説明

組織に基づいた診断のためのシステム、方法及びデバイス

本発明は、迅速な組織のサンプリング、組織の汚染除去、組織成分の一部とすることができる分析物の定性的及び/または定量的検出のために、エネルギー及び/または液化促進媒体を対象となる組織に付与して組織成分を有する液化サンプルを試製することを含むデバイス、方法及びシステムを提供する。さらに本発明は、液化の容易化、液化組織成分の維持及び組織内への分子の送達を可能にするような液化促進媒体の特別な組成を提供する。組織の液化サンプル中の組織成分の決定は、局部または全身病の診断または予後診断、薬物投与の後の異なる組織の治療の生物学的利用能の評価薬物乱用の法医検出、有害物に曝露後の組織微小環境の変化の評価、組織の汚染除去及び様々な他のアプリケーションを含む種々のアプリケーションで使用可能である。本発明の方法、デバイス及びシステムは、液化される組織を通ってまたは組織内に一以上の薬物を送達するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年2月13日付けで提出された米国仮特許出願第61/152585号の利益を要求する。本明細書では、この開示の全体を参照として援用する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
多くの脂質、タンパク質、核酸及び他の種々の分子に代表される人間組織の生体分子組成(biomolecular composition)は、心臓血管疾患(cardiovascular disease)、アルツハイマー病及び糖尿病のようないくつかの全身病と同様に、癌、アレルギー及び湿疹のような局所病理(local pathologies)の好感度指標(sensitive indicator)である。さらに、組織の分子組成はまた、外因性の化学または生物物質への人体の暴露(exposure)について重要な情報を保持している。しかしながらこれらの情報は、組織からルーチンでサンプルを採取するには、患者への優しさがなく、かつ、標準化されていない方法であるので、診断法において現在使用されていない。代わりに臨床診断(clinical diagnosis)は、組織生検(tissue biopsies)の病理組織学的分析(histopathological analysis)及び目視観察(visual observation)により常に行われる。臨床検診は、定性的な特徴により誤診及び誤用の増大を招くため極度に制限される。進入性に加えて、現在の方法では、完全な病気の分子の発生の説明が達成できず、さらに、病気と区別できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
組織液を評価する物理的及び化学的方法を使用する従来の手法では、カルシウム及びグルコースのような間質液に自由に存在する少量の低分子量分子の抽出に主に焦点が合わせられてきた。表面的に存在する組織成分を粘着テープで物理的に採取するテープストリッピング(tape stripping)の使用が報告されている。しかしながら、この技術は、無効果、標準的プロトコル(standardized protocol)の欠落及び組織サンプルの高い不均一性により制限されることが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、組織成分(tissue constituents)(例えば数種類の生体分子、薬物及び微生物)の一部であるかもしれない分析物の定性的及び/または定量的検出と同時に、迅速な組織のサンプリングを提供するように、対象(interes)の組織にエネルギーを付与して組織成分を有する液化サンプル(liquefied sample)を生成することを含むシステム、方法およびデバイス並びにこのシステム、方法及びデバイスに有効な組成に関するものである。組織組成の決定は、病気の診断(diagnosis)及び予後診断(prognosis)、薬物投与の後の異なる組織の治療の生物学的利用能(bioavailability)の評価、薬物乱用の法医検出、有害物に曝露後の組織微小環境(the tissue microenvironment)の変化の評価、組織の汚染除去及び様々な他の用途を含む種々の用途で使用することができる。
本発明は、正常なまたは病気の対象者から液化組織サンプルを生成する方法及びデバイスを提供する。このデバイス及び方法には、対象者の対象とする組織にエネルギー及び液化促進媒体を付与して、付与により液化組織サンプル(liquefied tissue sample)を生成すること、及び液化組織サンプルを収集することが含まれる。いくつかの実施の形態では、液化組織サンプル内の少なくとも一つの分析物の存在の有無を分析することを実行する。分析は対象となる状態の診断を容易にする。いくつかの実施の形態では、分析することには、液化組織サンプルから分析物プロファイル(analyte profile)を生成し、分析物プロファイルと、参照分析物プロファイル(analyte profile)とを比較し、比較することにより、対象となる状態の診断を容易にすることが含まれる。
【0005】
いくつかの実施の形態では、組織の液化の目的は、望ましくない物質から組織を除去または除染することである。このような望ましくない物質の限定されない例には、薬品(chemicals)、環境汚染物質(environmental contaminants)、生物毒素(biological toxins)及び身体に有毒または危険と考えられる物質が含まれる。いくつかの実施の形態では、除染する方法は、望ましくない物質の除去が好ましいレベルに到達するまで、対象の組織上を組織液化デバイスを連続的に移動させることにより実行される。
【0006】
いくつかの実施の形態では、液化促進剤には、塩化ナトリウム(sodium chloride)、塩化カリウム(potassium chloride)、リン酸水素二ナトリウム(sodium phosphate dibasic)、リン酸二水素カリウム(potassium phosphate monobasic)、3−{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(3-{[tris(hydroxymethyl)methyl]amino}propanesulfonic acid)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(N,N-bis(2-hydroxyethyl)glycine)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(tris (hydroxymethyl) methylamine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(N-tris(hydroxyrnethyl)methylglycine)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(4-2-hydroxyethyl-l-piperazineethanesulfonic acid)、2−{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(2- { [tris(hydroxymethyl)methyl]amino}ethanesulfonic acid)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(piperazine-N,N'-bis(2-ethanesulfonic acid))、ジメチルアルシン酸(dimethylarsinic acid)、クエン酸ナトリウム食塩緩衝溶液(saline sodium citrate)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)の一以上が含まれる。いくつかの実施の形態においては、液化促進剤には、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor)、Rnase(リボヌクレアーゼ)阻害剤(RNase inhibitor)またはDnase(デオキシリボヌクレアーゼ)阻害剤(DNase inhibitor)の一以上が含まれる。いくつかの実施の形態では、液化促進剤には、フリーラジカルスカベンジャー(free radical scavenger)、消泡剤(defoaming agent)及びタンパク質安定剤(protein stabilizer)の少なくとも一つが含まれる。いくつかの実施の形態では、液化促進剤には、Briji−30、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DPS)、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Dodecyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DDPS)、N−ラウロイルサルコシン(N-lauroyl sarcosine)(NLS)、トリトンX−100(Triton X-IOO)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、脂肪酸(fatty acids)、アゾン(azone)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)または水酸化ナトリウムの少なくとも一つが含まれている。いくつかの実施の形態では、液化促進剤は、研磨粒子の懸濁液を有している。いくつかの実施の形態では、研磨粒子は、シリカ(silica)または酸化アルミニウム(aluminum oxide)を有している。
【0007】
いくつかの実施の形態では、エネルギーは、超音波エネルギー、機械的エネルギー、光学的エネルギー、熱的エネルギーまたは電気的エネルギーの形で付与される。いくつかの実施の形態では、機械エネルギーは、研磨材により付与される。いくつかの実施の形態では、熱エネルギーは、高周波エネルギーの形で付与される。いくつかの実施の形態では、光学的エネルギーは、レーザの形で付与される。
【0008】
いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、対象者の対象の正常組織(healthy tissue)及び対象者の対象の疑わしい病変組織(suspected diseased tissue)ごとに生成される。そして分析には、正常組織のサンプルの分析結果を、疑わしい病変組織のサンプルの分析結果と比較することが含まれる。比較により対象組織の状態の診断が容易になる。いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、複数の組織部位で生成され、分析には複数の組織部位の分析結果の比較が含まれる。比較により対象組織の状態の診断が容易になる。いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、複数の組織部位から収集され、サンプルは診断を行うために組み合わされる。
【0009】
いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、吸い出しにより収集される。いくつかの実施の形態では、収集は、組織と接触するように配置されたハウジング内に液化剤を保持することにより行われる。いくつかの実施の形態では、収集は、デバイス内に配置されたハウジング内の液化組織サンプルを機械化された移送により行われる。
【0010】
いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、貯蔵または輸送のために対象となる分析物のさらなる液化及び安定化を補助する物質と混合される。いくつかの実施の形態では、サンプルコンテナから移送された組織サンプルは、予めコンテナに貯蔵された物資と混合される。一例としては、プロテアーゼ阻害剤(protein stabilizer)のようなタンパク質安定剤(protease stabilizer)、EDTAのような核酸安定剤(nucleic-acid stabilizer)、フェノール、非特異プロテイナーゼ(nonspecific proteinase)、RAase阻害剤(RNase inhibitor)及びDNase阻害剤(DNase inhibitor)、変形剤(defoaming agent)、トリトンX−100(Triton X-IOO)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate)、DMSOのような界面活性剤及び/またはシリカまたはアルミナのような研磨粒子が挙げられる。
【0011】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、液化処理前、液化処理中または液化処理後に対象の組織を評価する。いくつかの実施の形態では、評価は、電気化学的、生化学的、または光学的手段により実行される。いくつかの実施の形態では、評価には、組織の導電率の測定が含まれる。典型的な実施の形態においては、導電率は、対象となる組織に交流電気信号を印加する手段により計測される。この電気信号は、0.1mVと10Vの間の電圧及び1Hzと100kHzの間の周波数を有している。
【0012】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、疾病マーカー(disease marker)のような、対象となる分析物の分析の前に液化組織サンプル中の特定の組織成分を検出することを含む。いくつかの実施の形態では、検出は、電気化学的、生化学的または光学的手段によって実行される。いくつかの実施の形態では、検出の電気化学的手段は、イオン選択電極である。いくつかの実施の形態では、検出の光学的手段は、溶液の吸収係数または散乱係数の測定である。
【0013】
いくつかの実施の形態では、エネルギーは、0.1と50の間のメカイカルインデックス(mechanical index)を有する超音波の形態で組織に付与される。いくつかの実施の形態では、エネルギーは、移動研磨面に組織を接触させることにより組織に付与される。いくつかの実施の形態では、エネルギーは、複数の剛毛(bristles)を有する移動ブラシ装置(brushing device)に組織を接触させることにより組織に付与される。いくつかの実施の形態では、エネルギーは、複数のマイクロニードル(micro-needles)を有するパッチを組織内に機械的な挿入及びマイクロニードルを通じた組織内への液化媒体の注入により組織に付与される。いくつかの実施の形態では、組織内への挿入後のマイクロニードルの移動により付与される。いくつかの実施の形態では、エネルギーは、液化剤の機械的攪拌(mechanized stirring)により組織に付与される。いくつかの実施の形態では、エネルギーは、組織を液化促進媒体を含む高速噴流に接触させることにより組織に付与される。液化促進媒体は、異なる実施の形態では、研磨粒子を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施の形態では、組織には、胸(breast)、前立腺(prostate)、目(eye)、膣(vagina)、膀胱(bladder)、爪(nail)、髪(hair)、結腸(colon)、精巣(testicles)または腸(intestine)が含まれる。いくつかの実施の形態では、組織には、皮膚(skin)または粘膜(mucosal membrane)が含まれる。いくつかの実施の形態では、組織には、肺(lung)、脳(brain)、膵臓(pancreas)、肝臓(liver)、心臓(heart)、骨(bone)または大動脈壁(aorta wall)が含まれる。
【0015】
いくつかの実施の形態では、分析物は、小分子(small molecule)、薬物もしくは薬物代謝物(drug or metabolite thereof)、ポリペプチド(polypeptide)、脂質(lipid)、核酸(nucleic acid)または微生物(microbe)を有している。いくつかの実施の形態では、分析物は、抗体(antibody)、サイトカイン(cytokine)、違法薬物(illicit drug)または癌バイオマーカー(cancer biomarker)を有している。
【0016】
いくつかの実施の形態では、液化組織サンプルは、コンテナ内に保持され、液体コンテナを一以上の分析装置と一体化することにより分析物プロファイル(alyte profile)が生成される。いくつかの実施の形態では、組織液化装置には、分析物の分析を較正する手段を提供するために較正分析物(calibrator analyte)の濃度を計測する手段が含まれる。
【0017】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、対象者のアレルギー疾患(allergic disease)の診断が含まれる。デバイスは、液化組織サンプルに、IgE抗体及びIgG抗体、IL4、IL5、IL10、IL−12、IL13、IL−16、GM−CSF、RANTES、MCP−4、CTACK/CCL27、IFN−g、TNFa、CD23、CD−40、エオタキシン−2及びTARCのようなサイトカイン(cytokines)が存在するか否かを分析する手段を有している。分析は、対象者のアレルギー疾患の診断を容易にする。
【0018】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、対象者の癌の診断が含まれる。デバイスは、液化組織サンプルに、1以上の癌マーカー(cancer markers)が存在するか否かを分析する手段を有している。分析は、対象者の癌の診断を容易にする。いくつかの実施の形態では、対象と成る組織は、胸(breast)、結腸(colon)、前立腺(prostate)、皮膚(skin)、睾丸(testicle)、腸(intestine)または口(mouth)である。
【0019】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、対象者の心臓疾患(heart disease)の診断が含まれる。デバイスは、液化組織サンプルに、1以上のコレステロール(cholesterol)、トリグリセリド(triglycerides)、リポタンパク質(lipoproteins)、遊離脂肪酸(free fatty acids)及びセラミド(ceramides)が存在するか否かを分析する手段を有している。分析は、対象者の心臓疾患の診断を容易にする。
【0020】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、対象者内の違法薬物またはその代謝物(illicit drug, or metabolite thereof)の存在を検出することを含む。デバイスは、液化組織サンプルに、違法薬物またはその代謝物が存在するか否かを分析する手段を有している。分析は、対象者内の違法薬物の検出を提供する。
【0021】
いくつかの実施の形態では、デバイスは、対象者内の微生物(microorganism)の存在を検出することが含まれる。デバイスは、対象者の対象となる組織にエネルギー及び液化媒体を付与し且つ微生物が存在するか否かを分析するために液化媒体を分析する手段を有している。分析は、微生物の存在の有無の検出を提供する。
【0022】
本発明の他の目的は、組織の全域または内部への薬剤の移送を容易にするために、対象者の組織を液化するための方法及びデバイスを提供することにある。上記方法及びデバイスは、組織成分の収集だけでなく、薬物送達にも適用することが可能である。デバイス及び方法には、対象者の対象となる組織へのエネルギー及び液化媒体の付与、及び液化される組織の部位を通るまたは部位の内部への薬物の送達が含まれる。本発明を利用する利点は、1)組織内部へ薬物を高流速提供すること、及び2)組織内への流速の優れた制御ができることである。皮膚のような組織を単純に通過することができない薬剤であっても、本発明を適用した場合には、組織を通って押し出される。
【0023】
いくつかの実施の形態では、本発明は、液化される組織を介して循環系(circulatory system)に1以上の薬物を送達する方法を提供する。この方法は、消化管での分解及び経口または注射で定常的に投与される薬物の肝臓による急速な代謝を回避する。いくつかの実施の形態では、本発明は、対象となる組織に局部的に一以上の薬物を送達する方法及びデバイスを提供する。従って、正常な組織への副作用(side effects)が制限される。本発明の方法及びデバイスはまた、細胞膜(cellular membranes)への移送の増強にも適用することもできる。
【0024】
特に、本発明のデバイスは、以下の主要部品、1)エネルギー発生器、2)液化促進媒体、3)送達される薬剤を保持し、及び/または液化組織サンプルを収集するリザーバーにより構成される。
【0025】
投与される薬物は、組織液化処理前または処理中に液化媒体内に添加することができる。代わりの実施の形態では、エネルギーの付与は、組織の液化に使用できない薬物を含まない液化媒体と、続いて液化される組織の部位に適用することができるパッチのような適切なキャリア内の薬物との組合せである。
【0026】
組織内への薬物の移送は、化学的透過性または輸送エンハンサー(chemical permeability or transport enhancers)、対流(convection)、浸透圧勾配(osmotic pressure gradient)、濃度勾配(concentration gradient)、イオントフォレーゼ(iontophoresis)、エレクトロポレーション(electroporation)、磁場(magnetic field)、超音波(ultrasound)または機械的圧力(mechanical pressure)のような第2の駆動力を同時にまたは続けて付与することによりさらに高めることができる。駆動力は、ある期間に渡って連続的に付与してもよく、液化の期間中間隔を開けて付与してもよい。
【0027】
いくつかの実施の形態では、投与される組織には、生体表面(biological surfaces)と同様に器官(organs)が含まれる。いくつかの実施の形態では、生体表面には、生体膜(biological membrane)及び細胞膜(cellular membrane)が含まれる。いくつかの実施の形態では、生体膜には、皮膚または粘膜が含まれる。いくつかの実施の形態では、生体膜には、頬粘膜、膣、結腸または腸が含まれる。いくつかの実施の形態では、組織には、病変組織(diseased tissue)が含まれる。
【0028】
一実施の形態では、液化サンプルを得るために組織で使用されるデバイスであって、組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、組織に操作可能に連結されて組織への液化促進媒体の送達及び/または組織から液化サンプルを収集可能なチャンバー(chamber)とを備えるデバイスが提供される。
【0029】
他の実施の形態では、デバイスは、生体(living organism)の一部の組織で使用することができ、組織は、診断の前に生体(organism)から切り出される。
【0030】
他の実施の形態では、請求項1のデバイスで、液化組織サンプルは、少なくとも一つの分析物の有無を監視するためのアッセイ(assay)に移送される。
【0031】
さらに他の実施の形態では、デバイスのチャンバーは、スポンジ−ベローアセンブリ(sponge-bellow assembly)であり、スポンジは、液化促進媒体及び/または液化サンプルを貯蔵可能である。
【0032】
他の実施の形態においては、デバイスは、組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、組織に操作可能に連結されて組織への液化促進媒体の送達及び/または組織からの液化サンプルの収集が可能なチャンバーとを備え、またチャンバーに接続されるチューブ/ニードル(tube/needle)を備え、チューブ/ニードルは、組織への液化促進媒体の送達及び/または組織からの液化組織サンプルの吸い出しが可能である。
【0033】
さらに他の実施の形態では、組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、組織に操作可能に連結されて組織への液化促進媒体の送達及び/または組織からの液化サンプルの収集が可能なチャンバーとを備え、チャンバーに操作可能に接続されたサンプルコンテナ(sample container)を備えたデバイスが提供される。サンプルコンテナは、分析物を保持する吸い出された液化組織サンプルの貯蔵(storing)または吸い出された(aspirated)液化組織サンプルの補助チャンバー(ancillary chamber)への移送が可能である。チャンバーは、液化促進媒体が移送されるためのみに使用される。
