説明

組織バルキング、および胃食道逆流疾患、尿失禁、皮膚のしわの治療のための移植可能な粒子

【課題】尿失禁、胃食道逆流疾患の治療法、および、皮膚のしわを改善する方法の提供。
【解決手段】粒子表面上の正電荷と細胞接着促進物質とを含む生体適合性の陽イオン性親水性微粒子の治療上有効な組織バルキング量を、下部食道括約筋、横隔膜または皮膚のしわ部位に投与する方法。該微粒子は自己由来細胞で前処理されるか、これと共に投与されるか、またはこれで被覆される。マイクロスフェアまたは細胞被覆マイクロスフェアは、投与前に血清または全血で洗浄される。該自己由来細胞は粘膜細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、またはこれらの組合せである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、組織バルキング、および胃食道逆流疾患、尿失禁の治療、皮膚のしわの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
2.1 胃食道逆流疾患(「GERD」)
胃食道逆流は正常な生理学的現象であるが、これは、極端な場合に重症となる種々の症状を引き起こす病態生理的状態である。胃食道逆流疾患(「GERD」)は、胃から食道への酸性および酵素性液体の逆流である。これは、胸骨の後ろ側に灼熱感を引き起こし、口または肺への胃酸の逆流を伴うことがある。この疾患の重症度を決定するGERDの合併症には、食道組織びらんと、正常な表皮が病理的組織に置き換わる食道潰瘍がある。
【0003】
統計的データは、アメリカ人の約35%は少なくとも月に1回、そして5〜10%は毎日1回胸やけに悩まされていることを示している。この種の疾患についてさらに重要なことは、内視鏡検査の医学的な証拠データに基づくと、アメリカ人の約2%はGERDに悩まされていることである。この疾患は、個人の年令に相関し、40才以降は増加するようである(Nebel O.T.ら、Am. J. Dig. Dis., 21(11):953-956(1976))。
【0004】
通常の患者では食後に下部食道括約筋は閉じたままであるが、GERD患者ではこれが弛緩し、胃の収縮の結果として、一部の酸性物質が食道管中に逆流する。実際GERDは、主に下部食道括約筋の一過性弛緩が原因である。他の場合は、GERDは、下部食道括約筋の休止期緊張の低下または括約筋自身が先天的に小さいことが原因となることがある。この疾患の存在と重症度に種々の程度に寄与する他の原因もまた存在する。
【0005】
さらに、GERDの症状の悪化に寄与する外的要因が存在し、これらの症状には、脂肪性食品の摂取、カフェインの摂取、喫煙、きつい衣類、いくつかの薬物療法がある。通常の状態ではアルカリ性液体である唾液は、酸性逆流を中和し従って食道の酸性暴露の持続時間を低下させるため、唾液分泌の低下もGERDを悪化させる要因である。
【0006】
紅斑は、GERDの最初の目に見える症候の1つであり、これは内視鏡により見ることができる。組織のびらんは、疾患がより進行していることを示し、これは次に深い潰瘍になり、癌(他のタイプの癌より速く腺癌の頻度が上がる)になる。食道閉塞症、失血、およびある場合には穿孔のある65才未満の約3.5%の患者に、びまん性潰瘍と特定の合併症が発生する。潰瘍状態は合併症を招くのみでなく、治療に対してより抵抗性になる。重症の合併症は、若年性の患者ではまれであるが、65才を超える患者では約20〜30%に起きる(Reynolds J.C., Am, J. Health-Sys. Pharm 53 (1996))。
【0007】
本発明以前には、括約筋の機能を向上させるために、ウシコラーゲンやテフロンペーストによるバルキング法が患者に使用されてきた。しかしこれらの物質は時間とともに最初の移植部位から移動するため、いずれも成功していない。
【0008】
現在GERDは一般に、売薬(「OTC」)の制酸剤により管理されるか、または処方薬(プロトンポンプインヒビター、移動性薬剤、およびH2ブロッカーを含む)により管理されている。さらにGERD患者の一部は、手術的介入が必要である。最も一般的なタイプの手術は、従来の手術法により、または腹腔鏡技術を用いて行われるフンドプリケーション術(胃底皺襞形成術)である。しかしフンドプリケーション術は、重症の副作用のリスクがあり、GERD治療の成功率が低い。約50%の患者およびフンドリプリケーションを受けている患者では呼吸器症状もGERDに関連しており、これらの呼吸器症状は増加することさえある(Johnson W.E.ら、Archives of Surgery, 131:489-492 (1996)の研究では76%と報告されている)。
【0009】
2.2 尿失禁
尿失禁は、社会全体にかつ医療の場で、すべての年令のすべてのレベルの健康状態の人に起きる一般的な問題である。医学的には尿失禁があると患者は、尿管感染症、褥瘡性潰瘍、会陰部発疹、および尿路性敗血症にかかりやすくなる。社会的および心理学的に尿失禁は、恥ずかしさ、社会的スチグマ形成、うつ病を引き起こし、特に老人の場合は特殊施設に収容されるリスクが増す(Herzoら、Ann. Rev. Gerontol. Geriatrics, 9:74 (1989))。経済的にはコストは莫大であり、米国だけでも尿失禁の管理に毎年100億ドルを超えるお金が使われる。
【0010】
尿失禁は、真性泌尿器ストレス(尿道運動機能亢進)、固有括約筋欠損(「ISD」)、またはこの両方により起きることがある。これは特に女性に多く、程度は低いが小児でも起き(特にISD)、男性では前立腺根治切除後に起きる。
【0011】
尿失禁の治療の1つの方法は、膀胱弛緩性を有する薬剤の投与であり、そのような薬剤の主流は抗コリン作用薬である。例えば切迫尿失禁を治療するために、抗コリン作用薬(例えば、臭化プロパンテリン)や平滑筋弛緩薬/抗コリン作用薬併用(例えば、ラセミ体オキシブチニンとジシクロミン)が使用されている(例えば、A.J. Wein, Urol. Clin. N. Am., 22:557 (1995)を参照)。しかし、このような薬物療法は、すべてのクラスの尿失禁患者で完全に成功することは少なく、患者はしばしば重症の副作用を経験する。
【0012】
薬物療法以外に、本発明以前に当業者に使用されてきた他の方法は、人工括約筋の使用(Lima S.V.C.ら、J. Urology, 156:622-624 (1996), Levesque P.E.ら、J. Urology, 156:625-628 (1996))、膀胱頚部支持プロテーゼの使用(Kondo A.ら、J. Urology, 157:824-827 (1996))、架橋コラーゲンの注入(Berman C.J.ら、J. Urology, 157:122-124 (1997), Perez L.M.ら、J. Urology, 156:633-636 (1996); Leonard M.P.ら、J. Urology, 156:637-640 (1996))、およびポリテトラフルオロエチレンの注入(Perez L.M.ら、J. Urology, 156:633-636 (1996))がある。
【0013】
ISDに関連する尿失禁治療のための最近公知の方法は、患者に尿道周囲内視鏡的コラーゲン注入を行うことである。これは、膀胱漏出またはストレス失禁の可能性を低下させるために、膀胱筋肉を増強する。
【0014】
尿失禁を防ぐための既存の溶液は、公知の欠点を有する。難治性尿失禁を有する小児のための人工括約筋の使用には、器具の取り付け後に腎不全が起きる可能性があるため、尿路の長期監視が必要である(Levesque P.E.ら、J. Urology, 156:625-628 (1996))。膀胱頚部周囲へのコラーゲンの内視鏡的注入は、括約筋欠損での成功率が高く大きな発病もないが、コラーゲンの使用は平均2年で不全に至ることがあり、そのコスト有効性を考慮する必要がある(Khullar V. ら、British J. Obstetrics & Gynecology, 104:96-99 (1996))。さらにおそらく移動現象(Perez L.M.ら)による患者の排泄抑制能力の悪化により、排泄抑制能力を回復するために反復注入が必要かも知れない(Herschorn S.ら、J. Urology, 156:1305-1309 (1996))。
