説明

組換えRSV抗原

本開示は、RSV感染の治療及び予防のための免疫原性組成物(たとえば、ワクチン)を含んでなる、組換えの呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原、及びその作製方法と使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が参照によって本明細書に組み入れられる、2010年、5月13日に出願された米国特許仮出願番号61/334/568及び2009年6月24日に出願された米国特許仮出願番号61/219,958のより早い出願日の利益を主張する。
【0002】
本特許文書の開示の一部には著作権防御の対象となるものが含まれる。著作権の所有者は、米国特許商標局の特許ファイル又は記録に出現するような特許文書又は特許開示のファクシミリ再生に反対するものではないが、どんなものであれ、著作権をすべて保有する。
【背景技術】
【0003】
本開示は免疫学の分野に関する。さらに詳しくは、本開示は、呼吸器多核体ウイルス(RSV)に特異的な免疫応答を誘発する組成物及び方法に関する。
【0004】
ヒトの呼吸器多核体ウイルス(RSV)は、6ヵ月未満の幼児及び妊娠35週以内の未熟児における下部気道感染(LRI)の世界で最も一般的な原因である。RSV疾患のスペクトルには、鼻炎及び耳炎から肺炎及び細気管支炎までの幅広い呼吸器症状が含まれ、後者の2疾患は、考慮すべき罹患率及び死亡率と関連している。ヒトのみがRSVに感染することが知られている。汚染した鼻分泌物からのウイルスの広がりは多量の呼吸器液滴を介して生じるので、感染した個人又は汚染した表面との密接な接触が伝播には必要とされる。RSVは、おもちゃや他の物体上で数時間生き残り、そのことが、病院での、特に小児科病棟でのRSV感染の高い比率を説明している。
【0005】
RSVに関して推定される世界の年間の感染及び死亡は、それぞれ6400万人及び160,000人であると概算される。米国のみでは、RSVは、年間18,000〜75,000人の入院と90〜1900人の死亡に関与していると概算される。温帯気候では、RSVは細気管支炎及び肺炎を含んでなるLRIの年々の冬期流行の原因として文書で十分に裏付けられている。米国では、ほぼ全員の小児が2歳までにRSVに感染している。健常な小児におけるRAS関連のLRIの発生率は、2歳までの1000人の小児当たり37人(6ヵ月未満の乳児1000人当たり45人)であると算出され、1000人(6ヵ月未満の乳児1000人当たり)当たり6人に入院のリスクがあると算出された。発生は、心肺疾患を持つ子供及び未熟児で高く、彼らは、米国でのRSV関連での入院のほぼ半数を構成する。RSVが原因で生じるさらに重篤なLRIを経験する小児は、後に小児喘息の高い発生を招くことになる。これらの研究は、重篤なLRI患者及びその後遺症を持つ患者を介護するコストが対応なものである先進国にてRSVワクチン及びその使用の幅広いニーズを明らかにしている。RSVはまた高齢者におけるインフルエンザ様疾患の罹患率の重要な原因としてますます認識されている。
【0006】
健常な集団及びリスクのある集団で耐久性のある防御的免疫応答を産生する、安全で且つ有効なRSVワクチンを生成する尽力にて様々なアプローチが試みられている。しかしながら、RSV感染を防ぎ、下部呼吸器感染(LRI)を含んでなる、RSV疾患を軽減する若しくは防ぐ目的でのワクチンとして安全で且つ有効であることが分かっていると今日評価されている候補はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、組換え呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原に関する。さらに具体的には、本開示は、三量体の前融合立体構造を安定化するために修飾されている組換えFタンパク質を含んでなる抗原に関する。開示される組換え抗原は、優れた免疫原性を示し、特に好都合には、RSV感染及び/又は疾患に対する防御のための免疫原性組成物(たとえば、ワクチン)の成分として採用される。開示されるのはまた、組換え抗原をコードする核酸、抗原を含有する免疫原性組成物、及び抗原を作出し、使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは、RSVのFタンパク質の構造的特徴を強調する模式図であり、図1Bは、例となるRSVの前融合F(PreF)抗原の模式図である。
【図2】PreFの非対称場流動分画(AFF−MALS)解析の代表的な結果を説明する折れ線グラフである。
【図3】PreF抗原によるヒト血清の中和阻害を示す棒グラフである。
【図4】図4A及び図4BはPreF抗原に応答してマウスで誘発された血清IgG力価を示す棒グラフである。
【図5】図5A及び図5BはPreF抗原によって誘発されたRSV特異的な中和抗体の力価を説明する棒グラフである。
【図6】図6A及び図6Bは、マウスにおけるRSVのPreF抗原により提供された負荷に対する防御を示すグラフである。
【図7】免疫及び負荷に続くBAL白血球を評価するグラフである。
【図8】水中油型エマルション(AS03)の希釈により製剤化したPreFで免疫した後、誘発された血清IgGを説明する棒グラフである。
【図9】水中油型エマルション(AS03)の希釈により製剤化したPreFで免疫した後の中和抗体の力価を説明するグラフである。
【図10】水中油型エマルション(AS03)の希釈により製剤化したPreFで免疫した後の負荷に対する防御を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
序論
RSV感染を防ぐワクチンの開発は、宿主の免疫応答が疾患の病態形成で役割を担うと思われるという事実によって複雑になっている。1960年代の初期の研究は、ホルマリンで不活化したRSVワクチンを接種した小児は、接種しなかった対照の被験者に比べてウイルスへのその後の暴露に際してさらに重篤な疾患に罹ることを示した。これらの初期の試験は、ワクチン接種者の80%の入院と2人の死亡を生じた。重症度が増した疾患は動物モデルで再現され、不適切なレベルの血清中和抗体、局所免疫の欠如、及び肺好酸球とIL−4及びIL−5サイトカインの高い産生による2型ヘルパーT細胞様(Th2)の免疫応答の過剰な誘導の結果であると考えられる。それに対して、RSV感染に対して防御する功を奏したワクチンは、IL−2及びγ−インターフェロン(IFN)の産生を特徴とするTh1に偏った免疫応答を誘導する。
【0010】
本開示は、ワクチンにて以前使用されたRSV抗原で遭遇した課題を解決し、抗原の免疫特性と製造特性を改善する組換え呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原に関する。本明細書で開示されるRSV抗原は、可溶性融合(F)タンパク質ポリペプチドを含んでなるFタンパク質類似体を含んでなり、それは、Fタンパク質の前融合立体構造、すなわち、宿主細胞の膜との融合に先立った成熟集合Fタンパク質の立体構造を安定化させるために修飾されている。これらのFタンパク質類似体は、明瞭性と単純性の目的で、「PreF」又は「PreF抗原」と指名される。本明細書で開示されるPreF抗原は、ヘテロの三量体ドメインの組み入れによって修飾されている可溶性Fタンパク質類似体が改善された免疫的特徴を示し、生体内で対象に投与された場合安全で高度に防御的であるという予期しない発見にその基礎を置く。
【0011】
当該技術で広く受け入れられている用語及び指示を参照してRSVタンパク質の構造の詳細を本明細書で提供し、図1Aで模式的に説明する。例となるPreF抗原の模式図は図1Bに提供する。RSVタンパク質は、本明細書で提供される教示に従って前融合立体構造を安定化させるために修飾できることが当業者によって理解されるであろう。従って、PreF抗原の作出を導く原理の理解を円滑にするために、個々の構造的成分は、例となるFタンパク質を参照して示し、そのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1及び2に提供する。同様に、該当する場合、例となるGタンパク質を参照してGタンパク質抗原が記載されるが、そのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号3及び4に提供する。
【0012】
Fタンパク質ポリペプチドの一次アミノ酸配列を参照して(FIG1A)、以下の用語を利用してPreF抗原の構造的特徴を記載する。
【0013】
用語、F0は、完全長の翻訳されたFタンパク質前駆体を指す。F0ポリペプチドは、pep27と命名された介在ペプチドによってF2ドメインとF1ドメインにさらに分割される。成熟の間に、F0ポリペプチドは、F2ドメインとF1ドメインと隣接するpep27の間に配置されている2つのフリン部位でタンパク分解切断を受ける。議論を確実にする目的で、F2ドメインは、アミノ酸1〜109の少なくとも一部及び全部を含んでなり、F1ドメインの可溶性部分は、Fタンパク質のアミノ酸番号137〜526の少なくとも一部及び全部を含んでなる。上記で示したように、これらアミノ酸の位置(及び本明細書で指定される後に続くアミノ酸の位置すべて)は、配列番号2の例となるFタンパク質前駆体ポリペプチド(F0)を参照して与えられる。
【0014】
前融合F(又は「PreF」)抗原は、RSV抗原がFタンパク質の前融合立体構造の免疫優勢エピトープを少なくとも1つ保持するように、Fタンパク質の前融合立体構造を安定化させる少なくとも1つの修飾を含んでなる可溶性(すなわち、膜に結合しない)Fタンパク質類似体である。可溶性Fタンパク質ポリペプチドは、RSVのFタンパク質のF2ドメインとF1ドメインを含んでなる(が、RSVのFタンパク質の膜貫通ドメインを含まない)。例となる実施形態では、F2ドメインはFタンパク質のアミノ酸番号26〜105を含んでなり、F1ドメインはアミノ酸番号137〜516を含んでなる。しかしながら、安定化されたPreF抗原の三次元構造が維持される限り、さらに小さな部分を使用することもできる。同様に、追加の成分が、三次元構造を破壊せず、抗原の安定性、産生又はプロセッシングに有害に影響せず、抗原の免疫原性を低下させない限り、追加の構造的成分(たとえば、融合ポリペプチド)を含んでなるポリペプチドを、例となるF2ドメイン及びF1ドメインの代わりに使用することができる。F2ドメインとF1ドメインは、Fタンパク質類似体の成熟前融合立体構造への折り畳みと集合を複製するように設計されたN末端からC末端への方向で位置づけられる。産生を高めるために、天然のFタンパク質のシグナルペプチド又は組換えPreF抗原が発現されるべき宿主細胞における産生と分泌を高めるように選択されるヘテロのシグナルペプチドのようなシグナルペプチドがF2ドメインを先導することができる。
【0015】
PreF抗原は、たとえば、1以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換のような1以上の修飾を導入することによって安定化される(三量体の前融合立体構造において)。そのような安定化修飾の1つは、ヘテロ安定化ドメインを含んでなるアミノ酸配列の付加である。例となる実施形態では、ヘテロ安定化ドメインは、タンパク質多量体化ドメインである。そのようなタンパク質多量体化ドメインの特に好適な一例は、そのようなドメインを有する複数のポリペプチドの三量体化を促進するイソロイシンジッパーのようなコイルドコイルドメインである。例となるイソロイシンジッパードメインを配列番号11に示す。通常、ヘテロ安定化ドメインは、F1ドメインのC末端に位置する。
【0016】
任意で、多量体化ドメインは、たとえば、配列GGのような短いアミノ酸リンカー配列を介してF1ドメインに接続される。リンカーはさらに長いリンカーであり得る(たとえば、アミノ酸配列GGSGGSGGS:配列番号14のような配列GGを含んでなる)。PreF抗原の立体構造を破壊せずに本文脈で使用できる多数の構造的に中性のリンカーが当該技術で既知である。
【0017】
別の安定化修飾は、天然のF0タンパク質のF2ドメインとF1ドメインの間に位置するフリン認識切断部位の排除である。プロテアーゼがPreFポリペプチドを構成ドメインに切断できないように、フリン認識部位の1以上のアミノ酸を欠失させる又は置換することによって、105〜109位及び113〜136位に位置するフリン認識部位の一方又は双方を消失させることができる。任意で、介在pep27ペプチドを取り除く、又はたとえば、リンカーペプチドによって置き換えることもできる。さらに又は任意で、融合ペプチドの近傍での非フリン切断部位(たとえば、112〜113位でのメタロプロテイナーゼ部位)を取り除く又は置き換えることができる。
【0018】
安定化変異の別の例は、Fタンパク質の疎水性ドメインへの親水性アミノ酸の付加又は置換である。通常、疎水性領域にて、リジンのような荷電アミノ酸をロイシンのような中性残基に対して付加又は置換する。たとえば、Fタンパク質の細胞外ドメインのHRBコイルドコイルドメイン内で親水性アミノ酸を疎水性又は中性のアミノ酸に対して付加する又は置換することができる。例証として、リジンのような荷電アミノ酸をFタンパク質の512位に存在するロイシンに対して置換することができる。代わりに又は加えて、Fタンパク質のHRAドメイン内で親水性アミノ酸を疎水性又は中性のアミノ酸に対して付加する又は置換することができる。たとえば、リジンのような1以上の荷電アミノ酸を105〜106位にて又はその近傍に挿入することができる(たとえば、PreF抗原のアミノ酸番号105と106の間のような参照配列番号2の残基105に対応するアミノ酸の後に)。任意で、HRA及びHRBの双方のドメインにて親水性アミノ酸を付加又は置換することができる。或いは、PreF抗原の立体構造全体が有害に影響されない限り、1以上の疎水性残基を付加することができる。
【0019】
さらに又は代わりに、PreF抗原のグリコシル化を変化させる1以上の修飾を行ってもよい。たとえば、アミノ酸残基番号500にて又はその前後で(配列番号2に比べて)天然のRSVのFタンパク質に存在するグリコシル化部位における1以上のアミノ酸を欠失させて又は置換して(又はグリコシル化部位が破壊されるようにアミノ酸を付加することができる)、PreF抗原のグリコシル化状況を増減させることができる。たとえば、配列番号2の500〜502位に対応するアミノ酸をNGS、NKS、NGT及びNKTから選択することができる。従って、特定の実施形態では、PreF抗原は、RSVのFタンパク質ポリペプチドのF2ドメイン(配列番号2のアミノ酸番号26〜105に対応する)とF1ドメイン(配列番号2のアミノ酸番号137〜516に対応する)を含んでなる可溶性Fタンパク質ポリペプチドを含んでなり、グリコシル化を変化させる少なくとも1つの修飾が導入されている。RSVのPreF抗原は通常、F2ドメインとF1ドメインの間に未変化の融合ペプチドを含んでなる。任意で、PreF抗原はシグナルペプチドを含んでなる。
【0020】
上記で開示されたように、そのようなFタンパク質ポリペプチドは、(i)ヘテロ三量体化ドメイン(たとえば、イソロイシンジッパードメインのような)を含んでなるアミノ酸配列の付加、(ii)少なくとも1つのフリン切断部位の欠失、(iii)少なくとも1つの非フリン切断部位の欠失、(iv)pep27ドメインの1以上のアミノ酸の欠失、及び(v)Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる。上記で開示されたように、そのようなグリコシル化修飾されたRSVのPreF抗原は、多量体、たとえば、三量体を形成する。
【0021】
例となる実施形態では、グリコシル化修飾されたPreF抗原は、(a)配列番号22を含んでなる又はそれから成るポリペプチド、(b)配列番号21によってコードされるポリペプチド又は配列番号21の実質的な全長にわたってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、(c)配列番号22と少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチド
の群から選択される。
【0022】
安定化修飾のいずれか及び/又はすべてを個々に及び/又は本明細書で開示されるそのほかの安定化修飾のいずれかとの組み合わせで用いてPreF抗原を作出することができる。例となる実施形態では、F2ドメインとF1ドメインの間に介在性フリン切断部位を伴わず、F1ドメインのC末端に位置するヘテロ安定化ドメイン(たとえば、三量体化ドメイン)を伴ったF2ドメインとF1ドメインを含んでなるポリペプチドを含んでなるPreFタンパク質。特定の実施形態では、PreF抗原はまた、疎水性のHRA及び/又はHRBのドメインへの親水性残基の1以上の付加及び/又は置換も含んでなる。任意で、PreF抗原はたとえば、メタロプロテイナーゼ部位のような少なくとも1つの非フリン切断部位の修飾を有する。
【0023】
PreF抗原は、RSVのGタンパク質の少なくとも免疫原性部分を含んでなる追加のポリペプチド成分を含んでなる。すなわち、特定の実施形態では、PreF抗原はFタンパク質成分とGタンパク質成分の双方を含んでなるキメラタンパク質である。Fタンパク質成分は、上記のPreF抗原のいずれかであることができ、Gタンパク質成分はRSVのGタンパク質の免疫的に活性のある部分(全長までのGタンパク質、又は全長のGタンパク質を含んでなる)であるように選択される。例となる実施形態では、Gタンパク質ポリペプチドは、Gタンパク質(配列番号4で表されるGタンパク質の配列を参照してアミノ酸の位置が指定される)のアミノ酸番号149〜229を含んでなる。選択された部分がさらに大きなGタンパク質断片の優勢な免疫特性を保持する限り、Gタンパク質のさらに小さな部分又は断片を使用できることを当業者は十分に理解するであろう。特に、選択される断片は、184〜198位のアミノ酸の間の免疫的に優勢なエピトープを保持し、免疫優勢エピトープを呈する安定な立体構造に折り畳み、集合するのに十分に長い。たとえば、アミノ酸番号128〜アミノ酸番号229、完全長のGタンパク質までのさらに長い断片も使用することができる。キメラタンパク質の文脈で、選択される断片が安定な立体構造に折り畳み、宿主細胞で組換え的に作出する場合、作出、プロセッシング又は安定性を妨害しない限り。任意で、Gタンパク質成分は、たとえば、配列GGのような短いアミノ酸のリンカー配列を介してFタンパク質成分に接続される。リンカーはさらに長いリンカーであり得る(たとえば、アミノ酸配列GGSGGSGGS:配列番号14)。PreF抗原の立体構造を破壊せずに本文脈で使用できる多数の構造的に中性のリンカーが当該技術で既知である。
【0024】
任意で、Gタンパク質成分は、RSV疾患の動物モデルで増強されたウイルス性疾患を軽減する又は防ぐ1以上のアミノ酸置換を含んでなることができる。すなわち、許容可能な動物モデル(たとえば、RSVのマウスモデル)から選択される対象に、PreF−Gキメラ抗原を含んでなる免疫原性組成物を投与した場合、非修飾のGタンパク質を含有するワクチンを受け取った対照動物に比べて、対象がワクチン増強のウイルス性疾患(たとえば、好酸球増多、好中球増多)の軽減又は無症状を示すように、Gタンパク質はアミノ酸置換を含んでなることができる。ワクチン増強のウイルス性疾患の軽減及び/又は予防は、免疫原性組成物がアジュバントの非存在下で投与された(しかし、たとえば、抗原が強いTh1誘導アジュバントの存在下で投与される場合ではない)場合、明らかであり得る。さらに、アミノ酸置換は、ヒト対象に投与された場合、ワクチン増強のウイルス性疾患を軽減する又は予防することができる。好適なアミノ酸置換の例は、191位のアスパラギンのアラニンによる置き換えである(アミノ酸番号191位でのAsn→Ala:N191A)。
【0025】
任意で、上記で記載されるPreF抗原は、精製への補助として役立つ追加の配列を含んでなることができる。一例はヒスチジンタグである。そのようなタグは所望であれば、最終産物から取り除くことができる。
【0026】
発現される場合、PreF抗原は、ポリペプチドの多量体を含んでなる成熟タンパク質への分子内折り畳みと集合を経験する。好都合には、PreF抗原ポリペプチドは、成熟した、処理されたRSVのFタンパク質の前融合立体構造に似ている三量体を形成する。
【0027】
本明細書で開示されるPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)のいずれかを、RSVに対する防御的な免疫応答を誘発する目的で免疫原性組成物にて好都合に使用することができる。そのような免疫原性組成物は通常、緩衝液のような薬学上許容可能なキャリア及び/又は賦形剤を含んでなる。投与に続いて生じる免疫応答を高めるために、免疫原性組成物は通常アジュバントも包含する。RSVに対する防御的な免疫応答を誘発するための免疫原性組成物の場合(たとえば、ワクチン)、組成物は好都合に、Th1免疫応答を優勢に誘発するアジュバント(Th1に偏ったアジュバント)を含んでなる。通常、アジュバントは、組成物が投与される標的集団への投与に好適であるように選択される。従って、適用に応じて、アジュバントは、たとえば、新生児又は高齢者への投与に好適であるように選択される。
【0028】
本明細書で記載される免疫原性組成物は、RSVへの投与又は暴露に続く病的応答(たとえば、ワクチン増強のウイルス性疾患)を含んでなることなく、RSV感染の軽減又は予防のためのワクチンとして好都合に採用される。
【0029】
一部の実施形態では、免疫原性組成物は、PreF抗原(たとえば、配列番号6によって説明される例となる実施形態)と、Gタンパク質成分を含んでなる第2のポリペプチドを含んでなる。Gタンパク質成分は通常、Gタンパク質の少なくともアミノ酸番号149〜229を含んでなる。Gタンパク質のさらに小さな部分を使用することができるが、そのような断片は、少なくともアミノ酸番号184〜198の免疫的に優勢なエピトープを含んでなるべきである。或いは、Gタンパク質は、任意で、たとえば、完全長のGタンパク質又はキメラポリペプチドのようなさらに大きな部分の要素としてアミノ酸番号128〜229又は130〜230のようなGタンパク質のさらに大きな部分を含んでなることができる。
【0030】
他の実施形態では、免疫原性組成物は、Gタンパク質成分(配列番号8及び10で説明される例となる実施形態)も含んでなるキメラタンパク質であるPreF抗原を含んでなる。そのようなキメラPreF(又はPreF−G)抗原のGタンパク質は、Gタンパク質の少なくともアミノ酸番号149〜229を通常含んでなる。上記で示したように、免疫優勢エピトープが保持され、PreF−Gの立体構造が有害に影響されない限り、Gタンパク質のさらに小さな又はさらに大きな断片(たとえば、アミノ酸番号129〜229又は130〜230)も使用することができる。
【0031】
任意で、免疫原性組成物は、RSV以外の病原性生物の少なくとも1つの追加の抗原を含んでなることもできる。たとえば、病原性生物は、たとえば、パラインフルエンザウイルス(PIV)、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、又はインフルエンザウイルスのような、RSV以外のウイルスである。或いは、病原性生物はジフテリア、破傷風、百日咳、Haemophilus influenzae、及びPneumococcusのような細菌であり得る。
【0032】
PreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)のいずれかをコードする組換え核酸も本開示の特徴である。一部の実施形態では、核酸のPreF抗原をコードする核酸のポリヌクレオチドは、選択される宿主(たとえば、CHO細胞、そのほかの哺乳類細胞又は昆虫細胞)での発現について最適化される。従って、発現ベクター(原核細胞又は真核細胞の発現ベクターを含んでなる)を含んでなるベクターは、本開示の特徴である。同様に、そのような核酸及びベクターを含んでなる宿主細胞は本開示の特徴である。RSVに特異的な免疫応答を誘発するために対象に投与するための免疫原性組成物の文脈でそのような核酸を使用することもできる。
