説明

組立式育苗庫

【課題】植物育成のために必要な空間を植物育成のための環境を維持することができ、低コストかつ組立及び分解が容易な育苗庫を提供する。
【解決手段】光源2を具備する天板10と、育苗床を載置する床板11と、天板と床板の間の空間を外部と区画する複数の側板12,13,14と、側板同士、側板と天板及び側板と床板を連結する枠材30と、隣接する枠材と天板又は床板のコーナー部とを連結するコーナー材40とを具備する。枠材は、断面中心に位置する中空部31と、中空部の周囲に位置する複数の外殻部32と、中空部と各外殻部とを連結する板状の支持部33とからなり、各外殻部間には、側板、天板及び床板が着脱可能に嵌挿される空隙34が設けられる。コーナー材は、枠材の中空部に着脱可能に嵌挿される連結脚部42と、側板、天板又は床板が着脱可能に嵌挿される溝部43とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば植物を発芽、育成するために使用される組立式育苗庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動,地球の光合成能力の限界等の環境問題への対応の気運が高まっており、それに伴って植物の育成を屋外の自然環境によらず、管理された温度、湿度の下で人工光源を用いて行う方法が一部で行われている。
【0003】
この方法による育成対象となる植物には、現在食用に供されている作物だけでなく、品種改良の実験種や希少かつ付加価値の高い薬用・観賞用植物も含まれる。また、この方法による植物育成の目的には、対象となる植物の増産のみならず、その植物の生態研究をも含んでいる。
【0004】
この方法を実現するためには、各植物の育成に適した波長でかつ十分な強度の光を提供可能な光源と、温度及び湿度を管理するための断熱、密閉された空間が必要になる。
【0005】
そこで、従来では、上記条件を満たすために、断熱材を用いた天井,壁及び床を形成した閉鎖型栽培室内で温度,湿度を管理して人工照明により、植物を育成する育苗庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−296297号公報(段落[0008],[0011]、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、既存の密閉空間に断熱材を覆う構造であるため、植物の育成空間の大きさや形状は、その既存の空間に依存することになり、自由度が利かないという問題がある。これは、希少かつ付加価値の高い薬用・観賞用植物の育成や品種改良のように実小規模の育成空間を形成して、植物と光の反応に関する研究を、机上等の限られた小スペースの下で行うには不向きである。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、植物育成のために必要な空間を植物育成のための環境を維持することができ、低コストかつ組立及び分解が容易な育苗庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の組立式育苗庫は、植物を発芽,育成するための育苗庫であって、 光源を具備する天板と、育苗床を載置する床板と、上記天板と床板の間の空間を外部と区画する複数の側板と、上記側板同士、側板と上記天板及び側板と上記床板を連結する枠材と、隣接する上記枠材と天板又は床板のコーナー部とを連結するコーナー材とを具備してなり、 上記枠材は、該枠材の断面中心に位置する中空部と、該中空部の周囲に位置する複数の外殻部と、上記中空部と各外殻部とをそれぞれ連結する板状の支持部とからなり、上記各外殻部間には、上記側板、天板及び床板が着脱可能に嵌挿される空隙が設けられ、 上記コーナー材は、上記枠材の中空部に着脱可能に嵌挿される連結脚部と、上記側板、天板又は床板が着脱可能に嵌挿される溝部とを具備してなる、ことを特徴とする(請求項1)。この場合、上記開口部を構成する庫体側の枠材にヒンジを介して開閉可能に取り付けられる扉体を具備する方が好ましい(請求項2)。また、上記天板を透明性の面材にて形成し、該面材の上部に光源を配置する構造としてもよく(請求項3)、あるいは、上記天板を下面に光源を一体に有する面材にて形成してもよい(請求項4)。また、上記光源を発光ダイオードの集合群にて形成する方が好ましい(請求項5)。
【0009】
