説明

組換え伝染性非セグメント化陰性鎖RNAウイルス

【課題】組換えDNA技術により産生可能な、遺伝子操作による伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルス突然変異体を提供する。
【解決手段】前記突然変異体は、RVゲノムのORF、偽遺伝子領域又は非コード化領域に挿入及び/又は欠失を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子操作による伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルス突然変異体、及びこのような突然変異体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
狂犬病ウイルス(RV)は、ラブドウイルスファミリーの非セグメント化陰性鎖RNAウイルスの一例である。このファミリーに属する他の種は、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、伝染性造血壊死ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHS、Egtvedウイルス)、ウシ一過性熱ウイルス(BEFV)、及びsonchus yellow netウイルス(SYNV)である。
【0003】
ラブドウイルスファミリーの他に、パラミクソウイルス(例えばセンダイウイルス(SV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)2型及び3型、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、おたふくかぜウイルス(MUV)、はしかウイルス(MEV)並びにイヌジステンパーウイルス(CDV))やフィロウイルスに属するウイルス、及びファミリーに帰属しない数種のウイルス(例えばボルナ病ウイルス;BDV)も非セグメント化陰性鎖RNAゲノムを有する。
【0004】
種々のファミリーの非セグメント化陰性鎖RNAウイルスの全体的なゲノム構成は似通っている。特にパラミクソウイルスとラブドウイルスとの全体的なゲノム構成の相違はごく僅かである(Tordo等,Seminars in Virology :341−357,1992)。
【0005】
RVは全ての温血動物に感染し得、ほぼ全ての場合で発症した後に感染から死に至る。イヌ狂犬病は今でも世界の大部分で重大であり、世界中で年間に発生する推定75,000件のヒト狂犬病症例の大半が感染したイヌによるものである。ヨーロッパの多くの国々や、米国、カナダでは、野生生物狂犬病の重大性が増している。
【0006】
狂犬病の臨床的特性は大半の種で同様であるが、個人差が大きい。狂犬病動物にかまれた後の潜伏期間は通常14日から90日であるが、これよりも長くなることもある。1年以上の潜伏期間も報告されている。この疾病では、狂暴性及び緘黙性又は麻痺性の2種の臨床形態が確認されている。狂暴型では、動物は落ち着きがなく、神経質で攻撃的になり、ヒトへの恐怖感を全く喪失し、注意を引く何にでもかみつくためにしばしば危険である。動物はしばしば感情を抑制することができず、“狂水病”の症状が現れる。しばしば、唾液過多となり、光や音への反応が過剰になり、知覚過敏になる。脳炎が進行すると、狂暴性から麻痺に移行し、動物は緘黙型疾病全体で確認される同じ臨床的特徴を示す。末期になると、しばしば麻痺性発作、昏睡状態や呼吸停止が起こり、臨床的徴候が発生してから2〜7日後には死亡する。
【0007】
狂犬病ウイルスは、狂犬病動物にかまれて、場合によってはそのかすり傷から、又は狂犬病動物のウイルス含有唾液が傷口に入って、体内に侵入する。筋肉のかまれた部位でウイルスが複製し、その後末梢神経末端に侵入し、軸索細胞質のウイルスゲノムが中枢神経系に移動する。脊髄、次いで脳(特に大脳辺縁系)へのウイルスの侵入は、ニューロン機能不全の臨床的徴候と関連する。通常、中枢神経系の感染で狂暴的になるのとほぼ同時に、ビリオンが更に唾液腺の粘液分泌細胞の先端から放出され、高濃度で唾液に送達される。
【0008】
狂犬病の過程では常に、宿主の特異的な炎症性免疫応答は最小の刺激を受けるにすぎない。この最も妥当な理由は、筋肉や神経細胞では感染が非細胞変性であり、感染が神経系の免疫学的に分離された(sequestered)環境にかなり集中することである。
全てのラブドウイルスのようなRVビリオンは、2種の主要構造成分:(ヌクレオキャプシド又はリボ核タンパク質(RNP)コア及びRNPコアを包囲する二層膜形態のエンベロープ)からなる。全てのラブドウイルスの感染成分はRNPコアである。ゲノムRNAは陰性センスであるため、メッセンジャーとしては機能し得ないが、mRNA転写のために自身の内在性RNAポリメラーゼを必要とする。RNAゲノムは、2種の少量タンパク質、即ちRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)及びリンタンパク質(P)と組合わさったヌクレオキャプシド(N)タンパク質によってキャプシド内に被包されてRNPコアを形成する。膜成分は2種のタンパク質(トランスメンブラン糖タンパク質(G)及び膜の内側に位置する基質(M)タンパク質)を含んでいる。Gタンパク質はRVの細胞付着や膜融合を担い、更には、宿主免疫系の主標的である。
【0009】
転写中に、ゲノムは短いリーダーRNAとモノシストロニックでキャップ構造を有する5個のポリアデニル化mRNAとの逐次合成を指示する。複製中に、シストロン間の条件転写終結及び開始シグナルが、ウイルスポリメラーゼによって無視される。トランスクリプターゼ反応及びレプリカーゼ反応では共に、RNAゲノムと複合体形成したN−タンパク質の存在やL及びPタンパク質が必要である。RVゲノムの遺伝子順が決定され、図1に示すように3’−リーダー−N−P−M−G−L−5’である。転写直後にRVのmRNAの各々が翻訳される。複製中に2つの事象が逐次実施され、即ちまずゲノムと相補的な被包化完全陽性鎖RNAが産生され、次いで同様にN、L及びPタンパク質によって被包された完全陰性鎖RNAが産生される。最後に、作成及び発達(budding)プロセス中に新しく作成されたRNPコアがMタンパク質やGタンパク質と結合すると、完全に形成された伝染性RVビリオンが放出される。
【0010】
11.9kbゲノムRV RNAは、G遺伝子とL遺伝子との間に偽遺伝子領域(Ψ)が存在すること以外に、N、P、M、G及びLタンパク質をコードする5個の読み取り枠(ORF)を含んでいる(図1)。
【0011】
現存の非セグメント化陰性鎖RNAウイルスワクチンは、化学的に不活化したウイルスワクチン、又は細胞培養で何度も継代させて病原性を低減させた弱毒化ウイルス株を含む改変生ウイルスワクチンからなる。化学的に不活化した狂犬病ワクチンは例えば、Rabivac、Behringwerke(ヒト)、HDC、Rhone−Poulenc(ヒト)、Bayovac−LT、Bayer(動物)、Madivac、Hoechst(動物)、Epivax−LT、Pitman−Moore、Rabisin、Rhone−Merieuxである。前述の弱毒化RVウイルスの例は、ワクチン株SAD B19及びERAである。不活化ワクチンは一般に、ごく低レベルの免疫しか誘発しないので、繰り返し免疫する必要がある。更には、不活化処理で病原体の中和誘発抗原決定基が変化して、ワクチンの防御潜在能力が低下することがある。
【0012】
一般に、弱毒化生ウイルスワクチンは、しばしば体液反応及び細胞反応の両方に基づく免疫反応を誘起するので好ましい。しかしながら、細胞培養継代中は、非調整突然変異がウイルスゲノム内に導入されて、毒性や免疫性に関して不均一なウイルス粒子集団が得られ得る。細胞培養継代中の過剰弱毒化はこれらのワクチンでは問題となり得る。ワクチンが尚防御的でありながら毒性をもたないように微妙なバランスを図らなければならない。更には、このような従来の弱毒化生ウイルスワクチンが毒性を取り戻して、接種動物が発病し、病原体が他の動物に伝染する可能性があり得ることもよく知られている。
【0013】
更には、生ウイルスワクチン併用での問題は、抗原成分が相互に影響を受けて、1種以上の構成成分の潜在能力が低下することである。
【0014】
更には、現在投与されている生弱毒化又は不活化RVワクチンでは、特定動物がRVフィールドウイルスのキャリアーであるのか、それともその動物がワクチン接種を受けたのかを決定することが不可能である。従って、RVワクチンの接種を受けた動物と、フィールドウイルスに感染した動物とを区別して、毒性フィールドウイルスの伝染を抑制する適切な措置を図れることが重要であり得る。通常感染した宿主動物で抗体を産生するRVの(糖)タンパク質をコードする遺伝子に突然変異を導入することにより、例えば血清学的に同定可能なマーカーを導入することができる。
【0015】
例えば得られる突然変異体RNAが弱毒化するか又は外来タンパク質(例えば免疫マーカータンパク質又は病原体の抗原)のエピトープをコードする異種核酸配列を含むように、調節しながらRV RNAゲノム内に突然変異を導入することが望ましい。このために、DNAウイルスや陽性鎖RNAウイルスを用いた組換えDNA技術が既に広範に使用されている。組換えDNAウイルスの例は、アウジェスキーウイルス(PRV);アデノウイルス;ワクシニアウイルスである。組換え陽性鎖RNAウイルスの例は、アルファウイルス(Sindbis V.,Semliki forest virus:H.V.Huang,C.M.Rice,C.Xiong,S.Schlesinger(1989)RNA viruses as gene expression vectors.Virus Genes 3,85−91)、ピコルナウイルス(Polio virus,Hepatitis A−virus,Foot− and mouth−disease virus:J.W.Almond及びK.L.Burke(1990)Poliovirus as a vector for the presentation of foreign antigens.Semin.Virol.1,11−20)である。RNAウイルスゲノムの特異的(Directed)遺伝子操作は、特定のRNA依存性RNAポリメラーゼによって鋳型として受容される組換えRNAの産生能力に依存する。多数の標準的なDNA依存性RNAポリメラーゼ(例えばT7 RNAポリメラーゼ又は細胞RNAポリメラーゼII)によって産生され、ウイルスゲノムを模倣する転写体は、多数の陽性鎖RNAウイルスのポリメラーゼによって認識される。これにより、cDNA転写体から伝染性ウイルス又はレプリコンが回収され、組換えDNA技術を適用してこれらのゲノムを部位特異的に操作することができる。陽性鎖RNAウイルスのゲノムに対応するRNAはウイルスポリメラーゼの翻訳用mRNAとして機能し得るので、ゲノム類似体を細胞内に導入することにより感染サイクルが開始し得る。しかしながら、陰性鎖RNAウイルスのポリメラーゼの鋳型は専ら、RNP複合体である。更には、陽性鎖RNPウイルスとは対照的に、そのゲノム又は抗ゲノムRNAはmRNAとして機能し得ず、従って人工RNAの複製や転写に関与する全てのウイルスタンパク質はトランスで提供しなければならない。
