説明

組換えADAMTS13および他のタンパク質を精製する方法ならびにそれらの組成物

トロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)タンパク質を、試料から精製するための方法が本明細書に提供される。本方法は、ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液または上清中に現れることを可能にする条件下で、試料をヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させることによって、ADAMTS13タンパク質を富化することを含む。本方法は、ADAMTS13タンパク質に結合する、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂によるタンデムクロマトグラフィをさらに含んでもよい。追加的な任意のステップは、限外濾過/ダイアフィルトレーション、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、およびウイルス不活性化を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/230,308号の利益を主張するものであり、この仮出願は参照によりその全体がこれによって組み込まれ、また我々はこの出願に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、トロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)および他のタンパク質を精製する方法、ならびにかかる精製されたタンパク質を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
メタロプロテイナーゼ遺伝子ファミリー、ADAM(ジスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)は、多様な機能を有する膜結合型プロテアーゼであるメンバーを含む。ADAMTSファミリーメンバーは、C末端における1つ以上のトロンボスポンジン1様(TSP1)ドメイン(複数可)の存在、ならびに典型的にADAMメタロプロテイナーゼにおいて観察される、EGFリピート、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部の非存在によってADAMから識別される。
【0004】
トロンボスポンジン1型モチーフ13を有するジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)は、ADAMTSファミリーのメンバーである。ADAMTS13は、8つのトロンボスポンジンドメインを有し、疎水性膜貫通ドメインを有さない。したがって、それが分泌される。ADAMTS13は、Tyr1605−Met1606結合においてフォンヴィレブランド因子を開裂し、機能するためにカルシウムおよび亜鉛イオンの両方を必要とする。また、ADAMTS13は、「フォンヴィレブランド因子開裂プロテアーゼ」および「VWFCP」としても知られる。
【0005】
不十分なADAMTS13発現は、いくつかの疾患の病変形成、例えば、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)等の血栓性障害に関与している(例えば、米国特許公開第20070015703号を参照されたい)。TTPにおいて、ADAMTS13の欠損および/または阻害は、身体全体にわたる小血管中に形成される広範な顕微鏡レベルの血栓症をもたらす(血栓性微小血管症)。顕微鏡レベルの血塊を通過する赤血球は、せん断応力を経験し、それが赤血球膜に対する損傷を引き起こし、次に血管内溶血および分裂赤血球形成に至る。また、血栓症も血流減少を引き起こし、それは終末器官損傷をもたらし得る。症状は典型的に、幻覚、奇異な行動、精神状態の変化、脳卒中、または頭痛等の神経学的問題;腎不全;発熱;および打撲傷もしくは紫斑病をもたらす血小板減少症(血小板数減少);ならびに貧血症および黄疸を伴う微小血管症性溶血性貧血を含む。現在の療法は、ADAMTS13に対する循環抗体を減少させるための血漿交換療法、および/または酵素の血中濃度を補充することを伴う。
【0006】
したがって、治療剤として使用することができる、組換えADAMTS13を、特に商業生産規模で精製する方法を提供することに対する強い必要性が存在する。ADAMTS13の精製は、困難であることが判明しており、クロマトグラフィを含む、種々のアプローチが試みられている。ADAMTS13タンパク質が溶出液または上清中に現れることを可能にする、非ADAMTS13タンパク質に結合するクロマトグラフ用物質は、精製のための有用なアプローチを提供するであろう。また、非ADAMTS13不純物が溶液中に残るか、または遥かにより強力に結合する一方で、ADAMTS13タンパク質に結合するクロマトグラフィ物質は、魅力的なアプローチを提示し、他のアプローチと平行して使用されてもよい。本開示は、かかるアプローチを提供する。
【0007】
さらに、ウイルス汚染物質は、ADAMTS13タンパク質、ならびに他のタンパク質および組換えタンパク質の精製における追加的な課題を提起している。1つの従来のアプローチは、溶液中の溶媒−界面活性剤混合物で精製されるように、試料を処理することを伴っていた。溶媒−界面活性剤化学物質による試料のインキュベーションは、脂質被覆ウイルスの非活性化に至った。しかしながら、この溶液中処理は、例えば、処理後の溶媒−界面活性剤化学物質の除去を促進するために、非効率的に、試料を少なくとも1つの他の槽に移動することを必要とした。さらに、ADAMTS13を含むいくつかのタンパク質は、溶媒−界面活性剤化学物質に感受性が高く、凝集体形成をもたらす。本開示は、ウイルス不活性化のかかる問題に取り組むための、溶媒−界面活性剤処理中のタンパク質の固定化を伴うアプローチを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、トロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)タンパク質(特に、ヒトADAMTS13)を、ADAMTS13タンパク質および非ADAMTS13不純物を含む試料から精製するための方法に関する。驚くべきことに、ADAMTS13タンパク質を非ADAMTS13不純物から精製するのに好適な条件下で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィを使用できることが見出された。本方法は、ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液中に現れることを可能にする条件下で、試料を、ヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させることによって、ADAMTS13タンパク質を富化することを含む。つまり、不純物を保持しながら、ADAMTS13タンパク質、好ましくはADAMTS13タンパク質の実質的部分が、ヒドロキシアパタイトに結合しないことを可能にする条件下で、試料がヒドロキシアパタイトによるクロマトグラフィに供される。いくつかの好ましい実施形態では、組換えADAMTS13タンパク質は、組換えADAMTS13核酸を含むCHO細胞の培養から収集された上清から精製される。いくつかの好ましい実施形態では、上清または溶出液中のパーセント収率は、驚くべきことに50%〜100%である。本方法は、ヒドロキシアパタイトからの溶出液を、ADAMTS13タンパク質に結合する混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂と、クロマトグラフィにより接触させることを含むタンデムクロマトグラフィをさらに含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、タンデムクロマトグラフィによる富化後のADAMTS13パーセント収率は、驚くべきことに少なくとも60%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料中のADAMTS13を濃縮するおよび/またはADAMTS13タンパク質を陰イオン交換樹脂に結合させる、任意の事前富化調製ステップをさらに含む。例えば、本方法は、ヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、試料を、陰イオン交換樹脂とクロマトグラフィにより接触させること、およびADAMTS13タンパク質を陰イオン交換樹脂から溶出すること、ならびに/またはヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、試料中のADAMTS13タンパク質を限外濾過によって濃縮すること、ならびに/またはヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、ADAMTS13タンパク質を、ダイアフィルトレーション交換によって、カルシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む緩衝液中に安定化すること、をさらに含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、タンデムクロマトグラフィの前に、試料は、10倍〜20倍の限外濾過によって濃縮され、緩衝液は、30kDaの分画分子量によるダイアフィルトレーションによって、カルシウムおよび亜鉛イオンを含有する低伝導率緩衝液に交換され、ADAMTS13は、ANX Sepharos Fast Flow、POROS 50D、またはPOROS 50PI等の陰イオン交換樹脂に結合され、そこから溶出される。いくつかの好ましい実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィステップからの溶出液プールが、伝導率を6mS/cmに減少させるためにヒドロキシアパタイト−希釈緩衝液で1:4に希釈された後、ヒドロキシアパタイトによるクロマトグラフィ、続いてヒドロキシアパタイトからの溶出液を用いる、ADAMTS13タンパク質に結合する混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂によるクロマトグラフィを含む、ヒドロキシアパタイトによるタンデムクロマトグラフィが行われる。いくつかの好ましい実施形態では、事前富化ステップ(複数可)からの溶出液は、驚くべきことに少なくとも75%のパーセント収率を提供し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒドロキシアパタイトまたは混合モード樹脂とのクロマトグラフィによる接触に続いて、陽イオン交換クロマトグラフィによる任意の仕上げステップをさらに含む。かかる実施形態では、ヒドロキシアパタイトまたは陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂との接触に続いて、本方法は、緩衝液伝導率を減少させることによって、ADAMTS13タンパク質を陽イオン交換のために調製するステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、この調製ステップは、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、透析によって、および/またはゲル濾過によって行われる。限外濾過/ダイアフィルトレーションが使用されるいくつかの実施形態では、分画は、10kDaである。いくつかの実施形態では、緩衝液交換は、ANX Sepharose−FF low sub上での陰イオン交換クロマトグラフィによって行われる。透析が使用されるいくつかの実施形態では、透析は、単一の透析モジュールへの2回以下の通過からなってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィは、Source SカラムまたはPOROS Sカラム上で行われる。いくつかの好ましい実施形態では、ADAMTS13パーセント収率は、緩衝液伝導率を減少させた後に、驚くべきことに少なくとも90%であり、陽イオン交換クロマトグラフィによる仕上げ後には、驚くべきことに少なくとも70%である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、ウイルスを不活性化するためならびに/またはウイルスおよびウイルス粒子を除去するために、ADAMTS13タンパク質を、任意のウイルス不活性化ステップに供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む溶媒−界面活性剤混合物を、ADAMTS13タンパク質に添加することを含む。いくつかの好ましい実施形態では、ADAMTS13タンパク質は、固定化、例えば、陽イオン交換樹脂上に固定化される。いくつかの実施形態では、溶媒−界面活性剤混合物は、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のTWEEN80を含み、ならびに/または溶媒−界面活性剤処理は、12℃〜16℃で30分間持続する。代替的にまたは加えて、ウイルス不活性化ステップは、ADAMTS13タンパク質を、ナノフィルタで濾過して、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を除去することを含んでもよい。いくつかのかかる実施形態では、ナノ濾過は、溶媒−界面活性剤処理前および/または後に、20Nまたは35Nフィルタを通して行われる。いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、上述の調製ステップの後に、および/またはタンデムクロマトグラフィステップの後に、および/または上述の陽イオン交換クロマトグラフィの仕上げ後に行われる。いくつかの好ましい実施形態では、ウイルス不活性化後のADAMTS13パーセント収率は、驚くべきことに少なくとも95%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、ADAMTS13タンパク質を、陽イオン交換樹脂から溶出することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態では、勾配溶出、例えば、低塩濃度を有する第1の緩衝液および高塩濃度を有する第2の緩衝液を含む勾配溶出が使用される。いくつかのより好ましい実施形態では、ステップ溶出が使用され、さらにより好ましくは、ステップ溶出は、保存緩衝液による樹脂からのADAMTS13タンパク質溶出を伴う。例えば、保存緩衝液は、7.0超のpHを有してもよく、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、0.05%の非イオン性界面活性剤、および塩を含む。いくつかのより好ましい実施形態では、本方法は、保存緩衝液による樹脂からの溶出に続く、後続の濃縮または緩衝液交換ステップを含まない。
【0013】
特に好ましい実施形態では、組換えADAMTS13タンパク質を、ADAMTS13タンパク質および非ADAMTS13不純物を含む試料から精製するための方法が提供され、本方法は、試料を、ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液または上清中に現れることを可能にする条件下で、ヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させること、次いで、好ましくはタンデムクロマトグラフィとして、該溶出液を、ADAMTS13タンパク質に結合する陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂と、クロマトグラフィにより接触させることを含む。
【0014】
別の特に好ましい実施形態では、上述のクロマトグラフィステップに先立って、ヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、試料を、陰イオン交換樹脂とクロマトグラフィにより接触させること、およびADAMTS13タンパク質を陰イオン交換樹脂から溶出すること;ならびに/または試料中のADAMTS13タンパク質を限外濾過によって濃縮すること、およびADAMTS13タンパク質を、ダイアフィルトレーション交換によって、カルシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む緩衝液中に安定化することが行われる。
【0015】
別の特に好ましい実施形態では、ヒドロキシアパタイトまたは陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂との接触に続いて、本方法は、緩衝液伝導率を減少させることによって、ADAMTS13タンパク質を陽イオン交換のために調製するステップをさらに含み、ここで調製ステップは、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、および/または単一の透析モジュールへの2回以下の通過からなる透析によって、および/またはゲル濾過によって行われる。
【0016】
さらに別の特に好ましい実施形態では、本方法は、試料を、組換えADAMTS13核酸を含むCHO細胞の培養から収集された上清から得ること;ヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、試料を、陰イオン交換樹脂とクロマトグラフィにより接触させること、およびADAMTS13タンパク質を陰イオン交換樹脂から溶出すること;ならびに/または試料中のADAMTS13タンパク質を限外濾過によって濃縮すること;およびヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、ADAMTS13タンパク質を、ダイアフィルトレーション交換によって、カルシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む緩衝液中に安定化すること;続いて試料を、ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液または上清中に現れることを可能にする条件下で、ヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させること;次いで溶出液を、ADAMTS13タンパク質に結合する陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂と、クロマトグラフィにより接触させること;続いて緩衝液伝導率を減少させることによって、例えば、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって;および/または単一の透析モジュールへの2回以下の通過からなる透析によって;および/またはゲル濾過によって、ADAMTS13タンパク質を陽イオン交換のために調製すること、を含み、任意に、1つ以上のウイルス不活性化ステップをさらに含む。いくつかのかかる実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む溶媒−界面活性剤混合物を、ADAMTS13タンパク質に添加することを含み、ここでADAMTS13タンパク質は、陽イオン交換樹脂上に固定化され、溶媒−界面活性剤混合物は、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のTWEEN80を含む。さらに別の実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、溶媒−界面活性剤処理と共に、または溶媒−界面活性剤処理の代わりに、ナノフィルタを使用して、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を除去する。いくつかの好ましい実施形態では、上記に概説される全体的な手順のADAMTS13パーセント収率は、驚くべきことに22〜24%以上であり、さらにより好ましい実施形態では、凝集体は、驚くべきことに50%減少させられる。
