説明

組織・細胞障害のための予防・修復剤

【課題】外因性傷害による組織・細胞障害及び老化や生活習慣により惹起される内因性傷害による組織・細胞障害など、ヒトを含む動物における組織・細胞障害を効果的に予防し及び/又は修復し、結果的に臓器・器官における障害予防及び/又は修復する手段の提供。
【解決手段】哺乳動物に対して生理活性を有し且つ糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む多糖類及び/又はそのオリゴ糖類を一種又はそれ以上、さらに必要に応じてセラミドを配合・混合して成る組織・細胞障害のための予防・修復剤。全て天産品を利用するものであるから、安全且つ長期にわたり使用出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物に対して生理活性を有し且つ糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む多糖類及び/又はオリゴ糖類を一種又はそれ以上配合・混合して成る組織・細胞障害のための予防・修復剤、及び前記多糖類及び/又はそのオリゴ糖類に加えてセラミドを配合・混合して成る組織・細胞障害のための予防・修復剤に関する。更に詳しくは、該多糖類及び/又はオリゴ糖類が、ホモ多糖類及び/又はホモオリゴ糖類、ヘテロ多糖類及び/又はヘテロオリゴ糖類及び化学修飾多糖類及び/又は化学修飾オリゴ糖類のうちから選択されるものであり、また該組織・細胞障害のための予防・修復剤が、多糖類としてシアロ糖鎖含有多糖類、熊笹由来多糖類、米ぬか由来多糖類、担子菌類由来多糖類、褐藻類由来多糖類、紅藻類由来多糖類、朝鮮人参由来多糖類、グリコサミノグリカン類、リグニン結合セルロース又はヘミセルロース、キチン及びキトサン並びにこれらから誘導されるオリゴ糖類のうちから選択される少なくと一種又はそれ以上を必須成分とし含有して成るものである、組織・細胞障害のための予防・修復剤、また該多糖類及び/又はオリゴ糖類が好ましくは、哺乳動物の細胞間の認識、情報伝達及び接着に関与する糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む単糖から構成されるものである、組織・細胞障害のための予防・修復剤に係わる。更には、多糖類又はこれらから誘導されるオリゴ糖類が、哺乳動物の細胞間の認識、情報伝達及び接着に関与する糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖、即ちグルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルノイラミン酸のうちから選択される少なくとも一種又はそれ以上を構成単糖として含む、組織・細胞障害のための予防・修復剤に係わる。
また本発明は、組織・細胞障害が、哺乳動物における循環系、神経系、免疫系及び内分泌系並びに代謝系の組織・細胞の障害・破壊に生起するものである、組織・細胞障害のための予防・修復剤のも係わる。
更には、該多糖類及び/又はオリゴ糖類に、これらの構成単糖であるグルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルノイラミン酸デンプン、タンパク質や脂質などの栄養素や構成栄養素及びビタミン類やミネラル類などの調節栄養素、並びに食材として又は薬理的に許容される他の添加物又は基剤を更に添加して成る、組織・細胞障害のための予防・修復剤を含有する組成物のも係わり、組織・細胞障害のための予防・修復剤を含有する該組成物は、組織・細胞障害を予防・修復する目的のための健康食品などのサプリメント、化粧品、畜産用飼料、ペットフード又はペット用サプリメントなどの形状としたものにも係わる。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む哺乳動物が受ける組織・細胞障害について言及すれば、細菌類、ウイルスなどの微生物の感染による主として呼吸系や消化管系臓器・器官に認められる障害、抗生物質を含む薬物の服用による内臓諸器官の障害、排気・廃棄ガス、廃液中に含まれる傷害性化合物による主として呼吸器、消化管系における傷害、残留農薬・肥料、防腐剤、食品添加物など食品中に含まれる化学物質による消化管系を中心とした細胞傷害、放射線、紫外線などDNA損傷に由来する細胞傷害など外因性の障害、及びこれら外因性の細胞傷害・障害に加えて、精神的ストレスなどに誘発されるか又は筋肉組織における硬縮による血行不良など、食生活を含む生活習慣に主として基因した、例えば運動、感覚、循環、神経、免疫、内分泌の諸系における障害などの内因性の細胞傷害・障害が挙げられるのであって、これら細胞障害が累積し相互作用して、更に組織障害を招来することになる。