組換えトリパラミクソウイルスワクチン並びに前記の製造および使用方法
本発明は操作されたAPMV組成物またはワクチンを包含する。前記ワクチンまたは組成物は組換えAPMV組成物またはワクチンであり得る。本発明は、APMVのゲノムを改変して組換えAPMVを生成する方法;そのような方法によって調製された改変APMV;DNAおよびタンパク質配列;並びにそのような組換えAPMVを細胞および宿主に感染させる方法を包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による本明細書への包含
本出願は、米国仮特許出願61/235,912号(2009年8月21日出願)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明はトリパラミクソウイルス(APMV)およびAPMV配列に関する。本発明は、多様な病原体に対する防御のために安全な免疫担体として使用される、外来遺伝子の挿入用および発現用ウイルスベクターに関する。本発明は、生弱毒化ワクチンの製造のための逆遺伝学系のベクターワクチンに関する。本発明はまた、in vitro発現ベクターでサブユニットの製造に用いることができる、或いはウイルスまたはプラスミドタイプのin vivo発現ベクターに組み込まれる配列として用いることができるポリヌクレオチドに関する。
【0003】
本発明は、未改変および改変APMVウイルス、前記の製造および使用方法、並びにある種のDNAおよびタンパク質配列に関する。より具体的には、本発明は、APMVウイルスの天然に存在するゲノムに変異を生じたAPMVウイルス(“APMV変異体”または“組換えAPMV”)、並びにそのようなAPMV変異体または組換えAPMVを製造および使用する方法に関する。
【0004】
背景技術
ウイルスベクターワクチンは、ワクチン開発においてもっとも急速に成長しつつある分野の1つである。世界の主要な感染症(HIV、結核およびマラリヤ)に対する臨床開発中の多くのワクチンがウイルスベクターに依っている。動物用ウイルスベクターワクチンは既に市販されている(例えば、愛玩動物および愛玩飼鳥類用アビポックスベクターワクチン、飼鳥類用トリヘルペスウイルスベクターワクチン、野生生物用ワクシニアウイルスベクターワクチン)。しかし他の家畜用ベクターワクチンは開発の途上にある。ウイルスベクターワクチンの利点は、厳格に弱毒化され当該動物それ自身に対して疾患を引き起こさないベクター骨格を使用することによりそれらワクチンを安全に投与できるという点である。これまで用いられてきたウイルスベクターの欠点は、母親由来抗体または過去の感染により獲得した抗体の存在である。これらの抗体はベクターウイルスを中和し、したがってベクターワクチンの成功を低下させる。ベクターワクチン開発の1つの主要な原動力は、高病原性インフルエンザウイルスH5N1の発生であった(前記ウイルスは最初アジアで後にヨーロッパおよびアフリカで発生した)。いくつかのベクターワクチン候補が開発され、前記には鶏痘ウイルス(Taylor et al, 1988)、ワクシニアウイルス(Chambers et al., 1988)、ラウス肉腫ウイルス(Hunt et al, 1988)、アデノウイルス(Tang et al., 2002, Gao et al, 2006)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Schultz-Cherry et al, 2000)、ニューカッスル病ウイルス(US6,719,979, Veits et al., 2006, Swayne et al, 2002, Park et al, 2006)、伝染性咽頭気管炎ヘルペスウイルス(Veits et al. 2003)、シチメンチョウヘルペスウイルス(Darteil et al., 1995)およびアデノウイルス系ベクターワクチン(Hoelscher et al, 2008, Toro et al, 2007)が含まれる。これらベクターワクチンの有効性は当該ウイルスに未経験の鳥類で試験されたが、当該ウイルスベクターに対しておよび/または当該挿入物によってコードされたタンパク質に対して免疫が以前から存在する鳥類におけるこれらのベクターワクチンの有効性に関する報告はこれまでのところ発表されていない。
【0005】
パラミクソウイルス科のウイルスには、ヒトの病原体(麻疹、おたふくかぜ、パラインフルエンザおよび呼吸器合胞体形成ウイルス(RSウイルス))および動物の病原体(ニューカッスル病ウイルスおよび牛疫ウイルス)の両方が含まれ、これらは公衆衛生とともに地球規模の経済に重大な影響を引き起こす(Lamb et al., 2007)。本ウイルス科のメンバーの定義はモノパート性のマイナス鎖で一本鎖のRNAゲノムを有することである。パラミクソウイルス科は、2つの亜科、すなわちパラミクソビリナエ(Paramyxovirinae)およびプニューモビリナエ(Pneumovirinae)から成る。最近の再分類によれば、パラミクソビリナエ亜科は5つの属、すなわちモルビリウイルス(Morbillivirus)、ヘニパウイルス(Henipavirus)、ルブラウイルス(Rubulavirus)、レスピロウイルス(Respirovirus)およびアブラウイルス(Avulavirus)を含み、一方プニューモビリナエ亜科はプニューモウイルス(Pneumovirus)およびメタプニューモウイルス(Metapneumovirus)を含む(Mayo, 2002)。トリパラミクソウイルス(APMV)はアブラウイルス属に分類され、血球凝集阻害(HI)試験を用いて区別される抗原的に別個の9つの血清型を含む(Alexander, 1988)。この9つの血清型のうちで、APMV-1サブタイプに属する単離株は産業用家禽で激烈な疾病を引き起こし、これら単離株はベロジェニックニューカッスル病ウイルス(NDV)として分類される。より毒性の低いNDV型は、メゾジェニックおよびレントジェニック単離株と称され、後者の型は家禽ではほとんど無症状である。APMV-2、3、6および7に属する単離株は家禽の疾患と関連している。特に、APMV-2および3の単離株による感染は軽度の呼吸器疾患並びに卵の品質および量における問題を生じ得る(Bankowski et al., 1981; Redmann et al., 1991; Tumova et al., 1979; Zhang et al., 2007)。APMV-6および7の単離株は、シチメンチョウ、アヒルおよび渡り鳥に感染することが判明しており、さらに二次感染を併発する可能性がある呼吸器疾患を誘発し得る(Saif et al., 1997; Shortridge et al., 1980)。他方、APMV-4、5、8および9の単離株はアヒル、水鳥および野鳥から単離されたが、これらの鳥類はウイルス感染後ほとんど臨床徴候を示さない(Alexander et al., 1983; Capua et al., 2004; Gough et al., 1984; Maldonado et al., 1995; Shortridge et al., 1980)。
【0006】
いくつかのNDV単離株の完全なゲノム配列が確立され、NDV病毒性の種々の決定因子の解明に用いられた(de Leeuw et al., 1999; Krishnamurthy et al., 1998; Zou et al., 2005)。ここ2年間で、APMV-1以外のいくつかのAPMVの配列が発表された。例えばGenBankアクセッション番号は以下のとおりである:APMV-2についてはEU338414、APMV-3についてはEU403085、APMV-4についてはFJ177514、APMV-6についてはEU622637、APMV-7についてはFJ231524、APMV-8についてはFJ215863、FJ215864およびFJ619036、APMV-9についてはEU910942。配列情報以外には病毒性因子に関して多くは明らかではない。APMV2−9の単離株はほとんど渡り鳥から単離された。興味深いことには、そのような単離株によるニワトリの実験的感染の報告は極めて少ない(Saif et al., 1997)。これらのAPMVは野鳥間で広く循環し、ある種の事例では市販の群れから単離され(Zhang et al., 2007)、ときにそれらの群れで疾患を引き起こすので(Saif et al., 1997; Shihmanter et al., 1998; Shihmanter et al., 1998)、家禽におけるそれらAPMVの病毒性に関する情報が必要とされる。
【0007】
APMV単離株の大半が比較的軽度の疾患をもたらすが、前記疾患は併発する細菌またはウイルス感染の存在により悪化する可能性があり、それらは経済的な影響を引き起こし得る。特に、APMV-2は、最初南カリフォルニアで急性咽頭気管炎に罹患したニワトリから二次性病源体として1956年に単離された(Bankowski et al., 1960)。それ以来、この血清型の多様な株がいくつかのトリの種から単離され、APMV-2が世界中にまき散らされていることを明らかにした(Andral et al., 1984; Bradshaw et al., 1979; Fleury et al., 1979; Goodman et al., 1988; Lang et al., 1975; Lipkind et al., 1982; Lipkind et al., 1979; Zhang et al., 2006)。Bankowskiらは、産卵雌シチメンチョウを自然状態でおよび人工的にAPMV-2に曝露したとき孵化率および家禽収量に重大な低下をもたらすことを報告した(Bankowski et al., 1981)。APMV-4単離の最初の例は、米国ミシシッピーの飛路途上でハンターに殺された野生のカモから(Webster et al., 1976)、並びに家禽のインフルエンザ調査プログラム中の香港のニワトリ、アヒルおよびカモからであった(Alexander et al., 1979)。出血性腸炎に罹患したリングコガモ(ringed teal)由来の単離株(Gough et al., 1984)はさておき、他の全ての単離株は家禽では外見的に非病原性であり、世界中の水鳥で広く分布していることが判明した(Stanislawek et al., 2002; Tumova et al., 1989; Yamane et al., 1982)。Goughらは、1週齢のアヒルおよび2週齢のニワトリへのリングコガモ由来単離株の鼻内接種後に臨床徴候は認められず非常に低いHI力価(1:8以下)が得られることを報告した(Gough et al., 1984)。同様に、APMV-6の最初の単離株もまたインフルエンザ調査プログラムの結果として香港で家禽から得られ、実験的に感染させたニワトリから得られた低いHI力価からニワトリで非病原性であると報告された(Shortridge et al., 1980)。しかしながら、シチメンチョウのAPMV-6感染は軽度の呼吸器疾患および卵の生産の問題をもたらすことが報告されている(Alexander, 2003)。
【0008】
APMV-8(ガチョウ/デラウェア/1053/76)は、最初ハンターに殺されたカナダガチョウ(ブランタ・カナデンシス、Branta canadensis)から単離された(Rosenberger et al., 1974)。南スペインでの野鳥の血清学的調査(1990年から1992年)によって、被検血清の43%を占めるAPMV-8抗体の顕著な優勢性が示された(Maldonado et al., 1995)。APMV感染についてのニュージーランドにおける健常な生存マガモ(mallard duck)の状態を調べるまた別の血清学的試験は、被検血清の56%にAPMV-8抗体が存在することを明らかにした(Stanislawek et al., 2002)。Warkeら(2008)は、ニワトリの調査血清の16%から31%がAPMV-8抗体を有する可能性を報告した。しかしながら、前記血清はHIアッセイで非常に特異的に反応するわけではないので、APMV-1に対する高力価抗体の存在により偽のHI試験陽性の蓋然性が高い可能性がある。ニワトリインフルエンザウイルスについて集団を調査しているときに単離されたAPMV-8のいくつかの水鳥単離株の例外とともに(Stallknecht et al., 1991)、このウイルスの優勢性および病原性については情報が不足している。
【0009】
NDVのマイナス鎖RNAゲノムのための逆遺伝学系の開発は、当該ゲノムへの外来遺伝子配列の挿入を可能にし、したがってワクチン免疫および遺伝子療法のための組換えNDVベクターの作製を可能にした(Krishnamurthy et al., 2000; Peeters et al., 1999; Roemer-Oberdoerfer et al., 1999)。外来ウイルスタンパク質、例えばインフルエンザAウイルスのH1サブタイプのHAタンパク質(Nakaya et al., 2001)、伝染性嚢病(bursal disease)ウイルス(IBDV)のVP2タンパク質(Huang et al., 2004)、トリインフルエンザウイルスヘマグルチニンのサブタイプH5(Veits et al., 2006; Ge et al., 2007)およびサブタイプH7(Park et al., 2006)を発現する組換えNDVベクターが報告されている。しかしながら、そのようなワクチンの大半はSPFの鳥でのみ示されただけである。NDVは激烈な疾患を家禽で引き起こし、家禽産業に重大な経済的損失をもたらす。したがって、市場のニワトリは世界の大半の国々でNDVに対して日常的にワクチンを接種される。このため、免疫された親群に由来するニワトリは高レベルの母親由来抗体を有している。通常の生NDVワクチンはこれらの抗体の存在下においても防御を提供する。しかしながら、組換えNDVワクチン(外来遺伝子挿入物を含む)は、生NDVワクチンと比較して一般的により弱毒化され、それらの有効性はNDV母親由来抗体の存在で阻害される可能性がある。したがって、異種抗原発現用の安全なワクチンのための基礎を提供することができるベクターワクチンプラットフォームが希求される。理想的には、組換えワクチンは強力な液性免疫応答を誘発でき、大量投与によって適用でき、安価である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、(i)組換えAPMVおよび(ii)医薬的にまたは獣医学的に許容し得る担体を含むワクチンまたは組成物に関する。本発明は、APMVのゲノムを改変して組換えAPMVウイルスまたはAPMVウイルスベクターを生成する方法;そのような方法によって調製した改変APMV;DNAおよびタンパク質配列;並びにそのような組換えAPMVを細胞および宿主動物に感染させて、外因性DNAおよび前記外因性DNAによってコードされるタンパク質(抗原性タンパク質を含む)の前記細胞および宿主細胞による増幅を惹起させる方法を包含する。
【0011】
本発明のある特徴は、APMVウイルス、改変または組換えウイルスの作製に必要なDNAおよびタンパク質に関する。本発明のある実施態様は、APMV-2、4、6または8のゲノム配列およびタンパク質配列に関する。
【0012】
本発明の別の特徴は改変された組換えAPMVウイルスおよびそのような組換えウイルスの作製方法に関し、前記ウイルスは安全性の強化、強力な液性免疫応答を示す。
【0013】
本発明の別の特徴は、既知のAPMVまたは他の組換えワクチンと比較して安全性レベルが高められた組換えAPMVウイルスワクチンまたは組成物に関する。
【0014】
別の特徴では、本発明は、宿主で遺伝子生成物を発現させるための未改変および改変APMVウイルスベクターを提供する。
【0015】
本発明の別の特徴は、任意の供給源に由来するDNAをAPMVゲノムの遺伝子間領域または非必須領域に挿入することにより改変した組換えAPMVウイルスを目的とする。抗原をコードしこの抗原を発現する異種遺伝子を保持する、合成により改変したAPMVウイルス組換え体を本発明にしたがって用いて新規な組成物またはワクチンを作製する。
【0016】
本発明の別の特徴は逆遺伝学系を提供するAPMVウイルスベクターに関し、前記ベクターは、組換えワクチンまたは組成物のための骨格として種々の宿主動物で用いることができる。
【0017】
ある特徴では、本発明は、医薬組成物またはワクチンを接種した宿主動物で免疫学的応答を誘発する医薬組成物またはワクチンに関し、前記組成物またはワクチンは、医薬的に許容し得る担体および改変APMV組換えウイルスまたはウイルスベクターを含む。本発明のさらに別の特徴では、組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターは、当該ウイルスゲノムの非必須領域内に、ある病原体由来の抗原性タンパク質をコードする異種DNAを含み、前記組成物またはワクチンは宿主に投与されたとき、前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答を誘発することができる。
【0018】
本発明の別の特徴はある抗原に対して動物で免疫学的応答を誘発する方法に関し、前記方法は、前記動物に対するある病原体の抗原決定基を含みこの抗原決定基を発現する改変組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターを含むワクチンまたは医薬組成物を動物に接種する工程を含む。本発明のさらに別の特徴は、プライム-ブースト処置スケジュールに基づいて抗原に対し動物で免疫学的応答を誘発する方法に関する。
【0019】
本発明の別の特徴は、細胞に改変組換えAPMVウイルスを導入することによって細胞培養で遺伝子生成物をin vitro発現させる方法に関し、ここで前記遺伝子はある病原体に由来する抗原性タンパク質であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
例示の手段により提供する以下の詳細な説明(本発明を記載の具体的実施態様に限定しようとするものではない)は、以下の如き付随図面と一緒にして理解されよう。
【0021】
【図1】ニワトリ発育卵でAPMV-2、4、6を実験的に感染させた後のニワトリのいくつかの器官におけるウイルス単離を示す表である。
【0022】
【図2】APMV-2、4、6による実験的感染後のニワトリのいくつかの器官における組織学試験の結果を示す表である。
【0023】
【図3】APMV-2、4または6を実験的に接種したSPFニワトリのHI抗体力価を示す。感染後2、4、7、14および28日目に収集したニワトリ血清をHI試験に付し、HI抗体の存在を解析した。
【0024】
【図4】APMV-8を実験的に感染させたSPFニワトリおよびアヒルのHI抗体力価を示す。ニワトリおよびアヒルにAPMV-8 106 EID50の用量を口鼻感染させた。血清は感染後2、4、7、14および28日目に収集し、APMV-8抗原によるHI試験によって解析した。
【0025】
【図5】APMV-8を用いたプライム/ブーストワクチン接種計画におけるSPFニワトリのHI抗体力価の発達を示す。1日目(プライム)および14日目(ブースト)に1日齢のSPFニワトリをAPMV-8 106 EID50の用量で感染させた。最初の感染から7日および14日後に、さらに2回目の感染から7日および14日後に血清サンプルを入手した。これらの血清をHI試験に付した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。
【0026】
【図6】アガロースゲル電気泳動によるRT-PCR生成物の解析を示す。気管の組織は、非感染アヒル(C1−C5)およびAPMV-8感染アヒル(I1−I5)から感染後2日目に採取した。前記組織を均質化し、RT-PCRのためにRNAを調製した。水コントロールを並列して調製した。反応生成物を1.5%アガロースゲルで分離した。フラグメントのサイズは100bpラダー(New England Biolabs)を用いて管理した。DNAフラグメントのサイズは右に示されている。
【0027】
【図7】APMV-8を実験的に感染させたニワトリおよびアヒルのウイルス単離を示す表である。ニワトリ組織のウイルス単離はニワトリ発育卵で実施し、アヒル組織のウイルスRNA検出はRT-PCRによって実施した。
【0028】
【図8】APMV-8によるニワトリおよびペキンアヒルの実験的感染後のいくつかの器官における組織学試験の結果を示す表である。
【0029】
【図9】種々の用量のAPMV-8による感染後のSPFニワトリにおけるHI抗体力価の発達を示す。1日齢のSPFニワトリを1日目に種々の感染用量(ID)のAPMV-8で感染させるか、またはウイルス輸送培養液(VTM)で擬似感染させた。血液を感染後7および14日目に採取し、入手した血清サンプルをHI試験により解析した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。血清サンプルの幾何平均力価(GMT)は最下段に示されている。
【0030】
【図10】種々の用量のAPMV-8による感染後のペキンアヒルにおけるHI抗体力価の発達を示す。1日齢のSPFペキンアヒルを1日目に種々の感染用量(ID)のAPMV-8で感染させるか、またはウイルス輸送培養液(VTM)で擬似感染させた。血液を感染後7および14日目に採取し、入手した血清サンプルをHI試験により解析した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。血清サンプルの幾何平均力価(GMT)は最下段に示されている。
【0031】
【図11】対応するDNAおよびタンパク質配列の配列番号を示す表である。
【0032】
【図12】APMV-8の株(APMV-8:SCWDS:MA-7、マガモから単離)の完全長ゲノム配列および完全長APMV-8ゲノムの遺伝子地図を示す。
【0033】
【技術分野】
【0001】
参照による本明細書への包含
本出願は、米国仮特許出願61/235,912号(2009年8月21日出願)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明はトリパラミクソウイルス(APMV)およびAPMV配列に関する。本発明は、多様な病原体に対する防御のために安全な免疫担体として使用される、外来遺伝子の挿入用および発現用ウイルスベクターに関する。本発明は、生弱毒化ワクチンの製造のための逆遺伝学系のベクターワクチンに関する。本発明はまた、in vitro発現ベクターでサブユニットの製造に用いることができる、或いはウイルスまたはプラスミドタイプのin vivo発現ベクターに組み込まれる配列として用いることができるポリヌクレオチドに関する。
【0003】
本発明は、未改変および改変APMVウイルス、前記の製造および使用方法、並びにある種のDNAおよびタンパク質配列に関する。より具体的には、本発明は、APMVウイルスの天然に存在するゲノムに変異を生じたAPMVウイルス(“APMV変異体”または“組換えAPMV”)、並びにそのようなAPMV変異体または組換えAPMVを製造および使用する方法に関する。
【0004】
背景技術
ウイルスベクターワクチンは、ワクチン開発においてもっとも急速に成長しつつある分野の1つである。世界の主要な感染症(HIV、結核およびマラリヤ)に対する臨床開発中の多くのワクチンがウイルスベクターに依っている。動物用ウイルスベクターワクチンは既に市販されている(例えば、愛玩動物および愛玩飼鳥類用アビポックスベクターワクチン、飼鳥類用トリヘルペスウイルスベクターワクチン、野生生物用ワクシニアウイルスベクターワクチン)。しかし他の家畜用ベクターワクチンは開発の途上にある。ウイルスベクターワクチンの利点は、厳格に弱毒化され当該動物それ自身に対して疾患を引き起こさないベクター骨格を使用することによりそれらワクチンを安全に投与できるという点である。これまで用いられてきたウイルスベクターの欠点は、母親由来抗体または過去の感染により獲得した抗体の存在である。これらの抗体はベクターウイルスを中和し、したがってベクターワクチンの成功を低下させる。ベクターワクチン開発の1つの主要な原動力は、高病原性インフルエンザウイルスH5N1の発生であった(前記ウイルスは最初アジアで後にヨーロッパおよびアフリカで発生した)。いくつかのベクターワクチン候補が開発され、前記には鶏痘ウイルス(Taylor et al, 1988)、ワクシニアウイルス(Chambers et al., 1988)、ラウス肉腫ウイルス(Hunt et al, 1988)、アデノウイルス(Tang et al., 2002, Gao et al, 2006)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Schultz-Cherry et al, 2000)、ニューカッスル病ウイルス(US6,719,979, Veits et al., 2006, Swayne et al, 2002, Park et al, 2006)、伝染性咽頭気管炎ヘルペスウイルス(Veits et al. 2003)、シチメンチョウヘルペスウイルス(Darteil et al., 1995)およびアデノウイルス系ベクターワクチン(Hoelscher et al, 2008, Toro et al, 2007)が含まれる。これらベクターワクチンの有効性は当該ウイルスに未経験の鳥類で試験されたが、当該ウイルスベクターに対しておよび/または当該挿入物によってコードされたタンパク質に対して免疫が以前から存在する鳥類におけるこれらのベクターワクチンの有効性に関する報告はこれまでのところ発表されていない。
【0005】
パラミクソウイルス科のウイルスには、ヒトの病原体(麻疹、おたふくかぜ、パラインフルエンザおよび呼吸器合胞体形成ウイルス(RSウイルス))および動物の病原体(ニューカッスル病ウイルスおよび牛疫ウイルス)の両方が含まれ、これらは公衆衛生とともに地球規模の経済に重大な影響を引き起こす(Lamb et al., 2007)。本ウイルス科のメンバーの定義はモノパート性のマイナス鎖で一本鎖のRNAゲノムを有することである。パラミクソウイルス科は、2つの亜科、すなわちパラミクソビリナエ(Paramyxovirinae)およびプニューモビリナエ(Pneumovirinae)から成る。最近の再分類によれば、パラミクソビリナエ亜科は5つの属、すなわちモルビリウイルス(Morbillivirus)、ヘニパウイルス(Henipavirus)、ルブラウイルス(Rubulavirus)、レスピロウイルス(Respirovirus)およびアブラウイルス(Avulavirus)を含み、一方プニューモビリナエ亜科はプニューモウイルス(Pneumovirus)およびメタプニューモウイルス(Metapneumovirus)を含む(Mayo, 2002)。トリパラミクソウイルス(APMV)はアブラウイルス属に分類され、血球凝集阻害(HI)試験を用いて区別される抗原的に別個の9つの血清型を含む(Alexander, 1988)。この9つの血清型のうちで、APMV-1サブタイプに属する単離株は産業用家禽で激烈な疾病を引き起こし、これら単離株はベロジェニックニューカッスル病ウイルス(NDV)として分類される。より毒性の低いNDV型は、メゾジェニックおよびレントジェニック単離株と称され、後者の型は家禽ではほとんど無症状である。APMV-2、3、6および7に属する単離株は家禽の疾患と関連している。特に、APMV-2および3の単離株による感染は軽度の呼吸器疾患並びに卵の品質および量における問題を生じ得る(Bankowski et al., 1981; Redmann et al., 1991; Tumova et al., 1979; Zhang et al., 2007)。APMV-6および7の単離株は、シチメンチョウ、アヒルおよび渡り鳥に感染することが判明しており、さらに二次感染を併発する可能性がある呼吸器疾患を誘発し得る(Saif et al., 1997; Shortridge et al., 1980)。他方、APMV-4、5、8および9の単離株はアヒル、水鳥および野鳥から単離されたが、これらの鳥類はウイルス感染後ほとんど臨床徴候を示さない(Alexander et al., 1983; Capua et al., 2004; Gough et al., 1984; Maldonado et al., 1995; Shortridge et al., 1980)。
【0006】
いくつかのNDV単離株の完全なゲノム配列が確立され、NDV病毒性の種々の決定因子の解明に用いられた(de Leeuw et al., 1999; Krishnamurthy et al., 1998; Zou et al., 2005)。ここ2年間で、APMV-1以外のいくつかのAPMVの配列が発表された。例えばGenBankアクセッション番号は以下のとおりである:APMV-2についてはEU338414、APMV-3についてはEU403085、APMV-4についてはFJ177514、APMV-6についてはEU622637、APMV-7についてはFJ231524、APMV-8についてはFJ215863、FJ215864およびFJ619036、APMV-9についてはEU910942。配列情報以外には病毒性因子に関して多くは明らかではない。APMV2−9の単離株はほとんど渡り鳥から単離された。興味深いことには、そのような単離株によるニワトリの実験的感染の報告は極めて少ない(Saif et al., 1997)。これらのAPMVは野鳥間で広く循環し、ある種の事例では市販の群れから単離され(Zhang et al., 2007)、ときにそれらの群れで疾患を引き起こすので(Saif et al., 1997; Shihmanter et al., 1998; Shihmanter et al., 1998)、家禽におけるそれらAPMVの病毒性に関する情報が必要とされる。
【0007】
APMV単離株の大半が比較的軽度の疾患をもたらすが、前記疾患は併発する細菌またはウイルス感染の存在により悪化する可能性があり、それらは経済的な影響を引き起こし得る。特に、APMV-2は、最初南カリフォルニアで急性咽頭気管炎に罹患したニワトリから二次性病源体として1956年に単離された(Bankowski et al., 1960)。それ以来、この血清型の多様な株がいくつかのトリの種から単離され、APMV-2が世界中にまき散らされていることを明らかにした(Andral et al., 1984; Bradshaw et al., 1979; Fleury et al., 1979; Goodman et al., 1988; Lang et al., 1975; Lipkind et al., 1982; Lipkind et al., 1979; Zhang et al., 2006)。Bankowskiらは、産卵雌シチメンチョウを自然状態でおよび人工的にAPMV-2に曝露したとき孵化率および家禽収量に重大な低下をもたらすことを報告した(Bankowski et al., 1981)。APMV-4単離の最初の例は、米国ミシシッピーの飛路途上でハンターに殺された野生のカモから(Webster et al., 1976)、並びに家禽のインフルエンザ調査プログラム中の香港のニワトリ、アヒルおよびカモからであった(Alexander et al., 1979)。出血性腸炎に罹患したリングコガモ(ringed teal)由来の単離株(Gough et al., 1984)はさておき、他の全ての単離株は家禽では外見的に非病原性であり、世界中の水鳥で広く分布していることが判明した(Stanislawek et al., 2002; Tumova et al., 1989; Yamane et al., 1982)。Goughらは、1週齢のアヒルおよび2週齢のニワトリへのリングコガモ由来単離株の鼻内接種後に臨床徴候は認められず非常に低いHI力価(1:8以下)が得られることを報告した(Gough et al., 1984)。同様に、APMV-6の最初の単離株もまたインフルエンザ調査プログラムの結果として香港で家禽から得られ、実験的に感染させたニワトリから得られた低いHI力価からニワトリで非病原性であると報告された(Shortridge et al., 1980)。しかしながら、シチメンチョウのAPMV-6感染は軽度の呼吸器疾患および卵の生産の問題をもたらすことが報告されている(Alexander, 2003)。
【0008】
APMV-8(ガチョウ/デラウェア/1053/76)は、最初ハンターに殺されたカナダガチョウ(ブランタ・カナデンシス、Branta canadensis)から単離された(Rosenberger et al., 1974)。南スペインでの野鳥の血清学的調査(1990年から1992年)によって、被検血清の43%を占めるAPMV-8抗体の顕著な優勢性が示された(Maldonado et al., 1995)。APMV感染についてのニュージーランドにおける健常な生存マガモ(mallard duck)の状態を調べるまた別の血清学的試験は、被検血清の56%にAPMV-8抗体が存在することを明らかにした(Stanislawek et al., 2002)。Warkeら(2008)は、ニワトリの調査血清の16%から31%がAPMV-8抗体を有する可能性を報告した。しかしながら、前記血清はHIアッセイで非常に特異的に反応するわけではないので、APMV-1に対する高力価抗体の存在により偽のHI試験陽性の蓋然性が高い可能性がある。ニワトリインフルエンザウイルスについて集団を調査しているときに単離されたAPMV-8のいくつかの水鳥単離株の例外とともに(Stallknecht et al., 1991)、このウイルスの優勢性および病原性については情報が不足している。
【0009】
NDVのマイナス鎖RNAゲノムのための逆遺伝学系の開発は、当該ゲノムへの外来遺伝子配列の挿入を可能にし、したがってワクチン免疫および遺伝子療法のための組換えNDVベクターの作製を可能にした(Krishnamurthy et al., 2000; Peeters et al., 1999; Roemer-Oberdoerfer et al., 1999)。外来ウイルスタンパク質、例えばインフルエンザAウイルスのH1サブタイプのHAタンパク質(Nakaya et al., 2001)、伝染性嚢病(bursal disease)ウイルス(IBDV)のVP2タンパク質(Huang et al., 2004)、トリインフルエンザウイルスヘマグルチニンのサブタイプH5(Veits et al., 2006; Ge et al., 2007)およびサブタイプH7(Park et al., 2006)を発現する組換えNDVベクターが報告されている。しかしながら、そのようなワクチンの大半はSPFの鳥でのみ示されただけである。NDVは激烈な疾患を家禽で引き起こし、家禽産業に重大な経済的損失をもたらす。したがって、市場のニワトリは世界の大半の国々でNDVに対して日常的にワクチンを接種される。このため、免疫された親群に由来するニワトリは高レベルの母親由来抗体を有している。通常の生NDVワクチンはこれらの抗体の存在下においても防御を提供する。しかしながら、組換えNDVワクチン(外来遺伝子挿入物を含む)は、生NDVワクチンと比較して一般的により弱毒化され、それらの有効性はNDV母親由来抗体の存在で阻害される可能性がある。したがって、異種抗原発現用の安全なワクチンのための基礎を提供することができるベクターワクチンプラットフォームが希求される。理想的には、組換えワクチンは強力な液性免疫応答を誘発でき、大量投与によって適用でき、安価である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、(i)組換えAPMVおよび(ii)医薬的にまたは獣医学的に許容し得る担体を含むワクチンまたは組成物に関する。本発明は、APMVのゲノムを改変して組換えAPMVウイルスまたはAPMVウイルスベクターを生成する方法;そのような方法によって調製した改変APMV;DNAおよびタンパク質配列;並びにそのような組換えAPMVを細胞および宿主動物に感染させて、外因性DNAおよび前記外因性DNAによってコードされるタンパク質(抗原性タンパク質を含む)の前記細胞および宿主細胞による増幅を惹起させる方法を包含する。
