組立式構造物
【課題】 別途多数の接合用部材を要することなく、かつ個々のユニットにおける形状保持性により、組立および解体が容易であるとともに、完成後の維持費用の低減化を実現することができる組立式構造物を提供する。
【解決手段】 本発明に係る組立式構造物は、独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体2aと、この袋体2aの少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部3および凹状部4とを備えた複数の単位ユニット1を、一の単位ユニット1の凸状部3を、隣接する他の単位ユニット1の凹状部4に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とする。
【解決手段】 本発明に係る組立式構造物は、独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体2aと、この袋体2aの少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部3および凹状部4とを備えた複数の単位ユニット1を、一の単位ユニット1の凸状部3を、隣接する他の単位ユニット1の凹状部4に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位ユニットを連結することにより組み立てられる組立式構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種イベント用の大規模仮設会場や野外の仮宿泊設備等として、複数の空気膜構造のユニットを連結することにより、自立性を有する外殻を形成する様々な組立式の構造物が開発されている。
この種の組立式の構造物によれば、柱梁構造を要することなく、内部に広い空間を確保することができるとともに、適宜解体して搬送することができるという利点がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、内部に空気を封入する袋状の三角形状の外殻パネルを半球状に並べ、上記外殻パネルの各辺同士を面ファスナで接合し、さらに複数の外殻パネルの角部が集まる箇所を、各々の外殻パネルの角部を構成するゴム等の弾性部材からなるパネル角部構成材と、これが嵌合する凹部が放射状に形成された角部継手部材とからなる角部間継手で相互に接合することにより、内部空間を有する外殻を形成したドーム状建物が開示されている。
【0004】
この組立式のドーム状建物においては、隣り合う外殻パネルの内部を連結チューブで相互に連通させるとともに、給気ポンプから排出される空気を、給気チューブを介して地面近くに配置される外殻パネルに導入することにより、外殻パネルの全体を膨らませて、外殻に自立性を与えている。
【特許文献1】特開平10−121785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のドーム状建物にあっては、空気膜構造のユニットとなる外殻パネル同士を、辺部に設けた両者の面ファスナに加えて、角部に設けた多数の角部継手部材によって接合しているために、外殻パネルの他に多数の角部継手部材が必要となる。このため、全体としての部品点数が増加するという問題点がある。
加えて、隣接する外殻パネルの内部を、連結チューブで互いに連通させているために、組立が完了するまでに、個々の外殻パネルの形状を保持することが難しく、このため上述した接合箇所が多いことと相まって、組み立ておよび解体作業に、多大の手間を要するという欠点がある。
【0006】
しかも、全ての外殻パネルを接合した後、外殻パネル内に空気を充填させる際に、給気ポンプからの空気注入のみでは、所定の構造物の形状にすることが難しく、よって別途クレーン等によって外殻パネルの上側から吊り上げながら加圧しなければならないという問題点もある。
また、完成後も、上記外殻パネル内に空気を送り続ける必要があるため、維持費用が嵩むという問題点がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、別途多数の接合用部材を要することなく、かつ個々のユニットにおける形状保持性により、組立および解体が容易であるとともに、完成後の維持費用の低減化を実現することができる組立式構造物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係る組立式構造物は、独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体と、この袋体の少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部および凹状部とを備えた複数の単位ユニットを、一の上記単位ユニットの上記凸状部を、隣接する他の上記単位ユニットの上記凹状部に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の単位ユニットが、互いの三角形を一致させた一対の可撓性を有する上記袋体を有してなり、かつ上記凹部が、上記袋体間に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記袋体が、直角二等辺三角形に形成され、かつ各辺に上記凸状部および凹状部が形成されるとともに、上記外殻が、3組の上記単位ユニットを互いの短辺の上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結することにより形成された複数の三角錐のユニットが、さらに互いの長辺同士を上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結されることにより形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記凸状部および上記凹状部のいずれか一方に、その表面から突出して上記凹状部による上記凸状部の拘束力を増加させる突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、隣接する単位ユニット同士を、互いの凹状部に凸状部を係合させるのみで連結することができるために、別途多数の接合用部材を用いる必要が無く、しかも個々の単位ユニット内に独立して空気を封入することができる。