランスフェリン飽和(TSAT)レベル(飽和率(%)で表されている)に対するARANESP(商標)およびPEG sTNF R1の効果を示す。PEG sTNF R1の4mg/kg(週3回)とARANESP 6μg/kg/2週との併用療法は、トランスフェリン飽和の上昇において、いずれか一方での単独療法より有意に良好であった(p<0.004)。
【0032】
定義
本明細書の全体にわたり用いる用語には、特定の場合において特に限定されない限り、以下の定義が適用される。
【0033】
「付加変異体」は、親分子より少なくとも1つ多いアミノ酸残基を有する変異体を意味する。
【0034】
「佐剤」は、予測可能な様態で医薬組成物の有効成分の作用に影響を及ぼす、該医薬組成物に添加する物質である。
【0035】
「投与」は、哺乳動物の体内または体表面に組成物を導入する任意の方法を意味し、本明細書に記載の特定の方法(それらに限定されるものではない)を含む。
【0036】
「慢性疾患の貧血」(ACD)は、外傷、感染症および炎症(例えば、関節リウマチ(RA)または炎症性腸疾患(IBD))、および新生物性疾患(2ヶ月以上持続するもの)(これらに限定されるものではない)のような慢性疾患に関連した軽度から中等度に重篤な任意の貧血を意味する。
【0037】
「ARANESP(商標)」は、公開されているPCT出願番号WO 00/24893(“Methods and Compositions for the Prevention and Treatment of Anemia”)(任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載の超シアル酸化(super−sialated)エリスロポエチンタンパク質およびこのタンパク質の任意の誘導体または変異体を意味する。
【0038】
「キメラポリペプチド」は、2以上の異なるポリペプチドの融合により産生されたポリペプチドを意味する。
【0039】
「欠失変異体」は、親分子より少なくとも1つ少ないアミノ酸残基を有する変異体を意味する。
【0040】
「誘導体」は、化学修飾タンパク質であって、該タンパク質に非タンパク質性部分が結合しているものを意味する。
【0041】
「希釈剤」は、組成物のその他の成分の濃度を減少させる物質である。
【0042】
「乳化剤」は、疎水性相および水相のエマルションを安定化するために使用する石鹸、界面活性剤、ステロイドまたはタンパク質(これらに限定されるものではない)のような物質である。
【0043】
「エリスロポエチン(EPO)受容体アゴニスト」は、多数のメカニズムから生じうるEPO受容体の活性化を引き起こしうる分子を意味する。EPO受容体アゴニストには、本明細書に記載または言及されているもの、例えば、ダーベポエチンα(ARANESP(商標))、エポエチンα(EPO、EPOGEN(登録商標))および抗EPO受容体アゴニスト抗体が含まれる。
【0044】
「Fc」は、ヒト免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常ドメインの全部または一部およびこのドメインの任意の変異体または誘導体を意味する。
【0045】
「Fc−IL−1ra」は、IL−1raとヒト免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常ドメインおよびこのドメインの任意の変異体または誘導体との両方の配列を含む分子を意味する。典型的なFc−IL−1raとしては、1997年6月14日付け公開のPCT出願WO 97/28828(参照により本明細書に組み入れることとする)およびこのポリペプチドの任意の誘導体または変異体が挙げられる。
【0046】
「インターロイキン−1(IL−1)インヒビター」は、IL−1による細胞受容体の活性化を特異的に抑制しうる分子を意味し、これは、いずれかの1以上の数のメカニズムから生じうる。そのようなメカニズムには、IL−1産生のダウンレギュレーション、遊離IL−1の結合、IL−1のその受容体への結合の妨害、IL−1受容体複合体の形成(すなわち、IL−1受容体とIL−1受容体補助タンパク質との会合)の妨害、またはIL1受容体への結合後のIL−1シグナリングのモジュレーションの妨害が含まれるが、これらに限定されるものではない。インターロイキン−1インヒビターには、本明細書に記載または言及されているもの、例えば、抗IL−1受容体抗体、IL−1受容体アンタゴニスト、およびFc−IL−1raが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「親分子」は、考察されている特定の変異を欠く変異体分子または未修飾分子を意味する。例えば、親分子の置換変異体を考察する場合には、該親分子は欠失変異体でありうる。
【0048】
「保存剤」は、組成物に対する化学変化または該組成物の汚染を抑制するために組成物に添加する物質である。
【0049】
「可溶化剤」は、組成物の成分の溶解性を増加させるために組成物に添加する物質である。
【0050】
「sTNF−RI」は、腫瘍壊死因子(TNF)のI型(p55)受容体の可溶性形態およびその任意の融合タンパク質、誘導体または変異体を意味する。典型的なsTNF−RIはWO 98/01555に記載されている。
【0051】
「置換変異体」は、親分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され異なる残基がその位置に挿入された変異体を意味する。
【0052】
「治療的に有効な量」は、特定の障害に罹患した哺乳動物における少なくとも1つの臨床的パラメーターの測定可能な改善をもたらす量である。
【0053】
「変異体」は、参照ポリペプチドに対して少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を有し、該参照ポリペプチドの関連活性の何らかのレベル(減少したレベルを含む)を維持するポリペプチドを意味する。本明細書に記載の相同性(%)は、Dayhoff (1972),Atlas of Protein Sequence and Structure,5:124,National Biochemical Research Foundation,Washington,D.C.(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、アライメントを補助するために100アミノ酸長中に4個のギャップが導入されうる場合の、比較されている配列中の同一アミノ酸残基とアライメント(整列)する2つの配列の小さい方に見出されるアミノ酸残基の割合(%)として計算される。変異体は、参照ポリペプチドに基づくものであって、該参照分子と比較して1以上のアミノ酸が欠失した(「欠失変異体」)、挿入された(「付加変異体」)または置換された(「置換変異体」)ものでありうる。
【0054】
本出願においては、単数としての表現は、明示的に特に示さない限り、複数としての表現を含む。
【0055】
(発明の詳細な記載)
本出願に引用されているすべての文書を、任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする。
【0056】
ある実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のIL−1インヒビターを投与することを含んでなる、哺乳動物においてヘマトクリットを上昇させる方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、上昇したヘマトクリットを維持することを含む。ある実施形態においては、IL−1インヒビターを含む医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明は、ある実施形態においては、IL−1インヒビター、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニスト、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストまたはIL−1インヒビターを、ならびにTNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することを含んでなる、哺乳動物における貧血(これに限定されるものではない)のような血液障害を治療することを提供する。ある実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニスト、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストまたはIL−1インヒビター、ならびにTNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することによりヘマトクリットを上昇させることを提供する。ある実施形態においては、本発明は、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニスト、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストまたはIL−1インヒビター、ならびにTNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを投与することにより、上昇したヘマトクリットを維持することを含む。ある実施形態においては、IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニスト、TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストまたはIL−1インヒビター、ならびにTNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを含んでなる医薬組成物を提供する。更なる実施形態においては、そのような組成物を使用する血液障害の治療方法を提供する。
【0058】
ある実施形態においては、本発明は、以下のものを含む(それらに限定されるものではない)血液障害の治療において使用することができる:
・腎機能の低下または喪失(慢性腎不全)に関連した貧血、
・化学療法薬または抗ウイルス薬(例えば、AZT)のような骨髄抑制療法に関連した貧血、
・非骨髄性癌の進行に関連した貧血、ウイルス感染(例えば、HIV)に関連した貧血、
・相対エリスロポエチン欠損症に関連した貧血、
・うっ血性心不全に関連した貧血、および
・自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ)のような慢性疾患の貧血。
【0059】
ある実施形態においては、本発明は、貧血以外の点では健康な個体における貧血につながりうる状態(例えば、手術中の予想される出血)で使用することができる。ある実施形態においては、治療は、関節リウマチ(RA)に関連した貧血に対する1日1回の投与を含む。また、血液障害には、造血障害、血色素症、鉄代謝欠損症障害も含まれるが、これらに限定されるものではない。造血は、血液または血液細胞の形成を意味する。
【0060】
貧血は、関節リウマチ(RA)の関節外合併症として生じることがあり、通常、疾患活性のマーカーに相関する(Peeters HRMら,Ann.Rheum.Dis.,55:162−68 1996)。本発明者らは、IL−1インヒビターでのRA患者の治療がこれらの患者のヘマトクリットを増加させることを見出した(図2)。特に、貧血を伴うRA患者におけるヘマトクリットが、プラセボに対して増加した(図4)。さらに、本発明者らは、許容される基準をRA応答(ACR20として公知である)が満たさない患者においてさえも、該ヘマトクリットが改善されることを見出した(図5および6)。
【0061】
前記のとおり、貧血の1つの形態は慢性疾患の貧血(ACD)である。ACDは、以下のような状態(それらに限定されるものではない)にしばしば関連している軽度ないしは中等度に重篤な貧血に関する広義の用語である:
・外傷、
・感染性炎症、
・非感染性炎症、例えば、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、狼瘡(全身性エリテマトーデスまたはSLEを含む)、多発性硬化症(MS)、うっ血性心不全(CHF)、心臓血管炎症および新生物性疾患(2ヶ月以上持続するもの)に関連している可能性があるもの。
ある種のACDの総説としては、Means(1996),International J.of Hematol.70(1)7−12を参照されたい。ACDは、先天性および同族免疫応答ならびに炎症性サイトカイン、例えばINF−γ、TNF−αおよびIL−1により種々の度合で媒介される多因性病理発生を有することが公知である(Means(1999),International J.of Hematol.70(1)7−12;Voulgariら,(1999),Clin.Immunol.92:153−160)。
【0062】
ペプチドグリカン−多糖重合体でのLewis(ルイス)ラットの免疫は、再発性関節炎、およびヒトACDを良く模擬する二相性ACDを誘発する。本発明者らは、ARANESP(商標)と共にFc−IL−1raをこれらのラットに投与すると、平均Hbレベル、網状赤血球数、赤血球数、赤血球容積、赤血球HBレベルおよび全血清鉄濃度が、Fc−IL−1raまたはARANESP(商標)のいずれか一方の単独投与の場合より大きな度合で増加することを見出した(図7〜15を参照されたい)。
【0063】