【0017】
ADAMTS13が陽イオン交換樹脂上に固定化されているいくつかの実施形態では、本方法は、ADAMTS13タンパク質を、7.0超のpHを有し、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、0.05%の非イオン性界面活性剤、および塩を含む保存緩衝液によるステップ溶出を用いて、または低塩含有量を有する第1の緩衝液およびより高い塩含有量を有する第2の緩衝液を含む勾配溶出を用いて、樹脂から溶出することをさらに含む。
【0018】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される方法の任意の実施形態に従って調製される、組換えADAMTS13タンパク質を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的組成物、例えば、精製されたADAMTS13タンパク質および薬学的に許容される担体を含む組成物である。
【0019】
本発明のまたさらなる態様は、タンパク質試料中のウイルス汚染物質を不活性化するための方法に関し、ここでタンパク質は、ウイルス汚染物質を有し得る源からの任意のタンパク質であり得る。好ましい実施形態では、タンパク質は、組換えタンパク質、特に、有機溶媒および界面活性剤に曝露されたとき、凝集に感受性が高いタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ADAMTS13タンパク質、特に組換えADAMTS13、または異なるタンパク質(特に、異なる組換えタンパク質)であってもよい。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、血液凝固因子である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、第VIII因子、第II因子、第VIIa因子、第IX因子、トロンビン、フォンヴィレブランド因子、抗MIF抗体、またはクロマトグラフィによって精製されている別のタンパク質のうちの1つ以上である。ウイルス不活性化は、タンパク質精製と併せて、または併せずに行われてもよい。いくつかの実施形態では、本方法は、タンパク質を支持体上に固定化すること、ならびに固定化されたタンパク質を、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む界面活性剤−溶媒混合物で処理すること含む。いくつかの好ましい実施形態では、支持体は、クロマトグラフ用樹脂である。さらにより好ましい実施形態では、界面活性剤−溶媒混合物は、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のポリソルベート80(TWEEN80)を含む。溶媒−界面活性剤混合物処理は、タンパク質がクロマトグラフ用樹脂上、例えば、陽イオン交換樹脂上に固定化されたままである間、長時間、例えば、30分間〜1時間継続することができ、および/または溶媒−界面活性剤処理は、2℃〜10℃で生じてもよい。このウイルス不活性化へのアプローチは、驚くべきことに、タンパク質が溶媒中に固定化されない間の溶媒−界面活性剤混合物での処理と比較して、界面活性剤−溶媒混合物での処理中のタンパク質凝集体の形成を、有意な量、例えば、50%超減少させることができる。いくつかの好ましい実施形態では、この手順に続いて、タンパク質を、形成された少量の凝集体が後の溶出画分中でさらに除去される勾配溶出等の緩衝液により、支持体から溶出することが行われる。いくつかの好ましい実施形態では、この手順に続いて、タンパク質を保存緩衝液により溶出することが行われる。いくつかのより好ましい実施形態では、溶出緩衝液は、0.1%のTWEEN80の濃縮物を含む。いくつかのさらにより好ましい実施形態では、本方法は、保存緩衝液による樹脂からの溶出に続く、後続の濃縮または緩衝液交換ステップを含まない。いくつかの好ましい実施形態では、凝集体は、驚くべきことに50%減少させられる。
【0020】
なおもさらに別の特に好ましい実施形態では、タンパク質試料中のウイルス汚染物質を不活性化するための方法が提供され、本方法は、タンパク質をクロマトグラフ用樹脂上に固定化することと、固定化されたタンパク質を、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のポリソルベート80を含む溶媒−界面活性剤混合物で30分間〜1時間処理することと、を含む。いくつかのかかる実施形態では、本方法は、タンパク質を、7.0超のpHを有し、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、0.05%の非イオン性界面活性剤、および塩を含む保存緩衝液により溶出することをさらに含む。
【0021】
本発明のこれらの態様および他の態様は、下記により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従って、トロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)を、ADAMTS13および非ADAMTS13不純物を含む試料から精製するための方法の例示的ステップのフロー図を示す。図1に示されるステップの順序は、本明細書に開示される通り、および当業者によって理解される通り、変えられてもよく、および/または1つ以上のステップが省略されてもよい。
【図2】陽イオン交換カラム上での精製実施における変形を示す。図2Aは、ウイルス不活性化に続く、ステップ溶出による陽イオン交換クロマトグラフィを伴う手順を示し、図2Bは、先行するウイルス不活性化が行われない、ステップ溶出による陽イオン交換クロマトグラフィを伴う手順を示し、図2Cは、クロマトグラフ用カラム上でのウイルス不活性化が後に続く、勾配溶出による陽イオン交換クロマトグラフィを伴う手順を示し、図2Dは、先行するウイルス不活性化が行われない、勾配溶出による陽イオン交換クロマトグラフィを伴う手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一態様は、非ADAMTS13不純物も含み得る、試料からのトロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)タンパク質の精製のための方法に関する。タンパク質試料はまた、ウイルス汚染物質を含む場合があり、それは、1つ以上のウイルス不活性化ステップにより除去および/または不活性化されてもよい。
【0024】
本明細書で使用される「トロンボスポンジン1型モチーフ13を有するジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ」、「ADAMTS13」、「ADAMTS13タンパク質」、「ADAMTS13ポリペプチド」、および「組換えADAMTS13」は、置き換え可能であり(別段の定めがない限り)、完全長ADAMTS13タンパク質の生物活性誘導体または断片であってもよい、組換え哺乳動物ADAMTS13タンパク質を指す。完全長ヒトおよびマウスADAMTS13タンパク質のアミノ酸配列は、Q76LX8およびQ769J6のそれぞれのUniProtKB(登録商標)受入番号を有する。ヒトADAMTS13に関する構造の詳細および配列情報は、Zheng et al.((2001)J.Biol.Chem.276:41059−63)において見出すことができる。
【0025】
本明細書で使用される「その生物活性誘導体または断片」という用語は、ADAMTS13のものと同様の、または実質的に同様の生物学的機能を有する、任意のポリペプチドを意味する。その生物活性誘導体または断片のポリペプチド配列は、1つ以上のアミノ酸の欠失、添加、および/または置換を含んでもよく、その非存在、存在、および/または置換はそれぞれ、ADAMTS13タンパク質の1つ以上の生物活性に対するいかなる実質的な悪影響をも有しない。例えば、選択的スプライシングは、完全長タンパク質の生物活性断片である130kDa種を生じさせる。上記のポリペプチドの生物活性は、よく知られている方法、例えば、フォンヴィレブランド因子(vWF)に対するADAMTS13のタンパク質分解活性、ならびに/または後続の下流効果の減少および/もしくは遅延を試験する方法によって測定することができる。「下流効果」とは、その効果がADAMTS13機能の直接的な原因であるか、またはその間接的な原因、例えば、ADAMTS13活性後に次々と起こる事象によって生じる効果であるかにかかわらず、その天然基質(複数可)に対するADAMTS13タンパク質の作用の1つ以上の生物学的、生化学的、または生理学的発現を意味する。アッセイとしては、内皮への血小板粘着の減少および/もしくは遅延、血小板凝集の減少および/もしくは遅延、血小板糸状物(platelet string)の形成の減少および/もしくは遅延、血栓形成の減少および/もしくは遅延、血栓成長の減少および/もしくは遅延、血管閉塞の減少および/もしくは遅延、vWF(例えば、FRETS−VWF73(Peptides International,Louisville,KY))のタンパク質分解開裂、ならびに/または血栓の崩壊を試験する方法が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、「Methods for measuring ADAMTS13 activity and protein on platelets and in plasma」と題する米国特許第7,270,976号の第6欄の55行目〜第10欄の34行目および第12欄の1行目〜第18欄の25行目、ならびに「Self−quenching homofluorophore compositions for detecting enzyme activity」と題する米国特許第7,468,258号の第11欄の26行目〜第16欄の50行目を参照されたく、また、「ADAMTS13−containing compositions having thrombolytic activity」と題する米国特許公開第20070015703号の段落[0036]、[0043]〜[0045]、および[0053]、ならびに「Substrates specific to von willebrand factor cleaving protease and method of assaying the activity」と題する米国特許公開第20070065895号、ならびに「Method for Detection of Condition in Consciousness Disorder Patient and Kit for the Detection」と題する欧州出願第1990421A1号を参照されたく、これらは、ADAMTS13ポリペプチドおよびその誘導体および/または断片に対するアッセイに関して、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0026】
組換えADAMTS13、例えば、組換えヒトADAMTS13は、当該技術分野で知られる任意の方法によって発現させることができる。1つの具体的な実施例が、組換えADAMTS13ヌクレオチド配列を調製する方法に関して、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO02/42441号に開示される(14頁の6行目〜18頁の4行目を参照されたい)。いくつかの実施形態では、組換えADAMTS13は、以下のプロセスに従って産生される:(i)例えば、RNAの逆転写および/またはDNAの増幅を介した遺伝子工学によって、組換えADAMTS13ヌクレオチド配列を調製すること、(ii)例えば、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションを介する等のトランスフェクションによって、組換えADAMTS13ヌクレオチド配列を真核細胞に導入すること、(iii)例えば、連続的な方法またはバッチ式で、形質転換細胞を培養すること、(iv)例えば、構成的に、または誘導によって、組換えADAMTS13の発現を可能にすること、(v)例えば、培養培地から、または形質転換細胞を採取することによって、発現された組換えADAMTS13を含む試料を単離すること、および(vi)本明細書に開示する方法に従って、試料からADAMTS13タンパク質を精製すること。
【0027】
組換えADAMTS13は、好適な宿主系、好ましくは、真核生物宿主系、およびより好ましくは、薬理学的に有効なADAMTS13分子を産生することができることを特徴とする系における発現によって産生することができる。真核細胞の例としては、CHO、COS、HEK 293、BHK、SK−Hep、およびHepG2等の哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、CHO細胞が使用され、この細胞は、組換えADAMTS13タンパク質を培養培地中に分泌する。ADAMTS13を組換え技術によって発現するために使用される試薬または条件に具体的な制限はなく、当該技術分野で知られる、または市販のいかなる系が採用されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される「試料」は、ADAMTS13タンパク質および非ADAMTS13不純物を含む任意の組成物を指す。当業者は、本明細書で使用される試料が、上記のような組換えADAMTS13を産生する結果であり得ることを認識するであろう。したがって、試料は、組換えADAMTS13を発現する形質転換細胞の培養から回収される上清、培養培地から組換えADAMTS13タンパク質を精製するプロセスの1つ以上のステップにおいてADAMTS13を含む緩衝液、および/または細胞培養から採取される形質転換細胞を含んでもよい。あるいは、試料は、血液、血漿、または血液もしくは血漿の分画であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ADAMTS13は、100Lの細胞培養上清を含む試料から精製される。しかしながら、当業者は、本発明の方法が、例えば、大規模生産のために必要に応じて拡大されてもよいことを認識するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、少なくとも約250Lの試料、少なくとも約500Lの試料、または少なくとも約1,000Lの試料から商業生産の規模でADAMTS13タンパク質を精製することを含む。
【0030】
本明細書で使用される「非ADAMTS13不純物」は、概して、プロセス関連不純物を指す。不純物としては、例えば、宿主細胞不純物(宿主細胞抗原とも称される、汚染宿主細胞タンパク質等)、ならびにDNA、RNA、および細胞残屑等の他の生体分子不純物;培地成分(複数可);溶媒;界面活性剤等を挙げることができる。さらに、非ADAMTS13不純物としてはまた、生成物関連不純物、例えば、生物活性ではないADAMTS13タンパク質の誘導体もしくは断片、またはADAMTS13タンパク質の凝集体が挙げられる。血液または血漿の場合、非ADAMTS13不純物としては、例えば、アルブミン、免疫グロブリン等の、血液または血漿中に通常見出される他のタンパク質を挙げることができる。本明細書で使用される「凝集体」は、巨大分子の二量体、三量体、および他の多量体等の、高分子量構造またはオリゴマー構造に対応する、2つ以上のADAMTS13ポリペプチド分子、または任意の他のタンパク質分子のうちの2つ以上を含む構造を指す。「非ADAMTS13不純物」としてはまた、ウイルス汚染物質を挙げることができる。「ウイルス汚染物質」は、例えば、ウイルス粒子、ウイルスタンパク質、ウイルスDNA、ウイルスRNA、またはその断片を含む、ウイルスから生じる、および/またはウイルス由来の任意の不純物を指す。
【0031】
「精製する」、「精製される」、「精製すること」等の用語は、非ADAMTS13不純物からADAMTS13を除去、単離、または分離することを指す。例えば、植物、細菌、酵母、または哺乳動物宿主細胞中に発現された組換えADAMTS13タンパク質は、例えば、宿主細胞タンパク質を含む非ADAMTS13不純物の除去によって精製されてもよい。純度の割合は、宿主細胞タンパク質(例えば、CHOタンパク質)に対するADAMTS13タンパク質の割合を指してもよい。「実質的に精製された」組換えADAMTS13は、非ADAMTS13不純物を少なくとも約60%、好ましくは、少なくとも約75%、およびより好ましくは、少なくとも約90%(または約95%、約99%、もしくは約99.9%)含まない。具体的には、「実質的に精製された」組換えADAMTS13は、宿主細胞タンパク質を少なくとも約60%、好ましくは、少なくとも約75%、およびより好ましくは、少なくとも約90%(または約95%、約99%、もしくは約99.9%)含まない。宿主細胞タンパク質は、例えば、以下により詳細に考察するように、ポリクローナル抗血清を使用した免疫化学的方法によって検出することができる。
【0032】
汚染物質の除去はまた、ADAMTS13タンパク質の富化をもたらし得る。本明細書で使用される「富化」、「富化する」、および「富化すること」は、試料中の組換えADAMTS13の割合の増加を指す。したがって、ADAMTS13タンパク質の富化は、試料の何らかの操作後、例えば、試料を1つ以上のクロマトグラフィステップに供した後、試料中のADAMTS13の割合が増加した時に生じる。一実施形態では、ADAMTS13は、非ADAMTS13不純物、特に、宿主細胞タンパク質の少なくとも約10倍の減少〜約115倍の減少がある時に、十分に富化される。一実施形態では、ADAMTS13は、非ADAMTS13不純物の少なくとも約20倍(例えば、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍等)の減少がある時に、十分に富化され、特に、この減少は、宿主細胞タンパク質に対して生じる。
