説明

組織内アルコールの非侵襲的測定システム

臨床的関連レベルの精度および正確さで量的赤外線分光法により人間組織の属性を非侵襲的に測定する装置および方法である。そのシステムは、組織スペクトルの複雑さ、高い信号対ノイズ比および側光精度条件、組織サンプリング誤差、較正維持管理問題および較正移行問題に取り組むために最適化されたサブシステムを含む。サブシステムには、照射/変調サブシステム、組織サンプリングサブシステム、較正維持管理サブシステム、FTIR分光計サブシステム、データ収集サブシステムおよび計算サブシステムが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、多変量解析と組合わせて非侵襲技術を利用して、アルコール、アルコール副生成物、アルコール付加物または乱用薬物の存在または濃度を測定する定量分光システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルコール測定の現在の方式は、血液測定または呼気検査の何れかに基づくものである。血液測定は、アルコール中毒レベルを判定する究極の判断基準を規定する。しかしながら、血液測定は、静脈または毛細血管のサンプルを必要とし、かつ健康リスクを最小限にするために、操作上の大きな注意を伴う。血液サンプルは、抽出されると、適切にラベルを付けて、臨床検査室またはその他の適当な場所に搬送しなければならず、そこで、血中アルコール濃度を測定するために医療用ガスクロマトグラフが一般に使用される。手続きの侵襲性と、関連するサンプルの取扱量が原因で、血中アルコール測定は、交通事故、被疑者がこのタイプの検査を要求する違反行為、および傷害を伴う事故のような、重大な局面に通常は制限されている。
【0003】
呼気検査は、侵襲性が低いことから、より一般的に、現場で遭遇する。呼気検査では、被験者は、肺の奥の肺胞から生じる安定した呼吸流量を得るために、十分な時間、十分な量の空気を機器内に吐き出さなければならない。その後、装置は、呼吸・血液分配係数を介して血中アルコールと関係する空気中のアルコール含有量を測定する。米国で使用される血液・呼吸分配係数は、2100(mgエタノール/dL空気に対するmgエタノール/dL血液のインプライド単位)で、その他の国では、1900と2400の間で変動する。分配係数の変動性は、それが被験者に依存するところが大きいという事実による。すなわち、各被験者は、各々の生理機能に依存して1900から2400の範囲の分配係数を有することとなる。各被験者の分配係数についての情報が現場用途で利用できないため、各国は、すべての測定に包括的に適用される単一の分配係数値を仮定している。米国では、DUI事件の被告は、起訴を妨げるための論拠として、包括的に適用される分配係数をしばしば使用する。
【0004】
呼気検査にはさらなる制限がある。先ず、“口内アルコール”の存在は、呼気アルコール測定値を不当に引き上げる場合がある。このため、口内アルコールが存在しないようにするために、測定を行う前に15分間の待機期間を必要とする。同様の理由により、げっぷまたは嘔吐が見受けられる個人に対しては、15分間の先延ばしが必要とされる。機器が周囲空気との平衡およびゼロアルコール濃度に戻ることを可能にするために、10分間以上の先延ばしが、呼気測定の間で必要とされることが多い。また、呼気アルコール測定の精度は、数多くの生理学的および環境要因に敏感である。
【0005】
多数の政府機関および社会一般は、血液および呼気アルコール測定に代わる非侵襲的方法を求めている。量的分光法は、現在の測定方法の制限に影響を受けない完全に非侵襲的なアルコール測定の可能性を提供する。量的分光法による生物学的属性(biological attributes)の非侵襲的測定は、非常に望ましいことが分かっているが、それを実現するのは非常に難しい。対象となる属性には、例えば、被分析物の存在、被分析物濃度(例えば、アルコール濃度)、被分析物濃度の変化方向、被分析物濃度の変化率、疾病の存在(例えば、アルコール依存症)、疾病の状態、それらの組合せおよび一部が含まれる。量的分光法による非侵襲的測定は、無痛で、体から体液を取り出す必要がなく、汚染または感染の危険性が殆ど無く、有害な廃棄物を生じることがなく、短時間で測定できるため、望ましい。
【0006】
生物学的組織の属性を非侵襲的に測定するための幾つかのシステムが提案されている。それらシステムには、偏光分析法、中赤外線分光法、ラマン分光法、クロモスコピ(Kromoscopy)、蛍光分光法、核磁気共鳴分光法、電波分光法、超音波、経皮的測定、光音響分光法および近赤外線分光法を組み込んだ技術が含まれる。しかしながら、それらシステムは、直接的および侵襲的測定に取って代わるものとはなっていない。
【0007】
一例として、米国特許第4,975,581号のRobinson et al.特許は、生物学的サンプルの既知の特性値のスペクトルのセットから実験的に得られる多変量モデルと併せて赤外線分光法を使用して、生物学的サンプルにおける未知の値の特性を測定する方法および装置を開示している。上記特性は、一般に、アルコールのような被分析物の濃度であるが、サンプルの任意の化学的または物理的特性とすることもできる。Robinson et al.特許の方法は、キャリブレーションステップと予測ステップの双方を含む2ステップのプロセスを伴う。
【0008】
キャリブレーションステップでは、赤外線が既知の特性値の較正サンプルに結合され、その結果、既知の特性値を有するサンプルを含む様々な成分および被分析物の関数として、赤外線放射の少なくとも幾つかの波長の減衰が生じる。赤外線は、サンプルに光を通すことにより、またはサンプルに光を反射させることにより、サンプルに結合される。サンプルによる赤外線の吸収は、光の波長の関数となる光の強度の変化を引き起こす。得られる強度変化は、最小限の幾つかの波長で、既知の特性値の較正サンプルのセットについて測定される。その後、元の強度変化または変換された強度変化は、多変量キャリブレーションモデルを得るために、多変量アルゴリズムを使用して較正サンプルの既知の特性に経験的に関連付けられる。モデルは、被験者の変動性、機器の変動性および環境の変動性を説明することが好ましい。
【0009】
予測ステップでは、赤外線が未知の特性値のサンプルに結合され、多変量キャリブレーションモデルが、この未知のサンプルから測定された光の適当な波長の元のまたは変換された強度変化に適用される。予測ステップの結果として得られるのは、未知のサンプルの特性の推定値である。Robinson et al.特許の開示内容は、引用により本明細書に援用されるものである。
【0010】
キャリブレーションモデルを構築して、そのようなモデルを被分析物および/または組織の属性の予測に使用する更なる方法が、Thomas et al.に発行された発明の名称を“Method and Apparatus for Tailoring Spectrographic Calibration Models”とする同一出願人による米国特許第6,157,041号に開示されている。この特許の開示内容は、引用により本明細書に援用されるものである。
【0011】
米国特許第5,830,112号において、Robinson特許は、非侵襲的な被分析物測定のための組織のロバスト・サンプリングの一般的方法について記載している。このサンプリング方法は、アルコールのような被分析物を測定するためにスペクトル領域によって最適化された路程である組織サンプリング・アクセサリを利用する。この特許は、400から2500nmまで組織のスペクトルを測定する幾つかの種類の分光計を開示しており、それには、音響光学的可変フィルタ、離散波長分光計、フィルタ、格子分光計およびFTIR分光計が含まれる。このRobinson特許の開示内容は、引用により援用されるものである。
【0012】
生物学的属性を測定するための商業的に実現可能な非侵襲的な近赤外線分光計に基づくシステムをもたらすことを達成しようとする研究がかなり存在するが、現在利用できるそのような装置は無い。上述した従来システムは、1またはそれ以上の理由により、組織のスペクトル特性によりもたらされる要求に完全に応じることができず、それは非侵襲的な測定システムの設計を困難なものにすると考えられている。このため、人間組織の生物学的属性の臨床的に関連する測定を行うのに十分な正確さおよび精度を有するサブシステムおよび方法を組み込んだ商業的に実現可能な装置に対するかなりの要求が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、一般に、多変量解析と組合わせて非侵襲技術を利用して、アルコール、アルコール副生成物、アルコール付加物または乱用薬物の存在または濃度を測定する定量分光システムに関するものである。
【0014】
本システムは、ある実施形態では5つの最適化されたサブシステムを含む設計を組み込むことにより、組織のスペクトル特性によりもたらされる課題を克服する。その設計は、組織スペクトルの複雑さ、高い信号対雑音比および測光精度条件、組織サンプリング誤差、較正維持管理問題、較正移行問題およびその他の多数の問題に取り組む。5つのサブシステムには、照射/変調サブシステム、組織サンプリングサブシステム、データ収集サブシステム、計算サブシステムおよびキャリブレーションサブシステムが含まれる。
【0015】
本発明は、正味の属性信号対雑音比を最大化するために、それらサブシステムの各々の実現および統合を可能にする装置および方法をさらに含む。正味の属性信号は、スペクトル分散のすべてのその他の光源に直交するため、対象となる属性に特有の近赤外線スペクトルの部分である。正味の属性信号の直交性は、任意の干渉種(interfering species)により規定される空間に対して垂直とさせ、その結果、正味の属性信号が、分散のそれらソースに対して無相関となる。正味の属性信号対雑音比は、定量近赤外線分光法による属性の非侵襲的測定についての本発明の正確さおよび精度に直接関連するものとなる。
【0016】
本発明は近赤外線放射を分析に使用することができる。1.0〜2.5ミクロンの波長範囲(または10,000〜4,000cm−1の波数範囲)の放射線は、そのような放射線が、許容吸光度特性を有する最大5ミリメートルの組織の光学的浸入深さとともに、アルコールを含む数多くの被分析物について許容される特異度を有することから、幾つかの非侵襲的測定を行うのに適したものとなり得る。1.0〜2.5ミクロンのスペクトル領域においては、組織を構成する多数の光学活性体が、それらの吸光度スペクトルの重なり合う性質により、あらゆる物質の測定を複雑にする。多変量解析技術は、対象となる物質の正確な測定を達成できるように、それらの重なり合ったスペクトルを分解するのに使用することができる。しかしながら、多変量解析技術は、多変量キャリブレーションが経時的にロバストのままであることを必要とすることがあり(較正維持管理)、複数の機器に適用することができる(較正移行)。また、可視および赤外線領域のようなその他の波長領域も、本発明に適している場合がある。
【0017】
本発明は、計器サブシステム、組織生理学、多変量解析、近赤外線分光法およびシステム全体のオペレーションの理解を包含した分光機器の設計の学際的研究を記録する。また、非侵襲的測定装置全体の作用および条件がよく理解されて、商業的に実現可能な価格およびサイズでかつ十分な正確さと精度で非侵襲的測定を行う商用機器の設計をもたらすように、サブシステム間の相互作用を解析している。
【0018】
非侵襲的監視のサブシステムは、再現性を与え、好ましくは、組織の均一な放射輝度、低い組織サンプリング誤差、対象となる特性を含む組織層の深さターゲティング、組織からの拡散反射スペクトルの効率的な収集、高い光学的スループット、高い側光精度、広いダイナミックレンジ、優れた熱安定性、効率的な較正維持管理(calibration maintenance)、効率的な較正移行(calibration transfer)、固有の品質管理、および使い易さを提供するように、高度に最適化されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のサブシステムを組み込んだ非侵襲的分光システムの概略図である。
【図2】図2は、3成分系の正味の属性信号の概念図である。
【図3】図3は、放出される放射線を空間的および角度的に均質化する手段を使用する本発明のシステムの概略図である。
【図4】図4は、アダマール符号化で半導体光源を組み入れた本発明の一実施形態の概略図である。
【図5】図5は、アダマール符号化で半導体光源を組み入れた本発明の一実施形態の概略図であり、ここでは光がサンプルと相互作用した後に符号化が行われている。
【図6】図6は、固体光源の温度を監視および制御するように設計された電子回路の一実施形態である。
【図7】図7は、光源のオン・オフを切り替える手段を含む、固体光源の駆動電流を制御するように設計された電子回路の一実施形態である。
【図8】図8は、所望の制御温度を変える手段を含む、固体光源の温度を監視および制御するように設計された電子回路の一実施形態である。
【図9】図9は、光源のオン・オフを切り替える手段および所望の駆動電流を変える手段を含む、固体光源の駆動電流を制御するように設計された電子回路の一実施形態である。
【図10】図10は、例示的な組織サンプリングサブシステムの構成要素の斜視図である。
【図11】図11は、サンプリング面を保持してその上に組織表面を配置する人間工学的装置の斜視図である。
【図12】図12は、照射および収集光ファイバの配置構成例を示す組織サンプリングサブシステムのサンプリング面の平面図である。
【図13】図13は、組織サンプリングサブシステムのサンプリング面の代替的な実施形態である。