【0033】
PreF抗原は、RSV感染の予防及び/又は治療に好都合に使用される。従って、本開示の別の態様は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法に関する。方法には、免疫的に有効な量の、PreF抗原を含んでなる組成物を(ヒト対象のような)対象に投与することが含まれる。免疫的に有効な量の組成物の投与は、PreF抗原上に存在するエピトープに特異的な免疫応答を誘発する。そのような免疫応答には、B細胞応答(たとえば、中和抗体の産生)及び/又はT細胞応答(たとえば、サイトカインの産生)を挙げることができる。好都合には、PreF抗原によって誘発される免疫応答には、RSVのFタンパク質の前融合立体構造上に存在する少なくとも1つの立体構造エピトープに特異的である要素が含まれる。PreF抗原及び組成物は、RSVとの接触に続くウイルス性疾患を増強することなく対象に投与することができる。好都合に、本明細書で開示されるPreF抗原及び好適に製剤化される免疫原性組成物は、RSVによる感染を軽減する又は予防する及び/又はRSVによる感染に続く病的応答を軽減する又は予防するTh1に偏った免疫応答を誘発する。
【0034】
免疫原性組成物は、たとえば、鼻内のような経路を含んでなる種々の経路を介して投与することができ、上部気道の粘膜にPreF抗原を直接接触させる。或いは、たとえば、筋肉内の投与のようなさらに従来の投与経路を採用することができる。
【0035】
従って、RSV感染を治療する(たとえば、RSV感染を予防的に治療する又は予防する)ための医薬の調製における、開示されるRSV抗原(又は核酸)のいずれかの使用も企図される。従って、本開示は、医薬において使用するために、開示される組換えRSV抗原又は免疫原性組成物、並びにRSV関連の疾患の予防又は治療のためのそれらの使用を提供する。
【0036】
PreF抗原、及びその使用方法に関する追加の詳細は、以下の説明及び実施例で提示される。
【0037】
用語
本開示の種々の実施形態の再検討を円滑にするために、用語の以下の説明を提供する。本開示の文脈で追加の用語及び説明を提供することができる。
【0038】
特に説明されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。分子生物学での一般用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,published by Oxford University Press,1994(ISBN 0−19−854287−9);Kendrewら(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0−632−02182−9);and Robert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by VCH Publishers,Inc.,1995(ISBN 1−56081−569−8)に見い出すことができる。
【0039】
単数用語「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に示さない限り、複数の指示対象を含んでなる。同様に、語「又は」は、文脈が明瞭に示さない限り、「及び」を含んでなる。用語「複数の」は、2以上を指す。核酸又はポリペプチドに対して与えられる塩基のサイズ、アミノ酸のサイズはすべて、及び分子量又は分子質量はすべて近似であり、記載に対して提供される。さらに、抗原のような物質の濃度又はレベルに関して与えられる数値限界は近似であることが意図される。従って、濃度が少なくとも(たとえば)、200pgであると示される場合、濃度は少なくともおよそ(又は約又は〜)200pgであると理解される。
【0040】
本明細書で記載されるものに類似の又は同等の方法及び物質が本開示の実践又は試験で使用され得るが、好適な方法及び物質は以下に記載される。用語「comprises」は「includes」を意味する。従って、文脈が必要としない限り、用語「comprises」及びその変異体「comprise」及び「comprising」は、言及された化合物若しくは組成物(たとえば、核酸、ポリペプチド、抗原)若しくは工程、又は化合物若しくは工程の群の包含を暗示するように理解されるが、他の化合物、組成物、工程、又はそれらの群の排除を暗示しないように理解される。略記「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を指すように使用される。従って、略記「e.g.」は用語「たとえば」と同義である。
【0041】
ヒトの呼吸器多核体ウイルス(RSV)は、Paramyxoviridae科、Pneumovirinae亜科、Pneumovirus属の病原性ウイルスである。RSVのゲノムは、11のタンパク質をコードするマイナス鎖RNA分子である。ウイルスのNタンパク質とのENAゲノムの堅い会合によってウイルスのエンベロープ内で包まれるヌクレオカプシドが形成される。G糖タンパク質の抗原性に基づいて、ヒトRSV株の2つの群、A群とB群が記載されている。多数のRSV株が今日まで単離されている。GenBank及び/又はEMBLの受入番号で示される例となる株は、WO2008/114149で見つけることができ、それは、PreF抗原(キメラPreF−G抗原を含んでなる)及びPreF抗原との組み合わせでの使用に好適なRSVにFタンパク質及びGタンパク質の核酸配列及びポリペプチド配列を開示する目的で、参照によって本明細書に組み入れられる。追加のRSV株はRSVの属の範囲内で単離され、包含されそうである。同様に、RSVの属は、遺伝的浮動、又は人工的な合成及び/又は組換えによる、天然に存在する(たとえば、以前又はその後特定された株)ものから生じる変異体を包含する。
【0042】
用語「Fタンパク質」又は「融合タンパク質」又は「Fタンパク質ポリペプチド」又は「融合タンパク質ポリペプチド」は、RSVの融合タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。同様に用語「Gタンパク質」又は「Gタンパク質ポリペプチド」は、RSVの連結タンパク質ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を有するポリペプチド又はタンパク質を指す。多数のRSVの融合及び連結タンパク質ポリペプチドが記載されており、当業者に既知である。WO2008114149は、本開示の提出日時点で公的に利用可能な例となるRSVのF及びGタンパク質の変異体(たとえば、天然に存在する変異体)を提示している。
【0043】
核酸又はポリペプチド(たとえば、RSVのF又はGのタンパク質の核酸又はポリペプチド又は類似体)を指す場合の「変異体」は、参照の核酸又はポリペプチドとは異なる核酸又はポリペプチドである。普通、変異体と参照の核酸又はポリペプチドとの間の差異は、指示対象に比べて比率的に少数の差異を構成する。
【0044】
ポリペプチド又はタンパク質のドメインは、ポリペプチド又はタンパク質の中で構造的に定義された要素である。たとえば、「三量体化ドメイン」は、ポリペプチドの三量体への集合を促進するポリペプチド内のアミノ酸配列である。たとえば、三量体化ドメインは他の三量体化ドメイン(同一の又は異なったアミノ酸配列を持つ追加のポリペプチドの)との会合を介して三量体への集合を促進することができる。用語は、そのようなペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指すのにも使用される。
【0045】
用語「天然の」及び「天然に存在する」は、天然のままと同一状態で存在するたとえば、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸のような要素を指す。すなわち、要素は人工的に修飾されていない。この開示の文脈で、たとえば、RSVの天然に存在する株又は単離体から得られるような、RSVタンパク質又はポリペプチドの多数の天然に存在する変異体があることが理解されるであろう。
【0046】
用語「ポリペプチド」は、モノマーがアミド結合を介して一緒に連結されるアミノ酸残基であるポリマーを指す。用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は本明細書で使用されるとき、アミノ酸配列を包含し、糖タンパク質のような修飾された配列を含んでなることが意図される。用語「ポリペプチド」は特に、組換え的に又は合成的に製造されるものと同様に天然に存在するタンパク質を網羅することが意図される。用語「断片」は、ポリペプチドに関してポリペプチドの一部(すなわち、部分列)を指す。用語「免疫原性の断片」は、完全長の参照のタンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの優勢な免疫原性のエピトープを保持するポリペプチドの断片を指す。ポリペプチド内の方向は、個々のアミノ酸のアミノ部分とカルボキシ部分の方向によって定義される、C末端方向に向かうN末端にて一般に言及される。ポリペプチドは、N末端又はアミノ末端からC又はカルボキシ末端に向かって翻訳される。
【0047】
「シグナルペプチド」は、たとえば、小胞体の膜に対して及びそれを介して新しく合成された分泌タンパク質又は膜タンパク質を指示する短いアミノ酸配列(たとえば、およそ18〜25アミノ酸の長さ)である。シグナルペプチドはポリペプチドのN末端に位置することが多いが、普遍的ではなく、タンパク質が膜を交差した後、シグナルペプチダーゼによって切断されることが多い。シグナル配列は通常、3つの一般的な特徴:N末端の極性塩基性領域(n−領域)、疎水性コア及び親水性c−領域を含有する。
【0048】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸配列」は、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はいずれかのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。該用語は、DNAの単鎖形態及び二本鎖形態を含んでなる。「単離されたポリヌクレオチド」によって、由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて直接隣接する(5’末端の1つと3’末端の1つ)コーディング配列の双方と直接隣接しないポリヌクレオチドを意味する。一実施形態では、ポリヌクレオチドはポリペプチドをコードする。核酸の5’及び3’の方向は、個々のヌクレオチド単位の接続性を参照して定義され、デオキシリボース(又はリボース)糖鎖の炭素部分に従って指定される。ポリヌクレオチド配列の情報(コーディング)内容は5’から3’の方向で読み取られる。
【0049】
「組換え」核酸は、天然に存在しない配列を有し、又は配列の2つの分離した断片の人工的な組み合わせによって作製された配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、化学的な合成によって、さらに一般的には、たとえば、遺伝子操作技法による核酸の単離された断片の人工的な操作によって達成することができる。「組換え」タンパク質は、たとえば、細菌細胞又は真核細胞のような宿主細胞に導入された非相同(たとえば、組換え)の核酸によってコードされるものである。核酸は、導入された核酸によってコードされるタンパク質を発現することが可能であるシグナルを有する発現ベクターに導入することができ、又は核酸は宿主細胞の染色体に統合することができる。
【0050】
用語「非相同の」は、核酸、ポリペプチド又は別の細胞成分に関して、通常天然に見つからない場合、及び/又は異なった供給源若しくは種を起源とする成分が存在することを示す。
【0051】
用語「精製」(たとえば、病原体又は病原体を含有する組成物に関して)は、望ましくない存在を組成物から取り除く工程を指す。精製は相対的な用語であり、微量な望ましくない成分のすべてが組成物から取り除かれることを必要としない。ワクチン生産の文脈では、精製は、たとえば、遠心、透析、イオン交換クロマトグラフィ、及びサイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティ精製又は沈殿のような工程を含んでなる。従って、用語「精製される」は、絶対的な純度を必要とせず、むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、たとえば、精製された核酸の調製物は、一般的な環境、たとえば、細胞又は生化学的な反応器における核酸よりも特定のタンパク質が濃縮されるものである。実質的に純粋な核酸又はタンパク質は、所望の核酸が、調製物の全核酸含量の少なくとも50%を表すように精製することができる。特定の実施形態では、実質的に純粋な核酸は、調製物の全核酸含量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上を表す。
【0052】
「単離された」生物構成成分(たとえば、核酸分子、タンパク質又は細胞小器官)は、構成成分、たとえば、そのほかの染色体の及び染色体外のDNA及びRNA、タンパク質及び細胞小器官が天然に存在する生物の細胞におけるそのほかの生物構成成分から実質的に分離され、又は精製されている。「単離された」核酸及びタンパク質は、標準の精製方法によって精製された核酸及びタンパク質を含んでなる。該用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製される核酸及びタンパク質、並びに化学的に合成される核酸及びタンパク質も包含する。
【0053】
「抗原」は、動物に注射される、吸収される又はさもなければ導入される組成物を含んでなる、動物にて抗体の産生及び/又はT細胞反応を刺激することができる化合物、組成物又は物質である。用語「抗原」は、関連する抗原性エピトープすべてを含んでなる。用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、B細胞及び/又はT細胞が応答する抗原の部位を指す。「優勢な抗原性エピトープ」又は「優勢なエピトープ」は機能的に有意な宿主の免疫応答、たとえば、抗体反応又はT細胞反応が為されるエピトープである。従って、病原体に対する防御免疫応答に関して、優勢な抗原性エピトープは、宿主の免疫系によって認識されると病原体が原因で生じる疾患からの防御を生じる抗原性部分である。用語「T細胞エピトープ」は、適切なMHC分子に結合すると、T細胞によって(T細胞受容体を介して)特異的に結合されるエピトープを指す。「B細胞エピトープ」は、抗体(又はB細胞受容体分子)によって特異的に結合されるエピトープである。
【0054】
「アジュバント」は、非特異的に免疫応答を高める剤である。一般的なアジュバントには、抗原が吸着した鉱物(ミョウバン、水酸化アルミナム、リン酸アルミナム)の懸濁液;油中水及び水中油(及びその変異体、二重エマルション及び逆エマルションを含んでなる)を含んでなるエマルション、リポ糖類、リポ多糖類、免疫賦活核酸(たとえば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様受容体作動薬(特に、TLP2、TLR4、TLR7/8、及びTLR9の作動薬)、並びにそのような成分の種々の組み合わせが挙げられる。
【0055】
「免疫原性組成物」は、たとえば、RSVのような病原体に対して特異的な免疫応答を誘発することが可能である、ヒト又は動物対象(たとえば、実験設定で)に投与するのに好適なものの組成物である。そのようなものとして、免疫原性組成物は、1以上の抗原(たとえば、ポリペプチド抗原)又は抗原性エピトープを含んでなる。免疫原性組成物はまた、たとえば、賦形剤、キャリア及び/又はアジュバントのような、免疫応答を誘発する又は高めることが可能である追加の1以上の成分を含んでなることができる。特定の例では、免疫原性組成物を投与して、病原体によって誘導される症状又は状態に対して対象を防御する免疫応答を誘発する。場合によっては、病原体が原因で生じる症状又は疾患は、病原体に対する対象の暴露に続く病原体(たとえば、RSV)の複製を阻害ずることによって防がれる(又は軽減される又は改善される)。本開示の文脈では、用語、免疫原性組成物は、病原体に対する予防的な又は緩和的な免疫応答を誘発する目的で対象又は対象の集団への投与を意図される組成物を包含することが理解されるであろう(すなわち、ワクチン組成物又はワクチン)。
【0056】
「免疫応答」は、免疫系の細胞、たとえば、B細胞、T細胞、又は単球の刺激への応答である。免疫応答は、抗原特異的な中和抗体のような特異的抗体の産生を生じるB細胞の応答であることができる。免疫応答は、たとえば、CD4応答又はCD8応答のようなT細胞の応答であることもできる。場合によっては、応答は特定の抗原に特異的である(すなわち、「抗原特異的応答」)。抗原が病原体に由来するのであれば、抗原特異的応答は、「病原体特異的応答」である。「防御免疫応答」は、病原体の有害な機能又は活性を抑え、病原体による感染を低減し、病原体による感染の結果生じる症状(死亡を含んでなる)を減らす免疫応答である。防御免疫応答は、たとえば、プラーク低減アッセイ若しくはELISA中和アッセイにおけるウイルス複製若しくはプラーク形成の阻害によって、又は生体内での病原体負荷に対する耐性を測定することによって測定することができる。
【0057】
「Th1」に偏った免疫応答は、IL−2及びIFNγを産生するのでIL−2及びIFNγの分泌又は存在によるCD4ヘルパー細胞の存在を特徴とする。それに対して、「Th2」に偏った免疫応答は、IL−4、IL−5及びIL−13を産生するCD4ヘルパー細胞の優勢を特徴とする。
【0058】
「免疫学的に有効な量」は、組成物又は組成物中の抗原に対して対象にて免疫応答を誘発するのに使用される組成物(通常、免疫原性組成物)の量である。一般に、所望の成績は、病原体に対して対象を防御することが可能である又はそれに寄与する抗原特異的(たとえば、病原体特異的)免疫応答の産生である。しかしながら、病原体に対する防御免疫応答を得ることは、免疫原性組成物の複数の投与を必要とし得る。従って、本開示の文脈では、用語、免疫学的に有効な量は、前の又は後に続く投与との組み合わせで防御免疫応答を達成することに寄与する小部分の用量を包含する。
【0059】
形容詞「薬学上許容可能な」は、指示対象が対象(たとえば、ヒト又は動物対象)への投与に好適であることを指す。E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PAによるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第15版(1975)は、免疫原性組成物を含んでなる、治療用及び/又は予防用の組成物の薬学送達に好適な組成物及び製剤(希釈剤を含んでなる)を記載している。
【0060】
用語「調節する」は、免疫応答のような応答に関して、応答の発症、程度、持続期間又は特徴を変える又は変化させることを意味する。免疫応答を調節する剤は、その投与に続く免疫応答の発症、程度、持続期間又は特徴の少なくとも1つを変える、又は参照剤に比べて発症、程度、持続期間又は特徴の少なくとも1つを変える。
【0061】
用語「軽減する」は、剤の投与に続いて応答又は状態が定量的に低下するならば、又は参照剤に比べて剤の投与に続いてそれが低下するのであれば、剤が応答又は状態を軽減するように、相対的な用語である。同様に用語「予防する」は、応答又は状態の少なくとも1つの特徴が除去される限り、剤が応答又は状態を完全に除去することを必ずしも意味しない。従って、病的応答、たとえば、ワクチンが増強するウイルス性疾患のような感染又は応答を軽減する又は予防する免疫原性組成物は、感染又は応答が、剤の非存在下での又は参照剤と比べた感染又は応答の、たとえば、少なくとも約50%、たとえば、少なくとも約70%、約80%、さらに約90%測定上低下する限り、そのような感染又は応答を完全に除去することができるが、必ずしも完全には除去しない。
【0062】
「対象」は、生きている多細胞の脊椎生物である。本開示の文脈では、対象は、たとえば、非ヒト動物、たとえば、マウス、コットンラット又は非ヒト霊長類のような実験用対象であり得る。或いは、対象はヒト対象であり得る。
【0063】
PreF抗原
本来は、RSVのFタンパク質は、F0と命名された単一のポリペプチド前駆体、長さ574のアミノ酸として発現される。生体内で、F0は、小胞体にてオリゴマー化され、2つの保存されたフリンコンセンサス配列(フリン切断部位)、RARR109(配列番号15)とRKRR136(配列番号16)にてフリンプロテアーゼによってタンパク分解処理を受けて、2つのジスルフィド結合断片から成るオリゴマーを生成する。これら断片の小さい方はF2と呼ばれ、F0前駆体のN末端を起源とする。略記、F0、F1及びF2は科学文献では一般にF、F及びFと示されることが当業者によって認識されるであろう。大きい方のC末端F1断片は、24アミノ酸の細胞質尾部に隣接する疎水性アミノ酸の配列を介して膜にてFタンパク質を固定する。3つのF2−F1二量体が会合して成熟Fタンパク質を形成し、それは、標的細胞膜との接触の際、立体構造変化を受けるきっかけとなる準安定的な前融合形成(「前融合」)の立体構造を取る。この立体構造変化は、融合ペプチドとして知られる疎水性配列を剥き出しにし、それは、宿主細胞の膜と会合し、標的細胞膜とのウイルス又は感染細胞の膜の融合を促進する。
【0064】
F1断片は、HRA及びHRBと命名され、それぞれ融合ペプチド及び膜貫通アンカードメインの近傍に位置する少なくとも2つの7個反復ドメインを含有する。前融合の立体構造では、F2−F1二量体は、球形の頭部と茎構造を形成し、そこでHRAドメインは球形の頭部における断片化(伸長した)構成の中にある。それに対して、HRBドメインは、頭部領域から伸びる三本鎖のコイルドコイルの茎を形成する。前融合から後融合の立体構造への転移の間、HRAドメインは崩壊し、HRBドメインの近傍にもたらされ、逆平行の6らせん束を形成する。後融合の状態で、融合タンパク質と膜貫通ドメインは、並置されて膜の融合を円滑にする。
【0065】
上記で提供された立体構造の記載は、結晶学データの分子モデル化に基づくが、前融合と後融合の立体構造の構造的な識別は、結晶学への手段なしでモニターできる。たとえば、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるCalderらのVirology,271:122−131(2000)及びMortonらのVirology,311:275−288によって明らかにされたように、電子顕微鏡を用いて前融合と後融合(代わりに指定された前融合と融合)の立体構造の間を区別することができる。また、その技術的教示の目的で、参照によって本明細書に組み入れられるConnollyらのProc.Natl.Acad.Sci.USA,103:17903−17908(2006)により記載されたようなリポソーム会合アッセイによって前融合の立体構造を融合(後融合)の立体構造から区別することができる。さらに、RSVのFタンパク質の前融合形態又は融合形態の1つ又はその他に存在するが、他の形態には存在しない立体構造エピトープを特異的に認識する抗体(たとえば、モノクローナル抗体)を用いて前融合の立体構造と融合の立体構造を区別することができる。そのような立体構造のエピトープは、分子の表面における抗原決定基の優先的な暴露による。或いは、立体構造のエピトープは、直鎖ポリペプチドで隣接しないアミノ酸の並置から生じ得る。
【0066】
