説明

組立鋼管支柱

【課題】山間部や狭隘地であっても組立・施工が容易であり、組立後の見栄えにも優れた組立鋼管支柱を提供する。
【解決手段】複数の短尺鋼管14同士を継ぎ合わせて形成された組立鋼管支柱10であって、短尺鋼管14が、管状の鋼管本体20の先端側に設けられた継目テーパー部22と、継目テーパー部22の先端に設けられ、他の短尺鋼管14の後端部の内径と略同一の外径を有する管状の鋼管嵌入部24と、鋼管嵌入部24の先端に設けられた先端テーパー部26とを具備すると共に、鋼管嵌入部24には、ボルト挿通孔28aとその内面側に取り付けられたナット28bとからなるボルト固定部28が設けられており、短尺鋼管14の後端部には、嵌め込まれた鋼管嵌入部24のボルト挿通孔28aに対応する位置に、その下端位置がボルト挿通孔28aの下端位置に一致し且つ上方へと延びてボルト36が係合するボルト挿通長孔32が設けられている事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線などが架設される電柱が倒壊しないように支持する軽量・長寿命型の支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配電線などが架設された電柱が倒壊しないように支持する支柱として、山間部や狭隘地においては、主に木材を材料とする木柱が用いられている。しかしながら、この木柱は、防腐処理などのメンテナンス負担が大きく、又、設置の際には、長さが数mから十数mに及ぶ一本の支柱をその長さのまま設置しなければならないので、山間部や狭隘地での施工が極めて困難であるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決し得る技術として、図7に示すように、太径で且つ短尺の鋼管1の両端部に、細径で且つ短尺の鋼管2を挿入すると共に、これらをボルト3で締結して各鋼管同士を継ぎ合わせる組立鋼管支柱4が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このように短尺の鋼管1及び2を継ぎ合わせて支柱4を構成すれば、山間部や狭隘地であっても当該支柱4を容易に施工することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社日本ネットワークサポート発行,「金属製品カタログ(配電機材編No.3)」,2007年5月,p.103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、連結する鋼管1と鋼管2との締結をボルト3によるねじの締結力のみで行っている従来の組立鋼管支柱4では、当該支柱4にかかる圧縮力などの応力をボルト3のみで受けていたので、当該ボルト3に作用するせん断力が非常に大きく、ボルト3が損傷する可能性が極めて高いと云う問題が有った。又、かかる問題を解消するためには、ボルト3をM22のように大型のものにしたり、複数箇所をボルト止めしなければならないが、そうすると、支柱4の建柱に時間や労力がかかるようになると共に、建柱した組立鋼管支柱4におけるボルト3の飛び出しが大きくなり見栄えが悪くなると云った問題が生じるようになる。
【0007】
更には、上記従来の組立鋼管支柱4は、外径の異なる大小2種類の鋼管1及び2で構成されているので、鋼管1と鋼管2との継目部分に大きな段部が形成されるようになり、この点においても建柱後の支柱の見栄えが悪くなると云う問題があった。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、山間部や狭隘地であっても建柱が容易であり、しかも建柱後の見栄えにも優れた組立鋼管支柱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「請求項1」に記載した発明は、
(a)複数の短尺鋼管14同士を継ぎ合わせることによって形成された組立鋼管支柱10であって、
(b)前記短尺鋼管14のうち少なくともその先端側に他の短尺鋼管14の後端部が継ぎ合わされるものが、
