説明

組換え弱毒化パルボウイルス

本発明は、パルボウイルスによる感染に対して動物を防御するためのウイルスワクチン、その製造および用途の分野におけるものである。更に特に、本発明は、別のパルボウイルスから誘導可能なカプシドタンパク質またはその断片を含む弱毒化パルボウイルスを含むワクチンに関する。驚くべきことに、そのようなワクチンは、第1のタイプのパルボウイルスに対する良好な免疫を維持しうる一方で、第2のタイプのパルボウイルス株でのチャレンジに対する防御抗体の、より高い力価を誘導しうることが判明した。また、組換えウイルス株は弱毒化されたままであった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルボウイルスによる感染に対して動物を防御するためのウイルスワクチン、その製造および用途の分野におけるものである。更に特に、本発明は、新規パルボウイルス分離体から誘導可能なカプシドタンパク質またはその断片を含む弱毒化パルボウイルスを含むワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
パルボウイルスは一本鎖DNAウイルスの科に属する。パルボウイルスはネコ、イヌおよびブタのような幾つかの動物において疾患を引き起こしうる。該ウイルスは、複製するためには、活発に分裂している細胞を必要とするため、感染する組織型は動物の年齢によって様々である。胃腸管およびリンパ系はいずれの年齢でも冒される可能性があり、それにより嘔吐、下痢および免疫抑制が生じうるが、子宮内または2週齢未満で感染したネコでは小脳発育不全が見られるに過ぎず、3〜8週齢で感染した子イヌでは心筋の疾患が見られる。
【0003】
イヌパルボウイルスは、若いイヌでは特に致命的な疾患であり、約80%の致死性を示し、非常に若い子イヌにおいては胃腸管損傷および脱水ならびに心臓症候群を引き起こす。それは、感染したイヌの糞との接触により広がる。症状は嗜眠、重度の下痢、発熱、嘔吐、食欲不振および脱水を含む。ブタパルボウイルスは、死産、ミイラ化、胚死および不妊を表すSMEDIとしての公知の、ブタにおける生殖疾患を引き起こす。ネコ汎白血球減少症は子ネコで一般的であり、発熱、低白血球数、下痢および死を引き起こす。ネコ胎児および2週齢未満の子ネコへの感染は小脳発育不全を引き起こす。ミンク腸炎ウイルスは、それが小脳発育不全を引き起こさないこと以外はネコ汎白血球減少症と実質的に類似している。別のパルボウイルスは、リンパ節障害、脾腫、糸球体腎炎、貧血および死亡により特徴づけられる、ミンクおよび他のイタチ科動物におけるアリューシャン病を引き起こす。パルボウイルスの最も正確な診断はELISAによるものである。イヌ、ネコおよびブタはパルボウイルスに対してワクチン接種されうる。
【0004】
DNAレベルでは、イヌ、ネコおよびブタパルボウイルスは高度に相同なゲノムを有することが公知である。イヌパルボウイルス(CPV2)は、イヌにおける急性で時には致死性の腸炎を引き起こすウイルスである(Kelly,Aust.Vet.J.54;593,1978;Appelら,Vet.Rec.105;156−159,1979)。該ウイルスは1977年頃に最初に出現し、おそらく、ネコにおける非常に密接に関連したウイルスであるネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)から、単一カプシドタンパク質における少数の突然変異[ミンクまたはアライグマのような他の肉食動物における中間的移行を含んでいた可能性のある種間跳躍(species jump)]により生じたのであろう(Truyenら,Virology 215,186−189,1996)。
【0005】
早くも1979年に、CPV2aと称される、CPV2の最初の変異体が出現し、その後まもなく、1984年にCPV2bが出現した(Parrishら,Science 230,1046−1048,1985およびJ.Virol.65;6544−6552,1991)。
【0006】
