説明

組織の種類を識別するための方法および装置

本発明は、どの種類の組織が機器と接触しているかをより明確に示す、可視性および/または好ましくは可聴性シグナルを提供することが可能な医療機器の1つの態様を外科医へ提供するために、インビボの組織インピーダンスの特性を利用する。好ましい態様は、2つの電極を有する手持ち式で電池式の網膜レーキを含み、少なくとも1つの電極は改変型網膜レーキである。例えば網膜上膜、網膜組織、硝子体液等の異なる眼組織との接触時に、電極は、回路基盤上の回路によってどの種類の組織、体液、構造等が網膜レーキと接触しているかを示す様々なシグナルへ変換される、変動するインピーダンスを検出する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
硝子体網膜手術は、眼球背面またはその近傍での問題を矯正するために利用される、侵襲性の眼球の顕微手術手法である。これは、様々な種類の潜在的な視覚の欠陥(vision-impairing)または破壊性網膜上膜(ERM)の除去などの網膜障害の矯正にとりわけ有用である。この種類の眼科手術(経扁平部硝子体切除(pars plana vitrectomy))においては、外科医は標準的手法によって眼球の背面に到達し、例えば「網膜レーキ(retinal rake)」のような様々な機器を利用して網膜表面をこするまたはこすり取ることによって、これらの膜を除去する。
【0002】
硝子体網膜手術を実施する際には、周囲または下にある健康な組織への損傷を最小限にするため、罹患したまたは瘢痕化した組織のみを除去、操作、かつ/または接触することが重要である。予測されるように、網膜またはその近傍の問題に対処する際には、これはとりわけ重要である。
【0003】
そのような手術に先立ち、眼網膜のような、関係する眼球構造のフルオロセイン画像のような術前画像がしばしば入手される。これによって、除去されるべき膜または他の組織の種類および/または範囲(例えば、深度、面積等)に関する情報が、外科医に提供され得る。手術中、外科医が網膜上膜を手作業で除去する間、細隙灯が眼球の内部を見るために通常利用される。外科医は、除去する物質の場所および量を決定するために、細隙灯または他の視覚装置を介した経験および目視観察にしばしば依存せねばならない。手技中、接触または操作されている組織の種類に関して、外科医に対する他のフィードバックは、もしあったとしてもごくわずかしか存在しない。
【0004】
組織の種類の識別におけるこの問題点によって、例えば、神経系組織に隣接する組織を除去するための手術を含む他の種類の手術における課題が創出される。
【0005】
従って、健康な眼組織の接触と除去する必要がある組織の接触とを区別するために、二次的シグナルを外科医に提供することが可能な手術機器に関する必要性が存在する。とりわけ、網膜上膜(ERM)および網膜組織を同定し、かつどの組織が網膜レーキと接触しているかを示すためのシグナルを提供することが可能な、網膜レーキまたは類似の装置への必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
簡単な概要
インビボの健康なおよび罹患した様々な組織、または体内の体液は、異なった検出可能な電気伝導率を有する。例えば脂肪組織細胞は、低い含水量(10〜20%)のため比較的高いインピーダンスを有するが、より脂肪の無い組織は、より高い含水量(70〜75%)のため比較的より低いインピーダンスを有する傾向がある。ある特定の例では、網膜上膜(ERM)は比較的高い電気インピーダンスを有し、それらを比較的電気的に不活性にさせる。しかしながら、網膜組織はより低い電気インピーダンスを有し、それを相対的に電気的に活性にさせる。本発明に従って検出可能であり、かつ組織を識別するために分離され得、かつ区別され得るものは、様々な組織中のインピーダンスにおけるこの相違である。
【0007】
具体的には、本発明は、どの種類の組織が網膜レーキと接触しているかを明確に同定する、可視性シグナルおよび/または可聴性がより高いシグナルを外科医に提供することが可能な、網膜レーキまたは類似の装置もしくは機器を提供するために、インビボ組織インピーダンスのこれらの特性を利用する。
【0008】