本明細書で開示されるPreF抗原は、発現されたタンパク質の集団にて、発現されたタンパク質の集団の実質的な部分が、前融合(前融合)の立体構造にあるように(たとえば、構造的な及び/又は熱動態的なモデル化によって予測されるように又は上記で開示された方法の1以上によって評価されるように)、RSVのFタンパク質の前融合の立体構造を安定化させ、維持するように設計される。Fタンパク質の前融合立体構造の主な免疫原性エピトープが、細胞環境又は細胞外環境(たとえば、対象への投与に続く生体内での)へのPreF抗原の導入に続いて維持されるように、安定化する修飾は、天然(又は合成)のFタンパク質、たとえば、配列番号2の例となるFタンパク質のような天然の(又は合成の)Fタンパク質に導入される。
【0067】
先ず、F0ポリペプチドの膜アンカードメインを置き換えるためにヘテロ安定化ドメインを構築物のC末端に置くことができる。この安定化ドメインは、HRBの不安定性を代償し、前融合の配座異性体を安定化するのを助けると予測される。例となる実施形態では、ヘテロ安定化ドメインはタンパク質多量体化ドメインである。そのようなタンパク質多量体化ドメインの特に好都合な一例は、三量体化ドメインである。例となる三量体化ドメインは、コイルドコイルドメインを有する複数のポリペプチドの三量体への集合を促進するそのようなコイルドコイルに折り畳む。三量体化ドメインの好都合な一例は、イソロイシンジッパーである。例となるイソロイシンジッパーは、HarburyらのScience,262:1401−1407(1993)によって記載された操作された酵母GCN4イソロイシン変異体である。好適なイソロイシンジッパードメインの配列の1つは配列番号11で表されるが、コイルドコイル安定化ドメインを形成する能力を保持するこの配列の変異体も同様に好適である。代わりの安定化コイルドコイル三量体化ドメインには、TRAF2(GENBANK受入番号.Q12933[gi:23503103];アミノ酸番号299−348);Thrombospondin1(受入番号.PO7996[gi:135717];アミノ酸番号291−314);Matrilin−4(受入番号.O95460[gi:14548117];アミノ酸番号594−618;CMP(matrilin−1)(受入番号.NP_002370[gi:4505111];アミノ酸番号463−496;HSF1(受入番号.AAX42211[gi:61362386];アミノ酸番号165−191;及びCubilin(受入番号.NP_001072[gi:4557503];アミノ酸番号104−138が挙げられる。好適な三量体ドメインは、発現されたタンパク質の実質的な部分の三量体への集合を生じることが期待される。たとえば、三量体化ドメインを有する組換えPreFポリペプチドの少なくとも50%が三量体を形成する(たとえば、AFF−MALSによって評価されるように)。通常、発現されたポリペプチドの少なくとも60%、さらに好都合には少なくとも70%、最も望ましくは少なくとも約75%が三量体として存在する。
【0068】
HRBを一層さらに安定化させるために、HRB内の中性残基(たとえば、ロイシン、イソロイシン又はバリン)を極性残基(たとえば、リジン、アルギニン又はグルタミン)で置換することができる。たとえば、RSVのF抗原の文脈では、TreFの512位(天然のF0タンパク質に対して)に位置するロイシン残基をリジンで置換することができる(配列番号6の例となるPreF抗原のL482K)。この置換は、コイルドコイル疎水性残基の周期性を改善する。同様に、105位のアミノ酸に続いてリジンを付加することができる。
【0069】
第2に、pep27を取り除くことができる。前融合状態でのRSVのFタンパク質の構造モデルの解析は、pep27が、F1とF2の間で大きな非拘束のループを創ることを示唆している。このループは、前融合状態の安定化に寄与することはなく、フリンによる天然のタンパク質の切断に続いて取り除かれる。
【0070】
第3に、フリン切断モチーフの一方又は双方を欠失させることができる。加えて、フリン切断モチーフの欠失(hMVP及びPIVの場合は1つ、RSVの場合は1つ又は両方)はさらに前融合の配座異性体を安定化する。この設計によって、融合タンパク質はF2から切断されず、前融合の配座異性体の球形頭部からの放出を妨げ、すぐ近くの膜への接近性を妨げる。融合タンパク質と膜界面との間の相互作用が前融合状態の不安定性における主な課題であると予測される。融合工程の間、融合ペプチドと標的膜の間の相互作用は、球形頭部構造内からの融合ペプチドの暴露を生じ、前融合状態の不安定性を高め、後融合の配座異性体に折り畳む。この立体構造の変化によって膜融合の工程が可能になる。フリン切断部位の1つ又は両方の除去は、融合ペプチドのN末端部分への膜接近性を妨げ、前融合状態を安定化させると予測される。従って、本明細書で開示される例となる実施形態では、フリン切断モチーフの除去は、未変化の融合ペプチドを含んでなるPreF抗原を生じ、それは、プロセッシング及び集合の間又はそれに続いてフリンによって切断されない。
【0071】
任意で、たとえば、1以上のアミノ酸の置換によって少なくとも1つの非フリン切断部位を取り除くことができる。たとえば、実験的証拠は、特定のメタロプロテイナーゼによる切断につながる条件下では、Fタンパク質はアミノ酸番号110〜118の近傍で切断され得る(たとえば、PreF抗原のアミノ酸番号112と113の間;配列番号2の参照Fタンパク質ポリペプチドの142位のロイシンと143位のグリシンの間で切断が生じる)。従って、この領域内での1以上のアミノ酸の修飾は、PreF抗原の切断を低下させ得る。たとえば、112位のロイシンは、たとえば、イソロイシン、グルタミン又はトリプトファン(配列番号20の例となる実施形態で示されるような)のような異なったアミノ酸で置換することができる。代わりに又はさらに、113位のグリシンは、セリン又はアラニンによって置換することができる。
【0072】
任意で、PreF抗原は、たとえば、天然のFタンパク質ポリペプチドに存在する1以上のグリコシル化部位でグリコシル化された分子の比率を上げる又は下げることによって、グリコシル化のパターン又は状況を変える1以上の修飾を含んでなることができる。たとえば、配列番号2の天然のRSVタンパク質ポリペプチドは、27位、70位及び500位(配列番号10の例となるPreF抗原の27位、70位及び470位に対応する)でのアミノ酸にてグリコシル化されると予測される。一実施形態では、修飾は、500位のアミノ酸(N470と命名)でのグリコシル化部位の近傍に導入される。たとえば、500位(参照配列の、例となるPreF抗原の470位の配置に対応する)のアスパラギンの代わりにグルタミン(Q)のようなアミノ酸を置換することによってグリコシル化部位を取り除くことができる。好都合には、このグリコシル化部位でグリコシル化効率を高める修飾が導入される。好適な修飾の例には、500〜502位にて以下のアミノ酸配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。興味深いことに、高いグリコシル化を生じるこのグリコシル化部位の修飾はまた実質的に高いPreF産生を生じる。従って、特定の実施形態では、PreF抗原は、参照PreF配列(配列番号2)のアミノ酸番号500に対応する位置で、たとえば、配列番号10によって例示されるPreF抗原の470位にて修飾されたグリコシル化部位を有する。好適な修飾には、参照Fタンパク質配列の500〜502位に対応するアミノ酸での、配列:NGS;NKS;NGT;NKTが挙げられる。「NGT」の修飾を含んでなる例となる実施形態のアミノ酸は、配列番号18にて提供される。当業者は、対応するNGS、NKS及びNKTについての同様の修飾を容易に決定することができる。そのような修飾は、本明細書で開示される安定化変異(たとえば、イソロイシンジッパーのようなヘテロコイルドコイル、疎水性領域におけるドメイン及び/又は修飾)、及び/又はpep27の除去、及び/又はフリン切断部位の除去、及び/又は非フリン切断部位の除去、及び/又は非フリン切断部位の除去)のいずれかと好都合に組み合わせられる。たとえば、特定の一実施形態では、PreF抗原は非フリン切断部位を消失させる置換とグリコシル化を高める修飾を含んでなる。例となる配列は、配列番号22(例となる実施形態が、「NGT」の修飾と112位でのロイシンに代わるグルタミンの置換を含んでなる)にて提供される。
【0073】
さらに一般的には、本明細書で開示される安定化の修飾、たとえば、好ましくは可溶性PreF抗原のC末端に位置する、たとえば、コイルドコイル(たとえば、イソロイシンジッパードメイン)のような非相同の安定化ドメインの付加;疎水性HRBドメインにおけるロイシンからリジンへのような残基の修飾;pep27の除去;フリン切断モチーフの一方又は双方の除去;非フリン切断部位の除去;及び/又はグリコシル化部位の修飾のいずれか1つを、ほかの安定化修飾の1以上との組み合わせにて(又は全部くるめた組み合わせまで)採用することができる。たとえば、ヘテロコイルドコイル(又はそのほかのヘテロ安定化ドメイン)を単独で利用することができ、又は疎水性領域の修飾及び/又はpep27の除去及び/又はフリン切断部位の除去及び/又は非フリン切断部位の除去いずれかと組み合わせて利用することができる。特定の特殊な実施形態では、PreF抗原は、C末端のコイルドコイル(イソロイシンジッパー)ドメイン、HRB疎水性ドメインにおける安定化置換、及びフリン切断部位の一方又は双方の除去を含んでなる。そのような実施形態は、フリン切断によって除去されない未変化の融合ペプチドを含んでなる。特定の一実施形態では、PreF抗原はまた500位のアミノ酸にて修飾されたグリコシル化部位を含んでなる。
【0074】
天然のFタンパク質ポリペプチドは、RSVのA株又はRSVのB株又はその変異体(上記と同義)のFタンパク質から選択することができる。特定の例となる実施形態では、Fタンパク質ポリペプチドは、配列番号2で表されるFタンパク質である。本開示の理解を円滑にするために、アミノ酸残基の位置は、株にかかわりなく、例となるFタンパク質の1つのアミノ酸の位置(すなわち、対応するアミノ酸残基の位置に関して与えられる。ほかのRSVのA株又はB株の匹敵するアミノ酸の位置は、容易に利用でき、周知の配置アルゴリズム(たとえば、BLAST、たとえば、初期設定パラメータを用いて)を用いて例となる配列と共に選択されたウイルスのFタンパク質のアミノ酸配列を並べることによって当業者によって容易に決定することができる。異なったRSV株に由来するFタンパク質ポリペプチドの多数の追加の例は、WO2008/114149(RSVのF及びGのタンパク質配列の追加の例を提供する目的で参照によって本明細書に組み入れられる)に開示されている。追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である。
【0075】
Fタンパク質の選択するF2及びF1のドメインでは、当業者は、F2及び/又はF1のドメイン全体を厳格に含んでなる必要はないことを認識するであろう。通常、F2ドメインの配列(又は断片)を選択する場合、立体構造の考慮が重要である。従って、F2ドメインは通常、ポリペプチドの集合と安定性を円滑にするF2ドメインの部分を含んでなる。特定の例となる変異体では、F2ドメインはアミノ酸番号26〜105を含んでなる。しかしながら、長さにおける瑣末な修飾(1以上のアミノ酸の付加又は欠失による)を有する変異体も可能である。
【0076】
通常、F1ドメインの少なくとも部分列(又は断片)は、Fタンパク質の免疫優勢エピトープを含んでなる安定な立体構造を維持するように選択され、設計される。たとえば、アミノ酸番号262〜275(パリビツマブ中和)及び433〜436(Centocorのch101FMAb)の領域で抗体を中和することによって認識されるエピトープを含んでなるF1ポリペプチドドメインの部分列を選択することが一般に望ましい。さらに、たとえば、アミノ酸番号328〜355の領域でT細胞エピトープを含んでなることが望ましい。最も一般的には、F1サブユニット(たとえば、貫通アミノ酸番号262〜436)の単一の隣接部分として、しかし、エピトープは安定な立体構造を形成する不連続な要素としてこれらの免疫優勢エピトープを含んでなる合成配列で保持され得る。従って、F1ドメインのポリペプチドは、RSVのFタンパク質ポリペプチドの少なくとも約262〜436のアミノ酸を含んでなる。非限定の一例では、F1ドメインは、天然のFタンパク質ポリペプチドのアミノ酸番号137〜516を含んでなる。当業者は、追加のさらに短い配列を熟練者の裁量で使用できることを認識するであろう。
【0077】
立体構造の考慮に加えて、F2又はF1のドメインの部分列を選択する場合(又は特定のPreF−G抗原のGタンパク質成分に関して以下で議論するように)、追加の免疫原性エピトープの包含に基づいて配列(たとえば、変異体、部分列まど)を選択することが望ましくてもよい。たとえば、当該技術で既知の、たとえば、神経網又は多項式決定のようなアンカーモチーフ又はそのほかの方法を用いて、追加のT細胞エピトープを特定することができ、たとえば、RANKPEP(ウエブサイト:mif.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.htmlで利用可能);ProPredI(ウエブサイト:imtech.res.in/raghava/propredI/index.htmlで利用可能);Bimas(ウエブサイト:www−bimas.dcrt.nih.gov/molbi/hla_bind/index.htmlで利用可能);及びSYFPEITH(ウエブサイト:syfpeithi.bmi−heidelberg.com/scripts/MHCServer.dll/home.htmで利用可能)を参照のこと。たとえば、アルゴリズムを用いてペプチドの「結合閾値」を決定し、特定の親和性で結合するMHC又は抗体の高い確率をそれらに与えるスコアを持つものを選択する。アルゴリズムは、特定の位置での特定のアミノ酸のMHC結合に対する効果、特定の位置での特定のアミノ酸の抗体結合に対する効果、又はモチーフを含有するペプチドの特定の置換の結合に対する効果のいずれかに基づく。免疫原性ペプチドの文脈の範囲内で、「保存された残基」は、ペプチドの特定の位置で無作為な分布で予想されるものより有意に高い頻度で出現するものである。アンカー残基はMHC分子との接触点を提供する保存された残基である。そのような予測方法で特定されるT細胞エピトープは、特定のMHCタンパク質への結合を測定することによって、及びMHCタンパク質の背景で提示される場合T細胞を刺激するその能力によって確認することができる。
【0078】
好都合には、PreF抗原(以下で議論されるPreF−G抗原を含んでなる)は、発現系に対応するシグナルペプチド、たとえば、哺乳類又はウイルスのシグナルペプチド、たとえば、RSVのF0の天然のシグナル配列(たとえば、配列番号2のアミノ酸番号1〜25又は配列番号6のアミノ酸番号1〜25)を含んでなる。通常、シグナルペプチドは、組換え発現で選択される細胞に適合するように選択される。たとえば、バキュロウイルスのシグナルペプチド又はメリチンシグナルペプチドのようなシグナルペプチドは、昆虫細胞における発現について置換され得る。植物の発現系が好まれるのであれば、好適な植物シグナルペプチドが当該技術で既知である。多数の例となるシグナルペプチドが当該技術で既知であり(たとえば、多数のヒトのシグナルペプチドを記載しているZhang & Henzel, Protein Sci., 13:2819‐2824 (2004)を参照)、古細菌、原核生物及び真核生物のシグナル配列を含んでなるSPdbシグナルペプチドデータベース(http://proline.bic.nus.edu.sg/spdb/)にてカタログ化されている。任意で、先行の抗原のいずれかが追加の配列、又はHisタグのようなタグを含んで精製を円滑にすることができる。
【0079】
任意で、PreF抗原は追加の免疫原性成分を含んでなることができる。特定の特に好都合な実施形態では、PreF抗原はRSVのGタンパク質の抗原性成分を含んでなる。PreF及びGの成分を有する例となるキメラタンパク質には、以下のPreF_V1(配列番号7及び8で表される)及びPreFV2(配列番号9及び10で表される)が挙げられる。
【0080】
PreF−G抗原では、Gタンパク質(たとえば、アミノ酸残基番号149〜229のような切り詰めGタンパク質)の抗原性部分を構築物のC末端に付加する。通常、Gタンパク質成分は、自由度のあるリンカー配列を介してFタンパク質成分に連結される。たとえば、例となるPreF_V1の設計では、Gタンパク質は、−GGSGGSGGS−リンカー(配列番号14)によってPreF成分に連結される。PreF_V2の設計では、リンカーはさらに短い。−GGSGGSGGS−リンカー(配列番号14)の代わりに、PreF_V2は2つのグリシン(−GG−)をリンカーに有する。
【0081】
存在する場合、Gタンパク質ポリペプチドドメインは、RSVのA株又はRSVのB株から選択されるGタンパク質のすべて又は一部を含んでなることができる。特定の例となる実施形態では、Gタンパク質は、配列番号4で表されるGタンパク質である(又はそれと95%同一である)。好適なGタンパク質配列の追加の例は、WO2008/114149(参照によって本明細書に組み入れられる)に見つけることができる。
【0082】
Gタンパク質ポリペプチド成分は、アミノ酸番号183〜197の領域で免疫優勢なT細胞エピトープを保持するGタンパク質の少なくとも部分列(又は断片)、たとえば、天然のGタンパク質のアミノ酸番号151〜229、149〜229又は128〜229を含んでなるGタンパク質の断片を含んでなるように選択される。例となる一実施形態では、Gタンパク質ポリペプチドは、天然のGタンパク質ポリペプチドのアミノ酸残基番号149〜229の全部又は一部を含んでなる、天然のGタンパク質ポリペプチドの部分列(又は断片)である。当業者は、選択される部分が、PreF−Gの発現、折り畳み又はプロセッシングを構造的に不安定化又は破壊しない限り、Gタンパク質のさらに長い又は短い部分を使用できることを容易に十分に理解するであろう。任意で、ホルマリン不活化RSVワクチンと関連する好酸球増多を特徴とする増強された疾患を軽減する及び/又は防ぐことが以前示された191位にて、Gタンパク質ドメインはアミノ酸置換を含んでなる。天然に存在する及び置換された(N191A)Gタンパク質の特性の完全な記載は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第2005/0042230に見つけることができる。
【0083】
たとえば、天然に存在する株に対応する配列の選択に関して、1以上のドメインが、たとえば、A2若しくはロングと命名された一般の研究室単離体、又はそのほかの天然に存在する株若しくは単離体(前述のWO2008/114149で開示されたような)のようなRSVのA株又はB株に配列では対応し得る。そのような天然に存在する又は単離される変異体に加えて、前述の配列と配列類似性を共有する操作された変異体もPreF(PreF−Gを含んでなる)抗原の文脈で採用され得る。ポリペプチド(及び一般にヌクレオチド配列)に関してPreF抗原ペプチド(及び以下に記載されるポリヌクレオチド配列)間の類似性は、配列同一性を参照して配列間での類似性という点で表現され得る。配列同一性は、同一性(又は類似性)比率という点で測定されることが多く;比率が高ければ高いほど、2つの配列の一次構造はよく類似する。一般に、2つのアミノ酸(又はポリヌクレオチド)の配列の一次構造が似ていれば似ているほど、折り畳み及び集合の結果生じる高次構造も類似する。PreFポリペプチド(又はポリヌクレオチド)配列の変異体は通常、1又は少数のアミノ酸の欠失、付加又は置換を有するが、それでもなお、非常に高い比率でアミノ酸、一般にはそのポリヌクレオチド配列を共有する。さらに重要なことに、変異体は、本明細書で開示される参照配列の構造的な特性、従って立体構造の特性を保持する。
【0084】
配列同一性を決定する方法は当該技術で周知であり、PreF抗原ポリペプチド、並びにそれをコードする核酸に適用可能である(たとえば、下記のように)。種々のプログラム及び配置アルゴリズムは、Smith及びWaterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Higgins及びSharp,Gene 73:237,1988;Higgins及びSharp,CABIOS,5:151,1989;Corpetら、Nucleic Acids Research,16:10881,1988;並びにPearson及びLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444,1988に記載されている。Altschulら、Nature Genet.6:119,1994は、配列配置法と相同性算出の詳細な考察を提示している。NCBI基本的な局在配置検索ツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列解析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連して使用するために、全米バイオテクノロジー情報センター(MD州、ベセスダ、NCBI)を含んでなる幾つかの供給源、及びインターネットにて利用可能である。このプログラムを用いて配列同一性の決定の仕方の記載はインターネットのNVBIウエブサイトで利用可能である。
【0085】
一部の例では、PreF抗体は、それが由来する天然に存在する株のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸修飾を有する(たとえば、前述の安定化修飾に加えて)。そのような差異は、1以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換であり得る。変異体は通常、アミノ酸残基の約1%又は2%又は5%又は6%又は10%又は15%又は20%以下異なる。たとえば、変異体PreF(PreF−Gを含んでなる)ポリペプチド配列は、配列番号6、8、10,18、20及び/又は22の例となるPreF抗原ポリペプチド配列の例となるPreF抗原と比べて、1又は2又は5までの又は約10までの、又は約15までの、又は約50までの又は約100までのアミノ酸の差異を含んでなり得る。従って、RSVのF又はGのタンパク質又はPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)の文脈では変異体は、通常、配列番号6、8、10,18、20及び/又は22で説明される参照タンパク質との、又は本明細書で開示される例となるPreF抗原のいずれかとの、少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には、少なくとも約90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。本開示の特徴として含まれる追加の変異体には、WO2008/114149で開示された天然に存在する変異体から選択されるヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の全部又は一部を含んでなるPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)である。追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である。たとえば、修飾は、得られるPreF抗原の立体構造又は免疫原性エピトープを変化させない1以上の(たとえば、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、10までのアミノ酸、以上)の置換であり得る。
【0086】