【0015】
ストレス失禁の治療のための前立腺根治切除後のコラーゲンの使用による結果もまた、一般的に期待はずれである(Klutke C.G.ら、J. Urology, 156:1703-1706 (1996))。さらにある研究は、ウシの皮膚コラーゲンの注入により、IgGおよびIgAクラスの特異的抗体が産生されたという証拠を示している(McCell M.とDelustro, F., J. Urology 155:2063-2073 (1996))。すなわち、コラーゲンに対して患者が経時的に感作されることが予測される。
【0016】
成功率の低さにもかかわらず、経尿道的コラーゲン注入療法は、他に適当な代替法がないため、固有括約筋不全の許容される治療法である。
【0017】
2.3 皮膚のしわ
加齢または日光や他の成分への暴露による皮膚の障害は、しわや皮膚の他の異常を引き起こす。皮膚からしわを除去するために、美容整形(例えば、しわとりやスキンタック(skin tuck))が行われる。さらに、皮膚のしわを除去または改善するために、コラーゲン注入が行われている。コラーゲン注入はまた、組織バルキングのために、または唇または目のまわりおよび顔のまゆの部分の豊満さを上げるために使用されている。しかしコラーゲンは、生体が酵素的に分解する天然に存在する物質であり、時間とともに除去され、反復治療が必要になる。美容的観点からさらに注意すべきことは、コラーゲンは最初の注入部位から移動し、好ましくない位置の皮膚の下に醜いこぶやでっぱりを形成することである。
【0018】
皮膚のしわの修正に、マイクロビーズまたは固体微粒子が使用されている。例えばシリコーン粒子、テフロンペースト、コラーゲンビーズおよびポルアクリルマイクロスフェアが使用されているが、特に有害な組織反応、生物学的分解および初期の移植位置からの移動のために、結果は期待はずれである。
【0019】
2.4 微粒子
本発明以前には、足場依存性細胞培養でのin vitro使用のために、マイクロスフェアが製造され市販されている(Van Vezel, A.L., Nature, 216:64-65 (1967); Levineら、Somatic Cell Genetics, 3:149-155 (1997); Obrenovitchら、Biol. Cell., 46:249-256 (1983))。これらはまた、動脈血管形成異常、フィステルおよび腫瘍の治療において、血管をふさぐためにin vivoで使用されている(1997年6月3日発行のBoschettiらの米国特許第5,635,215号;Laurentら、J. Am. Soc. Neuroiol, 17:533-540 (1996);およびBeaujeuxら、J. Am. Soc. Neuroial, A:533-540 (1996)を参照)。
【0020】
さらに、特定の欠損を修正するために生体組織(例えば、脳または肝臓)への細胞の直接移植が試みられているが、失敗が多い。直接的細胞移植に伴う大きな問題は、細胞移植物の長期生存性と免疫病理的および組織学的応答である。表面に細胞が結合した微粒子は、一部のin vivo用途に使用されている。Cherkeseyら、IBRO, 657-664 (1996)は、被覆デキストランビーズ上での副腎細胞の培養と、黒質の6-ヒドロキシドーパミン誘導性一側性病変に関連するいくつかの特定障害に取って代わるための哺乳動物の脳への移植を記載した。デキストランマイクロキャリアーに細胞をあらかじめ接着させると、脳中に移植された細胞の機能を向上させることができた。また、急性肝不全の管理、またはビリルビン抱合もしくはアルブミン合成のような特定の欠損機能の置換のために、肝細胞移植が使用されている。このために、マイクロスフェアの表面で増殖させた肝細胞の脾臓内注入が行われた(Roy Chowdhuryら、Advanced Research on Animal Cell Technology, AOA Miller編、315-327, Kluers Acad. Press, 1989)。
【0021】
しかしほとんどの細胞移植の結果は、目的の機能には期待はずれであった(または、低レベルの生物学的機能しか示さなかった)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、GERD、尿失禁、皮膚のしわの治療における移植可能な微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
3. 発明の概要
本発明は、GERD、尿失禁、皮膚のしわの治療における移植可能な微粒子の使用を包含する。各使用において粒子は、適切な組織、筋肉、臓器などの中にバルキング物質として移植される。さらに各使用において微粒子は、好ましくは自己由来細胞(例えば、筋肉細胞、脂肪細胞など)であらかじめ被覆される。本発明の微粒子は、細胞接着性促進物質で被覆された、これに結合された、またはこれを充填された生体適合性非毒性ポリマーである。この微粒子は好ましくは、陽イオン性モノマーまたはポリマーにより、その表面に正電荷を有する。
【0024】
ある実施形態において本発明は、ヒトの胃食道逆流疾患の治療法であって、(a) 正電荷および細胞接着促進物質と、(b) 親水性生体適合性微粒子の表面に重層した自己由来細胞とを含む該微粒子を、下部食道括約筋中に移植することを含んでなる上記治療法を包含する。この微粒子は好ましくは、本明細書に詳細に記載されるマイクロスフェアまたはマイクロビーズである。自己由来細胞は好ましくは、移植が行われる領域から採取される。患者から採取される血清または全血を使用して、移植前に微粒子を洗浄することができる。GERD治療のために、当業者に公知の標準的方法(例えば、注射器または他の適当な器具による注入)を使用して移植を行うこともできる。
【0025】
さらに別の実施形態において本発明は、ヒトの尿失禁の治療法であって、(a) 正電荷および細胞接着促進物質と、(b) 親水性生体適合性微粒子の表面に重層した自己由来細胞とを含む該微粒子を、尿道括約筋中に移植することを含んでなる上記治療法を包含する。この微粒子は好ましくは、本明細書に記載されるマイクロスフェアまたはマイクロビーズである。さらに、自己由来細胞は好ましくは、移植が行われる領域から採取される。患者から採取される血清または全血を使用して、移植前に微粒子を洗浄することができる。一般に、特定の移植組織に適した注射器または他の適当な器具を使用して移植が行われる。
【0026】
さらに別の実施形態において本発明は、ヒトの皮膚のしわの治療法であって、正電荷を有する親水性コポリマーおよび細胞接着促進物質を含む微粒子(該微粒子は自己由来細胞で前処理されている)の投与または移植を含む、上記治療法を包含する。この微粒子は、移植の前に、単に自己由来細胞に暴露されるか、または自己由来細胞と十分に混合することができる。
【0027】
上記のGERDと尿失禁の両方の治療法は、これらの疾患を治療するために現在使用されている従来的治療法(すなわち、経口的利尿薬、制酸剤、適当な薬物療法など)と組み合わせて使用することができる。このような併用療法により、患者の回復がより早く、安全でかつより快適なものになることがある。
【0028】
さらに別の実施形態において本発明は、皮膚のしわの治療または改善法であって、(a) 正電荷および細胞接着促進物質と、(b) 親水性生体適合性微粒子の表面に重層した自己由来細胞、コラーゲン、コラーゲン誘導体、またはグルコサミノグリカンとを含む該微粒子を、皮膚のしわまたはそのまわりの領域に移植することを含んでなる、上記治療法を包含する。すなわち、細胞接着促進物質で被覆され、かつ適当な組織バルキング細胞で前処理されたマイクロスフェアまたはマイクロビーズが、治療部位に投与される。
