説明

組立鉄筋

【課題】杭穴の底部の拡径された部分に上下2段の拡径部鉄筋とせん断補強筋を容易に配筋することができる組立鉄筋を提供する。
【解決手段】狭径部鉄筋2に上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32とを回動可能に取り付け、上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32との間にせん断補強筋33を回動可能に取り付け、上段側拡径部鉄筋31の定着部31aに連結部材5を介してスライド部材4を連結して組立鉄筋1を構成する。組立鉄筋1を吊り下げると、スライド部材4の荷重によって、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が上方に回動する。組立鉄筋1を杭穴Hに配置すると、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が杭穴Hの拡径部Hbに水平に配置され、上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32の間にせん断補強筋33が所定間隔で配筋される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部が拡径された杭の構築に適した組立鉄筋に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部が拡径された場所打ち杭の構築に用いる組立鉄筋(「鉄筋籠」ともいう。)として、本出願人は、例えば特許文献1に、円筒状の狭径部鉄筋に、拡径部に配置する拡径部鉄筋を回動自在に取り付け、この拡径部鉄筋の定着部側に連結部材を介してスライド部材を取り付けたものを開示している。
【0003】
特許文献1に記載の組立鉄筋は、クレーンなどで組立鉄筋を吊り下げた状態では、スライド部材は、狭径部鉄筋の下端よりも突出しており、拡径部鉄筋は、スライド部材の重量によって先端側が上方に回動した状態となっている。そして、スライド部材が杭穴の底面に当接すると、狭径部鉄筋の定着部側を下方に引っ張っていた力が弛み、拡径部鉄筋の先端側が下方に回動して、狭径部鉄筋の設置が完了した状態で、拡径部鉄筋が略水平に配置されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−257856号公報(図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、杭の頭部に作用する荷重と杭の底面に作用する地盤反力とを考慮すると、杭の拡径部は、杭から張り出した片持ち梁のように機能し、杭の拡径部の下端側に引張力が作用する。そのため、杭の拡径部の下端側に鉄筋を配筋する必要がある。
また、杭の拡径部と狭径部の境界付近には、大きなせん断力が作用する。そのため、杭の拡径部に上下2段に鉄筋を配筋し、両者の間にせん断補強筋を配筋する必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載の組立鉄筋では、杭穴の拡径部に上下2段に拡径部鉄筋を配置すること、及び、せん断補強筋を配筋することができなかった。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、杭穴の底部の拡径された部分に上下2段の拡径部鉄筋とせん断補強筋を容易に配筋することができる組立鉄筋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底部が拡径された杭穴に配置される組立鉄筋であって、前記杭穴の狭径部に配置される狭径部鉄筋と、前記狭径部鉄筋の下端から上方に離間した位置に回動可能に連結された複数の上段側拡径部鉄筋と、前記上段側拡径部鉄筋よりも、前記狭径部鉄筋の下端に近い位置に回動可能に連結された複数の下段側拡径部鉄筋と、一端側が前記上段側拡径部鉄筋に回動可能に連結され、他端側が前記下段側拡径部鉄筋に回動可能に連結された複数のせん断補強筋と、前記組立鉄筋が杭穴の底面に接触する前の状態において、前記狭径部鉄筋の下端から突出するように配置され、前記狭径部鉄筋に対して上下方向にスライド可能に構成されたスライド部材と、一端側が前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋の少なくともいずれか一方に回動可能に連結され、他端側が前記スライド部材に回動可能に連結された連結部材と、を備え、前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記狭径部鉄筋との連結位置よりも前記杭穴の中心寄りに