【0016】
陰性鎖RNAウイルスのゲノムRNA類似体をセグメント化ゲノムでキャプシド内に被包して適切な鋳型を提供するための適切な系が最近Palese,P等によって開示されている(WO91/03552号)。インフルエンザウイルスゲノムセグメント由来のRNA転写体を精製タンパク質でキャプシド内にin vitro被包し、これをヘルパーウイルスと併用して細胞をトランスフェクトすることができる。しかしながら、非セグメント化ゲノムを有するウイルスであるRVではこのアプローチは成功しないことが知見された。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を含むRNAゲノムの主要部分が欠失しているVSV及びRVの短いモデルゲノムをプラスミドコード化タンパク質でキャプシド内に被包して発現させることができた(Pattnaik,A.K.等,Cell 69,1011−1020,1992;Conzelmann,K−K.及びM.Schnell,J.Virology 68,713−719,1994)。このアプローチは、任意にリポーター遺伝子インサートを含んでいるゲノム類似体とトランスフェクトしたプラスミドに由来する特定のウイルスタンパク質の両方を同時に発現して、欠陥ウイルス粒子を産生することからなった。Ballart等は、伝染性はしかウイルス、更には非セグメント化陰性鎖RNAウイルスのクローン化cDNAからの産生方法を記載している(The EMBO Journal,9:379−384(1990))。この方法に関するヨーロッパ特許は、前記文献の著者が発明者の一人として加わって出願されている。
【0017】
しかしながら、想定される全ての組換えウイルスは全く組換え体ではなく、単に最初に使用したワクチン株の後代ウイルスであることが別の研究によって判明したので、前記文献及び特許明細書は共に取り下げられている。
【0018】
従って、全ゲノムの操作を必要とする大きな非セグメント化ゲノムを含む伝染性組換え陰性鎖RNAウイルスの産生は今日まで成功していないと結論付けなければならない。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、組換えDNA技術により産生可能であり、RVゲノムのORF、偽遺伝子領域又は非コード化領域に挿入及び/又は欠失を含む、遺伝子操作による伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルス突然変異体を提供する。
【0020】
特に本発明は、パラミクソウイルスファミリー及びラブドウイルスファミリーの非セグメント化陰性鎖RNAウイルスを提供する。
【0021】
前述したように、非セグメント化陰性鎖RNAウイルスファミリー間のゲノム構成には大きな相同性が認められる。複製、作成、細胞付着又は細胞融合のプロセスでのコード化タンパク質の機能が似通っている場合、これらのタンパク質は更に“類似体”と称する。例えばあるファミリーの2種のタンパク質の機能が他のファミリーで1種のタンパク質に統合していることもある。例えば、一緒になってラブドウイルスの糖タンパク質Gと同じ機能を有するパラミクソウイルスのFタンパク質とHNタンパク質の場合がそうである。この場合、あるファミリーの2種のタンパク質は、他のファミリーの1種のタンパク質の類似体(analogons)とみなされる。
【0022】
対応するウイルスORF、偽遺伝子領域又は非コード化領域に適切な突然変異を取り込むことにより、1個以上の核酸残基の挿入や欠失をRVゲノムに導入することができる。この改変は、RV ORF又は親RVの偽遺伝子の遺伝子情報を変化させて、本発明の挿入又は欠失RV突然変異体を得ることである。
【0023】
1種以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換される突然変異、いわゆる置換は欠失と挿入の作用を組み合わせた結果であると考えられる。従って、この種の突然変異は更に、欠失及び(/又は)挿入という用語に含まれると考えられる。
【0024】
本明細書に記載する任意の突然変異が、得られるRV突然変異体が尚も伝染性で複製する、即ち突然変異体RVが感受性細胞に感染し得、その突然変異体RNAゲノムが自律的に複製や転写を行い得る、即ちRVのN、P及びLタンパク質の同時発現が不要であるように、適切なRV配列を変化させることからなることは明白である。
【0025】
たった1回感染して、複製し得る突然変異体RV(Vide infra)も本発明に含まれることは言うまでもない。
【0026】
種々のRV株のゲノム構成は同一である。ワクチン株SAD B19及び毒性株RVのヌクレオチド配列や推定上のアミノ酸配列の分析も決定されている(Conzelmann等,Virology 175,485−499,1990及びTordo等,Nucleic Acids Res.14,2671−2683,1986;Proc.Natl.Acad.Sci USA 83,3914−3918,1986;Virology 165,565−567,1988)。Conzelmann等の文献(1990(上掲))では、SAD B19株のウイルスゲノムが11,928ヌクレオチドを含み、5個のウイルスタンパク質N、P、M、G及びLの推定上のアミノ酸配列が、病原性PV株のものと非常に類似していることが確定している。同明細書ではRVの各ORF、偽遺伝子領域及び遺伝子間非コード化領域の位置が決定されており、RVのN、P、M、G及びL遺伝子のコード化領域はそれぞれ、位置71−1423、1514−2407、2496−3104、3317−4891、5414−11797に対応する。偽遺伝子領域(Ψ)は位置4961−5359に存在し、5個のシストロンを分かち、転写開始及び終結/ポリアデニル化シグナルを含む非コード化配列に隣接する遺伝子間領域は位置1483−1484;2476−2480;3285−3289;5360−5383に存在する。突然変異を導入するために本明細書で使用する親RV株のORF、偽遺伝子領域又は非コード化領域の番号付けやヌクレオチド配列は必ずしもSAD B19又はPV株のものと同一ではないが、前述したこれらの領域の特性は、任意のRV株のゲノム上での位置を正確に限定する。
【0027】
毒性親RV株からの弱毒化RVの産生方法は、ウイルスタンパク質をコードするORF内に挿入及び/又は欠失を導入して、例えば宿主細胞付着や膜融合のためのウイルスタンパク質の活性を改変する、例えば低減することである。RVについては、トランスメンブラン糖タンパク質Gのアミノ酸配列の変化がRVの病原性に有意に作用することが知られている。更には、弱毒化に関しても、基質(M)タンパク質の変化がGタンパク質のコンホーメーションに影響して、ウイルスを弱毒化し得る。従って、G又はMタンパク質をコードするORFに欠失又は挿入を含む突然変異体RVが本明細書で特に好ましい。
【0028】
僅か1回感染して、複製し得る伝染性複製狂犬病ウイルス突然変異体も本明細書に含まれる。その利点を以下で説明する。
【0029】
一般的な組換え生ワクチンは安全で効果的であることが証明されているが、このワクチンウイルスは、このウイルスに対する感受性がより高い他の動物に伝染する危険性がある。
【0030】
従って、政治的、倫理的、及び一部には科学的見地から、この分野で組換えウイルスを使用することは非常に不本意である。
【0031】
特に、遺伝学的に改変したワクチンウイルス、とりわけ外来遺伝子を発現する生ウイルスに関しての監視当局(regulatory authorities)による危険アセスメント研究では、環境でのこれらのウイルスの拡散の可能性の観点が非常に重要な観点である。
【0032】
従って、生ウイルスワクチンの全ての利点を示すが、接種する動物に限定され、拡散しない狂犬病ウイルスワクチンが非常に望ましいと理解することができる。
【0033】
このようなウイルスは例えば、M(基質)タンパク質をコードするM遺伝子の突然変異によって産生され得る。Mタンパク質はウイルスの作成で重要な役割を果たす一方、更に糖タンパク質Gの取り込みやコンホーメーションに影響を及ぼす。
【0034】
トランスでMタンパク質を産生する操作済細胞で、機能的Mタンパク質の欠失したM(−)突然変異体を増殖させると、天然宿主に対する伝染性に関して野生型ウイルスのように挙動する健全なウイルス粒子が産生される。しかしながらこれらの粒子はMタンパク質合成のための遺伝子情報が欠失しているために、宿主細胞に感染すると、新しい伝染性ウイルスを産生することができない。
【0035】
従って、前記ウイルス粒子は宿主に包含されたままである。このようなウイルスの利点を以下で説明する。
【0036】
従って、好ましい実施態様では、本発明は、基質タンパク質Mをコードする読み取り枠の挿入及び/又は欠失によって、非機能的基質タンパク質Mを産生するか又は基質タンパク質Mを存在させないことに関する。基質タンパク質Mが非機能的であるか又は不在であるM(−)突然変異体ウイルスを、基質タンパク質M類似体をトランスで提供する細胞で増殖させて、ウイルスの表現型を相補的なものにしなければならない。
【0037】
あるいは、例えばG遺伝子の突然変異によってこのようなウイルスを産生することができる。Gタンパク質は前述したように、感染や、細胞付着及び膜融合のプロセスで早期に重要な役割を果たす。
