組織ドレッシングキット
患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング材料と、前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するための剥離溶媒とを含むキット。患者の組織を治療する方法であって、前記患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するために前記組織ドレッシング材料へ酸性剥離溶媒を適用する工程とを含む方法。患者の組織を治療する方法であって、前記患者の組織と接触して液体組織ドレッシング材料を適用する工程と、前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するために前記組織ドレッシング材料へ剥離溶媒を適用する工程とを含む方法。患者の組織を治療する方法であって、前記患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、前記水溶性組織ドレッシング材料を中性pHでは非水溶性である形態に転換させる工程とを含む方法。および、ポリマー塩およびグリセロールを含む固体材料であって、前記グリセロール含有量は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するために、前記ポリマー塩含有量の少なくとも10重量%である固体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング(dressing;被覆)材料を含むキットに関する。本発明はさらに、患者の組織を治療する方法であって、組織ドレッシング材料が該患者の組織と接触して適用される方法に関する。また本発明は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するための固体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖類であるキトサンは、キチンの少なくとも部分的にN−脱アセチル化された誘導体である。キチンは、節足動物の外骨格、ゲル、甲殻類および昆虫類の角皮内で広く見いだすことができる。キチンは、通常はそのような天然源に由来する。キトサンは、一般にはキチンの加水分解によって合成的に作製されるが、例えば、その中で発生する所定の真菌類から自然に直接的に引き出すこともできる。希酸中でのキチンおよびキトサンの相違する溶解度は、一般にこれら2つの多糖類を識別するために使用される。可溶性形にあるキトサンは、加工処理条件、分子量、および溶媒特性などのパラメーターに依存して0%から上限である約60%の間のアセチル化度(DA)を有する可能性がある。キトサンは、酸性水性媒体中で可溶性であるが、6.3より高いpHでは沈降する。
【0003】
キチンおよびキトサンはどちらも、生体適合性、生分解性およびグリコサミノグリカン類との構造類似性のために、生物医学的用途にとって有望なポリマーである。キチンおよびキトサンの潜在的用途に関する包括的概説については、例えばShigemasa and Minami,「Applications of chitin and chitosan for biomaterials」,Biotech.Genetic.Eng.Rev.1996,13,383;Kumar,「A review of chitin and chitosan applications」,React.Funct.Polym.2000,46(1),1;およびSingh and Ray,「Biomedical applications of chitin,chitosan and their derivatives」,J.Macromol.Sci.2000,C40(1),69を参照されたい。
【0004】
キチンおよびキトサンは、創傷治癒用途において特に有望であると考えられ、この主題に関する初期の科学報告書は、Prudden et.al.が「The discovery of a potent pure chemical wound−healing accelerator」,Am.J.Surg.1970,119,560においてヒトの創傷にキチン粉末を適用して成功したことについて報告した、1970年にさかのぼる。創傷治癒を加速させる際の主要な要素は、新鮮創および回復期創傷において豊富に利用できるリゾチームによる酵素分解に起因して、キチンから遊離されるN−アセチル−D−グルコサミンの存在にあると報告された(D−グルコサミンとは著しく相違する)。
【0005】
ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン)、すなわちキチンの創傷治癒促進剤としての使用は、米国特許第3,632,754号明細書に開示されている。米国特許第4,532,134号明細書は、キトサンの溶液、粉末、フィルム、およびマットの創傷への適用について開示している。この明細書で主張された方法は、キトサンが42〜100%脱アセチル化されることを要求している。78〜92%脱アセチル化キトサンを使用した動物実験は、これらの材料がイヌの創傷に適用された場合に許容できる結果を示すことを開示しているが、この材料がラットの創傷を被覆するために使用された場合には初期創傷治癒の妨害が観察されている。
【0006】
米国特許第5,902,798号明細書および米国特許出願第2001/0056079号明細書は、25%未満のアセチル化度が要求されている。16%アセチル化キトサンを適用する実験では、ヒト皮膚を使用したインビトロモデルにおいて、キトサン/ヘパリン材料に比較して細胞増殖および創傷治癒の刺激が劣ることが見いだされた。
【0007】
英国特許第2358354(B)号明細書は、12%〜30%のアセチル化度を備える少なくとも80重量%のキトサンを含む可撓性ポリマーフィルムについて教示している。治療されていない創傷と比較して、創傷治癒速度がわずかに速いことが見いだされた。エピクロロヒドリン架橋剤またはシリコーンコーティングの使用を必要とする比較的弱い機械的特性は、この先行技術材料の不利点となる可能性がある。この文献は、創傷の治癒後に食塩溶液でフィルムを洗い落とすことも提案している。
【0008】
Azad et.al.,「Chitosan membranes as a wound−healing dressing:Characterization and clinical application」,J.Biomed.Mater.Res.2004,69B,216は、フィルムおよびメッシュ(有孔フィルム)を作製するための25%アセチル化キトサンの使用を開示している。この著者らは、キトサンフィルムが血餅形成の結果としての皮膚移植術を受けた患者においてフィルムの下方での創傷治癒傷害を誘発するが、メッシュの使用は血液のより効率的な除去をもたらし、良好な上皮形成を伴って瘢痕形成を伴わないより迅速な治癒を生じさせることを見いだした。
【0009】
米国特許第7,482,503号明細書では、キトサン酢酸塩フォームが、大量出血のための出血制御創傷ドレッシング材としての使用について記載されている。キトサンは少なくとも70%脱アセチル化されることが要求され、実施例では85%〜93%の脱アセチル化度が使用されている。
【0010】
米国特許出願第2005/042265(A1)号明細書は、皮膚修復のためのヒドロゲルを開示し、該ヒドロゲルは最高5%キトサンを含有する。キトサンのアセチル化度は、40%以下であることが要求され、特に2%〜6%である。最後に、国際特許出願公開第2008/128567(A1)号パンフレットは、少なくとも部分的にキトサンから作製された創傷ドレッシング材を含む医療製品を開示している。開示された最低アセチル化度は、3%である。
【0011】
独国特許出願第102007038125(A1)号明細書は、生体組織を接着または固定するための接着剤組成物を開示している。この組成物は、50%〜98%脱アセチル化された多糖類、例えばキトサンを含んでいる。この組成物のまた別の成分は、官能化オリゴラクトンである。これら2つの成分は、スプレー装置の別個のチャンバー内へ提供される。
【0012】
国際特許出願公開第2008/1128567号パンフレットは、希酸中での医療用具の少なくとも一部の生体内溶解を開示している。この医療用具の一部は、3%より高く25%未満のアセチル化度を備えるN−アセチルキトサンから作製されている。この用具の一部の生体内溶解は、この用具のN−アセチルキトサン部分と接触する水性媒体のpHを6.0以下の数値に調整することによって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、患者の組織の治療を改良するためのキットであって、該キットは該患者の組織と接触して適用される組織ドレッシング材料を含むキットを提供することである。本発明はさらに、患者の組織を治療するための改良された方法を提供することを目的とする。なおさらに、本発明は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するための新規な材料を提供することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、この課題は、患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング材料と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するための剥離溶媒とを含むキットを提供することによって解決される。
【0015】
この課題は、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するために該組織ドレッシング材料へ酸性剥離溶媒を適用する工程とを含む方法によっても解決される。この課題はさらに、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して液体組織ドレッシング材料を適用する工程と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するために該組織ドレッシング材料へ剥離溶媒を適用する工程とを含む方法によって解決される。さらに、この課題は、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、該水溶性組織ドレッシング材料を中性pHでは非水溶性である形態に転換させる工程とを含む方法によって解決される。最後に、この課題は、ポリマー塩およびグリセロールを含む固体材料を提供することによって解決されるが、該グリセロール含量は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するためには、該ポリマー塩含量の少なくとも10重量%である。
【0016】
本発明の文脈では、「剥離溶媒」は、固体もしくはゲル状状態にある場合に組織ドレッシング材料へ適用できる、および該組織ドレッシング材料の該組織からの剥離を、好ましくは該組織ドレッシング材料を少なくとも部分的に溶解させる、および/または膨潤させる工程によって促進できる液体である。好ましい剥離溶媒は、該組織ドレッシング材料の該組織への粘着を減少させることができる。したがって、剥離溶媒を用いると、該組織が該組織ドレッシング材料の除去中に損傷することを回避することができ、特に該組織ドレッシング材料が除去されるときに、該組織ドレッシング材料へ粘着するその下方にある組織の部分が引き剥がされることを回避することができる。その他の事例では、これは該組織ドレッシング材料が創傷ドレッシング材料として創傷に適用される場合に、創傷組織が機械的応力に対して極めて感受性であるので、大きな利点となる可能性がある。そのため本発明を用いると、除去される創傷ドレッシング材料への粘着に起因する再生中の組織の刺激または損傷を回避することができる。
【0017】
ポリマーと関連した用語「溶解する」および「溶解」は、水性環境における溶解性に起因する分子量減少を伴わない(すなわち、ポリマー鎖長の減少を伴わない)固体もしくはゲル状状態にあるポリマー形の質量損失の過程を意味することが意図されている。この用語は、ポリマーの解重合に起因する分子量減少の過程である「分解」とは区別されなければならない。有利には溶解および/または膨潤は、組織ドレッシング材料の除去を促進することができる。本発明を用いて、組織ドレッシング材料が部分的または全体的にさえ溶解可能であることを達成できる。
【0018】
本発明者らは、キット内に組織ドレッシング材料を剥離溶媒と一緒に提供することが、患者が事前に剥離溶媒を適用せずに組織ドレッシング材料を組織から分離しようとすることはあまりないという意味において、コンプライアンスを相当大きく改良できることを見いだした。本発明によるキットは、使用者がまた別の、適合しない、または場合により有害でさえある溶媒を適用することも防ぐことができる。
【0019】
本発明の文脈における用語「水溶性」は、中性pHで水溶性である組織ドレッシング材料の状態を意味する。1つの態様では、本発明は、一部の液体組織ドレッシング材料、例えばキトサン溶液、ならびに一部の水溶性であるが固体もしくはゲル状組織ドレッシング材料、例えばキトサン塩は、患者の組織に適用されると、それらが酸性液体溶媒中でのみ可溶性である固体もしくはゲル状状態に転換できるという本発明者らの所見を活用する。この転換は、例えば、組織ドレッシング材料が空気と接触すると、組織ドレッシング材料の構成成分の蒸発に起因して発生することができる。この転換は、組織ドレッシング材料と体液および/または組織自体との相互作用の結果である場合もある。例えば、血液の比較的高いpHおよび/または血液中に存在するタンパク質の組織ドレッシング材料への付着がこの転換を誘発することができる。または、もしくは追加して、転換は、転換媒体、例えば水性アルカリ性溶液を組織ドレッシング材料へ適用することによって達成できる。有利には、転換後に、組織ドレッシング材料は正常条件下では、例えば組織が水道水(中性pH)下で洗浄される場合、または石鹸(アルカリ性)が適用される場合は定位置に残留し、剥離溶媒の適用後にのみ剥離されることを達成できる。さらに、転換の結果として、組織ドレッシング材の組織への接着を減少させ、剥離溶媒を用いた後の除去を促進することができる。さらに、組織ドレッシング材料の吸水(water uptake)能力は、転換の結果として減少させることができ、これは所定の用途では望ましい。
【0020】
本発明者らは、組織治療のための固体材料中のグリセロールの存在が、該材料が水溶性状態から酸性液体溶媒中でのみ可溶性である状態への転換を加速させることができることを見いだした。例えば、ポリマー塩としての天然キトサン塩の場合には、転換はおよそ1カ月からたった1週間へ加速させることができる。本発明を特定の理論に限定せずに、本発明者らは、この加速の原因がグリセロールがポリマー塩の結晶構造を崩壊させる作用にある可能性があると考えている。有利には、より迅速な転換は、転換の有益な効果(すなわち、例えば、転換後に組織ドレッシング材料は組織が水道水下で洗浄された場合は定位置に留まること)がより早期に始まることを可能にする。
【0021】
本発明によるキット、方法、および固体材料は、有利には患者の組織の限局性抗菌治療のために使用できる。それにより、組織ドレッシング材料が適用される、したがって抗生物質活性が発生する部位は、抗生物質活性の局所的存在のみを達成するために十分に制御できることを活用できる。
【0022】
本発明によるキット、方法および固体材料は、有利には急性創傷、慢性創傷、および火傷または他の種類の創傷を治療するために使用できる。本発明によるキット、方法および固体材料は、皮膚病、例えばスポーツ選手の食物疾患および乾癬によって影響を受ける組織を治療するためにも使用できる。本発明によるキットの組織ドレッシング材料および方法は、創傷被覆材、例えばバンドエイド類、ガーゼ類、フィルム材およびフォーム材において、ならびにサポートエイド類、例えば包帯類、サポートタイツ類およびギプス包帯類中に適用できる。本発明は、有利には一般に切り傷や擦過傷、鼻血、重度の出血創傷、ならびに外傷および内傷を治療するために使用できる。したがって、本発明は、手術が患者に実施される場合に役立つことができる。本発明はまた、座瘡、剃刀負けおよび虫刺されを治療するため、ならびに化粧用途、例えばフェイスマスクおよびピーリング剤において有利には適用できる。好ましくは、組織ドレッシング材料は、治療対象の組織だけではなく、治療対象の組織を取り囲む組織にも接触する。
【0023】
本発明は、好ましくは外傷に対して使用されるが、本発明は内傷にも適用できる。好ましい方法では、本発明は、手術中の出血を制御するための止血剤として体内で使用される、または本発明は内出血を誘発する傷害または疾患の治療において適用される。また別の好ましい方法では、本発明は、ポリマー抗生物質としての脱アセチル化天然キトサンの潜在能力を活用することによって、感染症を予防または制限するために体内で使用される。また別の好ましい方法では、本発明によるキットおよび方法の創傷ドレッシング材料は、到達もしくは治療するのが困難である身体の領域、例えば開口部、生殖器部、または創傷治癒が大気への限られた曝露に起因して遅延させられる可能性がある身体部分において使用される。特に好ましい方法では、創傷ドレッシング材料は、異物材料および従来型創傷ドレッシング材料の適用に感受性である領域、例えば粘膜に適用される。この材料は、創傷内または創傷上に適用することができる。本発明の文脈における患者は、ヒトまたは動物であり得る。
【0024】
本発明の好ましい実施形態
単独または組み合わせて適用できる本発明の好ましい特徴については、従属請求項および以下の説明において考察する。
【0025】
