組換えノビラブドウイルスおよびその使用

【課題】サケ科魚類のいくつかの種における疫病の病原因子である伝染性造血器ウイルスを提供する。
【解決手段】ノビラブドウイルスのゲノムの遺伝子間領域のうちの少なくとも一つに挿入された一つ以上の付加的な転写単位を有する組換えノビラブドウイルス及び前記組換えノビラブドウイルスの獲得を可能にする組換えDNA構築物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えタンパク質を生産するため、または魚もしくは高等脊椎動物において有用なワクチンを生産するための、遺伝子ベクターとしてのノビラブドウイルスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ノビラブドウイルスは、ラブドウイルス科のマイナス鎖RNAウイルスである。
【0003】
ノビラブドウイルス属は、水生動物、特に魚にとってのさまざまな病原性種を含む。
【0004】
ノビラブドウイルスゲノムの構造は、哺乳類ラブドウイルスの構造と類似しているが、現在のところ機能が未知のままであるNV(“non−virion”(「非ビリオン」)の略)タンパク質と呼ばれる非構造タンパク質をコードする付加的な遺伝子が存在するという点でそれと異なっている。
【0005】
ノビラブドウイルスゲノムは六つの遺伝子を含み、その構成は図式的に
3’−N−P−M−G−NV−L−5’
と表すことができる。
なお式中、NはウイルスRNAと会合した核タンパク質をコードする遺伝子を表し、Pはウイルスポリメラーゼと会合したリンタンパク質をコードする遺伝子を表し、Mはマトリクスタンパク質をコードする遺伝子を表し、Gはエンベロープ糖タンパク質Gをコードする遺伝子を表し、NVはNVタンパク質をコードする遺伝子を表し、LはRNA依存性ウイルスRNAポリメラーゼをコードする遺伝子を表す。
【0006】
これらの遺伝子は、遺伝子間領域により分離されており、当該遺伝子間領域の各々は、遺伝子間の非転写ジヌクレオチドにより分離された、個々のmRNAへの遺伝子の転写を可能にする、転写終結/ポリアデニル化シグナルおよび転写開始シグナルを含んでいる。
【0007】
当該属の基準種は、サケ科魚類のいくつかの種、主としてマスの当歳魚における重大な疾病の病原因子である伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)である。当該属におけるその他の種としては、ヒラメラブドウイルス(HRV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)およびスネークヘッドラブドウイルス(SKRV)が含まれる。IHNVの全ゲノム配列は、GenBankにおいてL40883という登録番号で入手可能であり、VHSVの全ゲノム配列は、GenBankにおいてY18263という登録番号で入手可能であり、HRVの全ゲノム配列は、GenBankにおいてAF104985という登録番号で入手可能であり、SKRVの全ゲノム配列は、GenBankにおいてAF147498という登録番号で入手可能である。
【0008】
組換えノビラブドウイルスは、アンチゲノム相補DNA(アンチゲノムcDNA)、すなわちウイルスゲノムのプラスセンスコピーと、N、PおよびLウイルスタンパク質をコードするDNA分子とで宿主細胞を同時トランスフェクションすること(BIACCHESIら、J Virol、第74号、11247〜53頁、2000年)によって、逆遺伝学によって得ることができ、そのゲノムを修飾する。
【0009】
このアプローチは同様に、ノビラブドウイルスゲノムに対する異なる修飾を可能にした。例えば、IHNウイルスのNV遺伝子を欠失させ外来遺伝子で置換することができることが示されている(上記で引用したBIACCHESIら、2000年;THOULOUZEら、J Virol、第78号、4098〜107頁、2004年;PCT国際公開第03/097090号パンフレット)。同様に、IHNVの主要な構造タンパク質(MおよびG)をVHSVのもので置換することが可能であることも示されている(BIACCHESIら、J Virol、第76号、2881〜9頁、2002年)。
【0010】
ノビラブドウイルス内に付加的な遺伝子を挿入することも同様に試みられている(BIACCHESI、博士論文:“GENERATION DE RHABDOVIRUS AQUAIQUES RECOMBINANTS PAR GENETIQUE INVERSE”(「逆遺伝学による組換え水性ラブドウイルスの生成」)、パリ第XI大学オルセー校、2002年4月5日)。ウイルスのLポリメラーゼにより認識される転写終結/ポリアデニル化シグナルおよび転写開始シグナルに挟まれた外来遺伝子(ニジマスのIL−1−βをコードする)を含むDNA構築物が、IHNVのM遺伝子とG遺伝子との間の遺伝子間領域内で、IHNVのcDNA内に挿入された。より具体的には、この遺伝子は、MのORFの終りとM遺伝子の転写終結シグナルとの間にある、自然に存在するEagI制限部位の中に導入されたことから、この構築物は、IHNVのM遺伝子の予測された転写終結/ポリアデニル化部位(CCAAGACAGAAAAAAA、配列番号2)とそれに続く遺伝子間の非転写ジヌクレオチドTGおよび転写開始配列GCACとから成る配列(CCAAGACAGAAAAAAATGGCAC、配列番号1)を含み、前記配列の直後には、5’側でSpeI制限部位に、かつ3’側でSmaI制限部位に挟まれた、IL−1−βのORFが続いていた。
【0011】
かくして得られた組換えウイルス(IHNV−IL−1)は、細胞培養物中で正常に増殖することができ、野生型IHNVと同程度の病原性を幼ニジマスにおいて示した。しかしながら、感染した細胞内ではIL−1−βのmRNAのみが検出され、IL−1−βタンパク質は検出されなかった。一方、同じ転写開始シグナルおよび同じ転写終結/ポリアデニル化シグナルを伴う緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を含む類似の組換えIHNVが、感染細胞内でGFPを発現することができた(BREMONT、Current Topics in Microbiology and Immunology、第292号:119〜141頁、2005年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明者らは今回、BIACCHESIまたはBREMONTによって開示された転写開始配列GCACが配列GCACTTTTGTGC(配列番号3)により置換された場合に、付加的な遺伝子はその性質とは無関係に、転写されるのみならず翻訳もされ、広範囲の外来タンパク質の発現を可能にするということを発見した。