また、本発明者らは、ヒトACDの同じLewisラットモデルにおいて、sTNF−RIを単独で及びARANESP(商標)と組合せて投与した。PEG sTNF−RIのみで処理したラットは、未処理ラットと比較して、平均Hbレベルにおいては上昇に傾いたが(図16)、平均脚浮腫においては有意な減少を有することを(図17)、本発明者らは見出した。ARANESP(商標)での単独処理を受けたラットにおける平均Hbレベルは、未処理貧血レベルより上昇した。該併用療法は、同用量のPEG−sTNF−RIと比較してHbレベルを有意に増強し、同用量のARANESP(商標)単独の場合と比較してHbの上昇を2倍以上にした。該併用療法はまた、同用量のARANESP(商標)およびPEG−sTNF−RIと比較して、より多くの網状赤血球(図18)および赤血球(図19)を誘導した。該併用療法は、全血清鉄濃度、赤血球容積および赤血球Hbを、ARANESP(商標)単独の場合より大きな度合で増加させた。また、該併用療法は、全血清鉄濃度、赤血球容積および赤血球Hbを、PEG sTNF−RI単独の場合より増加させた。理論に拘束されるものではないが、そのような結果は、ARANESP(商標)とPEG−sTNF−RIとの間の見掛け上の相乗効果が、増強したエリトロポエチン応答を介して及び増加した数のRBCの「ヘモグロビン化(hemoglobinization)」を増強することにより(すなわち、RBC食作用、鉄隔離および/または鉄動員に有利な影響を及ぼすことにより)媒介されることを示していると、本発明者らは考えている。また、該データはPEG−sTNF−RIおよびARANESP(商標)で得られたものであるが、epoRの他のアゴニストまたはARANESP(商標)と組合せた他のTNF−αアンタゴニスト(後記を参照されたい)も同様の結果を与えるはずである。
【0064】
本発明の併用療法は、鉄貯蔵障害に関連した状態の治療においても有用でありうる。貯蔵鉄は、多数の疾患または障害における組織損傷を媒介するスーパーオキシドおよび他の反応種の生成に関与する。そのような状態および障害の場合に、該IL−1インヒビターまたはTNFインヒビターは鉄の遊離を補助しうる。そしてEPO受容体アゴニストは、赤血球形成により過剰の鉄の消費を補助しうる。この理由または他の理由により、本発明の併用療法は、慢性心臓疾患、心筋梗塞、卒中、認識欠損または障害、血色素症、炎症性腸疾患などの治療において有用でありうる。
【0065】
EPO受容体アゴニスト
エリトロポエチン(EPO)受容体アゴニストは、EPO受容体の活性化を引き起こしうる分子であり、これは1以上の任意の数のメカニズムから生じうる。EPO受容体アゴニストには、本明細書に記載または言及されているもの、例えば、ARANESP(商標)、EPOおよび抗EPO受容体アゴニスト抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
インターロイキン1インヒビター
インターロイキン1は、単球およびいくつかのマクロファージを含む多数の細胞型により産生されるタンパク質である。該タンパク質は、多数の種々の標的細胞に対する重要な生理的効果を有する。インターロイキン1インヒビターには、IL−1に対する細胞性応答の活性化を特異的に妨げうる分子(これは、1以上の任意の数のメカニズムから生じうる)が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなメカニズムには、IL−1産生のダウンレギュレーション、遊離IL−1の結合、IL−1のその受容体への結合の妨害、IL−1受容体複合体の形成(すなわち、IL−1受容体とIL−1受容体補助タンパク質との会合)の妨害、またはIL−1受容体への結合後のIL−1シグナリングのモジュレーションの妨害が含まれるが、これらに限定されるものではない。インターロイキン1インヒビターのクラスには以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
・後記のIL−1raのようなインターロイキン1受容体アンタゴニスト、
・抗IL−1受容体モノクローナル抗体(例えば、EP 623674(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))、
・IL−1結合性タンパク質、例えば、可溶性IL−1受容体(例えば、米国特許第5,492,888号、米国特許第5,488,032号および米国特許第5,464,937号、米国特許第5,319,071号および米国特許第5,180,812号(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))、
・抗IL−1モノクローナル抗体(例えば、WO 9501997、WO 9402627、WO 9006371、米国特許第4,935,343号、EP 364778、EP 267611およびEP 220063(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))、
・IL−1受容体補助タンパク質およびそれに対する抗体(例えば、WO 96/23067およびWO 99/37773(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))、
・IL−1βの産生および分泌を抑制するために使用しうる、インターロイキン1β変換酵素(ICE)またはカスパーゼIのインヒビター(例えば、WO 99/46248、WO 99/47545およびWO 99/47154(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))、
・インターロイキン1βプロテアーゼインヒビター、
・ならびにIL−1のインビボ合成または細胞外遊離を遮断する他の化合物およびタンパク質。
【0067】
典型的なIL−1インヒビターは以下の参考文献に開示されている:
米国特許第5,747,444号、第5,359,032号、第5,608,035号、第5,843,905号、第5,359,032号、第5,866,576号、第5,869,660号、第5,869,315号、第5,872,095号、第5,955,480号および第5,965,564号;
国際(WO)特許出願98/21957、96/09323、91/17184、96/40907、98/32733、98/42325、98/44940、98/47892、98/56377、99/03837、99/06426、99/06042、91/17249、98/32733、98/17661、97/08174、95/34326、99/36426、99/36415;
欧州(EP)特許出願534978および894795;ならびに
フランス国特許出願FR 2762514。
【0068】
前記参考文献のすべての開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする。
【0069】
本発明の或る実施形態は、IL−1インヒビターの変異体を提供し、これは、貧血を治療するためにそれを使用する能力に実質的に悪影響を及ぼさない。そのような付加、欠失および置換は該ポリペプチドのN末端またはC末端に存在することが可能であり、あるいはその内部に存在することが可能である。一般には、比較的小さな欠失または付加がIL−1インヒビターの構造および/または機能に影響を及ぼす可能性は低い。ある実施形態においては、欠失、付加または置換は、5〜10アミノ酸残基、2〜5アミノ酸残基、または1〜2アミノ酸残基でありうる。
【0070】
前記参考文献に記載の分子ならびに後記のそれらの変異体および誘導体は「IL−1インヒビター」と総称される。
【0071】
インターロイキン1受容体アンタゴニスト
インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)は、インターロイキン1の天然インヒビターとして作用する、IL−1αおよびIL−1βを含む(これらに限定されるものではない)IL−1ファミリーのメンバーであるヒトタンパク質である。ある受容体アンタゴニスト(例えば、IL−1raならびにその変異体および誘導体を含む)ならびにその製造および使用方法が、米国特許第5,075,222号、WO 91/08285、WO 91/17184、AU 9173636、WO 92/16221、WO 93/21946、WO 94/06457、WO 94/21275、FR 2706772、WO 94/21235、DE 4219626、WO 94/20517、WO 96/22793、WO 97/28828およびWO 99/36541(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0072】
特に、米国特許第5,075,222号は、いくつかの形態のIL−1raを記載している。それらのうちの1つであるIL−1raα(該’222特許においては「IL−1i」と称されている)は、Trisバッファー(pH7.6)中の約52mM NaClにおいてMono Q FPLCカラムから溶出する、約4.8の等電点を有するSDS−PAGE上で22〜23kDの分子として特徴づけられる。もう1つのIL−1raβは、48mM NaClにおいてMono Qカラムから溶出する22〜23kDのタンパク質として特徴づけられる。IL−1raαおよびIL−1raβの両方はグリコシル化されている。第3のIL−1raxは、48mM NaClにおいてMono Qカラムから溶出する20kDのタンパク質として特徴づけられ、非グリコシル化体である。該5,075,222特許はまた、該インヒビターのコード化をもたらす遺伝子を単離し、適当なベクターおよび細胞型内に遺伝子をクローニングし、該遺伝子を発現させて該インヒビターを製造するための或る方法を開示している。該タンパク質は、グリコシル化および非グリコシル化IL−1受容体アンタゴニストを含む。ある実施形態においては、グリコシル化IL−1受容体アンタゴニストは、ヒト細胞、COS細胞またはCHO細胞内で発現されうる。本発明の目的においては、IL−1raならびにその変異体および誘導体(後記のもの)は「IL−1raタンパク質」と総称される。
【0073】
TNF−αインヒビター
TNF−αインヒビターは、TNF産生のダウンレギュレーションまたは抑制、遊離TNFへの結合、TNFのその受容体への結合の妨害、またはTNF受容体への結合後のTNFシグナリングのモジュレーションの妨害により作用しうる。したがって、「TNF−αインヒビター」なる語は、可溶化TNF受容体、TNFに対する抗体、TNF受容体に対する抗体、TNF−α変換酵素(TACE)のインヒビター、およびTNF活性を損なう他の分子を含む。本発明の範囲内の良く知られたTNF−αインヒビターには以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
・TNF−α中和抗体、例えば、インフリキシマブ(infliximab)(REMICADE(登録商標))およびD2E7、
・抗体フラグメント、例えば、CDP 870、
・TNF−α受容体アンタゴニストAbs、
・可溶性TNF−RI分子、例えば、オネルセプト(onercept)、
・可溶性TNF−RII分子、例えば、エタネルセプト(etanercept)(ENBREL(登録商標))、
・TNF−α産生インヒビター、および
・小分子インヒビター、例えば、P38インヒビター。
【0074】
種々の種類のTNF−αインヒビターが、当技術分野において以下の参考文献などに開示されている:
欧州特許出願EP 308 378、EP 422 339、GB 2 218 101、EP 393 438、WO 90/13575、EP 398 327、EP 412 486、WO 91/03553、EP 418 014、417 563、JP 127,800/1991、EP 433 900、米国特許第5,136,021号、GB 2 246 569、EP 464 533、WO 92/01002、WO 92/13095、WO 92/16221、EP 512 528、EP 526 905、WO 93/07863、EP 568 928、EP 607 776(TNF−αの抑制のためのレフルノミドの使用)、663 210、542 795、818 439、664 128、542 795、741 707、874 819、882 714、880 970、648 783、731 791、895 988、550 376、 882 714、853 083、550 376、943 616、939 121、614 984、853 083、
米国特許第5,136,021号、第5,929,117号、第5,948,638号、第5,807,862号、第5,695,953号、第5,834,435号、第5,817,822号、第5830742号、第5,834,435号、第5,851,556号、第5,853,977号、第5,359,037号、第5,512,544号、第5,695,953号、第5,811,261号、第5,633,145号、第5,863,926号、第5,866,616号、第5,641,673号、第5,869,677号、第5,869,511号、第5,872,146号、第5,854,003号、第5,856,161号、第5,877,222号、第5,877,200号、第5,877,151号、第5,886,010号、第5,869,660号、第5,859,207号、第5,891,883号、第5,877,180号、第5,955,480号、第5,955,476号、第5,955,435号、第5,994,351号、第5,990,119号、第5,952,320号、第5,962,481号、