【0029】
本明細書において「投与する」、「移植する」または「移植」という用語は、交換可能な形で使用され、その物質が、当業者に公知でかつ治療される疾患に適した方法により治療の領域に送達されることを意味する。この送達には、侵襲的方法と非侵襲的方法の両方を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、括約筋バルキングの略図である。ビーズは被覆され、生理学的条件下で括約筋に注入される。括約筋の体積は、注入されたビーズの量に比例して増加し、内腔サイズは低下する。ビーズは徐々にかつ非可逆的に筋肉内に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
5.発明の詳細な説明
本発明は、GERD、尿失禁、および皮膚のしわの治療ための、表面上の正電荷と細胞接着促進物質とを有し、かつ任意で細胞増殖促進物質を有する微粒子、特にマイクロビーズを使用する。本発明の微粒子は、好ましくは自己由来細胞とともに使用される。すなわち本発明の微粒子は、移植前に適切な細胞によりコロニー化する。この移植前工程は、免疫応答と移植拒絶反応とを低下または排除することが証明されている。さらに正電荷と自己由来細胞とを有する非生分解性の生体適合性マイクロビーズの使用は、組織特異的であってもそうでなくても、組織受容と全体的な治療を改善する。
【0032】
本発明の方法において、GERD、尿失禁、および皮膚のしわの治療は、有害組織反応(移植拒絶、粒子の分解、再吸収、移動および他の有害事象を含む)を避けるかまたは実質的に低下させて、達成される。本発明の方法はまた、結合組織応答の増大を伴う。
【0033】
本発明で使用されるマイクロビーズまたは微粒子は、細胞接着を促進する物質で被覆された生体適合性非毒性ポリマーをベースとする。生細胞は微粒子に結合してそこに層状化した細胞を形成し、これが周りの組織と連結してビーズの長期安定性を増強する。
【0034】
身体の種々の位置に移植されるべき本発明の微粒子は、細胞接着ための適切な物質を含有する非再吸収性親水性ポリマーからなり、介入の前またはその最中に放射能による位置決定を容易にするために、放射線不透過性物質または他のマーキング物質をさらに含有してもよい。この用途に使用できる親水性コポリマーは、アクリルファミリーのものであり、例えばポリアクリルアミドとその誘導体、ポリアクリレートとその誘導体ならびにポリアリルおよびポリビニル化合物がある。これらのポリマーのすべては、安定かつ非再吸収性であるように架橋しており、その構造内に特定の性質(例えば、化学走化性、細胞[食道壁もしくは尿道壁の細胞、または皮膚細胞等]または組織への細胞接着の促進)を示す他の化学物質、および/またはマーキング物質を含有してもよい。
【0035】
本発明で使用される微粒子は、組織や細胞に対して非毒性であり、生体適合性であり、これらが促進する細胞増殖により移植部位の種々の細胞や組織に対して接着性である。さらにこれらの微粒子は非再吸収性かつ非生分解性であり、従って安定で耐久性があり、所望の部位に移植されるとその全体的形状と位置を維持する。
【0036】
一般に本発明で使用される微粒子は任意の形状をとり得るが、球形の微粒子が好ましい。本発明で使用される微粒子は、約10μm〜約1000μmの範囲の直径を有する。好ましくは、その表面に接着された細胞を有する本発明で使用される微粒子は、約50μm〜1000μmの範囲の直径を有する。
【0037】
本発明の可能な変法では、微粒子を、任意の生体適合性、非毒性で非再吸収性のポリマー性粒子、膜、繊維または細胞接着を促進する物質で処理した他の固体基質で置換する。本発明はまた、注入後にin situで架橋して固体の細胞接着促進性充填剤を構成する線形可溶性ポリマーを含む。あらかじめ調製されるかまたは適切なカテーテルを使用してその場所で生成される空の微粒子(マイクロバブル)の調製および/または注入もまた、本発明に包含される。
【0038】
本発明で使用される微粒子または他の固体基質は可撓性があり、従って永久に変更されることなく注入器具および小カテーテル内を容易に通過するが、該微粒子はまた、移植プロセス中および後に生じる筋肉収縮ストレスに対して耐性でもある。これらはまた、熱安定性があり、これが容易で便利な滅菌と凍結保存とを可能にする。
【0039】
本発明で使用される微粒子または他の固体基質はまた懸濁物中で安定であり、このため該微粒子または他の固体基質を懸濁状態で製剤化し保存することでき、また異なる液体とともに注入することができる。さらに詳しくは、微粒子の親水性は、該微粒子を懸濁状態とすることを可能にし、特に無菌かつ発熱性(発熱物質を含まない)の注入可能な溶液の形態にすることを可能にし、一方で凝集物の形成や、保存容器および移植器具(例えば、カテーテル、シリンジ、針など)の壁への接着を回避することを可能にする。好ましくはこれらの注入可能溶液は、内径が約10μm〜約2000μmの範囲の分散された微粒子または他の固体基質を含有する。
【0040】
本発明の微粒子は、親水性であり陽イオン性である。この微粒子は好ましくは、中性親水性モノマー、2官能性モノマー、陽電荷を有するモノマー1種以上、および任意で微粒子を検出可能にする官能基化モノマーのコポリマーを含む。この微粒子はまた、細胞接着促進物質1種以上およびマーキング物質を含む。
【0041】
前記コポリマーは好ましくは、約25〜約98重量%の中性親水性アクリルモノマー、約2〜約50重量%の2官能性モノマー、および約0〜約50重量%の陽電荷を有するモノマー1種以上を共重合形態で含む親水性アクリルコポリマーである。
【0042】
例えばフランス特許第2,378,908号(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載のコポリマーは、ベースの微粒子コポリマーを調製するために、本発明に従って使用することができる。
【0043】
親水性アクリルモノマーとしては、アクリルアミドとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、またはヒドロキシメチルメタクリレートを使用することができる。
【0044】
2官能性モノマーの例には、N,N'−メチレン−ビス−アクリルアミド、N',N'−ジアリルタルチアミド(N,N’−diallyltartiamide)またはグリオキサル−ビス−アクリルアミドがあるが、これらに限定されない。
【0045】
さらに陽電荷を有するモノマーは、3級または4級アミン官能基を有するもの(好ましくは、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムまたはアクリルアミドエチルトリエチルアンモニウム)があるが、これらに限定されない。
【0046】
特に好適な実施形態において、約25〜約98重量%のメタクリルアミド、約2〜約50重量%のN,N−メチレン−ビス−アクリルアミドを含むコポリマーが使用される。
【0047】
本発明1つの特に好適な実施形態において、接着物質を網状にすることで、微粒子の安定性を上昇させることができる。例えば、ゼラチンの場合、網状化物質は、ゼラチンアミンと反応する2官能性化学物質(例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサルなど)から選択することができる。
【0048】
官能基化モノマーは一般に、モノマーとマーカーとの化学結合により得られ、マーカーには以下のものがある:
−化学色素、例えばCibacron BlueまたはProcion Red HE-3B、これらは微粒子を直接視覚化することを可能にする(Boschetti, J. Biochem-Biophys. Meth., 19:21-36 (1989))。この種のマーキングに使用できる官能基化モノマーの例は、N−アクリロイルヘキサメチレンCibacron BlueまたはN−アクリロイルヘキサメチレンProcion Red HE-3Bがある;
