説明

組立式骨組膜構造物

【課題】イベント会場その他のテント構造物に関し、安価で、優美性や安全性、快適性に優れ、迅速な組み立て及び解体を可能にし、特に最小単位となる四角状ブロックを構成する共通の部材を用いて多様なサイズ・形状の組立式骨組膜構造物を構築可能とする。
【解決手段】アーチ状又は直線状の一対の主梁部材の両端を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の一対のつなぎ梁部材で連結してなる屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することで、所望の任意のサイズの屋根部骨組を構築することができる。主梁部材やつなぎ梁部材は必要最少限で足り、部材の節減と屋根の軽量化の効果が大きい。多様なサイズの骨組の全てに共通する構成部材であることから、本発明の大型サイズの組立式骨組膜構造物一式の部材で、多数の小型サイズの組立式骨組膜構造物の構築が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イベント会場や建築現場、災害時の仮設テント等に使用される、組立式骨組膜構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イベント等に使用される大小の組立式骨組膜構造物は、各サイズ固有の大きさと形状をした、骨組と膜部材で構成されている。イベント等に使用される大型のテントには、エアーテントや、テンション構造の大型テント、立体トラス型等がある。又、工事用や倉庫用の仮設テント等で、蒲鉾型や山型のものが散見される。山型屋根の構造物では、サイズ可変型があるが、アーチ型屋根においては、サイズ及び形状可変型は見られない。なお、本発明に関連する公知技術として、次の特許文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開平07−247735
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の如く、従来の組立式骨組膜構造物の骨組や膜部材は、固有のサイズと形状で構成されているため、異なるサイズへの転用は不可能である。そのため、各サイズごとに異なる骨組や膜部材を在庫しなければならず、広い保管スペースが必要となるなど、経済的な損失が大きい。
【0004】
大型の組立式骨組膜構造物は、価格が高額であるために、使用頻度の高い小型サイズの組立式骨組膜構造物のみの在庫とならざるを得ない。そのために、広いスペースを要求されるイベント等では、小型サイズの組立式骨組膜構造物を寄せ集めて設営し、大型サイズの組立式骨組膜構造物の代用とするため、会場内部に支柱が林立して視界を遮り、雨天時には雨水が大量に流れ込むことがしばしば起こる。又、天井が低いので圧迫感を感じる。
【0005】
市街地等でのイベント会場では、変則的な地形が多々あるが、この地形に合わせて形状を変え得る組立式膜構造物がないため、土地の有効利用ができない。
【0006】
従来の大型イベント用組立式骨組膜構造物は、組み立て工程で、危険な高所作業を伴う場合があり、またその膜部材は、非常に大きく、張設作業が困難である。又、テンション構造の大型テントは、設営作業時に於いて、風に煽られ、大きくパタ付いてしまうため、非常に危険である。
【0007】
加圧式エアーテントは、一部の亀裂が、一瞬にして全壊に至る危険性を常に孕んでいるため、その管理が課題となる。
【0008】
従来の組立式膜構造物は、降雨時の排水処理が軽視されがちで、屋根部から流れ落ちる雨水が構造物の内部に流入し、イベントの運営に支障を来すことがしばしば起こる。
【0009】
膜部材の張設作業に於いて、通常は、膜部材に設けられた張設用金具に、ロープを通して骨組に固定し、張設するが、作業者の熟練度と多大な労力を必要とする。
【0010】
本発明は、以上の問題を解決するために成されたものであり、その課題は、安価で、優美性や安全性、快適性に優れ、迅速な組み立て及び解体を可能にし、特に最小単位となる四角状ブロックを構成する共通の部材を用いて多様なサイズ及び多様な形状の組立式骨組膜構造物を構築可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1は、アーチ状又は直線状の一対の主梁部材の両端を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の一対のつなぎ梁部材で連結してなる屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することで、任意のサイズの屋根部骨組の構築を可能としたことを特徴とする組立式骨組膜構造物である。このように、アーチ状又は直線状の一対の主梁部材の両端を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の一対のつなぎ梁部材で連結してなる屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することによって、所望の任意のサイズの屋根部骨組を構築することができる。
【0012】
最小単位となる四角状ブロックは、予め多数用意しておくのではなく、間口方向および/又は奥行き方向に連設する際に、四角状ブロックを形成し、かつ増設していくため、隣接する四角状ブロック間の主梁部材やつなぎ梁部材は共用する。その結果、主梁部材やつなぎ梁部材は、必要最少限で足り、部材の節減と屋根の軽量化の効果が大きい。このほか、多様なサイズの骨組の全てに共通する構成部材であることから、本発明の大型サイズの組立式骨組膜構造物一式の部材で、多数の小型サイズの組立式骨組膜構造物の構築が可能となる。逆に、本発明の小型サイズの製品の在庫を徐々に増やしていくことで、大型サイズの組立式骨組膜構造物の構築が可能となり、資金計画が容易になる。
【0013】
請求項2は、アーチ状の一対の主梁部材の両端を、同じくアーチ状の一対の主梁部材で連結して、屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することで、任意のサイズの屋根部骨組の構築を可能としたことを特徴とする組立式骨組膜構造物である。このように、アーチ状の一対の主梁部材の両端を、同じくアーチ状の一対の主梁部材で連結して、屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成するので、請求項1におけるつなぎ梁部材を主梁部材と同じ部材で実現できるので、部材の共通化をさらに進めて、コストダウンを実現できる。屋根を支持する支柱は、屋根部骨組の四隅だけで足りるので、内部の見通しが良い膜構造物を実現できる。
【0014】
請求項3は、多角形状の屋根部の中央部に位置する頂点から外周縁に向かって傘骨状に延びた三本以上のアーチ状又は直線状の主梁部材同士の間を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の円周方向のつなぎ梁部材で連結することによって、四角状の最小単位ブロックを半径方向および/又は円周方向に連設可能としてなる事を特徴とする多角形状の組立式骨組膜構造物である。このように、多角形状の屋根部の中央部に位置する頂点から外周縁に向かって傘骨状に延びた三本以上のアーチ状又は直線状の主梁部材同士の間を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の円周方向のつなぎ梁部材で連結する構造であるため、四角状の最小単位ブロックを半径方向および/又は円周方向に連設し増設することによって、平面形状が洋傘状の多角形状の組立式骨組膜構造物を実現できる。多角形状の中央には支柱は不必要であり、外周の主梁部材先端だけで足りるので、見通しの良い多角形屋根が可能となる。したがって、格闘技会場等のような中央部注視型の大型イベントの開催に適している。
【0015】
請求項4は、組立式骨組膜構造物に於ける屋根部骨組の前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設してなることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の組立式骨組膜構造物である。このように、組立式骨組膜構造物に於ける屋根部骨組の前記の1ブロック単位又は複数ブロック単位に膜部材を張設する構造であるため、膜部材も1ブロック単位又は予め決まった複数ブロック単位のサイズにでき、共通化できるので、同じ膜部材を用意しておけば足り、標準化が容易で、管理も簡便となり、しかも膜張り作業も能率化できる。
【0016】
