組立搬送設備
【課題】組立搬送設備を小型化して設備スペースを縮小する。
【解決手段】リフタ24に、幅方向外側に突出可能な可動部(回転アーム70)を設け、この可動部に部品を搭載する。リフタ24から幅方向外側に可動部を突出させることにより、リフタ24の幅方向寸法を超える支持幅で部品を支持することができるため、リフタ24の幅方向寸法を最大の支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化が図られる。
【解決手段】リフタ24に、幅方向外側に突出可能な可動部(回転アーム70)を設け、この可動部に部品を搭載する。リフタ24から幅方向外側に可動部を突出させることにより、リフタ24の幅方向寸法を超える支持幅で部品を支持することができるため、リフタ24の幅方向寸法を最大の支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化が図られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ状態で搬送される搬送物の下方で、搬送物と同期させて部品を搬送しながら、搬送物の下方から部品を組み付けるための組立搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されている組立搬送設備(自動車の組立ライン)では、自動車のボディをオーバーヘッドコンベアラインにより吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディの下方で、ボディと同期させてエンジンやリアアクスルユニット等の部品を搬送し、ボディの下方から各部品が組み付けられている。このとき、各部品は、ボディと同期して移動可能な搬送台車に設置されたリフタ(昇降テーブル6・7)上に載置され、リフタを上昇させることにより部品がボディに組付可能な高さまで持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような組立搬送設備のリフタには、部品を支持するための支持部が設けられる。この支持部の位置は、部品の種類によって異なる。例えば図17及び図18に示すようなリアアクスルユニットは、車両幅方向両端に設けられた一対のハブベアリングBと、一対のハブベアリングを連結する中間ビームCと、中間ビームCの幅方向両端部から前方に延びた固定アームEとを有する。図17に示すような4WD用のリアアクスルユニットR1(以下、4WD用リアユニットR1と言う。)は、中間ビームCの幅方向中央部付近にデファレンシャル装置Dが設けられる。4WD用リアユニットR1を支持する場合は、中間ビームC上の2点、及びデファレンシャル装置Dの先端部分を支持することで、ユニット全体を支持できるため、比較的小さい支持幅で安定支持することができる。一方、図18に示すような2WDのリアアクスルユニットR2(以下、2WD用リアユニットR2と言う。)は、デファレンシャル装置が設けられない。このため、ユニットの幅方向外側部のアーム部Eやスプリング受け部S1付近を支持しないと安定支持できず、支持幅が大きくなる。このように支持幅が異なる部品を搭載可能とするために、通常、リフタには複数組の支持部が設けられる。この場合、リフタの幅方向寸法は、最大の支持幅よりも大きくする必要があるため、設備の大型化を招く。
【0005】
本発明の解決すべき課題は、組立搬送設備を小型化して設備スペースを縮小することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持するリフタとを備え、リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、リフタに、リフタから幅方向外側に突出可能な可動部を設け、この可動部に前記部品を搭載することを特徴とする。尚、幅方向とは、搬送方向と直交する水平方向のことを言う(以下同様)。
【0007】
このように、本発明の組立搬送設備は、リフタに、幅方向外側に突出可能な可動部を設け、この可動部に部品を搭載する。リフタから幅方向外側に可動部を突出させることにより、リフタの幅方向寸法を超える支持幅で部品を支持することができるため、リフタの幅方向寸法を最大の支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化を図ることができる。
【0008】
上記の組立搬送設備において、前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載すれば、リフタの上昇動作のみで部品をリフタに搭載することができる。リフタの上昇動作は、吊り下げ搬送された搬送物の高さまで部品を上昇させるために必須の動作であるため、この動作を利用してリフタ上に部品を搭載することで、別途の部品移載工程を省略でき、サイクルタイムの短縮及び組立コストの低減が図られる。
【0009】
このようにリフタの上昇動作によりリフタ上に部品を搭載させる場合、搬入装置が、幅方向に離隔して設けられた一対の側部を備え、搬入装置の両側部の内側であって、両側部の上部に掛け渡されるようにして載置された部品の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させると、搬入装置を持ち上げることなく部品をリフタに搭載することができる。
【0010】
このとき、搬入装置の下方(両側部の内側)にリフタを配置した後、搬入装置の側部よりも幅方向外側に可動部を突出させた状態でリフタを上昇させると、搬入装置の側部と可動部とが干渉する恐れがある。従って、搬入装置の両側部の内側に可動部を配した状態でリフタを上昇させ、可動部が搬入装置の側部よりも上方に配されたときに、可動部を前記側部よりも幅方向外側に突出させれば、可動部と搬入装置との干渉を回避しながら可動部に部品を搭載することができる。
【0011】
ところで、リフタを上昇させて、リフタに搭載した部品を搬送物に組み付ける際、リフタの位置と搬送物の部品組付位置とを完全に一致させることは現実的に不可能であるため、搬送物に組み付ける直前に部品の水平方向位置を微調整する必要がある。例えば上記特許文献1の組立搬送設備は、リフタ上に、搬送方向及び幅方向にスライド可能なワーク支持台が設けられている。しかし、このようなスライド可能なワーク支持台を設けると、リフタの構造が複雑になって設備コスト高を招く。
【0012】
そこで、前記部品に挿通孔を形成すると共に、この挿通孔に挿通可能な挿通ピンをリフタに設け、前記挿通孔に前記挿通ピンを遊嵌状態で挿通することにより、リフタに搭載された前記部品の水平移動を許容すれば、スライド可能なワーク支持台等の大掛かりな機構を設けることなく、部品の組付位置を微調整することができる。例えば、図18に示すような2WD用リアユニットR2の場合、スプリングSを受けるスプリング受けS1に挿通孔を形成すれば、スプリング受けの機能を阻害せず、且つ、必要な強度を維持しながら、部品に位置決め用の挿通孔を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の組立搬送設備によれば、リフタを小型化して設備スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】組立搬送設備の平面図である。
【図2】組立搬送設備の側面図である。
【図3】リフタ内部の昇降手段を示す側面図である。
【図4】リア側のリフタの平面図である。
【図5】リア側のリフタの正面図である。
【図6】リア側のリフタの側面図である。
【図7】フロント側の台車の斜視図である。
【図8】リア側の台車の斜視図である。
【図9】(a)は、フロント側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図であり、(b)は、リア側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図である。
【図10】4WD用リアアクスルユニットを台車からリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、(b)正面図、及び(c)平面図である。
【図11】4WD用リアアクスルユニットを台車からリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、及び(b)正面図である。
【図12】リフタに搭載した4WD用リアアクスルユニットの中間ビームの支持部を示す断面図である。
【図13】2WD用リアアクスルユニットを台車からリア側のリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、(b)正面図、及び(c)平面図である。
【図14】2WD用リアアクスルユニットのスプリング受けの挿通孔、及びこれに挿通された挿通ピンを示す断面図である。
【図15】(a)〜(d)は、組立搬送設備による組立工程を示す平面図である。
【図16】組立搬送設備の側面図である。
【図17】4WD用リアアクスルユニットの斜視図である。
【図18】2WD用リアアクスルユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る組立搬送設備1は、搬送物としての自動車のボディW(図2参照)を吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディWの下方で各種部品を同期させて搬送し、ボディWの下方から各種部品を組み付けるためのものである。図示例では、ボディWのフロント側部分にエンジンユニットGが組み付けられ、ボディWのリア側部分にリアアクスルユニットR及びスプリングSが組み付けられる。尚、以下では、特に説明のない限り、リアアクスルユニットRはこれに装着されるスプリングSを含むものとする。