【0033】
当業者は、非ADAMTS13不純物、特に、宿主細胞タンパク質の倍数減少を決定するために、当該技術分野で利用可能な方法を使用することができるだろう。例えば、非ADAMTS13不純物に対するアッセイが利用されてもよい。一実施形態では、試料は、組換えADAMTS13を発現する形質転換細胞の培養から回収される馴化上清であり、非ADAMTS13不純物の倍数減少を決定するためのアッセイは、宿主細胞タンパク質レベルを測定する。1つの特定の実施形態では、形質転換細胞は、形質転換CHO細胞であり、アッセイは、CHOタンパク質を測定する酵素免疫吸着血清アッセイである。非ADAMTS13不純物の倍数減少は、例えば、溶出される非ADAMTS13不純物の量に対する試料中の非ADAMTS13不純物の量として、溶出液中の不純物レベル(例えば、ppmで)によって割られる装填量中の不純物レベル(例えば、ppmで)として計算されてもよい。
【0034】
宿主細胞タンパク質は、例えば、ADAMTS13を製造するために使用される宿主細胞および/または組換えベクター系のタンパク質成分に対してポリクローナル抗血清を使用した免疫化学的方法によって検出されてもよい。概して、抗血清は、宿主細胞由来の抗原に対して上昇させられてもよく、ここで、宿主細胞は、製造プロセスで使用されるがADAMTS13に対する遺伝子コード化を欠く、発現ベクターを含む。宿主細胞不純物は、本明細書に記載するものと同一および/または実質的に同様の方法(複数可)を使用して抽出されてもよい。本明細書に記載するものと同一および/または実質的に同様の方法(複数可)を使用して得られる、精製された(または部分的に精製された)宿主細胞抗原は、次いで、ADAMTS13を製造するために使用される宿主細胞および組換えベクター系のタンパク質成分に対する抗血清の調製のために使用されてもよい。宿主細胞タンパク質は、免疫測定法、例えば、ELISAまたはウエスタンブロット分析で、抗血清を使用して検出することができる。宿主細胞タンパク質不純物はまた、存在するタンパク質を検出するために、二次元ゲル電気泳動ならびに銀染色法および/またはコロイド金染色法によって分析されるように、試料を分離することによって検出されてもよい。また、宿主細胞不純物のレベルを定量化するために、HPLCが使用されてもよい。しかしながら、HPLC法は、免疫測定法または銀染色法ほど精度が高くない。好ましくは、宿主細胞不純物は、例えば、これらの分析法のうちの1つ以上を使用して、検出可能なレベル未満まで減少させられる。
【0035】
本明細書で使用される「約」という用語は、指定された値から±10%の近似範囲を示す。
【0036】
ADAMTS13の富化
【0037】
概して、本発明は、ADAMTS13タンパク質および非ADAMTS13不純物を含む試料から、組換えADAMTS13タンパク質(好ましくは、ヒトADAMTS13タンパク質)を精製する方法を提供し、本方法は、試料中のADAMTS13の量を富化するために、試料を(i)ヒドロキシアパタイトまたは(ii)ヒドロキシアパタイトおよび混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂(タンデムで)とクロマトグラフィにより接触させることを含む。本明細書で使用される「クロマトグラフィにより接触させること」は、本明細書に記載する、および/または当該技術分野で知られるクロマトグラフィの任意のモードを使用して、分離される試料または他の混合物をクロマトグラフ用樹脂と接触させることを指す。モードとしては、バッチモードおよびカラムクロマトグラフィが挙げられるが、これらに限定されない。接触は、樹脂上、樹脂中、または樹脂内に試料を曝露および/またはインキュベートし、樹脂を通して試料を濾過することによって、あるいは任意の他の手段によって達成される。クロマトグラフィのためにしばしば使用される緩衝液は、リン酸緩衝液である。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料は、ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液中に生じることを可能にする条件下で、ヒドロキシアパタイトと接触させられる。「条件下」とは、例えば、カラムの高さ、充填、緩衝液(pH、塩濃度、イオン強度等)、温度、圧力等を含む、クロマトグラフィが実施される1つ以上のパラメータまたは変数を指す。すなわち、試料は、試料中のADAMTS13タンパク質、好ましくは、ADMATS13タンパク質の実質的な部分がヒドロキシアパタイトに結合しないことを可能にする条件下で、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供される。カラムクロマトグラフィが使用される場合、ADAMTS13タンパク質、好ましくは、その実質的な部分は、カラムを通って流動し、それにより、フロースルー分画または溶出液として、カラムから落ちる緩衝液中のADAMTS13に対して富化し、一方で、非ADAMTS13不純物は、保持される。バッチクロマトグラフィが使用される場合、上清または上清分画は、ADAMTS13タンパク質またはその実質的な部分を含む。「溶出液」は、本明細書において、「フロースルー」、「フロースルー分画」、「上清」、または「上清分画」とほとんど同じ意味で使用される。溶出液(または上清)は、回収することができる。そのような回収は、例えば、試料が樹脂に曝露され、インキュベーションが完了した後に、クロマトグラフ用樹脂の遠心分離、沈降、濾過等によって生じる。ヒドロキシアパタイトから回収される溶出液(または上清)はさらに、本発明に従った1つ以上のステップに供されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、本方法はさらに、ヒドロキシアパタイトからの溶出液を、ADAMTS13タンパク質に結合する陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂等の混合モード樹脂とクロマトグラフィにより接触させることを含む。すなわち、ADAMTS13タンパク質試料は、最初に、好ましくは、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分がヒドロキシアパタイトに結合しない条件下で、ヒドロキシアパタイトを用いたタンデムクロマトグラフィに、続いて、ADAMTS13タンパク質に結合する混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたクロマトグラフィに供されてもよい。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィステップ、および陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を使用した混合モードクロマトグラフィの任意のタンデムステップに関するさらなる詳細を以下に提供する。
【0040】
(a)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ
【0041】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィステップは、特に本明細書の開示を踏まえて、本明細書に記載するような、当該技術分野で知られるような、または当業者によって理解され得るような、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィの任意の方法を伴う。ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィの方法は、当該技術分野でよく知られている。ヒドロキシアパタイトは、Ca10(PO(OH)の化学式を有し、骨および歯のミネラル、ならびに他の生物学的構造の主成分である。ヒドロキシアパタイトは、そのような天然源から得られてもよく、またはよく知られている方法によって合成されてもよい。ヒドロキシアパタイトは、特に、タンパク質のクロマトグラフィ分離のためのクロマトグラフ媒体または支持体として広く使用される。粒径は、概して重要ではなく、大きく異なってもよい。典型的な粒径は、直径で約1μm〜約1,000μm、好ましくは、直径で約10μm〜約100μmに及ぶ。多孔率もまた、大きく異なってもよい。好ましい実施形態では、平均孔径は、約100Å〜約10,000Å、より好ましくは、約500Å〜約3,000Å、さらにより好ましくは、500Å〜3,000Åに及ぶ。
【0042】
種々のヒドロキシアパタイトクロマトグラフ媒体が市販されており、本明細書に開示する方法の実践において、任意の利用可能な形態の材料を使用することができる。使用され得る市販のセラミックヒドロキシアパタイト材料の限定されない例としては、MACRO−PREP(登録商標)、ヒドロキシアパタイトIおよびII型(Biorad,Hercules,CA)、およびHA ULTROGEL(登録商標)(PALL,Ann Arbor,MI)が挙げられる。一実施形態では、試料は、ヒドロキシアパタイトII型(Biorad,Hercules,CA)を用いたクロマトグラフィに供される。
【0043】
驚いたことに、試料をヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させることによって、試料中の非ADAMTS13不純物の有意または実質的な部分がヒドロキシアパタイトに結合する一方で、ADAMTS13タンパク質の有意または実質的な部分は、溶液中に残ることが発見された。したがって、上記に考察するように、ヒドロキシアパタイトによる試料の処理は、よく知られている方法に従って、バッチモードで、またはカラムクロマトグラフィモードで実施されてもよく、十分に富化されたADAMTS13タンパク質は、上清中または溶出中のそれぞれに回収される。
【0044】
本明細書で使用される「実質的な部分」は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィステップの前のものと比較して、試料からの組換えADAMTS13タンパク質の約30%〜約100%(例えば、約40%〜約90%、例えば、約50%〜約80%、例えば、約60%〜約70%)の上清または溶出液における回収収率を指す。例えば、約50%〜約100%の上清または溶出液における回収収率は、試料が、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が流動することを可能にする条件下で、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供されたことを示す。
【0045】
好ましい実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィに供される試料は、例えば、室温で約3mS/cm〜約15mS/cmの間、好ましくは、室温で約10mS/cm未満の低い伝導率を有する。一実施形態では、試料は、室温で6mS/cmの伝導率を有する。別の実施形態では、試料は、室温で7mS/cmの伝導率を有する。当業者は、試料の伝導率が、中性塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等を含む食塩水で調整されてもよく、約20mMのリン酸緩衝液で好適に緩衝され得ることを容易に理解するであろう。試料は、好ましくは、約6.5〜約9.0の間のpHを有し、好ましくは、7〜8の間のpHを有する。試料は、非ADAMTS13不純物の十分な結合を可能にする任意の時間の長さにわたって、例えば、約5分〜約24時間にわたって、ヒドロキシアパタイトと接触したままであってもよい。富化されたADAMTS13は、上清分画またはフロースルー分画中に回収されてもよく、それは、後続の洗浄、特に第1の洗浄からの溶出液を含んでもよい。
【0046】
一実施形態では、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が上清または溶出液中に残ることを可能にする条件下で、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供することによって、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィの前の試料と比較して、富化されたADAMTS13、例えば、非ADAMTS13不純物、特に、宿主細胞タンパク質の約10倍の減少〜約115倍の減少がもたらされる。一実施形態では、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィは、試料中の宿主細胞タンパク質を少なくとも約20倍(例えば、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、例えば、約100倍等)減少させる。
【0047】
好ましい実施形態では、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が上清または溶出液中に残ることを可能にする条件下で、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供することによって、非ADAMTS13不純物、特に、宿主細胞タンパク質の約90%〜約99%の除去がもたらされる。一実施形態では、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供することによって、非ADAMTS13不純物の少なくとも約90%(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%等)の除去、特に、宿主細胞タンパク質の除去がもたらされる。したがって、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が上清または溶出液中に残ることを可能にする条件下で、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供することによって、ADAMTS13タンパク質に対して富化することを含む、本明細書に開示する方法はまた、実質的に精製されているADAMTS13タンパク質を含む、緩衝液を提供してもよい。
【0048】
ADAMTS13の実質的な部分がヒドロキシアパタイトクロマトグラフィカラムを通って流動することを可能にする例示的なカラム条件を、以下の実施例に提供する。概して、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ中にADAMTS13タンパク質の実質的な部分が流動することを可能にするために、クロマトグラフィカラムは、好ましくは、約5cm〜約30cm、例えば、20cm〜30cmの間のベッド高さを有する。さらに、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供する前に、例えば、試料をヒドロキシアパタイトカラムに装填する前に、カラムは、最初に、よく知られている洗浄緩衝液、活性化緩衝液、および/または平衡化緩衝液、特に、ヒドロキシアパタイトの製造業者によって推奨されるものを用いて、それぞれ、洗浄され、活性化され、および/または平衡化されてもよい。一実施形態では、カラムは、同一の緩衝液、例えば、20mMのNa/K POを含み、7.0のpHを有し、室温で5.5mS/cmの伝導率を有する緩衝液を用いて、活性化および平衡化される。
【0049】
(b)混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用クロマトグラフィ
【0050】
一実施形態では、ADAMTS13タンパク質は、ヒドロキシアパタイト、続いて、ADAMTS13タンパク質に結合する混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィによって富化される。驚いたことに、ADAMTS13が混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に結合する一方で、非ADAMTS13不純物は、溶液中に残るか、あるいは混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂にはるかに強固に結合することが発見された。したがって、ヒドロキシアパタイトによる試料の処理、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂による処理は、よく知られている方法に従って、連続的バッチモードで、または連続的カラムクロマトグラフィモードで実施されてもよく、十分に富化されたADAMTS13タンパク質は、試料を、タンデムバッチモードクロマトグラフィまたはタンデムカラムクロマトグラフィのそれぞれに供した後、最終上清分画または最終溶出液プール中に回収されてもよい。したがって、本明細書に記載するように、ADAMTS13タンパク質は、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が上清中に残ること、または溶出液として、ヒドロキシアパタイトを含むカラムを通って流動することを可能にする条件下で、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供することによって富化される。ヒドロキシアパタイトによる処理後、富化されたADAMTS13を含む回収された上清または溶出液は、随意に、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたバッチモードまたはカラムクロマトグラフィに供される。一実施形態では、ヒドロキシアパタイトステップからの上清または溶出液は、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を含むクロマトグラフィカラム送り込まれる。混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたバッチモードまたはカラムクロマトグラフィは、特に本明細書の開示を踏まえて、本明細書に記載するような、当該技術分野で知られるような、または当業者によって理解され得るような、任意の方法によって実施することができる。ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィの後の使用に好適な、好ましい混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂は、親水性リンカーを含むセファロースベースのマトリクスである。親水性リンカーは、例えば、チオエーテル基を介して、機能的リガンドを含んでもよい。親水性リガンドは、負に帯電していてもよく、さらに、疎水性基、例えば、炭化水素を含んでもよい。さらに疎水性基を含む親水性リガンドは、混合モードリガンド、すなわち、本明細書に記載するような混合モードクロマトグラフィを実施するのに好適な、マルチモーダル機能性を有するリガンドを作成することができる。いくつかの実施形態では、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂のイオン容量は、約0.07mM/mL〜約0.09mM/mLの間であってもよく、約2〜約14の間のpH安定性を有してもよい。概して、ADAMTS13は、イオン結合、水素結合、および/または疎水結合を介して、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に結合する。