【0011】
本発明のある特徴は、APMVウイルス、改変または組換えウイルスの作製に必要なDNAおよびタンパク質に関する。本発明のある実施態様は、APMV-2、4、6または8のゲノム配列およびタンパク質配列に関する。
【0012】
本発明の別の特徴は改変された組換えAPMVウイルスおよびそのような組換えウイルスの作製方法に関し、前記ウイルスは安全性の強化、強力な液性免疫応答を示す。
【0013】
本発明の別の特徴は、既知のAPMVまたは他の組換えワクチンと比較して安全性レベルが高められた組換えAPMVウイルスワクチンまたは組成物に関する。
【0014】
別の特徴では、本発明は、宿主で遺伝子生成物を発現させるための未改変および改変APMVウイルスベクターを提供する。
【0015】
本発明の別の特徴は、任意の供給源に由来するDNAをAPMVゲノムの遺伝子間領域または非必須領域に挿入することにより改変した組換えAPMVウイルスを目的とする。抗原をコードしこの抗原を発現する異種遺伝子を保持する、合成により改変したAPMVウイルス組換え体を本発明にしたがって用いて新規な組成物またはワクチンを作製する。
【0016】
本発明の別の特徴は逆遺伝学系を提供するAPMVウイルスベクターに関し、前記ベクターは、組換えワクチンまたは組成物のための骨格として種々の宿主動物で用いることができる。
【0017】
ある特徴では、本発明は、医薬組成物またはワクチンを接種した宿主動物で免疫学的応答を誘発する医薬組成物またはワクチンに関し、前記組成物またはワクチンは、医薬的に許容し得る担体および改変APMV組換えウイルスまたはウイルスベクターを含む。本発明のさらに別の特徴では、組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターは、当該ウイルスゲノムの非必須領域内に、ある病原体由来の抗原性タンパク質をコードする異種DNAを含み、前記組成物またはワクチンは宿主に投与されたとき、前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答を誘発することができる。
【0018】
本発明の別の特徴はある抗原に対して動物で免疫学的応答を誘発する方法に関し、前記方法は、前記動物に対するある病原体の抗原決定基を含みこの抗原決定基を発現する改変組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターを含むワクチンまたは医薬組成物を動物に接種する工程を含む。本発明のさらに別の特徴は、プライム-ブースト処置スケジュールに基づいて抗原に対し動物で免疫学的応答を誘発する方法に関する。
【0019】
本発明の別の特徴は、細胞に改変組換えAPMVウイルスを導入することによって細胞培養で遺伝子生成物をin vitro発現させる方法に関し、ここで前記遺伝子はある病原体に由来する抗原性タンパク質であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
例示の手段により提供する以下の詳細な説明(本発明を記載の具体的実施態様に限定しようとするものではない)は、以下の如き付随図面と一緒にして理解されよう。
【0021】
【図1】ニワトリ発育卵でAPMV-2、4、6を実験的に感染させた後のニワトリのいくつかの器官におけるウイルス単離を示す表である。
【0022】
【図2】APMV-2、4、6による実験的感染後のニワトリのいくつかの器官における組織学試験の結果を示す表である。
【0023】
【図3】APMV-2、4または6を実験的に接種したSPFニワトリのHI抗体力価を示す。感染後2、4、7、14および28日目に収集したニワトリ血清をHI試験に付し、HI抗体の存在を解析した。
【0024】
【図4】APMV-8を実験的に感染させたSPFニワトリおよびアヒルのHI抗体力価を示す。ニワトリおよびアヒルにAPMV-8 106 EID50の用量を口鼻感染させた。血清は感染後2、4、7、14および28日目に収集し、APMV-8抗原によるHI試験によって解析した。
【0025】
【図5】APMV-8を用いたプライム/ブーストワクチン接種計画におけるSPFニワトリのHI抗体力価の発達を示す。1日目(プライム)および14日目(ブースト)に1日齢のSPFニワトリをAPMV-8 106 EID50の用量で感染させた。最初の感染から7日および14日後に、さらに2回目の感染から7日および14日後に血清サンプルを入手した。これらの血清をHI試験に付した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。
【0026】
【図6】アガロースゲル電気泳動によるRT-PCR生成物の解析を示す。気管の組織は、非感染アヒル(C1−C5)およびAPMV-8感染アヒル(I1−I5)から感染後2日目に採取した。前記組織を均質化し、RT-PCRのためにRNAを調製した。水コントロールを並列して調製した。反応生成物を1.5%アガロースゲルで分離した。フラグメントのサイズは100bpラダー(New England Biolabs)を用いて管理した。DNAフラグメントのサイズは右に示されている。
【0027】
【図7】APMV-8を実験的に感染させたニワトリおよびアヒルのウイルス単離を示す表である。ニワトリ組織のウイルス単離はニワトリ発育卵で実施し、アヒル組織のウイルスRNA検出はRT-PCRによって実施した。
【0028】
【図8】APMV-8によるニワトリおよびペキンアヒルの実験的感染後のいくつかの器官における組織学試験の結果を示す表である。
【0029】
【図9】種々の用量のAPMV-8による感染後のSPFニワトリにおけるHI抗体力価の発達を示す。1日齢のSPFニワトリを1日目に種々の感染用量(ID)のAPMV-8で感染させるか、またはウイルス輸送培養液(VTM)で擬似感染させた。血液を感染後7および14日目に採取し、入手した血清サンプルをHI試験により解析した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。血清サンプルの幾何平均力価(GMT)は最下段に示されている。
【0030】
【図10】種々の用量のAPMV-8による感染後のペキンアヒルにおけるHI抗体力価の発達を示す。1日齢のSPFペキンアヒルを1日目に種々の感染用量(ID)のAPMV-8で感染させるか、またはウイルス輸送培養液(VTM)で擬似感染させた。血液を感染後7および14日目に採取し、入手した血清サンプルをHI試験により解析した。HI血清力価(log2)は左軸に示されている。血清サンプルの幾何平均力価(GMT)は最下段に示されている。
【0031】
【図11】対応するDNAおよびタンパク質配列の配列番号を示す表である。
【0032】
【図12】APMV-8の株(APMV-8:SCWDS:MA-7、マガモから単離)の完全長ゲノム配列および完全長APMV-8ゲノムの遺伝子地図を示す。
【0033】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)組換えAPMVウイルスベクターおよび(ii)医薬的にまたは獣医学的に許容し得る担体を含む組成物またはワクチン。
【請求項2】
APMVがAPMV-8、APMV-2、APMV-4またはAPMV-6である、請求項1に記載の組成物またはワクチン。
【請求項3】
APMVウイルスベクターが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物またはワクチン。
【請求項4】
APMVウイルスベクターがさらに抗原をコードする単離ポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがAPMVゲノムの非必須領域に挿入される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物またはワクチン。
【請求項5】
非必須領域が、NPオープンリーディングフレームの上流に位置する非翻訳領域、APMVゲノムの2つのオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域、およびLオープンリーディングフレームの下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項3に記載の組成物またはワクチン。
【請求項6】
組換えAPMVウイルスベクターを生成する方法であって、前記方法が、APMVゲノムへの単離ポリヌクレオチドの導入を含み、該APMVゲノムがAPMVゲノムの非必須領域である、前記組換えAPMVウイルスベクターの生成方法。
【請求項7】
APMVがAPMV-8、APMV-2、APMV-4またはAPMV-6である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
APMVが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
非必須領域が、NPオープンリーディングフレームの上流に位置する非翻訳領域、APMVゲノムの2つのオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域、およびLオープンリーディングフレームの下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下のa)〜d)の工程を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法:
a)NP、PおよびL遺伝子を発現する発現プラスミドを調製する工程;
b)完全長APMVゲノムの非必須領域内に単離ポリヌクレオチドを含む転写プラスミドを調製する工程;
c)前記発現プラスミドおよび転写プラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする工程;
d)感染性APMVウイルスを前記宿主細胞からレスキュー/回収する工程。
【請求項11】
以下のa)〜e)の工程を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法:
a)NP、PおよびL遺伝子を発現する発現プラスミドを調製する工程;
b)完全長APMVゲノムの非必須領域内に単離ポリヌクレオチドを含む転写プラスミドを調製する工程;
c)T7ポリメラーゼを発現する発現プラスミドを調製する工程;
d)前記発現プラスミドおよび転写プラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする工程;
e)感染性APMVウイルスを前記宿主細胞からレスキュー/回収する工程。
【請求項12】
抗原に対する免疫学的応答を動物で誘発する方法であって、前記方法が組換えAPMVウイルスベクターを含む組成物またはワクチンを動物に接種する工程を含み、前記組換えAPMVウイルスベクターが前記動物に対する病原体の抗原を含みこの抗原を発現する、前記免疫学的応答誘発方法。
【請求項13】
動物での抗原に対する免疫学的応答がプライム-ブースト処置スケジュールで誘発される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
動物が、トリ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジまたはヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
以下から成る群から選択されるポリヌクレオチドを含む未改変または改変APMVウイルス:
a)配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
b)配列番号:3に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
c)配列番号:5に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
d)配列番号:7に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
e)配列番号:9に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
f)配列番号:11に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;および
g)配列番号:13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド。
【請求項16】
さらにAPMVゲノムの非必須領域内に挿入された単離ポリヌクレオチドを含む、請求項15に記載の改変APMVウイルス。
【請求項17】
以下から成る群から選択される単離ポリヌクレオチド:
a)配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
b)配列番号:3に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
c)配列番号:5に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
d)配列番号:7に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
e)配列番号:9に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
f)配列番号:11に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;および
g)配列番号:13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド。
【請求項1】
(i)組換えAPMVウイルスベクターおよび(ii)医薬的にまたは獣医学的に許容し得る担体を含む組成物またはワクチン。
【請求項2】
APMVがAPMV-8、APMV-2、APMV-4またはAPMV-6である、請求項1に記載の組成物またはワクチン。
【請求項3】
APMVウイルスベクターが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物またはワクチン。
【請求項4】
APMVウイルスベクターがさらに抗原をコードする単離ポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがAPMVゲノムの非必須領域に挿入される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物またはワクチン。
【請求項5】
非必須領域が、NPオープンリーディングフレームの上流に位置する非翻訳領域、APMVゲノムの2つのオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域、およびLオープンリーディングフレームの下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項3に記載の組成物またはワクチン。
【請求項6】
組換えAPMVウイルスベクターを生成する方法であって、前記方法が、APMVゲノムへの単離ポリヌクレオチドの導入を含み、該APMVゲノムがAPMVゲノムの非必須領域である、前記組換えAPMVウイルスベクターの生成方法。
【請求項7】
APMVがAPMV-8、APMV-2、APMV-4またはAPMV-6である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
APMVが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
非必須領域が、NPオープンリーディングフレームの上流に位置する非翻訳領域、APMVゲノムの2つのオープンリーディングフレームの間の遺伝子間領域、およびLオープンリーディングフレームの下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下のa)〜d)の工程を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法:
a)NP、PおよびL遺伝子を発現する発現プラスミドを調製する工程;
b)完全長APMVゲノムの非必須領域内に単離ポリヌクレオチドを含む転写プラスミドを調製する工程;
c)前記発現プラスミドおよび転写プラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする工程;
d)感染性APMVウイルスを前記宿主細胞からレスキュー/回収する工程。
【請求項11】
以下のa)〜e)の工程を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法:
a)NP、PおよびL遺伝子を発現する発現プラスミドを調製する工程;
b)完全長APMVゲノムの非必須領域内に単離ポリヌクレオチドを含む転写プラスミドを調製する工程;
c)T7ポリメラーゼを発現する発現プラスミドを調製する工程;
d)前記発現プラスミドおよび転写プラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする工程;
e)感染性APMVウイルスを前記宿主細胞からレスキュー/回収する工程。
【請求項12】
抗原に対する免疫学的応答を動物で誘発する方法であって、前記方法が組換えAPMVウイルスベクターを含む組成物またはワクチンを動物に接種する工程を含み、前記組換えAPMVウイルスベクターが前記動物に対する病原体の抗原を含みこの抗原を発現する、前記免疫学的応答誘発方法。
【請求項13】
動物での抗原に対する免疫学的応答がプライム-ブースト処置スケジュールで誘発される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
動物が、トリ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジまたはヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
以下から成る群から選択されるポリヌクレオチドを含む未改変または改変APMVウイルス:
a)配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
b)配列番号:3に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
c)配列番号:5に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
d)配列番号:7に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
e)配列番号:9に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
f)配列番号:11に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;および
g)配列番号:13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド。
【請求項16】
さらにAPMVゲノムの非必須領域内に挿入された単離ポリヌクレオチドを含む、請求項15に記載の改変APMVウイルス。
【請求項17】
以下から成る群から選択される単離ポリヌクレオチド:
a)配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
b)配列番号:3に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:2に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
c)配列番号:5に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:4に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
d)配列番号:7に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:6に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
e)配列番号:9に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:8に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;
f)配列番号:11に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:10に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド;および
g)配列番号:13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:12に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチド。
【図12】APMV-8のヌクレオプロテイン(NP)をコードするDNA配列(配列番号:2)およびNPタンパク質配列(配列番号:3)を示す。
【0034】
【図13】APMV-8のホスホプロテイン(P)をコードするDNA配列(配列番号:4)およびPタンパク質配列(配列番号:5)を示す。
【0035】
【図14】APMV-8のマトリックスプロテイン(M)をコードするDNA配列(配列番号:6)およびMタンパク質配列(配列番号:7)を示す。
【0036】
【図15】APMV-8のヒュージョンプロテイン(F)をコードするDNA配列(配列番号:8)およびFタンパク質配列(配列番号:9)を示す。
【0037】
【図16】APMV-8のヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ(HN)をコードするDNA配列(配列番号:10)およびHNタンパク質配列(配列番号:11)を示す。
【0038】
【図17】APMV-8のポリメラーゼ(L)をコードするDNA配列(配列番号:12)およびLタンパク質配列(配列番号:13)を示す。このAPMV-8 L(1)タンパク質は、配列番号:1の8273−8275位に位置するATGコドンから翻訳される。
【0039】
【図18】APMV-8ポリメラーゼ(L)のタンパク質配列(2)(配列番号:14)を示す。このAPMV-8 L(2)タンパク質は、配列番号:1の8297−8299位に位置するATGコドンから翻訳される。配列番号:14は配列番号:13の最初の8アミノ酸を含まない。
【0040】
【図19】19AはAPMV-8逆遺伝学系の流れ図である。19BはMDCK細胞におけるAPMV-8ウイルスの複製の結果を示す。
【0041】
【図20】APMV-8ワクチン接種2週間後の市販ブロイラーニワトリにおけるHI試験の結果を示す。
【0042】
【図21】APMV-8ワクチン接種4週間後の市販ブロイラーニワトリにおけるHI試験の結果を示す。
【0043】
【図22】in ovoワクチン接種後18日目におけるHI試験の結果を示す(実験1)。
【0044】
【図23】in ovoワクチン接種後19日目におけるHI試験の結果を示す(実験2)。
【0045】
【図24】in ovoワクチン接種後18日目におけるHI試験の結果を示す(実験3)。
【0046】
【図25】フランキング配列を含む、5'-完全長ゲノム(5'-FLG)配列および3'-完全長ゲノム(3'-FLG)配列を示す。
【0047】
【図26】pcNDA-NP、pcNDA-P、pcDNA-LおよびpcDNA3-T7のプラスミドマップを示す。
【0048】
【図27】pUC18-MG-APMV-8およびpCITE4A-EGFPのプラスミドマップを示す。
【0049】
【図28】pUC57-FL-APMV-8のプラスミドマップを示す。
【0050】
【図29】ミニゲノムAPMV-8配列を示す。
【0051】
【図30】NPタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0052】
【図31】Pタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0053】
【図32】Mタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0054】
【図33】Fタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0055】
【図34】HNタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0056】
【図35】Lタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
発明の詳細な説明
本開示および特に特許請求の範囲では以下に留意されたい。例えば“comprises”、“comprised”、“comprising”などの用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれら用語は“includes”、“included”、“including”などを意味することができる。さらに、例えば“consisting essentially of”、および“consists essentially of”のような用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれらは、明示的に列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見出されるかまたは本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を与える成分は排除する。
【0058】
特段の説明がなければ、技術用語は一般的な用法にしたがう。分子生物学で一般的な用語の定義は以下で見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V. (Oxford University Press刊行)1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology(Blackwell Science Ltd.刊行)1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference(VCH Publishers, Inc.刊行)1995 (ISBN 1-56081-569-8)。
【0059】
単数用語の“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり複数の対応物を含む。同様に、“or”という用語も、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり“and”を含むことが意図される。“or”という用語は、具体的な一覧中の任意の1つのメンバーを意味するが、さらに当該一覧のメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0060】
本開示および添付の特許請求の範囲および/またはパラグラフでは以下に留意されたい:“トリパラミクソウイルス”または“APMV”という用語は互換的に用いられ、前記用語はAPMV-1、APMV-2、APMV-3、APMV-4、APMV-5、APMV-6、APMV-7、APMV-8、およびAPMV-9を指し、さらにそれらを含む。
【0061】
本明細書では“動物”という用語は全ての哺乳動物、鳥類および魚類を含むために用いられる。本明細書で用いられる動物は、ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類および、他のネコ科の動物(チーターおよびオオヤマネコを含む))、ウシ科の動物(例えばウシ)、ブタ類(例えばブタ)、ヒツジ類(例えばヒツジ、ヤギ、ラマ、バイソン)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、カモ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリ)、霊長類(例えば原猿類、メガネザル、有尾猿類、テナガザル、無尾猿類)、ヒトおよび魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語にはまた、全ての発育段階(胚および胎児期を含む)の個々の動物が含まれる。
【0062】
“ポリペプチド”および“タンパク質”という用語は、連続するアミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に用いられる。
【0063】
“核酸”、“ヌクレオチド”および“ポリヌクレオチド”という用語は互換的に用いられ、RNA、DNA、cDNA(相補性DNA)、またはcRNA(相補性RNA)および前記の誘導体(例えば改変された骨格を含むもの)を指す。本発明は、本明細書に記載したものに相補的な配列を含むポリヌクレオチドを提供することは理解されよう。本発明で意図される“ポリヌクレオチド”にはフォワード鎖(5'から3')および相補性リバース鎖(3'から5')が含まれる。本発明のポリヌクレオチドは種々の方法で(例えば化学的合成、遺伝子クローニングなどにより)調製され、多様な形態(例えば線状、分枝、一本鎖もしくは二本鎖、または前記のハイブリッド、プライマー、プローブなど)を有することができる。
【0064】
“ゲノムDNA”または“ゲノム”という用語は互換的に用いられ、宿主生物の遺伝性の遺伝子情報を指す。ゲノムDNAは核のDNA(染色体DNAとも称される)を含むが、色素体(例えば葉緑体)および他の細胞内小器官(例えばミトコンドリア)のDNAも含まれる。本発明で意図されるゲノムDNAまたはゲノムはまたウイルスのRNAも指す。RNAはプラス鎖RNAでもマイナス鎖RNAでもよい。本発明で意図される“ゲノムDNA”という用語は、本明細書に記載した配列に対し相補的な配列を含むゲノムDNAを含む。“ゲノムDNA”という用語はまた、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補性DNA(cDNA)および相補性RNA(cRNA)を指す。本明細書で用いられる“ゲノムRA(核酸)”にはRNA、mRNA、cRNA、DNAおよびcDNAが含まれる。
【0065】
“遺伝子”という用語は、生物学的機能と密接に関係する任意のポリヌクレオチドセグメントを指すために広く用いられる。したがって、遺伝子またはポリヌクレオチドは、ゲノム配列の場合のようにイントロンおよびエクソンを含むか、またはcDNAの場合のようにコード配列(例えばオープンリーディングフレーム(前記は開始コドン(メチオニンコドン)から始まり停止シグナル(終止コドン)で終了する)のみを含む。遺伝子およびポリヌクレオチドはまた、それらの発現(例えば転写開始、翻訳および転写終了)を調節する領域を含むことができる。したがって以下がまた含まれる:プロモーターおよびリボソーム結合領域(一般的には、これらの調節エレメントはコード配列または遺伝子の開始コドンのほぼ60から250ヌクレオチド上流に位置する(Doree S M et al.; Pandher K et al.; Chung J Y et al.))、転写ターミネーター(一般的には、ターミネーターはコード配列または遺伝子の終止コドンのほぼ50ヌクレオチド下流内に位置する(Ward C K et al.))。遺伝子またはポリヌクレオチドはまた、mRNAもしくは機能的RNAを発現するかまたは具体的なタンパク質をコードする核酸フラグメントを指し、前記は調節配列を含む。
【0066】
本明細書で用いられる“異種DNA”という用語は、異なる生物、例えば異なる細胞タイプまたはレシピエントとは異なる種に由来するDNAを指す。前記用語はまた、宿主DNAの同じゲノム上のDNAまたはそのフラグメントも指すが、この場合、当該異種DNAはその本来の位置とは異なるゲノム領域に挿入されている。
【0067】
本明細書で用いられるように、“抗原”または“免役原”は、特異的な免疫応答を宿主動物で誘発する物質を意味する。抗原は、全生物(殺滅、弱毒化または生);生物のサブユニットまたは部分;免疫原性特性を有する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物に提示されたとき免疫応答を誘発することができる核酸の断片またはフラグメント;ポリペプチド、エピトープ、ハプテン、または前記の任意の組合せを含むことができる。また別には、免疫原または抗原は毒素または抗毒素を含むことができる。
【0068】