国際(WO)特許出願90/13575、91/03553、92/01002、92/13095、92/16221、93/07863、WO 93/21946、WO 93/19777、EP 417 563、WO 95/34326、WO 96/28546、98/27298、98/30541、96/38150、96/38150、97/18207、97/15561、97/12902、96/25861、96/12735、96 11209、98/39326、98/39316、98/38859、98/39315、98/42659、98/39329、98/43959、98/45268、98/47863、96/33172、96/20926、97/37974、97/37973、97/47599、96/35711、98/51665、98/43946、95/04045、98/56377、97/12244、99/00364、99/00363、98/57936、99/01449、99/01139、98/56788、98/56756、98/53842、98/52948、98/52937、99/02510、97/43250、99/06410、99/06042、99/09022、99/08688、99/07679、99/09965、99/07704、99/06041、99/37818、99/37625、97/11668、99/50238、99/47672、99/48491、
日本国(JP)特許出願10147531、10231285、10259140および10130149、10130149、10316570、11001481および127,800/1991、
ドイツ国(DE)特許出願19731521、
英国(GB)特許出願2 218 101、2 326 881、2 246 569およびPCT出願番号PCT/US97/12244。
【0075】
本発明の目的においては、これらの参考文献に開示されている分子およびsTNFRおよびsTNFRの変異体および誘導体および後記参考文献に開示されている分子は、「TNF−αインヒビター」と総称される。
【0076】
例えば、EP 393 438およびEP 422 339は、「sTNFR」と総称される可溶性TNF受容体I型(TNFR−Iまたは30kDa TNFインヒビターとしても公知である)および可溶性TNF受容体II型(sTNF−IIまたは40kDa TNFインヒビターとしても公知である)ならびにそれらの修飾形態(例えば、断片、機能的誘導体および変異体)のアミノ酸および核酸配列を教示している。EP 393 438およびEP 422 339はまた、該インヒビターのコード化をもたらす遺伝子を単離し、適当なベクターおよび細胞型内に遺伝子をクローニングし、該遺伝子を発現させて該インヒビターを製造するための方法を開示している。
【0077】
sTNFR−IおよびsTNFR−IIは、神経成長因子受容体(NGF)、B細胞抗原CD40、4−1BB、ラットT細胞抗原MRC OX40、fas抗原ならびにCD27およびCD30抗原を含む、受容体の神経成長因子/TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである(Smithら(1990),Science248:1019−1023)。細胞表面受容体のこのグループにおいて最も保存された特徴は、システインに富む細胞外リガンド結合ドメインであり、これは、約40アミノ酸の4つの反復モチーフに分類されることが可能であり、良く保存された位置に4〜6個のシステイン残基を含有する(Smithら(1990),前掲)。
【0078】
EP 393 438は、40kDa TNFインヒビターΔ51および40kDa TNFインヒビターΔ53を教示しており、これらは、成熟タンパク質のカルボキシル末端のそれぞれ51個または53個のアミノ酸残基が除去された、完全長組換え40kDa TNFインヒビタータンパク質のトランケート化(短小化)形態である。
【0079】
PCT出願番号PCT/US97/12244は、第4ドメイン(sTNFR−Iのアミノ酸残基Thr127−Asn161およびsTNFR−IIのアミノ酸残基Pro141−Thr179)、第3ドメイン(sTNFR−Iのアミノ酸残基Asn111−Cys126およびsTNFR−IIのアミノ酸残基Pro123−Lys140)の一部、そして場合によっては第1ドメイン(sTNFR−Iのアミノ酸残基Asp−Cys19およびsTNFR−IIのアミノ酸残基Leu−Cys32)の一部を含有しないトランケート化形態のsTNFR−IおよびsTNFR−IIを教示している。本発明の該トランケート化sTNFRには、式R−[Cys19−Cys103]−RおよびR−[Cys32−Cys115]−Rで表されるタンパク質が含まれる。これらのタンパク質は、それぞれsTNFR−IおよびsTNFR−IIのトランケート化形態である。
【0080】
「R−[Cys19−Cys103]−R」は、[Cys19−Cys103]がTNFR−Iの残基19〜103(比較が容易となるよう、そのアミノ酸残基番号付けは図1に示されている)を表す1以上のタンパク質を意味し、ここで、Rは、Cys19の又はCys18〜Aspのいずれかから選ばれるアミノ末端アミノ酸残基のメチオニル化または非メチオニル化アミン基を表し、Rは、Cys103の又はPhe104〜Leu110のいずれかから選ばれるカルボキシ末端アミノ酸残基のカルボキシ基を表す。
【0081】
本発明の典型的なトランケート化sTNFR−Iには以下の分子(2.6D sTNFR−Iと総称される)が含まれる:NH−[Asp−Cys105]−COOH(sTNFR−I 2.6D/C105とも称される)、NH−[Asp−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.6D/C106とも称される)、NH−[Asp−Asn105]−COOH(sTNFR−I 2.6D/N105とも称される)、NH−[Tyr−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d8とも称される)、NH−[Cys19−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d18とも称される)、およびNH−[Ser16−Leu108]−COOH(sTNFR−I 2.3D/d15とも称される)(メチオニル化体または非メチオニル化体でありうる)、ならびにそれらの変異体および誘導体。
【0082】
「R−[Cys32−Cys115]−R」は、[Cys32−Cys115]がsTNFR−IIの残基Cys32〜Cys115(比較が容易となるよう、そのアミノ酸残基番号付けは図2に示されている)表す1以上のタンパク質を意味し、ここで、Rは、Cys32の又はCys31〜Leuのいずれかから選ばれるアミノ末端アミノ酸残基のメチオニル化または非メチオニル化アミン基を表し、Rは、Cys115の又はAla116〜Arg122のいずれかから選ばれるカルボキシ末端アミノ酸残基のカルボキシ基を表す。
【0083】
タンパク質の変異体
変異体は、参照ポリペプチドに対して少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を有し該参照ポリペプチドの関連活性の何らかのレベル(減少したレベルを含む)を維持するポリペプチドを意味する。本明細書に記載の相同性(%)は、Dayhoff (1972),Atlas of Protein Sequence and Structure:124,National Biochemical Research Foundation,Washington,D.C.(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、アライメントを補助するために100アミノ酸長中に4個のギャップが導入されうる場合の、比較されている配列中の同一アミノ酸残基とアライメント(整列)する2つの配列の小さい方に見出されるアミノ酸残基の割合(%)として計算される。「実質的に相同」なる語には、親分子アミノ酸配列に対する抗体との交差反応性により単離されうる親分子の変異体が含まれ、その遺伝子は、高度にストリンジェントな又は中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、親分子またはそのセグメントのDNAとのハイブリダイゼーションにより単離されうる。
【0084】
当業者は、アミノ酸が欠失した(「欠失変異体」)、挿入された(「付加変異体」)および/または置換された(「置換変異体」)、IL−1インヒビターまたはEPO受容体アゴニストに基づく多数の変異体を製造しうると理解するであろう。しかし、そのような変異体は、未修飾または「親」分子の或る関連活性を何らかのレベル(減少したレベルを含む)で維持するはずであり、したがって、IL−1インヒビターまたはEPO受容体アゴニストとして使用することができる。
【0085】
変異体は、部位特異的突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびカセット突然変異誘発(Zollerら Meth.Enz.100,468−500(1983);Higuchi,in PCR Protocols pp.177−183(Academc Press,1990);Wellsら Gene 34,315−323(1985))(これらに限定されるものではない)のような当業者に利用可能な種々の突然変異誘発技術により製造することができる。変異体は、それらの物理的特性を評価するために迅速にスクリーニングすることができる。そのような変異体は、対応親分子と必ずしも同じ特性の全てではなく必ずしも同じ度合というわけではないが、該未修飾分子と同様の特性を示すことが明らかであろう。
【0086】
アミノ酸配列変異体の構築においては、典型的には2つの主要変数(すなわち、該突然変異部位の位置および該突然変異の性質)が存在する。変異体の設計においては、各突然変異部位の位置および各突然変異の性質は、修飾される生化学的特性に左右されうる。ある実施形態においては、各突然変異部位は、例えば、(1)標的アミノ酸残基を欠失させることにより、(2)位置する部位の隣に1以上のアミノ酸残基を挿入することにより、または(3)まず、同類アミノ酸選択物で置換し、ついで、達成された結果に応じて、より根本的な選択物で置換することにより、個々に又は順次修飾することができる。
【0087】
ある実施形態においては、アミノ酸配列の欠失は、約1〜30個のアミノ酸残基、約1〜20個のアミノ酸残基、約1〜10個のアミノ酸残基、または約1〜5個の連続したアミノ酸残基に及ぶものである。欠失には、アミノ末端、カルボキシ末端および内部配列内が含まれるが、これらに限定されるものではない。IL−1raの場合、ある実施形態においては、欠失は、IL−1ファミリー(これはIL−1α、IL−1βおよびIL−1raを含む)における低い相同性の領域内に施されうる。該ファミリーの他のメンバーに対して相当な相同性を有する領域における欠失は、典型的には、該生物活性を有意に修飾する可能性が高いであろう。
【0088】
ある実施形態においては、アミノ酸配列の付加には、1残基〜100残基以上の長さに及ぶアミノおよび/またはカルボキシ末端融合体の挿入、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の内部配列内挿入が含まれる。ある実施形態においては、内部付加は、約1〜20アミノ酸残基、約1〜10アミノ酸残基、約1〜5アミノ酸残基、または約1〜3アミノ酸残基に及ぶものでありうる。
【0089】
アミノ末端の付加は、メチオニンの付加(例えば、細菌組換え細胞培養内での直接発現の人工産物)(これに限定されるものではない)を包含する意である。アミノ末端付加のもう1つの例には、組換え宿主細胞からの成熟分子の分泌を促進するためにシグナル配列が成熟分子のアミノ末端に融合されたもの(これらに限定されるものではない)が含まれる。そのようなシグナル配列は、典型的には、意図される宿主細胞種から得られ、したがって該宿主細胞種と相同であろう。該成熟分子の天然シグナル配列を認識およびプロセシングしない原核宿主細胞の場合、該シグナル配列は、ある実施形態において選ばれる原核性シグナル配列により置換されうる。ある実施形態においては、該天然シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダー配列により置換されうる。酵母細胞内での発現の場合、ある実施形態においては、該シグナル配列は、酵母インベルターゼ、α因子または酸性ホスファターゼリーダー配列から選ばれうる。哺乳類細胞での発現の場合、ある実施形態においては、該天然シグナル配列で十分であるが、他の哺乳類シグナル配列も適当でありうる。
【0090】
ある実施形態においては、アミノまたはカルボキシ末端の付加体には、ヒト免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常ドメインの全部または一部とのIL−1インヒビター親分子またはEPO受容体アゴニスト親分子のアミノ末端またはカルボキシ末端の融合を含むキメラタンパク質(個々に又は一まとめに「Fc変異体」と称される)が含まれうる。ある実施形態においては、各キメラタンパク質の免疫グロブリン部分は、IgG(例えば、IgG1またはIgG3)、IgA、IgMまたはIgEのようなヒト免疫グロブリンの重鎖の定常領域の第1ドメイン以外の該ドメインの全部を含む。例えば、ある実施形態においては、IL−1インヒビターは、IL−1raとFcドメイン(特にヒトIgG1のもの)とを含むキメラタンパク質である。例えば、WO 97/28828(これを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。当業者は、ある実施形態においては、該親分子がその関連活性の何らかのレベルを維持し該免疫グロブリン部分がその特徴的特性の1以上を示す限り、該免疫グロブリン部分の任意のアミノ酸が欠失されたり又は1以上のアミノ酸で置換されることが可能であり、あるいは1以上のアミノ酸が付加されることが可能であると理解するであろう。