(b-1)管状の鋼管本体20と、
(b-2)前記鋼管本体20の先端側に設けられ、その外径が先端に向けてテーパー状に縮径した継目テーパー部22と、
(b-3)前記継目テーパー部22の先端に設けられ、前記他の短尺鋼管14の後端部の内径と略同一の外径を有する管状の鋼管嵌入部24と、
(b-4)前記鋼管嵌入部24の先端に設けられ、その外径が先端に向けてテーパー状に縮径した先端テーパー部26とを具備すると共に、
(b-5)前記鋼管嵌入部24には、ボルト挿通孔28aとその内面側に取り付けられたナット28bとからなり、当該鋼管嵌入部24が嵌め込まれる前記他の短尺鋼管14に係合するボルト36を固定するためのボルト固定部28が設けられており、
(c)前記他の短尺鋼管14の後端部には、嵌め込まれた鋼管嵌入部24のボルト挿通孔28aに対応する位置に、その下端位置が前記ボルト挿通孔28aの下端位置に一致し且つ上方へと延びて前記ボルト36が係合するボルト挿通長孔32が設けられている
(d)ことを特徴とする組立鋼管支柱10である。
【0010】
この発明では、短尺鋼管14の先端側に設けられた鋼管嵌入部24の外径が、当該鋼管嵌入部24に継ぎ合わされる他の短尺鋼管14の後端部の内径と略同一に形成されているが、鋼管嵌入部24の先端に先端テーパー部26が設けられているため、鋼管嵌入部24への他の短尺鋼管14後端部の差し込みが容易となり、短尺鋼管14同士の継ぎ合わせを短時間で行えるようになる。
【0011】
また、本発明の組立鋼管支柱10は、使用時に主として圧縮荷重が加わるようになるが、鋼管嵌入部24に嵌め込まれた他の短尺鋼管14の後端は、その全周が継目テーパー部22と接触しているので、短尺鋼管14同士の接続部分に作用する圧縮力などの応力を継目テーパー部22全体で受けるようになっている。したがって、鋼管嵌入部24と他の短尺鋼管14の後端部とを接合した後、これらをボルト36で固定するような場合であっても、当該ボルト36に作用するせん断力を小さなものにすることができ、ボルト36の損傷等を極小化することができる。その結果、ボルト36の小型化が可能となり、建柱後の組立鋼管支柱10の見栄えを良くすることができると共に、ボルト36が小型になった分その施工も容易となる。
【0012】
さらに、他の短尺鋼管14の後端部には、嵌め込まれた鋼管嵌入部24のボルト挿通孔28aに対応する位置に、その下端位置が前記ボルト挿通孔28aの下端位置に一致し且つ上方へと延びてボルト36が係合するボルト挿通長孔32が設けられている、つまり、短尺鋼管14同士を継ぎ合わせてボルト36で固定した際に、ボルト36の下方には隙間がなく、上方には隙間が生じるようにしているので、短尺鋼管14同士を継ぎ合わせてボルト36で固定したものを滑車装置などで吊り上げたとしても、短尺鋼管14同士の接続部分が不所望にズレたりガタついたりする心配はない。加えて、ボルト36の上方には隙間が生じるようになっているので、建柱後にボルト36に作用する応力の中から短尺鋼管14の軸方向より与えられる圧縮力を切り離して短尺鋼管14同士の接合部分の回動に伴って与えられる応力だけにすることができ、建柱後にボルト36に作用するせん断力をより一層低減させることができる。その結果、短尺鋼管14同士を固定するボルト36をさらに小型化することができ、建柱後の組立鋼管支柱10の見栄えをより一層良くすることができる。
【0013】
「請求項2」に記載した発明は、請求項1に記載の組立鋼管支柱10において、「金属板材からなる本体18aと、前記本体18aの表面にて上面及び前面が開放するように略U字状に突設され、前記短尺鋼管14の下端を係止する鋼管係止突起18bとで構成された基礎用根かせ18を更に備える」ことを特徴とする。
【0014】
従来では、基礎用根かせとしてコンクリート製のものが使用されていたが、このような金属製の基礎用根かせ18を使用することにより、建柱作業をより一層効率よく行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鋼管嵌入部の先端に先端テーパー部が設けられているので、鋼管嵌入部への他の短尺鋼管後端部の差し込みが容易となり、短尺鋼管同士の継ぎ合わせを短時間で行えるようになる。