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語には、いったん宿主に投与されたら、前記タンパク質に対して液性および/または細胞性タイプの免疫応答を引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性であるポリペプチドが含まれる。好ましくは、タンパク質フラグメントは、全タンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは少なくとも1つのエピトープまたは抗原決定基を含むか、実質的に前記から成るか、または前記から成る。本明細書で用いられるように、“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドには、完全長のタンパク質配列、そのアナローグまたはその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”とは、1つまたは2つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載した免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当分野で周知の多数のエピトープマッピング技術を用いて確認することができる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris, Ed., 1996)。例えば、線状エピトープは、例えば固相上で多数のペプチド(前記ペプチドは当該タンパク質分子の部分に対応する)を同時に合成し、前記ペプチドが固相に結合している間に複数の抗体と前記ペプチドを反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号; Geysen et al. 1984; Geysen et al. 1986。同様に、形状エピトープは、アミノ酸の空間配座を例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に確認することができる。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい。
【0069】
“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語はさらに、当該ポリペプチドが機能して本明細書に定義した免疫学的応答を生じるかぎり、当該配列に対する欠失、付加および置換もまた意図する。“保存的変異”という用語は、あるアミノ酸残基の生物学的に類似する別の残基による置換、またはコードされるアミノ酸残基が変化しないかもしくは生物学的に類似する別の残基であるような核酸配列内のヌクレオチドの置換を意味する。これに関して、特に好ましい置換は、一般的には性質として保存的、すなわちアミノ酸のあるファミリー内で生じる置換であろう。例えばアミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分けられる:(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンはときに芳香族アミノ酸として分類される。保存的変異の例には以下が含まれる:ある疎水性残基(例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)による別の疎水性残基の置換、またはある極性残基による別の極性残基の置換(例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはグルタミンによるアスパラギンの置換など)、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸(生物学的活性に大きな影響を与えない)による保存的置換。したがって、参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、参照ポリペプチドの定義範囲内である。これらの改変によって生成されるポリペプチドの全てが本明細書に含まれる。“保存的変異”という用語はまた非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することを含むが、ただし置換ポリペプチドに対して作製した抗体がまた非置換ポリペプチドと免疫反応を生じることを条件とする。
【0070】
“宿主細胞”は、遺伝的に改変されているか、または外因性ポリヌクレオチド(例えば組換えプラスミドまたはベクター)の投与によって遺伝的に変異させることができる原核細胞または真核細胞を意味する。遺伝的に変異した細胞というとき、前記用語は最初の変異細胞およびその子孫の両方を指す。所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なクローニングベクターまたは発現ベクターに挿入することができる。続いて前記ベクターを複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。対象のポリヌクレオチドを含むベクターは、適切な多数の手段のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。前記手段には、直接取り込み;エンドサイトーシス;トランスフェクション;F-接合;エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を利用するトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性である場合、例えばレトロウイルスベクター)が含まれる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択はしばしば宿主細胞の特性に左右される。
【0071】
ある組成物またはワクチンに対する“免疫学的応答”は、宿主における問題の組成物またはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介免疫応答の発達である。通常は、“免疫学的応答”には、1つまたは2つ以上の以下の作用(ただしこれらに限定されない)が含まれる:抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞(これらは問題の組成物またはワクチンに含まれる1つの抗原または複数の抗原に特異的に導かれる)の産生。好ましくは、新規感染に対する抵抗性が強化されるか、および/または疾病の臨床的重症度が軽減されるように、宿主は治療的または防御的免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、通常感染宿主が示す症状の緩和または欠如、回復期間の短縮、および/または感染宿主におけるウイルス力価の低下によって示されるであろう。
【0072】
本発明のある実施態様はAPMV-8のゲノムDNA配列およびコードされるタンパク質配列を提供する。本発明のAPMV-8株の相補性ゲノムDNA(cDNA)配列は配列番号:1に示すポリヌクレオチド配列を有する。前記APMV-8ゲノムcDNA配列(配列番号:1)は、APMV-1ゲノムDNA(配列番号:15)と48%の配列同一性、APMV-2ゲノムDNA(配列番号:16)と61%の配列同一性、APMV-3ゲノムDNA(配列番号:17)と47.2%の配列同一性、APMV-4ゲノムDNA(配列番号:18)と47.6%の配列同一性、APMV-6ゲノムDNA(配列番号:19)と52%の配列同一性、APMV-7ゲノムDNA(配列番号:20)と53%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:37)と99.1%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:38)と96.5%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:39)と96.4%の配列同一性、APMV-9ゲノムDNA(配列番号:40)と48%の配列同一性を有する。別の実施態様では、本発明は配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示す配列を有するポリヌクレオチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。本発明はさらに、本明細書に記載のポリヌクレオチドに対する相補鎖を含む。さらに別の実施態様では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。
【0073】
さらにまた、APMV(例えばAPMV-8、APMV-2、APMV-4、APMV-6)株のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのホモローグも本発明の範囲内であることが意図される。本明細書で用いられるように、“ホモローグ”という用語にはオルトローグ、アナローグおよびパラローグが含まれる。“アナローグ”という用語は、同じまたは類似の機能を有するが、無関係の生物で別個に生じた2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。“オルトローグ”という用語は、異なる種に由来するが、種分化によって共通の祖先遺伝子から生じた2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。通常オルトローグは同じまたは類似の機能を有するポリペプチドをコードする。“パラローグ”という用語は、ゲノム内の遺伝子重複によって関連する2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。通常パラローグは異なる機能を有するが、これらの機能は関連し得る。野生型APMVポリペプチドのアナローグ、オルトローグおよびパラローグは、翻訳後改変、アミノ酸配列の相違、またはその両方により野生型APMVポリペプチドと異なっている。特に、本発明のホモローグは、一般的にはAPMV-8のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全部もしくは部分と少なくとも80−85%、85−90%、90−95%、または95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示し、さらに類似の機能を示すであろう。
【0074】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1に示す配列を有するAPMV-8のゲノムcDNAを提供する。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドの逆相補鎖は、配列番号:1に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0075】
ある実施態様では、本発明は、APMV-8ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)のフラグメントを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、またはこれらポリペプチドの1つの保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、または少なくとも8もしくは少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらのポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチド提供する。
【0076】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖を提供する。
【0077】
別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、上記に規定したAPMVポリペプチド(配列番号:3、5、7、9、11、13または14)のフラグメントおよび変種を提供する(前記は周知の分子生物学的技術を用いて当業者により容易に調製できる)。
【0078】
変種は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有する相同なポリペプチドである。
【0079】
変種には対立遺伝子変種が含まれる。“対立遺伝子変種”という用語は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらしさらに天然の集団(例えばウイルス種またはウイルス変種)内に存在する多形性を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。そのような天然の対立遺伝子変種はポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおいて典型的には1−5%の多様性を生じ得る。対立遺伝子変種は、対象の核酸配列を多数の種々の種でシークェンシングすることによって同定することができる。前記は、ハイブリダイゼーションプローブを用い、それらの種で同じ遺伝子座を同定することによって実施できる。任意のおよび全てのそのような核酸変異並びにその結果のアミノ酸多形性または変異(前記は天然の対立遺伝子変異の結果でありかつ対象の遺伝子の機能的活性を変化させない)は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0080】
配列に関して“同一性”という用語は、例えば2つの配列の短い方のヌクレオチドまたはアミノ酸の数で割った同一ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置の数を指し、ここで2つの配列のアラインメントはWilbur and Lipmanアルゴリズム(Wilbur and Lipman)にしたがって決定できる。2つのアミノ酸配列の配列同一性または配列類似性、または2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定できる。DNA配列とRNA配列が類似する、またはある程度の配列同一性もしくは相同性を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等価とみなされる。したがって、RNA配列は本発明の範囲内にあり、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)と等価であるとみなすことによってDNA配列から誘導することができる。
【0081】
ある特徴では、本発明は、ワクチンまたは組成物を接種した宿主動物に免疫学的応答を誘発する前記医薬組成物またはワクチンに関し、前記ワクチンまたは組成物は医薬的に許容できる担体および改変APMV組換えウイルスまたはウイルスベクターを含む。本発明のさらに別の特徴では、前記組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターは、ある病原体に由来する抗原タンパク質をコードする異種DNA配列を当該ウイルスゲノムの非必須領域内に含み、ここで前記組成物またはワクチンは、宿主に投与したとき、前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答誘発することができる。
【0082】
“ベクター”は組換えDNAまたはRNAプラスミド、バクテリオファージまたはウイルスを指し、前記は標的細胞にin vitroまたはin vivoでデリバーされるべき異種ポリヌクレオチドを含む。前記異種ポリヌクレオチドは、予防または治療の目的のために対象の配列を含むことができ、場合によって発現カセットの形態であってもよい。本明細書で用いられるように、ベクターは、最終的標的細胞または対象生物で複製能力を有する必要はない。前記用語は、ウイルスベクターと同様にクローニング用ベクターを含む。
【0083】
“操作された”または“組換え体”という用語は、天然には存在しないか、または天然の状態では見出されない編成で別のポリヌクレオチドに連結された半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
【0084】
“非必須領域”という用語は、組織培養でのウイルスの複製および増殖に必須ではなく、さらにその欠失または不活化が多様な動物系における病毒性を低下させる可能性があるウイルスゲノムの領域を意味する。いずれの非必須領域またはその部分もAPMVゲノムから欠失させることができ、または外来配列をその中に挿入することができ、さらに欠失または挿入により得られた組換えAPMVの生存活性および安定性は、欠失領域またはその部分が実際に非必須であるか否かを確認するために用いることができる。ある実施態様では、APMVゲノムの非必須領域は、APMV-2、4、6または8のゲノムのポリメラーゼ(L)をコードしない任意の領域である。さらに別の実施態様では、非必須領域は非必須タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。この特徴では、前記オープンリーディングフレームは、ヌクレオプロテイン(NP)、ホスホプロテイン(P)、マトリックスプロテイン(M)、ヒュージョンプロテイン(F)およびヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ(HN)から成る群から選択される。ある実施態様では、非必須領域はNP遺伝子の上流に位置する。別の実施態様では、非必須領域はL遺伝子の下流に位置する。さらに別の実施態様では、非必須領域は非コードまたは遺伝子間領域である。この特徴では、非コードまたは遺伝子間領域は、APMV-2、4、6または8ゲノム上のNPとP遺伝子の間、PとM遺伝子の間、MとF遺伝子の間またはFとHN遺伝子の間の領域であり得る。さらに別の実施態様では、非必須領域は、配列番号:1のヌクレオチド1−140、1526−1692、2910−3085、4195−4498、6130−6382、8116−8272、8116−8289または15013−15342位の領域であり得る。
【0085】
別の特徴では本発明はAPMVキメラを含み、前記キメラでは、APMVベクターの1つの部分もしくは完全な1つの遺伝子、またはいくつかの部分もしくは複数の完全な遺伝子が、他のウイルス(特にパラミクソウイルス科に属するウイルス)に由来する類似の遺伝子によって置き換えられる。
【0086】
本発明のある実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物はトリ病原体群から選択される抗原を含む。前記病原体群にはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、エッグドロップ症候群ウイルス(EDS)、伝染性嚢病ウイルス(IBDV)、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、トリアデノウイルス、マレック病ウイルス(MDV)、鶏痘ウイルス、アヒル腸炎ウイルス(DEV)、アヒルパルボウイルス、トリインフルエンザウイルス、APMV(例えばAPMV-1)など、および前記の組合せが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
【0087】
別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ネコの病原体(例えばネコヘルペスウイルス(FHV)、ネコカルシウイルス(FCV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコパルボウイルス(FPV)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、狂犬病ウイルスなど、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない))から選択される抗原を含む。
【0088】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、イヌの病原体(例えば狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス(CHV)、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、イヌパラインフルエンザ2(CPI2)、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・カニコラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジアエ(Leptospira icterohaemorragiae)、レプトスピラ・グリッポチフォサ(Leptospira grippotyphosa)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)など、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない)を含む)から選択される抗原を含む。
【0089】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ウマの病原体(例えばウマヘルペスウイルス(1型または4型)、ウマインフルエンザウイルス、破傷風、西ナイル熱ウイルス、ウマアルテリウイルスなど、または前記の組合せ)から選択される抗原を含む。
【0090】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ウシ、ヒツジまたはヤギの病原体(例えば狂犬病、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3型(bPIV-3)、ウシコロナウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、リンダーペストウイルス(RPV)、ペスト・ド・プチ・ルミナント(Peste des Petits Ruminants)ウイルス(PPRV)、悪性カタル性熱ウイルス、ウシ呼吸器合胞体形成ウイルス(BRSV)、伝染性鼻気管炎ウイルス(IBR)、大腸菌(Escherichia coli)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)など、および前記の組合せ)から選択される抗原を含む。
【0091】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ブタの病原体(例えばブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタシルコウイルス2型(PCV-2)、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタパルボウイルス(PPV)、FMDV、マイコプラズマ・ヒオプニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、エリシペロスリクス・リュシオパシアエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パスツレラ・マルトシダ、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、大腸菌など、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない)を含む)から選択される抗原を含む。
【0092】
組換えウイルスの構築は、例えば米国特許4,769,330号、4,722,848号、4,603,112号、5,174,993号、5,756,103号および6,719,979号に記載されているように当分野では周知である。具体的には、組換えAPMVウイルスは2工程で構築できる。第一に、ウイルスに挿入されるべき対象遺伝子(例えばAPMV-1(NDV)またはトリインフルエンザウイルスまたは他の生物由来の抗原のオープンリーディングフレーム)が、大腸菌プラスミド構築物(前記にはAPMVのcDNAの断片と相同なcDNAが挿入される)に配置される。前記とは別に、挿入されるべきcDNAの前にプロモーター領域(遺伝子開始領域)を先行させ、前記cDNAの後に遺伝子末端領域(APMVベクターに特異的である)を続かせる。この遺伝子開始/外来抗原/遺伝子末端DNAフラグメントは、固有の制限酵素切断部位を含むAPMV-8 cDNAと相同なcDNAフラグメントにフランキングしている。続いて、得られたプラスミド構築物を大腸菌で増殖させることによって増幅させ、さらにそれらを単離する。次にこの組換えプラスミドを制限酵素消化で用い、APMV-8 cDNAと相同なcDNAにフランキングする遺伝子開始/外来抗原/遺伝子末端DNAフラグメントを切り出し、さらにこのフラグメントを適切に切断したAPMV-8の完全長構築物に連結する。
【0093】
対象の遺伝子を含む完全長構築物を、APMVヌクレオプロテイン(NP)、APMVホスホプロテイン(P)、およびAPMV RNAポリメラーゼ(L)並びにT7RNAポリメラーゼの発現のためのポリヌクレオチドを含むプラスミドとともに細胞にトランスフェクトする。APMV cDNA構築物はいずれもT7ポリメラーゼプロモーターの制御下にある。感染性ウイルスのレスキューは文献(Roemer-Oberdoefer et al. 1999)に記載のように、さらに図19Aに示すよううに実施する。トランスフェクト細胞でのT7RNAポリメラーゼの発現は、T7 RNAポリメラーゼの発現カセットを含むプラスミドDNA、T7 RNAポリメラーゼを発現する組換えウイルス(例えば鶏痘またはカナリポックスウイルス)のトランスフェクションを含む種々の手段によって、またはT7 RNAポリメラーゼを発現する細胞で達成できる。別の特徴では、APMVヌクレオプロテイン(NP)、APMVホスホプロテイン(P)、およびAPMV RNAポリメラーゼ(L)並びに完全長ウイルスcRNAの発現のためのポリヌクレオチドは、ヒトサイトメガロウイルスの極初期プロモーターの制御下にある。ウイルスのレスキューは文献(K. Inoue et al. 2003)の記載にしたがって実施される。
【0094】
改変した感染性ウイルスによる対象の挿入cDNA(外来DNAまたは異種cDNA)の発現の成功には2つの条件が要求される。第一に、挿入は、改変ウイルスが生存活性を維持できるようにウイルスゲノム領域に導入されねばならない。挿入cDNAの発現のための第二の条件は、当該ウイルスのバックグラウンドにおいて遺伝子の発現を可能にする調節配列(例えば遺伝子の開始領域、遺伝子の終止領域、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、遺伝子間および非翻訳領域)が存在することである。
【0095】
一般的には、真核細胞で機能的な強力なプロモーターを利用するのが有利である。ある実施態様では、ウイルスRNAポリメラーゼによるウイルスmRNAの転写に用いられるプロモーターは“遺伝子開始配列”である。“遺伝子開始配列”は、結合して下流に位置するウイルスRNAをウイルスmRNAに転写するLタンパク質のための結合部位である。
【0096】
ある実施態様では、標的細胞で抗原、エピトープまたは免疫原をデリバリーおよび発現させるためのAPMVワクチンの治療的に有効な量の投与を提供する。治療的に有効な量の決定は当業者には日常的な試験である。ある実施態様では、APMVワクチン処方物は、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび医薬的または獣医学的に許容できる担体、ベヒクルまたは賦形剤を含む。別の実施態様では、医薬的または獣医学的に許容できる担体、ベヒクルまたは賦形剤は、トランスフェクションを容易にし、および/またはベクターまたはタンパク質の保存を改善する。
【0097】
医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は当業者には周知である。例えば医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は、0.9%NaCl(例えば食塩水)溶液またはリン酸緩衝液であり得る。本発明の方法のために用いることができる他の医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤には、ポリ-(L-グルタメート)またはポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は、ベクター(または本発明のベクターからin vitroで発現されるタンパク質)の投与を促進するか、またはトランスフェクションを容易にするか、および/またはベクター(またはタンパク質)の保存を改善する任意の化合物または化合物の組合せであり得る。用量または用量体積は本明細書の一般的記載で考察するが、当分野の情報と併せて本開示から教示を得た当業者は煩雑な試験を実施することなく容易に前記を決定できよう。
【0098】
別の実施態様では、医薬的または獣医学的に許容できる担体、賦形剤またはベヒクルは油中水エマルジョンでもよい。適切な油中水エマルジョンの例には油を基剤とした油中水ワクチンエマルジョンが含まれ、前記は以下を含有するとき安定でありさらに4℃で液状である:6から50v/v%の抗原含有水相、12から25 v/v%、50から94 v/v%の油相(前記は全部がまたは一部分が非代謝性油(例えば鉱物油(例えばパラフィン油))および/または代謝性油(例えば植物油、または脂肪酸、ポリオールもしくはアルコールエステル)を含む)、0.2から20p/v%の界面活性剤、3から8p/v%。後者は全部もしくは一部分がまたは混合物としていずれかのポリグリセロールエステルであり、前記ポリグリセロールエステルは、ポリグリセロール(ポリ)リシンオレエート、またはポリオキシエチレンリシン油または他の水素添加ポリオキシエチレンリシン油である。油中水エマルジョンで用いることができる界面活性剤の例には、エトキシル化ソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(TWEEN80(商標))(AppliChem社(Cheshire, CT)から入手できる)およびソルビタンエステル(例えばソルビタンモノオレエート(SPAN80(商標))、Sigma Aldrich(ST. Louis, MO)から入手できる)が含まれる。さらにまた、油中水エマルジョンに関しては米国特許6,919,084号もまた参照されたい。いくつかの実施態様では、抗原含有水相は、1つまた2つ以上の緩衝剤を含む食塩水溶液を含む。適切な緩衝溶液の例はリン酸緩衝食塩水である。ある実施態様では、油中水エマルジョンは水/油/水三重エマルジョンである(例えば米国特許6,358,500号を参照されたい)。他の適切なエマルジョンの例は米国特許7,371,395号に記載されている。
【0099】
本発明の医薬組成物およびワクチンは1つまたは2つ以上のアジュバントを含むかまたは本質的に前記から成り得る。本発明の実施で使用される適切なアジュバントは以下である:(1)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸およびアルケニル誘導体ポリマー、(2)免疫刺激性配列(ISS)、例えば1つまたは2つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド配列(Klinman et al. 1996;WO98/16247)、(3)水中油エマルジョン、例えばSPTエマルジョン(“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”(M. Powell, M. Newman, Plenum Press 1995)の147ページに記載)およびエマルジョンMF59(同書の183ページに記載)、(4)第四アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、(7)サポニンまたは(8)本出願に引用され、参照により含まれる任意の文書で考察される他のアジュバント、または(9)前記の任意の組み合わせまたは混合物。
【0100】
(3)の水中油エマルジョン(前記はウイルスベクターのために特に適切である)は以下を基剤とする:軽い流動パラフィン油(欧州局方型)、イソプレノイド油(例えばスクアラン、スクアレン)、アルケン(例えばイソブテンまたはデセン)のオリゴマー化により生成される油、直鎖アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル(例えば植物油、エチルオレエート、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセロールトリ(カプリレート/カプレート)およびプロピレングリコールジオレエート、または分枝脂肪アルコールもしくは酸のエステル、特にステアリン酸エステル。油は乳化剤と組み合わせて用いられエマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤でもよい。前記は例えば、一方でソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロールまたはプロピレングリコールのエステル、および他方でオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸のエステルであり、前記エステルは、場合によってエトキシル化されるか、またはポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック(例えばプルロニック、例えばL121)である。タイプ(1)のアジュバントポリマーの中では、好ましいものは、架橋(特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルによって架橋された)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物はカルボマーの名称で知られている(Pharmeuropa, vol. 8, no. 2, June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記文献は、少なくとも3つのヒドロキシル基(そのような基は8つを越えない)を有し、少なくとも3つのヒドロキシル基の水素原子が、少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されたポリヒドロキシル化合物によって架橋された、前記のようなアクリル酸ポリマーを提供する。好ましいラジカルは2つから4つの炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン系不飽和基である。不飽和ラジカルはまた他の置換基(例えばメチル)を含むことができる。カルボポル(Carbopol; BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売される製品が特に適切である。それらは、アリルサッカロースまたはアリルペンタエリトリトールによって架橋される。それらの中ではとりわけ、カルボポル974P、934Pおよび971Pが挙げられる。
【0101】
無水マレイン酸-アルケニル誘導体コポリマーに関しては、EMA(Monsanto)が好ましい。前記は、直鎖または架橋エチレン-無水マレイン酸コポリマーであり、それらは、例えばエーテルによって架橋される。J. Fideldsら(1960)の論文もまた参照できる。
【0102】
構造に関しては、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよびEMAは、好ましくは以下の式を有する基本単位によって形成される:
【0103】
【化1】
【0104】
式中、
R1およびR2(前記は同じでも異なっていてもよい)はHまたはCH3を表し、