このように構成することにより、枠材の空隙内に側板,床板又は天板を嵌挿して、側板,床板及び天板を分解可能に連結し、コーナー材を用いて隣接する枠材と天板又は床板のコーナー部とを分解可能に連結することができる。また、枠材は、板状の支持部によって中空部と各外殻部とが連結されているので、その寸法と比較して断面積を非常に小さくすることができる。枠材を例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成した場合においても、枠材における庫内と庫外との熱伝導を抑制することができる。
【0010】
また、この発明において、上記枠材における庫外側の空隙内に嵌合する嵌合部を有する断熱材を、枠材の庫外側全長に渡って被着する方が好ましい(請求項6)。
【0011】
このように構成することにより、枠材を例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成した場合においても、枠材における庫内と庫外との熱伝導を抑制することができる。
【0012】
また、この発明において、上記枠材の空隙を並設し、空隙内に嵌挿される複数の側板間に断熱空間を形成する方が好ましい(請求項7)。
【0013】
このように構成することにより、側板部に断熱性をもたせることができる。
【0014】
また、この発明において、上記コーナー材の庫外側表面に断熱カバーを被着するようにしてもよい(請求項8)。
【0015】
このように構成することにより、コーナー材における庫内と庫外との熱伝導を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0017】
(1)請求項1〜5記載の発明によれば、枠材の空隙内に天板,床板及び側板を嵌挿して、天板,床板及び側板を分解可能に連結し、コーナー材を用いて隣接する枠材と天板又は床板のコーナー部とを分解可能に連結することができる。したがって、側板の大きさや形状を適宜変更することで、庫体自体の大きさや形状を変更することができ、植物の育成空間の大きさや形状に自由度をもたせることができ、目的に応じた植物の育成を効率よく行うことができる。また、組立だけでなく分解も容易にできるので、運搬や不使用時の保管を容易にすることができる。
【0018】
また、枠材を板状の支持部によって中空部と各外殻部とが連結された構造とすることで、その寸法と比較して断面積を非常に小さくすることができるので、枠材を例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成した場合においても、枠材における庫内と庫外との熱伝導を抑制することができる。したがって、庫外の温度の影響を少なくして植物育成の環境を維持することができ、植物の育成を効率よく行うことができる。
【0019】
また、光源を発光ダイオードの集合群とすることで、植物の種類や育成に対応させて光の波長制御や光のパルス制御を行うことができる。しかも、発光ダイオードは発熱しないので、植物に近接照射しても加熱による悪影響がないので、小規模かつ閉鎖された空間における、植物の発芽・育成に好適である(請求項5)。
【0020】
(2)請求項6記載の発明によれば、枠材を例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成した場合においても、枠材における庫内と庫外との熱伝導を抑制することができるので、上記(1)に加えて、更に断熱性の向上を図ることができる。
【0021】
(3)請求項7記載の発明によれば、側板部に断熱性をもたせることができるので、上記(1),(2)に加えて、更に断熱性の向上を図ることができる。
【0022】
(4)請求項8記載の発明によれば、コーナー材における庫内と庫外との熱伝導を更に抑制することができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に断熱性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、この発明に係る組立式育苗庫の第1実施形態の一部を断面で示す斜視図、図2は、上記組立式育苗庫の縦断面図、図3は、組立式育苗庫のコーナー部の拡大断面図である。
【0025】
この発明に係る組立式育苗庫は、植物及びその種子を配置した育苗床(図示せず)を収容する庫体1と、この庫体1内に向かって光を照射する光源2とで主に構成されている。
【0026】