【図14】図14は、組織サンプリングサブシステムのサンプリング面の代替的な実施形態である。
【図15】図15は、サンプラの幾何学的配置の様々な態様を示す図である。
【図16】図16は、2チャネルのサンプリングサブシステムの概略図である。
【図17】図17は、2チャネルのサンプリングサブシステムの利点を示すグラフ表示である。
【図18】図18は、組織上に局所干渉成分(topical interferents)が存在するときの、サンプリング面と組織間のインターフェースの概略図である。
【図19】図19は、サンプリング面に対して組織を配置する代替的な装置の概略図である。
【図20】図20は、例示的なデータ収集サブシステムの概略図である。
【図21】図21は、例示的な計算サブシステムの様々な態様を示す概略図である。
【図22】図22は、組織を通る光子の伝播を説明する、路程補正の前後の水のスペクトルである。
【図23】図23は、ハイブリッドキャリブレーション形成プロセスの図である。
【図24】図24は、3つの局所干渉成分の軽減ストラテジを組み合わせた決定プロセスの概略図である。
【図25】図25は、局所干渉成分の存在を検知する多変量キャリブレーション外れ値基準(multivariate calibration outlier metrics)の有効性を実証している。
【図26】図26は、100−33000cm-1(100−0.3ミクロン)の範囲に亘る1300および3000Kの黒体放射体の正規化NIRスペクトルを示している。
【図27】図27は、例証的なセラミック黒体光源について時間とともに観察された測定強度を示している。
【図28】図28は、幾つかの例証的な近赤外線LEDのスペクトル放射プロファイルを示している。
【図29】図29は、本発明とともに使用するのに適したライトパイプの透視端面図および詳細平面図である。
【図30】図30は、内部反射およびその結果得られるチャネリングの一例である。
【図31】図31は、本発明の例示的な実施形態の構成要素の概要を示している。
【図32】図32は、本発明の光学プローブの例示的な実施形態のサンプルインターフェースにおける照射および収集ファイバの配列の概略図である。
【図33】図33は、22の波長を使用して取得される非侵襲組織スペクトルを描いている。
【図34】図34は、図33のスペクトルから得た非侵襲組織アルコール濃度を、同時に行われる毛細血管血中アルコール濃度と比較している。
【図35】図35は、複数の半導体光源の光結合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明においては、“被分析物濃度”という用語は、一般に、アルコールのような被分析物の濃度のことを指す。“被分析物特性”という用語は、被分析物の有無、または被分析物濃度の変化の方向または速度のような、被分析物の濃度およびその他の特性、または被分析物濃度とともにまたはその代わりに測定することができるバイオメトリックを含む。この開示は一般に、対象となる“被分析物”としてアルコールに言及しているが、その他の被分析物についても、本発明から恩恵を受けることができ、そのような被分析物には、乱用薬物、アルコール生体指標およびアルコール副産物が含まれるが、それらに限定されるものではない。“アルコール”という用語は、対象となる被分析物の一例として使用しているが、その用語は、エタノール、メタノール、エチルグリコールまたは一般にアルコールと呼ばれるその他の化学物質を含むことが意図される。本発明において、“アルコール副産物”という用語は、人体によるアルコール性代謝の付加物および副産物を含み、それには、アセトン、アセトアルデヒドおよび酢酸が含まれるが、それらに限定されるものではない。“アルコール生体指標”という用語は、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、平均赤血球容積(MCV)、糖鎖欠損トランスフェリン(CDT)、エチルグルクロニド(EtG)、硫酸エチル(EtS)およびホスファチジルエタノール(PEth)を含むが、それらに限定されるものではない。“乱用薬物”という用語は、THC(テトラヒドロカンナビノールまたはマリファナ)、コカイン、M−AMP(メタンフェタミン)、OPI(モルヒネおよびヘロイン)、オキシコンチン、オキシコドンおよびPCP(フェンシクリジン)を指すが、それらに限定されるものではない。“バイオメトリック”という用語は、特定の人または被験者の正体を特定または確認するために使用することができる被分析物または生物学的特性を指している。本発明は、分光計を利用するサンプルの被分析物測定についての必要性に対処するが、ここで“サンプル”という用語は一般に生物学的組織を指す。“被験者”という用語は、一般に、サンプル測定値が取得された人を指す。
【0021】
“固体光源”または“半導体光源”は、スペクトル的に狭いか(例えば、レーザ)または広いか(例えば、LED)どうかに関わらず、半導体に基づくすべての光源を指しており、それには、発光ダイオード(LED)、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、水平キャビティ面発光レーザ(HCSEL)、量子カスケードレーザ、量子ドットレーザ、ダイオードレーザまたはその他の半導体ダイオードまたはレーザが含まれるが、それらに限定されるものではない。また、プラズマ光源および有機LEDも、厳密には半導体に基づくものではないが、本発明の実施形態で検討することができ、この開示では、固体光源および半導体光源の定義において、それらも含まれる。
【0022】
本発明において、“分散型分光計”という用語は、光の1またはそれ以上の波長をその他の波長から空間的に分離する任意の装置、構成要素または構成要素のグループに基づく分光計を示している。実施例には、1またはそれ以上の回折格子、プリズム、ホログラフィック格子を使用する分光計が含まれるが、それらに限定されるものではない。本発明において、“干渉/変調分光計”は、時間内の異なる周波数への光の異なる波長の光学的変調に基づく分光計の種類を示し、あるいは光干渉の特性に基づいて光のある波長を選択的に伝達または反射する。実施例には、フーリエ変換干渉計、サニャク干渉計、模造干渉計(mock interferometers)、マイケルソン干渉計、1またはそれ以上のエタロン、あるいは音響光学的可変フィルタ(AOTF)が含まれるが、それらに限定されるものではない。当業者であれば、ラメラ格子に基づく分光計のような、分散型および干渉/変調特性の組合せに基づく分光計も本発明に関して検討されることを認識するであろう。
【0023】
本発明は、吸光度またはその他の分光測定として幾つかの実施例において記載されている“信号”を利用する。信号は、1またはそれ以上の波長における、例えば、吸光度、反射率、帰還光の強度、螢光、透過率、ラマンスペクトル、または測定の様々な組合せなど、サンプルまたはサンプルの変化の分光測定に関して得られた任意の測定値を含むことができる。1またはそれ以上のモデルを使用する実施形態もあり、そこでは、そのようなモデルを、信号を所望の特性に関連付けるものとすることができる。モデルの幾つかの例には、部分最小二乗回帰分析(PLS)、線形回帰分析、多重線形回帰分析(MLR)、古典的最小二乗法(CLS)、ニューラルネットワーク、判別分析、主成分分析(PCA)、主成分回帰分析(PCR)、判別分析、ニューラルネットワーク、クラスタ分析およびK近傍法のような、多変量解析法から派生したモデルが含まれる。ランベルト・ベールの法則に基づく単一または多波長モデルは、古典的最小二乗法の特別な場合であり、よって本発明においては、多変量解析という用語に含まれる。
【0024】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読み取るべきである。図面は、必ずしも同一縮尺で描かれていないが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない例示的な実施形態を示している。この出願において、“約”という用語は、明示されるか否かに関わらず、すべての数値に当てはまる。“約”という用語は一般に、当業者が該当数値と同等と考えるであろう(すなわち、同じ作用または結果を有する)数の範囲を指している。幾つかの実施例では、“約”という用語が、最も近い有効数字に四捨五入された数を含むことができる。
【0025】
分光測定システムは、典型的には、スペクトルを得るために、光の異なる波長を分解して測定する幾つかの手段を必要とする。所望のスペクトルを実現する幾つかの共通の手法は、分散型(例えば、格子およびプリズムに基づく)分光計および干渉計型(例えば、マイケルソン、サニャクまたはその他の干渉計)分光計を含む。そのような手法を組み込んだ非侵襲的測定システムは、分散型および干渉計型装置の高い費用と、それらの固有サイズ、脆弱性および環境影響に対する感度とによってしばしば制限される。本発明は、発光ダイオード(LED)、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、水平キャビティ面発光レーザ(HCSEL)、ダイオードレーザ、量子カスケードレーザまたはその他の固体光源のような固定光源を使用して様々な波長の強度を分解および記録するための代替的手法を提供することができる。
【0026】
ここで図1を参照すると、被分析物の特性測定のための正確さおよび精度の許容レベルを実現できる非侵襲監視が概略図に描かれている。本発明の全体システムは、検討を進めるために、5つのサブシステムを含むものとして見ることができる。当業者は、開示された機能性のその他の細分を理解するであろう。サブシステムには、照射/変調サブシステム100、組織サンプリングサブシステム200、データ収集サブシステム300、処理サブシステム400およびキャリブレーションサブシステム(図示省略)が含まれる。
【0027】
サブシステムは、所望の正味属性信号対雑音比を達成するために、設計および統合することができる。正味の属性信号は、スペクトル分散のその他の光源に直交するため、対象となる属性に特有の近赤外線スペクトルの一部である。図2は、三次元系の正味の属性信号のグラフ表示である。正味の属性信号対雑音比は、本発明に係る定量近赤外線分光法による非侵襲的な属性測定の正確さおよび精度と直接関係がある。
【0028】
それらサブシステムは、再現性を与え、好ましくは、組織の空間的に均一な放射輝度、低い組織サンプリング誤差、適当な組織層の深さターゲティング、組織からの拡散反射スペクトルの効率的な収集、高い光学的スループット、高い側光精度、広いダイナミックレンジ、優れた熱安定性、効率的な較正維持管理、効率的な較正移行、固有の品質管理、および使い易さを提供する。サブシステムの各々は以下により詳細に説明する。
【0029】
[照射/変調サブシステム(100)]
照射/変調サブシステム100は、サンプル(例えば、人間の皮膚組織)を取り調べるために使用する光を生成する。分散型または干渉計型分光計を使用する古典的分光法では、多色光源(または対象となるサンプル)のスペクトルが、光の様々な波長を(例えば、プリズムまたは回折格子を使用して)空間的に分散するか、あるいは光の様々な波長を(例えば、マイケルソン干渉計を使用して)異なる周波数に変調することによって、測定される。それらの場合、分光計(光源とは異なるサブシステム)は、各波長がその他の波長とは実質的に独立に測定できるように、空間的または時間内に様々な波長を“符号化”する機能を果たすことが必要とされる。従来より分散型または干渉計型分光計が知られており、それらは、ある環境および用途においてそれらの機能を十分に果たすことができるが、それらのコスト、サイズ、脆弱性、その他の用途および環境における複雑さによって制限を受けることがある。
【0030】
本発明に開示されるシステムに固体光源を組み込むことの利点は、それらが強度を調整できるということである。このため、光の様々な波長を放射する複数の光源を、異なる周波数で変調される各光源とともに使用することができる。独立して変調される光源は、単一ビームに光学的に結合させて、サンプルに導入させることができる。光の一部を、サンプルから収集して、単一の光検出器によって測定することができる。その結果、独立のサブシステムとしての分光計は測定システムから取り除かれるため、サイズ、コスト、エネルギー使用量およびシステム全体の安定性における顕著な利点を与える、光源および分光計の単一の照射/変調サブシステムへの効果的な組合せをもたらす。
【0031】
固体光源を組み込んだ被分析物の特性を測定するシステムの幾つかのパラメータは、それに限定される訳ではないが、所望の測定を実行するのに必要な固体光源の数、光源の放射プロファイル(例えば、スペクトル幅、強度)、光源の安定性および制御、それらの光学的結合を含めて、検討しなければならない。各光源が個別の素子であるため、それらが常に導入されてサンプルから収集されるように、複数の光源の出力を単一ビームに結合させることが有利である場合がある。
【0032】
また、幾つかの種類の光源が強度の正弦波変調を受け入れることができ、その場合に、その他がオン・オフに切り替えられるまたは方形波変調されることを受け入れることができるため、光源の変調方式も考慮しなければならない。正弦波変調の場合には、多数の光源を、システムの電子工学設計に基づき様々な周波数で変調することができる。多数の光源により放射された光は、例えば、ライトパイプまたはその他のホモジナイザを使用して光学的に結合されて、導入されて、対象となるサンプルから収集された後に、単一の検出器により測定されるものとすることができる。その結果得られる信号は、フーリエ変換または類似の変換によって、強度対波長スペクトルに変換することができる。
【0033】
