説明

組換え皮膚壊死トキソイドを含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤

【課題】 組換え皮膚壊死トキソイドを含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤を提供する。
【解決手段】 ボルデテラ・ブロンキセプチカが産生する皮膚壊死毒素(Bb-DNT)のトランスグルタミナーゼ活性中心領域のアミノ酸をアラニンに置換することにより無毒化した組換えBb-DNT(組換えBb-DNTトキソイド)を有効成分として含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤及びその製造方法、並びに該組換えBb-DNTトキソイドと他の豚感染症ワクチンとを混合してなる混合ワクチン。前記のアミノ酸置換は、配列番号1の1305位、1320位、1322位又は1323位の少なくとも一つの部位で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、皮膚壊死トキソイドを含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤に関する。詳細には、ボルデテラ菌産生皮膚壊死毒素のアミノ酸配列の特定部位に変異を入れることにより得られる組換え皮膚壊死トキソイドを有効成分として含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
豚の萎縮性鼻炎(atrophic rhinitis;AR)は、鼻甲介形成不全あるいは萎縮を特徴とする呼吸器系疾患である。発育遅延、二次感染の誘発などにより、重大な経済的損失をもたらすため、養豚業界にとって重大な疾病である(例えば、非特許文献1参照)。その原因菌としてボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica;以下Bbと略すこともある)及び毒素産生性パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida;以下Pmと略すこともある)が知られている。
Bbは定着因子である赤血球凝集素や線毛を保有しているため、鼻粘膜に対する定着性が強いが、それを保有していないPmは単独では定着することが困難である。そのため、毒素産生性Pm感染が成立するためにはあらかじめ鼻粘膜を障害する因子の存在が必要である。その最も代表的な因子がBbの産生する皮膚壊死毒素(以下Bb-DNTと略す)である。障害を受けた鼻粘膜に毒素産生性Pmが定着し、産生される毒素(PmTと略す)によりARの症状が悪化すると考えられている。
【0003】
Bb-DNTは出血壊死、鼻甲介萎縮、発育遅延、血管平滑筋収縮、局所の血行障害、脾臓萎縮及び抗体産生阻害などの生物学的活性を持つ。それ故、古くからBb-DNTをトキソイド化したワクチンの必要性が指摘されていた(例えば、非特許文献2参照)。これまでに、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、非特許文献3参照)、透析、ショ糖密度勾配超遠心及びゲルろ過クロマトグラフィー(例えば、非特許文献4参照)、核酸除去剤及び陽イオン交換クロマトグラフィーの組み合わせ(例えば、非特許文献5参照)などの方法により精製したBb-DNTについてトキソイドワクチンの作製が試みられたが、いずれも再現性や製造コスト上の問題で商品化には至っていない。唯一、硫酸基を導入したクロマト担体ゲル(例えば、特許文献1参照)で精製されたBb-DNTのトキソイドワクチンが製品化に成功している。
現在、ARを予防するための単味不活化ワクチンとしてBb死菌ワクチン、Bbの産生する繊維状赤血球凝集素を主成分とするコンポーネントワクチン、PmTトキソイド、及びこれらを混合したPm死菌とBb死菌の混合ワクチン、PmTトキソイドとBb死菌の混合ワクチン、Bb-DNTトキソイドとPmTトキソイドの混合ワクチンが実用化されている。何れもホルマリン等で化学的に不活化したトキソイドが使用されている。
【0004】
Bb-DNTに関しては、その塩基配列や機能解析が行なわれている。Kashimotoらは、Bb-DNTが1,464個のアミノ酸からなる一本鎖のタンパク質でこと、そのN末端側には細胞レセプターの結合領域、C末端側1,176-1464位のアミノ酸領域にはトランスグルタミナーゼ活性領域が存在すること及びトランスグルタミナーゼ活性領域の活性中心のアミノ酸が1305位のシステインであることを示した(例えば、非特許文献6参照)。
一方で、Pullingerらは、1323位のリジンをアラニンに置換すると酵素活性が消失すること(例えば、非特許文献7参照)、Schmidtらは、Bbの近縁種で人に百日咳を引き起こす百日咳菌(Bordetella pertussis)に由来するDNT(以下Bp-DNTと略す)を用い、1320位のヒスチジンをアラニンに置換することで酵素活性が消失すること(例えば、非特許文献8参照)を報告している。しかしながら、これらの酵素活性を消失した改変型毒素がワクチンとしての抗原性を保持しているかについては明らかにされていない。その他にも大腸菌におけるBb-DNTの全長あるいは一部の遺伝子の発現が試みられているがワクチンとしての有効性についての報告はない(例えば、非特許文献9、10)。
【0005】
【非特許文献1】柏崎ら., 豚病学第4版, 286-294, 1999