その元の2型ウイルスは現在では野外から消え、該2aおよび2b変異体がそれに取って代わっており、これらの2つの型の相対比率は国によって様々である(Truyenら,前掲;Chinchkarら,Arch.Virol.151,1881−1887,2006;Pereiraら,Infect.Genet.Evol.3,399−409,2007)。2から2aおよび2bへの変化を特徴づける、カプシドタンパク質(VP2)におけるアミノ酸変化は非常に限定的である。87位(MetからLeuへ)、300位(GlyからAlaへ)、305位(TyrからAspへ)および555位(ValからIleへ)の置換は2から2aへの進化において生じ、426位(AsnからAspへ)および555位(IleからValへ)の置換は2aから2bへの出現において生じた(Parrishら,前掲;Truyenら,J.Virol.69,4702−4710,1995)。最近、555位のValからIleへの置換を欠く2a株が報告された(Wangら,Virus Genes 31,171−174,2005;Martellaら,Virus Genes 33,11−13,2006)。単一アミノ酸変化がCPV2aとCPV2bとのVP2配列を区別しうるらしい。
【0007】
より最近になって、426位のアミノ酸(2aではAsn、そして2bではAsp)がグルタミン酸(Glu)残基になった株がイタリアにおいて出現した(Buonavogliaら,J.Gen.Virol.82,3021−3025,2001;Martellaら,J.Clin.Microbiol.42,1333−1336,2004)。CPV2cウイルスと称されるこれらのGlu 426変異体がイタリアおよび他の欧州諸国において広がりつつあり、他のCPV型と共存しており(Decaroら,J.Vet.Med.B.Infect.Dis.Vet.Public Health 53,468−472,2006)、ベトナムおよびスコットランドのような地理的に様々な国々でも分離されている(Nakamuraら,Arch Virol.149,2261−2269,2004,Spibeyら,Vet.Microbiol 128,48−55,2008)ことは、それらがイヌ集団の少なくとも一部における利点を有することを示唆している。
【0008】
イヌパルボウイルスの相対的に急速な進化はネコ宿主域の喪失およびそれに続く再獲得をもたらしており(Truyenら,1996 前掲)、この再獲得された、ネコにおいて複製する能力は、元の2型が2a、2bおよび2c変異体によって取って代えられたこと説明しうる。1970年代後半および1980年代初期に、生および不活化FPLワクチンの両方が、交差防御を刺激する共有抗原により、CPV疾患からイヌを防御するために使用されたが、それらがもたらした防御レベルは低く、免疫持続期間は短かった。これらのワクチンは生弱毒化CPVワクチンによって取って代えられており、これは優れた防御およびより長い免疫持続期間をもたらした。現在、該生弱毒化ワクチンはCPV2b分離体または元の2型ウイルスから誘導されている。該2型ウイルスは野外では2a、2bおよび現在は2cウイルスによって完全に取って代えられているため、弱毒化2型ワクチンによりもたらされる防御レベルに関する懸念が存在する(Pratelliら,Clin.Diag.Lab.Immunol.8,612−615,2001;Truyen,Vet.Microbiol.69,47−50,1999)。
【0009】
しかし、利用可能なモノクローナル抗体での研究に基づけば、それぞれの新たな抗原変異体は、以前の変異体と比較して少なくとも1つの中和エピトープを喪失している(Strassheimら,Virology 198,175−184,1994;Pereiraら,前掲)。種々の抗原型に対して産生された血清を使用してインビトロで行われた交差中和研究が顕著な相違を示している場合であっても(Pratelliら,前掲)、生弱毒化CPV2ワクチンは2aおよび2b野外チャレンジに対してイヌを防御しうることがこれまでに示されている(Greenwoodら,Vet.Record.136,63−67,1995)。
【0010】
最近、生弱毒化2型ワクチン(Nobivac−Intervet)が、最も最近のCPV変異体であるCPV2cでのチャレンジからイヌを防御しうることが示された(Spibeyら,Vet.Microbiol 128,48−55,2008)。
【0011】
それでもなお、パルボウイルスの新型の感染に対する動物、特にネコ、イヌおよびブタの免疫を改善するワクチンが当分野において必要とされている。しかし、そのようなワクチンは存在せず、特に、イヌパルボウイルス2c型に特異的なワクチンは存在しない。
【発明の概要】
【0012】
発明の概括