そして、これらの組織・細胞障害が、器官や臓器を傷害して器官・臓器の障害の原因となり、老化を惹起すると共に、最終的には脳・心血管系疾患を始めとする所謂生活習慣病の原因となっていることは明白である。
【0003】
これら疾患に対する現代西洋医学は、薬物医療及び要素還元主義に基く実験動物と臓器別医療により特徴ずけられ、必然的に医療の専門化・細分化を招来するが、同時に単純化の弊害を免れることは出来ない。医学と医療の懸隔はますます大きくなり、医療は、極端な薬物による対症療法が過大化したためによる副作用禍、要介護病人と寝たきり病人の増大、徒な医療費の巨大化を招来し実効策を喪失して、隘路に陥っている。
【0004】
2003年ヒトゲノムの解読が完了したのを受けて、恰も生命の本質と代謝性疾患の原因が解明され、あらゆる疾病の治療の可能性が大いに喧伝された。しかし、その後現在に到るまで見るべき研究成果は全く報告されていない。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外因性傷害による組織・細胞障害及び老化や生活習慣により惹起される内因性傷害による組織・細胞障害など、ヒトを含む動物における組織・細胞障害を効果的に予防し及び/又は修復し、結果的に臓器・器官における障害予防及び/又は修復する手段を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討を重ねた結果、天然に存在する糖質栄養素のうち、哺乳動物に対して生理活性を有し且つ糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む多糖類及び/又はこれらから誘導されるオリゴ糖類が、これらを一種以上配合・混合した場合相互作用によって全く予期し得ない相乗的効果を発揮し、その結果極めて効果的に前記した如き哺乳動物における組織・細胞障害を予防及び/又は修復し、最終的には臓器・器官の障害をも予防及び/又は修復することを見出して、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる生理活性を示す多糖類及び/又はオリゴ糖類は、多細胞生物において細胞間の接着、情報交換や認識、また細胞の増殖などに関与する糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成するシアル酸、D−グルコース、D−ガラクトース、L−フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチル−ガラクトサミン、シアル酸、マンノース及びキシロースから選択される少なくとも一種を構成単糖として含有するホモ多糖類、ヘテロ多糖類及び化学修飾多糖類及び/又はこれらから誘導されるオリゴ多糖類であって、かかる多糖類及び/又はオリゴ糖類の混合物が、相乗効果を発揮してヒトを含む哺乳動物における組織・細胞の障害を効果的且つ効率的に予防及び/又は修復するのである。かかる多糖類及び/又はオリゴ糖類は、高分子量のホモ多糖類、ヘテロ多糖類及び化学修飾された多糖類、例えばコロカリア(燕か)、ロイヤルゼリーなどのシアロ糖鎖含ホモ又はヘテロ多糖類、熊笹や米ぬかに由来するアラビノキシランなどのホモ又はヘテロ多糖類、マイタケ、シイタケ、アガリクスなど担子菌類に由来するレンチナン、シゾフィ

類に由来する粘質多糖類である硫酸化フコピラナンなどの化学修飾されたホモ又はヘテロ多糖類、紅藻類に由来する粘質多糖類である硫酸化ガラクトピラナンなどの化学修飾されたホモ又はヘテロ多糖類、褐藻に由来するアルギン酸などの多