【0038】
糖タンパク質Gがひどく損なわれているか(又は不在である)ために、得られたG突然変異体ウイルスがもはや他の細胞に感染し得ない程度まで挿入及び/もしくは欠失により(又は全G遺伝子の欠失により)G遺伝子を突然変異させることが可能である。このような突然変異体はG−マイナス(G−)突然変異体とも称される。
【0039】
従って、G遺伝子のこの種の突然変異は単に毒性を低下させる前述の突然変異よりも困難である。実際のG−突然変異体は機能的糖タンパク質Gが欠失しているので、非感染性である。
【0040】
このようなG−突然変異体ウイルスをGタンパク質に対して相補性の組換え宿主細胞で増殖させると、表現型はG陽性であるが、遺伝子型がG陰性の後代ウイルスが分泌される。
【0041】
これらのウイルスは、G陽性ウイルスに比べて重要な利点を有する。一方では、これらのウイルスは、膜内にGタンパク質を有するために非相補性宿主細胞に感染し得る。感染した細胞では、G突然変異体ウイルスは野生型ウイルスとして複製する。これは、組換えウイルス内にクローニングされる異種遺伝子を含む全ウイルスゲノムが増殖し、コードされたゲノム産物が野生型ウイルスと同様に発現、処理されるという利点を有する。
【0042】
しかしながら他方では、正常宿主細胞はGタンパク質を合成せず、突然変異体ウイルス自体の遺伝型がG陰性であるために、伝染性後代ウイルスを宿主で産生することはできない。
【0043】
従って、G突然変異体ウイルスに感染した動物は環境で伝染性ウイルスを拡散しない。これによりG突然変異体(及び前述のM(−)突然変異体)はワクチン基材として非常に安全なものとなる。
【0044】
あるいは、本発明のG−突然変異体は、細胞付着である役割を果たすことが知られている他の非狂犬病糖タンパク質と表現型が相補的になり得る。
【0045】
ウイルス膜から環境内に突出する糖タンパク質が細胞特異性を決定することが知られているので、全く相補性の(right complementing)糖タンパク質を選択することにより、組換え伝染性狂犬病ウイルス突然変異体の標的を、狂犬病の天然宿主細胞以外の特異細胞とすることが可能である。
【0046】
これらの糖タンパク質は、糖タンパク質Gのように細胞特異的付着に関与することを示すために“糖タンパク質G類似体”とも称される。
【0047】
ウイルスによっては、細胞特異性を決定する“糖タンパク質G類似体”が糖タンパク質ではなく、非グリコシル化タンパク質であることに留意すべきである。これらのタンパク質も本発明の範囲内であることは明白である。
【0048】
従って、本発明の他の好ましい実施態様では、糖タンパク質Gをコードする読み取り枠内の挿入及び/又は欠失は、糖タンパク質Gを非機能的とするか又は不在とするようなものである。糖タンパク質Gが非機能的であるか又は不在であるG(−)突然変異体ウイルスを、糖タンパク質G類似体をトランスで提供する細胞で増殖させて、ウイルスの表現型を相補的にしなければならない。
【0049】
本発明の更に好ましい実施態様では、相補性のために使用する糖タンパク質類似体は狂犬病ウイルス糖タンパク質G自体である。
【0050】
糖タンパク質G類似体を含む組換え伝染性狂犬病ウイルスは、いくつかの重要な利点を有する:
a)前記ウイルスは、選択する糖タンパク質G類似体の標的に依存して、ある細胞、器官又は宿主を特異的に標的とし得る。
【0051】
これは、例えば呼吸管又は消化管を特異的に標的とすることができることを意味している。従って、例えば所定の部位で粘膜応答が得られ得る。あるいは、免疫系の特異細胞を標的とすることができる。
b)前記ウイルスは更に、前述したように非狂犬病病原体に由来するエピトープをコードする外来遺伝子情報のキャリアーであり得る。
【0052】
あるいは、前記ウイルスは、毒性物質をコードする外来遺伝子情報のキャリアーであり得る。
【0053】
本発明のウイルスの非常に重要な適用は、a)の糖タンパク質G類似体及びb)の外来遺伝子情報の両方を有するウイルスを用いて行われる。
【0054】
特異的な細胞型を標的とし、通常非狂犬病ウイルスの攻撃を受けると同時に、非狂犬病ウイルスの免疫防御性決定因子を保有する組換え伝染性狂犬病ウイルスを本発明の方法で産生することができる。
【0055】
このようなウイルスは、糖タンパク質G類似体の遺伝子情報が欠失しているために、非狂犬病ウイルスに対する宿主で免疫を誘発すると同時に全く安全である。
【0056】
本発明の他の重要な実施態様は、例えばCD4細胞を標的とし、HIV gp120による遺伝子型相補化によりHIVの標的細胞を示し、任意に細胞毒性タンパク質をコードする本発明のウイルスである。
【0057】
このようなウイルスは、CD4細胞を選択的に攻撃し、一旦これらの細胞内に入ると、細胞を死滅させる。
【0058】
あるいは、本発明の組換え伝染性狂犬病ウイルスは、現時点では安全な生ワクチンが存在していない毒性/病原性ウイルスに対する非常に安全なワクチンを提供し得る。例えばウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)糖タンパク質G類似体で相補化してBRSVの天然標的細胞を標的として、BRSVの免疫防御性エピトープを発現する組換え伝染性狂犬病ウイルスは、このような疾病の非常に安全なワクチンとなる。
【0059】
パラインフルエンザウイルスワクチンは今日まで、BRSVワクチンと同じ問題に直面している。従って、パラインフルエンザ糖タンパク質G類似体及びパラインフルエンザの別の免疫原性エピトープを含む組換え伝染性狂犬病ウイルスは、この疾病の良好で安全なワクチンとなる。
【0060】
組換え伝染性狂犬病ウイルスを基材とする他の重要な動物ワクチンは、
i)トロウイルス;ウマ、ウシ及びブタトロウイルス、
ii)コロナウイルス;ウシ、イヌ、ブタ及びネココロナウイルス、特にそのスパイクタンパク質
の免疫原性決定因子を組換え狂犬病ウイルス内に導入することにより産生される。
【0061】
従って、本発明の最も好ましい実施態様は、糖タンパク質G類似体を補体結合し、病原性ウイルス又は微生物のエピトープ又はポリペプチドをコードする異種核酸配列を保有する組換え伝染性狂犬病ウイルス糖タンパク質G(−)突然変異体に関する。
【0062】
あるいは、酵素活性が低下するようにRVレプリカーゼ又はトランスクリプターゼの酵素活性を変化させてRVを弱毒化して、宿主動物の感染で伝染性の低いビリオンを産生することができる。N、P及びLタンパク質はRVポリメラーゼ活性に関与するので、N、P又はLタンパク質をコードするORF内に挿入又は欠失を有するRV突然変異体も本発明の一部分である。
【0063】
本発明のRV欠失及び/又は挿入突然変異体を使用して宿主にワクチン接種し、前記RV突然変異体を含むワクチンを投与した宿主と、親RVに感染した宿主とを(血清学的に)区別することができる。本発明のこの実施態様では、RV挿入突然変異体のインサートは、接種した宿主の特異的な非RV免疫応答を誘発し得る異種エピトープをコードしてもよいし、CAT又はlacZのような酵素活性を有するタンパク質をコードしてもよい(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)。このようなインサートの取り込みのために好ましい領域は、RV偽遺伝子領域である。実施例で示すように、RVの主要機能(例えば感染又は複製に必要な機能)を損なわずに、この領域で挿入及び欠失を実施することができる。RV欠失突然変異体は、その免疫応答が通常ワクチン接種により生じるRVタンパク質のエピトープが欠失していてもよい。特に、Gタンパク質をコードするORFに欠失を含むRV突然変異体がこの目的に適している。RV挿入突然変異体の場合、挿入は、血清学的マーカー抗原又はそのエピトープをコードする核酸配列を含んでいる。
【0064】
本発明の別の実施態様では、特異的な病原体の1個以上の異なる異種エピトープ又はポリペプチドを発現し得るRV突然変異体を提供する。このような突然変異体を使用して、動物(家畜動物及び非家畜動物を含む)に野生動物狂犬病や前記病原体に対するワクチンを接種することができる。
【0065】
このような生ベクターワクチンを接種して、RVポリペプチドと共に異種エピトープ又はポリペプチドをin vivo発現する接種宿主内でRV突然変異体を複製することが好ましい。次いで、接種した宿主内で発現されたポリペプチドは、RV及び特定病原体の両方に対する免疫応答を誘発する。特定病原体に由来する異種ポリペプチドが防御的免疫応答を刺激し得るならば、本発明のRV突然変異体を接種した動物は、その後の病原体感染や、RV感染に対して免疫がある。従って、RVゲノムの適切な領域内に取り込まれた異種核酸配列を連続的にin vivo発現することにより、病原体に対して確実、安全で寿命の長い免疫性を提供する。
【0066】
特に、本発明は、特異的な病原体のエピトープ又はポリペプチドをコードする核酸配列の挿入を含み、該挿入が偽遺伝子領域で実施されることを特徴とするRVベクターを提供する。
【0067】
所望とあれば、偽遺伝子領域の一部又は全体を前述のRVベクターで欠失させることができる。
【0068】
RVゲノムの適切な領域内への取り込みについては、イヌパルボウイルス、イヌコロナウイルス及び従来のブタ熱ウイルス(CSFV)のエピトープ又はポリペプチドをコードする核酸配列を考察することが好ましい。
【0069】
伝染性複製ウイルスを産生させることができなかったため、RVの非セグメント化陰性鎖RNAゲノムの組換えDNA技術によるDNAレベルでの操作は今日まで不可能であった。しかしながら、本明細書では、突然変異を組換えDNA技術によりDNAレベルでウイルスゲノムのコード化領域又は非コード化領域内に作成し、次いでゲノム内に突然変異を保有する伝染性複製RVを産生する方法を提供する。
【0070】
本発明の方法は、
a)RNAポリメラーゼを発現する細胞内に、
1)RVのN、P及びLタンパク質をコードする1個以上のDNA分子と、
2)RVのcDNAゲノムを含むDNA分子
とを導入し、
b)前記細胞によって産生されるウイルスを単離する
段階からなる。
【0071】
通常、狂犬病ウイルスゲノムのcDNAは、ゲノム内に突然変異を取り込むことにより改変される。
【0072】