【0016】
また、短尺鋼管同士の接続部分に作用する圧縮力などの応力を継目テーパー部全体で受けるようにしているので、鋼管嵌入部と他の短尺鋼管の後端部とを接合した後、これらをボルトで固定するような場合であっても、当該ボルトに作用するせん断力を小さなものにすることができる。
【0017】
加えて、短尺鋼管同士を継ぎ合わせてボルトで固定した際に、ボルトの下方には隙間がなく、上方には隙間が生じるようにしているので、短尺鋼管同士を継ぎ合わせてボルトで固定したものを吊り上げたとしても、短尺鋼管同士の接続部分が不所望にズレたりガタついたりする心配はなく、又、建柱後にボルトに作用するせん断力をより一層低減させることができる。
【0018】
したがって、山間部や狭隘地であっても組立・施工が容易であり、しかも組立後の見栄えにも優れた組立鋼管支柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例の組立鋼管支柱の使用態様を示す説明図である。
【図2】本発明の組立鋼管支柱を構成する短尺鋼管の一部を示す説明図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】本発明の組立鋼管支柱における短尺鋼管の製造方法の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施例の組立鋼管支柱を建柱する際に用いられる基礎用根かせを示す斜視図である。
【図6】本発明の組立鋼管支柱における短尺鋼管同士の接続部分を示す断面図である。
【図7】従来の組立鋼管支柱の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明における組立鋼管支柱10の使用態様の一例を示す説明図である。この図が示すように、本発明の組立鋼管支柱10は、特に山間部や狭隘地に建設され、配電線などが架設された電柱12が倒壊しないように支持するためのものであり、長手方向に複数継ぎ合わされて鋼管柱14xを形成する短尺鋼管14と、電柱12の上部及び鋼管柱14xの上部を連結するバンド部材16と、地中に埋設される最下段の短尺鋼管14の下端が取り付けられ、鋼管柱14xの下端部を地中に固定する基礎用根かせ18とで構成されている。
【0021】
なお、図1中の符号15は最上端の短尺鋼管14先端の開口を閉塞するキャップであり、符号17は、鋼管柱14xの下部を固定するための建柱穴である。
【0022】
継ぎ合わせて鋼管柱14xとする短尺鋼管14は、一般構造用炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料からなる短管状の部材で、山間部や狭隘地であっても人力で運搬及び建柱ができるように一本が55kg以内の重量にて形成されている。
【0023】
この短尺鋼管14のうち、少なくともその先端側に他の短尺鋼管14の後端部が継ぎ合わされるもの、つまり少なくとも最先端(図1の例の場合、最上端)に配置される短尺鋼管14を除く短尺鋼管14は、その先端部が次のように形成されている。
【0024】
すなわち、その先端側に他の短尺鋼管14の後端部が継ぎ合わされる短尺鋼管14は、図2及び3に示すように、管状の鋼管本体20の先端側にその外径が先端に向けてテーパー状に縮径された継目テーパー部22が設けられると共に、継目テーパー部22の先端に他の短尺鋼管14の後端部の内径と略同一の外径を有する管状の鋼管嵌入部24が設けられている。ここで、図1乃至3に示す例では、各短尺鋼管14の鋼管本体20の外径と内径は全て同じものであり、鋼管嵌入部24の外径は、鋼管本体20の内径と略同一となるように形成されている。このため、これら各短尺鋼管14を継ぎ合わせて形成した鋼管柱14xは、ストレートな外観形状を有すると共に、継目部分が目立たず美観に優れたものとなる。