【非特許文献2】Roop II et al., Infect. Immun., 55:217-222, 1987
【非特許文献3】Kume et al., Infect. Immun., 52:370-377, 1986
【非特許文献4】Endoh et al., Microbiol. Immun., 30:659-673, 1986
【非特許文献5】Horiguchi et al., FEMS Microbiol. Lett., 66:39-44, 1990
【非特許文献6】Kashimoto et al., Infect. Immun,. 67:3727-3732, 1999
【非特許文献7】Pullinger et al., Infect. Immun., 64:4163-4171, 1996
【非特許文献8】Schmidt et al., J.Biol.chem., 274:31875-31861, 1999
【非特許文献9】Horiguchi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94:11623- 11626, 1997
【非特許文献10】Matsuzawa et al., J. Biol. Chem., 279: 2866-2872, 2004
【特許文献1】特許第3884066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ARを予防するための死菌ワクチンやコンポーネントワクチンが実用化され、養豚業界に大いに貢献しているものの、コスト、安全対策、ワクチンの品質向上において改善・改良の余地がある。
したがって、本願発明が解決しようとする課題は、ARの発症阻止に有効で、且つ安全性、低コスト、安定供給を満足させることができる、組換え皮膚壊死トキソイドを有効成分として含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤を提供することにある。ここで、本願発明においては、組換え皮膚壊死トキソイドとは、遺伝子組み換え技術により改変されたアミノ酸配列を有する、免疫原性を保持したまま無毒化(トランスグルタミナーゼ活性の失活)された皮膚壊死毒素と定義される。また、本願発明における「薬剤」とは、治療及び予防に適用される医薬組成物と定義される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ボルデテラ・ブロンキセプチカが産生する皮膚壊死毒素(Bb-DNT)のトランスグルタミナーゼ活性中心領域の特定のアミノ酸を置換したところ、Bb-DNTが免疫原性を保持したまま無毒化されることを発見し、本願発明を完成するに至った。すなわち、本願発明は以下のとおりである。
〔1〕皮膚壊死毒素のアミノ酸配列を改変した改変アミノ酸配列からなる組換え皮膚壊死トキソイドを有効成分として含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤。
〔2〕皮膚壊死毒素が、ボルデテラ菌由来である、〔1〕記載の薬剤。
〔3〕ボルデテラ菌がボルデテラ・ブロンキセプチカ、百日咳菌及びパラ百日咳菌からなる群より選択される、〔2〕記載の薬剤。
〔4〕改変アミノ酸配列が、トランスグルタミナーゼ活性中心領域のアミノ酸を改変したものである、〔1〕ないし〔3〕の何れかに記載の薬剤。
〔5〕改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位、1320位、1322位又は1323位の少なくとも一つのアミノ酸を置換したものである、〔1〕ないし〔3〕の何れかに記載の薬剤。
〔6〕改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位又は1320位のアミノ酸を置換、及び/又は1322位及び1323位の2アミノ酸を1アミノ酸に置換したものである、〔1〕ないし〔3〕の何れかに記載の薬剤。
〔7〕置換後のアミノ酸がアラニンである、〔5〕又は〔6〕記載の薬剤。
〔8〕〔1〕ないし〔7〕の何れかに記載の薬剤と他の豚感染症ワクチンを含有する、混合ワクチン。
〔9〕下記(1)から(4)の工程を含む、豚萎縮性鼻炎用薬剤の製造方法。
(1)皮膚壊死毒素のアミノ酸配列を改変した改変アミノ酸配列からなる組換え皮膚壊死トキソイドを産生する皮膚壊死トキソイド産生宿主を調製する工程、
(2)前記(1)の皮膚壊死トキソイド産生宿主を培養する工程
(3)前記(2)の培養物から可溶性に発現した皮膚壊死トキソイドを回収・精製する工程、
(4)前記(3)の皮膚壊死トキソイドを製剤化する工程
〔10〕皮膚壊死毒素がボルデテラ菌由来である、〔9〕記載の製造方法。
〔11〕ボルデテラ菌がボルデテラ・ブロンキセプチカ、百日咳菌及びパラ百日咳菌からなる群より選択される、〔10〕記載の製造方法。
〔12〕宿主が大腸菌である、〔9〕ないし〔11〕の何れか一項記載の製造方法。
〔13〕改変アミノ酸配列が、トランスグルタミナーゼ活性中心領域のアミノ酸を改変したものである、〔9〕ないし〔12〕の何れか一項記載の製造方法。
〔14〕改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位、1320位、1322位又は1323位の少なくとも一つのアミノ酸を置換したものである、〔9〕ないし〔12〕の何れか一項記載の製造方法。
〔15〕改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位又は1320位のアミノ酸を置換、及び/又は1322位及び1323位の2アミノ酸を1アミノ酸に置換したものである、〔9〕ないし〔12〕の何れか一項記載の製造方法。
