説明

組織を破砕するための装置

【課題】生物学的試料を破砕、混合又は均質化するための改良された装置を提供する。
【解決手段】処理ツール(5)の周縁に配置された少なくとも1つの外側切断ブレード(6)が設けられており、案内管(13)に配置された搬送エレメント(8)が設けられており、該搬送エレメントが、外側切断ブレード(6)上に螺旋形に外方へ延びており、前記搬送エレメントに、外側切断ブレード(6)に嵌合するスロット(6a)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織のような生物学的試料を破砕、混合又は均質化するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組織破砕のための装置は公知である。例えば、国際公開第2006/081694号及び国際公開第2004/035191号は、切断及び/又はすり合わせエレメントを有する処理エレメントを備えた管状の実験室試験容器を有する、生物学的試料のための一方向ミキサ及びホモジナイザを開示している。この装置の欠点は、筋肉組織のような繊維質又は索含有物質を処理する場合に、破砕の程度が不十分であるということである。撹拌機により生ぜしめられる遠心力は、破砕すべき物質を実験室容器に対して押し付け、そこで物質を十分にすり合わせることができず、その結果、大きすぎる粒子及び/又は不均一な処理された材料を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/081694号
【特許文献2】国際公開第2004/035191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、生物学的試料を破砕、混合又は均質化するための改良された装置を提供することである。実験室容器の壁部における試料材料の堆積が回避される装置により、試料を小さな粒子サイズに均質に破砕することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の第1の課題は、
開放した第1の端部3と、底部10によって閉鎖された第2の端部とを有する管状の実験室試験容器1と、
実験室試験容器1の開放した端部に結合された、実験室試験容器1のための閉鎖する蓋2と、
該閉鎖する蓋2に配置された処理ツール5とが設けられており、この処理ツールが、複数の歯4a,4b,4cと、案内管13を有する撹拌エレメント11とを有しており、案内管13が、蓋2に設けられた中央の穴を通って回転可能に取り付けられており、かつ駆動モータによって係合されるように適応された係合部分16を有しており、少なくとも1つの外側切断ブレード6が、処理チューブ5の周縁に配置されており、案内管13に配置された搬送エレメント8が、外側切断ブレード6上に螺旋形に外方へ延びており、かつ外側切断ブレードが嵌合するスロット6aが設けられている、生物学的試料を破砕及び均質化するのに適した装置である。
【0006】
装置は、組織のような生物学的試料又は生物学的材料を、研究、実験室使用、診断又は病理学目的のために処理(破砕、すり合わせ又は均質化)するために使用することができる。生物学的試料又は生物学的材料は、あらゆる粘稠度(consistency)を有してよく、筋肉、心臓又は肺のような内部器官、脳、又は穀物のような植物の一部といった、あらゆる動物、人間又は植物の組織を起源とすることができる。
【0007】
本発明の装置において、物質は、製品の所望の粒子サイズ又は粘稠度が達成されるまで、複数の歯のような構造物4a,4b,4cと、処理ツール5の周縁部に配置された少なくとも1つの外側切断ブレード6とを有する処理ツール5上を通過して螺旋形の搬送エレメント8が回転することによって、強制される。
【0008】
さらに、本発明の課題は、本発明の装置において生物学的試料を抽出、破砕、混合又は均質化する方法を提供することであり、この方法において、撹拌エレメント11を、閉鎖する蓋2及び処理ツール5に対して回転させ、これにより、搬送エレメント8を、歯4a,4b,4cの少なくとも1つのグループ及び少なくとも1つの外側切断ブレード6上で、搬送エレメント8のスロット6aを介して、すり合わせ及び切断形式で案内する。
【0009】
閉鎖する蓋2及び処理ツール5に対する撹拌エレメント11及び搬送エレメント8の回転は、駆動モータを案内管13の係合部分16に連結することによって行われる。撹拌エレメント11及び搬送エレメント8は、駆動モータによって案内管13を介して回転させられるのに対し、閉鎖する蓋2、処理ツール5及び容器1は停止したままである。
【0010】
本発明の処理の間、案内管13及び撹拌エレメント11は、処理ツール5に対して、20〜4000rpmで回転させられる。
【0011】