本発明は前記問題の解決法を提供するものであり、弱毒化第1パルボウイルスから入手可能なDNA配列を含む組換えパルボウイルスと医薬上許容される担体とを含むワクチンを提供し、ここで、該第1パルボウイルスのカプシドタンパク質またはその断片をコードするDNAが、第2パルボウイルス、例えばイヌパルボウイルス、より詳細には2c型パルボウイルスから誘導可能なカプシドタンパク質またはその断片により置換されている。
【0013】
驚くべきことに、そのようなワクチンは、該第2イヌパルボウイルスでのチャレンジに対する防御抗体の、より高い力価を誘導しうる一方で、2型株に対する良好な免疫を維持することが可能であり、一方、該組換えイヌパルボウイルスは弱毒化されたままであることが見出された。
【0014】
発明の詳細な説明
第2イヌパルボウイルスのカプシドタンパク質をコードするウイルスDNAは、当業者の通常の技術を用いることにより、野外で分離された株から得られうる。実施例の節においては、それは、2型分離体を使用することにより例示されている。弱毒化イヌパルボウイルスからのウイルスDNAも当技術分野で利用可能であり、該実施例は、Intervetから得られるワクチン株(Nobivac parvo)に含有されている元の2型ウイルスの分離を示している。
【0015】
より詳細には、CPV 2c型野外分離体からウイルスDNAを得た。2つの重複断片が各調製物から得られるように、各DNA調製物を異なる制限酵素で消化した。断片を精製し、分離した。ついで、選択された断片を感受性細胞内にトランスフェクトした。これを図1に図示する。
【0016】
それらの2つの断片の自然組換えの後、通常の弱毒化2型ウイルスのDNA配列のコンテクストにおいて2c型分離体のカプシドタンパク質を含有するハイブリッドウイルスを得た。このウイルスを単離し、精製し、医薬上許容される担体と混合し、ワクチンとして使用した。
【0017】
該新規ワクチンの投与を受けたイヌをCPV 2c型ウイルスの野外分離体および2型ワクチンの親ウイルスでチャレンジした。
【0018】
驚くべきことに、該新規ワクチンは通常の2型分離体に対する適度な抗体力価および2c型CPVに対する防御の改善を示した。
【0019】
そのようなワクチンは、イヌパルボウイルス、特に2c型の感染に対するイヌの防御において有利に使用されうる。
【0020】
より一般には、前記の知見は、第1イヌパルボウイルスのカプシド領域を第2イヌパルボウイルスカプシド領域またはその関連断片で置換することにより、弱毒化ウイルスが別のイヌパルボウイルスの感染に対する組換えワクチンの基礎として使用されうることを示している。
【0021】
したがって、本発明は、弱毒化第1パルボウイルスから入手可能なDNA配列を含む組換えパルボウイルスに関するものであり、ここで、第1パルボウイルスのカプシドタンパク質またはその断片をコードするDNAが、第2パルボウイルスから誘導可能なカプシドタンパク質またはその断片により置換されている。
【0022】
第1および第2パルボウイルスからのカプシドタンパク質は少なくとも1つアミノ酸において異なっている必要がある。この文脈における「カプシドタンパク質またはその断片」なる語は完全長カプシドタンパク質またはその一部(これは第1パルボウイルスと第2パルボウイルスとの間のカプシドタンパク質における相違を含む)を意味する。
【0023】
好ましくは、第1パルボウイルスの完全長カプシドタンパク質は第2パルボウイルスの完全長カプシドタンパク質により置換されている。
【0024】
本明細書中で用いる「完全長」および「実質的に完全長」なる語は、該タンパク質または核酸配列が、その機能を発揮するための全ての必要な要素を含有することを示すと意図され、好ましくは、該配列は天然配列の全ての要素(アミノ酸またはヌクレオチド)を含有すべきである。
【0025】
本発明の組換えパルボウイルスは、パルボウイルスによる感染に対する動物の防御のためのワクチンにおいて有利に使用されうる。そのようなワクチンは第2ウイルスによる感染だけでなく第1ウイルスによる感染に対しても動物を防御し、一方、該組換えワクチンは弱毒化体のままであり、パルボウイルス感染のいずれの臨床的徴候をも誘導し得ないことが判明した。
【0026】
本発明はまた、
a.弱毒化第1パルボウイルス株から少なくとも1つの第1 DNA断片を得(該第1 DNA断片はカプシドタンパク質をコードしていない)、
b.第2パルボウイルス株から少なくとも1つの第2 DNA断片を得(該第2 DNA断片はカプシドタンパク質をコードしている)、