【0051】
本明細書に記載する方法に従って使用され得る、市販の混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂の例としては、CAPTO(登録商標)MMC培地(GE Healthcare)およびSampliQ SAX (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂は、CAPTO(登録商標)MMCである。CAPTO(登録商標)MMCは、約75μmの平均粒径を有する硬質の高度に架橋されたビーズアガロースに基づく、マルチモーダル弱陽イオン交換体である。それは、高い塩濃度でタンパク質に結合する、マルチモーダル機能性を有するリガンドを含む。それは、約3バール(約0.3MPa)における水とほぼ同一の粘度を有する処理緩衝液を使用して、約20℃で、約10cm〜約20cmのベッド高さを有する約1mの直径のカラムに対して、約600cm/時間の典型的な流速を有する。
【0052】
混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたクロマトグラフィ中、ADAMTS13は、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に結合し、さらに、非ADAMTS13不純物(例えば、富化前の試料中に存在する宿主細胞タンパク質)から単離される。」混合モードクロマトグラフィステップがカラム上で実施される場合、陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂は、ADAMTS13タンパク質を吸収し、一方で、汚染非ADAMTS13不純物は、プロセス流れから除去され、クロマトグラフィカラムを通って流動することによって、試料中のADAMTS13タンパク質から分離される。
【0053】
ADAMTS13が吸収される混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂は、次いで、例えば、緩く結合した汚染物質もしくは不純物を除去するために、および/または樹脂からのADAMTS13の溶出のために調製物中の緩衝液伝導率を調節するために洗浄される。すなわち、試料がヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させられ、ADAMTS13を含む回収された上清または溶出液が、混合モード陽イオン/疎水性相互作用樹脂とクロマトグラフィにより接触させられ、それに吸収された後、混合モード陽イオン/疎水性相互作用樹脂は、洗浄緩衝液で洗浄される。概して、洗浄緩衝液は、緩衝リン酸イオンおよび中性塩を含み、緩衝液の関連パラメータが増加させられるにつれて、例えば、緩衝液の塩濃度および/またはpHの増加と共に、混合モード陽イオン/疎水性相互作用樹脂へのADAMTS13の結合が弱められるように、高いpHを有する。一実施形態では、ADAMTS13に結合した混合モード陽イオン/疎水性相互作用樹脂は、最初に、平衡化緩衝液、例えば、約20mMのリン酸塩および約25mMのNaClを含み、室温で約7.0のpHを有する平衡化緩衝液で洗浄される。後続の洗浄は、例えば、約20mMのリン酸塩、約80mMのNaClを含み、室温で約8.0のpHを有する洗浄緩衝液で実施されてもよい。ADAMTS13に結合した混合モード陽イオン/疎水性相互作用樹脂は、例えば、50mMのNa/K POおよび160mMのNaClを含み、室温で8.0のpHおよび16.5mS/cmの伝導率を有する緩衝液を用いた、最終洗浄に供されてもよい。
【0054】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、続く、ADAMTS13タンパク質に結合する陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いた混合モードクロマトグラフィ、および任意の洗浄後に、組換えADAMTS13タンパク質は、溶出緩衝液で混合モードクロマトグラフ用樹脂から溶出される。概して、溶出緩衝液は、約5mM〜約100mMの緩衝イオン、例えば、20mM〜50mMの緩衝イオンを含む。例示的な緩衝液としては、リン酸塩、トリス、HEPES、イミダゾール、ヒスチジン、MES、クエン酸塩、グリシルグリシン、トリス/酢酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。溶出緩衝液はまた、概して、好ましくは、塩形態で高濃度の、ナトリウム、カリウム、またはカルシウムイオン等であるが、これらに限定されない、一価または二価陽イオンを含む(例えば、Cl、PO、SO、またはOAc陰イオン等を有する)。好ましい実施形態では、溶出緩衝液は、高濃度のナトリウムイオン、例えば、約700mMを超えるNaを含む。溶出緩衝液は、約7〜約11に及ぶpHを有してもよい。一実施形態では、溶出緩衝液は、50mMのNa/K PO、1,000mMのNaClを含み、室温で8.0のpHおよび93mS/cmの伝導率を有する。
【0055】
ヒドロキシアパタイトカラムから得られる富化されたADAMTS13がカラム中で混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に結合し、非ADAMTS13不純物から単離されることを可能にする例示的な条件を、以下の実施例に提供する。概して、混合モード陽イオン交換/疎水性クロマトグラフィカラムのベッド高さは、試料の量に応じて、約1cm〜約100cm、またはさらに高くてもよい。さらに、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用クロマトグラフィカラムのカラム容積に対するヒドロキシアパタイトクロマトグラフィカラム容積の比は、例えば、ADAMTS13量と比較した、試料中の非ADAMTS13不純物の量に応じて、約10:1であってもよい。
【0056】
さらに、当業者は、タンデムヒドロキシアパタイトおよび混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたクロマトグラフィを含む実施形態に対して、洗浄、活性化、および/または平衡化のために使用される樹脂および緩衝液は、ある特定の実施形態において、両方のカラムに適合するように選択されることを認識するであろう。一実施形態では、カラムは、別々に活性化される。別の実施形態では、カラムは、タンデムで1回平衡化され、装填され、洗浄され、続いて、1つ以上の第2または後続の洗浄(複数可)および溶出(複数可)が混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に対してのみ適用される。一実施形態では、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用クロマトグラフィカラムを活性化および平衡化するための緩衝液は、ヒドロキシアパタイトカラムを活性化および平衡化するために使用されるものと同一である。一実施形態では、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用クロマトグラフィカラムを活性化および平衡化するための緩衝液は、20mMのNa/K POを含み、室温で7.0のpHおよび5.5mS/cmの伝導率を有する緩衝液である。
【0057】
好ましい実施形態では、試料は、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分がヒドロキシアパタイト樹脂を通って流動し、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂に結合し、次いで、そこから溶出されることを可能にする条件下で、タンデムヒドロキシアパタイトおよび混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたクロマトグラフィに供される。より好ましい実施形態では、このタンデムクロマトグラフィは、十分に富化されたADAMTS13をもたらす。いくつかの実施形態では、試料、例えば、予め富化されてもよい、組換えADAMTS13を発現する形質転換宿主細胞の培養から回収される馴化上清を、本明細書に記載するタンデムクロマトグラフィに供することによって、約40%〜約80%のADAMTS13(例えば、約45%〜約75%の間、例えば、約50%〜約70%の間、例えば、約55%〜約65%)、および/または約40%〜約90%の活性(例えば、約45%〜約85%の間、例えば、約50%〜約80%の間、例えば、約55%〜約75%)を得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、タンデムクロマトグラフィは、約90%〜約99%の宿主細胞不純物を除去する。一実施形態では、本明細書に記載するようなタンデムクロマトグラフィは、試料をタンデムクロマトグラフィに供する前のADAMTS13の純度と比較して、ADAMTS13の純度を少なくとも約600倍、例えば、少なくとも約650倍、例えば、少なくとも約700倍、例えば、少なくとも約800倍、例えば、少なくとも約900倍、例えば、少なくとも約1,000倍、例えば、少なくとも約1,100倍、例えば、少なくとも約1,200倍、例えば、少なくとも約1,300倍、例えば、少なくとも約1,400倍、または少なくとも約1,500倍増加させる。
【0059】
いくつかの実施形態では、試料、例えば、好ましくは、UF/DFおよび/または陰イオン交換によって予め富化されてもよい、組換えADAMTS13を発現する形質転換宿主細胞の培養から回収される馴化上清を、本明細書に記載するタンデムクロマトグラフィに供することによって、約600〜約1,500ppmの非ADAMTS13不純物(例えば、宿主細胞抗原)を有する試料がもたらされる。例えば、タンデムクロマトグラフィは、約750〜約1250ppmの非ADAMTS13不純物を有する試料、好ましくは、約1,000ppm未満の非ADAMTS13不純物を有する試料をもたらし得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、タンデムクロマトグラフィは、タンデムクロマトグラフィ前の試料と比較して、非ADAMTS13不純物(特に、宿主細胞抗原)の約1,000倍の減少〜約3,000倍の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、予め富化されてもよい、組換えADAMTS13を発現する形質転換宿主細胞の培養から回収される馴化上清を、本明細書に記載するタンデムクロマトグラフィに供することによって、非ADAMTS13不純物(例えば、宿主細胞抗原)は、少なくとも約1,000倍、例えば、少なくとも約1,300倍、例えば、少なくとも約1,500倍、例えば、少なくとも約2,000倍、例えば、少なくとも約2,500倍、例えば、少なくとも約3,000倍等減少する。
【0061】
したがって、好ましい実施形態では、組換えADAMTS13を含む、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂からの溶出緩衝液は、実質的に精製されているADAMTS13タンパク質を含む組成物を提供する。
【0062】
試料の富化前調製
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法はさらに、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ、またはヒドロキシアパタイトおよび混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィによる富化のために、ADAMTS13を含む試料を調製することを含む。この任意の富化前ステップでは、試料中のADAMTS13は、(a)限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)によって濃縮される、および/または(b)ADAMTS13が結合し、続いて、そこから溶出されるイオン交換樹脂と、クロマトグラフィにより接触させられる、のいずれかまたは両方であってもよい。
【0064】
(a)富化前限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)
【0065】
任意の富化前ステップでは、試料中のADAMTS13は、富化前限外濾過によって濃縮され、試料の緩衝液は、ダイアフィルトレーションによって交換される。富化前限外濾過/ダイアフィルトレーションステップは、典型的には、上記のようなヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ、またはヒドロキシアパタイト、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィによって、ADAMTS13の富化前に実施される。富化前限外濾過/ダイアフィルトレーションステップは、典型的には、任意の富化前陰イオン交換クロマトグラフィの前(実施される場合)に実施される。この富化前限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)ステップは、低分子量成分、例えば、細胞培養培地の低分子量成分を除去するのに有効であり得る。そのような成分は、後続のクロマトグラフィカラムに結合し、ADAMTS13のカラムの容量を減少させ得る。したがって、富化前UF/DFは、後のクロマトグラフィステップに対する装填を最適化することができる。一実施形態では、約30kDa未満の低分子量成分、または少なくともその実質的な部分は除去される。いくつかの実施形態では、除去される(または実質的に除去される)低分子成分は、約60kDa未満、約55kDa未満、約50kDa未満、約45kDa未満、約40kDa未満、約35kDa未満、約30kDa未満、約25kDa未満、約20kDa未満等の成分である。
【0066】
富化前限外濾過/ダイアフィルトレーションステップはまた、ある特定の実施形態において、ADAMTS13を後続の処理のための適切な緩衝溶液に変換するために、および/または試料をさらに濃縮するために使用される。一実施形態では、適切な緩衝溶液は、富化前陰イオン交換クロマトグラフィに適した低伝導率緩衝液である(そのような陰イオン交換クロマトグラフィが実施される場合)。例えば、低伝導率緩衝液は、室温で約10mS/cm未満、例えば、約7mS/cm〜約8mS/cm、例えば、7mS/cmの伝導率を有し、約7.0以上のpHを有してもよい。
【0067】
別の実施形態では、適切な緩衝溶液は、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂上のクロマトグラフィが続いてもよい、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィによる富化に適した、富化緩衝液である。例えば、富化緩衝液は、20mMのNa/K POを含み、室温で約7のpHを有してもよい。別の実施形態では、適切な緩衝溶液はまた、カルシウムおよび/または亜鉛イオンを含み、それらのいずれかまたは両方は、ADAMTS13タンパク質を安定させる。一実施形態では、適切な緩衝溶液は、約10mM未満、例えば、2mMの濃度のカルシウムイオンを含む。別の実施形態では、適切な緩衝溶液は、約50μm未満、例えば、5μmの濃度の亜鉛イオンが添加される。
【0068】
いくつかの実施形態では、適切な緩衝溶液は、約7.0以上のpHを有する溶液中で緩衝能力を有する緩衝剤を含む。一実施形態では、緩衝剤は、リン酸塩、トリス、HEPES、イミダゾール、ヒスチジン、MES、クエン酸塩、グリシルグリシン、トリス/酢酸塩等から成る群より選択される。
【0069】
この富化前UF/DFステップ後に得られる試料は、後続の精製ステップで使用されてもよく、例えば、試料は、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、続いて、陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂上の混合モードクロマトグラフィによって除去される宿主細胞タンパク質を含む、UF/DF濃縮プールであってもよい。いくつかの実施形態では、富化前UF/DFステップ後の試料は、富化前UF/DFステップ前の試料と比較して、約10倍〜約20倍、例えば、約15倍濃縮されている。
【0070】
(b)富化前陰イオン交換クロマトグラフィ
【0071】
別の任意の富化前ステップは、富化前クロマトグラフィを含み、これは、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ、またはヒドロキシアパタイト、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィによるADAMTS13の富化前に実施されてもよい。当業者は、富化前クロマトグラフィが任意の富化前限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ後に実施されてもよいことを認識するであろう。あるいは、富化前クロマトグラフィは単独で、すなわち、任意の富化前限外濾過/ダイアフィルトレーションステップなしで実施されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、富化前クロマトグラフィステップは、ADAMTS13を含む試料を、陰イオン交換樹脂とクロマトグラフィにより接触させること、および陰イオン交換樹脂からADAMTS13タンパク質を溶出することを含む。すなわち、ADAMTS13は、陰イオン交換樹脂に結合され、続いて、そこから溶出される。本明細書で使用される「陰イオン交換樹脂」という用語は、陰イオン交換クロマトグラフィに好適であり、例えば、正電荷基によって正味の正電荷を有する(中性pHで)、任意の樹脂を指す。例としては、ジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルエタノールアミン(DMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、第4級アミノエタン(QAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、第4級アンモニウム(Q)等、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