代わりに又はさらに、修飾は、1以上のアミノ酸の欠失及び/又は1以上のアミノ酸の付加を含んでなることができる。実際、所望であれば、1以上のポリペプチドドメインは、単一株に一致しないが、複数株、又はさらにRSVのポリペプチドの複数の株を並べることによって推定されるコンセンサス配列に由来する成分部分列を含んでなる合成ポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、その後の処理又は精製を円滑にするタグを構成するアミノ酸配列の付加によって1以上のポリペプチドドメインが修飾される。そのようなタグは抗原性タグ、又はエピトープタグ、酵素タグ又はポリヒスチジンタグであり得る。通常、タグは、たとえば、抗原又は融合タンパク質のC末端又はN末端のようなタンパク質の一方又は他方の末端に位置する。
【0087】
PreF抗原をコードする核酸
本開示の別の態様は、上述のようなPreF抗原をコードする組換え核酸に関する。さらに明確には、そのような核酸は、パラミクソウイルスのFタンパク質ポリペプチドのF2ドメインとF1ドメインを含んでなるFタンパク質ポリペプチド抗原を含んでなるポリペプチドをコードし、それは、(i)ヘテロ三量体化ドメインを含んでなるアミノ酸配列の付加、(ii)少なくとも1つのフリン切断部位の欠失、(iii)非フリン切断部位の欠失、(iv)pep27ドメインの1以上のアミノ酸の欠失及び(v)Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる。任意で、そのようなポリヌクレオチドはグリコシル化部位で修飾を伴うPreF抗原をコードする。そのようなポリペプチドの性質及び構造の詳細は上記で詳細に開示している。当業者は、配列表で提供される、さもなければ本開示に(たとえば、参照による組み入れによって)含まれる例となる配列を含んでなる本明細書での教示に基づいた記載されるポリペプチド配列のいずれか及びすべてをコードするヌクレオチド配列を容易に決定することができる。
【0088】
特定の実施形態では、組換え核酸は、選択される原核又は真核の宿主細胞での発現についてコドンが最適化される。たとえば、配列番号5、12、17、19及び21は、PreF抗原をコードし、哺乳類、たとえば、CHO細胞での発現についてコドンが最適化されている配列の異なった説明の非限定の例である。複製と発現を円滑にするために、核酸を、たとえば、原核又は真核の発現ベクターのようなベクターに組み入れることができる。組換えのPreF抗原をコードする核酸を含んでなる宿主も本開示の特徴である。好都合な宿主細胞には、たとえば、大腸菌のような原核生物(すなわち、細菌)の宿主細胞、並びに真菌(たとえば、酵母)細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞(たとえば、CHO、VERO及びHEK293細胞)が挙げられる。
【0089】
複製と発現を円滑にするために、核酸を、たとえば、原核又は真核の発現ベクターのようなベクターに組み入れることができる。本明細書で開示される核酸を種々のベクター(たとえば、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、たとえば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鳥ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルスなどのようなウイルスDNAを含んでなる)に含めることができるが、最も一般的には、ベクターはポリペプチドの発現産物を生成するのに好適な発現ベクターである。発現ベクターでは、PreF抗原をコードする核酸は通常、mRNA合成に向かう適切な転写制御配列(プロモータ及び任意で1以上のエンハンサ)の近傍に且つその方向で配置される。すなわち、当該のポリヌクレオチド配列は、適切な転写制御配列に操作可能に連結される。そのようなプロモータの例にはCMVの即時早期プロモータ、LTR又はSV40のプロモータ、バキュロウイルスの多面体プロモータ、大腸菌のlac又はtrpプロモータ、ファージT7及びラムダPプロモータ、及び原核細胞又は真核細胞又はウイルスにおける遺伝子の発現を制御する既知のそのほかのプロモータが挙げられる。発現ベクターは通常、翻訳開始及び転写停止のためのリボソーム結合部位も含有する。ベクターは任意で発現を増幅するための適当な配列を含んでなる。加えて、発現ベクターは任意で、1以上の選択可能なマーカー遺伝子を含んで、形質転換した宿主細胞の表現型形質を提供するが、たとえば、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性、又は大腸菌におけるカナマイシン耐性、テトラサイクリン耐性若しくはアンピシリン耐性である。
【0090】
発現ベクターは、たとえば、翻訳の効率を改善するための追加の発現要素も含んでなることができる。これらのシグナルには、たとえば、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。場合によっては、たとえば、翻訳開始コドン及び関連する配列要素を当該ポリヌクレオチド配列(たとえば、天然の開始コドン)と同時に適当な発現ベクターに挿入する。そのような場合、追加の翻訳制御シグナルは必要とされない。しかしながら、ポリペプチドをコードする配列又はその一部のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含んでなる外因性の翻訳制御シグナルがPreF抗原をコードする核酸の翻訳に提供される。開始コドンを正しい読み取りフレームに置いて当該ポリヌクレオチド配列の翻訳を確保する。外因性の転写要素及び開始コドンは種々の起源、天然及び合成由来であってもよい。所望であれば、使用中の細胞系に適したエンハンサを含めることによって発現の効率をさらに高めることができる(Scharf et al. Results Probl Cell Differ 20:125‐62 (1994); Bitter et al. Methods in Enzymol 153:516−544 (1987))。
【0091】
一部の例では、PreF抗原をコードする核酸(たとえば、ベクター)は、宿主に導入された際、PreFをコードする核酸の発現を高める及び/又は最適化するように選択される1以上の追加の配列要素を含んでなる。たとえば、特定の実施形態では、PreF抗原をコードする核酸は、たとえば、ヒトのヘルペスウイルス5イントロン配列(たとえば、配列番号13を参照)のようなイントロン配列を含んでなる。イントロンは、組換え構築物にて適切に配置されると相同性及びヘテロの核酸の発現を高めることが繰り返し明らかにされている。発現を高める別の部類の配列には、マトリクス連結領域(又はMAR)のような遺伝子外要素、又はSTAR要素(たとえば、Otte et al., Biotechnol. Prog. 23:801‐807, 2007で開示されたようなSTAR)のような類似の遺伝子外要素が挙げられる。理論に束縛されないで、MARは核マトリクスへの標的DNA配列の固定の介在し、ヘテロクロマチンのコアから外に向かって延びるクロマチンループドメインを生成すると考えられている。MARは明瞭なコンセンサス配列又は認識可能な配列を含有しないが、その最も一貫した特徴は、全体的に高いA/T含量と一方の鎖で優勢なC塩基であると思われる。これらの領域は、鎖を分離する傾向がある湾曲二次構造を形成すると思われ、鎖分離の核生成点として作用し得るコア巻き戻し要素を含んでなり得る。幾つかの単純なAT−リッチ配列モチーフは、MAR配列:たとえば、A−ボックス、T−ボックス、DNA巻き戻しモチーフ、SATB1結合部位(H−ボックス、A/T/C25)及び脊椎動物又はショウジョウバエのためのコンセンサストポイソメラーゼII部位と関連している。例となるMAR配列は、公開された米国特許出願第20070178469号及び国際特許出願WO02/074969(参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。PreF抗原をコードする核酸の発現を高めるのに使用することができる追加のMAR配列には、GirodらのNature Methods,4:747−753,2007で開示されたニワトリのリゾチームMAR,MARp1−42、MARp1−6、MARp1−68及びMARpx−29(それぞれGenBank受入番号、EA423306、DI107030、DI106196、DI107561及びDI106512)が挙げられる。当業者は、MAR1〜9で報告されているように、中程度のレベルの増強を生じるMARを選択することによって発現をさらに調節できることを十分に理解するであろう。所望であれば、たとえば、MAR−ファインダー(ウエブ:futuresoft.org/MarFinderにて利用可能)、MARテスト(ウエブ:genomatix.deで利用可能)又はSMARスキャンI(Levitsky et al., Bioinformatics 15:582‐592, 1999)のようなソフトウエアを用いて配列データベースを検索することによって、PreF抗原の発現を高める代替のMAR配列を特定することができる。特定の実施形態では、MARは、PreF抗原をコードする配列と同じ核酸(たとえば、ベクター)上で宿主細胞に導入される(たとえば、形質移入される)。代替の実施形態では、MARは、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列と操作可能に同時統合することができる別の核酸(たとえば、トランスで)上で導入される。
【0092】
組換えPreF抗原核酸の産生を介して当業者を導くのに十分な例となる手順は、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press,2001;AusubelらのCurrent Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(及び2003年の補足);並びにAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、第4版、Wiley & Sons,1999に見い出すことができる。
【0093】
PreF抗原をコードする例となる核酸は配列番号5、7,9,12,13,17,19及び21によって表される。たとえば、配列番号2の500位に対応するアミノ酸にてグリコシル化部位に修飾を含んでなる変異体は、1408〜1414位(たとえば、配列番号12、たとえば、配列番号17及び21のポリヌクレオチドに比べて)の近傍でヌクレオチドを変える(たとえば、変異させる)ことによって作出することができる。グリコシル化の変異体(たとえば、グリコシル化効率を高める)をコードするヌクレオチドの好適な配列には、aacgggt、aacaagt、aacggga及びaacaagaが挙げられる。グリコシル化部位を除去する、たとえば、cagcagtのような代替配列も可能である。たとえば、WO2008/114149で開示されたような既知の(若しくはその後)発見されたRVSの株から選択される類似のF及びGのタンパク質ポリペプチド配列を組み合わせることによって追加の変異体を作出することができる。例となる変異体と配列同一性を共有する追加の配列変異体は当業者によって作出することができる。通常、核酸変異体は、アミノ酸残基の1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%以下で異なるポリペプチドをコードする。すなわち、コードされたポリペプチドは、配列番号9、11及び13の1つと少なくとも80%、又は85%、さらに一般的には少なくとも90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。PreFポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードの重複性のために自体低い配列同一性を共有することは当業者によって直ちに理解される。一部の例では、PreF抗原は、それが由来する天然に存在する株のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸修飾を有する(たとえば、前述の安定化修飾に加えて)。そのような差異は、それぞれ1以上のヌクレオチド又はアミノ酸の付加、欠失又は置換であり得る。変異体は通常、ヌクレオチド残基の約1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%以下で異なる。たとえば、変異体PreF抗原(PreF−Gを含んでなる)の核酸は、配列番号5,7,9,12,13,17,19及び/又は22の例となるPreF抗原核酸と比べて、1又は2、又は5までの、又は約10までの、又は約15までの、又は約50までの、又は約100までのヌクレオチドの差異を含んでなることができる。従って、RSVのF又はGのタンパク質又はPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)の核酸の文脈における変異体は通常、参照配列、たとえば、配列番号1,3、5,7,9,12,13,17,19及び/又は22で説明される参照配列、又は本明細書で開示されるそのほかの例となるPreF抗原の核酸と少なくとも90%以上、たとえば、95%又はさらに98%又は99%の配列同一性を共有する。本開示の特徴として含まれる追加の変異体は、WO2008/114149で開示された天然に存在する変異体から選択されるヌクレオチド配列の全部又は一部を含んでなるPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)である。追加の変異体は、遺伝的浮動によって生じることができ、又は部位特異的若しくは無作為の突然変異誘発を用いて人為的に作出することができ、又は2以上の既存の変異体の組換えによって作出することができる。そのような追加の変異体も本明細書で開示されるPreF(及びPreF−G)の文脈で好適である
【0094】
上述した変異体核酸に加えて、配列番号1,3,5,7、9、12、13,17,19又は21によって表される例となる核酸の1以上とハイブリダイズする核酸もPreF抗原をコードするのに使用することができる。当業者は、上記で議論した%配列同一性の測定に加えて、2つの核酸の間の配列類似性の別の証は、ハイブリダイズする能力であることを十分に理解するであろう。2つの核酸の配列が似ていればいるほど、それらがハイブリダイズする条件はさらにストリンジェントである。ハイブリダイズ条件のストリンジェント性は、配列に依存し、異なった環境パラメータのもとで異なる。従って、ストリンジェント性の特定の程度を生じるハイブリダイズ条件は、選択するハイブリダイズ方法の性質及び組成物及びハイブリダイズする核酸配列の長さによって変化する。一般に、洗浄回数もストリンジェント性に影響するが、ハイブリダイズの温度及びハイブリダイズ緩衝液のイオン強度(特にNa及び/又はMg++の濃度)がハイブリダイズのストリンジェント性を決定する。一般に、ストリンジェントな条件は、定義したイオン強度とpHにて特定の配列についての熱融点(T)よりも約5〜20℃低いように選択される。Tは、標的配列の50%が好ましく一致したプローブとハイブリダイズする温度(定義したイオン強度とpHにて)である。核酸のハイブリダイズの条件及びストリンジェント性の算出は、たとえば、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001;Tijssen,Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I:Theory and Nucleic Acid Preparation,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Ltd.,NY,NY,1993及びAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley & Sons,Inc.,1999に見い出すことができる。
【0095】
本開示の目的で、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイズ分子と標的配列の間で25%未満のミスマッチがある場合ハイブリダイズが生じる条件を包含する。さらに正確な定義のためにストリンジェント性の特定のレベルに「ストリンジェントな条件」を分類することができる。従って、本明細書で使用されるとき、「穏やかなストリンジェント性」の条件は、25%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものであり、「中程度のストリンジェント性」の条件は、15%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものであり、「高いストリンジェント性」の条件は、10%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものである。「非常に高いストリンジェント性」の条件は、6%を超える配列ミスマッチを持つ分子はハイブリダイズしないものである。それに対して、「低いストリンジェント性」の条件でハイブリダイズする核酸には、非常に低い配列同一性を持つもの又は核酸のほんの短い配列のみの配列同一性を持つものが挙げられる。従って、本開示に包含される核酸の種々の変異体は、少なくとも、Fタンパク質のF2ドメインとF1ドメインをコードする部分にわたって、配列番号1、3及び5の少なくとも1つとハイブリダイズできることが理解されるであろう。たとえば、そのような核酸は、配列番号1,3,5,7,9,12,13,17,19及び/又は21の少なくとも1つの実質的に全長にわたってハイブリダイズすることができる。
【0096】
RSV抗原性ポリペプチドの製造方法
組換えタンパク質の発現及び精製について定評のある手順を用いて、本明細書で開示されるPreF抗原(PreF−G抗原及び適宜、G抗原も含んでなる)を製造する。当業者を導くのに十分な手順は以下の文献で見つけることができる:SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,200;及びAusubelらのShort Protocols in Molecular Biology、第4版、John Wiley & Sons,Inc.,999。追加の及び特定の詳細は以下に提供される。
【0097】
PreF抗原をコードする核酸はベクター及び宿主細胞の選択に応じて、種々の周知の手順、たとえば、エレクトロポレーション、リポソーム介在性形質移入(たとえば、市販のリポソーム形質移入剤、たとえば、LIPOFECTAMINE(商標)2000又はTRANSFECTIN(商標)を用いた)、リン酸カルシウム沈殿、感染、形質移入などによって、宿主細胞に導入される。PreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)をコードする例となる核酸は、配列番号1,3,5,7,9,12,13,17,19及び/又は21に提供される。当業者は、配列番号1,3,5,7,9,12,13,17,19及び/又は21が例示であって、限定を意図しないことを十分に理解するであろう。たとえば、配列番号5,7及び9(たとえば、配列番6,8及び10で表される)と同じタンパク質をコードするが、遺伝子コードの重複性(たとえば、配列番号12で示される代替のコドン最適化)によってのみ異なるポリヌクレオチド配列を、配列番号5,7及び9の例となる配列の代わりに容易に使用することができる。同じことが配列番号17,19及び21で当てはまる。同様に、配列番号13で説明されるような内部に位置するイントロンのような(又はプロモータ、エンハンサ、イントロン若しくは同様の要素の添加によって)発現を高める要素を含んでなるポリヌクレオチド配列を採用することができる。当業者は、そのような修飾の組み合わせが同様に好適であることを認識するであろう。同様に、RSVのA株若しくはRSVのB株から選択される相同の配列、及び/又は上記で議論したような実質的な配列同一性を共有するそのほかの配列を用いてPreF抗原を発現させることもできる。実際、以前開示された変異体核酸のいずれかを好適に宿主に導入し、用いてGタンパク質が適用可能であるPreF抗原(PreF−G抗原を含んでなる)を作出することができる。
【0098】
たとえば、特定の例では、たとえば、(配列番号2、たとえば、配列番号17に関して)500位のアミノ酸の近傍で1以上のアミノ酸の置換によって上述されるようなグリコシル化パターンを変化させるために変異体の核酸を修飾する。たとえば、切断認識部位を修飾することと組み合わせてグリコシル化パターンを修飾することは、細胞培養にてPreF抗原の産生を高めることが分かっている。そのような場合、組換えPreF抗原を発現させ、単離するために以下で記載される方法は、上述のように、任意で1以上の切断部位(たとえば、非フリン又はフリン切断認識部位)を修飾することと組み合わせてグリコシル化認識部位の1以上のアミノ酸を置換することによってPreF抗原のグリコシル化パターンを変えることによりPreF抗原の産生を高める工程を提供する。
【0099】
組換えのPreF抗原をコードする核酸を含んでなる宿主細胞も従って本開示の特徴である。好都合な宿主細胞には、たとえば、大腸菌のような原核細胞(たとえば、細菌)宿主細胞、並びに真核細胞(たとえば、Saccharomyces cerevisiae及びPicchia pastorisのような酵母)、昆虫細胞、植物細胞及び哺乳類細胞(たとえば、CHO細胞及びHEK293細胞)を含んでなる多数の真核宿主細胞が挙げられる。組換えのPreF抗原をコードする核酸は、たとえば、発現ベクターのようなベクターを介して宿主細胞に導入される(たとえば、形質伝達、形質転換又は形質移入される)。上述のように、ベクターは最も通常ではプラスミドであるが、そのようなベクターは、たとえば、ウイルス粒子やファージ等であり得る。適切な発現宿主の例には、たとえば、大腸菌、Streptomyces及びSalmonella typhimuriumのような細菌細胞;Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris及びNeurospora crassaのような真菌細胞;Drosophila及びSpodoptera frugiperdaのような昆虫細胞;3T3、COS、CHO、BHK、HEK293又はBowesメラノーマのような哺乳類細胞;藻類細胞を含んでなる植物細胞が挙げられる。一部の例では、一時的に形質移入した細胞を用いて組換えPreF抗原を産生することができる。特定の実施形態では、安定的に統合されたPreF核酸を有する細胞(たとえば、クローン)を選択し、用いて組換えPreF抗原を産生する。
【0100】
プロモータを活性化し、形質転換体を選抜し、挿入したポリヌクレオチド配列を増幅するのに適するように改変された従来の栄養培地にて宿主細胞を培養することができる。温度、pH等の培養条件は、通常、発現のために選択された宿主細胞と共に以前使用されたものであり、たとえば、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique、第3版、Wiley− Liss,New York及びそれに引用された文献を含んでなる本明細書で引用された文献にて当業者に明らかであろう。任意で、無血清培地及び/又は動物生成物を含まない培地で宿主細胞を培養する。
【0101】
本発明の核酸に対応する発現産物は、たとえば、植物、酵母、真菌、細菌等のような非動物細胞での産生することができる。Sambrook、Berger及びAusubelに加えて、細胞培養に関する詳細は、Payneらの(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems、John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg及びPhillips(編)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)並びにAtlas及びParks(編)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,FLで見つけることができる。