〔16〕置換後のアミノ酸がアラニンである、〔14〕又は〔15〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本願発明に従えば、組換え皮膚壊死トキソイドを用いた豚萎縮性鼻炎用薬剤が提供される。本発明の組換え皮膚壊死トキソイドは、皮膚壊死毒素を遺伝子レベルで無毒化し、組換え技術を用いて生産されるので、製造過程において生菌を扱うことはなく、また、毒素を不活化するためのホルマリン等の化学薬品を使用する必要もない。したがって、本願発明に従えば、これらの因子から生じる危険性を排除することができる。更に、本願発明に従えば、生菌の培養、培養物又はその破砕物からの毒素の精製、化学薬品による毒素の不活化等の煩雑な操作を要する従来の方法と比べて、一定品質の皮膚壊死トキソイドを生産することができる。
また、例えば、本願発明の組換え皮膚壊死トキソイドの一例である、大腸菌内に発現したBb-DNTトキソイドは、通常の大腸菌を用いた遺伝子組換え蛋白に見られるインクルージョンボディーを形成せず可溶性蛋白として得られるので、リホールディング操作を行なう必要が無く、製造コストの低減が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明は、特定のアミノ酸を改変することにより、免疫原性を保持したまま無毒化した皮膚壊死毒素(組換え皮膚壊死トキソイド)を豚萎縮性鼻炎の薬剤として使用することに特徴がある。
【0010】
本願発明には、特定のアミノ酸を改変することにより免疫原性を保持したまま無毒化され、且つ豚萎縮性鼻炎の薬剤として有効であるならば、何れの細菌由来の皮膚壊死毒素も使用できる。好ましくは、ボルデテラ菌の皮膚壊死毒素が使用される。Bb-DNTの塩基配列は、百日咳菌の皮膚壊死毒素(Bp-DNT)及びパラ百日咳菌の皮膚壊死毒素(以下、「Bpp-DNT」と称することもある)の塩基配列と99%のホモロジーがあり(非特許文献6、Kimberly E Walker and Alison Ann Weiss Infection and Immunity 62,3817-3838,1994 参照)、Bb-DNT、Bp-DNT及びBpp-DNTは、互いに類似した構造及び抗原性を有していると推測される。一方で、Bp-DNTは、豚の萎縮性鼻炎を防御するためのワクチンの代替品として利用できることが報告されている(特開平10-251298号公報参照)。したがって、本願発明には、Bb-DNT、Bp-DNT及びBpp-DNTを使用するのが好ましく、豚萎縮性鼻炎の病原菌に由来するBb-DNTが最も好ましい。これらを遺伝子組み換え技術により無毒化したものは、本願発明の組換え皮膚壊死トキソイドに包含される。
【0011】
また、上記の組換え皮膚壊死トキソイドは、他の豚感染症のワクチンと混合することにより、数種の豚感染症を同時に防御するための混合ワクチンとして使用することができる。このような他の豚感染症ワクチンとしては、豚日本脳炎ワクチン、豚伝染性胃腸炎ワクチン、豚流行性下痢症ワクチン、豚パルボウイルス感染症ワクチン、豚ゲタウイルス感染症ワクチン、豚オーエスキー病ワクチン、豚丹毒ワクチン、豚繁殖・呼吸器障害症候群ワクチン、豚アクチノバシラス・プルロニューモニエ感染症ワクチン、豚ヘモフィルス・パラスイス感染症ワクチン、豚大腸菌性下痢症ワクチン、豚マイコプラズマ・ハイオニューモニエ感染症ワクチンなどが挙げられる。
本願発明においては、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)が産生するBb-DNTを無毒化したトキソイド(Bb-DNTトキソイド)に関して詳述する。
【0012】
(1)Bb-DNT遺伝子のクローニング
Bb-DNT遺伝子は、ボルデテラ・ブロンキセプチカ菌を培養した培養菌液から以下の方法により取得される。ボルデテラ菌の菌株には特に制限はないが、本願発明では、財団法人化学及血清療法研究所において1988年に野外材料より分離され維持されたボルデテラ・ブロンキセプチカ S611株を使用した。
【0013】
ボルデテラ・ブロンキセプチカの増殖には、例えば、マッコンキー培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、ボルデ・ジャング培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、堀口らの培地(Horiguchi et al., Microb. Pathog., 6:361-368,1989)などが用いられる。細菌の分離、マスターシードの調製、大量培養など、目的に合わせて、適宜選択すれば良い。本願発明では、小・中容量の菌体増殖のために堀口らの培地を使用した。使用前に添付のプロトコールに従ってpHを6.8〜7.6に調整した後に115℃、25分間の高圧蒸気滅菌が行なわれる。培養条件は、通常、温度36〜38℃、期間1〜5日間の範囲で設定されるが、使用目的、培養形態、植え付けた菌量、培地スケール等に応じて適宜調節すれば良い。
【0014】