処理時間は、所望の粒子サイズと、試料の機械的抵抗と、撹拌エレメント11及び搬送エレメント8の回転速度とに応じて変化する。典型的な処理時間は、1〜30分である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実験室試験容器1と、蓋2と、処理ツール5とが組み立てられた本発明の装置の断面図である。
【図2】図1に示したものと同じ本発明の装置を90゜回転させた状態を示す図である。
【図3】処理ツール5及び撹拌エレメント11を備えた蓋の側面図及び上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例えば図1及び図2に示されたような本発明の装置は、実験室試験容器1から蓋2をねじることによって開放される。次いで、処理される生物学的試料が開口3を通じて容器1内に挿入される。蓋2で容器を閉鎖した後、装置は案内管13によって、図示されていない電動式駆動装置の駆動軸に配置される。駆動軸の回転により、処理される物質は、搬送エレメント8によって、歯4a,4b,4cの少なくとも1つのグループ及び外側切断ブレード6上に案内又は強制される。生物学的試料の所望の破砕若しくは均質化程度が達成されると、駆動モータは停止させられ、装置は駆動装置から取り外される。次いで、蓋2を開放することによって容器1から、破砕された物質を取り出すことができる。
【0014】
破砕プロセスのさらなる改良のために、処理ツール5は、好適には、外側切断ブレード6及び案内管13との間に配置された少なくとも1つの内側切断ブレード7を有している。発明のこの実施形態において、搬送エレメント8には、内側切断ブレード7に嵌合する適切なスロット7aが設けられている。"内側"及び"外側"の切断ブレードとの記載は、装置の回転軸線、すなわち、撹拌エレメント11の案内管13に対する、切断ブレードの位置に関する。"内側"の位置は、装置の回転軸線により近く、"外側"の位置は、処理ツール5の周縁の位置である。
【0015】
破砕の結果的な程度若しくは破砕された物質の粒子サイズは、撹拌エレメント11の回転速度と、処理時間と、歯及び/又は切断ブレードのすり合わせ又は切断効率とに依存する。
【0016】
DNA又はタンパク質のような小さな粒子、細胞物質又は細胞分子が生物学的試料から分離される場合、破砕はできるだけ強度でなければならず、細胞完全性を維持するために注意を払う必要はない。発明のこの実施形態において、歯4a,4b,4cと、撹拌エレメント11及び/又は搬送エレメント8の対応する表面との間のスペースはできるだけ狭く、例えば0〜75μm、特に1〜50μm、若しくは1〜20μmであることができる。
【0017】
本発明の処理及び装置が、生物学的試料の細胞構造を破壊することによって、隔離された生体細胞を得るために使用されるならば、破砕は、より注意深い処理に調節される必要がある。発明のこの実施形態において、歯4a,4b,4cと、撹拌エレメント11及び/又は搬送エレメント8の対応する表面との間のスペースは、細胞がすり合わされるのを防止するために、少なくとも100μm、特に100〜300μmに調節される。これは、歯4a,4b,4cに、搬送エレメント8に対するスペーサエレメントを提供する及び/又はその逆によって達成することができる。スペーサエレメントは、少なくとも100μm、好適には100〜300μmの高さのドット(点)の形状を有していてよく、スペーサエレメントが配置されたエレメントと同じ材料から製造される。好適には、スペーサエレメントは、スペーサエレメントが配置されたエレメントと一緒に製造される。歯4a,4b,4c又は搬送エレメント8に対するスペーサエレメントに加え、内側及び外側の切断ブレード7,6も、搬送エレメント8の各スロット6a,7aに対してスペーサエレメントを有していてよい。もちろん、スペーサエレメントは、内側及び外側の切断ブレード7,6に対して搬送エレメント8のスロット6a,7aに取り付けられていてもよい。
【0018】
破砕又は均質化された物質から、試料材料に依然として含有されている未処理の成分を分離するために、本発明の装置はふるいを有することができる。ふるいは、実験室試験容器内の処理スペースを、底部空間と、閉鎖する蓋におけるスペースとに分割する。処理の後、大きすぎる粒子サイズを有する未処理の材料から、所望の破砕程度を有する処理された材料を分離するために、試料材料にふるいをかけることができる。
【0019】
したがって、発明の別の実施形態において、本発明による装置は、底部スペースが、閉鎖する蓋におけるスペースから分離されるように、実験室試験容器1の底部10から間隔を置いて実験室試験容器1内に配置されたふるい9を有する。ふるい9の周囲は、容器1の内壁に密封形式で接触している。ふるい9は、機械的に安定していてよいか、又はピペットの先端によって貫通可能又は穿孔可能であることができる。これにより、ふるいは、例えば所定の破壊点又は破壊線によって、ピペットの先端によって貫通可能なスポットのような領域のみを有してよい。
【0020】