位置する定着部をそれぞれ有し、前記スライド部材は、前記連結部材を介して前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋の少なくともいずれか一方の前記定着部に連結され、前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記狭径部鉄筋の前記杭穴への設置が完了した状態において、前記杭穴の拡径部に略水平に配置されることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、例えば、スライド部材が上段側拡径部鉄筋の定着部に連結部材を介して連結されている場合、クレーンなどで組立鉄筋を吊り下げている状態では、スライド部材によって定着部が下向きに引っ張られ、上段側拡径部鉄筋の先端側が上向きに回動した状態になる。また、下段側拡径部鉄筋は、せん断補強筋を介して上段側拡径部鉄筋に引っ張られて上向きに回動した状態になる。これにより、組立鉄筋の径方向の寸法が小さくなり、杭穴の狭径部を通過することが可能となる。
【0008】
そして、スライド部材が杭穴の底面に当接した後、さらに狭径部鉄筋が降下すると、上段側拡径部鉄筋を上向きに回動させていた力が弛み、上段側拡径部鉄筋が下向きに回動する。また、これに伴い、上段側拡径部鉄筋にせん断補強筋を介して連結された下段側拡径部鉄筋も下向きに回動する。そして、狭径部鉄筋の杭穴への配置が完了した状態において、上段側拡径部鉄筋及び下段側拡径部鉄筋は、杭穴の拡径部に略水平に配置されるとともに、上段側拡径部鉄筋と下段側拡径部鉄筋の間にせん断補強筋が配筋されることとなる。
【0009】
また、前記せん断補強筋は、枠状に形成されており、前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記せん断補強筋の内側に配置されているのが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、せん断補強筋が枠状に形成されているので、せん断強度を効果的に向上させることができる。
なお、一つのせん断補強筋の内側に、複数の上段側拡径部鉄筋と、複数の下段側拡径部鉄筋が配筋されるのが好ましい。
【0011】
また、前記狭径部鉄筋は、大径部と、大径部の下方に連続して形成され、当該大径部よりも径の小さい小径部と、を備え、前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記小径部に回動可能に連結されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、上段側拡径部鉄筋及び下段側拡径部鉄筋は、狭径部鉄筋のうち、大径部よりも径の小さい小径部に回動可能に連結されているので、吊り下げた状態における組立鉄筋の径方向の寸法を一層小さくすることができる。そのため、杭穴の掘削量を削減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、杭穴の底部の拡径された部分に上下2段の拡径部鉄筋とせん断補強筋を容易に配筋可能な組立鉄筋を提供することができる。
その結果、底部拡径杭の先端支持力を確実に増大させることが可能となり、また、底部拡径杭の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[組立鉄筋1の構造]
はじめに、組立鉄筋1の構造について説明する。
図1は、第1実施形態に係る組立鉄筋を示した側面図である。図2は、図1に示すI−I矢視平面図である。図3は、拡径部鉄筋の一部を拡大して示した斜視図である。
【0016】
組立鉄筋1は、図1に示すように、杭穴Hの内部に配置される鉄筋であり、杭穴Hの径(幅)の狭い部分である狭径部Haに主に配置される狭径部鉄筋2と、杭穴Hの径が拡径された部分である拡径部Hbに配置される拡径部鉄筋3と、狭径部鉄筋2の内部に配置されるスライド部材4と、拡径部鉄筋3とスライド部材4とを連結する連結部材5と、から構成されている。
ここで、杭穴Hは、例えば、一定の直径で地盤を掘削して狭径部Haを構築した後、専用の掘削装置(拡径装置)を用いて、その底部付近を拡径させることによって拡径部Hbを構築することにより形成されている。なお、拡径部Hbの上部には、テーパ部Heが形成されている。
【0017】
狭径部鉄筋2は、図1に示すように、複数の棒状の主筋21,21…と、複数のリング状のフープ筋22,22…とを組み合わせて全体として筒状に形成された鉄筋である。主筋21,21…は、その軸方向を杭の軸方向と平行にした状態で、杭の中心軸回りに環状に配筋されている。また、複数のフープ筋22,22…は、杭の軸方向に互いに離間された状態で、環状に配筋された主筋21,21…の外周に嵌め合わされている。狭径部鉄筋2は、主に、杭穴Hの狭径部Haに配置されるとともに、その下端部2aは、拡径部Hbを通って杭穴Hの底面Hcに達している。