しかしながら、この方法を使用して、例えば汚染したRNAプールを精製してもよい。この場合、元の突然変異していないcDNAを使用する。
【0073】
タンパク質をコードするプラスミドを備えた異種インサートを含むRVのモデルミニゲノムのレスキュー効率は極めて低く、更にはインサート長さと相関関係にあるという事実を考慮すれば(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)、トランスフェクトした全長ゲノムRNAに由来する増殖性感染が、RVのN、P及びLタンパク質をコードするプラスミドと同時にトランスフェクトすることにより開始され得るとは予想できない。これは、同時に発現された陰性鎖ゲノムRNA転写体とハイブリダイズすると予想される、トランスフェクトしたタンパク質をコードするプラスミドにより、多量の陽性センスのN、P及びL特異的RNAが産生されるだけに一層そうである。しかしながら、ゲノムの半分以上に作用し得る可能なハイブリダイゼーションは、重要なエンカプシデーション段階に介在すると思われた。更には、N、P及びL mRNAの翻訳は影響を受け得る。実際、標準的なトランスフェクションプロトコルでは伝染性ウイルスは産生できないことが知見された。しかしながら、実施例に記載するように、代替トランスフェクションプロトコルと、陽性鎖抗ゲノムRNA転写体を生成するRV cDNAゲノムの使用とを組み合わせれば、遺伝学的に作成された複製RVが得られた。
【0074】
前述の方法では、組換えDNA技術により親RVのゲノム内に突然変異をin vitro取り込み、次いで前記突然変異を有する伝染性複製RV突然変異体を産生することができる。突然変異は限定はされないが、RV親ゲノムのRVタンパク質をコードするORF、非コード化領域(例えば偽遺伝子領域)又は転写シグナル配列内への核酸残基の挿入、欠失又は置換を包含する。
【0075】
非コード化遺伝子間領域内での突然変異の作成は特異的なウイルス遺伝子の転写に影響し、mRNAの転写及びその後のタンパク質(M及びGタンパク質のようなエンベロープタンパク質又はN、P及びLタンパク質のようなポリメラーゼ活性に関与するタンパク質)の翻訳が低減して、突然変異体の(伝染性)後代ウイルスの産生能力が低下するために弱毒性を特徴とするウイルス突然変異体が得られる。特に、この遺伝子間領域及び/又は転写シグナル配列での1個以上の核酸残基の置換は、転写効率に影響し得る。
【0076】
更には、毒性に関与する毒性RVのゲノムの領域(例えばGタンパク質をコードするORF)で、前述の方法を適用して行う1個以上の核酸残基の置換は本発明の一部である。
【0077】
このような突然変異により、毒性RV株のGタンパク質で1個のアミノ酸が交換されて病原性が(一部分)損なわれる。例えばArg(333)がIle、GluもしくはGlnで、又はLeu(132)がPheもしくはTrpで置換され得る。
【0078】
本発明の方法では、RV遺伝子情報を含むDNA分子は好ましくは、トランスフェクトした宿主細胞によって同時発現されるポリメラーゼにより認識可能な適切な転写イニシエーター及びターミネーター配列を備えたプラスミドを含んでいる。
【0079】
本発明の好ましい方法は、RV DNAでトランスフェクトした宿主細胞を使用することからなり、前記細胞は、ワクシニアウイルス組換え体から例えば細胞質で発現されるバクテリオファージT7 DNA依存性RNAポリメラーゼを発現し得る。この場合、RV DNAを含むプラスミドは、T7プロモーター及びターミネーター配列を備えている(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)。
【0080】
生ワクチンを製造するため、例えばBHK又はヒト二倍体細胞に由来する細胞培養で本発明の組換えRV突然変異体を増殖させることができる。組織細胞培養液及び/又は細胞を収集することにより、このようにして増殖させたウイルスを収集することができる。生ワクチンは懸濁液の形態で調製してもよいし、凍結乾燥してもよい。
【0081】
ワクチンは、免疫学的に有効な量の組換えRVの他に、医薬的に許容可能なキャリアー又は希釈剤を含み得る。
【0082】
本発明で有用な医薬的に許容可能なキャリアー又は希釈剤の例には、SPGAのような安定剤、炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストラン)、ウシ血清又はスキムミルクのようなタンパク質、及び緩衝液(例えばリン酸緩衝液)が含まれる。
【0083】
場合によっては、アジュバント活性を有する1種以上の化合物をワクチンに添加してもよい。適切なアジュバントは例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、(例えばBayol F(R)もしくはMarcol 52(R)の)油状エマルジョン、サポニン又はビタミンE溶解物である。
【0084】
有用な投与量は、ワクチン接種すべき哺乳動物の種類、年齢、体重及び投与方法によって異なる。
【0085】
投与量は広範囲で変動し得る。例えば10〜10pfu/動物が適量である。
【0086】
特定の投与量は例えば約10pfu/動物であり得る。
【0087】
本発明のRV突然変異体を使用して、不活化ワクチンを製造することもできる。
【0088】
動物への投与では、本発明のRV突然変異体をとりわけ経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与又は筋肉内投与することができる。
【0089】
本発明のRVワクチンをイヌだけでなく、主要ベクター、即ちアライグマ、スカンク及びキツネに投与することができる。更には、従来のブタ熱ウイルスのようなブタ病原体の異種遺伝子を発現し得る生RVベクターのイノシシへのワクチン接種も考えられる。
【0090】
(実施例)
【実施例1】
【0091】
伝染性複製RVビリオンの調製
全長RV cDNAの構築(図2)。
【0092】
RV株SAD B19の全ゲノムに及ぶcDNAのクローニングは以前に発表されている(Conzelmann等、1990、上掲;GenBank受託番号M31046)。本明細書で使用するRVヌクレオチドやアミノ酸の番号付けは、Conzelmann等、1990(上掲)のものに対応する。SAD B19全長DNAクローンの作成基材として、転写プラスミドpSDI−1に含まれるRVミニゲノム配列(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)を使用した(図2)。pSDI−1は、T7 RNAポリメラーゼプロモーターと、肝炎デルタウイルス(HDV)抗ゲノムリボザイム(ribozyme)配列との間に挿入されたSAD B19ゲノム3’末端及び5’末端(それぞれSAD B19ヌクレオチドの1−68及び11760−11928)を含む。陽性鎖SDI−1転写体(pSDI−1プラス)を産生するプラスミドを生成するために、11塩基プライマー(5’−ACGCTTAACAA−3’)を用いて、pSDI−1に含まれるRV配列をまずPCRで増幅した。このプライマーは、RVゲノム末端の相補性のために、陽性センス及び陰性センスの両方のウイルスRNAの5’末端に対応する。T7プロモーター配列、次いで3個のG残基(下線)(5’−AATTCCTGCAGTAATACGACTCACTATAGGG−3’)を含む合成EcoRI/ブラントアダプター(T7/3)をその後増幅RV配列に部分結合した後、結合産物をpX8dTのEcoRI/SmaI部位にクローニングした。このプラスミドは、元のT7プロモーターを含む多重クローニング部位のBssHII/ClaI断片が欠失しているpBluescriptII(Stratagene)の誘導体である。このプラスミドは、SmaI部位に84塩基HDV抗ゲノムリボザイム配列を含み、直後にはBamHI部位にクローニングされたT7転写ターミネーター配列を含んでいる。プラスセンスRV配列の上流にT7プロモーターを含む構築物を、制限分析及び配列決定により同定した。次いで、pSDI−1のMunI−BglII断片(SAD B19ヌクレオチド40−68)を、種々のSAD B19 cDNAクローンの3個の断片(MunI−SphI(pZAD1−9に由来のSAD B19ヌクレオチド40−482);SphI−AatII(pSAD13に由来の4041−4273)及びAatII−BglII(pSAD85に由来の11472−11759))に由来する、pBluescriptIIに作成された1kb MunI/BglII cDNAで置換して、pSDI−1170を得た。NcoI(SAD B19ヌクレオチド482−4041)によりクローンpSAD25及びpSAD13から作成したSphI断片、及びXhoI(SAD B19ヌクレオチド4273−11472)によりクローンpSAD49及びpSAD85から作成したAatII断片をpSDI−1170の単一のSphI及びAatII部位に挿入して、最終全長クローンpSAD L16を完成した。環状プラスミドを使用して、in vitro転写を実施し、産物を変性アガロースゲルで分析した。12kb RVゲノムRNAと共に移動するRNA転写体の存在は、全長抗ゲノムRNAがT7ポリメラーゼによって転写されることを示していた。
【0093】
伝染性組換えRVの回収
RVのタンパク質N、P、Lをコードするプラスミドと、プラスミドpSAD L16とのコトランスフェクションをConzelmann及びSchnell,1994(上掲)に記載された方法で実施した。
【0094】