一実施形態では、陰イオン交換樹脂はまた、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:大きな孔、潅流挙動、および対流挙動。本明細書に開示する富化前ステップで使用され得る市販の陰イオン交換樹脂の限定されない例としては、Q−Sepharose Fast Flow(GE Healthcare,Piscataway,NJ)、ANX−Sepharose Fast Flow low sub(GE Healthcare)、DEAE−Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)、DEAE−Toyopearl(Tosoh Bioscience LLC,Grove City,OH)、QAE−Toyopearl(Tosoh Bioscience LLC)、POROS(登録商標)Q(Applied Biosystems,Foster City,CA)、POROS(登録商標)50D(Applied Biosystems)、POROS(登録商標)50PI(Applied Biosystems)、Convective Interaction Media(CIM(登録商標);BIA Separation)、Fractogel−DMAE(Capitol Scientific Inc.,Austin,TX)、Fractogel EMD−TMAE(Capital Scientific Inc.,Austin,TX)、Matrex Cellufine DEAE(Chisso Corp.,Rye,NY)等が挙げられる。
【0074】
富化前陰イオン交換クロマトグラフィの間、ADAMTS13は、陰イオン交換樹脂に結合し、非ADAMTS13不純物(例えば、富化前UF/DF濃縮プール中の存在し得る宿主細胞成分)から単離される。概して、陰イオン交換樹脂がADAMTS13タンパク質を吸収する一方で、作用pHよりも大きい等電点を有する非ADAMTS13不純物は、陰イオン交換カラムを通って流動することによって、プロセス流れから除去される。作用pH未満の等電点を有する非ADAMTS13不純物は、それらが、好ましくは、ADAMTS13タンパク質と共溶出しないように、樹脂により強固に、好ましくは、はるかに強固に結合する。ADAMTS13が吸収されるカラムは、次いで、例えば、緩く結合した不純物もしくは汚染物質を除去するために、および/または溶出のために調製物中の緩衝液の伝導率を調節するために、溶出前に洗浄される。典型的には、結合したADAMTS13は、緩衝液のイオン強度を増加させることによって、陰イオン交換樹脂から溶出される。一実施形態では、ADAMTS13は、段階溶出によって溶出される。概して、装填された試料および洗浄緩衝液は、室温で、約7〜約9の間、例えば、7.7のpH、および約10mS/cm未満(例えば、6.5mS/cm)の伝導率を有する。溶出緩衝液(複数可)は、室温で、約6〜約9(例えば、7)のpH、および約10mS/cmよりも大きい(例えば、16.5mS/cm)伝導率を有してもよい。
【0075】
典型的には、陰イオン交換クロマトグラフィステップからの溶出液は、約60%〜約120%のADAMTS13活性をもたらし(例えば、約70%、または約80%〜約107%のADAMTS活性をもたらし)、および/または約20%〜約70%の純度(例えば、約30%、約40%、約50%、約60%等の純度)を有する組換えADAMTS13を含む。一実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィは、非ADAMTS13不純物を約2倍〜約5倍減少させる。好ましい実施形態では、富化前調製後のパーセント収率は、約75%であり得る。
【0076】
溶出されたADAMTS13は、次いで、上記のように、試料を、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が流動することを可能にするヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供すること、または試料を、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が流動することを可能にする条件下でのヒドロキシアパタイトを用いたタンデムクロマトグラフィ、続いて、ADAMTS13タンパク質に結合する混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたクロマトグラフィに供することによって、富化されてもよい。
【0077】
ウイルス不活性化
【0078】
当業者は、ウイルス不活性化の方法が、ウイルス汚染物質(例えば、ウイルス粒子、ウイルスタンパク質、ウイルスDNA、ウイルスRNA、およびその断片を含む、ウイルスから生じる、および/またはウイルス由来の不純物)を含む、または潜在的に含む試料から、組換えADAMTS13を精製するのに特に有用であり得ることを認識するであろう。したがって、一実施形態では、本明細書に開示する方法はさらに、少なくとも1つのウイルス不活性化ステップを含む。「ウイルス不活性化」という用語は、ウイルスが溶液中に維持されるが、非活性化または不活性化される(例えば、脂質エンベロープウイルスの脂質被覆を溶解することによって、生存不能の状態にされる)状態、ならびに試料からのウイルスおよび/またはウイルス汚染物質の物理的除去(例えば、サイズ排除によって)のいずれかまたは両方を指す。したがって、本明細書の開示に関連して、「ウイルス不活性化」は、ウイルス非活性化およびウイルス除去のいずれかまたは両方を指す。
【0079】
実施される場合、ウイルス不活性化は、全精製プロセスを通して1回、または2回以上生じてもよい。さらに、それは、試料を、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィに供する前または後に生じてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化は、以下により詳細に記載する陽イオン交換クロマトグラフィによる任意の仕上げステップの前および後に生じる。しかしながら、当業者は、もしある場合、ウイルス不活性化が随意に、精製プロセス中の任意のステップにおいて生じてもよいことを認識するであろう。さらに、当業者は、ウイルス不活性化の適切なタイミングを認識することができる。
【0080】
脂質エンベロープウイルスを生存不能の状態する方法は、当該技術分野でよく知られている。概して、試料中の脂質エンベロープウイルスを非活性化(または不活性化)する方法は、試料に溶媒/界面活性剤混合物を添加することを含む(例えば、Edwards,et al.(1987)“Tri(n−butyl)phosphate/detergent treatment of licensed therapeutic and experimental blood derivatives”Vox Sang 52:53−59(特に、54〜55頁を参照されたい)、ならびに米国特許第4,540,573号(第7欄の9行目〜12欄の42行目)、第4,764,369号(第7欄の17行目〜12欄の47行目)、第4,939,176号(第3欄の59行目〜10欄の14行目)、第5,151,499号(第2欄の59行目〜11欄の38行目)、第6,090,599号(第4欄の20行目〜8欄の67行目)、第6,468,733号(第5欄の12行目〜9欄の36行目)、および第6,881,573号(第5欄の63行目〜14欄の9行目)を参照されたく、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。脂質被覆ウイルスを非活性化するために使用される溶媒/界面活性剤の組み合わせは、当該技術分野で知られる任意の溶媒/界面活性剤の組み合わせであってもよく、好ましくは、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む。限定されない例としては、リン酸トリ−N−ブチル(TnBP)およびTRITON X−100(登録商標)、ならびにTWEEN 80(登録商標)(CAS 9005−65−6)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、コール酸ナトリウム等が挙げられる。溶媒(複数可)および/または界面活性剤(複数可)の濃度は、当該技術分野で一般的に使用される濃度、例えば、約0.1%を超えるTnBPおよび約0.1%を超えるTRITON X−100(登録商標)であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶媒/界面活性剤混合物がウイルスを不活性化する条件は、約30分〜約24時間、好ましくは、約30分〜約1時間、約5〜約8に及ぶpHレベル、および約2℃〜約37℃、好ましくは、約12℃〜約25℃に及ぶ温度で、約10〜約100mg/mLの溶媒/界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、混合物は、処理中にわずかに振動させられるか、または撹拌される。一実施形態では、ウイルス不活性化ステップは、少なくとも1時間にわたって、15℃〜25℃で、試料に溶媒/界面活性剤混合物(例えば、0.3%のTnBP、1%のTRITON X−100(登録商標)、および0.3%のTWEEN 80(登録商標)を含む、溶媒/界面活性剤混合物として)を添加することを含む。別の実施形態では、試料は、30分にわたって、12℃〜16℃で、0.3%のTnBP、1%のTRITON X−100(登録商標)、および0.3%のTWEEN 80(登録商標)を含む溶媒/界面活性剤混合物で処理される。ポリソルベートまたはコール酸塩およびリン酸トリ−n−ブチルの組み合わせ等の、当業者に明らかとなるように、他の溶媒/界面活性剤の組み合わせおよび/または好適な条件が使用されてもよい。そのような組み合わせは、例えば、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、またはそれ以上のより長い処理時間を必要とする場合がある。
【0082】
不活性化は、当該技術分野で知られる任意の手段によってもたらされ得る。例えば、不活性化は、希釈によって、好ましくは、冷たい希釈緩衝液を用いた希釈によって停止することができる。例えば、いくつかの実施形態では、不活性化は、約20mMのMESを含み、室温で約6のpHを有する、ある容積の冷たい希釈緩衝液を用いた希釈によって停止される。
【0083】
溶媒/界面活性剤の組み合わせを用いて脂質被覆ウイルスを非活性化した後、溶媒/界面活性剤混合物は、除去されてもよい。例えば、溶媒/界面活性剤混合物は、クロマトグラフィまたは他の好適な手段を用いて除去されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、HyperD(登録商標)樹脂(Biosepra Inc.,MA)等の溶媒/界面活性剤除去(SDR)樹脂を用いたクロマトグラフィが使用される(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,468,733号(第5欄の12行目〜9欄の36行目)を参照されたい)。
【0084】
固定化タンパク質を用いたウイルス汚染物質の不活性化
【0085】
いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化は、タンパク質が固定化されると同時の、溶媒/界面活性剤を用いたウイルス非活性化を含む。そのような手順は、本明細書に記載するADAMTS13ポリペプチドのウイルス不活性化で、ならびに他のタンパク質に対して使用されてもよい。他のタンパク質としては、免疫系タンパク質(抗体、モノクローナル抗体、融合タンパク質、Fc融合、主要組織適合抗原、T細胞受容体)、酵素(酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ)、構造タンパク質、線維性タンパク質(アクチン、Arp2/3、コロニン、ジストロフィン、ケラチン、ミオシン、スペクトリン、タウタンパク質、チューブリン等の細胞骨格タンパク質、およびコラーゲン、エラスチン、F−スポンジン等の細胞外マトリクスタンパク質)、球状タンパク質、血漿タンパク質(血清アルブミンおよび血清アミロイドP成分)、凝固因子(補体タンパク質、第VIII因子、第XIII因子、フィブリン、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、タンパク質Z−関連プロテアーゼ阻害剤、トロンビン、フォンヴィレブランド因子等)、C反応性タンパク質、ヘムタンパク質、細胞接着タンパク質(カドヘリン、エペンジミン、インテグリン、NCAM、セレクチン)、膜貫通輸送タンパク質(CFTR、グリコホリンD、スクランブラーゼ)、イオンチャネル(アセチルコリン受容体カリウムチャネル)、シンポート/アンチポートタンパク質(グルコース輸送体)、ホルモンおよび成長因子(上皮成長因子インスリン、インスリン様成長因子、オキシトシン)、受容体(膜貫通受容体、G−タンパク質共役受容体、ロドプシン、エストロゲン受容体等の細胞内受容体)、DNA結合タンパク質(ヒストン)、転写調節タンパク質(c−myc FOXP2、FOXP3、MyoD、p53)、栄養貯蔵/輸送タンパク質(フェリチン)、シャペロンタンパク質、高分子複合体(ヌクレオソーム、リボ核タンパク質、シグナル認識粒子、スプライセオソーム)等を含む、任意のタンパク質、またはウイルス汚染物質を有し得る源からの生物学的製剤を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、タンパク質は、組換えタンパク質、特に、有機溶および界面活性剤に曝露されたとき、凝集に感受性が高いタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ADAMTS13タンパク質、特に、組換えADAMTS13、または異なるタンパク質(特に、異なる組換えタンパク質)である。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、血液凝固因子である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、第VIII因子、第II因子、トロンビン、第VIIa因子、第IX因子、トロンビン、フォンヴィレブランド因子、抗MIF抗体、ならびに特に、クロマトグラフィ精製を受けやすいタンパク質、および/または溶媒/界面活性剤を用いた処理に感受性が高いタンパク質のうちの1つ以上である。したがって、本発明の別の態様は、固定化タンパク質のウイルス不活性化に向けられる。好ましくは、ウイルス不活性化は、手順が、精製されているタンパク質を固定化することによる、タンパク質調製物のウイルス不活性化を伴うように、タンパク質精製手順と併せて実施される。
【0086】
上記のような種々のタンパク質を精製するための下流プロセスに適用される、従来の溶媒/界面活性剤のウイルス不活性化ステップは、概して、例えば、バッチ方法で、精製されている試料に、溶液中の溶媒/界面活性剤混合物を添加することを伴う。バッチ方法において、タンパク質を含む試料は、撹拌槽(例えば、大規模精製用のタンク)中で、溶媒/界面活性剤混合物(例えば、約1%のTriton X−100、約0.3%のリン酸トリ−N−ブチル、および約0.3%のポリソルベート80を含む混合物)で処理される。溶媒/界面活性剤化学物質の溶解後、処理された試料溶液は、第2の撹拌槽に送り込むことができ、そこで、本質的に、実際のウイルス不活性化が行われ、この場合、タンパク質溶液は、そのような非活性化が行われることを可能にするようにインキュベートされる(例えば、約30分〜約1時間)。
【0087】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態は、タンパク質、例えば、精製されているタンパク質を含む、組成物のウイルス不活性化を伴い、ここで、タンパク質は、固定化される。このプロセスは、標的タンパク質が溶液中にあるよりもむしろ、タンパク質が固定化される一方で、対象となるタンパク質を含む組成物を、溶媒/界面活性剤混合物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、タンパク質は、クロマトグラフ用樹脂上で固定化される。タンパク質がクロマトグラフ用樹脂上、例えば、クロマトグラフ用カラム上で固定化されるウイルス不活性化は、本明細書において「カラム上」ウイルス不活性化と称される。以下の実施例に記載するPoros S上のADAMTS13の精製は、ウイルス不活性化がカラム上で実施される、このプロセスの一実施形態を提供する。当業者は、タンパク質が種々の手段によって、種々の支持体上で固定化されてもよいことを認識するであろう。例えば、タンパク質は、スライドガラス、ビーズ、マトリクス、または膜を含む、任意の固体または半固体支持体に結合されてもよい。固定化は、任意のプロセスから生じてもよく、それにより、タンパク質は、タンパク質溶液の他の成分に対して、支持体に固定される。固定化は、支持体の群とタンパク質の群との間の1つ以上の種類の結合によって、例えば、共有結合、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス力等、またはそれらの組み合わせによって生じてもよい。
【0088】
クロマトグラフ用カラム上の固定化タンパク質のウイルス不活性化は、精製を単純化することができる。例えば、2つ以上の槽(大規模精製で使用される2つのタンクシステム)を必要とするよりもむしろ、クロマトグラフィ精製およびウイルス不活性化は、同一槽中で、例えば、同一クロマトグラフ用カラム上で実施されてもよい。これは、例えば、時間を減らす、試薬を節約する、および/または効率を高める等、タンパク質精製の下流プロセスを単純化する。いくつかの実施形態では、クロマトグラフ用カラムは、陽イオン交換樹脂である。いくつかの実施形態では、クロマトグラフ用カラムは、陰イオン交換樹脂である。
【0089】
固定化タンパク質のウイルス不活性化のある特定の実施形態のさらなる、かつ驚くべき利点は、凝集体形成の減少である。いくつかのタンパク質は、溶媒/界面活性剤混合物に感受性を示し、例えば、溶液中の溶媒/界面活性剤試薬と接触させられる時に凝集体を形成する。特定の理論または仮説に限定されるものではないが、感受性タンパク質が固定化されている間、例えば、タンパク質がクロマトグラフ用樹脂に結合されている間に、溶媒/界面活性剤混合物と接触させることは、単純に、固定化タンパク質分子が物理的に相互に接触することができないことに基づき、凝集体の形成を防止することができる。いくつかの実施形態では、不活性化は、約20%未満の凝集体、約18%未満の凝集体、約15%未満の凝集体、約12%未満の凝集体、約10%未満の凝集体、または約5%未満の凝集体の形成をもたらす。また、ある特定の実施形態では、凝集レベルは、タンパク質調製物が、タンパク質が固定化されないウイルス不活性化に供される時の凝集レベルと比較して、少なくとも約10%、約20%、約50%、または約100%低減される。
【0090】