多糖類、例えばコンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等の硫酸化多糖類、ヒアルロン酸などの非硫酸化多糖類であるグリコサミノグリカン類であるムコ多糖類、例えばペクチン酸、コロミン酸などのカルボキシ含有多糖類、節足動物などの外殻物質に由来するキチン等のムコ多糖類やその加水分解物であるキトサン、セルロース又はヘミセルロースと結合したリグニン類、並びにこれら高分子量多糖類から誘導されるオリゴ多糖類を包含する。これらの多糖類及び/又はオリゴ糖類は、何れも天産品であり、副作用も無くまた安定であり、ヒトを含む哺乳類動物における組織・細胞の障害を予防し及び/又は修復するために安全且つ長期間使用することが出来る。
【0008】
本明細書において使用する「組織・細胞の障害」とは、ヒトを含む哺乳動物において、放射線、紫外線、電磁波、太陽光線など主としてDNA損傷に基因する細胞及び粘膜や皮膚組織等の組織・細胞の障害・傷害、外傷や血行不良に因る結合織を含む粘膜や皮膚組織糖の組織・細胞の傷害、酸化的リン酸化によるエネルギー産生に伴う活性酸素に基因した各種器官・臓器の構成組織及び基底膜や細胞外基質などにおける組織・細胞の障害・傷害、排気ガスや大気汚染ガスなどによる鼻腔から気道及び肺内部における細胞・組織の障害・傷害、薬物、食品添加物、アルコール、トランス脂肪酸、トランスアミノ酸など異物による各種細胞・組織の障害、及びウイルス、細菌、原生動物などの微生物などによる肝臓など各種臓器・器官における組織・細胞の損傷・障害、脳、神経組織及び心臓における神経細胞死・脱落による組織・細胞の障害・傷害、すい臓、脾臓、腸管における梗塞による細胞・組織の障害・傷害、外傷や脳卒中など諸種の疾患による後遺症また生活習慣などに基因する血行不良や関節硬縮による各種組織変性壊死、神経細胞の変性壊死、廃用性筋・骨萎縮などによる筋肉組織・細胞の変性・壊死などの障害・傷害及び脳性マヒ、脊髄マヒ、自閉症、ダウン症等の神経ネットワークにおける障害・障害、各種腎炎、腎障害に伴う腎糸球体ろ過機能低下など腎臓機能障害、アトピー性皮膚炎における皮膚における障害・傷害などを言うものとする。
【0009】
次にかかる組織・細胞障害と糖鎖との関連について述べる。生命体を構成するタンパク質及び脂質における糖鎖は、生命活動の基本単位である「細胞」に多様な機能を付与する必須構成成分〔即ち、細胞壁の構造付与と細胞外マトリックス物質の構造決定〕であり、酵素、ホルモン、細胞壁構成成分であるなどタンパク質の物性修飾・改変、並びに複合糖質の細胞内外での輸送と管理、細胞相互の接着の仲介と調節、及び細胞間の情報伝達の仲介等に関与する。
【0010】
詳述すれば、生体内における糖は、でんぷんやグリコーゲンのほかに糖脂質および糖タンパク質の糖成分として存在するのであって、糖脂質は、リン脂質と共に複合脂質を形成し、際菌類から植物・動物に到るまで広範に、専ら細胞膜・生体膜の主成分として存在し、細胞の膜抗原・血液型物質・相互識別・情報伝達・神経線維形成・増殖制御などの重要な機能に関与するが、一方糖タンパク質は、ヘテロ糖鎖を有するタンパク質であり、ムコ多糖を側鎖とするプロテオグリカンと共に多様な生理機能を果し、アルブミンなど細胞外分泌タンパク質及びコラーゲン、ホルモン、細胞接着因子等の細胞膜因子、免疫グロブリン、サイトカインや酵素類を構成する。リポソームで合成されたタンパク質の大半は、租面小胞体、シスからトランスゴルジへの輸送過程で多数の糖転移酵素により糖鎖修飾され、水溶性を付与しまた特定の立体構造を形成し、負電荷を高め,同時に細胞や分子の認識に係わり炎症から微生物感染までに多彩な生理的機能が付与される。
【0012】
このような考察に基いて、特に細胞、組織から器官・臓器の全てのレベルでの広範な障害・傷害、及びその結果招来された組織や器官・臓器における機能不全や器質不全において、障害・傷害の本質が、障害された組織及び臓器・器官の細胞及び関連する基底膜や細胞外基質における構成細胞や細胞外基質物質において糖鎖構造が、欠落、損傷、異常付加、異常置換などの変異により変質していることを知見したのである。即ち、細胞間認識や情報交換に関与する糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む特定の糖質栄養素を集中的に補給することにより、細胞表面における糖鎖修飾の正常化を積極的に促進させ、かくして変質した糖鎖構造を修復することが契機となって、多細胞生物において細胞間の接着や認識また情報交換、更には細胞の分裂・新陳代謝を正常化することになり、循環系及び神経系、内分泌系と免疫系を回復させ、生命体の本質である恒常性維持機能・自然治癒力を再生させることを知見するに到った。