このほか、膜部材を1ブロック単位又は複数ブロック単位に分散加工できるので、任意の位置に、任意の色の膜部材を張設する事が可能となり、多彩な膜面を実現し、イベント等の演出効果に貢献できる。又、所定の位置に採光用の透明膜部材を張設することで、構造物の内部を明るくすることも可能となる。さらに、膜部材の一部が破損したとしても、その影響は膜部材の一部のみにとどまり、全壊に至ることはない。したがって、管理も容易であり、又破損部のみの修理で済み、広いスペースと労力を要するエアーテント等の修理に比べて、極めて簡便である。
【0017】
請求項5は、一方の支柱が他方の支柱に挿入した状態で相対的に上下動することで高さを変更可能な構造において、前記一方の支柱に固定ピン挿入用の穴を等間隔に設け、他方の支柱に、前記一方の支柱に設けた穴間隔とは異なる間隔で、等間隔に穴を設け、相互の任意の穴に固定ピンを挿入することによって、双方の穴の間隔差を利用し、前記屋根部骨組支持用の支柱の高さを多段階に調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物である。組立式骨組膜構造物の規模や最小単位となる四角状ブロックの構成によっては、一方の支柱が他方の支柱に挿入した状態で相対的に上下動することで高さを変更可能な構造とし、高さ調節を要する場合が多い。そのために、請求項5のように、前記一方の支柱に固定ピン挿入用の穴を等間隔に設け、他方の支柱に、前記一方の支柱に設けた穴間隔とは異なる間隔で、等間隔に穴を設け、相互の任意の穴を選択して固定ピンを挿入することによって、双方の穴の間隔差を利用して、前記屋根部骨組支持用の支柱の高さを多段階に調節することが可能となる。したがって、支柱も共通化して、設置現場に応じて高さ調節するだけで足りる。しかも、ピン挿入構造とすることによって、滑りによる支柱高さの狂いが生じる恐れもない。
【0018】
請求項6は、支柱の上端に固設してある鉛直板に、屋根部骨組側を連結する回転板を重ねて水平方向の中心軸で軸支してある構造において、固定ピン挿通穴を、所定の角度で等間隔に円周方向に前記鉛直板に設けると共に、前記鉛直板に設けた穴間の角度とは異なる間隔で等間隔に円周方向に前記の回転板に固定ピン挿通穴を設けてあり、
相互の任意の穴に固定ピンを挿入することによって、双方の穴の角度差を利用し、前記屋根部骨組の角度を多段階に調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物である。
【0019】
このように、組立式骨組膜構造物の規模や最小単位となる四角状ブロックの構成によっては、支柱に対する屋根部骨組の取付け角度が異なる場合が多い。このような場合、各現場ごとに取付け角度の異なる部材を構築するのは効率的でない。そこで、請求項6のように、支柱の上端に固設してある鉛直板に、屋根部骨組側を連結する回転板を重ねて水平方向の中心軸で軸支する構造を採用する。そして、固定ピン挿通穴を、所定の角度で等間隔に円周方向に前記鉛直板に設ける。また、前記鉛直板に設けた穴間の角度とは異なる間隔で等間隔に円周方向に前記の回転板に固定ピン挿通穴を設けておく。そして、現場に応じて、相互の任意の穴を選択して固定ピンを挿入することにより、双方の穴の角度差を利用して、前記屋根部骨組の取付け角度を多段階に調節することができる。このように、ピン挿入構造にすると、滑りによる角度の狂いが生じない、堅牢の構造となる。
【0020】
請求項7は、前記の支柱が固定式又は上下方向に伸縮可能となっており、前記の鉛直板を固設してある支柱の上端から下部まで筒状になっており、屋根部から流入する雨水を前記筒状支柱の上端に取り込み、筒状の支柱内に設けた導水管又は筒状支柱自体を介して排水する構造となっていることを特徴とする請求項6に記載の組立式骨組膜構造物である。このように、前記の鉛直板を固設してある支柱の上端から下部まで筒状になっており、屋根部から流入する雨水を前記筒状支柱の上端に取り込み、支柱内に設けた導水管を介して又は筒状支柱自体を介して排水する構造となっているため、降雨時の排水処理が容易になる。しかも、支柱の内部を有効利用して排水できるので、デザイン的にも見苦しくない。
【0021】
請求項8は、支柱の上端に固設してある軸支手段に、屋根部骨組側を連結する回転体を水平のピン節点用支軸を介して軸支してある構造において、
前記支軸を三角形の頂角相当部に位置付け、前記の軸支手段にボルトを移動不能に支持し、ボルトを螺入したナット側を前記の回転体に水平軸で支持してなり、ボルトを回転させせることによって、前記回転体を回転させて、前記の屋根部骨組側を任意の角度に無段階で調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物である。支柱に対する屋根部骨組の取付け角度を調節可能とする場合、請求項8のように、支柱の上端に固設してある軸支手段に、屋根部骨組側を連結する回転体を水平のピン節点用支軸を介して軸支する構造も有効である。この場合、前記支軸を三角形の頂角相当部に位置付け、前記の軸支手段にボルトを移動不能に支持し、ボルトを螺入したナット側を前記の回転体に水平軸で支持する構造とし、ボルトを回転させて調節することによって、水平のピン節点を中心に前記回転体を回転させると、前記の屋根部骨組側を任意の角度に、しかも無段階で調節することができる。
【0022】
請求項9は、前記の屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックの補強部材を締め付け又は長さ調節するバックル構造において、
バックル部の少なくとも片方にボルト状のオネジ棒を設けて、フックなどの取付け部との間は空転可能とし、前記オネジ棒のバックル側内端は、電動工具で回転可能な形状となっていることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物である。従来のターンバックルは、テコ棒等の長い操作棒を用いてバックルを回転させるため、長い作業時間とテコ棒等を回転させるための空間が必要であるが、請求項9のように、バックル部の少なくとも片方にボルト状のオネジ棒を設けて、フックなどの取付け部との間は空転可能とし、前記オネジ棒のバックル側内端は、電動工具で回転駆動可能な形状となっている。そのため、前記のオネジ棒を電動工具で回転駆動することによって、バックルの締め付けたり緩めたりできるので、電動工具によって一瞬に締め付けたり緩めたりできる。また、長いテコ棒等を回転させるための空間が不必要となり、バックルが壁面に密着した状態や狭い空間でも補強部材の長さ調整や締め付けが可能となる。
【0023】
請求項10は、屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを連設することで、任意のサイズの屋根部骨組を構築可能とした組立式骨組膜構造物おいて、前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設する際に、膜部材に設けられた金具穴に、膜部材誘導用のレバーを挿通した状態で、前記レバー先端の筒状穴に、前記屋根部骨組側に設けた膜部材固定用ボルトの先端を挿入して引っ掛け、これをテコの支点にして、前記レバーで膜部材の金具穴の位置を前記ボルトの先端部に引き寄せてから、前記金具穴を前記ボルトに嵌め込むことを特徴とする膜部材の張設工法である。
【0024】
このように、前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設する際に、膜部材に設けられた金具穴に、膜部材誘導用のレバーを挿通した状態で、前記レバー先端の筒状穴に、前記屋根部骨組側に設けた膜部材固定用ボルトの先端を挿入して引っ掛け、これをテコの支点にして、前記レバーで膜部材の金具穴の位置を前記ボルトの先端部に引き寄せてから、前記金具穴を前記レバーに沿ってスライドさせ、前記ボルトに嵌め込むことができる。その結果、1ブロック単位又は複数ブロック単位の膜部材の張設作業が初心者でも容易に可能となる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1のように、アーチ状又は直線状の一対の主梁部材の両端を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の一対のつなぎ梁部材で連結してなる屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することによって、所望の任意のサイズの屋根部骨組を構築することができる。最小単位となる四角状ブロックは、予め多数用意しておくのではなく、間口方向および/又は奥行き方向に連設する際に、四角状ブロックを形成し、かつ増設していくため、隣接する四角状ブロック間の主梁部材やつなぎ梁部材は共用する。その結果、主梁部材やつなぎ梁部材は、必要最少限で足り、部材の節減と屋根の軽量化の効果が大きい。