−磁気共鳴イメージング剤(エルビウム、ガドリニウムまたはマグネタイト);
−造影剤、例えばバリウムまたはヨード塩(例えば、アクリルアミノ−e−プロピオン−アミド)−3−トリヨード−2,4,6−安息香酸、これはBoschettiらが記載した条件(Bull. Soc. Chim., No. 4 France, (1986))により調製することができる。バリウムまたはマグネタイト塩の場合は、これらを粉末形態で初期モノマー溶液中に直接導入することができる。
【0049】
前記したように、合成後にマイクロスフェアをマーキングすることも可能である。これは例えば、蛍光マーカー誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)など)のグラフティングにより行うことができる。
【0050】
当該技術分野において公知の様々なタイプの細胞接着プロモーターを本発明において用いることができる。特には、細胞接着プロモーターは、コラーゲン、ゼラチン、グルコサミノグリカン、フィブロネクチン、レクチン、ポリカチオン(例えば、ポリリジン、キトサン等)、または他のあらゆる天然もしくは合成生物学的細胞接着物質から選択することができる。
【0051】
好ましくは、細胞接着プロモーターは、微粒子または他の固体基質の形態で、固定された微粒子のml当たり約0.1ないし1gの量存在する。
【0052】
微粒子は、懸濁重合、ドロップ・バイ・ドロップ重合または当業者に公知の他のあらゆる方法によって調製される。選択される微粒子調製法は、通常、その結果生じる微粒子の所望の特徴、例えば、微粒子の直径および化学組成に依存する。本発明の微粒子は当該技術分野において記載される重合の標準法によって作製することができる(例えば、E. Boschetti, Microspheres for Biochromatography and Biomedical Applications. Part I, Preparation of Microbands In: Microspheres, Microencapsulation and Liposomes, John Wiley & Sons, Arshady R., Ed., 1998 (印刷中)を参照、これは参照することにより本明細書中に組み込まれる)。微粒子はコラーゲン(ゼラチンは変性コラーゲンである)のような接着剤を含むモノマーの水溶液から開始して調製する。次に、この溶液を非水性適合溶媒と混合して液滴の懸濁液を作製し、次いでそれを適切な触媒によるモノマーの重合によって固体ゲルにする。その後、濾過または遠心によってマイクロスフェアを集め、洗浄する。
【0053】
細胞接着プロモーターまたはマーキング剤は、「リガンド固定化(ligand immobilization)」という用語で示される、アフィニティクロマトグラフィーにおいて公知の化学結合法によってマイクロビーズに導入する。別の導入法は、ビーズを構成するゲル網内で拡散させ、次いで拡散した分子を沈降もしくは化学架橋によって適所に捕捉することによるものである。この最後の方法によるビーズ移植に先立ち、ビーズによる輸送に適する治療薬、薬物または他のあらゆる活性分子をマイクロビーズに導入することもできる。
【0054】
本発明のマイクロスフェアは、当該技術分野において記載されている標準的な重合法、例えば、フランス特許第2,378,808号および米国特許第5,648,100号(これらの各々は参照することにより本明細書中に組み込まれる)によって得ることもできる。一般には、溶液中のモノマーの重合は約0℃ないし約100℃および約40℃ないし約60℃の範囲をとる温度で、重合反応開始剤の存在下において行う。
【0055】
重合開始剤はレドックス系の中から有利に選択される。特には、アルカリ金属過硫酸塩とN,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミンまたはジメチルアミノプロピオニトリル、過酸化ベンゾイルのような有機過酸化物との組み合わせ、もしくは2,2’−アゾ−ビス−イソブチロニトリルとの組み合わせさえ用いることができる。
【0056】
用いられる開始剤の量は当業者がモノマーの量および求められる重合速度に合わせる。
【0057】
重合は塊状またはエマルジョン状で行うことができる。
【0058】
マス重合の場合、異なる溶解した成分および開始剤を含む水溶液を均一媒体中で重合させる。これにより水性ゲルの塊にアクセスすることが可能となり、次にそれを、例えば篩のメッシュに通すことにより、マイクロスフェアに分離することができる。
【0059】
エマルジョンまたは懸濁重合は、所望のサイズのマイクロスフェアに直接アクセスすることが可能となるため、好ましい調製方法である。これは以下のように実施することができる:異なる溶解した成分(例えば、異なるモノマー、細胞接着物質)を含む水溶液を、攪拌することにより、任意に乳化剤の存在下において、水中では混和しない液体有機相と混合する。攪拌速度は、所望の直径を有する液滴を形成する水相エマルジョンが有機相中に得られるように調整する。次に、開始剤を添加することによって重合を開始する。これには発熱反応が伴い、その発生は反応媒体の温度を測定することによって追跡することができる。
【0060】
植物油もしくは鉱物油、特定の石油蒸留製品、塩素化炭化水素、またはこれらの異なる溶液の混合液を有機相として用いることができる。さらに、重合開始剤が幾つかの成分を含むとき(レドックス系)、乳化に先立ってそれらのうちの1つを水相に添加することができる。
【0061】
そのようにして得られたマイクロスフェアは、次に、冷却し、デカントして濾過することによって回収することができる。その後、それらをサイズ・カテゴリーによって分離し、洗浄してあらゆる痕跡量の二次生成物を除去する。
【0062】
重合段階に続いて、細胞接着物質の網状化の段階および、合成後のグラフト化によって識別可能となったマイクロスフェアの場合にはおそらく、マーキング物質段階を行うことができる。
【0063】
細胞接着および成長促進の特定の特性を有する本発明の微粒子は組織のバルキングに直接用いることができる。さらに、本発明の微粒子はin vitroでそれらの表面上で増殖させた特異的な自己由来細胞を有し、それによりこれらの微粒子が組織バルキングに特に有用なものとなり得る。
【0064】
本発明に先立ち、生理学的溶液中に懸濁させた移植可能な物質を組織に注入することで筋肉塊の内部に別個の凝集体を形成させることが行われた。これらの別個の凝集体は共に滞留する様々な量の移植物質を構成することができるが、その物質は組織それ自体に付着し、またはその一部となることはない。この解離は、移植された物質をその元々の移植部位から移動させる。
【0065】
本発明によると、この問題を回避するため、微粒子を個別に、または別々に注入することができ、あるいは、より好ましくは、より良好な組み込みおよびその移植の長期間の安定のため、微粒子の表面に細胞の層をコロニー化することができる。
【0066】
本発明の微粒子はそれらの表面上で細胞を増殖させる優れた能力を示す。例えば、本発明の微粒子の表面に始原筋細胞をうまく付着させ、それにより筋組織内により良好に組み込むことがなされている。加えて、組織バルキングの最終目標が組織の嵩を人工的に増加させることであるため、注入に先立つ微粒子表面のコロニー化に前脂肪細胞も用いられている。この場合、これらの前脂肪細胞は他のあらゆる通常細胞に類似する体積を有するが、注入後、それらの前脂肪細胞がin vivoの生理学的条件に晒されると、脂肪の液滴を蓄積し、それによりその移植片の嵩を体積で10%を上回って増加させる。
【0067】
本発明によると、患者において組織バルキングを実施する手段の1つを以下のように記載することができる:
a)単純な生検によって始原細胞を患者から引き出して単離し、
b)これらの細胞を、成長促進条件(例えば、おそらくは(患者から抜き出した)自己血清を含む栄養培地を用いてコンフルエントとなるまで)の下で、微粒子の表面上で増殖させ、
c)頂部に増殖した患者の細胞を有する微粒子をバルキングしようとする患者の標的組織に注入する。
【0068】
GERDを治療するためには、これらの微粒子、または他の固体基質を内視鏡での送達または腹腔鏡技術のいずれかによって食道を介して導入し、食道と胃とが出会う位置の括約筋、すなわち、下部食道括約筋の壁に注入する。これにより括約筋の内腔が減少し、したがって筋肉をより容易に収縮させることが可能となって食道内への胃液の逆流が減少する。加えて、この治療は下部食道の炎症を減少させる。これらの微粒子、または他の固体基質には、その後のX線可視化のためのX線不透過性色素または他の造影剤を載せることもできる。
【0069】
別の実施形態においては、GERDを治療するために食道と胃との接合部で括約筋に注入される微粒子は、特定の量の、GERDの治療に用いられる薬物、例えば、シメチジン、ラニチジン、ファモチジンおよびニザチジンを含むHヒスタミンアンタゴニスト;オメプラゾールおよびランソプラゾールを含むH,K−ATPアーゼの阻害剤;例えば、Al(OH)、Mg(OH)、およびCaCOを含む制酸剤をも含むことができる。尿失禁および皮膚のしわの治療と同様に、マイクロスフェアを抗炎症剤、血管形成阻害剤、放射性元素、および抗有糸分裂剤と共に用いることもできる。
【0070】
本発明のマイクロスフェアまたは微粒子と組み合わせて用いようとする他の治療薬には、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapiutics, 9th Ed., McGraw-Hill (1996) および The Physicians's Desk Reference(登録商標) 1997 に報告されるような、皮膚の障害、GERDおよび尿失禁を治療するためのものが含まれる。
【0071】
従来技術の方法を上回る本発明によるGERDの治療方法の主な利点は以下の通りである:
a)手術と比較して患者に対する侵襲作用が少ない;
b)制酸剤または他の薬剤を上回るより永続的な効果;
c)走化性効果を伴う良好な生体適合性;および
d)X線可視化またはMRIを用いて患者の追跡評価を補助する能力、
である。
【0072】
尿失禁を治療するためには、微粒子、または他の固体基体を尿道を介して導入し、膀胱括約筋壁に注入する。これによりこの括約筋の内腔が減少し、したがって筋肉のより容易な収縮が可能となって失禁の可能性が低下する。これらの微粒子、または他の固体基質には、その後のX線可視化のためのX線不透化性色素または他の造影剤を載せることもできる。
【0073】
別の実施形態においては、尿失禁を治療するために膀胱括約筋に注入される微粒子は、特定の量の、尿失禁の治療に用いられる薬物、例えば、抗利尿薬、抗コリン作用薬、オキシブチニンおよびバソプレッシンを含むこともできる。
【0074】
注入された微粒子は局所的な炎症のような幾らかの一時的な副作用を生じる可能性があり、したがって、これらの微粒子は、抗炎症剤、例えば、アスピリンを含むサリチル酸誘導体;アセトアミノフェンを含むパラ−アミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ジクロドフェナク(diclodfenac)、ケトロラク、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジンを含む非ステロイド性抗炎症剤;メフェナム酸、メクロフェナム酸を含むアントラニル酸;ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンタトラロン(oxyphenthatrarone)のようなエノール酸;およびナブメトンを含み、またはそれらと共に注入することができる。これらの抗炎症剤は、好ましくは、微粒子の網に吸着し、短期間(数日)にわたって徐々に放出される。これらの微粒子は、患者に注入する前に微粒子網内に組み込むことができる他の特定の薬物の放出に用いることもできる。この薬物は移植部位で短期間にわたって局所的に放出され、治療全体を改善する。
【0075】
本発明の微粒子への薬物のような活性分子の組み込みは、乾燥微粒子を水溶液もしくはヒドロ−有機溶液中の活性分子または薬物の溶液と混合することによって達成することができる。微粒子はこれらの溶液を吸着することによって膨潤し、関心のある活性分子をその微粒子網に組み込む。これらの活性分子は、本質的にはイオン交換効果に基づく能動的な吸着機構のため、微粒子の内部に留まる。これらの微粒子はそれらの性質によりカチオン性基を担持し、かつ公知の抗炎症剤のようなアニオン性分子を吸着する能力を有し、これらのアニオン性分子は、次に、生理学的塩およびpHの作用により患者に注入した際に徐々に放出される。様々なタイプの微粒子が薬物分子を吸着する能力は当業者が容易に決定することができ、それらの微粒子を調製した初期溶液中に存在するカチオン性モノマーの量に依存する。
【0076】
従来技術の方法を上回る本発明による尿失禁の治療の主な利点の幾つかは:
a)通常のコラーゲン粘性溶液の使用よりも永続的な効果;
b)走化性効果を伴う良好な生体適合性;
c)追跡評価を補助するX線またはMRIの下での可視化;および
d)コラーゲンのような再吸収性天然物質を用いる反復治療の防止、
である。
【0077】
本発明による皮膚のしわの治療方法の主な利点は:
(a)手術と比較して患者に対する侵襲作用が少ない;
(b)コラーゲン注入の使用よりも永続的な効果;および
(c)走化性効果を伴う良好な生体適合性、
である。
【0078】
皮膚のしわを治療するため、これらの微粒子を注入によって導入することができる。微粒子は1種類以上の抗炎症剤を含んでいてもよい。
【0079】
組織のバルキングに用いるための微粒子の調製、並びに皮膚のしわ、尿失禁、およびGERDの治療を詳細に説明する以下の例を参照することにより、本発明をさらに規定する。以下の例は説明のためだけのものであり、決して本発明の範囲を制限するものではない。材料および方法の両者に対する多くの改変を本発明の目的および範囲から逸脱することなく実施できることは当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0080】
6.実施例
6.1 実施例1:走化性を有する不規則ヒドロゲル粒子の調製
58グラムの塩化ナトリウム及び27グラムの酢酸ナトリウムを室温で100mlの脱塩水に溶解した。この溶液に400mlのグリセロールを添加し、pHを6.0に調整した後モノマーを溶解した。より具体的には、この溶液に90グラムのメチロールアクリルアミド、2gのメタクリルアミドプロピル−トリメチル−アンモニウム−塩化物塩酸塩及び10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを添加し、その混合物を完全に可溶化するまで攪拌した。この溶液を約70℃で加熱し、50mg/mlの濃度のゼラチンの溶液100mlを添加した。その後、脱塩水を添加することによりこの混合物の総容積を1000mlに調整した。最後に、20mlの70mg/ml過硫酸アンモニウム水溶液及び4mlのN,N,N’,N’−テトラメチル−エチレン−ジアミンを添加した。得られた混合物を、密な三次元ゲルが形成されるまで70℃で約3時間保存した。このゲルは水に完全に不溶性であった。これを小片に切断した後に粉砕し、100−200μmに近い寸法を有する非常に小さい粒子を得た。次に、これらの粒子を、5%(w/v)グルタルアルデヒドを含む生理的バッファー1リットルに懸濁させ、2時間振盪した。最後に粒子を徹底的に洗浄し、未重合材料、副生物及び塩を除去した。均一な粒子サイズ分布を得るため、粒子懸濁液を適切なふるい掛けネットを用いてふるい掛けした。