この結果、形状保持が容易であり、よって容易な組立作業によって、内部空間が制約を受けない柱梁材の不要な(フレームレス)構造物を得ることができ、かつ経済性にも優れる。さらに、単位ユニットは、独立して内部に空気を封入可能な袋体を有しているために、完成後に上記単位ユニット内に常時空気を送り続ける必要がなく、よってその維持費用の低減化も図ることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明においては、外殻を構成する単位ユニットが2層の可撓性を有する袋体を有しているために、断熱性および保温性に優れる。
しかも、上記凹状部を袋体間に形成しているので、一方の袋体に空気を充填して形状を保持させ、隣接する単体ユニットの凸状部を上記凹状部に係合させた後に、他方の袋体に空気を充填して上記凸状部を一対の袋体間で挟持することにより、極めて容易に両者を連結することが可能になる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、上記袋体として直角二等辺三角形のものを用い、かつ各辺に上記凸状部および凹状部を形成することにより、3組の単位ユニットを互いの短辺の凸状部および上記凹状部を係合させて連結すると、三角錐のユニットが形成される。そこで、得られた複数の三角錐ユニットを、互いの長辺同士を連結させることにより、同形の単位ユニットによって、様々な外殻形状の構造体を組み立てることができ、デザイン上の選択の自由度が増す。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、上記凸状部および凹状部のいずれか一方の表面に形成した突起部によって、簡単な連結操作によっても、高い耐引き抜き力を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図12は、本発明に係る組立式構造物の一実施形態およびその変形例を示すものであり、図1〜図5は、この組立式構造物を構成する単位ユニット1およびその連結手順を示すものである。
この単位ユニット1は、直角三角形状に形成された一対の袋体2a、2bと、これら袋体2a、2b間の各辺に突設された三角形の板状のフラップジョイント(凸状部)3と、このフラップジョイント3に隣接して形成されたポケットジョイント(凹状部)4とから構成されている。
【0017】
ここで、各々の袋体2a、2bは、アルミシートや硬質の合成樹脂等の可撓性を有し、かつ所望の強度を有する2枚の膜材が、互いの周縁が接合されることによって形成されたもので、図示されない逆止弁付き空気注入口から内部に圧縮空気を封入可能な構成となっている。なお、各膜材は、図1中に一点鎖線で示すように、各辺が凸曲線を描く三角形状に形成されており、内部に空気を封入した際に、袋体2a、2bとして平面視直角三角形状をなすように形成されている。
【0018】
そして、これら1対の袋体2a、2bは、互いの直角三角形を一致させて対向する膜材同士が接合されることにより、一体化されている。
また、フラップジョイント3は、両袋体2a、2bの接合部において、一方の角部と中央部との間に形成されており、ポケットジョイント4は、上記中央部と他方の角部との間において、両袋体2a、2bの膜材間に、両者が接合されない部分として上記フラップジョイント3が挿入可能な三角形状に形成されている。
【0019】
次に、上記単位ユニット1の連結手順を説明すると、先ず図3に示すように、一対の単位ユニット1における袋体2a内に圧縮空気を封入し、一方の単位ユニット1の短辺に形成されたフラップジョイント3を、隣接する他方の単位ユニット1の短辺に形成されたポケットジョイント4に望ませる。
次いで、図4に示すように、フラップジョイント3をポケットジョイント4に係合させた後に、さらに図5に示すように、他方の袋体2b内に圧縮空気を封入して膨らませる。
【0020】
これにより、一方の単位ユニット1のフラップジョイント3は、他方の単位ユニット1のポケットジョイント4内において袋体2b、2aにより挟持された状態で、抜け止めされる。
この際に、予めフラップジョイント3に、その表面から突出してポケットジョイント4によるフラップジョイント3の拘束力を増加させる突起部を形成することが好ましい。
【0021】
図7は、このような突起部の実施態様を示すもので、同図(a)は、フラップジョイント3の一部を2重膜構造とし、この2重膜構造内に圧縮空気を導入して突起部5を形成したものである。また、同図(b)は、同様にフラップジョイント3の一部を2重膜構造とするとともに、この2重膜構造内にエッジロープ等の突起物6を組み込むことにより、突起部7を形成したものである。さらに、同図(c)は、フラップジョイント3の表面に、多数のゴム等からなる突起部8を溶着して一体化したものである。
なお、このような突起部は、ポケットジョイント4の内面に形成してもよい。
【0022】
以上のようにして、図6(a)に示すように、3組の単体ユニット1を連結し、さらに図中矢印で示すよう、両側の単体ユニット1の一方のフラップジョイント3を他方のポケットジョイント4内に挿入することにより、同図(b)に示すような三角錐のユニット9を形成する。
次いで、得られた三角錐のユニット9を複数組準備し、互いの長辺同士をフラップジョイント3およびポケットジョイント4を係合させて連結することにより、図8〜図12に示すような、様々な形状の組立式構造物における外殻10、11、12、13、14が形成される。