【0018】
拡径部鉄筋3は、図1に示すように、組立鉄筋1を杭穴Hに設置したときに、拡径部Hbに配筋される鉄筋である。拡径部鉄筋3は、複数の上段側拡径部鉄筋31と、複数の下段側拡径部鉄筋32と、複数のせん断補強筋33と、から構成されている。
【0019】
上段側拡径部鉄筋31は、図1に示すように、拡径部Hbに略水平に配置される部材であり、狭径部鉄筋2の下端部2aから上方に離間した位置に回動可能に固定されている。上段側拡径部鉄筋31は、主筋21との連結部7よりも杭穴Hの中心寄りの位置に定着部31aを有している。定着部31aは、中間部をL字状に折り曲げるとともに、端部をJ字状に折り曲げて形成されている。
上段側拡径部鉄筋31は、図2、図3に示すように、平面視略U字状に形成されている。第1実施形態では、8個の上段側拡径部鉄筋31が、狭径部鉄筋2の周囲に、放射状に取り付けられている。
【0020】
下段側拡径部鉄筋32は、図1に示すように、拡径部Hbに略水平に配置される部材であり、上段側拡径部鉄筋31よりも狭径部鉄筋2の下端部2aに近い位置に回動可能に固定されている。下段側拡径部鉄筋32は、主筋21との連結部7よりも杭穴Hの中心寄りの位置に定着部32aを有している。定着部32aは、中間部をL字状に折り曲げるとともに、端部をJ字状に折り曲げて形成されている。
下段側拡径部鉄筋32は、図3に示すように、上段側拡径部鉄筋31と同一の形状を呈しており、平面視で上段側拡径部鉄筋31と重なる位置に、放射状に設置されている。
【0021】
図4(a)は狭径部鉄筋と上段側拡径部鉄筋の連結部の拡大斜視図であり、(b)は(a)のA−A矢視側面図である。
上段側拡径部鉄筋31と狭径部鉄筋2との連結部7は、図4(a)に示すように、有底筒状の一対の筒状部材71、71と、軸部材72とから構成されている。一対の筒状部材71は、隣り合う主筋21に溶接固定されており、互いに開口部を対向させた状態で配置されている。軸部材72は、その両端部を各筒上部材71の中空部に挿入することにより、回動自在になっている。上段側拡径部鉄筋31は、この軸部材72に溶接固定されることにより、狭径部鉄筋2に対して回動可能に連結されることとなる。
なお、下段側拡径部鉄筋32と狭径部鉄筋2との連結部7も同様の構造であるので、詳細な説明を省略する。
【0022】
上段側拡径部鉄筋31は、図4(a),(b)に示すように、略水平な状態のときに軸部材72の下側に位置するように、軸部材72に取り付けられている。
このように取り付けると、図4(b)に仮想線(2点鎖線)で示すように、上段側拡径部鉄筋31が回動したとき(畳まれたとき)に、上段側拡径部鉄筋31を主筋21と略平行な状態にすることができる。このとき、上段側拡径部鉄筋31と主筋21の間には、連結部7の幅寸法に応じた隙間ができるが、この隙間に後記するせん断補強筋33の上端部33aを挿通する筒状部材31bが納まることとなる。そのため、組立鉄筋1を吊り下げたときに、組立鉄筋1の径方向の寸法を小さくすることができる。
下段側拡径部鉄筋32も同様である。
【0023】
せん断補強筋33は、図1に示すように、上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32とを連結する部材である。
せん断補強筋33は、図3に示すように、枠状に形成されており、この枠の中に、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が配置されている。
せん断補強筋33の上端部33aは、上段側拡径部鉄筋31の上側に固定された筒状部材31bに挿通されている。また、せん断補強筋33の下端部33bは、下段側拡径部鉄筋32の下側に固定された筒状部材32bに挿通されている。これにより、せん断補強筋33は、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32に回動可能に連結されている。
せん断補強筋33は、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。杭の拡径部に作用するせん断力は、狭径部鉄筋2に近いほど大きくなるので、狭径部鉄筋2から遠い部分に配置されたせん断補強筋33同士の間隔よりも、狭径部鉄筋2に近い部分に配置されたせん断補強筋33同士の間隔を小さくするのが好ましい。