【0013】
かくして、本発明は、宿主ノビラブドウイルスのゲノムの遺伝子間領域のうちの少なくとも一つに挿入された一つ以上の付加的な転写単位を有する組換えノビラブドウイルスを提供する。本発明は、同様に、前記組換えノビラブドウイルスの獲得を可能にする組換えDNA構築物をも提供する。
【0014】
(本書で「シストロン」とも呼称されている)「転写単位」は、本書では、転写開始シグナルと、それに続く、目的のタンパク質をコードするORFおよび転写終結/ポリアデニル化シグナルとを含むDNA構築物として定義づけされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
a) ノビラブドウイルス遺伝子の転写終結/ポリアデニル化配列を含む領域、
b) ノビラブドウイルス遺伝子の転写開始配列を含む領域、
c) 目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む領域
を含む組換えDNA構築物であって、
前記領域a)の後または前記領域b)の前にノビラブドウイルスの遺伝子間の非転写ジヌクレオチドがある、組換えDNA構築物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
領域a)の終結/ポリアデニル化配列および領域b)の開始配列は、ノビラブドウイルスの一つの同じ遺伝子または二つの異なる遺伝子から誘導され得る。好ましくは、これらは、該構築物を挿入することが意図されているノビラブドウイルスの一つまたは二つの遺伝子から誘導される。
【0017】
遺伝子間の非転写ジヌクレオチドは、好ましくは、TGおよびCGの中から選択される。
【0018】
好ましくは、本発明の対象は、
a) ノビラブドウイルスのM遺伝子に由来する転写終結/ポリアデニル化配列を含み、VHHAGAYAGAAAAAAA(配列番号4)という配列により定義される(A、T、G、V、HおよびYは、IUPACヌクレオチドコードにおけるそれらの通常の意味を有している)領域、
b) ノビラブドウイルスのG遺伝子に由来する転写開始配列を含み、GCACDWKWGTGY(配列番号5)という配列により定義される(A、T、G、C、D、W、KおよびYは、IUPACヌクレオチドコードにおけるそれらの通常の意味を有している)領域、
c) 目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む領域、
を含む組換えDNA構築物であって、前記領域a)の後および/または前記領域b)の前にジヌクレオチドTGがある組換えDNA構築物である。
【0019】
好ましい実施形態に従うと、領域a)の終結/ポリアデニル化配列および領域b)の開始配列は、構築物を挿入することが意図されているノビラブドウイルスに由来しており、好ましくは、それぞれ前記ノビラブドウイルスのM遺伝子およびG遺伝子に由来している。
【0020】
例えば、IHNV内に構築物を挿入することが意図されている場合、終結/ポリアデニル化配列は、CCAAGACAGAAAAAAA(配列番号2)であり、転写開始配列はGCACTTTTGTGC(配列番号3)である。
【0021】
同様に、VHSV内に構築物を挿入することが意図されている場合、終結/ポリアデニル化配列はATTAGATAGAAAAAAA(配列番号6)であり、また転写開始配列はGCACATTTGTGT(配列番号7)である。HRV内に構築物を挿入することが意図されている場合、終結/ポリアデニル化配列はATCAGATAGAAAAAAA(配列番号8)であり、転写開始配列はGCACATTTGTGT(配列番号7)である。SKRV内に構築物を挿入することが意図されている場合、終結/ポリアデニル化配列はGAAAGACAGAAAAAAA(配列番号9)であり、また転写開始配列はGCACGAGAGTGC(配列番号10)である。
【0022】
領域c)においては、目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、任意には、ノビラブドウイルスの構造タンパク質(すなわちN、P、MまたはG)、好ましくはタンパク質Nをコードするオープンリーディングフレームに融合されてよい。該融合は、ノビラブドウイルス粒子内への目的のポリペプチドの組み込みを可能にする。好ましくは、目的のポリペプチドのN末端は、前記ノビラブドウイルスの構造タンパク質のC末端に融合される。
【0023】
ただし、本発明のノビラブドウイルス内で発現する目的のタンパク質が、エンベロープを有するウイルスの膜糖タンパク質といったような膜タンパク質である場合、それをノビラブドウイルスの構造タンパク質に融合することなく、ウイルス粒子内に組み込むことができる。
【0024】
DNA構築物における領域a)、b)およびc)の順序は、宿主ノビラブドウイルスの遺伝子間領域内の、前記構築物を挿入しようとしている位置により左右される。
【0025】
構築物を内在性ORFの末端と、対応する内在性遺伝子の転写終結/ポリアデニル化シグナルとの間に挿入すべきである場合には、この順序はa−b−cとなる。この場合、内在性遺伝子の転写は構築物の領域a)の終結/ポリアデニル化配列において終結され、目的のタンパク質をコードするORFの転写は、構築物の領域b)の開始配列で開始され、内在性遺伝子の内在性終結/ポリアデニル化シグナルにおいて終結される。
【0026】
構築物を内在性遺伝子の転写開始シグナルと開始コドンとの間に挿入すべきである場合には、順序はc−a−bとなる。この場合、目的のタンパク質をコードするORFの転写は、内在性遺伝子の開始シグナルにおいて開始され、領域a)の終結/ポリアデニル化配列において終結され、内在性遺伝子の転写は、構築物の領域b)の開始配列で開始される。
【0027】
構築物を、第一の内在性遺伝子の転写終結/ポリアデニル化シグナルと第二の内在性遺伝子の転写開始シグナルとの間に挿入すべきである場合には、順序はb−c−aとなる。この場合、目的のタンパク質をコードするORFの転写は、領域b)の開始配列において開始され、構築物の領域a)の終結/ポリアデニル化配列により終結される。
【0028】
本発明はまた、宿主ノビラブドウイルスの第一の内在性ORFの停止コドンと第二の内在性ORFの開始コドンとの間に含まれたアンチゲノムcDNAの一部分の中に挿入された本発明の一つ以上の組換えDNA構築物を含むことを特徴とする、ノビラブドウイルスのゲノムのアンチゲノムcDNAをも提供している。