更に検討を続けた結果、多細胞生物において細胞間の接着や認識また情報交換、更には細胞の分裂・新陳代謝に直接関与する糖鎖を構成する単糖質栄養素を補給するに先だって、これら単糖を構成成分として含み、特異的な生理的作用を有する多糖類又はこれらから誘導されるオリゴ糖類を投与することによって、先ず生体内でこれらの生理的作用を発揮させて器官・臓器レベルでの種々の障害を修復復元させ、その後に腸内で消化させたことにより生成した単糖類を糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖での糖鎖構造の修復に関与させ、その結果組織・細胞レベルでの障害を予防及び/又は修復させることによって、恒常性維持機能の全体的な修復・回復を図ることが可能となるである。
【0013】
なお付記すれば、該多糖類及び/又はそのオリゴ糖類又はこれら多糖類及び/又はそのオリゴ糖類とセラミドを配合・混合して成る組織・細胞の障害の予防・修復剤には更に、多細胞生物における情報交換などに関与する糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖であるグルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルノイラミン酸、また腸内において特に乳酸菌の生育を促進するラムノース、更にはデンプン、タンパタ質や脂質などの栄養素や構成栄養素、及びビタミン類、ミネラル類、ファイトケミカル類などの調節栄養素、並びに食材として又は薬理的に許容される他の添加物又は基剤を添加して、組織・細胞障害のための予防・修復剤を含有する組成物としてもよい。なお、かかる諸栄養素及び食材、添加物や基剤は、天産品又は天産品由来のものであるのが好ましい。また、かかる組成物は、健康食品などのサプリメント、化粧品、畜産用飼料、ペットフード又はペット用サプリメントなどの形状としたものであればよい。
【0014】
本発明に係わる組織・細胞障害のための予防・修復剤は、配合成分を適宜に選択すればヒトの場合経口的にもまた非経口的にも使用することが可能であるが、経口的、特に経消化管的に例えば液剤、ゼリー、散剤、顆粒剤、錠剤として使用するのが最も好ましい。また経皮的に皮膚外用剤又はトイレタリー・化粧品として使用・投与することも出来るし、またスプレー剤、噴霧剤、点眼剤、点鼻剤、うがい液などの形態として口腔内、鼻腔内、眼内などへの適用を行ことも出来る。何れの場合も、所定の組織・細胞障害のための予防・修復剤としての効果・作用を発揮させることが出来る。これらの剤形は何れも、当業界において使用される点か剤などを使用して、常法に従って製造することが出来る。
【0015】
本発明に係わる組織・細胞障害のための予防・修復剤及びその組成物を構成する上記配合成分は、特に個別に目的とする組織・細胞障害の種類、程度、発生個所などにより適宜に選択して配合・混合すれば良く、またその配合比率は、適宜に選択すればよく、特に限定されることはなく、典型的には欠きする実施例に記載される通りである。
【0016】
次に本発明で使用する、特異的な生理的作用を有する多糖類及び/又はオリゴ糖類の典型的例を挙げて、それぞれについて説明する、但し、これらなそれぞれ、本願発明に係わる配合成分の一つであるので、その調整・製造方法については述べない。
【0017】
シアロ多糖類は、一般的には海燕の巣として主として中華料理の食材として知られている、大量のシアル酸を含有するコロカリアを使用するのが好都合である。大量のシアロ糖鎖(シアル酸、即らN−アセチルノイラミン酸とN−グリコリルノイラミン酸を含有する多糖)を含有し、その含有量はヒトの顎下腺分泌物(即ち、唾液)の100倍以上、ロイヤルゼリーの20倍以上にも達する。シアル酸は、生体内において細胞表面及び糖タンパク、糖脂質及びプロテオグリカンにおける糖鎖の最先端に最も多く位置して、表面電荷形成に寄与する酸性単糖であり、細胞の接着(多細胞生物における細胞接着、炎症など)、認識、情報伝達また生物の発生・分化、神経発生・その機能(特にヒトの中枢神経系の灰白質では大量のシアル酸を含む=1mg/g程度)、関節機能(滑液産生増強)やホルモンの活性発揮などに生命反応の殆ど全ての局面において決定的な役割を果たす。またウイルス、細菌、原生動物などの感染開始、癌発生・転移なども関与している。