上記庫体1は、光源2を具備する天板10と、育苗床を載置する床板11と、天板10と床板11の間の空間を一部に開口部5を残して外部と区画する複数(ここでは3枚)の側板12,13,14と、側板12,13,14同士、側板12,13,14と天板10及び側板12,13,14と床板11を連結する枠材30と、開口部5を構成する庫体側の枠材30にヒンジ6を介して開閉可能に取り付けられる扉体15と、隣接する枠材30と天板10又は床板11のコーナー部とを連結するコーナー材40とを具備する。
【0027】
この場合、庫体1の左右に位置する側板12,13は、透明な部材例えばアクリル樹脂製の面材16によって形成されている。また、庫体1の背面すなわち開口部5と対向する位置の側板14は、例えば硬質ウレタン樹脂製の面材16Aにて形成されている。また、床板11は、側板14と同様に、例えば硬質ウレタン樹脂製の面材16Bにて形成されている。なお、天板10は、後述する光源2と一体に形成されている。
【0028】
上記枠材30は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成されており、図2及び図4に示すように、枠材30の断面中心に位置する略矩形状の中空部31と、中空部31の周囲に位置する複数(4個)の略アングル状の外殻部32と、中空部31と各外殻部32とをそれぞれ連結する板状の支持部33とからなり、各外殻部32間には、側板12,13,14、天板10及び床板11が着脱可能に嵌挿される空隙34が設けられている。この場合、板状の支持部33は中空部31の角部と外殻部32の角部とを連結している。また、外殻部32の両端部には枠材30の内方側に向かって直交状に折曲される折曲片35が設けられている。なお、庫体1の底部に配置される床板11を嵌挿する4本の枠材30の空隙34のコーナー側に、例えば合成樹脂製あるいは合成ゴム製の載置パッド1aを嵌装するようにしてもよい(図2,図6参照)。
【0029】
上記コーナー材40は、例えばアルミニウム合金製の鋳物にて形成されており、図5に示すように、略立方形状の基部41と、この基部41の隣接する3面の中心部に突設され、それぞれ上記枠材30の中空部31内に嵌挿可能な円柱状の連結脚部42と、この連結脚部42を突設する基部41の隣接する3面に設けられ、側板12,13,14、天板10又は床板11が着脱可能に嵌挿される溝部43とを具備している。なお、枠材30の中空部31内に嵌挿される連結脚部42は止めねじ44によって中空部31に固定される(図3参照)。
【0030】
上記扉体15は、図1及び図6に示すように、庫体側の枠材30と同様の断面形状の4本の扉体用枠材30Aと、扉体用枠材30Aの空隙34に嵌挿される扉板17とで主に構成されている。この場合、扉板17は、透明な部材例えばアクリル樹脂製の面材16Cによって形成されている。このように構成される扉体15は、一側の上下端部にヒンジ6を介して庫体1の開口部5の一側部に開閉可能に装着される。この場合、ヒンジ6は、扉体15の上端部の扉体用枠材30Aに設けられた空隙34と、庫体1の開口部5の上端部の枠材30に設けられた空隙34に螺合される固定ねじ7によって庫体1と扉体15に取り付けられる。なお、扉体15の自由端側の扉体用枠材30Aと、庫体1の開口部5を構成する枠材30との対向部位のいずれか一方例えば枠材30に、マグネット8aが固着され、他方例えば扉体用枠材30Aには磁性板8bが固着されている。これらマグネット8aと磁性板8bを取り付けるには、例えば枠材30及び扉体用枠材30Aに設けられた空隙34の一部を切り欠き、その切欠部内に埋設するようにして取り付けることができる。なお、扉体15の自由端側の扉体用枠材30Aの表面中間部には、取手9が装着されている。
【0031】
また、扉体15の裏面側すなわち庫体側の扉体用枠材30Aに設けられた空隙34には、空隙34の全長に渡ってシール用のパッキン50(以下にシールパッキン50という)が嵌装されている。また、庫体1の開口部5を構成する庫体側の枠材30の空隙34にも、空隙34の全長に渡ってシールパッキン50が嵌装されており、扉体15の閉塞時にシールパッキン50同士が密接可能に形成されている。この場合、シールパッキン50は、例えば合成ゴム製部材にて形成されており、枠材30及び扉用枠材30の空隙34内に嵌入される嵌合部51と、この嵌合部51の基端側に膨隆する扁平中空状のシール部52とを具備している。