【0029】
好ましい実施形態に従うと、前記アンチゲノムcDNAは、第一の内在性ORFの停止コドンと第二の内在性ORFの開始コドンとの間に含まれた前記cDNAの一部分の中に挿入された本発明の二つの構築物を含む。さらにもう一つの好ましい実施形態に従うと、前記アンチゲノムcDNAは、第一の内在性ORFの停止コドンと第二の内在性ORFの開始コドンとの間に含まれた前記cDNAの一部分の中に挿入された本発明の三つの構築物を含む。
【0030】
好ましくは、第一の内在性ORFはMのORFであり、第二の内在性ORFはGのORFである。
【0031】
本発明は同様に、本発明のアンチゲノムDNAに相補的なゲノムRNAを含む組換えノビラブドウイルスをも提供する。
【0032】
本発明は同様に、培養中の脊椎動物の細胞(好ましくは魚の細胞)中で目的のタンパク質を生産するため、および/またはワクチンを得るため、宿主ノビラブドウイルスのゲノムの遺伝子間領域のうちの少なくとも一つの中に挿入された一つ以上の付加的な転写単位を有する組換えノビラブドウイルスの使用にも関する。
【0033】
発明者らは、一つの構築物を含む場合、本発明のノビラブドウイルスが培養中の魚の細胞の中で正常に増殖しそれらの病原性能力を保つことができるということを発見した。第二の構築物が付加された場合、細胞培養物中で増殖する能力は保たれる一方で、病原性は減少する。第三の構築物の付加は、細胞培養物中で増殖する能力に対する有意な効果を有さない。標準的には、一つ、二つまたは三つの構築物を含む本発明の組換えノビラブドウイルスは、10PFU/ml超の力価で細胞培養物中で生産され得る。その一方で、三つの構築物を含む本発明の組換えノビラブドウイルスは、病原性が著しく低減している。
【0034】
培養中の細胞内での目的のタンパク質の生産のためには、一つ以上の構築物、好ましくは二つまたは三つの構築物を含むノビラブドウイルスを使用することができる。
【0035】
二つ以上の構築物を有する本発明のノビラブドウイルスの使用は、例えば一つの同じ酵素、または活性タンパク質の不活性前駆体、および前記前駆体を活性形態に変換することのできる第二のタンパク質のサブユニットといった、複数のポリペプチドを同時に発現させることを望む場合に特に有利である。ワクチンの開発においては、一部の防御エピトープは、二つ以上のポリペプチドが同時に発現した場合にのみ形成される。本発明のノビラブドウイルスを使用することにより、かかるポリペプチドを発現させて防御エピトープを形成させることが可能となる。
【0036】
さらに、上記で開示した通り、発現したタンパク質をウイルス粒子内に組み込むことができるという事実は、ワクチンの生産にとって特に有利である。
【0037】
三つ以上の構築物を含む本発明のノビラブドウイルスを、魚のワクチン接種、例えばIHNVおよびVHSVの場合にはサケ科魚類のワクチン接種のための、弱毒化生ワクチンとして使用することができる。それらは有利には浴療法によって、すなわち、免疫化すべき動物の入った繁殖槽内の水に単にワクチンを添加することによって、投与され得る。
【0038】
代替的には、組換えノビラブドウイルスまたは当該ウイルスを生産する細胞を魚において不活化ワクチンとして使用することができる。
【0039】
本発明の組換えノビラブドウイルス、特にIHNVおよびVHSVといったような低温で複製するものはまた、トリおよび哺乳動物といったような高等脊椎動物のワクチン接種のための非複製型抗原送達系としても使用可能である。発明者らは、外来抗原を発現する本発明の組換えIHNVが哺乳動物の体内に注射された場合、前記ウイルスは前記哺乳動物の体内で複製することが全くできず、その一方で、付加的なアジュバントが全くない状態で、ウイルス粒子内に組み込まれた外来抗原に対して強い免疫応答が発生するということを実際に観察した。
【0040】
発明者らはまた、IHNVおよびVHSVといったような低温(14〜20℃)で複製するノビラブドウイルスが、成長のために少なくとも25〜30℃の温度を一般に必要とする大腸菌、バキュロウイルス、酵母菌といったような従来の発現宿主の中で生産が困難である熱感受性タンパク質の生産に特に適しているということも発見した。これらは、例えばワクチンの構成成分として有用である免疫防御性タンパク質をインビトロで生産するために特に有利である。これらのタンパク質の多く、特に魚類の病原体に由来するものは、大部分の細菌、酵母菌、真核生物、およびバキュロウイルスに基づいた発現系の標準温度では発現され得ないか、または正しい構造へと折畳みされ得ない。
【0041】
かくして、本発明の目的は、低温の発現系においてインビトロで目的の抗原タンパク質を発現させるための、前記タンパク質をコードする異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSVの使用にある。
【0042】
本発明は、かくして、目的の抗原タンパク質をコードする少なくとも一つの異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSV、および前記組換えウイルスに感染しやすくかつ低温で成長し得る脊椎動物細胞を含むことを特徴とする、低温のインビトロでの発現系を提供する。
【0043】
本発明は同様に、目的の抗原タンパク質をインビトロで発現させる方法であって、
− 目的の抗原タンパク質をコードする少なくとも一つの異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSVを用いて、IHNVまたはVHSVに感染しやすくかつ低温で成長し得る脊椎動物細胞を感染させる段階、
− 約14℃〜約20℃の温度で前記細胞を培養する段階、
− 前記細胞により生産された目的の抗原タンパク質を回収する段階
を含む該方法をも提供する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態に従うと、前記脊椎動物細胞は、例えばEPC細胞といった魚細胞である。
【0045】
宿主ノビラブドウイルスの内在性配列の代わりに異種配列が挿入されている組換えIHNVまたはVHSVを使用することが可能である。しかしながら、好ましくは、宿主ノビラブドウイルスの内在性配列に加えて異種配列が挿入されている組換えIHNVまたはVHSVが使用される。さらに一層好ましくは、異種配列が、宿主ノビラブドウイルスの遺伝子間領域の一つに挿入された付加的な転写単位の一部分である、本発明の組換えノビラブドウイルスが使用される。好ましいノビラブドウイルスはIHNVである。