【0026】
請求項2のように、アーチ状の一対の主梁部材の両端を、同じくアーチ状の一対の主梁部材で連結して、屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成するので、請求項1におけるつなぎ梁部材を主梁部材と同じ部材で実現できるので、部材の共通化をさらに進めて、コストダウンを実現できる。屋根を支持する支柱は、屋根部骨組の四隅だけで足りるので、内部の見通しが良い膜構造物を実現できる。
【0027】
請求項3のように、多角形状の屋根部の中央部に位置する頂点から外周縁に向かって傘骨状に延びた三本以上のアーチ状又は直線状の主梁部材同士の間を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の円周方向のつなぎ梁部材で連結する構造であるため、四角状の最小単位ブロックを半径方向および/又は円周方向に連設し増設することによって、平面形状が洋傘状の多角形状の組立式骨組膜構造物を実現できる。多角形状の中央には支柱は不必要であり、外周の主梁部材先端だけで足りるので、見通しの良い多角形屋根が可能となる。したがって、格闘技会場等のような中央部注視型の大型イベントの開催に適している。
【0028】
請求項4のように、組立式骨組膜構造物に於ける屋根部骨組の前記の1ブロック単位又は複数ブロック単位に膜部材を張設する構造であるため、膜部材も1ブロック単位又は予め決まった複数ブロック単位のサイズにでき、共通化できるので、同じ膜部材を用意しておけば足り、標準化が容易で、管理も簡便となり、しかも膜張り作業も能率化できる。このほか、膜部材を1ブロック単位又は複数ブロック単位に分散加工できるので、任意の位置に、任意の色の膜部材を張設する事が可能となり、多彩な膜面を実現し、イベント等の演出効果に貢献できる。又、所定の位置に採光用の透明膜部材を張設することで、構造物の内部を明るくすることも可能となる。さらに、膜部材の一部が破損したとしても、その影響は膜部材の一部のみにとどまり、全壊に至ることはない。したがって、管理も容易であり、又破損部のみの修理で済み、広いスペースと労力を要するエアーテント等の修理に比べて、極めて簡便である。
【0029】
組立式骨組膜構造物の規模や最小単位となる四角状ブロックの構成によっては、一方の支柱が他方の支柱に挿入した状態で相対的に上下動することで高さを変更可能な構造とし、高さ調節を要する場合が多い。そのために、請求項5のように、一方の支柱に固定ピン挿入用の穴を等間隔に設け、他方の支柱に、前記一方の支柱に設けた穴間隔とは異なる間隔で、等間隔に穴を設け、相互の任意の穴を選択して固定ピンを挿入することによって、双方の穴の間隔差を利用して、前記屋根部骨組支持用の支柱の高さを多段階に調節することが可能となる。したがって、支柱も共通化して、設置現場に応じて高さ調節するだけで足りる。しかも、ピン挿入構造とすることによって、滑りによる支柱高さの狂いが生じる恐れもない。
【0030】
組立式骨組膜構造物の規模や最小単位となる四角状ブロックの構成によっては、支柱に対する屋根部骨組の取付け角度が異なる場合が多い。このような場合、各現場ごとに取付け角度の異なる部材を構築するのは効率的でない。そこで、請求項6のように、支柱の上端に固設してある鉛直板に、屋根部骨組側を連結する回転板を重ねて水平方向の中心軸で軸支する構造を採用する。そして、固定ピン挿通穴を、所定の角度で等間隔に円周方向に前記鉛直板に設ける。また、前記鉛直板に設けた穴間の角度とは異なる間隔で等間隔に円周方向に前記の回転板に固定ピン挿通穴を設けておく。そして、現場に応じて、相互の任意の穴を選択して固定ピンを挿入することにより、双方の穴の角度差を利用して、前記屋根部骨組の取付け角度を多段階に調節することができる。このように、ピン挿入構造にすると、滑りによる角度の狂いが生じない、堅牢の構造となる。
【0031】
請求項7のように、前記の鉛直板を固設してある支柱の上端から下部まで筒状になっており、屋根部から流入する雨水を前記筒状支柱の上端に取り込み、支柱内に設けた導水管を介して排水する構造となっているため、降雨時の排水処理が容易になる。しかも、支柱の内部を有効利用して排水できるので、デザイン的にも見苦しくない。
【0032】
支柱に対する屋根部骨組の取付け角度を調節可能とする場合、請求項8のように、支柱の上端に固設してある軸支手段に、屋根部骨組側を連結する回転体を水平のピン節点用支軸を介して軸支する構造も有効である。この場合、前記支軸を三角形の頂角相当部に位置付け、前記の軸支手段にボルトを移動不能に支持し、ボルトを螺入したナット側を前記の回転体に水平軸で支持する構造とし、ボルトを回転させて調節することによって、水平のピン節点を中心に前記回転体を回転させると、前記の屋根部骨組側を任意の角度に、しかも無段階で調節することができる。
【0033】
従来のターンバックルは、テコ棒等の長い操作棒を用いてバックルを回転させるため、長い作業時間とテコ棒等を回転させるための空間が必要であるが、請求項9のように、バックル部の少なくとも片方にボルト状のオネジ棒を設けて、フックなどの取付け部との間は空転可能とし、前記オネジ棒のバックル側内端は、電動工具で回転駆動可能な形状となっている。そのため、前記のオネジ棒を電動工具で回転駆動することによって、バックルの締め付けたり緩めたりできるので、電動工具によって一瞬に締め付けたり緩めたりできる。また、長いテコ棒等を回転させるための空間が不必要となり、バックルが壁面に密着した状態や狭い空間でも補強部材の締め付けや長さ調整が可能となる。
【0034】
請求項10のように、前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設する際に、膜部材に設けられた金具穴に、膜部材誘導用のレバーを挿通した状態で、前記レバー先端の筒状穴に、前記屋根部骨組側に設けた膜部材固定用ボルトの先端を挿入して引っ掛け、これをテコの支点にして、前記レバーで膜部材の金具穴の位置を前記ボルトの先端部に引き寄せてから、前記金具穴を前記レバーに沿ってスライドさせ、前記ボルトに嵌め込むことができる。その結果、1ブロック単位又は複数ブロック単位の膜部材の張設作業が初心者でも容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を例示的に用いて説明する。図は、あくまでも、説明のための参考であって、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0036】
図1は、請求項1中の、アーチ状の主梁部材1と、逆V字状のつなぎ梁部材2の組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例である。この構造物の構成部材は、主梁部材1と副主梁6、逆V字状のつなぎ梁部材2、補強部材3と8、主梁1とつなぎ梁2との連結部材7(図2)、つなぎ梁2と副主梁6との連結部材4(図5、図6)、支柱部材94(図30)、支柱と屋根部の連結部材50(図27)、91(図30)等の骨組部材と、所定の長さに分散加工された膜部材等で構成される。
【0037】
主梁部材1は、一定の長さと一定の曲率を有する耐荷重構造であるアーチ状のトラス構造となっていて、主梁部材1を連結して形成されるアーチが、真円になる事を目的に、図6のように、トラスの上弦の端部1aと下弦の端部1bを、アーチの半径線R上に並べる。
図1、図2のように、主梁部材1の両端に、T形中継板7などの他の部材と連結するための穴を設けた連結板9を有し、同様に中央部には、中間部補強部材3を固定するための連結板10を有する。
【0038】
逆V字状の頂端に位置する副主梁6は、図6のように、主梁1より曲率が低くなり、主梁1のトラス上弦・下弦の両端1a、1bの延長線上に、副主梁6のトラス上・下弦の両端部6a、6bが位置し、連結板の位置等は主梁1の前記連結板9、10に準じる。
【0039】
一対の主梁部材1、1の両端間をつなぐための耐荷重トラス構造でなる逆V字状の一対のつなぎ梁部材2、2は、図1、図5のように、両端に主梁1との連結板11、11が鉛直に固設され、又中央部すなわち逆V字状の頂端の連結板12は、その背部において、T形連結板4を介して副主梁6と連結される。
【0040】
なお、この場合のつなぎ梁2、2は、トラス上辺部2aのみが逆V字状であれば本発明の目的は達成されるので、これの底辺部2bはアーチ状、又は直線状等でもかまわない。この点は、請求項1又は3記載の各つなぎ梁に於いても同様である。
【0041】