【0032】
上記のように構成することにより、扉体15の閉塞時にシールパッキン50のシール部52同士が密接して、庫内と庫外とを気水密に遮断することができる。なお、必要があれば、コーナー材40にもシールパッキンを設ければよい。この場合、扉体15のコーナー材40又は庫体1の開口部5を構成するコーナー材40のいずれか一方にシールパッキンを接着等によって固着することができる。
【0033】
また、上記光源2は、図7に示すように、青色光,緑色光,赤色光又は赤外光を発する発光素子{発光ダイオード(LED)}20の複数を混在配列した集合群21からなるLED照明器にて形成されている。この場合、光源すなわちLED照明器2は、図7に示すように、例えば光の三原色である青色光,緑色光及び赤色光のLED20を混在配列した複数(図面では9個の場合を示す)のLED集合群21をアルミニウム製あるいはアクリル樹脂製の板部材22に装着したLEDパネル23と、このLEDパネル23の表面側を覆う例えば抗菌処理が施されたアクリル樹脂製の透明カバー24とで構成されている。なお、透明カバー24は、全周に外向きフランジ25を有しており、外向きフランジ25に設けられた貫通孔26aとLEDパネル23に設けられた貫通孔26bを貫通する固定ビス27を、筒状のスペーサ28を介して天板10の下面にねじ結合することで、天板10にLED照明器2を組み付けることができる。なお、この場合、透明カバー24の例えば内面に凹凸部(図示せず)を設けることによって、光を乱反射させ、光を均一に照射することができる。なお、凹凸部を透明カバー24の表面に設けてもよい。
【0034】
上記のように構成されるLED照明器2によれば、光の三原色である青色光,緑色光及び赤色光のLED20により太陽光と疑似の白色光が得られると共に、光合成により植物の育成が図れる。このうち、光合成に対しては640〜690nmの赤色光の効果が最も大きく、葉の正常な形態形成すなわち種子発芽,花芽分化,開花,子葉の展開,葉緑素合成,節間伸長等には420〜470nmの青色光が必要とされる。なお、緑色光の波長は501〜600nmである。実際には、植物種によって青色光,緑色光及び赤色光の比率を適宜調節する必要があり、また、庫内の温度や湿度を調整する必要がある。なお、LED照明器2に赤外線LEDを用いることで、植物の発芽をより促進する効果が得られる。また、LEDは上記青色光,緑色光,赤色光,赤外光に限定されず、植物の育成実験等、組立式育苗庫の使用目的に応じて、例えば紫外線を発するもの等を適宜変更して用いてもよい。
【0035】
なお、LED集合群21の各色のLED20の光量及び波長を制御するには、例えば、庫体1内に光センサ3を配設し、この光センサ3によって検出された情報を育苗庫の外部に設けた制御手段であるコントローラ4に伝達し、コントローラ4において、上記検出情報と予め記憶された情報とを比較演算し、コントローラ4からの制御信号に基づいてLED集合群21の各色のLED20に伝達して光量及び波長を制御することができる。例えば、外部から閉鎖された庫内空間の中で、人工的に1日を再現する必要がある。そのため、光を継続して照射するよりは、例えばLEDの発光パルスを100〜1000回/secで発光することによって、植物の成長を促進させることができる。
【0036】
LED照明器2を組み付けた天板10は、固定金具60によって庫体1の上端部に位置する枠材30に連結される。この場合、固定金具60は略クランク状に形成されており、天板10の対向する2辺の両側にねじ61によって一端が固定され、他端部が庫体1の上端部に位置する枠材30に設けられた空隙34に取付ねじ62を螺合することで、LED照明器2を組み付けた天板10が枠材30に連結される。なお、この場合、天板10を対向する枠材30の空隙34内に嵌挿してもよい。
【0037】
上記のように構成される育苗庫は、枠材30に設けられた空隙34に側板12,13,14、床板11又は天板10を着脱可能に嵌挿し、3方向に隣接する枠材30の空隙34内にコーナー材40の連結脚部42を着脱可能に嵌挿することで、側板12,13,14,床板11及び天板10を分解可能に連結し、コーナー材40を用いて隣接する枠材30と天板10又は床板11のコーナー部とを分解可能に連結することができる。また、コーナー材40は、板状の支持部33によって中空部31と各外殻部32とが連結されているので、コーナー材40を例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成した場合においても、コーナー材40における庫内と庫外との熱伝導を抑制することができる。