ふるい9は、穴あき板、膜、又は互いに重ねて位置決めされた1つ又は2つ以上のワイヤ又はプラスチック格子であってよい。スクリーンサイズは、特に重要ではなく、広範囲に変化することができる。
【0021】
処理後、蓋2が上になり、処理された物質がふるい9を通って、好適には溜めとして成形された容器の底部10へ流れるように、装置のこの構成は回転させられる。粗い粒子は、ふるい9によって保持される。装置を開放し、例えばピペットをふるいに突き刺すことによって、破砕及びろ過された物質を容器から取り出すことができる。試料が取り出された後、残りの均質化された製品を貯蔵するために、容器は再び蓋2によって閉鎖されてよい。
【0022】
発明の別の実施形態において、環状の実験室試験容器1は、好適には"ルーアー(Luer)"コネクタを備えたストップコックのような、閉鎖可能なオリフィス(図1における19)を有している。閉鎖可能なオリフィス19は、例えば遠心分離器における容器1を用いた試料のさらなる処理に応じて、容器1のあらゆる場所に配置されてよい。好適には、閉鎖可能なオリフィス19は、容器1の底部10に配置されている。
【0023】
閉鎖可能なオリフィス19は、ガス、液体又は酵素のような加工助剤を容器に導入するか又は処理された材料を容器から取り出すために、容器1のための入口/出口ポートとして使用されてよい。
【0024】
本発明の装置は、閉鎖可能なオリフィスと、ふるいとを有してよい。この実施形態において、ふるいは、破砕されかつふるいにかけられた材料の除去のために貫通される必要はない。この態様においては容器の底部10に配置された閉鎖可能なオリフィスを通じて、装置を開放することなく、処理された材料を取り出すことができる。
【0025】
閉鎖可能なオリフィス19の代わりに又はこれに加えて、管状の実験室試験容器1は、膜又は薄いフィルムのような穿刺可能又は貫通可能なエレメントによってシールされた再閉鎖不能なオリフィス(図2における20)を有してよい。再閉鎖不能なオリフィスは、処理後にピペットのような工具によってシールを貫通することによって開放されてよいが、再び閉鎖することはできない。
【0026】
試料又は容器1のさらなる使用又はさらなる処理に応じて、再閉鎖不能なオリフィス20は容器1のあらゆる場所に配置されてよい。好適には、再閉鎖不能なオリフィス20は、容器1の底部10に配置されている。
【0027】
本発明の破砕プロセスの間、搬送/撹拌エレメントの機械的な力により試料は加熱される。温度上昇は容器内の圧力上昇につながり、この圧力上昇は通気手段によって好適には平衡させられる。発明の別の実施形態において、実験室試験容器1及び/又は撹拌エレメント11は、圧力補償のための通気手段を有する。
【0028】
通気手段は、例えば、ガス透過性膜、又はバルーン状物体のようなガス不透過性の圧力補償のための手段であることができる。
【0029】
この実施形態の第1の態様において、閉鎖可能なオリフィス19が通気手段として使用される。これは、装置の内部から周囲雰囲気へあらゆる圧力を排出するために、本発明の処理中に、閉鎖可能なオリフィス19を単に開放させることによって達成することができる。閉鎖可能なオリフィス19は、この目的のためにガスに対して透過性の膜又はふるいが装備されていてよい。閉鎖可能なオリフィス19に、バルーン状物体のようなガス不透過性の圧力補償のための手段を装備することもさらに可能である。
【0030】
この実施形態の第2の態様において、閉鎖不能なオリフィス20を、穿孔可能/貫通可能でかつガス透過性の膜によってシールすることによって、閉鎖不能なオリフィス20が通気手段として使用される。
【0031】
この実施形態の第3の態様において、通気手段は、例えば蓋2とは反対側に面した案内管13の端部において、撹拌エレメント11に一体化されたガス透過性エレメントによって提供される。例えば、通気手段は、ガス透過性材料から形成されたキャップ14の形状で提供することができる。択一的に、撹拌エレメント11、案内管13又はキャップ14は、バルーン状の物体のようなガス不透過性の圧力補償のための手段を有することができる。ガス透過性材料は、好適には無菌条件における、PTFE又はポリアミドから形成された膜の形態であってよい。
【0032】
装置の閉鎖する蓋2は、スクリューキャップであってよいが、スナップ又はバヨネット閉鎖機構を備えた蓋が用いられてもよい。スクリューキャップ蓋2は、容器1の適切な雄ねじ山18に嵌合する雌ねじ山17を有する。ねじ山及び/又は蓋2及び/又は管状の実験室試験容器1は、好適には、装置がしっかりと閉鎖され、さらなるトルクが不要であることを使用者に示すために、タブ位置又はスナップイン箇所を有する。
【0033】