1つの好ましい実施形態では、タンパク質は、クロマトグラフ用樹脂上に装填され、溶媒/界面活性剤処理が、洗浄ステップ、好ましくは、脂質エンベロープウイルスの不活性化を可能にするのに十分長いインキュベーション期間にわたって継続する、洗浄ステップとして使用される。例えば、洗浄ステップは、好ましくは、約30分〜約1時間にわたって継続する。溶媒/界面活性剤混合物は、上記のように、そのようなウイルス不活性化をもたらすのに好適な濃度で、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒/界面活性剤混合物は、1%のTriton X−100、0.3%のリン酸トリ−N−ブチル、および0.3%のポリソルベート80を含む。いくつかの特定の実施形態に関するさらなる詳細を、ADAMTS13精製に関して以下に提供する。
【0091】
ウイルス不活性化はまた、例えば、ナノフィルタを使用したナノ濾過等の濾過による、ウイルス除去を含んでもよい。そのようなウイルス除去は、単独で、またはウイルス非活性化(不活性化)、例えば、上記のような溶媒/界面活性剤混合物を用いた処理を含む、ウイルス非活性化ステップと組み合わせて生じてもよい。ウイルス不活性化がウイルス非活性化およびウイルス除去の両方を含む時、ウイルス除去は、溶媒/界面活性剤処理によるウイルス非活性化の前および/または後に生じてもよい。概して、試料からのウイルス除去は、試料を濾過すること、例えば、ウイルスおよびウイルス汚染物質が流動することを可能にする一方で、試料中のADAMTS13を維持する細孔径を有するフィルタに、試料を通すことを伴う。一実施形態では、フィルタの細孔径は、約15nm〜約50nmの間である。濾過はまた、20Nまたは35Nのフィルタ(Planova,Asahi Kasei)を使用したナノ濾過によって実施することができる。いくつかの実施形態では、ナノフィルタの汚染を防止するために、前置フィルタが使用され、例えば、約2μMのフィルタ、または0.2μPVDFもしくはPES膜が使用されてもよい。
【0092】
陽イオン交換クロマトグラフィによる仕上げ
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ(またはヒドロキシアパタイト、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィ)の後に、陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィによる、ADAMTS13を含む試料を仕上げる任意のステップを含む。本ステップでは、ADAMTS13を含む緩衝液の伝導率は、陽イオン交換クロマトグラフィに対する適切な伝導率を達成するために必要に応じて、仕上げ前に低減されてもよい。
【0094】
(a)緩衝液伝導率の低減
【0095】
ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィ、またはヒドロキシアパタイト、続いて、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂を用いたタンデムクロマトグラフィの後、ADAMTS13タンパク質を含む緩衝液は、例えば、イオン成分(例えば、塩化ナトリウム)を除去することにより緩衝液の伝導率を低減することによって、陽イオン交換のために調製されてもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液伝導率は、約5mS/cm未満に低減され、および/またはpHは、約6.0に低減される。緩衝液の伝導率は、特に本明細書の開示を踏まえて、当該技術分野で知られる、本明細書に記載する、または当業者によって理解され得るような任意の方法によって低減されてもよい。限定されない例としては、限外濾過/ダイアフィルトレーション(例えば、クロスフローカセットまたは中空糸モジュール)、ゲル濾過、透析等が挙げられる。
【0096】
一実施形態では、ADAMTS13タンパク質は、陽イオン交換平衡化緩衝液(例えば、20mMのMESを含む緩衝液、室温でpH6.0)に対して、約10kDaのカットオフを有する膜を用いた限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、陽イオン交換のために調製される。いくつかの実施形態では、限外濾過/ダイアフィルトレーション膜は、約10kDa〜約50kDaのカットオフ、例えば、約20kDaのカットオフ、約30kDaのカットオフ、約40kDaのカットオフ等を有する、PES膜である。そのような方法を使用して、緩衝液のpHは、約8.0〜約6.0に低減されてもよく、および/または緩衝液の伝導率は、室温で約2mS/cm未満に低減されてもよい。いくつかのそのような実施形態では、ダイアフィルトレーション用の緩衝液は、20mMのMESを含んでもよく、室温で6.0のpH、および/または室温で0.6mS/cmの伝導率を有してもよい。いくつかの実施形態では、ダイアフィルトレーションに対する緩衝液の伝導率は、使用される陽イオン交換平衡化緩衝液と同一、または実質的に同一であってもよい。
【0097】
一実施形態では、陽イオン交換のためのADAMTS13を含む緩衝液の調製は、透析によって、例えば、中空糸血液透析モジュール(Aquamax series,PES chemistry of the Hollowfibers,Edwards Lifesciences,Unterschleiheim,Germany)等の血液透析モジュールを含む、ダイアライザ機械を使用して実施される。概して、約5Lの試料に対して、約2mのフィルタ面積が使用され、試料緩衝液および透析緩衝液は、相互に対して逆流で流される。いくつかの実施形態では、透析は、単一の透析モジュールへの2回以下の通過からなる。「単一の透析モジュール」とは、透析が実施される1つのユニットまたは構造を意味する。透析モジュールは、概して、それぞれが入口および出口ポートアクセスを有する、管腔および毛細管外の2つの別々の流動チャンバを形成するように管状筐体中に入れられた、端部が開口した中空糸膜の束を備える。半透過性中空糸膜は、2つのチャンバを分離し、溶質のサイズおよび濃度勾配に基づき、通過を選択的に可能にする一方で、他の溶質が2つのチャンバ間を通過することを制限する。逆流モードでモジュールを操作することによって、膜を通過する溶質は、素早く流され、大量の透析液中へと希釈され(「スイープ」)、可能な限り最大の濃度勾配を維持する。したがって、透析は、単一の透析モジュールへの単回通過のスイープで実施されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、これらの方法の組み合わせが使用され、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィによる仕上げのための調製物中の試料の濃縮および緩衝液交換をもたらすために、透析によるUF/DFが使用されてもよい。さらに他の実施形態では、緩衝液交換は、陰イオン交換クロマトグラフィによって実施されてもよい。
【0099】
(b)陽イオン交換クロマトグラフィ
【0100】
上記に示すように、本明細書に開示する方法は、随意に、陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィによって、試料を仕上げることを含んでもよい。本明細書で使用される「陽イオン交換樹脂」という用語は、陽イオン交換クロマトグラフィに好適な、かつ例えば、負電荷基によって正味の負電荷を有する(中性pHで)、任意の樹脂を指す。例としては、カルボキシル基、カルボキシメチル(CM)基、スルホアルキル基(SP、SE)、メチルスルホネート(複数可)基、セルロースの硫酸化エステル、ヘパリン等、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このステップは、概して、ADAMTS13生成物を濃縮し、予備処方緩衝液中に生成物を配置し、プロセス関連不純物(例えば、CHOタンパク質等の宿主細胞タンパク質、CHO DNA等の宿主細胞DNA、溶媒/界面活性剤混合物の試薬等)、ならびに生成物関連不純物(例えば、ADAMTS13の凝集体および非生物活性断片)を含む、非ADAMTS13不純物をさらに減少させるように設計される。
【0101】
一実施形態では、陽イオン交換樹脂はまた、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:大きな孔、潅流挙動、および対流挙動。本明細書に開示する仕上げステップで使用され得る市販の陽イオン交換樹脂の限定されない例としては、POROS(登録商標)S(Applied Biosystems)、Convective Interaction Media(CIM(登録商標);BIA Separation)、Toyopearl Gigacap S(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)、Toyopearl Gigacap CM(Tosoh)、Toyopearl SP(Tosoha)、Toyopearl CM(Tosoh)、MacroPrep S(Bio−rad,Hercules,CA)、UNOsphereS(Bio−rad,Hercules,CA)、MacroprepCM((Bio−rad,Hercules,CA)、Fractogel EMD SO3(Merck)、Fractogel EMD COO(Merck)、Fractogel EMD SE Hicap(Merck),Cellufine Sulfate(Chisso)、CM and SP Trisacryl(Pall)、CM and S HyperD(Pall)、Mustang S(Pall)、S and CM Sepharose CL(GE Healthcare)、S and CM Sepharose FF(GE Healthcare)、S and CM CAPTO(登録商標)(GE Healthcare)、MonoS(GE Healthcare)、Source S(GE Healthcare)等が挙げられる。
【0102】
陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィは、当該技術分野でよく知られている方法である。いくつかの実施形態では、陽イオン交換カラムは、約0.2〜約0.5mgのADAMTS13/mLの最大装填量を有する。好ましい実施形態では、カラムは、少なくとも0.3mgのADAMTS13/mLが装填される。概して、陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィの間、ADAMTS13は、陽イオン交換樹脂および緩衝液に結合し、ある特定の不純物は通過して流れる。ADAMTS13が吸収されるカラムは、次いで、緩く結合した汚染物質もしくは不純物を除去するために、および/または陽イオン交換樹脂からのADAMTS13の溶出のために調製物中の緩衝液を調節するために、洗浄することができる。次いで、ADAMTS13は、溶出液中に溶出することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィステップから得られる溶出液は、所望よりも大量のADAMTS13の凝集体を含有する。いくつかの実施形態では、例えば、溶出液は、約15%を超える凝集体を含み、それは、ダイアライザステップおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィステップを用いた濃縮および緩衝液交換後に導入されると考えられる。
【0104】
凝集体の割合が有意に低いADAMTS13の生成を可能にするために、陽イオン交換樹脂Poros Sに関して図2においてさらに詳述するように、ある特定の条件を陽イオン交換樹脂と共に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、例えば上記により詳細に記載するように、陽イオン交換クロマトグラフィによる精製、続いて、カラム上溶媒/界面活性剤ウイルス不活性化を含む組み合わせが使用される。この組み合わせは、好ましくは、溶出液中にADAMTS13ポリペプチドを伴う少量の凝集体をもたらす。より好ましい実施形態では、溶出手順は、勾配溶出(段階溶出よりもむしろ)を含み、それは、例えば、溶出ピークの下降部において、ADAMTS13の凝集体をさらに除去することができる。さらにより好ましい実施形態では、溶出緩衝液中のTween 80の濃度は、約0.05%超、例えば、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、好ましくは、約0.1%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、または約0.15%である。濃度の増加は、ADAMTS13へのさらなる安定効果を有し、さらに、樹脂からのADAMTS13の溶出中の、高分子量構造の形成を防止すると考えられる。「ADAMTS13タンパク質を安定化させること」または「ADAMTS13への安定効果」とは、特に、断片化もしくは凝集形態よりもむしろ、無傷および/もしくは単量体の形態、または実質的に無傷および/もしくは単量体の形態での、ADAMTS13の天然構造を促進する傾向があることを意味する。安定化はまた、得られたADAMTS13が、変動温度、変動pH、イオン強度等のそうでなければ不安定な条件の中における断片化、天然構造の損失、および/または凝集に抵抗する傾向を意味し得る。
ADAMTS13タンパク質はまた、採取中に使用されるマトリクスによって安定化されてもよく、例えば、溶媒/界面活性剤処理によるウイルス不活性化は、濃縮採取に実施される。さらに、実際に形成する凝集体は、陰イオン交換クロマトグラフィカラム(本明細書に記載するようなANX Sepharose等)上での捕獲、および/またはクロマトグラフィ(本明細書に記載するようなヒドロキシアパタイトを用いたタンデムクロマトグラフィ/Capto MMC等)による仕上げ等、後の精製ステップによって除去することができる。
【0105】
上記に記載する1つ以上の修正形を使用することによって、ADAMTS13ポリペプチドの少量の凝集体を含む溶出液をもたらすことができる。例えば、好ましい実施形態では、陽イオン交換カラムからの溶出液は、約20%未満、約18%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、または約5%未満の凝集体を含み得る。
【0106】
陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィの最終ステップは、溶出緩衝液を用いてADAMTS13タンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、結合したADAMTS13は、緩衝液のイオン強度を増加することによって、陽イオン交換樹脂から溶出される。陽イオン交換樹脂にクロマトグラフィにより接触するために使用されるADAMTS13を含む緩衝液は、概して、室温で約10mS/cm未満、例えば、5mS/cmの伝導率を有する。さらに、陽イオン交換樹脂にクロマトグラフィにより接触するために使用されるADAMTS13を含む緩衝液は、概して、室温で約7.0未満、例えば、6.0のpHを有する。陽イオン交換樹脂からADAMTS13タンパク質を溶出するために使用される溶出緩衝液は、そのような緩衝液よりも低いイオン強度を有することができる。樹脂はまた、目的とする貯蔵緩衝液のpHに等しい、または実質的にに等しいpHを有する緩衝液で洗浄されてもよい。
【0107】
好ましい実施形態では、ADAMTS13タンパク質は、貯蔵緩衝液を用いて、陽イオン交換樹脂から溶出される。概して、貯蔵緩衝液とは、室温で約5〜約9のpHを有し、カルシウム、緩衝化合物、および塩を含む緩衝液を意味する。貯蔵緩衝液のpHは、室温で約7.0よりも大きくてもよい(例えば、約7.5)。貯蔵緩衝液は、約10mM未満のCa++(例えば、2mMのCa++)を含んでもよく、緩衝化合物は、リン酸塩、トリス、HEPES、ヒスチジン、イミダゾール、グリシルグリシン、MES、トリシン、酢酸塩等からなる群より選択されてもよく、塩は、NaCl、KCl、CaCl、MgCl等からなる群より選択されてもよい。好ましい実施形態では、貯蔵緩衝液は、7.0を超えるpHを有し、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、および塩を含む。より好ましい実施形態では、貯蔵緩衝液はさらに、非イオン性界面活性剤、例えば、約0.01〜約0.5%の非イオン性界面活性剤、例えば、0.05%の非イオン性界面活性剤を含む。さらにより好ましい実施形態では、溶出液は、貯蔵緩衝液を用いた陽イオン交換樹脂からの溶出後に、後続の濃縮または緩衝液交換ステップのどちらにも供されない。
【0108】
1つの特定の実施形態では、例えば、約20cmのベッド高さを有するSource Sカラム等、Source S(GE healthcare)が仕上げステップの陽イオン交換樹脂として使用される。そのような実施形態では、カラムは、約2カラム容積の約2MのNaClで活性化され、約20mMのMES、約10mMのNaCl、および約2mMのCaClを含み、室温で約6のpHを有する、約6カラム容積の緩衝液で平衡化されてもよい。ADAMTS13を含む緩衝液は、室温で約5mS/cm未満の伝導率で、カラムと接触させられてもよく、カラムは、続いて、平衡化緩衝液で洗浄され、最終的に、ADAMTS13タンパク質を含む溶出液が回収される。回収後、溶出液は濃縮され、緩衝液は、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィ、ダイアフィルトレーション、限外濾過、透析等によって交換されてもよい。
【0109】
別の特定の実施形態では、POROS(登録商標)Sが、ADAMTS13タンパク質を含む試料の仕上げにおける陽イオン交換樹脂として使用される。本実施形態では、陽イオン交換樹脂にクロマトグラフィにより接触するために使用されるADAMTS13を含む緩衝液は、約5mS/cm未満の伝導率、および約6.1〜約6.4の間のpHを有してもよい。ADAMTS13は、段階溶出が、好ましくは、より濃縮された生成物を提供し得るが、勾配溶出を使用して溶出されてもよい。勾配溶出が実施される場合、2つの緩衝液が使用されてもよく、例えば、溶出液プールが約200mMの塩濃度を有し得るように、第1の緩衝液は、低い塩含有量を有し(例えば、塩をほとんどまたは全く有しない)、第2の緩衝液は、より高い塩含有量(例えば、約500mM)を有する。段階溶出が実施される場合、溶出緩衝液は、貯蔵緩衝液、例えば、約300mMのNaCl、約2mMのCaCl、約20mMのヒスチジン、約0.05%のTween 80を有する貯蔵緩衝液を含んでもよく、室温で約7.5のpHを有してもよい。いくつかのそのような実施形態では、POROS(登録商標)Sステップ後に、緩衝液交換の必要がなく、すなわち、POROS(登録商標)Sから得られるADAMTS13分画は、すでに緩衝液中にあり、貯蔵に好適な濃度である。さらに他の実施形態では、POROS(登録商標)Sカラムから得られるADAMTS13分画は、さらなる濃縮および/または緩衝液交換ステップに供されてもよい。