【0091】
もう1つの変異体群はアミノ酸置換変異体である。これらは、親分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されその位置に異なる残基が挿入された変異体である。置換変異体には、アミノ酸の変化を引き起こしうる又は引き起こしえない種集団における天然に生じるヌクレオチド配列変化により特徴づけられる対立遺伝子変異体が含まれるが、これらに限定されるものではない。当業者は、可能な変異部位の選択において、ポリペプチドの結合または活性部位に関する公知の任意の情報を利用することが可能である。
【0092】
ある実施形態においては、タンパク質の突然変異誘発のためのアミノ酸残基または領域を同定するための1つの方法は、CunninghamおよびWells(1989),Science244:1081−1085)(これを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、「アラニンスキャニング突然変異誘発(alanine scanning mutagenesis)」と称される。この方法では、標的残基のアミノ酸残基または基を同定し(例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGluのような荷電残基)、それを中性の又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)により置換して、該アミノ酸と細胞内外における周囲の水性環境との相互作用に影響を与える。ついで、該置換に対して機能的感受性を示すドメイン/残基を、追加的または代替的な残基を置換部位に導入することにより改良する。このようにして、アミノ酸配列修飾を導入するための部位を予め決定する。与えられた部位における突然変異の性能を最適化するために、アラニンスキャニングまたはランダム突然変異誘発を行うことが可能であり、該変異体を、ある実施形態において所望の活性と活性の程度との最適な組合せに関してスクリーニングすることができる。
【0093】
置換突然変異誘発において最も関心のある部位には、側鎖の嵩高さ、電荷および/または疎水性の点で親分子中の特定のアミノ酸残基が他の種または他のファミリーメンバーとは実質的に異なっている部位が含まれる。関心のある他の部位には、親分子の特定の残基が他の種または他のファミリーメンバー間で同一であるものが含まれる。なぜなら、そのような位置は、典型的には、タンパク質の生物活性に重要だからである。
【0094】
ある実施形態においては、まず、部位を比較的に保存的な様態で置換しうると当業者は理解するであろう。保存的アミノ酸変化は、1つのアミノ酸を、構造および/または機能において類似した別のアミノ酸(例えば、サイズ、電化および形状において類似した側鎖を有するアミノ酸)で置換することを含みうる。そのような保存置換の具体例には、表1の「好ましい置換」の項目に示すものが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような置換が生物活性における実質的な変化を引き起こさない場合には、より実質的な変化(典型的な置換)を導入することが可能であり、および/または、他の付加/欠失を施すことが可能であり、得られた産物をスクリーニングすることが可能である。
【0095】
【表1】

【0096】
そのような変化を施す際には、ある実施形態においては、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮されうる。タンパク質に対する相互作用性生物学的機能の付与におけるヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において概ね理解されている(KyteおよびDoolittle (1982),J.Mol.Biol.,157:105−131)(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)。あるアミノ酸は、類似したヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換されることが可能であり、類似した生物活性を尚も保有しうることが公知である。
【0097】
また、類似したアミノ酸の置換は、親水性に基づいても有効に行いうることが、当技術分野において理解されており、それにより生成した機能的に等価なタンパク質またはペプチドを免疫学的実施形態で使用することを意図する場合には特に、そのような置換が有効に行われうる。タンパク質の最大局所平均親水性は、その隣接アミノ酸の親水性により支配される場合には、その免疫原性および抗原性、すなわち、該タンパク質の生物学的特性と相関することが、米国特許4,554,1018(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0098】
これに対して、ある実施形態においては、親分子の機能的および/または化学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチドバックボーンの構造(例えば、シートまたはらせんコンホメーションとしての構造)、(b)標的部位における該タンパク質の相対電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩高さを維持することに対するその効果の点で有意に異なる置換を選択することにより達成することができる。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づき、以下のグループに分類されうる:
1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
5)芳香族:Trp、Tyr、Phe;および
6)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro。
【0099】
非保存的置換は、これらのグループの1つのメンバーを別のものと交換することを含みうる。
【0100】
ポリペプチド誘導体
ある実施形態においては、本発明はまた、IL−1インヒビター、TNF−αインヒビターおよびEPO受容体アゴニストの親分子の化学修飾誘導体、ならびにその用途を含み、ここで、該タンパク質は、特性を修飾するために非タンパク質性部分(例えば、重合体)に結合している。これらの化学的に修飾された親分子は、本発明では「誘導体」と称される。そのような誘導体は、本明細書の開示に基づき当業者により製造されうる。ある実施形態においては、グリコシル化、非グリコシル化または脱グリコシル化親分子および適当な化学的部分を使用して、コンジュゲートを製造することができる。ある実施形態においては、非グリコシル化親分子および水溶性重合体を使用する。ある実施形態においては、本発明に含まれる誘導体は、翻訳後修飾(例えば、N結合型またはO結合型炭水化物鎖、N末端またはC末端のプロセシング)、アミノ酸バックボーンへの化学的部分の結合、およびN結合型またはO結合型炭水化物鎖の化学的修飾が含まれる。ある実施形態においては、該ポリペプチドはまた、該タンパク質の検出および単離を可能にするための酵素標識、蛍光標識、同位体標識またはアフィニティー標識のような検出可能な標識により修飾することができる。そのようなポリペプチド誘導体は、親分子の相対活性を何らかのレベル(減少したレベルを含む)で維持するはずであり、したがって、IL−1インヒビターまたはEPO受容体アゴニストとして使用することができる。
【0101】
ある実施形態においては、水溶性重合体が望ましい。なぜなら、それぞれが結合しているタンパク質は、典型的には、水性環境(例えば、生理的環境)中で沈殿しないからである。ある実施形態においては、該重合体は、治療用産物または組成物の製造のために医薬上許容されるものである。当業者は、該重合体/タンパク質コンジュゲートを治療用に使用するか否かの考慮、また、そうであれば該タンパク質の治療プロフィール(例えば、徐放性の持続時間、タンパク質分解に対する抵抗性、投与量に対する有りうる影響、生物活性、取り扱い易さ、抗原性の度合または欠如、および治療用タンパク質に対する水溶性重合体の他の公知効果)(これらに限定されるものではない)のような考慮事項に基づき、所望の重合体を選択することが可能であろう。
【0102】
適当な臨床的に許容される水溶性重合体には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリ(β−アミノ酸)アミノ酸(ホモ重合体またはランダム共重合体のいずれか)、ポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)および他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)および他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、またはポリオキシエチル化グルコース、コロン酸(colonic acid)または他の炭水化物重合体、フィコールまたはデキストラン、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるポリエチレングリコールは、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態(例えば、モノ−(C−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコール)を包含する意である。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中で安定であるため、製造上有利でありうる。
【0103】
該水溶性重合体はそれぞれ、任意の分子量のものであってもよく、また、分枝状であっても非分枝状であってもよい。典型的には、該分子量が大きくなればなるほど、あるいは分枝が多くなればなるほど、該重合体:タンパク質比は大きくなる。該水溶性重合体はそれぞれ、典型的には、約2kDa〜約100kDaの平均分子量を有する(「約」なる語は、水溶性重合体の調製物中、いくつかの分子は、示されている分子量より大きく、いくつかの分子は該分子量より小さいことを示す)。ある実施形態においては、各水溶性重合体の平均分子量は、約5kDa〜約40kDa、約10kDa〜約35kDa、または約15kDa〜約30kDaである。
【0104】
ある実施形態においては、該タンパク質にはポリエチレングリコール(PEG)が結合している。なぜなら、PEGは、典型的には、哺乳動物において非常に低い毒性を有するからである[Carpenterら,Toxicol.Appl.Pharmacol.,18,35−40(1971)]。アデノシンデアミナーゼのPEG付加体は、重篤な複合型免疫不全症候群の治療のためのヒトにおける使用に関して米国において承認されている。PEGのコンジュゲート化によりもたらされうる第2の利点は、異種タンパク質の免疫原性および抗原性を有効に減少させることである。例えば、ある実施形態においては、ヒトタンパク質のPEG付加体は、激しい免疫応答を誘導するリスクを伴なうことなく、他の哺乳動物種における疾患の治療に有用でありうる。
【0105】
ある実施形態においては、PEGのような重合体を、タンパク質中の1以上の反応性アミノ酸残基、例えば、アミノ末端アミノ酸のαアミノ基、リシン側鎖のεアミノ基、システイン側鎖のスルフヒドリル基、アスパルチルおよびグルタミル側鎖のカルボキシル基、カルボキシル末端アミノ酸のαカルボキシル基、チロシン側鎖へ、または或るアスパラギン、セリンまたはトレオニン残基に結合したグリコシル鎖の活性化誘導体へ簡便に結合させることが可能である。タンパク質との直接反応に適したPEGの多数の活性化形態が記載されている。ある実施形態においては、タンパク質アミノ基との反応のためのPEG試薬には、カルボン酸の活性エステルまたはカルボナート誘導体、特に、脱離基がN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、イミダゾールまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−4−スルホナートであるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。マレイミドまたはハロアセチル基を含有するPEG誘導体は、タンパク質の遊離スルフヒドリル基の修飾のための有用な試薬である。同様に、アミノ、ヒドラジンまたはヒドラジド基を含有するPEG試薬は、タンパク質中の炭水化物基の過ヨウ素酸酸化により生成するアルデヒドとの反応に有用である。
【0106】