【0017】
組立搬送設備1は、図1に示すように、ボディWを吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置としてのオーバーヘッドコンベア10(図1では二点鎖線でボディWの搬送方向のみを示している)と、ボディWに組み付けられるエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを搭載し、搬送方向(図1の左右方向)に往復移動可能な下側搬送装置20と、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを下側搬送装置20の移動経路上に搬入する搬入装置としての台車30及び40と、ツールボックス50とを主に備える。
【0018】
オーバーヘッドコンベア10は、所定方向に(図1では右から左へ)一定速度でボディWを吊り下げ状態で搬送するものである。本実施形態では、図2に示すように、搬送方向に延びたレール11と、レール11から下方に延びたハンガ12と、ハンガ12をレール11に沿って移動させる駆動部(図示省略)とを備える。ハンガ12でボディWを側方から抱え込んで吊り下げ状態で保持した状態で、駆動部を駆動することにより、ハンガ12及びボディWが下流側(図中左側)に搬送される。
【0019】
下側搬送装置20は、搬送方向に往復移動可能とされる。本実施形態では、搬送方向に延びたコンベアC20により駆動され、図1に実線で示す位置と鎖線で示す位置との間で往復移動可能とされる。この下側搬送装置20の移動可能領域が組立搬送設備1における組付作業エリアAとなる。下側搬送装置20の往復移動は、図示しない制御システムにより制御され、オーバーヘッドコンベア10で搬送されるボディWと同期して移動するように制御される。すなわち、ボディWが作業エリアA内で搬送されているときは、下側搬送装置20は、このボディWの真下で、且つ、ボディWと同じ速度で下流側へ搬送される。このボディWが作業エリアAから搬出されたら、下側搬送装置20は上流側に後退し、新たなボディWが作業エリアAに搬入されるまでの間に作業エリアAの上流側端部に配される。新たなボディWが作業エリアAに搬入されたら、このボディWと同期して下流側に搬送される。
【0020】
下側搬送装置20は、ベースプレート22と、複数のリフタ23及び24とを有する。ベースプレート22の上面に、リフタ23及び24が搬送方向に離隔して配される。フロント側のリフタ23にはエンジンユニットGが搭載され、リア側のリフタ24にはリアアクスルユニットRが搭載される。リフタ23とリフタ24との間隔は、ボディWへのエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRの組付位置の間隔に合わせられている(図2参照)。
【0021】
コンベアC20は、搬送方向に延び、搬送方向で何れの方向にも走行可能に設けられる。図示例では、コンベアC20は地面に埋め込まれ、コンベアC20の搬送面(上面)が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC20の搬送面にベースプレート22の下面が固定され、この状態でコンベアC20を走行させることで、下側搬送装置20が搬送方向に搬送される。尚、ここで言う「地面」とは、組立搬送設備1が設置される面を意味し、実際の地上面から浮かせた設置面も含む。
【0022】
リフタ23及び24は、図2に示すように、昇降テーブル23a・24aと、昇降テーブル23a・24aを昇降させる昇降手段とを有する。昇降手段として、例えば図3に示すように、2本のチェーン61a・61bが噛合して1本の硬い棒状のチェーンとなるジップチェーン61を採用することができる。ジップチェーン61は、一対のチェーンケース62の内部にそれぞれ収容されたチェーン61a・61bが、サーボモータ(図示省略)で駆動されるチェーンローラ63a・63bにより送り出され、幅方向中央部で噛合して棒状となって上方に延びる。この硬い棒状となったジップチェーン61で、昇降テーブル23a(あるいは昇降テーブル24a、本段落において以下同様)が持ち上げられる。図示例では、昇降テーブル23aの姿勢を水平に保つために、パンタグラフ64が幅方向両側に設けられる(図3では奥側のパンタグラフ64のみを示す)。ジップチェーン61は、チェーンローラ63a・63bの駆動力をほとんど遊びのない状態で昇降テーブル23aに伝達することができるため、昇降テーブル23aの位置を正確に制御することができる。また、チェーンローラ63a・63bの駆動をサーボモータで行うことで、例えば油圧シリンダを用いる場合と比べて遊びがさらに小さくなり、昇降テーブル23aの位置をより正確に制御することができる。
【0023】
リフタ23・24は、制御システム(図示省略)による自動制御により昇降され、下側搬送装置20の搬送距離に応じて適宜の高さに設定される。また、リフタ23・24には昇降テーブル23a・24aを手動で昇降させるためのスイッチ23b・24bが設けられ、このスイッチ23b・24bを作業者が操作することにより昇降テーブル23a・24aの高さを微調整することができる。フロント側のリフタ23の昇降テーブル23aには、エンジンユニットGを搭載した台車30を支持する支持部23a1が設けられ、リア側のリフタ24の昇降テーブル24aには、リアアクスルユニットRを直接支持する支持部が設けられる。
【0024】
リア側のリフタ24には、図4〜6に示すように、リフタ24から幅方向外側に突出可能な可動部として、回転アーム70が設けられる。本実施形態では、リア側のリフタ24の上面に、幅方向対称位置に配された一対の回転アーム70が設けられる。一対の回転アーム70は、それぞれシリンダ72が接続され、このシリンダ72により各回転アーム70が支点71を中心に回動可能に設けられる。図4〜6に実線で示す状態は、シリンダ72を突出させて各回転アーム70を搬送方向と平行にした状態であり、このとき各回転アーム70はリフタ24の幅方向領域内にほぼ収容される。この状態からシリンダ72を退入させると、各回転アーム70が支点71を中心に水平面内で回動し、各回転アーム70がリフタ24から幅方向外側に突出する(図4〜6の点線参照)。このとき、各回転アーム70は幅方向と平行となっている。
【0025】
リフタ24の上面には、部品を搭載するための支持部が設けられる。本実施形態では、4WD用リアユニットR1(図17参照)を支持するための、支持幅の小さい第1支持部73と、2WD用リアユニットR2(図18参照)を支持するための、支持幅の大きい第2支持部74とが設けられる。第1支持部73は、回転アーム70の基端部(リフタ24から幅方向外側に突出しない側の端部、以下同様)に設けられたビーム支持部73aと、リフタ24の上面に固定されたデフ支持部73bとからなる。ビーム支持部73bは、4WD用リアユニットR1の中間ビームCを支持し、デフ支持部73bは、デファレンシャル装置Dを支持する。ビーム支持部73a及びデフ支持部73bの上面には略V字状の凹部が形成される。第2支持部74は、回転アーム70の先端部に設けられ挿通ピン74aと、回転アーム70の挿通ピン74aよりも基端側に設けられたビーム支持部74bとからなる。挿通ピン74aは、2WD用リアユニットR2のスプリング受けS1に設けられた挿通孔S10に挿通される(図13(c)参照)。ビーム支持部74bは、その上面が平坦に形成され、2WD用リアユニットR2の中間ビームCを下方から支持する。また、リフタ24には、各ユニットに取り付けられるスプリングSを保持するスプリング保持部75が設けられる。
【0026】
下側搬送装置20には、後退時の障害物を検知するための非接触式センサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、ベースプレート22の上流側端部に、光源26からの光を検知可能な光センサ25が設けられる。光センサ25は、通常、光源26からの光を検知してONになっているが、光センサ25と光源26との間に障害物があると、光源26の光が光センサ25に届かず、光センサ25がOFFとなる。このONからOFFへ切り替わった信号が制御システム(図示省略)に伝達され、この信号により制御システムが障害物の存在を認識し、下側搬送装置20の搬送が停止される。これにより、下側搬送装置20が、後退時に障害物(人など)と接触する事態を未然に防止することができる。尚、接触バンパ(図示省略)等の接触式センサにより障害物を検知することも可能であるが、衝突する前に障害物を検知することができる点で、上記のような非接触式センサが好ましい。また、下側搬送装置20は、作業者による作業が行われながらゆっくり前進するため、図示例では前方の障害物を検知するセンサは設けていないが、もちろん、前進時の障害物との衝突を確実に回避するために上記のような非接触式センサを下側搬送装置20の前方に設けても良い。さらに、図1では非接触式センサをベースプレート22の一箇所にのみ設けているが、非接触式センサを幅方向の複数箇所に設ければ、より正確に障害物の有無を検知することができる。
【0027】
フロント側の台車30は、フロント側のリフタ23にエンジンユニットGを搬入するものであり、リフタ23の上昇によりエンジンユニットGと共に持ち上げられる構成となっている。具体的には、図7に示すように、エンジンユニットGが載置される矩形状の天板31と、天板31の四隅から下方に延びた4本の脚部32と、脚部32の下端に設けられた車輪33とを備える。