また、せん断補強筋33は、図2に示すように、径方向外側に配置されているものほど、幅寸法が大きくなっている。このようにすれば、組立鉄筋1を吊り下げたときに、せん断補強筋33同士が重ならず、径方向の寸法を小さくすることができる。
【0024】
なお、最も先端側のせん断補強筋33’は、図3に示すように、枠状ではなく棒状に形成されており、その両端部に筒状部材33’aが固定されている。そして、この筒状部材33’aに上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32とがそれぞれ挿通されている。ちなみに、この最も先端側のせん断補強筋33’は、他のせん断補強筋33と同様の構造にしてもよいし、省略してもかまわない。
【0025】
スライド部材4は、上段側拡径部鉄筋31を回動させる錘となる部材であり、狭径部鉄筋2に対して相対的にスライド可能に構成されている。
スライド部材4は、図1に示すように、複数の棒状の鉄筋41を垂直に立てて環状に配列するとともに、その外側にリング状のフープ筋42を嵌め合わせて全体として円筒状に形成された部材である。スライド部材4は、狭径部鉄筋2よりも小径に形成されており、狭径部鉄筋2の内側に同心で配置されている。また、スライド部材4は、複数の連結部材5と複数の上段側拡径部鉄筋31とを介して狭径部鉄筋2に連結されている。
【0026】
連結部材5は、図1に示すように、上段側拡径部鉄筋31とスライド部材4を連結する部材である。連結部材5は、図2に示すように、枠状に形成されている。連結部材5の上端側は、上段側拡径部鉄筋31の定着部31aに固定された筒状部材に挿通されている。また、連結部材5の下端側は、スライド部材4の上端部に固定された筒状部材に挿通されている。連結部材5は、後記するように、狭径部鉄筋2の下端部2aが杭穴Hの底面Hcに着地したときに、拡径部鉄筋3が略水平に配置されるように、その長さが調節されている。
【0027】
図5は、補強部材の平面図である。
補強部材6は、隣り合う上段側拡径部鉄筋31(あるいは下段側拡径部鉄筋32)同士を連結して補強する部材であり、図5に示すように、2本の棒状部材61、62の一方の端部61b、62bをピン接合して構成されている。また、2本の棒状部材61,62の他方の端部61a,62aは、上段側拡径部鉄筋31の先端部にプレート31bを介してそれぞれピン接合されている。
これにより、補強部材6は、上段側拡径部鉄筋31が広がっていない状態、すなわち、組立鉄筋1が杭穴Hの底面Hcに着地していない状態では、図5に示すように折り畳まれた状態となっている。そして、上段側拡径部鉄筋31が展開するにつれて棒状部材61,62の成す角度αが大きくなる。さらに、組立鉄筋1の設置が完了し、上段側拡径部鉄筋31が放射状に展開すると、補強部材6は、図3に示すように、一直線状態となる。これにより、上段側拡径部鉄筋31の先端部が環状に連結されることとなり、杭の支持力を一層向上させることができる。下段側拡径部鉄筋32に連結されている補強部材6も同様である。
【0028】
つづいて、組立鉄筋1の動作について説明する。
図6は、吊り下げた状態の組立鉄筋を示す側面図である。
組立鉄筋1は、図6に示すように、クレーンなどの揚重機で吊り下げられると、狭径部鉄筋2に対してスライド部材4が下方にスライドした状態となる。このとき、スライド部材4は、狭径部鉄筋2の下端部2aよりも突出した状態となる。
【0029】
また、スライド部材4は、連結部材5を介して上段側拡径部鉄筋31の定着部31aにぶら下がった状態となっている。これにより、上段側拡径部鉄筋31は、連結部7を中心に回動して、定着部31aが下向きとなり、先端側が上向きとなる。つまり、上段側拡径部鉄筋31は、先端側を上方にして斜めに起立した状態になる。
また、下段側拡径部鉄筋32は、上段側拡径部鉄筋31の上方への回動に伴って、せん断補強筋33に引っ張られて、先端側が上方に回動する。これにより、下段側拡径部鉄筋32は、上段側拡径部鉄筋31と同じく、先端側を上方にして斜めに起立した状態になる。
【0030】
このような状態となった組立鉄筋1を、揚重機を用いて杭穴Hの中に降ろしていくと、はじめに、スライド部材4の下端部が、杭穴Hの底面Hcに着地する。そして、さらに組立鉄筋1を降下させると、スライド部材4に対して狭径部鉄筋2が近づくように移動する。これにより、上段側拡径部鉄筋31の定着部31aを下方に引っ張っていた力が弛み、上段側拡径部鉄筋31の先端側が下方に向かって回動する。また、これに伴い、下段側拡径部鉄筋32の先端側も下方に向かって回動する。
【0031】