x=0または1で、好ましくはx=1であり、
y=1または2で、x+y=2である。
EMAについては、x=0およびy=2であり、カルボマーについてはx=y=1である。
【0105】
これらのポリマーは水または生理学的食塩水(NaCl 20g/L)に可溶性であり、pHは例えばナトリウム化合物(NaOH)によって7.3から7.4に調節して、発現ベクターを混合することができるアジュバント溶液を提供できる。最終的な免疫学的組成物またはワクチン組成物のポリマー濃度は0.01から1.5%w/v、0.05から1%w/v、および0.1から0.4%w/vの範囲であり得る。
【0106】
本発明の別の特徴は、ある抗原に対し動物で免疫学的応答を誘発する方法に関し、本方法は、前記動物に対する病原体の抗原を含みこれをコードする改変組換えAPMVウイルスを含むワクチンまたは医薬組成物を動物に接種する工程を含む。本発明のさらに別の特徴は、プライム-ブースト投与の処置スケジュールで抗原に対する免疫学的応答を動物で誘発する方法に関する。前記処置スケジュールは、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を用いる、少なくとも1回の一次投与および少なくとも1回のブースター投与を含む。一次投与で用いられる免疫学的組成物またはワクチンは、ブースターとして用いられるものと性状が同じでも異なっていてもよい。本発明のプライム-ブーストプロトコルのある特徴では、本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを投与した後に続いて、抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはサブユニット(タンパク質、抗原)を含むワクチンもしくは組成物、または抗原を含むかまたは発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物が投与される。同様に、プライム-ブーストプロトコルは、抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはサブユニット(タンパク質、抗原)を含むワクチンもしくは組成物、または抗原を含むかまたは発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物を投与し、続いて本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを投与する工程を含むことができる。さらに、一次および二次投与の両投与が、本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを含むことができることを特筆する。
【0107】
一次投与は、同じウイルスベクター系免疫学的ワクチン組成物の1回または2回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースター投与は、同じウイルスベクター系または免疫学的ワクチン組成物の1回または2回以上の投与を含むことができる。プライムおよびブーストの投与経路は同じでも異なっていてもよい。同様に、プライムおよびブーストに存在する防御遺伝子の起源も同じでも異なっていてもよい(例えば異なる株)。
【0108】
種々の投与は好ましくは1週間から6週間離して、より具体的には約3週間離して実施される。好ましい態様にしたがえば、1年毎のブースター(好ましくはウイルスベクター系免疫学的ワクチン組成物を用いる)もまた想定される。動物は最初の投与時には好ましくは少なくとも1日齢である。
【0109】
多様な投与経路、例えば皮下、筋肉内、皮内、経皮、噴霧、飲料水、点眼、鼻内、経口、おとり餌、in ovo投与または前記の組合せ(例えば眼鼻投与、口鼻投与)を用いることができる。
【0110】
本発明をこれから以下の非限定的な実施例の方法によってさらに説明しよう。
【実施例1】
【0111】
APMV-1、APMV-4およびAPMV-6
A.ウイルスおよびトリ
【0112】
1日齢SPF(特定病原体フリー)ニワトリ(Merial, Gainesville, GA)を陽圧のHorsfall-Baur隔離ユニットに収容した。飼料および水を随時提供し、これらのトリを1日2回調べた。実験に用いたウイルス(APMV-2、4および6)は野鳥から単離され、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって分類された。ウイルスは、尿嚢経路で接種することによってSPFニワトリの9日齢発育卵(SunRise Farms, Catskill, NY, USA)で増殖させた。接種後3日で尿嚢液を採集し、適量分割し-80℃で保存した。APMVのサブタイプは標準血清(NVSL, Ames, Iowa, USA)を用いてHI試験により確認した。尿嚢液の10倍連続希釈をSPF発育卵に接種することによって、各単離株の50%卵感染用量(EID50)を決定した。Reed and Muench(Reed, LJ et al., 1938, Am. J. Epidemiol. 27:493-497)が記載した方法にしたがって力価を算出した。
B.実験的感染
【0113】
1グループにつき25匹の1日齢SPFニワトリに106EID50/ニワトリを眼鼻経路で感染させた。コントロールグループのニワトリにはPBS(リン酸緩衝食塩水)を擬似接種した。感染後2、4、7、14および28日目に各グループから5匹のトリの翼静脈から採血し血清サンプルを収集し、CO2で安楽死させ剖検した。気管、肺、膵臓および腸の組織標本を収集した。各器官について新しく滅菌した1対の鋏とピンセットを用いた。組織サンプルの半分を、ウイルス輸送媒体を含むライシング・マトリックス(Lysing Matrix)Dチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH)に入れた。前記ウイルス輸送媒体は以下を含む:1Xの最少必須培地、7.5%重曹、15mMのHEPES、1%ウシ胎児血清、4000U/mLペニシリン、400μg/mLゲンタマイシン、8μg/mLアンホテリシンB、4000μg/mLストレプトマイシン、1000μg/mL硫酸カナマイシン。前記組織サンプルの第二の半分を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンワックスに包埋した。パラフィン包埋組織切片をメイヤーのヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。
【0114】
結果は、軽度の下痢が、APMV-2またはAPMV-4に感染させたトリで感染後4日目および7日目に観察されることを示した。剖検時に、APMV-2に感染したトリは感染後2日目および4日目に膵臓のわずかな肥大を示した。
C.血清学
【0115】
血球凝集(HA)および血球凝集阻害(HI)試験を用いて、尿嚢液でのウイルスの検出および収集血清サンプルでのHI抗体存在の分析をそれぞれ実施した。前記試験は、PBSに再懸濁させた0.8%のニワトリ赤血球を用いて標準的方法により実施した。HI試験は血清希釈抗原定常法により実施した。各血清希釈について8HAユニットのウイルス抗原を用いた。
【0116】
HI抗体力価は感染後2、4、7、14および28日目に調べた。陽性HI力価(1:16以上)は、APMV-2に感染したトリの血清サンプルで感染後7日目(1/5)、14日目(5/5)および28日目(5/5)に観察された。興味深いことに、APMV-4に感染したニワトリの1匹だけがHI力価を上昇させ、感染後14日目にこのHI力価は実験中陽性とみなされた。同様にAPMV-6について、5匹のうち2匹のニワトリが感染後28日目に1:16のHI力価を生じた。擬似接種したトリは、この実験に用いた3つのAPMVの全てに対してHI抗体が陰性のままであった。さらにまた、交差夾雑を排除するために、全血清を他の2つの抗原に対するHI抗体について試験したが、陰性のままであった。
D.ウイルスの単離
【0117】
ライシング・マトリックスDチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH)に収集した組織サンプルを、Fastprep(商標)-24(MP Biomedicals, Solon, OH)を20秒間4.0M/Sの設定で用い2回均質化した。室温で15分間インキュベーションした後、均質化したサンプルを2000g、20分間、4℃で遠心した。無菌性は、10%ヒドロラクトアルブミンを補充した2mLトリプトースホスフェートブロス(TPB)(DIFCO, Becton Dickenson, Sparks, MD, USA)に得られた上清の50μLを接種後、37℃にて一晩オービタルシェーカーでインキュベートすることによって試験した。無菌的でないサンプルは0.45μmのシリンジフィルター(Whatman Inc., Florham Park, NJ, USA)でろ過した。サンプルは-80℃で保存した。ウイルスの単離は、SPFニワトリの9日齢発育卵の尿嚢に0.1mLを接種することによって実施した。37.5℃で3日間インキュベートした後、尿嚢液を採集し、血球凝集活性の存在をHAによって試験した。
【0118】
ウイルスの複製部位を解析するために、発育卵でウイルスを単離することによって、いくつかの器官(気管、肺、腸、膵臓)を感染について分析した(図1)。全般的に、複製ウイルスはいくらかのニワトリでのみ検出されただけであった。簡単に記せば、2日目にAPMV-4は気管、肺および膵臓から回収されたが、APMV-6は肺および膵臓から単離された。4日目に、APMV-2は気管および肺から単離されたが、APMV-6は腸を除くすべての試験器官から単離された。7日目には、APMV-2はただ1つの腸サンプルから単離され、APMV-4は膵臓から単離されたが、APMV-6は肺および膵臓サンプルから単離された。驚くべきことに、感染後14日目にはウイルスは単離されなかったが、感染後28日目には、APMV-2、4および6は膵臓から単離できた。擬似接種したトリからはウイルスは単離されなかった。単離したウイルスの実体は、NVSLによって提供された標準血清を用いてHI試験により確認した。
【0119】
試験ウイルスの病原性能力を判定するために、入手した器官の顕微鏡病巣を分析した(図2)。感染後2日目に、呼吸器上皮の線毛消失および軽度の腸炎に加えてカタル性気管が全ての感染ニワトリで観察された。感染後4日目には、APMV-2感染ニワトリは、気管の肥大粘液線の数の増加および呼吸器上皮の巣状潰瘍を示した。感染後4日目には、APMV-4感染ニワトリは、呼吸器感染を強く示唆する変化(例えば軽度の気管炎)、軽度から中等度のリンパ球性多発性巣状膵炎およびBALT(気管支付随リンパ系組織)の巣状過形成を示した。APMV-6感染ニワトリの器官の精査によって、気管の変化(例えばカタル性および潰瘍性気管炎)および巣状膵炎(ウイルス性刺激と一致する)が明瞭であった。感染後7日目には、APMV-2感染ニワトリは、巣状気管希薄化または治癒を示唆する呼吸器上皮の置換を示した。APMV-4感染トリは軽度のBALT過形成を示したが、APMV-6感染トリは嚢胞性腸症、巣状腸炎および膵臓のリンパ球浸潤を示した。感染後14日目には、軽度のリンパ球性腸炎および軽度のGALT過形成に加えて、APMV-2感染トリは治癒性変化(例えば気管希薄化)もまた示した。APMV-4または6に感染したニワトリの器官サンプルは、ウイルス感染を示唆する変化、例えば軽度の間質性肺炎、カタル性気管炎およびBALTまたはGALT過形成を感染後14日目に示した。感染したニワトリから入手した全ての精査サンプルが、病巣、例えばGALT過形成、リンパ球性膵炎およびリンパ球性気管支炎を感染後28日目に示した。2日目に、コントロールグループの複数のトリが軽度のカタル性気管炎を示し、これは環境因子に起因する可能性がある。
【0120】
図3はAPMV-4または6に感染したSPFニワトリの低いHI力価(14日目に1:32まで)を示し、APMV-2感染だけが血清陽性と特徴付けることができるHI応答を誘引したことを示している。それにもかかわらず、3ウイルス全てが、感染したトリの気管、肺、腸および膵臓から感染後7日目まで、さらに膵臓から感染後28日目まで回収された。APMV-2、4または6による感染は、特徴的な組織病巣(図2に要約)を全ての感染鳥で示し、ウイルス抗原による刺激を示唆した。感染鳥のウイルス単離および組織学的プロフィルは、感染鳥におけるこのウイルスの向性を如実に示した(2日目から7日目までは気管および肺、7日目以降は腸、肺および膵臓)。全ての単離株は感染後28日目まで膵臓で検出されたが、ウイルスは感染後14日目には単離できなかった。このことは、調べたAPMVはおそらく存続し後に再活性化され得ることを示した。したがってウイルスキャリアが感染群に存在することが可能である。APMV-2のみがHI抗体を誘発し、一方APMV-4および6に感染したニワトリのHI抗体は検出されなかった。
【実施例2】
【0121】
APMV-8
A.ウイルスおよびトリ
【0122】
1日齢SPFニワトリ(Merial, Gainesville, GA, USA)およびペキンアヒル(Metzer Farms, Gonzales, CA, USA)を陽圧のHorsfall-Baur隔離ユニットに収容した。
飼料および水を随時提供し、トリを1日2回調べた。実験に用いたAPMV-8ウイルス(APMV-8:SCWDS ID:MA-7)はマガモから単離され、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって分類された。ウイルスは、尿嚢経路で接種することによってSPFニワトリの9日齢発育卵で増殖させた。接種後3日で尿嚢液を採集してプールし、適量分割し-80℃で保存した。APMV-8サブタイプは、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって提供された標準血清を用いてHI試験により確認した。尿嚢液の10倍連続希釈をSPF発育卵に接種することによってEID50を決定した。Reed and Muench(Reed and Muench, 1938)が記載した方法にしたがって力価を算出した。
B.実験的感染
【0123】
1グループにつき25匹の1日齢SPFニワトリまたはペキンアヒルにPBSで希釈した106EID50/トリを眼鼻経路で感染させた。コントロールニワトリまたはアヒルグループのトリにはPBSを擬似接種した。感染から2、4、7、14および28日後に各グループから5匹のトリの上腕静脈から採血し血清サンプルを収集し、CO2で安楽死させ、さらに剖検を実施した。気管、肺、膵臓および腸(十二指腸)の組織標本を収集した。各器官について新しく滅菌した1対の鋏とピンセットを用いた。組織サンプルの半分を、ウイルス輸送媒体を含むライシング・マトリックスDチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH, USA)に入れた。前記ウイルス輸送媒体は以下を含む:1Xの最少必須培地、7.5%重曹、15mMのHEPES、1%ウシ胎児血清、4000U/mLペニシリン、400μg/mLゲンタマイシン、8μg/mLアンホテリシンB、4000μg/mLストレプトマイシン、1000μg/mL硫酸カナマイシン。前記組織サンプルの第二の半分を10%緩衝ホルマリンで固定し、さらに日常的に処理し、包埋し切片を作成してヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。
C.ウイルスの単離
【0124】
ライシング・マトリックスDチューブに収集した組織サンプルを、Fastprep-24(MP Biomedicals)を20秒間4.0M/Sの設定で用い2回均質化した。この均質化サンプルを室温で15分間インキュベーションし、続いて2000xg、20分間、4℃で遠心した。得られた上清の50μLを10%ヒドロラクトアルブミン補充無菌的TFBの2mLに接種し、続いて37℃にて一晩オービタルシェーカーでインキュベートして無菌性について試験した。無菌的でないサンプルは0.45μmのシリンジフィルター(Whatman Inc.)でろ過した。サンプルは-80℃で保存した。ウイルスの単離は、SPFニワトリの9日齢発育卵の尿嚢に0.1mLを接種することによって実施した。37.5℃で3日間インキュベートした後、尿嚢液を採集し、血球凝集活性の存在をHAによって試験した。
D.血清学
【0125】
血球凝集(HA)および血球凝集阻害(HI)試験を用いて、尿嚢液でのウイルスの検出および収集血清サンプルでのHI抗体存在の分析をそれぞれ実施した。前記試験は、PBSに再懸濁させた0.8%のニワトリ赤血球を用いて標準的方法により実施した。HI試験は血清希釈抗原定常法により実施した。各血清希釈について8HAユニットのウイルス抗原を用いた。以前に記載されたように(Brugh, 1978)幾何平均力価を決定した。
図4は、APMV-8を感染させたSPFニワトリおよびアヒルのHI抗体力価を示す。ニワトリおよびアヒルにAPMV-8の106 EID50の用量を口鼻感染させた。血清サンプルを感染後2、4、7、14および28日目に収集し、APMV-8抗原によるHI試験によって解析した。HI血清力価(log2)は左軸で示される。
E.ニワトリにおけるAPMV-8の病原性インデックス
【0126】
APMV-8の病毒性を判定するために、ニューカッスル病ウイルスのための世界動物保険機構(World Organization for Animal Healt)(OIE, 2008)の手順のしたがって、大脳内病原性インデックス(ICPI)を決定した。ニワトリ胚の平均死亡時間(MDT)は以前に記載されたように(Swayne et al., 1998)、10-1から10-8のAPMV-8連続希釈を用いて決定した。
【0127】
発育卵における平均死亡時間の決定は、大脳内病原性インデックス(ICPI)の判定と同様にウイルスの病原性についての重要な測定である。発育卵におけるMDTに関しては、接種卵の胚はいずれも7日後に死亡せず、したがってAPMV-8単離株はレントジェニックと分類できる。ウイルスの存在は、10-6希釈を接種した卵の尿嚢液を用いたHA試験によって確認した。大脳内接種したニワトリはいずれも観察期間の間ずっと臨床徴候を示さずICPI値はゼロで、したがって表現型はレントジェニックとなる。
F.APMV-8ブースターワクチン
【0128】
1グループにつき10匹の1日齢SPFニワトリに眼鼻経路で106EID50/トリを感染させた。前記のトリに第一の感染から14日後に同じ用量を再度感染させた。感染性ウイルスの存在は、最初の感染後2、4、7および14日目に、さらに第二の感染後2および4日目に気管スワブから9日齢発育卵を用いてウイルスを単離することによってモニターした。抗体応答は、各ワクチン接種後、0、7および14日で収集した血清サンプルのHI力価によってモニターした。
【0129】
第二の免疫がより持続性のHI力価を発達させるか否かを調べるために、プライム/ブースト処置スケジュール実験を実施した(図5)。第一の感染後7日目に10匹のトリはいずれも64から1024の範囲のHIを示した(GMT207)。力価は第一の感染後14日目に低下したが(GMT84)、最初の感染後14日目のブースター感染後増加した。ブースター接種後7日目に、GMTは137に増加し、第二の感染後14日目にGMTは再び73に低下した。感染性ウイルスは、第一の感染後2日目(5匹/10匹)および4日目(4匹/10匹)に気管スワブから単離できた。第二の感染後、感染後2日目および4日目に採取したスワブからウイルスは単離されなかった。
G.RT-PCRによるウイルスRNAの検出
【0130】
組織サンプルのウイルスRNAの検出は、組織サンプルの均質化後にHigh PURE RNA単離キット(Roche, Manheim, Germany)を用いて実施した。プライマー対(8NPf1、8NPr、表1を参照されたい)をRT-PCRで用いた。前記RT-PCRでは、製造業者の指示に従いSuperscript III One Step RT-PCRキットをPlatinum Taq(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)とともに用いた。得られた反応生成物を1%アガロースゲルで解析した(図6)。気管組織を非感染アヒル(C1−C5)およびAPMV-8感染アヒル(I1−I5)から感染後2日目に採取した。組織を均質化しRNAをRT-PCRのために調製した。並行して水コントロール(W)を調製した。反応生成物を1.5%アガロースゲルで分離した。フラグメントのサイズは100bpラダー(New England Biolabs, Boston, MA, USA)を用いて管理した。DNAフラグメントのサイズは右側に示されている。
表1:組織サンプル中のウイルスRNAの検出のためのRT-PCRで用いたオリゴヌクレオチド
H.ニワトリおよびアヒルにおける最少感染用量の決定
【0131】
ニワトリの血清変換の検出に十分なウイルス力価を決定するために1日齢のSPFニワトリに種々の用量のAPMV-8を感染させた。このトリを上記に記載したように収容した。1グループにつき10匹のニワトリに101、102、103、104、105または106EID50を感染させた。ウイルスはVTMで希釈した。1つのグループにはVTMを接種し、コントロールとして用いた。これらのトリの上腕静脈から感染後7および14日目に採血した。ニワトリで実験中に得られた結果を基にして、3日齢のペキンアヒルを種々の量のウイルスに感染させた。感染用量には103、104、105または106EID50/アヒルを選択した。1つのグループにはVTMを擬似感染させた。これらのトリの脚静脈から感染後7および14日目に採血した。上記に記載したHIによって、ウイルス特異的抗体について血清サンプルを解析した。
I.アヒルおよびニワトリにおける病原性の決定
【0132】
実験中、ニワトリおよびアヒルで臨床徴候は観察されなかった。剖検時、3匹の感染ニワトリが感染後2および4日目にわずかな膵臓肥大および十二指腸炎症を示した。いずれのグループでも他の肉眼病巣は認められなかった。
【0133】
血清学的応答は、血清のHI力価の精査により感染後2、4、7、14および28日目に調べた(図4)。APMV-8感染ニワトリの血清サンプルは、感染後7日(5/5、GMT:111)から14日(5/5、GMT:48)および28日(5/5、GMT:48)で陽性HI力価(16以上)を示した。APMV-8感染アヒルの血清サンプルもまた、感染後7日(5/5、GMT:21)から14日(5/5、GMT:28)および28日(4/5、GMT:14)で陽性HI力価(16以上)を示した。HI力価はニワトリについては32から256の範囲であるが、アヒルについては16から64の範囲である。擬似接種鳥は、両方の種で精査した全ての時点においてAPMV-8に対するHI抗体について陰性を維持した。
【0134】
ニワトリおよびアヒルにおけるウイルス複製部位を決定するために、いくつかの器官(気管、肺、十二指腸および膵)を発育卵でウイルスを単離することによって感染性ウイルスについて解析した(図7)。ニワトリでは、感染後2日でAPMV-8は気管、肺および十二指腸から回収された。感染後4日ではAPMV-8は全ての解析器官から単離されたが、感染後7日ではAPMV-8は膵臓からのみ単離された。感染後14および28日では、いずれの器官からもウイルスは回収されなかった。擬似接種したトリからはウイルスは単離されなかった。単離したウイルスの実体はNVSLが提供した標準血清を用いるHI試験によって確認した。収集したいずれのアヒル組織からはいずれの時点でも、9日齢のSPF発育鶏卵で2回継代後でさえもウイルスは単離されなかった。したがって、RT-PCRプライマーは、収集組織サンプルでウイルスRNAの存在を検出するために入手可能なAPMV-8の配列情報に基づいて設計した(図7)。感染後2日で、ウイルスRNAは気管(図6)、腸および膵臓で検出されたが、感染後4日ではウイルスRNAは解析した全器官で検出された。感染後7、14および28日では、ウイルスRNAは気管および肺でのみ検出された。擬似接種鳥の器官から入手したRNAを用いたRT-PCRはRT-PCRフラグメントの増幅をもたらさず、このことはこれらのトリでAPMV-8は存在しないことを示している。
【0135】
この精査ウイルスの病理学的能力を判定するために、顕微鏡的病巣の存在について器官を解析した(図8)。感染後2日では、軽度の多発性巣状増殖性気管炎が全ての感染ニワトリで観察された。その他の器官はコントロールグループと相違がなかった。APMV-8感染ニワトリは、感染後4日で治癒を示唆する気管呼吸系上皮の巣状希薄化または再生を示した。さらにまた、これらのトリは、ウイルス感染を示す軽度の多発性巣状リンパ球性膵炎を示した。感染後7日で、感染ニワトリは、肺の変化(例えば中等度から重度のBALTの変化)、気管の変化(例えばカタル性気管炎)および多発性巣状リンパ球性膵を示した。これらの所見は抗原性刺激と一致する。感染後14日には、気管の変化は治癒と一致し、ウイルス感染を示唆する膵臓の変化(例えばリンパ球性膵炎)が感染ニワトリで観察された。感染後28日では、軽度のカタル性気管炎および軽度の腸炎のみが感染ニワトリのいくらかで認められた。感染アヒルでは、感染後2日で、軽度の多発性巣状リンパ球性気管炎、肺の変化(間質性肺炎)および腸の変化(リンパ球性腸炎)が観察され、一方、感染後4日では呼吸器感染と一致する気管変化が観察された。感染後7日では、感染アヒルはリンパ球性気管炎およびウイルス感染と一致する膵炎を示したが、観察されたカタル性気管炎は感染後14日では治癒を示唆した。さらにまた、感染アヒルは感染後14日でリンパ球性膵炎を示した。その後感染後28日では、感染アヒルの肺ではBALTの過形成および軽度の多発性巣状異染性気管炎もまた認められた。両者の病理学的顕微鏡病巣はウイルスの感染を示している。非感染コントロールでは調べた器官に変化は観察されなかった。
J.免疫応答誘発に必要な最少用量の決定
【0136】
ニワトリで血清変化の誘発に必要な最少感染用量を決定するために、10倍希釈のAPMV-8を用いて、10匹の1日齢SPFニワトリを感染させた(図9)。HI試験については、陽性とみなされる閾値16をもたらす4HA単位を用いた。感染後14日目に採取した血清サンプルは、陽性とみなされる(GMT 11)免疫応答を4/10のニワトリで誘発するために103のEID50が十分であることを示した。104のEID50の感染後14日目に、10匹のトリのうち9匹が16以上の力価を示した(GMT 34)。105および106のEID50による感染は全てのトリで16以上のHI力価を感染後14日目に誘発し、GMTはそれぞれ73および137であった。
【0137】
この結果を基に、8匹のアヒルの各々に103/トリの用量のEID50から106/トリの用量のEID50までAPMV-8を感染させた。8匹のうち6匹のアヒルが顕著な力価(16以上)を感染後14日で生じ、104/トリのEID50の感染後GMTは14であった。感染後14日目には、105/トリのEID50を感染させた6/8のアヒル、および106/トリのEID50を感染させた7/8のアヒルが顕著な力価(16以上)を生じ、GMTはそれぞれ17および23であった。
【実施例3】
【0138】
APMV-8の完全長配列の決定
APMV-8の完全長配列の決定のために、ウイルスRNAの配列情報がまず初めに必要とされる。この目的のために、APMV-1(Genbank アクセッション番号AF077761)、APMV-2(Genbank アクセッション番号EU338414)、APMV-6(Genbank アクセッション番号EF569970)の入手可能な3'-配列を基にして縮退配列を含むプライマー(APMV-ポリT、表1参照)を用いることによって、ウイルスゲノムの3'-末端をクローニングした。ウイルスRNAは、High Pure RNA単離キット(Roche, Mannheim, Germany)を用いて尿嚢液から精製した。前記配列は、cDNA末端の迅速増幅用5' RACE系バージョン2.0(Invitrogen)を製造業者の指示に従って用いた。いくつかのフラグメントを入手し、ゲルから溶出させ、Topo TAクローニングベクター(Invitrogen)でクローニングし、陽性選別したクローンの配列を決定した。得られたヌクレオチド配列をNCBIデータベースに対してnblast検索で解析し、類似性は得られなかった。NCBIのデータベースに対してtblastxで検索したところ、トリパラミクソウイルス2(APMV-2/ニワトリ/カリフォルニア/Yucaipa/56、Genbankアクセッション番号EU338414)に83%の類似性、およびトリパラミクソウイルス6株(APMV-6/カモ/極東/4440/2003、Genbankアクセッション番号EF569970)に56%類似性を有するヌクレオプロテインに対して類似性を示した。このプライマーを用いて、cDNA末端の迅速増幅用5' RACE系バージョン2.0(Invitrogen)によりプライマーウォーキング法を実施した。5'-RACEはほぼ800bpのフラグメントを生成した。この技術を用いて、以前の配列から得た配列情報(これを用いて新規なオリゴヌクレオチドの輪郭を得た)を基にして新規な配列情報を入手した。ウイルスゲノムの5'-末端もまた前記5'-RACEの方法によって決定した。ウイルスゲノムの3'-末端は、T4 RNAリガーゼ1(New England Biolabs)によるRNAの連結後に入手した。連結反応物をHigh Pure RNA単離キット(Roche, Mannheim, Germany)で再度精製し、Superscript III One Step RT-PCRキットをPlatinum Taq(Invitrogen)とともに用いてRT-PCRを実施した。得られたcDNAフラグメントをpCR2.1ベクター(Invitrogen)でクローニングしさらに配列を決定した。クローニングした各フラグメントに由来する3つのプラスミドを両方の向きで配列決定し、したがって各ヌクレオチドの6通りをカバーする配列が得られた。
【0139】
解析したAPMV-8株の完全長ゲノム配列は15342ヌクレオチドで、これはパラミクソウイルス科の6の法則(Calain, P. & Roux, L., 1993)と一致する。6つのオープンリーディングフレーム(ORF)が検出され、複数のタンパク質をコードする。タンパク質の順序は、他のトリパラミクソウイルスのタンパク質に対するタンパク質配列類似性を用いて、3'-NP-P-M-F-HN-L-5'と決定された(ゲノム配列の配列番号:1は5'から3'方向のアンチゲノムである)。これらORFの仮定的開始および終止コドン並びにこのタンパク質の理論的分子量(Swiss Institute of Bioinformatics ExPASy website)は表2に示されている。
表2:APMV-8配列によってコードされるタンパク質のパラメーター
【0140】
仮定的なゲノムリーダーおよびトレイラー配列は、NP遺伝子(リーダー)の仮定的遺伝子開始配列およびLタンパク質(トレイラー)の仮定的遺伝子末端配列の決定によって決定した。リーダー配列はヌクレオチド1からヌクレオチド55に位置する。NP遺伝子の仮定的遺伝子開始配列はリーダー配列を終了させる。トレイラー配列はウイルスゲノムの最後の遺伝子の末端配列の後ろに位置する。RNAポリメラーゼ遺伝子のための2つの仮定的遺伝子末端配列(nt15161−nt15171またはnt15288−nt15297)により、2つの仮定的なトレイラー配列が同定された(nt15172−nt15342またはnt15289−nt15342)。仮定的遺伝子開始配列(ポリG含有配列)および遺伝子末端配列(ポリアデニル化のためのシグナル配列)並びに遺伝子間配列の位置は表3に要約される。
表3:APMV-8の仮定的遺伝子開始、遺伝子間および遺伝子末端配列の配列および位置
表4:配列番号並びにDNAおよびタンパク質配列
【0141】
APMV-8の仮定的遺伝子開始配列は保存され、ポリ(C)5配列とその後に続く3'-GCU-5'を含む。ただ1つの例外は、ウイルスRNAポリメラーゼの仮定的遺伝子開始配列である(3'-CUCCCGCU-5')。仮定的遺伝子末端配列もまた保存され、ゲノムのウイルス5'配列にポリ(U)6配列を含む(表5)。
【表1】
【0142】
これらの配列は、アブラウイルス属(Avulavirus)の他のパラミクソウイルスについて記載された配列から予測された(Chang et al., 2001, Nayak et al, 2008, Jeon et al., 2008)。RNAポリメラーゼのORFには2つの可能な開始コドンが存在する。第一の開始コドン(nt 8273−8275)は、HN ORFとウイルスRNAポリメラーゼORFとの間の遺伝子末端-遺伝子間領域-遺伝子開始領域に位置する。これによりこの開始コドンの可能性は極めて低くなるががただし不可能ではない。第二の開始コドン(8297−8299)は遺伝子末端-遺伝子間領域-遺伝子開始領域の下流に存在し、APMV-8のRNAポリメラーゼの翻訳開始のための開始コドンとして機能し得る。
【0143】
APMV-8のゲノムは長さが15342ヌクレオチドである。これはAPMV-1(配列番号:15、15186 nt(de Leeuw & Peeters, 1999))、APMV-2(配列番号:16、14,904 nt(Subbiah et al., 2008))、APMV-4(配列番号:18、15054 nt(Nayak et al., 2008))より大きく、APMV-3(配列番号:17、16,272 nt(Kumar et al., 2008))およびAPMV-9(配列番号:20、15,438 nt(Samuel et al., 2009))より小さい。リーダー配列の55ヌクレオチドの長さは全APMV間で保存されているように思われるが(Krishnamurthy & Samal, 1998, de Leeuw & Peeters, 1999, Subbiah et al., 2008, Nayak et al., 2008, Kumar et al., 2008, Samuel et al., 2009)、一方、トレイラー配列は長さが多様であるように思われる。ウイルス遺伝子の遺伝子開始および遺伝子末端配列はまたAPMV-8についても高度に保存されていた(表5に示す通り)。このことはまたAPMV-2(Subbiah et al, 2008)、APMV-3(Kumar et al, 2008)、APMV-4(Jeon et al., 2008, Nayak et al, 2008)、APMV-6(Chang et al, 2001)の配列について、さらに最近ではAPMV-9((Samuel et al., 2009)についても記載されている。完全長配列のヌクレオチドの数は6の倍数で、このことはパラミクソウイルスゲノムの6の法則と一致する(Kolakofsky et al., 1998)。
【0144】