【0025】
そして、鋼管嵌入部24の先端には、その外径が先端に向けてテーパー状に縮径された先端テーパー部26が設けられている。
【0026】
また、この短尺鋼管14における鋼管嵌入部24の先端側には、ボルト挿通孔28aと、このボルト挿通孔28aに対応する鋼管嵌入部24の内面に溶接されたナット28bとからなるボルト固定部28が形成されている。更に、先端テーパー部26から鋼管嵌入部24を経由して継目テーパー部22に亘る表面には、ボルト挿通孔28aの中心を通り短尺鋼管14の軸方向に伸びるガイド線30が塗装などの方法によって形成されている。
【0027】
一方、この短尺鋼管14の鋼管本体20には、他の短尺鋼管14の鋼管嵌入部24を嵌め合わせた際に、当該他の短尺鋼管のボルト固定部28(より詳しくは、ボルト挿通孔28a)に対応する位置に、その下端位置がボルト挿通孔28aの下端位置に一致し且つ上方へと延びるボルト挿通長孔32が穿設されている(図6参照)。更に、鋼管本体20の後端側表面には、ボルト挿通長孔32の中心を通り短尺鋼管14の軸方向に伸びる軸線の位置を示す矢印状のマーカー34が塗装などの方法によって形成されている。このため、短尺鋼管14同士を継ぎ合わせる際に、一方の短尺鋼管14の鋼管嵌入部24に設けられたガイド線30と、他方の短尺鋼管14の鋼管本体20後端に設けられたマーカー34の位置とを合わせることによって、一方の短尺鋼管14におけるボルト固定部28のボルト挿通孔28aと、他方の短尺鋼管14における鋼管本体20のボルト挿通長孔32との位置合わせを容易にすることができる。
【0028】
以上のように構成された短尺鋼管14を製造する際には、まず始めに、一般構造用炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料を準備し、図示しない鋼管成形機を用いて材料鋼管Pを製造する(図4(a)参照)。この材料鋼管Pの長さは、最終的に形成される短尺鋼管14の長さの2倍に設定されている。こうすることにより、1本の材料鋼管Pから短尺鋼管14を2本取りすることができるからである。なお、この材料鋼管PはJIS規格などで定められた汎用品を購入して使用することも可能である。
【0029】
続いて、高周波絞り加工機を用いて材料鋼管Pの長手方向の所定の場所に絞り加工を行い、材料鋼管Pを所定形状に成形する。
【0030】
具体的には、材料鋼管Pの長手方向(軸方向)中央部或いはその近傍に設けられた加工対象部分を高周波加熱すると共に、図4(b)に示すようにロールR或いはヘラ(図示せず)などの工具を押し当てて第1段階目のヘラ絞り加工を行う。この加工において、加工対象部分の両端は、加工対象部分の中心に向けてテーパー状に縮径するように形成されており、この部分が後に継目テーパー部22となる。又、テーパー状に縮径された加工対象部分の両端を除く部分は、その外径が、材料鋼管Pの未加工部分(すなわち後に鋼管本体20となる部分)の内径と略等しくなるように縮径されている。なお、加工対象部分の長さは、上述した継目テーパー部22,鋼管嵌入部24及び先端テーパー部26の長さを合計した長さの2倍に設定されている。
【0031】
続いて、図4(c)に示すように、ロールR或いはヘラ(図示せず)などの工具を加工対象部分の長手方向中央に押し当てて第2段階目のヘラ絞り加工を行う。かかる加工により、加工対象部分の長手方向中央に形成された最小外径部mを境にして互いに対向し、後に先端テーパー部26となる部分が形成される。
【0032】
そして、上述のような絞り加工が完了した材料鋼管Pを、加工対象部分の長手方向中央に設けられた最小外径部mで切断し、鋼管嵌入部24の先端側の所定位置にボルト挿通孔28aを穿設すると共に、このボルト挿通孔28aに対応する鋼管嵌入部24の内面にナット28bを溶接する。又、鋼管本体20の所定位置にボルト挿通長孔32を穿設する。更に、必要に応じて耐候性を高めるための溶融亜鉛めっきや防食塗装処理などを行うことにより短尺鋼管14が完成する。