反応性水溶性分子とのアシル化反応またはアルキル化反応を含む多数の結合方法が当業者に利用可能である。ある実施形態においては、そのような反応は、アミノ末端化学修飾タンパク質を与える。例えば、EP 0 401 384;Malikら(1992),Exp.Hematol.,20:1028−1035;Francis(1992),Focus on Growth Factors,3(2):4−10(Mediscript,Mountain Court,Friern Barnet Lane,London N20 OLD,UK発行);EP 0 154 316;EP 0 401 384;WO 92/16221;WO 95/34326;WO 95/13312;WO 96/11953;WO 96/19459およびWO96/19459およびペジル化(pegylation)に関する本明細書に引用されている他の刊行物(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0107】
ある実施形態においては、ペジル化はまた、特に、少なくとも1つの反応性ヒドロキシ基(例えば、ポリエチレングリコール)を有する水溶性重合体を使用して行うことができる。ある実施形態においては、該水溶性重合体を活性化基と反応させ、それにより、種々のタンパク質の修飾に有用な「活性化リンカー」を形成させることができる。該活性化リンカーは、単官能性、二官能性または多官能性でありうる。
【0108】
該水溶性重合体を2以上のタンパク質に連結するために使用しうる活性化基には、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフラート、トレシラート、アジジリン、オキシランおよび5−ピピリジルが含まれるが、これらに限定されるものではない。該方法において使用しうる反応性スルホン基を有する有用な試薬には、クロロスルホン、ビニルスルホンおよびジビニルスルホンが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのPEG誘導体は、典型的には、約11以下のpHの水性環境中で長期間にわたり加水分解に対して安定であり、同様に加水分解に安定なコンジュゲートを形成するよう分子との連結を形成しうる。有用なホモ二官能性誘導体には、PEG−ビス−クロロスルホンおよびPEG−ビス−ビニルスルホンが含まれるが、これらに限定されるものではない(WO 95/13312を参照されたい)。
【0109】
WO 97/04003(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)は、反応性ヒドロキシル基を有する化合物を得、該ヒドロキシル基を反応性マイケルアクセプターに変換して活性化リンカーを形成させることによる(該変換のための溶媒としてはテトラヒドロフランを使用する)、スルホン活性化リンカーの製造方法を教示している。該出願はまた、サイズおよび末端基官能性に基づき該リンカーを分離するために疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用する、該活性化リンカーの精製方法を教示している。
【0110】
例えば、分子の化学修飾誘導体は、安定性の増加、循環時間の増加または免疫原性の減少のような利点をもたらしうる(例えば、米国特許第4,179,337号を参照されたい)。誘導体化のための化学的部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなど(これらに限定されるものではない)のような水溶性重合体から選ばれうる。ある実施形態においては、該ポリペプチドは、該分子内のランダムな位置または該分子内の所定の位置において修飾されることが可能であり、1個、2個、3個またはそれ以上の結合した化学的部分を含みうる。
【0111】
ある実施形態においては、N末端化学修飾タンパク質が特に望まれうる。本組成物の例示としてポリエチレングリコールを用いて説明すると、ある実施形態においては、反応混合物中のタンパク質(またはペプチド)分子に対するポリエチレングリコール分子の比率、行なうペジル化反応の型、および選択したN末端ペジル化タンパク質の入手方法を、種々のポリエチレングリコール分子(分子量、分枝などによる)から選択することができる。ある実施形態においては、N末端ペジル化調製物の入手方法(すなわち、必要に応じて、この部分を他のモノペジル化部分から分離すること)は、ペジル化タンパク質分子の集団からN末端ペジル化物質を精製することによるものでありうる。ある実施形態においては、選択的なN末端化学修飾は、特定のタンパク質における誘導体化に利用可能な異なるタイプの一級アミノ基の反応性の相違(リシン対該N末端)を利用する還元的アルキル化により達成されうる。適当な反応条件下、カルボニル基含有重合体による、N末端での該タンパク質の実質的に選択的な誘導体化が達成される。
【0112】
多価形態
多価形態の形成のための技術には、光化学的架橋(例えば、紫外線に対する曝露)、化学的架橋(例えば、ポリエチレングリコールのような二官能性リンカー分子によるもの)および突然変異誘発(例えば、付加システイン残基の導入)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
多価形態は、少なくとも1つの親分子および別の部分を任意の臨床的に許容されるリンカー(例えば、水溶性重合体)と化学的にカップリングすることにより構築することができる。原則として、該リンカーは、典型的には、新たな免疫原性を付与すべきではない。また、ある実施形態においては、該リンカーは、典型的には、その新たなアミノ酸残基により該構造体の疎水性および電荷平衡(これは、その生物分布およびクリアランスに影響を及ぼす)を改変するものであるべきではない。該タンパク質二量体のどのような特性が望まれるのかに応じて、種々の化学的架橋剤を使用することができる。例えば、ある実施形態においては、架橋剤は短く且つ比較的強固である、またはより長く且つより柔軟であることが可能であり、あるいは生物学的に可逆的であることが可能であり、減弱した免疫原性またはより長い薬物動態学的半減期を与えることが可能である。
【0114】
ある実施形態においては、分子は、2工程の合成によりアミノ末端を介して連結される。第1工程においては、1つの分子をアミノ末端において化学的に修飾して、保護されたチオールを導入し、それを、精製後、脱保護し、第2分子との種々の架橋剤を介した部位特異的コンジュゲート化のための結合点として使用する。アミノ末端架橋には、ジスルフィド結合、短鎖二官能性脂肪族架橋剤を使用するチオエーテル連結、および種々の長さの二官能性ポリエチレングリコール架橋剤に対するチオエーテル連結(PEG「ダンベル(dumbbell)」)が含まれるが、これらに限定されるものではない。「モノベル(monobell)」と称されるそのような合成の副生成物も、二量体のPEGダンベル合成に含まれる。モノベルには、遊離重合体末端を有する直鎖状二官能性PEGにカップリングされた単量体が含まれるが、これに限定されるものではない。あるいは、ある実施形態においては、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA)、p−ベンゾキノン(pBQ)またはビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(BS)のような試薬および当技術分野で公知の他の試薬を含む種々のアミン特異的ホモ二官能性架橋技術により、分子を直接的に架橋することができる。ある実施形態においては、種々の二官能性チオール特異的架橋剤(例えば、PEGビスマレイミド)の存在下、イミノチオランのような試薬で分子を直接的にチオール化し、1工程法で二量体化および/またはダンベル化を達成することも可能である。
【0115】
ある実施形態においては、この多価形態用の水溶性重合体は、本明細書に記載のホモ重合体に基づけば、ランダムまたはブロック共重合体、ターポリマー(直鎖状または分枝状、置換または非置換のもの)でありうる。該重合体は、任意の長さ又は分子量のものでありうるが、これらの特性は生物学的特性に影響を及ぼしうる。医薬用途におけるクリアランス率を減少させるのに特に有用な重合体平均分子量は、典型的には、2,000〜35,000ダルトンの範囲内である。また、ある実施形態においては、該重合体の長さは、所望の生物活性を最適化または付与するように様々に変更されうる。
【0116】
ある実施形態においては、二価分子は、ポリペプチドリンカー領域により隔てられた親分子の2つの縦列反復配列を含みうる。該ポリペプチドリンカーの設計は、タンパク質のde novo設計におけるドメイン間の短いループ配列の挿入(Mutter(1988),TIBS13:260−265ならびにReganおよびDeGrado(1988),Science241:976−978(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))と、設計の点で同様でありうる。いくつかの異なるリンカー構築物が構築されており、一本鎖抗体の形成に有用であることが示されている。最も機能的なリンカーは、典型的には、一緒になって親水性配列を構成する12〜25アミノ酸(無反応性側鎖基を有するアミノ酸、例えば、アラニン、セリンおよびグリシン)の様々なサイズを有し、可溶性を増強するよう少数の逆に荷電した残基を有し、柔軟である(WhitlowおよびFilpula (1991),Methods:A Companion to Methods in Enzymology:97−105;およびBrigidoら (1993),J.Immunol.,150:469−479(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))。一本鎖抗体に適したリンカーは、ヒトsTNFR−IIの二量体形態の製造に有効であることが示されている(Neveら (1996),Cytokine8(5):365−370(その開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))。
【0117】
また、ある実施形態においては、多価形態は、置換変異体を使用して形成させることができる。ある実施形態においては、鎖間ジスルフィド結合形成のための不対システイン残基を生成させるための部位特異的突然変異誘発により、二量体または多量体を形成させるために、親分子を修飾することができる。
【0118】
また、ある実施形態においては、親分子をビオチンに化学的にカップリング(共役)させることが可能であり、ついで、得られたコンジュゲートをアビジンに結合させて四価アビジン/ビオチン/親分子を得ることが可能である。また、ある実施形態においては、親分子をジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に共有的にカップリングさせて、得られたコンジュゲートを抗DNPまたは抗TNP−IgMで沈降させて十量体コンジュゲートを形成させることができる。
【0119】
ある実施形態においては、ヒト免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常ドメインの全部または一部に(だだし、少なくとも1つの定常ドメインに)アミノ末端またはカルボキシ末端で融合した親分子配列を各組換えキメラ分子が有する組換え融合タンパク質が産生されうる。ある実施形態においては、重鎖キメラ遺伝子の又は軽鎖含有遺伝子および重鎖キメラ遺伝子の転写および翻訳の後、該遺伝子産物は、二価で提示される親分子を有する一本鎖キメラ分子に合体されうる。そのようなキメラ分子の構築に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,116,964号、WO 89/09622、WO 91/16437、WO 97/23614およびEP 315062(それらの開示を任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。
【0120】
医薬組成物
特に示さない限り、本明細書における医薬組成物に関するすべての記載は、IL−1インヒビター、EPO受容体アゴニスト、TNF−αインヒビター、またはEPO受容体アゴニストおよびIL−1インヒビターおよび/またはTNF−αインヒビターの組合せを含む組成物に関するものである。
【0121】
ある実施形態においては、本発明は、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/または佐剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態においては、それらの治療用分子を一緒に製剤化したり、一緒にキットにパッケージ化することができる。ある実施形態においては、該組成物は、液体または凍結乾燥形態であることが可能であり、種々のpH値およびイオン強度を有する希釈剤(Tris、酢酸塩またはリン酸バッファー)、可溶化剤(例えば、TweenまたはPolysorbate)、担体(例えば、ヒト血清アルブミンまたはゼラチン)、保存剤(例えば、チメロサールまたはベンジルアルコール)および抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはメタ重亜硫酸ナトリウム)を含む。また、ある実施形態には、可溶性または安定性を増加させるために水溶性重合体で修飾された治療用分子のいずれかを含む組成物が含まれる。ある実施形態においては、組成物はまた、長期にわたる制御運搬のためのリポソーム、マイクロエマルション、ミセルまたは小胞内への該治療用分子のいずれかの取り込みを伴いうる。
【0122】