代替的には、幾つかの光源が、オン状態およびオフ状態の間で切り替えられるか、アダマール変換手法を受け入れることができる方形波変調が行われる。しかしながら、幾つかの実施形態では、測定中の異なる時間で異なる波長を遮断または通過させる従来型のアダマールマスクよりはむしろ、固体光源を高周波で循環させることができるため、電子機器でアダマール方式を実行することができる。アダマール変換または同様の変換は、強度対波長スペクトルを測定するために使用することができる。
【0034】
固体光源の別の利点は、多くの種類(例えば、VCSEL)が狭帯域の波長(それは、測定の実効分解能を部分的に決定する)を発するということである。その結果、幾つかの例示的な実施形態では、光ファイバまたはその他の手法で光源の放射プロファイルを成形または狭小化することは、それらが既に十分に狭いため、必要とされることはない。これは、システムの複雑さとコストの低減により、好都合となることがある。また、VCSELのような幾つかの固体光源の放射波長は、供給される駆動電流、駆動電圧によって、あるいは光源の温度を変化させることによって、幅広い波長に亘って調整可能である。この手法の利点は、所与の測定が特定の数の波長を要求する場合に、それらの実現可能な範囲に亘ってそれらを調整することにより、システムがより少数の離散的な光源で、その要求を達成することができるということである。例えば、非侵襲的な特性の測定が20の波長を必要とする場合に、10の個別のVCSELを、その10の各々を測定の間に2の異なる波長に調整しながら、使用することができる。この種の方式において、フーリエまたはアダマール手法は、光源の各調整点について変調周波数を変えることによって、または変調方式を走査方式と組合わせることによって、依然として適切なものとなる。
【0035】
本発明が固体光源ではなく黒体光源の幾つかの実施形態を想定していることに留意することは重要である。これらの実施形態では、広い黒体光源が、それらに限定される訳ではないが、線形可変フィルタ(LVF)、誘電体スタック、分散型ブラッグ格子、フォトニック結晶光子フィルタ、高分子フィルム、吸収フィルタ、反射フィルタ、エタロン、プリズムおよび格子のような分散素子、および量子ドットフィルタのような光学フィルタを使用して複数の狭い光源に変換される。その結果得られる多数の波長帯は、フーリエ方式またはアダマールマスクによって調整することができる。固体概念と同様に、分光システムは、システムのサイズ、コストおよびロバスト性の点で本質的な利点を与えることができる光源と結合される。
【0036】
その他の実施形態では、格子またはプリズムのような分散素子は広い帯域の光源(黒体、LEDまたはその他の広い放射光源の何れか)から光の波長を空間的に分離するために使用される。分散素子は、アダマールマスクまたは機械的チョッパ(例えば、フーリエスキームのための)を使用して、焦点面上のそれらの位置で独立して変調することができる様々な波長を分離する。前述した実施形態と同様に、結果として得られる光は、均質化して、光学プローブに導入することができる。図4および図5は、アダマール符号化で黒体光源を組み入れた本発明の実施形態の概略図を示している。
【0037】
アダマールマスクまたは機械的チョッパを組み込んだ機械的に調整される実施形態においては、ある場合に、光学プローブ(200)によりサンプルから光が収集された後に変調ステップを実行するのに都合の良いことがある。図5は、そのようなシステムの実施形態の概略図を示している。
【0038】
被分析物の特性は、電磁スペクトルの紫外線および赤外線領域に及ぶ様々な波長で測定することができる。アルコールまたは乱用物質のような皮膚中の生体内測定については、1,000nm乃至2,500nmの領域の近赤外線(NIR)領域が、人間の皮膚に存在するその他の化学種(例えば、水)と同様に、対象となる被分析物についての分光信号の感度および特異性により重要となる場合がある。また、被分析物の吸収性は、対象となる被分析物が存在する位置で近赤外線光が皮膚内に数ミリメートル浸入することができる程度に十分に低い。2,000nm乃至2,500nmの波長範囲は、NIRの1,000乃至2,000nmの部分において遭遇する弱いはっきりしない倍音よりも、結合バンドを含むため、特に有効な範囲となることがある。
【0039】
スペクトルの可視領域において一般に利用可能なLED、VCSEL、ダイオードレーザに加えて、NIR領域(1,000〜2,500nm)に亘る放射波長で利用可能な固体光源が存在する。これらの光源は、本発明の被分析物およびバイオメトリック特性の測定システムに適している。利用可能なNIR固体光源の幾つかの例には、Vertilas GmbHにより製造されるVCSEL、およびLaser Components GmbHから入手できるVCSEL、量子カスケードレーザ、レーザダイオード、またはRoithner Laser、Epitex、Dora Texas Corporation、Microsensor Tech、SciTech Instruments、Laser 2000、Redwave LabsおよびDeep Red Techから入手できるレーザおよびダイオードがある。これらの例は、実証的な目的のために含まれるものであり、本発明とともに使用するのに適している固体光源のタイプに限定されることを意図するものではない。
【0040】
[分解能測定および分解能向上]
分散型分光計では、分光測定の実効分解能は、システムにおける開口の幅によってしばしば決定される。多くの場合、分解能限界開口は、入射スリットの幅である。分光計内の光が検知される焦点面では、焦点面上の異なる空間位置に配置される異なる波長で、複数のスリット像が形成される。このため、一つの波長をその隣と独立に検知する能力は、スリットの幅に依存する。幅を狭くすることにより、分光計を通過することができる光の量が低下するが、波長間の良好な分解能が可能になる。このため、分解能および信号対雑音比は、一般に、互いにトレードオフの関係にあり、干渉計型分光計は、分解能と信号対雑音比間の同様の関係を有する。マイケルソン干渉計の場合には、スペクトルの分解能が、可動ミラーが平行移動する距離によって部分的に決定され、その距離が長いほど、より大きな分解能が得られる。このため、距離が大きくなるほど、走査を完了するのにより多くの時間を要する。
【0041】
本発明の測定システムの場合には、スペクトルの分解能が個々の光源(異なる光源であるかどうかに関わらず、すなわち、一つが複数の波長に調整されるか、あるいはその組合せ)の各々のスペクトル幅によって決定される。高分解能を必要とする被分析物の特性の測定については、VCSELまたはその他の適当な固体レーザを使用することができる。レーザ放射の幅は非常に狭くすることができ、それは光分解能につながる。中程度から低程度の分解能が必要とされる測定用途では、LEDが、固体レーザの代替手段よりも広い放射プロファイル(出力強度が波長の広い範囲に亘って分布している)を一般に有するため、適している場合がある。
【0042】
光源の実効分解能は、異なる種類の光学フィルタの使用を通じて、あるいはその組合せにより、向上させることができる。光源のスペクトル幅は、より高い分解能(例えば、放射波長のより狭い範囲)を達成するために、1またはそれ以上の光学フィルタを使用して、狭小化または減衰させることができる。本発明の実施形態で想定される光学フィルタの例には、線形可変フィルタ(LVF)、誘電体スタック、分散型ブラッグ格子、フォトニック結晶光子フィルタ、高分子フィルム、吸収フィルタ、反射フィルタ、エタロン、プリズムおよび格子のような分散素子、および量子ドットフィルタが含まれるが、それらに限定される訳ではない。
【0043】
本発明の実施形態から得られた測定値の分解能を改善する別の手段は、デコンボリューションである。デコンボリューションおよびその他の同様の手法は、2またはそれ以上のオーバラップする広い光源間に存在する信号の違いを分離するために使用することができる。例えば、部分的にオーバラップする放射プロファイルを有する2つの光源を、測定システムに組み入れることができる。測定値はサンプルおよび(アダマール、フーリエ変換またはその他の適当な変換によって)生じたスペクトルから収集することができる。光源の放射プロファイルについての情報により、プロファイルは、スペクトルの分解能を向上させるために、スペクトルから逆畳み込みを行うことができる。
【0044】
[光源の波長および強度の安定化および制御]
固体光源、特に、レーザのピーク発光波長は、光源の熱的状態または電気的特性(例えば、駆動電流または電圧)を変えることにより、影響を受けることがある。半導体レーザの場合には、熱的状態と電気的特性の変更により、半導体の格子構造の光学的特性または物理的サイズが変わる。その結果、装置内のキャビティ間隔の変化が生じ、それが、放射されるピーク波長を変える。固体光源がこのような作用を示すので、それらが分光測定システムで使用されるときに、発光のピーク波長の安定性およびそれに関連する強度が重要なパラメータになり得る。このため、測定中における各光源の熱的状態および電気的特性の双方の制御が、システム全体のロバスト性および性能の点から有利になり得る。また、熱的状態と電気的条件によって生じる光学的特性の変化は、単一の光源を多ピーク波長位置に調整可能とするために利用される。これは、個々の光源の数よりも多い波長位置を測定することができる被分析物の特性測定システムをもたらし、それによりシステムのコストおよび複雑さを低減することができる。
【0045】
温度の安定化は様々な手法を使って達成することができる。幾つかの実施形態では、温度の追加的な制御無しに、周囲の条件よりも高い温度に上昇させる(または低い温度に冷却する)ことにより、1または複数の光源を安定させることができる。その他の実施形態では、1または複数の光源を、制御ループを使用して設定温度(冷却または加熱の何れか)に能動的に制御することができる。本発明に適した温度制御ループ回路の図面が図6に示されている。
【0046】
光源の電気的特性は、固体光源の放射プロファイル(例えば、放射の波長位置)にも影響を与える。このため、1または複数の光源に供給される電流および/または電圧を安定させることが有利な場合がある。例えば、VCSELのピーク放射は駆動電流に依存する。ピーク波長の安定性が重要な実施形態については、駆動電流の安定性が重要な性能指数になる。そのような場合には、安定した駆動電流をVCSELに供給するように電子回路を設計することができる。回路の複雑さおよびコストは、必要とされる駆動電流の安定性に依存することがある。図7は、本発明とともに使用するのに適した電流駆動回路を示している。当業者であれば、電流制御回路の代替的な実施形態が従来より知られていて、それが本発明に適する場合があることを認識するであろう。また、駆動電流よりも駆動電圧の制御を必要とする固体光源もあり、当業者であれば、電流よりも電圧を制御するように設計された電子回路が容易に利用可能であると認識するであろう。
【0047】
幾つかの実施形態では、VCSELのような単一の固体光源が、測定の間に複数の波長に調節される。光源の調節を達成するために、温度設定点および電流の制御を含むように、図6および図7に示す回路をそれぞれ変更することができる。図8および図9は、放射波長の調節を可能にする温度および電流制御回路の実施形態をそれぞれ示している。幾つかの実施形態では、温度または駆動電流/電圧の何れかの調節によって、十分にピーク発光波長の所望の調節を実現することができる。その他の実施形態では、温度および駆動電流/電圧の双方の制御が、所望の同調範囲を達成するために必要とされる場合がある。
【0048】
また、ピーク発光波長を測定して安定させるための光学的手段も、本発明に関連して説明したシステムに組み入れることができる。ファブリペロ・エタロンは、相対的な波長基準を与えるために使用することができる。エタロンの自由スペクトル領域および鋭さは、VCSELピーク波長の能動的測定および制御を可能にする光通過帯域を提供するように規定される。このエタロンの例示的な実施形態は、部分的に鏡面を有する熱的に安定化された平坦な溶融石英板を使用する。各VCSELが多数の波長を提供することが必要とされるシステムについては、エタロンの自由スペクトル領域を、その透過ピークが調節のために所望の波長間隔と一致するように、選択することができる。当業者であれば、この用途に実行可能な多くの光学配置構成および電子制御回路があることを認識するであろう。制御回路の一例が図9に示されている。代替的な波長符号化手法は、分散格子および補助的なアレイ検出器を使用して、VCSEL波長をアレイ上の空間位置にエンコードする。分散型またはエタロンベースの手法の何れかにおいては、主となる光検出器よりも性能条件が厳しくない補助的な光検出器を使用することができる。能動的な制御は、任意のドリフトに対するリアルタイム補正を可能にすることにより、VCSEL温度および電流制御回路の安定条件を低減することができる。
【0049】
光学ディフューザ、ライトパイプおよびその他の周波数帯変換器のような光ホモジナイザは、再現性を与え、好ましくは、組織サンプリングサブシステム200の入力で均一な放射輝度を与えるために、照射/変調サブシステム100の幾つかの実施形態に組み入れることができる。均一な放射輝度により、良好な測光精度および組織の均等照射を保証することができる。また、均一な放射輝度により、光源間の製造の違いに付随する誤差を低減することができる。均一な放射輝度は、本発明において、正確で精度の高い測定を達成するために使用することができる。例えば、引用により本明細書に援用される米国特許第6,684,099号を参照されたい。
【0050】