APMV-1、2、3、4、6、8および9のゲノム間の配列同一性は表6に示されている。
表6:APMV-1、2、3、4、6、8および9のゲノム間の配列同一性
【0145】
2つの核酸またはポリペプチド配列間のパーセント配列同一性はVector NTI 11.0(PC)ソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定される。ギャップオープニングペナルティ15およびギャップ伸長ペナルティ6.66を2つの核酸のパーセント同一性の決定に用いる。ギャップオープニングペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を2つのポリペプチドのパーセント同一性の決定に用いる。パーセント同一性は短い方の配列を基準に算出した。
【実施例4】
【0146】
APMV-8株による1日齢ブロイラー鶏のワクチン接種
20匹の1日齢ブロイラー鶏を下記に示す表7にしたがって2つのグループに分けた。
【0147】
1日目に1日齢のニワトリから採血し、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HI試験)を用いてニューカッスル病ウイルス(NDV)およびAPMV-8に対する抗体の状況を決定した。前記試験はNDV Lasota株またはAPMV-8感染SPF卵から得た尿嚢液を用いて実施した。NDV Lasota株またはAPMV-8の4HA単位および1%ニワトリ赤血球をHI試験に用いた。得られたHI力価は、これらニワトリ血清はNDVに対するHI抗体を含むがAPMV-8ウイルスに対する検出可能な抗体は含まないことを示した。
表7:1日齢ブロイラー鶏の感染/ワクチン接種
【0148】
1日目に、グループ1の10匹のニワトリに106 EID50のAPMV-8株を鼻経路で感染させ、グループ2の10匹のニワトリには感染させずコントロールとして供した。
【0149】
感染後14日で(14日目)ニワトリから採血し、得られた血清サンプルをNDVおよびAPMV-8に対するHI抗体の存在について再度解析した(図20)。結果は、APMV-8ワクチンを接種したニワトリは、抗原としてAPMV-8を用いたときHI力価を有することを示した。APMV-8特異的HI力価は128から2048の間であった。NDVに対するHI力価は16未満の低いHI力価に低下し、したがってそれらはNDV陽性とみなされない。この結果は、NDVに対するニワトリの母親由来抗体はAPMV-8の感染を排除せず、したがってそのような抗体のAPMV-8ワクチン免疫の妨害の可能性は極めて低いことを示した。
【0150】
感染後14日で(14日目)、グループ1およびグループ2のニワトリを分割した。グループ1(グループ1-1)およびグループ2(グループ2-1)の各々5匹のニワトリに再度106 EID50のAPMV-8株を感染させ(表7)、各グループの残りの5匹のニワトリ(グループ1-2およびグループ2-2)には感染させなかった。この実験は、後の感染が感染に影響を与えるか否かおよび第二の感染(ブーストワクチン免疫)が抗体力価を増加させるか否かを精査するために設計した。14日後に(28日目)、全てのニワトリから再び採血し、血清をAPMV-8およびNDV抗体の存在について精査した。血清力価(図21)は、14日目の最初のワクチン接種(グループ2-1)はAPMV-8特異的抗体力価(32から512の範囲)を確かに誘発した。1日目だけにワクチン接種したニワトリ(グループ1-2)では、抗体力価は128から512の範囲の力価に低下した。1日目および14日目にワクチン接種したニワトリ(グループ1-1)では、APMV-8特異的抗体力価は増加せず、第二の感染に用いられたウイルスは、最初の感染によって誘発されたAPMV-8特異的抗体によって中和されたことを示唆した。ワクチン接種されなかったコントロール(グループ2-2)の血清はAPMV-8特異的HI抗体を含まなかった。28日目に、NDV抗体はさらに低下し、20匹のニワトリのうち11匹のニワトリだけがNDV抗原に対するHI力価を示したが、14日目には14匹のニワトリがNDBVに対して低い抗体力価を示した。
【実施例5】
【0151】
発育SPF卵のin ovoワクチン接種
この実験は、APMV-8によるin ovoワクチン接種がニワトリに抗体応答をもたらすか否か、およびin ovoワクチン接種が孵化率および生存率を低下させるか否かを試験するために実施した。
【0152】
実験1では、インキュベーション18日目にINOVOJECT(Pfizer Animal Health, NY, USA)を用いて、108個のSPF卵にAPMV-8ウイルス株をin ovoワクチン接種した。ウイルスは無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。希釈ウイルスのバックタイトレーションによって105.5 EID50/100μLであることが示された。コントロールとして、108個の卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。接種体積は100μL/卵であった。80匹のニワトリがコントロールグループから孵化し、45匹のニワトリがAPMV-8ワクチン接種グループから孵化した。各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。さらにまた、APMV-8ワクチン接種グループのニワトリおよびコントロールグループの5匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットで混ぜ合わせ、ワクチン接種後のAPMV-8の伝播を試験した。水および飼料は随時提供した。孵化後14日および28日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図22)は、インキュベーション18日目のin ovoワクチン接種は被検血清サンプルにおけるHI力価の存在によって示される通り免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、256から4048のHI力価がin ovoワクチン接種グループで観察された。接触ニワトリの血清では、ワクチン接種グループのニワトリとの接触から14日後に256から2048のHI力価が観察され、ワクチン接種に用いられたウイルスの排出を示した。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。14日後に、ニワトリから再び採血し、AMPV-8ワクチン接種グループで256から4096、AMPV-8接触グループで256から1024の力価が示された。コントロールグループはAPMV-8 HI抗体が存在しないことを示した。
【0153】
実験2では、インキュベーション19日目にINOVOJECTを用いて、88個のSPF(特定病原体フリー)卵にin ovoワクチン接種した。APMV-8ウイルス株は無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。希釈ウイルスのバックタイトレーション後に観察されたように、ウイルスの力価は105.75 EID50/100μLであった。コントロールとして、88個のSPF卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。接種体積は100μL/卵であった。74匹のニワトリがコントロールグループ(NaCl)から孵化し、76匹のニワトリがAPMV-8ワクチン接種グループから孵化した。各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。水および飼料は随時提供した。孵化後14日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図23)は、インキュベーション19日目のin ovoワクチン接種はAPMV-8特異的HI力価による免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、256から4048のHI力価がAPMV-8 in ovoワクチン接種グループで観察された。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。孵化後28日目に、ニワトリから再び採血した。AMPV-8ワクチン接種グループのHI力価は512から4096の範囲であったが(図23)、コントロールニワトリの血清はなおAPMV-8陰性であった。
【0154】
三番目の実験では、インキュベーション18日目にINOVOJECTを用いて、グループ1およびグループ2の108個のSPF卵にそれぞれ103.5 EID50および104.5 EID50でin ovoワクチン接種した。APMV-8ウイルス株は無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。第三のグループでは、コントロールとして108個のSPF卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。83匹のニワトリがグループ1から孵化し、79匹のニワトリがグループ2から孵化し、さらに88匹のニワトリがグループ3から孵化した(表8参照)。孵化後、各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。水および飼料は随時提供した。孵化後、グループ3の10匹のニワトリの首領域の皮下に106 EID50 APMV-8ウイルスを100μLの体積でワクチン接種した。孵化後14日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球(CRBS)を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図24)は、インキュベーション18日目のin ovoワクチン接種はAPMV-8特異的HI力価による免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、4096から16384のHI力価がAPMV-8 in ovoワクチン接種グループで観察された。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。APMV-8を皮下にワクチン接種されたグループは、64から4096の範囲の力価の血清変換を示した。孵化後28日目に、ニワトリから再び採血し、APMV-8特異的HI抗体の存在について試験した。孵化後4週間でHI力価は低下し、512から4096の範囲であった。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。皮下にワクチン接種されたグループのHI力価は32から256の間のHI力価を示した。
表8
【実施例6】
【0155】
APMV-8株の逆遺伝学の開発および異種遺伝子を発現するAPMV-8変異体の作製
APMV-8のNP、PおよびL遺伝子を含む発現プラスミドの構築
【0156】
パラミクソウイルスのための逆遺伝学系を確立するために、ウイルスRNA複製に必要なタンパク質を発現するプラスミドの樹立は必須である。3つのAPMV-8タンパク質(ヌクレオプロテインNP、ホスホプロテインP、RNA依存RNAポリメラーゼタンパク質またはタンパク質L)のオープンリーディングフレームを真核細胞発現ベクター、pcDNA3(Invitrogen, California, USA)でクローニングした。この目的のために、APMV-8を含む尿嚢液のRNAをHigh Pure RNA単離キット(Roche, Basel, Switzerland)を用いて精製した。前記精製RNAを、Titan One Tube RT-PCRキット((Roche)を用いる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のために使用した。前記タンパク質のORFを適切なプライマー対(すなわちNP (NP-FP, NP-RP), P (P-FP, P-RP), L (L-FP, L-RP)、表9参照)を用いて増幅した。反応生成物を0.7%アガロースゲルで分離し、製造業者のプロトコルにしたがいQIAquick Gel抽出キット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて溶出させた。このRT-PCRフラグメントを適切な制限酵素(NPおよびP をEco RI/NotI、LをKpn I/NotI)とともにインキュベートし、再びゲルから溶出させ、さらに適切な制限酵素で切断した真核細胞発現ベクターpcDNA3に連結した。前記連結反応物でTop10F細胞(Invitrogen)を形質転換し、前記Top10F細胞から採集したプラスミドDNAを適切な制限酵素(上記参照)で消化した。適切なサイズを有するDNAフラグメントを含むプラスミド(pcDNA-NP、pcDNA-P、pcDNA-L)の配列を決定した。
表9:RNP複合体タンパク質の遺伝子増幅用プライマー
【0157】
aこのプライマー配列はクローニングに用いられる制限酵素の切断部位を含む。制限部位は太字で特定されている。開始コドンおよび終止コドンは括弧で括って示してある。ウイルス特異的配列には下線が付されている。
【0158】
bこのプライマー配列方向はウイルスメッセンジャーRNAと一致する。
【0159】
c位置は提示した完全長ゲノムのウイルス特異的配列である。
APMV-8の完全長ゲノムを含むプラスミドの構築
【0160】
完全長APMV-8ゲノムを含むプラスミドを作製するために、このウイルスのcDNAゲノムを2つの異なる部分の作製コンセンサス配列(5'-FLG、3'-FLG、図25参照)を基にして合成した(Genscript, New York, USA)。ウイルス配列の5'-部分(5'-FLG、配列番号:47)はヌクレオチド1−5564から合成した。APMV-8配列に先行して、CMV-IEプロモーターと前記に続くXmaI(その後に続く可能性があるクローニング工程のため)制限酵素切断配列およびハンマーヘッドリボザイム配列から成る配列が存在する。前記配列の5'-末端および3'-末端にNotIおよびSacIIのための制限酵素切断部位をそれぞれ付加した。当該配列(ヌクレオチド5503−15342)の合成3'-部分(3'-FLG、配列番号:48)の後に肝炎デルタリボザイム配列およびウシ成長ホルモンのポリ-Aシグナル配列が続く。クローニングの目的のために、NotI制限酵素の配列は3'-FLGの5'-末端に、さらにSacII制限酵素のための配列は前記配列の3'-末端に付加した。5'-FLGおよび3'-FLG (ヌクレオチド5503−5564)のオーバーラップ部分内に固有の制限酵素(BmtI)のための配列を配置した(前記は完全長配列のヌクレオチド5541位を切断する)。DNAの両部分(5'-FLG、3'-FLG)を別々にプラスミドpUC57(Genscript)と連結し、プラスミドpUC57/5'-FLGおよびpUC57/3'-FLGを生成した。両方のフラグメントを一緒にクローニングするために、pUC57/5'-FLGをBmtIおよびSacIIで切断し、5'-FLG含有プラスミドをゲルから溶出させた。並行してpUC57/3'-FLを同じ酵素で切断し、フラグメント3'-FLGを溶出させた。この3'-FLGを続いて5'-FLG含有プラスミドに連結して、CMV-IEプロモーターの制御下にAPMV-8ゲノムの完全長cDNA配列を含むプラスミドを得た(pUC57-FL-APMV-8)。
APMV-8のミニゲノムを含むプラスミドの構築
【0161】
Conzelmannら(J Virol. 68:713-719, 1994)が記載した方法を用いて、APMV-8のミニゲノムの全ての機能的エレメントを含むプラスミド(pMG-APMV-8)を構築した。プラスミドpMG-APMV-8はAPMV-8ゲノムのトレイラーおよびリーダー領域を含み、前記にはT7プロモーターおよび肝炎デルタウイルスリボザイム配列がフランキングしている(Collins, et al., PNAS USA 88:9663-9667, 1991)。アンチゲノム肝炎デルタウイルスリボザイム配列の後にT7転写ターミネーター配列が続く。トレイラーとリーダー領域の間に、アンチセンス方向の強化緑色蛍光タンパク質のコード配列が位置する。トレイラー配列に先行しさらにT7プロモーターの直後に3つの追加G残基が存在する。前記挿入物にはEcoRIおよびNotI制限酵素切断部位がフランキングし、プラスミドpUC57で平滑端クローニングした。この構築物をプラスミドpUC18でサブクローニングした。この目的のために、続いてプラスミドpMG-APMV-8をEcoRIおよびHindIIIで切断し、適切なフラグメントをゲルから溶出させ、適切に切断したプラスミドpUC18に連結して、pUC18-MG-APMV-8を入手した。挿入物の存在はシークェンシングによって確認した。
T7ポリメラーゼを発現させる発現プラスミドの作製
【0162】
T7DNA依存RNAポリメラーゼ(T7ポリメラーゼ)をコードするプラスミドの作製のために、コード配列(GenBankアクセッション番号AY264778)がGenscriptにより合成された。このT7ポリメラーゼ配列(配列番号:49)を真核細胞系での発現のためにコドン使用頻度を最適化する目的で改変し、さらに当該配列中の可能なスプライスドナー/アクセプター部位を除去した。T7ポリメラーゼコード配列にはEcoRI(5')およびNotI(3')部位がフランキングしていた。合成したフラグメントをベクターpUC57で平滑端クローニングした(pCU57-T7)。このプラスミドをEcoRI/NotIで切断し、T7ポリメラーゼコードフラグメントをゲルから溶出させた。このフラグメントを続いて真核細胞発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)でクローニングし、pcDNA3-T7を得た。ベクターpcDNA3-T7中に前記フラグメントが存在することはシークェンシングによって確認した。
T7プロモーターの存在下にある内部リボソーム進入部位を利用する強化緑色蛍光タンパク質発現用プラスミドの作製
【0163】
T7ポリメラーゼの機能性を試験するために、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)のオープンリーディングフレームを、プラスミドpEGFP-N1(Clontech, California, USA)および以下のプライマー対を用いるPCRによって増幅した:EGFP-FP(CCGGATCCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG)配列番号:50およびEGFP-RP(CCGCGGCCGCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCG)配列番号:51。
【0164】
入手したPCRフラグメントをゲルから溶出させ、制限酵素BamHIおよびNotIとともにインキュベートした。前記反応生成物をゲルから溶出させ、適切に切断したベクターpCITE 4A(Novagen)に連結した。入手したプラスミド(pCITE4A-EGFP)をその後の実験に用いた。プラスミドpCITE4A-EGFPおよびpcDNA3-T7を、24ウェルプレートで増殖させたニワトリ細胞株DF1に単独でまたは一緒にしてリポフェクチン2000(Lipofectin 2000, Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後に培養液を除去し、無菌的リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。倒立蛍光顕微鏡Axiovert 40 CFL(Zeiss, Jena, Germany)を用いて細胞を判定した。緑色蛍光は、両方のプラスミドを一緒にトランスフェクトした組織培養プレートのウェルでのみ観察された。この結果は、両プラスミド、pCITE4A-EGFPおよびpcDNA3-T7が機能的であることを示している。
ミニゲノムプラスミドによる発現ウイルスタンパク質NP、PおよびLの機能性の立証
【0165】
DF1細胞にpcDNA3-T7、pUC18-MG-APMV-8、pcDNA-NP、pcDNA-PおよびpcDNA-Lを同時トランスフェクトして、発現したNP、PおよびLタンパク質の機能性を立証した。トランスフェクションから24時間後に培養液を除去し、無菌的リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。倒立蛍光顕微鏡Axiovert 40 CFL(Zeiss, Jena, Germany)を用いて細胞を判定した。緑色蛍光は、5つのプラスミドを一緒にトランスフェクトした組織培養プレートのウェルでのみ観察された。この結果は、発現したNP、PおよびLは機能的で、APMV-8ミニゲノムをmRNAに転写しpUC18-MG-APMV-8によってコードされるEGFPタンパク質を発現させたことを示している。
APMV-8の完全長配列を含むプラスミドからAPMV-8ウイルスのレスキュー
【0166】
DF1細胞にpUC57-FL-APMV-8、pcDNA-NP、pcDNA-P、およびpcDNA-Lを同時トランスフェクトした。48から96時間後にDF1細胞の上清を10日齢の発育卵に接種し、ウイルスを増殖させた。3から5日後に尿嚢液を採集し、1%ニワトリ赤血球を用いてヘマグルチニン活性(HA)について試験した。HA活性が陽性であった尿嚢液を3つの手順のために用いた。1)DF1細胞に尿嚢液を感染させ、前記を感染から36時間後にPMV-8特異的抗血清を用いて間接免疫蛍光アッセイで試験した。2)APMV-8特異的ニワトリ血清(the National Central Veterinary Laboratory(Ames, Iowa, USA)から提供された)を用いヘマグルチニン阻害アッセイによってAPMV-8特異性について尿嚢液を試験した。3)レスキューウイルスの実体はAPMV-8特異的オリゴヌクレオチドを用いRT-PCRによって確認した。ウイルスcDNAが存在しないことは、反応時にRT工程を除くことによって立証した。3つのアッセイ全てで陽性であったサンプルをSPF発育鶏卵でさらに増殖させた。
ニワトリ起源以外の細胞でのAPMV-8の増殖
【0167】
以下の種々の種に由来する細胞を24ウェルの組織培養プレートで増殖させ、感染数0.01で感染を実施した:ハムスター(ベビーハムスター腎細胞、BHK-21細胞)、サル(Vero細胞、アフリカミドリザル起源の細胞株)、イヌ(Madin-Darbyイヌ腎細胞、MDCK)およびウズラ(ウズラ筋細胞株QM7)。前記細胞を感染から24時間後に氷冷エタノールで固定し、APMV-8感染SPFニワトリ由来のAPMV-8特異的抗血清を用いて間接免疫蛍光によりAPMV-8特異的タンパク質の存在について解析した。抗体の結合は、ヤギ抗ニワトリIgY特異的FITC結合物を用いることによって可視化した。非感染細胞を陰性コントロールとして用いた。APMV-8感染細胞でのみ緑色蛍光が観察された。このことは、APMV-8はニワトリ以外の種に由来する細胞に感染できることを示している。
APMV-8の複製はトリプシンの存在下で高められた。上記に記載したようにAPMV-8をMDCK細胞に感染させた。感染後、細胞を血清フリー培養液で洗浄し、トリプジン含有血清フリー培養液(濃度1μg/mL)または単なる血清フリー培養液を重層した。感染から24,48および96時間後に、細胞上清を取り出し、TCID50を上記のように間接免疫蛍光を用いてDF1細胞で決定した。得られたデータは、トリプシンの存在下では、この酵素が存在しないときよりも高い力価でAPMV-8が複製することを示した(図19B)。
【0168】
本実施例の結果は、APMV-1と同様に、APMV-8は種々の種の細胞を貫通し、その複製周期を開始できることを示した。したがって、APMV-8は多数の種のために適切なベクターである。
逆遺伝学系を用いた外来遺伝子発現組換えAPMV-8ウイルスの製造
【0169】
高病原性トリインフルエンザ(HPAI)のヘマグルチニン(HA)遺伝子を発現する組換えAPMV-8ウイルス(ウイルスベクター)の作製のために、H5およびH7サブタイプのHPAIのHA遺伝子コード配列を、完全長APMV-8を含むプラスミドの非必須領域、例えばAPMV-8ゲノムのM遺伝子とF遺伝子の間またはP遺伝子とM遺伝子の間に挿入する。この目的のために、ヘマグルチニンのオープンリーディングフレームのコード配列に、F遺伝子の必要な全ての調節配列をフランキングさせる(前記には遺伝子開始配列、5'-非コード配列、3'-非コード配列および遺伝子終止配列が含まれる)。前記構築物は、制限酵素切断部位、Bsu36IおよびNheIが、既存の完全長APMV-8ゲノム含有プラスミドへの適切なフラグメントの前記プラスミド構築物中のそれら制限部位の固有性に依存する連結に利用できるように構築される。得られたプラスミドは転写プラスミドと称され、完全長APMV-8ゲノムの非必須領域にヘマグルチニン遺伝子を含む。このアプローチを用いて、多様なウイルスおよび細菌抗原のコード配列をAPMV-8配列の骨格中でクローニングすることができる。APMV-8ゲノムに挿入し得る他の可能な抗原は、ニューカッスル病ウイルスのヒュージョンプロテイン、ニワトリ気管支炎ウイルスのSタンパク質、非H5および非H7ニワトリインフルエンザウイルス由来の他のヘマグルチニン遺伝子、ニワトリ貧血ウイルスの構造タンパク質遺伝子VP1、伝染性喉頭気管炎ウイルスの糖タンパク質遺伝子である。
【実施例7】
【0170】
動物のワクチン接種
実施例6に記載した組換えAPMV-8ウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンの1回、2回投与、またはプライム-ブースト処置スケジュールにより動物にワクチン接種を施す。ニワトリ/トリに対しては種々の投与が実施される(例えばD18またはD19でのin ovo投与、1日齢での皮下投与または種々の月齢での粘膜投与(スプレー、飲料水、点眼))。用量は3から7log10(好ましくは4−6 log10 EID50)である。哺乳動物に対しては、粘膜経路(鼻内、眼内、経口)、非経口経路(筋肉内、皮下、注射器不使用経皮または皮内)が用いられる。用量は5から9log(好ましくは6−8 log)の範囲である。通常は2回投与が3−4週間の間隔で実施される。異種プライム-ブースト(例えばタンパク質によるブースト)もまた有益であろう。
【0171】
本組成物またはワクチンによって誘発される防御有効性は、動物での個々の病原体によるチャレンジについて判定される。防御効果は、臨床所見および/または組織、血液もしくは粘膜スワブ中の個々の病原体のウイルス負荷によって判定される。ワクチン接種動物の血液サンプルを種々の時期に採取し、血清学について試験する。前記の結果は、本発明の組成物またはワクチンは免疫原性であり、ワクチン接種動物の防御を提供することを示している。
【0172】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく多くの明白なその変形が可能であるので、したがって上記に規定した本発明は上記に示した個々の詳細に限定されないことは理解されよう。
【0173】
本明細書で引用または参照された全ての文書(“本明細書引用文書”)および本明細書引用文書で引用または参照された全ての文書は、本明細書または本明細書に参照により含まれる任意の文書に記載された製品についての製造業者の指示、説明、製品明細書およびプロダクトシートの一切とともに本明細書にこれにより含まれ、さらに本発明の実施に利用することができる。
【0174】
参考文献
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図17−3】
【図17−4】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25−1】
【図25−2】
【図25−3】
【図25−4】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34−1】
【図34−2】
【図35−1】
【図35−2】
【図35−3】
【図35−4】
【図35−5】
【0034】
【図13】APMV-8のホスホプロテイン(P)をコードするDNA配列(配列番号:4)およびPタンパク質配列(配列番号:5)を示す。
【0035】
【図14】APMV-8のマトリックスプロテイン(M)をコードするDNA配列(配列番号:6)およびMタンパク質配列(配列番号:7)を示す。
【0036】
【図15】APMV-8のヒュージョンプロテイン(F)をコードするDNA配列(配列番号:8)およびFタンパク質配列(配列番号:9)を示す。
【0037】
【図16】APMV-8のヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ(HN)をコードするDNA配列(配列番号:10)およびHNタンパク質配列(配列番号:11)を示す。
【0038】
【図17】APMV-8のポリメラーゼ(L)をコードするDNA配列(配列番号:12)およびLタンパク質配列(配列番号:13)を示す。このAPMV-8 L(1)タンパク質は、配列番号:1の8273−8275位に位置するATGコドンから翻訳される。
【0039】
【図18】APMV-8ポリメラーゼ(L)のタンパク質配列(2)(配列番号:14)を示す。このAPMV-8 L(2)タンパク質は、配列番号:1の8297−8299位に位置するATGコドンから翻訳される。配列番号:14は配列番号:13の最初の8アミノ酸を含まない。
【0040】
【図19】19AはAPMV-8逆遺伝学系の流れ図である。19BはMDCK細胞におけるAPMV-8ウイルスの複製の結果を示す。
【0041】
【図20】APMV-8ワクチン接種2週間後の市販ブロイラーニワトリにおけるHI試験の結果を示す。
【0042】
【図21】APMV-8ワクチン接種4週間後の市販ブロイラーニワトリにおけるHI試験の結果を示す。
【0043】
【図22】in ovoワクチン接種後18日目におけるHI試験の結果を示す(実験1)。
【0044】
【図23】in ovoワクチン接種後19日目におけるHI試験の結果を示す(実験2)。
【0045】
【図24】in ovoワクチン接種後18日目におけるHI試験の結果を示す(実験3)。
【0046】
【図25】フランキング配列を含む、5'-完全長ゲノム(5'-FLG)配列および3'-完全長ゲノム(3'-FLG)配列を示す。
【0047】
【図26】pcNDA-NP、pcNDA-P、pcDNA-LおよびpcDNA3-T7のプラスミドマップを示す。
【0048】
【図27】pUC18-MG-APMV-8およびpCITE4A-EGFPのプラスミドマップを示す。
【0049】
【図28】pUC57-FL-APMV-8のプラスミドマップを示す。
【0050】
【図29】ミニゲノムAPMV-8配列を示す。
【0051】
【図30】NPタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0052】
【図31】Pタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0053】
【図32】Mタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0054】
【図33】Fタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0055】
【図34】HNタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【0056】
【図35】Lタンパク質配列アラインメント並びにDNAおよびタンパク質レベルにおける配列同一性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
発明の詳細な説明
本開示および特に特許請求の範囲では以下に留意されたい。例えば“comprises”、“comprised”、“comprising”などの用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれら用語は“includes”、“included”、“including”などを意味することができる。さらに、例えば“consisting essentially of”、および“consists essentially of”のような用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれらは、明示的に列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見出されるかまたは本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を与える成分は排除する。
【0058】
特段の説明がなければ、技術用語は一般的な用法にしたがう。分子生物学で一般的な用語の定義は以下で見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V. (Oxford University Press刊行)1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology(Blackwell Science Ltd.刊行)1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference(VCH Publishers, Inc.刊行)1995 (ISBN 1-56081-569-8)。
【0059】
単数用語の“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり複数の対応物を含む。同様に、“or”という用語も、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり“and”を含むことが意図される。“or”という用語は、具体的な一覧中の任意の1つのメンバーを意味するが、さらに当該一覧のメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0060】
本開示および添付の特許請求の範囲および/またはパラグラフでは以下に留意されたい:“トリパラミクソウイルス”または“APMV”という用語は互換的に用いられ、前記用語はAPMV-1、APMV-2、APMV-3、APMV-4、APMV-5、APMV-6、APMV-7、APMV-8、およびAPMV-9を指し、さらにそれらを含む。
【0061】