c.パルボウイルスに許容性である細胞を、工程aおよびbで得られたDNA断片でトランスフェクトし、
d.それらのDNA断片を組換え、
e.第1パルボウイルスのゲノムの遺伝的コンテクストにおいて第2パルボウイルスに由来するウイルスカプシドタンパク質をコードする弱毒化組換えウイルスを選択し、
f.細胞培養内でパルボウイルスの産生を可能にする条件下で該細胞を培養し、
g.該細胞培養から該組換えパルボウイルスを得る工程を含む、本発明の組換えパルボウイルスの入手方法に関する。
【0027】
好ましくは、該パルボウイルスはイヌパルボウイルスであり、より一層好ましくは、第1パルボウイルスは2型イヌパルボウイルスであり、第2イヌパルボウイルスは2c型イヌパルボウイルスであり、これは、2c型による感染だけでなく2型による感染に対してもイヌを防御する一方で弱毒化特性を維持しているワクチンを与える。
【0028】
弱毒化部位が該カプシドタンパク質内に存在しないことを明白に示すために、弱毒化株におけるカプシドタンパク質遺伝子を、ビルレント2c野外分離体に由来する配列を有する化学合成体により置換した。この方法も、本発明の弱毒化ウイルスを与えた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ハイブリッド2/2cウイルス分離体を得る自然組換え(非GM)法の概要図。2型ワクチンおよび2c型野外ウイルスからの2つの重複断片を細胞内にトランスフェクトし、相同組換え後にウイルスを分離した。
【図2】制限酵素部位PacIおよびXmnIを示すCPV株154attの感染性プラスミドクローンの概要図。陰影付きの箱は末端回文配列を表す。
【図3】更なる操作のために選択された部分的PacI/XmnI消化物の、選択された産物を示す概要図。
【図4】カプシド遺伝子がビルレントCPV2cカプシド配列により置換された、154attワクチンウイルスDNAを含有するプラスミド。 実施例
【実施例1】
【0030】
組換えウイルスの作製
商業的に入手可能なNobivac Parvo C(Intervet Schering−Plough Animal Health)から株154attを得た。株Jessは2c型ウイルスの野外分離体であった。
【0031】
5% ウシ胎児血清を含有するM6B8培地を使用して、付着性イヌまたはネコ腎細胞(例えば、A72およびCrFK)上でウイルスを増殖させた。標準的な「ヒルト(Hirt)」法(McMasterら 1981)の変法を用いて、感染細胞培養から複製形態(RF)DNAを調製した。
【0032】
154 att株から調製されたRF DNAを制限酵素PstIで消化し、該断片をアガロースゲル電気泳動により分離した。3055塩基対(bp)のバンド(CPVの左側末端に対応する)を該ゲルから切り出し、Qiagen Qiaquickゲル抽出カラムを使用して精製した。CPV Jess感染細胞から分離されたRF DNAを制限酵素XmnIで消化した。再び該DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分離し、ついで、Qiagen Qiaquickゲル抽出カラムを使用して約2750bpのバンド(カプシド配列を含むCPVの右側末端に対応する)を精製した。
【0033】
154attおよびJessからの精製3055bpおよび2750bp断片を合わせ、培養内のA72またはCrFK細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクションは、約3μgの各断片と共にLipofectamine 2000(Invitrogen)を該製造業者の説明に従い使用して行った。
【0034】
トランスフェクション後、細胞を継代し、赤血球凝集(HA)アッセイによりモニターした。継代4においてウイルスがHAにより検出された。ハイブリッドウイルスのDNA配列決定を、RF DNAまたはPCR断片鋳型を使用する標準的なDNA配列決定法を用いて行った。ウイルスを付着性感受性イヌまたはネコ細胞上で限界希釈により精製した
【実施例2】
【0035】
クローン化ウイルスDNAから構築された組換えウイルス