培養液中の菌体は、低速遠心(5000rpm、5〜10分間)により沈渣に回収される。ボルデテラ・ブロンキセプチカのBb-DNTをコードする遺伝子は、菌体から抽出したゲノムDNAを出発材料として、Sambrookらが述べている一般的な遺伝子組換え技術(Molecular Cloning, A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989)に従って調製することができる。実際には、種々の市販のキットが使用される。例えば、ゲノムDNAの取得には、ISOPLANT(和光純薬)、インスタジーン(日本バイオ・ラッド株式会社)、E.Z.N.A. Bacterial DNA kit(フナコシ株式会社)、MagPrep Bacterial Genomic DNA kit(タカラバイオ株式会社)、DNAアイソレーションキット(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)、QIAamp DNA Mini Kit(株式会社キアゲン)などのキットが使用され、遺伝子の取得には、制限酵素切断による方法及びPCR法を応用した、Takara Ex Taq(タカラバイオ株式会社)、iTaq DNA polymerase(日本バイオ・ラッド株式会社)、KOD DNA polymerase(東洋紡績株式会社)、Taq DNA polymerase(株式会社キアゲン)などが使用される。また、得られた遺伝子をクローニングするときには、TOPO-TAクローニングキット(インビトロジェン株式会社)、pT7 BlueT-Vector(タカラバイオ株式会社)、QIAGEN PCR Cloning Kit(株式会社キアゲン)などのキットが使用される。
【0015】
より具体的には、低速遠心により回収された菌体からからISOPLANT(和光純薬)を用いて染色体DNAを抽出し、この染色体DNAを鋳型(テンプレート)として、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、添付のプロトコールに従い、PCR法によりBb-DNTをコードする遺伝子領域が増幅される。PCRに用いるプライマーは、GenBank Accession No. U59687に登録された塩基配列に基づいて設計される。このとき上流側プライマーの5’末端及び下流側プライマーの5’末端に適当な制限酵素切断部位の塩基配列が付加される。PCR増幅産物は、遺伝子クローニングベクター、pCR-XL-TOPO(インビトロジェン株式会社)にクローニングされ、DNAシークエンサー(ABI Prism 310 Genetic Analyzer、アプライドバイオシステムズ社)により塩基配列の決定が行われる。その塩基配列からアミノ酸配列を推測することができる。こうしてBb-DNT遺伝子が挿入されたプラスミドpCRDNTが取得される。本願発明のBb-DNT遺伝子は配列番号1で示したアミノ酸配列を有するものである。
(2)Bb-DNT遺伝子への変異導入
Bb-DNT遺伝子の一部に変異を入れる場合は、PCRを利用したサイトダイレクティドミュータジェネシス法を使用するのが一般的である(佐々木博己、ここまでできるPCR最新活用マニュアル、112-120、2004、羊土社)。実際には、タカラバイオ株式会社のSite-Directed Mutagenesis System (Mutan-Super Express Km、Mutan-Express Km、Mutan-Kなど)、 ストラタジーン・ジャパン株式会社のQuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit、QuickChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit、インビトロジェン株式会社のGeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemなどの市販のキットを用い添付のプロトコールに従って行うことも可能である。本願発明においては、Bb-DNT遺伝子への変異導入は、inverse PCR法により行われた。
【0016】
Bb-DNT遺伝子の一部に変異を入れる場所としては、Bb-DNTの免疫原性を保持し、且つトランスグルタミナーゼ活性を消失させることができるならばいずれの部位であっても良い。好ましくは、トランスグルタミナーゼの活性中心に変異が入れられる。変異の方法として、アミノ酸の置換、欠失、付加などが挙げられるが、いずれの方法も取り得る。好ましくは、アミノ酸が他のアミノ酸に置換される。更に、好ましくは、アミノ酸の置換と欠失の組合せで変異が入れられる。例えば、Bb-DNTの1305位(Cys)、1320位(His)、1322位(Gly)又は1323位(Lys)がアラニンに置換される。このようなアミノ酸の変異を入れることによりトランスグルタミナーゼ活性(皮膚壊死毒性)のみを消失させ、中和抗体を誘導できるエピトープを保持したBb-DNTトキソイドが取得できる。Bb-DNTに変異を入れる際の鋳型として、前述のクローニング時のプラスミドDNA又は後述の発現ベクターに挿入後のプラスミドDNAが使用される。具体的には、1305位(CysをAlaに置換)を改変したBb-DNT遺伝子、1320位(HisをAlaに置換)及び1322位と1323位(GlyとLysの2個のアミノ酸を1個のAlaに置換)を改変したBb-DNT遺伝子、1305位(CysをAlaに置換)、1320位(HisをAlaに置換)及び1322位と1323位(GlyとLysの2個のアミノ酸を1個のAlaに置換)を改変したBb-DNT遺伝子がそれぞれpUC119に挿入されたプラスミドpUCDNT-M1305、pUCDNT-M1320/1322/1323及びpUCDNT-M1305/1320/1322/1323を調製した。
【0017】
(3)Bb-DNT遺伝子の発現