【0102】
細菌の系では、発現される産物の用途に応じて多数の発現ベクターを選択することができる。たとえば、抗体の産生について大量のポリペプチド又はその断片を必要とする場合、精製しやすい融合タンパク質の高レベル発現を指向するベクターを好都合に採用する。そのようなベクターには、当該コーディング配列、たとえば、上述のような本発明のポリヌクレオチドがアミノ末端翻訳開始メチオニンと触媒上活性のあるβ−ガラクトシダーゼ融合タンパク質を生じるβ−ガラクトシダーゼの7残基についての配列を伴ってインフレームでベクターに連結され得るBLUESCRIPT(Stratagene)のような多機能の大腸菌のクローニング及び発現のベクター;pINベクター(Van Heeke & Schuster(1989)J Biol Chem 264)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例では、原核細胞、たとえば、大腸菌細胞での導入と発現に好適なベクターを介して核酸を細胞に導入する。たとえば、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる核酸を、たとえば、pETシリーズの発現ベクター(たとえば、pET9b及びpET2d)のような種々の市販の又は独占所有権のあるベクターに導入することができる。コーディング配列の発現はIPTGによって誘導可能であり、高いレベルのタンパク質発現を生じる。PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、ファージT7プロモータのもとで転写される。熱誘導可能なラムダpLプロモータを含んでなるpURV22のような代替ベクターも好適である。
【0103】
発現ベクターを好適な細菌宿主に導入する(たとえば、エレクトロポレーションによって)。多数の好適な大腸菌株が利用可能であり、当業者によって選択することができる(たとえば、Rosetta株及びBL21(DE2)株は、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含有する組換えベクターの発現に好都合であることが分かっている)。
【0104】
同様に、Saccharomyces cerevisiaeのような酵母では、α因子、アルコールオキシダーゼ及びPGHのような構成的な又は誘導可能なプロモータを含有する多数のベクターが所望の発現産物の製造に使用される。概説については、Berger,Ausubel、及びたとえば、Grantらの(1987;Methods in Enzymology 153:516−544)を参照のこと。哺乳類の宿主細胞では、プラスミド及びウイルスに基づいた系の双方を含んでなる多数の発現系を利用することができる。
【0105】
別の例では、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いて昆虫細胞に導入される。昆虫細胞を感染させることが可能な組換えバキュロウイルスは、たとえば、 BD BioScienceからのBD BaculoGold系のような市販のベクター、キット及び/又は系を用いて生成することができる。手短には、抗原をコードするポリヌクレオチド配列をpAvSG2転移ベクターに挿入する。次いで、pAvSG2キメラプラスミドと、バキュロウイルスAutographa californica nuclear polyhedrosis virus(AcNPV)の線状化ゲノムDNAを含有するBD BaculoGoldによって宿主細胞SF9(Spodoptera frugiperda)に同時形質移入する。形質移入に続いて、pAvSG2プラスミドとバキュロウイルスゲノムの間で相同組換えが生じて組換えウイルスを生成する。一例では、PreF抗原は多面体プロモータ(pH)の通常制御のもとで発現される。他のプロモータ、たとえば、塩基性(Ba)プロモータ及びp10プロモータを用いて同様の転移ベクターを作出することができる。同様に、たとえば、Sf9に密接に関連するSF21及びイラクサギンウワバTrichoplusia niに由来するハイファイブ細胞株のような代替の昆虫細胞を採用することができる。
【0106】
さらに通常、PreF抗原をコードするポリヌクレオチドは、真核細胞(たとえば、昆虫細胞又は哺乳類細胞)での導入と発現に好適である発現ベクターに導入される。好都合には、そのような核酸は、選択されるベクター/宿主細胞での発現についてコドンが最適化される(たとえば、配列番号5,7,9,12,13,17,19及び21で説明される配列は、CHO細胞での発現についてコドンが最適化される)。例となる一実施形態では、PreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、Lonza Biologicals社によって開発されたpEE14ベクターのようなベクターに導入される。たとえば、即時早期CMV(サイトメガロウイルス)プロモータのような構成的なプロモータのもとでポリペプチドが発現される。ポリペプチドを発現する安定的に形質移入された細胞の選抜は、グルタミン源の非存在下で増殖する形質移入細胞の能力に基づいて為される。上手くpEE14を統合した細胞は、pEE14ベクターがGS(グルタミン合成酵素)酵素を発現するので、外因性グルタミンの非存在下で増殖することができる。選抜された細胞はクローンで増殖し、所望のPreFポリペプチドの発現を特徴とする。
【0107】
挿入した配列の発現を調節する能力又は発現されたタンパク質を所望の方法で処理する能力について宿主細胞を任意で選択する。そのようなタンパク質の修飾には、グリコシル化(同様に、たとえば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化)が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、前駆体形態をタンパク質の成熟形態に切断する(たとえば、フリンプロテアーゼによって)翻訳後プロセッシングは、宿主細胞の文脈で任意で実施される。3T3、COS、CHO、HeLa、BHK、MDCK、293、WI38等のような様々な宿主細胞はそのような翻訳後活性について特定の細胞性の機構及び特徴的なメカニズムを有し、導入される外来タンパク質の正確な修飾を確保するように選択することができる。
【0108】
本明細書で開示される組換えPreFF抗原の長期間の高収率の産生のために、安定的な発現系が通常使用される。たとえば、ウイルスの複製開始点又は内因性発現要素及び選択可能なマーカー遺伝子を含有する発現ベクターを用いて、PreF抗原ポリペプチドを安定的に発現する細胞株が宿主細胞に導入される。ベクターの導入に続いて、選抜培地に移す前に細胞を強化培地で1〜2日間増殖させる。選択可能なマーカーの目的は、選抜に対する耐性を付与することであり、その存在によって、導入配列を上手く発現する細胞の増殖と回収が可能になる。たとえば、細胞種に適した組織培養法を用いて、安定的に形質転換された細胞の耐性群又は耐性コロニーを増殖させることができる。細胞培養からのコードしたタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で、PreF抗原をコードする核酸で形質転換された宿主細胞を任意で培養する。上記で示したように、所望であれば、宿主細胞を無血清(及び/又は動物生成物を含まない)培地で培養することができる。
【0109】
好適な細胞株の形質伝達と適当な細胞密度への宿主細胞の増殖に続いて、選択したプロモータを適当な手段(たとえば、温度シフト又は化学誘導)によって誘導し、細胞をさらなる期間培養する。任意で、培地は、プロテイナーゼによる発現タンパク質の分解を低下させる成分及び/又は添加剤を含んでなる。たとえば、PreF抗原を産生する細胞を培養するのに使用される培地は、たとえば、キレート剤又は小分子阻害剤(たとえば、AZ11557272、AS111793等)のようなプロテアーゼ阻害剤を含んで細胞性の又は細胞外(たとえば、マトリクス)のプロテイナーゼによる望ましくない切断を減らす又は消失させることができる。
【0110】
分泌されたポリペプチド産物を次いで培養培地から回収する。或いは、遠心によって細胞を回収し、物理的な又は化学的な手段によって粉砕し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために保持することができる。タンパク質の発現で採用した真核細胞又は微生物細胞は、凍結融解の繰り返し、機械的粉砕、又は細胞溶解剤の使用、又は当業者に周知のそのほかの方法を含んでなる従来の方法によって粉砕することができる。
【0111】
硫安沈殿又はエタノール沈殿、酸抽出、濾過、限外濾過、遠心分離、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、リンセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ(たとえば、本明細書で言及されるタグ方式を使用した)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、及びレクチンクロマトグラフィを含んでなる当該技術で周知の多数の方法によって、組換え細胞培養から発現されたPreF抗原を回収し、精製することができる。所望のように、成熟タンパク質の立体構造を完成することにおいてタンパク質の再折り畳み工程を使用することができる。最終的に、最終精製工程にて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を採用することができる。上記で言及された参考文献に加えて、たとえば、Sandana(1997)Bioseparation of Proteins,Academic Press,Inc.;及びBollagらの(1996)Protein Methods、第2版、Wiley−Liss,NY;Walker(1996)The Protein Protocols Handbook Humana Press,NJ,Harris及びAngal(1990)Protein Purification Applications:A Practical Approach IRL Press at Oxford,Oxford,U.K.;Scopes(1993)Protein Purification:Principles and Practice、第3版、Springer Verlag,NY;Janson及びRyden(1998)Protein Purification:Principles,High Resolution Methods and Applications,第2版、Wiley−VCH,NY;並びにWalker(1998)Protein Protocols on CD−ROM Humana Press,NJで言及されたものを含んでなる種々の精製方法が当該技術で周知である。
【0112】
例となる一実施形態では、PreFタンパク質は、以下の精製スキームに従って細胞から回収される。PreFポリペプチドをコードする組換え核酸のCHO細胞への導入に続いて、一時的に形質移入された宿主細胞又は導入されたポリヌクレオチドを含んでなる増殖した安定な集団を培地にて、所望の目的に許容できる規模で増殖に好適な条件下で増殖させる(たとえば、一般にFreshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley− Liss, New York及びそこで引用された文献に記載されたように)。通常、細胞は、振盪フラスコ又は生物反応器にて無血清培地で増殖させ、2〜3日間隔で継代する。これらの条件で増殖した細胞から樹立した新しい培養を通常生物反応器にて無血清培地で実施し、PreF抗原を産生させるために20%にて維持されたpOと共に27℃にて5〜7日間インキュベートする。
【0113】
組換えPreF抗原を回収するには、細胞培養物を遠心し、細胞培養上清をさらなる使用までマイナス70℃にて保存する。培養上清の融解に続いて、上清をMilliQ水にて2倍に希釈し、HClでpH6.0に調整する。20mMのリン酸緩衝液pH6.0で平衡化したBPG140/500カラムに詰めた3LCMセラミックHyperDFF樹脂に希釈した上清を75cm/時間で負荷する。試料の負荷後、平衡緩衝液をカラムに通し、UVのベースラインに戻す。25mMのリン酸緩衝液pH7.0のカラム容積(CV)の5倍で洗浄した後、0.1MのNaClを含有する50mMのリン酸緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0114】
CMHyperD溶離液を20mMリン酸緩衝液pH7.0で3.3倍に希釈し、20mMのPO(Na)緩衝液pH7.0で平衡化した270mlのハイドロキシアパタイト2型カラム(XK 50に詰めた)にて50mL/分で処理する。平衡緩衝液(〜3CV)でカラムを洗浄した後、0.5MのNaClを含有する20mMのPO(Na)緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0115】
20mMリン酸緩衝液pH7.0で平衡化した150mlのCaptoAdhereカラム(XK26に詰めた)にてHA溶離液を15ml/分(樹脂との10分間の接触に留意して)で処理する。0.1Mのアルギニン緩衝液を含有する10mMリン酸緩衝液pH7.0の5CVで洗浄した後、0.6Mのアルギニン緩衝液を含有する10mMリン酸緩衝液pH7.0を用いて溶出を行う。
【0116】
次いで、分取用サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラムで処理するためにCaptoAdhere溶離液を約10倍に濃縮する。50kDのペリコンポリエーテルスルホン膜を用いて濃縮を行う。SECカラムで処理する前に、ウイルス清浄工程で用いたPLANOVA 20N 100 cmのフィルターを介して物質を濾過する。このナノ濾過工程は、ペリコン膜での濃縮の前又は後のいずれかに置くことができる。
【0117】
次いで500mLのSuperdexS200カラムと移動相としての10mMのリン酸塩(Na/K)、160mMのNaCl、pH 6.5緩衝液(最終緩衝液に対応する)を用いて分取用SECを行う。SECカラム容積の5%に対応する濃縮PreFの容積を約2.6ml/分で樹脂に負荷する。通常、10mlの分画を回収する。HCPレベルをできるだけ抑える一方で収率を最適化するのが所望であれば、銀染色によるSDSゲル及び抗HCP(宿主細胞タンパク質)のウエスタンブロットにて分画の分析プールを分析することができる。
【0118】
0.22μmのMillexフィルター(代わりにSterivexフィルターを使用することができる)での濾過の後、精製されたバルクが得られる。所望であれば、精製したPreF抗原調製物を使用に先立ってマイナス70℃で保存することができる。
【0119】
或いは、PreFタンパク質はポリヒスチジン(たとえば、6個のヒスチジン)を含んでなることができ、それを用いて精製を円滑にすることができる。そのようなヒスチジンのタグを付けたPreFポリペプチドについては、以下の精製プロトコールが採用される。固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(IMAC)を用いた精製に先立って、細胞培養上清を緩衝液A(20mMのビシン、pH8.5)で2倍に希釈し、pHを8.5に合わせる。予め緩衝液Aで平衡化した23mlのカラム容量のQセファロースFFカラム(GE Healthcare)に得られた溶液を負荷する。一部の宿主細胞の混入と共にPreFタンパク質をカラムに捕捉させる。IMAC精製工程を妨害する培養培地成分は保持されず、流水中で排除される。タンパク質は分離され、200mM、400mM、600mM、800mM及び1MのNaClの段階的溶出によって溶出される。当該のPreFタンパク質は、200mMのNaClでの最初の段階の間に溶出される。任意で、SDS−PAGE及びタグ付いたPreFタンパク質を検出する抗His−タグ抗体を用いたウエスタンブロットを用いて回収をモニターすることができる。精製を継続するのに先立って分画をプールすることができる。
【0120】
(プールされた)PreFタンパク質を含有する溶離液を緩衝液B(20mMのビシン、500mMのNaCl、pH8.3)で3倍に希釈し、pHを8.3に合わせる。予め緩衝液Bで平衡化した(たとえば、5mlのカラム容量)、塩化ニッケルを負荷したIMACセファロースFF樹脂(GE Healthcare)に得られた溶液を負荷する。PreFは樹脂に結合し、宿主細胞の混入物の大半は流水で溶出される。弱く結合した混入物を除くために20mMのイミダゾールでカラムを洗浄する。250mMのイミダゾールの一段階でPreFタンパク質を溶出する。クマシーブルーで染色するSDS−PAGE及び抗HIsタグのウエスタンブロットを行って陽性分画を特定する。
【0121】
次いでセントリコン濃縮装置(Millipore)を用いてIMACからのプールを少なくとも150μg/mlの濃度に濃縮することができ、500mMのL−アルギニンを補完したPBS緩衝液にてタンパク質を透析することができる。得られたタンパク質を、RCDCタンパク質アッセイ(BioRad)を用いて定量し、使用まで−70℃又は−80℃で保存する。
【0122】
免疫原性組成物及び方法
提供されるのはまた、上記で開示されたPreF抗原(たとえば、配列番号6,8,10,18,20及び22によって例示されるもの)と薬学上許容可能なキャリア又は賦形剤を含んでなる免疫原性組成物である。
【0123】
特定の実施形態では、通常、PreF抗原がGタンパク質成分(たとえば、配列番号6)を含まない実施形態では、免疫原性組成物は、単離された組換えの及び/又は精製されたGタンパク質を含んでなることができる。多数の好適なGタンパク質が当該技術で記載されており、完全長の組換えGタンパク質及びGタンパク質の一部(たとえば、アミノ酸番号128〜229又は130〜230)で構成されるキメラタンパク質及び融合相手(たとえば、チオレドキシン)又は発現及び/又は精製を円滑にするシグナル配列及び又はリーダー配列が挙げられる。PreF抗原との混合物で使用するための例となるRSVのGタンパク質は、PCT/CA2008/002277、WO2008114149、米国特許第5,149,650号、同第6,113,911号、米国公開出願20080300382及び米国特許第7,368,537号にて見つけることができ、そのそれぞれは参照によって本明細書に組み入れられる。キメラPreF−Gタンパク質に関して示されるように、アミノ酸番号149〜229の間の部分又は約128〜約229の間の部分のようなGタンパク質のさらに小さな断片を、PreF(Gを含まない)とGを含んでなる混合物の文脈にて好都合に採用することができる。上記で議論されたように、重要な配慮は、たとえば、アミノ酸番号183〜197の領域内に含まれる免疫優勢エピトープである。或いは、そのような組成物に完全長のGタンパク質が採用され得る。
【0124】
薬学上許容可能なキャリア及び賦形剤は当業者に周知であり、当業者によって選択され得る。たとえば、キャリア又は賦形剤は好都合には緩衝液を含んでなることができる。任意で、キャリア又は賦形剤は、溶解性及び又は安定性を安定化させる少なくとも1つの成分も含有する。可溶化剤/安定剤の例には界面活性剤、たとえば、ラウレルサルコシン及び/又はツイーンが挙げられる。代替の可溶化剤/安定剤には、アルギニン及びガラス形成ポリオール(たとえば、スクロース、トレハロース等)が挙げられる。多数の薬学上許容可能なキャリア及び/又は薬学上許容可能な賦形剤が当該技術で既知であり、たとえば、E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PAによるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第5版(1975)に記載されている。
【0125】
従って、好適な賦形剤及びキャリアが当業者によって選択され、選択された投与経路によって対象に送達するために好適な製剤を製造することができる。
【0126】
好適な賦形剤には、限定しないで、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、トレハロース、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、L−プロリン、非界面活性剤スルホベタイン、塩酸グアニジン、尿素、酸化トリメチルアミン、KCl、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+及びそのほかの二価のカチオン関連塩、ジチオスレイトール、ジチオエリトール、及びβ−メルカプトエタノールが挙げられる。そのほかの賦形剤は、界面活性剤(ツイーン80、ツイーン20、トリトンX−100、NP−40、エンピゲンBB、オクチルグルコシド、ラウロイルマルトシド、Zwittergent3−08、Zwittergent3−0、Zwittergent3−2、Zwittergent3−4、Zwittergent3−6、CHAPS、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムを含んでなる)であり得る。
【0127】
任意で、免疫原性組成物はアジュバントも含んでなる。RSVに対する防御免疫応答を誘発する目的で対象に投与するのに好適な免疫原性組成物の文脈で、アジュバントを選択して、インターフェロン−γ(IFN−γ)の産生を特徴とする、Th1に偏った免疫応答又はTh1/Th2の釣り合った免疫応答を誘発する。
【0128】
通常、アジュバントを選択して、組成物が投与される対象又は対象において、IFN−γの分泌を特徴とするTh1に偏った免疫応答(又は、Th1/Th2の釣り合った免疫応答)を高める。たとえば、RSV感染に感受性の(又はリスクが高い)特定の年齢群の対象に免疫原性組成物を投与すべき場合、対象及び対象の集団にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。従って、高齢者対象(たとえば、65歳を超える対象)での投与用にRSVのPreF抗原を含有する免疫原性組成物を製剤化する場合、高齢者対象にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。同様に、RSVのPreF抗原を含有する免疫原性組成物が、新生児又は乳児の対象(出生から2歳までの対象)に投与することを意図される場合、新生児及び乳児にて安全で且つ効果的であるようにアジュバントを選択する。新生児及び幼児における安全性と有効性のために選択されるアジュバントの場合、成人に通常投与される用量の希釈(たとえば、画分用量)であるアジュバントの用量を選択することができる。
【0129】
さらに、免疫原性組成物が投与される投与の経路を介して投与される場合、アジュバントは通常、Th1免疫応答を高めるように選択される。たとえば、鼻内投与用にPreF抗原を含有する免疫原性組成物を製剤化する場合、プロテオソーム及びプロトリンが好都合なTh1に偏ったアジュバントである。それに対して、免疫原性組成物を筋肉内投与用に製剤化する場合、1以上の3D−MPL、スクワレン(たとえば、QS21)、リポソーム及び/又は油と水のエマルションを含んでなるアジュバントが好都合に選択される。
【0130】