【0110】
概して、本明細書に開示する方法のいくつかの実施形態に従って、組換えADAMTS13タンパク質を精製することによって、純粋ADAMTS13タンパク質の組成物が得られる。一実施形態では、開示した方法に従って、組換えタンパク質を精製することによって、少なくとも約90%純粋、例えば、少なくとも約95%純粋、例えば、少なくとも約98%純粋、例えば、または少なくとも約99%純粋であるADAMTS13タンパク質が得られる。開示した方法のいくつかの実施形態に従って、少なくとも約20%の収率が得られる。一実施形態では、本方法は、少なくとも約5%、例えば、約30%、例えば、約10%、例えば、約20%、例えば、約40%、例えば、約50%、例えば、約60%、例えば、約70%、例えば、約80%、例えば、約90%、または例えば、約95%の収率を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、約500単位/mgのADAMTS13〜約1,000単位/mgのADAMTS13に及ぶ比活性度を有する、ADAMTS13タンパク質を提供する。別の実施形態では、本方法は、約1,200単位/mgのADAMTS13 UV280タンパク質〜約2,400単位/mgのADAMTS13 UV280タンパク質に及ぶ比活性度を有する、ADAMTS13タンパク質を提供する。別の実施形態では、組換えADAMTS13タンパク質が組換えADAMTS13核酸で形質転換されるCHO細胞によって産生される場合、開示した方法に従って組換えADAMTS13を精製することによって、約1,000ppm未満の宿主細胞不純物を有する組成物が産生される。いくつかの実施形態では、本方法は、貯蔵緩衝液中に少なくとも約2mg/mLのADAMTS13タンパク質を提供する。
【0111】
組換えADAMTS13タンパク質を含む組成物
【0112】
本発明はさらに、本明細書に開示する方法に従って精製される組換えADAMTS13を含む組成物を提供する。本明細書に開示する組成物は、精製された組換えADAMTS13の貯蔵に有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、精製されたADAMTS13タンパク質は、冷凍で、例えば、−60℃未満で貯蔵される。本明細書に開示する組成物はまた、ADAMTS13タンパク質の治療的投与のために、および/または治療的投与、特に、非経口投与のために組成物を調製するために有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法に従って得られる、精製されたADAMTS13は、バルク薬物物質の形態、すなわち、治療的投与用の組成物への処方の準備ができている形態である。
【0113】
したがって、本発明の別の態様は、精製された組換えADAMTS13タンパク質が賦形剤(複数可)または他の薬学的に許容される担体と混合される、薬学的組成物に関する。好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体は、薬学的に不活性である。薬学的に不活性な担体は、活性薬剤と反応しない、もしくは実質的に反応しない、および/または、特に、活性薬剤の所望の薬学的特性に影響を与えない、もしくは実質的に影響を与えない担体である。薬学的組成物は、当該技術分野で知られる任意の方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥等によって調製されてもよい。
【0114】
治療される状態に応じて、これらの薬学的組成物は、全身的または局所的に処方および投与されてもよい。処方および投与のための技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co,Easton Pa.)の最新版において見出すことができる。好適な経路としては、例えば、経口または経粘膜投与、ならびに筋肉内投与、皮下投与、髄内投与、髄腔内投与、脳室内投与、静脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与等を含む、非経口送達を挙げることができる。
【0115】
本発明での使用に好適な薬学的組成物としては、使用目的を達成するために、有効量の活性成分としてADAMTS13を含む組成物が挙げられる。本明細書で使用される「有効量」のADAMTS13は、天然ADAMTS13の生物学的効果を増大、富化、改善、増加、または生成する量を指すことができる。天然ADAMTS13の生物学的効果としては、血液凝固に関与する巨大タンパク質である、フォンヴィレブランド因子を開裂するADAMTS13の作用に基づく、vWF開裂プロテアーゼ活性が挙げられる。「有効量」は、血小板凝集レベルの低下をもたらす、例えば、血液凝固障害を患う個人におけるレベルを、血液凝固障害を患っていない個人により相当するレベルまで低下させる、ADAMTS13の量を含む。血液凝固障害としては、モシコウィック症候群としても知られている血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、アップショー・シュールマン症候群(TTPの家族性形態)、および脳卒中が挙げられるが、これらに限定されない。「有効量」はまた、1つ以上の血液凝固障害および関連状態の治療における予防的および/または治療的有用性を達成するための量を含む。ある特定の有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0116】
本発明は、動物対象における血液凝固障害および関連状態を治療および/または予防するための方法、薬学的組成物、およびキットを提供する。本明細書で使用される「動物対象」という用語は、ヒトならびに他の哺乳動物を含む。
【0117】
本明細書で使用される「治療することおよび/または予防すること」は、治療的有用性および/または予防的有用性のそれぞれを達成することを含む。治療的有用性とは、治療されている基礎にある血液凝固障害の好転または改善を意味する。例えば、TTP患者において、治療的有用性は、患者がなお基礎疾患に悩む可能性があるという事実にもかかわらず、改善が患者において観察されるように、TTPと関連する状態および/または症状のうちの1つ以上を根絶または改善することを含む。例えば、治療は、血栓症の形成が低減または根絶された時だけではなく、頭痛の減少、熱の低下、および/または腎不全の遅延等、TTPに伴う症状に対する改善が、患者において観察された時も、治療的有用性を提供することができる。
【0118】
予防的有用性のために、本発明の薬学的組成物は、診断がまだ行われていない場合でさえ、血液凝固障害を発症する危険性がある患者、例えば、TTPのような血液凝固障害と一般的に関連付けられる症状または状態のうちの1つ以上を報告する患者に投与されてもよい。
【0119】
活性成分に加えて、薬学的組成物は、活性化合物の、薬学的に使用され得る調製物への処理を促進する、賦形剤および助剤等の好適な薬学的に許容される担体を含んでもよい。
【0120】
非経口投与用の薬学的処方は、概して、水溶性形態の活性成分の水溶液を含む。いくつかの実施形態では、活性薬剤の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製されてもよい。好適な脂溶性溶媒または媒体としては、ゴマ油等の油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注入懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等の、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。随意に、懸濁液はまた、例えば、高濃度溶液の調製を可能にするために、活性薬剤の溶解性を増加させる好適な安定化剤または薬剤を含有してもよい。
【0121】
注入のために、本発明の薬学的組成物は、水溶液中、好ましくは、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理緩衝食塩水等の生理学的に適合性のある緩衝液中で処方されてもよい。組織または細胞投与のために、浸透させられる特定のバリアに対して適切な浸透剤が処方物中に使用される。そのような浸透剤は、概して、当該技術分野で知られている。
【0122】
経口使用のための薬学的調製は、活性薬剤を固体賦形剤と混合し、随意に、得られた混合物を粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望に応じて、好適な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理することによって得ることができる。好適な賦形剤としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの炭水化物またはタンパク質充填剤;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ等からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース;アラビアおよびトラガカントを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲン等のタンパク質が挙げられる。所望に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウム等のその塩等の崩壊剤または可溶化剤が添加されてもよい。治療される患者による経口および/または経鼻摂取のために、薬学的組成物が錠剤、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、溶液、懸濁液、糖衣錠等として処方されることを可能にする担体もまた、使用されてもよい。
【0123】
経口使用され得る薬学的調製物としては、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトール等のコーティングで作られる軟質シールカプセルが挙げられる。押し込み式カプセルは、ラクトースまたはデンプン等の充填剤または結合剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;および随意に安定化剤と混合される活性薬剤を含有することができる。軟カプセルにおいて、活性化合物は、安定化剤と一緒に、または安定化剤なしで、油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の好適な液体中に溶解または懸濁されてもよい。
【0124】
本明細書に記載する方法に従って調製されるADAMTS13または他のタンパク質を含む組成物は、薬学的に許容される担体と共に処方され、適切な容器(またはキット)に配置され、示された状態の治療に関してラベルが付けられてもよい。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、例示目的で提供され、本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0126】
実施例1
【0127】
図1は、本明細書に開示するような本発明のある特定の実施形態に従って、ADAMTS13タンパク質を精製するための例示的な方法を提供する。提供される実施例では、組換えADAMTS13タンパク質は、組換えADAMTS13ヌクレオチド配列を含むCHO細胞の培養から回収される上清から精製される。本実施例では、試料は、約2単位/mL(約2μg/mL)のADAMTS13タンパク質を含む細胞培養上清である。
【0128】
図1に示すように、ADAMTS13および非ADAMTS13不純物を含む試料は、最初に、任意の富化前調製に供されてもよい:(a)ステップ101に示すように、試料は、限外濾過によって濃縮されてもよく(約10倍〜約20倍)、緩衝液は、ダイアフィルトレーションによって交換されてもよい(約30kDaの分子量カットオフ)、および(b)ステップ102に示すように、ADAMTS13タンパク質は、さらなる富化前に、陰イオン交換樹脂に結合され、そこから溶出され得る。
【0129】
試料の富化前調製
【0130】
(a)富化前限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)
【0131】
図1、ステップ101に示すように、富化前陰イオン交換クロマトグラフィのための装填を最適化するために、細胞培養上清は、約10倍〜約20倍に濃縮され、PES膜(約30kDa〜約50kDaのカットオフ;Pall Omega)を使用して、ADAMTS13を安定させると考えられる、カルシウムおよび亜鉛イオンを含有する低伝導率緩衝液に透析濾過される。細胞培養上清ダイアフィルトレーション用の緩衝液は、室温で7.7のpHを有する、20mMのトリス、0.1%のポリソルベート80、85mMのNaCl、2mMのCaCl、5μMのZnClである。
【0132】
(b)富化前陰イオン交換クロマトグラフィ
【0133】
図1、ステップ102に示すように、富化前陰イオン交換クロマトグラフィは、GE HealthcareからのANX Sepharose Fast Flow低サブを使用して実施されてもよい。この陰イオン交換樹脂は、以下の条件(表1〜2)に従って使用されてもよい。
【0134】
カラム装填:最大0.5mgのADAMTTS13 Ag/mL樹脂;ベッド高さ:20cm
【表1】

【0135】
あるいは、段階溶出は、表2に詳述するように、48%のANX−EluBおよび52%のANX−EluAを含む、2.8カラム容積の緩衝液と共に使用することができる。他の潜在的に好適な緩衝液も示される。
【表2】

【0136】
図1、ステップ102中に示されるものとは異なる樹脂が使用されてもよい。例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAからのPOROS 50DおよびPOROS 50PIを使用することができる。この樹脂を使用した富化前陰イオン交換クロマトグラフィからの溶出液は、約20%〜約70%の純度を有する組換えADAMTS13を提供することができ、試料のこの富化前調製後のパーセント収率は、少なくとも約75%であり得る。
【0137】
ADAMTS13の富化
【0138】
図1、ステップ103および104のそれぞれに示すように、ADAMTS13は、次いで、仕上げステップ(a)および(b)によって富化されてもよい。ADAMTS13を含む試料は、最初に、ヒドロキシアパタイトII型カラム(Biorad,Hercules,CA)上のヒドロキシアパタイトを用いたタンデムクロマトグラフィ(ステップ103)、続いて、陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂CAPTO(登録商標)MMC(GE Healthcare)上の混合モードクロマトグラフィ(ステップ104)に供される。より具体的には、ステップ102の富化前陰イオン交換クロマトグラフィからの溶出液プールは、伝導率を約6mS/cmに低下させるために、ヒドロキシアパタイト−希釈緩衝液で1:4に希釈される。希釈された溶出液プールは、ADAMTS13タンパク質の実質的な部分が流動することを可能にする条件下での、ヒドロキシアパタイト(ステップ103)、続いて、ADAMTS13タンパク質に結合する、混合モード陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂(ステップ104)を用いたタンデムクロマトグラフィに供される。タンデムクロマトグラフィの条件を以下および表3〜4に提供する。
【0139】
カラム1:樹脂:ヒドロキシアパタイトII型(Biorad)(HA);装填:最大2mgの総タンパク質/mL樹脂;ベッド高さ:20〜30cm。
【0140】
カラム 2:樹脂:Capto MMC(GE Healthcare);装填:3〜6mgのADAMTS13/mL樹脂;ベッド高さ:10cm。
【0141】
カラム容積比 HA:MMC=10:1。
【表3】


【表4】

【0142】
タンデムクロマトグラフィによる富化後のADAMTS13のパーセント収率は、少なくとも60%であり得る。
【0143】
ウイルス不活性化
【0144】
図1、ステップ105に示すように、試料は、汚染ウイルスもしくはウイルス粒子を不活性化するために溶媒/界面活性剤処理に供することができ、および/または試料は、そのようなウイルスもしくはウイルス粒子を除去するために濾過される。また、図1に示すように、ウイルス不活性化ステップ105は、手順の種々の時点において、例えば、タンデムクロマトグラフィステップ103および104の前、または以下に記載する濃縮および緩衝液交換を伴うステップ(ステップ106)の後に実施することができる。
【0145】
溶媒/界面活性剤処理によるウイルス不活性化のために、試料は、約12℃〜約16℃で30分間、1%のTRITON X−100(登録商標)、0.3%のリン酸トリ−N−ブチル、および0.3%のポリソルベート80を含む溶媒/界面活性剤混合物で処理される(特に、脂質エンベロープウイルスを不活性化するために)。さらなる詳細を以下の実施例2に提供する。
【0146】
あるいは、または加えて、試料は、濾過、例えば、0.2μmの粒子フィルタを通したナノ濾過に供される。例えば、溶媒/界面活性剤処理後の混合物は、以下に記載する1容積の仕上げ平衡化緩衝液で希釈され、0.2μmのPVDFまたはPES膜を通して濾過される。濾過は、溶媒/界面活性剤処理の前および/または後に実施することができる。処理後の濾過は、処理中に形成された可能性がある粒子状物質を除去するために使用されてもよい。濾過はまた、図1にも示すような20Nのフィルタ(Planova, Asahi Kasei)を使用したナノ濾過によって実施することができ、ここで、ウイルス不活性化ステップ105は、タンデムクロマトグラフィステップ103および105の前に実施される。さらなるウイルス不活性化ステップ105は、以下に記載するように、試料が陽イオン交換クロマトグラフィによって仕上げられた後に実施することができる。
【0147】
このウイルス不活性化からのADAMTS13のパーセント収率は、少なくとも95%であり得る。
【0148】
陽イオン交換クロマトグラフィによる仕上げ
【0149】
富化後、ADAMTS13は、陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィによって仕上げられてもよく、ADAMTS13を含む緩衝液の伝導率は、陽イオン交換クロマトグラフィに対する適切な伝導率を達成するために、仕上げ前に低下させられてもよい。したがって、富化後ステップは、(a)緩衝液伝導率を低下させること、続いて、(b)陽イオン交換クロマトグラフィを伴ってもよい。
【0150】
(a)緩衝液伝導率の低下
【0151】