こうして得られたクローニングベクターからBb-DNT遺伝子又は改変したBb-DNT遺伝子を切り出し、適当な発現ベクターに組み込み、当該発現ベクターを宿主に導入することによって、Bb-DNT又はその改変体遺伝子の発現が行なわれる。外来蛋白の発現には細菌、酵母、動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞などが常用される。Bb-DNTトキソイドを発現させる場合は、いずれの宿主も利用できるが、宿主に毒性を示さない大腸菌等の細菌が好ましい。大腸菌発現用に、trcプロモーター、T7プロモーター、cspAプロモーターなどのプロモーター領域を有する種々の発現ベクターが開発・市販されているのでこれらの中から適宜選択して使用すれば良い。本発明の抗原として使用されるBb-DNTトキソイドは、不溶性の封入体として発現させた場合、一旦、タンパク変性剤、例えば、塩酸グアニジンや尿素で溶解しても、これを除去するときに容易に凝集される性質を有する。したがって、本発明のBb-DNTトキソイドは、可溶性に発現させるのが好ましい。大腸菌においてBb-DNTトキソイドを可溶性に発現させる方法として、低温で培養する方法、低濃度の誘導剤で発現誘導する方法、分泌シグナルペプチドを付加して発現させる方法及びシャペロン蛋白と共発現させる方法が挙げられるが、何れの方法を使用しても良い。発現ベクターに合わせて適当な大腸菌、例えば、BL21、HMS174、DH5α、HB101、JM109などが宿主として選択される。本願発明では、低温で蛋白発現を誘導できるcspAプロモーターを有するpColdベクター(タカラバイオ株式会社)を用いた。大腸菌の形質転換は、市販のコンピテントセルを用い、添付の方法に従って行うことができる。こうしてBb-DNTおよびその改変型のBb-DNTトキソイドを産生する大腸菌DNT-M1305、DNT-M1320/1322/1323及びDNT-M1305/1320/13222/1323が得られる。大腸菌の培養に使用される培地(例えば、LB、SOC、SOBなど)及び形質転換体の選択に用いられる試薬(例えば、アンピシリンなど)は、一般に市販されているものを使用すれば良い。また、培地のpHは、大腸菌の増殖に適した範囲(pH6〜8)で用いられる。
【0018】
Bb-DNT及びその変異蛋白を発現している組換え大腸菌のスクリーニングは、以下のように行われる。発現誘導剤(本発明に使用した発現システムではIPTGを使用)の存在下に、培養・増殖した菌体を低速遠心分離により回収し、これに一定の緩衝液(例えば、10mM Tris(pH 8)、100mM NaCl、1mM EDTA)を加え懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、高圧ホモジナイザー等により菌体を破砕し、高速遠心(15000rpm、15分間)により沈渣又は上清に分離・回収する。緩衝液には界面活性剤(例えば、Triton X100)、リゾチーム等を添加しても良い。上清及び沈渣に回収したBb-DNTの一定量をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、クマシーブリリアントブルーで染色した後、分子サイズ及び染色像からBb-DNT蛋白の発現を確認する。沈渣に回収したBb-DNTは、一般的にインクルージョンボディーと呼ばれる。なお、Bb-DNT蛋白の確認(または検出)には、上記の分子サイズに基づく方法以外に、ELISA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法などの抗原抗体反応に基づく方法が取られることもある。いずれも大腸菌で発現させた外来蛋白を検出する際の一般的な方法であり、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
斯かるBb-DNT又はBb-DNTトキソイド産生大腸菌からこれらの蛋白を精製する際には、一般に、蛋白質化学において使用される精製方法、例えば、遠心分離、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲルろ過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法を組み合わせた方法が使用される。Bb-DNT及びBb-DNTトキソイドは、陽イオン交換クロマトグラフィーにより容易に精製することができる。得られた蛋白質の量は、BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce Biotechnology, Inc)、プロテインアッセイキット(日本バイオ・ラッド株式会社)などを用いて測定される。
【0020】
(4)Bb-DNTトキソイドの毒性評価
精製したBb-DNT及びBb-DNTトキソイドの毒力は、一定量を小動物、例えば、マウス、ラットなどの体内に直接注射し、その半数致死量により評価される。例えば、リン酸緩衝液、蒸留水、生理食塩水などの適当な緩衝液でBb-DNT又はBb-DNTトキソイドを希釈し、これをマウスの腹腔内に注射し、その半数の生死を観察することにより行なわれる。あるいは希釈したトキソイドをモルモットの皮内に投与して皮膚壊死斑の形成の有無により判定する方法を用いることもある。
【0021】
(5)Bb-DNTトキソイドのワクチンとしての評価