【0034】
他の実施の形態では、液化促進媒体及び/または液化組織サンプルの移送を容易にする加圧コンテナ及び/または真空コンテナがデバイスの一部である。
【0035】
一実施の形態では、デバイスのエネルギー源から放出されるエネルギーは、超音波エネルギー、機械的エネルギー、光学的エネルギー、熱的エネルギーまたは電気的エネルギーの形である。詳細な実施の形態では、機械エネルギーは、研磨材、真空力、圧力または剪断力によって組織に付与される。他の実施の形態では、熱エネルギーは、高周波エネルギーの形で組織に付与される。他の実施の形態では、光学的エネルギーは、レーザの形で組織に付与される。
【0036】
さらに他の実施の形態では、組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、組織に操作可能に連結されて組織への液化促進媒体の送達及び/または組織からの液化サンプルの収集が可能なチャンバーとを備え、チャンバーに操作可能に接続されたサンプルコンテナ(sample container)を備えたデバイスが提供される。サンプルコンテナは、分析物を保持する吸い出された液化組織サンプルの貯蔵(storing)または吸い出された(aspirated)液化組織サンプルの補助チャンバー(ancillary chamber)への移送が可能である。チャンバーは、液化促進媒体が移送されるためのみに使用される。
【0037】
他の実施の形態では、組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、組織に操作可能に連結されて組織への液化促進媒体の送達及び/または組織からの液化サンプルの収集が可能なチャンバーとを備えるデバイスが提供される。エネルギー源は、シャフトに接続されたパッドを備えている。
【0038】
より詳細な実施の形態では、シャフトは、接触状態で所定の圧力プロファイル(pressure profile)を組織上に維持する圧力検出ユニットを有している。
【0039】
他の実施の形態では、パッドは、複数のマイクロニードルを有するパッチ(patch)及び研磨面(abrasive surface)よりなる群から選択される。
【0040】
さらに他の実施の形態では、デバイスは、チャンバーの頂部に操作可能に接続されたプランジャーをさらに有する。
【0041】
他の実施の形態では、デバイスは、上部ユニットと下部ユニットとに分割可能であり、下部ユニットは、上部ユニットから取り外し可能であり、上部ユニットはエネルギー源を備え、下部ユニットはチャンバーを備える。
【0042】
さらに他の実施の形態では、デバイスは、チャンバーに操作可能に接続された分析ユニットをさらに備えている。分析ユニットは、電気化学的、生化学的または光学的手段により組織サンプルの時間的監視を実行可能であるか、または分析ユニットは、液化組織サンプル中の分析物を分析することが可能である。
【0043】
いくつかの実施の形態においては、デバイスは診断プローブ(diagnostic probe)またはカテーテル(catheter)と接続されている。診断プローブは、内視鏡(endoscope)、結腸鏡(colonoscope)及び腹腔鏡(laparoscope)よりなる群から選択される。
【0044】
さらに他の実施の形態においては、デバイスの使用により、組織サンプルは生体内原位置(in situ)で液化される。
【0045】
他の実施の形態においては、デバイスは、タンパク質、脂質及び核酸の検出を維持及び向上させる液化促進媒体を含んでいる。液化促進媒体には、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DPS)及びポリエチレングリコールドデシルエーテル(polyethylene glycol dodecyl ether)(Brij30)を緩衝液に溶解したものが含まれる。3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)及びポリエチレングリコールドデシルエーテル (polyethylene glycol dodecyl ether )(Brij30)の濃度は、0.01乃至10%(w/v)の間であり、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)及びポリエチレングリコールドデシルエーテル(polyethylene glycol dodecyl ether)は、50:50の比で存在している。
【0046】
さらに他の実施の形態においては、デバイス内の液化促進媒体は、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline)、トリス緩衝生理食塩水(Tris-buffered saline)、トリス−HCl(Tris-HCL)、EDTAのいずれかを有する緩衝液である。
【0047】
他の実施の形態においては、デバイス内の液化促進媒体は、ブリジ系界面活性剤(Brij series surfactant)、トリトン−X界面活性剤(Triton-X surfactant)及びソルビタン界面活性剤(Sorbitan surfactant)よりなる群から選択される非イオン界面活性剤と、陰イオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤と、親水性溶媒とを備えている。液化促進媒体は、約0.01%乃至10%(w/v)の合計濃度の界面活性剤を有している。
【0048】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に十分に説明するように組織に基づいた診断のためのシステム、方法及びデバイスの詳細を読んだ当業者に明らかになるであろう。
【0049】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と合わせ読めば最もよく理解される。一般の慣行に従って、図面の様々な形状は原寸に比例していないことを強調しておく。そうではなく、見やすいように、様々な形状の寸法は任意に拡大縮小されている。以下の図が図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】パネルa−gは、種々の研磨エネルギーに基づいた組織液化デバイスの構造、部品及び機能を示す断面図である。パネルa−c及びパネルe−gは、2つの分離された液化デバイスの一連の動作を示している。パネルdは、研磨ヘッドを支持する圧力検知電動シャフトを概略的に示す図である。
【図2】パネルa−bは、組織の広い領域から連続的にサンプリングする移動可能な組織液化デバイスの断面図である。
【図3】パネルa−cは、種々の垂直研磨動作に基づいて組織を液化するデバイスの構造及び部品の断面図である。 パネルcは、ギアを保持する圧力検知支持シャフトの概略を示す図である。
【図4】パネルa−gは種々タイプの研磨ヘッドの断面図である。
【図5】パネルa−dはデバイスの断面図及び組織の導電性の計測の概略を示す図である。
【図6】パネルa−gは種々のマイクロニードルに基づいて組織を液化するデバイスの構造、部品及び機能を示す断面図である。
【図7】パネルa−eは典型的な研磨エネルギーに基づいて組織を液化するデバイスの断面図である。パネルaはデバイスの種々のアセンブリ部品を示している。パネルb−dは組織と接触するように配置された液化媒体の移送(パネルb−c)、液化のより生成したサンプル(パネルc)、及びコンテナ内へのサンプルの収集(パネルd)を含む一連の動作ステップを示している。パネルeは液化後のデバイスからのサンプルコンテナの復帰を示す図である。
【図8】パネルa−dは、典型的なマイクロニードルに基づく組織液化デバイスの一連の動作ステップを示す断面図である。パネルa−bは組織に接触するように配置された液化媒体の移送を示しており、パネルcは液化によるサンプルの生成を示しており、パネルdはコンテナ内へのサンプルの収集を示している。
【図9】パネルa−dは、サンプルコンテナを示す図である。パネルa−dは、生成したサンプルの移送及び/または分析を一連の動作ステップを示す。パネルaは、対象となる分析物に選択的に結合された基質がコンテナの内周面で覆われた図である。組織の液化したサンプル内の分析物は、コートされた基質により選択的に捕捉される(パネルb)。組織サンプルが十分に培養されるとサンプルは分析物がコンテナ内に保持されている間に廃棄される(パネルc)。分析物は次の分析のために緩衝液により溶出される(パネルd)。
【図10】LMPsの特有の界面活性剤配合物を特定するためのスクリーニング方法を示す図である。パネルaは、150の界面活性剤配合物を、タンパク質の生物活性を維持する能力で並べている。パネルbは、パネルaから最もよい配合を組織可溶化能力で並べている。パネルcは完全なスクリーニングから最も良いLPM−0.5%(w/v)DPS−Brij30と他の従来の界面活性剤との皮膚組織からの機能性タンパク質を収集する能力を比較している。
【図11】超音波曝露の機械的ストレス下での種々のタンパク質(IgE−パネルa:IgE、LDH及びB−ゲル−パネルb)の生物活性のLPM支援維持を示すグラフである。
【図12】組織から種々の機能性疾病バイオマーカー(IgE−パネルa、コレステロール−パネルb、バクテリア−パネルc)をサンプルしてLPM(0.5%(w/v)DPS−B30の生理食塩水)の存在下での超音波曝露したものの能力結果を示すグラフである。
【図13】LPM中の緩衝液と定量PCRとの適合性の示すグラフである。
【図14】界面活性剤混合物と定量PCRとの適合性の効果を示すグラフである。
【図15】E.Coli生存能力への超音波の濃度及び時間の効果を示すグラフである。サンプルは、1.7W/cm(・)及び2.4W/cm(■)の濃度で超音波に曝露された。各点は、3つの独立したサンプルの平均値を示す。
【図16】トリス−HCl中のE.Coliセルから異なる条件で超音波処理して得たゲノムDNAについてのアガロースゲル−電気泳動の写真である。レーン1は標準分子、レーン2は非処理セル、レーン3は1.7W/cmで2分超音波処理、レーン4は1.7W/cmで3分超音波処理、レーン5は2.4W/cmで3分超音波処理したものである。
【図17】トリス−HClと結合した超音波、スワビング及び界面活性剤スクラブ手法によってサンプルされたバクテリアの数を示すグラフであり、(a)は培養試験、(b)は量的PCRにより測定した。各点は、5つの独立したサンプルの平均値を示す。
【図18】モデル分析物−ヒトIgE抗体(human IgE antibody)の検出を高めるためにLPM中に種々の感度エンハンサーを追加する効果を示すグラフである。分析に使用した感度エンハンサーは、10%w/vBSA及び0.5%w/vTween20の混合物を含むリン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline)(PBS)(白抜きのダイヤモンド形)、及び10%w/vのBSA及び0.5&w/vのTween20をの混合物含むトリス緩衝生理食塩水(tris-buffered saline)(黒い丸)である。分析の前に、各感度エンハンサーを1:10の比でモデル分析物を含むLPMで希釈した。制御のために、モデル分析物を含むLPM(白抜きの四角)、及び1%BSA及び0.05%Tween20の混合物を含むトリス緩衝生理食塩水からなり一般的に使用される分析溶剤(黒い四角)が使用された。LPMは、NLSとBriji30との1%w/v混合物を含むPBS溶液からなる。 エラーバーは、標準偏差を示す。
【図19】パネルaは超音波を付与した後、パネルbは複数の毛を有で研磨した後、インビトロでのブタの皮膚中へのイヌリン及びアシクロビルの送達を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[定義]
本明細書で使用する「エネルギー(Energy)」とは、本明細書で開示する方法の目的(例えば組織の液化)を行うために組織に付与することができる適当なエネルギーを意味する。典型的なエネルギーのタイプには、機械的エネルギー(例えば摩耗、剪断、真空、加圧、吸引)、超音波エネルギー、光学的エネルギー(例えばレーザー)、磁力的エネルギー、熱的エネルギー、電気的エネルギーが含まれる。
【0052】
本明細書において使用する「分析物(analyte)」とは、生体分子(biomolecule)(例えばポリペプチド(polypeptide)、核酸(nucleic acid)、脂質(lipid)等)、薬物(drug)(例えば治療薬物(therapeutic drugs)、乱用薬物等(drugs-of-abuse))、小分子(small molecule )(小分子は薬物でもあるという理解の下で例えば天然保湿因子(natural moisturizing factors)、ニコチン等)、兵器剤(warfare agent)、環境汚染物質(environmental contaminant)(例えば農薬(pesticides)等)、微生物(microbe)(例えばバクテリア、ウイルス、真菌(fungus)、酵母菌(yeast)等)及び組織内または組織上に存在し、対象とする組織(例えば皮膚、粘膜等)から抽出可能であるとともに、検出、分析及び/または定量化可能なものを意味する。
【0053】
「液化(liquefaction)」とは、組織及び/または組織成分を、十分なエネルギー、追加的には液化促進媒体への曝露を通じて十分な溶解状態に変換する処理の説明に使用し、対象とする組織構造の少なくとも一部の液体状態への変換を含むことができる。液化組織サンプルは、本明細書では「液化(liquefed)」サンプルとして言及することがある。
【0054】
「液化促進媒体(liquefaction-promoting agent)(LPM)」とは、一以上の組織成分の可溶化を容易にする、エネルギーに曝露された場合に組織構造の少なくとも一部を液体に変換することを容易にする、及び/または、一以上の可溶化した組織成分の生物活性の維持を容易にする物質の説明に使用される。
【0055】
「液化促進剤(liquefaction-promoting agent)(LPA)」とは、液化促進媒体の成分、詳細には一以上の組織成分の少なくとも可溶化及び/または生物活性(bioactivity)の維持、及び/または、次の診断分析を促進する薬剤の説明に使用される。
【0056】
本明細書で使用する「キャリブレーション分析物(calibration analyte)」とは、対象となる組織内に既知濃度で天然的に存在する分子を意味する。「キャリブレーション分析物」は、(例えば液化が所望の程度まで達成されることを確実にする正の制御(positive control)のような)参照分析物として機能する。
【0057】
本明細書で使用する「生体分子(biomolecule)」とは、生物学的起点または機能(biological origin or function)を有する適当な分子またはイオンを意味する。限定されない生体分子の例には、タンパク質(proteins)(例えば癌バイオマーカー(cancer biomarkers)のような疾病バイオマーカー(disease biomarkers)、抗体(antibodies):IgE、IgG、IgA、IgD、またはIgM、等)、ペプチド(peptides)、脂質(lipids)(例えばコレステロール(cholesterol)、セラミド(cholesterol)、または脂肪酸(fatty acids))、核酸(RNAまたはDNA)、小分子(small molecule)(例えばグルコース、尿素、クレアチン(creatine))、小分子薬物(small molecule drugs)またはこの代謝物()、微生物、無機分子、元素またはイオン(例えば鉄、Ca2+、K、Na等)が含まれる。いくつかの実施の形態では、生体分子は、グルコース以外であり、及び/または癌マーカー以外である。
【0058】
「乱用薬物(abused drug)」または「薬物の乱用(drug-of-abuse)」または「違法薬物(illicit drug)」という語は、本明細書では同じ意味で使用され、人間組織内に存在すること及び/または人間組織内にあるレベルを超えて存在することが違法であるまたは人間に有害であるとして政府によって規制(例えば連邦政府または州による規制)される物質について言及するために交互に使用される。乱用薬物の例には、コカイン(cocaine)、ヘロイン(heroin)、メチルアンフェタミン(methyl amphetamine)及び投薬量を超えた処方薬の服用または処方箋のない処方薬の服用(例えばオピオイド(opioids)のような鎮痛剤(painkillers))が含まれる。
【0059】
本明細書で使用する「兵器剤(warfare agent)」とは、兵器として使用することが可能な生物または化学由来の分子、化合物または合成物について言及するために使用される。兵器剤の例には、神経ガス(nerve gases)(例えばVX、サリン)、ホスゲン(phosgene)、トキシン、胞子(spores)(例えば炭疽菌(anthrax))等が含まれる。
【0060】
本明細書で使用する「環境汚染物質(environmental contaminant)」には、例えば危険閾値(risk threshold)を超える高い濃度の場合に個人に有害である分子、化合物または合成物が含まれる。例としては、水質汚染物質(water pollutants)(例えば肥料、農薬、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、重金属、ハロゲン)、土壌汚染物質(soil pollutants)(例えば、肥料、農薬、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、重金属、ハロゲン)、大気汚染物質(air pollutants)(例えばNO、SO、温室効果ガス、残留性有機汚染物質(persistent organic pollutants)(POPs)、粒状物質(particulate matter)、スモッグ)が含まれる。
【0061】
本明細書で使用する「汚染除去(decontamination)」には、個人に有害である無用なまたは不要(unwanted or undesired)な分子、化合物または合成物の組織からの除去が含まれる。例としては、(上述の定義のような)環境汚染物質、有毒化学物質及(toxic chemicals)び生体毒素(biological toxins)が含まれる。
【0062】
本明細書で使用する「天然保湿成分(natural moisturizing factor)(NMFs)」とは、フィラグリン(fillagrin)の誘導体である遊離アミノ酸(free amino acids)、乳酸塩(lactate)及び尿素を含むがこれらに限定されない数種類のタイプの小分子(small molecules)の一つを意味するものである。NMFsは、一般的な皮膚の健康(例えば乾燥肌(dry skin)、ぱさぱさの肌(flaky skin)、通常の肌等)の評価を容易にする分析物として使用することができる。本明細書で使用する「メカニカルインデックス(mechanical index)」とは、超音波音場(ultrasonic field)における負圧のピークの振幅と超音波周波数の平方根との比を意味するものである(メカニカルインデックス=(圧力(MPa))/(周波数(MHz)Λ0.5)。
【0063】
本明細書で使用する「薬物送達(drug delivery)」とは、一以上の薬物の血液、リンパ液(lymph)、間質液(interstitial fluid)、細胞または組織の内部への送達を意味するものである。
【0064】
本明細書で使用する「感度エンハンサー(sensitivity enhancer)」とは、液化した組織の分析物を安定化するためにLPMと混合された物質または物質の混合物を意味するものであり、診断分析試験(diagnostic analytical tests)の感度及び特異性(sensitivity and specificity)を高めてその分析を容易にする。
【0065】
「遮断試薬(blocking reagent)」とは、診断分析で使用される基質(substrates)との分析物の非特異性結合(non specific binding)の防止に使用される成分の説明に使用される。
【0066】
本発明及び本発明の具体的な典型的な実施の形態について説明する前に、本発明は説明する特定の実施の形態に限定されず、当然に、変更できるものとして、理解されるべきである。また、本明細書で用いられている専門用語は、特定の実施形態のみを記載するために用いられているのであって、限定を意図していないことを理解されたい。なお、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0067】
値の範囲を提供する場合、別段の定めがない限り、その範囲の上限及び下限の間に入る各値は、下限の単位の10分の1まで、特に開示されていると理解される。記載されているあらゆる値又は記載されている範囲内にある値と、記載されているその他のあらゆる値又はその記載されている範囲内にある値との間の範囲は、本発明に含まれる。記載されている範囲において特に除外されているすべての限界に制限されることを条件に、これらのより小さい範囲の上限及び下限は、範囲に独立して含まれていてもよいし又は除外されていてもよく、そのより小さい範囲に限界のいずれか若しくは両方が含まれているか又はいずれも含まれていない各範囲も本発明に含まれる。記載されている範囲が1つ又は両方の限界を含む場合、含まれているこれらの限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0068】
別段の定めがない限り、本明細書で用いられている技術用語及び科学用語のすべては、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書に記載されているものに類似の又は均等なあらゆる方法及び材料も用いることができるが、有力な好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されている刊行物のすべては、参照することによって本明細書に組み込まれており、引用されているその刊行物が関連する方法及び/又は材料を説明している。矛盾が存在する範囲については、組み込まれている刊行物のあらゆる開示よりも本開示が優先することは理解されるであろう。
【0069】
本明細書内および添付の特許請求の範囲の中で用いられるような、単数形の形式である「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」が、本文が反対のことを明確に要求しない限り、複数の参照を含むことは留意されたい。従って、例えば、「一つの組織」への参照は、このような組織の複数を含むものであり、「その液体」への参照は、一以上の液体への参照を含むものであり、以下同様である。特許請求の範囲が、任意の選択的な要素を排除するために書かれていることもさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙と関連して、「単に」、「唯一の」などのような排他的専門用語を使用するための、または「消極的な」限定を使用するための前提として働くように意図される。
【0070】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前の刊行物の開示のためにのみ提供され、本発明が先行発明を理由として前記開示に先行しないと解されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立して確認する必要がある場合もある。
【0071】
本発明は、組織成分(例えば数種類の生体分子、薬物及び微生物−組織成分が意味するものを形式的に定義した段落を参照するとよい)の一部とすることができる分析物の定性的及び/または定量的検出及び迅速な組織のサンプリングを提供するように、対象の組織にエネルギーを付与して組織成分を有する液化サンプルを生成することを含むシステム、方法およびデバイス及びこのシステム、方法及びデバイスに有効な組成を提供する。組織組成及び成分の決定は、局部の病気及び全身病の診断及び予後診断、薬物投与の後の異なる組織の治療の生物学的利用能の評価、薬物乱用の法医検出、有害物への曝露後の組織微小環境の変化の評価、組織の汚染除去及び様々な他の用途を含む種々の用途で使用することができる。
【0072】