【0046】
本発明は、本発明に従った組換えノビラブドウイルスの構築および使用の非制限的な実施例に言及している以下のさらなる記載から、より完全に理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】異なる構築物を概略的に表す図である。
【図2】pIHN−LUC構築物を示す図である。
【図3】EPC細胞培養物におけるさまざまな組換えウイルスのウイルス力価の例を示す図である。
【図4】睡眠病ウイルスの構造タンパク質を発現する組換えIHNVを示す図である。
【図5】伝染性サケ貧血ウイルス(ISAV)の血球凝集素(HA)糖タンパク質を発現する組換えIHNVを示す図である。
【図6】レポータータンパク質に融合されたウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)のG糖タンパク質を発現する組換えIHNVを示す図である。
【図7】IHNV−VP2IBDV感染細胞の細胞質におけるVP2タンパク質の特異的標識を示す図である。
【図8】IHNV−F5ISAV感染細胞におけるISAVのFタンパク質の発現を示す図である。
【図9】ISAVのHAおよびIPNVのVP2を発現する組換えIHNVを示す図である。
【図10】組換えIHNVウイルス粒子内への外来膜糖タンパク質の組み込みを示す図である。
【図11】EGFPのN末端部分と融合した状態でタンパク質N、G、MまたはNVを発現する組換えIHNVを示す図である。
【図12】ルシフェラーゼのN末端部分と融合した状態でタンパク質N、G、MまたはNVを発現する組換えIHNVを示す図である。
【図13】生きたマスにおける目的のタンパク質の発現を示す図である。
【図14】一つまたは三つの付加的なシストロンを含む組換えノビラブドウイルスの病原性を示す図である。
【図15】魚における本発明の組換えノビラブトウイルスのワクチン特性を示す図である。
【図16】さまざまな種に由来する培養細胞物における組換えIHNVの複製を示す図である。
【図17】ISAVのHA糖タンパク質に対するポリクローナル抗体および組換えIHNV 3C1を接種したマウスの血清でのウェスタンブロット法の結果を示す図である。
【実施例】
【0048】
実施例1:M−G遺伝子間領域内に一つ、二つまたは三つの付加的なシストロンを含む組換えノビラブドウイルスの構築
図1は、以下で記載される、異なる構築物を概略的に表している。
【0049】
図1の凡例
A:IHNVの完全長cDNAゲノムを含む最初のpIHV構築物である。以下のエレメントは、この構築物では表示され、その他の構築物を示す概略図の中では省略される。T7prom=T7RNAポリメラーゼプロモーター、δ=デルタ肝炎ウイルスのリボザイム配列、T7t=T7RNAポリメラーゼターミネーター配列。
B:pIHN−LUC
C:pIHN−X
D:pIHN−LUC−ΔG
E:EagIでのpIHN−Xの制限を通して生成されるインサート
F:pIHN−X−LUC−ΔG
G:SpeI/NsiIによるpIHN−LUCの消化を通して生成されるインサート
H:pIHN−X−LUC
I:pIHN−Yの消化を通して生成されるインサートEagI/EagI
J:pIHN−X−Y−LUC
【0050】
組換えcDNAの構築
構築は、BIACCHESIら(2000年、上述)により記載されているプラスミドpIHNVを用いて実施した。このプラスミドは、pBlueScript SKベクター(Stratagene)中で、T7ファージRNAポリメラーゼプロモーターの下流側そしてδ肝炎ウイルスのリボザイム配列およびT7ファージRNAポリメラーゼ転写ターミネーターの上流側でクローニングされた、IHNウイルスゲノムの完全長cDNAを含む。
【0051】
pIHNVのcDNAゲノムは、M−G遺伝子間領域内に一つのEagI制限部位を含む。この制限部位は、図1で図式化されているように、目的の遺伝子をコードする付加的なシストロンを挿入するために使用される。目的の遺伝子の最初および終りでは、SpeIおよびSmaI制限酵素部位がそれぞれに導入されており、別の遺伝子による目的の遺伝子の置換を可能にしている。プラスミドpIHNVを図1のAに図式化する。
【0052】
一つの付加的シストロンを用いた組換えアンチゲノムcDNAの構築
pIHN−LUC(図1のB):
ウミシイタケルシフェラーゼ発現カセット遺伝子をpIHNVのEagI部位に挿入した結果、pIHN−LUCが得られる。
【0053】
これは、以下のように得られる。
ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を、以下のオリゴヌクレオチドを用いてpBindベクター(Promega GenBank、登録番号AF264722)からPCR増幅させた。
【0054】
EagI SpeI RnLuc:
ggggCGGCCGCCAAGACAGAAAAAAATGGCACTTTTGTGCACTAGTATGACTTCGAAAGTTTATGATCCA(配列番号11)
このオリゴヌクレオチドは、EagI制限部位(CGGCCG)と、それに続くM遺伝子の転写終結/ポリアデニル化配列(CCAAGACAGAAAAAAA、配列番号2)、ジヌクレオチドTG、およびG遺伝子の転写開始配列(GCACTTTTGTGC、配列番号3)と、それに続くウミシイタケルシフェラーゼの最後の24個のヌクレオチドとを含む。
【0055】
EagI SmaI RnLuc:
ggggCGGCCGCCCGGGTTATTGTTCATTTTTGAGAACTCG(配列番号12)
このオリゴヌクレオチドはEagI制限部位(CGGCCG)を含む。
【0056】
PCR産物をEagI酵素で消化し、pIHNVのEagI部位に挿入し、図2に示すpIHN−LUC構築物を得た。
【0057】
最終的なプラスミドを配列決定して、挿入されたEagIフラグメントの方向および配列を確認した。
【0058】
これらのプラスミドを全て配列決定して、挿入されたフラグメントの方向および配列を確認した。
【0059】
pIHN−XまたはpIHN−Z(図1のC)
これらの構築物は、その他のあらゆる目的の遺伝子でルシフェラーゼ遺伝子を置換した結果として得られる(XまたはZにより例証)。これらは、一方の側にSpeI部位を(またはNheIといったような適合性を有する制限部位)、そして他方の側にSmaI部位(または適合性を有する平滑末端制限部位)を含む一組のプライマーセットを用いた目的の遺伝子のPCR増幅によって得られる。