好ましくは、組織ドレッシング材料を組織から除去するための剥離溶媒は、水性剥離溶媒である。好ましい剥離溶媒には、蒸留水、イオン性化合物の水溶液、例えば塩化ナトリウム水溶液、緩衝液、例えば酢酸/酢酸塩緩衝液、ならびに非イオン性化合物の水溶液、例えばグルコース水溶液が含まれる。有利には、溶媒としての水は、皮膚にとって多数の有機溶媒よりも低刺激性である。原則としては、本発明による水性剥離溶媒は水に加えて水以外の1つ以上の共溶媒、例えば有機共溶媒、例えばイソプロパノールもしくはまた別のアルコールを含むことができるが、好ましい剥離溶媒は、アルコール類、エステル類、アルカン類、ハロゲン化溶媒、アミン類、アミド類を含む有機溶媒を含んでいない。しかし、水性剥離溶媒は、有機酸を含有することが多い。有機酸は、本発明の文脈においては有機溶媒とは見なされない。
【0026】
組織ドレッシング材料を組織から除去するための剥離溶媒は、特に溶解によって除去されなければならない場合は、好ましくは酸性である。本発明のこの実施形態は、少なくとも組織ドレッシング材料の特定の状態では、組織ドレッシング材料の溶解性がpH依存性であり得るという事実を活用する。したがって有利には、剥離溶媒のpHは、組織ドレッシング材料が組織ドレッシング材料を組織から剥離させるために溶解性である範囲から選択することができる。剥離溶媒の好ましいpHは、7より低い、より好ましくは6.5より低い、より好ましくは6.3より低い。有利には、6.3より低いpHでは、好ましい創傷ドレッシング材料の1つである天然キトサンの塩基形は、水性媒体中で溶解性である。より好ましくは、剥離溶媒のpHは、6より低い、より好ましくは5.5より低い、より好ましくは5より低い。剥離溶媒のpHは、好ましくは3.5より高い。それにより、有利には、剥離溶媒の高度の酸性度に起因する組織の刺激は回避することができる。より好ましくは、剥離溶媒のpHは、4より高い、より好ましくは4.5より高い。
【0027】
好ましい剥離溶媒は、界面活性剤、例えばポリソルベート、例えばTweenを含んでいる。または、もしくは加えて、好ましい剥離溶媒は、置換もしくは非置換ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエステルを含むことができる。そのような添加物の存在は、固体、ゲル状または固化液組織ドレッシング材料の剥離を相当大きく促進できる。
【0028】
キット内に提供される剥離溶媒の量は、キット内に提供された水またはキトサン以外の組織ドレッシング材料の構成成分の量の、少なくとも5重量倍、より好ましくは少なくとも50重量倍である。十分量の剥離溶媒を提供することによって、組織ドレッシング材料溶液のpHが所定閾値を下回ることを回避できる。適用するために、剥離溶媒は、スプレーもしくはブラシで塗布することができる、またはスポンジ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼによって適用できる。したがって、好ましいキットは、剥離溶媒を適用するためのスポンジ、ブラシ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼを含有している。剥離溶媒は、例えば密封ボトルもしくはディスポーザブルピペットに入れて、または剥離溶媒を浸漬させたガーゼ、スポンジもしくはゲルによって提供することができる。剥離溶媒はまた、スプレー装置内で提供することができる。好ましいスプレー装置は、剥離溶媒を貯蔵するための容器を含んでいる。このスプレー装置はまた、剥離溶媒を吐出するための加圧ガスを含むことができる。
【0029】
以下に記載する組織ドレッシング材料の好ましい調製物、特性および特徴に関連してそれらが固体、ゲル状または液体組織ドレッシング材料のいずれに関しているかが規定されない場合は、それらをそのような材料のいずれにも同等に適用できると想定すべきである。好ましい組織ドレッシング材料は、好ましくは多糖類、例えばキトサン、例えば天然キトサンを含む、またはそれからなるポリマーもしくはコポリマーである。
【0030】
本発明の文脈における用語「天然キトサン」は、ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)コポリマーまたはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーである規定された化学物質キトサンを意味する。任意の架橋またはさもなければ化学修飾キトサンは、天然キトサンとは相違する特性を有するキトサン誘導体であると考えられる。本発明の文脈における用語「天然キトサン」は、キトサン塩基、および溶解した、または溶解していないキトサン塩の形態にあるキトサンの両方を含む。本発明の文脈において一般に「キトサン」について言及される場合、これは天然キトサン、または架橋および/またはさもなければ修飾されたポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)コポリマーまたはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーの任意の誘導体の任意の形態、塩または塩基であり得る。好ましいキトサンは、天然キトサンである。天然キトサンの利点の1つは、高度の生体適合性および生物活性である。好ましい組織ドレッシング材料は、本質的に非分解性であり得るが、これは例えば以下に規定する脱アセチル化キトサンと同様である、または部分的もしくは完全に分解性、例えば生分解性であり得る。
【0031】
好ましい組織ドレッシング材料は、抗菌特性を有する。それにより、有利には、局所的抗菌治療を達成することができるので、全身性抗菌活性、すなわちそのような治療が必要とされない、および/または所望ではない患者の身体の領域の抗菌治療を回避することができる。したがって本発明は、副作用を減少させ、患者の迅速な回復に寄与することができる。抗菌特性を備える適切な組織ドレッシング材料は、キトサン、特に天然キトサンである。
【0032】
有利には、組織ドレッシング材料または組織ドレッシング材料の構成成分としてキトサンを用いると、本質的に毒性化合物を含んでいない組織ドレッシング材料を提供することができる。本発明は、全身的活性ではなく局所的活性のみを備える天然ポリマー抗生物質としてのキトサン、特に天然キトサンの抗生物質としての性質を活用することによって、創傷感染症のリスクを減少させることができる。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、追加の保存料を含まない。本発明者らは、キトサンの抗菌特性が製品の満足できる貯蔵寿命を提供するために十分であることを見いだした。これは液体組織ドレッシング材において特に有利であるが、それは市場で入手できる多数の液体組織ドレッシング材は、毒性作用を有する可能性があり、組織刺激またはアレルギー反応を誘発する可能性がある保存料を含有するからである。
【0033】
好ましいキトサンは、40%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下のアセチル化度(DA)を有する。好ましくは、キトサンは脱アセチル化されている。好ましくは、これは本組織ドレッシング材料の唯一のキトサン成分である。本発明の文脈における用語「脱アセチル化キトサン」は、キトサンのDAが2.5%未満であることを意味する。本発明のこの実施形態は、創傷治癒の有意に加速された速度が、脱アセチル化された、すなわち本質的にN−アセチル−D−グルコサミンサブユニットを含まない天然キトサン材料を適用することによって達成できるという本発明者らの所見を活用している。この所見は、例えば上記の米国特許第3,632,754号明細書に記載されたように、創傷治癒用途におけるD−グルコサミンのN−アセチル化形に起因する重要性を考えると驚くべきことである。さらに、例えば、Chitin and chitosan,Amsterdam 1989,653の中のIzume et.al.,「A novel cell culture matrix composed of chitosan and collagen complex」において、極めて低いアセチル化度のキトサンは、極度に高い細胞接着に起因して細胞増殖を阻害するので、むしろ細胞増殖抑制特性を有する可能性があることが提言されている。
【0034】
DAは、例えばLavertu et al.,「A validated 1H NMR method for the determination of the degree of deacetylation of chitosan」,J.Pharm.Biomed.Anal.2003,32,1149において開示されているように、1H NMR分光法によって得ることができる。本発明の文脈における「脱アセチル化天然キトサン」は、上記の規定にしたがって天然および脱アセチル化の両方であるキトサンを意味する。本発明による好ましい組織ドレッシング材料では、脱アセチル化キトサンまたは脱アセチル化天然キトサンのDAは、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。有利には、そのような極めて低いアセチル化度は、本発明の創傷治癒特性をさらに改良することができる。さらに、生分解をいっそう阻害できるので、組織ドレッシング材料の組織内方成長および過度の粘着が回避される。さらに、脱アセチル化天然キトサンの低DAによって、本組織ドレッシング材料は、組織内方成長および増殖中の組織へのポリマーマトリックスの望ましくない接着を防止することに寄与できる、特に非リゾチーム生分解性形態で適用することができる。
【0035】
好ましくは、キトサン、より好ましくは天然キトサンは、本組織ドレッシング材料の主要成分である。本発明の文脈における、本組織ドレッシング材料およびキトサンの種類(例えば、一般にキトサン、脱アセチル化キトサン、天然キトサンまたは脱アセチル化天然キトサン)に関する表現「主要成分」は、各種類のキトサンが本組織ドレッシング材料の少なくとも50重量%を構成することを意味する。したがって、例えば本組織ドレッシング材料が組織に適用される固体またはゲル状フィルムとして提供される場合、このフィルムは少なくとも50重量%の各種類のキトサンから構成される必要がある。液体組織ドレッシング材料の場合には、水性混合液中の水以外の成分に関する表現「主要成分」は、水以外の全構成成分の組み合わせの少なくとも50重量%が各種類のキトサンでなければならないことを意味する。さらに、以下で詳細に考察するように、本組織ドレッシング材は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成されるまた別の層を含むことができ、このまた別の層は支持体として作用する。そのような場合には、上記の定義に従うと、少なくとも50重量%までが各種類のキトサンから構成される必要があるのは第1層であって支持体層ではないことになる。本組織ドレッシング材料が組織から取り込む物質、例えば創傷からの滲出液は、本組織ドレッシング材料の成分であるとは見なされないことに留意されたい。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、本組織ドレッシング材料は、固体またはゲル、好ましくはヒドロゲルである。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、フィルムの形態にある。好ましいフィルムは、好ましくは1μm(マイクロメートル)以下、より好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下の平均粗さRaを備える平滑な表面を有する。有利には、平滑な表面は組織への機械的固着の形成を減少させ、それによりさらに本組織ドレッシング材料の除去を促進することができる。典型的には、乾燥したフィルムの厚さは0.5μm〜500μm、好ましくは10μm〜100μmである。乾燥したフィルムは、治療対象の組織、例えば創傷、および好ましくはさらに周囲組織の一部を被覆するために十分な表面積を有する。好ましくは、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、キトサン、好ましくは天然キトサンである。
【0037】
患者の組織と接触して適用されるために好ましい固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、少なくとも部分的に水溶性である。言い換えると、それが患者の組織に適用するために提供される時点で、天然pHでは水に少なくとも部分的に溶解することができる。本組織ドレッシング材料は、例えばポリマー塩、例えばキトサン塩などの多糖類の塩、例えば天然キトサンまたはキトサン誘導体の塩であり得る。本組織ドレッシング材料が組織にしっかりと接着することは、本発明のこの実施形態が達成できる利点である。それにより、本組織ドレッシング材料が組織から早期に剥離することを回避できる。本発明のこの実施形態は、有利には、キトサン塩が中性pHの水性溶媒中では可溶性であるという事実を活用する。したがって、湿潤した、または事前に湿潤させた組織は本組織ドレッシング材料の表面を液化し、組織との恒久的接触を提供する。好ましい塩は、ポリマー、好ましくはキトサン、例えば天然キトサンの無機酸、例えば塩酸、または2個〜12個の炭素原子、および1〜5の第1pKa値を有する一塩基もしくは多塩基有機酸、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの群から選択される有機酸中での溶解から誘導される塩である。本発明のまた別の実施形態では、各種類のポリマーは、キトサン塩基の形態で存在する。
【0038】
好ましい固体組織ドレッシング材料は、全体としてキトサン、好ましくは天然キトサンからなる。好ましくは、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサン塩、好ましくは天然キトサンの塩は、本固体またはゲル状組織ドレッシング材料の主要成分を構成する。より好ましくは、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の本固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサン塩、好ましくは天然キトサンの塩である。好ましい固体組織ドレッシング材料は、全体として、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサンの塩、好ましくは天然キトサンの塩からなる。
【0039】
好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、キトサン塩、例えば天然キトサン塩などのポリマー塩に加えてグリセロールを含む。グリセロール含有量は、好ましくは本固体組織ドレッシング材料のポリマー塩含有量、より好ましくはキトサン塩含有量の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%を構成する。グリセロールは、好ましくは10重量%より高い、より好ましくは15重量%より高い、より好ましくは20重量%より高い濃度で存在する。グリセロールは、好ましくは60重量%未満、より好ましくは45重量%未満、より好ましくは30重量%未満の濃度で存在する。
【0040】
本発明のまた別の好ましい実施形態では、患者の組織と接触して適用されるための本組織ドレッシング材料は、液体である。一般に、適用後には、本液体組織ドレッシング材料は、固化する、すなわち、固体またはゲル、例えばヒドロゲルに変化する。本発明の一部の実施形態では、適用された時点に液体組織ドレッシング材料中に存在した溶媒の除去、好ましくは蒸発は、固化を誘発する、または少なくとも固化に寄与する。追加して、もしくはまたは、固化は、他の因子、例えば本組織ドレッシング材料のポリマー成分の化学的または物理的架橋結合によって誘発する、または帰せることができる。
【0041】
好ましくは、本液体組織ドレッシング材料は、水性混合液、例えば分散液もしくは懸濁液、より好ましくは溶液であり、すなわち本液体組織ドレッシング材料は混合媒体もしくは溶媒として水のそれぞれを含む。さらに、本液体組織ドレッシング材料は、共溶媒、例えばイソプロパノールなどのアルコール類を含むことができる。これは、溶媒のより迅速な蒸発という利点を有することができ、これは次により迅速な固化をもたらす。
【0042】
溶質、またはより一般的には混合媒体が本液体組織ドレッシング材料の固化後に除去されると残留する混合液の構成成分は、好ましくは塩、より好ましくはポリマー塩、例えば天然キトサンの塩またはキトサン誘導体の塩などのキトサン塩を含む、より好ましくはそれからなる。好ましい塩は、ポリマー、好ましくはキトサン、例えば天然キトサンの無機酸、例えば塩酸、または2個〜12個の炭素原子、および1〜5の第1pKa値を有する一塩基もしくは多塩基有機酸、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの群から選択される有機酸中での溶解から誘導される塩である。
【0043】
好ましくは、キトサン、より好ましくは天然キトサンは、本液体組織ドレッシング材料の水以外の主要成分である。好ましくは、混合液の水以外の少なくとも70重量%の構成成分は、ポリマー、好ましくは多糖類、例えばキトサン、好ましくは天然キトサンである。特に好ましい混合液は、本質的にポリマー、好ましくは多糖類、例えばキトサン、好ましくは天然キトサン、および水のみからなる。好ましい混合液は、酸性である。ポリマーの濃度は、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0044】