【0023】
そして、上記外殻10、11、12、13、14の下端部を、一般的な仮設テントと同様に、地盤又は基礎にくさび等によってアンカーすることにより、上記組立式構造物の設置が完了する。
【0024】
また、これらを解体する際には、図5(c)〜(a)の順に、先ず一対の単体ユニット1の各袋体2a、2bのうち、少なくとも一方の袋体2b内の空気を抜いた後に、互いにフラップジョイント3をポケットジョイント4から引き抜くのみで、これら単体ユニット1が分離される。そして、この手順を単に繰り返すことにより、全ての単体ユニット1間の連結が解かれ、外殻10、11、12、13、14が解体される。
【0025】
上記構成からなる組立式構造物によれば、隣接する単位ユニット1同士を、互いのポケットジョイント4にフラップジョイント3を係合させるのみで連結することができるために、別途多数の接合用部材を用いる必要が無く、しかも個々の単位ユニット1内に独立して圧縮空気を封入することができるために、形状保持が容易であり、よって組立が容易である。
【0026】
また、単位ユニット1が2層の可撓性を有する袋体2a、2bを有しているために、x断熱性および保温性に優れる。また、ポケットジョイント4を袋体2a、2b間に形成しているので、一方の袋体2aに空気を充填して形状を保持させ、隣接する単体ユニット1のフラップジョイント3をポケットジョイント4に係合させた後に、他方の袋体2bに空気を充填してフラップジョイント3を一対の袋体2a、2b間で挟持しているので、極めて容易に両者を連結することができる。
【0027】
さらに、袋体2a、2bとして直角二等辺三角形のものを用い、3組の単位ユニット1を互いの短辺のフラップジョイント3およびポケットジョイント4を係合させて連結することにより、三角錐のユニット9を形成し、さらに得られた複数の三角錐ユニット9を、互いの長辺同士を連結させることにより、同形の単位ユニット1によって、図8〜図12に示すような様々な形状の外殻10、11、12、13、14を有する構造体を組み立てることができる。
【0028】
また、特にフラップジョイント3またはポケットジョイント4の表面に、図7に例示したような突起部5、7、8を形成すれば、簡単な連結操作によっても、高い耐引き抜き力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の組立式構造物の一実施形態に用いられる単体ユニットを示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】一対の単体ユニットの連結手順において両者の連結前の配置を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図4】上記連結手順において両者の凹凸状部を係合させた状態を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図5】上記連結手順において両者の他方の袋体を膨らませた状態を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図6】3組の単体ユニットから三角錐のユニットを組み立てる状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は組立後の概略形状を示す斜視図である。
【図7】凸状部に形成された突起部を示す縦断面図である。
【図8】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の一例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図9】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図10】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図11】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図12】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【符号の説明】
【0030】
1 単位ユニット
2 袋体
3 フラップジョイント(凸状部)
4 ポケットジョイント(凹状部)
5、7、8 突起部
10、11、12、13、14 組立式構造物の外殻
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位ユニットを連結することにより組み立てられる組立式構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種イベント用の大規模仮設会場や野外の仮宿泊設備等として、複数の空気膜構造のユニットを連結することにより、自立性を有する外殻を形成する様々な組立式の構造物が開発されている。
この種の組立式の構造物によれば、柱梁構造を要することなく、内部に広い空間を確保することができるとともに、適宜解体して搬送することができるという利点がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、内部に空気を封入する袋状の三角形状の外殻パネルを半球状に並べ、上記外殻パネルの各辺同士を面ファスナで接合し、さらに複数の外殻パネルの角部が集まる箇所を、各々の外殻パネルの角部を構成するゴム等の弾性部材からなるパネル角部構成材と、これが嵌合する凹部が放射状に形成された角部継手部材とからなる角部間継手で相互に接合することにより、内部空間を有する外殻を形成したドーム状建物が開示されている。
【0004】