【0038】
また、この発明に係る育苗庫は、扉体15を閉塞した状態で、扉体15と庫体1の開口部5に設けられたシールパッキン50同士が密接して、庫内と庫外とを気水密に遮断することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図8は、この発明に係る組立式育苗庫の第2実施形態を示す縦断面図である。
【0040】
上記第1実施形態では、天板10に光源すなわちLED照明器2を組み付けた場合について説明したが、図8に示すように、天板10AとLED照明器2とを別個に形成してもよい。この場合、天板10Aは透明性を有する例えばアクリル樹脂製の面材16Dにて形成され、側板12,13,14及び床板11と同様に、枠材30に設けられた空隙34内に着脱可能に嵌挿されて組み付けられる。一方、LED照明器2は、固定金具60Aによって天板10Aの上部に配置されている。この場合、固定金具60Aは、図8に示すように、下面にLEDパネル23を固着した上部取付板29の対向する2辺の両側に固定ねじ63によって固定される上部水平片64と、この上部水平片64の一端に折曲される垂直片65と、垂直片65の下端から上部水平片64と反対方向に折曲され、固定ねじ67によって庫体1の上端部の枠材30に固定される下部水平片66とで構成されている。この場合、固定ねじ67は、下部水平片66に穿設された透孔66aを貫通して枠材30に設けられた空隙34に螺合される。
【0041】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0042】
<第3実施形態>
図9は、この発明に係る組立式育苗庫の第3実施形態の一部の拡大断面図である。
【0043】
第3実施形態は、枠材30に断熱機能を持たせるようにした場合である。すなわち、枠材30における庫外側の空隙34内に嵌合する嵌合部72を有する断面略アングル状の断熱材70を、枠材30の庫外側全長に渡って被着して、枠材30に断熱効果を持たせるようにした場合である。この場合、断熱材70は、例えば合成樹脂あるいは合成ゴムにて形成されており、枠材30の庫外側の隣接する2面を覆う断面略アングル状つまり断面略L字状の断熱材本体71と、断熱材本体71の2片の内側面にそれぞれ突設されて枠材30の空隙34内に嵌合可能な嵌合部72とで形成されている。なお、この場合、図10に二点鎖線で示すように、嵌合部72に折曲片35と係合する係止凸条73を設けてもよい。
【0044】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0045】
<第4実施形態>
図10は、この発明に係る組立式育苗庫の第4実施形態の一部の拡大断面図である。
【0046】
第4実施形態は、庫体1の側壁部に断熱機能を持たせるようにした場合である。すなわち、図10に示すように、枠材30Bの空隙34A,34Bを並設し、各空隙34A,34B内にそれぞれ嵌挿される複数の側板例えば側板12A,12B;14A,14B間に断熱空間36を形成して、庫体1の側壁部に断熱効果を持たせるようにした場合である。
【0047】
この場合、枠材30Bは、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成されており、枠材30Bの断面中心に位置する略矩形状の中空部31Aと、中空部31Aの角部側の周囲に位置する複数(4個)の略アングル状の第1の外殻部32Aと、中空部31Aの辺部の外周に位置する複数(4個)の平坦状の第2の外殻部32Bと、中空部31Aの角部と各第1の外殻部32Aとをそれぞれ連結する板状の第1の支持部33Aと、中空部31Aの辺部と各第2の外殻部32Bとをそれぞれ連結する板状の第2の支持部33Bとからなり、各第1,第2の外殻部32A,32B間には、側板12A,12B;14A,14Bが着脱可能に嵌挿される空隙34A,34Bが並設されている。なお、第1,第2の外殻部32A,32Bの両端部には枠材30Bの内方側に向かって直交状に折曲される折曲片35が設けられている。
【0048】
上記のように形成される枠材30Bに並設された空隙34A,34Bに側板12,13を嵌挿することで、側板12A,12B;14A,14B間にそれぞれ断熱空間36を形成することができる。これにより庫体1の側壁部に断熱効果を持たせることができる。