すりガラス板は光学ディフューザの一例である。そのすりガラス表面は、光源およびその伝達光学素子から放出される放射線の角度を効率良くスクランブルする。ライトパイプは、その出力で放射強度が空間的に均一となるように、放射強度を均質化するために、使用することができる。また、二重の曲げを有するライトパイプは、放射の角度をスクランブルすることとなる。均一な空間的強度および角度分布の生成に関しては、ライトパイプの断面は円形とすべきではない。正方形、六角形および八角形の断面が、有効なスクランブルジオメトリである。ライトパイプの出力は、組織サンプラの入力に直接結合させることができ、あるいは組織サンプラに光が送られる前に追加的な伝達光学素子とともに使用することができる。例えば、発明の名称を“Illumination Device and Method for Spectroscopic Analysis”とする米国特許出願第09/832,586号を参照されたい。この出願は引用によって本明細書に援用されるものである。
【0051】
[サンプリングサブシステム200]
図1は、組織サンプリングサブシステム200の幾何学的配置が照射/変調(100)およびデータ収集(300)サブシステムの間にあることを示している。図1を参照すると、組織サンプリングサブシステム200は、照射/変調サブシステム100によって生成された放射線を被検者の組織に導入し、組織に吸収されない放射線の一部を収集し、その放射線を、測定のためにデータ収集サブシステム300の光検出器に送る。図10乃至図20は、例示的な組織サンプリングサブシステム200の構成要素を示している。図10を参照すると、組織サンプリングサブシステム200は、光入力部202と、組織を取り調べる組織インターフェース206を形成するサンプリング面204と、光出力部207とを備える。このサブシステムは、図11に示される人間工学的装置210をさらに有し、この装置は、サンプリング面204を保持して、インターフェース206に組織を配置する。例示的なサブシステムでは、組織インターフェースの温度を一定にする装置が含まれており、ある実施形態では、組織インターフェース上で組織を反復的に再配置する装置が含まれている。その他の実施形態では、組織とサンプリング面との間の光学的インターフェースを改善するために屈折率整合流体を使用することができる。改良されたインタフェースは、誤差を減らして効率を増加させ、それにより正味の属性信号を改善する。例えば、米国特許第6,622,032号、第6,152,876号、第5,823,951号および第5,655,530号を参照されたい。これらは、引用によって本明細書に援用されるものである。
【0052】
組織サンプリングサブシステム200の光入力部202は、照射/変調サブシステム100から放射線(例えば、ライトパイプから出る光)を受け入れ、その放射線を組織インタフェース206に伝達する。一例として、光入力部は、照射/変調サブシステムから適当量の光を集める幾何学的パターンで配列された光ファイバ束を含むことができる。図12は配置構成の一例を示している。この平面図は、円形パターンに配列された6つのクラスタ208を含む、サンプリング面においてある幾何学的配置の入力および出力ファイバの端部を示している。各クラスタは、組織から拡散反射した光を集める4本の中央出力ファイバ212を含む。4本の中央出力ファイバ212の各グループの周囲には、中央出力ファイバ212の縁部と入力ファイバ214の内側リングとの間に約100μmの間隙を確保する円筒状の材料215が設けられている。真皮中のエタノールの測定に、100μmの間隙が重要となることがある。図12に示すように、入力ファイバ214の2つの同心円状のリングが、円筒状の材料215の周囲に配置されている。一例となる実施形態に示すように、32本の入力ファイバが4本の出力ファイバを取り囲んでいる。
【0053】
図13は、サンプリングサブシステム用のクラスタ・ジオメトリの代替手段を示している。この実施形態では、照射および収集ファイバ素子が線形ジオメトリで配置されている。各列は、照射または光収集用のどちらでもよく、十分な信号対雑音比を達成するのに適した任意の長さとすることができる。また、列の数は、サンプリングサブシステムが対象にする物理的領域を変えるために、2またはそれ以上とすることができる。可能性がある照射ファイバの総数は、光源の放射領域の物理的サイズおよび各ファイバの直径に依存する。照射ファイバの数を増加させるために、複数の光源を使用することができる。収集ファイバの数は、干渉計サブシステムに対するインタフェースの面積に依存する。収集ファイバの数が、干渉計サブシステムのインタフェースが許容するよりも大きな面積をもたらす場合には、サンプリングサブシステムの出力領域のサイズを低減するために、開口が後に続くライトパイプまたはその他のホモジナイザを使用することができる。ライトパイプまたはその他のホモジナイザの目的は、各収集ファイバが開口を通過する光にほぼ均一に寄与するようにすることである。
【0054】
本発明のサンプリングサブシステムの幾つかの実施形態では、サンプルと相互に作用する光学プローブの一部は、光ファイバの2またはそれ以上の線形リボンのスタックで構成することができる。これらの配置構成により、光学プローブインタフェースのサイズおよび形状を、サンプルおよび対象となる測定位置(例えば、手、指)に合わせて適切に設計することが可能になる。図14は、線形のリボンのスタックに基づくサンプリングサブシステムの例示的な実施形態を示している。本発明で使用される適当な実施形態に関する更なる詳細は、同時係属中の米国出願第12/185,217号および第12/185,224号において見出すことができる。それら出願の各々は、引用によって本明細書に援用されるものである。
【0055】
また、サンプリングサブシステムは、1またはそれ以上のチャネルを使用することもできる。ここで、チャネルは、照射および収集ファイバの特定の幾何学的配置を指している。幾何学的配置は、1または複数の照射ファイバの角度、1または複数の収集ファイバの角度、1または複数の照射ファイバの開口数、1または複数の収集ファイバの開口数、および1または複数の照射および収集ファイバ間の分離距離から構成される。図15は幾何学的配置を形成するパラメータの図である。非侵襲的測定の精度を改善するために、複数のチャネルを接近して同時または連続的に使用することができる。図16は、2チャネルのサンプリングサブシステムの図である。この例では、2チャネルが同じ組織構造を測定している。このため、各チャネルは、異なる視点から同じ組織の測定を提供する。第2視点は、追加的な分光情報を与えるのを助け、その情報が、散乱と吸収により信号を分離するのを助ける。図16を参照すると、ファイバのグループ(この例では、1の光源、1のレシーバ#1、および1のレシーバ#2)は、サンプラ領域を増加させて光学的効率を改善するために、1乃至N回再現することができる。ファイバの各々は、異なる開口数および角度(θ)を有することができる。ファイバXおよびYの間の距離は、光源とレシーバの分離を決定する。また、4チャネルのサンプリングサブシステムを作成する付加的な光源チャネルを加えることができる。当業者であれば、チャネル数とチャネル間の関係について数多くの可能性のある変形を認識するであろう。
【0056】
図17は、非侵襲的なグルコース測定に使用される複数チャネルサンプラの利点の例を示す棒グラフである。この図面から、2チャネルの組合せが、それぞれのチャネルを個別に比べたときに、優れた測定精度を与えることが明らかである。この例では2チャネルを使用しているが、チャンネルを追加すれば、測定をさらに改善することができる追加情報を与えることができる。
【0057】
複数チャネルのサンプリングサブシステムの別の態様は、サンプル上に存在する汗またはローションのような局所干渉成分の緩和および検出を改善する能力である。図18は、局所干渉成分がある状態における複数チャネルのサンプリングサブシステムの図である。この図は、組織インタフェース、局所干渉層および組織におけるサンプリングサブシステムを示している。この例においては、局所干渉成分による各チャネルの測定への寄与は同一である。組織を通るパスは異なるが、干渉を通るパスは、両チャネルとも類似している。これにより、2チャネルについて異なることとなる組織信号から両チャネルに存在する共通の局所干渉成分信号を分離することが可能になる。
【0058】
クラスタ化された入出力ファイバは、クラスタフェルール内に取り付けられ、このクラスタフェルールは、サンプリングヘッド216内に取り付けられる。サンプリングヘッド216は、サンプリング面204を含み、このサンプリング面は、平坦に磨かれて、良好な組織インタフェースを形成することが可能となっている。同様に、入力ファイバは、フェルール218内にクラスタ化され、このフェルールは入力端で結合されて照射/変調サブシステム100とインターフェースをとる。出力ファイバの出力端は、データ収集サブシステム300とのインタフェースのために、フェルール220内にクラスタ化されている。
【0059】
光入力部は、入力光を組織インタフェースに伝達するために、ライトパイプ、屈折素子および/または反射素子の組合せを使用することができる。許容正味属性信号を得るために、組織サンプリングサブシステムの入力素子が照射/変調サブシステム100から十分な光を集めることが重要である場合がある。
【0060】
組織インタフェースは、対象となる属性に関する組織のコンパートメントを目標とする方法で組織を照射し、かつそれらコンパートメントを通って相当な距離を進むことのない光を区別することができる。一例として、100μmの間隙は、属性情報を殆ど含まない光を区別する。また、組織インタフェースは、組織の不均一の性質による誤差を低減するために、組織のある領域に亘って平均化することができる。組織サンプリングインタフェースは、鏡面反射性で短い路程の光線を受け入れないようにすることができ、それは、システムの正味の属性信号を最大化するために、組織を介して所望の路程を進む光の一部を高効率で集めることができる。組織サンプリングインタフェースは、上述したように予め設定されたジオメトリで光を入力部から組織に導くために、光ファイバを使用することができる。光ファイバは、良好な属性情報を含む組織のある層を目標とするパターンで、配列させることができる。
【0061】
入出力ファイバの間隔、角度、開口数および配置は、有効な深さのターゲティングを達成するように、構成することができる。光ファイバの使用に加えて、組織サンプリングインタフェースは、組織表面に入力および出力領域のパターンを置く非ファイバベースの配置構成を使用することができる。非ファイバベースの組織サンプリングインタフェースの適切なマスキングによって、入力光が、組織内で最小距離を移動して有効な属性情報を含むようになる。最後に、組織サンプリングインタフェースは、予め設定された方法で組織の温度を制御するように、温度調節することができる。本発明によって温度変動による予測誤差が低減されるように、組織サンプリングインタフェースの温度を設定することが可能である。また、キャリブレーションモデルを作成するときに、基準誤差も低減される。これらの方法は、発明の名称を“Method and Apparatus for Non−Invasive Blood Analyte Measurement with Fluid Compartment Equilibration”とする米国特許出願第09/343,800号に開示されている。この出願は、引用によって本明細書に援用されるものである。
【0062】
組織サンプリングサブシステムは、再現可能な方法でサンプリングインタフェース206上に組織を配置させる人間工学的装置またはクレードル210を用いることができる。人間工学的装置210の一例が図11に示されている。前腕の下側をサンプリングする場合には、人間工学的クレードル設計が、サンプリングインタフェースとの良好な接触を確保するのに不可欠である。人間工学的クレードル210は、基部221を含み、この基部は、それを貫通する開口部223を有している。開口部は、基部221の上面225とほぼ同一平面となるようにサンプリング面204を配置するために、サンプルヘッド216を内部に受け入れるようにサイズ設定されている。人間工学的クレードル210は、組織サンプリングインタフェースに前腕を正確に置くために、フロート・フィット・ハンドグリップ(float-to-fit handgrip)224と併せて、ブラケット222を介して、被験者の肘および上腕を参照する。組織サンプリングインタフェースの人間工学に細心の注意を払うべきであり、そうしないと重大なサンプリング誤差が生じる可能性がある。
【0063】
例示的な人間工学的クレードル210は、被験者の前腕がサンプリングヘッド216上に確実に配置されるように設計されている。ブラケット222は、上腕とサンプリングヘッド216の間に適当な角度を設定する肘掛けを形成し、腕の基準点としても機能する。調整可能なハンドレスト224は、指をリラックスした状態で保持するように設計されている。ハンドレストの位置は、様々な前腕の長さに適合するように、各被験者に対して調節される。幾つかの実施形態では、サンプリング中に周期的にクレードルを昇降させて、組織インタフェースを分離および再構成するリフト機構が含まれる。インタフェースの再構成は、皮膚の不均質および凹凸のある性質によるサンプリング誤差の低減を促進する。本明細書に記載のシステムの変形例を使用して、他の部位、例えば、指先にも適合させることができる。
【0064】