本発明の他の目的は、組織を通るまたは組織内への分子の通過を容易にするために対象者の組織を液化する方法及びデバイスを提供することである。上述した方法及びデバイスは、組織成分の収集だけでなく、薬物送達にも適用することができる。デバイス及び方法には、エネルギー及び液化媒体を対象者の対象となる組織に付与すること及び液化する組織の部位を通ってまたは内部に薬物を送達することが含まれる。本発明を使用する利点は、1)組織の内部へ薬物を高速提供できる。2)組織への流速を大きく制御することができる。皮膚または循環システムの内部のような組織を単純に通過することができない薬物であっても、本発明の方法を適用すれば、組織を通って押し出される。
【0073】
本発明は人間への適用に関連して説明することができるが、獣医学への適用が本発明の意図及び範囲に含まれる。
【0074】
[組織診断]
[エネルギー付与装置]
本明細書で開示する組織液化装置(tissue liquefaction devices)は一般的に、リザーバーユニット/ハウジング(reservoir unit/housing)と操作可能に連結されたエネルギー源/発生器(energy sorce /generator)を有するものとして説明される。リザーバーユニット/ハウジングは、分析物が収集される媒体(medium)を収容する。媒体は、多くの実施の形態においては対象とする組織にエネルギーを伝達することを容易にするので、所望の場合には、組織サンプルの液化を容易にする。使用時にリザーバーハウジングは、対象者の対象とする組織と接触するように配置されて、媒体と組織との間の接触を形成する。そしてエネルギー源が作動する。デバイスは、追加のエネルギー源(例えば研磨アクチュエータ、圧電変換器、吸引または加圧)と操作可能に連結することができる。追加のエネルギー源もまた、組織へのエネルギーの伝達を容易にするために、組織にエネルギーを付与することができる。組織にエネルギーが付与されると、組織の成分はエネルギーにより可溶化して、媒体内に収集される。媒体は、リザーバーハウジング内に保持することができる。代わりに、媒体を分離コンテナ(separate container.)に移送してもよい。リザーバーハウジングまたはコンテナは、検出装置に操作可能に連結することができる。検出装置は、媒体中に存在する組織成分を定量的に測定することができる。
【0075】
エネルギーは、一つのエネルギー源から、またはエネルギー源の組合せとして組織に付与することができる。典型的なエネルギー源には、機械的(例えば研磨、剪断、真空、加圧等)、圧電変換器、超音波、光学的(例えばレーザー)、熱的及び電気的エネルギーが含まれる。付与するエネルギーの強度は、エネルギーを付与する時間と同様に、対象とする個々の組織及び個々の方法の適用ごとに適宜に調整することができる。付与するエネルギーの強度及び時間もまた、エネルギーと関連して使用される個々の液化促進媒体(LPM)に基づいて適宜に調整することができる。いくつかの実施の形態では、適当な組織の液化したサンプルを製造するために、エネルギー曝露時間(energy exposure time)は、1分より長い、90秒より長いまたは2分より長い。エネルギーの大きさは、対象とする分析物及びLPMの選択に依存する。LPM中に界面活性剤または粒子が存在しない場合には、組織の液化に高エネルギーが必要となる。高エネルギーの使用は、組織及びその構成成分への悪影響により制限される。重大な悪影響は、有害な組織損傷(injurious tissue damage)である。それ故、いくつかの実施の形態では、エネルギー曝露の安全限界に達したときにデバイスを停止することができるように、組織特性(tissue properties)の変化または組織の液化の範囲(extent)の時間的監視(理想的にはリアルタイムで)をするためのいくつかのデバイス部品を組み込む必要がある。時間的評価は、組織の液化前、液化中及び液化後に行うことができる。いくつかの実施の形態では、時間的評価は、電気化学的(例えば組織の導電率(electrical conductivity)、イオン選択電極によるいくつかのイオンの計測)、生化学的(例えばELISAのような酵素アッセイ(enzymatic assays)により、LPN中のいくつかの組織組成の計測等)、または光学的(例えば分光光度計によるLPM混濁度(LPM turbidity)の計測)手段により行うことができる。典型的な実施の形態では、組織の時間的導電率は、信号発生器により組織に予め定められた交流電圧を印加し、結果として流れる電流をマルチメーターで分析することにより測定される。高エネルギーへの曝露の他の重大な悪影響は、組織の温度上昇に起因し、熱的効果として知られている。それ故、いくつかの実施の形態では、組織及び/またはLPMの温度を監視することができる温度検知素子(例えば熱電対(thermocouple))を組み込んで、組織のエネルギー曝露の安全量の判定を容易にする必要がある。
【0076】
必要なエネルギーレベルは、LPMの適切な選択により大きく下げることができる。例えば、超音波と一緒に食塩水(saline)のみを使用すると、皮膚1平方センチメートル(cm)当たり0.1mgよりも低い回収の結果となる。一方、LPM中に1%w/vの濃度でDPS、NLS及びBrij−30のような界面活性剤を組み込むと、皮膚1平方センチメートル当たり0.6mgよりも高い回収の結果となる。
【0077】
いくつかの実施の形態では、組織を液化するためのエネルギーの使用は、可溶化した組織成分の生物活性(biological activity)を減少させるので、組織の可溶化及び組織分子の生物活性(bioactivity)を適切に維持するLPMの選択を必要とする。例えば、LPM中に1%w/vの濃度でDPS、NLS及びBrij−30のような一以上の界面活性剤を組み込むと、超音波エネルギーの曝露下で可溶化したタンパク質及び核酸の生物活性の完全な維持が容易となる。
【0078】
いくつかの実施の形態では、エネルギーは、エネルギー発生エレメント(energy producing element.)を有するエネルギー送達チャンバー(delivery chamber)を使用して組織に付与することができる。チャンバーは、組織上に置かれると、組織をエネルギー発生エレメントに曝露して、最小限の干渉で組織にエネルギーを付与することができる。このようなチャンバーは、LPMを含むことができるとともに、エネルギーが付与されたときに、組織成分が溶液内に直接収集されるようにLPMを組織と接触させることができる。
【0079】
いくつかの実施の形態では、LPMを含むエネルギー送達チャンバーは、LPM中に存在することができる分析物の検出、追加的には定量化のための診断装置、例えば分析センサー(analyte sensor)を備えることができる。これらの診断装置は、化学センサー、バイオセンサーとして機能することができ、また完全なサンプル及び測定システムを形成する他の測定器を提供することができる。流体輸送の内部チャンネル(internal channel)を有する部材は、使い捨てユニットを形成するようにセンサーと一緒に製造することができる。デバイスは、分析のためにLPM中の分析物を収集する使い捨てユニットを含むように構成または使い捨てユニットとして提供することができる。
【0080】
代わりに、診断部は、他の場所(例えばエネルギー装置から分離した場所)に配置することができる。組織と接触するエネルギー送達チャンバーの内容物は、機械力、毛管力(capillary forces)、超音波, 真空または電気浸透力(electroosmotic forces)を使用して検出チャンバー内に送り出されて分析される。
【0081】
いくつかの実施の形態では、例えば、局所製剤(topical formulations)の評価または薬理的パラメータ(pharmacological parameters)の決定の場合に、ユニットは、薬物送達手段(drug delivery means)、分析物回収手段(analyte recovery means)、分析物を測定する検出手段()及び薬物送達手段に信号を与える制御手段を備える閉ループ薬物送達(closed loop drug delivery)として機能するように構成することができる。
【0082】
エネルギーが補助される分析物装置の一般的な操作の一例をここに説明する。携帯型の使い捨て可能なユニットを、携帯型または卓上型エネルギー発生器内に挿入する。エネルギー発生器は、組織の抵抗測定、分析物の濃度測定及び分析物の濃度測定の表示用の電気回路を備えている。システム(例えばエネルギー付与器または使い捨てユニット)は、組織に寄せて配置され、エネルギーは、一定期間、単独でまたは他の物理的、機械的、電気的及び化学的力とともに付与される。対象となる組織は液化され、液化した組織からの分析物が使い捨てユニット内に収集されて、適切な試験を使用して測定される。
【0083】
本発明の好ましい実施の形態及びその利点は、図1乃至19の図面を参照することによりもっともよく理解される。これらの図の同じまたは対応する部材には、同じ符号が使用されている。
【0084】
図1a乃至図1gを参照すると、研磨エネルギーに基づいて組織を液化するデバイスの構造、部品及び機能が示されている。図1a乃至図1cには、液化のための組織にエネルギーを付与する手段として回転研磨部材101を利用するデバイスの一連の動作が示されている。液化は、研磨部材101を対象となる組織107に寄せて動作させることにより達成される。研磨部材101は、シャフト102に取り付けられており、シャフト102はデバイスの回転モータ103にさらに接続されている。いくつかの実施の形態では、シャフト102は、研磨部材10によって組織107に付与される圧力を検知して制御するように設計されている。典型的な実施の形態では、シャフト102は、圧力検知ばね1023(図1d)により互いに接続されるシャフト1021及びシャフト1022により構成されている(図1d)。他の実施の形態では、シャフト1021及びシャフト1022は、組織107に付与される圧力を監視及び制御するための圧力検知圧電結晶をそれらの間に挟んでいる。バッテリーパック104は、モータ103に電力を供給して、デバイスのオペレータにより指示された場合には、その後に研磨部材101を回転動作させる。液化の前に、研磨部材101は、ハウジング105、より詳細には、ハウジング105の基部に配置された薄いシート106を使用して組織107に対して分離するように設計することができる(図1a)。液化が開始されると、カートリッジ108に貯蔵されたLPMは、ハウジング105に移送され(図1a)、すぐにLPMはシート材料106の表面と接触し、続けて研磨部材101をシート106に対して作動させる。シート106の材料は、研磨部材101によってすぐに摩耗し、LPM及び研磨部材101が組織107と接触して組織を液化できるように選択される(図1b)。シート106の限定されない例には、紙のシート、ラバーシート、金属箔、プラスチックシートまたは水溶性シートが含まれる。液化処理が完了すると、モータ103が停止し、組織成分を含むLPMは、サンプルコンテナ110に移送される(図1c)(図面の修正が必要なので、部材110内には液化されていないサンプルは明確に示されていない)。または、LPMは、予め真空化したコンテナ内に直接移送される(従って吸引ポンプ109及びコンテナ110の必要性を回避できる)。予め真空化したコンテナがない場合には、サンプルの収集は、吸引ポンプ109により容易に行われる。
【0085】
いくつかの実施の形態では、デバイスの使用後毎に、いくつかのデバイス部品の交換を可能にして無菌で使用できるように、いくつかのデバイス部品は使い捨て可能に設計される。このようなデバイス部品には、ハウジング105、研磨部材101、カートリッジ108、サンプルコンテナ110及びデバイスを無菌に維持するのに必要と考えられるような流体を処理するデバイスの他の部品を含むことができる。代わりにいくつかの実施の形態では、デバイス全体を使い捨て可能にしてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、LPM貯蔵カートリッジ108は、LPMを貯蔵及び放出するスポンジ−ベローアセンブリ(sponge-bellow assembly)と交換することができる。図1e乃至gには、このようなデバイスの一連の動作が示されている。フレキシブルなベロー形ハウジング112は、LPMが充填されたスポンジ11を有している(図1e)。デバイスを組織107に対して押すと、スポンジ−ベローハウジングが圧縮されてLPMを放出するとともに、研磨部材101が動作をする(図1f)。液化処理が完了すると、モータ103が停止し、組織成分を含むLPMは、サンプルコンテナ110に移送される(図1g)。サンプルの収集は、吸引ポンプ109により容易に行われる。代わりに、いくつかの実施の形態では、吸引ポンプ109及びコンテナ110は、デバイスを持ち上げて初期位置に戻してサンプルをスポンジ内に収集することで回避できる。
【0087】
図2a及び2bを参照すると、組織の広い領域から連続的にサンプリングするように設計された移動可能な組織液化デバイスの構造及び部品が示されている。図2には、液化のために組織にエネルギーを付与する手段としての回転研磨部材201を利用するデバイスが示されている。液化は、対象となる組織207に寄せて研磨部材201を配置して対象となる組織207に対して研磨部材201を動作させることにより行われる。研磨部材201は、シャフト202に取り付けられており、シャフト202はデバイスの回転モータ203にさらに接続されている。いくつかの実施の形態では、シャフト202は、研磨部材201によって組織207に付与される圧力を検知して制御するように設計されている。典型的な実施の形態では、組織207に付与される圧力を監視及び制御するために、シャフト202は、圧力検知ばねまたは圧力検知圧電結晶により互いに接続される2つの異なるシャフトにより構成されている。バッテリーパック204は、モータ203に電力を供給して、デバイスのオペレータにより指示された場合には、その後研磨部材201を回転動作させる。デバイスが組織に対して設置されると、3つのキープロセス−カートリッジ208に貯蔵されたLPMがデバイス−組織の境界でハウジング212に連続的に送達され、研磨部材201を組織207に対して動作させ、組織の液化サンプルを吸引ポンプ209を使用してサンプルコンテナ210内に連続して供給することを実行することにより連続した液化処理が開始する。デバイスは、追加の組織の表面がデバイスに曝露されて液化するように周囲を移動することができる。必要な場合には、モータ203のスイッチを切ることにより液化処理を停止し、蓄積した組織サンプルは、コンテナ210から入手できる。
【0088】
いくつかの実施の形態では、デバイスの動作が組織の表面を超えることによりハウジング212からLPMが漏れることを防止するために追加のデバイス部品を使用することができる。典型的な実施の形態では、デバイスの周りのフランジハウジング205内に配置されたチャンバー206と組織207との間に吸引補助シールを作成するために吸引ポンプ209を使用することができる。
【0089】
図2bには、液化のために組織に機械的エネルギーを付与する手段として圧電素子251を使用するデバイスが示されている。圧電素子251は、対象となる組織259と結合されたハウジング252内に配置される。液化は、組織259と圧電素子251との間を結合する液体としてLPMを存在させて、圧電素子251を動作させることにより行われる。圧電素子251は、電気エネルギーの変換器である。電気エネルギーは、フレキシブルチューブ253内に配置された回路手段によって供給される。液化の間、LPMは、オペレータにより制御される噴射システム装置256を用いて、フレキシブルチューブ254によってハウジング252に供給される。組織の液化サンプルは、フレキシブルチューブ255を使用することにより、ハウジング252からサンプルコンテナ257に同時に収集することができる。サンプルの収集は、サンプルコンテナに連続的に接続される吸引ポンプ258により容易に行うことができる。いくつかの実施の形態では、吸引ポンプ258によりハウジング252内に形成される吸引圧力により、液化の間ハウジング252からLPMが漏れることを防止するためにハウジング252と組織259との間に効果的なシールを提供する。いくつかの実施の形態では、吸引ポンプ258によりハウジング252内に形成される吸引圧力は、液化のための追加のエネルギー源を提供する。
【0090】
いくつかの実施の形態では、追加の組織表面を液化及び種々の組織表面から蓄積された組織成分を表すサンプルを収集するようにハウジング252は移動することができる。このようなデバイスにおいては、LPMはチューブ254によりハウジング252に連続的に供給され、サンプルはチューブ255により連続的に収集される。
【0091】
いくつかの実施形態では, 図2bのデバイスを、圧電素子251無しで動作させることができる。この実施の形態では、チューブ254からハウジング252に流れるLPMは、組織と接触して組織を液化する。液化した組織はチューブ255によりハウジングから収集される。ハウジングは、組織の広い領域からサンプルを収集するために連続的または間欠的に移動させることができる。デバイスは、組織上でのデバイスの移動、組織の液化及び液化組織の収集を物上におけるデバイスの移動を可能にするために実質的に必要な追加の手段を有することができる。いくつかの実施の形態では、圧力または真空力のどちらか一方のみを、組織に向かってのLPMの移動及び液化した組織の収集に使用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では,液化デバイスは、 内視鏡、結腸鏡及び腹腔鏡のような診断プローブと一体化することができる。
【0093】
図3a乃至3cを参照すると、液化のために組織にエネルギーを付与する手段として振動研磨部材を利用する液化デバイスの構造及び部品が示されている。直線運動は、例えばラックとピニオンの配置により生じる(図3a)。詳細には、研磨部材301は、ラック302に取り付けられている。ラック302は、環状のギア303(ピニオン)を使用して、往復直線運動でスライドする。ギア303は、モータ304により往復回動運動するように駆動される。バッテリーパック305はモーター304に電力を供給する。いくつかの実施の形態では、モータ304は、往復回動運動を生じさせるための電子マイクロチップコントローラが必要となるサーボモータである。液化の前に、研磨部材301は、ハウジング307、より詳細には、ハウジング307の基部に配置された薄いシート308を使用して組織311に対して分離するように設計することができる。LPMは、ハウジング307内に予め貯蔵しておくことができるので、例えば、薄いシート308と接触している。いくつかの実施の形態では、LPMは、デバイスの他の部分に配置されたカートリッジからハウジング307内に移送することができる。液化処理は、研磨部材301をシート308に対して直線運動させることにより開始する。シート308の材料は、研磨部材301によってすぐに摩耗し、LPM及び研磨部材301が組織311と接触して組織を液化できるように選択される。シート311の限定されない例には、紙のシート、ラバーシート、金属箔、プラスチックシートまたは水溶性シートが含まれる。液化処理が完了すると、モータ304が停止し、組織成分を含むLPMは、サンプルコンテナ309に移送される。サンプルの収集は、吸引ポンプ310により容易に行われる。いくつかの実施形態では、サンプルは、予め真空化したコンテナ内に直接収集することができ、吸引ポンプ310及びコンテナ309の必要性を回避できる。
【0094】
いくつかの実施の形態では、デバイスの使用後毎に、いくつかのデバイス部品の交換を可能にして無菌で使用できるように、いくつかのデバイス部品は使い捨て可能に設計される。このような部品には、ハウジング307、研磨部品301、サンプルコンテナ309及びデバイスを無菌に維持するのに必要と考えられるような流体を処理するデバイスの他の部品を含むことができる。代わりにいくつかの実施の形態では、デバイス全体を使い捨て可能にしてもよい。
【0095】
いくつかの実施の形態では、研磨部品301の直線往復運動は、リニアモータ、直線運動アクチュエータ、ボールねじアセンブリ、送りねじアセンブリ、ジャッキねじアセンブリ及び回転運動を直線運動に変換する他の装置を使用するような他の機構により生じさせることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、図3aに示したひとつのラック及びピニオンのシステムは、図3bに例示されるような複数のギア及びベルトの配置構成と交換することができる。詳細には、ベルト327(図面の改訂が必要なので、図面にはベルトは明確に示されていない)は、ギア321,322,323,324,325及び326に取り付けられている。研磨部材328は、ベルト327に取り付けられており、ギア321がモータ304により駆動されて往復回転運動をしたときに、直線往復運動をはじめる。ギア321,322及び326はデバイスのハウジングに固定されている。一方、ギア323,324及び325はシャフト328に設けられている。シャフト328は、デバイスのハウジングに固定されている。いくつかの実施の形態では、研磨部材328が平坦でない組織の表面に対して押されたときに、平坦でない組織の表面に研磨部材328の輪郭を形成するためにギア323,324及び325が取り付けられたシャフトの長さを調整できるように、シャフト328は、長さを変更することができる。さらに、シャフト328は、研磨部材328によって組織の表面に付与される圧力を検知して制御するように設計することができる。典型的な実施の形態では、シャフト328は、圧力検知ばねにより互いに接続されたシャフト3281及びシャフト3282から構成されている(図3c)。
【0097】
図4a乃至4gを参照すると、本発明で開示するデバイス、方法及びシステムで使用される研磨部材の種々のデザインが示されている。図4aには、均一の厚さを有する研磨材のシートを備える研磨部材が示されている。均一の厚さを有する研磨材の限定されない例には、布、研磨結晶(例えばクオーツ、金属、シリカ、炭化珪素、アルミニウムのダストまたは派生物(例えばアルミナ)、ダイアモンドダスト、高分子及び天然のスポンジ等)等が含まれる。いくつかの実施の形態では、例えば研磨性の空間的な変動があるように不均一な研磨性のある研磨部材を設計する利点がある。典型的な実施の形態では、研磨部材は、研磨性に傾斜を有するディスクであり、ディスクの中心の研磨性が高く、ディスクの周縁部の研磨性が低い(図4b)。いくつかの実施の形態では、研磨部材の形状は、平坦でない形状に変更することができる。典型的な実施の形態では、図4cには、滑らかで丸い組織対向面を有する研磨部材が示されており(高さと幅との比として定義するアスペクト比は、10乃至0.1で変更可能である。)、図4dには、円環形状の研磨部材が示されている。図4e乃至図4gには、組織摩耗手段としてのブラシを使用する研磨部材の実施の形態が示されている。図4eには、均一の高さ及び摩耗性の剛毛(bristles)を有するブラシを備えた研磨部材が示されている。いくつかの実施の形態では、研磨部材は、異なる高さ及び/または研磨性の剛毛を有するブラシを備えている。図4fには、ディスクの周縁部の低い研磨性の剛毛によって囲まれた中心の高い摩耗性の剛毛を有する円板形状のブラシの典型的な実施の形態が示されている。図4gには、滑らかで丸い組織対向面を形成する異なる長さの剛毛を有するブラシの典型的な実施の形態が示されている(高さと幅との比として定義するアスペクト比は、10乃至0.1で変更可能である。)
図5a乃至5dを参照すると、組織の導電性を測定するデバイス部品が記載されている。高エネルギー曝露は組織の液化に好ましいが、有害な組織の損傷のような重大な悪影響を引き起こすことがある。それ故、いくつかの実施の形態では、エネルギー曝露の安全限界に達したときにデバイスを停止することができるような、例えば組織の導電性のような組織特性の変化の時間的監視を(理想的にはリアルタイムで)するためのいくつかのデバイス部品を組み込む必要がある。液化処理中の組織の導電性の時間的測定及び監視は、組織503に配置された測定電極501及び液化される組織503に隣接する領域に配置された参照電極502を使用して、予め定められた交流電圧を、対象となる組織503に印加することにより行うことができる。電流計504により測定された2つの電極間を流れる電流は、組織の導電性の測定として受け入れることができる。いくつかの実施の形態では、測定電極501は、LPMとのまたは液化される組織503の領域との直接的な電気的接触で維持される。一実施の形態では。測定電極501は、LPMハウジング509の裏の内面に配置される(図5a)。いくつかの実施形態では、測定電極は、LPMに浸された電動シャフト510に固定されたスライドコンタクト506である。電流は、スライドコンタクト506により、デバイスハウジングに固定された絶縁スタッド505に伝達される。いくつかの実施の形態では、参照電極502は、LPMハウジング509の延長であり、液化される組織503の領域の周辺近傍に配置される(図5a及び図5b)。いくつかの実施の形態では、参照電極は、液化デバイス内に配置された導電性測定部品と電気的に接続された手持ち式の円筒電極507である(図5c)。いくつかの実施の形態では、参照電極は、液化デバイス内に配置された導電性測定部品と電気的に接続されたパッチ電極508である(図5d)。