【0018】
アラビノキシランとしては、熊笹、米ぬかなどから抽出されるのが一般的であり、五単糖であるアラビノース及びキシロースとから成る。熊笹は、千島列島原産で、北海道以北に特異的に生育する笹類であり、アラビノキシランなど独特の多糖類を含有し、そのエキスは、免疫力増強、細胞壁強化・修復、血液浄化、創傷治癒、消炎、粘膜保護、抗潰瘍、強肝、止血、抗アレルギー、鎮咳、などの多くの薬理作用を有する。
【0019】

ラタケ、アガリクスなどから抽出される抗ガン活性のあるグルコースから成る多糖類であって、これら菌類は、ヒラタケやシロサルノコシカケなどと同じく担子菌門、アナタケ目、サルノコシカケ科に属する。抽出によって得られるエキスは、ベータグルカンなどの多糖類と糖タンパクを含有し、顕著な抗ガン作用のほか高血糖、高血圧、高コレステロール血症などに対する効果を有する。
【0020】
褐藻類由来粘質多糖類である硫酸化フコピラナンは、別名フコイダンとも称され、硫酸化フコースを主成分とする、海藻、特にコンブ、わかめ、モズクなど褐藻類から抽出される粘質多糖類である。U−,F−及びG−フコイダンの三種類があり、それぞれ糖鎖構造が異なるが、作用に差異はなく、ガン治癒・抑制、免疫強化、抗アレルギー、抗菌・抗ウイルス、血圧降下、アトピー改善、潰瘍治癒促進、ピロリ菌感染阻止、整腸、抗酸化・活性酸素除去、抗凝血などの多様な生理作用を有する。
【0021】
紅藻類に由来する硫酸化ガラクトピラナン骨格を有する、即ち硫酸化ガラクトースを主成分とする粘質の硫酸化多糖であって、一般的に抗凝血、癌転移抑制、抗エイズウイルスを有する。特にカラゲナンは、ガン細胞が分泌するヘパラン硫酸分解酵素による基底膜の破壊を防止する機能、即ちヘパラナーゼ阻害活性を持つ。また最近カラゲナンは、パポ−バウイルス(Papillomavirus,polyomavirus & SV40=simian virus)を強度に抑制する作用を有することが明らかとなっている。
【0022】
ヘパラン硫酸は、コアタンパク質を結合して大型のプロテオグリカンである膜結合型パールカンを形成し、細胞膜表面及び基底膜成分とし細胞外マトリックス中に広範に存在し、IV型コラーゲン、ラミニンフィブロネクチンなどと共に基底膜プロテオグリカン(パールカン)を形成する、グルコサミンとウロン酸とから成る。即ちその独特の糖鎖構造を介して各種細胞や組織の構造形成・強度付与また神経細胞成長を促進し、特に脳神経細胞に機能発現を増強し、その結果、脳機能、腎臓、神経シナプス、筋繊維膜など人体の基本的機能の発現・維持に関与し、また同時に細胞外マトリックスと細胞との間の情報伝達機能を担う。特に腎臓のろ過機能を担う腎糸球体の基底膜が有する高度濾過機能=物理的濾過+分子ふるい効果+電荷による分子透過などを正常に維持し、障害からの修復・回復を促進する。
【0023】

ニンジンにジンセノサイド(サポニン類)と共に含まれる多糖類生理活性物質であり、パナキサンとも称され、顕著な血糖値降下作用を有する。その後解糖促進作用(糖の嫌気的燃焼によるエネルギー供給を促進する:糖尿、慢性疲労、低体温、倦怠感、基礎代謝低下を改善)、造血作用(骨髄の造血幹細胞の増殖促進、血液増加作用:貧血、血小板減少症、放射線副作用の防止・改善)、SOD(superoxidedismutase)様作用(活性酸素抑制−老化防止、心筋梗塞予防)、免疫増強作用(インターロイキン作用増強:アトピー、アレルギー体質の改善、ガンの予防)、自律神経調節作用(便秘、更年期障害、不眠、めまい、食欲不振などの改善硬化)の作用を有する。
【0024】
コンドロイチン硫酸は、軟骨を含む動物の結合組織に分布する硫酸化グリコサミノグリカン鎖で、A、C、D,Eなど数種類がありコンドロイチン硫酸プロテオグリカンとして主として軟骨、血管壁、健などに存在し、コラーゲンと共に細胞外基質の主成分を構成し、組織に弾力性や抗張力を付与する。軟骨の主構成成分として、軟骨の弾性やイオン透過性、石灰化に関与し、神経痛、腰痛、関節痛、慢性肝炎などの修復剤としても使用されている。
【0025】