1つの態様において、シグナルは視覚によるシグナルであって、1つまたは複数の光が利用され、かつ/または光強度における変化によって、組織の種類および/または装置もしくは機器とどの程度接触がなされているかが示される。別の態様において、シグナルは聴覚によるシグナルであり、音調または音の変化によって活性、不活性または非活性組織との接触が示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のより正確な理解を得るために、上に簡単に記載された本発明のより詳細な説明は、添付の図面に示される、その特定の態様に対する参照によって供与されると考えられる。これらの図面は本発明の典型的な態様のみを示し、かつ従って、その範囲を限定するものとして考慮されるべきでなく、本発明は、添付の図面の使用を通してさらなる特定性および詳細を伴い、記載かつ説明されるであろうことを理解されたい。
【0010】
【図1】本発明の装置の1つの態様の例を示す。
【図2】本発明の装置の態様の入力、増幅および出力電子機器を示すブロック図を示す。
【図3A】本発明に従って改変され得る、典型的な網膜レーキ装置を示す。
【図3B】インビボ網膜上膜を処置または除去するために使用されている、典型的な網膜レーキ装置を示す。
【図4A】本発明に応じて改変され得る、網膜レーキを含む医療装置を示す。
【図4B】インビボ網膜上膜を処置または除去するために使用されている、図4Aの医療装置を示す。
【図4C】網膜上膜を処置または除去するために、典型的な医療装置によって引き起こされる動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な開示
本発明は、どの種類のインビボ組織が機器または装置と接触しているかを同定し、かつ該装置の使用に対して1つまたは複数の可視性および/または可聴性シグナルを提供することが可能な、医療機器および/または装置の態様を提供する。より具体的には、本発明は、どの種類のインビボ組織が装置と接触しているかをより明確に同定するため、1つまたは複数の可視性シグナルおよび/または可聴性シグナルを外科医に提供することが可能な、網膜レーキまたは類似の装置に関係する。本発明はまた、本明細書に記載される機器に関する使用の方法も提供する。
【0012】
本発明は、眼科外科手術手法の分野において、かつとりわけ網膜上膜(ERM)の処置および/または除去のために使用される装置に関して、特に有用である。しかしながら、当業者は、本発明の装置および方法に対して適用可能である他の使用を認識することが可能であると考えられる。本適用は、ERMの処置および/または除去のための使用を記載するが、当業者にとって明白でありかつ本開示の利点を有する他の改変が、本発明の範囲内で考慮される。
【0013】
本明細書で使用される「患者」という用語は、本発明のシステムおよび方法が提供される哺乳動物を含む動物を記載する。開示されるシステムおよび方法から利益を得ることができる哺乳動物種は、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;イヌ、ネコ、モルモット、およびハムスターのような家畜動物(例えば、ペット)、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、または獣医学もしくは追跡目的のための任意の野生動物を含むが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される「医師」という用語は、本発明の装置または方法を使用することが可能な、医学分野において訓練された任意の個人を記載する。そのような個人は、一般開業医、専門外科医、看護師、医師アシスタント、研修医、他の訓練された支援職員等を含み得るが、これらに限定されない。
【0015】
また、本明細書で使用され、かつ他に特に明記されない限りは、「動作可能な交信」および「動作可能に接続される」という用語は、特定の要素が、その意図される機能を達成するために、それらが協同する様式で接続されることを意味する。「接続」は、直接的または間接的、物理的または遠隔的であってもよい。
【0016】
さらに、本明細書で使用される「第一」、「第二」等(例えば、第一および第二の電極)への言及は、他に特に明記されない限りは、少なくとも2つのものが存在する場合の特定の特徴を明らかにすることを意図する。しかしながら、これらの言及は、特定の特徴に関する時間、構造的方向、または側面(例えば、左もしくは右)において、任意の順序をもたらすことは意図しない。
【0017】