PreF抗原との併用で使用するために好適なアジュバントの1つは、非毒性の細菌性リポ多糖類誘導体である。脂質Aの好適な非度屈性誘導体の例は、モノホスホリル脂質A、さらに詳しくは3−脱アセチル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)である。3D−MPLは、MPLの名称のもとでGlaxoSmithKline Biologicals N.A.によって販売され、文書全体を通してMPL又は3D−MPLと呼ばれる。米国特許第4,436,727;同第4,877,611号;同第4,866,034号及び同第4,912,094号を参照のこと。3D−MPLは、IFN−γ(Th1)表現型を持つCD4T細胞の応答を促進する。3D−MPLは、GB2220211Aで開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは、3,4,5又は6のアシル化鎖を持つ3−脱アセチル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。本発明の組成物では、小粒子3D−MPLを使用することができる。小粒子3D−MPLは、0.22μmのフィルターを介して無菌濾過できるような粒度を有する。そのような調製物はWO94/21292に記載されている。
【0131】
3D−MPLのようなリポ多糖類は、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。そのような3D−MPLは、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルで3D−MPLを含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μgの間で、又は5μgのレベルで3D−MPLを含んでなる。
【0132】
他の実施形態では、リポ多糖類は、米国特許第6,005,099号及び欧州特許第0729473B1号に記載されたようにβ(1〜6)グルコサミン二糖類であり得る。当業者は、これらの参考文献の教示に基づいて3D−MPLのような種々のリポ多糖類を容易に製造することができる。それにもかかわらず、これら参考文献のそれぞれは、参照によって本明細書に組み入れられる。前述の免疫賦活剤(LPS又はMPL又は3D−MPLに似た構造の)に加えて、MPLの上記構造の一部であるアシル化された単糖類及び二糖類の誘導体も好適なアジュバントである。他の実施形態では、アジュバントは脂質Aの合成誘導体であり、その一部は、TLR−4作動薬として記載され、OM174(2−デオキシ−6−o−[2−デオキシ−2−[(R)−3−ドデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−4−o−ホスホノ−β−D−グルコピラノシル]−2−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]−β−D−グルコピラノシルジヒドロゲノホスフェート)、(WO95/14026);OM294DP(3S,9R)−3−[(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9(R)−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール、1,10−ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301及びWO00/0462);及びOM197MP−AcDP(3S−,9R)−3−(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−diol、1−ジヒドロゲノホスフェート10−(6−アミノヘキサノエート)(WO01/46127)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
使用することができるそのほかのTLR4リガンドは、たとえば、WO98/50399又は米国特許第6,303,347号で開示された(AGPの調製方法も開示されている)もののようなアルキルグルコサミニドホスフェート(AGPs)であり、好適には、RC527若しくはRC529、又は米国特許第6,764,840号で開示されたようなAGSの薬学上許容可能な塩である。一部のAGPはTLR4の作動薬であり、一部はTLR4の拮抗剤である。双方共アジュバントとして有用であると思われる。
【0134】
TLR−4を介したシグナル伝達反応(Sabroe et al, JI 2003 p1630−5)を起こすことが可能であるそのほかの好適なTLR−4リガンドは、たとえば、グラム陰性細菌に由来するリポ多糖類及びその誘導体又はその断片、特にLPSの非毒性誘導体(たとえば、3D−MPL)である。そのほかの好適なTLR作動薬は、熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75又は90;界面活性剤プロテインA、ヒアルロナンオリゴ糖、ヘパラン硫酸断片、フィブロネクチン断片、フィブリノーゲンペプチド及びb−デフェンシン−2、及びムラミルジペプチド(MDP)である。一実施形態では、TLR作動薬はHSP60,70又は90である。ほかの好適なTLR−4リガンドは、WO2003/011223及びWO2003/099195に記載されており、たとえば、WO2003/011223の4〜5ページ又はWO2003/099195の3〜4ページで開示された化合物I、化合物II及び化合物III、特にER803022、ER803058、ER803732、ER804053、ER804057、ER804058、ER804059、ER804442、ER804680及びER804764としてWO2003/011223で開示されたそれら化合物である。たとえば、好適なTLR−4リガンドの1つはER804057である。
【0135】
追加のTLR作動薬もアジュバントとして有用である。用語「TLR作動薬」は、直接的なリガンドとして又は内因性若しくは外因性のリガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナル伝達経路を介したシグナル伝達反応を起こすことが可能である剤を指す。そのような天然の又は合成のTLR作動薬は、代わりの又は追加のアジュバントとして使用することができる。アジュバント受容体としてのTLRの役割の手短な概説は、Kaisho及びAkira,Biochimica et Biophysica Acta 1589:1−13,2002に提供されている。これらの潜在的なアジュバントには、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8及びTLR9についての作動薬が挙げられるが、これらに限定されない。従って、一実施形態では、アジュバント及び免疫原性組成物はさらに、TLR−1作動薬、TLR−2作動薬、TLR−3作動薬、TLR−4作動薬、TLR−5作動薬、TLR−6作動薬、TLR−7作動薬、TLR−8作動薬、TLR−9作動薬又はこれらの組み合わせから成る群から選択されるアジュバントを含んでなる。
【0136】
本発明の一実施形態では、TLRを介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLRを介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、トリアシル化リポペプチド(LPs);フェノール可溶性モジュリン;結核菌LP;S−(2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2−RS)−プロピル)−N−パルミトイル−(R)−Cys−(S)−Ser−(S)−Lys(4)−OH、細菌性リポタンパク質のアシル化アミノ末端を模倣するトリヒドロクロリド(Pam3Cys)LP及びBorrelia burgdorferi由来のOspA LPから選択される。
【0137】
代替の実施形態では、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−2を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、M tuberculosis、B burgdorferi又はT pallidumに由来するリポタンパク質、ペプチドグリカン、細菌性リポペプチド;Staphylococcus aureusを含んでなる種に由来するペプチドグリカン;リポタイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリアポリン、細菌性フィムブリエ、エルシニア毒性因子、CMVビリオン、麻疹血液凝集素及び酵母由来のザイモサンの1以上である。
【0138】
代替の実施形態では、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−3を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、二本鎖RNA(dsRNA)又はポリイノシン−ポリシチジン酸(ポリIC)、ウイルス感染に関連する分子核酸パターンである。
【0139】
代替の実施形態では、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−5を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性フラジェリンである。
【0140】
代替の実施形態では、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−6を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、抗酸菌性リポタンパク質、脱アシル化LP、及びフェノール可溶性モジュリンである。追加のTLR6作動薬はWO2003/043572に記載されている。
【0141】
代替の実施形態では、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−7を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、N7位及びC8位におけるグアノシン類似体、又はイミダゾキノリン化合物若しくはその誘導体である。一実施形態では、TLR作動薬はイミキモドである。さらなるTLR7作動薬はWO2002/085905に記載されている。
【0142】
代替の実施形態では、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。好適には、TLR−8を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を持つイミダゾキノリン分子、たとえば、レシキモド(R848)であり;レシキモドもTLR−7による認識が可能である。使用することができるそのほかのTLR−8作動薬には、WO2004/071459に記載されたものが挙げられる。
【0143】
代替の実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬が使用される。一実施形態では、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、HSP90である。或いは、TLR−9を介してシグナル伝達反応を起こすことが可能であるTLR作動薬は、細菌性又はウイルス性のDNAであり、DNAは、特にCpGモチーフとして知られる配列の文脈にて非メチル化CpG分子を含有する。CpGを含有するオリゴヌクレオチドはTh1反応を優勢に誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、たとえば、WO96/02555、WO99/33488及び米国特許第6,008,200号及び同第5,856,462号に記載されている。好適には、CpGヌクレオチドはCpGオリゴヌクレオチドである。本発明の免疫原性組成物で使用するのに好適なオリゴヌクレオチドは、少なくとも3つ、好適には少なくとも6つ以上のヌクレオチドによって分離される2以上のジヌクレオチドCpGモチーフを任意で含有するCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフは、グアニンヌクレオチドが後に続くシトシンヌクレオチドである。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは通常、デオキシヌクレオチドである。特定に実施形態では、ホスホジエステル結合及びそのほかのヌクレオチド間結合は本発明の範囲内であるが、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド間はホスホロジチオエート結合又は好適にはホスホロチオエート結合である。また本発明の範囲内に含まれるのは混合されたヌクレオチド間結合を伴うオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを作製する方法は、米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号及びWO95/26204に記載されている。
【0144】
たとえば、それ自体に又は3D−MPLとの組み合わせでPreF抗原を伴う免疫原性組成物で使用することができるそのほかのアジュバントは、たとえば、QS21のようなサポニンである。
【0145】
サポニンは、Lacaille−Dubois,M及びWagner,H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363‐386)にて教示されている。サポニンは、植物界及び海洋動物界に広く分布するステロイド又はトリテルペングリコシドである。サポニンは、振盪すると泡立つコロイド状水溶液を形成し、コレステロールを沈殿させることについて言及される。サポニンは細胞膜の近傍にあると、膜を破裂させる膜における孔様の構造を創る。赤血球の溶血はこの現象の例であり、それは、サポニンすべてではないが、特定のサポニンの特性である。
【0146】
サポニンは、全身性投与用のワクチンでアジュバントとして知られる。個々のサポニンのアジュバント活性と溶血活性は当該技術で広範に研究されている(Lacaille−Dubois and Wagner、上記)。たとえば、クイルA(南米の樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)及びその分画は米国特許第5,057,540号及び“Saponins as vaccine adjuvants”、Kensil,C.R.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,1996,12(1−2):1−55;及びEP0362279B1に記載されている。クイルAの分画を含んでなる免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒子状の構造は、溶血性であり、ワクチンの製造に使用されている(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO 96/11711; WO 96/33739)。溶血性のサポニンQS21及びQS17(クイルAのHPLC精製した分画)は、強力な全身性アジュバントとして記載されており、その製造方法は、米国特許第5,057,540号及びEP0362279B1に記載されており、それらは参照によって本明細書に組み入れられる。全身性ワクチンの研究で使用されているそのほかのサポニンには、Gypsophila及びSaponaria(Bomford et al., Vaccine, 10(9):572‐577, 1992)のような植物種に由来するものが挙げられる。
【0147】
QS21は、Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来するHPLC精製した非毒性の分画である。QS21の製造方法は、米国特許第5,057,540に開示されている。QS21を含有する非反応源性のアジュバント製剤はWO96/33739に記載されている。前述の参考文献は参照によって本明細書に組み入れられる。QS21のような前記免疫学的に活性のあるサポニンは、免疫原性組成物のヒト用量当たり1〜50μgの量で使用することができる。有利なことに、QS21は、約25μgのレベルで、たとえば、20〜30μgの間で、好適には21〜29μgの間で、又は22〜28μgの間で、又は23〜27μgの間で、又は24〜26μgの間で、又は25μgで使用することができる。別の実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μgのレベルで、たとえば、5〜15μgの間で、好適には6〜14μgの間で、たとえば、7〜13μgの間で、又は8〜12μgの間で、又は9〜11μgの間で、又は10μgのレベルでQS21を含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μgのレベルで、たとえば、1〜9μgの間で、又は2〜8μgの間で、好適には3〜7μgの間で、又は5μgのレベルでQS21を含んでなる。QS21とコレステロールを含んでなるそのような製剤は、抗原と共に製剤化されると功を奏するTh1刺激性アジュバントであることが示されている。従って、たとえば、QS21とコレステロールの組み合わせを含んでなるアジュバントを伴った免疫原性組成物にてPreFポリペプチドを好都合に採用することができる。
【0148】
任意で、アジュバントはまた、たとえば、アルミニウム塩又はカルシウム塩、特に水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムのような鉱物塩を含んでなることができる。たとえば、アルミニウム塩(たとえば、水酸化アルミニウム又は「ミョウバン」)との組み合わせで3D−MPLを含有するアジュバントは、ヒト対象に投与するためのPreF抗原を含有する免疫原性組成物での製剤化に好適である。
【0149】
PreF抗原と共に製剤化するのに使用するために好適なTh1に偏ったアジュバントの別の部類には、OMPに基づく免疫賦活組成物が挙げられる。OMPに基づく免疫賦活組成物は、たとえば、鼻内投与用の粘膜アジュバントとして特に好適である。OMPに基づく免疫賦活組成物は、細菌性又はウイルス性の抗原のような免疫原のためのキャリアとして又は組成物にて有用である、たとえば、Neisseria種(たとえば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658,1988;Lowellら、Science 240:800,1988;Lynchら、Biophys.J.45:104,1984;Lowell,in “New Generation Vaccines”第2版、Marcel Dekker,Inc.,New York,Basil,Hong Kong,page 193,1997;米国特許第5,726,292号;同第4,707,543号を参照)のような、しかし、これらに限定されないグラム陰性細菌に由来する外膜タンパク質(一部のポリンを含んでなるOMP)の調製物に属する。一部のOMPに基づく免疫賦活組成物は、「プロテオソーム」と呼ぶことができ、それは疎水性であり、ヒトでの使用に安全である。プロテオソームは、約20nm〜約800nmの小胞又は小胞様のOMPクラスターに自己集合する能力を有し、タンパク質抗原(Ag)、特に親水性部分を有する抗原と非共有性に取り込み、配位し、会合し(たとえば、静電気的に又は疎水性に)、又はさもなければ共同する。複数の分子膜構造又は1以上のOMPの溶融球状OMP組成物を含んでなる小胞形態又は小胞様形態で外膜成分を生じる任意の調製方法は、プロテオソームの定義の範囲内に含まれる。たとえば、当該技術(たとえば、米国特許第5,726,292号又は同第5,985,284号)に記載されたようにプロテオソームを調製することができる。プロテオソームはまた、OMPポリンを製造するのに使用される細菌(たとえば、Neisseria種)を起源とする内因性のリポ多糖類又はリポオリゴ糖類(LPS又はLOS)を含有することができ、それらは一般にOMP調製物全体の2%未満である。
【0150】
プロテオソームはNeisseria menigitidisから化学的に抽出された外膜タンパク質(OMP)(ほとんど、クラス4のOMPと同様にポリンA及びB)から主として構成され、界面活性剤によって溶液で維持される(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193‐206)。プロテオソームは、たとえば、透析濾過又は従来の透析工程によって、本明細書で開示されるPreFポリペプチドを含んでなるウイルス供給源に由来する精製された又は組換えのタンパク質のような種々の抗原と共に製剤化することができる。界面活性剤を徐々に取り除くことによって約100〜200nmの直径の粒子状疎水性の複合体を形成することができる(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines. In: Levine MM, Woodrow GC, Kaper JB, Cobon GS, eds, New Generation Vaccines. New York: Marcel Dekker, Inc. 1997; 193‐206)。
【0151】
「プロテオソーム:LPS又はプロトリン」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1種のリポ多糖類による外因性添加によって混合されてOMP−LPS組成物(免疫原性組成物として機能することができる)を提供するプロテオソームの調製物を指す。従って、OMP−LPS組成物は、(1)たとえば、Neisseria menigitidisのようなグラム陰性細菌から調製されるプロテオソームの外膜タンパク質調製物(たとえば、プロジュバント)と(2)1以上のリポ糖類の調製物を含んでなる、プロトリンの2つの基本成分で構成することができる。リポオリゴ糖は、外因性であることができ(たとえば、OMPプロテオソーム調製物に天然に含有される)、外因性に調製されたリポオリゴ糖(たとえば、OMP調製物とは異なった培養物又は微生物から調製された)と混合することができ又は組み合わせることができ、又はそれらの組み合わせであることができる。そのような外因性に添加されるLPSは、OMP調製物が作製されたのと同じグラム陰性細菌に由来することができ、又は異なったグラム陰性細菌に由来することができる。プロトリンはまた、任意で脂質、糖脂質、糖タンパク質、小分子等を含んでなることが理解されるべきである。プロトリンは、たとえば、米国特許出願公開第2003/0044425号に記載されたように調製することができる。
【0152】
上述のもののような異なったアジュバントの組み合わせもPreF抗原との組み合わせで使用することができる。たとえば、すでに言及したように、QS21を3D−MPLと一緒に製剤化することができる。QS21:3D−MPLの比率は通常、たとえば、1:5〜5:1のような1:10〜10:1の桁であり、実質的に1:1であることが多い。通常、比率は、2.5:1〜1:3の3D−MPL:QS21の範囲である。別の組み合わせアジュバントの製剤には、3D−MPLと、たとえば、水酸化アルミニウムのようなアルミニウム塩が挙げられる。組み合わせで製剤化する場合、この組み合わせが抗原特異的なTh1免疫応答を高めることができる。
【0153】
一部の例では、アジュバント製剤、たとえば、カルシウム塩又はアルミニウム塩(ミョウバン)、たとえば、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムのような鉱物塩。ミョウバンが、たとえば、3D−MPLとの組み合わせで存在する場合、量は通常、用量当たり、100μg〜1mgの間、たとえば、約100μg、又は約200μg〜約750μg、たとえば、約500μgである。
【0154】