人間工学的クレードルの代わりが図19に示されている。測定システムに置かれたクレードルの代わりに、位置決め装置が組織の上に置かれる。位置決め装置は、再使用可能または使い捨ての何れかとすることができ、医療用接着剤で組織に固着させることができる。また、位置決め装置は、測定の所望の光学特性を保持しながらもサンプリングサブシステムとの物理的接触を防ぐ光学的に透明なフィルムまたはその他の材料を含むことができる。位置決め装置は、組織をサンプリングサブシステムに再現性良く配置するために、位置合わせピンのような予め設定した方法でサンプリングサブシステムに結合する。また、位置決め装置は、測定プロセス中にサンプリングサブシステムに対する組織の移動を防止する。
【0065】
組織サンプリングサブシステム200の出力部は、組織に吸収されずに、データ収集サブシステム300の光検出器へと組織を通って許容パスを進んできた光の一部を伝達する。組織サンプリングサブシステム200の出力部は、出力光の焦点を光検出器に合わせる屈折素子および/または反射素子の任意の組合せを使用することができる。幾つかの実施形態では、サンプルに依存する可能性がある空間および角度効果を軽減するために(下記特許文献の図3を参照)、集められた光が均質化される(米国特許第6,684,099号、“Apparatus and Methods for Reducing Spectral Complexity in Optical Sampling”を参照されたい。この特許は引用により本明細書に援用される)。
【0066】
一適用例として、人間中のアルコールの非侵襲的な測定は、人体の水吸収に対するアルコール吸収スペクトルのサイズが小さいため、機器の性能を極端に要求する。さらに、コラーゲン、脂質、タンパク質などのその他の分光的に活性な化合物の吸収による干渉が、アルコール吸収スペクトルの有効な部分を減らして、小さい正味の属性信号を生じさせる。一次近似に対して、1mg/dlのアルコール濃度の変化は、本発明を使用して組織を通って進行する光の有効な路程についての7Auのスペクトルの分散と同等である。このため、臨床的に許容できる精度でアルコールを非侵襲的に測定するためには、非侵襲的アルコール監視の分光部分が大きな信号対雑音比(SNR)および優れた測光精度を備えていなければならない。
【0067】
[データ収集サブシステム300]
データ収集サブシステム300は、サンプリングサブシステムから光学信号をデジタル表現に変換する。図20はデータ収集サブシステムの概略図である。本発明の重要な態様は、干渉計型分光計と同様に、所望の波長すべてを測定するのに、単一要素の検出器のみを必要とするということである。アレイ検出器とそれらを支持する電子機器は、費用面で大きな問題がある。
【0068】
光検出器は、時間の関数として、入射光を電気信号に変換する。1.0〜2.5ミクロンのスペクトル範囲で感知する検出器の例には、InGaAs、InAs、InSb、Ge、PbSおよびPbSeが含まれる。本発明の例示的な実施形態では、1.0〜2.5ミクロンの範囲の光を感知する、1mmの熱電的に冷却された拡張範囲InGaAs検出器を利用することができる。2.5ミクロンの拡張範囲InGaAs検出器は、ジョンソン雑音が低く、その結果、組織サンプリングサブシステムから放出される光子束についてのショット雑音制限性能を可能にする。拡張InGaAs検出器は、3つの非常に重要なアルコール吸収特性が示される2.0〜2.5ミクロンのスペクトル領域にピーク感度を有する。液体窒素冷却InSb検出器と比較して、熱電冷却された拡張範囲InGaAsは、市販製品としてより実用的である可能性がある。また、この検出器は、1.0〜2.5ミクロンのスペクトル領域で120dbcを越える線形性を示す。アルコール測定システムが代替的な波長領域を利用する場合には、代替的な検出器が適していることがある。例えば、対象となる波長帯が300〜1100nmの範囲内にあった場合に、シリコン検出器が適していることがある。
【0069】
基本的な感度、ノイズおよび速度条件を満たす限りは、任意の光検出器を本発明とともに使用することができる。適当な光検出器は、6000オームより大きいシャント抵抗、6ナノファラド未満の端子間キャパシタンス、1.0〜2.5ミクロンのスペクトル領域に亘り、単位ワットあたり0.15アンプの最小感光性を有することができる。また、光検出器は、1000ヘルツまたはそれ以上の遮断周波数を有することができる。光検出器のシャント抵抗は、検出器のジョンソンまたは熱雑音を規定する。検出器のジョンソン雑音は、検出器によりショット雑音制限性能を確保するために、検出器で光子束と比べて低くなければならない。端子間キャパシタンスは、光検出器の遮断周波数に影響を与え、光検出器増幅器の高周波ノイズ利得の因子になる可能性もある。光感度は、光から電流への変換において重要な因子であり、SNR方程式の信号部分に直接的に影響を与える。
【0070】
データ収集サブシステム300の残りは、検出器からの電気信号を増幅してフィルタリングし、その後に、得られたアナログ電気信号をアナログ・ディジタル変換器によりデジタル表現に変換し、デジタルフィルタリングし、等時間間隔から等位置間隔へデジタル信号の再サンプリングを行う。アナログ電子機器およびADCは、高SNRおよび信号に固有の線形性を支持しなければならない。SNRおよび信号の線形性を保持するために、データ収集サブシステム300は、少なくとも100dbcのSNRプラス歪比(SNR plus distortion)で支持することができる。データ収集サブシステム300は、信号のデジタル化表現を生成することができる。幾つかの実施形態では、24ビットデルタシグマのADCは、96または192キロヘルツで操作することができる。システム性能要件が許容する場合、代替のアナログ・ディジタル変換器は、サンプル取得が等時間間隔で捕捉されるよりむしろ光源変調と同期する場合に使用することができる。後述するように、デジタル化信号は、さらなる処理のために、埋込式コンピュータサブシステム600に引き渡すことができる。
【0071】
さらに、データ収集サブシステム300は、本発明の非侵襲的グルコース測定のSNRおよび測光精度条件を支持するために、一定時間サンプリング、二重チャネル、デルタシグマアナログ・デジタル変換器(ADC)を利用することができる。幾つかの実施形態では、利用されるデルタシグマADCは、1チャネルあたり100kHz以上のサンプリングレートを支持し、117dbcを越えるダイナミックレンジを有し、−105dbc未満の全高調波歪みを有する。デジタル化する1チャネルのみの信号を有するシステムにおいては(デルタシグマADCに共通の2以上の代わりに)、信号をADCの両入力に引き渡して、後続のデジタル化で平均化される。このオペレーションは、ADCにより導入される任意の無相関の雑音を低減するのを助けることができる。
【0072】
一定時間サンプリングデータ収集サブシステム300は、信号をデジタル化するその他の方法に比べて幾つかの明白な利点を有する。これらの利点には、より大きなダイナミックレンジ、より低いノイズ、低減されたスペクトルアーチファクト、検出器雑音が限定されたオペレーションおよび簡素で安価なアナログ電子機器が含まれる。また、一定時間サンプリング技術によって、ADCの前にアナログ電子機器により導入された周波数応答歪みに対するデジタル補償が可能になる。これは、光検出器の非理想周波数応答と同様に、増幅回路およびフィルタリング回路における非線形の位相誤差を含んでいる。均等にサンプリングされたディジタル信号は、累積度数応答がアナログ電子機器の伝達関数の逆数である1またはそれ以上のデジタルフィルタの適用を可能にする(例えば、米国特許第7,446,878号を参照されたい。この特許は引用により本明細書に援用される)。
【0073】
[計算サブシステム400]
計算サブシステム400は、データ収集サブシステム300から得たデジタルデータの単一ビームスペクトルへの変換、単一ビームスペクトルのスペクトル外れ値の検査の実行、対象となる属性の予測のための準備のスペクトル前処理、対象となる属性の予測、システムステータス検査、ユーザインターフェースに関するすべての表示および処理要件、およびデータ伝達および記憶のような、多数の機能を果たす。図21は、適当な計算サブシステムの様々な態様を示す概略図である。幾つかの実施形態では、計算サブシステムは、本発明のその他のサブシステムに接続される専用パーソナルコンピュータまたはラップトップコンピュータに含まれている。その他の実施形態では、計算サブシステムは、専用の組込型コンピュータである。
【0074】
検出器からのデジタル化データを単一ビームスペクトルに変換した後に、コンピュータシステムは、外れ値または走査不良について、単一ビームスペクトルを検査することができる。異常サンプルまたは走査不良は、測定信号と対象となる特性との間の仮定関係を破るものである。外れ値の状況例としては、外気温度、周囲湿度、振動許容値、構成要素の許容値、電力レベルなどの指定された運転範囲を外れて、較正された機器が操作される状況が含まれる。また、サンプルの組成または濃度が、キャリブレーションモデルの構築に使用されたサンプルの組成または濃度範囲と異なる場合に、外れ値が生じることがある。キャリブレーションモデルは、キャリブレーションサブシステムの一部としてこの開示の後で説明することとする。任意の外れ値または走査不良を削除することができるとともに、残りの良好なスペクトルをまとめて平均化して、測定のための平均単一ビームスペクトルを生成することができる。平均単一ビームスペクトルは、スペクトルの10を底とする負の対数(log10)を取ることにより、吸収度に変換することができる。吸光度スペクトルは、単一ビームスペクトルにより増減させて、ノイズを繰り込むことができる。
【0075】
増減された吸光度スペクトルは、キャリブレーションサブシステム500から得られたキャリブレーションモデルに関連して対象となる属性を決定するために使用することができる。対象となる属性の測定の後、計算サブシステム400は、結果830を、例えば、被験者、オペレータまたは管理者、記録システム、または遠隔モニタに伝えることができる。また、計算サブシステム400は、結果の有益性の信頼レベルを伝えることもできる。信頼度が低い場合、計算サブシステム400は結果を保留して、被検者に再検査を求めることができる。必要に応じて、修正動作を実行するようにユーザに指示する追加情報を伝えることができる。例えば、米国出願第20040204868号を参照されたい。この出願は、引用により本明細書に援用される。結果は、ディスプレイ上で視覚的に、音声により、かつ/または印刷手段により、伝えることができる。さらに、結果は、属性の履歴記録を形成するために記憶することができる。その他の実施形態では、結果は、記憶して、インターネット、電話回線または携帯電話サービスを介して、遠隔モニタリングまたはストレージ設備に伝送することができる。
【0076】
計算サブシステム400は、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、ディスプレイ、および好ましく通信リンクを含む。CPUの一例は、インテルのペンティアム(登録商標)マイクロプロセッサである。メモリは、例えば、スタティック・ランダムアクセスメモリ(RAM)および/またはダイナミック・ランダムアクセスメモリとすることができる。記憶装置は、不揮発性RAMまたはディスクドライブで実現することができる。液晶ディスプレイが適している場合がある。通信リンクは、例えば、高速シリアルリンク、イーサネット(登録商標)リンクまたは無線通信リンクとすることができる。計算サブシステムは、例えば、受信または処理されたインターフェログラムから属性測定値を生成し、較正維持管理を実行し、較正移行を実行し、機器診断を実行し、測定したアルコール濃度またはその他の関連情報の履歴を記憶し、ある実施形態では、リモートホストと通信して、データおよび新しいソフトウェアの更新の送受信を行うことができる。
【0077】
また、計算システム400は、被検者のアルコール測定記録および対応するスペクトルを外部データベースに伝送可能な通信リンクを含むこともできる。また、通信リンクは、コンピュータに新しいソフトウェアをダウンロードし、かつ多変量キャリブレーションモデルを更新するために使用することができる。コンピュータシステムは、情報機器として見ることができる。情報機器の例としては、携帯情報端末、ウェブ対応の携帯電話およびハンドヘルドコンピュータが含まれる。
【0078】
[キャリブレーションサブシステム500]
キャリブレーションモデルは、アルコール測定値を得るためにスペクトル情報と関連して使用される。幾つかの実施形態では、キャリブレーションモデルは、様々な環境条件における多数の被験者についての血液基準測定値およびそれと同時の分光データを取得することにより、形成される。それら実施形態では、分光データは、血中アルコール濃度の広範な範囲に亘って各被験者から得ることができる。その他の実施形態では、ハイブリッドキャリブレーションモデルは、被検者スペクトルのアルコール濃度を測定するものとすることができる。この場合、ハイブリッドモデルという用語は、部分最小二乗(PLS)キャリブレーションモデルが、体外および体内のスペクトルデータの組合せを使用して開発されたことを示している。データの体外の部分は、透過測定のために構成された非侵襲的測定システムを使用して測定された、500mg/dLの水中アルコールの0.1mmの路程透過スペクトルであった。透過スペクトルは、水の0.1mmの路程透過スペクトルに比を取られ、吸収度に変換され、単位路程および濃度に正規化された。
【0079】
組織を通る光伝播は、拡散反射光学組織サンプラ設計、生理学的変数および波数の複合関数である。このため、組織を通る光の路程は、散乱無しの透過測定で遭遇することのない波数依存を有している。波数依存を説明するために、人間組織の散乱特性との光学組織サンプラの相互作用は、商用の光学光線追跡ソフトウェアパッケージ(TracePro)を使用して、モンテカルロシミュレーションによりモデル化された。結果として得られる光子組織相互作用のモデルを使用して、波数の関数として真皮および皮下組織層を通る光の実効路程の推定が生成された。実効路程(leff)は次のように定義される。