以前に発表された方法でトランスフェクション実験を実施した。クローンBSR細胞のBHK−21を、10%ウシ血清を補充したイーグル培地を含む3.2cm直径の皿に入れて一晩増殖させ80%の集密度にして、組換えワクシニアウイルスvTF7−3をm.o.i.5で感染させた(Fours等、Proc.Natl.Acad.Sci USA 83,8122−8126、1986)。1時間放置したpontificating細胞を、ウシ血清を含まない培地で2度洗浄し、哺乳動物トランスフェクションキット(Stratagene;CaPOプロトコル)を供給業者の指示に従って用いて、5μgのpT7T−N、2.5μgのpT7T−P及び2.5μgのpT7T−Lを含むプラスミド混合物、並びに2μgのpSAD−L16プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトしてから4時間後に沈殿物を除去し、細胞を洗浄し、10%ウシ血清を含むイーグル培地でインンキュベートした。pSAD−L16に由来するT7 RNAポリメラーゼ転写体のキャプシド内被包、及びヌクレオキャプシドに由来するRVタンパク質の発現を間接蛍光法で検査した。組換えRVゲノムからのみ発現し得るRV Gタンパク質に対するモノクローナル抗体を使用して培養物をスクリーニングした。トランスフェクトしてから1日後、染色細胞が存在していた。このことは、RVゲノム由来の遺伝子の発現を実証している。しかしながら、一連の20のトランスフェクション実験では、1個の陽性細胞群のみが観察された。これらの実験では、伝染性ウイルスの存在を示す蛍光細胞フォーカスは得られなかった。更には、2日後に、トランスフェクトした細胞に由来する全上清を接種した細胞培養物からは、伝染性ウイルスを回収することができなかった。従って、トランスフェクトした細胞で産生した推定上の非常に少量の伝染性ウイルスを単離するために、実験手順を変更した。トランスフェクタントウイルスを単離するために、細胞及び上清をトランスフェクトしてから2日後に採取した。細胞をゴムポリスマンで掻き取って、上清に懸濁させた。この懸濁液を3サイクル凍結融解処理した(−70℃/37℃、それぞれ5分)。細胞破片や、このような条件下で凝集物を生成する過剰ワクシニアウイルスをmicrofuge内にて10,000gで10分間遠心分離にかけてペレット化した。全上清を使用して、培養皿に集密性単層の細胞を接種した。2時間インキュベートした後に、上清を2mlの新しい培地に代えた。ワクシニアウイルスによって生じる細胞変性効果(cpe)が感染から1〜2日後に観察された。10,000gで遠心分離した後に、平均で僅か10個のプラークが観察された。感染から2日後に、全単層の抗N結合体(Centocore)による直接免疫蛍光染色により、cpeが検出不能であるRV細胞感染を実証した。20のうち2つの実験で、蛍光フォーカスが観察され、各上清は、cDNA転写体から生成されるトランスフェクタントウイルスを示すと思われる伝染性RV(SAD L16)を含んでいた。
【0095】
フォーカスが観察される培養物に由来する上清の半分を10,000gで遠心分離にかけた後に第2の継代で使用した。更なる継代(それぞれ2日)のために、RV感染の程度によってより少ない上清の分注液を使用した。ワクシニアウイルスを完全に除去するために、全ての細胞の感染に関与する培養物(第三継代)に由来する上清をmicrofugeにて2度、14,000gで10分間ずつ遠心分離した。次いで、滅菌MILLEX−VV 0.1μmフィルターユニット(Millipore Products,Bedford,MA01730)を用いて最終上清を濾過し、次いでこれを使用して組換えRVの高力価ストックを生成した。
【0096】
以下の実施例では後半のトランスフェクション及び単離プロトコルを使用した。
【実施例2】
【0097】
RV偽遺伝子領域へのオリゴヌクレオチドの挿入
SAD B19ヌクレオチド3823−6668を示すpSAD L16の2.8kb XhoI−ScaI断片を含むサブクローンpPsiX8でΨの操作を実施した。次いで、改変pPsiX8プラスミドのStuI断片を単離し、これを使用して全長クローンpSAD L16(図1)の対応断片(SAD B19位置4014−6364)を置換した。pPsiX8をHind IIIで消化し、エキステンションをクレノー酵素でフィルインし、再結合することにより、4個のヌクレオチドをΨに挿入して、新たなNheI部位を生成した。ヌクレオチド5338−5341を重複させて、最後の全長クローンpSAD U2をSAD L16と区別する。
【0098】
トランスフェクトした細胞に由来する抽出物を上清と一緒に新しい細胞に移動させた後に、伝染性ウイルスの生成が実証された。各一連の実験では、一実験でフォーカス形成が観察された。更に2回上清を新しい細胞に移して、トランスフェクタントウイルス(クローンSAD U2−13及びSAD U2−32)を継代すると、細胞がほぼ100%感染した。SAD U2ウイルスゲノム内への挿入を実証するために、全RNAをSAD U2−13に感染した細胞から単離し、Ψの逆トランスクリプターゼ−PCR(RT−PCR)を実施した。それぞれG遺伝子及びL遺伝子に特異的なプライマーG3P及びL4M(図1)を使用して、トランスフェクタントウイルスSAD U2、SAD L16、及び標準RV SAD B19のゲノムから約730bpのDNA断片を得た。しかしながら、SAD U2から得られるPCR DNAではなく、SAD B19及びSAD L16から得られるPCR DNAでのみ、その後のHindIIIでの消化が観察された。逆に、SAD U2由来のDNAだけがNheIで消化されて、それぞれ約530bp及び200bpの2個の断片が得られた(図3)。トランスフェクタントウイルスSAD U2のゲノムRNAの直接RT配列決定により更に、予測される部位に予想される4個の残基の挿入の存在が確定され、決定した配列の残部は元のSAD B19ゲノムのものに対応していた。従って、SAD U2ウイルスが、作成されたcDNAに由来するゲノムを含むトランスフェクタントウイルスを示すことは明白であった。
【0099】
RVΨの末端付近に4個のヌクレオチドを導入しても、トランスフェクタントウイルスSAD U2の生存に影響せず、この導入はG mRNAの正しい転写終結も阻害しなかった。
【実施例3】
【0100】
Gコード化領域とLコード化領域との間の挿入又は欠失によるRV転写の改変
StyI及びHindIIIで二重に消化し、クレノーフィルインし、再結合して、396塩基(SAD B19ヌクレオチド4942−5337)を欠失させた。最終構築物はpSAD W9であった。pSAD V*の構築のために、SAD B19 N/Pシストロンボーダー領域を含む180bp BgIII−AsuII断片をpSAD13から単離した(Conzelmann等、1990、上掲)。その断片は、Nコード化領域の97ヌクレオチドと、全3’非コード化領域と、N転写終結/ポリアデニル化シグナル、遺伝子間領域、及び転写開始シグナルを含むPシストロンの最初の16ヌクレオチドからなるN/Pシストロンボーダーとを含んでいた。まずcDNA断片を、3’陥凹末端をクレノー酵素でフィルインした後のpBluescriptのEcoRI部位にサブクローニングした(pNigP−180)。pNigPからHindIII/XbaIで切り出し、ブラント末端を産生した後、それぞれ16pb及び34bpのベクター由来配列に隣接するRVインサートを含む230bp断片産物をpPsiX8のフィルインしたStyI部位にクローニングした。かくして、最終全長構築物(pSAD V*)は、pSAD L16に匹敵する234bpの挿入を有していた。
【0101】
前述のように、pSAD V*及びpSAD W9を使用して、20個の培養皿をそれぞれトランスフェクトした。SAD V*でトランスフェクトした3個の培養物及びSAD W9でトランスフェクトした1個の培養物で、生存可能なウイルスをその後単離することによりレスキューが示された。5回続けて継代した後に、感染細胞由来のRNA及び上清を単離し、前述の実験と同一のプライマーを用いてRT−PCRにより分析した。標準SAD B19ウイルスと比較して、SAD V*に感染した細胞のRNAから約0.9kbの拡大DNA断片が得られ、このことは、このトランスフェクタントウイルスのΨ領域に付加された配列が存在することを示した(図4)。対照的に、SAD W9に感染した細胞のRNAからは、僅かに0.3kbのDNA断片が得られた。この寸法は、cDNAゲノムコピーで行われた欠失によるものと推測された。PCR産物の配列決定により更に、最初に作成したcDNA配列がSAD V*及びSAD W9トランスフェクタントウイルスのゲノム内にレスキューされることが確定した。従って、G読み取り枠とΨとの間に付加された配列(例えば50個のベクター由来ヌクレオチド)が存在しても、全Ψを欠失しても、トランスフェクタント狂犬病ウイルスの感染性や増殖は妨げられなかった。SAD V*及びSAD W9のゲノム内に作成される改変は、転写パターンに表現型の変化をもたらすように設計され、これが各トランスフェクタントウイルスの増殖性に影響するかどうかを調査した。しかしながら、細胞培養での増殖及び伝染性SAD V*及びSAD W9ウイルスの最終力価は、標準SAD B19 RVの場合と同様であった。m.o.i.0.01で細胞感染させてから3日後に、SAD B19、SAD V*及びSAD W9の上清で108フォーカス形成単位(ffu)の力価に達した。このことは、RV Ψが細胞培養の増殖で重要でないことを示している。
【0102】
Ψ特異的プローブを用いると、Ψ欠失SAD W9ウイルスに感染した細胞に由来するRNAでハイブリダイゼーションは検出されなかった。他のウイルスのゲノムRNA及びSAD B19及びSAD L16のG mRNAはこのプローブで認識されたが、SAD V*G mRNAは反応しなかった。対照的に、SAD V*Ψ配列に先行する余分のP遺伝子転写開始シグナルの存在によって予測される新たな余分のΨ−mRNAの寸法に相当する弱いRNAバンドが出現した。天然RVとは対照的に、トランスフェクタントウイルスSAD V*は、ゲノムが6個の機能的シストロンからなるRVを示している。
【実施例4】
【0103】
組換えRV由来の外来タンパク質コード化遺伝子の発現
ブラント末端をクレノー酵素で生成した後に、実施例3に記載した多重制限部位に隣接するN/Pシストロンボーダーを含む230bp cDNA断片を、全長cDNA pSAD L16の偽遺伝子領域のBstXI部位(SAD B19位置4995)に導入した。得られたcDNA pSAD Vを細菌クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の導入基材として使用した。pSAD XCATを得るため、全CATコード化領域を含むpCM7(Pharmacia)の0.8kb DNA断片を、偽遺伝子配列の上流のN/Pシストロンボーダーに含まれるpSAD VのAsuII部位にクローニングした。pSAD VCATの構築のために、偽遺伝子配列(SAD B19位置5337)の末端付近に位置する、AsuII部位とHindIII部位との間のcDNAを欠失し、クレノー酵素でブラント末端を形成した後に、pCM7由来のCATコード化HindIII−DNAで置換した。従って、組換えRV SAD XCATの転写により、偽遺伝子配列を非翻訳化3’領域として有するCAT mRNAが得られるはずであり、SAD VCATは偽遺伝子配列の欠失したCAT mRNAを転写するはずである。