【0081】
これらの粒子は筋肉のバルキングに先立つ組織細胞接着に望ましい特徴を有し、有効な細胞接着機構のための陽イオン基及び接着剤を含む。
【0082】
6.2 実施例2:走化性を有する球状ポリアクリル酸ヒドロゲルのゲル粒子の調製
上記実施例1に記述される通りに調製したモノマーの溶液を1500mlの攪拌した熱パラフィン油(50〜70℃)に徐々に注いだ。数分後、液状の懸濁液/エマルジョンが得られ(モノマー水溶液が油中に分散し、非常に小さい球状液滴を形成していた)、懸濁液中で重合が生じた。微小液滴がマイクロビーズに変換された。これらの固体マイクロビーズを遠心によって回収し、5%(w/v)グルタルアルデヒドを含む生理的バッファー1リットルに懸濁させて2時間振盪した。最後に、粒子を水で徹底的に洗浄し、油の痕跡物を完全に除去した。より有効な油の除去又は徹底的な洗浄に、極微量の非イオン性洗浄剤の存在下において有機溶媒抽出を用いることができる。得られたマイクロビーズは、必要であれば、ナイロンネットを通してふるい掛けすることにより較正し、オートクレーブ内で滅菌する。これらのマイクロスフェアは筋肉のバルキングに先立つ細胞接着に望ましい特徴及び特性を有する。
【0083】
6.3 実施例3:組織のバルキングに有用な親水性球状ポリスチレン共重合体粒子の調製
10グラムのスチレンを60mlのトルエンと混合する。1グラムのジビニルベンゼン、1グラムのジメチル−アミノエチル−メタクリレート及び1グラムのジメチル−アクリルアミドを得られた溶液に添加する。可溶化が完了した後、そのモノマー溶液を重合触媒としての1%AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)及び粘性誘発剤としての40mlのパラフィン油と混合する。この混合物を0.5% Tween 80 を含む攪拌水溶液に注ぐ。この状況で液滴懸濁液が形成され、温度を80〜90℃に3〜4時間かけて上昇させたときにそれが固体マイクロビーズに変化する。得られたビーズを乾燥させ、有機溶媒を抽出する。その後、中性pHのリン酸バッファー中のコラーゲンの水溶液中でそれらを膨潤させる。次に、埋め込まれたコラーゲンを実施例1及び2に記載されるようにグルタルアルデヒドで架橋させる。得られたビーズは細胞組織と相互作用するための陽性電荷、及び細胞接着のためのコラーゲン、及び細胞の成長及び生体適合性のための走化性剤を有する。これらのビーズは組織バルキング剤として適する。
【0084】
6.4 実施例4:細胞接着及び組織バルキングのための親水性シリコーンビーズの調製
20〜300μmの直径を有するシリコーンビーズ10グラムを酢酸エチル中のヘキサデシルアミンの溶液(10mg/ml)30mlに懸濁させる。この懸濁液を2時間攪拌し、100mlのエタノールを添加する。水中の1Mの硫酸アンモニウム又は塩化ナトリウム溶液を、300mlの懸濁液が得られるまで徐々に添加する。その後、このアミノ含有シリコーンビーズをアルカリ性条件においてブタンジオールジグリシジルエーテルと反応させる。このようにしてエポキシ誘導体が得られ、当該技術分野において公知の方法を用いてそれにゼラチンを結合させる。得られたビーズは、陽イオン性アミノ基及び細胞成長促進剤としてのゼラチンの存在により、目的の生体適合性、親水性、非生分解性及び細胞接着性を有する。これらは本発明による組織のバルキングに適する。
【0085】
6.5 実施例5:接着因子を含む組織バルキングのためのビーズの調製
実施例2に従って調製したビーズをアフィニティクロマトグラフィー吸着剤の調製において用いられる公知の試薬で化学的に活性化した。次に、活性化したビーズをフィブロネクチンもしくはビトロネクチンもしくはラミニンのような細胞接着剤の固定化に用いた。接着剤を結合バッファ(pH8〜10の100mM炭酸バッファー又はホウ酸バッファー)に1〜10mg/mlで溶解し、その溶液を活性化ビーズと混合した。得られたビーズは目的の細胞接着性及び成長性、非生分解性を有し、非再吸着性であった。これらは本発明による細胞接着及び永続性組織バルキングに適する。同様に、実施例3及び4に従って調製したビーズを用いることもできる。
【0086】
6.6 実施例6:走化性を伴う球状ポリアクリル酸ヒドロゲル粒子の調製
SPEC-70(BioSepra Inc.、Marlborough、MA)の名称で市販されているマイクロビーズは、組織バルキングの用途に適した弾性を有するポリアクリル酸ポリアニオン性ビーズである。しかしながら、これらのマイクロビーズは走化性ではなく、陽性電荷を持たない。まず真空下でSPEC-70マイクロビーズの水切りを行って水を除去し、次に生理的条件にある1%コンドロイチン硫酸ナトリウム塩の水溶液に懸濁させる。ひとたびこの化合物がビーズ構造に吸収されたら、ビーズを真空下で水切りして20重量%のポリリシンを含む水溶液に懸濁させる。この懸濁液を数時間振盪した後、真空下で水切りし、蒸留水で素早く洗浄する。その後、ビーズをエタノール中5%のブタンジオールジグリシジルエーテルの溶液に懸濁させ、一晩振盪する。これらの条件下で、硫酸コンドロイチンに加えてポリリシンが架橋される。得られた改変ビーズは、細胞接着のための陽性電荷及び細胞成長のための促進剤、例えば、ポリリシン及び硫酸コンドロイチンのような特性を有する。
【0087】
6.7 実施例7:組織バルキングのための走化性を有する放射線不透過性マイクロビーズの調製
実施例2からのマイクロビーズを真空下で水切りし、次に塩化バリウムの飽和溶液に懸濁させた。これらを室温で2時間振盪した後、真空下で水切りして過剰の塩化バリウム溶液を除去した。これらのビーズを硫酸アンモニウムの飽和溶液に懸濁させてさらに2時間振盪した後、真空濾過により過剰の硫酸アンモニウムを除去した。ビーズ内に生じる放射線不透過性沈殿が所望の量に到達するまで、このバリウム塩及び硫酸アンモニウムと接触させる操作を数回繰り返すことができる。得られたビーズは、組織バルキングのためのそれらの最初の好ましい特性を失うことなく放射線不透過性を有する。実施例3、4及び6からのマイクロビーズを同様に用いることができる。
【0088】
6.8 実施例8:組織バルキングのための走化性を有する放射線不透過性マイクロビーズの調製
ポリリシンをコートした実施例6からのマイクロビーズを蒸留水で徹底的に洗浄し、ナトリウムトリアゾエートの溶液に懸濁させる。酢酸を添加することによりこの懸濁液のpHを約7に調整し、数時間振盪する。放射線不透過性分子であるトリアゾエートをビーズにしっかりと吸着させ、真空下で洗浄することにより残りの試薬を除去する。得られたビーズは依然として細胞促進性を有し、いまや放射線不透過性をも有する。
【0089】
6.9 バルキングビーズ内部への抗炎症剤の導入
前記実施例に記載されるマイクロビーズは、標的組織に注入されたとき、局所的な一時的炎症反応を生じ得る。この現象を回避し、又は減少させるため、自己由来細胞で一度コートしたマイクロビーズに1種類以上の抗炎症剤を充填することができる。これらのマイクロビーズは本来陽イオン性であり、イオン交換効果によって陰イオン性薬物を吸収することができる。
【0090】
注入に先立ち、マイクロビーズを無菌生理食塩水中、10mg/mlの抗炎症アニオン性薬物溶液と混合する。この懸濁液を数時間振盪し、薬物が充填されたビーズを濾過又は遠心によって回収する。その後、得られた抗炎症性を有するマイクロビーズを本発明において用いるための組織バルキング剤として用いることができる。
【0091】
6.10 実施例10:in vitro でのポリマービーズへの前脂肪細胞の付着及び該ビーズ上での成長
実施例2からのポリマービーズの前脂肪細胞の付着及び成長を許容する能力を評価するため、新鮮な前脂肪細胞を Wistar ラットの精巣上体周辺の脂肪組織から集めて単離した。次に、前脂肪細胞を上記マイクロビーズの存在下において約7.1×10〜約1.7×10細胞/mlの濃度でマイクロキャリア培養のための古典的プロトコルを用いて in vitro で培養した。最初の段階で細胞はビーズの表面に付着し、次いで成長してビーズの表面を完全に覆う。合計コロニー形成期間は約72時間である。