装置の破砕又は均質化効率は、管状の実験室試験容器1の内面に少なくとも1つのフィン又はリッジ(図1における21)を提供することによってさらに高めることができる。フィン又はリッジ21は、撹拌エレメント11の上方の領域において、すなわち処理の間に試料材料が流れる領域において、開口3から容器1の底部10に向かって延びている。フィン又はリッジ21は、撹拌エレメント11と干渉することなくできるだけ搬送エレメント8の近くに配置されており、例えば撹拌エレメント11のキャップ14の高さまで延びている。このような構造は、処理中の試料のための渦破壊装置、流れ破壊装置又は逸らせ板として作用する。
【0034】
発明の別の実施形態において、容器1の内面には少なくとも部分的に、疎水性コーティングが設けられている。疎水性コーティングは、処理後に、容器を空にする際に試料が最小限の損失で回収されることを保証する。疎水性表面は、容器を疎水性材料から製造するか、又は容器の内面の少なくとも一部を疎水性材料で被覆することによって得ることができる。適切な疎水性材料は、PTFEのようなフッ素化ポリマである。
【0035】
容器は、1〜5cmの内径と、20〜200mlの容積とを有する管状であってよい。
【0036】
本発明の装置は、好適には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はPTFEのようなポリマから製造されている。容器、蓋、撹拌装置、処理及び搬送装置は、同じ材料又は異なる材料から製造することができる。シール及び膜は、シリコーン又はフッ化ゴムから製造されている。
【0037】
図面及び好適な実施形態の詳細な説明
図1及び図2は、逆さまの位置における、すなわち、実験室試験容器1の底部10が上に、実験室試験容器1の開口3を閉鎖する蓋2が下になった、実験室試験容器1を備えた本発明の装置を示している。閉鎖する蓋2は、容器1の雄ねじ山18に嵌合した雌ねじ山17を備えたスクリューキャップとして示されている。
【0038】
処理ツール5は、回転防止形式で蓋2に取り付けられており、好適には蓋と一体に形成されている。処理ツール5は、互いに関して、1つ又は2つ以上の軸方向のずれた平面に配置された、多数の歯4a,4b,4cを有している。図1から図3は、例として、処理ツール5において軸方向で相前後して配置されかつ円錐形のホイールの形態を有する、歯の3つのグループを示している。歯のグループ数は、特に限定されず、1〜10であることができる。歯4aの最も下側に配置された列は、内側切断ブレード7を歯の列の間に配置することができるように、下から2番目の列4bからより長い距離を有することができる。
【0039】
処理ツール5は、撹拌エレメント11の案内管13のための滑り支承部として働く中央の穴を有する。蓋に面した端部において、この支承穴には、内方に向いたリブを設けることができ、このリブは、案内管13を軸方向に案内するために、案内管13における取り囲む溝に係合する。処理ツール5における穴の上端部には液圧シール12が設けられている。
【0040】
蓋2と反対側に面した案内管13の端部は、例えば円錐形に延びた先端又は傾斜した平面を有するキャップ14の形状で設けることができ、これにより、処理中に、円錐形に延びた先端又は傾斜した平面に当接する材料を、自動的に滑らせ、歯4a,4b,4cへ戻るように案内する。
【0041】
キャップ14は、例えばピペットによって意図的に貫通可能ではないように製造することができる。この実施形態において、キャップ14と、先端と、案内管13とは、好適には、例えば射出成形のような一成分方法において、同じ材料から製造されている及び/又は互いに一体に形成されている。
【0042】
発明の別の実施形態において、キャップ14は、ピペットのような適当なツールによって貫通することができるように形成されている。この目的のために、キャップ14又はキャップの先端に、所定の破壊箇所を設けることができるか、又はキャップ又はキャップの先端が、シリコンのような弾性材料、又はPTFEから形成されたガス透過性膜から形成されていてよい。
【0043】
撹拌エレメント11の周縁部に、搬送エレメント8が螺旋状に延びている。搬送エレメント8の内面は、歯4a,4b,4cの冠状部上にすり合わせ及び切断形式で案内される。これに加えて、撹拌エレメント11が処理ツール5に対して回転させられると、搬送エレメント8は、切断ブレード上を通過し、破砕される物質をさらにすり合わせかつ切断する。実験室容器の近傍における、処理ツール5の周縁部(最も外側の位置)において、少なくとも1つの外側切断ブレード6が配置されている。外側切断ブレード6は、撹拌機11の回転によって実験室容器に対して処理中に移動させられる生物学的試料が、破砕プロセスを回避するのではなく、さらなる破砕を受けることを保証する。破砕プロセスを高めるために、搬送エレメント8は、外側切断ブレード6に嵌合する外側スロット6aを有する。破砕される物質は、撹拌エレメント11の回転中に搬送エレメント8の切断ブレードとスロットとによって、次第により小さな細片に切断される。
【0044】