【0049】
なお、図10では、枠材30Bの直交する方向に隣接する2枚の側板12A,12B;14A,14Bが同様の透明性を有する例えばアクリル樹脂製の面材16にて形成される場合について説明したが、庫体1の背面側に位置する側板14A,14Bをアクリル樹脂製の面材16に代えて硬質ウレタン樹脂製の面材としてもよい。
【0050】
なお、第4実施形態における枠材30Bに更に断熱機能を持たせることも可能である。すなわち、図10に二点鎖線で示すように、第4実施形態における枠材30Bの庫外側の空隙34A,34B内に嵌合する嵌合部72を有する断面略アングル状の断熱材70Aを、枠材30Bの庫外側全長に渡って被着して、枠材30Bに断熱効果を持たせるようにしてもよい。
【0051】
<第5実施形態>
図11は、この発明に係る組立式育苗庫の第5実施形態の要部を示す斜視図である。
【0052】
第5実施形態は、庫体1のコーナー部に断熱機能を持たせるようにした場合である。すなわち、図11に示すように、コーナー材40の庫外側表面に断熱カバー80を被着して、コーナー材40に断熱効果を持たせるようにした場合である。
【0053】
なお、コーナー材40の庫外側表面に断熱カバー80を被着すると共に、枠材30,30Bの空隙34,34A,34Bの全長に渡って上記断熱材70,70Aを被着することにより、育苗庫の断熱性の向上を図ることができる。
【0054】
<その他の実施形態>
(1)上記実施形態では、12本の枠材30を用いて、開口部5を除く5面に天板10,床板11,側板12,13,14を配置して略立方体状の育苗庫を構成する場合について説明したが、この発明に係る育苗庫の形状は必ずしもこの形状に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、天板100,床板200及び各側板300の間に、同様の断面形状の枠材30を介在させて天板部,床板部及び各側板部を複数の面材にて形成して全体が略直方体状の育苗庫を形成してもよい。
【0055】
この場合、天板部,床板部及び側板部にそれぞれ介在される枠材30同士を繋ぐ連結材400は、図13に示すように、略立法形状の基部41Aと、この基部41Aの隣接する4面すなわち3側面と、上下面の一方の面(図面では上面を示す)の中心部に突設され、それぞれ枠材30の中空部31内に嵌挿可能な円柱状の連結脚部42Aと、この連結脚部42Aを突設する基部41Aの隣接する4面に設けられ、側板300と天板100又は床板200が着脱可能に嵌挿される溝部43Aとを具備している。このように形成される連結材400は、コーナー材40と同様にアルミニウム合金製鋳物にて形成されている。なお、この場合は、光源2は天板部の形状に対応させた形状にすればよい。なお、図12において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
(2)また、上記実施形態では、庫体1に設けられた開口部5全体に扉体15を開閉可能に装着する構造について説明したが、この発明に係る育苗庫は必ずしもこの構造に限定されるものではない。例えば、図14に示すように、開口部5を構成する4個の枠材30の空隙34内に嵌挿される扉体用面材16Eに開口窓5Aを設け、この開口窓5A内に嵌挿される扉板17Aをヒンジ(蝶番)6Aによって開閉可能にした構造としてもよい。なお、扉板17Aの自由端側の表面には取手(摘み)9Aが取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明に係る組立式育苗庫の第1実施形態の一部を断面で示す斜視図である。
【図2】上記組立式育苗庫の縦断面図(a)及び(a)のI部拡大断面図(b)である。
【図3】上記組立式育苗庫のコーナー部の拡大断面図である。
【図4】この発明における枠材を示す斜視図である。
【図5】この発明におけるコーナー材を示す斜視図である。
【図6】この発明における扉体の閉塞状態を示す縦断面図(a)及び(a)のII部拡大断面図(b)である。
【図7】この発明における光源を一体に組み付けた天板を示す分解斜視図である。
【図8】この発明に係る組立式育苗庫の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図9】この発明に係る組立式育苗庫の第3実施形態の一部の拡大断面図である。