【0104】
実施例1に記載したようにRVのN、P及びLタンパク質、pSAD−XCAT、pSAD−VCATをそれぞれコードするプラスミドをトランスフェクトした後に、組換え狂犬病ウイルスはレスキューされた。ワクシニアウイルスを除去した後に、組換えRVの転写パターンをノーザンハイブリダイゼーションで分析した。両方のウイルスは、予想される寸法及び組成のCAT mRNAを転写した(図5)。CAT酵素活性の発現を、2種のウイルスに感染した細胞でそれぞれ標準CATアッセイ(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)により決定した。両者とも、CATを効果的に発現することが知見された。細胞培養細胞での連続継代により、導入した外来配列が遺伝学的に安定であることが判明した。40継代後でも、両方のウイルスはCATを効果的に発現した(図6)。感染動物の組換えウイルスの発現や挙動を調べるために別の実験を実施した。6週齢マウス(5匹ずつ)に10ffuのSAD VCAT、SAD XCAT及び標準配列RV SAD L16をそれぞれ大脳内注射した。感染から7日後に、全ての動物は典型的な狂犬病の症状を示し、次週までに狂犬病で死亡した。SAD VCAT及びSAD XCATにそれぞれ感染したマウスの脳でCAT活性が示された。両方のウイルスをマウス脳から再度単離することができ、これらはCAT細胞培養を発現した。従って、外来遺伝子は、伝染性RVのゲノムに導入して、安定的に発現させることができ、更には組換えウイルスを区別するためのマーカーとして機能し得る。
【実施例5】
【0105】
組換えRV由来の異種ウイルス抗原の発現及びRV及び異種ウイルスに対する免疫応答の誘導
従来のブタ熱ウイルス(CSFV)のゲノムは、3種の構造糖タンパク質(E0、E1及びE2)をコードする。CSFV感染動物では、中和抗体はE2に対するものであり、E0は細胞免疫応答を誘発する。CSFV株AlfortのE2タンパク質及びE0タンパク質それぞれのコード化領域を包含するcDNAを使用して、実施例4に記載したようにpSAD VのAsuII部位とHindIII部位との間の偽遺伝子を置換した。実施例1で詳述したように、組換えウイルス(それぞれSAD−VE0及びSAD−VE2)をトランスフェクション実験から回収した。感染細胞では、ウイルスはそれぞれCSFV E0タンパク質及びCSFV E2タンパク質を発現した(図7)。
【0106】
組換えウイルスSAD VE0及びVE2を使用して、経口経路によりブタを免疫した。通常、キツネを弱毒化RV SAD B19株で経口免疫するために使用されている標準的なキツネ餌に107pfuのSAD−VE0、SAD−VE2及びSAD B19をそれぞれ導入した。各調製物の餌をそれぞれ2匹のブタに2回与えた(ブタ#1及び#2:SAD VE0、#3及び#4:SAD B19、#5及び#6:SAD VE2)。免疫から4週間後に、RV及びCSFVに対する中和抗体の存在を分析した。#5の場合を除いて、全てのブタは、ワクチン餌の吸収を確定するRV中和抗体(力価>250)を有していた。従って、ブタ5は以後考察しなかった。ブタ#6は、16より大きい力価でCSFV中和抗体を産生した。予想通り、ブタ#1〜#4はCSFV中和抗体を産生しなかった。免疫から5週間後に、10pfuのCSFV株Alfortで経鼻攻撃した。攻撃後にブタの白血球数と体温を監視し、これをそれぞれ図8及び図9に示す。全てのブタは発熱したが、ブタ#1、#2、#6はより早く回復した。対照動物#4は典型的なCSFV症状を示し、攻撃から15日後に死亡し、対照#3は21日目に死亡した。SAD VE2を与えたブタにCSFV中和抗体が存在し、SAD VE0又はSAD VE2の投与を受けたブタが一部感染予防を示すことは、2種の異種ウイルスに対する体液免疫反応及び細胞免疫反応が共に、経口経路による投与後に組換えRV生ワクチンによって誘発され得ることを実証している。
【実施例6】
【0107】
G遺伝子配列内への突然変異導入による弱毒化RVの生成
標準ウイルスSAD B19ほどは効率的に増殖しないウイルスを生成するために、突然変異Gタンパク質を有する組換え体を調製した。
【0108】
このために、Gタンパク質の最後の46アミノ酸をコードする配列を欠失させた。Gタンパク質コード化プラスミド:pT7T−G(Conzelmann及びSchnell、1994、上掲)をAflIII(SAD B19配列の位置4752)及びEcoRV(後半部位はプラスミドの多重クローニング部位に存在する)で消化し、クレノー酵素によりブラント末端を生成した。得られたAflIII末端及びEcoRV末端を結合すると、前者のAflIII配列に翻訳終結コドンが形成された。改変領域を含む0.3kb DNA PpuMI−SMaI断片を使用して、pSAD L16の本物のPpuMI−BstXI断片4469−4995を置換した。この操作により、Gタンパク質細胞質テールのカルボキシ末端46aa及び偽遺伝子配列の一部分をコードするSAD B19ヌクレオチド4753−4995が欠失した。別の結果は、新しいG翻訳終結コドンのすぐ下流に18個のベクター由来ヌクレオチドが導入されることである。
【0109】
実施例1に記載したように組換えRV(SAD DCD)を回収した。予想通り、端を切り取ったGタンパク質はSAD DCDに感染した細胞で発現された(図10)。標準配列ウイルスSAD L16と比較して、SAD DCDウイルスではm.o.i.1で細胞に感染させた後に100分の1の力価が得られた。更には、細胞培養物で低い伝染速度が観察され(図11)、このことはGタンパク質の先端を切ることで、ビリオンの作成が低下するか又はビリオンの細胞感染が低下することを示している。感染動物でのSAD DCDの挙動を分析するために、5匹のマウスに10ffuのSAD DCDを脳内注射し、5匹のマウスに同量のSAD L16を脳内注射した。
【実施例7】
【0110】
トランス相補化による狂犬病ウイルスG−マイナス(G−)突然変異体の生成
RVゲノム由来の全Gタンパク質コード化領域を欠失させるために、全長クローンpSAD UE(実施例2)を使用した。このクローンは、G遺伝子の非翻訳化3’領域(SAD B19位置5339)内に単一のNheI部位が存在することがpSAD L16と異なる。pSAD U2をPflMI(SAD位置3176)で部分的に消化し、NheIで完全消化し、その後クレノー酵素でフィルインし、再結合することにより、SAD B19ヌクレオチド3177−5339を含むcDNA断片を除去した。得られたクローンpSAD dGをトランスフェクション実験で使用して、組換えウイルスを回収した。しかしながら、N、P及びLタンパク質をコードするプラスミドの他に、Gタンパク質をコードするプラスミドをpSAD dGと一緒にトランスフェクトして、ウイルスゲノムのG欠失を補った。得られたウイルスSAD dGを、Gコード化プラスミドで再度トランスフェクトした細胞に通し、ワクシニアウイルスvTF−7−3に感染させて、Gタンパク質を得た。
【0111】
ノーザンブロッティング実験により、SAD dGのRNA転写体を分析した。N特異的プローブでハイブリダイズした後に、SAD dGゲノムが狂犬病ウイルスwtゲノムよりも遥かに小さいことが知見された。このことは、2.1kbのcDNAの欠失を反映している。しかしながら、全Gコード化領域に及ぶプローブでは、SAD dG RNAとハイブリダイズできず、このことはGコード化配列の欠失を示している(図12)。欠失の同定は更にRT−PCR及び配列決定により確定された。
【0112】
表現型が相補化したSAD dGは、非相補性BSR細胞に感染し、そのゲノムを複製して、ゲノムによってコードされる遺伝子を発現することができた。しかしながら、伝染性ビリオンを生成することはできず、従って、感染を他の細胞に拡散させることも(図13)、培養上清の他の細胞培養への継代により移行させることもできなかった。
【実施例8】
【0113】
異種糖タンパク質によるG突然変異体の相補化:ウイルスの特異細胞への指向
異種表面タンパク質が組換えウイルスのエンベロープに機能的に取り込まれ得ることを実証するために、G突然変異体SAD dGを狂犬病ウイルスGについて実施例7に記載したように組換えウイルス糖タンパク質で相補化した。Mokolaウイルス、狂犬病ウイルス属の他の類、ラブドウイルス水泡性口内炎ウイルス(VSV;血清型New Jersey,ベシキュロウイルス属)、及びレトロウイルスヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、株NL−43)に由来するスパイクタンパク質を含む伝染性偽型粒子を生成した。
【0114】
真正のMokola及びVSV−Gタンパク質のトランスフェクトプラスミドからの発現や、細胞のSAD dG感染により、伝染性偽型ウイルスが生成した。しかしながら、狂犬病ウイルスGや密接に関連するMokolaウイルスGに比べて、VSV−Gでは低い力価が観察された(10/mlとは対照的に10/ml)。しかしながら、VSV−Gの細胞質ドメイン配列及びトランスメンブランドメイン配列を、狂犬病ウイルスGタンパク質の対応するドメインで置換した後に、10個の伝染性粒子が生成した。このことは、RV Gの細胞質ドメインがそのタンパク質をウイルスエンベロープに指向させることを示唆している。
【0115】
真正のHIV gp160(gp120/40)スパイクを含む偽型粒子の生成は観察されなかった。対照的に、RV Gの細胞質ドメインに融合したHIV gpの膜外及びトランスメンブランドメインからなるキメラタンパク質の発現により、RV(HIV)偽型が形成された。これにより、Gタンパク質の細胞質ドメインがラブドウイルスのエンベロープ内へのスパイクタンパク質の効果的な取り込みを担うことが確定した。RV(HIV)偽型粒子は、ヒトCD4表面タンパク質を発現するVero細胞(T4細胞)にはうまく感染したが、CD8を発現する対照細胞(T8細胞)には感染しなかった(細胞はAIDS Research and Reference Reagent Programmeから入手)。従って、偽型ウイルスはHIVの宿主範囲及び細胞特異性を有する。