【0028】
リア側の台車40は、リア側のリフタ24にリアアクスルユニットRを搬入するものであり、リフタ24の上昇により持ち上げられることなく、リアアクスルユニットRをリフタ24に搭載可能な構成となっている。具体的には、図8に示すように、フレーム41と、フレーム41から下方に延びた4本の脚部42と、脚部42の下端に設けられた車輪43とを備える。フレーム41は、幅方向に離隔して平行に設けられた一対の側部としての側部フレーム41aと、一対の側部フレーム41aの一方の端部(上流側端部)を幅方向に連結する連結フレーム41bとからなり、上面視で略コの字型をなしている。フレーム41には、リアアクスルユニットRを支持する支持部44が設けられる。
【0029】
図9(a)及び(b)に示すように、台車30の脚部32の幅方向間隔W1、及び台車40の脚部42の幅方向間隔W2は、何れも下側搬送装置20の幅W0(図示例ではベースプレート22の幅)よりも大きく設定される(W1>W0、W2>W0)。また、台車30の天板31の下端までの高さH1、及び台車40のフレーム41の下端までの高さH2は、何れもリフタ23及び24を最下方位置に降下させた状態の下側搬送装置20の高さH0(図示例では支持部73・74の上端までの高さ)よりも高く設定される(H1>H0、H2>H0)。以上により、台車30・40の天板31・フレーム41の下方に形成されるスペースに、下側搬送装置20を潜り込ませて配置することが可能となる。
【0030】
組立搬送設備1には、台車30・40を作業エリアA内に搬入する駆動手段が設けられる。本実施形態では、図1に示すように、台車30・40をそれぞれ別々に駆動する複数の駆動手段として、搬送方向に延び、作業エリアAの内部と外部とを跨いで設けられた複数のコンベアC30及びC40が設けられる。コンベアC30及びC40は、上述のコンベアC20と同様に、地面に埋め込まれて設置され、搬送面が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC30はフロント側の台車30を搬送するものであり、フロント側の台車30の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。コンベアC40はリア側の台車40を搬送するものであり、リア側の台車40の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。図示例では、リア側の台車40の車輪幅がフロント側の台車30の車輪幅よりも若干大きく、これによりコンベアC30の幅方向外側にコンベアC40が設けられている。
【0031】
ツールボックス50は、組付に要する工具や組付部品(ネジ等)が搭載され、下側搬送装置20の幅方向両側に設けられる。ツールボックス50は、コンベアC50によって搬送方向で往復移動可能とされ、図1に示すように、下側搬送装置20のフロント側のリフタ23の幅方向両側と、リア側のリフタ24の幅方向両側にそれぞれ1台ずつ、計4台配される。これのより、各リフタ23・24の幅方向両側から組付作業を行う4名の作業者それぞれの背後に、ツールボックス50が配される。ツールボックス50は下側搬送装置20と同期して搬送され、これにより必要な工具等を常に作業者の近くに配することができる。
【0032】
ここで、上記構成の組立搬送設備1において、リア側の台車40からリア側のリフタ24に部品(リアアクスルユニットR)を搭載する手順を説明する。尚、ここでは、支持幅の異なる2種類の部品、具体的には4WD用リアユニットR1と2WD用リアユニットR2とを搭載する手順をそれぞれ説明する。
【0033】
4WD用リアユニットR1を台車40からリフタ24に搭載する場合、まず、図10(a)〜(c)に示すように、最下方位置まで降下させたリフタ24を台車40の下方に配置する。具体的には、リフタ24を、台車40の一対の側部フレーム41aの内側であって、且つ、連結フレーム41bの下流側に配置し、これにより台車40の支持部44に搭載された4WD用リアユニットR1の下方にリフタ24が配置される。このとき、図10(c)に示すように、一対の回転アーム70は搬送方向に平行な状態とされ、台車40の一対の側部フレーム41aの内側に配されている。また、4WD用リアユニットR1の中間ビームCの下方には、回転アーム70に設けられたビーム支持部73aが配され、デファレンシャル装置Dの下方にはデフ支持部73bが配される。この状態でリフタ24を上昇させると、図11(a)及び(b)に示すように、中間ビームC及びデファレンシャル装置Dが、それぞれビーム支持部73a及びデフ支持部73bにより下方から持ち上げられ、これにより4WD用リアユニットR1が台車40からリフタ24に搭載される。
【0034】
これと同時に、リフタ24に設けられたスプリング保持部75が、台車40の支持部44のスプリングSを下方から持ち上げ、これによりスプリングSがリフタ24に搭載される。このように、スプリングSをリフタ24に搭載することで、リフタ24付近で作業している作業者が別途設けられたストックエリア等にスプリングSを取りに行く手間が省け、作業効率が高まる。
【0035】
一方、2WD用リアユニットR2をリフタ24に搭載する場合は、まず、上記と同様に、一対の回転アーム70を台車40の側部フレーム41aの内側に配した状態で、台車40の下方にリフタ24を配置する(図10参照)。この状態でリフタ24を上昇させ、回転アーム70の高さが台車40のフレーム41を越えたら、回転アーム70を回転させて、その先端部をリフタ24の幅方向両側に突出させる(図13参照)。このとき、各回転アーム70の先端部は、台車40の側部フレーム41aよりも幅方向外側に配され、その先端部に設けられた挿通ピン74aが、2WD用リアユニットR2のスプリング受けS1に設けられた挿通孔S10の下方に配される。この状態で、リフタ24をさらに上昇させると、2WD用リアユニットR2の挿通穴S10に挿通ピン74aが下方から挿入されると共に、中間ビームCがビーム支持部74bで下方から持ち上げられ、これにより2WD用リアユニットR2が台車40からリフタ24に搭載される。尚、図13では、図の簡略化のため、スプリングS、スプリング保持部75、及び台車40のスプリングの支持部44を省略している。また、台車40に設けられる支持部44は、支持する部品の種類によって異なるが、図10・図11では4WD用リアユニットR1を支持する支持部のみを示し、図13では2WD用リアユニットR2を支持する支持部のみを示している。
【0036】
このように、先端部をリフタ24から幅方向外側に突出可能な回転アーム70を設け、この回転アーム70の先端部に部品を支持する支持部(挿通ピン74a)を設けることで、リフタ24の幅方向寸法を超える支持幅を得ることができる。これにより、リフタ24の幅方向寸法は、2WD用リアユニットR2を支持するための広い支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化が図られる。
【0037】
また、リフタ24に搭載された4WD用リアユニット(図11参照)は、水平方向位置を微調整することができる。すなわち、回転アーム70に設けられたビーム支持部73aは、図12に示すように、4WD用リアユニットR1の中間ビームCを、その搬送方向の移動を僅かに許容した状態で保持している。具体的には、ビーム支持部73aの上面に形成された略V字状の凹部73a1の底面に、水平な平坦面73a2を形成することにより、凹部73a1内に載置された中間ビームCが平坦面73a2上で搬送方向(図10(c)のY方向)に僅かにスライド可能とされる。これにより、ボディWに固定されるアーム部Eの先端部を搬送方向及び幅方向(図10(c)のX方向)に僅かにスライドさせて、その水平方向位置を微調整することができる。
【0038】
また、リフタ24に搭載された2WD用リアユニットR2も、水平方向位置を微調整することができる。すなわち、図14に示すように、2WDユニットR2のスプリング受けS1に形成された挿通孔S10と、挿通孔S10の内周に挿入された挿通ピン74aとを、比較的大きな隙間を介して嵌合させた遊嵌状態とする。一方、中間ビームCを下方から支持するビーム支持部74bの上面は平坦面であるため(図5参照)、中間ビームCはビーム支持部74bにより水平方向に拘束されない。従って、2WD用リアユニットR2は、挿通孔S10と挿通ピン74aとの間の隙間の分だけ、水平方向に移動可能とされる。
【0039】
以上のように、4WD用リアユニットR1及び2WD用リアユニットR2の何れをリフタ24に搭載した場合であっても、スライド板等の大掛かりな機構を要することなく、非常に簡略な機構で各ユニットR1・R2の水平方向位置を微調整することができる。これにより、各ユニットR1・R2をボディWに組み付ける際、各ユニットR1・R2の水平方向位置を微調整してボディWの組付位置に正確に配置することができる。
【0040】
以下、上記構成の組立搬送設備1における組付手順を説明する。尚、図15では、ボディWが図中の右から左へ向けて搬送され、オーバーヘッドコンベア10、ボディW、及びツールボックス50等の記載を省略している。
【0041】
まず、図15(a)に矢印で示すように、エンジンユニットGを搭載したフロント側の台車30をコンベアC30上に搬入すると共に、リアアクスルユニットRを塔載したリア側の台車40をコンベアC40上に搬入する。このとき、台車30及び40は、搬送方向に隣接させた状態(搬入に支障がない程度に近接させた状態)で各コンベアC30・C40上に搬入される。これにより、例えば台車30・40を離隔した状態でコンベア上に搬入する場合と比べて、作業エリアAの上流側に確保すべきスペースを縮小することができる。