【図10】この発明に係る組立式育苗庫の第4実施形態の一部の拡大断面図である。
【図11】この発明に係る組立式育苗庫の第5実施形態の要部を示す斜視図である。
【図12】この発明に係る組立式育苗庫の第6実施形態を示す縦断面図である。
【図13】この発明における連結材を示す斜視図である。
【図14】この発明に係る組立式育苗庫の第7実施形態を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 庫体
2 LED照明器(光源)
5 開口部
10,10A 天板
11 床板
12,13,14 側板
15,15A 扉体
16,16C,16D 透明面材
16E 扉体用面材
17,17A 扉板
20 LED(発光素子)
21 LED集合群
30,30B 枠材
30A 扉用枠材
31,31A 中空部
32 外殻部
32A 第1の外殻部
32B 第2の外殻部
33 板状支持部
33A 第1の板状支持部
33B 第2の井アタ状支持部
34,34A,34B 空隙
36 断熱空間
40 コーナー材
42 連結脚部
43 溝部
50 シールパッキン
51 嵌合部
70,70A 断熱材
72 嵌合部
80 断熱カバー
100 天板
200 床板
300 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を発芽,育成するための育苗庫であって、
光源を具備する天板と、育苗床を載置する床板と、上記天板と床板の間の空間を外部と区画する複数の側板と、上記側板同士、側板と上記天板及び側板と上記床板を連結する枠材と、隣接する上記枠材と天板又は床板のコーナー部とを連結するコーナー材とを具備してなり、
上記枠材は、該枠材の断面中心に位置する中空部と、該中空部の周囲に位置する複数の外殻部と、上記中空部と各外殻部とをそれぞれ連結する板状の支持部とからなり、上記各外殻部間には、上記側板、天板及び床板が着脱可能に嵌挿される空隙が設けられ、
上記コーナー材は、上記枠材の中空部に着脱可能に嵌挿される連結脚部と、上記側板、天板又は床板が着脱可能に嵌挿される溝部とを具備してなる、
ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項2】
請求項1記載の組立式育苗庫において、
上記開口部を構成する庫体側の枠材にヒンジを介して開閉可能に取り付けられる扉体を更に具備してなる、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項3】
請求項1又は2記載の組立式育苗庫において、
上記天板は透明性を有する面材にて形成され、該面材の上部に光源が配置されている、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項4】
請求項1又は2記載の組立式育苗庫において、
上記天板は下面に光源を一体に有する面材にて形成されている、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の組立式育苗庫において、
上記光源が発光ダイオードの集合群である、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の組立式育苗庫において、
上記枠材における庫外側の空隙内に嵌合する嵌合部を有する断熱材を、枠材の庫外側全長に渡って被着してなる、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の組立式育苗庫において、
上記枠材の空隙を並設し、空隙内に嵌挿される複数の側板間に断熱空間を形成してなる、ことを特徴とする組立式育苗庫。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の組立式育苗庫において、
上記コーナー材の庫外側表面に断熱カバーを被着してなる、ことを特徴とする組立式育苗庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−201360(P2009−201360A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43839(P2008−43839)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】