【0098】
図6a乃至6gを参照すると、マイクロニードルに基づく組織の液化を使用するデバイスの構造、部品、機能が開示されている。マイクロニードルに基づくデバイスは、組織内にマイクロニードルを押し込むことにより主に行われる組織成分の機械的破壊を介して組織にエネルギーを付与する。図6aには、LPM613が充填された多くのマイクロニードル602を保持するマイクロニードルパッチ601の基本的な構造が示されている。マイクロニードルパッチ601は、LPM613中の組織成分を破壊(disruption)及び溶解できるように対象となる組織内に挿入させることができる。LPMは、診断分析のためにパッチ601から吸引することができる。
【0099】
組織の内部へのマイクロニードルの次の挿入動作により、液化のための追加エネルギーを付与することができる。図6bには、マイクロニードルパッチ601に固定することができる振動コンポーネント603が示されている。振動コンポーネント603は、組織内へのパッチ601の挿入後、組織の内側でマイクロニードル602を激しく振動させるように作動する。振動コンポーネント603は、多くの機械的バイブレータ6031と、電力の供給及び所望の方向への機械的バイブレータの動作の制御をするバッテリー式の電子回路ボード6032とを有している。典型的な実施の形態では、機械的バイブレータ6031は、マイクロニードル602の軸に平行及び垂直な方向に振動させることができる。
【0100】
いくつかの実施の形態では、挿入後のマイクロニードルの動作は、パッチ601に対する各マイクロニードル602の動作により生じる。図6fには、パッチ601の頂部に配置された電磁石612が示されている。電磁石612は、各マイクロニードルをその軸に沿って振動運動させるのに使用することができる。このことは、マイクロニードル602が往復直線運動するように、磁石611が電磁石612の交流極性プロファイルと応答するように、各マイクロニードル602の頂部に磁石611を固定することにより行われる。いくつかの実施形態では 、マイクロニードルの回転運動が望まれる。電磁石6121,6122,6123及び6124は、パッチ601の周囲に対称的に配置される(図6g)。マイクロニードル602の頂部に設けられた磁石611は、マイクロニードル602を回動運動させるために電磁石6121,6122,6123及び6124の交流極性プロファイルに応答する。
【0101】
図6b−6eでは、マイクロニードルを通るLPMの積極的な注射及び引き抜きを使用して組織内のLPMを強制的に運動させることにより、液化のための追加のエネルギーをさらに付与することができる。デバイス内に配置されたハウジング604は、組織の内部に流れるようにパッチ601に含まれるLPMを押し出すのに使用することができる圧縮空気コンテナ605を有している。ハウジング604内の吸引ポンプ606は、組織からLPMを引き抜くための真空力の付与に使用することができる。いくつかの実施の形態では、圧縮空気コンテナ605及び吸引ポンプ606は、液化を促進するために組織からのLPMの引き抜き及び注射に繰り返して使用するために代わりに使用される。ハウジング604内のバッテリー式の電子回路ボード607は、圧縮空気コンテナ605及び吸引ポンプ606への電力の供給及び制御に使用される。いくつかの実施の形態では。吸引ポンプ606は、組織の液化サンプルをパッチ601から吸引してサンプルコンテナに伝達するためにサンプルコンテナに追加的に接続することができる。いくつかの実施の形態では、ハウジング604は、パッチ601の頂部に取り付けられたフレキシブルゴムキャップ(図6d参照)と置き換えることができる。フレキシブルキャップ608は、LPMがマイクロニードル602を通って組織から繰り返して注射及び引き抜きされるように、例えば指で押すことにより、繰り返し押し込み及び押し戻すことができる。
【0102】
マイクロニードル602は、組織の液化を高めるために物質610で被覆することができる(図6e)。いくつかの実施の形態では、物質610は、組織成分の破壊及び破壊した組織成分のLPMへの加速的な溶解を高めることを補助することができる研磨材である。いくつかの実施の形態では、物質610は、組織の液化を高めるために細胞外マトリクスのような特定の組織の組成を切断する酵素である。いくつかの実施の形態では、物質610は、組織からの分析物の回収を高めることにつながる対象となる組織の分析物と特異的に結合する分子である。典型的な実施の形態では、物質610は抗体である。
【0103】
図6を参照すると、いくつかの実施の形態では、デバイスの使用後毎に、いくつかのデバイス部品の交換を可能にして無菌で使用できるように、いくつかのデバイス部品を使い捨て可能に設計することができる。このような部品には、マイクロニードルパッチ601、マイクロニードル602、圧縮空気コンテナー605、吸引ポンプ606及びデバイスを無菌に維持するのに必要と考えられるような流体を処理するデバイスの他の部品を含むことができる。代わりにいくつかの実施の形態では、デバイス全体を使い捨て可能にしてもよい。
【0104】
[液化促進媒体(LPM)]
LPMは、以下の4つの目的の一以上を果たすように設計することができる。a)成分内への組織の分散を容易にする。b)液化した組織成分を収集する媒体として作用する。c)(例えば種々の分子の構造の維持によって及びサンプルした微生物の増殖能力の維持によって)生物活性及び化学活性を保持するようにサンプルした成分の分解を阻止する。d)次の分析技術との互換性の確保。
【0105】
一般的にLPMは、水溶液(例えばトリス−HCl(Tris-HCl)、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)等)または有機(非水)液体(例えばDMSO、エタノール等)のような溶媒を有している。LPMには、種々の液化促進剤を追加的に含めることができる。液化促進剤には、界面活性剤(非イオン、陰イオンまたは陽イオン)、脂肪酸、アゾン状分子(azone-like)、キレート剤(例えばEDTA等)、無機化合物及び摩耗物質が含まれるがこれに限定されない。本明細書で使用する「液化促進剤」は、組織サンプルの液化及び/または組織成分の可溶化を容易にすることができるLPMの成分である。対象となる組織及び分析物のタイプに応じて、LPMの成分は、上述した基準に基づいて合理的に選択することができる。例えば、粘膜のような繊細な組織は、最小限のまたは界面活性剤のない食塩水で液化が可能であるのに対して、皮膚のような角化組織には、界面活性剤のような追加の成分が必要となる。
【0106】
LPM中の液化促進剤は、種々の適切な成分を含むことができる。種々の適切な成分には、水、トリス−HCl(tris-HCl)、食塩水(リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline)(PBS)及びトリス緩衝生理食塩水(tris-buffered saline)(TBS))、アルコール(エタノール及びイソプロパノールを含む(例えば10−100%の濃度範囲の水溶液))、シリカ、酸化アルミニウムまたはシリコンカーバイド(silicon carbide)のダストまたは派生物のような摩耗物質(例えば0.01−99%の濃度範囲の水性溶液)、Brij(例えばBrij30のような種々の鎖長)、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DPS)、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Dodecyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DDPS)、N−ラウロイルサルコシン(N-lauroyl sarcosine)(NLS)、トリトンX−100(Triton X-100)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate)(SDS)及びラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)(SLS)、HCO60界面活性剤(HCO-60 surfactant)、ヒドロキシポリエトキシドデカン(Hydroxypolyethoxydodecane)、ラウロイルサルコシン(Lauroyl sarcosine)、ノノキシロール(Nonoxynol)、オクトキシノール(Octoxynol)、フェニルスルホナート(Phenylsulfonate)、プルロニック(Pluronic)、ポリオレアート(Polyoleates)、ラウリン酸ナトリウム(Sodium laurate)、オレイン酸ナトリウム(Sodium oleate)、ジラウリン酸ソルビタン(Sorbitan dilaurate)、ジオレイン酸ソルビタン(Sorbitan dioleate)、モノラウリン酸ソルビタン(Sorbitan monolaurate)、モノオレイン酸ソルビタン(Sorbitan monooleates)、トリラウリル酸ソルビタン(Sorbitan trilaurate)、トリオレイン酸ソルビタン(Sorbitan trioleate)、スパン20(Span 20)、スパン40(Span 40)、スパン85(Span 85)、シンペロニックNP(Synperonic NP)、Tweens、アルキル硫酸ナトリウム(Sodium alkyl sulfates)及びアルキルアンモニウムハライド(alkyl ammonium halides)のような界面活性剤(例えば0.01−20%の濃度範囲の水性溶液)、DMSO(例えば0.01−20%の濃度範囲の水性溶液)、リノール酸(linoleic acid)のような脂肪酸(fatty acids)(例えば0.1−2%の濃度範囲のエタノールと水が50:50の溶液)、アゾン(azone)(例えば0.1−10%の濃度範囲のエタノールと水が50:50の溶液)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(例えば10−50%の濃度範囲の水性溶液)、ヒスタミン(histamine)(例えば10−100mg/mlの濃度範囲の水性溶液)、EDTA(例えば1−100mMの濃度範囲)及び水酸化ナトリウム(例えば1−100mMの濃度範囲)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施の形態では、LPMは、TWEEN、CTAB、SPANまたはアルキル硫酸ナトリウム以外の界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施の形態では、LPMは、陽イオン界面活性剤以外の界面活性剤を含むことができる。LPMが界面活性剤を有する場合には、LPM中の界面活性剤の合計濃度は、少なくとも0.5%乃至10%の範囲とすることができ、例えば約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%または約3%である。
【0107】
LPMは、対象となる分析物の生物活性の維持を容易にする薬剤を有することができる。例えば、LPMは、フリーラジカルスカベンジャー(free radical scavengers)(例えば抗酸化物質(例えばポリフェノール、ベータカロチン、ルテイン、リコピン、セレニウム等)、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、アルファトコフェロール(alpha-tocopherol)、ブチルヒドロキシトルエン、安息香酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム等)、消泡剤(例えばジメチルポリシロキサン(dimethylpolysiloxane)、炭化水素油(hydrocarbon oil)、低脂肪酸ジクリセリド等のようなシリコンまたは非シリコン消泡剤)及び剪断保護剤(例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、プルロニックF68等)を含むことができる。分析物の文脈で使用される「生体活性」とは、(例えば特別な抗体または変性に敏感な他の構造的特徴によってバインドされたエピトープのような)検出を容易にする構造コンフォーメーションについて言及するものであり、分析物の生物活性(例えば酵素活性)を含むものである。
【0108】
特に対象となるLPMは、本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムに接続した場合に、LPM中の分析物の生体活性の維持の提供、特には分析物の構造コンフォメーションの保持(例えばタンパク質分析物の変性の回避)の提供と同時に、LPM中に所望のレベルの組織成分を提供する界面活性剤の組合せを有している。
【0109】
LPM中に非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン界面活性剤の組み合わせを含む界面活性剤の異なる組み合わせを使用することにより、本明細書で説明するデバイス、方法及びシステムにおいて以下に使用する、LPM中への高レベルの組織成分及びLPM中に含まれる分析物の生物活性の保存の両方を提供することができる。
【0110】
対象となる非イオン界面活性剤の限定されない例には、ブリジ系界面活性剤(例えばポリエチレングリコールドデシルエーテル(Polyethylene glycol dodecyl ether)(Brij30)、ポリオキシエチレン23−ラウリルエーテル(Polyoxyethylene 23-lauryl ether)(Brij35)、ポリオキシエチレン2−セチルエーテル(Polyoxyethylene 2-cetyl ether)(Brij52)、ポリオキシエチレン10−セチルエーテル(Polyoxyethylene 10-cetyl ether)(Brij56)、ポリオキシエチレン20−セチルエーテル(Polyoxyethylene 20-cetyl ether)(Brij58)、ポリオキシエチレン2−ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 2-stearyl ether)(Brij72)、ポリオキシエチレン10-ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 10-stearyl ether)(Brij76)、ポリオキシエチレン20−ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 20-stearyl ether)(Brij78)、ポリオキシエチレン2−オレイルエーテル(Polyoxyethylene 2-oleyl ether)(Brij92)、ポリオキシエチレン10−オレイルエーテル(Polyoxyethylene 10-oleyl ether)(Brij96)、ポリオキシエチレン100−ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 100-stearyl ether)(Brij700)、ポリオキシエチレン21−ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 21-stearyl ether)(Brij721)等)、トリトンX(Triton X)(例えばトリトンX−15(Triton X-15)、トリトンX−45(Triton X-45)、トリトンX−100(Triton X-100)、トリトンX−114(Triton X-114)、トリトンX−165(Triton X-165)、トリトンX−200(Triton X-200)、トリトンX−207(Triton X-207)、トリトンX−305(Triton X-305)、トリトンX−405(Triton X-405)等)及びソルビタン(例えばスパン−20(Span-20)、スパン−40(Span-40)、スパン−60(Span-60)、スパン−65(Span-65)、スパン−80(Span-80)、スパン−85(Span-85)等)が含まれる。
【0111】
対象となる両性界面活性剤の限定されない例には、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)、3−(ドデシルジメチルアンモニ)オプロパンスルホナート(3-(Dodecyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)、ミリスチルジメチルアンモニオプロパンスルホナート(Myristyldimethyl ammonio propane sulfonate)、ヘキサデシルジメチルアンモニオプロパンスルホナート(Hexadecyldimethyl ammonio propane sulfonate)、ChemBtetaine C、ChemBtetaine Oleyl、ChemBtetaine CAS及び3−(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート(3-(3-cholamidopropyl)-d imethylammonio- 1 -propanesulfonate)が含まれる。
【0112】
対象となる陰イオン界面活性剤の限定されない例には、N−ラウロイルサルコシン(N-lauroyl sarcosine)、ココイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium Cocoyl Sarcosinate)、ミリストイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium Myristoyl Sarcosinate)、イソプロピルラウロイルサルコシン(Isopropyl Lauroylsarcosinate)、パルミトイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium Palmitoyl Sarcosinate)及びラウロアンフォジアセテートラウロイルサルコシ酸ジナトリウム(Disodium Lauroamphodiacetate Lauroyl Sarcosinate)が含まれる。
【0113】
いくつかの実施の形態では、非イオン界面活性剤は、両性イオン界面活性剤と組み合わされる。いくつかの実施の形態では、非イオン界面活性剤は、陰イオン界面活性剤と組み合わされる。これらの実施の形態において、LPM中に存在する非イオン界面活性剤と両面界面活性剤または陰イオン界面活性剤との比は、所望の結果を達成するために調整することができる。限定されない対象となる比には、非イオン界面活性剤:両性イオン界面活性剤が25:75、非イオン界面活性剤:両性イオン界面活性剤が50:50、非イオン界面活性剤:両性イオン界面活性剤が75:25、非イオン界面活性剤:陰イオン界面活性剤が25:75、非イオン界面活性剤:陰イオン界面活性剤が50:50、非イオン界面活性剤:陰イオン界面活性剤が75:25が含まれる。特に対象となる混合物は、ブリジ系界面活性剤(Brij series surfactant)(例えばBrij−30)とN−ラウロイルサルコシン(N-lauroyl sarcosine)(NLS)とが50:50の界面活性剤混合物である。特に対象となる他の混合物は、ブリジ系界面活性剤(Brij series surfactant)(例えばBrij−30)と3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DPS)とが50:50の界面活性剤混合物である。以下の例に示すように、これらの界面活性剤の組み合わせは、LPM中に界面活性剤の合計濃度が0.5−1%(w/v)で含まれる場合には、タンパク質の合計濃度によって評価されるように高いレベルでの組織成分の安定化のために提供されるとともに、(ELISA法によって評価されるように)生物活性の保持のために提供される。
【0114】
いくつかの特殊のケースでは、例えば、生きた病原体の収集のため、様々なLPMの組成を所望の結果を達成するために使用することができる。食塩水及びトリス−HClは、幅広い種類の皮膚常住バクテリアを収集するためのLPMとして使用され、追加的にはこれらの微生物は、生体外での増殖及び成長のために強く残存する。いくつかの実施の形態では, サンプルされた微生物の増殖を補助するためにLPMは濃縮ブロス媒体を含むことができる。いくつかの嫌気性バクテリアは、酸素雰囲気に対して敏感である。従って、嫌気性バクテリアを収集するためのLPMは、窒素または水素雰囲気を含むことができる。成分の異なるLPM組成物を特別な応用で使用するために容易に製造することが可能であることは本明細書を読んだ当業者に明かとなる。
【0115】
LPMは、プロテアーゼ−阻害剤(protase-inhibitors)、RNase−阻害剤(RNase-inhibitors)、DNase−阻害剤(DNase-inhibitors)のような対象となる分析物の安定剤を含むこともできる。安定剤は、最小限のまたは検出不可能な分解または生物活性の減少で分析物を収集及び少なくとも一時的に収容することを可能にする。他の典型的な液化促進剤は、米国特許第5947921号に開示されており、本出願では、全体を参照することにより、本明細書に組み込む。例えば、液化促進剤には、界面活性剤、研磨粒子及び生体分子安定剤を含めることができる。
【0116】
一つの典型的な実施の形態では、LPMは、無菌のPBS中にNLS及びBrij−30の混合物1%w/vを含む溶液から構成される。 他の典型的な実施の形態では、LPMは、無菌のPBS中にDPSとBrij−30の混合物0.5%w/vを含む溶液で構成される。いくつかの実施の形態では、特に分析物は一以上のタンパク質であり、LPMは、1−10%v/vのプロテアーゼ阻害剤の混合物(例えば、Sigma−Aldrich, St, Louis, MOから提供されるカタログ番号がP8340のもの)を含む。いくつかの実施の形態では、LPMは食塩水である。 いくつかの実施の形態では、LPMはトリスHCl溶液である。
【0117】
LPMはまた、「感度エンハンサー」として定義した薬剤を含むことができる。感度エンハンサーは、診断分析試験の感度及び特異性は高めることに関して、液化した組織の分析物を安定させる及び分析を容易にするために使用される。これらの目的を達成するために必要とされるため、感度エンハンサーは、組織の液化処理前、処理中、処理後または診断分析前または分析中にLPM中に加えておくことができる。例えば、感度エンハンサーは、コンテナ内に予め収容しておくことができ、後に組織の液化サンプルと混ぜることもできる。
【0118】
典型的な実施の形態では、感度エンハンサーは、対象となる分析物の検出感度及び特異性を増強するためにLPMの(上述の)特異成分と相乗的に作用する物質から配合される。典型的な実施の形態では、感度エンハンサーは、組織サンプル中に存在するタンパク質分析物が、感度及び特異性の原因となる種々の診断アッセイ基質との非特異性結合を防止する物質から配合される。いくつかの実施の形態では、感度エンハンサーは、プロテアーゼ、RNase及びDNaseのような不活性化分子によって対象とする分析物を安定化するように配合される。いくつかの実施の形態では、感度エンハンサーは、 対象となる分析物の液化されたサンプルに存在するタンパク質との非特的な結合を防止するためにプロテアーゼを活性化する物質から配合することができる。いくつかの実施の形態では、感度エンハンサーは、対象とある分析物の加硫での分析を容易にするために液化されたサンプルの生理状態(例えばpH)を調整するために使用される。
【0119】