【0092】
この型の培養からの前脂肪細胞は、良好な成長及び脂肪細胞への分化に関連する特有の生物活性を示す(脂質の蓄積)。さらに、これらの細胞は特異的酵素マーカー、例えば、グリセロール−3−ホスフェート−デヒドロゲナーゼ及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼの存在を示す。細胞が付着したマイクロビーズは本発明において用いるための組織バルキングに有用である。実施例2〜5のポリマービーズを同様に評価することができる。
【0093】
6.11 実施例11:そのin vivo 組織に一体化する能力をチェックするための in vitroにおけるマイクロビーズ上での前脂肪細胞及び筋細胞の培養
前脂肪細胞及び平滑筋細胞を Wistar ラットから、他の混入細胞の大部分を除去するための古典的プロトコルに従って単離した。これらの細胞を、10%ウシ胎児血清を補足したダルベッコ改変イーグル培地の存在下でペトリ皿において別々に培養した。実施例2に従って調製したゼラチンコート陽イオン性マイクロビーズを in vitro で培養した細胞に、それらがペトリ皿の表面を覆うまで添加した。初期細胞種濃度は0.7×10細胞/mlであった。
【0094】
観察を繰り返すことにより、細胞がマイクロビーズの表面に付着し、さらに増加してビーズの表面全てを覆ったことが示された。培養の5〜7日後、固体ビーズ網が形成され、そこでは細胞が幾つかのビーズのブロックを統合する結合剤として作用していた。ほとんどの場合において、ビーズ及び細胞を含む固体非解離性凝集体が形成された。
【0095】
成長期間(一般には5〜7日)の後、3,3’,5−トリヨード−D−チロニンのような分化要素を前脂肪細胞に添加したとき、それらの前脂肪細胞は細胞質内に脂肪を微小液滴として蓄積し始めた。
【0096】
3,3’−ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩又は2’−[4−ヒドロキシフェニル]−5−[4−メチル−1−ピペラジニル]2,5’−ビ−1H−ベンズイミダゾールでの特異的染色により、ビーズ基体への細胞の良好な付着が示された。
【0097】
分化期初期におけるレッドオイルでの細胞の染色により、細胞内部での脂肪の蓄積が立証された。
【0098】
加えて、リンゴ酸酵素の特異的酵素反応により、培養の終わりに、生じた脂肪細胞が主な特徴を発現し、機能的に生存可能であることが示された。この酵素は培養の初期には発現せず、脂肪の蓄積と同時に現れる。
【0099】
平滑筋細胞もDNA合成アッセイによってその増殖において追跡した;基体へのそれらの付着は前脂肪細胞のとおりに追跡した。筋細胞もビーズへの付着に加えて良好な増殖を示した。
【0100】
6.12 実施例12:ポリマービーズへの in vitro 筋細胞付着及び成長
実施例2からのポリマービーズの筋細胞の付着及び成長を許容する能力を評価するため、新鮮な平滑筋細胞を古典的な手順に従ってラットの食道から集めた。次に、細胞を上記マイクロビーズの存在下において約10細胞/mlの濃度でマイクロキャリア培養のための古典的なプロトコルを用いて in vitro で培養した。最初の段階において細胞がビーズの表面に付着し、次いでそれらがビーズの表面全体を覆うまで成長した。合計コロニー形成期間は約72時間であった。
【0101】
この型の培養からの筋細胞は良好な成長及び挙動を示し、特異的ミオシンマーカーを示した。細胞が付着したこれらのマイクロビーズは本発明による組織のバルキングに有用である。実施例2〜5からのビーズを同様に評価することができる。
【0102】
6.13 実施例13:in vivo バルキングのための細胞−マイクロビーズ粒子の注入可能な懸濁液の調製
細胞培養期の末期に細胞−ビーズ粒子を濾過によって集め、その物質を移植しようとする宿主に由来する血清で徹底的に洗浄する。この操作により細胞培養物に由来する混在物質の除去が確実なものとなる。次に、それらのマイクロビーズを数mlの自己由来血清に懸濁させ(約1:1のビーズ/血清比)、それにより適切なシリンジ又は他の注入装置によってバルキングしようとする組織内に注入する準備が整う。
【0103】
6.14 実施例14:in vivo バルキングのための細胞−マイクロビーズ粒子の注入可能な懸濁液の調製
実施例2に記載されるマイクロビーズに、実施例10に従ってラット筋細胞をコロニー形成させ、実施例13に従い、生理食塩水で希釈したラット血清(50%−50%)を用いて状態調節する。ビーズに固定された細胞の最終無菌懸濁液(容積の50%はビーズからなり、50%は生理食塩水からなる)をラットの右大腿筋に注入する。ビーズ注入の3ヶ月後、その筋肉の形状を観察し、組織学的に検査した。剖検で、筋肉容積は左大腿筋より大きいはずである。筋肉塊内部のビーズは、特定の有害炎症又は壊死効果なしに、線維芽細胞によって取り巻かれて現われるはずである。
【0104】
上述の本発明の実施形態は単に例示するものであることが意図され、当業者は本明細書に記載される特定の手順に対する多くの等価物を認識し、又はほんの日常的な実験を用いて確認することができる。このような等価物の全ては本発明の範囲内にあるものと考えられ、以下の請求の範囲によって網羅される。
【0105】
ここに記載される全ての参考文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
他の実施形態は以下の請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃食道逆流疾患の治療方法であって、粒子表面上の正電荷と細胞接着促進物質とを含む生体適合性の陽イオン性親水性微粒子の治療上有効な組織バルキング量を、該治療の必要な哺乳動物に投与することを含んでなり、該投与が下部食道括約筋または横隔膜に行われる、上記方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微粒子が自己由来細胞で前処理されるか、これと共に投与されるか、またはこれで被覆される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
マイクロスフェアまたは細胞被覆マイクロスフェアが、投与前に血清または全血で洗浄される、請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
自己由来細胞が粘膜細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、またはこれらの組合せである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
微粒子がコラーゲンもしくはその誘導体、グルコサミノグリカン、またはこれらの混合物の少なくとも1つで被覆されるか、またはこれに結合している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
微粒子が無菌かつ発熱物質を含まない注入可能な溶液中で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
微粒子が陽電荷と細胞接着促進物質とを含む親水性マイクロスフェアである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
微粒子が、約25〜約99重量%の中性親水性アクリルモノマー、約2〜約50重量%の陽電荷を有するモノマー1種以上、および約1〜約30重量%の官能基化モノマーを共重合形態で含む親水性コポリマーと、細胞接着促進物質とを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マイクロスフェアが約10〜約1000μmの範囲の直径を有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