適用するために、本液体組織ドレッシング材料は、好ましくは組織上に噴霧され、混合媒体または溶媒は、引き続いて蒸発されて固体またはゲル状フィルムが形成される。典型的には、フィルムの厚さは0.1μm〜50μm、好ましくは1μm〜20μmである。フィルムは、治療対象の組織、例えば創傷、および好ましくはさらに周囲組織の一部を被覆するために十分な表面積を有する。したがって、液体組織ドレッシング材料を含む本発明による好ましいキットは、患者の組織上に液体組織ドレッシング材料を噴霧するためのスプレー装置をさらに含んでいる。好ましいスプレー装置は、本液体組織ドレッシング材料を貯蔵するための容器を含んでいる。このスプレー装置はまた、液体組織ドレッシング材料を吐出するための加圧ガスを含むことができる。本組織ドレッシング材料は、本液体組織ドレッシング材料の組織への適用前または適用中に短時間混合される2つ以上の液体成分中に提供することができる。この場合には、本スプレー装置は、数個の容器を含むことができ、および/または本キットは各々が液体成分の1つを含有する数個のスプレー装置を含むことができる。または、本液体組織ドレッシング材料は、ブラシで組織上に塗布することができ、またはスポンジ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼによって適用できる。したがって、好ましいキットは、液体組織ドレッシング材料または液体ドレッシング材料の少なくとも1つの構成成分を組織に適用するためのスポンジ、ブラシ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼを含有する。
【0045】
本液体組織ドレッシング材料または固体もしくはゲル状水溶性組織ドレッシング材料が組織と接触させられた後、および液体組織ドレッシング材の場合には固化中または固化後に、好ましくは非水溶性形に、例えばキトサン塩基に転換させられる。これは、組織ドレッシング材料を大気へ曝露させることによって、または転換媒体、例えば水性アルカリ溶液を適用することによって達成できる。それにより有利には、転換後に、組織ドレッシング材料は正常条件下では、例えば組織が水道水(中性pH)下で洗浄された場合、または石鹸(アルカリ性)が適用された場合は定位置に残留し、剥離溶媒の適用後にのみ剥離されることを達成できる。引き続いて、組織ドレッシング材料が、例えば交換するため、または治療の終了時に除去されなければならない場合は、剥離溶媒は、組織ドレッシング材料の組織からの剥離を促進するために適用される。好ましいキットは、組織ドレッシング材料および剥離溶媒に加えて転換媒体をさらに含んでいる。
【0046】
好ましい組織ドレッシング材料、特に好ましい液体組織ドレッシング材料は、有機溶媒、例えばアルコール類、エステル類、アルカン類、ハロゲン化溶媒、アミン類、アミド類を含んでいない。しかし、組織ドレッシング材料は有機酸を含有することが多い。有機酸は、本発明の文脈においては有機溶媒とは見なされない。
【0047】
本発明による好ましいキットは、固体またはゲル状および液体組織ドレッシング材料の両方を含んでいる。本発明による好ましい方法では、最初に液体および引き続いて固体またはゲル状組織ドレッシング材料が患者の組織に適用される。好ましくはこの方法では、固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、液体組織ドレッシング材料が固化する前に適用される。本発明者らは、液体組織ドレッシング材料が固体またはゲル状組織ドレッシング材料の標的組織への接着を促進できることを見いだしている。これは特に、水溶性の固体またはゲル状組織ドレッシング材料について、および水溶性の固体またはゲル状組織ドレッシング材料が付着前に水で湿潤させられる代替法に比較して当てはまる。これは後者の方法が固体またはゲル状組織ドレッシング材料の望ましくない変形をもたらすことが多いことが見いだされているためであり、この変形は固体またはゲル状組織ドレッシング材料を付着させるための液体組織ドレッシング材料の適用によって回避できる。好ましくは本キットおよび方法では、本液体組織ドレッシング材料は、本明細書に記載した好ましい液体組織ドレッシング材料の1つである。同様に、本キットおよび方法では、本固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、本明細書に記載した好ましい固体またはゲル状組織ドレッシング材料の1つである。好ましくは、本液体組織ドレッシング材料および/または本固体もしくはゲル状組織ドレッシング材料および剥離溶媒は、別個の容器内に提供される。
【0048】
本発明の一部の実施形態における固体、ゲル状または液体の組織ドレッシング材料は、数種の構成成分、液体組織ドレッシング材料の場合には、好ましくは水以外の数種の構成成分を含む混合液または複合材料である。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、水およびキトサン以外の少なくとも1つの構成成分を含んでいる。1つの実施形態では、本組織ドレッシング材料は、グリセロールを含んでいる。これは、有利には本組織ドレッシング材料の水溶性から酸性媒体中でのみ可溶性である形態への転換を促進することができる。
【0049】
1つの好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、キトサン以外の少なくとも1つの医薬的活性および/または生物活性構成成分を含んでいる。適切な生物活性構成成分は、例えばタンパク質、ペプチドもしくはそれらの誘導体、核酸もしくはそれらの誘導体、薬物として活性である低分子量化合物、例えば抗生物質もしくは抗炎症薬、または先天性免疫系のアゴニストもしくはアンタゴニスト、または少なくとも1つのサブタイプの細胞の増殖を刺激もしくは分化させるための刺激因子もしくは分化成長因子、または創傷表面から抽出されなければならない所定の成分に対する親和性を備える樹脂、または装飾機能、例えば光吸収、蛍光もしくはリン光もしくは光反射粒子を備える溶解もしくは分散化合物もしくはポリマーであり得る。または、もしくは追加して、本組織ドレッシング材料は、生体細胞を含むことができる。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料(固体、ゲル状および/または液体)は、本組織ドレッシング材料が適用される組織の部位でのpHを視覚的に示すpH感受性色素を含んでいる。pHは、本創傷ドレッシング材料によって被覆される組織の状態を示すための代用物として使用できる。例えば、創傷内のpHは、創傷治癒過程中の創傷の現在の状態を示すことができることは公知である。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、6.3より低い、好ましくは6より低い、特に好ましくはほぼ5〜5.5のpHを有する。好ましいpHは、4.0より高く、より好ましくは4.5より高い。pHが健常な皮膚の表面のpHに近く、それによってそれに本組織ドレッシング材料が付着される組織への刺激または損傷が回避されることは、本発明のこの実施形態の達成可能な利点である。本発明のこの実施形態は、好ましくは本組織ドレッシング材料の外用に適用される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、8.5より低い、好ましくは8より低い、特に好ましくはほぼ7〜7.5のpHを有する。好ましいpHは、6.0より高く、より好ましくは6.5より高い。pHが健常な組織のpHと近く、それによってそれに本組織ドレッシング材料が付着される組織への刺激または損傷が回避されることは、本発明のこの実施形態が達成可能な利点である。本発明のこの実施形態は、好ましくは本組織ドレッシング材料の内用に適用される。
【0053】
好ましい組織ドレッシング材料は、1,500重量%未満、より好ましくは100重量%未満、より好ましくは80重量%未満の吸水能力を有する。それにより有利には、創傷治癒のために好都合である湿度が創傷部位に適用される組織ドレッシング材料下で維持することが達成できる。好ましくは、固体またはゲル状形にある本組織ドレッシング材料は、25%より高い、より好ましくは50%より高い吸水能力を有する。有利には、本発明のこの実施形態は、滲出液および毒性物質を吸収するために適合する。本発明の特に好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料の吸水能力は、65%〜75%である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、特に固体、ゲル状または固化形では透明である。固体またはゲル状および液体組織ドレッシング材料の両方を含むキット内では、固化後の好ましくは固体またはゲル状組織ドレッシング材料および液体組織ドレッシング材料の両方が透明である。有利には、これは医師が、特にそれが創傷組織である場合は、組織ドレッシング材料を用いて治療された組織を検査することを容易にすることができる。一部の実施形態では、この材料は、透明な固体フィルムである。他の実施形態では、この材料は、組織に適用されると透明なフィルムを形成する混合液、例えば分散液、懸濁液または溶液である。さらに、本組織ドレッシング材料がpH感受性色素を含む場合には、色素の色は組織ドレッシング材料の透明性に起因して判定することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成される少なくともまた別の層を含む組織ドレッシング材の一部であり、このまた別の層は支持体として作用する。特に、支持体は、有利には組織ドレッシング材料の組織からの早期の剥離を防止するのに役立つことができる。支持体は、好ましくは組織と接触している側とは反対側の組織ドレッシング材料の層の側に位置する。好ましくは、支持体は、組織ドレッシング材料に隣接する。本発明による支持体は、各種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンがキトサン塩基の形態で組織ドレッシング材料内に提供されている場合に特に有利であるが、それはキトサン塩基は一般に組織ドレッシング材料を含有するキトサン塩よりも弱く組織に接着するからである。支持体は、例えば、織物、フォームまたは有孔フィルムであり得る。支持体は、例えば天然材料、例えば綿または天然もしくは合成ポリマーででき得る。適切なポリマーには、生分解性ポリマー、例えばポリエステル類、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリホスファゼン類、ポリホスホエステル類、多糖類、ポリペプチド、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドが含まれる。適切なポリマーには、生体溶解性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多糖類、ポリペプチド類、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドがさらに含まれる。さらに、支持体は、非生分解性/非生体溶解性ポリマー、例えばシリコーン類、ポリウレタン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオルエチレン(polytetrafluorethylene)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリカーボネート類、ポリメタクリレート類、多糖類、ポリペプチド類、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドからなり得る。
【0056】
本発明による好ましい組織ドレッシング材は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成されるまた別の層を含み、このまた別の層は少なくとも部分的水分バリアとして作用する。言い換えると、また別の層は、本発明による組織ドレッシング材料を用いた組織の治療中の、組織ドレッシング材料内での水の蒸発を防止または少なくとも遅延させることができる。これは、組織ドレッシング材が乾燥創傷に適用された場合は特に利点である可能性がある。また別の層は、好ましくは組織と接触している側とは反対側の組織ドレッシング材料の層の側に位置する。好ましくは、また別の層は、組織ドレッシング材料に隣接する。本発明は、支持体層および少なくとも部分的水分バリアとして作用するまた別の層の両方を有する組織ドレッシング材も含んでいる。当然ながら、支持体および少なくとも部分的水分バリアの両方の機能は、単一の他の層によって果たすこともできる。また別の層は、例えば、シリコーンまたは上記に列挙したポリマー群からのまた別のポリマーもしくはポリマー組成物であり得る。典型的には、また別の層の厚さは、10μm〜1,000μm、好ましくは50μm〜500μmである。本発明の一部の実施形態では、また別の層は穿孔されている。孔の直径は、典型的には10μm〜1,500μm、好ましくは50μm〜1,000μmである。本発明の代替実施形態では、水分バリアの代わりに、液体、例えば創傷滲出液を吸収することのできる層が提供される。適切な材料は、例えば多糖類をベースとするヒドロゲルもしくはセルロース誘導体を含むヒドロコロイド、またはポリウレタンフォームであり得る。これは、組織ドレッシング材が湿潤創傷に適用された場合は特に利点である可能性がある。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、組織ドレッシング材料、好ましくは組織ドレッシング材料全体が、容器内に存在し、キットの保管寿命が切れていない限りは、組織ドレッシング材料がその液体もしくは水溶性状態からその非水溶性状態への転換を防止できる容器内に提供される。好ましくは、容器は防湿性である、より好ましくは本質的に気密性である。
【0058】
さらに、本発明の一部の実施形態では、患者の組織と接触して適用されることが企図される側の組織ドレッシング材料は、剥離性カバーシートで被覆される。カバーシートは防湿性、より好ましくは空気不透過性である。これは、組織ドレッシング材料のその液体もしくは水溶性状態からその非水溶性状態への、患者の組織へ適用される前の早期の転換を防止することに寄与できる。
【0059】
本発明による組織ドレッシング材料は、特に、以下の有利な特性の内の1つまたは組み合わせを示すことができる。その有利な特性とは、透明性、臭気の中性、それが適用される組織への接着、ガス、特に酸素の透過性、抗生物質特性が局所に限定されること、止血特性、湿度の調節、および穏当なpHでの溶解性である。本組織ドレッシング材料は、非細胞毒性、非細胞増殖抑制性および非炎症性であり得る。この材料は、治療される組織の細胞の成長を阻害する、または促進することができる。この材料は、治療される組織の内側および外側からの細菌感染から防御するためのバリアとして、および機械的保護としても作用することもできる。特に、この材料は、感染、および火傷のリスクがある表在性創傷、病変、擦傷を保護および被覆することができる。本発明による組織ドレッシング材料および組織ドレッシング材は、従来型創傷ドレッシング材が無効である、または少なくともあまり効果的ではないことが分かった場合、例えば潰瘍性組織、ウイルスによって誘発された潰瘍になる傾向がある創傷、粘膜組織、生殖器領域、および体腔の治療において保護を提供することができる。この材料は、滅菌に適している可能性がある。この材料は色素で着色することができる。
【0060】
創傷ドレッシング材料、特に本発明による液体創傷ドレッシング材料は、無菌物質、酸化防止剤および界面活性剤を含んでいなくてよいので、それにより毒性またはアレルギー反応のリスクを低下させることができる。本創傷ドレッシング材料は、4〜6、好ましくはほぼ5.5のpHを示し、皮膚にとってpH中性であり得る。本創傷ドレッシング材料は、吸入またはこの材料を注入または嚥下することによる体内適用にも適している可能性がある。
【0061】
特に、本発明による液体組織ドレッシング材料は、以下の有利な特性の内の1つまたは組み合わせを示すことができる。その有利な特性とは、水をベースとして、有機溶媒を含んでいなくてよいことや、フィルム形成特性を有することができることや、水溶液を用いて除去することができることである。本液体組織ドレッシング材料は、ヒトまたは動物の身体の到達するのが困難である領域、またはフィルムのような固体材料を適用するのが困難である領域に適用することができる。
【0062】
以下では、下記の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】購入した天然キトサンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】さらなる加水分解工程後の本質的に脱アセチル化した天然キトサンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】組織培養ポリスチレンコントロール(PS=100%)に比較した、様々なアセチル化度を備えるキトサン材料上のケラチン生成細胞の細胞生存率を示す図である。
【図4】酢酸緩衝液を浸漬させたガーゼを適用することによる、本発明による組織ドレッシング材料の制御された溶解を示す図である。
【図5】剥離溶媒の適用前(5a)、適用中(5b)、および適用後(5c)の、本発明による組織ドレッシング材料を含む組織ドレッシング材を示す図である。
【図6】本発明による液体組織ドレッシング材料が適用されている創傷を示す略図である。
【図7】本発明による固体組織ドレッシング材料が適用されている創傷を示す略図である。
【図8】本発明による非有孔創傷ドレッシング材が適用されている創傷を示す略図である。
【図9】本発明による有孔創傷ドレッシング材が適用されている創傷を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
<1.1H NMR分光法>