組換えウイルスをクローン化断片から作製した。ウイルス株154attのゲノムを標準的なクローニングベクターpBluescript(Stratagene inc.)内にクローニングした。回文末端配列を完全なままに維持するために、幾つかの組換え系が欠損している細菌宿主DL795内で該プラスミドを増殖させた。パルボウイルスゲノムのクローニングは文献に記載されており、要求される技術は当業者に公知である。
【0036】
154attの得られたクローン(p154)を制限酵素PacIで消化した。この場合、該消化が完全には進行しないように、すなわち、該制限酵素消化が部分的のみとなるようにした。ついで該消化断片を制限酵素XmnIでの消化に付した。ついで該消化DNA断片をアガロースゲル電気泳動により分離し、後記図に示されている断片を該ゲルから切り出し、Qiagen Qiaquickゲル抽出カラムを使用して精製した。XmnIおよび右側Pac部位は該パルボウイルスゲノム内のカプシド領域に隣接している。
【0037】
154attのカプシド遺伝子を以下のとおりにCPVのビルレント株のカプシド遺伝子により置換した。図2に示されているXmnI部位および右側PacIはカプシド遺伝子の境界の外側に位置する。PacI部位と該カプシド遺伝子の末端との間の約110bpの配列は154att株とビルレント分離体とで有意に異なる。XmnI部位と該カプシド遺伝子の開始部位との間の短い配列(〜55bp)における配列変化は未だ示されていない。したがって、成分の置換を該カプシド配列のみに限定するために、該ビルレントCPVカプシド配列を化学合成し、PacI部位とカプシド終止シグナルとの間のワクチン特異的配列を維持させた。以下に、CPVカプシド遺伝子を含有する化学合成配列を示す。以下に示す配列は本明細書においては配列番号1として記載されている。
【0038】
【化1】


XmnIおよびPacI部位が下線で示されている。カプシドコード領域の終止コドン(TAA)が示されている。カプシド(Vp1/Vp2)コード配列が太字で示されている。
【0039】
該合成断片を、酵素XmnIおよびPacIを使用してそれが付与されたプラスミドから遊離させ、ついでそれを、図3に示されている断片に連結した。標準的な方法を用いて、コンピテント大腸菌(E.coli)(株DL795)を該連結混合物で形質転換し、該組換えプラスミドを含有する細菌を単離し、同定した。ついで、該クローン化大腸菌(E.coli)から、後記(図4)に示されている生じたプラスミドp1542cを調製した。
【0040】
以下のとおりにハイブリッドウイルスを調製した。プラスミドp1542c DNAを培養内のA72またはCrFK細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクションは、約3μgのDNAと共にLipofectamine 2000(Invitrogen)を該製造業者の説明に従い使用して行った。トランスフェクション後、細胞を継代し、赤血球凝集(HA)アッセイによりモニターした。継代4においてウイルスがHAにより検出された。ハイブリッドウイルスのDNA配列決定を、RF DNAまたはPCR断片鋳型を使用する標準的なDNA配列決定法を用いて行った。ウイルスを付着性感受性イヌまたはネコ細胞上で限界希釈により精製した
【実施例3】
【0041】
インビボ試験
ワクチン接種されていない母イヌから生まれた(したがって、CPVに対する母体由来抗体を欠いている)ワクチン接種されていない6週齢のSPF子イヌの3つの群に、2/2cハイブリッドウイルス、および親ウイルス(2型ワクチンおよび2c型野外ウイルス)のそれぞれを接種した。動物を臨床的に監視し、血液サンプルを採取した。
【0042】
群1は、2型CPVを含む通常のIntervetワクチンであるParvo Cで皮下ワクチン接種された5匹のイヌを含んでいた。群2は、新規ハイブリッド2/2cワクチンで107.5 TCID50/mlで皮下ワクチン接種された5匹のイヌを含んでいた。
【0043】
群1のイヌは、2型ウイルスに対する特異的抗体の、該ハイブリッドの場合より高い力価を示すことが判明した。これに対して、群2のイヌは、該ハイブリッドウイルスに対する血清中和(SN)力価、および赤血球凝集抑制(HAI)の、より高い力価を示した。
【0044】
したがって、該ハイブリッドウイルス株は、通常の2型ウイルス株に関する適度な防御を維持する一方で、CPV 2c型による感染に対する防御の改善をもたらすと結論づけられうる。
【0045】