【0060】
pIHN−Xでは、ルシフェラーゼのオープンリーディングフレームを含むSpeI/SmaIフラグメントは、目的の遺伝子Xを含む、適合性を有するNheI/EcoRVのPCRフラグメントで置換される。結果として得られたpIHN−X構築物は、SpeIおよびSmaI制限部位を喪失している。
【0061】
同様にして、pIHN−Z構築物は、Z遺伝子を含むSpeI/SmaIのPCRフラグメントによりLuc遺伝子を含むSpeI/SmaIフラグメントを置換することによって、pIHN−Lucから得られる。この構築物をpIHN−Zと呼ぶ。
【0062】
二つの付加的なシストロンを用いた組換えアンチゲノムcDNAの構築
pIHN−X−LUC(図1のD〜1H)
SmaI/AgeIフラグメントがpIHN−LUCプラスミドから除去され、結果として二つのEagI部位のうちの一つが削除され、G遺伝子が欠失する。このようにして得られた中間構築物をpIHN−LUC−ΔGと命名する(図1のD)。
【0063】
X発現カセットは、pIHN−XのEagI制限酵素消化によって得られる(図1のE)。
【0064】
このインサートはEagIで消化されたpIHN−LUC−ΔGとライゲーションされ、結果として構築物pIHN−X−LUC−ΔGをもたらす(図1のF)。ちなみに、pIHN−X−LUC−ΔG構築物をもたらした二つのEagIフラグメントのライゲーションの後、XとLUC発現単位との間に一つのNotI制限部位が生成される。
【0065】
最後に、pIHN−X−LUC−ΔG構築物のSpeI/NsiIフラグメントは、SpeI/NsiIでの消化により、pIHN−LUC構築物から得られたG遺伝子を含む対応するフラグメントと置換される(図1のG)。結果として得られる構築物をpIHN−X−LUCと呼ぶ(図1のH)。
【0066】
三つの付加的なシストロンを用いた組換えアンチゲノムcDNAの構築
pIHN−X−Y−LUC(図1のIおよび図1のJ)
プラスミドpIHN−Yは、pIHN−Xについて記載したようにして得られる。
【0067】
pIHN−YをEagIで消化し、インサートEagI/EagIを回収し(図1のI)、NotIで予め消化されたpIHN−X−LUC内に挿入する。かくして得られた構築物をpIHN−X−Y−LUCと呼ぶ(図1のJ)。
【0068】
pIHN−X−Y−Z
この構築物は、pIHN−Zから回収したZ遺伝子を含むSpeI/SmaIフラグメントで、Luc遺伝子を含むpIHN−X−Y−LUCのSpeI/SmaIフラグメントを置換することにより得られる。
【0069】
組換えウイルスの生産
それぞれが、IHNの核タンパク質Nをコードする遺伝子、リンタンパク質Pをコードする遺伝子、およびRNA依存性RNAポリメラーゼLをコードする遺伝子を含む、三つの発現プラスミドを、BIACCHESIら(2000年、先に言及した刊行物)により記載されている通りに構築した。これらの構築物をそれぞれpT7−N、pT7−P、およびpT7−Lと呼ぶ。
【0070】
T7ファージRNAポリメラーゼを発現する組換えワクチニアウイルスで予め感染させたEPC(epithelioma papulosum cyprinid)細胞中に、リポフェクタミン(GIBCO−BRL)の存在下でのトランスフェクションにより、それぞれ0.25μg、0.2μg、および0.2μgの用量の三つのプラスミドpT7−N、pT7−P、およびpT7−Lと、1μgの用量のプラスミドpIHN−LUC、pIHN−X、またはZ、pIHN−X−LUC、pIHN−X−Y−LUC、またはpIHN−X−Y−Zのいずれかとを導入する(vTF7−3、FUERSTら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第92号、4477〜4481頁、1986年)。
【0071】
トランスフェクションの後、細胞を37℃で5時間インキュベートし、その後MEM培地(血清なし)で洗浄し、2%ウシ胎児血清を含有するMEM培地内にて14℃で7日間インキュベートする。細胞および上清を凍結/解凍し、10000rpmで10分間遠心分離することにより清澄させる。上清を1/10希釈で使用してEPC細胞層を感染させる。ウイルスは、感染から3〜4日後に上清内に生産される。
【0072】
一つ、二つまたは三つの付加的なシストロンを有する異なる組換えINHウイルスを生産した。これらをそれぞれ、下表1、2および3に列挙する。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

表の凡例
SDV:睡眠病ウイルス
ISAV:伝染性サケ貧血ウイルス
VHSV:ウイルス性出血性敗血症ウイルス
IBDV:伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、
IPNV:伝染性膵臓壊死症ウイルス
6KE1:SDVのE1糖タンパク質遺伝子
CAP:SDVカプシド遺伝子
E3E2:SDVのE2糖タンパク質遺伝子
EGFP:増強型緑色蛍光タンパク質
F5:ISAVのF遺伝子
VHSV:VHSVのG糖タンパク質遺伝子
HA:ISAVのHA遺伝子
IL1β:ニジマス由来のインターロイキン1
LUCFF:ホタルルシフェラーゼ LUCRR:ウミシイタケルシフェラーゼ
VP2:IPNVのVP2遺伝子
ΔG:IHNVのG遺伝子の欠失
【0076】
実施例2:一つ、二つまたは三つの付加的なシストロンを含む組換えノビラブドウイルスの細胞培養物における増殖
生産されたウイルスの各々のウイルスストックは、トランスフェクションから7日目に取った上清(上清PO)の(EPC)細胞培養物における連続継代により構成される。細胞は、清澄した上清の1/100希釈で感染させる。3回の継代後、ウイルスの細胞変性効果により細胞層が破壊された時点で、上清を取り出す。この破壊は、通常、感染後3〜6日目に発生する。ウイルスストックを次に、限界希釈法により滴定する。
【0077】
図3は、EPC細胞培養物におけるさまざまな組換えウイルスのウイルス力価の例を示す。全ての組換えウイルスについてのウイルス力価は同じ範囲(10PFU/ml)内にあるが、三つの付加的な発現単位を含む組換えウイルスは、野生型ウイルスに比べて緩慢な成長を示す。一般に、完全な細胞変性効果を得るために、野生型IHNVは三日を要するのに対し、EPC細胞では六日間を要する。
【0078】
実施例3:本発明の組換えノビラブドウイルスにおける目的のタンパク質の発現
目的のタンパク質を、表1、2および3に列挙する組換えIHNVを用いて生産した。
【0079】