以下の実施例において出発材料として使用したキトサンは、Cognis(独国)から微細フレークの形態で入手した。アセチル化度(DA)は、1H NMR分光法によって決定した。図1は、この市販のキトサンから入手した1H NMRスペクトルを示している。図2は、以下で詳細に説明するように、市販製品に適用されたさらなる加水分解工程後に脱アセチル化したキトサンから入手した対応する1H NMRスペクトルを示している。どちらの場合も、キトサンは、D2O中でおよそ0.5%(w/v)のキトサン濃度にある0.25% DClの混合液中で分析した。スペクトルは、Bruker AC200分光計を使用して記録した。NMR化学シフト(δ、単位ppm)をHDO(δ=4.8ppm)のシグナルと比較した。D−グルコサミンサブユニットのH2−H6と関連付けたピーク下の積分面積をメチル基のそれと比較することによって計算したDAは、購入した天然キトサンについては14.5%、および脱アセチル化天然キトサンについては1.5%であると決定された。
【0065】
<2.低DAキトサンの合成>
さらなる加水分解のために、供給業者であるCognisから入手したキトサンフレーク50g(グラム)をガラス容器に入れ、500gの45%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。構成成分を混合するためにガラス容器をよく振とうし、100℃のオーブン内に2時間にわたり入れた。次にこれをオーブンから取り出し、500mL(ミリリットル)の蒸留水を加えた。この混合液をガラスフリットに通して濾過した。次に、濾液のpHが6.5に達するまでキトサンを蒸留水で洗浄し、100℃で4h(時間)にわたり乾燥させた。次いでこの加水分解処理を繰り返すと、1H NMR分光法で決定した1.5%のDAを有する脱アセチル化天然キトサン42gが生じた。
【0066】
<3.低DAキトサン上の細胞生存率>
ヒトHaCaTケラチン生成細胞は、0.2ng/mL(ナノグラム/ミリリットル)のrEGFおよび25μg/mL(マイクログラム/ミリリットル)のウシ下垂体抽出物を補給した無血清培地(Gibco)中で培養した。カルシウム濃度を0.02mM、およびpHを7.2〜7.4へ調整した。細胞は培地20mL当たり1×106個(細胞)の密度で播種し、10% CO2を含有する37℃の大気中でインキュベートした。細胞は週に1回継代培養し、分析には20〜25継代を使用した。
【0067】
各々1.5%、4.0%、および14.5%のDAを有するキトサンフィルムを24ウエル細胞培養プレート内に置き、ヒトHaCaTケラチン生成細胞を1cm2当たり5×104個(細胞)の密度で播種し、2日間にわたり培養した。細胞生存率は、MTSアッセイ(Promega)を使用して決定した。細胞を用いた4時間にわたるMTSインキュベーション後、490nmでの吸光度をELISAプレートリーダーによって測定し、コントロール(細胞無含有)の吸光度から差し引くと、補正吸光度が得られた。各DAの5つのサンプルについて試験した。図3aは、3つのサンプルおよびポリスチレン(PS)を用いたコントロールについての490nm(PS=100%)での相対吸光度αを示している。
【0068】
<4.組織ドレッシング材料(材料A)の溶液の調製>
このようにして得られた1.5%のDAを有する天然キトサン7.5gを、24時間にわたり緩徐に振とうすることによって、500mLの0.5%酢酸水溶液中に溶解させた。この溶液の一部分を最初にガラス繊維フィルター(孔径:約1μm)に通して濾過し、次に滅菌のために0.22μmフィルターに通すと、全体として脱アセチル化天然キトサンから本質的になる組織ドレッシング材料の溶液が生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Aと称する。
【0069】
<5.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料B)の第1実施例の調製>
上記のように調製した各144mLの脱アセチル化天然キトサンの非濾過溶液の2つの部分をサイズが24×24cm2(平方センチメートル)の2つの正方形の型内に注入し、室温で乾燥させるために無塵環境に放置した。生じたフィルムを第1の型から取り出し、10kGy(キログレイ)電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化天然キトサン酢酸塩から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Bと称する。
【0070】
<6.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料C)の第2実施例の調製>
第2の型からの乾燥フィルムを、メタノール/水(90/10(v/v))中の1.5%アンモニア溶液を含有する浴中に2時間にわたり入れた。次にこのフィルムを浴から取り出し、室温で保管することによって乾燥させた。このフィルムは10kGy電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化天然キトサン塩基から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Cと称する。
【0071】
<7.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D1)の第3実施例の調製>
上記のように調製した144mLの脱アセチル化キトサンの濾過溶液を、サイズが24×24cm2の正方形の型内に注入し、室温で乾燥させるために無塵環境に放置した。3日間の貯蔵後、生じたフィルムを型から取り外し、ポリ袋内に移し、次にこれを密封し、25kGy(キログレイ)電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D1と称する。
【0072】
<8.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D2)の第4実施例の調製>
手順をわずかに修正して、正方形の型内に注入する前に脱アセチル化キトサンの濾過溶液に4%(w/w)グリセロールを加えた。組織ドレッシング材料D1について上述したその後の処置により、全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる組織ドレッシング材料の透明フィルムが生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D2と称する。
【0073】
<9.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D3)の第5実施例の調製>
手順をさらに修正して、脱アセチル化キトサンのグリセロール含有溶液を正方形の型内に注入し、これをポリウレタン/ポリエチレン(Platilon U073 PE、Epurex、ボムリッツ/独国)からなる2層フィルムで、ポリウレタン側を上にし、ポリエチレン側を型の底部に固定させて被覆した。組織ドレッシング材料D1について上述したその後の処置により、ポリウレタン/ポリエチレンサポートフィルムに付着している全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる組織ドレッシング材料の透明フィルムが生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D3と称する。使用時には、ポリエチレン層は除去する。残留しているポリウレタン層はガス透過性である。
【0074】
<10.固体フィルム型キトサン(キトサンD4)の第6実施例の調製>
キトサンフィルムD2の調製をわずかに修正した手順で、正方形の型内に注入する前に濾過溶液に1%(w/w)グリセロールを加えた。キトサンD1について上述したその後の処置により、全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる透明フィルムが生じた。以下では、この材料をキトサンD4と称する。
【0075】
<11.より高いDAを備える固体フィルム型組織ドレッシング材料の2つの実施例の調製(材料E1およびF1)>
組織ドレッシング材料のさらに2つの実施例は、1つの場合には4%のDA(材料E1)を生じさせるために加水分解工程を短縮した、およびもう1つの場合には16%のDA(材料F1)を生じさせるために加水分解工程を完全に省略した、修飾のみを加えた材料D1を生じさせる手順によって製造した。
【0076】
<12.組織ドレッシング材料Cの吸水>
上記の実施例に記載したように製造した組織ドレッシング材料Cを計量し、次に蒸留水中に15分間入れた。湿潤フィルムの重量を乾燥フィルムの重量と比較し、吸水は72重量%であると決定された。
【0077】
<13.キトサンD4の吸水>
上記の実施例に記載したように製造したキトサンD4を計量し、次に蒸留水中に60分間入れた。湿潤フィルムの重量を乾燥フィルムの重量と比較し、吸水はフィルム調製の7日後には1,217重量%、およびフィルム調製の14日後には475重量%であると決定された。
【0078】
<14.組織ドレッシング材料A、BおよびCの適用>
以下の表1には、組織ドレッシング材料A、BおよびCを用いた患者の治療結果を詳述する。材料Aは創傷上に直接噴霧し、その後溶媒が大気中に容易に蒸発するように被覆せずに放置した。材料BおよびCは、フィルム状材料の小さな切り傷として創傷と直接接触して適用された。材料Bの場合は、皮膚は、材料の適用前に事前に湿潤させた。全実施例で、材料は適用後は被覆せずに放置した。
【0079】
【表1】
【0080】
<15.キトサン組織ドレッシング材の溶解>
組織ドレッシング材料BおよびCの制御された溶解について、蒸留水、0.9%塩化ナトリウム水溶液、および0.5%酢酸/酢酸塩緩衝液各々を用いた溶解実験において試験した。溶液のpHは、適切な量の1N塩酸または水酸化ナトリウム溶液を使用して、表2に指示した数値に調整した。材料BおよびCは、各々5mg〜10mgの乾燥重量を有する長方形のサンプルに切断した。フィルムの乾燥重量に対して体積当たり100倍過剰な各溶液を浸漬させたガーゼを各サンプルフィルムに適用し、フィルムが完全に溶解するための時間を記録した。
【0081】
【表2】
【0082】
組織ドレッシング材料Cおよび0.5%酢酸/酢酸ナトリウムの混合液を用いた対照溶解実験(表2の右列)は、図4に示した。この材料は、より明確に視認するために、1時間にわたり0.01%インジゴカルミン水溶液中に貯蔵することによって染色した。完全な溶解は、pH4.0および4.5では30分後、pH5.0では2時間後、およびpH5.5では4時間後のそれぞれで観察された。
【0083】
<16.水溶性組織ドレッシング材料の非水溶性組織ドレッシング材料へのインサイチュー転換>
組織ドレッシング材料A、D1、D2、D3、およびD4各々のサンプルを室温および湿度20%〜40%の大気中に密封せずに放置した。これらの条件下で、組織ドレッシング材Aは数時間以内に固体フィルムへ乾燥した。蒸留水中の完全溶解を3、7、および14日後に分析した。結果は、表3に要約する。
【0084】
【表3】
【0085】
同様に、創傷ドレッシング材A、D1、D2、D3、およびD4各々の水溶性から非水溶性形への転換は、ヒト皮膚上の創傷ドレッシング材の適用後にも観察された。D3の場合には、創傷ドレッシング材をキトサン側を皮膚に向けて適用した。創傷ドレッシング材A、D1、D2、D3、およびD4各々の水溶性から非水溶性形への転換は、アルカリ処理またはアルカリ性環境内での貯蔵後にも観察された。
【0086】
<17.組織ドレッシング材料の剥離溶媒を用いた溶解>
組織ドレッシング材料D1、E1およびF1を、2%酢酸/酢酸塩緩衝液中での貯蔵によって溶解させた。溶液のpHは、適切な量の10%水酸化ナトリウム溶液を使用して、表4に指示した数値に調整した。様々なアセチル化度(DA)を備えるキトサンから作製されたフィルムD1、E1およびF1を、非水溶性形へ転換させるために14日間にわたり大気中に放置し、1×1cm2のサイズの矩形サンプルに切断し、およそ10mLの各溶液中に貯蔵し、完全なフィルム溶解時間を記録した。
【0087】
【表4】
【0088】
また別の溶解実験では、創傷ドレッシング材料フィルムC(3×1cm2)を市販の有孔バンドエイド(5×2cm)の内側に固定し、次にこれをペトリ皿上に固定した。創傷ドレッシング材料フィルムが溶解することを誘発するために、バンドエイドの孔を通して酢酸/酢酸塩緩衝液(pH5.5)を滴下した。組織ドレッシング材料フィルムを含む組織ドレッシング材の側面は、溶液の適用前については図5a、および溶液の適用後については図5cに示す。溶液の創傷ドレッシング材のバンドエイド側への適用については、図5bに示す。
【0089】
図6には、創傷2を含む組織1が略図で示されている。より具体的に示すために、図5〜図8は縮尺通りには描出されていない。本発明による液体組織ドレッシング材料は組織2に適用され、構成成分の水は蒸発させられ、創傷3を含む組織2をドレッシングするフィルム3が後に残されている。一般に、フィルム3は厚さ約10μm〜20μmである。有利には、フィルム3は、創傷表面5を含む組織表面4に密接に添う。
【0090】
図7は、創傷2を含む組織1に適用される固体フィルム6の形態にある組織ドレッシング材料を略図で示している。固体フィルムは、厚さ約80μmである。組織1と組織ドレッシング材料6との間の空洞7、8は、水または滲出液で満たすことができる。
【0091】
図8では、第1層としての図7の組織ドレッシング材料6および第2層としてのシリコーンフィルム10を含む組織ドレッシング材9が、創傷2を含む組織1に適用されている。シリコーンフィルム10は、厚さ約50μmである。同様に、組織1と組織ドレッシング材料6との間の空洞7、8は、水または滲出液で満たすことができる。最後に、図9は、創傷2を含む組織1に適用された組織ドレッシング材11を示し、該組織ドレッシング材11は図8に記載の組織ドレッシング材9とは、シリコーンフィルム10が、創傷ドレッシング材料6を通して組織1と周囲との間の空気の交換を可能にするために穿孔されている点が相違する。孔は、50〜100μmの直径を有する。
【0092】
<18.液体型組織ドレッシング材料の実施例の調製>
1,000mLの組織ドレッシング材料Aは、1,000mLの無菌蒸留水の添加によって希釈すると、0.75%のキトサン、0.25%の酢酸および99%の水からなる液体型組織ドレッシング材料が生じた。機械的ディスペンサーを使用して、20mLの溶液を各々ガラス瓶に満たし、次にこれらにポンプヘッドを取り付けると、ガス無含有のキトサンをベースとする創傷スプレーが生じた。同様に、液体型ドレッシング材料は、加圧ガスを含有するスプレー装置に入れた。
【0093】
上記の説明、特許請求の範囲および図面に記載した特徴は、あらゆる組み合わせで本発明と関連する可能性がある。特許請求の範囲に記載の参照番号は、特許請求の範囲の理解を容易にするためにのみ導入されているもので、決して限定することを意図していない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング(dressing;被覆)材料を含むキットに関する。本発明はさらに、患者の組織を治療する方法であって、組織ドレッシング材料が該患者の組織と接触して適用される方法に関する。また本発明は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するための固体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖類であるキトサンは、キチンの少なくとも部分的にN−脱アセチル化された誘導体である。キチンは、節足動物の外骨格、ゲル、甲殻類および昆虫類の角皮内で広く見いだすことができる。キチンは、通常はそのような天然源に由来する。キトサンは、一般にはキチンの加水分解によって合成的に作製されるが、例えば、その中で発生する所定の真菌類から自然に直接的に引き出すこともできる。希酸中でのキチンおよびキトサンの相違する溶解度は、一般にこれら2つの多糖類を識別するために使用される。可溶性形にあるキトサンは、加工処理条件、分子量、および溶媒特性などのパラメーターに依存して0%から上限である約60%の間のアセチル化度(DA)を有する可能性がある。キトサンは、酸性水性媒体中で可溶性であるが、6.3より高いpHでは沈降する。
【0003】
キチンおよびキトサンはどちらも、生体適合性、生分解性およびグリコサミノグリカン類との構造類似性のために、生物医学的用途にとって有望なポリマーである。キチンおよびキトサンの潜在的用途に関する包括的概説については、例えばShigemasa and Minami,「Applications of chitin and chitosan for biomaterials」,Biotech.Genetic.Eng.Rev.1996,13,383;Kumar,「A review of chitin and chitosan applications」,React.Funct.Polym.2000,46(1),1;およびSingh and Ray,「Biomedical applications of chitin,chitosan and their derivatives」,J.Macromol.Sci.2000,C40(1),69を参照されたい。
【0004】
キチンおよびキトサンは、創傷治癒用途において特に有望であると考えられ、この主題に関する初期の科学報告書は、Prudden et.al.が「The discovery of a potent pure chemical wound−healing accelerator」,Am.J.Surg.1970,119,560においてヒトの創傷にキチン粉末を適用して成功したことについて報告した、1970年にさかのぼる。創傷治癒を加速させる際の主要な要素は、新鮮創および回復期創傷において豊富に利用できるリゾチームによる酵素分解に起因して、キチンから遊離されるN−アセチル−D−グルコサミンの存在にあると報告された(D−グルコサミンとは著しく相違する)。
【0005】
ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン)、すなわちキチンの創傷治癒促進剤としての使用は、米国特許第3,632,754号明細書に開示されている。米国特許第4,532,134号明細書は、キトサンの溶液、粉末、フィルム、およびマットの創傷への適用について開示している。この明細書で主張された方法は、キトサンが42〜100%脱アセチル化されることを要求している。78〜92%脱アセチル化キトサンを使用した動物実験は、これらの材料がイヌの創傷に適用された場合に許容できる結果を示すことを開示しているが、この材料がラットの創傷を被覆するために使用された場合には初期創傷治癒の妨害が観察されている。
【0006】
米国特許第5,902,798号明細書および米国特許出願第2001/0056079号明細書は、25%未満のアセチル化度が要求されている。16%アセチル化キトサンを適用する実験では、ヒト皮膚を使用したインビトロモデルにおいて、キトサン/ヘパリン材料に比較して細胞増殖および創傷治癒の刺激が劣ることが見いだされた。
【0007】
英国特許第2358354(B)号明細書は、12%〜30%のアセチル化度を備える少なくとも80重量%のキトサンを含む可撓性ポリマーフィルムについて教示している。治療されていない創傷と比較して、創傷治癒速度がわずかに速いことが見いだされた。エピクロロヒドリン架橋剤またはシリコーンコーティングの使用を必要とする比較的弱い機械的特性は、この先行技術材料の不利点となる可能性がある。この文献は、創傷の治癒後に食塩溶液でフィルムを洗い落とすことも提案している。
【0008】
Azad et.al.,「Chitosan membranes as a wound−healing dressing:Characterization and clinical application」,J.Biomed.Mater.Res.2004,69B,216は、フィルムおよびメッシュ(有孔フィルム)を作製するための25%アセチル化キトサンの使用を開示している。この著者らは、キトサンフィルムが血餅形成の結果としての皮膚移植術を受けた患者においてフィルムの下方での創傷治癒傷害を誘発するが、メッシュの使用は血液のより効率的な除去をもたらし、良好な上皮形成を伴って瘢痕形成を伴わないより迅速な治癒を生じさせることを見いだした。
【0009】
米国特許第7,482,503号明細書では、キトサン酢酸塩フォームが、大量出血のための出血制御創傷ドレッシング材としての使用について記載されている。キトサンは少なくとも70%脱アセチル化されることが要求され、実施例では85%〜93%の脱アセチル化度が使用されている。
【0010】
米国特許出願第2005/042265(A1)号明細書は、皮膚修復のためのヒドロゲルを開示し、該ヒドロゲルは最高5%キトサンを含有する。キトサンのアセチル化度は、40%以下であることが要求され、特に2%〜6%である。最後に、国際特許出願公開第2008/128567(A1)号パンフレットは、少なくとも部分的にキトサンから作製された創傷ドレッシング材を含む医療製品を開示している。開示された最低アセチル化度は、3%である。
【0011】
独国特許出願第102007038125(A1)号明細書は、生体組織を接着または固定するための接着剤組成物を開示している。この組成物は、50%〜98%脱アセチル化された多糖類、例えばキトサンを含んでいる。この組成物のまた別の成分は、官能化オリゴラクトンである。これら2つの成分は、スプレー装置の別個のチャンバー内へ提供される。
【0012】
国際特許出願公開第2008/1128567号パンフレットは、希酸中での医療用具の少なくとも一部の生体内溶解を開示している。この医療用具の一部は、3%より高く25%未満のアセチル化度を備えるN−アセチルキトサンから作製されている。この用具の一部の生体内溶解は、この用具のN−アセチルキトサン部分と接触する水性媒体のpHを6.0以下の数値に調整することによって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、患者の組織の治療を改良するためのキットであって、該キットは該患者の組織と接触して適用される組織ドレッシング材料を含むキットを提供することである。本発明はさらに、患者の組織を治療するための改良された方法を提供することを目的とする。なおさらに、本発明は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するための新規な材料を提供することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、この課題は、患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング材料と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するための剥離溶媒とを含むキットを提供することによって解決される。
【0015】
この課題は、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するために該組織ドレッシング材料へ酸性剥離溶媒を適用する工程とを含む方法によっても解決される。この課題はさらに、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して液体組織ドレッシング材料を適用する工程と、該組織ドレッシング材料を該組織から除去するために該組織ドレッシング材料へ剥離溶媒を適用する工程とを含む方法によって解決される。さらに、この課題は、患者の組織を治療する方法であって、該患者の組織と接触して水溶性組織ドレッシング材料を適用する工程と、該水溶性組織ドレッシング材料を中性pHでは非水溶性である形態に転換させる工程とを含む方法によって解決される。最後に、この課題は、ポリマー塩およびグリセロールを含む固体材料を提供することによって解決されるが、該グリセロール含量は、ヒトまたは動物の組織を治療する方法において使用するためには、該ポリマー塩含量の少なくとも10重量%である。
【0016】
本発明の文脈では、「剥離溶媒」は、固体もしくはゲル状状態にある場合に組織ドレッシング材料へ適用できる、および該組織ドレッシング材料の該組織からの剥離を、好ましくは該組織ドレッシング材料を少なくとも部分的に溶解させる、および/または膨潤させる工程によって促進できる液体である。好ましい剥離溶媒は、該組織ドレッシング材料の該組織への粘着を減少させることができる。したがって、剥離溶媒を用いると、該組織が該組織ドレッシング材料の除去中に損傷することを回避することができ、特に該組織ドレッシング材料が除去されるときに、該組織ドレッシング材料へ粘着するその下方にある組織の部分が引き剥がされることを回避することができる。その他の事例では、これは該組織ドレッシング材料が創傷ドレッシング材料として創傷に適用される場合に、創傷組織が機械的応力に対して極めて感受性であるので、大きな利点となる可能性がある。そのため本発明を用いると、除去される創傷ドレッシング材料への粘着に起因する再生中の組織の刺激または損傷を回避することができる。
【0017】
ポリマーと関連した用語「溶解する」および「溶解」は、水性環境における溶解性に起因する分子量減少を伴わない(すなわち、ポリマー鎖長の減少を伴わない)固体もしくはゲル状状態にあるポリマー形の質量損失の過程を意味することが意図されている。この用語は、ポリマーの解重合に起因する分子量減少の過程である「分解」とは区別されなければならない。有利には溶解および/または膨潤は、組織ドレッシング材料の除去を促進することができる。本発明を用いて、組織ドレッシング材料が部分的または全体的にさえ溶解可能であることを達成できる。
【0018】
本発明者らは、キット内に組織ドレッシング材料を剥離溶媒と一緒に提供することが、患者が事前に剥離溶媒を適用せずに組織ドレッシング材料を組織から分離しようとすることはあまりないという意味において、コンプライアンスを相当大きく改良できることを見いだした。本発明によるキットは、使用者がまた別の、適合しない、または場合により有害でさえある溶媒を適用することも防ぐことができる。
【0019】
本発明の文脈における用語「水溶性」は、中性pHで水溶性である組織ドレッシング材料の状態を意味する。1つの態様では、本発明は、一部の液体組織ドレッシング材料、例えばキトサン溶液、ならびに一部の水溶性であるが固体もしくはゲル状組織ドレッシング材料、例えばキトサン塩は、患者の組織に適用されると、それらが酸性液体溶媒中でのみ可溶性である固体もしくはゲル状状態に転換できるという本発明者らの所見を活用する。この転換は、例えば、組織ドレッシング材料が空気と接触すると、組織ドレッシング材料の構成成分の蒸発に起因して発生することができる。この転換は、組織ドレッシング材料と体液および/または組織自体との相互作用の結果である場合もある。例えば、血液の比較的高いpHおよび/または血液中に存在するタンパク質の組織ドレッシング材料への付着がこの転換を誘発することができる。または、もしくは追加して、転換は、転換媒体、例えば水性アルカリ性溶液を組織ドレッシング材料へ適用することによって達成できる。有利には、転換後に、組織ドレッシング材料は正常条件下では、例えば組織が水道水(中性pH)下で洗浄される場合、または石鹸(アルカリ性)が適用される場合は定位置に残留し、剥離溶媒の適用後にのみ剥離されることを達成できる。さらに、転換の結果として、組織ドレッシング材の組織への接着を減少させ、剥離溶媒を用いた後の除去を促進することができる。さらに、組織ドレッシング材料の吸水(water uptake)能力は、転換の結果として減少させることができ、これは所定の用途では望ましい。
【0020】
本発明者らは、組織治療のための固体材料中のグリセロールの存在が、該材料が水溶性状態から酸性液体溶媒中でのみ可溶性である状態への転換を加速させることができることを見いだした。例えば、ポリマー塩としての天然キトサン塩の場合には、転換はおよそ1カ月からたった1週間へ加速させることができる。本発明を特定の理論に限定せずに、本発明者らは、この加速の原因がグリセロールがポリマー塩の結晶構造を崩壊させる作用にある可能性があると考えている。有利には、より迅速な転換は、転換の有益な効果(すなわち、例えば、転換後に組織ドレッシング材料は組織が水道水下で洗浄された場合は定位置に留まること)がより早期に始まることを可能にする。
【0021】
本発明によるキット、方法、および固体材料は、有利には患者の組織の限局性抗菌治療のために使用できる。それにより、組織ドレッシング材料が適用される、したがって抗生物質活性が発生する部位は、抗生物質活性の局所的存在のみを達成するために十分に制御できることを活用できる。
【0022】
本発明によるキット、方法および固体材料は、有利には急性創傷、慢性創傷、および火傷または他の種類の創傷を治療するために使用できる。本発明によるキット、方法および固体材料は、皮膚病、例えばスポーツ選手の食物疾患および乾癬によって影響を受ける組織を治療するためにも使用できる。本発明によるキットの組織ドレッシング材料および方法は、創傷被覆材、例えばバンドエイド類、ガーゼ類、フィルム材およびフォーム材において、ならびにサポートエイド類、例えば包帯類、サポートタイツ類およびギプス包帯類中に適用できる。本発明は、有利には一般に切り傷や擦過傷、鼻血、重度の出血創傷、ならびに外傷および内傷を治療するために使用できる。したがって、本発明は、手術が患者に実施される場合に役立つことができる。本発明はまた、座瘡、剃刀負けおよび虫刺されを治療するため、ならびに化粧用途、例えばフェイスマスクおよびピーリング剤において有利には適用できる。好ましくは、組織ドレッシング材料は、治療対象の組織だけではなく、治療対象の組織を取り囲む組織にも接触する。
【0023】
本発明は、好ましくは外傷に対して使用されるが、本発明は内傷にも適用できる。好ましい方法では、本発明は、手術中の出血を制御するための止血剤として体内で使用される、または本発明は内出血を誘発する傷害または疾患の治療において適用される。また別の好ましい方法では、本発明は、ポリマー抗生物質としての脱アセチル化天然キトサンの潜在能力を活用することによって、感染症を予防または制限するために体内で使用される。また別の好ましい方法では、本発明によるキットおよび方法の創傷ドレッシング材料は、到達もしくは治療するのが困難である身体の領域、例えば開口部、生殖器部、または創傷治癒が大気への限られた曝露に起因して遅延させられる可能性がある身体部分において使用される。特に好ましい方法では、創傷ドレッシング材料は、異物材料および従来型創傷ドレッシング材料の適用に感受性である領域、例えば粘膜に適用される。この材料は、創傷内または創傷上に適用することができる。本発明の文脈における患者は、ヒトまたは動物であり得る。
【0024】
本発明の好ましい実施形態
単独または組み合わせて適用できる本発明の好ましい特徴については、従属請求項および以下の説明において考察する。
【0025】
好ましくは、組織ドレッシング材料を組織から除去するための剥離溶媒は、水性剥離溶媒である。好ましい剥離溶媒には、蒸留水、イオン性化合物の水溶液、例えば塩化ナトリウム水溶液、緩衝液、例えば酢酸/酢酸塩緩衝液、ならびに非イオン性化合物の水溶液、例えばグルコース水溶液が含まれる。有利には、溶媒としての水は、皮膚にとって多数の有機溶媒よりも低刺激性である。原則としては、本発明による水性剥離溶媒は水に加えて水以外の1つ以上の共溶媒、例えば有機共溶媒、例えばイソプロパノールもしくはまた別のアルコールを含むことができるが、好ましい剥離溶媒は、アルコール類、エステル類、アルカン類、ハロゲン化溶媒、アミン類、アミド類を含む有機溶媒を含んでいない。しかし、水性剥離溶媒は、有機酸を含有することが多い。有機酸は、本発明の文脈においては有機溶媒とは見なされない。
【0026】
組織ドレッシング材料を組織から除去するための剥離溶媒は、特に溶解によって除去されなければならない場合は、好ましくは酸性である。本発明のこの実施形態は、少なくとも組織ドレッシング材料の特定の状態では、組織ドレッシング材料の溶解性がpH依存性であり得るという事実を活用する。したがって有利には、剥離溶媒のpHは、組織ドレッシング材料が組織ドレッシング材料を組織から剥離させるために溶解性である範囲から選択することができる。剥離溶媒の好ましいpHは、7より低い、より好ましくは6.5より低い、より好ましくは6.3より低い。有利には、6.3より低いpHでは、好ましい創傷ドレッシング材料の1つである天然キトサンの塩基形は、水性媒体中で溶解性である。より好ましくは、剥離溶媒のpHは、6より低い、より好ましくは5.5より低い、より好ましくは5より低い。剥離溶媒のpHは、好ましくは3.5より高い。それにより、有利には、剥離溶媒の高度の酸性度に起因する組織の刺激は回避することができる。より好ましくは、剥離溶媒のpHは、4より高い、より好ましくは4.5より高い。
【0027】
好ましい剥離溶媒は、界面活性剤、例えばポリソルベート、例えばTweenを含んでいる。または、もしくは加えて、好ましい剥離溶媒は、置換もしくは非置換ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールエステルを含むことができる。そのような添加物の存在は、固体、ゲル状または固化液組織ドレッシング材料の剥離を相当大きく促進できる。
【0028】
キット内に提供される剥離溶媒の量は、キット内に提供された水またはキトサン以外の組織ドレッシング材料の構成成分の量の、少なくとも5重量倍、より好ましくは少なくとも50重量倍である。十分量の剥離溶媒を提供することによって、組織ドレッシング材料溶液のpHが所定閾値を下回ることを回避できる。適用するために、剥離溶媒は、スプレーもしくはブラシで塗布することができる、またはスポンジ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼによって適用できる。したがって、好ましいキットは、剥離溶媒を適用するためのスポンジ、ブラシ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼを含有している。剥離溶媒は、例えば密封ボトルもしくはディスポーザブルピペットに入れて、または剥離溶媒を浸漬させたガーゼ、スポンジもしくはゲルによって提供することができる。剥離溶媒はまた、スプレー装置内で提供することができる。好ましいスプレー装置は、剥離溶媒を貯蔵するための容器を含んでいる。このスプレー装置はまた、剥離溶媒を吐出するための加圧ガスを含むことができる。
【0029】
以下に記載する組織ドレッシング材料の好ましい調製物、特性および特徴に関連してそれらが固体、ゲル状または液体組織ドレッシング材料のいずれに関しているかが規定されない場合は、それらをそのような材料のいずれにも同等に適用できると想定すべきである。好ましい組織ドレッシング材料は、好ましくは多糖類、例えばキトサン、例えば天然キトサンを含む、またはそれからなるポリマーもしくはコポリマーである。
【0030】
本発明の文脈における用語「天然キトサン」は、ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)コポリマーまたはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーである規定された化学物質キトサンを意味する。任意の架橋またはさもなければ化学修飾キトサンは、天然キトサンとは相違する特性を有するキトサン誘導体であると考えられる。本発明の文脈における用語「天然キトサン」は、キトサン塩基、および溶解した、または溶解していないキトサン塩の形態にあるキトサンの両方を含む。本発明の文脈において一般に「キトサン」について言及される場合、これは天然キトサン、または架橋および/またはさもなければ修飾されたポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)コポリマーまたはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーの任意の誘導体の任意の形態、塩または塩基であり得る。好ましいキトサンは、天然キトサンである。天然キトサンの利点の1つは、高度の生体適合性および生物活性である。好ましい組織ドレッシング材料は、本質的に非分解性であり得るが、これは例えば以下に規定する脱アセチル化キトサンと同様である、または部分的もしくは完全に分解性、例えば生分解性であり得る。