本発明の特定の態様を示す添付の図面に関して、本発明の1つの態様は、電気インパルスを検出するために改変された網膜レーキを含むことが、図1に示され得る。上述のように、本発明の態様に従って改変され得る、網膜レーキを含むいくつかの装置が存在する。例えば、1つの態様においては、図3Aに示されるGlaserフレキシブルレーキ(Glaser Flexible Rake)が、本発明の教示に従って利用され得る。
【0018】
Glaserフレキシブルレーキのような典型的な網膜レーキが、通常、厚みがしばしば数個の細胞のみである層の単位で、ERMのような組織切片を除去することを、図3Bに見ることができる。このようにして網膜表面からERMを除去して網膜へのより良好な光の到達を提供することができ、これは、多くの場合において、視力を向上させることが可能である。
【0019】
本発明の機器は、除去または破壊されるべき組織が、望ましい組織へ非常に近接している箇所の手術にとりわけ有用である。特に好ましい態様において、特に感受性の高い組織へ隣接している、望ましくない組織を除去または破壊するために、機器が使用され得る。従って、本明細書で例示される網膜手術に加えて、本発明の機器および方法は、神経に隣接する組織を除去するために使用され得る。具体的な態様において、本発明の装置および方法は、脊髄および付随する神経根を含む、神経に隣接する腫瘍および/または脱出椎間板を除去するために使用され得る。この装置および方法はまた、繊細な脳手術にも使用され得る。例えば、切除またはこすることによって、その位置から組織を除去することに加えて、除去はまた、物理的または化学的手段による破壊によっても達成され得る。物理的手段は、例えば熱またはレーザー処置を通して成され得る。
【0020】
本明細書の「処置」に対する言及は、例えば所望の位置へ薬物のような物質を送達することを含む。薬物は、例えば治療的化合物(小さい有機または無機化合物、遺伝子治療、および持続性放出製剤を含む)、ならびに例えば、がん細胞を死滅させるために使用され得る化学療法または放射線療法の化合物であってもよい。診断的な画像化の溶液もまた、本発明の装置および方法を使用して送達され得る。1つの態様においては、装置を使用する人が、装置がどの組織に入ったかを正確に評価することが可能なように、本明細書において記載されるように設計された皮下注射針または他のそのような装置を使用して、薬物が送達され得る。
【0021】
本発明の1つの態様において、レーキによって除去、接触またはさもなくば操作される組織の種類を示すためのシグナル検出器を含むように、網膜レーキが強化される。これを達成するために、レーキ10は少なくとも2つの電極を含むように改変される。2つの電極は、二極性ペアとして機能し得る。好ましい態様において、少なくとも2つの電極が、電気的に絶縁されている。1つの態様において、手法の間、第一の電極20の少なくとも一部が眼球の硝子体液と継続的に接触し得るように、第一の電極20が設置され得る。1つの態様において、第一の電極20は、レーキ10または他の類似の装置から分離された構成要素として、硝子体液中へ導入される。しかしながら、より好ましい態様においては、第一の電極20はレーキ柄25へ取り付けられ得るが、電気的に絶縁される。またより好ましい態様においては、例えば図1および3Bにおいて示されるように、硝子体液と接触している第二の電極35の一部がレーキ端部30の比較的近くに設置されるよう第一の電極20と第二の電極35とが取り付けられる。これは、第一の電極20がレーキ端部30と同時に眼球中へ提示されることを許容する。
【0022】
第二の電極35は、レーキ端部30にまたは近接して設置され得、かつ電気的に第一の電極20から絶縁される。さらなる態様においては、第二の電極35はまた、レーキ10および/またはレーキ端部30からも電気的に絶縁される。しかしながら、またさらなる態様においては、電気的に絶縁された第二の電極35は、第二の電極35の電気的に活性な(非電気的絶縁)端部が、組織と接触するために使用されるレーキの歯38の部分と概して平行または同一平面になるように、設置される。これによって、第二の電極35がレーキの歯38と同一の組織に同時に接触することが可能になる。あるいは、第二の電極35の電気的に活性な端部は、レーキの歯38または類似の装置の接触端部よりも、より長いかまたはより短くてもよい。
【0023】