そして、狭径部鉄筋2の下端部2aが杭穴Hの底面Hcに着地すると、図1に示すように、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32は、狭径部鉄筋2から略水平に張り出した状態となる。また、上段側拡径部鉄筋31の定着部31a及び下段側拡径部鉄筋32の定着部32aは、狭径部鉄筋2の内側に略水平に張り出した状態となる。
また、せん断補強筋33は、図1に示すように、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32の間に、所定の間隔で巻き回された状態となる。
【0032】
その後、杭穴Hにトレミー管を挿入して、杭穴Hにコンクリートを充填することにより、底部が拡径された場所打ち杭(図示省略)が完成する。
【0033】
第1実施形態に係る組立鉄筋1によれば、スライド部材4が上段側拡径部鉄筋31の定着部31aに連結部材5を介して連結されているとともに、下段側拡径部鉄筋32はせん断補強筋33を介して上段側拡径部鉄筋31に連結されているので、クレーンなどで組立鉄筋1を吊り下げている状態では、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が起立して、組立鉄筋1の径方向の寸法が小さくなり、杭穴Hの狭径部Haを通過することが可能となる。
【0034】
また、杭穴Hに組立鉄筋1を配置するだけで、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32を、杭穴Hの拡径部Hbに略水平に配置することができるとともに、上段側拡径部鉄筋31と下段側拡径部鉄筋32の間にせん断補強筋33を配筋することができる。そのため、場所打ち杭の拡径部を片持ち梁として機能させることができる。
【0035】
また、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32は、上方から下方に回動するように構成されているところ、杭穴Hの拡径部Hbの上部には、テーパ部Heが形成されているので、上段側拡径部鉄筋31の回動が阻害されることがない。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照して詳細に説明する。
図7は、第2実施形態に係る組立鉄筋の側面図である。なお、図7では、せん断補強筋33を二点鎖線で描いている。
第2実施形態に係る組立鉄筋1’は、図7に示すように、狭径部鉄筋2が、大径部2Aと、この大径部2Aの下方に連続して形成され、大径部2Aよりも径の小さい小径部2Bと、から構成されている点が、第1実施形態に係る組立鉄筋1と異なっている。
【0037】
組立鉄筋1’の狭径部鉄筋2を構成する主筋21は、下端側の所定位置において、径方向内側に折り曲げられている。このような主筋21を環状に配列することにより、大径部2Aと小径部2Bが形成されている。上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32は、小径部2Bに回動可能に連結されている。
なお、その他の構成については、第1実施形態と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0038】
かかる構成によれば、図7に示すように、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が起立した状態となったときに、組立鉄筋1’の小径部2B付近の径方向の寸法を、大径部2A付近の径方向の寸法と略同等にすることができる。
【0039】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0040】
第1実施形態では、狭径部鉄筋2の下端部2aが杭穴Hの底面Hcに着地した状態で、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が略水平となるように構成したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、狭径部鉄筋2の下端部2aを杭穴Hの底面Hcから所定間隔(例えば10cm程度)だけ浮かせた状態で、上段側拡径部鉄筋31及び下段側拡径部鉄筋32が略水平となるように構成してもよい。