特に、ある実施形態においては、本明細書に記載の組成物は、ヒドロゲル、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセタート共重合体または生分解性重合体のような重合体マトリックス内への取り込みを伴いうる。ヒドロゲルの具体例には、ポリヒドロキシアルキルメタクリラート(p−HEMA)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよび種々の高分子電解質複合体が含まれるが、これらに限定されるものではない。生分解性重合体の具体例には、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAとPGAとの共重合体、ポリアミド、およびポリアミドとポリエステルとの共重合体が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の制御放出製剤には、マイクロカプセル、ミクロスフェア、巨大分子複合体および重合性ビーズ(注射により投与されうるもの)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
個々の組成物の選択は、治療する状態、投与経路および所望の薬物動態学的パラメーターを含む(これらに限定されるものではない)多数の要因に左右される。医薬組成物に適した更に詳細な成分の概説が、Remington’s Pharmaceutical Science,第18版,A.R.Gennaro編,Mack,Easton,PA(1980)(それを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に見出される。
【0124】
ある実施形態においては、該治療用分子の有効量は、例えば、治療目的、投与経路および患者の状態に左右される。したがって、ある実施形態においては、治療者は該用量を力価測定し、最適な治療効果を得るために必要に応じて投与経路を改変することが可能である。典型的な1日量は、前記の要因に応じて、約0.1mg/kg〜100mg/kg以上の範囲でありうる。ある実施形態においては、臨床家は、所望のヘマトクリットの増加または血液障害の臨床的改善が得られる投与量に達するまで、該組成物を投与することが可能である。
【0125】
ある実施形態においては、該組成物は、該治療用分子の1以上の1回量として又は2以上の用量として投与することができる。これらの用量は、該治療用分子の同じ又は異なる量よりなるものであることが可能であり、同じ又は異なる投与経路により、同じ又は異なる時点で投与することができる。ある実施形態においては、該組成物は、該治療用分子のいずれか1つ又はいずれかの組合せを含む組成物として投与することができる。ある実施形態においては、該組合せは、同じ又は異なる量の該治療用分子を含みうる。ある実施形態においては、該組成物は、移植装置またはカテーテルを介した連続的注入として投与することができる。該連続的注入が2以上の治療用分子を含有する或る実施形態においては、それは、同じ又は異なる濃度の該治療用分子を含有しうる。
【0126】
更なる研究が行われるにつれて、種々の患者における種々の状態の治療のための適当な投与量レベルに関する情報が得られるであろう。当業者は、治療状況、治療中の障害のタイプ、被投与体の年齢および全身健康状態を考慮して、適当な投与量を確認することが可能であろう。
【0127】
インビボ投与に使用する組成物は、典型的には無菌性である。ある実施形態においては、これは、滅菌濾過膜による濾過により容易に達成することができる。該組成物を凍結乾燥する場合には、これらの方法を用いる滅菌を、凍結乾燥および再構成(還元)の前または後に行うことができる。ある実施形態においては、非経口投与用の組成物を凍結乾燥形態または溶液として保存することができる。
【0128】
ある実施形態においては、無菌連絡口を有する容器、例えば静脈内用液バッグ、または皮下注射針で突き刺すことができる栓を有するバイアル内に配置する。
【0129】
該組成物の投与経路は、公知方法、例えば、経口的、経鼻、肺内、直腸内投与、または皮下、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内もしくは病変内経路による注射もしくは注入、または徐放系もしくは移植装置(所望によりカテーテルの使用を伴いうる)など(これらに限定されるものではない)によるものである。ある実施形態においては、該組成物は、連続的に、注入により、ボーラス注射により、または移植装置により投与することができる。
【0130】
ある実施形態においては、組成物は、該治療用分子が吸収された膜、スポンジまたは他の適当な物質の、罹患領域内への移植により、局所的に投与することができる。ある実施形態においては、移植装置を使用する場合には、該装置は、任意の適当な組織または器官内に移植することが可能であり、該組成物の運搬は、連続的注入を用いるカテーテルによる又は連続的投与による又はボーラスによる該装置を介した直接的なものでありうる。
【0131】
ある実施形態においては、徐放性処方または製剤として投与することができる。徐放製剤の適当な具体例には、造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態の半透性重合体マトリックスが含まれるが、これらに限定されるものではない。徐放性マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号およびEP 58,481)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートとの共重合体(Sidmanら,Biopolymers,22:547−556[1983])、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277[1981]およびLanger,Chem.Tech.,12:98−105[1982])、エチレンビニルアセタート(Langerら,前掲)またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、徐放組成物には、当技術分野で公知のいくつかの方法(例えば、Eppsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692[1985];EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949)のいずれかにより製造することができるリポソームが含まれうるが、これに限定されるものではない。
【0132】
ある実施形態においては、エクスビボ様態で組成物を使用することが望ましいかもしれない。この場合、患者から摘出した細胞、組織または器官を組成物にさらし、ついで該細胞、組織および/または器官を該患者内に再び移植する。
【0133】
ある実施形態においては、該ポリペプチド、断片、変異体または誘導体を発現させ分泌させるために当技術分野で公知の方法を用いて遺伝的に操作した或る細胞を患者に移植することにより、組成物を運搬することができる。ある実施形態においては、そのような細胞は動物またはヒト細胞であることが可能であり、患者自身の組織またはヒトもしくは非ヒト性の別の起源に由来するものでありうる。ある実施形態においては、該細胞を不死化することができる。しかし、免疫応答の機会を減少させるために、ある実施形態においては、該細胞をカプセル化(封入)して周辺細胞の浸潤を避けることができる。該カプセル化物質は、典型的には、該タンパク質産物の放出を可能にするが患者の免疫系による又は周辺組織からの他の有害因子による該細胞の破壊を妨げる生体適合性半浸透性重合体封入容器または膜である。
【0134】
細胞の膜封入のために使用する方法は当業者によく知られており、封入された細胞の製造および患者へのその移植は、過度な実験を行わなくても達成されうる。例えば、米国特許第4,892,538号;第5,011,472号;および第5,106,627号を参照されたい。生きた細胞を封入するための系はPCT WO 91/10425(Aebischerら)に記載されている。種々の他の徐放または制御(コントロールド)運搬産物、例えば、リポソーム担体、生分解性粒子またはビーズを製剤化するための技術も当業者に公知であり、例えば、米国特許第5,653,975号(Baetgeら,CytoTherapeutics,Inc.)に記載されている。ある実施形態においては、該細胞は、封入されたものも封入されていないものも、患者の適当な身体組織または器官に移植することができる。
【0135】
タンパク質は、非経口的に投与されると、循環から急速に消失する可能性があり、したがって、比較的短寿命の薬理学的活性を惹起しうる。したがって、生物活性タンパク質の比較的大用量の頻繁な注射を用いて、この投与方法での治療効力を維持することができる。水溶性重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリン)の共有結合により修飾されたタンパク質は、静脈注射後、対応する未修飾タンパク質より実質的に長い血中半減期を示すことが公知である[Abuchowskiら,In:“Enzymes as Drugs”,Holcenbergら編,Wiley−Interscience,New York,NY,367−383(1981),Newmarkら,J.Appl.Biochem.4:185−189(1982)およびKatreら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,1487−1491(1971)(それらを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)]。また、そのような修飾は、水溶液中のタンパク質の溶解性を増加させ、凝集を排除または減少させ、該タンパク質の物理的および化学的安定性を増強し、該タンパク質の免疫原性および抗原性を著しく減少させうる。その結果、ある実施形態においては、そのような重合体−タンパク質付加体を該未修飾タンパク質より低頻度または低用量で投与することによっても、所望のインビボ生物活性が達成されうる。ある実施形態においては、IL−1インヒビターおよび/またはTNFインヒビターは、単独で又は1以上の追加的な造血因子もしくは他の治療用分子、例えばEPO(Epogen(登録商標))、新規赤血球形成刺激タンパク質(NESP,Aranesp(商標))、G−CSF(Neupogen(登録商標))およびその誘導体、GM−CSF、CSF−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、L−18BP、IL−18インヒビター(例えば、IL−18抗体)、インターフェロンγ(IFN−γ)インヒビター(例えば、IFN−γ抗体)、IGF−1またはLIF(白血病阻害因子)と共に、造血障害の治療において使用することができる。
【0136】
ある実施形態においては、IL−1および/またはTNFインヒビターあるいはそのようなインヒビターおよびEPO受容体アゴニストで多数の疾患が治療可能でありうる。これらには以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:骨髄線維症、骨髄硬化症、大理石骨病、転移性癌、急性白血病、多発性骨髄症、ホジキン病、リンパ腫、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、レトラー・シーヴェ病、不応性赤芽球性貧血、ディ・ググリエルモ症候群、うっ血性巨脾症、ホジキン病、カラアザール、サルコイドーシス、原発性脾性汎血球減少症、粟粒結核症、散在性真菌症、劇症性敗血症、マラリア、ビタミンB12および葉酸欠乏症、ダイアモンド・ブラックファン貧血、色素沈着減少障害、例えばまだら症および白斑。
【0137】
ある実施形態においては、IL−1および/またはTNFインヒビターあるいはそのようなインヒビターおよびEPO受容体アゴニストでの治療は、急性出血後の造血回復の増強にも使用することができる。
【0138】
ヘマトクリットレベルを増加させるための治療のための適当な化合物を試験するために、そのような活性を試験する任意のアッセイまたはインビボプロトコールを使用することができる。そのようなアッセイおよびインビボプロトコールの具体例は、国際特許出願WO 00/24893(それを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。当業者は、適当なアッセイを熟知しているであろう。
【0139】
以下の実施例は、本発明をより完全に例示するために記載されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0140】
IL−1ra類似体の投与はヘマトクリットレベルを増加させる
多施設二重盲検用量範囲探索研究において、活性な重篤または非常に重篤な関節リウマチを有する被験者(N=472)に、プラセボ、30、75または150mgの組換え非グリコシル化IL−1ra類似体(「アナキンラ(anakinra)」)の皮下注射を6ヶ月にわたり毎日行った。治療群によるベースラインデモグラフィックおよび病歴に関しては、図1を参照されたい。アナキンラは、大腸菌(E.coli)内で組換え的に製造されたヒトIL−1raの非グリコシル化形態である。
【0141】
アナキンラは、懸濁液中の精製アナキンラとして30、75または150mg/mlの濃度で注射した。該懸濁液は、140mM 塩化ナトリウム、10mM クエン酸ナトリウム、0.1%(w/w) ポリソルベート80、0.5mM EDTAおよび滅菌注射用蒸留水を含有していた。プラセボは該懸濁液からなるものであった。アナキンラおよびプラセボ溶液を20〜80℃の温度で保存した。すべての溶液のpHは6.5であった。