既存ワクチンが接種されたイヌはいずれも、疾患の徴候を示さなかったが、野外ウイルスが接種された対照イヌは重篤な出血性腸炎を示す。したがって、本発明者らは、驚くべきことに、CPVにおける主要な弱毒化突然変異がカプシドタンパク質遺伝子の外部に位置することを見出した。
【実施例4】
【0046】
安全性試験
母体由来抗体(MDA)を有する子イヌにおける2/2cハイブリッドウイルスの安全性を調べるための研究を行った。ワクチン接種された全ての子イヌは該研究の全体にわたって完全に正常なままであった。更に、該ハイブリッドウイルスでワクチン接種されたイヌは良好な血清学的応答を示した。このことは、該ハイブリッドウイルスが通常レベルのMDAを打ち破ること(これは、有効なイヌパルボウイルスワクチンの必須要件である)が可能であったことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化第1パルボウイルスから入手可能なDNA配列を含む弱毒化組換えパルボウイルスであって、該第1パルボウイルスのカプシドタンパク質またはその断片をコードするDNAが、第2パルボウイルスから誘導可能なカプシドタンパク質またはその断片により置換されている、弱毒化組換えパルボウイルス。
【請求項2】
弱毒化第1パルボウイルスから入手可能なDNA配列が実質的に完全長である、請求項1記載の組換えパルボウイルス。
【請求項3】
該第2パルボウイルスからのカプシドタンパク質が実質的に完全長である、請求項1または2記載の組換えパルボウイルス。
【請求項4】
該パルボウイルスが、イヌパルボウイルス、ネコパルボウイルスおよびブタパルボウイルスからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の組換えパルボウイルス。
【請求項5】
該第1パルボウイルスが2型イヌパルボウイルスであり、および/または該第2パルボウイルスが2c型イヌパルボウイルスである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組換えパルボウイルス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の組換えパルボウイルスと医薬上許容される担体とを含む、パルボウイルスによる感染に対する動物の防御のためのワクチン。
【請求項7】
a.カプシドタンパク質をコードしない少なくとも1つのDNA断片を弱毒化第1パルボウイルス株から得、
b.カプシドタンパク質をコードする少なくとも1つのDNA断片を第2パルボウイルス株から得、
c.パルボウイルスに許容性である細胞を、工程aおよびbで得られたDNA断片でトランスフェクトし、
d.それらのDNA断片を組換え、
e.該第1パルボウイルスのゲノムの遺伝的コンテクストにおいて該第2パルボウイルスに由来するウイルスカプシドタンパク質をコードする弱毒化組換えウイルスを選択し、
f.細胞培養内でパルボウイルスの産生を可能にする条件下で該細胞を培養し、
g.該細胞培養から該組換えパルボウイルスを得る工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の組換えパルボウイルスの入手方法
【請求項8】
該パルボウイルスが、イヌパルボウイルス、ネコパルボウイルスおよびブタパルボウイルスからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該第1パルボウイルスがイヌパルボウイルス2型株であり、該第2パルボウイルスがイヌパルボウイルス2c型株である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
パルボウイルスによる感染に対する動物の防御のための、請求項6記載のワクチンの使用。
【請求項11】
該パルボウイルスがイヌパルボウイルス、特にイヌパルボウイルス2c型である、請求項10記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−520977(P2013−520977A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555424(P2012−555424)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053164
【国際公開番号】WO2011/107534
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】