一部の実施形態では、アジュバントは、油と水のエマルション、たとえば、水中油型エマルションを含んでなる。水中油型エマルションの一例は、水性キャリア中に代謝可能な油、たとえば、スクアレン、トコフェロールのようなトコール、たとえば、α−トコフェロール、及びたとえば、トリオレイン酸ソルビタン(スパン85(商標))又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン80(商標))のような界面活性剤を含んでなる。特定の実施形態では、水中油型エマルションは、追加の免疫賦活剤を含有しない(特に3D−MPLのような非毒性脂質A誘導体又はQS21のようなサポニンを含有しない)。水性キャリアは、たとえば、リン酸緩衝生理食塩水であり得る。さらに、水中油型エマルションは、スパン85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含有することができる。
【0155】
本発明の別の実施形態では、抗原又は抗原組成物と水中油型エマルションを含んでなるアジュバント組成物と任意で1以上のさらなる免疫賦活剤を含んでなるワクチン組成物が提供され、前記水中油型エマルションは、0.5〜10mgの代謝可能な油(好適にはスクアレン)、0.5〜11mgのトコール(好適には、α−トコフェロールのようなトコフェロール)及び0.4〜4mgの乳化剤を含んでなる。
【0156】
特定の一実施形態では、アジュバント製剤は、水中油型エマルションのようなエマルション形態で調製された3D−MPLを含んでなる。場合によっては、エマルションはWO94/21292で開示されたように直径2μm未満の小さな粒度を有する。たとえば、3D−MPLの粒子は、22μmの膜を介して無菌濾過されるのに十分なくらい小さくてもよい(欧州特許第0689454号に記載されたように)。或いは、3D−MPLはリポソーム製剤に調製することができる。任意で、3D−MPL(又はその誘導体)を含有するアジュバントは、追加の免疫賦活成分も含んでなる。
【0157】
アジュバントは、免疫原性組成物が投与される集団にて安全で且つ有効であるように選択される。成人集団及び高齢者集団については、製剤は通常、幼児製剤で通常見られるアジュバント成分より多くを含んでなる。特にエマルションのような水中油型エマルションを用いた製剤は、たとえば、コレステロール、スクアレン、α−トコフェロール及び/又はたとえば、ツイーン80若しくはスパン85のような界面活性剤のような追加の成分を含んでなることができる。例となる製剤では、そのような成分は、以下の量:約1〜50mgのコレステロール、2〜10%のスクアレン、2〜10%のα−トコフェロール、0.3〜3%のツイーン80で存在することができる。通常、スクアレン:α−トコフェロールの比率は、これがさらに安定なエマルションを提供する場合、等しいか又は1未満である。場合によっては、製剤は安定剤も含有することができる。
【0158】
PreFポリペプチドを伴う免疫原性組成物を幼児に投与するために製剤化する場合、アジュバントの投与量は、幼児対象で有効であり、相対的に反応源性ではないように決定される。一般に、幼児製剤におけるアジュバントの投与量は、成人(たとえば、65歳以上の成人)への投与で設計される製剤で使用されるものより低い(たとえば、用量は、成人に投与される製剤で提供される用量の画分であってもよい)。たとえば、3D−MPLの量は通常、用量当たり1μg〜200μg、たとえば、10〜100μg又は10〜50μgである。幼児用量は通常、この範囲、たとえば、約1μg〜約50μgの低い方の端であり、たとえば、約2μg、又は約5μg、又は約10μg、又は約25μgまで又は約50μgまでである。通常、QS21が製剤で使用される場合、範囲は同程度である(及び上記比率に従って)。油と水のエマルション(たとえば、水中油型エマルション)の場合、小児又は幼児に提供されるアジュバントの用量は、成人対象に投与される用量の画分であり得る。種々の用量での例となる水中油アジュバントとの組み合わせでPreF抗原を含有する免疫原性組成物の有効性の実証は実施例9に提供される。
【0159】
免疫原性組成物は通常、免疫防御量(又はその画分用量)の抗原を含有し、従来の技法で調製することができる。ヒト対象への投与用のものを含んでなる免疫原性組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology,Vol.61,Vaccine Design−the subunit and adjuvant approach,edited by Powell and Newman,Plenurn Press,1995.New Trends and Developments in Vaccines, edited by Vollerら、University Park Press,Baltimore,Maryland,U.S.A.1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の抱合は、たとえば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる同第4,474,757号に開示されている。
【0160】
通常、免疫原性組成物の各用量におけるタンパク質の量は、典型的な対象にて重大な有害な副作用なしで免疫防御の応答を誘導する量として選択される。この文脈での免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するものではなく;症状又は疾患、特にウイルスに関連した重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原が採用されるかによって変化し得る。一般に、各ヒト用量は、1〜1000μgのタンパク質、たとえば、約1μg〜約100μg、たとえば、約1μg〜約50μg、たとえば、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、又は約50μgを含んでなることが予想される。免疫原性組成物で利用される量は、対象集団(たとえば、幼児又は高齢者)に基づいて選択される。特定の組成物の任意の量は、対象における抗体力価及びそのほかの応答の所見を含んでなる標準的な検討によって確定することができる。最初のワクチン接種に続いて、約4週間以内に対象は追加免疫を受けることができる。
【0161】
選択されるアジュバントにかかわりなく、最終製剤の濃度は、標的集団で安全且つ有効であるように算出されることに留意すべきである。たとえば、ヒトにおいて、たとえば、RSVに対して免疫応答を誘発するための免疫原性組成物は、好都合には幼児(最初の投与の年齢が、たとえば、出生〜1年の間、たとえば、0〜6ヵ月)に投与される。RSVに対して免疫応答を誘発するための免疫原性組成物はまた、高齢者のヒトにも好都合に投与される(たとえば、単独で、又はCOPDに関連する抗原若しくはそのほかの病原体との組み合わせで)。アジュバントの選択は、これらの異なった適用で異なることができ、各状況の最適なアジュバント及び濃度は当業者によって経験的に決定され得ることが十分に理解されるであろう。
【0162】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、RSVによる感染を軽減する又は防ぐワクチンである。一部の実施形態では、免疫原性組成物は、RSVによる感染に続く病理学的応答を軽減する又は防ぐワクチンである。任意で、PreF抗原を含有する免疫原性組成物は、RSV以外の病原性生物の少なくとも1つの追加の抗原と共に製剤化される。たとえば、病原性生物は、気道の病原体(たとえば、呼吸器感染の原因となるウイルス又は細菌)であることができる。特定の場合、免疫原性組成物は、たとえば、インフルエンザ又はパラインフルエンザのような気道感染を起こすウイルスのような、RSV以外の病原性ウイルスに由来する抗原を含有する。他の実施形態では、追加の抗原が選択されて、複数の感染性生物に対して対象を防御するのに必要とされる投与を円滑にする又は接種の回数を減らす。たとえば、抗原は、とりわけ、インフルエンザ、B型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、溶血性インフルエンザ、ポリオウイルス、球菌又は肺炎球菌の1以上に由来することができる。
【0163】
従って、RSVによる暴露又は感染(その後の治療的な又はそれに先立つ予防的な)を治療するための医薬の調製におけるPreF抗原又はそれをコードする核酸の使用も本開示の特徴である。同様に、対象においてRSVに対する免疫応答を誘発する方法は本開示の特徴である。そのような方法には、免疫的に有効な量の、PreF抗原を含んでなる組成物をヒト対象のような対象に投与することが含まれる。一般に、組成物はTh1に偏った免疫応答を誘発するアジュバントを含んでなる。組成物は、RSVとの接触に続くウイルス性疾患を促進することなく、RSVに特異的な免疫応答を誘発するように製剤化される。すなわち、組成物は、RSVによる感染を軽減する又は予防する、及び/又はRSVによる感染に続く病的応答を軽減する又は予防するTh1に偏った免疫応答を生じるように製剤化される。組成物は種々の異なった経路によって投与することができるが、最も一般的には免疫原性組成物は、筋肉内又は鼻内の経路によって送達される。
【0164】
免疫原性組成物は通常、免疫防御量(又はその画分用量)の抗原を含有し、従来の技法によって調製することができる。ヒト対象への投与用のものを含んでなる免疫原性組成物の調製は、一般に、Pharmaceutical Biotechnology,Vol.61,Vaccine Design−the subunit and adjuvant approach,edited by Powell and Newman,Plenurn Press,1995.New Trends and Developments in Vaccines, edited by Vollerら、University Park Press,Baltimore,Maryland,U.S.A.1978に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の抱合は、たとえば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる同第4,474,757号に開示されている。
【0165】
通常、免疫原性組成物の各用量におけるタンパク質の量は、典型的な対象にて重大な有害な副作用なしで免疫防御の応答を誘導する量として選択される。この文脈での免疫防御は、感染に対する完全な防御を必ずしも意味するものではなく;症状又は疾患、特にウイルスに関連した重篤な疾患に対する防御を意味する。抗原の量は、どの特定の免疫原が採用されるかによって変化し得る。一般に、各ヒト用量は、1〜1000μgのタンパク質、たとえば、約1μg〜約100μg、たとえば、約1μg〜約50μg、たとえば、約1μg、約2μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約25μg、約30μg、約40μg、又は約50μgを含んでなることが予想される。免疫原性組成物で利用される量は、対象集団(たとえば、幼児又は高齢者)に基づいて選択される。特定の組成物の任意の量は、対象における抗体力価及びそのほかの応答の所見を含んでなる標準的な検討によって確定することができる。最初のワクチン接種に続いて、約4〜12週間以内に対象は追加免疫を受けることができる。たとえば、PreF抗原を含有する免疫原性組成物を幼児対象に投与する場合、最初の接種とそれに続く接種は、この期間に投与されるワクチンと合うように投与することができる。
【0166】
以下の実施例を提供して特定の特別な特徴及び/又は実施形態を説明する。これらの実施例は、記載される特別な特徴又は実施例に本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0167】
実施例
実施例1:例となるPreF抗原
Fの前融合立体構造に対して生成される免疫応答が、膜の融合に関与する結合、立体構造シフト及び/又はそのほかの事象を妨げる抗体を優先的に含んでなり、それによって防御的応答の有効性を高めるという予測に基づいて、前融合立体構造でタンパク質を安定化するために天然のRSVのFタンパク質に比べて、PreF抗原を修飾した。
【0168】
図1AとBは、RAVのF0と例となるPreF組換え抗原の特徴を模式的に説明する。図1AはRSVのF0タンパク質の説明である。F0は574のアミノ酸から成るプレタンパク質である。F0プレタンパク質は翻訳に続いてタンパク分解処理され、グリコシル化される。その後シグナルペプチダーゼによって取り除かれるシグナルペプチドは小胞体(RE)へのF0プレタンパク質の翻訳を標的とする。REにおける初期のペプチドは複数の部位(三角によって示される)で次いでグリコシル化される。F0のフリン切断はF2ペプチドドメインとF1ペプチドドメインを生じ、それらは、F2−F1へテロ二量体の3量体(すなわち、F2−F1の3倍)として一緒に折り畳まれ、集合する。天然の状態では、Fタンパク質は、C末端領域の膜貫通螺旋によって膜に固定される。F0ポリペプチドのさらなる特徴には、15システイン残基、4の特徴的な中性エピトープ、2つのコイルドコイル領域、及び脂質化モチーフが挙げられる。図1Bは、例となるPreF抗原の特徴を説明する。PreF抗原を構築するには、Fタンパク質の前融合立体構造を安定化するようにF0ポリペプチドを修飾し、それによって、宿主細胞に結合及び融合する前にRSVウイルスによって示されるようなFタンパク質の優勢な免疫原性エピトープを保持する。以下の安定化する変異を、F0ポリペプチドに対するPreF抗原に導入した。第1に、安定化するコイルドコイルドメインをF0ポリペプチドの細胞外ドメインのC末端に置き、F0の膜に固定するドメインを置き換えた。第2に、pep27ペプチド(天然のタンパク質のF2とF1のドメインの間に位置する)を取り除いた。第3に、双方のフリンモチーフを除いた。代替の実施形態では(PreF_V1及びPreF_V2と命名した)、RSVタンパク質の免疫的に活性のある部分(たとえば、アミノ酸番号149〜229)をC末端ドメインに付加した。
【0169】
他の実施形態では、修飾を導入して、グリコシル化を変えた(高めた又は低下させた)、及び/又はフリン以外のプロテアーゼによる切断を減らした。
【0170】
実施例2:CHO細胞からのPreF組換えタンパク質の産生及び精製
PreF抗原を産生させるために、例となるPreF抗原をコードするポリヌクレオチド配列を宿主CHO細胞に導入した。導入されたポリヌクレオチド配列を含んでなる一時的に形質移入した宿主細胞又は増殖させた安定した集団を、所望の目的に許容できる規模で増殖に好適な条件下で培地にて増殖させた(たとえば、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique、第3版、Wiley− Liss,New York及びそれに引用された参考文献で一般に記載されているように)。通常、細胞は、37℃、5%COにて振盪フラスコにおいて又は20%に維持されたpOで29℃にて又は生物反応器において無血清培地で増殖させ、2〜3日間隔で継代した。
【0171】
組換えPreF抗原を回収するには、細胞培養物を遠心し、細胞培養上清をさらなる使用まで約−80℃にて保存する。さらなる解析のために、細胞培養上清の2リットルのアリコートを精製水で×2に希釈し、NaOHでpH9.5に合わせた。20mMのピペラジンpH9.5で平衡化したQセファロースFFイオン交換カラム(60cm、11.3cm)に14ml/分の速度で負荷した。出発緩衝液でカラムを洗浄した後、カラム容積の20倍の0〜0.5MのNaCl勾配で溶出を行った(分画サイズは10ml)。銀染色によるSDS−PAGEとウエスタンブロットで分画を解析した。次いでさらなる処理に先立って、実質的なPreFタンパク質を含有する分画をプールした。
【0172】
ペリコンXL PES Biomax 100 (MWCO:10,000Da)膜カセットを伴った、Millipore製の実験台規模のTFFシステムを用いて、10mMリン酸塩pH7.0への緩衝液交換に、Q工程のプールした溶離液(約130ml)を供した。得られた物質はpH7.0及び1.8mS/cmの伝導率を有した。10mMのPO(Na)緩衝液pH7.0で平衡化した10mlのヒドロキシアパタイトII型(HAII)ゲル(XK16、高さ=5cm)に5ml/分にて100mlのこの試料を負荷した。出発緩衝液でカラムを洗浄した後、カラム容積の20倍の10mM〜200mMのPO(Na)pH7.0の勾配で溶出を行った。銀染色とクマシーブルーによるSDS−PAGEで分画を再び解析し、陽性分画をプールした。
【0173】
アフィニティクロマトグラフィに続いて、プールした分画を濃縮し、Vivaspin20濃縮器、10,000DaのMWCOを用いて緩衝液をDPBS(pH約7.4)に交換した。最終生成物は約13mlだった。Lowryアッセイで評価したタンパク質濃度は195μg/mlだった。純度は95%を超えた。精製したPreF抗原の調製物をフィルターで滅菌し、使用まで−20℃で保存した。
【0174】
実施例3:CHO細胞で産生されたPreF組換えタンパク質の性状分析
CHO細胞で産生されたPreF組換えタンパク質を非対称場流動分画(AFF−MALS)で特徴づけ、RSVのF及びGのタンパク質成分を含んでなるキメラ抗原と比較した。AFF−MALSによって、最小限のマトリクス相互作用にて液体流中で分子サイズに従ってタンパク質種を分離すること及び正確な分子量決定のための多重角度光散乱によるさらなる解析が可能になる。図2Aは、精製したFG物質の65%を超える部分が、最終的なPBS緩衝液中で高分子量オリゴマー(1000〜100000kDa)として見い出される一方で3%が単量体形態で残ることを示す。
【0175】
図2Bは、精製したPreFタンパク質がPBS緩衝液中で73%の比率まで三量体に折り畳まれることを示す。物質の10%は、1000〜20000kDaのオリゴマーとして見い出される。これらの結果は、CHO細胞で発現された組換えPreFタンパク質が、天然の状態で予測されるように三量体として折り畳まれることを示す。
【0176】
リン酸緩衝液の溶液中でのタンパク質の可溶性の性質を確認し、FGタンパク質による生体内評価での比較用に集合体を生成する(以下の実施例7を参照)という二重の目的のために、精製したPreFタンパク質をグルタールアルデヒドで架橋した。グルタールアルデヒドの架橋は、タンパク質の四級構造の良好な評価を提供することで知られ、Biochemistry,36:10230−10239(1997);Eur.J.Biochem.,271:4284−4292(2004)に記載されている。
【0177】
1%、2%及び5%のグルタールアルデヒド架橋剤と共に4℃にて4時間、タンパク質をインキュベートし、NaBHの添加によって反応を阻止した。PBS緩衝液におけるカラム脱塩によって過剰のグルタールアルデヒドを取り除いた。得られたタンパク質を280nmでの吸収によって定量し、変性条件及び還元条件にてSDS−PAGEによって評価した。精製した組換えPreFの大半は、PBS溶液中で三量体として移動すると判定された。SDS−PAGEによって確認されたように、三量体タンパク質の大半を高分子量集合体に変換するには、インキュベート温度を23℃に上げることが必要とされた。
【0178】
実施例4:PreF抗原による試験管内の中和阻害
志願者から得たヒト血清をELISAによってRSVのA株に対する反応性についてスクリーニングし、各血清試料について確定された以前のRSV中和潜在力価に基づいた関連する希釈にて中和阻害(NI)アッセイに用いた。手短には、0.5%のFBA、2mMのグルタミン、50μg/mlのゲンタマイシン(すべてInvitrogen)を伴った50%の199−H培地が入ったDMEM中25μg/mlの濃度での阻害剤タンパク質(PreF又は米国特許第5,194,595で開示され、Rix(FG)と名付けられたキメラFGに本質的に対応する対照タンパク質)と血清を混合し、回転ホイール上で37℃にて1.5〜2時間インキュベートした。各血清試料についての阻害範囲を最適化するように滴定したASVを伴った丸底96穴プレートにて20μlの連続希釈した血清とタンパク質を混合した。pHを維持するような5%COのもとで33℃にて20分間、得られた混合物をインキュベートした。
【0179】
次いで、予めVero細胞を播いた平底96穴プレートに血清/阻害剤/ウイルスの混合物を入れ、160μlの培地を添加する前に33℃にて2時間インキュベートした。NI力価検出用の免疫蛍光アッセイまで、プレートをさらに5%COで33℃にて5〜6日間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%パラホルムアルデヒドで1時間固定した後、2%ミルク/PBSとブロック緩衝液でプレートをブロックした。すすぐことなく、各ウェルにヤギ抗RSV抗体(Biodesign Internation、1:400)を加え、室温(RT)にて2時間インキュベートした。試料をPBSで2回洗浄し、ブロッキング緩衝液中の抗ヤギIgG−FITC(Sigma、1:400)をウェルに加えた。プレートを再びRTにて2時間インキュベートし、読み取りの前に上記のように2回洗浄した。≧1の蛍光合胞体が検出された場合、ウェルを陽性とみなした。Spearman−Karber(SK)法を用いて50%組織培養感染用量(TCID50)の算出を行い、NIの比率は以下のように算出した:[(0μg/mlの阻害剤の中和力価−25μg/mlの阻害剤の中和力価)/0μg/mlの阻害剤の中和力価]×100。図3に示した例となる結果は、調べた16/21の供血者におけるNIでPreFがFGより優れることを示している。
【0180】
実施例5:PreF抗原は免疫原性である
PreF抗原の免疫原性を明らかにするために、PreF(6.5、3.1、0.63、0.13及び0.025μg/ml)とヒト用量の1/20での3D−MPL及びQS21を含有するTh1アジュバント(「AS01E」)、又はPreF(1、0.2及び0.04μg/ml)とヒト用量の1/10の3D−MPL及びミョウバンを含有するTh1アジュバント(「AS04C」)によって2週間間隔でIMにて2回マウスを免疫し、3週間後、血清を回収した。
【0181】
標準的な手順に従ってELISAによって抗原特異的なIgG抗体の力価をプールした血清試料にて測定した。手短には、精製し、不活化したRSVのA、RSVのB及び相同のPreFタンパク質で96穴プレートを被覆し、4℃にて一晩インキュベートした。200ng/mlの濃度で出発した精製マウスIgG(Sigma、ON)と共に、1:50の最初の濃度で出発してブロッキング緩衝液で血清試料を連続希釈し、室温で2時間インキュベートした。西洋ワサビのペルオキシダーゼ(HRP)を結合した抗マウスIgG(Sigma、ON)によって、結合した抗体を検出した。3,3A,5,5A−テトラメチルベンジジン(TMB,BD Opt EIATM,BD Biosciences,ON)をHRPの基質として用いた。50μlの1MのHSOを各ウェルに加えて反応を止めた。Molecular Devicesマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)によって450nmにて各ウェルについて吸収値を検出した。
【0182】
図4A及び4Bで詳説した代表的な結果は、PreF抗原による免疫に続いてRSVのA及びRSVのBに対して強い力価が引き出されることを示している。
【0183】
実施例6:PreFは中和抗体を引き出す
実施例5で上述したように免疫したマウスの血清試料にて中和抗体の存在と量を評価した。96穴プレート(20μl/ウェル)にてRSV培地での1:8の希釈から出発して、免疫動物のプールした血清を連続希釈した。対照のウェルは、RSV培地のみ又は1:50のヤギ抗RSV抗体(Biodesign international)を含有した。代表的なRSVのA株又はB株の500〜1000感染用量をウェルに加え、33℃、5%COにて20分間インキュベートし、その後、予め1×10個/mlのVero細胞を播いた96穴平底プレートに混合物を移した。細胞を33℃、5%COにて約2時間インキュベートし、栄養を再補充し、その後、同じ温度にて5〜6日間インキュベートした。上清を取り除き、プレートをPBSで洗浄し、付着細胞をPBS中1%のパラホルムアルデヒドで1時間固定し、次いでヤギ抗RSV一次抗体と検出用の抗ヤギIgG−FITCを用いて間接免疫蛍光(IFA)アッセイを行った。