【0031】
好ましい組織ドレッシング材料は、抗菌特性を有する。それにより、有利には、局所的抗菌治療を達成することができるので、全身性抗菌活性、すなわちそのような治療が必要とされない、および/または所望ではない患者の身体の領域の抗菌治療を回避することができる。したがって本発明は、副作用を減少させ、患者の迅速な回復に寄与することができる。抗菌特性を備える適切な組織ドレッシング材料は、キトサン、特に天然キトサンである。
【0032】
有利には、組織ドレッシング材料または組織ドレッシング材料の構成成分としてキトサンを用いると、本質的に毒性化合物を含んでいない組織ドレッシング材料を提供することができる。本発明は、全身的活性ではなく局所的活性のみを備える天然ポリマー抗生物質としてのキトサン、特に天然キトサンの抗生物質としての性質を活用することによって、創傷感染症のリスクを減少させることができる。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、追加の保存料を含まない。本発明者らは、キトサンの抗菌特性が製品の満足できる貯蔵寿命を提供するために十分であることを見いだした。これは液体組織ドレッシング材において特に有利であるが、それは市場で入手できる多数の液体組織ドレッシング材は、毒性作用を有する可能性があり、組織刺激またはアレルギー反応を誘発する可能性がある保存料を含有するからである。
【0033】
好ましいキトサンは、40%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下のアセチル化度(DA)を有する。好ましくは、キトサンは脱アセチル化されている。好ましくは、これは本組織ドレッシング材料の唯一のキトサン成分である。本発明の文脈における用語「脱アセチル化キトサン」は、キトサンのDAが2.5%未満であることを意味する。本発明のこの実施形態は、創傷治癒の有意に加速された速度が、脱アセチル化された、すなわち本質的にN−アセチル−D−グルコサミンサブユニットを含まない天然キトサン材料を適用することによって達成できるという本発明者らの所見を活用している。この所見は、例えば上記の米国特許第3,632,754号明細書に記載されたように、創傷治癒用途におけるD−グルコサミンのN−アセチル化形に起因する重要性を考えると驚くべきことである。さらに、例えば、Chitin and chitosan,Amsterdam 1989,653の中のIzume et.al.,「A novel cell culture matrix composed of chitosan and collagen complex」において、極めて低いアセチル化度のキトサンは、極度に高い細胞接着に起因して細胞増殖を阻害するので、むしろ細胞増殖抑制特性を有する可能性があることが提言されている。
【0034】
DAは、例えばLavertu et al.,「A validated 1H NMR method for the determination of the degree of deacetylation of chitosan」,J.Pharm.Biomed.Anal.2003,32,1149において開示されているように、1H NMR分光法によって得ることができる。本発明の文脈における「脱アセチル化天然キトサン」は、上記の規定にしたがって天然および脱アセチル化の両方であるキトサンを意味する。本発明による好ましい組織ドレッシング材料では、脱アセチル化キトサンまたは脱アセチル化天然キトサンのDAは、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。有利には、そのような極めて低いアセチル化度は、本発明の創傷治癒特性をさらに改良することができる。さらに、生分解をいっそう阻害できるので、組織ドレッシング材料の組織内方成長および過度の粘着が回避される。さらに、脱アセチル化天然キトサンの低DAによって、本組織ドレッシング材料は、組織内方成長および増殖中の組織へのポリマーマトリックスの望ましくない接着を防止することに寄与できる、特に非リゾチーム生分解性形態で適用することができる。
【0035】
好ましくは、キトサン、より好ましくは天然キトサンは、本組織ドレッシング材料の主要成分である。本発明の文脈における、本組織ドレッシング材料およびキトサンの種類(例えば、一般にキトサン、脱アセチル化キトサン、天然キトサンまたは脱アセチル化天然キトサン)に関する表現「主要成分」は、各種類のキトサンが本組織ドレッシング材料の少なくとも50重量%を構成することを意味する。したがって、例えば本組織ドレッシング材料が組織に適用される固体またはゲル状フィルムとして提供される場合、このフィルムは少なくとも50重量%の各種類のキトサンから構成される必要がある。液体組織ドレッシング材料の場合には、水性混合液中の水以外の成分に関する表現「主要成分」は、水以外の全構成成分の組み合わせの少なくとも50重量%が各種類のキトサンでなければならないことを意味する。さらに、以下で詳細に考察するように、本組織ドレッシング材は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成されるまた別の層を含むことができ、このまた別の層は支持体として作用する。そのような場合には、上記の定義に従うと、少なくとも50重量%までが各種類のキトサンから構成される必要があるのは第1層であって支持体層ではないことになる。本組織ドレッシング材料が組織から取り込む物質、例えば創傷からの滲出液は、本組織ドレッシング材料の成分であるとは見なされないことに留意されたい。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、本組織ドレッシング材料は、固体またはゲル、好ましくはヒドロゲルである。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、フィルムの形態にある。好ましいフィルムは、好ましくは1μm(マイクロメートル)以下、より好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下の平均粗さRaを備える平滑な表面を有する。有利には、平滑な表面は組織への機械的固着の形成を減少させ、それによりさらに本組織ドレッシング材料の除去を促進することができる。典型的には、乾燥したフィルムの厚さは0.5μm〜500μm、好ましくは10μm〜100μmである。乾燥したフィルムは、治療対象の組織、例えば創傷、および好ましくはさらに周囲組織の一部を被覆するために十分な表面積を有する。好ましくは、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、キトサン、好ましくは天然キトサンである。
【0037】
患者の組織と接触して適用されるために好ましい固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、少なくとも部分的に水溶性である。言い換えると、それが患者の組織に適用するために提供される時点で、天然pHでは水に少なくとも部分的に溶解することができる。本組織ドレッシング材料は、例えばポリマー塩、例えばキトサン塩などの多糖類の塩、例えば天然キトサンまたはキトサン誘導体の塩であり得る。本組織ドレッシング材料が組織にしっかりと接着することは、本発明のこの実施形態が達成できる利点である。それにより、本組織ドレッシング材料が組織から早期に剥離することを回避できる。本発明のこの実施形態は、有利には、キトサン塩が中性pHの水性溶媒中では可溶性であるという事実を活用する。したがって、湿潤した、または事前に湿潤させた組織は本組織ドレッシング材料の表面を液化し、組織との恒久的接触を提供する。好ましい塩は、ポリマー、好ましくはキトサン、例えば天然キトサンの無機酸、例えば塩酸、または2個〜12個の炭素原子、および1〜5の第1pKa値を有する一塩基もしくは多塩基有機酸、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの群から選択される有機酸中での溶解から誘導される塩である。本発明のまた別の実施形態では、各種類のポリマーは、キトサン塩基の形態で存在する。
【0038】
好ましい固体組織ドレッシング材料は、全体としてキトサン、好ましくは天然キトサンからなる。好ましくは、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサン塩、好ましくは天然キトサンの塩は、本固体またはゲル状組織ドレッシング材料の主要成分を構成する。より好ましくは、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の本固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサン塩、好ましくは天然キトサンの塩である。好ましい固体組織ドレッシング材料は、全体として、ポリマー塩、例えば多糖塩、好ましくはキトサンの塩、好ましくは天然キトサンの塩からなる。
【0039】
好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、キトサン塩、例えば天然キトサン塩などのポリマー塩に加えてグリセロールを含む。グリセロール含有量は、好ましくは本固体組織ドレッシング材料のポリマー塩含有量、より好ましくはキトサン塩含有量の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%を構成する。グリセロールは、好ましくは10重量%より高い、より好ましくは15重量%より高い、より好ましくは20重量%より高い濃度で存在する。グリセロールは、好ましくは60重量%未満、より好ましくは45重量%未満、より好ましくは30重量%未満の濃度で存在する。
【0040】
本発明のまた別の好ましい実施形態では、患者の組織と接触して適用されるための本組織ドレッシング材料は、液体である。一般に、適用後には、本液体組織ドレッシング材料は、固化する、すなわち、固体またはゲル、例えばヒドロゲルに変化する。本発明の一部の実施形態では、適用された時点に液体組織ドレッシング材料中に存在した溶媒の除去、好ましくは蒸発は、固化を誘発する、または少なくとも固化に寄与する。追加して、もしくはまたは、固化は、他の因子、例えば本組織ドレッシング材料のポリマー成分の化学的または物理的架橋結合によって誘発する、または帰せることができる。
【0041】
好ましくは、本液体組織ドレッシング材料は、水性混合液、例えば分散液もしくは懸濁液、より好ましくは溶液であり、すなわち本液体組織ドレッシング材料は混合媒体もしくは溶媒として水のそれぞれを含む。さらに、本液体組織ドレッシング材料は、共溶媒、例えばイソプロパノールなどのアルコール類を含むことができる。これは、溶媒のより迅速な蒸発という利点を有することができ、これは次により迅速な固化をもたらす。
【0042】
溶質、またはより一般的には混合媒体が本液体組織ドレッシング材料の固化後に除去されると残留する混合液の構成成分は、好ましくは塩、より好ましくはポリマー塩、例えば天然キトサンの塩またはキトサン誘導体の塩などのキトサン塩を含む、より好ましくはそれからなる。好ましい塩は、ポリマー、好ましくはキトサン、例えば天然キトサンの無機酸、例えば塩酸、または2個〜12個の炭素原子、および1〜5の第1pKa値を有する一塩基もしくは多塩基有機酸、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの群から選択される有機酸中での溶解から誘導される塩である。
【0043】
好ましくは、キトサン、より好ましくは天然キトサンは、本液体組織ドレッシング材料の水以外の主要成分である。好ましくは、混合液の水以外の少なくとも70重量%の構成成分は、ポリマー、好ましくは多糖類、例えばキトサン、好ましくは天然キトサンである。特に好ましい混合液は、本質的にポリマー、好ましくは多糖類、例えばキトサン、好ましくは天然キトサン、および水のみからなる。好ましい混合液は、酸性である。ポリマーの濃度は、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0044】
適用するために、本液体組織ドレッシング材料は、好ましくは組織上に噴霧され、混合媒体または溶媒は、引き続いて蒸発されて固体またはゲル状フィルムが形成される。典型的には、フィルムの厚さは0.1μm〜50μm、好ましくは1μm〜20μmである。フィルムは、治療対象の組織、例えば創傷、および好ましくはさらに周囲組織の一部を被覆するために十分な表面積を有する。したがって、液体組織ドレッシング材料を含む本発明による好ましいキットは、患者の組織上に液体組織ドレッシング材料を噴霧するためのスプレー装置をさらに含んでいる。好ましいスプレー装置は、本液体組織ドレッシング材料を貯蔵するための容器を含んでいる。このスプレー装置はまた、液体組織ドレッシング材料を吐出するための加圧ガスを含むことができる。本組織ドレッシング材料は、本液体組織ドレッシング材料の組織への適用前または適用中に短時間混合される2つ以上の液体成分中に提供することができる。この場合には、本スプレー装置は、数個の容器を含むことができ、および/または本キットは各々が液体成分の1つを含有する数個のスプレー装置を含むことができる。または、本液体組織ドレッシング材料は、ブラシで組織上に塗布することができ、またはスポンジ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼによって適用できる。したがって、好ましいキットは、液体組織ドレッシング材料または液体ドレッシング材料の少なくとも1つの構成成分を組織に適用するためのスポンジ、ブラシ、スパチュラ、ピペットまたはガーゼを含有する。
【0045】
本液体組織ドレッシング材料または固体もしくはゲル状水溶性組織ドレッシング材料が組織と接触させられた後、および液体組織ドレッシング材の場合には固化中または固化後に、好ましくは非水溶性形に、例えばキトサン塩基に転換させられる。これは、組織ドレッシング材料を大気へ曝露させることによって、または転換媒体、例えば水性アルカリ溶液を適用することによって達成できる。それにより有利には、転換後に、組織ドレッシング材料は正常条件下では、例えば組織が水道水(中性pH)下で洗浄された場合、または石鹸(アルカリ性)が適用された場合は定位置に残留し、剥離溶媒の適用後にのみ剥離されることを達成できる。引き続いて、組織ドレッシング材料が、例えば交換するため、または治療の終了時に除去されなければならない場合は、剥離溶媒は、組織ドレッシング材料の組織からの剥離を促進するために適用される。好ましいキットは、組織ドレッシング材料および剥離溶媒に加えて転換媒体をさらに含んでいる。
【0046】
好ましい組織ドレッシング材料、特に好ましい液体組織ドレッシング材料は、有機溶媒、例えばアルコール類、エステル類、アルカン類、ハロゲン化溶媒、アミン類、アミド類を含んでいない。しかし、組織ドレッシング材料は有機酸を含有することが多い。有機酸は、本発明の文脈においては有機溶媒とは見なされない。
【0047】
本発明による好ましいキットは、固体またはゲル状および液体組織ドレッシング材料の両方を含んでいる。本発明による好ましい方法では、最初に液体および引き続いて固体またはゲル状組織ドレッシング材料が患者の組織に適用される。好ましくはこの方法では、固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、液体組織ドレッシング材料が固化する前に適用される。本発明者らは、液体組織ドレッシング材料が固体またはゲル状組織ドレッシング材料の標的組織への接着を促進できることを見いだしている。これは特に、水溶性の固体またはゲル状組織ドレッシング材料について、および水溶性の固体またはゲル状組織ドレッシング材料が付着前に水で湿潤させられる代替法に比較して当てはまる。これは後者の方法が固体またはゲル状組織ドレッシング材料の望ましくない変形をもたらすことが多いことが見いだされているためであり、この変形は固体またはゲル状組織ドレッシング材料を付着させるための液体組織ドレッシング材料の適用によって回避できる。好ましくは本キットおよび方法では、本液体組織ドレッシング材料は、本明細書に記載した好ましい液体組織ドレッシング材料の1つである。同様に、本キットおよび方法では、本固体またはゲル状組織ドレッシング材料は、本明細書に記載した好ましい固体またはゲル状組織ドレッシング材料の1つである。好ましくは、本液体組織ドレッシング材料および/または本固体もしくはゲル状組織ドレッシング材料および剥離溶媒は、別個の容器内に提供される。
【0048】
本発明の一部の実施形態における固体、ゲル状または液体の組織ドレッシング材料は、数種の構成成分、液体組織ドレッシング材料の場合には、好ましくは水以外の数種の構成成分を含む混合液または複合材料である。好ましくは、本組織ドレッシング材料は、水およびキトサン以外の少なくとも1つの構成成分を含んでいる。1つの実施形態では、本組織ドレッシング材料は、グリセロールを含んでいる。これは、有利には本組織ドレッシング材料の水溶性から酸性媒体中でのみ可溶性である形態への転換を促進することができる。
【0049】