いくつかの実施の形態では、感度エンハンサーは、水溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)、トリス緩衝生理食塩水(tris-buffered saline)等)または(「非水の」)有機液体(例えばDMSO、エタノール、フェノール等)のような溶媒を含むことができる。感度エンハンサーは、限定されない例として、遮断試薬(例えばTween20、TritonX−100、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、脱脂粉乳(non-fat dry milk)、カゼイン(casein)、カゼイン塩(caseinate)、アイシングラス(fish gelatin)、超音波で切断した精液の核酸(sonicated-sperm-nucleic acids)等)、プロテアーゼ(protease)、プロテアーゼ阻害剤(protease-inhibitors) 、RAase阻害剤(RNase-inhibitors)、DNase阻害剤(DNase-inhibitors)、ブロス媒体(broth medium)のような安定剤を追加的に含むことができる。対象となる組織及び分析物のタイプに応じて、感度エンハンサーの成分は、合理的に選択することができる。典型的な実施の形態では、液化した皮膚のような角化組織の核酸を検出するために、感度エンハンサーには、100mMの塩化ナトリウム、10mMのトリスCl(pH8)、25mMのEDTA(pH8)、0.5%SDS、及び0.1mg/mlのプロテアーゼKが含まれている。ここで、プロテアーゼKには、皮膚の液化を容易にすることが可能なだけでなく、組織の分析物としてサンプル中に存在するRAase及びDNaseを分解することにより核酸を安定化させることも可能である。
【0120】
免疫測定法による分析物の検出が含まれるいくつかの実施の形態では、感度エンハンサーには、種々の適当な成分を含めることができる。適当な成分には、溶剤(例えば水、緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水、トリス−HCl、トリス緩衝生理食塩水)等)、プロテアーゼ阻害剤のような安定剤、Tween20、TritonX−100、ウシ血清アルブミン(例えば1−5%の濃度範囲)、脱脂粉乳(例えば0.1−0.5%の濃度範囲)、カゼインまたはカゼイン塩(例えば1−5%の濃度範囲)、アイシングラス例えば1−5%の濃度範囲)のような遮断試薬が含まれるがこれに限定されない。典型的な実施の形態では、免疫測定法の感度エンハンサーは、10%のBSA及び0.5%のTween20をトリス緩衝生理食塩水に溶解させた溶液で構成されて、組織サンプルと1:10の比で混合される。
【0121】
対象となる分析物として核酸の検出を含むいくつかの実施の形態では、感度エンハンサーには、種々の適当な成分を含めることができる。適当な成分には、水、緩衝液(例えばTE、TAE、クエン酸ナトリウム等)、EDTAのようなキレート剤、安定剤(例えばRAase阻害剤、DNase阻害剤、プロテアーゼ、フェノール、硫酸アンモニウム、グアニジンイソチオシアネート等)、ドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤、及び超音波で切断した精液の核酸、Tween20、TritonX−100、ウシ血清アルブミン(例えば1−5%の濃度範囲)、脱脂粉乳(例えば0.1−0.5%の濃度範囲)、カゼインまたはカゼイン塩(例えば1−5%の濃度範囲)、アイシングラス(例えば1−5%の濃度範囲)のような遮断試薬が含まれるがこれに限定されない。いくつかの実施の形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術の使用により、核酸の検出が望まれる。LPMは、LPAとしてPCR阻害剤を含有することを回避するように選択される。典型的な実施の形態では、PCRと相性の良いLPMは、トリス−HCl緩衝液またはEDTA緩衝液である。
【0122】
対象となる分析物として微生物の検出を含むいくつかの実施の形態では、感度エンハンサーは、生体外での微生物の成長を促進するように、濃縮ブロス媒体を有することができる。いくつかの嫌気性バクテリアは、酸素雰囲気に対して敏感である。従って、嫌気性バクテリアを収集するための感度エンハンサーは、窒素または水素雰囲気を含むことができる。
【0123】
対象となる特定の定量システムまたは特定の分析物の感度エンハンサーの他の配合は、本明細書を読んだ当業者に明かとなる。
【0124】
いくつかの実施の形態では、LPMの熱特性(例えば温度、熱容量等)は、組織及び/または組織成分のエネルギー曝露の熱的悪影響を減少させるように組織の液化前または液化中に調節される。一実施の形態では、LPMの温度は、組織成分の溶解物を含まないように十分に低く維持される。他の典型的な実施の形態では、環境温度(約25℃)よりも低い温度に予め冷却されたLPMを超音波液化で使用することができる。他の典型的な実施の形態では、LPMの温度は、LPM収容リザーバーに連結された熱伝達ジャケットを通る予め冷却された流動液体に熱を伝達することによりエネルギー曝露の間、継続的に下げることができる。
【0125】
[分析物]
本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムにより種々の分析物を(定性的にまたは定量的に)検出することができ、追加的には、問題となる組織の分析プロファイルを提供することに特徴がある。限定されない例には、構造タンパク質及び信号伝達タンパク質(例えばケラチン(keratins)(例えば塩基性のケラチン、酸性のケラチン)、β−アクチン(β-actin)、インターロイキン(interleukins)、ケモカイン(chemokines)、増殖因子(growth factors)、コロニー刺激因子(colony-stimulating factors)、インターフェロン(interferons)、抗体(IgE、IgG、IgA、IgD、IgM)、癌バイオマーカー(cancer biomarkers)(例えばCEA等)、熱ショックタンパク質(heat shock proteins)(例えばHsp−60、Hsp−70、Hsp−90等)等)、脂質(例えばコレステロール)、セラミド(ceramides)(例えばセラミド1−6)、脂肪酸、トリグリセリド、パラフィン炭化水素(paraffin hydrocarbons)、スクアレン(squalene)、コレステリルエステル(cholesteryl esters)、コレステリルジエステル(cholesteryl diesters)、遊離脂肪酸、ラノステロール(lanosterol)、コレステロール、極性脂質(polar lipids)(例えばグルコシルの派生物及びリン脂質)、核酸(例えばRNA及びDNA)、小分子(例えば遊離アミノ酸、乳酸塩、体外から送達された薬物分子、環境汚染物、兵器剤等)及び微生物(例えばバクテリア、菌類、ウイルス等)が含まれる。これらの分析物は、組織自体の内部に見つけられるが、組織の周囲の間質液に単独で存在することはできない。分析物は、腫瘍マーカーのような、間質液を伴うマーカー以外とすることができる。従って、本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムは、組織構造内に存在する腫瘍マーカーの検出に適用することができるが、間質液内に存在するものについては不明である。
【0126】
詳細な実施の形態においては、アレルゲン及びサイトカインの抗体が液化される(これらは液化されてまたは組織が液化されてこれらの可溶性分析物を生成する。)。アレルゲン及びサイトカインの抗体の液化は、問題となる組織及び目的物のアレルギープロファイルの生成に特徴がある。抗体の詳細なタイプには、IgE、及びIgG抗体が含まれるがこれらに限定されない。サイトカインの詳細なタイプには、IL4、IL5、IL10、IL−12、IL13、IL−16、GM−CSF、RANTES、MCP−4、CTACK/CCL27、IFN−g、TNFa、CD23、CD−40、エオタキシン−2及びTARCが含まれるがこれらに限定されない。
【0127】
分析物は種々の方法で分析される。分析方法は、評価される分析物に従って当業者が容易に選択することができる。リザーバーまたは収集コンテナは、サンプルを収集する場所として適用することができる。エネルギーの付与は、分析物の回収が最大となるように最適化することができる。サンプルの他の成分に対する分析物の相対的水準の維持のために確かな適用が望まれる。典型的な分析方法には、ゲル電気泳動、寒天平板培養試験、酵素試験、抗体に基づいた試験(例えばウエスタンブロット試験、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、横流型アッセイ等)、薄層クロマトグラフィー、HPCL、質量分光測定、放射線に基づく試験、DNA/RNA電気泳動、(UV/Vis)吸光分光分析、フローアッセイ等が含まれるがこれに限定されない。
【0128】
組織の液化サンプル中の組織成分の存在の定量的測定により、組織の液化の程度を評価することができる。このような内部較正は、吸光度、透過率、散乱または電磁波の放射源から放射される蛍光放射のような組織の液化サンプルの一以上の光学的性質を測定することにより行うことができる。重量測定の重量、合計タンパク質含有量、pH及び電気伝導度のような追加的なサンプルパラメータは、液化の程度の較正に使用することができる。さらに、厚さ、水分損失率及び導電率のような組織の性質の測定を使用することができる。β−カロチン、β−チューブリン、GAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素 )、LDH(lactate dehydrogenase)(乳酸脱水素酵素)または他の豊富に存在する生体分子のような濃度が組織内に一定に残存していることが期待される一以上のサンプルされた分析物の濃度の直接的な測定は、液化の程度の較正に使用することができる。分析物はまた、免疫学に基づく分析(例えば放射免疫、Eliza、FACs)を使用して定量化される。
【0129】
[組織細胞及び微生物]
上述の分析物に加えて、分析中の組織の全細胞及び種々の微生物を、本明細書で開示するデバイス、方法、システムを使用することにより対象となる組織内から検出することができる。組織細胞及び大部分の微生物は、上述の分析物よりも非常に大きく、対象となる組織からのこれらの抽出は、本発明の種々の実施の形態を使用することにより行うことができる。病原性及び非病原性のバクテリア、ウイルス、原生動物及び菌類は、種々の伝染病のよく知られた一因であり、これらの検出は、微生物によって生じる病気(例えば 結核、ヘルペス、マラリア、白癬等)の診断を容易にする。病状は、新種の微生物の存在または寄生微生物の割合の変化を表す。対象物が微生物のような感染病を有することが疑われる場合には、本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムは、微生物の定量化または存在の有無の検出に使用することができ、状態の診断を容易にする。
【0130】
非病原性の微生物は、正常組織中に標準的に存在し(正常フローラ)、多くの身体機能及び対象物の健康の維持の役割を果たしている。対象となる組織内のこれらのノーマルフローラ微生物(例えばバクテリア)の検出もまた、本発明の方法及びデバイスにより行うことができる。対象者の組織は、本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムを使用してサンプリング及び分析され、天然で存在する種々の微生物を分析することができる。対象者に異常状態の疑いがある場合には、対象者の組織を本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムに従ってサンプリングし、非病理性微生物のプロファイルが通常の、健康な対象者のプロファイルに対して変化しているか否かを検出する。この微生物プロファイルの変化は、対象者の対象となる状態の診断を容易にすることができる。
【0131】
いくつかの実施の形態では、組織を液化して、内部に存在する細胞または微生物を回収することができる。エネルギーを使用する本発明のデバイス、方法及びシステムを適用することにより、対象者の皮膚からのバクテリアをLPA内に追加的に含むことができる収集媒体内に収集することができる。例えば、トリス−HClまたはPBSを使用して対象となる組織に超音波エネルギーを付与すると、細菌性微小動物を十分に収集することができる。一般的に、本発明の方法を使用するデバイスは、微生物を組織から除去して収集媒体内に入れるように、十分なレベルの超音波エネルギーを付与することを含む。収集媒体は、次の分析のために集められる。次の分析には、媒体を培養し特定の微生物が存在するか否かの検出、媒体の直接分析(例えばELISA法を使用し、例えば微生物特異性抗体を含み、例えばラテックス凝集試験を含み、例えばポリメラーゼ連鎖反応ハイブリダイゼーションを含む核酸に基づいた診断分析の使用、DNAシークエンシング法)、またはこれらの方法の組合せを含むことができる。媒体内の微生物の決定は、対象となる状態の診断を容易にする。さらに微生物の収集の高収率により、診断のための核酸の数を増やす処理を短縮または排除することができる。
【0132】
本明細書で説明する本発明は、組織からの細胞の収集にも使用することができる。細胞膜を破壊することなく組織を液化する適切なLPMとともにエネルギーを付与することは、生存している全細胞を含む全細胞を組織から採取することに使用できる。この場合のLPMは、細胞を除去するためにEDTAのようなイオンキレート剤またはトリプシンのような酵素を含むがこれに限定されない化学物質を含むことができる。同様に、上述したエネルギー及び/またはLPMのパラメータを変更することで、本明細書のデバイス、方法及びシステムは、各または他の細胞器官の収集に使用することができる。
【0133】
[対象となる組織]
種々の組織が本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムに適している。これらの組織には、皮膚、粘膜(鼻、腸、結腸、頬、膣等)または粘液、胸、前立腺、目、腸、膀胱、胃、食道、爪、精巣、髪、肺、脳、膵臓、肝臓、心臓、骨または大動脈壁が含まれるがこれに限定されない。一実施の形態では、組織は、顔、腕、手、脚、背中または他の部位の皮膚とすることができる。皮膚及び粘膜面は、液化の実行を非常に利用しやすいが、本明細書で開示するデバイス、方法及びシステムは、上記した種々の細胞内膜に容易に適用できるように設計することが可能である。本明細書で開示する方法を使用することができる細胞内膜に特有の典型的なデバイスは、米国特許第5701361号公報及び米国特許5895397号公報に開示されており、本出願では、全体を参照することにより、本明細書に組み込む。
【0134】
いくつかの実施の形態では、対象となる組織は、腫瘍または腫瘍と疑われる組織以外である。本明細書で開示するデバイス、方法、およびシステムが微生物の検出に適用される場合には、対象となる組織は、微生物を含むと疑われるものである(例えば感染症を有している疑いのある組織、詳細には深部組織感染、例えば粘膜の層が含まれる皮膚の真皮層及び/または皮下層の感染症。)。
【0135】
[方法の使用]
本明細書で開示する方法は、幅広い組織の評価で使用することができ、対象物の状態の診断を容易にするために、対象となる分析物の存在の有無を評価することが含まれる。いくつかの実施の形態では、本発明の方法は、本明細書で開示する方法が鑑別診断を容易にする一以上の状態の臨床的兆候及び一以上の状態を示唆する症状を患者が呈しているかに使用することができる。
【0136】
いくつかの実施の形態では、本発明は、患者のサンプルから生成される試験分析物プロファイルと参照分析物プロファイルとの比較を含む方法を提供する。「参照分析物プロファイル」及び「参照組織の分析物プロファイル」とは、選択された分析物または1,2,3,4,5,6,7,8,9,10またはそれ以上の分析物のセットの定性的または定量的基準を一般的に示すものであり、対象物の状態の特性を示す。対象物の典型的な状態が与えられた参照分析物プロファイルには、正常参照分析物プロファイル(例えば正常組織(例えば病気のない)、一般的組織健康、分析物の許容または耐性レベル(例えば薬物、環境汚染物等))、疾病参照分析物プロファイル(例えば、微生物感染(例えば細菌性の、ウイルス性の、真菌性のまたは他の微生物感染)、組織の限局性疾患(例えば皮膚炎、乾癬、癌(前立腺、乳、肺等)、蕁麻疹等)、組織に表れる全身性疾患(例えばアレルギー、糖尿病、アルツハイマー病、心血管疾患等)等の存在の特性を示す分析物プロファイル)、環境汚染物参照分析物プロファイル(例えば許容できない高いレベルの環境汚染物(例えば兵器剤、花粉、微粒子、農薬等)の存在の特性を示す分析物プロファイル)、薬物参照分析物プロファイル(例えば治療レベルの薬物または乱用薬物(例えば薬物乱用の評価を容易にする)等の特性を示す分析物プロファイル)等が含まれるが、これらに限定されない。参照分析物プロファイルは、一以上の分析物のクラスのメンバー(例えばタンパク質(例えば抗体、癌バイオマーカー、サイトカイン、細胞骨格/細胞質/細胞外タンパク質等)、核酸(DNA、RNA)、脂質(セラミド、コレステロール、リン脂質等を含む)、生物学的に誘導された小分子、薬物(例えば治療薬物、乱用薬物)、環境汚染物、兵器剤等)または分析物のサブクラスのメンバー(例えば抗体、リン脂質))を有することができる。対象物の状態が与えられた参照分析物プロファイルは、既に本技術分野で公知であり、本発明で説明した方法を使用することにより組織から得ることができる。参照分析物プロファイルは、分析及び診断を容易にするために試験分析物プロファイルと即座に比較できるように電子的形態(例えばデータベース)で記憶することができる。
【0137】
「試験分析物プロファイル」及び「対象となる組織の分析物プロファイルとは、選択された分析物または1,2,3,4,5,6,7,8,9,10またはそれ以上の分析物のセットの定性的または定量的基準を示すものであり、対象物の状態の診断及び予後診断を容易にする。試験分析物プロファイルは、一以上の分析物のクラスのメンバー(例えばタンパク質、核酸、脂質、生物学的に誘導された小分子、薬物(例えばタンパク質(例えば抗体、癌バイオマーカー、サイトカイン、細胞骨格/細胞質/細胞外タンパク質等)、核酸(DNA、RNA)、脂質(セラミド、コレステロール、リン脂質等を含む)、生物学的に誘導された小分子、薬物(例えば治療薬物、乱用薬物)、環境汚染物、兵器剤等)または分析物のサブクラスのメンバー(例えば抗体、リン脂質))を有することができる。一般的には、試験分析物プロファイルを生成する分析のために選択される分析物は、所望の参照分析物プロファイルの分析物に従って選択される。試験分析物プロファイルの適切な参照分析物プロファイルとの比較は、試験分析物プロファイル及び参照分析物プロファイルとの間の実質的な一致が存在するかを評価することにより、対象となる状態または調子の存在の有無の決定を容易にする。
【0138】
選択された分析物または分析物のセットの参照及び試験分析物プロファイルを生成する方法は、本技術分野で利用可能な方法を使用することができ、評価される分析物に従って選択することができる。
【0139】
本発明の方法は、幅広い組織の評価で使用することができる。エネルギーが支援された組織の液化は、正常組織の定量的評価及びプロファイルを提供する。正常組織プロファイルと分析中の組織のプロファイルとの比較は、組織微小環境(例えばいくつかのタンパク質、脂質、核酸、小分子、薬物等のアップ/ダウンレギュレーション、)の変化の診断を容易にする。組織微小環境は、アレルギー、心臓血管疾患、皮膚炎等のような種々の病理状態を示す。本発明の方法は、組織回収の監視及び種々の治療の治療効果を評価(治療の監視として、望まれるまたは必要な場合には治療に組み込むことができる)するツールとして使用することもできる。分析プロファイル法はまた、局所製剤(例えば化粧品)の評価のためのするパーソナルケア産業のツールを提供することができる。この手法は、組織を液化及び組織内の薬物分子の検出により薬理的パラメータの決定に使用することができる。同じような方法で、化学薬品、生体に有害な汚染物質及び薬物乱用の迅速かつ定期的な試験を定量的に行うことができる。本発明の方法はまた、病原性微小植物の高感度な検出及び診断にも使用することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、正常組織のプロファイルを提供する。正常組織とは、対象とする組織の異常な状態がないこととして定義される。例えば液化促進剤の存在下で超音波曝露または摩耗することにより正常組織にエネルギーが付与される。
【0141】
いくつかの実施の形態では、本発明の方法は、組織微小環境の変化の定量的評価にっよて特徴付けられる種々の組織病の診断を容易にするために適用することができる。この評価は、参照組織(例えばデータベースに記憶することができる参照分析物プロファイル、)の分析物プロファイルを対象となる組織の分析物プロファイル(試験分析物プロファイル)と比較することにより行うことができる。分析中の組織に存在する特定の分析物または分析物のセットの定量的存在の有無は、参照組織中の同じ分析物の定量的存在の有無と比較した場合には、特定の病気の有無を示すので、状態の診断を容易にする。参照分析物プロファイルは、問題となる病気に感染しないことが知られている組織の一つの特性を示す。参照分析物プロファイルはまた問題となる組織の問題となる病気の特性を示す参照分析物ファイルである。
【0142】
一実施の形態では、分析中の組織は、皮膚及び/または粘膜であり、定量的試験分析物プロファイルは、参照分析物プロファイルと比較されて、アレルギー、蕁麻疹、微生物感染、自己免疫疾患、心臓血管疾患または癌のような病気の存在の有無を決定する。
【0143】
いくつかの実施の態では, 本発明の方法は、組織回収の監視に使用することができる。この監視は、参照組織の分析物プロファイルを分析中の組織の分析物プロファイルと比較することにより行うことができる。分析中の組織に存在する特定の分析物または分析物の組成の定量的存在の有無は、参照組織中の同じ分析物の定量的存在の有無と比較した場合には、組織が正常状態に戻ったか否かを示す。参照組織は、通常は正常状態の組織である。
【0144】
いくつかの実施の形態では、本発明の方法は、対象となる組織内における治療の生体利用性を含む、種々の治療の治療効果の評価に使用することができる。組織の液化サンプル中の分析物は、組織中に存在する分析物の程度を示すように定量化することができる。分析中の組織に存在する特定の分析物または分析物の組成の定量的存在の有無は、参照組織中の同じ分析物の定量的存在の有無と比較した場合には、投与された治療薬が特殊な組織内または体内に所望の効果を達成するのに十分長く留まっているか否かを示す。参照組織は、通常は正常状態の組織である。
【0145】
いくつかの実施の形態では、本明細書で開示する方法は、皮膚のような組織の治療製剤の評価、詳細には、製剤の成分(例えばローション、クリーム、軟膏等)が組織によって吸収されたか及び送達された量に治療効果があるかの評価に使用することができる。いくつかの実施形態では, 本明細書で開示する方法には、閉ループシステムが含まれる。同じシステムは、治療製剤、分析物の液化、分析物プロファイルの分析及び製剤の送達の調製に適宜に適用することができる。この場合の参照組織は、正常組織、または、治療製剤が扱われた状態からの種々のレベルに回復した組織とすることができる。
【0146】
いくつかの実施の形態では、本発明は、薬理的パラメータ及び医薬品の効果の決定に使用する分析物プロファイルの決定に使用することができる。特定の分析物(例えば免疫システムレスポンダー、サイトカイン)の存在の有無は、特定の医薬品の投与を、生体利用性、AUC、クリアランス及び半減期を含むがこれに限定されない生物学的パラメータと関連付けるために使用することができる。
【0147】
いくつかの実施の形態では、本明細書で開示する方法は、生体に有害な汚染物質、兵器剤、違法薬物、公知の医薬品等が含まれるがこれらに限定されない特定の化学薬品の検出に使用することができる。このような方法は、法的処置、競技スポーツのドーピングの規則、曝露の評価及び/または毒または汚染物質への曝露の病気のリスク等に使用することができる。
【0148】
いくつかの実施の形態では、本発明の方法は、病原性微生物(例えばバクテリア、菌類、ウイルス等)の検出または診断に使用することができる。レプリカ平板培養、スワビング、ウォッシングのような組織中の微生物の診断法のための本発明の手法は、抽出物の高い変動性及び低い分散性により、感度が低くなるとともにプロトコル依存性が高くなるので魅力的ではない。種々の試験は、組織中に存在する微生物の分析物を分離して特定するために組織の液化サンプルで行うことができる。いくつかの実施形態では、これらの試験には寒天平板での培養を含む。
【0149】
[薬物送達]