【0142】
総容積1mlを毎日注射した。可能な注射部位には、大腿前部、臍の上の腹部、および上腕背部が含まれたが、これらに限定されるものではない。被験者は注射部位を順次変更するよう推奨された。被験者は、該研究液を全24週にわたり同じ時刻(好ましくは夕刻)に注射するよう指示された。
【0143】
ヘマトクリットを、ベースラインにおいて及び該アナキンラ療法の24週間後に評価した。集められたアナキンラ群と該プラセボ群との間のヘマトクリット(容量%)の、第24週におけるベースラインからの変化の差を、Wilcoxon−Mann−Whitney検定(E.L.Lehmann,Nonparametrics:Statistical Methods Based on Ranks,1975(それを任意の目的のために本明細書に組み入れることとする))により評価し、二標本t検定で確認した。
【0144】
アナキンラで処理された被験者の平均ヘマトクリットは6ヶ月で0.28容量%増加し、一方、プラセボで処理された被験者の平均ヘマトクリットは同期間で0.867容量%減少した(図2)。
【実施例2】
【0145】
アナキンラの投与は貧血を改善する
実施例1に記載のヘマトクリットレベルに対するアナキンラの効果の研究において、関節リウマチを有する被験者の亜集団は、該研究の開始に際して、34%以下のヘマトクリットレベルとして定義される貧血(Pincusら,Am.J.Med.89:161,1990(これを任意の目的のために参照により本明細書に組み入れることとする))であった。該アナキンラ処理被験者のうちの50名(14.2%)および該プラセボ処理被験者のうちの13名(10.7%)が、この度合の貧血で特徴づけられた(ベースラインデモグラフィックスおよび病歴に関しては、図3を参照されたい)。
【0146】
この研究における貧血被験者の数は少なかったが、該プラセボ投与被験者より多数のアナキンラ処理患者が、24週間の治療の後、ヘマトクリットレベルにおける改善を示した。3用量のIL−1raのそれぞれが投与された患者において、貧血が改善した(結果に関しては、図4を参照されたい)。
【実施例3】
【0147】
アナキンラの投与は関節疾患には無関係に貧血を改善する
実施例2に記載の貧血に対するアナキンラの投与の効果の研究において、ヘマトクリットレベルにおける6容量%以上の改善を示した7名のアナキンラ処理患者のうちの3名は、ACR20応答基準を満たさなかった(図5および6)。ACR20は、以下の基準が満たされた場合に被験者を「改善した」と定義する:触れると痛い/痛みを伴う関節の数におけるベースラインからの>20%の減少;腫脹関節の数のベースラインからの>20%の減少;および以下の5つの基準のうちの3つにおけるベースラインからの>20%の減少:1)病気の活性の被験者評価;2)病気の活性の調査者評価;3)痛みの被験者評価;4)健康評価アンケート(HAQ);または5)C反応性タンパク質。したがって、IL−1ra療法は、関節疾患の活性に対するその効果とは無関係に、関節リウマチ被験者における貧血を改善しうる。
【0148】
本発明は、その好ましい実施形態であるとみなされるものに関して記載されているが、本発明は、開示されている実施形態に限定されるべきではなく、それどころか、特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の修飾および均等物を包含すると意図され、特許請求の範囲には、すべてのそのような修飾および均等物を包含するよう最も広い解釈が与えられるべきである。
【実施例4】
【0149】
第0日に、8〜10週齢の雌Lewisラットの群を、0.85% 食塩水中の15μg/kgの用量のラムノースで平衡化されたペプチドグリカン−多糖重合体(PG−APS)(Lee Laboratories,Grayson,GA)(0.520mlの容積中で3mg/ラット、ラットはストックPG−APSで注射)の腹腔内(i.p.)注射で免疫した。また、第0日に、別の群の8〜10週齢の雌Lewisラットに0.85% 食塩水の0.5mlのi.p.注射を行って、担体注射ラットを得た。
【0150】
第0日から第77日まで毎週、尾動脈からの血液をEDTAコート化Microtainerチューブ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NY)内に集め、全血球計算(CBC)を、ラットの血液に関して校正されたADVIA 120Hematology System(Bayer Corporation,Tarrytown,NY)上で行った。第42日に、該ラットを2群に分けた。12.0g/dL未満の平均ヘモグロビン(Hb)濃度を有するラットを貧血と称することにした。同様の平均Hb濃度を有する貧血ラットを実験群に配置した。
【0151】
対照群は、互いに同様のHb濃度を有する担体注射ラットよりなるものであった。
【0152】
第43日以降は、該実験群のラットを8つの処理群に細分した。n=6である担体群を除く全ての群はn=5であった。7つの群を以下の処理法の1つで処理した:a)100mg/kgのFc−IL−1ra(3回/週)、b)3μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)、c)6μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)、d)100mg/kgのFc−IL−1ra(3回/週)および3μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)、またはe)100mg/kgのFc−IL−1ra(3回/週)および6μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)、f)4mg/kgのPEG sTNR−R1(3回/週)、g)4mg/kgのPEG sTNR−R1(3回/週)および3μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)、h)4mg/kgのPEG sTNR−R1(3回/週)および6μg/kgのARANESP(商標)(1回/2週)。該実験群の1つの群を、0.4mLの担体溶液で、該サイトカインインヒビターと同じ計画で注射し、すべての該実験群と同様にして収容し採血した。該処理期間は第57日まで継続した。
【0153】
実験データを、尾静脈から採取した血液から得、サンプリングと同じ日に、ADVIA全血球計算(CBC)分析装置(Bayer,Inc)上で該製造業者のプロトコールに従い分析した。血清としての血液を遠心分離血清分離装置内に集め、凝固させ、3000rpmで5分間遠心し、血清をエッペンドルフチューブ内にピペットで移し、ドライアイス上での一晩の特急宅配便によりLabCorp,Inc.(Research Park,NC)に運搬するまで−80℃で保存した。CBC用に集めた血液は、第30、42、45、49、52、56、59、63、66、70、77日に得た。血清として集めた血液は、第0、42、49、57、63、77日に得た。要するに、治療処理を開始した後、CBC分析用には週2回、血清採取には週1回、ラットから採血した。
【0154】
鉄濃度以外のこれらのパラメーターのすべては、前記で既に説明したAdvia装置分析により同時に得られた「全血球計算」(CBC)分析により得たデータの一部である。全血清鉄濃度(TSI)およびトランスフェリン全鉄結合能は、LabCorp,Inc.(Research Park,NC)により測定した。不飽和鉄結合能(UIBC)は、TIBC−TSI=UIBCとして計算した(“Clinical Biochemistry of Domestic Animals”p.263−264.Jiro J.Kaneko編,Academc Press Inc.Harcourt Brace Jovanovich Publishers)。脚容積は、Feige Uら,Cellular Molecular Life Sciences 57:1457−1470(2000)に記載のとおりに測定した。
【0155】
Fc−IL−1raのみで処理した実験群からのラットは、該実験群からの未処理ラットと比較して、より高い平均血清Hb濃度に傾き、平均脚浮腫を減少させた。100mg/kg Fc−IL−1raの投与は、平均血清Hb濃度を、未処理ラットの平均血清Hb濃度に対して1.8g/dL増加させ(p=0.1)(図7を参照されたい)、平均脚容積を、未処理ラットの平均脚容積に対して0.4ml減少させた(p=0.1)(図8を参照されたい)。3または6μg/kgのARANESP(商標)のみで処理した実験群からのラットでは、未処理ラットと比較して、平均血清Hb濃度が上昇した。3μg/kg ARANESP(商標)のみでの処理は、平均血清Hb濃度を、未処理ラットの平均Hb濃度に対して0.4g/dL増加させた(p=0.7)(図7を参照されたい)。6μg/kg ARANESP(商標)のみでの処理は、平均血清Hb濃度を、未処理ラットの平均血清Hb濃度に対して1.3g/dL増加させた(p=0.4)(図7を参照されたい)。
【0156】
100mg/kg Fc−IL−1raおよび3μg/kg ARANESP(商標)での該実験群からのラットの処理は、100mg/kg Fc−IL−1raのみによる処理と比較して平均血清Hb濃度を有意に増加させた。しかし、100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)での該実験群からのラットの処理は、Fc−IL−1raまたはARANESP(商標)のみでの処理と比較して、平均血清Hb濃度における増加を2倍以上にした。100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)での処理は、100mg/kg Fc−II−1raのみでの処理からの増加より2.2g/dL多く平均血清Hb濃度を増加させた(p=0.04)(図7を参照されたい)。100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)での処理は、平均血清Hb濃度を、6μg/kg ARANESP(商標)のみでの処理からの増加より2.7g/dL多く増加させた(p=0.01)(図7を参照されたい)。したがって、ラットにおいて、100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)での処理から生じた、未処理実験ラットに対する平均血清Hb濃度の増加の合計は、4.0g/dLであった。これは、100mg/kg Fc−IL−1raのみ及び6μg/kg ARANESP(商標)のみでの処理から生じた、未処理実験ラットに対する平均血清Hb濃度の増加(それぞれ、1.8g/dLおよび1.3g/dL)の和より大きい。
【0157】
100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)の両方での該実験群からのラットの処理は、同用量のいずれか一方での単独処理と比較して平均網状赤血球数を増加させ(p<0.004)、同用量の6μg/kg ARANESP(商標)のみの場合と比較して赤血球(RBC)数を増加させた(p<0.03)。100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)の両方での該実験群からのラットの処理はまた、全血清鉄濃度を、6μg/kg ARANESP(商標)のみでの処理より44μg/dL多く増加させた(p=0.02)(図14を参照されたい)。100mg/kg Fc−IL−1raおよび6μg/kg ARANESP(商標)の両方での該実験群からのラットの処理はまた、平均赤血球容積を、6μg/kg ARANESP(商標)のみの場合(p=0.008)または100mg/kg Fc−IL−1raのみの場合(p=0.04)より多く増加させた(図11を参照されたい)。この処理はまた、平均赤血球Hbを、6μg/kg ARANESP(商標)のみの場合(p=0.003)または100mg/kg Fc−IL−1raのみの場合(p=0.08)より多く増加させた(図12を参照されたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン1(IL−1)インヒビターを含む治療的に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる、哺乳動物における血液障害の治療方法。
【請求項2】
該血液障害の治療が該哺乳動物におけるヘマトクリットを上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該目標ヘマトクリットが少なくとも約30%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該医薬組成物が、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤および佐剤の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該希釈剤がクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムのバッファー溶液である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該希釈剤がクエン酸ナトリウムのバッファー溶液である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該可溶化剤がポリソルベート80である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