尿失禁の治療方法であって、粒子表面上の正電荷と細胞接着促進物質とを含む生体適合性の陽イオン性親水性微粒子の治療上有効な量を、該治療の必要な哺乳動物に投与することを含んでなり、該投与が膀胱括約筋に行われる、上記方法。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
微粒子が自己由来細胞で前処理されるか、これと共に投与されるか、またはこれで被覆される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
微粒子または細胞被覆マイクロスフェアが、投与前に血清または全血で洗浄される、請求項11または13記載の方法。
【請求項15】
自己由来細胞が膀胱細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、またはこれらの組合せである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
微粒子がコラーゲンもしくはその誘導体、グルコサミノグリカン、またはこれらの混合物の少なくとも1つで被覆されるか、またはこれらに共有結合している、請求項11記載の方法。
【請求項17】
微粒子が無菌かつ発熱物質を含まない注入可能な溶液中で投与される、請求項11記載の方法。
【請求項18】
投与が注射器により行われる、請求項11記載の方法。
【請求項19】
微粒子が陽電荷と細胞接着促進物質とを含む親水性マイクロスフェアである、請求項11記載の方法。
【請求項20】
微粒子が、約25〜約99重量%の中性親水性アクリルモノマー、約2〜約50重量%の陽電荷を有するモノマー1種以上、および約1〜約30重量%の官能化モノマーを共重合形態で含む親水性コポリマーと、細胞接着促進物質とを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
微粒子が1種以上の抗炎症剤を充填されているか、またはこれと共に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項22】
マイクロスフェアが約10〜約1000μmの範囲の直径を有する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
皮膚のしわの改善方法であって、粒子表面上の正電荷と細胞接着促進物質とを含む生体適合性の陽イオン性親水性微粒子を、該治療の必要な哺乳動物に投与することを含んでなり、該投与が該皮膚のしわの部位またはそのまわりに行われる、上記方法。
【請求項24】
哺乳動物がヒトである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
皮膚のしわの部位がヒトの顔、首、胴体、腕、手、胃、股関節部、脚または足である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
皮膚のしわの部位がヒトの目、唇、頬、耳または鼻の領域である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
微粒子が自己由来細胞で前処理されるか、これと共に投与されるか、またはこれで被覆される、請求項23記載の方法。
【請求項28】
自己由来細胞が前脂肪細胞である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
微粒子または細胞被覆マイクロスフェアが、投与前に血清または全血で洗浄される、請求項23または27記載の方法。
【請求項30】
微粒子がコラーゲンもしくはその誘導体、グルコサミノグリカン、またはこれらの混合物の少なくとも1つで被覆されるか、またはこれらに結合している、請求項23記載の方法。
【請求項31】
微粒子が無菌かつ発熱物質を含まない注入可能な溶液中で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項32】
微粒子が陽電荷と細胞接着促進物質とを含む親水性マイクロスフェアである、請求項23記載の方法。
【請求項33】
微粒子が、約25〜約98重量%の中性親水性アクリルモノマー、約2〜約50重量%の陽電荷を有するモノマー1種以上、および約1〜約30重量%の官能化モノマーを共重合形態で含む親水性コポリマーと、細胞接着促進物質とを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
微粒子が1種以上の抗炎症剤で充填されているか、またはこれと共に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項35】
マイクロスフェアが約10〜約1000μmの範囲の直径を有する、請求項23記載の方法。
【請求項36】
投与が数日間にわたって複数回繰り返される、請求項23記載の方法。
【請求項37】
細胞接着促進物質がフィブロネクチン、ラミニン、コンドロネクチン、エンタシン、エピボリン、肝細胞接着分子、血清拡散因子、コラーゲン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、グルコサミノグリカン、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1、11または23記載の方法。
【請求項38】
組織バルキングに適した無菌の注入可能な溶液であって、
(a) 直径10〜1000μmを有する親水性陽イオン性マイクロスフェア(該マイクロスフェアは中性親水性モノマー、1種以上の陽イオン性モノマー、1種以上の官能化モノマー、および細胞接着促進物質を含む)、および
(b) 自己由来細胞、
を含んでなる、上記溶液。
【請求項39】
組織バルキングのための方法であって、
(a) 親水性ポリマーと細胞接着促進物質とを含む陽イオン性微粒子を調製し、
(b) 得られる微粒子を組織バルキングが望まれる哺乳動物の部位に投与する、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項40】
皮膚のしわを改善する方法であって、
(a) 親水性ポリマーと細胞接着促進物質とを含む陽イオン性微粒子を調製し、
(b) 得られる微粒子を哺乳動物の皮膚のしわの部位に投与する、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項41】
胃食道逆流疾患の治療方法であって、
(a) 親水性ポリマーと細胞接着促進物質とを含む陽イオン性微粒子を調製し、
(b) 得られる微粒子を哺乳動物の食道と胃が出会う位置の括約筋の壁内に注入することにより投与する、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項42】
尿失禁の治療方法であって、
(a) 親水性ポリマーと細胞接着促進物質とを含む陽イオン性微粒子を調製し、
(b) 得られる微粒子を哺乳動物の尿道から投与し、かつ膀胱括約筋の壁内に該微粒子を注入する、
ことを含んでなる、上記方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248233(P2010−248233A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152667(P2010−152667)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2000−534243(P2000−534243)の分割
【原出願日】平成11年3月4日(1999.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500418163)バイオスフィアー メディカル,インク. (1)
【Fターム(参考)】