図1、ステップ106に示すように、陽イオン交換クロマトグラフィのための調製は、10kDaのカットオフを有するUF/DF、およびダイアライザ機械を使用した濃縮および緩衝液交換を伴ってもよい。図示された実施形態では、緩衝液交換のために使用されるダイアライザ機械は、0.3〜1.9mのフィルタ面積を有する中空糸血液透析モジュール(Aquamax series,PES chemistry of the Hollowfibers,Edwards Lifesciences,Unterschleiheim,Germany)を伴う。操作中、以下のパラメータがオンラインで監視される:圧力(モジュール前、モジュール後、および膜間圧)、伝導率、ならびに温度。ダイアライザカートリッジは、2つのポンプと接続され、1つは、試料を供給し(中空糸を通して)、1つは、透析緩衝液を供給する(逆流方向で、中空糸を包囲して)。約2mのフィルタ面積が約5Lの試料に対して使用され、流量は、以下の方法で固定される:40mL/分(試料流量、または20mL/分/mのフィルタ面積)、60mL/分(透析緩衝液流量、逆流)。透析の前および後に、中空糸モジュールは、透析緩衝液ですすがれ、回収された生成物に、透析後のすすぎが追加される。透析後、試料は、透析前とほぼ同じ容積を有するが、わずかに濃縮されている。
【0152】
この方法で緩衝液伝導率を低下させた後のADAMTS13のパーセント収率は、約90%であり得る。
【0153】
他の実施形態では、緩衝液交換は、ステップ102にあるように、ANX Sepharose−FF低サブ上の陰イオン交換クロマトグラフィによって実施されてもよい。
【0154】
陽イオン交換クロマトグラフィ
【0155】
図1、ステップ107に示すように、ADAMTS13タンパク質の富化(ならびに任意の濃縮および緩衝液交換ステップ106、および/またはウイルス不活性化ステップ105)後、試料は、陽イオン交換クロマトグラフィによって仕上げられてもよい。ADAMTS13タンパク質を含む緩衝液は、Source Sカラム(GE Healthcare)、またはPOROS(登録商標)50 HSカラム等のPOROS(登録商標)Sカラム(Applied Biosystems)のいずれかで仕上げられる。
【0156】
Source 30Sカラム上での仕上げのための条件を表5に提供し、仕上げステップのための緩衝液を表6に提供する。
【0157】
樹脂:Source 30 S(GE Healthcare);カラム装填:最大0.2(0.5)mgのADAMTS13/mL樹脂;ベッド高さ:20cm。
【表5】


【表6】

【0158】
Source Sカラムからの溶出液プールは、濃縮され、貯蔵緩衝液に対して透析濾過される。
【0159】
POROS(登録商標)Sカラム上での仕上げのための条件を表7に提供し、仕上げステップのための緩衝液を表8に提供する。
【0160】
樹脂:POROS(登録商標)S(Applied Biosystems,Foster City,CA);カラム装填:最大12mgのADAMTS13/mL樹脂;ベッド高さ:20cm。
【表7】


【表8】

【0161】
POROS(登録商標)Sカラムからの溶出液プールは、濃縮され、貯蔵緩衝液に対して透析濾過される。
【0162】
このさらなる仕上げステップ後のADAMTS13のパーセント収率は、少なくとも約70%、および緩衝液交換後、少なくとも約90%であり得る。
【0163】
図1、ステップ108に示すように、精製されたADAMTS13タンパク質は、上記の方法に従って得られる。ADAMTSは、例えば、約−60℃未満で冷凍および保存される。全プロセスの収率は、約22%〜約24%、またはそれ以上であり得る。
【0164】
実施例2
【0165】
図2は、図1の陽イオン交換クロマトグラフィステップ107で使用され得る種々の条件の要約を提供する。具体的に、種々の実行から得られるADAMTS13生成物の比較は、図2Cの条件が汚染凝集体を低減することを示す。
【0166】
図2Aに示すように、変化形Aは、以下により詳細に考察するような、溶媒/界面活性剤(S/D)処理を使用したウイルス不活性化、続いて、段階溶出を適用するPoros S上の陽イオン交換クロマトグラフィの組み合わせである。図2Bに示すように、変化形Bは、段階希釈を用いるが、ウイルス不活性化が先行しない、Poros 50S上の陽イオン交換クロマトグラフィを伴う。変化形AおよびBの両方を、表9に概説する手順に従って実施することができる。
【表9】

【0167】
変化形Aにおいて、ステップ106からの調整された(透析された)溶出液は、溶媒/界面活性剤ウイルス不活性化ステップ105に供される。溶出液は、最初に、特定の物質を除去するために、0.2μの細孔径のフィルタを通して濾過される。次いで、濾液は、ストック溶液から、1%のTriton X−100、0.3%のリン酸トリ−n−ブチル、および0.3%のポリソルベート 80(Tween 80)の最終濃度まで、溶媒/界面活性剤混合物が補充される。不活性化は、わずかな撹拌または振動下で、約30分〜約1時間の時間枠で、約12℃〜約25℃に及ぶ温度で実施される。不活性化は、1容積の冷たい希釈緩衝液(20mMのMES、pH6.0、室温)で溶液を希釈することによって停止される。カラムを保護するために、溶媒/界面活性剤で処理および希釈された溶液は、例えば、ウイルス不活性化処理中に形成された可能性がある粒子状物質を除去するために、再び0.2μのフィルタを通して濾過される。
【0168】
溶媒/界面活性剤で不活性化および希釈された生成物溶液は、次いで、段階希釈を使用したPoros 50HS上の陽イオン交換クロマトグラフィステップ107に供される。クロマトグラフィの詳細を上記の表9に概説する。得られた溶出液プールは、−60℃未満で冷凍保存され得る、バルク薬物物質の形態のADAMTS13タンパク質を提供する。
【0169】
変化形Bにおいて、陽イオン交換クロマトグラフィステップ107は、溶媒/界面活性剤ウイルス不活性化ステップ105なしで、ステップ106からの調整された(透析された)溶出液に対して実施される。陽イオン交換クロマトグラフィの詳細は、上記に詳述される通りである。
【0170】
図2Cに示すように、変化形Cは、勾配溶出を使用したPoros 50HS上の陽イオン交換クロマトグラフィによる精製、続いて、カラム上溶媒/界面活性剤ウイルス不活性化を伴う組み合わせである。この変化形は、驚いたことに、そうでなければ精製されたADAMTS13タンパクに見出される凝集体を低減する。変化形Cで使用され得るクロマトグラフィの詳細を以下の表10に概説する。
【表10】

【0171】
変化形Cにおいて、装填材料は、陽イオン交換仕上げステップ104の溶出液プールであり、好ましくは、ゲル濾過による透析または緩衝液交換によって達成される、4.5mS/cm未満の伝導率を有する。特に、Poros S上の陽イオン交換クロマトグラフィは、上記に考察するように、クロマトグラフ用カラム上に固定化されるウイルスのウイルス不活性化を伴う、カラム上溶媒/界面活性剤処理を含むように適合される。カラム上ウイルス不活性化は、2℃〜10℃の溶媒/界面活性剤混合物を用いた1時間の洗浄を含む。カラム上処理後、洗浄緩衝液は、溶出前に溶媒/界面活性剤化学物質を効率的に洗い落とすように交換される。
【0172】
溶出は、200mMのNaClを用いた段階溶出から勾配溶出に変更され、それは、特に、溶出ピークの下降部において、ADAMTS13のモノマーまたはオリゴマー種の分離を促進すると考えられる。凝集体は、後の溶出分画中に除去され、それにより、そうでなければ精製されたADAMTS13タンパク質に見出される凝集体をさらに除去する。モノマーADAMTS13タンパク質を安定化させるためのさらなる適合として、溶出緩衝液中のTween 80の濃度は、洗浄および溶出緩衝液中で0.05%〜0.1%に増加させられる。これは、Poros S樹脂からのADAMTS13の溶出中の凝集体の形成をさらに防止すると考えられる。カラム上溶媒/界面活性剤処理によるウイルス不活性化を含む、Poros S上のクロマトグラフィの手順の詳細を、上記の表10に概説する。
【0173】
図2Dに示すように、変化形Dは、対照としての役割を果たす。変化形Dにおいて、陽イオン交換クロマトグラフィを介したステップ107の仕上げは、勾配溶出および溶出緩衝液中の増加したTween 80を再び用いるが、溶媒/界面活性剤処理によるカラム上ウイルス不活性化を用いない、Poros 50 HS上で実施される。ウイルス不活性化溶媒/界面活性剤処理ステップ105は、代わりに、陽イオン交換前に濃縮採取に実施される。クロマトグラフィの詳細を以下の表11に提供する。
【表11】

【0174】
変化形Dにおいて、装填材料は、陽イオン交換仕上げステップ104の溶出液プールであり、好ましくは、ゲル濾過による透析または緩衝液交換によって達成される、4.5mS/cm未満の伝導率を有する。Poros S上の陽イオン交換クロマトグラフィステップ107は、上記のように、段階溶出の代わりに勾配溶出、ならびに洗浄および溶出緩衝液中の0.1%のTween 80を再び使用する。勾配溶出を用いたPoros S上のクロマトグラフィの手順の詳細を、上記の表11に概説する。
【0175】
実施例3
【0176】
100Lの発酵槽規模を使用した実験室規模における実験を、カラム上溶媒/界面活性剤ウイルス不活性化で実施し、陽イオン交換クロマトグラフィステップ107の性能に対するこの手順の潜在的な影響を決定した。データを表12に示す。
【表12】

【0177】
表12に示すように、Poros S上の陽イオン交換クロマトグラフィ前に、溶液中の溶媒/界面活性剤処理を介して、ウイルス不活性化を実施することによって、大量の凝集体の形成がもたらされ得る(図2Aの変化形Aおよび試料1)。溶媒/界面活性剤処理が省略され、同一の手順が実施される場合、凝集体形成は、有意に低減される(図2Bの変化形Bおよび試料2)。
【0178】
また、カラム上で溶媒/界面活性剤処理を実施すること、すなわち、ADAMTS13を、それが樹脂の表面上で固定化されている一方で、溶媒/界面活性剤混合物と接触させることによって、凝集体の形成を防止することができる。さらに、実際に形成される少量の凝集体は、後の溶出分画中の勾配溶出によってさらに除去することができる(図2Cの変化形C、試料3および4)。
【0179】
比較のために、溶液中の基準溶媒/界面活性剤処理、精製プロセス、続いて、直前にもカラム上でも溶媒/界面活性剤処理を用いないPoros S上の陽イオン交換クロマトグラフィが実施される(図2Dの変化形D、試料5、6、および7)。この手順もまた、低含有量の凝集体を有するADAMTS13を産生することができる。
【0180】
本明細書において参照される全ての特許および特許公開は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0181】
上記の説明を読むことにより、ある特定の修正および改良が当業者に想到されるであろう。全てのそのような修正および改良は、簡潔さおよび読みやすさの目的で本明細書では削除されているが、適切に、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロンボスポンジン1型モチーフ13を有する組換えジスインテグリン様およびメタロペプチダーゼ(ADAMTS13)タンパク質を、ADAMTS13タンパク質および非ADAMTS13不純物を含む試料から精製するための方法であって、前記方法は、前記ADAMTS13タンパク質がヒドロキシアパタイトからの溶出液または上清中に現れることを可能にする条件下で、前記試料を前記ヒドロキシアパタイトとクロマトグラフィにより接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記溶出液を、前記ADAMTS13タンパク質に結合する陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂と、クロマトグラフィにより接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、前記試料を、陰イオン交換樹脂とクロマトグラフィにより接触させることと、前記ADAMTS13タンパク質を、前記陰イオン交換樹脂から溶出することと、をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料中の前記ADAMTS13タンパク質を限外濾過によって濃縮することと、前記ヒドロキシアパタイトとのクロマトグラフィによる接触の前に、前記ADAMTS13タンパク質を、ダイアフィルトレーション交換によって、カルシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む緩衝液中に安定化することと、をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシアパタイトまたは前記陽イオン交換/疎水性相互作用樹脂との接触に続いて、緩衝液伝導率を減少させることによって、前記ADAMTS13タンパク質を陽イオン交換のために調製するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記調製するステップは、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記調製するステップは、透析によって行われ、前記透析は、単一の透析モジュールへの2回以下の通過からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記調製するステップは、ゲル濾過によって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ADAMTS13タンパク質を、少なくとも1つのウイルス不活性化ステップに供することをさらに含む、請求項1、2、または5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス不活性化ステップは、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む溶媒−界面活性剤混合物を、前記ADAMTS13タンパク質に添加することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ADAMTS13タンパク質は、固定化される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ADAMTS13タンパク質は、陽イオン交換樹脂上に固定化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒−界面活性剤混合物は、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のTWEEN80を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス不活性化ステップは、前記ADAMTS13タンパク質をナノフィルタで濾過して、ウイルスおよび/またはウイルス粒子を除去することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス不活性化ステップは、前記調製するステップの後に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ADAMTS13タンパク質を、勾配溶出を用いて前記樹脂から溶出することをさらに含み、前記勾配溶出は、低塩含有量を有する第1の緩衝液およびより高い塩含有量を有する第2の緩衝液を用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ADAMTS13タンパク質を、ステップ溶出を用いて前記樹脂から溶出することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ溶出は、前記ADAMTS13タンパク質を、保存緩衝液により前記樹脂から溶出することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記保存緩衝液は、7.0超のpHを有し、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、0.05%の非イオン性界面活性剤、および塩を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
後続の濃縮または緩衝液交換ステップが存在しない、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1、2、または5のいずれか1項に記載の方法に従って調製される組換えADAMTS13タンパク質を含む、組成物。
【請求項22】
請求項12に記載の方法に従って調製される組換えADAMTS13タンパク質を含む、組成物。
【請求項23】
タンパク質試料中のウイルス汚染物質を不活性化するための方法であって、前記方法は、
前記タンパク質を支持体上に固定化することと、
前記固定化されたタンパク質を、非イオン性界面活性剤および有機溶媒を含む溶媒−界面活性剤混合物で処理することと、を含む、方法。
【請求項24】
前記タンパク質は、ADAMTS13、Advate、第VIIa因子、第IX因子、フォンヴィレブランド因子、および抗MIF抗体から選択される少なくとも1つである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記支持体は、クロマトグラフ用樹脂である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒−界面活性剤混合物は、1%のTRITONX−100、0.3%のリン酸トリ‐N‐ブチル、および0.3%のポリソルベート80を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒−界面活性剤混合物処理は、30分間〜1時間継続する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質を、保存緩衝液により前記支持体から溶出することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記保存緩衝液は、7.0超のpHを有し、10mM未満のカルシウムイオン、緩衝化合物、0.05%の非イオン性界面活性剤、および塩を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
後続の濃縮または緩衝液交換ステップが存在しない、請求項28に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−500711(P2013−500711A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522191(P2012−522191)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061192
【国際公開番号】WO2011/012726
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】