本明細書では“動物”という用語は全ての哺乳動物、鳥類および魚類を含むために用いられる。本明細書で用いられる動物は、ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類および、他のネコ科の動物(チーターおよびオオヤマネコを含む))、ウシ科の動物(例えばウシ)、ブタ類(例えばブタ)、ヒツジ類(例えばヒツジ、ヤギ、ラマ、バイソン)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、カモ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリ)、霊長類(例えば原猿類、メガネザル、有尾猿類、テナガザル、無尾猿類)、ヒトおよび魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語にはまた、全ての発育段階(胚および胎児期を含む)の個々の動物が含まれる。
【0062】
“ポリペプチド”および“タンパク質”という用語は、連続するアミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に用いられる。
【0063】
“核酸”、“ヌクレオチド”および“ポリヌクレオチド”という用語は互換的に用いられ、RNA、DNA、cDNA(相補性DNA)、またはcRNA(相補性RNA)および前記の誘導体(例えば改変された骨格を含むもの)を指す。本発明は、本明細書に記載したものに相補的な配列を含むポリヌクレオチドを提供することは理解されよう。本発明で意図される“ポリヌクレオチド”にはフォワード鎖(5'から3')および相補性リバース鎖(3'から5')が含まれる。本発明のポリヌクレオチドは種々の方法で(例えば化学的合成、遺伝子クローニングなどにより)調製され、多様な形態(例えば線状、分枝、一本鎖もしくは二本鎖、または前記のハイブリッド、プライマー、プローブなど)を有することができる。
【0064】
“ゲノムDNA”または“ゲノム”という用語は互換的に用いられ、宿主生物の遺伝性の遺伝子情報を指す。ゲノムDNAは核のDNA(染色体DNAとも称される)を含むが、色素体(例えば葉緑体)および他の細胞内小器官(例えばミトコンドリア)のDNAも含まれる。本発明で意図されるゲノムDNAまたはゲノムはまたウイルスのRNAも指す。RNAはプラス鎖RNAでもマイナス鎖RNAでもよい。本発明で意図される“ゲノムDNA”という用語は、本明細書に記載した配列に対し相補的な配列を含むゲノムDNAを含む。“ゲノムDNA”という用語はまた、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補性DNA(cDNA)および相補性RNA(cRNA)を指す。本明細書で用いられる“ゲノムRA(核酸)”にはRNA、mRNA、cRNA、DNAおよびcDNAが含まれる。
【0065】
“遺伝子”という用語は、生物学的機能と密接に関係する任意のポリヌクレオチドセグメントを指すために広く用いられる。したがって、遺伝子またはポリヌクレオチドは、ゲノム配列の場合のようにイントロンおよびエクソンを含むか、またはcDNAの場合のようにコード配列(例えばオープンリーディングフレーム(前記は開始コドン(メチオニンコドン)から始まり停止シグナル(終止コドン)で終了する)のみを含む。遺伝子およびポリヌクレオチドはまた、それらの発現(例えば転写開始、翻訳および転写終了)を調節する領域を含むことができる。したがって以下がまた含まれる:プロモーターおよびリボソーム結合領域(一般的には、これらの調節エレメントはコード配列または遺伝子の開始コドンのほぼ60から250ヌクレオチド上流に位置する(Doree S M et al.; Pandher K et al.; Chung J Y et al.))、転写ターミネーター(一般的には、ターミネーターはコード配列または遺伝子の終止コドンのほぼ50ヌクレオチド下流内に位置する(Ward C K et al.))。遺伝子またはポリヌクレオチドはまた、mRNAもしくは機能的RNAを発現するかまたは具体的なタンパク質をコードする核酸フラグメントを指し、前記は調節配列を含む。
【0066】
本明細書で用いられる“異種DNA”という用語は、異なる生物、例えば異なる細胞タイプまたはレシピエントとは異なる種に由来するDNAを指す。前記用語はまた、宿主DNAの同じゲノム上のDNAまたはそのフラグメントも指すが、この場合、当該異種DNAはその本来の位置とは異なるゲノム領域に挿入されている。
【0067】
本明細書で用いられるように、“抗原”または“免役原”は、特異的な免疫応答を宿主動物で誘発する物質を意味する。抗原は、全生物(殺滅、弱毒化または生);生物のサブユニットまたは部分;免疫原性特性を有する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物に提示されたとき免疫応答を誘発することができる核酸の断片またはフラグメント;ポリペプチド、エピトープ、ハプテン、または前記の任意の組合せを含むことができる。また別には、免疫原または抗原は毒素または抗毒素を含むことができる。
【0068】
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語には、いったん宿主に投与されたら、前記タンパク質に対して液性および/または細胞性タイプの免疫応答を引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性であるポリペプチドが含まれる。好ましくは、タンパク質フラグメントは、全タンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは少なくとも1つのエピトープまたは抗原決定基を含むか、実質的に前記から成るか、または前記から成る。本明細書で用いられるように、“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドには、完全長のタンパク質配列、そのアナローグまたはその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”とは、1つまたは2つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載した免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当分野で周知の多数のエピトープマッピング技術を用いて確認することができる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris, Ed., 1996)。例えば、線状エピトープは、例えば固相上で多数のペプチド(前記ペプチドは当該タンパク質分子の部分に対応する)を同時に合成し、前記ペプチドが固相に結合している間に複数の抗体と前記ペプチドを反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号; Geysen et al. 1984; Geysen et al. 1986。同様に、形状エピトープは、アミノ酸の空間配座を例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に確認することができる。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい。
【0069】
“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語はさらに、当該ポリペプチドが機能して本明細書に定義した免疫学的応答を生じるかぎり、当該配列に対する欠失、付加および置換もまた意図する。“保存的変異”という用語は、あるアミノ酸残基の生物学的に類似する別の残基による置換、またはコードされるアミノ酸残基が変化しないかもしくは生物学的に類似する別の残基であるような核酸配列内のヌクレオチドの置換を意味する。これに関して、特に好ましい置換は、一般的には性質として保存的、すなわちアミノ酸のあるファミリー内で生じる置換であろう。例えばアミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分けられる:(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンはときに芳香族アミノ酸として分類される。保存的変異の例には以下が含まれる:ある疎水性残基(例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)による別の疎水性残基の置換、またはある極性残基による別の極性残基の置換(例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはグルタミンによるアスパラギンの置換など)、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸(生物学的活性に大きな影響を与えない)による保存的置換。したがって、参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、参照ポリペプチドの定義範囲内である。これらの改変によって生成されるポリペプチドの全てが本明細書に含まれる。“保存的変異”という用語はまた非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することを含むが、ただし置換ポリペプチドに対して作製した抗体がまた非置換ポリペプチドと免疫反応を生じることを条件とする。
【0070】
“宿主細胞”は、遺伝的に改変されているか、または外因性ポリヌクレオチド(例えば組換えプラスミドまたはベクター)の投与によって遺伝的に変異させることができる原核細胞または真核細胞を意味する。遺伝的に変異した細胞というとき、前記用語は最初の変異細胞およびその子孫の両方を指す。所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なクローニングベクターまたは発現ベクターに挿入することができる。続いて前記ベクターを複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。対象のポリヌクレオチドを含むベクターは、適切な多数の手段のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。前記手段には、直接取り込み;エンドサイトーシス;トランスフェクション;F-接合;エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を利用するトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性である場合、例えばレトロウイルスベクター)が含まれる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択はしばしば宿主細胞の特性に左右される。
【0071】
ある組成物またはワクチンに対する“免疫学的応答”は、宿主における問題の組成物またはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介免疫応答の発達である。通常は、“免疫学的応答”には、1つまたは2つ以上の以下の作用(ただしこれらに限定されない)が含まれる:抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞(これらは問題の組成物またはワクチンに含まれる1つの抗原または複数の抗原に特異的に導かれる)の産生。好ましくは、新規感染に対する抵抗性が強化されるか、および/または疾病の臨床的重症度が軽減されるように、宿主は治療的または防御的免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、通常感染宿主が示す症状の緩和または欠如、回復期間の短縮、および/または感染宿主におけるウイルス力価の低下によって示されるであろう。
【0072】
本発明のある実施態様はAPMV-8のゲノムDNA配列およびコードされるタンパク質配列を提供する。本発明のAPMV-8株の相補性ゲノムDNA(cDNA)配列は配列番号:1に示すポリヌクレオチド配列を有する。前記APMV-8ゲノムcDNA配列(配列番号:1)は、APMV-1ゲノムDNA(配列番号:15)と48%の配列同一性、APMV-2ゲノムDNA(配列番号:16)と61%の配列同一性、APMV-3ゲノムDNA(配列番号:17)と47.2%の配列同一性、APMV-4ゲノムDNA(配列番号:18)と47.6%の配列同一性、APMV-6ゲノムDNA(配列番号:19)と52%の配列同一性、APMV-7ゲノムDNA(配列番号:20)と53%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:37)と99.1%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:38)と96.5%の配列同一性、APMV-8ゲノムDNA(配列番号:39)と96.4%の配列同一性、APMV-9ゲノムDNA(配列番号:40)と48%の配列同一性を有する。別の実施態様では、本発明は配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示す配列を有するポリヌクレオチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。本発明はさらに、本明細書に記載のポリヌクレオチドに対する相補鎖を含む。さらに別の実施態様では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。
【0073】
さらにまた、APMV(例えばAPMV-8、APMV-2、APMV-4、APMV-6)株のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのホモローグも本発明の範囲内であることが意図される。本明細書で用いられるように、“ホモローグ”という用語にはオルトローグ、アナローグおよびパラローグが含まれる。“アナローグ”という用語は、同じまたは類似の機能を有するが、無関係の生物で別個に生じた2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。“オルトローグ”という用語は、異なる種に由来するが、種分化によって共通の祖先遺伝子から生じた2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。通常オルトローグは同じまたは類似の機能を有するポリペプチドをコードする。“パラローグ”という用語は、ゲノム内の遺伝子重複によって関連する2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。通常パラローグは異なる機能を有するが、これらの機能は関連し得る。野生型APMVポリペプチドのアナローグ、オルトローグおよびパラローグは、翻訳後改変、アミノ酸配列の相違、またはその両方により野生型APMVポリペプチドと異なっている。特に、本発明のホモローグは、一般的にはAPMV-8のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全部もしくは部分と少なくとも80−85%、85−90%、90−95%、または95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示し、さらに類似の機能を示すであろう。
【0074】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1に示す配列を有するAPMV-8のゲノムcDNAを提供する。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドの逆相補鎖は、配列番号:1に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0075】
ある実施態様では、本発明は、APMV-8ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)のフラグメントを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、またはこれらポリペプチドの1つの保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、または少なくとも8もしくは少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらのポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチド提供する。
【0076】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の実施態様では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10または12に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖を提供する。
【0077】
別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、上記に規定したAPMVポリペプチド(配列番号:3、5、7、9、11、13または14)のフラグメントおよび変種を提供する(前記は周知の分子生物学的技術を用いて当業者により容易に調製できる)。
【0078】
変種は、配列番号:3、5、7、9、11、13または14に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有する相同なポリペプチドである。
【0079】
変種には対立遺伝子変種が含まれる。“対立遺伝子変種”という用語は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらしさらに天然の集団(例えばウイルス種またはウイルス変種)内に存在する多形性を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。そのような天然の対立遺伝子変種はポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおいて典型的には1−5%の多様性を生じ得る。対立遺伝子変種は、対象の核酸配列を多数の種々の種でシークェンシングすることによって同定することができる。前記は、ハイブリダイゼーションプローブを用い、それらの種で同じ遺伝子座を同定することによって実施できる。任意のおよび全てのそのような核酸変異並びにその結果のアミノ酸多形性または変異(前記は天然の対立遺伝子変異の結果でありかつ対象の遺伝子の機能的活性を変化させない)は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0080】
配列に関して“同一性”という用語は、例えば2つの配列の短い方のヌクレオチドまたはアミノ酸の数で割った同一ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置の数を指し、ここで2つの配列のアラインメントはWilbur and Lipmanアルゴリズム(Wilbur and Lipman)にしたがって決定できる。2つのアミノ酸配列の配列同一性または配列類似性、または2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定できる。DNA配列とRNA配列が類似する、またはある程度の配列同一性もしくは相同性を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等価とみなされる。したがって、RNA配列は本発明の範囲内にあり、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)と等価であるとみなすことによってDNA配列から誘導することができる。
【0081】
ある特徴では、本発明は、ワクチンまたは組成物を接種した宿主動物に免疫学的応答を誘発する前記医薬組成物またはワクチンに関し、前記ワクチンまたは組成物は医薬的に許容できる担体および改変APMV組換えウイルスまたはウイルスベクターを含む。本発明のさらに別の特徴では、前記組換えAPMVウイルスまたはウイルスベクターは、ある病原体に由来する抗原タンパク質をコードする異種DNA配列を当該ウイルスゲノムの非必須領域内に含み、ここで前記組成物またはワクチンは、宿主に投与したとき、前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答誘発することができる。
【0082】
“ベクター”は組換えDNAまたはRNAプラスミド、バクテリオファージまたはウイルスを指し、前記は標的細胞にin vitroまたはin vivoでデリバーされるべき異種ポリヌクレオチドを含む。前記異種ポリヌクレオチドは、予防または治療の目的のために対象の配列を含むことができ、場合によって発現カセットの形態であってもよい。本明細書で用いられるように、ベクターは、最終的標的細胞または対象生物で複製能力を有する必要はない。前記用語は、ウイルスベクターと同様にクローニング用ベクターを含む。
【0083】
“操作された”または“組換え体”という用語は、天然には存在しないか、または天然の状態では見出されない編成で別のポリヌクレオチドに連結された半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
【0084】
“非必須領域”という用語は、組織培養でのウイルスの複製および増殖に必須ではなく、さらにその欠失または不活化が多様な動物系における病毒性を低下させる可能性があるウイルスゲノムの領域を意味する。いずれの非必須領域またはその部分もAPMVゲノムから欠失させることができ、または外来配列をその中に挿入することができ、さらに欠失または挿入により得られた組換えAPMVの生存活性および安定性は、欠失領域またはその部分が実際に非必須であるか否かを確認するために用いることができる。ある実施態様では、APMVゲノムの非必須領域は、APMV-2、4、6または8のゲノムのポリメラーゼ(L)をコードしない任意の領域である。さらに別の実施態様では、非必須領域は非必須タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。この特徴では、前記オープンリーディングフレームは、ヌクレオプロテイン(NP)、ホスホプロテイン(P)、マトリックスプロテイン(M)、ヒュージョンプロテイン(F)およびヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ(HN)から成る群から選択される。ある実施態様では、非必須領域はNP遺伝子の上流に位置する。別の実施態様では、非必須領域はL遺伝子の下流に位置する。さらに別の実施態様では、非必須領域は非コードまたは遺伝子間領域である。この特徴では、非コードまたは遺伝子間領域は、APMV-2、4、6または8ゲノム上のNPとP遺伝子の間、PとM遺伝子の間、MとF遺伝子の間またはFとHN遺伝子の間の領域であり得る。さらに別の実施態様では、非必須領域は、配列番号:1のヌクレオチド1−140、1526−1692、2910−3085、4195−4498、6130−6382、8116−8272、8116−8289または15013−15342位の領域であり得る。
【0085】
別の特徴では本発明はAPMVキメラを含み、前記キメラでは、APMVベクターの1つの部分もしくは完全な1つの遺伝子、またはいくつかの部分もしくは複数の完全な遺伝子が、他のウイルス(特にパラミクソウイルス科に属するウイルス)に由来する類似の遺伝子によって置き換えられる。
【0086】
本発明のある実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物はトリ病原体群から選択される抗原を含む。前記病原体群にはサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、エッグドロップ症候群ウイルス(EDS)、伝染性嚢病ウイルス(IBDV)、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、トリアデノウイルス、マレック病ウイルス(MDV)、鶏痘ウイルス、アヒル腸炎ウイルス(DEV)、アヒルパルボウイルス、トリインフルエンザウイルス、APMV(例えばAPMV-1)など、および前記の組合せが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
【0087】
別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ネコの病原体(例えばネコヘルペスウイルス(FHV)、ネコカルシウイルス(FCV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコパルボウイルス(FPV)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、狂犬病ウイルスなど、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない))から選択される抗原を含む。
【0088】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、イヌの病原体(例えば狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス(CHV)、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌジステンパーウイルス(CDV)、イヌパラインフルエンザ2(CPI2)、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・カニコラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジアエ(Leptospira icterohaemorragiae)、レプトスピラ・グリッポチフォサ(Leptospira grippotyphosa)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)など、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない)を含む)から選択される抗原を含む。
【0089】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ウマの病原体(例えばウマヘルペスウイルス(1型または4型)、ウマインフルエンザウイルス、破傷風、西ナイル熱ウイルス、ウマアルテリウイルスなど、または前記の組合せ)から選択される抗原を含む。
【0090】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ウシ、ヒツジまたはヤギの病原体(例えば狂犬病、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3型(bPIV-3)、ウシコロナウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、リンダーペストウイルス(RPV)、ペスト・ド・プチ・ルミナント(Peste des Petits Ruminants)ウイルス(PPRV)、悪性カタル性熱ウイルス、ウシ呼吸器合胞体形成ウイルス(BRSV)、伝染性鼻気管炎ウイルス(IBR)、大腸菌(Escherichia coli)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)など、および前記の組合せ)から選択される抗原を含む。
【0091】
さらに別の実施態様では、前記ワクチンまたは医薬組成物は、ブタの病原体(例えばブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタシルコウイルス2型(PCV-2)、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタパルボウイルス(PPV)、FMDV、マイコプラズマ・ヒオプニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、エリシペロスリクス・リュシオパシアエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パスツレラ・マルトシダ、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、大腸菌など、および前記の組みわせ(ただしこれらに限定されない)を含む)から選択される抗原を含む。
【0092】
組換えウイルスの構築は、例えば米国特許4,769,330号、4,722,848号、4,603,112号、5,174,993号、5,756,103号および6,719,979号に記載されているように当分野では周知である。具体的には、組換えAPMVウイルスは2工程で構築できる。第一に、ウイルスに挿入されるべき対象遺伝子(例えばAPMV-1(NDV)またはトリインフルエンザウイルスまたは他の生物由来の抗原のオープンリーディングフレーム)が、大腸菌プラスミド構築物(前記にはAPMVのcDNAの断片と相同なcDNAが挿入される)に配置される。前記とは別に、挿入されるべきcDNAの前にプロモーター領域(遺伝子開始領域)を先行させ、前記cDNAの後に遺伝子末端領域(APMVベクターに特異的である)を続かせる。この遺伝子開始/外来抗原/遺伝子末端DNAフラグメントは、固有の制限酵素切断部位を含むAPMV-8 cDNAと相同なcDNAフラグメントにフランキングしている。続いて、得られたプラスミド構築物を大腸菌で増殖させることによって増幅させ、さらにそれらを単離する。次にこの組換えプラスミドを制限酵素消化で用い、APMV-8 cDNAと相同なcDNAにフランキングする遺伝子開始/外来抗原/遺伝子末端DNAフラグメントを切り出し、さらにこのフラグメントを適切に切断したAPMV-8の完全長構築物に連結する。
【0093】
対象の遺伝子を含む完全長構築物を、APMVヌクレオプロテイン(NP)、APMVホスホプロテイン(P)、およびAPMV RNAポリメラーゼ(L)並びにT7RNAポリメラーゼの発現のためのポリヌクレオチドを含むプラスミドとともに細胞にトランスフェクトする。APMV cDNA構築物はいずれもT7ポリメラーゼプロモーターの制御下にある。感染性ウイルスのレスキューは文献(Roemer-Oberdoefer et al. 1999)に記載のように、さらに図19Aに示すよううに実施する。トランスフェクト細胞でのT7RNAポリメラーゼの発現は、T7 RNAポリメラーゼの発現カセットを含むプラスミドDNA、T7 RNAポリメラーゼを発現する組換えウイルス(例えば鶏痘またはカナリポックスウイルス)のトランスフェクションを含む種々の手段によって、またはT7 RNAポリメラーゼを発現する細胞で達成できる。別の特徴では、APMVヌクレオプロテイン(NP)、APMVホスホプロテイン(P)、およびAPMV RNAポリメラーゼ(L)並びに完全長ウイルスcRNAの発現のためのポリヌクレオチドは、ヒトサイトメガロウイルスの極初期プロモーターの制御下にある。ウイルスのレスキューは文献(K. Inoue et al. 2003)の記載にしたがって実施される。
【0094】
改変した感染性ウイルスによる対象の挿入cDNA(外来DNAまたは異種cDNA)の発現の成功には2つの条件が要求される。第一に、挿入は、改変ウイルスが生存活性を維持できるようにウイルスゲノム領域に導入されねばならない。挿入cDNAの発現のための第二の条件は、当該ウイルスのバックグラウンドにおいて遺伝子の発現を可能にする調節配列(例えば遺伝子の開始領域、遺伝子の終止領域、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、遺伝子間および非翻訳領域)が存在することである。
【0095】
一般的には、真核細胞で機能的な強力なプロモーターを利用するのが有利である。ある実施態様では、ウイルスRNAポリメラーゼによるウイルスmRNAの転写に用いられるプロモーターは“遺伝子開始配列”である。“遺伝子開始配列”は、結合して下流に位置するウイルスRNAをウイルスmRNAに転写するLタンパク質のための結合部位である。
【0096】
ある実施態様では、標的細胞で抗原、エピトープまたは免疫原をデリバリーおよび発現させるためのAPMVワクチンの治療的に有効な量の投与を提供する。治療的に有効な量の決定は当業者には日常的な試験である。ある実施態様では、APMVワクチン処方物は、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび医薬的または獣医学的に許容できる担体、ベヒクルまたは賦形剤を含む。別の実施態様では、医薬的または獣医学的に許容できる担体、ベヒクルまたは賦形剤は、トランスフェクションを容易にし、および/またはベクターまたはタンパク質の保存を改善する。
【0097】
医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は当業者には周知である。例えば医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は、0.9%NaCl(例えば食塩水)溶液またはリン酸緩衝液であり得る。本発明の方法のために用いることができる他の医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤には、ポリ-(L-グルタメート)またはポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的または獣医学的に許容できる担体またはベヒクルまたは賦形剤は、ベクター(または本発明のベクターからin vitroで発現されるタンパク質)の投与を促進するか、またはトランスフェクションを容易にするか、および/またはベクター(またはタンパク質)の保存を改善する任意の化合物または化合物の組合せであり得る。用量または用量体積は本明細書の一般的記載で考察するが、当分野の情報と併せて本開示から教示を得た当業者は煩雑な試験を実施することなく容易に前記を決定できよう。
【0098】