睡眠病ウイルスの構造タンパク質を発現する組換えIHNV
EPC細胞を、0.02のMOI(感染多重度)(0.02PFU/細胞)で、野生型IHNV、IHNV−6KE1、IHNV−CapE3E2、またはIHNV−E3E26KE1で感染させる。細胞を感染から48時間後に溶解し、溶解物を、SDV−E1の糖タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法により分析する。
【0080】
結果を図4に示す。レーン1:IHNV−E3E26KE1、レーン2:IHNV−CapE3E2、レーン3:IHNV−6KE1、レーン4:野生型IHNV。
【0081】
伝染性サケ貧血ウイルス(ISAV)の血球凝集素(HA)糖タンパク質を発現する組換えIHNV
EPC細胞を、上述の通り、野生型IHNVまたはIHNV−HAISAVで感染させる。感染から2日後に細胞を溶解し、溶解物を抗HAモノクローナル抗体で免疫沈降させ、ISAV−HA糖タンパク質に対するポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法により分析する。
【0082】
結果を図5に示す。レーン1:野生型IHNV、レーン2:IHNV−ISAV HA。
【0083】
レポータータンパク質に融合されたウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)のG糖タンパク質を発現する組換えIHNV
EPC細胞を、上述の通り、野生型IHNV、IHNV−GVHSV、IHNV−GVHSV/LUCRR、IHNV−GVHSV/EGFP、または非感染の(偽感染)EPC細胞の上清で感染させる。細胞を感染から2日後に溶解し、溶解物を、VHSVのG糖タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法によって分析する。
【0084】
結果を図6に示す。レーン1:野生型IHNV、レーン2:IHNV−GVHSV、レーン3:IHNV−GVHSV/LUCRR、レーン4:IHNV−GVHSV/EGFP。観察されたバンドはそれぞれ、VHSVのG糖タンパク質ならびに融合タンパク質GVHSV/LUCRRおよびGVHSV/EGFPについて予想されたサイズと整合している。
【0085】
伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス(IBDV)のVP2を発現する組換えIHNV EPC細胞を、上述の通りに、IHNV−VP2IBDVまたは野生型IHNVで感染させる。感染から24時間後に、VP2 IBDVの発現を、間接的免疫蛍光法を用いて検出する。細胞を固定し、冷凍庫内で15分間、−20℃の50%メタノール50%アセトンの浴中で透過化させる。固定した細胞を次に、VP2 IBDVに対するモノクローナル抗体の1:400希釈物と共に一時間インキュベートし、洗浄段階の後、細胞を、フルオレセイン(FITC)と結合した抗マウスIgG抗体と共に45分間インキュベートする。非結合の抗体を除去するための洗浄段階の後、紫外線顕微鏡でフルオレセイン染色について細胞を検査し、コンピュータと連結したカメラ(株式会社ニコン)で撮影する。
【0086】
図7は、IHNV−VP2IBDV感染細胞の細胞質におけるVP2タンパク質の特異的標識を示す。
【0087】
IHNV感染細胞においてはいかなる蛍光も検出できない。
【0088】
ISAVのタンパク質Fを発現する組換えIHNV
上述の通りに、EPC細胞をIHNV−F5ISAで感染させる。感染から36時間後に、ISAVのタンパク質Fに対する抗体を用いて、上述の通り、間接的免疫蛍光のために細胞を処理する。
【0089】
図8に示した結果は、IHNV−F5ISAV感染細胞におけるISAVのFタンパク質の発現を実証している。
【0090】
ISAVのHAおよびIPNVのVP2を発現する組換えIHNV
上述の通りに、EPC細胞をIHNC−3C3HA/VP2/LUC)で感染させる。感染から36時間後に、細胞を、ISAVのタンパク質HAに対するポリクローナル抗体およびIPNVのタンパク質VP2に対するモノクローナル抗体を用いて、上述の通りに処理する。一次モノクローナル抗体は、フルオレセイン(FITC)と結合した抗マウスIgG抗体で明らかにし、タンパク質HAに対する一次ウサギポリクローナル抗体は、TRITCと結合した抗ウサギ抗体で明らかにする。
【0091】
結果を図9に示す。左パネル:抗IPNV VP2mAb、右パネル:抗ISAV HAポリクローナル抗体。
【0092】
この二重免疫蛍光染色は、IHNV−3C3感染細胞が、ISAVのHAおよびIPNVのVP2を同時に発現するということを示している。
【0093】
実施例4:組換えIHNVウイルス粒子内への外来膜糖タンパク質の組み込み
実施例3に記載した通り、EPC細胞をIHNV−F5ISAで感染させるか、または偽感染させる。
【0094】
感染から3日後に、無細胞上清を回収し、ショ糖勾配を用いて前記上清から組換えウイルスを精製する。精製したウイルスをSDS−PAGEゲルにロードする。ISAV−F糖タンパク質に対するポリクローナル抗体を用いて、ウェスタンブロット法によりウイルスタンパク質を分析する。ポジティブコントロールとしてISAV感染細胞を使用した。
【0095】
結果を図10に示す。これらの結果は、ISAVのFタンパク質が組換えIHNVウイルス粒子内に組み込まれていることを実証している。
【0096】
それぞれISAVのHAおよびVSHVのG糖タンパク質を用いて組み込みの分析を行ったところ、精製されたIHNV−ISAV HA組換えウイルスおよびIHNV−VSHV G組換えウイルスにおいて類似の結果が得られた。
【0097】
実施例5:組換えIHNVウイルス粒子内への外来非膜タンパク質の組み込み
IHNVウイルス粒子内に非膜タンパク質を物理的に組み込む可能性を、EGFPおよびウミシイタケルシフェラーゼという二つのレポーター非膜タンパク質を用いて評価する。
【0098】
EGFPまたはウミシイタケルシフェラーゼのN末端にC末端で融合された、IHNVウイルスの構造タンパク質(N、P、M、G)のいずれか一つまたは非構造タンパク質NVをコードするキメラ遺伝子を構築した。
【0099】
pIHNV LUCまたはpIHNV EGFP構築物の一つのSpeI制限部位内へのキメラ遺伝子の挿入を可能にするべく、各キメラ遺伝子の両端においてSpeI制限酵素部位を導入した。
【0100】