【数1】


ここで、vは波数、lはモンテカルロシミュレーションにおいてi番目の光線により通過される路程[mm]、Nはシミュレーションにおける光線の総数、aは(波数依存)吸収係数[mm−1]である。体内のその大きな吸収により、水は、実効路程に大きな影響を与える唯一の被分析物である。このため、実効路程の計算においては、使用される吸収係数が、生理学的濃度における水の吸収係数とされた。その後、アルコール吸収スペクトル(透過で測定されるように)は、計算されたパス関数により増減されて、拡散反射光学サンプラにより測定された波数依存路程の補正されたアルコールスペクトル表現を形成する。図22は、パス関数による補正前後のアルコール吸光スペクトルを示している。実線は補正前、点線は補正後である。この補正されたスペクトルは、キャリブレーションスペクトルへのアルコールの数学的加算用のベーススペクトルを形成した。
【0080】
体内のデータは、アルコールを摂取していなかった人から集めた非侵襲組織スペクトルを含んでいた。ハイブリッドモデルは、アルコール純粋成分スペクトルを加えることにより形成されて、様々なアルコール“濃度”(0から160mg/dLまでの範囲)により、非侵襲組織スペクトルデータに重み付けされた。PLSキャリブレーションモデルは、ハイブリッドスペクトルデータ上の合成アルコール濃度の回帰により構築された。図23はハイブリッドキャリブレーション形成プロセスの概略図である。ハイブリッドキャリブレーションは、この研究では、3か月間で133人の被検者から集めた約1500の非侵襲組織スペクトルを使用した。
【0081】
ハイブリッドキャリブレーションモデルの使用は、アルコールを摂取した被験者から取得したスペクトルから構築したキャリブレーションモデルよりも、顕著な利点を与えることができる。ハイブリッドモデル化プロセスは、人間の被検者研究の摂取に安全であると考えられる(120mg/dLが、安全な最大限界と考えられる)よりも高い濃度のアルコール(この研究では最大160mg/dL)を含むキャリブレーションスペクトルを生成することを可能にする。これは、より高いアルコール濃度をより正確に予測することができる、広い範囲の被分析物濃度を有するより強力なキャリブレーションをもたらすことができる。これは、現場で観察されるアルコール濃度が臨床研究の場における最大安全投与量の2倍を超える可能性があるため、重要となる場合がある。ハイブリッドキャリブレーションプロセスによって、アルコールと組織のスペクトル干渉との間の相関を防ぐこともできる。例えば、キャリブレーションスペクトルへのアルコール信号のランダムな追加は、アルコール濃度が水濃度と関連するのを防止する。このため、ハイブリッド手法は、測定がアルコール濃度の代わりに組織含水量の変化を誤って追跡してしまう可能性を防止する。
【0082】
キャリブレーションは、一度形成されたら、安定した状態を保ち、長期間に亘り正確な属性予測をもたらすことが望ましい。このプロセスは、較正維持管理と呼ばれ、個々にまたは併せて使用できる数多くの方法で構成することができる。第1の方法は、本質的にロバストにするようにキャリブレーションを作成するものである。様々な異なるタイプの機器および環境変化は、キャリブレーションモデルの予測能力に影響する場合がある。この変化をキャリブレーションモデルに組み入れることにより、機器および環境変化の影響の大きさを低減することが可能であり、そうすることが望ましい。
【0083】
しかしながら、キャリブレーション中の機器の状態の可能性のある範囲全体に及ばせるのは困難である。システム摂動は、キャリブレーションモデルの空間外で運転される機器を生じさせる場合がある。機器が不適切にモデル化された状態のときになされた測定は、予測誤差を示すことがある。医学的に重要な属性の体内の光学測定の場合には、これらのタイプの誤差が、システムの有用性を低下させる誤測定をもたらす場合がある。このため、機器の状態を連続的に検証および是正するために機器の寿命の間に追加の較正維持管理技術を使用することは、多くの場合有利である。
【0084】
問題のある機器および環境変数の例としては、それに限定される訳ではないが、水蒸気またはCO2ガスのような環境干渉成分のレベルの変化、機器の光学要素のアライメントの変化、機器の照射システムの出力の変動、機器の照射システムにより出力される光の空間および角度分布の変化が含まれる。
【0085】
較正維持管理技術は、発明の名称を“Optically Similar Reference Samples and Related Methods for Multivariate Calibration Models Used in Optical Spectroscopy”とする米国特許第6,983,176号、発明の名称を“Adaptive Compensation for Measurement Distortions in Spectroscopy”とする米国特許第7,092,832号、発明の名称を“Accommodating Subject and Instrument Variations in Spectroscopic Determinations”とする米国特許第7,098,037号、および発明の名称を“Optically Similar Reference Samples”とする米国特許第7,202,091号において検討されている。それらは、引用により本明細書に援用される。開示された方法の幾つかにおいては、機器を長い期間に亘りモニタリングするために、対象となる属性を含むまたは含まない、積分球のような環境上不活性な非組織サンプルが使用される。サンプルは、組織測定のそれと同様の方法で、サンプリングサブシステムを有する機器またはインタフェースの光学パスに組み入れることができる。サンプルは透過または反射率において使用することができ、安定したスペクトル特性を含むか、それ自体のスペクトル特性に関与しないようにすることができる。その材料は、そのスペクトルが長期間に亘って安定しているか、予測可能である限り、固体、液体またはゲル材料とすることができる。長期間に亘りサンプルから取得されたスペクトルの原因不明の任意の変化は、機器が、環境の作用により、摂動またはドリフトを受けることを示している。その後、スペクトルの変化は、属性の測定を正確および確実にするために、人間の次の組織測定を訂正するのに使用することができる。
【0086】
較正維持管理を達成するための良好な別の手段は、長期間に亘って機器で取得された測定値を使用してキャリブレーションを更新するものである。通常、対象となる被分析物の特性の基準値についての情報は、そのような更新を実行するために必要である。しかしながら、ある用途では、基準値が常にではないが、通常は特定値であることが知られている。この場合、この情報は、たとえ被分析物の特性の特定値が各測定で知られていなくても、キャリブレーションを更新するために使用することができる。例えば、居住型療養施設のアルコールスクリーニングにおいて、測定の大部分が個人に行われ、それが彼らのアルコール摂取制限に応じたものとなっており、よってゼロのアルコール濃度を有する。この場合、本発明の装置から得られたアルコール濃度測定または関連するスペクトルは、基準値としての推定ゼロとともに使用することができる。このため、キャリブレーションは、それが現場で必要とされるため、新しい情報を含むように更新することができる。また、対象となる被対象物の特性測定におけるシステム特有の任意のバイアスを取り除くために、推定ゼロを有する測定値をシステムの製造または設置時に使用することができるため、この手法は、較正移行の実行にも使用することができる。較正維持管理更新または較正移行実施は、それに限定される訳ではないが、直交信号補正(OSV)、直交モデリング技法、ニューラルネットワーク、逆回帰法(PLS、PCR、MLR)、直接回帰法(CLS)、分類スキーム、単純中央値(simple median)または移動ウィンドウ(moving windows)、主成分分析またはそれらの組合せのような様々な手段により達成することができる。
【0087】
キャリブレーションが形成されたら、多くの場合、キャリブレーションをすべての既存のユニットおよび将来のユニットに移行することが望ましい。このプロセスは一般に較正移行と呼ばれる。必要ではないが、較正移行は、製造される各システムでキャリブレーションを決定する必要がないようにする。これは、商業的生産の成功または失敗の間の違いに影響を与える大きな時間およびコストの節約を意味する。較正移行は、光学および電子要素がユニット毎に変化し、それが全体で、多数の機器から得たスペクトルの大きな差異をもたらす可能性があるという事実に起因する。例えば、2つの光源が異なる色温度を有し、それにより、2光源について異なる光分布をもたらす場合がある。また、2つの検出器の応答は、大きく異なる可能性があり、それは、スペクトルの更なる違いをもたらす可能性がある。
【0088】
較正維持管理と同様に、較正移行を効果的に達成するために、多数の方法を使用することができる。第1の方法は、多数の機器でキャリブレーションを構築するものである。多数の機器の存在により、測定されるとともにキャリブレーション形成プロセス中に属性信号に対して直交化される機器の相違に関連するスペクトル変動が可能になる。この手法は正味の属性信号を減少させるが、それは、較正移行の有効な手段となる可能性がある。
【0089】
更なる較正移行方法は、キャリブレーションを構築するために使用されるものに対するシステムの分光的特徴(spectral signature)における差異を明白に決定することを含む。この場合、スペクトルの違いは、その後、システム上の属性予測の前にスペクトルの測定を補正するために使用することができ、あるいは予測された属性値を直接的に補正するために使用することができる。機器に特有の分光的特徴は、対象となるシステムから取得された安定したサンプルのスペクトルとキャリブレーションを構築するために使用されるスペクトルとの相対的な差異から求められる。また、較正維持管理セクションで述べたサンプルは較正移行にも適用可能である。例えば、発明の名称を“Method and Apparatus for Spectroscopic Calibration Transfer”とする米国特許第6,441,388号を参照されたい。これは、引用により本明細書に援用される。
【0090】
《本発明の追加態様》
[アルコール測定モダリティ]
対象となる用途に応じて、被分析物特性の測定は、2つのモダリティの点から考慮することができる。第1のモダリティは、“ウォークアップ(walk up)”または“ユニバーサル(universal)”であり、サンプル(例えば、被検体)の以前の測定が、対象となる現在の測定において被分析物の特性を求めるのに使用されることがない被分析物特性の測定を表わしている。体内のアルコールの測定の場合には、検査を受ける人が殆どの場合アルコール測定装置で前もって測定を受けることはないため、飲酒の影響下の運転はこのモダリティに含まれることとなるであろう。このため、その人の予備的情報は、被分析物特性の現在の測定に使用可能ではない。
【0091】
第2のモダリティは、“登録される(enrolled)”または“適合される(tailored)”と称され、サンプルまたは被検者から過去の測定が現在の測定において被分析物特性を求める際に使用可能であるという状況を表している。このモダリティが適用される環境の一例としては、限られた数の人々が車両または機械を運転または操作することが許される車両のインターロックが挙げられる。登録および適合される用途の実施形態に関する追加情報は、発明の名称を“Method and Apparatus for Tailoring Spectroscopic Calibration Models”とする米国特許第6,157,041号および第6,528,809号で見付けることができる。その各々は、引用により本明細書に援用される。登録される用途では、被分析物特性の測定とバイオメトリック測定との組合せは、被分析物特性がそれらの適合性レベル(例えば、飲酒)を評価している間に、予測されるオペレータがバイオメトリックを介して機器または車両を使用する許可が与えられるかどうかを同じ分光測定が評価することができるため、特に有利となり得る。
【0092】
[分光信号からバイオメトリック認証または識別を判定する方法]
バイオメトリック認証は、人またはその他の生物学的存在を識別するために1またはそれ以上の物理的または行動特性を使用するプロセスについて説明する。2つの共通のバイオメトリックモード:識別および認証が存在する。バイオメトリック識別は、“私はあなたを知っているか?”という質問に答えることを試みる。バイオメトリック測定装置は、対象となる個人からバイオメトリックデータのセットを集める。この情報のみから、バイオメトリックシステムにその人が以前に登録されたかどうかを評価する。バイオメトリック識別タスクを行なうFBIの指紋自動識別システム(AFIS)のようなシステムは、一般に非常に高価で(数百万ドル以上)、未知のサンプルと何十万または何百万もの入力を含む巨大なデータベースとの間の適合を検出するのに何十分も要する。バイオメトリック認証では、関係のある質問は、“あなたがあなたであるという人はあなたであるのか?”である。このモードは、個人がコード、磁気カードまたはその他の手段を使用して、身元の主張をして、装置がバイオメトリックデータを使用してその人の身元を、対象となるバイオメトリックデータを主張される身元に対応する登録データと比較することにより確認する場合に、使用される。制御された環境においてアルコールまたは乱用物質の存在または濃度をモニタリングする本装置および方法は、どのバイオメトリックモードでも使用できる。