【0033】
基礎用根かせ18は、上述したように地中に埋設される最下段の短尺鋼管14の下端が取り付けられ、鋼管柱14xの下端部を地中に固定するためのもので、図5に示すように、溶融亜鉛めっきなどのめっきが施された一般構造用炭素鋼やステンレス鋼などの金属材料からなる板状の本体18aと、この本体18aの表面にて上面及び前面が開放するように略U字状に突設され、短尺鋼管14の下端を係止する鋼管係止突起18bとで構成されている。又、本体18aにおける鋼管係止突起18bの最奥部の位置には、水抜き用の抜き孔18cが穿設されている。
【0034】
ここで、従来では、基礎用根かせとしてコンクリート製のものが使用されていたが、このような金属製の基礎用根かせ18を使用することにより、建柱作業をより一層効率よく行うことができるようになる。
【0035】
次に、以上のように構成された組立鋼管支柱10を建柱して(図1に示すように)電柱12を支持する方法について説明する。まず始めに、トラックなどの運搬車両やクレーンなど重機等を使って、又、山間部や狭隘地などのように運搬車両や重機などが入れない場所については人力で組立鋼管支柱10を構成する各パーツを建柱現場まで運ぶ。
【0036】
続いて、支持すべき電柱12の近傍にて、図6に示すように、一方の短尺鋼管14におけるボルト固定部28のボルト挿通孔28aの位置と、他方の短尺鋼管14における鋼管本体20のボルト挿通長孔32の位置とを合わせるようにして所定本数の短尺鋼管14を継ぎ合わせると共に、ボルト挿通長孔32およびボルト挿通孔28aにボルト36を挿通して、このボルト36をナット28bに螺合させる。これにより鋼管柱14xが完成する。
【0037】
続いて、電柱12に登り、電柱12の上部にバンド部材16と鋼管柱14x吊り上げ用の滑車装置(図示せず)とを取り付ける一方で、電柱12から離れた地面の所定位置に建柱穴17を掘削した後、該建柱穴17に、鋼管係止突起18bが電柱12に固定されたバンド部材16の方向を向く所定の角度で基礎用根かせ18を設置する。
【0038】
そして、鋼管柱14xの先端部にロープ(図示せず)を玉掛けすると共に、このロープを滑車装置に掛渡した後、下へと引っ張る。すると、鋼管柱14xの先端が電柱12の上部へと引き上げられるので、上部へと引き上げられた鋼管柱14xの先端をバンド部材16で電柱12の上部に固定する。又、これと同時に、或いはこれと前後して鋼管柱14xの下端を持ち上げて基礎用根かせ18の鋼管係止突起18bに係止させた後、建柱穴17を埋め戻す。これにより組立鋼管支柱10の建柱と電柱12の支持が完了する。
【0039】
本実施例の組立鋼管支柱10によれば、短尺鋼管14の先端側に設けられた鋼管嵌入部24の外径が、当該鋼管嵌入部24に継ぎ合わされる他の短尺鋼管14の鋼管本体20の内径と略同一に形成されているが、鋼管嵌入部24の先端に先端テーパー部26が設けられているため、鋼管嵌入部24への他の短尺鋼管14後端部の差し込みが容易となり、短尺鋼管14同士の継ぎ合わせを短時間で行えるようになる。
【0040】
ここで、本実施例の組立鋼管支柱10は、使用時に主として圧縮荷重が加わるようになるが、鋼管嵌入部24に嵌め込まれた他の短尺鋼管14の後端は、その全周が継目テーパー部22と接触しているので、短尺鋼管14同士の接続部分に作用する圧縮力などの応力を継目テーパー部22全体で受けるようになっている。したがって、鋼管嵌入部24と他の短尺鋼管14の後端部とを接合した後、これらをボルト36で固定するような場合に、当該ボルト36に作用するせん断力を小さなものにしてボルト36の損傷等を極小化することができる。その結果、ボルトの小型化が可能となり、組立後の支柱の見栄えを良くすることができると共に、ボルトが小型になった分その施工も容易となる。
【0041】