【0042】
この間、作業エリアAでは、下側搬送装置20がボディWと同期して下流側に搬送され、下側搬送装置20に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをボディWに組み付ける作業が行われている。
【0043】
次に、図15(b)に矢印で示すように、コンベアC30・C40を駆動して台車30・40を下流側に搬送し、作業エリアA内に搬入する。台車30及び40は、それぞれ別々のコンベアC30及びC40で搬送され、隣接した状態でコンベアC30・C40上に搬入された台車30・40は、その間隔を広げながら搬送される。台車30・40の作業エリアAへの搬入が完了した時点で、各台車に載置されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが、ボディWへの組付位置に対応した間隔で配されるように、台車30・40同士の間隔が設定される。
【0044】
この間も、下側搬送装置20はボディWと同期して下流側に搬送され、各部品の組付作業が続けられ、下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部に達するまでの間に組付作業が完了する(図15(b)では、組み付けられたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下側搬送装置20上から無くなっている)。下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部まで達したら、下側搬送装置20を停止させ、リフタ23・24を降下させる。これにより、持ち上げられていた台車30が接地され、台車30の天板31からリフタ23の支持部23a1が離隔し、空の台車30と下側搬送装置20とが分離される。
【0045】
下側搬送装置20のリフタ23・24を最下方位置まで降下させたら、コンベアC20を搬送方向とは逆向きに駆動し、下側搬送装置20を上流側に後退させる。このとき、下側搬送装置20には非接触式センサ(光センサ25、図1参照)が設けられているため、下側搬送装置20の上流側における障害物の有無を確実に検知することができる。また、図15(c)に示すように、下側搬送装置20から分離された空の台車30は作業エリアAの下流側端部に残される。この空の台車30は、別途の搬送手段によりエンジンの組立ライン(図15(d)にL1で示す)へと搬送される。組立ラインL1では、エンジンユニットGを組み立てながら台車30に載せて搬送し、組み上がったエンジンユニットGを搭載した台車30がコンベアC20の上流側端部付近に順次配置される。
【0046】
コンベアC20の上流側端部まで後退した下側搬送装置20は、台車30及び40の下方に潜り込む(図15(c)参照)。これによりエンジンユニットGの下方にフロント側のリフタ23が配置されると共に、リアアクスルユニットRの下方にリア側のリフタ24が配置される(図2参照)。この状態でリフタ23を上昇させると、図16に示すように、昇降テーブル23aの上面に設けられた支持部23a1で台車30の天板31が下方から支持され、台車30と共にエンジンユニットGが持ち上げられる。このように、リフタ23で台車30ごとエンジンユニットGを持ち上げることにより、エンジンユニットGは台車30上に載置するだけでよいため、台車30にエンジンユニットGを支持する特別な支持部を設ける必要はない。従って、エンジンユニットGの種類が変わっても、同じ台車30を使用することができる。一方、リフタ24を上昇させると、上述のように、昇降テーブル24aが台車40の側部フレーム41aの内側を通過し、支持部73・74でリアアクスルユニットRのみを持ち上げ、リア側の台車40は接地した状態とされる。
【0047】
そして、コンベアC40を逆方向に走行させ、空になったリア側の台車40を上流側に後退させ、下側搬送装置20から分離する。この台車40が上流側端部まで達したら別途の駆動手段によりリアアクスルユニットRの塔載ライン(図15(d)にL2で示す)へと搬送する。搭載ラインL2では、リアアクスルユニットRの各部品を台車40に順に搭載しながら台車40を搬送し、リアアクスルユニットRを塔載した台車40がコンベアC40の上流側端部付近に順次配置される。
【0048】
各部品(エンジンユニットG及びリアアクスルユニットR)をリフタ23・24に搭載した下側搬送装置20の上方に新たなボディWが搬送されてきたら、このボディWと同期して下側搬送装置20が下流側に搬送される。これと共に、リフタ23・24がさらに上昇し、各部品がボディWの組付位置に配される。このとき、各部品の高さがボディWの組付位置に合っていない場合は、作業者のスイッチ操作で高さが微調整される。また、各部品の水平方向位置がボディWの組付位置に合っていない場合は、各部品が作業者の手によりリフタ上で動かされ、水平方向位置が微調整される。こうして、ボディWと各部品が同期して下流側に搬送されながら、各部品をボディWの組付位置に正確に配置し、両者の組付作業が行われる。
【0049】
上記サイクルを繰り返すことにより、オーバーヘッドコンベア10により順次搬送されてくるボディWに、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下方から組み付けられる。
【0050】
上記の組立搬送設備1では、図2及び図16に示すように、リフタ23・24を上昇させるだけで、台車30・40に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをリフタ23・24上に搭載することができるため、別途の移載工程や移載スペースを省略することができる。また、部品をリフタ上に搭載するために下側搬送装置20に台車等を隣接させる必要がなく、下側搬送装置20の幅方向両側に作業スペースを確保することができるため、リフタ23・24上への部品の搭載中(すなわちリフタ23・24の上昇中)でも作業者が組付作業を行うことができる。さらに、下側搬送装置20が作業エリアAの上流側端部に戻ってくるまでの間に、台車30・40の作業エリアAへの搬入を完了しておくことで、無駄な時間を減らしてサイクルタイムを短縮することができる。
【0051】
また、例えば作業エリアAの幅方向から台車を搬入すると、台車が作業エリアA内の作業者と干渉する恐れがあるが、図15(b)に示すように、下側搬送装置20の搬送経路の延長方向から台車30・40を作業エリアA内に搬入することで、作業者と干渉することなく、下側搬送装置20の搬送経路上に台車30・40を搬入することができる。
【0052】
また、図15(d)に示すように、フロント側の台車30を作業エリアAの出口(下流側端部)まで搬送すると共に、リア側の台車40を作業エリアAの入口(上流側端部)に留めることにより、台車30が搬送されるエンジン組立ラインL1と、台車40が搬送されるリアアクスル搭載ラインL2とを、組立搬送設備1の幅方向一方側で、且つ、交差させることなく配置することができるため、各ラインの構造を簡略化することができる。
【0053】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、リア側のリフタ24に設けられる可動部が、水平面内で回転する回転アーム70である場合を示しているが、これに限らず、例えば垂直面内で回転する回転アームや、あるいは油圧シリンダ等の幅方向に沿って突出可能な可動部を適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 組立搬送設備
10 オーバーヘッドコンベア(上側搬送装置)
20 下側搬送装置
23、24 リフタ
30、40 台車(搬入装置)
50 ツールボックス
70 回転アーム(可動部)
71 支点
72 シリンダ
73a ビーム支持部
73b デフ支持部
74a 挿通ピン
74b ビーム支持部
75 スプリング保持部
W ボディ
C20、C30、C40、C50 コンベア
G エンジンユニット
R リアアクスルユニット
R1 4WD用リアアクスルユニット
R2 2WD用リアアクスルユニット
S スプリング
S1 スプリング受け
S10 挿通孔
A 作業エリア