以下の構築物が得られた。pIHNV N−EGFP、pIHNV G−EGFP、pIHNV M−EGFP、またはpIHNV NV−EGFP pIHNV N−LUC、pIHNV G−LUC、pIHNV P−LUC、pIHNV M−LUC、またはpIHNV NV−LUC。
【0101】
組換えIHNVを、前述の実施例1において記載されている通りに、これらの構築物から得る。
【0102】
EGFPのN末端部分と融合した状態でタンパク質N、G、MまたはNVを発現する組換えIHNV
EPC細胞を、IHNV N−EGFP、IHNV G−EGFP、IHNV M−EGFP、またはIHNV NV−EGFPで感染させる。感染から24時間後に、細胞を、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を用いてEGFP融合タンパク質の発現について直接検査する。
【0103】
結果を図11に示す。A:IHNV N−EGFP、B:IHNV G−EGFP、C:IHNV M−EGFP、D:IHNV NV−EGFP。G−EGFPおよびM−EGFPは、GおよびMタンパク質の予想される局在化に従って、膜への局在を有し、一方NV−EGFPは、感染した細胞の核内に蓄積するように思われ、N−EGFPは細胞質性であることがわかる。
【0104】
ルシフェラーゼのN末端部分と融合した状態でタンパク質N、G、MまたはNVを発現する組換えIHNV
EPC細胞を、IHNV Luc、IHNV N−LUC、IHNV G−LUC、IHNV M−LUC、またはIHNV NV−LUCで感染させる。感染から4日後に、無細胞上清を回収し、組換えウイルスを、ショ糖勾配を用いて前記上清から精製する。各々の精製したウイルスの総タンパク質濃度を、比色色素結合分析(Bradford)を用いて測定した。その後、各々の精製したウイルス1マイクログラムをルシフェラーゼ活性について試験して、ウイルス粒子内へのルシフェラーゼの組み込みに最も適した構造タンパク質がどれであるかを決定した。
【0105】
図12の結果は、Nタンパク質に対する外来非膜タンパク質(この場合ルシフェラーゼ)の融合が、IHNVウイルス粒子内へのこのタンパク質の組み込みのための最良の戦略であることを示している。
【0106】
実施例5:生きたマスにおける目的のタンパク質の発現
以下の手順に従って、rIHNVLUCを用いた浴浸漬により、魚を感染させる。繁殖槽内で少量の水中に(平均体重1gの100匹の稚魚につき水3リットル)稚魚を入れる。5×10PFU/ml(PFU=プラーク形成単位)の最終濃度で槽の水にrIHNVLUCを添加する。2時間インキュベートした後、槽を満杯にし、水循環を再度確立する。
【0107】
感染から4日後に、ルシフェラーゼ基質(EnduRen(商標)Live Cell Substrate、Promega)を含む浴中に魚を浸漬させ、麻酔後にCCD画像化に付して、ルシフェラーゼ活性を評価する。
【0108】
結果を図13に示す。
A:i:rIHNVLUC感染魚、ルシフェラーゼ基質浴、1:偽感染した魚、ルシフェラーゼ基質を含まない浴、2:偽感染した魚、ルシフェラーゼ基質浴、3:rIHNV感染魚、ルシフェラーゼ基質浴、4:rIHNVLUC感染魚、ルシフェラーゼ基質を含まない浴。
B:ウミシイタケルシフェラーゼ基質セレンテラジンによるウミシイタケルシフェラーゼの酸化により生成される光の原画像。発光の強度は、生きたマスの体内におけるウミシイタケルシフェラーゼの発現レベルおよびIHNV−LUCウイルスの複製と直接的に相関する。
C:画像A上に重ね合わされた生物発光シグナル。
【0109】
実施例6:一つまたは三つの付加的なシストロンを含む組換えノビラブドウイルスの病原性
上記の実施例1で記載した通りに得られたノビラブドウイルスの病原性を、ニジマス(Oncorhyncus mykiss)における実験的感染によって評価する。
【0110】
試験対象のウイルスは、以下の通りである。
rIHNV: wt
rIHNV: 6K−E1 SDV
rIHNV: E3−E2 SDV
rIHNV: Cap−E3−E2 SDV
rIHNV: E3−E2−6K−E1 SDV
rIHNV: LUCRN
rIHNV: G−VSHV
rIHNV 3C1: HA/F5/LUCRN;
rIHNV 3C20: HA/ILB/LUCRN;
rIHNV 3C14: HA/VP2/Cap−E3−E2;
rIHNV 3C15: HA/VP2/E3−E26KE1。
【0111】
マスの稚魚を、上記の実施例5で記載した手順に従って、5×10PFU/mlのこれらのウイルスのいずれかを用いた浴療法により感染させ、死亡率を観察する。
【0112】
結果を図14に示す。
【0113】
これらの結果は、ウイルスの病原性が、付加的なシストロンの数と関連していることを示している。一つの付加的なシストロンが存在すると、大部分の場合において病原性のわずかなまたは中程度の減少が誘発されるにすぎないが、三つの付加的なシストロンが存在すると、病原活性の大幅な弱毒化が誘発される。
【0114】
実施例7:魚における本発明の組換えノビラブトウイルスのワクチン特性
三つの付加的なシストロンの存在により弱毒化した組換えウイルスをワクチン調製のために使用できるか否かを立証するために、病原性IHNVウイルス分離株32/87を用いたその後の攻撃誘発(challenge)に対し稚魚を防御するそれらの能力を試験した。
【0115】
第一の実験では、実施例6で記載した病原性試験と同じ条件の下における、rIHNV 3C1、3C20、3C14または3C15を用いた浴療法によって免疫化したマスの稚魚を、46日後の浴療法または2ヵ月後の腹腔内注射によって、IHNV32/87で攻撃誘発する。58日間にわたり、死亡率を観察する。
【0116】
浴療法による攻撃誘発:
IHNV 3C1、3C20、3C14または3C15を付与した後、または何も付与することなく、46日後に魚を浴療法によって10pfu/mlのIHNV32/87で感染させる。
【0117】
注射による攻撃誘発:
IHNV 3C1または偽免疫のいずれかを付与してから2ヵ月後に、ワクチン候補の組換え体である20匹のマス稚魚のバッチを、腹腔内注射により病原性IHNVウイルス分離株32/87(魚一匹あたり10pfu)で攻撃誘発する。
【0118】
結果を図15に示す。
【0119】
浴療法による攻撃誘発の場合には、IHNV 3C1、3C20、3C14または3C15で免疫化され攻撃誘発を受けたマスの100%、そしてIHNV 3C20で免疫化されたマスの98%がこの攻撃誘発後生存し、一方、偽免疫を受けたマスでは20%しか生存しない。
【0120】