とりわけ本実施例の組立鋼管支柱10では、短尺鋼管14における鋼管嵌入部24の先端側にボルト固定部28が設けられると共に、短尺鋼管14の鋼管本体20における他の短尺鋼管14の鋼管嵌入部24を嵌め合わせた際に、当該他の短尺鋼管14のボルト挿通孔28aに対応する位置に、その下端位置がボルト挿通孔28aの下端位置に一致し且つ上方へと延びるボルト挿通長孔32が設けられているので、短尺鋼管14同士を継ぎ合わせてボルト36で固定した際に、ボルト36の下方には隙間がなく、上方には隙間が生じるようになっており、短尺鋼管14同士を継ぎ合わせてボルト36で固定したものを滑車装置などで吊り上げたとしても、短尺鋼管14同士の接続部分が不所望にズレたりガタついたりする心配はない。又、ボルト36の上方には隙間が生じるようになっているので、ボルト36に作用する応力の中から短尺鋼管14の軸方向より与えられる圧縮力を切り離して短尺鋼管14同士の接合部分の回動に伴って与えられる応力だけにすることができ、ボルト36に作用するせん断力をより一層低減させることができる。その結果、短尺鋼管14同士を固定するボルト36をさらに小型化することができ、組立後の鋼管支柱10の見栄えをより一層良くすることができる。
【0042】
なお、上述の実施例では、短尺鋼管14の継目テーパー部22,鋼管嵌入部24及び先端テーパー部26を絞り加工により鋼管本体20を含め各パーツを一体的に形成する場合を示している。このように絞り加工を用いて短尺鋼管14を作製することにより、短尺鋼管14を簡単且つ経済的に製造することができると共に、強度的に優れた短尺鋼管14を得ることができるが、短尺鋼管14の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、各パーツを別体で形成した後、これらを溶接して一体化するようにしても良い。
【符号の説明】
【0043】
10…組立鋼管支柱
12…電柱
14…短尺鋼管
14x…鋼管柱
15…キャップ
16…バンド部材
17…建柱穴
18…基礎用根かせ
20…鋼管本体
22…継目テーパー部
24…鋼管嵌入部
26…先端テーパー部
28…ボルト固定部
28a…ボルト挿通孔
28b…ナット
30…ガイド線
32…ボルト挿通長孔
34…マーカー
36…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の短尺鋼管同士を継ぎ合わせることによって形成された組立鋼管支柱であって、
前記短尺鋼管のうち少なくともその先端側に他の短尺鋼管の後端部が継ぎ合わされるものが、
管状の鋼管本体と、
前記鋼管本体の先端側に設けられ、その外径が先端に向けてテーパー状に縮径した継目テーパー部と、
前記継目テーパー部の先端に設けられ、前記他の短尺鋼管の後端部の内径と略同一の外径を有する管状の鋼管嵌入部と、
前記鋼管嵌入部の先端に設けられ、その外径が先端に向けてテーパー状に縮径した先端テーパー部とを具備すると共に、
前記鋼管嵌入部には、ボルト挿通孔とその内面側に取り付けられたナットとからなり、当該鋼管嵌入部が嵌め込まれる前記他の短尺鋼管に係合するボルトを固定するためのボルト固定部が設けられており、
前記他の短尺鋼管の後端部には、嵌め込まれた鋼管嵌入部のボルト挿通孔に対応する位置に、その下端位置が前記ボルト挿通孔の下端位置に一致し且つ上方へと延びて前記ボルトが係合するボルト挿通長孔が設けられていることを特徴とする組立鋼管支柱。
【請求項2】
金属板材からなる本体と、前記本体の表面にて上面及び前面が開放するように略U字状に突設され、前記短尺鋼管の下端を係止する鋼管係止突起とで構成された基礎用根かせを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の組立鋼管支柱。




【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111769(P2011−111769A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267778(P2009−267778)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)