またさらなる態様において、第二の電極35は、レーキの歯38の2つまたはそれ以上の領域がモニタリングされ得るように、2つまたはそれ以上の電気的に活性な接触端部を含むために分割され得る。例として、レーキの歯38の列の各端部が、第二の電極35に対する接触を有し得る。またさらなる態様においては、さらなるモニタリングおよび組織接触のフィードバックのため、さらなる接触子がレーキの歯38の他の部分の位置またはこれに近接して設置され得る。この態様において、第二の電極35が接触するレーキの歯38のそれらの領域は、網膜レーキ10が接触する組織の種類に関してモニタリングされ得る。
【0024】
非常に多くの場合、当技術分野において公知の網膜レーキを含む眼科手術機器は、滅菌手法に耐えることが可能であるが、依然として適切な形状および引張強度を維持する金属材料を含む。従って眼科手術機器は、例えば、チタン、ステンレス鋼、スターリングシルバー、アルミニウム、またはそれらの組み合わせをしばしば含むが、これらに限定されない。有利なことに、利用される大多数の金属材料は、少なくともある程度までの電気シグナルを伝導することが可能である。
【0025】
従って、本発明の好ましい態様においては、網膜レーキまたは類似の装置は、電気シグナルを伝導することが可能な1つまたは複数の物質を含む。さらなる好ましい態様においては、適切な伝導性物質の網膜レーキ10または類似の装置が、二極性ペアにおける第二の電極35として作用するように強化される。またさらなる好ましい態様においては、網膜レーキは、レーキ端部30の一部のみがレーキの歯38またはこれに近接して露出されたままになるように、ほぼ全体が絶縁される。この態様において、網膜レーキが周囲の組織、構造または体液からの偶発的な電気シグナルから保護され、従って、手術手技中の直接的操作または接触下において、組織、構造等からのより正確な電気シグナルを検出することが可能である。
【0026】
使用において、第一の電極20および第二の電極35は、異なる種類の組織、体液または構造との接触により創出されかつそれを示す、電気インピーダンスにおける変化を検出するために利用される。電極は、検出したインピーダンスまたはその欠如を解釈し、インピーダンスシグナルから接触した組織、体液または構造の種類を決定し、1つまたは複数の適切な視覚、聴覚または触覚シグナルを産生することが可能な、様々な入力増幅および出力電気構成要素へ動作可能に接続される。従って、本発明の装置によって生成されるシグナルの種類によって、どの種類の組織、体液または構造が、1つまたは複数の第二の電極と接触しているかが同定され得る。
【0027】
1つの態様において、本発明の網膜レーキ10は、例えば、さらに1つまたは複数の色彩または形状であり得る、1つまたは複数の光のような視覚シグナルを提供する。点灯または消灯される光の種類により、第二の電極35が接触している組織の種類が示され得る。代替の態様においては、本発明の網膜レーキ10が、振動、熱、冷たさ、圧力等の、触覚シグナルを提供する。この態様において、触覚シグナルの種類によって、第二の電極35が接触している組織の種類が示され得る。
【0028】
好ましい態様において、網膜レーキ10の構成要素は、接触した組織の種類を同定するために、例えば音調、ビープ、笛音等の1つまたは複数の選択可能な聴覚シグナルを生成する。とりわけ好ましい態様においては、硝子体液中に保持される際のような、電極がいかなる組織とも接触していない際には、装置が特定の音調を生成し、第二の電極がERMのような電気的に不活性な組織または構造と接触する際には、異なる音調を生成し、第二の電極が網膜のような電気的に活性な組織と接触する際には、別の音調を生成する。さらなる態様は、脈絡膜組織、強膜等のような他の構造と接触を示すための、さらなる音調または音を含み得る。
【0029】
代替の態様において、装置内部の構成要素はまた、組織への近接を示すための異なるレベルのシグナル強度を決定し得る。例えば、特定の組織に極めて近接しているがこの組織と直接接触していない第二の電極は、装置のこの組織への近接を示すために、特定の組織に関して選択されるが、より低いもしくはより高い音量、または増加するもしくは減少する断続的ビープ等で特定の音調または音を発してもよい。これにより、手術手技中に使用される間、より正確なプローブまたは指示器として装置が使用されることが可能になる。
【0030】
本発明に伴い使用されるシグナル装置は、医師との適切な視覚、聴覚または触覚による交信の内にある、任意の様々な位置に設置され得る。例えばシグナルは、電極と動作可能に接触するが、部屋の別の場所(例えば、デスクトップ上)、1つもしくは複数の他の部屋、または1つもしくは複数の遠隔位置に設置される電気構成要素により生成され得る。
【0031】