Bb-DNTトキソイドのワクチンとしての評価は、前述の毒性評価と同様に、小動物に免疫した後、致死量のBb-DNTを投与することにより調べることができる。免疫方法(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、経鼻、経口、舌下等の投与部位、免疫期間等)は、通常ワクチン等の免疫原性を調べる時に使用される一般的な手法に従い行えば良い。陽性コントロールとして、ホルマリン処理により無毒化したBb-DNT(以下、「ホルマリン処理Bb−DNT」と称することもある)、陰性コントロールとして、リン酸緩衝液、生理食塩水、精製水などが用いられる。アジュバントとして、Bb-DNTトキソイド及びホルマリン処理Bb−DNTに、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミネラルオイル及びノンミネラルオイル等を添加することがある。こうして調製されたBb-DNTトキソイドワクチン及びコントロールワクチンを、一群、5〜10匹のマウスの腹腔内に、2週間後に同量を腹腔内に投与し、2回目投与後、2週後に半数致死量の10倍量以上のBb-DNTを投与する。その後、7〜14日間、マウスの生死を観察することにより、Bb-DNTトキソイドの免疫応答能の評価が行なわれる。本発明のBb-DNTトキソイドは、AR発症を防御するためのワクチンとして有効な材料となり得るものである。
【0022】
したがって、本発明のBb-DNTトキソイドは、上記のアジュバントに加えて、一般に用いられる添加剤、例えば、安定化剤(アルギニン、ポリソルベート80、マクロゴール4000など)、賦型剤(マンニトール、ソルビトール、スクロース)などを添加し、無菌濾過、分注、凍結乾燥等の処理を行い製剤化され、注射剤としてあるいは経粘膜的に投与(経鼻、経口、舌下)される製剤として、ARの感染・発症を防御するためのワクチンとして使用される。以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0023】
《ボルデテラ属菌Bb-DNT遺伝子のクローニング》
Bordetella bronchiseptica S611株(財団法人 化学及血清療法研究所において1988年に野外材料より分離され維持された株)を使用した。これをHoriguchiらの培地(表1に組成表を示す)に接種し、37℃で1日間培養した。遠心により菌体を回収し、ISOPLANT(和光純薬)を用いて染色体DNAを抽出した。Horiguchiらの培地は、pH6.8〜7.6に調整し、115℃、25分間高圧蒸気滅菌を行なった。
【0024】
【表1】

【0025】
この染色体DNAをテンプレートとし、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、PCR法によりBb-DNT遺伝子領域を増幅した。増幅に用いたPCRプライマーは、GenBank Accession No. U59687に登録された塩基配列より設計した(配列番号2及び3)。増幅産物の5’側にはPci Iサイト、3’側にはBamHIサイトが付加される。PCRは、94℃、60秒反応後、94℃、30秒と68℃、5分間を20回繰り返し、その後72℃、10分間反応させた。
PCR増幅産物をpCR-XL-TOPO(インビトロジェン株式会社)と混合し、添付の方法に従って反応後、反応液をTOP10F’(インビトロジェン株式会社)に加え、常法により形質転換を行った。カナマイシン添加サークルグロー寒天培地(フナコシ株式会社)で37℃、1夜培養し、出現したコロニーから、Bb-DNT遺伝子が挿入されたプラスミドpCRDNTを得た。
【実施例2】
【0026】
《Bb-DNT発現ベクターの構築》
実施例1で得られたpCRDNTを鋳型として、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いて、PCR法によりBb-DNT遺伝子領域を増幅した。増幅に用いたPCRプライマーは、GenBank Accession No. U59687に登録された塩基配列より設計した(配列番号4及び5)。増幅産物の5’側には制限酵素Kpn Iサイト、3’側には制限酵素BamHIサイトが付加される。PCRは、94℃、60秒反応後、94℃、30秒と68℃、5分間を20回繰り返し、その後72℃、10分間反応させた。増幅した断片をKpnI及びBamHIで処理し、あらかじめKpnI及びBamHIで消化したpColdIV(タカラバイオ株式会社)と混合し、16℃で30分間ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応液をDH5αコンピテントセルに加え、常法により形質転換を行った。アンピシリン添加サークルグロー培地に接種し、37℃、一夜培養後に出現したコロニーから、Bb-DNT遺伝子が挿入された発現ベクター pColdDNTを得た。
【実施例3】
【0027】
《Bb-DNT遺伝子への変異導入》