本発明の好適な実施形態において、処理ツールは、外側切断ブレード6に加えて、少なくとも1つの内側切断ブレード7を有する。搬送エレメント8には、好適には、内側切断ブレード7に嵌合する1つ又は2つ以上の内側スロット7aが設けられている。内側切断ブレード7及び外側切断ブレード6の組合せは、試料の粗い破砕を許容する。
【0045】
処理ツールは、歯の複数のグループを有するので、歯の2つのグループの間、例えば4aと4bとの間に複数の内側切断ブレード7を配置することができる。図面は、歯の3つのグループを備えた発明の好適な実施形態を示しており、少なくとも1つの内側切断ブレード7の1つのセットが、歯の外側及び中間のグループの間に配置されており、少なくとも1つの外側切断ブレード6の1つのセットが、処理ツール5の周縁(最も外側の位置)に配置されている。搬送エレメント8には、撹拌エレメント11の回転中に切断ブレードに嵌合する1つ又は2つ以上の内側スロット7a及び外側スロット6aが設けられている。
【0046】
案内管13、及び/又は搬送エレメント8を備えた撹拌エレメント11は、外部駆動モータ(図1から図3には示されていない)によって回転させられ、この外部駆動モータの駆動軸は、蓋2を介して案内管13に係合する。案内管13の形状的な嵌め合いによる連動は、案内管の穴に配置された切欠16によって保証される。
【0047】
ふるいを備えた発明の実施形態が図1及び図2に示されており、この場合、ふるい9は、実験室試験容器1の下端部に挿入されている。
【0048】
実験室試験容器1の基部10は、平坦であるか又は突出させられているか、又は図1に示されているように、溜めとして形成されている。基部10には、図1に示したように閉鎖可能なオリフィス19が設けられているか、又は図2に示したように再閉鎖不能なオリフィス20が設けられている。
【0049】
搬送エレメント8の有効性を高めるために、容器1のケーシングは、例えば120゜の角度にわたって狭まっており、この場合、狭まったセクションの上端部は、容器1における弦を形成している。この実施形態は図2に示されている。
【実施例】
【0050】
マウスの肺及び心臓の組織が、本発明による装置(Ex1−Ex5、図1及び図2に示されている)と、国際公開第2006/081694号に開示された均質化及び混合チャンバ(C1−C3、本発明によるものではない)とを用いて均質化された。
【0051】
この目的のために、組織は、まずPBSバッファにおいて洗浄され、次いで、2.5mlPBSバッファを用いて装置に導入された。両者には、0.6×0.6mmのメッシュサイズを有する貫通可能なふるいが装備されているが、オリフィス及び通気手段を備えない。装置は、gentleMacs(c)(Miltenyl Biotec GmbH)ハードウェアによって係合され、組み込まれたgentleMacs(c)プログラム/プロトコル"心臓_01"(H_01)及び"肺_01"(L_01)又は装置の回転速度のセットアップを用いて運転された。破砕の後、材料はふるいにかけられ、ピペットによってふるいを貫通することによって容器から取り出された。
【0052】
得られた材料は、視覚的な評価(VA)によって、1から4までの範囲(4が最良、1が最悪)で評価された。mm単位の平均粒子サイズ(APS)は、公知の粒子サイズを有する標準粒子との、処理された組織の視覚的な比較によって決定された。処理の前後で、ふるいは装置から取り外され、乾燥され、計量され、これにより、未処理の試料、すなわちふるいを通過するために十分に小さな粒子サイズに処理されなかった試料材料を計算する。ふるいに残っている未処理の材料は、"残留物"として、mg単位で、又は元の試料重量に対する%で計算される。
【0053】
マウスから得た心臓及び肺の組織についての結果が以下の表1及び表2に示されている。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
国際公開第2006/081694号に開示された混合チャンバを用いて破砕された組織(C1−C3)は、より大きな平均粒子サイズを示しており、その結果、ふるいによって捕捉された著しくより多くの残留物を生じた。従って、得られる収率がかなり低く、視覚的な評価は悪い。
【0057】
本発明による装置によって破砕された組織は、著しくより小さな平均粒子サイズを有しており、その結果、ふるいにおけるより少ない残留物損失と、細胞の著しくより高い収率とを生じる。視覚的な評価は全ての実験において良好であり、均質な破砕製品を示す。
【符号の説明】
【0058】
1 実験室試験容器、 2 蓋、 3 開放端部、 4a,4b,4c 歯、 5 処理ツール、 6 外側切断ブレード、 6a スロット、 7 内側切断ブレード、 7a スロット、 9 ふるい、 10 底部、 11 撹拌エレメント、 12 シール、 13 案内管、 14 キャップ、 16 係合部分、 19 閉鎖可能なオリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料を破砕又は均質化するための装置であって、