本発明は、組織を通るまたは組織内への薬物の流量を制御及び高めるために組織の液化を含む方法及びデバイスを提供する。本発明の方法は、1)送達が望まれる対象者の組織へのエネルギー及び液化促進媒体の付与、及び2)連続的にまたは繰り返し液化される組織内にまたは組織を通して一以上の薬物を送達する、というステップを含んでいる。本発明の方法はさらに、移送が行われている間にわたる組織の液化を含むことができる。本発明の方法は、組織または生体表面のバリア性を不安定にさせて薬物の通過の抵抗を減らすことができる組織の液化を有している。本発明の利点は、移動の比率及び効率が改善及び制御されることである。生体表面を単純に通過することができない、または不十分な割合または時間とともに変化する割合で通過する薬物は、LPMと組み合わせてエネルギーが付与されると、生体表面内に押される。付与するエネルギーの方式、強度および時間並びにLPMの配合を制御することにより、移送の比率は制御される。
【0150】
薬物の移送は、化学的透過性または移送エンハンサー、対流、浸透圧勾配、濃度勾配、イオントフォレーゼ、エレクトロポレーション、磁場、超音波または機械的圧力のような第2の駆動力を同時にまたは続けて付与することにより変調または高めることができる。
【0151】
開示した方法の増強は、H標識アシクロビル及びイヌリンを用いる限定しない例により実証される。エネルギーのタイプ、時間の長さ及び強度並びにLPMの配合は、組織のタイプ及び薬物の性質を含む多くの要因に依存し、年齢、負傷または病気、及び身体の部位によって種々に異なる。
【0152】
[投与される薬物]
投与される薬物には、種々の生物活性剤が含まれるが、タンパク質またはペプチドであることが好ましい。詳細な例には、インシュリン(insulin)、エリスロポエチン(erythropoietin)及びインターフェロン(interferon)が含まれる。アンチセンス(antisense)、siRNA及び治療用タンパク質をコードする遺伝子のような核酸分子(nucleic acid molecules)、抗炎症薬、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生剤、局部麻酔薬及びサッカリドを含む合成有機及び無機分子を含む他の物質を投与することができる。薬物は、水性ゲルのような水と同様の吸収係数を有する適切な薬剤許容キャリアで典型的に投与される。代わりに、パッチをキャリアとして使用することができる。薬物は、ゲル、軟膏、ローションまたはサスペンションで投与することができる。
【0153】
一実施の形態では、薬物は、リポソーム、脂質小胞、エマルジョンまたはポリマーナノ粒子、微小粒子、マイクロカプセルまたはマイクロスフェアのような送達デバイス(特に明記しない限り微小粒子と言う)内にカプセル化されまたはカプセルの形態である。これらは、ポリヒドロキシ酸(polyhydroxy acids)、ポリオルトエステル(polyorthoesters)、ポリ無水物(polyanhydrides)及びポリフォスファゼン(polyphosphazenes)のようなポリマー、またはコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミン及び他のプロテイン、アルジネート(alginate)及び他のポリサッカリド(polysaccharides)のような天然高分子及びこれらの組合せから形成することができる。微小粒子は、例えばポリアルキレンオキサイドポリマー(polyalkylene oxide polymers)及びポリエチレングリコール(polyalkylene oxide polymers)のような複合体である親油性材料または親水性分子のような貫通性を高める材料で被覆または形成することができる。
【0154】
[薬物の投与]
薬物は、上記した液化デバイスを使用して、所望の治療結果の達成と同様に患者への利便性に基づいて組織の選択された部位に投与されることが好ましい。生体表面を有する種々の組織は、本発明の方法によく適している。これらの組織には、皮膚、粘膜(鼻、腸、結腸、頬、膣等)が含まれるがこれに限定されない。一実施の形態では、本発明の方法は、顔、腕、手、脚、背中または他の部位の皮膚に投与されるのが好ましい。皮膚は、液化の実行を非常に利用しやすいが、本明細書で開示するデバイスは、上記した種々の細胞内膜に容易に適用できるように設計することが可能である。
【0155】
いくつかの実施の形態では、投与される組織は、感染器官、炎症をおこした組織及び固形腫瘍のような病変組織である。いくつかの実施の形態では、本発明は、病変組織に隣接する正常組織に及び/または病変組織にデバイスを使用すること、及び正常組織を通って及び/または疾病した部位の内部に薬物を送達することを含む。コルチステロイドのようなステロイド及びリン酸エストラムスチン、パクリタキセル及びビンブラスチンを含む多くの化学療法剤は、重大な副作用を潜在的に有している。従って、全身に与えた場合には、望ましくない副作用を引き起こす可能性が高い。この問題は、これらの薬物を病変組織に局部的に送達することにより解決される。他の適用には、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕のような以上皮膚内への薬剤の送達が含まれる。
【0156】
いくつかの実施の形態では、本発明は、皮膚、粘膜(鼻、腸、結腸、頬、膣等)のような組織を通る高分子量分子または極性分子のような化合物の通過を高めるために使用される。大きな制御及び薬物の使用は、適用される薬物の割合を高めること及び直接的に制御することにより行われる。血流に迅速に入る薬物の割合が高まるので、望ましくない副作用は回避される。上記した組織を通過する薬物は、最適速度で血流に注入される。
【0157】
[薬物送達のための液化促進媒体(LPM)]
LPMもまた、薬物送達に重要な要素である。薬物送達用のLPMの設計は、サンプル収集用のLPMの設計と多少重複する。LPMは、以下の5つの目的の一以上を果たすように設計することができる。a)エネルギーを組織と連結する。b)組織の液化を容易にする。c)組織内に送達される薬物を貯蔵する。d)薬物の溶解度を高める。e)生物活性及び化学活性を保持するように薬物の分解を阻止する。
【0158】
LPMは、組織の液化処理前または処理中に薬物を含むようにすることもできる。代わりの実施の形態では、エネルギー及びドラッグを含むLPMの付与は、組織の液化のため及び後にパッチのような適切なキャリア中の薬物を液化される組織の部位に付与可能にするために使用することができる。
【0159】
[キット]
本発明はまた、本発明の方法を実施するためのエンコンパスキットを開示する。対象のキットには、例えば、エネルギー付与装置及び対象となる組織を液化する液化促進剤の全部、本明細書で開示する方法で生成する組織の液化サンプル内における組織分析物の存在の有無の検出及び(定性的または定量的)分析する導電率アッセイの試薬を含むことができる。キットの種々の部品は、コンテナ内に分離して存在させてもよく、また所望の場合には、いくつかの適合する部品を一つのコンテナ内に予め組み込んでおくことができる。
【0160】
上述した部品に加え、キットは典型的には、本発明の方法を実行するためにキットの部品を使用するインストラクションをさらに有している。対象とする方法を実行するインストラクションは、一般的に適切な記録媒体に記録されている。例えば、インストラクションは、紙またはプラスチックのような基体に印刷することができる。よって、インストラクションは、添付文書、キットのコンテナのラベルまたはその部品(例えばパッケージまたはサブパッケージに使用される)としてキット内に存在させることができる。他の実施の形態では、インストラクションは、例えばCD−ROM、ディスケット等のような適切なコンピュータで読み取り可能な記憶媒体の電子的記憶データファイルとして表すことができる。さらに他の実施の形態では、実際のインストラクションはキットに表されておらず、例えばインターネットを介してリモートソースからインストラクションを得る手段が提供される。本実施の形態の例では、インストラクションを見ることができる及び/またはインストラクションをダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。インストラクションと同様に、インストラクションを得ることができる手段は、適当な基板に記録される。
【0161】
[実施例]
下記実施例は、本発明をいかに実施し使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するように示されており、本発明者らが自身の発明とみなす範囲を限定することを意図するものではなく、本発明者らが下記実験は実施された実験の全てであることもしくは唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にするよう努力したが、若干の実験誤差および偏差は考慮されなければならない。別に記さない限りは、部は質量部であり、分子量は質量平均分子量であり、温度は摂氏であり、および圧力は大気圧またはその近傍である。
【0162】
本発明を特定の実施例について説明したが、 当業者であれば、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更を加え、本発明の要素を等価物に置換できることが理解される。さらに、修正は、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスステップまたは複数のプロセスステップを本発明の目的、趣旨または範囲に適合させるように行うことができる。このようなすべての改良は、添付特許請求の範囲の範囲内であるこを意図している。
【0163】
[例1]
[研磨エネルギーに基づく装置による皮膚のサンプリング]
図7a乃至図7eを参照すると、皮膚組織をサンプリングするために研磨エネルギーに基づいて組織を液化するデバイスが示されている。デバイスは、3つの部品751(モータ704を収容するデバイスハウジング701と導電性部材705及び706のアセンブリ)、部品752(LPMカートリッジ708、収集コンテナ707及びニードル709の使い捨てアセンブリ)及び部品753(LPMハウジング712、研磨パッド711及びシャフト710の使い捨てアセンブリ)から構成されている(図7a)。構成されたデバイスは、研磨パッド711が皮膚713と対向するように、皮膚713の対象となる予め特定した領域に対して配置される(図7b)。デバイスの頂部に配置されたスライドプランジャー702は、皮膚に向かって押されて、ニードル709をLPMカートリッジ708内に押し込み、滅菌シールを破って、LPMをハウジング712内に移送する。スライドプランジャ−702はまた、バッテリーパック703を介してモータ704にエネルギーを与えて、シャフト710及び研磨パッド711を皮膚組織713に対して回動運動させる。皮膚組織が液化されると、皮膚成分は、ハウジング712に収容されたLPMに溶解する。皮膚組織713の導電性はまた、シャフト710に固定された測定電極としてのスライドコンタクト705と基準電極706とを使用することにより測定される。導電率の閾値によって決定されるネルギー曝露の安全限界に達したときに、モータ704は停止する。スライドプランジャー702は、ニードル709が予め真空化されたサンプルコンテナ707を破壊するように皮膚に向かってさらに押される。サンプルコンテナ707は、ハウジング712から内部にサンプルを吸引する(図7d)。デバイスは、皮膚から外されて解体される。デバイス部品752はさらに解体され、サンプルコンテナは、分析物の検出のために処理される。
【0164】
[例2]
[マイクロニードルに基づく装置による皮膚のサンプリング]
図8a乃至図8dを参照すると、皮膚組織をサンプリングするためにマイクロニードルに基づいて組織を液化するデバイスが示されている。デバイスは、マイクロニードル担持パッチ805が皮膚807に対向するように、皮膚807の予め特定された対象となる領域に対して配置される(図8a)。デバイスの頂部に配置されたスライドプランジャ−801は、LPMが染みこんだスポンジ804が圧縮されてハウジング803内にLPMを放出するように皮膚807に向かって押される。(図8b)。次にパッチ805のマイクロニードル及び皮膚境界面にあるハウジング803をLPMで充填する。液化処理が開始すると、スライドプランジャー801は皮膚組織807の内部にさらに押されて、マイクロニードル805は皮膚組織807の内部に挿入される(図8c)。皮膚組織が液化されると、皮膚成分は、ハウジング803に収容されたLPMに溶解する。皮膚の液化が完了すると、ニードル806がサンプルコンテナ802を破壊するように皮膚組織807に向かって予め真空化されたサンプルコンテナ802が押されて、ハウジング803から内部にサンプルを吸引する(図8d)。デバイスは、皮膚から外されて解体される。サンプルコンテナ802は、分析物の分析のために回収される。残りのデバイス部品は、廃棄される。
【0165】
[例3]
[組織の分析物を捕捉するリザーバーハウジング]
図9(パネルa−d)を参照すると、液化組織サンプルから組織の分析物を捕捉するリザーバハウジングが示されている。リザーバハウジング(901)は、液化組織サンプルを収集するコンテナとして、本明細書で説明するエネルギー付与装置とともに使用されることを意図している。ハウジングは、サンプル中に存在する組織の分析物(903)と選択的に結合する捕捉基質(902)で覆われている。組織サンプルが十分に培養すると、分析物(903)はハウジング内に保持されるが、サンプルは廃棄される。分析物は、分離サンプル(904)のような次の分析物の捕捉のためにハウジング内の溶出緩衝液によって溶出する。代わりに、ハウジングは、結合した分析物(903)を分析する分析ツールに組み込まれていてもよい。
【0166】
[例4]
[組織の溶解度及びタンパク質の機能的保存を向上させる界面活性剤の配合]
特有の表面活性剤の配合は、本明細書で開示した定義に従った液化促進媒体(LPM)を構成することで特定される。153の二元界面活性剤の配合のライブラリは4つの異なるカテゴリー(i) 陰イオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)(SLS)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate)(SLA)、トリデシルリン酸ナトリウム(sodium tridecyl phosphate)(TDP)、デオキシコール酸ナトリウム(sodium deoxycholate)(SDC)、デカノイルサルコシ酸ナトリウム(sodium decanoyl sarcosinate)(NDS)、ラウロイルサルコシ酸ナトリウム(sodium lauroyl sarcosinate)(NLS)、パルミトイルサルコシ酸ナトリウム(sodium palmitoyl sarcosinate)(NPS))、(ii)陽イオン界面活性剤(オクチルトリメチル塩化アンモニウム(octyl trimethyl ammonium chloride)(OATB)、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム(dodecyl trimethyl ammonium chloride)(DDTAB)、テトラデシルトリメチル塩化アンモニウム(tetradecyl trimethyl ammonium chloride)(TTAB))、(iii)両性界面活性剤(3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]1−プロパンスルホナート(3-[(3-Cholamidopropyl) dimethyl ammonio]l -propane sulfonate)(CHAPS)、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Decyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DPS)、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(3-(Dodecyl dimethyl ammonio) propane sulfonate)(DDPS) )、(iv)非イオン界面活性剤(ポリエチレングリコールドデシルエーテル(Polyethylene glycol dodecyl ether)(B30)、ポリオキシエチレン23−ラウリルエーテル(Polyoxyethylene 23-lauryl ether)(B35)、ポリオキシエチレン10−セチルエーテル(Polyoxyethylene 10-cetyl ether)(B56)、ポリオキシエチレン2−ステアリルエーテル(Polyoxyethylene 2-stearyl ether)(B72)、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(Polyethylene glycol oleyl ether)(B93)、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル(Nonylphenol polyethylene glycol ether)(NP9))に属する19の界面活性剤を使用することにより製造される。これらのカテゴリー(例えば非イオン界面活性剤)からの界面活性剤の一握りのみが、機能的組織プロテオームの抽出に従来は使用されている。さらに、これらの界面活性剤は、組織成分を効率よく可溶化する能力が高く制限される。よって、全ての野界面活性剤の種類にわたって、組織成分の抽出潜在力及び生物活性保存は、相互に対立する性質であると考えられている。非イオン界面活性剤を、上述の他のタイプの界面活性剤(陰イオン、陽イオン及び両性界面活性剤)とその高い溶解能のために組み合わせることにより、高い可溶化及び非変性能を同時に有する新しい界面活性剤の配合の集まりを発明者は発見した。
【0167】
界面活性剤のライブリはまず、抽出物内のタンパク質の生物活性を維持する非変位界面活性剤の配合物を特定することにより分けられる。次に、組織のタンパク質を可溶化する配合物の能力でランク分けされる。図10(a)は、153の界面活性剤の配合物について、モデルタンパク質−IgE抗体の特異機能性を維持する有効性を示している。詳細には、IgE抗体のオボアルブミンとの結合能を試験した。図中のX軸は、各2成分配合に特有のフォーミュレーションインデックスを表している。Y軸は、IgE生物活性保持率(%)を示している。IgE生物活性保持率は、純粋な溶媒(リン酸緩衝生理食塩水、PBS)中の界面活性剤の場合のIgE結合性活性に対する界面活性剤配合物のIgE結合性活性の割合として定義される。配合物は幅広い変性潜在能力に及ぶ。驚くべきことに、穏やかな非イオン界面活性剤と組み合わせると、変性界面活性剤の増加により、IgEの機能性の保持と高い相互的な増加が得られた。全ての二元界面活性剤配合物について平均した非変性潜在能力は、その成分の単体界面活性剤配合物よりも著しく高い(p<0.006;両側ヘテロ分散スチューデントt−検定)ことがわかり、さらに特有の共同相互作用が明らかとなった。
【0168】
高い生物活性維持(>90%)を示す界面活性剤の配合物は、簡単な超音波処理とともに組織のタンパク質を抽出する能力でさらに分けられる。ブタの皮膚がこれらの実験のモデル組織として使用された。半分以上の配合物の抽出能力は、皮膚組織1cm当たりのタンパク質が0.1mgに近いことが明らかとなったが、2つの配合物は、0.3mg/cmを超えるタンパク質抽出を達成した(図10b)。
【0169】
界面活性剤のライブラリから分けられる最有力候補は、非常に高い非変性を示すが、論文等で報告され、抽出で最も広く使用される界面活性剤抽出よりも組織の可溶化に効果的な配合物となるのが一般的である。図10cは、この最有力候補の界面活性剤の配合物−皮膚サンプルの0.5%(w/v)DPS−B30と1%(w/v)SDSを比較した図である。中程度の抽出能力は、(0.16±0.07mg/cm)であるにもかかわらず、SDSは高い変性を示し、機能性タンパク質(部分的生物活性の維持する合計抽出タンパク質の生成物)の回収は低い結果となった。これに対して、0.5%(w/v)DPS−B30の配合物は、皮膚タンパク質を多く抽出(0.48±0.12mg/cm)するだけでなく、タンパク質活性を維持する。期待される機能性タンパク質の回収率の改善は、SDSの100倍超に達する。同様に一般的に使用される非変性界面活性剤である1%(v/w)トリトンX−100及びPBSに対して、10倍を超えるタンパク質回収率となった。
【0170】
[例5]
[ストレス下での生物活性の維持]
特有の界面活性剤配合物またはLPM(例1に記載した方法で特定されるような)がストレス下で種々の分析物を追加的に保護することを示す。超音波曝露のような機械的エネルギーの変性効果(生体分子の変性としてよく知られる)は、特有の界面活性剤配合物の使用により中和できることを時に示す。
【0171】
別の実験では、球状タンパク質(IgE)及び2つの代表的な酵素−乳酸脱水素酵素(LDH)及びベータガラクトシターゼ(β−Gal)を0.5%(w/v)DPS−B30界面活性剤配合物に溶解させて、超音波分解してタンパク質の生物活性の維持を長い時間をかけて測定した。食塩水(PBS)に溶解したタンパク質は、比較制御として作成した。PBSに溶解したIgEでは、徐々に機能性が激減していくことが観察された。しかしながら、0.5%(w/v)DPS−B30配合物では、驚くことに、超音波変性ストレスからのIgEの保護が拡張された(図11a)。超音波処理に関係なく、SDSに溶解させたIgEは、完全に変性した状態を示した。同様の傾向は、0.5%(w/v)DPS−B30配合物中に調製したLDH及びB−Galの酵素活性の維持の拡張が観察された(図11b)。PBS中でのタンパク質の調製は、生物活性を大きく損失する結果となり(p<0.006;両側ヘテロ分散スチューデントt−検定)、超音波処理の3分後には16.7%(IgE)、70.8%(LDH)、68.7%(B−Gal)に達する部分生物活性となった。
【0172】
[例6]
[組織のサンプリング及び分子診断]
LPM(0.5%(w/v)DPS−B30の食塩水)の存在下での超音波曝露の、種々の機能的疾病バイオマーカーを組織からサンプルする能力について実証した。
【0173】
卵アレルギーのマウスの皮膚からアレルギー特異性IgE抗体のサンプリングを行った。生後6週齢から8週齢の雌形BALB/CLマウスをCharles River Labs(Wilmington,MA)から購入し、病原体フリー状態下で維持した。アレルギー反応は、経皮曝露プロトコルによってマウスに誘発された。酸素中に1.25−4%のフルオランで麻酔した後、マウスの背中の皮膚を剃り、10回テープストリッピング(Schotch Magic Tape,3M Health Care,St Paul,MN)をして、標準的な皮膚損傷を形成した。100μLの0.1%OVAに浸されたガーゼパッチ(1cm×1cm)を背中の皮膚上に置き、通気性のゴム布ベースの粘着テープで固定した。パッチは1週間貼り付けた。全実験は、1週間の曝露と、各曝露の週の間の2週間の間隔の全部で3週間からなる。サンプリングは、最小限のシアノアクリレートベースの接着剤で、特注のフランジチャンバー(1.33cmの皮膚曝露領域)を剃った皮膚領域に接着することにより行った。チャンバーは、1.8mlの0.5%(w/v)DPS−B30界面活性剤配合物で充填し、20kHzの超音波を、2.4W/cmで5分間、50%のデューティサイクルで付与した。超音波処理されたまたはされていない湿疹皮膚部位の皮膚生体組織が得られた。皮膚ホモジネートサンプルは、正の制御で調製された。図12aは、超音波援助サンプリングにより、健常マウスに比べてアレルギーマウスから十分に多い量のアレルギー特異性IgE抗体がうまくサンプルされたことを示している。予期されたように、アレルギーマウス及び健常マウスからのサンプル中のIgG抗体の量の差は見られなかった。
【0174】
マウスの皮膚からのコレステロールのサンプリングを行った。上記段落の記載と同様の手順で、超音波処置した皮膚のサンプルを収集した。皮膚ホモジネートは、処理していない皮膚から収集した生体組織から正の制御で調製した。皮膚のコレステロールは、心臓血管疾患の診断に重要なバイオマーカーである[1]。図12bには、超音波援助サンプリングにより、皮膚からコレステロールがうまくサンプルされたこと及びサンプルされた量が皮膚ホモジネート中に存在するコレステロールの量に匹敵することを示している。
【0175】