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ状態で搬送される搬送物の下方で、搬送物と同期させて部品を搬送しながら、搬送物の下方から部品を組み付けるための組立搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されている組立搬送設備(自動車の組立ライン)では、自動車のボディをオーバーヘッドコンベアラインにより吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディの下方で、ボディと同期させてエンジンやリアアクスルユニット等の部品を搬送し、ボディの下方から各部品が組み付けられている。このとき、各部品は、ボディと同期して移動可能な搬送台車に設置されたリフタ(昇降テーブル6・7)上に載置され、リフタを上昇させることにより部品がボディに組付可能な高さまで持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−72609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような組立搬送設備のリフタには、部品を支持するための支持部が設けられる。この支持部の位置は、部品の種類によって異なる。例えば図17及び図18に示すようなリアアクスルユニットは、車両幅方向両端に設けられた一対のハブベアリングBと、一対のハブベアリングを連結する中間ビームCと、中間ビームCの幅方向両端部から前方に延びた固定アームEとを有する。図17に示すような4WD用のリアアクスルユニットR1(以下、4WD用リアユニットR1と言う。)は、中間ビームCの幅方向中央部付近にデファレンシャル装置Dが設けられる。4WD用リアユニットR1を支持する場合は、中間ビームC上の2点、及びデファレンシャル装置Dの先端部分を支持することで、ユニット全体を支持できるため、比較的小さい支持幅で安定支持することができる。一方、図18に示すような2WDのリアアクスルユニットR2(以下、2WD用リアユニットR2と言う。)は、デファレンシャル装置が設けられない。このため、ユニットの幅方向外側部のアーム部Eやスプリング受け部S1付近を支持しないと安定支持できず、支持幅が大きくなる。このように支持幅が異なる部品を搭載可能とするために、通常、リフタには複数組の支持部が設けられる。この場合、リフタの幅方向寸法は、最大の支持幅よりも大きくする必要があるため、設備の大型化を招く。
【0005】
本発明の解決すべき課題は、組立搬送設備を小型化して設備スペースを縮小することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持するリフタとを備え、リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、リフタに、リフタから幅方向外側に突出可能な可動部を設け、この可動部に前記部品を搭載することを特徴とする。尚、幅方向とは、搬送方向と直交する水平方向のことを言う(以下同様)。
【0007】
このように、本発明の組立搬送設備は、リフタに、幅方向外側に突出可能な可動部を設け、この可動部に部品を搭載する。リフタから幅方向外側に可動部を突出させることにより、リフタの幅方向寸法を超える支持幅で部品を支持することができるため、リフタの幅方向寸法を最大の支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化を図ることができる。
【0008】
上記の組立搬送設備において、前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載すれば、リフタの上昇動作のみで部品をリフタに搭載することができる。リフタの上昇動作は、吊り下げ搬送された搬送物の高さまで部品を上昇させるために必須の動作であるため、この動作を利用してリフタ上に部品を搭載することで、別途の部品移載工程を省略でき、サイクルタイムの短縮及び組立コストの低減が図られる。
【0009】
このようにリフタの上昇動作によりリフタ上に部品を搭載させる場合、搬入装置が、幅方向に離隔して設けられた一対の側部を備え、搬入装置の両側部の内側であって、両側部の上部に掛け渡されるようにして載置された部品の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させると、搬入装置を持ち上げることなく部品をリフタに搭載することができる。
【0010】
このとき、搬入装置の下方(両側部の内側)にリフタを配置した後、搬入装置の側部よりも幅方向外側に可動部を突出させた状態でリフタを上昇させると、搬入装置の側部と可動部とが干渉する恐れがある。従って、搬入装置の両側部の内側に可動部を配した状態でリフタを上昇させ、可動部が搬入装置の側部よりも上方に配されたときに、可動部を前記側部よりも幅方向外側に突出させれば、可動部と搬入装置との干渉を回避しながら可動部に部品を搭載することができる。
【0011】
ところで、リフタを上昇させて、リフタに搭載した部品を搬送物に組み付ける際、リフタの位置と搬送物の部品組付位置とを完全に一致させることは現実的に不可能であるため、搬送物に組み付ける直前に部品の水平方向位置を微調整する必要がある。例えば上記特許文献1の組立搬送設備は、リフタ上に、搬送方向及び幅方向にスライド可能なワーク支持台が設けられている。しかし、このようなスライド可能なワーク支持台を設けると、リフタの構造が複雑になって設備コスト高を招く。
【0012】
そこで、前記部品に挿通孔を形成すると共に、この挿通孔に挿通可能な挿通ピンをリフタに設け、前記挿通孔に前記挿通ピンを遊嵌状態で挿通することにより、リフタに搭載された前記部品の水平移動を許容すれば、スライド可能なワーク支持台等の大掛かりな機構を設けることなく、部品の組付位置を微調整することができる。例えば、図18に示すような2WD用リアユニットR2の場合、スプリングSを受けるスプリング受けS1に挿通孔を形成すれば、スプリング受けの機能を阻害せず、且つ、必要な強度を維持しながら、部品に位置決め用の挿通孔を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の組立搬送設備によれば、リフタを小型化して設備スペースを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】組立搬送設備の平面図である。
【図2】組立搬送設備の側面図である。
【図3】リフタ内部の昇降手段を示す側面図である。
【図4】リア側のリフタの平面図である。
【図5】リア側のリフタの正面図である。
【図6】リア側のリフタの側面図である。
【図7】フロント側の台車の斜視図である。
【図8】リア側の台車の斜視図である。
【図9】(a)は、フロント側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図であり、(b)は、リア側のリフタにおける下側搬送装置の幅方向断面図である。
【図10】4WD用リアアクスルユニットを台車からリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、(b)正面図、及び(c)平面図である。
【図11】4WD用リアアクスルユニットを台車からリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、及び(b)正面図である。
【図12】リフタに搭載した4WD用リアアクスルユニットの中間ビームの支持部を示す断面図である。
【図13】2WD用リアアクスルユニットを台車からリア側のリフタに搭載する手順を示す(a)側面図、(b)正面図、及び(c)平面図である。
【図14】2WD用リアアクスルユニットのスプリング受けの挿通孔、及びこれに挿通された挿通ピンを示す断面図である。
【図15】(a)〜(d)は、組立搬送設備による組立工程を示す平面図である。
【図16】組立搬送設備の側面図である。
【図17】4WD用リアアクスルユニットの斜視図である。
【図18】2WD用リアアクスルユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る組立搬送設備1は、搬送物としての自動車のボディW(図2参照)を吊り下げ状態で搬送すると共に、このボディWの下方で各種部品を同期させて搬送し、ボディWの下方から各種部品を組み付けるためのものである。図示例では、ボディWのフロント側部分にエンジンユニットGが組み付けられ、ボディWのリア側部分にリアアクスルユニットR及びスプリングSが組み付けられる。尚、以下では、特に説明のない限り、リアアクスルユニットRはこれに装着されるスプリングSを含むものとする。
【0017】
組立搬送設備1は、図1に示すように、ボディWを吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置としてのオーバーヘッドコンベア10(図1では二点鎖線でボディWの搬送方向のみを示している)と、ボディWに組み付けられるエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを搭載し、搬送方向(図1の左右方向)に往復移動可能な下側搬送装置20と、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRを下側搬送装置20の移動経路上に搬入する搬入装置としての台車30及び40と、ツールボックス50とを主に備える。
【0018】
オーバーヘッドコンベア10は、所定方向に(図1では右から左へ)一定速度でボディWを吊り下げ状態で搬送するものである。本実施形態では、図2に示すように、搬送方向に延びたレール11と、レール11から下方に延びたハンガ12と、ハンガ12をレール11に沿って移動させる駆動部(図示省略)とを備える。ハンガ12でボディWを側方から抱え込んで吊り下げ状態で保持した状態で、駆動部を駆動することにより、ハンガ12及びボディWが下流側(図中左側)に搬送される。
【0019】
下側搬送装置20は、搬送方向に往復移動可能とされる。本実施形態では、搬送方向に延びたコンベアC20により駆動され、図1に実線で示す位置と鎖線で示す位置との間で往復移動可能とされる。この下側搬送装置20の移動可能領域が組立搬送設備1における組付作業エリアAとなる。下側搬送装置20の往復移動は、図示しない制御システムにより制御され、オーバーヘッドコンベア10で搬送されるボディWと同期して移動するように制御される。すなわち、ボディWが作業エリアA内で搬送されているときは、下側搬送装置20は、このボディWの真下で、且つ、ボディWと同じ速度で下流側へ搬送される。このボディWが作業エリアAから搬出されたら、下側搬送装置20は上流側に後退し、新たなボディWが作業エリアAに搬入されるまでの間に作業エリアAの上流側端部に配される。新たなボディWが作業エリアAに搬入されたら、このボディWと同期して下流側に搬送される。