別の実施態様では、医薬的または獣医学的に許容できる担体、賦形剤またはベヒクルは油中水エマルジョンでもよい。適切な油中水エマルジョンの例には油を基剤とした油中水ワクチンエマルジョンが含まれ、前記は以下を含有するとき安定でありさらに4℃で液状である:6から50v/v%の抗原含有水相、12から25 v/v%、50から94 v/v%の油相(前記は全部がまたは一部分が非代謝性油(例えば鉱物油(例えばパラフィン油))および/または代謝性油(例えば植物油、または脂肪酸、ポリオールもしくはアルコールエステル)を含む)、0.2から20p/v%の界面活性剤、3から8p/v%。後者は全部もしくは一部分がまたは混合物としていずれかのポリグリセロールエステルであり、前記ポリグリセロールエステルは、ポリグリセロール(ポリ)リシンオレエート、またはポリオキシエチレンリシン油または他の水素添加ポリオキシエチレンリシン油である。油中水エマルジョンで用いることができる界面活性剤の例には、エトキシル化ソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(TWEEN80(商標))(AppliChem社(Cheshire, CT)から入手できる)およびソルビタンエステル(例えばソルビタンモノオレエート(SPAN80(商標))、Sigma Aldrich(ST. Louis, MO)から入手できる)が含まれる。さらにまた、油中水エマルジョンに関しては米国特許6,919,084号もまた参照されたい。いくつかの実施態様では、抗原含有水相は、1つまた2つ以上の緩衝剤を含む食塩水溶液を含む。適切な緩衝溶液の例はリン酸緩衝食塩水である。ある実施態様では、油中水エマルジョンは水/油/水三重エマルジョンである(例えば米国特許6,358,500号を参照されたい)。他の適切なエマルジョンの例は米国特許7,371,395号に記載されている。
【0099】
本発明の医薬組成物およびワクチンは1つまたは2つ以上のアジュバントを含むかまたは本質的に前記から成り得る。本発明の実施で使用される適切なアジュバントは以下である:(1)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸およびアルケニル誘導体ポリマー、(2)免疫刺激性配列(ISS)、例えば1つまたは2つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド配列(Klinman et al. 1996;WO98/16247)、(3)水中油エマルジョン、例えばSPTエマルジョン(“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”(M. Powell, M. Newman, Plenum Press 1995)の147ページに記載)およびエマルジョンMF59(同書の183ページに記載)、(4)第四アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、(7)サポニンまたは(8)本出願に引用され、参照により含まれる任意の文書で考察される他のアジュバント、または(9)前記の任意の組み合わせまたは混合物。
【0100】
(3)の水中油エマルジョン(前記はウイルスベクターのために特に適切である)は以下を基剤とする:軽い流動パラフィン油(欧州局方型)、イソプレノイド油(例えばスクアラン、スクアレン)、アルケン(例えばイソブテンまたはデセン)のオリゴマー化により生成される油、直鎖アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル(例えば植物油、エチルオレエート、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセロールトリ(カプリレート/カプレート)およびプロピレングリコールジオレエート、または分枝脂肪アルコールもしくは酸のエステル、特にステアリン酸エステル。油は乳化剤と組み合わせて用いられエマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤でもよい。前記は例えば、一方でソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロールまたはプロピレングリコールのエステル、および他方でオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸のエステルであり、前記エステルは、場合によってエトキシル化されるか、またはポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック(例えばプルロニック、例えばL121)である。タイプ(1)のアジュバントポリマーの中では、好ましいものは、架橋(特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルによって架橋された)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物はカルボマーの名称で知られている(Pharmeuropa, vol. 8, no. 2, June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記文献は、少なくとも3つのヒドロキシル基(そのような基は8つを越えない)を有し、少なくとも3つのヒドロキシル基の水素原子が、少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されたポリヒドロキシル化合物によって架橋された、前記のようなアクリル酸ポリマーを提供する。好ましいラジカルは2つから4つの炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン系不飽和基である。不飽和ラジカルはまた他の置換基(例えばメチル)を含むことができる。カルボポル(Carbopol; BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売される製品が特に適切である。それらは、アリルサッカロースまたはアリルペンタエリトリトールによって架橋される。それらの中ではとりわけ、カルボポル974P、934Pおよび971Pが挙げられる。
【0101】
無水マレイン酸-アルケニル誘導体コポリマーに関しては、EMA(Monsanto)が好ましい。前記は、直鎖または架橋エチレン-無水マレイン酸コポリマーであり、それらは、例えばエーテルによって架橋される。J. Fideldsら(1960)の論文もまた参照できる。
【0102】
構造に関しては、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよびEMAは、好ましくは以下の式を有する基本単位によって形成される:
【0103】
【化1】
【0104】
式中、
R1およびR2(前記は同じでも異なっていてもよい)はHまたはCH3を表し、
x=0または1で、好ましくはx=1であり、
y=1または2で、x+y=2である。
EMAについては、x=0およびy=2であり、カルボマーについてはx=y=1である。
【0105】
これらのポリマーは水または生理学的食塩水(NaCl 20g/L)に可溶性であり、pHは例えばナトリウム化合物(NaOH)によって7.3から7.4に調節して、発現ベクターを混合することができるアジュバント溶液を提供できる。最終的な免疫学的組成物またはワクチン組成物のポリマー濃度は0.01から1.5%w/v、0.05から1%w/v、および0.1から0.4%w/vの範囲であり得る。
【0106】
本発明の別の特徴は、ある抗原に対し動物で免疫学的応答を誘発する方法に関し、本方法は、前記動物に対する病原体の抗原を含みこれをコードする改変組換えAPMVウイルスを含むワクチンまたは医薬組成物を動物に接種する工程を含む。本発明のさらに別の特徴は、プライム-ブースト投与の処置スケジュールで抗原に対する免疫学的応答を動物で誘発する方法に関する。前記処置スケジュールは、少なくとも1つの共通のポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を用いる、少なくとも1回の一次投与および少なくとも1回のブースター投与を含む。一次投与で用いられる免疫学的組成物またはワクチンは、ブースターとして用いられるものと性状が同じでも異なっていてもよい。本発明のプライム-ブーストプロトコルのある特徴では、本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを投与した後に続いて、抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはサブユニット(タンパク質、抗原)を含むワクチンもしくは組成物、または抗原を含むかまたは発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物が投与される。同様に、プライム-ブーストプロトコルは、抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはサブユニット(タンパク質、抗原)を含むワクチンもしくは組成物、または抗原を含むかまたは発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物を投与し、続いて本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを投与する工程を含むことができる。さらに、一次および二次投与の両投与が、本発明の組換えAPMVウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンを含むことができることを特筆する。
【0107】
一次投与は、同じウイルスベクター系免疫学的ワクチン組成物の1回または2回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースター投与は、同じウイルスベクター系または免疫学的ワクチン組成物の1回または2回以上の投与を含むことができる。プライムおよびブーストの投与経路は同じでも異なっていてもよい。同様に、プライムおよびブーストに存在する防御遺伝子の起源も同じでも異なっていてもよい(例えば異なる株)。
【0108】
種々の投与は好ましくは1週間から6週間離して、より具体的には約3週間離して実施される。好ましい態様にしたがえば、1年毎のブースター(好ましくはウイルスベクター系免疫学的ワクチン組成物を用いる)もまた想定される。動物は最初の投与時には好ましくは少なくとも1日齢である。
【0109】
多様な投与経路、例えば皮下、筋肉内、皮内、経皮、噴霧、飲料水、点眼、鼻内、経口、おとり餌、in ovo投与または前記の組合せ(例えば眼鼻投与、口鼻投与)を用いることができる。
【0110】
本発明をこれから以下の非限定的な実施例の方法によってさらに説明しよう。
【実施例1】
【0111】
APMV-1、APMV-4およびAPMV-6
A.ウイルスおよびトリ
【0112】
1日齢SPF(特定病原体フリー)ニワトリ(Merial, Gainesville, GA)を陽圧のHorsfall-Baur隔離ユニットに収容した。飼料および水を随時提供し、これらのトリを1日2回調べた。実験に用いたウイルス(APMV-2、4および6)は野鳥から単離され、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって分類された。ウイルスは、尿嚢経路で接種することによってSPFニワトリの9日齢発育卵(SunRise Farms, Catskill, NY, USA)で増殖させた。接種後3日で尿嚢液を採集し、適量分割し-80℃で保存した。APMVのサブタイプは標準血清(NVSL, Ames, Iowa, USA)を用いてHI試験により確認した。尿嚢液の10倍連続希釈をSPF発育卵に接種することによって、各単離株の50%卵感染用量(EID50)を決定した。Reed and Muench(Reed, LJ et al., 1938, Am. J. Epidemiol. 27:493-497)が記載した方法にしたがって力価を算出した。
B.実験的感染
【0113】
1グループにつき25匹の1日齢SPFニワトリに106EID50/ニワトリを眼鼻経路で感染させた。コントロールグループのニワトリにはPBS(リン酸緩衝食塩水)を擬似接種した。感染後2、4、7、14および28日目に各グループから5匹のトリの翼静脈から採血し血清サンプルを収集し、CO2で安楽死させ剖検した。気管、肺、膵臓および腸の組織標本を収集した。各器官について新しく滅菌した1対の鋏とピンセットを用いた。組織サンプルの半分を、ウイルス輸送媒体を含むライシング・マトリックス(Lysing Matrix)Dチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH)に入れた。前記ウイルス輸送媒体は以下を含む:1Xの最少必須培地、7.5%重曹、15mMのHEPES、1%ウシ胎児血清、4000U/mLペニシリン、400μg/mLゲンタマイシン、8μg/mLアンホテリシンB、4000μg/mLストレプトマイシン、1000μg/mL硫酸カナマイシン。前記組織サンプルの第二の半分を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンワックスに包埋した。パラフィン包埋組織切片をメイヤーのヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。
【0114】
結果は、軽度の下痢が、APMV-2またはAPMV-4に感染させたトリで感染後4日目および7日目に観察されることを示した。剖検時に、APMV-2に感染したトリは感染後2日目および4日目に膵臓のわずかな肥大を示した。
C.血清学
【0115】
血球凝集(HA)および血球凝集阻害(HI)試験を用いて、尿嚢液でのウイルスの検出および収集血清サンプルでのHI抗体存在の分析をそれぞれ実施した。前記試験は、PBSに再懸濁させた0.8%のニワトリ赤血球を用いて標準的方法により実施した。HI試験は血清希釈抗原定常法により実施した。各血清希釈について8HAユニットのウイルス抗原を用いた。
【0116】
HI抗体力価は感染後2、4、7、14および28日目に調べた。陽性HI力価(1:16以上)は、APMV-2に感染したトリの血清サンプルで感染後7日目(1/5)、14日目(5/5)および28日目(5/5)に観察された。興味深いことに、APMV-4に感染したニワトリの1匹だけがHI力価を上昇させ、感染後14日目にこのHI力価は実験中陽性とみなされた。同様にAPMV-6について、5匹のうち2匹のニワトリが感染後28日目に1:16のHI力価を生じた。擬似接種したトリは、この実験に用いた3つのAPMVの全てに対してHI抗体が陰性のままであった。さらにまた、交差夾雑を排除するために、全血清を他の2つの抗原に対するHI抗体について試験したが、陰性のままであった。
D.ウイルスの単離
【0117】
ライシング・マトリックスDチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH)に収集した組織サンプルを、Fastprep(商標)-24(MP Biomedicals, Solon, OH)を20秒間4.0M/Sの設定で用い2回均質化した。室温で15分間インキュベーションした後、均質化したサンプルを2000g、20分間、4℃で遠心した。無菌性は、10%ヒドロラクトアルブミンを補充した2mLトリプトースホスフェートブロス(TPB)(DIFCO, Becton Dickenson, Sparks, MD, USA)に得られた上清の50μLを接種後、37℃にて一晩オービタルシェーカーでインキュベートすることによって試験した。無菌的でないサンプルは0.45μmのシリンジフィルター(Whatman Inc., Florham Park, NJ, USA)でろ過した。サンプルは-80℃で保存した。ウイルスの単離は、SPFニワトリの9日齢発育卵の尿嚢に0.1mLを接種することによって実施した。37.5℃で3日間インキュベートした後、尿嚢液を採集し、血球凝集活性の存在をHAによって試験した。
【0118】
ウイルスの複製部位を解析するために、発育卵でウイルスを単離することによって、いくつかの器官(気管、肺、腸、膵臓)を感染について分析した(図1)。全般的に、複製ウイルスはいくらかのニワトリでのみ検出されただけであった。簡単に記せば、2日目にAPMV-4は気管、肺および膵臓から回収されたが、APMV-6は肺および膵臓から単離された。4日目に、APMV-2は気管および肺から単離されたが、APMV-6は腸を除くすべての試験器官から単離された。7日目には、APMV-2はただ1つの腸サンプルから単離され、APMV-4は膵臓から単離されたが、APMV-6は肺および膵臓サンプルから単離された。驚くべきことに、感染後14日目にはウイルスは単離されなかったが、感染後28日目には、APMV-2、4および6は膵臓から単離できた。擬似接種したトリからはウイルスは単離されなかった。単離したウイルスの実体は、NVSLによって提供された標準血清を用いてHI試験により確認した。
【0119】
試験ウイルスの病原性能力を判定するために、入手した器官の顕微鏡病巣を分析した(図2)。感染後2日目に、呼吸器上皮の線毛消失および軽度の腸炎に加えてカタル性気管が全ての感染ニワトリで観察された。感染後4日目には、APMV-2感染ニワトリは、気管の肥大粘液線の数の増加および呼吸器上皮の巣状潰瘍を示した。感染後4日目には、APMV-4感染ニワトリは、呼吸器感染を強く示唆する変化(例えば軽度の気管炎)、軽度から中等度のリンパ球性多発性巣状膵炎およびBALT(気管支付随リンパ系組織)の巣状過形成を示した。APMV-6感染ニワトリの器官の精査によって、気管の変化(例えばカタル性および潰瘍性気管炎)および巣状膵炎(ウイルス性刺激と一致する)が明瞭であった。感染後7日目には、APMV-2感染ニワトリは、巣状気管希薄化または治癒を示唆する呼吸器上皮の置換を示した。APMV-4感染トリは軽度のBALT過形成を示したが、APMV-6感染トリは嚢胞性腸症、巣状腸炎および膵臓のリンパ球浸潤を示した。感染後14日目には、軽度のリンパ球性腸炎および軽度のGALT過形成に加えて、APMV-2感染トリは治癒性変化(例えば気管希薄化)もまた示した。APMV-4または6に感染したニワトリの器官サンプルは、ウイルス感染を示唆する変化、例えば軽度の間質性肺炎、カタル性気管炎およびBALTまたはGALT過形成を感染後14日目に示した。感染したニワトリから入手した全ての精査サンプルが、病巣、例えばGALT過形成、リンパ球性膵炎およびリンパ球性気管支炎を感染後28日目に示した。2日目に、コントロールグループの複数のトリが軽度のカタル性気管炎を示し、これは環境因子に起因する可能性がある。
【0120】
図3はAPMV-4または6に感染したSPFニワトリの低いHI力価(14日目に1:32まで)を示し、APMV-2感染だけが血清陽性と特徴付けることができるHI応答を誘引したことを示している。それにもかかわらず、3ウイルス全てが、感染したトリの気管、肺、腸および膵臓から感染後7日目まで、さらに膵臓から感染後28日目まで回収された。APMV-2、4または6による感染は、特徴的な組織病巣(図2に要約)を全ての感染鳥で示し、ウイルス抗原による刺激を示唆した。感染鳥のウイルス単離および組織学的プロフィルは、感染鳥におけるこのウイルスの向性を如実に示した(2日目から7日目までは気管および肺、7日目以降は腸、肺および膵臓)。全ての単離株は感染後28日目まで膵臓で検出されたが、ウイルスは感染後14日目には単離できなかった。このことは、調べたAPMVはおそらく存続し後に再活性化され得ることを示した。したがってウイルスキャリアが感染群に存在することが可能である。APMV-2のみがHI抗体を誘発し、一方APMV-4および6に感染したニワトリのHI抗体は検出されなかった。
【実施例2】
【0121】
APMV-8
A.ウイルスおよびトリ
【0122】
1日齢SPFニワトリ(Merial, Gainesville, GA, USA)およびペキンアヒル(Metzer Farms, Gonzales, CA, USA)を陽圧のHorsfall-Baur隔離ユニットに収容した。
飼料および水を随時提供し、トリを1日2回調べた。実験に用いたAPMV-8ウイルス(APMV-8:SCWDS ID:MA-7)はマガモから単離され、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって分類された。ウイルスは、尿嚢経路で接種することによってSPFニワトリの9日齢発育卵で増殖させた。接種後3日で尿嚢液を採集してプールし、適量分割し-80℃で保存した。APMV-8サブタイプは、NVSL(National Veterinary Service Laboratory, Ames Iowa, USA)によって提供された標準血清を用いてHI試験により確認した。尿嚢液の10倍連続希釈をSPF発育卵に接種することによってEID50を決定した。Reed and Muench(Reed and Muench, 1938)が記載した方法にしたがって力価を算出した。
B.実験的感染
【0123】
1グループにつき25匹の1日齢SPFニワトリまたはペキンアヒルにPBSで希釈した106EID50/トリを眼鼻経路で感染させた。コントロールニワトリまたはアヒルグループのトリにはPBSを擬似接種した。感染から2、4、7、14および28日後に各グループから5匹のトリの上腕静脈から採血し血清サンプルを収集し、CO2で安楽死させ、さらに剖検を実施した。気管、肺、膵臓および腸(十二指腸)の組織標本を収集した。各器官について新しく滅菌した1対の鋏とピンセットを用いた。組織サンプルの半分を、ウイルス輸送媒体を含むライシング・マトリックスDチューブ(MP Biomedicals, Solon, OH, USA)に入れた。前記ウイルス輸送媒体は以下を含む:1Xの最少必須培地、7.5%重曹、15mMのHEPES、1%ウシ胎児血清、4000U/mLペニシリン、400μg/mLゲンタマイシン、8μg/mLアンホテリシンB、4000μg/mLストレプトマイシン、1000μg/mL硫酸カナマイシン。前記組織サンプルの第二の半分を10%緩衝ホルマリンで固定し、さらに日常的に処理し、包埋し切片を作成してヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。
C.ウイルスの単離
【0124】
ライシング・マトリックスDチューブに収集した組織サンプルを、Fastprep-24(MP Biomedicals)を20秒間4.0M/Sの設定で用い2回均質化した。この均質化サンプルを室温で15分間インキュベーションし、続いて2000xg、20分間、4℃で遠心した。得られた上清の50μLを10%ヒドロラクトアルブミン補充無菌的TFBの2mLに接種し、続いて37℃にて一晩オービタルシェーカーでインキュベートして無菌性について試験した。無菌的でないサンプルは0.45μmのシリンジフィルター(Whatman Inc.)でろ過した。サンプルは-80℃で保存した。ウイルスの単離は、SPFニワトリの9日齢発育卵の尿嚢に0.1mLを接種することによって実施した。37.5℃で3日間インキュベートした後、尿嚢液を採集し、血球凝集活性の存在をHAによって試験した。
D.血清学
【0125】
血球凝集(HA)および血球凝集阻害(HI)試験を用いて、尿嚢液でのウイルスの検出および収集血清サンプルでのHI抗体存在の分析をそれぞれ実施した。前記試験は、PBSに再懸濁させた0.8%のニワトリ赤血球を用いて標準的方法により実施した。HI試験は血清希釈抗原定常法により実施した。各血清希釈について8HAユニットのウイルス抗原を用いた。以前に記載されたように(Brugh, 1978)幾何平均力価を決定した。
図4は、APMV-8を感染させたSPFニワトリおよびアヒルのHI抗体力価を示す。ニワトリおよびアヒルにAPMV-8の106 EID50の用量を口鼻感染させた。血清サンプルを感染後2、4、7、14および28日目に収集し、APMV-8抗原によるHI試験によって解析した。HI血清力価(log2)は左軸で示される。
E.ニワトリにおけるAPMV-8の病原性インデックス
【0126】
APMV-8の病毒性を判定するために、ニューカッスル病ウイルスのための世界動物保険機構(World Organization for Animal Healt)(OIE, 2008)の手順のしたがって、大脳内病原性インデックス(ICPI)を決定した。ニワトリ胚の平均死亡時間(MDT)は以前に記載されたように(Swayne et al., 1998)、10-1から10-8のAPMV-8連続希釈を用いて決定した。
【0127】
発育卵における平均死亡時間の決定は、大脳内病原性インデックス(ICPI)の判定と同様にウイルスの病原性についての重要な測定である。発育卵におけるMDTに関しては、接種卵の胚はいずれも7日後に死亡せず、したがってAPMV-8単離株はレントジェニックと分類できる。ウイルスの存在は、10-6希釈を接種した卵の尿嚢液を用いたHA試験によって確認した。大脳内接種したニワトリはいずれも観察期間の間ずっと臨床徴候を示さずICPI値はゼロで、したがって表現型はレントジェニックとなる。
F.APMV-8ブースターワクチン
【0128】
1グループにつき10匹の1日齢SPFニワトリに眼鼻経路で106EID50/トリを感染させた。前記のトリに第一の感染から14日後に同じ用量を再度感染させた。感染性ウイルスの存在は、最初の感染後2、4、7および14日目に、さらに第二の感染後2および4日目に気管スワブから9日齢発育卵を用いてウイルスを単離することによってモニターした。抗体応答は、各ワクチン接種後、0、7および14日で収集した血清サンプルのHI力価によってモニターした。
【0129】
第二の免疫がより持続性のHI力価を発達させるか否かを調べるために、プライム/ブースト処置スケジュール実験を実施した(図5)。第一の感染後7日目に10匹のトリはいずれも64から1024の範囲のHIを示した(GMT207)。力価は第一の感染後14日目に低下したが(GMT84)、最初の感染後14日目のブースター感染後増加した。ブースター接種後7日目に、GMTは137に増加し、第二の感染後14日目にGMTは再び73に低下した。感染性ウイルスは、第一の感染後2日目(5匹/10匹)および4日目(4匹/10匹)に気管スワブから単離できた。第二の感染後、感染後2日目および4日目に採取したスワブからウイルスは単離されなかった。
G.RT-PCRによるウイルスRNAの検出
【0130】
組織サンプルのウイルスRNAの検出は、組織サンプルの均質化後にHigh PURE RNA単離キット(Roche, Manheim, Germany)を用いて実施した。プライマー対(8NPf1、8NPr、表1を参照されたい)をRT-PCRで用いた。前記RT-PCRでは、製造業者の指示に従いSuperscript III One Step RT-PCRキットをPlatinum Taq(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)とともに用いた。得られた反応生成物を1%アガロースゲルで解析した(図6)。気管組織を非感染アヒル(C1−C5)およびAPMV-8感染アヒル(I1−I5)から感染後2日目に採取した。組織を均質化しRNAをRT-PCRのために調製した。並行して水コントロール(W)を調製した。反応生成物を1.5%アガロースゲルで分離した。フラグメントのサイズは100bpラダー(New England Biolabs, Boston, MA, USA)を用いて管理した。DNAフラグメントのサイズは右側に示されている。
表1:組織サンプル中のウイルスRNAの検出のためのRT-PCRで用いたオリゴヌクレオチド
H.ニワトリおよびアヒルにおける最少感染用量の決定
【0131】
ニワトリの血清変換の検出に十分なウイルス力価を決定するために1日齢のSPFニワトリに種々の用量のAPMV-8を感染させた。このトリを上記に記載したように収容した。1グループにつき10匹のニワトリに101、102、103、104、105または106EID50を感染させた。ウイルスはVTMで希釈した。1つのグループにはVTMを接種し、コントロールとして用いた。これらのトリの上腕静脈から感染後7および14日目に採血した。ニワトリで実験中に得られた結果を基にして、3日齢のペキンアヒルを種々の量のウイルスに感染させた。感染用量には103、104、105または106EID50/アヒルを選択した。1つのグループにはVTMを擬似感染させた。これらのトリの脚静脈から感染後7および14日目に採血した。上記に記載したHIによって、ウイルス特異的抗体について血清サンプルを解析した。
I.アヒルおよびニワトリにおける病原性の決定
【0132】
実験中、ニワトリおよびアヒルで臨床徴候は観察されなかった。剖検時、3匹の感染ニワトリが感染後2および4日目にわずかな膵臓肥大および十二指腸炎症を示した。いずれのグループでも他の肉眼病巣は認められなかった。
【0133】
血清学的応答は、血清のHI力価の精査により感染後2、4、7、14および28日目に調べた(図4)。APMV-8感染ニワトリの血清サンプルは、感染後7日(5/5、GMT:111)から14日(5/5、GMT:48)および28日(5/5、GMT:48)で陽性HI力価(16以上)を示した。APMV-8感染アヒルの血清サンプルもまた、感染後7日(5/5、GMT:21)から14日(5/5、GMT:28)および28日(4/5、GMT:14)で陽性HI力価(16以上)を示した。HI力価はニワトリについては32から256の範囲であるが、アヒルについては16から64の範囲である。擬似接種鳥は、両方の種で精査した全ての時点においてAPMV-8に対するHI抗体について陰性を維持した。
【0134】
ニワトリおよびアヒルにおけるウイルス複製部位を決定するために、いくつかの器官(気管、肺、十二指腸および膵)を発育卵でウイルスを単離することによって感染性ウイルスについて解析した(図7)。ニワトリでは、感染後2日でAPMV-8は気管、肺および十二指腸から回収された。感染後4日ではAPMV-8は全ての解析器官から単離されたが、感染後7日ではAPMV-8は膵臓からのみ単離された。感染後14および28日では、いずれの器官からもウイルスは回収されなかった。擬似接種したトリからはウイルスは単離されなかった。単離したウイルスの実体はNVSLが提供した標準血清を用いるHI試験によって確認した。収集したいずれのアヒル組織からはいずれの時点でも、9日齢のSPF発育鶏卵で2回継代後でさえもウイルスは単離されなかった。したがって、RT-PCRプライマーは、収集組織サンプルでウイルスRNAの存在を検出するために入手可能なAPMV-8の配列情報に基づいて設計した(図7)。感染後2日で、ウイルスRNAは気管(図6)、腸および膵臓で検出されたが、感染後4日ではウイルスRNAは解析した全器官で検出された。感染後7、14および28日では、ウイルスRNAは気管および肺でのみ検出された。擬似接種鳥の器官から入手したRNAを用いたRT-PCRはRT-PCRフラグメントの増幅をもたらさず、このことはこれらのトリでAPMV-8は存在しないことを示している。
【0135】
この精査ウイルスの病理学的能力を判定するために、顕微鏡的病巣の存在について器官を解析した(図8)。感染後2日では、軽度の多発性巣状増殖性気管炎が全ての感染ニワトリで観察された。その他の器官はコントロールグループと相違がなかった。APMV-8感染ニワトリは、感染後4日で治癒を示唆する気管呼吸系上皮の巣状希薄化または再生を示した。さらにまた、これらのトリは、ウイルス感染を示す軽度の多発性巣状リンパ球性膵炎を示した。感染後7日で、感染ニワトリは、肺の変化(例えば中等度から重度のBALTの変化)、気管の変化(例えばカタル性気管炎)および多発性巣状リンパ球性膵を示した。これらの所見は抗原性刺激と一致する。感染後14日には、気管の変化は治癒と一致し、ウイルス感染を示唆する膵臓の変化(例えばリンパ球性膵炎)が感染ニワトリで観察された。感染後28日では、軽度のカタル性気管炎および軽度の腸炎のみが感染ニワトリのいくらかで認められた。感染アヒルでは、感染後2日で、軽度の多発性巣状リンパ球性気管炎、肺の変化(間質性肺炎)および腸の変化(リンパ球性腸炎)が観察され、一方、感染後4日では呼吸器感染と一致する気管変化が観察された。感染後7日では、感染アヒルはリンパ球性気管炎およびウイルス感染と一致する膵炎を示したが、観察されたカタル性気管炎は感染後14日では治癒を示唆した。さらにまた、感染アヒルは感染後14日でリンパ球性膵炎を示した。その後感染後28日では、感染アヒルの肺ではBALTの過形成および軽度の多発性巣状異染性気管炎もまた認められた。両者の病理学的顕微鏡病巣はウイルスの感染を示している。非感染コントロールでは調べた器官に変化は観察されなかった。
J.免疫応答誘発に必要な最少用量の決定
【0136】
ニワトリで血清変化の誘発に必要な最少感染用量を決定するために、10倍希釈のAPMV-8を用いて、10匹の1日齢SPFニワトリを感染させた(図9)。HI試験については、陽性とみなされる閾値16をもたらす4HA単位を用いた。感染後14日目に採取した血清サンプルは、陽性とみなされる(GMT 11)免疫応答を4/10のニワトリで誘発するために103のEID50が十分であることを示した。104のEID50の感染後14日目に、10匹のトリのうち9匹が16以上の力価を示した(GMT 34)。105および106のEID50による感染は全てのトリで16以上のHI力価を感染後14日目に誘発し、GMTはそれぞれ73および137であった。
【0137】
この結果を基に、8匹のアヒルの各々に103/トリの用量のEID50から106/トリの用量のEID50までAPMV-8を感染させた。8匹のうち6匹のアヒルが顕著な力価(16以上)を感染後14日で生じ、104/トリのEID50の感染後GMTは14であった。感染後14日目には、105/トリのEID50を感染させた6/8のアヒル、および106/トリのEID50を感染させた7/8のアヒルが顕著な力価(16以上)を生じ、GMTはそれぞれ17および23であった。
【実施例3】
【0138】
APMV-8の完全長配列の決定
APMV-8の完全長配列の決定のために、ウイルスRNAの配列情報がまず初めに必要とされる。この目的のために、APMV-1(Genbank アクセッション番号AF077761)、APMV-2(Genbank アクセッション番号EU338414)、APMV-6(Genbank アクセッション番号EF569970)の入手可能な3'-配列を基にして縮退配列を含むプライマー(APMV-ポリT、表1参照)を用いることによって、ウイルスゲノムの3'-末端をクローニングした。ウイルスRNAは、High Pure RNA単離キット(Roche, Mannheim, Germany)を用いて尿嚢液から精製した。前記配列は、cDNA末端の迅速増幅用5' RACE系バージョン2.0(Invitrogen)を製造業者の指示に従って用いた。いくつかのフラグメントを入手し、ゲルから溶出させ、Topo TAクローニングベクター(Invitrogen)でクローニングし、陽性選別したクローンの配列を決定した。得られたヌクレオチド配列をNCBIデータベースに対してnblast検索で解析し、類似性は得られなかった。NCBIのデータベースに対してtblastxで検索したところ、トリパラミクソウイルス2(APMV-2/ニワトリ/カリフォルニア/Yucaipa/56、Genbankアクセッション番号EU338414)に83%の類似性、およびトリパラミクソウイルス6株(APMV-6/カモ/極東/4440/2003、Genbankアクセッション番号EF569970)に56%類似性を有するヌクレオプロテインに対して類似性を示した。このプライマーを用いて、cDNA末端の迅速増幅用5' RACE系バージョン2.0(Invitrogen)によりプライマーウォーキング法を実施した。5'-RACEはほぼ800bpのフラグメントを生成した。この技術を用いて、以前の配列から得た配列情報(これを用いて新規なオリゴヌクレオチドの輪郭を得た)を基にして新規な配列情報を入手した。ウイルスゲノムの5'-末端もまた前記5'-RACEの方法によって決定した。ウイルスゲノムの3'-末端は、T4 RNAリガーゼ1(New England Biolabs)によるRNAの連結後に入手した。連結反応物をHigh Pure RNA単離キット(Roche, Mannheim, Germany)で再度精製し、Superscript III One Step RT-PCRキットをPlatinum Taq(Invitrogen)とともに用いてRT-PCRを実施した。得られたcDNAフラグメントをpCR2.1ベクター(Invitrogen)でクローニングしさらに配列を決定した。クローニングした各フラグメントに由来する3つのプラスミドを両方の向きで配列決定し、したがって各ヌクレオチドの6通りをカバーする配列が得られた。