最後に、ブタの皮膚から細菌ゲノムのサンプリングを行った。組織、詳細には皮膚及び粘膜には、バクテリア、真菌類及びウイルスを含む微生物の多様な集合を定着させた[2−5]。細菌性感染の正確な診断は、適切な患者管理をもたらし、予後診断の情報を提供すると共に狭域抗生物質の使用を可能とする[6−8]。それ故、確定的な微生物検出は、感染症の治療の診断及び微生物感染に関連する病気の発生のトレースバックに必須である。しかしながら皮膚上に微生物が存在するサンプルを正確に得ることは、大きな課題である[2]。多くの実用的な収集の方法は、シンプルで、速くしかも非侵襲性であるので、スワビングである[3,9]。しかしながらスワビングには、皮膚上の微生物を正確に示さず、定量的データを提供しないことを示す微生物の低い回収率及び標準的プロトコルの欠如を含む種々の制限がある。超音波支援サンプリングは、これらの制限を効果的に解決する。詳細には、切り出されたブタノ皮膚を、食塩水(PBS)に浸したコットンボールでスワビングしてサンプリングし、別の実験ではLPMとしての0.5%(w/v)DPM−Brij30とともに超音波支援サンプリングでサンプリングした。細菌ゲノムは、標準的なフェノールクロロホルム抽出法により各サンプルから精製される。簡潔には、サンプルはまず、pH8.0で20mMのトリス(BP154−1, Fisher Scientific)、2mMのEDTA(BP120−500,Fisher Scientific)、1.2%のトリトンX−100(BP151−100,Fisher Scientific)及び20mg/mlのリゾチーム(62970−1G−F,Sigma−Aldric)からなる溶液内で、30分間37℃で培養される[9]。次にサンプルは、3時間37℃で、0.1mg/mlのプロテイナーゼK(PriteinaseK)(P2308−25MG,Sigma−Aldrich)、0.5%(w/v)のラウリル硫酸ナトリウム(S529,Fisher Scientific)及び100mMの塩化ナトリウム(BP358−1,Fisher Scientific)からなる溶液内で培養した。ゲノムDNAは、同量のフェノール(P4557,Sigma−Alderich)で抽出され、続いて25:24:1のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール液(P2069,Sigma−Alderich)で抽出される。DNAは、エタノールで培養して、20分間の遠心分離により沈殿する。DNAペレットは、70%エタノールで2回洗浄され、乾燥され、80μlのトリス緩衝液に再懸濁される。各方法によりサンプルされた細菌の量は、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を使用して各サンプル中の保存された16S細菌遺伝子の存在を決定することにより評価される。図12cには、超音波支援サンプリングでは、従来のコットンスワビング法よりも7倍高い量の細菌遺伝子がサンプルされたことを示している。
【0176】
[例7]
[核酸に基づく試験と適合するLPMの緩衝液の設計]
組織の液化サンプルのその後の分析との適合性を確保するために、LPMの成分は、注意深く選択する必要がある。種々のLPM成分の核酸に基づく分析法との適合性を試験した。詳細には、LPM成分のqPCRとの適合性は、最も一般的な遺伝子に基づく試験である、異なるLPMsに加えられたプラスミドDANを増幅する試験の能力の測定のにより評価される。
【0177】
ルシフェラーゼプラスミド(E1741, Promega Corp.)の1000万のコピーを、10μlの異なる溶液(i)水、(ii)水に0.91%(W/V)塩化ナトリウム(BP358−1, Fisher Scientific)、(iii)PBS(P4417, Sigma−Aldrich)、(iv)pH7.9の10mMトリス−HCl(BP154−1, Fisher Scientific)、(v)リン酸二水素ナトリウム一水和物及び二塩基性リン酸水素ナトリウム(S9638−25G, S7907−100G, Sigma−Aldrich)からの誘導体でありpH7.9の0.075Mリン酸ナトリウム緩衝液、(vi)水に0.5mMのEDTA(BP120−500, Fisher Scientific)に入れた。溶液は、10μlのPCR反応用緩衝液と混合した。ルシフェラーゼ増殖プライマーは、5’−GCC TGA CTC TGA TTA AGT−3’をフォワードプライマーとし、5’−ACA CCT GCG TCG AAG−3’をリバースプライマーとして、96bpのアンプリコン(単位複製配列)を作成した[10]。増殖反応は、1.5mMのMgCl及び0.2μMの各プライマーと、PCR中の0.2mMのdNTPs、タックポリメラーゼ(10966−034, In vitrogen)の0.025units/μl及びSYBR−グリーン(S−7563, Invitrogen)とを1:45000の比で含む20μl溶液で行った。プラスミドDNAのアリコートは、標準曲線を描くように水で希釈される。分析は、光学グレード96ウェルプレートを使用して、iCyclerPCRマシーンで行った。反応の熱サイクルは、以下のように定めた。最初に95℃で3分間変性させ、次に95℃で30秒間の変性を40サイクル行い、60℃で30秒間アニーリングし、72℃で30秒間伸長し、最後に72℃で10分間伸展させた。各緩衝液について、対象(水中プラスミドDNA)と比較することにより適合性を計算した。
【0178】
図13には、塩化ナトリウム、PBS及びリン酸ナトリウム緩衝液は、対象と比較すると、定量PCR分析の検出緩衝液として適当でないことが示されている。しかしながら、トリス−HClまたはEDTAを緩衝液として使用すると、分析物分析の検出能が高まっている。
【0179】
[例8]
[核酸に基づく試験とのLPMの適合性]
種々のLPMs(例1に開示)について既存の核酸に基づく試験との適合性について試験を行った。詳細には、プラスミドDNAを異なるLPMsに混合して、qPCRのDNA増幅能について評価した。LPMは、10mMのトリス−HCl緩衝液に種々の濃度で界面活性剤を加えることにより調製した。本明細書で開示するような組織の液化処理を模倣するように、各LPMは、ブタの皮膚ホモジネート0.2mg/mlと混合されて、ルシフェラーゼプラスミド(E1741, Promega Corp.)の1000万のコピーが10μlのLPMに入れられる。この溶液は、10μlのPCR反応用緩衝液と混合される。qPCRは、例4で説明するプロトコルに従って行われる。精製されたプラスミドDNAは、標準曲線を描くようにトリス−HCl溶液で希釈される。各LPMの適合性は、qPCRによるプラスミドの増幅量を決定することにより計算した。
【0180】
図14は、トリトンX−100、Brij30、DMSO、OTAB、OTAB−Brij30及びDPS−Brij30が定量PCRと高く適合していることを示している。しかしながら、NLSまたはNLS−Brij30からなるLPMsでは、DNAは増幅していない。特に、DPS−Brij30をLPMとして使用すると、組織から生体分子を効果的にサンプリングし、タンパク質活性を維持しており、ELISA、クロマトグラフィー及びqPCRを含む分析方法と適合している。そのため、DPS−Brij30は、タンパク質、脂質及び核酸を分析する液化促進媒体として最も望ましい。PCRを容易にすることが知られている[11]トリトンX−100及びDMSOは、常に効果的にポリメラーゼ連鎖反応することが示されている。しかしながらこれらは、十分な組織の抽出物が得られていない。
【0181】
[例9]
[組織から生存可能かつ遺伝的に無傷の微生物をサンプリングするための超音波パラメータの特定]
この例では、組織から生きた微生物を効率よく収集するための超音波の非致死条件について説明する。微生物は、種々の形態のエネルギーを組織に付与することにより組織から収集することができる。しかしながら、高エネルギーの使用は、微生物の生存能力に非常に有害である。従って、生きた微生物を収集するためのエネルギー付与の非致死条件を見つけることが必要である。皮膚から生存可能かつ遺伝的に無傷のバクテリアをサンプリングするための超音波の非致死条件を説明する。
【0182】
E.Coli Strain DH10α(18290−015, Invitrogen)のバクテリア培養は、37℃、250回転のLuria−Bertani(BP1426, Fisher Scientific)またはAgerプレート上の固体培養(37℃)で成長する。培養物は、遠心分離によって採取される。得られたペレットは、pH7.9の10mMのトリス−HClからなるLPMに、10cell/mlの濃度で懸濁される。E.Coilセルは、分光光度計(暗順応計、Eppendorf)で定量化される。0.25×10cell/mlのバクテリア培養は、吸光度値が0.25で波長600nmの光学密度に対応していると考えられる。1mlの再懸濁セルを滅菌した円筒コンテナ(内径20mm、フラットな基部、壁厚1.3mm、高さ31mm)内に配置した。全ての実験は、周波数20kHz、デューティーサイクル50%の600−Watt Sonicator(Sonics&Materials, Newtown, CT)で行った。超音波曝露のパワーセッティング及び時間は、この実験において変化させた。トランスデューサーは、プローブが底部から5mmの間隔で液体に浸されるまで、コンテナの下方にある。トランスデューサーは、異なるサンプルの超音波処理の間に70%エタノールで滅菌される。超音波処理の後、各サンプルの10倍連続希釈を10mMのトリス−HCl(pH7.9)で調製した。各希釈段階から100μlのサンプルをLuria−Bertani寒天培地プレートにのせて、滅菌スプレッダーで広げた。プレートは、37℃で24時間培養され、生存バクテリアのコロニー計数が、寒天プレートの表面で行われた。結果は、非超音波制御に対する減少率で表した。超音波曝露したサンプル中の細菌ゲノムを完全に評価するために、電気泳動を行った。全てのサンプルは、プロテイナーゼK(19131,Qiagen)及び0.5%(w/v)ラウリル硫酸ナトリウム(S529,Fisher Scientific)内で56℃で培養された。培養の1時間後、全てのゲノムDNAは、DNeasyDNA抽出キット(69504,Qiagen)を使用して抽出された。キットの標準プロトコルは、以下の全ての後続ステップに付随する。精製されたゲノムDNAは、400μlの緩衝液AEで再懸濁され、−20℃で分析まで保存される。精製されたDNAを、2%(w/v)のトリス−アセテートEDTA−アガロースゲル中で90分間100Vで電気泳動した。ゲルは、SYBRゴールド(SI1494, Invitrogen)で着色し、紫外線下で目視可能にした。
【0183】
図15は、1.7W/cmの濃度で2分間超音波曝露したE.Coilの生存能力が、非処理のE.Coilの生存能力に対して統計的に有意でないことを示している。このことは、これらの超音波液化条件が大きな生存能力の損失なしにサンプリングに使用可能であることを示している。しかしながら、より高出力で超音波処理されたサンプルは、付与時間と共に、生存能力が急速に減少する。セルの生存能力は、非処理のセルと比較すると大きく異なる。高密度での曝露の1分後であっても、3.6%に減少している(p<0.05)。この観察結果は、電気泳動により評価した細菌ゲノムの完全性と一致している(図16)。1.7W/cmの濃度で2分間超音波処理(セルの生存能力の維持を示す条件)をしても、細菌ゲノムは、損傷しないことが観察された。しかしながら、対称的に、1.7W/cmの濃度(32%の生存能力)及び2.4W/cmの濃度(8%の生存能力)のゲノムDNAで3分間超音波処理したE.CoilのゲノムDNAは、低分子量の一部のゲルにマイグレーションしたことからわかるように、高度に崩壊した。これらの結果は、生きたバクテリアの収集は、1.7W/cmの濃度で2分間超音波処理を行うべきことを示している。
【0184】
[例10]
[組織からの生きている微生物の検出]
LPM(トリス−HCl緩衝液)に加えて超音波エネルギーに短時間曝露させることにより、皮膚から生菌をサンプルすることができる。超音波でサンプリングした皮膚のバクテリアは、従来のアッセイコロニー計数法及びリアルタイムの定量的PCRによって定量化され、スワビング及び他の界面活性剤スクラビング法のような標準的なサンプルリング方法と比較することにより評価される。
【0185】
皮膚常住バクテリアのサンプリングを評価するために、ブタの皮膚でインビトロ試験を行った。予めカットされ冷凍された全層ブタ皮膚であってヨークシャーブタの側腹部から採取されたものを、Lampire Biological Laboratory、Inc.,PAから入手し、10cm×25cmストリップとした。皮膚は、実験まで−70℃で保管した。かき傷及び擦り傷のような目に見える傷のない皮膚の一部は、室温で解凍され、小片(2.5×2.5cm)に切り分けられ、フランツ拡散セル(PermeGear, Inc.,PA, USA)に取り付けられた。拡散セルのレシーバーチャンバーは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(P4417, Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)で充填し、ドナーチャンバー(1.77cmの皮膚曝露領域)を、超音波トランスデューサーと皮膚との間を結合する液体としても機能する10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.9)1mlで充填した。超音波トランスデューサーは、皮膚表面から5mmのところに配置され、1.7W/cmの密度の超音波が2分間付与された。プローブは、異なるサンプルの実験の間に70%エタノールで滅菌した。比較対象としてのサンプルは、皮膚のスワビングで得られる。コットンスワブ(B4320115, BD Diagnostics)は、使用前に、滅菌されたリン酸緩衝生理食塩水に浸した。サンプル部位の領域は、3.3cmの領域を囲う滅菌された金属リングを皮膚表面に保持することにより規格化される。皮膚表面は、穏やかに且つ繰り返して約20秒間擦られる。各スワブには、1mlのPBSが抽出される。皮膚バクテリアはまた、Williamson及びKligmanの界面活性剤スクラブ手法によりサンプリングされる[2,12]。滅菌金属リングは、皮膚表面に対してしっかり保持される。0.1%トリトンX−100を含む0.075Mのリン酸緩衝液(pH7.9)の1mlが、ピペット内に入れられる。金属リングがつけられた皮膚表面は、テフロンセルスクレイパーで1分間しっかりと擦られる。得られたサンプルは、滅菌された遠心分離管に収集される。この手順は、同じ皮膚に追加で2回繰り返され、サンプルは一緒に貯留される。各サンプルの10倍連続希釈で調製し、各希釈サンプルから100μlの分量をTryptic Soy agarプレート(90002, BD Diagnostics)に置いた[12]。プレートは次に、37℃の好気状態下で24時間培養された。コロニーが計数されて、サンプリングした皮膚の単位領域あたりのコロニー形成ユニット(CFU/cm)を計算することにより、抽出効率の評価を得た。全てのバクテリアを定量化するために、16SrRNA遺伝子のアンプリコンに基づいてリアルタイムの定量的PCRを行った。全ての生体試料は、酵素溶解緩衝液(pH8.0で20mMのトリス、2mMのEDTA、1.2%のトリトンX−100)及びリゾチーム(20mg/mL)の調製液内で30分間37℃で培養された[9]。サンプルは次に、DNeasyDNA抽出キット(Qiagen)から得られるプロテイナーゼK及び緩衝液AL内であ時間56℃で培養された。キットの標準プロトコルは、以下の全ての後続ステップに付随する。緩衝液AEにより培養したDNAは、等量の完全なイソプロパノールで培養して20分間の遠心分離することにより沈殿させた。DNAペレットは、70%エタノールで1回洗浄され、乾燥され、80μlの緩衝液AEに再懸濁される。負の制御はまた、PBS内で超音波処理され滅菌されたコットンスワブを使用することにより調製される。16S遺伝子の分析は、光学グレード96ウェルプレートを使用して、iCyclerPCRマシーン(Bio−Rad Laboratories, Inc)で行った。16S細菌遺伝子の一部を、フォワードプライマー63F(5’−AGAGTTTGATCCTGGCTCAG−S’)及びリバースプライマー355R(5’−GACGGGCGGTGTGTRCA−3’)を使用して増殖させた[9,13]。標準曲線は、10μl緩衝液AE中で、既知量のE.Coilセルから得た連続希釈したゲノムDNAを増幅することにより構成される。10μlの精製DNAは、2pmolの各プライマー及びプラチナPCRスーパーミックス(11784,Invitrogen)と混合して、20μlの最終反応物とした。熱サイクルは、以下のように定めた。最初に94℃で5分間変性させ、次に94℃で30秒間の変性を32サイクル行い、66℃で30秒間アニーリングし、72℃で30秒間伸長し、最後に72℃で10分間伸展させた。各サンプルについて、3つのレプリカについて行った。
【0186】
図17は、異なる手法のサンプリングの有効性の比較を示している。図17aは、超音波サンプリングで皮膚からバクテリアを回収した数が、コットンスワビング(p<0.05)の約17倍よりも高いことを示している。特に、超音波で収集されたバクテリアの合計量の数は、正の制御(界面活性剤スクラッピング法)と大きく変わらない。超音波サンプリングの有効性は、16SrRNAの細菌遺伝子の増殖に基づくリアルタイムの定量的PCRを使用することによりさらに試験を行った(図17b)。超音波での収集は、1.7×10bacteria/cmであり、スワビング(4.5×10bacteria/cm)よりも十分に高く、スクラビング手法(1.6×10bacteria/cm)と同等である。
【0187】
[例11]
[LPM中のヒトのIgEの検出を容易にする感度エンハンサーの使用]
モデル分析物としてヒトIgE抗体の検出を容易にする感度エンハンサーの能力をテストした。ヒトIgE抗体は、モデルLPMである1%w/vのNLS−Brij30の混合物を含むLPMに溶解させた。ELISAアッセイは、LPM中に感度エンハンサーの存在下または非存在下でのヒトIgE抗体の検出の評価に使用された。詳細には、ヒトIgE抗体と特異性結合した1μgの抗体(A80−108A,Bethyl laboratory, TX)を96ウェルELISAプレートのウェルで被覆した。ヒトIgE(RC80−108,Bethyl laboratory, TX)は、0−100ng/mlの濃度で感度エンハンサーとともにまたは感度エンハンサーなしでLPMに溶解した。正の制御のときには、ヒトIgEサンプルは、1%w/vBSA及び0.05%/vTween20(P7949,Sigma−aldrich, MO)を含む標準的な希釈剤を免疫測定法で一般的に使用される50mMトリス緩衝生理食塩水(T6664,Sigma−aldrich, MO)に溶解することにより調製した。2種類の感度エンハンサーが配合される:10%BSA及び0.5%Tween20を含むPBS並びに10%BSA及び0.5%Tween20を含む50mMトリス緩衝生理食塩水である。これらの感度エンハンサーはそれぞれ、IgEを含むLPMに1:10の比で別々に加えられる。標準的なブロック緩衝液を有するELISAプレートの30分間の培養後、これらのサンプルは、個別のウェルで1時間培養された。ウェルの洗浄後、1μg/mlの濃度のHRP標識二次抗体が各ウェルで1時間培養された。洗浄後、ELISAによるIgE抗体の検出能力を示す(基質54−61−00,KPL,MDによって誘発される)HRPに基づく化学発光信号を分光光度計を使用して各テストケースについて測定した。
【0188】
図18には、分析物の濃度に応じた種々の試験ケースからの化学発光シグナルの強度がプロットされている。LPM自身は、正の制御と比較して、ELISA分析の適切な検出試薬でないことが結果として示されている。しかしながら、LPMに感度エンハンサーを加えることにより、分析アッセイの検出能力が向上している。さらに、トリス緩衝生理食塩水は、感度エンハンサーの調整の溶媒として使用した場合には、リン酸緩衝生理食塩水と比べた場合に、信号強度を上げることが示されている。これらの結果は、LPM自身は、ELISAでの分析物の検出の容易化に有効でないが、感度エンハンサーの追加により、ELISAでの分析物の検出能力を十分に高めることができることを証明した。
【0189】
上記説明は、単に本発明の原理を示したものにすぎない。したがって、当業者は、本明細書においては明確に記述または図示されていないが、本発明の原理を具体化する様々な構造を工夫することができることは理解されよう。これらはすべて本発明の精神および範囲の範疇である。さらに、本明細書において記載されているすべての実施例および条件付き言語には、主として、当分野をさらに発展させるべく、読者による本発明の原理および本発明者による寄与の概念の理解を補助するにすぎないことが明確に意図されており、また、これらの実施例および条件付き言語は、記載されているこのような特定の実施例および条件に限定されるものとして解釈してはならない。さらに、本明細書における、本発明の原理、態様および実施形態ならびにそれらの特定の実施例を記述しているあらゆる供述には、それらの構造的および機能的等価物の両方が包含されることが意図されている。また、このような等価物には、現在知られている等価物ならびに将来的に開発される等価物の両方、つまり、開発される、構造には無関係に同じ機能を実行するあらゆる構成要素が含まれることが意図されている。したがって、本発明の範囲は本明細書に図示され記載された例示的な実施の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲および精神は特許請求の範囲によって表現されている。
【0190】
[例12]
[ブタの皮膚内へのイヌリン及びアシクロビルの送達]
薬物送達の実験をブタの皮膚でインビトロで行った。予めカットされ冷凍された全層ブタ皮膚であってヨークシャーブタの側腹部から採取されたものを、Lampire Biological Laboratory、Inc.,PAから入手した。皮膚は、実験の前に−80℃の冷凍庫に保管されていた。皮膚は室温で解凍され、かき傷及び擦り傷のような目に見える傷のない皮膚を小片(2.5×2.5cm)に切り分けた。皮膚片をフランツ拡散セル(Franz diffusion cell)(PermeGear, Inc.,PA)に取り付けた。各試験の前に、レシーバーコンパートメントをLPMまたはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で充填した。1%(w/v)NLS及びBrij30の混合物を含むPBSをLPMのモデル配合として選択した。各実験の前に、皮膚の導電率を完全性を確保して測定した。皮膚は、初期導電率が2.2μA/cmを超える場合には、ダメージを負っていると考えられる。超音波は、周波数20kHz、強度2.4W/cmで5分間作動する超音波発生装置(VCX400,Sonics and Material)を使用して付与される。LPMまたはPBSを除去した後に、ドナーコンパートメントを10μCi/mlのイヌリン溶液(NET086L001MC,PerkinElimer Life and Analytical Siences, Inc., MA)を含むPBSで充填した。サンプルは、超音波付与の24時間後にレシーバコンパートメントから取り出した。別の実験では、皮膚サンプルと直接接触するように、回転研磨面(プラスチックの剛毛を有する円形ブラシ)がドナーチャンバーに導入された。10μCi/mlのアシクロビル溶液が、24時間皮膚上に置かれた。皮膚は、食塩水によって洗浄されて、Sovlvable(PerkinElmer MA)に溶解される。これらのサンプルの濃度は、シンチレーションカウンター(Tri−Carb2100 TR, Packard, CT)によって測定される。全ての実験は、室温22℃で行われた。超音波装置及び研磨装置のどちらにも制御は加えていない。エラーバーは、標準偏差を示している。
【0191】
図19(a)に示すように、LPMと一緒に5分間超音波を照射することにより、超音波のみ及び無傷の皮膚での受動拡散の両方の場合と比較して、薬物輸送が増大した。同じ効果は、皮膚を複数の剛毛を有する移動ブラシ装置で摩耗させた場合でも認められた(図19(b))。手短に言えば、LPMと共にエネルギーを付与してインビトロで実証されたブタの皮膚を使用した例では、組織を通ったまたは組織内への分子の通過を高める効果がある。付与の力、時間及びLPMの配合のようなパラメータは、組織のタイプ及び輸送される物質の両方に対する個別の状況に適合するように最適化することができる。
【0192】
本発明を好ましい実施の形態に関して説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく改良及び変更が可能であることが理解される。従って、以下のクレームの範囲内で変更が可能である。
【図1a−1c】