この組立式のドーム状建物においては、隣り合う外殻パネルの内部を連結チューブで相互に連通させるとともに、給気ポンプから排出される空気を、給気チューブを介して地面近くに配置される外殻パネルに導入することにより、外殻パネルの全体を膨らませて、外殻に自立性を与えている。
【特許文献1】特開平10−121785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のドーム状建物にあっては、空気膜構造のユニットとなる外殻パネル同士を、辺部に設けた両者の面ファスナに加えて、角部に設けた多数の角部継手部材によって接合しているために、外殻パネルの他に多数の角部継手部材が必要となる。このため、全体としての部品点数が増加するという問題点がある。
加えて、隣接する外殻パネルの内部を、連結チューブで互いに連通させているために、組立が完了するまでに、個々の外殻パネルの形状を保持することが難しく、このため上述した接合箇所が多いことと相まって、組み立ておよび解体作業に、多大の手間を要するという欠点がある。
【0006】
しかも、全ての外殻パネルを接合した後、外殻パネル内に空気を充填させる際に、給気ポンプからの空気注入のみでは、所定の構造物の形状にすることが難しく、よって別途クレーン等によって外殻パネルの上側から吊り上げながら加圧しなければならないという問題点もある。
また、完成後も、上記外殻パネル内に空気を送り続ける必要があるため、維持費用が嵩むという問題点がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、別途多数の接合用部材を要することなく、かつ個々のユニットにおける形状保持性により、組立および解体が容易であるとともに、完成後の維持費用の低減化を実現することができる組立式構造物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係る組立式構造物は、独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体と、この袋体の少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部および凹状部とを備えた複数の単位ユニットを、一の上記単位ユニットの上記凸状部を、隣接する他の上記単位ユニットの上記凹状部に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の単位ユニットが、互いの三角形を一致させた一対の可撓性を有する上記袋体を有してなり、かつ上記凹部が、上記袋体間に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記袋体が、直角二等辺三角形に形成され、かつ各辺に上記凸状部および凹状部が形成されるとともに、上記外殻が、3組の上記単位ユニットを互いの短辺の上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結することにより形成された複数の三角錐のユニットが、さらに互いの長辺同士を上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結されることにより形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記凸状部および上記凹状部のいずれか一方に、その表面から突出して上記凹状部による上記凸状部の拘束力を増加させる突起部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、隣接する単位ユニット同士を、互いの凹状部に凸状部を係合させるのみで連結することができるために、別途多数の接合用部材を用いる必要が無く、しかも個々の単位ユニット内に独立して空気を封入することができる。この結果、形状保持が容易であり、よって容易な組立作業によって、内部空間が制約を受けない柱梁材の不要な(フレームレス)構造物を得ることができ、かつ経済性にも優れる。さらに、単位ユニットは、独立して内部に空気を封入可能な袋体を有しているために、完成後に上記単位ユニット内に常時空気を送り続ける必要がなく、よってその維持費用の低減化も図ることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明においては、外殻を構成する単位ユニットが2層の可撓性を有する袋体を有しているために、断熱性および保温性に優れる。
しかも、上記凹状部を袋体間に形成しているので、一方の袋体に空気を充填して形状を保持させ、隣接する単体ユニットの凸状部を上記凹状部に係合させた後に、他方の袋体に空気を充填して上記凸状部を一対の袋体間で挟持することにより、極めて容易に両者を連結することが可能になる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、上記袋体として直角二等辺三角形のものを用い、かつ各辺に上記凸状部および凹状部を形成することにより、3組の単位ユニットを互いの短辺の凸状部および上記凹状部を係合させて連結すると、三角錐のユニットが形成される。そこで、得られた複数の三角錐ユニットを、互いの長辺同士を連結させることにより、同形の単位ユニットによって、様々な外殻形状の構造体を組み立てることができ、デザイン上の選択の自由度が増す。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、上記凸状部および凹状部のいずれか一方の表面に形成した突起部によって、簡単な連結操作によっても、高い耐引き抜き力を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図12は、本発明に係る組立式構造物の一実施形態およびその変形例を示すものであり、図1〜図5は、この組立式構造物を構成する単位ユニット1およびその連結手順を示すものである。