一対のアーチ状の主梁部材1、1の両端間を、一対の逆V字状のつなぎ梁部材2、2で連結し、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の頂上部同士の間を副主梁6でつなぐ。副主梁6の中央部と主梁の中央部を中間部補強部材3でつなぎ、主梁1の両端部と副主梁6の中央部間、もしくは主梁1の中央部と副主梁6の両端部間を斜め補強部材8でつなぎ、本発明の屋根部骨組の最小構成単位のブロックを形成すると、図1のようになる。斜め補強部材8は、電動工具操作式のバックル200で狭い空間でも一瞬に容易に締め付けたり長さ調節することができる。なお、この斜め補強部材8はブレスでも可能である。
【0042】
図2は、主梁1と逆V字状のつなぎ梁2との連結部の詳細を示す分解斜視図である。主梁1の両端の連結板9、9に、T形中継板7の両板を重ねてボルト締めし、その鉛直板に、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の両端の連結板11、11を重ねてボルト締めすることによって、主梁1、1同士を連結しながら逆V字状のつなぎ梁部材2、2も連結することで、図1のようにな最小構成単位の四角状ブロックを形成しながら、順次増設できる。
【0043】
この最小構成単位のブロックは、補強部材を用いて三角形を形成することで、最小限の構成部材にも関わらず、垂直力や水平力に対する応力に優れ、強固で揺れにくい力学的構造となる。
【0044】
この屋根部骨組の最小構成単位のブロックを、間口方向や、奥行き方向に連設することで、図3のような、多様なサイズや多様な形状の組立式骨組膜構造物の構築が可能となる。
【0045】
以上のような本発明の組み立て工程によって、大規模な構築を行なう場合について、図7を用いて説明する。まず図19、図30のような、支柱と屋根部間の連結部材50又は94一対に、主梁部材1を取り付け、これを逆V字状のつなぎ梁部材2で連結し、かつ前記補強部材3、8を前記の所定の位置に取り付けることによって、図1のような、四角状の屋根部の最小構成単位ブロックを形成する。
【0046】
上記の屋根部最小構成単位ブロックを、必要なスパン数だけ、桁行き方向(図8の矢印a方向)に連設する。連設された骨組に図25の膜部材を張設し、かつ図26のようにして、所定の雨水浸入防止の補修を経て、第1段目の組み立を完了する。
【0047】
上記の第一段目の端部を、次のブロックが連結可能な高さまで持ち上げて、図7の治具Fを用いて仮固定し、これに第二段目を主梁の軸方向(図8の矢印b方向)に連設し、膜部材を張設する。
【0048】
三段目以降も同様の作業工程を繰り返し、必要とするサイズの屋根部を構築し、最後に支柱を取り付けて完成となる。この様にして本発明の組立は、高所作業無しで、完遂できることを特徴とする。なお、支柱の上に、クレーンで持ち上げて連結できることは言うまでもない。
【0049】
図28は、主梁の軸方向bに2スパン、桁行方向aに3スパンを連設した場合の、正面図と側面図である。照明器具等の付属物の取り付け作業は、組み立ての途中で実行すると、容易に、安全迅速にできる。
【0050】
次に、図11(A)において、請求項1記載のアーチ状の主梁部材1と、アーチ状のつなぎ梁部材5の組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。一対のアーチ状の主梁部材1、1の両端間を、アーチ状のつなぎ梁部材5、5で連結して四角状に形成し、アーチ状のつなぎ梁部材5、5の中央部同士をアーチ状の補強部材13でつなぐ。さらに、対角線方向のアーチ状補強部材14と前記補強部材13と直交方向のアーチ状補強部材15を取り付け、米の字状の屋根部骨組の最小単位のブロックを形成する。この四角状ブロックを間口方向や、奥行き方向に連設することで、図11(B)のような組立式骨組膜構造物を構築できる。
【0051】
アーチ状のつなぎ梁5の端部連結部の角度は、水平線Lに対して垂直となる。これが図1の主梁1の連結板9との相異点である。
【0052】
そのほかは、図1のアーチ状の主梁部材1、1と、逆V字状のつなぎ梁部材2、2との組み合わせによる組立式骨組膜構造物に準じるので、省略する。
【0053】
次に、図12において、請求項1記載の、アーチ状の主梁部材1と、アーチ状のつなぎ梁5を上下に反転した逆アーチ状のつなぎ梁部材5との組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対のアーチ状の主梁部材1、1の両端間を、張設される膜部材が鞍型曲面形状となる事を目的に逆アーチ状とした一対のつなぎ梁部材5、5で連結し、主梁部材1、1と逆アーチ状のつなぎ梁部材5、5のそれぞれの中央部に設けられた主梁連結板10、10とつなぎ梁連結板99、99を、斜め補強部材17で菱形につなぎ、同じく向き合う逆アーチ状のつなぎ梁5、5の中央部連結板99、99間を補強部材16でつなぎ、屋根部骨組の最小構成単位の四角状ブロックを形成する。なお、斜め補強部材17は、逆アーチ状のつなぎ梁5、5の曲率が高くなるにつれ、一定の曲率を有する逆アーチ型となる。
【0054】
そのほかは、図1のアーチ状の主梁部材1、1と、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の組み合わせによる、組立式骨組膜構造物に準じるので、省略する。なお、このアーチ状の四角状ブロックを間口方向や、奥行き方向に連設することで、図4のような色々な組立式骨組膜構造物を構築できる。
【0055】
次に、図13において、請求項1記載のアーチ状の主梁部材1、1と、直線状のつなぎ梁20、20の組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対のアーチ状の主梁部材1、1の両端間を、一対の直線状のつなぎ梁20、20で連結し、屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。
【0056】
この場合、屋根部骨組の形状が蒲鉾型となるため、アーチ状の主梁部材1、1の中央部10から、向き合う同中央部10へ補強部材19を取り付け、一方の直線状のつなぎ梁20から、残る一方の直線状のつなぎ梁20へ溜水防止用のアーチ状のビーム材18を渡す。
【0057】
そのほかは、図1のアーチ状の主梁部材1、1と、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の組み合わせによる、組立式骨組膜構造物に準じるので、省略する。
【0058】
次に、図14において、請求項1記載の直線状の主梁部材21、21と、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の組み合わせによる、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
耐荷重構造の直線状トラスでなる一対の主梁部材21、21の両端に、逆V字状のつなぎ梁部材2、2の両端を連結し、屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。逆V字状のつなぎ梁部材2、2の頂端の間は、直線状トラス22で連結されている。
【0059】
次に、図15において、請求項1記載の直線状の主梁部材21、21と、アーチ状のつなぎ梁部材5、5の組み合わせによる、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対の直線状の主梁部材21、21の両端間に、アーチ状のつなぎ梁部材5、5の両端を連結し、所定の位置に補強部材19、23等を取り付け、屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。
【0060】
次に、図16において、請求項1記載の直線状の主梁部材21、21と、逆アーチ状のつなぎ梁部材5、5の組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対の直線状の主梁部材21、21の両端間を、逆アーチ状のつなぎ梁5、5で連結して、所定の位置に補強部材16、17を取り付け、屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。
【0061】
次に、図17において、請求項1記載の直線状の主梁部材21、21と、直線状のつなぎ梁20、20の組み合わせで構築される、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対の直線状の主梁部材21、21の両端間を、直線状のつなぎ梁20、20で連結し、屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。
【0062】