セラミドは、スフィンゴシンと長鎖脂肪酸とにより形成される酸アミドであり、糖鎖(Glc,Gal,Fuc,GalNAc,GlcNAc,Sia)の付加を受けてスフィンゴ脂質を形成し、特に糖鎖末端にシアル酸を持つ酸性スフィンゴ糖脂質はガングリオシド(スフィンゴミエリン、セレブロシドなど)と称され、哺乳動物における神経系の糖脂質の大半を占め、神経の発生やその機能発現に重要な役割を果し、中枢神経機能障害の修復・回復を促進する働きがある(神経突起の数と長さの増大、神経突起の伸長などの作用)。またセラミドやスフィンゴシン自体が、生体内情報伝達機能を有するものとして注目を集めている。即ち、糖脂質(例えばガングリオシド)においては、セラミドは細胞膜内に埋め込まれ糖鎖を細胞外に突き出した形で存在しているが、その役目を終えて代謝されるとスフィンゴシン、セラミドリン酸などに分解されるが、これらが細胞の分化・増殖のみならず遺伝的にプログラムされた細胞死(アポトーシス)に機能的に関与しているとされる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を記載して本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
製剤実施例1−3


上記成分を上記配合比率で常法に従って混合し、顆粒化して、顆粒剤a,b及びCを製造した。
【0028】
製剤実施例4
実施例1における製剤処方Bにおいて、乳糖に代えて4.0重量%のゼラチン、オレンジジュース30.0重量%及び水27.2重量%を用いて、先ずオレンジジュースを除く全配合成分を混合し、次に95℃に加熱した後室温の放冷して、オレンジジュースを加え、混合した。更に85℃に加熱して滅菌処理してオレンジゼリーを調製した。これを製剤Dとした。
【0029】
製剤実施例5
実施例1における製剤処方Bにおいて、乳糖61.20重量%に代えてマルチトール200重量%及び水61.20重量%を用いて全量を300重量%として、混合加熱して溶解し、95℃で減圧下に煮詰めて成形し、キャンデーを製造した。
これを製剤Eとした。
【0030】
製剤実施例6
実施例における製剤処方Bにおいて乳糖61.20重量%を除いた配合成分を混合して、これを組織・細胞の障害のための予防剤とし、下記処方に基いて常法に則りアトピー、かぶれなど皮膚疾患治療用の軟膏を製造した。
軟膏の処方例(全量を100.0重量%とする)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 3.0
ステアリン酸 5.0
モノステアリルグリセリン 5.0
トリオクタン酸グリセリン 10.0
流動パラフィン 10.0
製剤処方Bによる組織・細胞障害予防剤(固形物) 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
プロピレングリコール 1.0
香料 適量
精製水 残量
上記成分を加温して、撹拌乳化させて、皮膚外用軟膏を作製した。これを製剤Fとした。
製剤実施例7
下記する処方に基いて常法に従って、歯周病予防・治療用の歯磨きを製造した(全量を100.0重量%とする)。これを製剤Gとした。
グリセリン 10.0
エタノール 5.0
第二リン酸カルシウム 5.0
ヒドロキシアパタイト 3.0
炭酸カルシウム 1.0
酸化チタン 0.5
製剤処方Bによる組織・細胞障害予防剤(固形物) 5.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
香料 適量
実施例1
上記製剤実施例において調製した製剤を用いて、下記する障害・疾患に罹患した人に飲用又は適用した結果をまとめて示す。
本願発明に係わる組織・細胞障害のための予防・修復剤の製剤が人の症状に対して発揮する効果(表において、◎、○及び△は、“卓越した効果あり”、“効果あり”及び“若干の効果あり”を示す)

また、本願発明に係わる組織・細胞の障害のための予防・修復剤を配合した飴及び歯磨きを使用した口内炎及び歯周病罹患患者は、一日当り二回の適用で2乃至3日で症状が劇的に改善した。
実施例2
実施例1に記載した製剤処方Bに従った組織・細胞傷害の予防・修復剤をドッグフードに重量比率で2乃至3重量%で振り掛けて、皮膚病及び内分泌疾患にそれぞれ罹患したゴールデンリトリーバー及びビーグルに投与したところ、三日後に顕著な回復を示した。
【産業上の利用可能性】