好ましい態様において、網膜レーキは様々なインピーダンスレベルを検出し、測定されたインピーダンスレベルに関して適切な1つまたは複数のシグナルを決定し、そのインピーダンスレベルを示すシグナルを発することが可能な、「回路基盤上の」構成要素を含むように改変される。さらなる好ましい態様においては、第二の電極と接触している組織、体液または構造によって引き起こされるインピーダンスに対応する、1つまたは複数の聴覚によるシグナルが生成される。またさらに好ましい態様においては、網膜レーキおよび「回路基盤上の」構成要素は、手持ち式になるように自己完結型である。またさらに好ましい態様においては、回路基盤上の構成要素がハンドル28内部に含まれる。代替の態様においては、自己完結型の手持ち式網膜レーキ10は、もし必要であるまたは望ましい場合には、それが別個の装置、表示装置、電源等へ接続されることを可能にする接続構成要素または装置をさらに含む。
【0032】
本発明を実行し、かつ本明細書で検討される新規の原理を適用するために必要な構成要素は、任意の様々な異なる設備および装置によって達成され得、かつ発明自体の範囲から逸脱することなく、設備の詳細および操作手法の双方に関して、様々な改変を含み得る。本発明を、その特定の回路態様の具体的な詳細を参照しながら記載したが、このような詳細が添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除き、そのような詳細が限定としてみなされることは意図しない。
【0033】
本発明の強化された網膜レーキ10に従って使用され得る回路60の1つの態様が、例えば図2のブロック図中に示される。このブロック図例において、電極からのインピーダンスシグナルの処理は、概して2つの段階を含むことが示され得る。段階1では、回路は、絶縁増幅器70を介して回路60へ動作可能に接続された、少なくとも1つの第一の電極20および少なくとも1つの第二の電極35を含む。絶縁増幅器70は、電極20および35からのアナログインピーダンスシグナルを分離し、かつシステムにおける他の構成要素によってより正確に分離され得るように、それらのシグナルを十分に増幅する。インピーダンスにおける変化を正確に検出するために、好ましくは、回路構成が個人の硝子体液の生来の伝導率に対して補正されると考えられる。従って、さらなる態様において、回路60は適切な補正回路71を含む。通常網膜レーキ10のための電源により生成される偶発的な電気シグナルから電極インピーダンスシグナルを分離するために、光アイソレーター72が絶縁増幅器7へ結合され得る。
【0034】
本発明の装置は、A/CまたはD/C電流を利用するように構成され得る。上述のように、装置は、好ましくはハンドル28内部に含まれる回路60の構成要素を有する手持ち式である。従って、好ましい態様において、装置はハンドル28内部に含まれることも可能なD/C(電池)電力で操作される。
【0035】
段階2では、アナログインピーダンスシグナルをさらに分離するために、光アイソレーター72からのシグナルは、増幅器73およびフィルター74を通過することが可能である。このさらに分離されたシグナルは、アナログ/デジタル(A/D)変換器75によって変換され得、続いて起こるデジタルシグナルは、変換されたデジタルシグナルを解析し、組織特異的な受信された入力シグナルのレベルに関して適切な音または音調を決定し、かつデジタル増幅器77およびスピーカー78に出力シグナルを伝達して特定の組織、体液または構造を示すように選択される可聴音の音調または音を生成するようにプログラムされたマイクロチップ、マイクロコントローラー、またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)チップ76によって、処理される。網膜組織との接触を回避するため、医師は音調または音を聞いて、レーキの歯38の位置を調整することができる。
【0036】
代替の態様において、上に記載される網膜レーキ回路の様々な構成要素を、単一のチップまたは1つもしくは複数のマイクロチップまたはFPGA 76中へ組み入れることができる。例えば絶縁増幅器は、当技術分野において公知の単一パッケージの計装増幅器から作製され得る。さらに、公知のFPGA技術を利用して、回路基盤上のA/Dおよびフィルタリングを伴うマイクロコントローラーが、補正、フィルタリングおよびスピーカー音調生成のために使用され得る。当業者および本開示の利益を有する者は、これらの態様に対する様々な他の改変を決定することが可能であると考えられ、かつそのような改変は本発明の範囲内であることが意図される。