この場合も、主梁21中央部から、向き合う同中央部へ補強部材19を渡し、つなぎ梁部材20から向き合うつなぎ梁部材20に、溜水防止用のビーム材23を渡す。
【0063】
以上の、直線状の主梁と、逆V字状あるいはアーチ状、又は逆アーチ状、又は直線状のつなぎ梁との組み合わせによって構築される屋根部骨組は、片流れ式や、山形アーチ等の形状となる。
【0064】
山形アーチ構造の場合、その頂上部も三角形状にする場合のほか、頂上部のみにアーチ状の主梁部材を用いることも可能である。
【0065】
次に、図18において、請求項2記載の、アーチ状の主梁部材1、1と、同じくアーチ状の主梁部材1、1との組み合わせによる、組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
一対のアーチ状の主梁部材1、1の両端間を、同じく一対のアーチ状の主梁部材1、1で連結し、つなぎ梁部材1の中央部連結板10aから、向き合う中央部連結板10aに副主梁6を渡し、この副主梁6の中央部と向き合う主梁部材1、1の中央部連結板10bを、補強部材25で連結する。次に、主梁部材同士の連結板から、副主梁6の中央部連結板に、対角線方向の補強部材24、24を取り付けて屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、このブロックを間口方向や奥行き方向に連設する事で、組立式骨組膜構造物の構築を成す。
【0066】
この場合の屋根部の形状は、図20(A)、(B)のように、間口方向や奥行き方向のどちら側から見ても、アーチ型の形状となる。これは、前記図6において述べた、「主梁部材1を連結して形成されるアーチを、真円にする事を目的に、トラスの上弦の端部1aと下弦の端部1bを、アーチの半径線R上に並べ」たことに起因する。図20(B)は、図20(A)のH−H位置の断面図である。本構造物は支柱が四隅の四本となるため、四方の間口が有効に使える。
【0067】
図19のように、図18の屋根部骨組と支柱50を連結するための放射状連結板26は、直角方向の主梁部材1、1の両端の連結板11、11を重ねてボルト締めする直角板a、bを有しており、中間の45度位置に、対角線方向の補強部材24の連結板11を重ねてボルト締めする斜め連結板cを有している。直角連結板a、bに対し135度の背部には、支柱50側の回転板34を重ねてボルト締めする。なお、支柱50に対する屋根部骨組の勾配は、屋根部骨組のサイズの変化に伴って変わるので、回転板34の角度調節によって対応できる。図20に示す本構造物の組立工程は、中央部から、四角状ブロックの連設を開始することで、高所作業無しで、構築することが可能となる。
【0068】
次に、図21において、請求項3記載の多角形の組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。多角形の中央部に位置する屋根部の頂点に配設する放射状の連結部材27の放射状の連結板から、外縁部に向かって傘骨状に延びた、アーチ状又は直線状の主梁部材1…を、アーチ状や逆アーチ状、又は直線状のつなぎ梁部材5…で連結して屋根部骨組の最小単位の四角状ブロックを形成し、これを放射状に連設する事で、多角形の組立式骨組膜構造物を構築する。
【0069】
この多角形状の組立式骨組膜構造物においては、放射状に広がる形状のために、最小単位となる四角状ブロックは、一段毎に異なるサイズとなる。各ブロック毎の平面形状はほぼ台形状となり、主梁部材1、1の両端間を、アーチ状や逆アーチ状、又は直線状のつなぎ梁5で連結し、米の字状の各位置に補強部材を連結して、多角形の組立式骨組膜構造物の屋根部骨組の構築となす。この多角形の組立式骨組膜構造物の場合も、主梁1とつなぎ梁5を増設して四角状ブロックを連設することで、多様なサイズの構造物の構築が可能となる。
【0070】
組立手順は、中央部から外側に順に組んで行くことで、高所作業無しでの構築が可能となる。このようにして、大型の多角形の組立式骨組膜構造物の構築を可能にしたことで、格闘技や各種のショーなどの、中央部注視型のイベントの開催が可能となる。そのほかは、前記のアーチ状の主梁部材と逆V字状その他のつなぎ梁部材との組み合わせによる組立式骨組膜構造物に準じるので、省略する。
【0071】
図27は、軒桁部材70の両端を支柱に固定した実施例である。各支柱・屋根連結部材50の側面にL字状の連結板71を固設し、これに軒桁部材70の両端をボルトで取付け固定することによって、隣接する支柱・屋根連結部材50・50間を連結する。
【0072】
軒桁部材70が固定されているために、屋根と支柱との角度の変化に伴って、軒桁部材70に接する補強部材の長さも変化する。このように、軒桁を支柱に固定することで、ブレス等で固定することなく、支柱の安定を得る事ができる。
【0073】
次に、図25において、請求項4記載のように、四角状ブロックごとに分散加工した膜部材を有する組立式骨組膜構造物の実施例を述べる。
図25(A)(B)は、アーチ状の主梁部材と逆V字型のつなぎ梁の組み合わせによる四角状ブロックに適用する山型の膜部材を念頭に置いての説明であるが、(C)に示す鞍型等のような他の組み合わせによる四角状ブロックに於いてもほぼこれに準じるので、重複説明を省略する。
【0074】
膜部材41は、屋根部骨組の四角状ブロック毎に分散して加工することで、本発明で構築される多様なサイズの屋根部骨組の全てに張設可能な共通の膜部材となる。膜部材41の面積は、本発明の最小単位ブロックのサイズを基本とするが、使用頻度の多い大型サイズに関しては、複数ブロックの面積で加工する事も可能である。
【0075】
分散加工とした場合の膜部材間の継ぎ目に於ける、雨水の浸入に対する防止対策を、図26において述べる。図の左側の上流側と右側の下流側に位置する膜部材41、41の縁部に、所定の長さを有する雨水浸入防止用のカバー60、60を設け、このカバーの後方部に、前記カバー60を押さえるためのロープが挿通可能なハトメを設けたミミ61を設け、同様に相対する膜部材60の縁部にも、前記カバー60とミミ61を設ける。
【0076】
まず、図26(A)のように、屋根部の上流側に位置する膜部材41に設けられたカバー60の下に、下流側に位置する膜部材41に設けられたカバー60を図示のように折り返してたたみ込み、双方のカバーの後方に設けられたミミ61・61間にロープをジグザグ状にラッキングしてカバー60、60を重ね状態に押さえて、雨水の浸入を防止する。勾配が逆の場合は、上記の手順を逆にすればよく、上流側、下流側の区別無く、膜部材が屋根表面のどの位置にあっても、雨水の浸入を防止する事が可能となる。
【0077】
次に、図26(B)において、主梁部材を挟んで隣り合う膜部材間の継ぎ目における、雨水の浸入防止対策を次に述べる。
所定の巾で折り曲げて中空の筒状に加工し、その中に締めつけ用のロープ63を通して形成されたカバー62を、膜部材の主梁部材1側の縁部に設ける。膜部材41の縁を主梁部材1にロープでラッキングして固定し、一方のカバー62をもう一方のカバー62の下にたたみ込み、上側のカバーの締め付け用のロープ63を引き締めて固定する。
【0078】
図26(C)のように、カバー62の巾を、主梁部材1のトラスの巾に合わせた長さに加工する事で、最も外側に位置する主梁部材1の外側面を覆い隠すことが可能となる。このようにして、本発明の四角状の膜部材41を単位ブロック毎に分散加工し張設すると共に雨水浸入防止処理することで、本発明の多様なサイズの骨組の全てに張設可能である。
【0079】
図25(C)は鞍型曲面形状膜の例示である。鞍型曲面形状の膜材では、吊り方向と押さえ方向に張力を加えるテンション構造となる。このため膜部材表面のどの位置に於いても、雨水を下流方向に誘導可能な曲面となるため、雨水が溜まらない。したがって、溜水防止用のビーム材等が不要になり、骨組部材数を最小限に抑えることが可能となる。
【0080】
次に、図22において長さ調節方法の原理を説明し、これを応用した請求項5記載の支柱の高さ調節方法を図29で説明する。
従来、ピン固定式の伸縮構造は、一定の長さを有する二つの部材間に於いて、一方の部材に複数の穴を等間隔で設け、残る一方の部材に固定ピン挿入用の穴を一個、又は複数個の穴を先の部材と同じ間隔で設け、双方の穴の重なる位置でピンを差し込み、長さを調節し固定するというものであった。しかしこれでは、穴間の距離のみの移動に限定され、穴間の距離以外の微調節は不可能である。そこで、所定の穴から隣りの穴へ移動するまでに、もっと多段階に長さの小量調節が可能であると便利である。
【0081】