【0184】
それぞれ図5A及び5Bに示す代表的な結果は、PreFで免疫した動物の血清では、RSV株に対する有意な中和抗体が検出されることを明らかにしている。
【0185】
実施例7:RSVの負荷に対してPreFは防御する
上述のように2週間間隔でIMにて2回マウスを免疫し、2回目の注射の3週間後、RSVのA株を負荷した。負荷後、肺に存在するウイルスを測定することによってRSVに対する防御を評価した。手短には、安楽死後、免疫した動物から肺を無菌的に取り出し、15mlの試験管にて10ml/肺の2倍容量を用いたRSV培地で洗浄した。次いで、肺を秤量し、自動Potterホモゲナイザー(Fisher, Nepean ON)によってRSV培地中でホモジネートし、2655×gにて4℃で2分間遠心した。予めVero細胞(ATCC#CCL−81)単層を播き、6日間インキュベートした96穴プレートにて連続希釈(1:10で出発して8回複製)することによって、上清に存在するウイルスを滴定した。pH7.2のPBS中の1%パラホルムアルデヒドによる固定後、抗RSV一次抗体とFITC標識抗ヤギIgG二次抗体による間接IFAによってRSVを検出した。
【0186】
図6A及び6Bに示す代表的な結果は、アジュバントの存在下で0.04μg以上の容量がRSVに対する強い防御を引き出すことを明らかにしている。
【0187】
実施例8:PreFは負荷に続いて肺での好酸球の動員を誘導しない
免疫及びその後の負荷に続いて悪化した疾患を誘発するPreF抗原の可能性を評価するために、(a)10μgのグルタールアルデヒド処理PreF、(b)10μgのPreF又は(c)アジュバントなしでの10μgのFGそれぞれによってマウスの群(5匹/群)を2回免疫した。追加免疫の3週間後、RSVのA株でマウスを負荷し、負荷の4日後、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。BAL中の全白血球浸潤をマウス当たりで数え、マクロファージ/単球、好中球、好酸球及びリンパ球の形態に基づく白血球百分率を算出した。
【0188】
各動物について、全細胞数に好酸球の白血球百分率を乗じた。示すのは、95%の信頼限界での各群当たりの幾何平均である。図7に示す代表的な結果は、PreFによる免疫と負荷に続いて好酸球は肺に動員されないことを示している。さらに、これらの結果は、故意にPreFを凝集させた形態(グルタールアルデヒド処理)又はFG抗原(天然に凝集した)に比べて、PreF抗原の可溶性の性質は好酸球を好まないことを示唆している。
【0189】
実施例9:水中油型エマルションアジュバントの希釈によって製剤化したPreF抗原の免疫原性
10.70mgスクアレンのヒト「完全」用量(AS03A)の1/10での例となる水中油アジュバントAS03A、11.88mgDL−α−トコフェロール、4.85mgポリソルベート80、1/2用量(AS03B)1/4用量(AS03C)と共に、又はアジュバントなしで製剤化した250ngのPreFをマウスに与えた。対照マウスにはAS03Aのみ又はPBSを与えた。0日目と14日目にマウスを免疫した。採血、脾細胞の回収及び負荷は39日目(投与2の25日後)に行った。負荷の4日後にRSVの滴定にために肺をホモジネートした。
【0190】
個々の血清試料にてELISAによって抗原特異的なIgG抗体の力価を測定した。手短には、精製し、不活化したRSVのA株で96穴プレートを被覆し、4℃にて一晩インキュベートした。200ng/mlの濃度で出発する精製マウスIgG(Sigma、ON)と共に、1:200で出発してブロッキング緩衝液で血清試料を連続希釈し、37℃で2時間インキュベートした。西洋ワサビのペルオキシダーゼ(HRP)を結合した抗マウスIgG(Sigma、ON)によって、結合した抗体を検出した。3,3A,5,5A−テトラメチルベンジジン(TMB,BD Opt EIATM,BD Biosciences,ON)をHRPの基質として用いた。50μlの1MのHSOを各ウェルに加えて反応を止めた。Molecular Devicesマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,USA)によって450nmにて各ウェルについて吸収値を検出した。結果を図8に示す。AS03A、AS03B又はAS03Cと組み合わせたPreFで免疫したマウスの血清では、約250,000ng/mlの抗RSVIgG濃度が認められたが、PreFのみで免疫したマウスの血清ではほんの少し(1828ng/ml)しか認められなかった。
【0191】
96穴プレート(20μg/ウェル)にて1:8の希釈から出発して、免疫動物のプールした血清をRSV培地で連続希釈した。対照のウェルは、RSV培地のみ又は1:50でのヤギ抗RSV抗体(Biodesign international)を含有した。RSVのロング株を加え、プレートを33℃にて20分間インキュベートし、1×10個/mlのVero細胞を予め播いた96穴平底プレートに混合物を移した。同じ温度にて5〜6日後、上清を取り除き、プレートをPBSで洗浄し、PBS中1%のパラホルムアルデヒドで1時間、付着細胞を固定し、その後、間接免疫蛍光法(IFA)を実施した。図9は、PreFとの組み合わせで投与したAS03の量にかかわりなく、RSV中和抗体の力価は同じままだった(〜11log2)が,AS03なしで免疫したマウスにおけるRSV中和抗体の力価は有意に低かった(〜6log2)ことを示す。
【0192】
安楽死後、免疫した動物から肺を無菌的に取り出し、15mlの試験管にて10ml/肺の2倍容量を用いたRSV培地で洗浄した。次いで、それらを秤量し、自動Potterホモゲナイザー(Fisher, Nepean ON)によってRSV培地中でホモジネートし、2655×gにて4℃で2分間遠心した。上清におけるウイルスの存在を滴定した。手短には、予めVero細胞(ATCC#CCL−81)単層を播き、5〜6日間インキュベートした96穴プレートにて、1:10で出発して8回複製で肺ホモジネートを連続希釈した。RSVは間接IFAによって検出した。図10は、AS03A、AS03B又はAS03Cと組み合わせたPreFで免疫したマウス間では防御に差異は認められなかったが、AS03の非存在下で免疫したマウスでは低い防御しか認められなかったことを示す結果を説明している。
【0193】
これらの結果は、RSVに対する免疫応答を誘発する組成物を作出するためにアジュバントの広い範囲の濃度にわたってPreF抗原を製剤化することができることを明らかにしている。
【化1】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
RSVのFタンパク質ポリペプチドのFドメイン及びFドメインを含んでなる可溶性Fタンパク質ポリペプチドを含んでなり、前記Fタンパク質ポリペプチドがグリコシル化を変化させる少なくとも1つの修飾を含んでなる、組換え呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原。
【請求項2】
前記Fタンパク質ポリペプチドが、
(i)ヘテロ三量体化ドメインを含んでなるアミノ酸配列の付加、
(ii)少なくとも1つのフリン切断部位の欠失、
(iii)少なくとも1つの非フリン切断部位の欠失、
(iv)pep27ドメインの1以上のアミノ酸の欠失、及び
(v)Fタンパク質の細胞外ドメインの疎水性ドメインにおける親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加
から選択される少なくとも1つの修飾を含んでなる、請求項1に記載の組換えRSV抗原。
【請求項3】
前記グリコシル化を変化させる修飾が、配列番号2の500位に対応するアミノ酸を含んでなる及び/又はそれに隣接する1以上のアミノ酸の置換を含んでなる、請求項1に記載の組換えRSV抗原。
【請求項4】
配列番号2の500〜502位に対応するアミノ酸が、NGS、NKS、NGT、NKTから選択される、請求項1又は3に記載の組換えRSV抗原。
【請求項5】
前記グリコシル化を変化させる修飾が、配列番号2の500位に対応するアミノ酸におけるグルタミン置換を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項6】
前記可溶性Fタンパク質ポリペプチドが、F2ドメインとF1ドメインの間に未変化の融合ペプチドを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項7】
前記少なくとも1つの修飾が、ヘテロ三量体化ドメインを含んでなるアミノ酸配列の付加を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項8】
前記ヘテロ三量体化ドメインが前記FドメインのC末端に位置する、請求項7に記載の組換えRSV抗原。
【請求項9】
介在性フリン切断部位を伴わないF2ドメインとF1ドメインを含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項10】
前記RSV抗原が多量体を形成する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項11】
前記RSV抗原が三量体を形成する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項12】
前記Fドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体ポリペプチド(F)のアミノ酸番号26〜105に対応するRSVのFタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項13】
前記Fドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体ポリペプチド(F)のアミノ酸番号137〜516に対応するRSVのFタンパク質ポリペプチドの少なくとも一部を含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項14】
前記Fドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体ポリペプチド(F)のアミノ酸番号26〜105に対応するRSVのFタンパク質ポリペプチドを含んでなり、及び/又は前記Fドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質ポリペプチド(F)のアミノ酸番号137〜516に対応するRSVのFタンパク質ポリペプチドを含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項15】
前記RSV抗原が、
(a)配列番号22を含んでなるポリペプチド、
(b)配列番号21によってコードされるポリペプチド又は配列番号21にストリンジェントな条件下で実質的に全長にわたってハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
(c)配列番号22と少なくとも95%の配列同一性を持つポリペプチド
からなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項16】
前記Fドメインが、前記RSVのFタンパク質ポリペプチドのアミノ酸番号1〜105を含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項17】
前記Fドメイン及び前記Fドメインが未変化の融合ペプチドを伴い、かつ、介在性pep27ドメインを伴わずに配置されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項18】
前記ヘテロ三量体化ドメインが、コイルドコイルドメインを含んでなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項19】
前記多量体化ドメインが、イソロイシンジッパーを含んでなる、請求項18に記載の組換えRSV抗原。
【請求項20】
前記イソロイシンジッパードメインが配列番号11のアミノ酸配列を含んでなる、請求項19に記載の組換えRSV抗原。
【請求項21】
前記RSV抗原が、前記Fタンパク質細胞外ドメインの疎水性ドメインにて親水性アミノ酸の少なくとも1つの置換又は付加を含んでなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項22】
前記疎水性ドメインが、前記Fタンパク質細胞外ドメインのHRBコイルドコイルドメインである、請求項21に記載の組換えRSV抗原。
【請求項23】
前記HRBコイルドコイルドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体(F)のアミノ酸番号512に対応する位置における中性の残基の荷電残基への置換を含んでなる、請求項22に記載の組換えRSV抗原。
【請求項24】
前記HRBコイルドコイルドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体(F)のアミノ酸番号512に対応する位置におけるロイシンのリジン又はグルタミンへの置換を含んでなる、請求項23に記載の組換えRSV抗原。
【請求項25】
前記疎水性ドメインが、前記Fタンパク質細胞外ドメインのHRAドメインである、請求項21に記載の組換えRSV抗原。
【請求項26】
前記HRAドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体(F)のアミノ酸番号105に対応する位置の次への荷電残基の付加を含んでなる、請求項25に記載の組換えRSV抗原。
【請求項27】
前記HRAドメインが、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体(F)のアミノ酸番号105に対応する位置の次へのリジンの付加を含んでなる、請求項26に記載の組換えRSV抗原。
【請求項28】
前記RSV抗原が、前記Fタンパク質細胞外ドメインのHRAドメインにおいて親水性アミノ酸の第1の置換又は付加を少なくとも含んでなり、かつ、前記Fタンパク質細胞外ドメインのHRBドメインにおいて親水性アミノ酸の第2の置換又は付加を少なくとも含んでなる、請求項21〜27のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項29】
前記RSV抗原が、天然に存在するFタンパク質前駆体(F)に存在するフリン切断部位を消失させる少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失又は置換を含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項30】
前記RSV抗原が、配列番号2の参照Fタンパク質前駆体(F)のアミノ酸番号105〜109に対応する位置で、アミノ酸番号133〜136に対応する位置で、又はアミノ酸番号105〜109とアミノ酸番号133〜136に対応する双方の位置においてフリン切断部位を消失させるアミノ酸の付加、欠失又は置換を含んでなる、請求項29に記載の組換えRSV抗原。
【請求項31】
前記Fポリペプチドドメインと前記Fポリペプチドドメインが、順に前記RSVのA型ロング株に対応する、請求項1〜30のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項32】
前記RSV抗原が、ポリペプチドの多量体を含んでなる、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項33】
前記RSV抗原が、ポリペプチドの三量体を含んでなる、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原と薬学上許容可能なキャリア又は賦形剤とを含んでなる、免疫原性組成物。
【請求項35】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項34に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
前記アジュバントが、3D−MPL、QS21、水中油型エマルション及びミョウバンのうち少なくとも1つを含んでなる、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
前記アジュバントが水中油型エマルションを含んでなる、請求項36に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
前記水中油型エマルションがトコールを含んでなる、請求項36又は37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記水中油型エマルションが、ヒトの1用量当たり5mg未満のスクアレンを含んでなる、請求項36〜38のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記アジュバントが、新生児への投与に好適である、請求項35〜39のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
前記免疫原性組成物が請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原を含んでなる場合に、前記免疫原性組成物は、RSVのGタンパク質ポリペプチドのアミノ酸149〜229位に対応するアミノ酸配列を含んでなるGタンパク質ポリペプチドをさらに含んでなる、請求項34〜40のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項42】
RSV以外の病原性生物の少なくとも1以上の追加の抗原をさらに含んでなる、請求項34〜41のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項43】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、組換え核酸。
【請求項44】
前記RSV抗原をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、選択される宿主細胞における発現のためにコドンが最適化されている、請求項43に記載の組換え核酸。
【請求項45】
前記核酸が、
(a)配列番号21を含んでなるポリヌクレオチド配列、
(b)配列番号22をコードするポリヌクレオチド配列、
(c)配列番号21にストリンジェントな条件下で実質的に全長にわたってハイブリダイズするポリヌクレオチド配列、
(d)配列番号21と少なくとも95%の配列同一性を持つポリヌクレオチド配列
から選択されるポリヌクレオチド配列を含んでなり、前記ポリヌクレオチド配列は、天然に存在するRSV株とは一致しない、請求項43又は44に記載の組換え核酸。
【請求項46】
請求項43〜45のいずれか一項に記載の組換え核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項47】
請求項43若しくは44に記載の核酸又は請求項46に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項48】
RSV感染を治療するための医薬の調製における、請求項1〜33のいずれか一項に記載のRSV抗原の使用。
【請求項49】
前記医薬が、RSV感染の予防的治療を目的として投与される、請求項48に記載のRSV抗原又は核酸の使用。
【請求項50】
呼吸器多核体ウイルス(RSV)に対して免疫応答を誘発させる方法であって、請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原を含んでなる組成物、又は請求項34〜42のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含んでなる、方法。
【請求項51】
前記RSV抗原を含んでなる組成物を投与することにより、RSVとの接触に続くウイルス性疾患を増強することなく、RSVに特異的な免疫応答を誘発させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記免疫応答が、RSVによる感染を軽減する若しくは予防する、及び/又はRSVによる感染に続く病的応答を軽減する若しくは予防する防御的免疫応答を含んでなる、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記対象がヒト対象である、請求項50〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
医薬に使用するための請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原、又は請求項34〜42のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項55】
RSV関連疾患の予防又は治療のための請求項1〜33のいずれか一項に記載の組換えRSV抗原、又は請求項34〜42のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項56】
変化したグリコシル化パターンを持つ組換えRSV抗原の製造方法であって、
(i)宿主細胞において請求項43〜45のいずれか一項に記載の核酸を発現させること、及び
(ii)それによって発現させた組換えRSV抗原を単離することを含んでなる、方法。
【請求項57】
RSV融合タンパク質ポリペプチドの発現を高める方法であって、宿主細胞においてアミノ酸の付加、欠失又は置換を生じさせる少なくとも1つの変異を含んでなるRSV融合タンパク質ポリペプチドをコードする核酸を発現させることを含んでなる方法(ここで、前記アミノ酸の付加、欠失又は置換は、天然に存在するRSV融合タンパク質に比べてコードされるRSV融合タンパク質ポリペプチドのグリコシル化部位を変化させ、前記グリコシル化部位を変化させることにより、アミノ酸の付加、欠失又は置換がないRSV融合タンパク質に比べて前記RSV融合タンパク質ポリペプチドの発現を高める)。
【請求項58】
前記RSV融合タンパク質ポリペプチドをコードする核酸が、前記コードされるRSV融合タンパク質ポリペプチド内でペプチダーゼ分解部位を消失させるアミノ酸の付加、欠失又は置換を生じさせる追加の変異をさらに含んでなる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記RSV融合タンパク質ポリペプチドが、前融合立体構造で安定化される組換え融合タンパク質ポリペプチドである、請求項57又は58に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1A】
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【図1B】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−530504(P2012−530504A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516746(P2012−516746)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059008
【国際公開番号】WO2010/149745
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】