【0116】
図面の説明
図1:
RV偽遺伝子(Ψ)の構成及び組換えRVゲノムの構築(一定の比率で記述)。番号は、SAD B19の抗ゲノム配列のヌクレオチド位置を示す。上部に、5個の読み取り枠を有する全RVゲノムを示す。ゲノムの一部(3823−6668)を含むpPsiX8で突然変異を実施し、StuI断片(4014−6364)を交換して前記突然変異を全長クローンpSAD L16に再度導入した。詳細な図面では、コード化領域を灰色の枠で示し、非コード化配列は線として示す。機能的転写シグナル配列は黒い縦棒(終結/ポリアデニル化)及び矢印(mRNA転写開始)で示す。Ψ領域の開始を限定する非機能的シグナル様配列は白い縦棒で示す。矢印は、Ψ領域のRT−PCR分析で使用するオリゴヌクレオチドプライマーG3P及びL4Mの位置を示す。SAD U2では、HindIIIエキステンションのフィルインにより、4個のヌクレオチドが挿入され、単一のNheI部位が生成した。SAD V*では、RV N/Pシストロンボーダーを含むcDNA断片(SAD B19ヌクレオチド1323−1502)をStyI部位に挿入した。SAD W9はStyI/HindIII断片の欠失を有する。
【0117】
図2:
全長RV cDNAを含む転写プラスミドの構築概略図。番号は、SAD B19 RV抗ゲノム配列(Conzelmann等、1990)のヌクレオチド位置を示す。全長RVゲノムDNAの再構築の基材として機能するプラスミドpSDI−1プラスは、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(T7)及び肝炎デルタウイルス抗ゲノムリボザイム配列(HDV)に対して反対方向に末端ヌクレオチド1−68及び11760−11928を含むSDI−1 RVミニ−ゲノムを含むpSDI−1(Conzelmann及びSchnell、1994)の対応プラスミドである。pSDI−1プラスのMunI−BglII断片を、前述の3個のSAD B19 cDNAクローンから作成した1kb cDNA構築物で置換した。2個のcDNAクローンからそれぞれ作成した3.6kbSphI断片及び7.2kb AatII断片を挿入すると、全長SAD B19 cDNAを含む最終プラスミドpSAD L16が得られた。このプラスミドをT7 RNAポリメラーゼで転写すると、リボザイムの自己融解の後に、5’末端及び正に3’末端に3個の余分の非ウイルスG残基を有する陽性鎖(抗ゲノム)RNAが得られるはずである。(T7)T7プロモーター;(T7T)T7転写ターミネーター;(HDV)HDV抗ゲノムリボザイム配列。
【0118】
図3:
トランスフェクタントウイルスSAD U2のゲノム内の遺伝子タグの例示。
【0119】
標準RV SAD B19(B19)及びトランスフェクタントウイルスSAD L16(L16)、SAD U2(U2)に感染した細胞に由来する全RNAを感染から2日後に単離し、これをプライマーG3P及びL4Mを用いる各Ψ領域のRT−PCR増幅のために使用した。それぞれHindIII及びNheIで消化した後に、増幅したDNAを直接1%アガロースゲルで分離した。NheI制限部位は、SAD U2.M,DNAサイズマーカー由来のDNAにのみ存在する。
【0120】
図4:
SAD B19(B19)、SAD V*(V*)及びSAD W9(W9)ゲノムのPCR分析。プライマーG3P及びL4Mを用いる図3に記載の方法で、RT−PCRを実施した。増幅産物を1%アガロースゲルで分離した。
【0121】
図5:
組換えRVSによって転写されるCAT mRNAの例示。
【0122】
SAD L16(L16)、SAD XCAT(X6)及びSAD VCAT(VC18)に感染した細胞に由来する全RNAのノーザンブロットを、それぞれG遺伝子(G)、偽遺伝子(Y)及びCAT遺伝子に特異的なプローブでハイブリダイズした。左側にウイルスゲノム(v)及び特定のmRNAを示す。SAD XCATは、CAT及び偽遺伝子配列(“CATY”)の両方を含むmRNAを転写するが、SAD VCATは偽遺伝子配列が欠失し、CAT配列のみを有するmRNA(“CAT”)を転写する。RNAマーカーの寸法はkbで示す。
【0123】
図6:
細胞培養で多数回継代した後のSAD XCAT及びSAD VCATのCAT活性。細胞に特定継代(継代数は記載の通り)のウイルスを感染させ、同量の細胞抽出物の、感染から2日後のCAT活性を分析した。レーン“−”では、SAD L16感染細胞由来の抽出物を分析した。
【0124】
図7:
組換えRVによるE0及びE2タンパク質の発現。
【0125】
細胞にそれぞれSAD VE0(単離物1、2、3)及びSAD VE2(単離物a、b、c)を感染させた。感染から2日後、細胞抽出物を還元条件下にてPAAゲル中で分離し、ニトロセルロース膜に移した。それぞれCSFV E0及びE2タンパク質に対するモノクローナル抗体、次いでアルカリ性ホスファターゼに結合した二次抗体と共にインキュベートした後に、基質を添加し、X線フィルムに暴露してタンパク質を可視化した。対照としては、バキュロウイルスが発現した、E0及びE2精製タンパク質を使用した(B)。更には、CSFC(V)感染細胞に由来する抽出物を比較のため使用した。
【0126】
図8:
SAD VE0(#1及び#2)、SAD VE2(#6)及び標準狂犬病ウイルスSAD B19(#3及び#4)で免疫し、CSFVで攻撃したブタの白血球。白血球量は、攻撃(0日)前に存在した絶対数のパーセントで表す。*(#1、攻撃から10日後):計測せず、推定値である。
【0127】
図9:CSFV攻撃(0日)後のブタの体温。
【0128】
a.SAD VE0で免疫した動物(#1及び#2)は、11日まで微熱を生じた(#1)か又は発熱しなかった(#2)。SAD B19で免疫した対照動物(#3及び#4)は共に、長期間にわたり高熱を示した。#4は重症のため、通常のブタ熱により攻撃から15日後に死亡し、#4は攻撃から21日後に死亡した。
【0129】
b.SAD VE2で免疫した動物は、6〜8日のみ微熱を生じた。対照はa)と同一である。
【0130】
図10:
SAD DCD感染細胞での端を切り取ったGタンパク質の発現。
【0131】
BSR細胞にSAD DCD又はSAD L16をm.o.i.1で感染させ、感染から16時間後に、50μCiの[35S]メチオニンで3時間標識した。細胞抽出物を抗狂犬病G MAbと共にインキュベートし、免疫沈殿試料の分注物をPNGaseF(+PF)で消化してタンパク質バックボーンを示すか又は偽性処理(−)してグリコシル化タンパク質を示した。+TM:標識前90分間及び3時間の標識期間中に、感染細胞を2μg/mlのツニカマイシンの存在下でインキュベートした。タンパク質を10%SDS−PAGEで分離し、オートラジオグラフィーで可視化した。細胞抽出物を前述したように分析した。L16:SAD L16ウイルス、ΔCD:SAD DCD突然変異体ウイルス、M:タンパク質サイズマーカー。
【0132】
図11:
細胞培養物でのSAD L16及びSAD DCDの伝染。
【0133】
培養細胞にそれぞれSAD L16(L16)及びSAD DCD(DCD)をm.o.i.0.05で感染させ、感染後規定の時間に、狂犬病ウイルスNタンパク質に対する結合体(Centocor(R))による直接免疫蛍光により分析した。SAD DCD感染細胞の方が隣接細胞への伝染速度が遅いことが観察された。
【0134】
図12:
SAD dG(実施例7)及びSAD dCD(実施例6)に特異的なRNAの分析。
【0135】
SAD L16(実施例1)、SAD dCD(ΔCD)及び表現型が相補化したSAD dGウイルス(ΔG)をm.o.i.1で感染させたBSR細胞の全RNAを感染から2日後に単離し、ノーザンハイブリダイゼーションで分析した。N遺伝子特異的プローブ(A)とのハイブリダイゼーションで示すように、SAD dGのゲノムは標準狂犬病ウイルスゲノム(v)よりもかなり小さく、G遺伝子の2.1kb欠失を反映している。全Gタンパク質コード化配列に及ぶプローブはSAD dG RNAとはハイブリダイズしない。SAD dCDゲノムの細胞質ドメインコード化領域の小さな欠失が、標準狂犬病ウイルスG mRNAよりも短いG mRNA(G)の出現により実証される。
【0136】
v:ゲノムRNA;N,G:モノシストロニックmRNA;N+P,M+G,G+L:ビシストロニック(bicistronic)mRNA。
【0137】
図13:
-突然変異体SAD dGの非伝染性BSR細胞に、表現型が相補化されたSAD dGを感染させ、トランスフェクションから36時間後に免疫蛍光顕微鏡検査法により分析した。(A)では、細胞をNタンパク質に対するFITC結合抗体(Centocore)と共にインキュベートして、Nタンパク質の発現を示す。単細胞のみが感染し、隣接細胞へのウイルスの伝染は観察されなかった。(B):G特異抗体での対照。
【0138】
図14
RV(HIV)偽型ビリオンの生成に使用する機能的キメラHIV/RV糖タンパク質の組成。トランスメンブランドメインのすぐ下流にある3個のアミノ酸を除く全HIV−NL43gp160細胞質ドメインを、完全PV−G細胞質ドメインで置換した。“p”は、親タンパク質に存在しないプロリン残基を示す。細胞質ドメイン配列とトランスメンブランドメイン配列はスラッシュ(/)で離す。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】RV偽遺伝子(Ψ)の構成及び組換えRVゲノムの構築を示す図である。
【図2】全長RV cDNAを含む転写プラスミドの構築概略図である。
【図3】トランスフェクタントウイルスSAD U2のゲノム内の遺伝子タグを示す電気泳動の写真である。
【図4】SAD B19(B19)、SAD V*(V*)及びSAD W9(W9)ゲノムのPCR分析を示す電気泳動の写真である。
【図5】組換えRVSによって転写されるCAT mRNAを例示する電気泳動の写真である。