【0139】
解析したAPMV-8株の完全長ゲノム配列は15342ヌクレオチドで、これはパラミクソウイルス科の6の法則(Calain, P. & Roux, L., 1993)と一致する。6つのオープンリーディングフレーム(ORF)が検出され、複数のタンパク質をコードする。タンパク質の順序は、他のトリパラミクソウイルスのタンパク質に対するタンパク質配列類似性を用いて、3'-NP-P-M-F-HN-L-5'と決定された(ゲノム配列の配列番号:1は5'から3'方向のアンチゲノムである)。これらORFの仮定的開始および終止コドン並びにこのタンパク質の理論的分子量(Swiss Institute of Bioinformatics ExPASy website)は表2に示されている。
表2:APMV-8配列によってコードされるタンパク質のパラメーター
【0140】
仮定的なゲノムリーダーおよびトレイラー配列は、NP遺伝子(リーダー)の仮定的遺伝子開始配列およびLタンパク質(トレイラー)の仮定的遺伝子末端配列の決定によって決定した。リーダー配列はヌクレオチド1からヌクレオチド55に位置する。NP遺伝子の仮定的遺伝子開始配列はリーダー配列を終了させる。トレイラー配列はウイルスゲノムの最後の遺伝子の末端配列の後ろに位置する。RNAポリメラーゼ遺伝子のための2つの仮定的遺伝子末端配列(nt15161−nt15171またはnt15288−nt15297)により、2つの仮定的なトレイラー配列が同定された(nt15172−nt15342またはnt15289−nt15342)。仮定的遺伝子開始配列(ポリG含有配列)および遺伝子末端配列(ポリアデニル化のためのシグナル配列)並びに遺伝子間配列の位置は表3に要約される。
表3:APMV-8の仮定的遺伝子開始、遺伝子間および遺伝子末端配列の配列および位置
表4:配列番号並びにDNAおよびタンパク質配列
【0141】
APMV-8の仮定的遺伝子開始配列は保存され、ポリ(C)5配列とその後に続く3'-GCU-5'を含む。ただ1つの例外は、ウイルスRNAポリメラーゼの仮定的遺伝子開始配列である(3'-CUCCCGCU-5')。仮定的遺伝子末端配列もまた保存され、ゲノムのウイルス5'配列にポリ(U)6配列を含む(表5)。
【表1】
【0142】
これらの配列は、アブラウイルス属(Avulavirus)の他のパラミクソウイルスについて記載された配列から予測された(Chang et al., 2001, Nayak et al, 2008, Jeon et al., 2008)。RNAポリメラーゼのORFには2つの可能な開始コドンが存在する。第一の開始コドン(nt 8273−8275)は、HN ORFとウイルスRNAポリメラーゼORFとの間の遺伝子末端-遺伝子間領域-遺伝子開始領域に位置する。これによりこの開始コドンの可能性は極めて低くなるががただし不可能ではない。第二の開始コドン(8297−8299)は遺伝子末端-遺伝子間領域-遺伝子開始領域の下流に存在し、APMV-8のRNAポリメラーゼの翻訳開始のための開始コドンとして機能し得る。
【0143】
APMV-8のゲノムは長さが15342ヌクレオチドである。これはAPMV-1(配列番号:15、15186 nt(de Leeuw & Peeters, 1999))、APMV-2(配列番号:16、14,904 nt(Subbiah et al., 2008))、APMV-4(配列番号:18、15054 nt(Nayak et al., 2008))より大きく、APMV-3(配列番号:17、16,272 nt(Kumar et al., 2008))およびAPMV-9(配列番号:20、15,438 nt(Samuel et al., 2009))より小さい。リーダー配列の55ヌクレオチドの長さは全APMV間で保存されているように思われるが(Krishnamurthy & Samal, 1998, de Leeuw & Peeters, 1999, Subbiah et al., 2008, Nayak et al., 2008, Kumar et al., 2008, Samuel et al., 2009)、一方、トレイラー配列は長さが多様であるように思われる。ウイルス遺伝子の遺伝子開始および遺伝子末端配列はまたAPMV-8についても高度に保存されていた(表5に示す通り)。このことはまたAPMV-2(Subbiah et al, 2008)、APMV-3(Kumar et al, 2008)、APMV-4(Jeon et al., 2008, Nayak et al, 2008)、APMV-6(Chang et al, 2001)の配列について、さらに最近ではAPMV-9((Samuel et al., 2009)についても記載されている。完全長配列のヌクレオチドの数は6の倍数で、このことはパラミクソウイルスゲノムの6の法則と一致する(Kolakofsky et al., 1998)。
【0144】
APMV-1、2、3、4、6、8および9のゲノム間の配列同一性は表6に示されている。
表6:APMV-1、2、3、4、6、8および9のゲノム間の配列同一性
【0145】
2つの核酸またはポリペプチド配列間のパーセント配列同一性はVector NTI 11.0(PC)ソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定される。ギャップオープニングペナルティ15およびギャップ伸長ペナルティ6.66を2つの核酸のパーセント同一性の決定に用いる。ギャップオープニングペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1を2つのポリペプチドのパーセント同一性の決定に用いる。パーセント同一性は短い方の配列を基準に算出した。
【実施例4】
【0146】
APMV-8株による1日齢ブロイラー鶏のワクチン接種
20匹の1日齢ブロイラー鶏を下記に示す表7にしたがって2つのグループに分けた。
【0147】
1日目に1日齢のニワトリから採血し、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HI試験)を用いてニューカッスル病ウイルス(NDV)およびAPMV-8に対する抗体の状況を決定した。前記試験はNDV Lasota株またはAPMV-8感染SPF卵から得た尿嚢液を用いて実施した。NDV Lasota株またはAPMV-8の4HA単位および1%ニワトリ赤血球をHI試験に用いた。得られたHI力価は、これらニワトリ血清はNDVに対するHI抗体を含むがAPMV-8ウイルスに対する検出可能な抗体は含まないことを示した。
表7:1日齢ブロイラー鶏の感染/ワクチン接種
【0148】
1日目に、グループ1の10匹のニワトリに106 EID50のAPMV-8株を鼻経路で感染させ、グループ2の10匹のニワトリには感染させずコントロールとして供した。
【0149】
感染後14日で(14日目)ニワトリから採血し、得られた血清サンプルをNDVおよびAPMV-8に対するHI抗体の存在について再度解析した(図20)。結果は、APMV-8ワクチンを接種したニワトリは、抗原としてAPMV-8を用いたときHI力価を有することを示した。APMV-8特異的HI力価は128から2048の間であった。NDVに対するHI力価は16未満の低いHI力価に低下し、したがってそれらはNDV陽性とみなされない。この結果は、NDVに対するニワトリの母親由来抗体はAPMV-8の感染を排除せず、したがってそのような抗体のAPMV-8ワクチン免疫の妨害の可能性は極めて低いことを示した。
【0150】
感染後14日で(14日目)、グループ1およびグループ2のニワトリを分割した。グループ1(グループ1-1)およびグループ2(グループ2-1)の各々5匹のニワトリに再度106 EID50のAPMV-8株を感染させ(表7)、各グループの残りの5匹のニワトリ(グループ1-2およびグループ2-2)には感染させなかった。この実験は、後の感染が感染に影響を与えるか否かおよび第二の感染(ブーストワクチン免疫)が抗体力価を増加させるか否かを精査するために設計した。14日後に(28日目)、全てのニワトリから再び採血し、血清をAPMV-8およびNDV抗体の存在について精査した。血清力価(図21)は、14日目の最初のワクチン接種(グループ2-1)はAPMV-8特異的抗体力価(32から512の範囲)を確かに誘発した。1日目だけにワクチン接種したニワトリ(グループ1-2)では、抗体力価は128から512の範囲の力価に低下した。1日目および14日目にワクチン接種したニワトリ(グループ1-1)では、APMV-8特異的抗体力価は増加せず、第二の感染に用いられたウイルスは、最初の感染によって誘発されたAPMV-8特異的抗体によって中和されたことを示唆した。ワクチン接種されなかったコントロール(グループ2-2)の血清はAPMV-8特異的HI抗体を含まなかった。28日目に、NDV抗体はさらに低下し、20匹のニワトリのうち11匹のニワトリだけがNDV抗原に対するHI力価を示したが、14日目には14匹のニワトリがNDBVに対して低い抗体力価を示した。
【実施例5】
【0151】
発育SPF卵のin ovoワクチン接種
この実験は、APMV-8によるin ovoワクチン接種がニワトリに抗体応答をもたらすか否か、およびin ovoワクチン接種が孵化率および生存率を低下させるか否かを試験するために実施した。
【0152】
実験1では、インキュベーション18日目にINOVOJECT(Pfizer Animal Health, NY, USA)を用いて、108個のSPF卵にAPMV-8ウイルス株をin ovoワクチン接種した。ウイルスは無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。希釈ウイルスのバックタイトレーションによって105.5 EID50/100μLであることが示された。コントロールとして、108個の卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。接種体積は100μL/卵であった。80匹のニワトリがコントロールグループから孵化し、45匹のニワトリがAPMV-8ワクチン接種グループから孵化した。各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。さらにまた、APMV-8ワクチン接種グループのニワトリおよびコントロールグループの5匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットで混ぜ合わせ、ワクチン接種後のAPMV-8の伝播を試験した。水および飼料は随時提供した。孵化後14日および28日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図22)は、インキュベーション18日目のin ovoワクチン接種は被検血清サンプルにおけるHI力価の存在によって示される通り免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、256から4048のHI力価がin ovoワクチン接種グループで観察された。接触ニワトリの血清では、ワクチン接種グループのニワトリとの接触から14日後に256から2048のHI力価が観察され、ワクチン接種に用いられたウイルスの排出を示した。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。14日後に、ニワトリから再び採血し、AMPV-8ワクチン接種グループで256から4096、AMPV-8接触グループで256から1024の力価が示された。コントロールグループはAPMV-8 HI抗体が存在しないことを示した。
【0153】
実験2では、インキュベーション19日目にINOVOJECTを用いて、88個のSPF(特定病原体フリー)卵にin ovoワクチン接種した。APMV-8ウイルス株は無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。希釈ウイルスのバックタイトレーション後に観察されたように、ウイルスの力価は105.75 EID50/100μLであった。コントロールとして、88個のSPF卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。接種体積は100μL/卵であった。74匹のニワトリがコントロールグループ(NaCl)から孵化し、76匹のニワトリがAPMV-8ワクチン接種グループから孵化した。各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。水および飼料は随時提供した。孵化後14日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図23)は、インキュベーション19日目のin ovoワクチン接種はAPMV-8特異的HI力価による免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、256から4048のHI力価がAPMV-8 in ovoワクチン接種グループで観察された。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。孵化後28日目に、ニワトリから再び採血した。AMPV-8ワクチン接種グループのHI力価は512から4096の範囲であったが(図23)、コントロールニワトリの血清はなおAPMV-8陰性であった。
【0154】
三番目の実験では、インキュベーション18日目にINOVOJECTを用いて、グループ1およびグループ2の108個のSPF卵にそれぞれ103.5 EID50および104.5 EID50でin ovoワクチン接種した。APMV-8ウイルス株は無菌的な0.9%NaClの食塩水で希釈した。第三のグループでは、コントロールとして108個のSPF卵に無菌的な0.9%NaClの食塩水を接種した。83匹のニワトリがグループ1から孵化し、79匹のニワトリがグループ2から孵化し、さらに88匹のニワトリがグループ3から孵化した(表8参照)。孵化後、各グループから10匹のニワトリをHorsefall-Bauerユニットに移した。水および飼料は随時提供した。孵化後、グループ3の10匹のニワトリの首領域の皮下に106 EID50 APMV-8ウイルスを100μLの体積でワクチン接種した。孵化後14日で、血液サンプルを採取し、4HAユニットおよび1%ニワトリ赤血球(CRBS)を用いてAPMV-8に対するHI抗体の存在について試験した。結果(図24)は、インキュベーション18日目のin ovoワクチン接種はAPMV-8特異的HI力価による免疫応答をもたらすことを示した。孵化から14日後、4096から16384のHI力価がAPMV-8 in ovoワクチン接種グループで観察された。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。APMV-8を皮下にワクチン接種されたグループは、64から4096の範囲の力価の血清変換を示した。孵化後28日目に、ニワトリから再び採血し、APMV-8特異的HI抗体の存在について試験した。孵化後4週間でHI力価は低下し、512から4096の範囲であった。コントロールグループはAPMV-8特異的HI力価を全く示さなかった。皮下にワクチン接種されたグループのHI力価は32から256の間のHI力価を示した。
表8
【実施例6】
【0155】
APMV-8株の逆遺伝学の開発および異種遺伝子を発現するAPMV-8変異体の作製
APMV-8のNP、PおよびL遺伝子を含む発現プラスミドの構築
【0156】
パラミクソウイルスのための逆遺伝学系を確立するために、ウイルスRNA複製に必要なタンパク質を発現するプラスミドの樹立は必須である。3つのAPMV-8タンパク質(ヌクレオプロテインNP、ホスホプロテインP、RNA依存RNAポリメラーゼタンパク質またはタンパク質L)のオープンリーディングフレームを真核細胞発現ベクター、pcDNA3(Invitrogen, California, USA)でクローニングした。この目的のために、APMV-8を含む尿嚢液のRNAをHigh Pure RNA単離キット(Roche, Basel, Switzerland)を用いて精製した。前記精製RNAを、Titan One Tube RT-PCRキット((Roche)を用いる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のために使用した。前記タンパク質のORFを適切なプライマー対(すなわちNP (NP-FP, NP-RP), P (P-FP, P-RP), L (L-FP, L-RP)、表9参照)を用いて増幅した。反応生成物を0.7%アガロースゲルで分離し、製造業者のプロトコルにしたがいQIAquick Gel抽出キット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて溶出させた。このRT-PCRフラグメントを適切な制限酵素(NPおよびP をEco RI/NotI、LをKpn I/NotI)とともにインキュベートし、再びゲルから溶出させ、さらに適切な制限酵素で切断した真核細胞発現ベクターpcDNA3に連結した。前記連結反応物でTop10F細胞(Invitrogen)を形質転換し、前記Top10F細胞から採集したプラスミドDNAを適切な制限酵素(上記参照)で消化した。適切なサイズを有するDNAフラグメントを含むプラスミド(pcDNA-NP、pcDNA-P、pcDNA-L)の配列を決定した。
表9:RNP複合体タンパク質の遺伝子増幅用プライマー
【0157】
aこのプライマー配列はクローニングに用いられる制限酵素の切断部位を含む。制限部位は太字で特定されている。開始コドンおよび終止コドンは括弧で括って示してある。ウイルス特異的配列には下線が付されている。
【0158】
bこのプライマー配列方向はウイルスメッセンジャーRNAと一致する。
【0159】
c位置は提示した完全長ゲノムのウイルス特異的配列である。
APMV-8の完全長ゲノムを含むプラスミドの構築
【0160】
完全長APMV-8ゲノムを含むプラスミドを作製するために、このウイルスのcDNAゲノムを2つの異なる部分の作製コンセンサス配列(5'-FLG、3'-FLG、図25参照)を基にして合成した(Genscript, New York, USA)。ウイルス配列の5'-部分(5'-FLG、配列番号:47)はヌクレオチド1−5564から合成した。APMV-8配列に先行して、CMV-IEプロモーターと前記に続くXmaI(その後に続く可能性があるクローニング工程のため)制限酵素切断配列およびハンマーヘッドリボザイム配列から成る配列が存在する。前記配列の5'-末端および3'-末端にNotIおよびSacIIのための制限酵素切断部位をそれぞれ付加した。当該配列(ヌクレオチド5503−15342)の合成3'-部分(3'-FLG、配列番号:48)の後に肝炎デルタリボザイム配列およびウシ成長ホルモンのポリ-Aシグナル配列が続く。クローニングの目的のために、NotI制限酵素の配列は3'-FLGの5'-末端に、さらにSacII制限酵素のための配列は前記配列の3'-末端に付加した。5'-FLGおよび3'-FLG (ヌクレオチド5503−5564)のオーバーラップ部分内に固有の制限酵素(BmtI)のための配列を配置した(前記は完全長配列のヌクレオチド5541位を切断する)。DNAの両部分(5'-FLG、3'-FLG)を別々にプラスミドpUC57(Genscript)と連結し、プラスミドpUC57/5'-FLGおよびpUC57/3'-FLGを生成した。両方のフラグメントを一緒にクローニングするために、pUC57/5'-FLGをBmtIおよびSacIIで切断し、5'-FLG含有プラスミドをゲルから溶出させた。並行してpUC57/3'-FLを同じ酵素で切断し、フラグメント3'-FLGを溶出させた。この3'-FLGを続いて5'-FLG含有プラスミドに連結して、CMV-IEプロモーターの制御下にAPMV-8ゲノムの完全長cDNA配列を含むプラスミドを得た(pUC57-FL-APMV-8)。
APMV-8のミニゲノムを含むプラスミドの構築
【0161】
Conzelmannら(J Virol. 68:713-719, 1994)が記載した方法を用いて、APMV-8のミニゲノムの全ての機能的エレメントを含むプラスミド(pMG-APMV-8)を構築した。プラスミドpMG-APMV-8はAPMV-8ゲノムのトレイラーおよびリーダー領域を含み、前記にはT7プロモーターおよび肝炎デルタウイルスリボザイム配列がフランキングしている(Collins, et al., PNAS USA 88:9663-9667, 1991)。アンチゲノム肝炎デルタウイルスリボザイム配列の後にT7転写ターミネーター配列が続く。トレイラーとリーダー領域の間に、アンチセンス方向の強化緑色蛍光タンパク質のコード配列が位置する。トレイラー配列に先行しさらにT7プロモーターの直後に3つの追加G残基が存在する。前記挿入物にはEcoRIおよびNotI制限酵素切断部位がフランキングし、プラスミドpUC57で平滑端クローニングした。この構築物をプラスミドpUC18でサブクローニングした。この目的のために、続いてプラスミドpMG-APMV-8をEcoRIおよびHindIIIで切断し、適切なフラグメントをゲルから溶出させ、適切に切断したプラスミドpUC18に連結して、pUC18-MG-APMV-8を入手した。挿入物の存在はシークェンシングによって確認した。
T7ポリメラーゼを発現させる発現プラスミドの作製
【0162】
T7DNA依存RNAポリメラーゼ(T7ポリメラーゼ)をコードするプラスミドの作製のために、コード配列(GenBankアクセッション番号AY264778)がGenscriptにより合成された。このT7ポリメラーゼ配列(配列番号:49)を真核細胞系での発現のためにコドン使用頻度を最適化する目的で改変し、さらに当該配列中の可能なスプライスドナー/アクセプター部位を除去した。T7ポリメラーゼコード配列にはEcoRI(5')およびNotI(3')部位がフランキングしていた。合成したフラグメントをベクターpUC57で平滑端クローニングした(pCU57-T7)。このプラスミドをEcoRI/NotIで切断し、T7ポリメラーゼコードフラグメントをゲルから溶出させた。このフラグメントを続いて真核細胞発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)でクローニングし、pcDNA3-T7を得た。ベクターpcDNA3-T7中に前記フラグメントが存在することはシークェンシングによって確認した。
T7プロモーターの存在下にある内部リボソーム進入部位を利用する強化緑色蛍光タンパク質発現用プラスミドの作製
【0163】
T7ポリメラーゼの機能性を試験するために、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)のオープンリーディングフレームを、プラスミドpEGFP-N1(Clontech, California, USA)および以下のプライマー対を用いるPCRによって増幅した:EGFP-FP(CCGGATCCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG)配列番号:50およびEGFP-RP(CCGCGGCCGCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCG)配列番号:51。
【0164】
入手したPCRフラグメントをゲルから溶出させ、制限酵素BamHIおよびNotIとともにインキュベートした。前記反応生成物をゲルから溶出させ、適切に切断したベクターpCITE 4A(Novagen)に連結した。入手したプラスミド(pCITE4A-EGFP)をその後の実験に用いた。プラスミドpCITE4A-EGFPおよびpcDNA3-T7を、24ウェルプレートで増殖させたニワトリ細胞株DF1に単独でまたは一緒にしてリポフェクチン2000(Lipofectin 2000, Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後に培養液を除去し、無菌的リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。倒立蛍光顕微鏡Axiovert 40 CFL(Zeiss, Jena, Germany)を用いて細胞を判定した。緑色蛍光は、両方のプラスミドを一緒にトランスフェクトした組織培養プレートのウェルでのみ観察された。この結果は、両プラスミド、pCITE4A-EGFPおよびpcDNA3-T7が機能的であることを示している。
ミニゲノムプラスミドによる発現ウイルスタンパク質NP、PおよびLの機能性の立証
【0165】
DF1細胞にpcDNA3-T7、pUC18-MG-APMV-8、pcDNA-NP、pcDNA-PおよびpcDNA-Lを同時トランスフェクトして、発現したNP、PおよびLタンパク質の機能性を立証した。トランスフェクションから24時間後に培養液を除去し、無菌的リン酸緩衝食塩水(PBS)を添加した。倒立蛍光顕微鏡Axiovert 40 CFL(Zeiss, Jena, Germany)を用いて細胞を判定した。緑色蛍光は、5つのプラスミドを一緒にトランスフェクトした組織培養プレートのウェルでのみ観察された。この結果は、発現したNP、PおよびLは機能的で、APMV-8ミニゲノムをmRNAに転写しpUC18-MG-APMV-8によってコードされるEGFPタンパク質を発現させたことを示している。
APMV-8の完全長配列を含むプラスミドからAPMV-8ウイルスのレスキュー
【0166】
DF1細胞にpUC57-FL-APMV-8、pcDNA-NP、pcDNA-P、およびpcDNA-Lを同時トランスフェクトした。48から96時間後にDF1細胞の上清を10日齢の発育卵に接種し、ウイルスを増殖させた。3から5日後に尿嚢液を採集し、1%ニワトリ赤血球を用いてヘマグルチニン活性(HA)について試験した。HA活性が陽性であった尿嚢液を3つの手順のために用いた。1)DF1細胞に尿嚢液を感染させ、前記を感染から36時間後にPMV-8特異的抗血清を用いて間接免疫蛍光アッセイで試験した。2)APMV-8特異的ニワトリ血清(the National Central Veterinary Laboratory(Ames, Iowa, USA)から提供された)を用いヘマグルチニン阻害アッセイによってAPMV-8特異性について尿嚢液を試験した。3)レスキューウイルスの実体はAPMV-8特異的オリゴヌクレオチドを用いRT-PCRによって確認した。ウイルスcDNAが存在しないことは、反応時にRT工程を除くことによって立証した。3つのアッセイ全てで陽性であったサンプルをSPF発育鶏卵でさらに増殖させた。
ニワトリ起源以外の細胞でのAPMV-8の増殖
【0167】
以下の種々の種に由来する細胞を24ウェルの組織培養プレートで増殖させ、感染数0.01で感染を実施した:ハムスター(ベビーハムスター腎細胞、BHK-21細胞)、サル(Vero細胞、アフリカミドリザル起源の細胞株)、イヌ(Madin-Darbyイヌ腎細胞、MDCK)およびウズラ(ウズラ筋細胞株QM7)。前記細胞を感染から24時間後に氷冷エタノールで固定し、APMV-8感染SPFニワトリ由来のAPMV-8特異的抗血清を用いて間接免疫蛍光によりAPMV-8特異的タンパク質の存在について解析した。抗体の結合は、ヤギ抗ニワトリIgY特異的FITC結合物を用いることによって可視化した。非感染細胞を陰性コントロールとして用いた。APMV-8感染細胞でのみ緑色蛍光が観察された。このことは、APMV-8はニワトリ以外の種に由来する細胞に感染できることを示している。
APMV-8の複製はトリプシンの存在下で高められた。上記に記載したようにAPMV-8をMDCK細胞に感染させた。感染後、細胞を血清フリー培養液で洗浄し、トリプジン含有血清フリー培養液(濃度1μg/mL)または単なる血清フリー培養液を重層した。感染から24,48および96時間後に、細胞上清を取り出し、TCID50を上記のように間接免疫蛍光を用いてDF1細胞で決定した。得られたデータは、トリプシンの存在下では、この酵素が存在しないときよりも高い力価でAPMV-8が複製することを示した(図19B)。
【0168】
本実施例の結果は、APMV-1と同様に、APMV-8は種々の種の細胞を貫通し、その複製周期を開始できることを示した。したがって、APMV-8は多数の種のために適切なベクターである。
逆遺伝学系を用いた外来遺伝子発現組換えAPMV-8ウイルスの製造
【0169】
高病原性トリインフルエンザ(HPAI)のヘマグルチニン(HA)遺伝子を発現する組換えAPMV-8ウイルス(ウイルスベクター)の作製のために、H5およびH7サブタイプのHPAIのHA遺伝子コード配列を、完全長APMV-8を含むプラスミドの非必須領域、例えばAPMV-8ゲノムのM遺伝子とF遺伝子の間またはP遺伝子とM遺伝子の間に挿入する。この目的のために、ヘマグルチニンのオープンリーディングフレームのコード配列に、F遺伝子の必要な全ての調節配列をフランキングさせる(前記には遺伝子開始配列、5'-非コード配列、3'-非コード配列および遺伝子終止配列が含まれる)。前記構築物は、制限酵素切断部位、Bsu36IおよびNheIが、既存の完全長APMV-8ゲノム含有プラスミドへの適切なフラグメントの前記プラスミド構築物中のそれら制限部位の固有性に依存する連結に利用できるように構築される。得られたプラスミドは転写プラスミドと称され、完全長APMV-8ゲノムの非必須領域にヘマグルチニン遺伝子を含む。このアプローチを用いて、多様なウイルスおよび細菌抗原のコード配列をAPMV-8配列の骨格中でクローニングすることができる。APMV-8ゲノムに挿入し得る他の可能な抗原は、ニューカッスル病ウイルスのヒュージョンプロテイン、ニワトリ気管支炎ウイルスのSタンパク質、非H5および非H7ニワトリインフルエンザウイルス由来の他のヘマグルチニン遺伝子、ニワトリ貧血ウイルスの構造タンパク質遺伝子VP1、伝染性喉頭気管炎ウイルスの糖タンパク質遺伝子である。
【実施例7】
【0170】
動物のワクチン接種
実施例6に記載した組換えAPMV-8ウイルス(ウイルスベクター)を含む組成物またはワクチンの1回、2回投与、またはプライム-ブースト処置スケジュールにより動物にワクチン接種を施す。ニワトリ/トリに対しては種々の投与が実施される(例えばD18またはD19でのin ovo投与、1日齢での皮下投与または種々の月齢での粘膜投与(スプレー、飲料水、点眼))。用量は3から7log10(好ましくは4−6 log10 EID50)である。哺乳動物に対しては、粘膜経路(鼻内、眼内、経口)、非経口経路(筋肉内、皮下、注射器不使用経皮または皮内)が用いられる。用量は5から9log(好ましくは6−8 log)の範囲である。通常は2回投与が3−4週間の間隔で実施される。異種プライム-ブースト(例えばタンパク質によるブースト)もまた有益であろう。
【0171】
本組成物またはワクチンによって誘発される防御有効性は、動物での個々の病原体によるチャレンジについて判定される。防御効果は、臨床所見および/または組織、血液もしくは粘膜スワブ中の個々の病原体のウイルス負荷によって判定される。ワクチン接種動物の血液サンプルを種々の時期に採取し、血清学について試験する。前記の結果は、本発明の組成物またはワクチンは免疫原性であり、ワクチン接種動物の防御を提供することを示している。
【0172】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく多くの明白なその変形が可能であるので、したがって上記に規定した本発明は上記に示した個々の詳細に限定されないことは理解されよう。
【0173】
本明細書で引用または参照された全ての文書(“本明細書引用文書”)および本明細書引用文書で引用または参照された全ての文書は、本明細書または本明細書に参照により含まれる任意の文書に記載された製品についての製造業者の指示、説明、製品明細書およびプロダクトシートの一切とともに本明細書にこれにより含まれ、さらに本発明の実施に利用することができる。
【0174】
参考文献
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図12】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−1】
【図17−2】
【図17−3】
【図17−4】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25−1】
【図25−2】
【図25−3】
【図25−4】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34−1】
【図34−2】
【図35−1】
【図35−2】
【図35−3】
【図35−4】
【図35−5】
【公表番号】特表2013−502225(P2013−502225A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525730(P2012−525730)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046179
【国際公開番号】WO2011/022656
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【出願人】(500564035)ザ ユニヴァーシティ オブ ジョージア リサーチファウンデーション, インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046179
【国際公開番号】WO2011/022656
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【出願人】(500564035)ザ ユニヴァーシティ オブ ジョージア リサーチファウンデーション, インク. (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]