1つの好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、キトサン以外の少なくとも1つの医薬的活性および/または生物活性構成成分を含んでいる。適切な生物活性構成成分は、例えばタンパク質、ペプチドもしくはそれらの誘導体、核酸もしくはそれらの誘導体、薬物として活性である低分子量化合物、例えば抗生物質もしくは抗炎症薬、または先天性免疫系のアゴニストもしくはアンタゴニスト、または少なくとも1つのサブタイプの細胞の増殖を刺激もしくは分化させるための刺激因子もしくは分化成長因子、または創傷表面から抽出されなければならない所定の成分に対する親和性を備える樹脂、または装飾機能、例えば光吸収、蛍光もしくはリン光もしくは光反射粒子を備える溶解もしくは分散化合物もしくはポリマーであり得る。または、もしくは追加して、本組織ドレッシング材料は、生体細胞を含むことができる。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料(固体、ゲル状および/または液体)は、本組織ドレッシング材料が適用される組織の部位でのpHを視覚的に示すpH感受性色素を含んでいる。pHは、本創傷ドレッシング材料によって被覆される組織の状態を示すための代用物として使用できる。例えば、創傷内のpHは、創傷治癒過程中の創傷の現在の状態を示すことができることは公知である。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、6.3より低い、好ましくは6より低い、特に好ましくはほぼ5〜5.5のpHを有する。好ましいpHは、4.0より高く、より好ましくは4.5より高い。pHが健常な皮膚の表面のpHに近く、それによってそれに本組織ドレッシング材料が付着される組織への刺激または損傷が回避されることは、本発明のこの実施形態の達成可能な利点である。本発明のこの実施形態は、好ましくは本組織ドレッシング材料の外用に適用される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、8.5より低い、好ましくは8より低い、特に好ましくはほぼ7〜7.5のpHを有する。好ましいpHは、6.0より高く、より好ましくは6.5より高い。pHが健常な組織のpHと近く、それによってそれに本組織ドレッシング材料が付着される組織への刺激または損傷が回避されることは、本発明のこの実施形態が達成可能な利点である。本発明のこの実施形態は、好ましくは本組織ドレッシング材料の内用に適用される。
【0053】
好ましい組織ドレッシング材料は、1,500重量%未満、より好ましくは100重量%未満、より好ましくは80重量%未満の吸水能力を有する。それにより有利には、創傷治癒のために好都合である湿度が創傷部位に適用される組織ドレッシング材料下で維持することが達成できる。好ましくは、固体またはゲル状形にある本組織ドレッシング材料は、25%より高い、より好ましくは50%より高い吸水能力を有する。有利には、本発明のこの実施形態は、滲出液および毒性物質を吸収するために適合する。本発明の特に好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料の吸水能力は、65%〜75%である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、特に固体、ゲル状または固化形では透明である。固体またはゲル状および液体組織ドレッシング材料の両方を含むキット内では、固化後の好ましくは固体またはゲル状組織ドレッシング材料および液体組織ドレッシング材料の両方が透明である。有利には、これは医師が、特にそれが創傷組織である場合は、組織ドレッシング材料を用いて治療された組織を検査することを容易にすることができる。一部の実施形態では、この材料は、透明な固体フィルムである。他の実施形態では、この材料は、組織に適用されると透明なフィルムを形成する混合液、例えば分散液、懸濁液または溶液である。さらに、本組織ドレッシング材料がpH感受性色素を含む場合には、色素の色は組織ドレッシング材料の透明性に起因して判定することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、本組織ドレッシング材料は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成される少なくともまた別の層を含む組織ドレッシング材の一部であり、このまた別の層は支持体として作用する。特に、支持体は、有利には組織ドレッシング材料の組織からの早期の剥離を防止するのに役立つことができる。支持体は、好ましくは組織と接触している側とは反対側の組織ドレッシング材料の層の側に位置する。好ましくは、支持体は、組織ドレッシング材料に隣接する。本発明による支持体は、各種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンがキトサン塩基の形態で組織ドレッシング材料内に提供されている場合に特に有利であるが、それはキトサン塩基は一般に組織ドレッシング材料を含有するキトサン塩よりも弱く組織に接着するからである。支持体は、例えば、織物、フォームまたは有孔フィルムであり得る。支持体は、例えば天然材料、例えば綿または天然もしくは合成ポリマーででき得る。適切なポリマーには、生分解性ポリマー、例えばポリエステル類、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリホスファゼン類、ポリホスホエステル類、多糖類、ポリペプチド、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドが含まれる。適切なポリマーには、生体溶解性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多糖類、ポリペプチド類、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドがさらに含まれる。さらに、支持体は、非生分解性/非生体溶解性ポリマー、例えばシリコーン類、ポリウレタン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオルエチレン(polytetrafluorethylene)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリカーボネート類、ポリメタクリレート類、多糖類、ポリペプチド類、ならびにこれらのポリマーをベースとする誘導体、コポリマー、およびブレンドからなり得る。
【0056】
本発明による好ましい組織ドレッシング材は、本組織ドレッシング材料から形成される層である第1層、およびまた別の材料から形成されるまた別の層を含み、このまた別の層は少なくとも部分的水分バリアとして作用する。言い換えると、また別の層は、本発明による組織ドレッシング材料を用いた組織の治療中の、組織ドレッシング材料内での水の蒸発を防止または少なくとも遅延させることができる。これは、組織ドレッシング材が乾燥創傷に適用された場合は特に利点である可能性がある。また別の層は、好ましくは組織と接触している側とは反対側の組織ドレッシング材料の層の側に位置する。好ましくは、また別の層は、組織ドレッシング材料に隣接する。本発明は、支持体層および少なくとも部分的水分バリアとして作用するまた別の層の両方を有する組織ドレッシング材も含んでいる。当然ながら、支持体および少なくとも部分的水分バリアの両方の機能は、単一の他の層によって果たすこともできる。また別の層は、例えば、シリコーンまたは上記に列挙したポリマー群からのまた別のポリマーもしくはポリマー組成物であり得る。典型的には、また別の層の厚さは、10μm〜1,000μm、好ましくは50μm〜500μmである。本発明の一部の実施形態では、また別の層は穿孔されている。孔の直径は、典型的には10μm〜1,500μm、好ましくは50μm〜1,000μmである。本発明の代替実施形態では、水分バリアの代わりに、液体、例えば創傷滲出液を吸収することのできる層が提供される。適切な材料は、例えば多糖類をベースとするヒドロゲルもしくはセルロース誘導体を含むヒドロコロイド、またはポリウレタンフォームであり得る。これは、組織ドレッシング材が湿潤創傷に適用された場合は特に利点である可能性がある。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、組織ドレッシング材料、好ましくは組織ドレッシング材料全体が、容器内に存在し、キットの保管寿命が切れていない限りは、組織ドレッシング材料がその液体もしくは水溶性状態からその非水溶性状態への転換を防止できる容器内に提供される。好ましくは、容器は防湿性である、より好ましくは本質的に気密性である。
【0058】
さらに、本発明の一部の実施形態では、患者の組織と接触して適用されることが企図される側の組織ドレッシング材料は、剥離性カバーシートで被覆される。カバーシートは防湿性、より好ましくは空気不透過性である。これは、組織ドレッシング材料のその液体もしくは水溶性状態からその非水溶性状態への、患者の組織へ適用される前の早期の転換を防止することに寄与できる。
【0059】
本発明による組織ドレッシング材料は、特に、以下の有利な特性の内の1つまたは組み合わせを示すことができる。その有利な特性とは、透明性、臭気の中性、それが適用される組織への接着、ガス、特に酸素の透過性、抗生物質特性が局所に限定されること、止血特性、湿度の調節、および穏当なpHでの溶解性である。本組織ドレッシング材料は、非細胞毒性、非細胞増殖抑制性および非炎症性であり得る。この材料は、治療される組織の細胞の成長を阻害する、または促進することができる。この材料は、治療される組織の内側および外側からの細菌感染から防御するためのバリアとして、および機械的保護としても作用することもできる。特に、この材料は、感染、および火傷のリスクがある表在性創傷、病変、擦傷を保護および被覆することができる。本発明による組織ドレッシング材料および組織ドレッシング材は、従来型創傷ドレッシング材が無効である、または少なくともあまり効果的ではないことが分かった場合、例えば潰瘍性組織、ウイルスによって誘発された潰瘍になる傾向がある創傷、粘膜組織、生殖器領域、および体腔の治療において保護を提供することができる。この材料は、滅菌に適している可能性がある。この材料は色素で着色することができる。
【0060】
創傷ドレッシング材料、特に本発明による液体創傷ドレッシング材料は、無菌物質、酸化防止剤および界面活性剤を含んでいなくてよいので、それにより毒性またはアレルギー反応のリスクを低下させることができる。本創傷ドレッシング材料は、4〜6、好ましくはほぼ5.5のpHを示し、皮膚にとってpH中性であり得る。本創傷ドレッシング材料は、吸入またはこの材料を注入または嚥下することによる体内適用にも適している可能性がある。
【0061】
特に、本発明による液体組織ドレッシング材料は、以下の有利な特性の内の1つまたは組み合わせを示すことができる。その有利な特性とは、水をベースとして、有機溶媒を含んでいなくてよいことや、フィルム形成特性を有することができることや、水溶液を用いて除去することができることである。本液体組織ドレッシング材料は、ヒトまたは動物の身体の到達するのが困難である領域、またはフィルムのような固体材料を適用するのが困難である領域に適用することができる。
【0062】
以下では、下記の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】購入した天然キトサンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】さらなる加水分解工程後の本質的に脱アセチル化した天然キトサンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】組織培養ポリスチレンコントロール(PS=100%)に比較した、様々なアセチル化度を備えるキトサン材料上のケラチン生成細胞の細胞生存率を示す図である。
【図4】酢酸緩衝液を浸漬させたガーゼを適用することによる、本発明による組織ドレッシング材料の制御された溶解を示す図である。
【図5】剥離溶媒の適用前(5a)、適用中(5b)、および適用後(5c)の、本発明による組織ドレッシング材料を含む組織ドレッシング材を示す図である。
【図6】本発明による液体組織ドレッシング材料が適用されている創傷を示す略図である。
【図7】本発明による固体組織ドレッシング材料が適用されている創傷を示す略図である。
【図8】本発明による非有孔創傷ドレッシング材が適用されている創傷を示す略図である。
【図9】本発明による有孔創傷ドレッシング材が適用されている創傷を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
<1.1H NMR分光法>
以下の実施例において出発材料として使用したキトサンは、Cognis(独国)から微細フレークの形態で入手した。アセチル化度(DA)は、1H NMR分光法によって決定した。図1は、この市販のキトサンから入手した1H NMRスペクトルを示している。図2は、以下で詳細に説明するように、市販製品に適用されたさらなる加水分解工程後に脱アセチル化したキトサンから入手した対応する1H NMRスペクトルを示している。どちらの場合も、キトサンは、D2O中でおよそ0.5%(w/v)のキトサン濃度にある0.25% DClの混合液中で分析した。スペクトルは、Bruker AC200分光計を使用して記録した。NMR化学シフト(δ、単位ppm)をHDO(δ=4.8ppm)のシグナルと比較した。D−グルコサミンサブユニットのH2−H6と関連付けたピーク下の積分面積をメチル基のそれと比較することによって計算したDAは、購入した天然キトサンについては14.5%、および脱アセチル化天然キトサンについては1.5%であると決定された。
【0065】
<2.低DAキトサンの合成>
さらなる加水分解のために、供給業者であるCognisから入手したキトサンフレーク50g(グラム)をガラス容器に入れ、500gの45%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。構成成分を混合するためにガラス容器をよく振とうし、100℃のオーブン内に2時間にわたり入れた。次にこれをオーブンから取り出し、500mL(ミリリットル)の蒸留水を加えた。この混合液をガラスフリットに通して濾過した。次に、濾液のpHが6.5に達するまでキトサンを蒸留水で洗浄し、100℃で4h(時間)にわたり乾燥させた。次いでこの加水分解処理を繰り返すと、1H NMR分光法で決定した1.5%のDAを有する脱アセチル化天然キトサン42gが生じた。
【0066】
<3.低DAキトサン上の細胞生存率>
ヒトHaCaTケラチン生成細胞は、0.2ng/mL(ナノグラム/ミリリットル)のrEGFおよび25μg/mL(マイクログラム/ミリリットル)のウシ下垂体抽出物を補給した無血清培地(Gibco)中で培養した。カルシウム濃度を0.02mM、およびpHを7.2〜7.4へ調整した。細胞は培地20mL当たり1×106個(細胞)の密度で播種し、10% CO2を含有する37℃の大気中でインキュベートした。細胞は週に1回継代培養し、分析には20〜25継代を使用した。
【0067】
各々1.5%、4.0%、および14.5%のDAを有するキトサンフィルムを24ウエル細胞培養プレート内に置き、ヒトHaCaTケラチン生成細胞を1cm2当たり5×104個(細胞)の密度で播種し、2日間にわたり培養した。細胞生存率は、MTSアッセイ(Promega)を使用して決定した。細胞を用いた4時間にわたるMTSインキュベーション後、490nmでの吸光度をELISAプレートリーダーによって測定し、コントロール(細胞無含有)の吸光度から差し引くと、補正吸光度が得られた。各DAの5つのサンプルについて試験した。図3aは、3つのサンプルおよびポリスチレン(PS)を用いたコントロールについての490nm(PS=100%)での相対吸光度αを示している。
【0068】
<4.組織ドレッシング材料(材料A)の溶液の調製>
このようにして得られた1.5%のDAを有する天然キトサン7.5gを、24時間にわたり緩徐に振とうすることによって、500mLの0.5%酢酸水溶液中に溶解させた。この溶液の一部分を最初にガラス繊維フィルター(孔径:約1μm)に通して濾過し、次に滅菌のために0.22μmフィルターに通すと、全体として脱アセチル化天然キトサンから本質的になる組織ドレッシング材料の溶液が生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Aと称する。
【0069】
<5.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料B)の第1実施例の調製>
上記のように調製した各144mLの脱アセチル化天然キトサンの非濾過溶液の2つの部分をサイズが24×24cm2(平方センチメートル)の2つの正方形の型内に注入し、室温で乾燥させるために無塵環境に放置した。生じたフィルムを第1の型から取り出し、10kGy(キログレイ)電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化天然キトサン酢酸塩から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Bと称する。
【0070】
<6.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料C)の第2実施例の調製>
第2の型からの乾燥フィルムを、メタノール/水(90/10(v/v))中の1.5%アンモニア溶液を含有する浴中に2時間にわたり入れた。次にこのフィルムを浴から取り出し、室温で保管することによって乾燥させた。このフィルムは10kGy電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化天然キトサン塩基から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料Cと称する。
【0071】
<7.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D1)の第3実施例の調製>