開放した第1の端部(3)と、底部(10)によって閉鎖された第2の端部とを有する管状の実験室試験容器(1)と、
実験室試験容器(1)の開放した端部(3)に結合された、実験室試験容器(1)のための閉鎖する蓋(2)と、
該閉鎖する蓋(2)に配置された処理ツール(5)とが設けられており、該処理ツール(5)が、複数の歯(4a,4b,4c)と、案内管(13)を有する撹拌エレメント(11)とを備え、前記案内管(13)が、蓋(2)に設けられた中央の穴を介して回転可能に取り付けられており、かつ駆動モータによって係合される係合部分(16)を有する形式のものにおいて、
処理ツール(5)の周縁に配置された少なくとも1つの外側切断ブレード(6)が設けられており、
案内管(13)に配置された搬送エレメント(8)が設けられており、該搬送エレメントが、外側切断ブレード(6)上に螺旋形に外方へ延びており、前記搬送エレメントに、外側切断ブレード(6)に嵌合するスロット(6a)が設けられていることを特徴とする、生物学的試料を破砕又は均質化するための装置。
【請求項2】
前記撹拌エレメント(11)が、少なくとも1つの内側切断ブレード(7)を有しており、前記搬送エレメント(8)に、内側切断ブレード(7)に嵌合するスロット(7a)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
圧力補償のための通気手段(14)が設けられている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記撹拌エレメント(11)が、該撹拌エレメント(11)と同じ材料から製造された上部キャップ(14)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記閉鎖する蓋(2)側のスペースから底部側のスペースが分離されるように、底部(10)から距離を置いて実験室試験容器(1)に配置されたふるい(9)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ふるいが、穿孔可能又は貫通可能であるか又はピペットの先端によって穿孔可能又は貫通可能な領域を有する、請求項5記載の装置。
【請求項7】
管状の実験室試験容器(1)が、閉鎖可能なオリフィス(19)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
管状の実験室試験容器(1)が、再閉鎖不能なオリフィス(20)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記歯(4a,4b,4c)が、搬送エレメント(8)に対するスペーサエレメントを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記搬送エレメント(8)が、歯(4a,4b,4c)に対するスペーサエレメントを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記蓋(2)及び/又は管状の実験室試験容器(1)が、タブ位置又はスナップイン箇所を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
管状の実験室試験容器(1)が、内側に、少なくとも1つのフィン又はリッジ(21)を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の装置において生物学的試料を抽出、破砕、混合又は均質化する方法において、撹拌エレメント(11)を閉鎖する蓋(2)及び処理ツール(5)に対して回転させ、これにより、搬送エレメント(8)を、歯(4a,4b,4c)の少なくとも1つのグループ及び少なくとも1つの外側切断ブレード(6)上に、搬送エレメント(8)のスロット(6a)を介して、すり合わせ及び切断形式で案内することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置において生物学的試料を抽出、破砕、混合又は均質化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11603(P2013−11603A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144069(P2012−144069)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(312000044)ミルテニー バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec GmbH
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Ebert−Strasse 68,D−51429 Bergisch Gladbach,Germany
【Fターム(参考)】