【0093】
また、本発明で使用するのにも適している、これら2つのモード間の少なくとも1つの変形例が存在する。この変形例は、少数の個人が登録されたデータベースに含まれていて、対象となる個人が登録セットの中に存在するかどうかのみの判定をバイオメトリックアプリケーションが必要とする場合に生じる。この場合、個人の正確な身元は必要ではなく、よってそのタスクは上述した識別タスクとは幾分異なる(多くの場合より容易となる)。この変形例は、検査を受ける個人が権限を受けたグループの一部であって酔っていないことが必要とされる一方で、彼らの具体的な身元が必要とされることはない方法において、バイオメトリックシステムが使用される用途で有用である可能性がある。“身元特性”という用語は、上述したモード、変形例、およびそれらの組合せまたは改良例のすべてを含む。
【0094】
バイオメトリック測定に関連する3つの主要なデータ要素として、キャリブレーション、登録、および対象となるスペクトルデータが存在する。キャリブレーションデータは、バイオメトリック測定に重要な分光的特徴を確立するために使用される。このデータのセットは、既知の身元の1または複数の個人から集められた一連の分光組織測定から構成される。望ましくは、人が経験することが予測される物理的状態のほぼ全範囲に及ぶようにしながらも多数のスペクトルが各個人について集められるように、それらデータが一定時間に亘ってかつ一連の条件で集められる。また、スペクトルの収集に一般に使用される1または複数の機器は、機器の全範囲、およびその機器または姉妹機器が実際の使用で遭遇する可能性の高い環境効果の全範囲に及ぶべきである。その後、それらキャリブレーションデータは、人体内部、機器(機器内部と機器間の双方)に対する感度および環境効果を最小化しながらも人間どうしのスペクトルの違いに反応するスペクトル波長または“因子”(すなわち、波長またはスペクトル形状の線形結合)を確立するような方法で分析される。その後、これらの波長または因子は、バイオメトリック測定タスクを実行するために続いて使用される。
【0095】
バイオメトリック測定に使用されるスペクトルデータの第2の主なセットは、登録スペクトルデータである。所与の被検者または個人の登録スペクトルの目的は、その被検者特有の分光特性の“表現”を生成することである。登録スペクトルは、権限が与えられるか、あるいはバイオメトリックシステムによって認識される必要のある個人から集められる。各登録スペクトルは、数秒間または数分間に亘って集めることができる。2またはそれ以上の登録測定は、測定間の類似点を確保し、かつアーチファクトが検知される場合に1またはそれ以上の測定値を除外するために、個人から集めることができる。1またはそれ以上の測定値が廃棄される場合には、追加の登録スペクトルを集めることができる。所与の被検者のための登録測定は、まとめて平均化するか、あるいは結合させるか、または別個に記憶させることができる。何れの場合にも、データは登録データベースに格納される。ある場合には、登録データの各セットが、スペクトルが測定された人のための識別子(例えば、パスワードまたはキーコード)とリンクされる。識別タスクの場合には、識別子は、誰がバイオメトリックシステムに何回アクセスしたかの記録管理目的に使用することができる。認証タスクについては、識別子は、認証される登録データの適切なセットを抽出するために使用される。
【0096】
バイオメトリックシステムに使用される第3および最後のデータの主なセットは、人がバイオメトリックシステムを識別または認証に使用しようとするときに集められるスペクトルデータである。これらのデータは対象スペクトルと呼ばれる。それらは、キャリブレーションセットから得られた分類波長または因子を使用して、登録データベース(または身元認証の場合、データベースのサブセット)に格納された測定値と比較される。バイオメトリック識別の場合には、システムが対象スペクトルを登録スペクトルのすべてと比較して、登録された個人のデータの1またはそれ以上が対象スペクトルに十分に類似している場合、適合を伝える。2以上の登録された個人が対象に適合する場合に、適合する個人のすべてを伝えることができるか、あるいは最も適合する人を識別された人として伝えることができる。バイオメトリック認証の場合には、対象スペクトルが、主張される身元を伴い、それが、磁気カード、タイプされたユーザ名または識別子、トランスポンダ、別のバイオメトリックシステムからの信号またはその他の手段を使用して集められる。その後、主張された身元は、登録データベースからスペクトルデータの対応するセットを検索するために使用され、それに対して、バイオメトリック類似性判定が行われて、身元が確認または否定される。類似性が不十分である場合、バイオメトリック判定がキャンセルされて、新たな対象測定を試みることができる。
【0097】
認証の方法では、主成分分析がキャリブレーションデータに適用されて、スペクトルの因子が生成される。その後、それらの因子は、対象スペクトルと登録スペクトルとの間で取られたスペクトルの差異に適用されて、類似性の指標としてマハラノビス距離およびスペクトル残余強度値(spectral residual magnitude values)が生成される。上述した距離および強度が予め設定された各々の閾値設定未満である場合に限り、身元が検証される。同様に、バイオメトリック識別のための方法の一例では、マハラノビス距離およびスペクトル残余強度値が、データベーススペクトルの各々に関係する対象スペクトルのために計算される。検査スペクトルを提供する人の身元は、予め設定された各々の閾値設定未満である最小のマハラノビス距離およびスペクトル残余強度値を与えたデータベース測定と関連する1または複数の人として、立証される。
【0098】
例示的な方法では、限られた人数の人々が許可された操作を人が実行しようとするとき(例えば、分光測定を実行し、管理施設を入力し、入国検問所を通過するときなど)に、識別または認証タスクが実施される。人のスペクトルデータは、人の身元の識別または認証に使用される。この例示的な方法では、人は、最初に、1またはそれ以上の代表的な組織スペクトルを集めることにより、システムに登録する。2またはそれ以上のスペクトルが登録中に集められる場合には、それらのスペクトルは、整合性の検査を受けて、それらが十分に類似である場合にのみ登録し、それにより登録データを破壊するサンプルアーチファクトの可能性を制限することができる。認証の実施については、PINコード、磁気カード番号、ユーザ名称、IDカード、音声パターン、その他のバイオメトリックまたはその他の識別子のような識別子を集めて、確認された1または複数の登録スペクトルと関連付けることもできる。
【0099】
後の使用では、バイオメトリック識別は、許可を得ようとする人からスペクトルを集めることにより、行われるようにすることができる。その後、このスペクトルは、登録された許可データベースのスペクトルと比較されて、許可データベース入力に対する適合が予め設定された閾値より良好であった場合に、識別を行うことができる。認証タスクは類似しているが、集めたスペクトルに加えて人が識別子を提示することを要求することができる。その後、識別子は特定の登録データベーススペクトルを選択するために使用することができ、また、現在のスペクトルが選択された登録スペクトルに十分に似ている場合に、許可を与えることができる。バイオメトリックタスクが一人の人だけに許可されている操作に関連する場合に、認証タスクおよび識別タスクは同じとなり、ともに、許可された唯一の個人が別個の識別子を必要とすることなく操作を行おうとすることの保証に簡略化される。
【0100】
バイオメトリック測定は、モードにかかわらず、線形判別分析、二次の判別分析、K近傍法、ニューラルネットワークおよびその他の多変量解析技術または分類技術を含む様々な方法で実行することができる。これらの方法の幾つかは、人間内部のキャリブレーションデータベースの基本的なスペクトルの形状(因子、ローディングベクトル、固有ベクトル、潜在的変数など)を確立し、その後に、標準外れ値方法(スペクトルF比、マハラノビス距離、ユークリッド距離など)を使用して、登録データベースで入力測定の整合性を判定することに依存する。基本的なスペクトルの形状は、本明細書に開示されるような多数の手段によって生成することができる。
【0101】
第1に、基本的なスペクトルの形状は、キャリブレーションデータの単純なスペクトル分解(固有解析、フーリエ解析など)に基づいて生成することができる。基本的なスペクトルの形状を生成する第2の方法は、発明の名称を“Methods and Apparatus for Tailoring Spectroscopic Calibration Models”とする米国特許第6,157,041号に記載されているような一般的モデルの生成に関連する。これは引用により援用される。この用途では、基本的なスペクトルの形状が、人間内部の分光的特徴において実行されるキャリブレーション手順を介して生成される。基本的なスペクトルの形状は、シミュレートされた構成要素の変化に基づいたキャリブレーションの発生によって生成することができる。シミュレートされた構成要素の変化は、現実の生理学的または環境上の変化または機器の変化により導入される変化をモデル化することができ、あるいは単に理論上存在する分光変化とすることができる。基本的な形状を決定するその他の手段が本発明の識別および認証方法に適用可能であることが認識される。これらの方法も、前述した技法と関連して、あるいはそれらの代わりに使用することができる。
【0102】
[キャリブレーション検査サンプル]
被験者の安全性を確保するための使い捨てに加えて、機器が適切な作動状態にあることを確認するために、使い捨てのキャリブレーション検査サンプルを使用することができる。多くのアルコール測定の商用用途では、その後の測定が正確なアルコール濃度または属性推定値を与えることを保証するために、機器の状態を確認しなければならない。機器の状態は、被検者測定の直前に検査されることが多い。幾つかの実施形態では、キャリブレーション検査サンプルは、アルコールを含むことができる。その他の実施形態では、検査サンプルは、積分球のような、環境上安定してスペクトル的に不活性なサンプルとすることができる。検査サンプルは、分光サンプリングチャンバを介して注入または流入される気体または液体とすることができる。また、検査サンプルは、アルコールを含むゲルのような固体であってもよい。検査サンプルは、サンプリングサブシステムと接続するように構成することができ、あるいはシステムの光学パスの別の領域に組み込むことができる。これらの例は、例示を意図したものであり、様々な可能性のあるキャリブレーション検査サンプルに限定するものではない。
【0103】
[変化方向(DOC)および変化速度(ROC)]
本発明は、分光法を使用して、アルコールのような組織構成物質の濃度変化の方向および大きさを測定する方法も含む。本発明から得られる非侵襲的測定値は、本質的に半時間分解(semi-time resolved)される。これにより、アルコール濃度のような属性を時間の関数として求めることが可能になる。その後、時間分解されたアルコール濃度は、アルコール濃度の変化の速度および方向を求めるのに使用することができる。また、変化方向の情報は、血液中の任意の差異および生理学的動態により引き起こされる非侵襲アルコール濃度を部分的に補うのに使用することができる。発明の名称を“Determination of Direction and Rate of Change of an Analyte”とする米国特許第7,016,713号、および発明の名称を“Apparatus for Noninvasive Determination of Rate of Change of an Analyte”とする米国特許出願第20060167349号を参照されたい。その各々は、引用により本明細書に援用される。速度および方向の信号を増強する様々な手法が発見されている。これらの技術の幾つかは、加熱素子、ラブリフラクタント(rubrifractants)および屈折率整合媒体を含む。それらは、本発明をそれらの具体的な形式の増強または平衡に限定するものとして解釈すべきではない。これらの増強は、本発明を実施するのに必要とされるものではないが、例示的な目的のためだけに含まれるものである。
【0104】
[被験者の安全性]
非侵襲的アルコール測定の別の態様は、測定中の被検者の安全性である。被検者間の病原菌の測定汚染または転移を防止するために、必ずしも必要ではないが、使い捨ての清浄剤および/または保護面を使用して、各被験者を保護し、被験者間の体液または病原菌の移動を防止することが望ましい。例えば、幾つかの実施形態では、測定前に各被検者のサンプリング部位および/またはサンプリングサブシステム表面を清潔にするためにイソプロピルワイプを使用することができる。その他の実施形態では、被験者と機器間の物理的接触を防ぐために、各測定に先だって、ACLAR(登録商標)のような使い捨ての薄膜材料をサンプリングサブシステムと被検者との間に配置するようにしてもよい。その他の実施形態では、洗浄と膜の両方を同時に使用するようにしてもよい。この開示のサンプリングサブシステムの部分で言及したように、膜を位置決め装置に取り付けて、その後に、被験者のサンプリング部位に貼り付けることもできる。この実施形態では、膜が保護の役割を果たしている間に、測定中、位置決め装置が、サンプリングサブシステムと連動して、被験者が動くのを防止することができる。
【0105】
[局所干渉成分]