この単位ユニット1は、直角三角形状に形成された一対の袋体2a、2bと、これら袋体2a、2b間の各辺に突設された三角形の板状のフラップジョイント(凸状部)3と、このフラップジョイント3に隣接して形成されたポケットジョイント(凹状部)4とから構成されている。
【0017】
ここで、各々の袋体2a、2bは、アルミシートや硬質の合成樹脂等の可撓性を有し、かつ所望の強度を有する2枚の膜材が、互いの周縁が接合されることによって形成されたもので、図示されない逆止弁付き空気注入口から内部に圧縮空気を封入可能な構成となっている。なお、各膜材は、図1中に一点鎖線で示すように、各辺が凸曲線を描く三角形状に形成されており、内部に空気を封入した際に、袋体2a、2bとして平面視直角三角形状をなすように形成されている。
【0018】
そして、これら1対の袋体2a、2bは、互いの直角三角形を一致させて対向する膜材同士が接合されることにより、一体化されている。
また、フラップジョイント3は、両袋体2a、2bの接合部において、一方の角部と中央部との間に形成されており、ポケットジョイント4は、上記中央部と他方の角部との間において、両袋体2a、2bの膜材間に、両者が接合されない部分として上記フラップジョイント3が挿入可能な三角形状に形成されている。
【0019】
次に、上記単位ユニット1の連結手順を説明すると、先ず図3に示すように、一対の単位ユニット1における袋体2a内に圧縮空気を封入し、一方の単位ユニット1の短辺に形成されたフラップジョイント3を、隣接する他方の単位ユニット1の短辺に形成されたポケットジョイント4に望ませる。
次いで、図4に示すように、フラップジョイント3をポケットジョイント4に係合させた後に、さらに図5に示すように、他方の袋体2b内に圧縮空気を封入して膨らませる。
【0020】
これにより、一方の単位ユニット1のフラップジョイント3は、他方の単位ユニット1のポケットジョイント4内において袋体2b、2aにより挟持された状態で、抜け止めされる。
この際に、予めフラップジョイント3に、その表面から突出してポケットジョイント4によるフラップジョイント3の拘束力を増加させる突起部を形成することが好ましい。
【0021】
図7は、このような突起部の実施態様を示すもので、同図(a)は、フラップジョイント3の一部を2重膜構造とし、この2重膜構造内に圧縮空気を導入して突起部5を形成したものである。また、同図(b)は、同様にフラップジョイント3の一部を2重膜構造とするとともに、この2重膜構造内にエッジロープ等の突起物6を組み込むことにより、突起部7を形成したものである。さらに、同図(c)は、フラップジョイント3の表面に、多数のゴム等からなる突起部8を溶着して一体化したものである。
なお、このような突起部は、ポケットジョイント4の内面に形成してもよい。
【0022】
以上のようにして、図6(a)に示すように、3組の単体ユニット1を連結し、さらに図中矢印で示すよう、両側の単体ユニット1の一方のフラップジョイント3を他方のポケットジョイント4内に挿入することにより、同図(b)に示すような三角錐のユニット9を形成する。
次いで、得られた三角錐のユニット9を複数組準備し、互いの長辺同士をフラップジョイント3およびポケットジョイント4を係合させて連結することにより、図8〜図12に示すような、様々な形状の組立式構造物における外殻10、11、12、13、14が形成される。
【0023】
そして、上記外殻10、11、12、13、14の下端部を、一般的な仮設テントと同様に、地盤又は基礎にくさび等によってアンカーすることにより、上記組立式構造物の設置が完了する。
【0024】
また、これらを解体する際には、図5(c)〜(a)の順に、先ず一対の単体ユニット1の各袋体2a、2bのうち、少なくとも一方の袋体2b内の空気を抜いた後に、互いにフラップジョイント3をポケットジョイント4から引き抜くのみで、これら単体ユニット1が分離される。そして、この手順を単に繰り返すことにより、全ての単体ユニット1間の連結が解かれ、外殻10、11、12、13、14が解体される。
【0025】
上記構成からなる組立式構造物によれば、隣接する単位ユニット1同士を、互いのポケットジョイント4にフラップジョイント3を係合させるのみで連結することができるために、別途多数の接合用部材を用いる必要が無く、しかも個々の単位ユニット1内に独立して圧縮空気を封入することができるために、形状保持が容易であり、よって組立が容易である。
【0026】
また、単位ユニット1が2層の可撓性を有する袋体2a、2bを有しているために、x断熱性および保温性に優れる。また、ポケットジョイント4を袋体2a、2b間に形成しているので、一方の袋体2aに空気を充填して形状を保持させ、隣接する単体ユニット1のフラップジョイント3をポケットジョイント4に係合させた後に、他方の袋体2bに空気を充填してフラップジョイント3を一対の袋体2a、2b間で挟持しているので、極めて容易に両者を連結することができる。
【0027】
さらに、袋体2a、2bとして直角二等辺三角形のものを用い、3組の単位ユニット1を互いの短辺のフラップジョイント3およびポケットジョイント4を係合させて連結することにより、三角錐のユニット9を形成し、さらに得られた複数の三角錐ユニット9を、互いの長辺同士を連結させることにより、同形の単位ユニット1によって、図8〜図12に示すような様々な形状の外殻10、11、12、13、14を有する構造体を組み立てることができる。
【0028】