【図1d】

【図1e−1g】

【図2a】

【図2b】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図4e】

【図4f】

【図4g】

【図5a】

【図5b】

【図5c】

【図5d】

【図6a】

【図6b−6c】

【図6d】

【図6e】

【図6f】

【図6g】

【図7a】

【図7b】

【図7c】

【図7d】

【図7e】

【図8a】

【図8b】

【図8c】

【図8d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化サンプルを得るために組織で使用されるデバイスであって、
前記組織に操作可能に連結されたエネルギー源と、
前記組織に操作可能に連結されて、前記組織への液化促進媒体の送達及び/または前記組織からの前記液化サンプルの収集が可能なチャンバーとを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記組織は、生体の一部である請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記組織は、診断の前に前記生体から切り出される請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記組織の前記液化サンプルは、少なくとも一つの分析物の有無を監視するためのアッセイに移送される請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記アッセイは、サンプル装置に含まれる請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記チャンバーは、前記液化促進媒体を含んでいる請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記エネルギー源から放出されるエネルギーは、前記チャンバーを介してエネルギー通路により前記組織に付与される請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記チャンバーは、使い捨てカートリッジである請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記チャンバーは、スポンジ−ベローアセンブリであり、前記スポンジは、前記液化促進媒体及び/または液化組織サンプルを貯蔵可能である請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記チャンバーに接続されたチューブ/ニードルをさらに備え、
前記チューブ/ニードルは、前記組織への前記液化促進媒体の送達及び/または前記組織からの液化組織サンプルの吸い出しが可能である請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記チャンバーに操作可能に接続されて、前記液化促進媒体及び/または液化組織サンプルを貯蔵可能なサンプルコンテナをさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記液化促進媒体及び/または液化組織サンプルの移送を容易にするポンプユニットをさらに備える請求項1または11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記液化促進媒体及び/または液化組織サンプルの移送を容易にする加圧コンテナ及び/または真空コンテナをさらに備える請求項1,11または12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記エネルギー源から放出されるエネルギーは、超音波エネルギー、機械的エネルギー、光学的エネルギー、熱的エネルギーまたは電気的エネルギーの形である請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記機械的エネルギーは、研磨材、真空力、圧力または剪断力によって前記組織に付与される請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記熱的エネルギーは、高周波エネルギーの形で前記組織に付与される請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記光学的エネルギーは、レーザーの形で前記組織に付与される請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記エネルギー源は、シャフトに接続されたパッドを備えている請求項1に記載のデバイス
【請求項19】
前記シャフトは、接触状態で所定の圧力プロファイルを前記組織上に維持する圧力検出ユニットを有している請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記パッド、前記シャフトまたは前記チャンバーは、使い捨て可能である請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
前記パッドは、研磨面及び複数のマイクロニードルを有するパッチよりなる群から選択される請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
前記研磨面は、不均一な研磨性を有するディスクである請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記研磨面は、非平面形状である請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
前記研磨面は、研磨布である請求項21、22または23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記研磨面は、複数の剛毛を有するブラシである請求項21、22または23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記エネルギー源からの放射エネルギーは、前記パッドが前記組織と接触する状態で、前記パッドを動作させることにより前記組織に付与される請求項18に記載のデバイス。
【請求項27】
前記エネルギー源からのエネルギーは、前記パッチが前記組織と接触する状態で、前記マイクロニードルを動作させることにより前記組織に付与される請求項18に記載のデバイス。
【請求項28】
前記チャンバーの頂部に操作可能に接続されたプランジャーをさらに有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
前記デバイスは、上部ユニットと下部ユニットとに分割可能であり、
前記下部ユニットは、前記上部ユニットから取り外し可能であり、
前記上部ユニットはエネルギー源を備え、前記下部ユニットは前記チャンバーを備えている請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
前記チャンバーのベースにアブレイダブルシートをさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
前記下部ユニットのベースにアブレイダブルシートをさらに備える請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
前記チャンバーに操作可能に接続された分析ユニットをさらに備える請求項1または11に記載のデバイス。
【請求項33】
前記分析ユニットは、電気化学的、生化学的または光学的手段により前記組織サンプルの時間的監視を行うことができる請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記時間的監視は、複数の電極または複数の熱電対によって行われる請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記分析ユニットは、前記液化組織サンプル中の前記分析物を分析することが可能である請求項32に記載のデバイス。
【請求項36】
前記分析は、電気化学的、生化学的または光学的方法によって行われる請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記エネルギー源に取り付けられたバッテリーパックをさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項38】
研磨アクチュエータ、機械モータ、電磁アクチュエータ、圧電変換器、吸引装置または加圧装置よりなる群から選択される追加のエネルギー源をさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項39】
前記デバイスは診断プローブまたはカテーテルと接続されている請求項1に記載のデバイス。
【請求項40】
前記診断プローブは、内視鏡、結腸鏡及び腹腔鏡よりなる群から選択される請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
前記組織サンプルの液化は、生体内原位置で達成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項42】
前記デバイスは、前記組織に薬物を送達することができる請求項1に記載のデバイス。
【請求項43】
前記デバイスのために、閉ループ薬物送達として機能する手段をさらに備え、
前記手段は、薬物送達手段、分析物回収手段、分析物を測定する検出手段及び前記薬物送達手段に信号を与える制御手段を含む請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記液化促進媒体は、タンパク質、脂質及び核酸の検出を維持及び向上させる請求項1に記載のデバイス。
【請求項45】
前記液化促進媒体は、機械的及び熱的損傷からタンパク質の生物活性を保護する請求項1に記載のデバイス。
【請求項46】
前記液化促進媒体は、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(DPS)及びポリエチレングリコールドデシルエーテル(Brij30)を緩衝液に溶解したものである請求項45または46に記載のデバイス。
【請求項47】
前記3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート及びポリエチレングリコールドデシルエーテル(Brij30)の濃度は、0.01乃至10%(w/v)の間である請求項46に記載の液化促進媒体。
【請求項48】
前記3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート及びポリエチレングリコールドデシルエーテルは、50:50の比で存在している請求項46に記載の液化促進媒体。
【請求項49】
前記緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、トリス−HCl、EDTAのいずれかである請求項46に記載の液化促進媒体。
【請求項50】
前記トリス−HClは、0.1乃至100mMの範囲である請求項49に記載の液化促進媒体。
【請求項51】
前記トリス−HClは、10mMである請求項50に記載の液化促進媒体。
【請求項52】
前記EDTAは、0.05乃至5mMの範囲である請求項49に記載の液化促進媒体。
【請求項53】
前記EDTAは、0.5mMである請求項52に記載の液化促進媒体。
【請求項54】
前記液化促進媒体は、研磨粒子を有している請求項1に記載のデバイス。
【請求項55】
前記液化促進媒体は、
ブリジ系界面活性剤、トリトン−X界面活性剤またはソルビタン界面活性剤から選択される非イオン界面活性剤と、
陰イオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤と、
親水性溶媒とを備え、
前記液化促進媒体は、界面活性剤の合計濃度が約0.01%乃至10%(w/v)である請求項1に記載のデバイス。
【請求項56】
前記陰イオン界面活性剤は、サルコシン界面活性剤であり、前記両性イオン界面活性剤は3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート及び3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナートから選択される請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項57】
前記液化促進媒体は、エネルギー付与装置と共に使用するのに適している請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項58】
前記液化促進媒体は、物質の安定性を高めるのに適している請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項59】
前記物質は、小分子、タンパク質、ワクチン、核酸、RNA、DNA、または診断または治療の対象の他の分子である請求項58に記載の液化促進媒体。
【請求項60】
前記安定性は、熱、圧力、酵素分解、機械的損傷、フリーラジカルまたは前記物質の活性を落とす他の効果に反して高まる請求項58に記載の液化促進媒体。
【請求項61】
前記界面活性剤の合計濃度は、0.1%−2%(w/v)のである請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項62】
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(Brij30)であり、前記陰イオン界面活性剤は、N−ラウロイルサルコシン(NLS)である請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項63】
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(Brij30)であり、前記両性イオン界面活性剤はは、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(DPS)である請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項64】
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(Brij30)であり、前記両性イオン界面活性剤はは、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート(DDPS)である請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項65】
前記非イオン界面活性剤は、他の界面活性剤との存在比が50:50である請求項63または64に記載の液化促進媒体。
【請求項66】
可溶化組織成分をさらに備える請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項67】
脂肪酸、アゾン状分子、キレート剤または無機化合物を備える請求項55に記載の液化促進媒体。
【請求項68】
前記サンプルコンテナは、取り外し可能なカートリッジである請求項11に記載のデバイス。
【請求項69】
前記サンプルコンテナは、前記液化組織サンプルと混合されて、前記液化組織サンプルの成分を安定化させる物質を含む請求項11に記載のデバイス。
【請求項70】
前記物質は、プロテアーゼ阻害剤のようなタンパク質安定剤、EDTAのような核酸安定剤、フェノール、非特異プロテイナーゼ、RAase阻害剤及びDNase阻害剤、変形剤、トリトンX−100、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSOのような界面活性剤、及び/またはシリカまたはアルミナのような研磨粒子である請求項69に記載のデバイス。
【請求項71】
前記サンプルコンテナは、前記液化組織サンプルの成分について行われる分析試験の感度及び特異性を変調する物質を含む請求項11に記載のデバイス。
【請求項72】
前記物質は、
リン酸緩衝生理食塩水、トリス−HCl、トリス緩衝生理食塩水のような水性緩衝液、 プロテアーゼ阻害剤のようなタンパク質安定剤、
EDTA、非特異プロテイナーゼ、RAase阻害剤及びDNase阻害剤のような核酸安定剤、
Tween20、TritonX−100、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳、カゼイン、カゼイン塩、アイシングラスのような遮断試薬、及び/または
トリトンX−100、ドデシル硫酸ナトリウム及びDMSOのような界面活性剤を有している請求項71に記載のデバイス。
【請求項73】
前記チャンバー、前記サンプルコンテナーまたは前記パッドは、前記液化組織サンプルの成分を捕獲する物質で被覆さている請求項1,11または18に記載のデバイス。
【請求項74】
前記デバイスは、物質を取り除くために組織上に置かれる請求項1に記載のデバイス。
【請求項75】
前記デバイスは、物質を取り除くことにより前記組織を除染するために組織上に置かれる請求項1に記載のデバイス。
【請求項76】
前記物質には、有害化学物質、生物毒素、農薬、環境汚染物質、細菌要素、化粧剤、または生体から除去されていることが望ましい他の物質が含まれる請求項74及び75に記載のデバイス。
【請求項77】
対象者から液化組織サンプルを生成するために請求項1に記載のデバイスを使用する方法であって、
組織上にデバイスを置き、
エネルギー源を作動させ、
前記液化組織サンプルを収集することを特徴とする方法。
【請求項78】
前記液化組織サンプル内の少なくとも一つの分析物の存在の有無を分析することをさらに備え、
前記分析は対象となる状態の診断を容易にする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記分析することには、
前記液化組織サンプルから分析物プロファイルを生成し、
前記分析物プロファイルと、参照分析物プロファイルとを比較することが含まれ、
前記比較することは、対象となる状態の診断を容易にする請求項78に記載の方法。
【請求項80】
ブリジ系界面活性剤、トリトン−X界面活性剤またはソルビタン界面活性剤から選択される非イオン界面活性剤と、
陰イオン界面活性剤または両性界面活性剤と、
親水性溶媒とを備える媒体の追加により物質の安定性を高める方法であって、
前記媒体は、約0.01%乃至10%(w/v)の界面活性剤の合計濃度を有していることを特徴する方法。

【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−518171(P2012−518171A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550250(P2011−550250)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024010
【国際公開番号】WO2010/093861
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】