注射による攻撃誘発の場合、IHNV 3C1で免疫化され攻撃誘発を受けたマスの100%が生存し、偽免疫を受けたマスでは6%しか生存しない。
【0121】
実施例8:哺乳動物種におけるワクチンベクターとしての組換えIHNV系の使用
さまざまな種に由来する培養細胞物における組換えIHNVの複製
EPC細胞ならびにさまざまな高等脊椎動物種由来の細胞(ヒト肺上皮細胞A549、ブタ腎細胞PK15、ウサギ腎細胞RK13、マウス線維芽細胞3T3、腸ニワトリ胚細胞CEV−I(ATCCCRL10495))を、高い感染多重度(5PFU/細胞)で組換えIHNV−LUCで感染させる。14℃および28℃で3日間細胞をインキュベートする。
【0122】
インキュベーション時間の終了時に、メーカーの手順に従って、発光測定装置およびRenilla Luciferase Assay System(ウミシイタケルシフェラーゼアッセイシステム)(Promega)を用いて、ルシフェラーゼ発現を測定する。
【0123】
結果を図16に示す。
【0124】
ルシフェラーゼ単位(RLU)でY軸に表す光強度は、細胞溶解物内のルシフェラーゼ濃度、ひいてはウイルス複製に比例している。
【0125】
非感染細胞において検出される発光は、ウミシイタケ基質セレンテラジンの非酵素酸化により生じるバックグラウンドの発光に対応する。
【0126】
これらの結果は、魚細胞EPCにおける複製と比べて、組換えIHNV−LUCの有意な複製が14℃で複数の細胞系において確かに生じているということを示している。しかしながら28℃では、EPC細胞を含む試験対象の細胞は、IHNV−LUCウイルスを複製することができない。
【0127】
マウスにおけるインビボでの組換えIHNVの投与
生きた哺乳動物におけるIHNVの複製を試験するために、大量の組換えIHNV−LUCウイルス(5・10pfu/マウス)をマウスに接種する。
【0128】
接種から28日後に、マウスの血清におけるルシフェラーゼ活性を確認する。いかなるルシフェラーゼ活性も検出されず、細胞培養において得られた結果が裏付けられる。
【0129】
かくして、IHNVは、実際に、高等脊椎動物において天然に不活性化されるウイルスである。
【0130】
第二の実験においては、15頭のマウスに組換えIHNV 3C1(HA/F5/LUC)(マウス1頭あたり精製されたウイルス1μg)を皮内接種し、5頭の対照マウスにはTNE緩衝液を与える。接種から4週間後に、接種を受けたマウス由来の血清を、精製されたIHNウイルスがコーティングされたプレートでのELISA試験を用いて、野生型IHNウイルスに対する抗体応答の存在について試験した。
【0131】
組換えIHNV 3C1を接種した15頭中15頭のマウスがIHNVについて血清反応陽性であり、対照群の5頭のマウスはいずれも血清反応陽性ではなかった。
【0132】
さらに、1/500に希釈した組換えIHNV 3C1を接種したマウスのうち1頭の血清を、ISAV感染細胞の溶解物、偽感染細胞の溶解物、および組換えIHNV−HAの全タンパク質抽出物に対してウェスタンブロット法において試験した。
【0133】
対照として、1/500に希釈したISAVのHA糖タンパク質に対するポリクローナル抗体を、同じ抗原に対しウェスタンブロット法において試験した。
【0134】
結果を図17に示す。
A:ISAVのHA糖タンパク質に対するポリクローナル抗体でのウェスタンブロット法、
B:組換えIHNV 3C1を接種したマウスの血清でのウェスタンブロット法。
【0135】
これらの結果は、接種したマウスの血清が、IHNV 3C1の異なるタンパク質に対する抗体を含み、特にISAウイルスのHA糖タンパク質に対する抗体を含むことを示している。
【0136】
かくしてIHNV系は、さまざまな病原体に対する哺乳類種のワクチン接種のための、天然の形態で安全に提示される高レベルの抗原を経済的に生産する可能性を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【特許文献1】PCT国際公開第03/097090号パンフレット
【非特許文献】
【0138】
【非特許文献1】BIACCHESIら、J Virol、第74号、11247〜53頁、2000年
【非特許文献2】THOULOUZEら、J Virol、第78号、4098〜107頁、2004年
【非特許文献3】BIACCHESIら、J Virol、第76号、2881〜9頁、2002年
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温の発現系においてインビトロで目的の抗原タンパク質を発現させるための、目的の抗原タンパク質をコードする異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSVの使用方法。
【請求項2】
目的の抗原タンパク質をコードする少なくとも一つの異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSV、および前記組換えウイルスに感染しやすくかつ低温で成長し得る脊椎動物細胞を含むことを特徴とする、低温のインビトロでの発現系。
【請求項3】
目的の抗原タンパク質をインビトロで発現させる方法であって、
− 目的の抗原タンパク質をコードする少なくとも一つの異種配列を含む組換えIHNVまたはVHSVを用いて、IHNVまたはVHSVに感染しやすくかつ低温で成長し得る脊椎動物細胞を感染させる段階、
− 約14℃〜約20℃の温度で前記細胞を培養する段階、
− 前記細胞により生産された目的の抗原タンパク質を回収する段階
を含む方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−55940(P2013−55940A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224795(P2012−224795)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【分割の表示】特願2009−514932(P2009−514932)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(507417628)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (4)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【Fターム(参考)】