すなわち、場所打ち杭の施工においては、狭径部鉄筋2の下端部の腐食を防止するために、杭穴Hの底面Hcから狭径部鉄筋2を浮かせた状態でコンクリートを打設する場合があるが、そのようなときでも拡径部鉄筋3を略水平に配置することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上段側拡径部鉄筋31の定着部31aに連結部材5を介してスライド部材4を連結したが、本発明はこれに限定されるものではなく、下段側拡径部鉄筋32の定着部32aに連結部材5を介してスライド部材4を連結してもよいし、両方の定着部31a,32aに連結部材5,5を介してスライド部材4を連結してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、鉄筋を組み合わせてスライド部材4を構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、狭径部鉄筋2の下端から突出するとともに、上段側拡径部鉄筋31の定着部31a(及び/又は下段側拡径部鉄筋32の定着部32a)を下方に回動させる部材であれば、どのようなものでも良く、例えば、短く切断した鋼管などをスライド部材4として用いてもよい。また、扁平な円筒状に形成した鉄筋コンクリートなどの重量物でスライド部材4を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態に係る組立鉄筋を示した側面図である。
【図2】図1に示すI−I矢視平面図である。
【図3】拡径部鉄筋の一部を拡大して示した斜視図である。
【図4】(a)は狭径部鉄筋と上段側拡径部鉄筋の連結部の拡大斜視図であり、(b)は(a)のA−A矢視側面図である。
【図5】補強部材の平面図である。
【図6】吊り下げた状態の組立鉄筋を示す側面図である。
【図7】第2実施形態に係る組立鉄筋の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1,1’ 組立鉄筋
2 狭径部鉄筋
3 拡径部鉄筋
31 上段側拡径部鉄筋
31a 定着部
32 下段側拡径部鉄筋
32a 定着部
33 せん断補強筋
4 スライド部材
5 連結部材
6 補強部材
H 杭穴
Ha 狭径部
Hb 拡径部
Hc 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が拡径された杭穴に配置される組立鉄筋であって、
前記杭穴の狭径部に配置される狭径部鉄筋と、
前記狭径部鉄筋の下端から上方に離間した位置に回動可能に連結された複数の上段側拡径部鉄筋と、
前記上段側拡径部鉄筋よりも、前記狭径部鉄筋の下端に近い位置に回動可能に連結された複数の下段側拡径部鉄筋と、
一端側が前記上段側拡径部鉄筋に回動可能に連結され、他端側が前記下段側拡径部鉄筋に回動可能に連結された複数のせん断補強筋と、
前記組立鉄筋が杭穴の底面に接触する前の状態において、前記狭径部鉄筋の下端から突出するように配置され、前記狭径部鉄筋に対して上下方向にスライド可能に構成されたスライド部材と、
一端側が前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋の少なくともいずれか一方に回動可能に連結され、他端側が前記スライド部材に回動可能に連結された連結部材と、を備え、
前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記狭径部鉄筋との連結位置よりも前記杭穴の中心寄りに位置する定着部をそれぞれ有し、
前記スライド部材は、前記連結部材を介して前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋の少なくともいずれか一方の前記定着部に連結され、
前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記狭径部鉄筋の前記杭穴への設置が完了した状態において、前記杭穴の拡径部に略水平に配置されることを特徴とする組立鉄筋。
【請求項2】
前記せん断補強筋は、枠状に形成されており、
前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記せん断補強筋の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の組立鉄筋。
【請求項3】
前記狭径部鉄筋は、大径部と、大径部の下方に連続して形成され、当該大径部よりも径の小さい小径部と、を備え、
前記上段側拡径部鉄筋及び前記下段側拡径部鉄筋は、前記小径部に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組立鉄筋。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−48019(P2010−48019A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214236(P2008−214236)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(395002928)基礎工事株式会社斉藤組 (3)
【Fターム(参考)】