本発明の方法は、この目的を実現すべく、図22のように、一定の長さを有する二つの部材A・Bに於いて、一方の部材Aに固定ピン挿通用の穴1・2…を等間隔aで設ける。残る一方の部材Bに、先の部材Aに設けた穴間の距離aとは異なる間隔bで固定ピン挿通用の穴ア・イ…を等間隔bに設ける。双方の穴の間隔差「b−a=d」を利用し、相互の穴1・2…、ア・イ…の多様な組み合わせを可能とする事で、二つの部材間の長さを多段階に調節可能とする。
【0082】
いま、容易に理解可能なように、上側の部材Aは固定とし、下側の部材Bをスライド可能と仮定する。部材Aに設けた穴間の距離をa、部材Bに設けた穴間の距離をbとした場合、bとaの差dをaの約数とする。
【0083】
穴1と穴アの重なりを出発点とし、次に、穴2と穴イを合わせると、穴1はdの距離だけ右に移動し、穴3と穴ウを合わせると、穴1はさらにdだけ右に移動する。これを4とエ、5とオ…と繰り返すことで、dはaの約数であることから、穴1と穴イはやがて重なる。穴1は、bの距離をdで割った数の回数分の停止を繰り返しながら距離aを移動することで、多段階の調節を可能にする。調節の段階を、より多段階にするためには、dの値を小さくすればよい。
【0084】
固定ピンと穴1・2…、ア・イ…の関係は、説明のための例示であって、これに限らない。例えば、穴は、溝または非貫通の凹穴、もしくは、磁石等でも可能であり、相互の間隔差の組み合わせで、移動するものであれば、本発明に含まれる。この長さの調節方法は、仕組みが単純であり、部材の大小を問わず、多用途の展開が可能となる。
【0085】
次に、図29において、長さの調節機能を有する支柱部材80・81について、実施例を述べる。これは前記の長さ調節方法を応用したもので、サイズや形状が多様に変化する構造物の構築をなす場合に適用できる。
【0086】
口径の異なる二つの支柱部材80,81間に於いて、小径の支柱80を大径の支柱81に挿入し、その内部で小径支柱80は自在にスライド可能とする。大径の支柱81の側壁に固定ピン挿入用の穴a…を等間隔に一列に並べて設ける。
前記小径の支柱80の側壁には、先の大径支柱81の側壁に設けた穴間の距離とは異なる距離で、等間隔に一列に並べて穴b…を開ける。
そして、双方の穴a…、b…の間隔差を利用し、相互の穴a…、b…の多様な組み合わせを可能とする事で、二つの支柱80、81間の長さを、多段階に小量調節が可能となる。
前記小径支柱80の上端に屋根側を連結する。また、長さ調節機能を有しない下側の支柱82を前記大径支柱81と連結することで、多様なサイズや形状に対応することが可能となり、本発明の組立式骨組膜構造物は、より多彩な展開が可能となる。
【0087】
次に、図9に示す、支柱と屋根との角度の変化について実施例を述べる。アーチ型の構造物に於いて、異なる間口サイズの構築をなそうとする場合、これに対応する方法としては、図9(A)のように、支柱と屋根との相対角度αはそのままにして、アーチの曲率を変えることで対応する方法と、図9(B)のように、アーチの曲率はそのままにして、支柱と屋根の相対角度をα、βのように変える方法が考えられる。アーチの曲率を変える方法は、部材数が嵩むことから適切ではない。したがって本発明では、この課題を解決するために、角度を調節するという図9(B)の対応方法を採択した。
【0088】
角度の調節を安全確実に、多段階になすことを目的になされた発明が請求項6であり、これらを装着することによって、部材数の削減を可能にし、かつ多彩な形状の構造物の構築を可能にした。
図30は間欠式の角度調節機構の実施例である。本発明の構造物は大型構造のため、ボルトで締めつけて摩擦抵抗を利用して固定する方法等では安全性に欠けるので不向きであり、安全確実であるピン固定式で、しかも、多段階に小量調節をなすことを目的に発明された。
【0089】
図30の屋根側の一対の回転板92・92に固定ピン挿通用の穴b…を所定の角度で等間隔に円周方向に開けてあけ、支柱側の一対の鉛直板93・93に、前記回転板に開けた穴b…とは異なる角度で等間隔に円周方向に固定ピン挿通用の穴a…を開けてある。双方の穴b…、a…の角度差を利用し、相互の穴の多様な組み合わせを可能にする事で、支柱に対する屋根側の相対角度を、多段階に小量調節可能となる。
【0090】
支柱側の鉛直板93・93は、屋根と支柱との連結箱91の一対の対向板を兼ねており、これに、円周方向に一定の角度間隔で、ボルト挿通用の穴a…を開けてある。
屋根側の回転板92・92は、中央部の水平方向中心軸であるボルト100を中心に回る回転板であり、内側の鉛直板93・93の穴a…間の角度間隔とは異なる角度で等間隔に、円周方向に穴b…を開けてある。
【0091】
この双方の穴b…、a…間の角度差により、双方の穴同士の多様な組み合わせが可能となり、支柱と屋根との間において、多段階に角度調節できる。
【0092】
図22の長さ調節の場合と同様に、回転板92・92と鉛直板93・93との回転方向の角度差は、それぞれの角度の約数とする事で、穴同士の重なりは複数個存在し、これらに複数のボルトを挿通し固定することで剪断応力が増し、安全性が向上する。
【0093】
次に、図23において、ボルト式の角度調節機構の実施例を述べる。屋根部と支柱を安全確実に固定し、無段階に連続調節をなすことを目的に、本発明はなされた。この角度調節機構は、二等辺三角形の底辺相当部に調節ボルトを配置し、これを回転させることで、底辺部の長さを変え、底辺部に対向する頂角の角度を変えるという原理でなる。
【0094】
連結部33で屋根部骨組側に連結される回転板34は、水平のピン節点用のヒンジピン30で支柱側に軸支連結されている。
前記回転板34の軸支位置に設けた軸穴を、屋根と支柱の連結用箱50の内部において、その屋根側のコーナー部に重ね、双方にピン又はボルト30を差し込んで軸支用のヒンジとする。これが、「構造物とその支持物のピン節点」に相当し、三角形の頂角に相当する部分となる。三角形の底辺の位置に調節ボルト31を設ける。
【0095】
図23(C)のように、中央部にナット又はこれに代わるネジ山を有するヒンジピン28で前記回転板34と前記調節ボルト31を連結する。この部分が、三角形の二つの底角相当部のうちの一方の底角に相当し、調節ボルト31に沿って進退移動する。
【0096】
屋根と支柱の連結用箱50の上端において、前記支軸30から、二等辺三角形の二等辺相当の距離をおいて、前記調節ボルト31のボルト頭側の回転中心となるヒンジピン29を設けてある。連結用箱50内において、前記ヒンジピン29の中央部位置には、調節ボルト31が貫通する穴が開けてある。これが「三角形の二つの底角部」のうちの他の底角に相当する。
この構造において、ヒンジ29〜30間の距離とヒンジ28〜30間を等距離とし、三点のヒンジ28、29、30が二等辺三角形を構成するとき、支持力は最も大きくなる。
【0097】
一定の長さを有する調節ボルト31は、前記ボルト頭側ヒンジ29の穴を貫通し、前記進退ヒンジ28に設けたナット部に螺入している。このときボルト頭側のヒンジ29は、ナット32の作用で、調節ボルト31が進退不能に支持している。すなわち、このナット32は割ピン等で調節ボルト31に固定され、一体となって回転する。
【0098】
調節ボルト31を回転させると、前記の進退ヒンジ28のナット部が調節ボルト31上を進退移動してヒンジ28〜29間の距離を変え、三角形の底辺相当部の長さを変えることで、三角形の頂角相当部の角度を変える事になり、構造物である屋根側とその支持用の支柱との角度を連続的に変えることができる。
【0099】
図24は、前記のボルト式の連続角度調節機構を、主梁1やつなぎ梁部材5を有する屋根部骨組と支柱との連結箱50に装着した斜視図である。(A)屋根部の連結前の分解状態、(B)は連結後である。(C)は屋根部の主梁1を鉛直方向まで回転させた極限状態である。連結箱50にピン又はボルト30で軸支された回転板34と一体の連結板33と、屋根部を構成する主梁1の端部の連結板9をT形連結板7で挟んでボルト締めする。そして、T形連結板7のT形板につなぎ梁部材5、5の端部の連結板11、11を重ねてボルト締めする。
【0100】
次に、図30に示す間欠式の角度調節機構において、雨水処理構造の実施例を説明する。通常の雨水処理は、屋根部から流入する雨水を一旦雨樋で受け、雨樋の途中に設けられた漏斗から排水管を通って排出する方法である。
【0101】
本発明は、支柱本体94の上部に設けた漏斗に屋根部から流れ落ちる雨水を受け、この雨水が支柱本体94の内部を通って、その下部の排出口96から排出される事を特徴とする。本発明での漏斗は、上部が開口した箱型91となっていて、底面部に雨水導入用の穴91hを開け、この穴91hは、支柱本体94の上端に挿入して上下スライドする連結管95中に接続されていて、底面部の穴91hから流入した雨水は、前記連結管95中を通過し、支柱本体94内部を通って、下部の排出口96から排出される。
【0102】