クローニング用プラスミドpUC119をEcoRI及びBamHIで処理し、ここに配列番号6及び7に示すOligo DNAを挿入することにより、制限酵素AscI認識配列が導入されたpUC119Aを得た。実施例2で作出したpColdDNTをAscI及びBamHIで処理して得られる約640bpの断片を、予め同じ制限酵素で処理したpUC119Aに挿入し、該断片が挿入されたプラスミドpUCDNT(AscI-BamHI)を得た。pUCDNT(AscI-BamHI)を鋳型としてKOD DNA polymerase(東洋紡株式会社)を用いたinverse PCR法により部位特異的変異導入を行った。1305位のCysをAlaに置換する場合には、配列番号6及び7に示したプライマー、1320位のHisをAlaに置換し、更に1322位のGly及び1323位のLysの2個のアミノ酸を1個のAlaに置換する場合には、配列番号8及び9に示したプライマーをそれぞれ使用した。各プライマーには制限酵素KpnIの認識配列を付加した。PCR後、KpnIで処理し、末端平滑化処理(Blunting high、東洋紡株式会社)した後、ライゲーション(Ligation kit ver 1、タカラバイオ株式会社)を行い、1305位のCysがAlaに置換されたBb-DNT遺伝子を有するプラスミドpUCDNT-M1305、1320位のHisがAla及び1322位のGly及び1323位のLysの2個のアミノ酸が1個のAlaに置換されたBb-DNT遺伝子を有するプラスミドpUCDNT-M1320/1322/1323を作出した。pUCDNT-M1320/1322/1323を鋳型として配列番号10及び11に示したプライマーを使用して同様の操作を行い、1305位のCysがAla、1320位のHisがAla及び1322位のGly及び1323位のLysの2個のアミノ酸が1個のAlaに置換されたBb-DNT遺伝子を有するプラスミドpUCDNT-M1305/1320/1322/1323を作出した。こうして、3種の変異導入Bb-DNT遺伝子を得た。
【実施例4】
【0028】
《変異導入Bb-DNT発現ベクターの構築》
実施例3で得られたプラスミドpUCDNT-M1305、pUCDNT-M1320/1322/1323及びpUCDNT-M1305/1320/13222/1323をAscI及びBamHIで処理して得られる約640bpの断片を、あらかじめ実施例2で作出したpColdDNTを同じ制限酵素で処理して約640bpの断片を除去し、脱リン酸化処理(Shrimp Alkaline Phosphatase、プロメガ株式会社)したものと混合し、ライゲーション反応を行った。反応液をDH5αコンピテントセルに加え、常法により形質転換を行った。アンピシリン添加サークルグロー培地に接種し、37℃、一夜培養後に出現したコロニーから、Bb-DNTトキソイド遺伝子が挿入された発現ベクター pCold-M1305、pCold-M1320/1322/1323及び pCold-M1305/1320/13222/1323を得た。
【実施例5】
【0029】
《Bb-DNT及び変異導入Bb-DNTの発現》
実施例2及び4で得られたそれぞれの発現ベクターで大腸菌BL21株及びHMS174株(いずれもメルク株式会社)を形質転換した。出現したコロニーを 3 mLのアンピシリン加YE培地(表2に組成表を示す)に接種し、一夜振盪培養した。振盪培養で得られた菌液 50 uLを 50 mLのアンピシリン加YE培地に接種し、37℃で振盪培養した。OD660が1.0を超えた時点で15℃に1時間静置し、IPTGを添加後、15℃で約24時間振盪培養を行った。培養終了後、遠心により菌体を回収し、菌体を溶解Buffer(50 mM Tris-Cl, 1 mM EDTA, 100 mM NaCl, pH 8.0)に懸濁した。懸濁液にLysozyme(生化学工業、10mg/mL・DW)を加え、室温で20分間溶菌処理した。溶菌処理液をさらに超音波破砕して遠心し、上清を可溶性画分、沈渣を不溶性画分(インクルージョンボディー)として得た。こうしてBb-DNT又は変異導入Bb-DNTを産生する大腸菌として、DNT-M(DNT)、DNT-M1305(M1305)、DNT-M1320/1322/1323(M1320/1322/1323)及びDNT-M1305/1320/13222/1323(M1305/1320/13222/1323)を得た。前記の括弧内は、各形質転換大腸菌が産生するBb-DNT及び変異導入Bb-DNTを示す。それぞれの画分について、常法に従いSDS-PAGEを行い、CBB染色後、デンシトメーターで蛋白量を算出した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【実施例6】
【0032】
《変異導入Bb-DNTの毒性評価》
実施例5で得られた可溶性画分をそれぞれ33 mM クエン酸-66 mM りん酸水素二ナトリウム溶液(pH 5.0)で透析し、予め同緩衝液で平衡化したToyoScreen SP-650M(東ソー株式会社)に掛け、洗浄後、100 mM NaClを含む同緩衝液で溶出し、精製した。これらについて、20 mMりん酸緩衝液(pH 8.0)に対して透析した後、BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce Biotechnology, Inc)で蛋白定量し、マウスに対する毒性評価に供した。PBSで0.2〜50μg/mLに調整したDNT、M1305、M1320/1322/1323、M1305/1320/13222/1323の0.5mLを、一群6匹の3週齢、メス、SPF ddYマウスの腹腔内に投与し、11日間観察した。その結果を表4に示した。
【0033】
【表4】

【実施例7】
【0034】
《Bb-DNTトキソイドのワクチン評価》