【0020】
下側搬送装置20は、ベースプレート22と、複数のリフタ23及び24とを有する。ベースプレート22の上面に、リフタ23及び24が搬送方向に離隔して配される。フロント側のリフタ23にはエンジンユニットGが搭載され、リア側のリフタ24にはリアアクスルユニットRが搭載される。リフタ23とリフタ24との間隔は、ボディWへのエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRの組付位置の間隔に合わせられている(図2参照)。
【0021】
コンベアC20は、搬送方向に延び、搬送方向で何れの方向にも走行可能に設けられる。図示例では、コンベアC20は地面に埋め込まれ、コンベアC20の搬送面(上面)が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC20の搬送面にベースプレート22の下面が固定され、この状態でコンベアC20を走行させることで、下側搬送装置20が搬送方向に搬送される。尚、ここで言う「地面」とは、組立搬送設備1が設置される面を意味し、実際の地上面から浮かせた設置面も含む。
【0022】
リフタ23及び24は、図2に示すように、昇降テーブル23a・24aと、昇降テーブル23a・24aを昇降させる昇降手段とを有する。昇降手段として、例えば図3に示すように、2本のチェーン61a・61bが噛合して1本の硬い棒状のチェーンとなるジップチェーン61を採用することができる。ジップチェーン61は、一対のチェーンケース62の内部にそれぞれ収容されたチェーン61a・61bが、サーボモータ(図示省略)で駆動されるチェーンローラ63a・63bにより送り出され、幅方向中央部で噛合して棒状となって上方に延びる。この硬い棒状となったジップチェーン61で、昇降テーブル23a(あるいは昇降テーブル24a、本段落において以下同様)が持ち上げられる。図示例では、昇降テーブル23aの姿勢を水平に保つために、パンタグラフ64が幅方向両側に設けられる(図3では奥側のパンタグラフ64のみを示す)。ジップチェーン61は、チェーンローラ63a・63bの駆動力をほとんど遊びのない状態で昇降テーブル23aに伝達することができるため、昇降テーブル23aの位置を正確に制御することができる。また、チェーンローラ63a・63bの駆動をサーボモータで行うことで、例えば油圧シリンダを用いる場合と比べて遊びがさらに小さくなり、昇降テーブル23aの位置をより正確に制御することができる。
【0023】
リフタ23・24は、制御システム(図示省略)による自動制御により昇降され、下側搬送装置20の搬送距離に応じて適宜の高さに設定される。また、リフタ23・24には昇降テーブル23a・24aを手動で昇降させるためのスイッチ23b・24bが設けられ、このスイッチ23b・24bを作業者が操作することにより昇降テーブル23a・24aの高さを微調整することができる。フロント側のリフタ23の昇降テーブル23aには、エンジンユニットGを搭載した台車30を支持する支持部23a1が設けられ、リア側のリフタ24の昇降テーブル24aには、リアアクスルユニットRを直接支持する支持部が設けられる。
【0024】
リア側のリフタ24には、図4〜6に示すように、リフタ24から幅方向外側に突出可能な可動部として、回転アーム70が設けられる。本実施形態では、リア側のリフタ24の上面に、幅方向対称位置に配された一対の回転アーム70が設けられる。一対の回転アーム70は、それぞれシリンダ72が接続され、このシリンダ72により各回転アーム70が支点71を中心に回動可能に設けられる。図4〜6に実線で示す状態は、シリンダ72を突出させて各回転アーム70を搬送方向と平行にした状態であり、このとき各回転アーム70はリフタ24の幅方向領域内にほぼ収容される。この状態からシリンダ72を退入させると、各回転アーム70が支点71を中心に水平面内で回動し、各回転アーム70がリフタ24から幅方向外側に突出する(図4〜6の点線参照)。このとき、各回転アーム70は幅方向と平行となっている。
【0025】
リフタ24の上面には、部品を搭載するための支持部が設けられる。本実施形態では、4WD用リアユニットR1(図17参照)を支持するための、支持幅の小さい第1支持部73と、2WD用リアユニットR2(図18参照)を支持するための、支持幅の大きい第2支持部74とが設けられる。第1支持部73は、回転アーム70の基端部(リフタ24から幅方向外側に突出しない側の端部、以下同様)に設けられたビーム支持部73aと、リフタ24の上面に固定されたデフ支持部73bとからなる。ビーム支持部73bは、4WD用リアユニットR1の中間ビームCを支持し、デフ支持部73bは、デファレンシャル装置Dを支持する。ビーム支持部73a及びデフ支持部73bの上面には略V字状の凹部が形成される。第2支持部74は、回転アーム70の先端部に設けられ挿通ピン74aと、回転アーム70の挿通ピン74aよりも基端側に設けられたビーム支持部74bとからなる。挿通ピン74aは、2WD用リアユニットR2のスプリング受けS1に設けられた挿通孔S10に挿通される(図13(c)参照)。ビーム支持部74bは、その上面が平坦に形成され、2WD用リアユニットR2の中間ビームCを下方から支持する。また、リフタ24には、各ユニットに取り付けられるスプリングSを保持するスプリング保持部75が設けられる。
【0026】
下側搬送装置20には、後退時の障害物を検知するための非接触式センサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、ベースプレート22の上流側端部に、光源26からの光を検知可能な光センサ25が設けられる。光センサ25は、通常、光源26からの光を検知してONになっているが、光センサ25と光源26との間に障害物があると、光源26の光が光センサ25に届かず、光センサ25がOFFとなる。このONからOFFへ切り替わった信号が制御システム(図示省略)に伝達され、この信号により制御システムが障害物の存在を認識し、下側搬送装置20の搬送が停止される。これにより、下側搬送装置20が、後退時に障害物(人など)と接触する事態を未然に防止することができる。尚、接触バンパ(図示省略)等の接触式センサにより障害物を検知することも可能であるが、衝突する前に障害物を検知することができる点で、上記のような非接触式センサが好ましい。また、下側搬送装置20は、作業者による作業が行われながらゆっくり前進するため、図示例では前方の障害物を検知するセンサは設けていないが、もちろん、前進時の障害物との衝突を確実に回避するために上記のような非接触式センサを下側搬送装置20の前方に設けても良い。さらに、図1では非接触式センサをベースプレート22の一箇所にのみ設けているが、非接触式センサを幅方向の複数箇所に設ければ、より正確に障害物の有無を検知することができる。
【0027】
フロント側の台車30は、フロント側のリフタ23にエンジンユニットGを搬入するものであり、リフタ23の上昇によりエンジンユニットGと共に持ち上げられる構成となっている。具体的には、図7に示すように、エンジンユニットGが載置される矩形状の天板31と、天板31の四隅から下方に延びた4本の脚部32と、脚部32の下端に設けられた車輪33とを備える。
【0028】
リア側の台車40は、リア側のリフタ24にリアアクスルユニットRを搬入するものであり、リフタ24の上昇により持ち上げられることなく、リアアクスルユニットRをリフタ24に搭載可能な構成となっている。具体的には、図8に示すように、フレーム41と、フレーム41から下方に延びた4本の脚部42と、脚部42の下端に設けられた車輪43とを備える。フレーム41は、幅方向に離隔して平行に設けられた一対の側部としての側部フレーム41aと、一対の側部フレーム41aの一方の端部(上流側端部)を幅方向に連結する連結フレーム41bとからなり、上面視で略コの字型をなしている。フレーム41には、リアアクスルユニットRを支持する支持部44が設けられる。
【0029】
図9(a)及び(b)に示すように、台車30の脚部32の幅方向間隔W1、及び台車40の脚部42の幅方向間隔W2は、何れも下側搬送装置20の幅W0(図示例ではベースプレート22の幅)よりも大きく設定される(W1>W0、W2>W0)。また、台車30の天板31の下端までの高さH1、及び台車40のフレーム41の下端までの高さH2は、何れもリフタ23及び24を最下方位置に降下させた状態の下側搬送装置20の高さH0(図示例では支持部73・74の上端までの高さ)よりも高く設定される(H1>H0、H2>H0)。以上により、台車30・40の天板31・フレーム41の下方に形成されるスペースに、下側搬送装置20を潜り込ませて配置することが可能となる。
【0030】
組立搬送設備1には、台車30・40を作業エリアA内に搬入する駆動手段が設けられる。本実施形態では、図1に示すように、台車30・40をそれぞれ別々に駆動する複数の駆動手段として、搬送方向に延び、作業エリアAの内部と外部とを跨いで設けられた複数のコンベアC30及びC40が設けられる。コンベアC30及びC40は、上述のコンベアC20と同様に、地面に埋め込まれて設置され、搬送面が地面とほぼ同一平面上に配される。コンベアC30はフロント側の台車30を搬送するものであり、フロント側の台車30の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。コンベアC40はリア側の台車40を搬送するものであり、リア側の台車40の車輪幅に合わせて設けられた平行な2本のコンベアからなる。図示例では、リア側の台車40の車輪幅がフロント側の台車30の車輪幅よりも若干大きく、これによりコンベアC30の幅方向外側にコンベアC40が設けられている。