本発明は、哺乳動物に対して生理活性を有し且つ糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む多糖類及び/又はそのオリゴ糖類を一種又はそれ以上配合・混合して成る組織・細胞障害のための予防・修復剤を提供するものであり、健康食品、トイレタリー製品、ペットフードなどの形状でヒトはもとより多くの哺乳動物に適用可能であり、産業上の利用可能性は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に対して生理活性を有し且つ糖タンパク質糖鎖及び糖脂質糖鎖を構成する単糖を一種以上構成糖として含む多糖類及び/又はそのオリゴ糖類を一種又はそれ以上配合・混合して成る組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項2】
前記多糖類及び/又はそのオリゴ糖類に加えてセラミドを配合・混合して成る、請求項1に記載された組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項3】
多糖類が、ホモ多糖類、ヘテロ多糖類及び化学修飾多糖類並びにこれらから誘導されるオリゴ糖誘導体の内から選択される少なくとも一種又はそれ以上である、請求項1又は2に記載された組織・細胞障害のための予防・修復剤
【請求項4】
該組織・細胞障害のための予防・修復剤が、多糖類としてシアロ糖鎖含有多糖類、熊笹由来多糖類、米ぬか由来多糖類、担子菌類由来多糖類、褐藻類由来多糖類、紅藻類由来多糖類、朝鮮人参由来多糖類、グリコサミノグリカン類、リグニン結合セルロース又はヘミセルロース、キチン及びキトサン並びにこれらから誘導されるオリゴ糖類のうちから選択される少なくと一種又はそれ以上を必須成分とし含有して成るものである、請求項1に記載の組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項5】
該組織・細胞障害のための予防・修復剤が、多糖類としてシアロ糖鎖含有多糖類、熊笹由来多糖類、米ぬか由来多糖類、担子菌類由来多糖類、褐藻類由来多糖類、紅藻類由来多糖類、朝鮮人参由来多糖類、グリコサミノグリカン類、リグニン結合セルロース又はヘミセルロース、キチン及びキトサン並びにこれらから誘導されるオリゴ糖類のうちから選択される少なくと一種又はそれ以上及びセラミドを必須成分とし含有して成るものである、請求項1又は2に記載の組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項6】
該多糖類及びこれらから誘導されるオリゴ糖類が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルノイラミン酸のうちから選択される少なくとも一種を構成単糖として含むものである、請求項1又は2に記載の組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項7】
組織・細胞障害が、循環系、神経系、免疫系及び内分泌系並びに代謝系を障害・破壊に生起するものである、請求項1又は2に記載の組織・細胞障害のための予防・修復剤。
【請求項8】
該多糖類及び/又はオリゴ糖類が更に、これらの構成単糖であるグルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルノイラミン酸、デンプン、タンパク質や脂質などの栄養素や構成栄養素、及びビタミン類、ミネラル類、ファイトケミカル類などの調節栄養素、並びに食材として又は薬理的に許容される他の添加物又は基剤を更に添加されて含有して成る、請求項1乃至7のうちの何れか一項に記載の組織・細胞障害のための予防・修復剤を含有する組成物。
【請求項9】
組織・細胞障害・治療のための組成物が、健康食品などのサプリメント、化粧品、畜産用飼料、ペットフード又はペット用サプリメントとしての形状である、請求項8に記載の組織・細胞障害予防・治療のための組成物。

【公開番号】特開2008−273919(P2008−273919A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148598(P2007−148598)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(505315269)株式会社ライラック (1)
【Fターム(参考)】