支柱上部に設けられた漏斗の対向側壁93・93に前記の角度調節用a…を開け、この側壁93・93の外側に、同じく角度調節用の穴b…を開けた一対の回転板92・92を重ね、この回転板92・92に屋根部骨組の連結板90、90を重ねてボルト締めすることで、屋根部側と支柱との角度調節を行なう。
【0103】
このように管状の部材で支柱部材94を形成すれば、支柱そのものが排水管を兼ねる事になり、又トラス状の支柱に於いては、支柱内部に管材を設ける事で雨水を処理する事が可能となる。もちろん、管状の支柱部材94中に別の排水管を設けて、排出口96に連結することも可能である。前記支柱94の下部に設けた雨水排出口96に配管をつないで排水溝等に雨水を誘導する事で、雨天時に於いても快適なイベント空間を確保できる。
【0104】
次に、図31において、請求項10記載の膜部材の張設工法について実施例を述べる。膜部材41の誘導用のレバー98の外径は、膜部材41に設けられたハトメ状の張設用金具穴102の内径よりは小さく、前記の誘導レバー98の先端(下端)の筒状穴98h(C図)の内径は、図2のように屋根部骨組側に設けた膜固定用ボルト101の外径より大きい。
【0105】
膜張作業に際しては、(A)図のように、膜部材41の金具穴102に、前記の誘導レバー98を挿通した状態で、前記レバー先端の筒状穴98h中に、骨組側に設けた膜固定用ボルトの先端を挿入し、引っ掛ける。この引っ掛け部分がテコの支点となり、膜張設用金具穴102と誘導レバー98との接点Sが、テコの作用点となる。そして、誘導レバー98の上部がテコの力点に相当する。したがって、誘導レバー98の上部を膜固定ボルト101側に矢印a1のように引きつけると、金具穴102が膜固定ボルト101の真上に位置するので、そのまま金具102を押し下げると、誘導レバー98にガイドされて、膜固定ボルト101まで下降して、(B)図のように、膜固定ボルト101が金具穴102に嵌入した状態となる。この状態で、(C)図のように、誘導レバー98を引き抜いた後、膜固定ボルト101にナットNを嵌めると、膜部材41を締め付け固定できる。
【0106】
この膜張設工法を用いる事で、初心者でも張設作業が容易になり、熟練者並みに効率的に膜張りでき、作業時間の大幅な短縮が可能となる。なお、誘導レバーは、直線状に限られず、曲げ加工された物、或いは、引き掛け部の上部地点で折り曲げ可能にする事でも、本発明の目的は達成される。
【0107】
図34は、図1、図12〜図17の四角状ブロックの締め付けに使用する電動工具操作式のバックル200を示す正面図であり、図35は、その分解斜視図である。従来のターンバックルは、テコ棒等の操作棒を用いてバックルを回転させるため、長い操作時間とテコ棒等を回転させるための空間が必要であるが、電動工具操作式のバックルはこのような問題を一掃できる。
【0108】
バックル201の両端と螺合している一対のボルト202、202の内の少なくとも片方のボルト202のバックル側の内端を、電動式の締めつけ工具206が使用可能な形状に形成してある。これは、例えば図35(A)のような六角ボルト形207や十字型、又は図35(B)のような六角レンチが使用可能な彫り込み式の六角形204等、多様な形状にする事が可能である。
【0109】
バックル201の外部に位置するボルト先端を、フック23等の引き掛け手段の底部に設けられた穴に挿通してある。この底穴の両側に位置するフランジ205、205をボルト先端に一体に設けてあるので、ボルト202はフック23に対し空転でき、フック23はボルト202の回転に影響されることなく、四角状ブロック側に固定される。
【0110】
フック23に代えて、図35(C)に示す、プレハブの補強等に使用される平板状リング208なども利用でき、多彩な形状が適用可能である。電動工具206で締めつける場合は、図35(C)のように、バックル201の内部に電動工具206の操作先端を挿入して、ボルト内端の六角ボルト形207などに嵌め込むことで、この工具自体が、バックル201の回り止めとなって、バックルの回転を阻むので、ボルト202のみが回転可能となり、バックル201に対しボルト202が回転して進退する。その結果、従来のバックルを回転して締め付けたり緩めたりするのと同じ効果が得られる。
【0111】
このように、ボルト202自体を回転させることで、電動式の締めつけ工具206の使用が可能となり、作業時間を大幅に短縮され、しかもテコ棒等の使用が不要となることで、狭小な空間での締め付けできる。また、四角状ブロックを解体する場合にも、電動工具によって一瞬にボルト202を緩めることができ、組立式骨組膜構造物の解体作業が効率的に行なえる。なお、他方のボルト202も全く同様に電動工具で回転駆動可能とすることもできるが、他方のボルトは従来と同じ構造にすると、従来と同様にテコ棒等でバックル201を回転させることも可能である。あるいは、バックル201の他端に直接にフック203を固定して、片方のボルトだけを電動工具だけで回転することも可能である。
【0112】
次に本発明の応用例と変化例を説明する。請求項1、2又は3記載の、組立式骨組膜構造物は、前記説明以外にも、部材の組み合わせによって、多彩な形状に変化する事ができる。例えば、最端部の列のつなぎ梁部材をアーチ状とし2列目を逆アーチ状とする。奥行き方向にこれを繰り返すことで、波型の屋根部となる。この場合、主梁部材は、アーチ状と直線状のどちらでも可能である。
【0113】
本発明の最小構成単位のブロックを、主梁の軸方向に次々と連結すると、図33に示すような円筒状の構造物になる。これは、工事用の遮蔽壁、イベント空間、寒冷時の風よけ等、多方面への展開が可能となる。
【0114】
アーチ状主梁の曲率を、スパン毎に変える事も可能であり、例えば頂上部に曲率の高い主梁を用い、下部に向かって次第に曲率を低くしていき、カテリナ曲線状にする事でより強固な構造物の構築が可能となる。
【0115】
請求項3記載の、多角形の組立式骨組膜構造物に於いて、直線状の主梁部材を、直線状のつなぎ梁部材で連結することで、菅笠状の構造物となる。又、つなぎ梁部材を、アーチ状と逆アーチ状を交互に用いることで、流麗な波形状の構築物となる。
【0116】
片流れ式の場合、請求項6と8記載の角度調節機構と請求項5記載の支柱高さ調節機構を有する支柱等をいることで、競技場のスタンドの屋根等の構築が可能となる。
【0117】
屋根部骨組において、その軒桁相当部の一方を持ち上げて支柱を取り付け支持し、他の一方の軒桁相当部に、支柱から分離されて単体となった支柱上部材を取り付けることで、図32に示す形となり、屋外ステージの屋根等に利用可能な構造物となる。
【0118】
耐荷重構造の主梁やつなぎ梁、又は副主梁を、本発明の実施例では、軽量で垂直応力に優れるトラス構造としたが、部材を重ねた構造や、H型鋼等、他の部材での構築も、本発明に含まれる。
【0119】
本発明の膜構造物の開口部は、吹き流しの状態での使用はもちろん可能だが、図10のように、各種の補助膜材を併用して、多様なデザインに変化させることも可能である。
【0120】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を達成出来る範囲での変形、改良等は、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上のように、本発明によると、最小単位となる各種の四角状ブロックを形成しながら、順次連結し増設することによって、サイズや形状が多様な組立式骨組膜構造物を構築可能となり、各種イベント用テント、建築用仮設テント、全天候型運動施設、倉庫、災害時の避難施設等な構築に寄与できる。本発明の組立式骨組膜構造物を設営することで、構造物内部での支柱の林立が無くなり、視界を広げ、支柱を伝って流れ落ちる雨水の流入を防止し、スペースの有効活用が可能となる。しかも、天井が高いので圧迫感を感じない。角度調節装置の装着と最小単位ブロックの連設パターンの組み合わせにより、ステージ用テント、観覧席用テント等の多彩な形状の構造物の構築を可能にし、構成部材の用途を広げた。又、ブロックの連設パターンを変えることで、形状を多様に変化させる事が可能である事から、L字型やコの字型等の地形に沿っての構築が可能であり、土地の有効利用が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】アーチ主梁と逆V字状つなぎ梁の一ブロックを示す斜視図である。
【図2】主梁部材と逆V字状つなぎ梁部材の連結部の分解斜視図である。
【図3】多様なサイズの組立式骨組膜構造物を示す斜視図である。
【図4】多様な形状の組立式膜構造物を示す斜視図である。
【図5】アーチ主梁と逆V字状つなぎ梁の一ブロックの各構成部材を示す図である。
【図6】主梁連結板と副主梁連結板の角度の説明図である。