【0031】
ツールボックス50は、組付に要する工具や組付部品(ネジ等)が搭載され、下側搬送装置20の幅方向両側に設けられる。ツールボックス50は、コンベアC50によって搬送方向で往復移動可能とされ、図1に示すように、下側搬送装置20のフロント側のリフタ23の幅方向両側と、リア側のリフタ24の幅方向両側にそれぞれ1台ずつ、計4台配される。これのより、各リフタ23・24の幅方向両側から組付作業を行う4名の作業者それぞれの背後に、ツールボックス50が配される。ツールボックス50は下側搬送装置20と同期して搬送され、これにより必要な工具等を常に作業者の近くに配することができる。
【0032】
ここで、上記構成の組立搬送設備1において、リア側の台車40からリア側のリフタ24に部品(リアアクスルユニットR)を搭載する手順を説明する。尚、ここでは、支持幅の異なる2種類の部品、具体的には4WD用リアユニットR1と2WD用リアユニットR2とを搭載する手順をそれぞれ説明する。
【0033】
4WD用リアユニットR1を台車40からリフタ24に搭載する場合、まず、図10(a)〜(c)に示すように、最下方位置まで降下させたリフタ24を台車40の下方に配置する。具体的には、リフタ24を、台車40の一対の側部フレーム41aの内側であって、且つ、連結フレーム41bの下流側に配置し、これにより台車40の支持部44に搭載された4WD用リアユニットR1の下方にリフタ24が配置される。このとき、図10(c)に示すように、一対の回転アーム70は搬送方向に平行な状態とされ、台車40の一対の側部フレーム41aの内側に配されている。また、4WD用リアユニットR1の中間ビームCの下方には、回転アーム70に設けられたビーム支持部73aが配され、デファレンシャル装置Dの下方にはデフ支持部73bが配される。この状態でリフタ24を上昇させると、図11(a)及び(b)に示すように、中間ビームC及びデファレンシャル装置Dが、それぞれビーム支持部73a及びデフ支持部73bにより下方から持ち上げられ、これにより4WD用リアユニットR1が台車40からリフタ24に搭載される。
【0034】
これと同時に、リフタ24に設けられたスプリング保持部75が、台車40の支持部44のスプリングSを下方から持ち上げ、これによりスプリングSがリフタ24に搭載される。このように、スプリングSをリフタ24に搭載することで、リフタ24付近で作業している作業者が別途設けられたストックエリア等にスプリングSを取りに行く手間が省け、作業効率が高まる。
【0035】
一方、2WD用リアユニットR2をリフタ24に搭載する場合は、まず、上記と同様に、一対の回転アーム70を台車40の側部フレーム41aの内側に配した状態で、台車40の下方にリフタ24を配置する(図10参照)。この状態でリフタ24を上昇させ、回転アーム70の高さが台車40のフレーム41を越えたら、回転アーム70を回転させて、その先端部をリフタ24の幅方向両側に突出させる(図13参照)。このとき、各回転アーム70の先端部は、台車40の側部フレーム41aよりも幅方向外側に配され、その先端部に設けられた挿通ピン74aが、2WD用リアユニットR2のスプリング受けS1に設けられた挿通孔S10の下方に配される。この状態で、リフタ24をさらに上昇させると、2WD用リアユニットR2の挿通穴S10に挿通ピン74aが下方から挿入されると共に、中間ビームCがビーム支持部74bで下方から持ち上げられ、これにより2WD用リアユニットR2が台車40からリフタ24に搭載される。尚、図13では、図の簡略化のため、スプリングS、スプリング保持部75、及び台車40のスプリングの支持部44を省略している。また、台車40に設けられる支持部44は、支持する部品の種類によって異なるが、図10・図11では4WD用リアユニットR1を支持する支持部のみを示し、図13では2WD用リアユニットR2を支持する支持部のみを示している。
【0036】
このように、先端部をリフタ24から幅方向外側に突出可能な回転アーム70を設け、この回転アーム70の先端部に部品を支持する支持部(挿通ピン74a)を設けることで、リフタ24の幅方向寸法を超える支持幅を得ることができる。これにより、リフタ24の幅方向寸法は、2WD用リアユニットR2を支持するための広い支持幅よりも小さくすることができ、設備の小型化が図られる。
【0037】
また、リフタ24に搭載された4WD用リアユニット(図11参照)は、水平方向位置を微調整することができる。すなわち、回転アーム70に設けられたビーム支持部73aは、図12に示すように、4WD用リアユニットR1の中間ビームCを、その搬送方向の移動を僅かに許容した状態で保持している。具体的には、ビーム支持部73aの上面に形成された略V字状の凹部73a1の底面に、水平な平坦面73a2を形成することにより、凹部73a1内に載置された中間ビームCが平坦面73a2上で搬送方向(図10(c)のY方向)に僅かにスライド可能とされる。これにより、ボディWに固定されるアーム部Eの先端部を搬送方向及び幅方向(図10(c)のX方向)に僅かにスライドさせて、その水平方向位置を微調整することができる。
【0038】
また、リフタ24に搭載された2WD用リアユニットR2も、水平方向位置を微調整することができる。すなわち、図14に示すように、2WDユニットR2のスプリング受けS1に形成された挿通孔S10と、挿通孔S10の内周に挿入された挿通ピン74aとを、比較的大きな隙間を介して嵌合させた遊嵌状態とする。一方、中間ビームCを下方から支持するビーム支持部74bの上面は平坦面であるため(図5参照)、中間ビームCはビーム支持部74bにより水平方向に拘束されない。従って、2WD用リアユニットR2は、挿通孔S10と挿通ピン74aとの間の隙間の分だけ、水平方向に移動可能とされる。
【0039】
以上のように、4WD用リアユニットR1及び2WD用リアユニットR2の何れをリフタ24に搭載した場合であっても、スライド板等の大掛かりな機構を要することなく、非常に簡略な機構で各ユニットR1・R2の水平方向位置を微調整することができる。これにより、各ユニットR1・R2をボディWに組み付ける際、各ユニットR1・R2の水平方向位置を微調整してボディWの組付位置に正確に配置することができる。
【0040】
以下、上記構成の組立搬送設備1における組付手順を説明する。尚、図15では、ボディWが図中の右から左へ向けて搬送され、オーバーヘッドコンベア10、ボディW、及びツールボックス50等の記載を省略している。
【0041】
まず、図15(a)に矢印で示すように、エンジンユニットGを搭載したフロント側の台車30をコンベアC30上に搬入すると共に、リアアクスルユニットRを塔載したリア側の台車40をコンベアC40上に搬入する。このとき、台車30及び40は、搬送方向に隣接させた状態(搬入に支障がない程度に近接させた状態)で各コンベアC30・C40上に搬入される。これにより、例えば台車30・40を離隔した状態でコンベア上に搬入する場合と比べて、作業エリアAの上流側に確保すべきスペースを縮小することができる。
【0042】
この間、作業エリアAでは、下側搬送装置20がボディWと同期して下流側に搬送され、下側搬送装置20に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをボディWに組み付ける作業が行われている。
【0043】
次に、図15(b)に矢印で示すように、コンベアC30・C40を駆動して台車30・40を下流側に搬送し、作業エリアA内に搬入する。台車30及び40は、それぞれ別々のコンベアC30及びC40で搬送され、隣接した状態でコンベアC30・C40上に搬入された台車30・40は、その間隔を広げながら搬送される。台車30・40の作業エリアAへの搬入が完了した時点で、各台車に載置されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが、ボディWへの組付位置に対応した間隔で配されるように、台車30・40同士の間隔が設定される。
【0044】
この間も、下側搬送装置20はボディWと同期して下流側に搬送され、各部品の組付作業が続けられ、下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部に達するまでの間に組付作業が完了する(図15(b)では、組み付けられたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下側搬送装置20上から無くなっている)。下側搬送装置20が作業エリアAの下流側端部まで達したら、下側搬送装置20を停止させ、リフタ23・24を降下させる。これにより、持ち上げられていた台車30が接地され、台車30の天板31からリフタ23の支持部23a1が離隔し、空の台車30と下側搬送装置20とが分離される。
【0045】
下側搬送装置20のリフタ23・24を最下方位置まで降下させたら、コンベアC20を搬送方向とは逆向きに駆動し、下側搬送装置20を上流側に後退させる。このとき、下側搬送装置20には非接触式センサ(光センサ25、図1参照)が設けられているため、下側搬送装置20の上流側における障害物の有無を確実に検知することができる。また、図15(c)に示すように、下側搬送装置20から分離された空の台車30は作業エリアAの下流側端部に残される。この空の台車30は、別途の搬送手段によりエンジンの組立ライン(図15(d)にL1で示す)へと搬送される。組立ラインL1では、エンジンユニットGを組み立てながら台車30に載せて搬送し、組み上がったエンジンユニットGを搭載した台車30がコンベアC20の上流側端部付近に順次配置される。