【図6】細胞培養で多数回継代した後のSAD XCAT及びSAD VCATのCAT活性を示すクロマトグラフの写真である。
【図7】組換えRVによるE0及びE2タンパク質の発現を示す電気泳動の写真である。
【図8】SAD VE0(#1及び#2)、SAD VE2(#6)及び標準狂犬病ウイルスSAD B19(#3及び#4)で免疫し、CSFVで攻撃したブタの白血球を示す図である。
【図9A】CSFV攻撃(0日)後のブタの体温を示す図である。
【図9B】CSFV攻撃(0日)後のブタの体温を示す図である。
【図10】SAD DCD感染細胞での端を切り取ったGタンパク質の発現を示す電気泳動の写真である。
【図11】細胞培養物でのSAD L16及びSAD DCDの伝染を示す顕微鏡写真である。
【図12】SAD dG(実施例7)及びSAD dCD(実施例6)に特異的なRNAの分析を示す電気泳動の写真である。
【図13】G突然変異体SAD dGの非伝染性を示す顕微鏡写真である。
【図14】RV(HIV)偽型ビリオンの生成に使用する機能的キメラHIV/RV糖タンパク質の組成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスゲノムの読み取り枠、偽遺伝子領域又は遺伝子間領域に挿入及び/又は欠失を含む遺伝子操作による伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルス突然変異体。
【請求項2】
ウイルス突然変異体が偽遺伝子領域に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項1に記載のウイルス突然変異体。
【請求項3】
ウイルス突然変異体が読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項1に記載のウイルス突然変異体。
【請求項4】
ウイルス突然変異体が基質タンパク質又はその類似体をコードする読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むため、機能的基質タンパク質が不在となり、前記突然変異体の表現型が基質タンパク質で相補化されることを特徴とする請求項3に記載のウイルス突然変異体。
【請求項5】
ウイルス突然変異体が糖タンパク質Gをコードする読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項3に記載のウイルス突然変異体。
【請求項6】
挿入及び/又は欠失により、機能的糖タンパク質Gが不在化し、前記突然変異体の表現型が糖タンパク質G類似体で相補化されることを特徴とする請求項5に記載のウイルス突然変異体。
【請求項7】
糖タンパク質G類似体が狂犬病糖タンパク質Gであることを特徴とする請求項6に記載のウイルス突然変異体。
【請求項8】
病原性ウイルス又は微生物のエピトープ又はポリペプチドをコードする異種核酸配列を保有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項9】
ウイルス突然変異体がパラミクソウイルスファミリーに属することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項10】
ウイルス突然変異体がラブドウイルスファミリーに属することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項11】
ウイルス突然変異体が狂犬病ウイルスであることを特徴とする請求項10に記載のウイルス突然変異体。
【請求項12】
ワクチンが請求項1から11のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体と医薬的に許容可能なキャリアー又は希釈剤とを含んでなることを特徴とする、哺乳動物の非セグメント化陰性鎖RNAウイルスによって引き起こされる感染を予防するためのワクチン。
【請求項13】
a)RNAポリメラーゼを発現する宿主細胞内に、
1)ウイルスのN、P及びLタンパク質又はその類似体をコードする1個以上のDNA分子と、
2)非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムのcDNAを含むDNA分子
とを導入し、
b)前記細胞によって産生されるウイルスを単離する
段階からなる伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルスの製造方法。
【請求項14】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムのcDNAが突然変異の取り込みによって改変されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスcDNAゲノムの転写体が陽性鎖抗ゲノムRNAであることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
RNAポリメラーゼが、好ましくは組換えワクシニアウイルスから発現されるT7 RNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムがパラミクソウイルスファミリーから得られることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムがラブドウイルスファミリーから得られることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムが狂犬病ウイルスから得られることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスゲノムの読み取り枠、偽遺伝子領域又は遺伝子間領域に挿入及び/又は欠失を含む遺伝子操作による狂犬病ウイルス以外の伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルス突然変異体。
【請求項2】
ウイルス突然変異体が偽遺伝子領域に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項1に記載のウイルス突然変異体。
【請求項3】
ウイルス突然変異体が読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項1に記載のウイルス突然変異体。
【請求項4】
ウイルス突然変異体が基質タンパク質をコードする読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むため、機能的基質タンパク質が不在となり、前記突然変異体の表現型が基質タンパク質で相補化されることを特徴とする請求項3に記載のウイルス突然変異体。
【請求項5】
ウイルス突然変異体が糖タンパク質Gをコードする読み取り枠に挿入及び/又は欠失を含むことを特徴とする請求項3に記載のウイルス突然変異体。
【請求項6】
挿入及び/又は欠失により、機能的糖タンパク質Gが不在化し、前記突然変異体の表現型が相補性糖タンパク質Gで相補化されることを特徴とする請求項5に記載のウイルス突然変異体。
【請求項7】
相補性糖タンパク質Gが狂犬病ウイルス糖タンパク質Gであることを特徴とする請求項6に記載のウイルス突然変異体。
【請求項8】
病原性ウイルス又は微生物のエピトープ又はポリペプチドをコードする異種核酸配列を保有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項9】
パラミクソウイルスファミリーに属することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項10】
ラブドウイルスファミリーに属することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のウイルス突然変異体と医薬的に許容可能なキャリアー又は希釈剤とを含むワクチン。
【請求項12】
a)RNAポリメラーゼを発現する宿主細胞内に、
1)ウイルスのN、P及びLタンパク質をコードする1個以上のDNA分子と、
2)非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムのcDNAを含むDNA分子
とを導入し、
b)前記細胞によって産生されるウイルスを単離する
段階からなる狂犬病ウイルス以外の伝染性複製非セグメント化陰性鎖RNAウイルスの製造方法。
【請求項13】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムのcDNAが突然変異の取り込みによって改変されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスcDNAゲノムの転写体が陽性鎖抗ゲノムRNAであることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
RNAポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼであることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
T7 RNAポリメラーゼが組換えワクシニアウイルスから発現されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムがパラミクソウイルスファミリーから得られることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
非セグメント化陰性鎖RNAウイルスゲノムがラブドウイルスファミリーから得られることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−136340(P2006−136340A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31364(P2006−31364)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【分割の表示】特願平7−181984の分割
【原出願日】平成7年7月18日(1995.7.18)
【出願人】(500215115)
【Fターム(参考)】