実施例6で得たDNTに終濃度0.8%の割合でホルマリンを加え37℃で7日間放置することによりDNTをホルマリン処理した。得られたホルマリン処理DNT及び実施例6で得たM1305、M1320/1322/1323及びM1305/1320/13222/1323のそれぞれにアルハイドロゲル(水酸化アルミニウムゲル、Superfos Biosector社)を添加し、1mL当たり1μgの各抗原及び0.5mgのアルハイドロゲルを含有するワクチン液を調製した。各0.5mLを、3週齢メス、SPF ddYマウス腹腔内に2週間隔で2回注射した。陽性コントロールとして、市販のARワクチン(スイムジェンART2、財団法人 化学及血清療法研究所)を用いた。これはBordetella bronchiseptica S611株の超音波処理による菌体破砕液の上清から特許第3884066号(特許文献1)に記載の方法に従って精製、ホルマリン処理したBb-DNTを約10ug/mL含む。投与量をあわせるために、アルハイドロゲルとPBSを加え、1 mLあたり1ugのBb-DNTと0.5mgのアルハイドロゲルを含むワクチンを調整した。陰性コントロールとして1mLあたり0.5mgのアルハイドロゲルを含むプラセボワクチンをPBSで調整した。2回目投与後2週目に半数致死量の34倍量のBb-DNT(ホルマリン不活化処理をしていない活性型)を腹腔内に注射し、注射後7日間、マウスの生死を観察した。その結果を表5に示した。
【0035】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のBb-DNTトキソイドは、豚のAR発症を阻止するのに有効なワクチンとして使用できる。また、Bb-DNTトキソイドをコードする遺伝子は、遺伝子組換え技術による多価ワクチンの製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、Bb-DNTのトランスアミナーゼ活性領域の位置を示す模式図である。図中の数値はBb-DNT(配列番号1)のアミノ酸配列番号を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚壊死毒素のアミノ酸配列を改変した改変アミノ酸配列からなる組換え皮膚壊死トキソイドを有効成分として含有する豚萎縮性鼻炎用薬剤。
【請求項2】
皮膚壊死毒素が、ボルデテラ菌由来である、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
ボルデテラ菌がボルデテラ・ブロンキセプチカ、百日咳菌及びパラ百日咳菌からなる群より選択される、請求項2記載の薬剤。
【請求項4】
改変アミノ酸配列が、トランスグルタミナーゼ活性中心領域のアミノ酸を改変したものである、請求項1ないし3の何れか一項記載の薬剤。
【請求項5】
改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位、1320位、1322位又は1323位の少なくとも一つのアミノ酸を置換したものである、請求項1ないし3の何れか一項記載の薬剤。
【請求項6】
改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位又は1320位のアミノ酸を置換、及び/又は1322位及び1323位の2アミノ酸を1アミノ酸に置換したものである、請求項1ないし3の何れか一項記載の薬剤。
【請求項7】
置換後のアミノ酸がアラニンである、請求項5又は6記載の薬剤。
【請求項8】
請求項1ないし8の何れか一項記載の薬剤と他の豚感染症ワクチンを含有する、混合ワクチン。
【請求項9】
下記(1)から(4)の工程を含む、豚萎縮性鼻炎用薬剤の製造方法。
(1)皮膚壊死毒素のアミノ酸配列を改変した改変アミノ酸配列からなる組換え皮膚壊死トキソイドを産生する皮膚壊死トキソイド産生宿主を調製する工程、
(2)前記(1)の皮膚壊死トキソイド産生宿主を培養する工程
(3)前記(2)の培養物から可溶性に発現した皮膚壊死トキソイドを回収・精製する工程、
(4)前記(3)の皮膚壊死トキソイドを製剤化する工程
【請求項10】
皮膚壊死毒素がボルデテラ菌由来である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
ボルデテラ菌がボルデテラ・ブロンキセプチカ、百日咳菌及びパラ百日咳菌からなる群より選択される、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
宿主が大腸菌である、請求項9ないし11の何れか一項記載の製造方法。
【請求項13】
改変アミノ酸配列が、トランスグルタミナーゼ活性中心領域のアミノ酸を改変したものである、請求項9ないし12の何れか一項記載の製造方法。
【請求項14】
改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位、1320位、1322位又は1323位の少なくとも一つのアミノ酸を置換したものである、請求項9ないし12の何れか一項記載の製造方法。
【請求項15】
改変アミノ酸配列が、配列番号1の1305位又は1320位のアミノ酸を置換、及び/又は1322位及び1323位の2アミノ酸を1アミノ酸に置換したものである、請求項9ないし12の何れか一項記載の製造方法。
【請求項16】
置換後のアミノ酸がアラニンである、請求項14又は15記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−116659(P2011−116659A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63447(P2008−63447)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000173555)一般財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】