【0046】
コンベアC20の上流側端部まで後退した下側搬送装置20は、台車30及び40の下方に潜り込む(図15(c)参照)。これによりエンジンユニットGの下方にフロント側のリフタ23が配置されると共に、リアアクスルユニットRの下方にリア側のリフタ24が配置される(図2参照)。この状態でリフタ23を上昇させると、図16に示すように、昇降テーブル23aの上面に設けられた支持部23a1で台車30の天板31が下方から支持され、台車30と共にエンジンユニットGが持ち上げられる。このように、リフタ23で台車30ごとエンジンユニットGを持ち上げることにより、エンジンユニットGは台車30上に載置するだけでよいため、台車30にエンジンユニットGを支持する特別な支持部を設ける必要はない。従って、エンジンユニットGの種類が変わっても、同じ台車30を使用することができる。一方、リフタ24を上昇させると、上述のように、昇降テーブル24aが台車40の側部フレーム41aの内側を通過し、支持部73・74でリアアクスルユニットRのみを持ち上げ、リア側の台車40は接地した状態とされる。
【0047】
そして、コンベアC40を逆方向に走行させ、空になったリア側の台車40を上流側に後退させ、下側搬送装置20から分離する。この台車40が上流側端部まで達したら別途の駆動手段によりリアアクスルユニットRの塔載ライン(図15(d)にL2で示す)へと搬送する。搭載ラインL2では、リアアクスルユニットRの各部品を台車40に順に搭載しながら台車40を搬送し、リアアクスルユニットRを塔載した台車40がコンベアC40の上流側端部付近に順次配置される。
【0048】
各部品(エンジンユニットG及びリアアクスルユニットR)をリフタ23・24に搭載した下側搬送装置20の上方に新たなボディWが搬送されてきたら、このボディWと同期して下側搬送装置20が下流側に搬送される。これと共に、リフタ23・24がさらに上昇し、各部品がボディWの組付位置に配される。このとき、各部品の高さがボディWの組付位置に合っていない場合は、作業者のスイッチ操作で高さが微調整される。また、各部品の水平方向位置がボディWの組付位置に合っていない場合は、各部品が作業者の手によりリフタ上で動かされ、水平方向位置が微調整される。こうして、ボディWと各部品が同期して下流側に搬送されながら、各部品をボディWの組付位置に正確に配置し、両者の組付作業が行われる。
【0049】
上記サイクルを繰り返すことにより、オーバーヘッドコンベア10により順次搬送されてくるボディWに、エンジンユニットG及びリアアクスルユニットRが下方から組み付けられる。
【0050】
上記の組立搬送設備1では、図2及び図16に示すように、リフタ23・24を上昇させるだけで、台車30・40に搭載されたエンジンユニットG及びリアアクスルユニットRをリフタ23・24上に搭載することができるため、別途の移載工程や移載スペースを省略することができる。また、部品をリフタ上に搭載するために下側搬送装置20に台車等を隣接させる必要がなく、下側搬送装置20の幅方向両側に作業スペースを確保することができるため、リフタ23・24上への部品の搭載中(すなわちリフタ23・24の上昇中)でも作業者が組付作業を行うことができる。さらに、下側搬送装置20が作業エリアAの上流側端部に戻ってくるまでの間に、台車30・40の作業エリアAへの搬入を完了しておくことで、無駄な時間を減らしてサイクルタイムを短縮することができる。
【0051】
また、例えば作業エリアAの幅方向から台車を搬入すると、台車が作業エリアA内の作業者と干渉する恐れがあるが、図15(b)に示すように、下側搬送装置20の搬送経路の延長方向から台車30・40を作業エリアA内に搬入することで、作業者と干渉することなく、下側搬送装置20の搬送経路上に台車30・40を搬入することができる。
【0052】
また、図15(d)に示すように、フロント側の台車30を作業エリアAの出口(下流側端部)まで搬送すると共に、リア側の台車40を作業エリアAの入口(上流側端部)に留めることにより、台車30が搬送されるエンジン組立ラインL1と、台車40が搬送されるリアアクスル搭載ラインL2とを、組立搬送設備1の幅方向一方側で、且つ、交差させることなく配置することができるため、各ラインの構造を簡略化することができる。
【0053】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、リア側のリフタ24に設けられる可動部が、水平面内で回転する回転アーム70である場合を示しているが、これに限らず、例えば垂直面内で回転する回転アームや、あるいは油圧シリンダ等の幅方向に沿って突出可能な可動部を適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 組立搬送設備
10 オーバーヘッドコンベア(上側搬送装置)
20 下側搬送装置
23、24 リフタ
30、40 台車(搬入装置)
50 ツールボックス
70 回転アーム(可動部)
71 支点
72 シリンダ
73a ビーム支持部
73b デフ支持部
74a 挿通ピン
74b ビーム支持部
75 スプリング保持部
W ボディ
C20、C30、C40、C50 コンベア
G エンジンユニット
R リアアクスルユニット
R1 4WD用リアアクスルユニット
R2 2WD用リアアクスルユニット
S スプリング
S1 スプリング受け
S10 挿通孔
A 作業エリア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持するリフタとを備え、リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、
リフタに、リフタから幅方向外側に突出可能な可動部を設けると共に、この可動部に前記部品を支持するための支持部を設けたことを特徴とする組立搬送設備。
【請求項2】
前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載する請求項1記載の組立搬送設備。
【請求項3】
搬入装置が、幅方向に離隔して設けられた一対の側部を備え、搬入装置の両側部の内側であって、両側部の上部に掛け渡されるようにして載置された前記部品の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより、搬入装置を持ち上げることなく前記部品をリフタに搭載する請求項2記載の組立搬送設備。
【請求項4】
搬入装置の両側部の内側に前記可動部を配した状態でリフタを上昇させ、前記可動部が搬入装置の前記側部よりも上方に配されたときに、前記可動部を前記両側部よりも幅方向外側に突出させる請求項3記載の組立搬送設備。
【請求項5】
前記部品に挿通孔を形成すると共に、この挿通孔に挿通可能な挿通ピンをリフタに設け、前記挿通孔に前記挿通ピンを遊嵌状態で挿通することにより、リフタに搭載された前記部品の水平移動を許容した請求項1〜4の何れかに記載の組立搬送設備。
【請求項1】
搬送物を吊り下げ状態で搬送する上側搬送装置と、前記搬送物の下方で、前記搬送物の搬送方向と同方向で往復移動可能な下側搬送装置と、下側搬送装置に設けられ、搬送物に組み付ける部品を昇降可能に支持するリフタとを備え、リフタに搭載した部品を前記搬送物と同期させて搬送しながら、前記搬送物の下方から前記部品を組み付ける組立搬送設備であって、
リフタに、リフタから幅方向外側に突出可能な可動部を設けると共に、この可動部に前記部品を支持するための支持部を設けたことを特徴とする組立搬送設備。
【請求項2】
前記部品を搭載した搬入装置を下側搬送装置の移動経路内に搬入し、この搬入装置の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより前記部品をリフタに搭載する請求項1記載の組立搬送設備。
【請求項3】
搬入装置が、幅方向に離隔して設けられた一対の側部を備え、搬入装置の両側部の内側であって、両側部の上部に掛け渡されるようにして載置された前記部品の下方にリフタを配置し、この状態でリフタを上昇させることにより、搬入装置を持ち上げることなく前記部品をリフタに搭載する請求項2記載の組立搬送設備。
【請求項4】
搬入装置の両側部の内側に前記可動部を配した状態でリフタを上昇させ、前記可動部が搬入装置の前記側部よりも上方に配されたときに、前記可動部を前記両側部よりも幅方向外側に突出させる請求項3記載の組立搬送設備。
【請求項5】
前記部品に挿通孔を形成すると共に、この挿通孔に挿通可能な挿通ピンをリフタに設け、前記挿通孔に前記挿通ピンを遊嵌状態で挿通することにより、リフタに搭載された前記部品の水平移動を許容した請求項1〜4の何れかに記載の組立搬送設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−73594(P2011−73594A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227615(P2009−227615)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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