【0037】
本明細書で言及または引用される全ての特許、特許出願、特許仮出願、および刊行物は、本明細書の明確な教示と矛盾しない程度に、全ての図および表を含むその全体が、参照により組み入れられる。
【0038】
本明細書で記載される実施例および態様は、例示的目的のためのみのものであること、ならびにそれを踏まえて様々な改変または変更が当業者に示唆されるであろうと考えられ、かつこれらが本出願の趣旨および範囲に含まれることが、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第一の電極と、
組織と接触するための、少なくとも1つの第二の電極と、
第一および第二の電極に動作可能に接続され、かつ該第二の電極と組織とが接触する際に第一の電極と第二の電極との間で生成された1つまたは複数のインピーダンスシグナルを受信し、インピーダンスシグナルのレベルを同定し、かつインピーダンスシグナルのレベルを示す観察可能なシグナルを発するために配置された、回路と
を含む、組織を同定する医療機器。
【請求項2】
第二の電極が医療機器の少なくとも一部を含む、請求項1記載の組織を同定する医療機器。
【請求項3】
組織を除去するように設計される、請求項2記載の組織を同定する医療機器。
【請求項4】
網膜レーキ(retinal rake)である、請求項3記載の組織を同定する医療機器。
【請求項5】
薬物を送達するように設計される、請求項1記載の組織を同定する医療機器。
【請求項6】
皮下注射針である、請求項5記載の組織を同定する医療機器。
【請求項7】
電池を含む、請求項1記載の組織を同定する医療機器。
【請求項8】
少なくとも1つの第一の電極と、
組織と接触するための、少なくとも1つの第二の電極と、
第一および第二の電極に動作可能に接続され、かつ該第二の電極と組織とが接触する際に第一の電極と第二の電極との間で生成された1つまたは複数のインピーダンスシグナルを受信し、インピーダンスシグナルのレベルを同定し、かつインピーダンスシグナルの1つまたは複数のレベルを示す1つまたは複数の観察可能なシグナルを発するために配置された、回路と
を含む組織を同定する医療装置を利用する、
組織が除去または処置されるべき部位に組織を同定する医療装置を挿入する段階と、
手術装置によって発せられるシグナルを同時に観察しながら、組織を処置または除去するための手術装置を使用する段階と、
発せられたシグナルに対応して手術装置の位置を調整する段階と
を含む、組織を処置または除去するための方法。
【請求項9】
組織を除去するために使用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
網膜上組織を除去するために使用される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
神経または脳組織の近傍から組織を除去するために使用される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
組織を処置するために使用される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
薬物を送達するために使用される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
薬物が、望ましくない組織を破壊するために使用される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第二の電極が医療機器の少なくとも一部を含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
医療機器が電池を含む、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−503477(P2010−503477A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528453(P2009−528453)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/078290
【国際公開番号】WO2008/033937
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)