また、特にフラップジョイント3またはポケットジョイント4の表面に、図7に例示したような突起部5、7、8を形成すれば、簡単な連結操作によっても、高い耐引き抜き力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の組立式構造物の一実施形態に用いられる単体ユニットを示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】一対の単体ユニットの連結手順において両者の連結前の配置を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図4】上記連結手順において両者の凹凸状部を係合させた状態を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図5】上記連結手順において両者の他方の袋体を膨らませた状態を示す図で、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図6】3組の単体ユニットから三角錐のユニットを組み立てる状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は組立後の概略形状を示す斜視図である。
【図7】凸状部に形成された突起部を示す縦断面図である。
【図8】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の一例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図9】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図10】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図11】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【図12】三角錐ユニットの組み合わせによって形成された構造物の外殻の他の例を示す図で、(a)は斜視図、(b)は三角錐ユニット単位の展開図である。
【符号の説明】
【0030】
1 単位ユニット
2 袋体
3 フラップジョイント(凸状部)
4 ポケットジョイント(凹状部)
5、7、8 突起部
10、11、12、13、14 組立式構造物の外殻
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体と、この袋体の少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部および凹状部とを備えた複数の単位ユニットを、一の上記単位ユニットの上記凸状部を、隣接する他の上記単位ユニットの上記凹状部に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とする組立式構造物。
【請求項2】
上記単位ユニットは、互いの三角形を一致させた一対の可撓性を有する上記袋体を有してなり、かつ上記凹部は、上記袋体間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組立式構造物。
【請求項3】
上記袋体は、直角二等辺三角形に形成され、かつ各辺に上記凸状部および凹状部が形成されるとともに、上記外殻は、3組の上記単位ユニットを互いの短辺の上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結することにより形成された複数の三角錐のユニットが、さらに互いの長辺同士を上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結されることにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の組立式構造物。
【請求項4】
上記凸状部および上記凹状部のいずれか一方には、その表面から突出して上記凹状部による上記凸状部の拘束力を増加させる突起部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の組立式構造物。
【請求項1】
独立して内部に空気を封入可能な三角形の袋体と、この袋体の少なくとも2辺にそれぞれ形成された凸状部および凹状部とを備えた複数の単位ユニットを、一の上記単位ユニットの上記凸状部を、隣接する他の上記単位ユニットの上記凹状部に係合させて互いに連結することにより、自立性を有する外殻を形成してなることを特徴とする組立式構造物。
【請求項2】
上記単位ユニットは、互いの三角形を一致させた一対の可撓性を有する上記袋体を有してなり、かつ上記凹部は、上記袋体間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組立式構造物。
【請求項3】
上記袋体は、直角二等辺三角形に形成され、かつ各辺に上記凸状部および凹状部が形成されるとともに、上記外殻は、3組の上記単位ユニットを互いの短辺の上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結することにより形成された複数の三角錐のユニットが、さらに互いの長辺同士を上記凸状部および上記凹状部を係合させて連結されることにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の組立式構造物。
【請求項4】
上記凸状部および上記凹状部のいずれか一方には、その表面から突出して上記凹状部による上記凸状部の拘束力を増加させる突起部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の組立式構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−89981(P2006−89981A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275182(P2004−275182)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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