上記のように調製した144mLの脱アセチル化キトサンの濾過溶液を、サイズが24×24cm2の正方形の型内に注入し、室温で乾燥させるために無塵環境に放置した。3日間の貯蔵後、生じたフィルムを型から取り外し、ポリ袋内に移し、次にこれを密封し、25kGy(キログレイ)電子線を使用して滅菌した。全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩から本質的になる組織ドレッシング材料の厚さおよそ80μmの透明フィルムが得られた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D1と称する。
【0072】
<8.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D2)の第4実施例の調製>
手順をわずかに修正して、正方形の型内に注入する前に脱アセチル化キトサンの濾過溶液に4%(w/w)グリセロールを加えた。組織ドレッシング材料D1について上述したその後の処置により、全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる組織ドレッシング材料の透明フィルムが生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D2と称する。
【0073】
<9.固体フィルム型組織ドレッシング材料(材料D3)の第5実施例の調製>
手順をさらに修正して、脱アセチル化キトサンのグリセロール含有溶液を正方形の型内に注入し、これをポリウレタン/ポリエチレン(Platilon U073 PE、Epurex、ボムリッツ/独国)からなる2層フィルムで、ポリウレタン側を上にし、ポリエチレン側を型の底部に固定させて被覆した。組織ドレッシング材料D1について上述したその後の処置により、ポリウレタン/ポリエチレンサポートフィルムに付着している全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる組織ドレッシング材料の透明フィルムが生じた。以下では、この材料を組織ドレッシング材料D3と称する。使用時には、ポリエチレン層は除去する。残留しているポリウレタン層はガス透過性である。
【0074】
<10.固体フィルム型キトサン(キトサンD4)の第6実施例の調製>
キトサンフィルムD2の調製をわずかに修正した手順で、正方形の型内に注入する前に濾過溶液に1%(w/w)グリセロールを加えた。キトサンD1について上述したその後の処置により、全体として脱アセチル化キトサン酢酸塩およびグリセロールの混合液から本質的になる透明フィルムが生じた。以下では、この材料をキトサンD4と称する。
【0075】
<11.より高いDAを備える固体フィルム型組織ドレッシング材料の2つの実施例の調製(材料E1およびF1)>
組織ドレッシング材料のさらに2つの実施例は、1つの場合には4%のDA(材料E1)を生じさせるために加水分解工程を短縮した、およびもう1つの場合には16%のDA(材料F1)を生じさせるために加水分解工程を完全に省略した、修飾のみを加えた材料D1を生じさせる手順によって製造した。
【0076】
<12.組織ドレッシング材料Cの吸水>
上記の実施例に記載したように製造した組織ドレッシング材料Cを計量し、次に蒸留水中に15分間入れた。湿潤フィルムの重量を乾燥フィルムの重量と比較し、吸水は72重量%であると決定された。
【0077】
<13.キトサンD4の吸水>
上記の実施例に記載したように製造したキトサンD4を計量し、次に蒸留水中に60分間入れた。湿潤フィルムの重量を乾燥フィルムの重量と比較し、吸水はフィルム調製の7日後には1,217重量%、およびフィルム調製の14日後には475重量%であると決定された。
【0078】
<14.組織ドレッシング材料A、BおよびCの適用>
以下の表1には、組織ドレッシング材料A、BおよびCを用いた患者の治療結果を詳述する。材料Aは創傷上に直接噴霧し、その後溶媒が大気中に容易に蒸発するように被覆せずに放置した。材料BおよびCは、フィルム状材料の小さな切り傷として創傷と直接接触して適用された。材料Bの場合は、皮膚は、材料の適用前に事前に湿潤させた。全実施例で、材料は適用後は被覆せずに放置した。
【0079】
【表1】
【0080】
<15.キトサン組織ドレッシング材の溶解>
組織ドレッシング材料BおよびCの制御された溶解について、蒸留水、0.9%塩化ナトリウム水溶液、および0.5%酢酸/酢酸塩緩衝液各々を用いた溶解実験において試験した。溶液のpHは、適切な量の1N塩酸または水酸化ナトリウム溶液を使用して、表2に指示した数値に調整した。材料BおよびCは、各々5mg〜10mgの乾燥重量を有する長方形のサンプルに切断した。フィルムの乾燥重量に対して体積当たり100倍過剰な各溶液を浸漬させたガーゼを各サンプルフィルムに適用し、フィルムが完全に溶解するための時間を記録した。
【0081】
【表2】
【0082】
組織ドレッシング材料Cおよび0.5%酢酸/酢酸ナトリウムの混合液を用いた対照溶解実験(表2の右列)は、図4に示した。この材料は、より明確に視認するために、1時間にわたり0.01%インジゴカルミン水溶液中に貯蔵することによって染色した。完全な溶解は、pH4.0および4.5では30分後、pH5.0では2時間後、およびpH5.5では4時間後のそれぞれで観察された。
【0083】
<16.水溶性組織ドレッシング材料の非水溶性組織ドレッシング材料へのインサイチュー転換>
組織ドレッシング材料A、D1、D2、D3、およびD4各々のサンプルを室温および湿度20%〜40%の大気中に密封せずに放置した。これらの条件下で、組織ドレッシング材Aは数時間以内に固体フィルムへ乾燥した。蒸留水中の完全溶解を3、7、および14日後に分析した。結果は、表3に要約する。
【0084】
【表3】
【0085】
同様に、創傷ドレッシング材A、D1、D2、D3、およびD4各々の水溶性から非水溶性形への転換は、ヒト皮膚上の創傷ドレッシング材の適用後にも観察された。D3の場合には、創傷ドレッシング材をキトサン側を皮膚に向けて適用した。創傷ドレッシング材A、D1、D2、D3、およびD4各々の水溶性から非水溶性形への転換は、アルカリ処理またはアルカリ性環境内での貯蔵後にも観察された。
【0086】
<17.組織ドレッシング材料の剥離溶媒を用いた溶解>
組織ドレッシング材料D1、E1およびF1を、2%酢酸/酢酸塩緩衝液中での貯蔵によって溶解させた。溶液のpHは、適切な量の10%水酸化ナトリウム溶液を使用して、表4に指示した数値に調整した。様々なアセチル化度(DA)を備えるキトサンから作製されたフィルムD1、E1およびF1を、非水溶性形へ転換させるために14日間にわたり大気中に放置し、1×1cm2のサイズの矩形サンプルに切断し、およそ10mLの各溶液中に貯蔵し、完全なフィルム溶解時間を記録した。
【0087】
【表4】
【0088】
また別の溶解実験では、創傷ドレッシング材料フィルムC(3×1cm2)を市販の有孔バンドエイド(5×2cm)の内側に固定し、次にこれをペトリ皿上に固定した。創傷ドレッシング材料フィルムが溶解することを誘発するために、バンドエイドの孔を通して酢酸/酢酸塩緩衝液(pH5.5)を滴下した。組織ドレッシング材料フィルムを含む組織ドレッシング材の側面は、溶液の適用前については図5a、および溶液の適用後については図5cに示す。溶液の創傷ドレッシング材のバンドエイド側への適用については、図5bに示す。
【0089】
図6には、創傷2を含む組織1が略図で示されている。より具体的に示すために、図5〜図8は縮尺通りには描出されていない。本発明による液体組織ドレッシング材料は組織2に適用され、構成成分の水は蒸発させられ、創傷3を含む組織2をドレッシングするフィルム3が後に残されている。一般に、フィルム3は厚さ約10μm〜20μmである。有利には、フィルム3は、創傷表面5を含む組織表面4に密接に添う。
【0090】
図7は、創傷2を含む組織1に適用される固体フィルム6の形態にある組織ドレッシング材料を略図で示している。固体フィルムは、厚さ約80μmである。組織1と組織ドレッシング材料6との間の空洞7、8は、水または滲出液で満たすことができる。
【0091】
図8では、第1層としての図7の組織ドレッシング材料6および第2層としてのシリコーンフィルム10を含む組織ドレッシング材9が、創傷2を含む組織1に適用されている。シリコーンフィルム10は、厚さ約50μmである。同様に、組織1と組織ドレッシング材料6との間の空洞7、8は、水または滲出液で満たすことができる。最後に、図9は、創傷2を含む組織1に適用された組織ドレッシング材11を示し、該組織ドレッシング材11は図8に記載の組織ドレッシング材9とは、シリコーンフィルム10が、創傷ドレッシング材料6を通して組織1と周囲との間の空気の交換を可能にするために穿孔されている点が相違する。孔は、50〜100μmの直径を有する。
【0092】
<18.液体型組織ドレッシング材料の実施例の調製>
1,000mLの組織ドレッシング材料Aは、1,000mLの無菌蒸留水の添加によって希釈すると、0.75%のキトサン、0.25%の酢酸および99%の水からなる液体型組織ドレッシング材料が生じた。機械的ディスペンサーを使用して、20mLの溶液を各々ガラス瓶に満たし、次にこれらにポンプヘッドを取り付けると、ガス無含有のキトサンをベースとする創傷スプレーが生じた。同様に、液体型ドレッシング材料は、加圧ガスを含有するスプレー装置に入れた。
【0093】
上記の説明、特許請求の範囲および図面に記載した特徴は、あらゆる組み合わせで本発明と関連する可能性がある。特許請求の範囲に記載の参照番号は、特許請求の範囲の理解を容易にするためにのみ導入されているもので、決して限定することを意図していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キットであって、前記キットの部品として、
患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング材料と、
前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するための剥離溶媒と
を含むキット。
【請求項2】
前記組織から前記組織ドレッシング材料を除去するための前記剥離溶媒は、水性剥離溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記組織から前記組織ドレッシング材料を除去するための前記剥離溶媒は、酸性であることを特徴とする、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、固体またはゲル状であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、水溶性であることを特徴とする、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料の主要成分は、ポリマー塩であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、液体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
前記キットは、前記固体またはゲル状組織ドレッシング材料および前記剥離溶媒に加えて液体組織ドレッシング材料を含むことを特徴とする、請求項4〜請求項7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記液体組織ドレッシング材料は、水溶液であることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記患者の前記組織上に前記液体組織ドレッシング材料を噴霧するためのスプレー装置をさらに含むことを特徴とする、請求項7〜請求項9のいずれかに記載のキット。
【請求項11】
前記組織ドレッシング材料は、前記組織ドレッシング材が適用される前記組織の部位でのpHを視覚的に示すpH感受性色素を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のキット。
【請求項12】
前記組織ドレッシング材料は、前記組織に適用される時点で透明であることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載のキット。
【請求項13】
患者の組織を治療する方法であって、
液体組織ドレッシング材料または水溶性固体もしくは水溶性ゲル状組織ドレッシング材料を前記患者の組織と接触して適用する工程と、
前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するために前記組織ドレッシング材料へ酸性剥離溶媒を適用する工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記組織ドレッシング材料は、前記剥離溶媒の適用前には水溶性組織ドレッシング材料を含み、前記水溶性組織ドレッシング材料は中性pHでは水に不溶性である形態へ転換させられることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者の組織を治療する方法であって、
水溶性固体もしくは水溶性ゲル状組織ドレッシング材料を前記患者の組織と接触して適用する工程と、
前記水溶性組織ドレッシング材料を中性pHでは非水溶性である形態に転換させる工程と
を含む方法。
【請求項1】
キットであって、前記キットの部品として、
患者の組織と接触して適用されるための組織ドレッシング材料と、
前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するための剥離溶媒と
を含むキット。
【請求項2】
前記組織から前記組織ドレッシング材料を除去するための前記剥離溶媒は、水性剥離溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記組織から前記組織ドレッシング材料を除去するための前記剥離溶媒は、酸性であることを特徴とする、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、固体またはゲル状であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、水溶性であることを特徴とする、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料の主要成分は、ポリマー塩であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記患者の前記組織と接触して適用されるための前記組織ドレッシング材料は、液体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
前記キットは、前記固体またはゲル状組織ドレッシング材料および前記剥離溶媒に加えて液体組織ドレッシング材料を含むことを特徴とする、請求項4〜請求項7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記液体組織ドレッシング材料は、水溶液であることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記患者の前記組織上に前記液体組織ドレッシング材料を噴霧するためのスプレー装置をさらに含むことを特徴とする、請求項7〜請求項9のいずれかに記載のキット。
【請求項11】
前記組織ドレッシング材料は、前記組織ドレッシング材が適用される前記組織の部位でのpHを視覚的に示すpH感受性色素を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のキット。
【請求項12】
前記組織ドレッシング材料は、前記組織に適用される時点で透明であることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載のキット。
【請求項13】
患者の組織を治療する方法であって、
液体組織ドレッシング材料または水溶性固体もしくは水溶性ゲル状組織ドレッシング材料を前記患者の組織と接触して適用する工程と、
前記組織ドレッシング材料を前記組織から除去するために前記組織ドレッシング材料へ酸性剥離溶媒を適用する工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記組織ドレッシング材料は、前記剥離溶媒の適用前には水溶性組織ドレッシング材料を含み、前記水溶性組織ドレッシング材料は中性pHでは水に不溶性である形態へ転換させられることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者の組織を治療する方法であって、
水溶性固体もしくは水溶性ゲル状組織ドレッシング材料を前記患者の組織と接触して適用する工程と、
前記水溶性組織ドレッシング材料を中性pHでは非水溶性である形態に転換させる工程と
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−503656(P2013−503656A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526084(P2012−526084)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062822
【国際公開番号】WO2011/026869
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512050645)メドヴェント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062822
【国際公開番号】WO2011/026869
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512050645)メドヴェント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
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