【図7】組立順を示す側面図である。
【図8】支柱無しの構造物を示す図である。
【図9】曲率と角度の関係図である。
【図10】開口部の各種態様を示す斜視図である。
【図11】アーチ主梁とアーチつなぎ梁のブロックと連設状況を示す斜視図である。
【図12】逆アーチつなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図13】アーチ主梁と直線つなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図14】直線主梁と逆V字状つなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図15】アーチつなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図16】直線主梁と逆アーチつなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図17】直線主梁と直線つなぎ梁のブロックを示す斜視図である。
【図18】アーチ主梁とアーチ主梁のブロックを示す斜視図である。
【図19】アーチ主梁とアーチ主梁の連結構造とこれの支柱への連結状況を示す分解斜視図である。
【図20】アーチ主梁とアーチ主梁の連設例と断面図である。
【図21】多角形の骨組膜構造物と連結板を示す斜視図である。
【図22】長さの調節方法を示す平面図である。
【図23】ボルト式角度調節装置を示す図である。
【図24】屋根部骨組と支柱部の連結状況を示す斜視図である。
【図25】膜部材及び鞍型曲面形状膜を示す斜視図である。
【図26】膜部材間の雨水浸入防止方法を示す縦断面図である。
【図27】軒桁固定式を示す斜視図である。
【図28】アーチ主梁と逆V字つなぎ梁の連設例正面図と側面図である。
【図29】高さ調節式の支柱を示す斜視図である。
【図30】角度調節と雨水処理機能を併せ持つ支柱を示す斜視図である。
【図31】膜張設方法を示す側面図である。
【図32】ステージ型膜構造物を示す斜視図である。
【図33】円筒型構造物を示す斜視図である。
【図34】電動工具操作式のバックルを示す正面図である。
【図35】図34の電動工具操作式バックルの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0123】
1アーチ状主梁
2逆V字状つなぎ梁
5アーチ状つなぎ梁
6副主梁
13アーチ状の補強部材
20直線状のつなぎ梁
21直線状の主梁
31ボルト式角度調節装置のボルト
34ボルト式角度調節装置の回転板
41分散加工の膜部材
50ボルト式角度調節装置を有する屋根部と支柱の連結部材
60雨水浸入防止用のカバー
70軒桁
80高さ調節可能な支柱
90屋根部側支柱連結部材
91漏斗と角度調節装置を有する屋根部と支柱の箱型連結部材
94管型支柱
98膜部材誘導用レバー
101膜部材固定用ボルト
200ボルト回転式の長さ調節部材
201バックル部
202ボルト部
203フック型引き掛け部材
204ボルト頭部(六角レンチ用の六角凹形)
205フランジ
206電動式締めつけ工具
207ボルト頭部(六角形)
208プレハブの補強等に使用される平板状の引き掛けリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ状又は直線状の一対の主梁部材の両端を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の一対のつなぎ梁部材で連結してなる屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することで、任意のサイズの屋根部骨組の構築を可能としたことを特徴とする組立式骨組膜構造物。
【請求項2】
アーチ状の一対の主梁部材の両端を、同じくアーチ状の一対の主梁部材で連結して、屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを、間口方向および/又は奥行き方向に連設することで、任意のサイズの屋根部骨組の構築を可能としたことを特徴とする組立式骨組膜構造物。
【請求項3】
多角形状の屋根部の中央部に位置する頂点から外周縁に向かって傘骨状に延びた三本以上のアーチ状又は直線状の主梁部材同士の間を、逆V字状、アーチ状、逆アーチ状又は直線状の円周方向のつなぎ梁部材で連結することによって、四角状の最小単位ブロックを半径方向および/又は円周方向に連設可能としてなる事を特徴とする多角形状の組立式骨組膜構造物。
【請求項4】
組立式骨組膜構造物に於ける屋根部骨組の前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設してなることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項5】
一方の支柱が他方の支柱に挿入した状態で相対的に上下動することで高さを変更可能な構造において、前記一方の支柱に固定ピン挿入用の穴を等間隔に設け、他方の支柱に、前記一方の支柱に設けた穴間隔とは異なる間隔で、等間隔に穴を設け、相互の任意の穴に固定ピンを挿入することによって、双方の穴の間隔差を利用し、前記屋根部骨組支持用の支柱の高さを多段階に調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項6】
支柱の上端又は屋根部骨組側に固設してある鉛直板に、屋根部骨組側又は支柱上端に連結する回転板を重ねて水平方向の中心軸で軸支してある構造において、
固定ピン挿通穴を、所定の角度で等間隔に円周方向に前記鉛直板に設けると共に、 前記鉛直板に設けた穴間の角度とは異なる間隔で等間隔に円周方向に前記の回転板に固定ピン挿通穴を設けてあり、
相互の任意の穴に固定ピンを挿入することによって、双方の穴の角度差を利用し、前記屋根部骨組の角度を多段階に調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項7】
前記の支柱が固定式又は上下方向に伸縮可能となっており、前記の鉛直板又は回転板を固設してある支柱の上端から下部まで筒状になっており、屋根部から流入する雨水を前記筒状支柱の上端に取り込み、筒状の支柱内に設けた導水管又は筒状支柱自体を介して排水する構造となっていることを特徴とする請求項6に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項8】
支柱の上端側に固設してある軸支手段に、屋根部骨組側を連結する回転体を水平のピン節点用支軸を介して軸支してある構造において、
前記支軸を三角形の頂角相当部に位置付け、前記の軸支手段にボルトを移動不能に支持し、ボルトを螺入したナット側を前記の回転体に水平軸で支持してなり、ボルトを回転させせることによって、前記回転体を回転させて、前記の屋根部骨組側を任意の角度に無段階で調節可能としたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項9】
前記の屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックの補強部材を締め付け又は長さ調節するバックル構造において、
バックル部の少なくとも片方にボルト状のオネジ棒を設けて、フックなどの取付け部との間は空転可能とし、前記オネジ棒のバックル側内端は、電動工具で回転可能な形状となっていることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの項に記載の組立式骨組膜構造物。
【請求項10】
屋根部骨組の最小単位となる四角状ブロックを形成し、この最小単位のブロックを連設することで、任意のサイズの屋根部骨組を構築可能とした組立式骨組膜構造物おいて、前記の1ブロック単位又は複数のブロック単位に膜部材を張設する際に、
膜部材に設けられた金具穴に、膜部材誘導用のレバーを挿通した状態で、
前記レバー先端の筒状穴に、前記屋根部骨組側に設けた膜部材固定用ボルトの先端を挿入して引っ掛け、これをテコの支点にして、前記レバーで膜部材の金具穴の位置を前記ボルトの先端部に引き寄せてから、前記金具穴を前記ボルトに嵌め込むことを特徴とする膜部材の張設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2007−262878(P2007−262878A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273180(P2006−273180)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(505374808)
【Fターム(参考)】