該医薬組成物が医薬上許容される希釈剤および可溶化剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
該希釈剤がクエン酸ナトリウムであり、該可溶化剤がポリソルベート80である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該IL−1インヒビターがインターロイキン1受容体アンタゴニストである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
該IL−1インヒビターが、インターロイキン1受容体アンタゴニストとFcドメインとを含むキメラタンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
該IL−1インヒビターがFc−IL−1raである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該FcドメインがIgG Fcドメインである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
該哺乳動物が、腎機能の低下または喪失に関連した貧血に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
該哺乳動物が、関節リウマチに関連した貧血に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
該哺乳動物が、骨髄抑制療法に関連した貧血に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
該骨髄抑制療法が化学療法剤または抗ウイルス薬を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該哺乳動物が、過度の出血に関連した貧血に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
治療的に有効な量の鉄を投与することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物における血液障害の治療方法であって、治療的に有効な量のIL−1インヒビターおよびエリスロポエチン(EPO)受容体アゴニストを該哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項21】
該血液障害の治療が該哺乳動物におけるヘマトクリットを上昇させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該血液障害が鉄貯蔵障害である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
該IL−1インヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを別々の組成物中で投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
該IL−1インヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを、別々の組成物中で、異なる時点で投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
該IL−1インヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを、別々の組成物中で、同時に投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
該IL−1インヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを同じ組成物中で投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
該IL−1インヒビターがアナキンラ(anakinra)である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
該IL−1受容体アンタゴニストがFc−IL−1raである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
該EPO受容体アゴニストがエポエチン(epoietin)αである、請求項に20に記載の方法。
【請求項30】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチン(darbepoietin)αである、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
該IL−1インヒビターがアナキンラまたはFc−IL−1raであり、該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
該IL−1インヒビターがアナキンラまたはFc−IL−1raであり、該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
Fc−IL−1raを該哺乳動物に週2回または週3回投与し、ダーベポエチンαを該哺乳動物に2週間に1回投与する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
治療する血液障害が慢性疾患の貧血である、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
該哺乳動物が、腎機能の低下または喪失に関連した貧血に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
該哺乳動物が、関節リウマチに関連した貧血に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
該哺乳動物が、骨髄抑制療法に関連した貧血に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
該骨髄抑制療法が化学療法剤または抗ウイルス薬を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
該哺乳動物が、過度の出血に関連した貧血に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項40】
IL−1インヒビターおよびEPO受容体アゴニストを含んでなる組成物。
【請求項41】
該IL−1インヒビターがアナキンラである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
該IL−1インヒビターがFc−IL−1raである、請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項39に記載の組成物。
【請求項44】
該IL−1インヒビターがアナキンラまたはFc−IL−1raであり、該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項39に記載の組成物。
【請求項45】
該IL−1インヒビターがアナキンラまたはFc−IL−1raであり、該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項39に記載の組成物。
【請求項46】
該組成物が、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤および佐剤の少なくとも1つを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
哺乳動物における血液障害の治療方法であって、治療的に有効な量のTNFインヒビターおよびエリスロポエチン(EPO)受容体アゴニストを該哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項48】
該血液障害の治療が該哺乳動物におけるヘマトクリットを上昇させる、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
該TNFインヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを別々の組成物中で投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
該TNFインヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを、別々の組成物中で、異なる時点で投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
該TNFインヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを、別々の組成物中で、同時に投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
該TNFインヒビターおよび該EPO受容体アゴニストを同じ組成物中で投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
該TNFインヒビターが、sTNF−RI、D2E7、オネルセプト(onercept)、CDP 870、インフリキシマブ(infliximab)およびエタネルセプト(etanercept)から選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
該TNFインヒビターがsTNF−RIである、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
該TNFインヒビターがsTNF−RIであり、該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
該TNFインヒビターがsTNF−RIであり、該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
該sTNF−RIを該哺乳動物に週1回または週2回投与し、ダーベポエチンαを該哺乳動物に2週間に1回投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
治療する血液障害が慢性疾患の貧血である、請求項47に記載の方法。
【請求項61】
該哺乳動物が、腎機能の低下または喪失に関連した貧血に罹患している、請求項47に記載の方法。
【請求項62】
該哺乳動物が、関節リウマチに関連した貧血に罹患している、請求項47に記載の方法。
【請求項63】
該哺乳動物が、骨髄抑制療法に関連した貧血に罹患している、請求項47に記載の方法。
【請求項64】
該骨髄抑制療法が化学療法剤または抗ウイルス薬を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
該哺乳動物が、過度の出血に関連した貧血に罹患している、請求項47に記載の方法。
【請求項66】
TNFインヒビターおよびEPO受容体アゴニストを含んでなる組成物。
【請求項67】
該TNFインヒビターが、sTNF−RI、D2E7、オネルセプト、CDP 870、インフリキシマブおよびエタネルセプトから選ばれる、請求項65に記載の組成物。
【請求項68】
該TNFインヒビターがsTNF−RIである、請求項65に記載の組成物。
【請求項69】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項65に記載の組成物。
【請求項70】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項66に記載の組成物。
【請求項71】
該EPO受容体アゴニストがダーベポエチンαである、請求項67に記載の組成物。
【請求項72】
該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項65に記載の組成物。
【請求項73】
該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項66に記載の組成物。
【請求項74】
該EPO受容体アゴニストがエポエチンαである、請求項67に記載の組成物。
【請求項75】
該組成物が、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤および佐剤の少なくとも1つを更に含む、請求項65に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−46519(P2012−46519A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195696(P2011−195696)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2008−95038(P2008−95038)の分割
【原出願日】平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】