被検者測定では、サンプリング部位の局所的な干渉成分の存在は重要な懸案事項である。多くの局所干渉成分が、近赤外線領域において分光的特徴を有しており、存在する場合には、大きな測定誤差をもたらす可能性がある。本発明は、個々にまたは組合わせて使用される3つの方法で、局所干渉成分の可能性に対応する。図24は、3つの局所干渉成分の緩和手法を1つの結合したプロセスに組み合わせる方法について説明するフロー図を示している。最初に、被検者の安全性のセクションで説明したのと同様の使い捨て清浄剤が使用される。清浄剤の使用は、システムオペレータの裁量、または測定プロセスにおける強制ステップの何れかとすることができる。個々に異なるタイプの局所干渉成分を対象とする複数の清浄剤を使用することもできる。例えば、グリースおよび油を取り除くために、ある清浄剤を使用しながら、コロンまたは香水のような消費財を取り除くために別の清浄剤を使用することができる。清浄剤は、それらがシステムの精度に影響を与えるのを防止するために、属性測定の前に局所干渉成分を取り除くことができる。
【0106】
局所干渉成分の存在を緩和する第2の方法は、1またはそれ以上の干渉成分がサンプリング部位に存在するかどうかを判定するものである。キャリブレーションサブシステムで使用される多変量キャリブレーションモデルは、モデル化されていない干渉成分(局所的またはそれ以外)の存在に関する重要な情報を与える固有の外れ値指標を提供する。その結果、それらは、属性測定の信頼性に対する洞察を提供する。図25は、臨床研究中に得られた本発明を使用して非侵襲的測定から得られた例示的な外れ値指標値を示している。すべての大きな指標値(過半数の点から明らかに離れている)は、グリースが被検者のサンプリング部位に意図的に加えられた測定に対応する。これら指標は、外れ値の原因を具体的に特定しないが、関連する属性測定が疑わしいことを示す。過大な外れ値指標値(例えば、固定閾値を越える値)は、測定の繰り返し、代替的なキャリブレーションモデルの適用またはサンプリング部位の清浄処理のような、固定レスポンスを引き起こすために使用することができる。これは“スペクトルの検査OK”の判定ポイントとして図24に表わされている。
【0107】
最後の局所干渉成分の緩和方法は、局所干渉成分の分光的特徴を含めるためにキャリブレーションモデルを適合させるステップを伴う。適合されたキャリブレーションモデルは、要求に応じて作られるか、またはキャリブレーションモデルの既存のライブラリから選ぶことができる。ライブラリの各キャリブレーションは、異なる干渉成分または油のような干渉成分の区分を緩和することを対象にすることができる。幾つかの実施形態では、適切なキャリブレーションモデルは、元のキャリブレーションモデルによって説明できない、取得したスペクトルの部分に基づいて選ぶことができる。スペクトルのこの部分は、キャリブレーションモデル残余と呼ばれる。各局所干渉成分または干渉成分の区分は特有の近赤外線スペクトルを有するため、キャリブレーションモデル残余は局所干渉成分を識別するために使用することができる。
【0108】
その後、モデル残余または干渉成分の純粋スペクトル(格納されたライブラリから得られた)は、キャリブレーションを形成するために使用されるスペクトルに組み入れることができる。その後、干渉成分に直角の属性信号の部分を判定することができるように、多変量キャリブレーションが新しいスペクトルで改められる。その後、新しいキャリブレーションモデルは、対象となる属性を測定して、それにより属性測定精度に対する局所干渉成分の影響を低減するために使用される。結果として得られるモデルは、干渉成分が存在しないときに測定精度を犠牲にして、アルコール測定に対する干渉成分の影響を低減することとなる。このプロセスはキャリブレーション免疫(calibration immunization)と呼ばれる。免疫プロセスは、図24に示されるハイブリッドキャリブレーション形成プロセスに似ているが、干渉成分のスペクトルの変化の数学的加算の追加ステップを含む。なお、測定精度に対する免疫プロセスの影響のため、すべての可能性のある干渉成分に対して免疫が付けられたキャリブレーションを生じさせる試みよりもむしろ、各測定について可能性のある干渉成分を識別して、それらに対して具体的に免疫を付けることが望ましい場合がある。更なる詳細は、発明の名称を“Apparatus and methods for mitigating the effects of foreign interferents on analyte measurements in spectroscopy”とする米国出願第20070142720号で見付けることができる。この出願は、引用により本明細書に援用される。
【0109】
[新規な黒体光源]
狭帯域固体光源ではなく広帯域光源を組み込んだアルコール測定システムの幾つかの実施形態についても本発明が想定していることに留意することは重要である。光源の一例として、炉および窯のイグナイタとして一般に使用されるようなセラミックス素子が挙げられる。これらの光源は、標準的な白熱電球よりも低い色温度を有しており、よって、近赤外線スペクトル領域においてより有効である。これら光源は、光源の寿命に亘り遭遇する空間的影響に対する感度が低い比較的大きな放射面を有する。イグナイタに基づく光源の更なる利点は、白熱電球と比較した場合に、寿命が非常に長いということである。これらの実施形態では、広帯域黒体光源は、光学フィルタを使用して、多数の狭帯域光源に変換することができ、その光学フィルタには、線形可変フィルタ(LVF)、誘電体スタック、分散型ブラッグ格子、フォトニック結晶光子フィルタ、高分子フィルム、吸収フィルタ、反射フィルタ、エタロン、プリズムおよび格子のような分散素子、および量子ドットフィルタが含まれるが、それらに限定されるものではない。結果として得られる複数帯域の波長は、フーリエ方式またはアダマールマスクによって変調することができる。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態は、フィラメントベースの光源を代替的なIRおよびNIR光源に置き換えることにより、フィラメントベースの光源の欠点を取り除く。セラミックベースの黒体光源および半導体ベースの光源には、ガラス外皮の排除、高効率(望ましくないスペクトル領域における光が少ない)およびより安定した空間放射を含む幾つかの利点がある。このため、セラミックおよび半導体光源は、後続の空間および角度均質化のための改善された基礎を提供する。また、光学的効率の改善により、それらの光源は、サンプル照射に先だって、光学的にフィルタリングされる望ましくない波長を必要とすることがない。機器分散または干渉成分としての照射源の低減は、組織のような不透明な媒体における被分析物の濃度を正確に予測することができる光学システムおよびモデルを構築する能力を改善することが分かっている。本発明の幾つかの実施形態は、調査中のサンプルを照らす前に光源により放射された出力を収集および修正することにより、この照射安定性を提供する。
【0111】
本発明の幾つかの実施形態は、角度および/または空間均質化の発光体により、分光分散を最小化する方法に関連する。角度の均質化は、放射された放射線の任意の角度分布または強度(W/sr)を取り、より均一な角度分布を形成するあらゆるプロセスである。空間の均質化は、出力または放出面を横切る放射照度(W/m2)のより均一な分布を作成するプロセスである。
【0112】
すべての実際の光源は、それらの物理的構造物により、不均一な放射照度分布を生じる。このため、発光体の違い(例えば、異なる光源)は、異なる不均一な放射照度分布をもたらすこととなる。放射照度分布のこれらの違いは、光源間の分光学的違いに変換することができる。よって、発光体の違いにより異なる放射照度分布をとって、同様のまたは理想的には同じ放射照度分布を生成することが有用である場合がある。同様の放射照度分布を形成する例示的な方法は、均一な放射照度分布を生成するものである。
【0113】
放射体の違いは、角度分布の違いももたらす場合がある。上述したように、発光体の違いが、サンプルにより観察される角度分布または分光計への入力における角度分布に影響を与えない照射システムを形成することが有用である場合がある。一つの方法は、均一な角度分布を作成することである。理想的な角度ホモジナイザは、発光体からの角度分布に関わらず、光を球体(4パイsr)上に均一に分布させることとなる。理想的な反射角度ホモジナイザは、光を半球(2パイsr)上に均一に分布させることとなる。システムのその他の光学部品が規定された開口数内に光を集めなければならないという事実から、理想的なホモジナイザは、一般に非常に非能率的である。このため、機器の設計者は、光学効率の損失と角度の均質化の利点を比較検討しなければならない。特定の実施形態に関わらず、角度の均質化は、発光体の違いに対する感度が低い照射システムの実現において重要な要素となり得る。
【0114】
本発明は、一様ではない発光体から空間的および角度的に均質化された光を生成して、その均質化された光をスペクトル分析に使用するシステムを提供する。得られた均質化された放射線は、恒常的または再現可能な方式でサンプルまたはサンプラを照らし、それにより正確で信頼できる分光測定を可能にする。
【0115】
本発明の更なる利点は、空間の均質化である。フィラメントおよびセラミック光源の色温度は、光源の放射領域全体に亘って空間的に均一ではない。このため、フィラメントに亘る色温度変化は、フィラメント長に亘るスペクトルの違いをもたらすこととなる。色温度変化またはその他のフィラメントの違いによるこれらのスペクトルの違いは、発光体間で異なり、時間とともに変化する可能性がある。よって、発光体の空間不均質により異なるスペクトル分布をとって、照射システムの出力においてすべての空間位置で好ましくは均一なスペクトル分布を形成することが重要である場合がある。
【0116】
本発明の利点は、分光計に対する日常的な維持管理の普通の発生によって示すことができる。発光源が燃え尽きることは一般的である。用途に依存するが、光源の置換は、被分析物の測定誤差をもたらす場合があり、光源の置換に続いて分光計の再較正を必要とする場合がある。未熟練オペレータによる商業的使用を意図したシステムでは、再較正は望ましくない。しかしながら、本発明においては、光源の違いは無関係であり、光学測定システムの適当な性能が維持される。光源によって放射された放射線の空間および角度の特性に関わらず、本発明の照射システムの使用は、実質的に空間的および角度的に均質化された状態のままのサンプル上の放射線入射をもたらすこととなる。したがって、光源の変更は、本発明を使用した分子吸収度測定の精度および信頼性を損なうことはないであろう。
【0117】
本発明は、生物学的組織サンプルに照射を提供するシステムをさらに詳細に述べる。より具体的には、このシステムは、組織内の被分析物の濃度またはその他の特性を測定して定量化するための生物学的組織の分光照射に特に適している。本発明は、生物学的組織への熱的損傷を最小限にしながらも高い信号対雑音比(SNR)での測定を可能にする照射デバイスを、実行者が構築して操作することを可能にする。高いSNRにより、特定の被分析物とそれに似た干渉成分とを区別するために、ケモメトリックスモデルを発展させることができる。本発明は、以下の条件を満足させることにより、不透明な媒体の分光学的解析を可能にする。
(1)本発明によって放射された放射線は、対象となる被分析物の測定に有用な波長を含む。放射線は、局所的に連続的な帯域で波長に対して連続的であるか、特定の波長に選択することができる。その結果、対象となる被分析物についてNIRまたはIRのスペクトル“フィンガープリント”を含む波長領域を包含する放射線が得られる。NIR分光法を使用するエタノールの非侵襲的測定については、この波長領域は概ね1.0乃至2.5μmに及ぶ。
(2)本発明によって放射された放射線は、対象となるスペクトル領域において高い信号対雑音比を与えるのに十分に高いスペクトル放射輝度を持つ。NIR分光法を使用するエタノール測定においては、例えば、レンズおよび/またはミラーのような1またはそれ以上の光学素子で集中されるセラミック光源または1またはそれ以上の半導体光源からの放射線が、この条件を満たすスペクトル放射輝度を与えることとなる。
(3)スペクトル放射輝度は一般に、発光体のスペクトル発散度(spectral excitance)の変化に曝されたときに、不変量である。合理的に予測されるスペクトル発散度の変化は、発光体の回転および/または小さな移動、または発光体と同じ一般構成の別の発光体との置換によるものである。
【0118】
上記条件を満たすことによって、本発明のセラミックベースの光源は、照射のバラツキ(光源変更、光源の経年劣化、光源回転または移動)に伴う再較正、あるいは、幾つかの実施形態では、そのような変化を補うケモメトリックスモデルの開発の必要性をなくす。光源を交換するような単純な維持管理は、再較正や、光源変更に対する感受性が高いケモメトリックスモデルの開発を必要としない。また、衝撃、衝突およびその他の同様の振動により引き起こされる光源の回転および平行移動は、検査の精度に与える影響を最小限とすることができる。
【0119】
[半導体光源代替手段の利点]
分光法で使用される光源の多くは黒体放射体である。黒体放射体により放射される光は、プランクの法則に支配され、それは、放射光の強度が黒体の波長および温度の関数となることを示している。
【0120】
図26は、遮蔽されたTruTouchデバイスにより使用される4000−8000cm−1(2.5−1.25ミクロン)範囲を有する100−33000cm−1(100−0.3ミクロン)範囲に亘る1300および3000Kの黒体放射体の正規化されたNIRスペクトルを示している。1300Kは、TruTouch技術が現在使用するセラミックベースの黒体光源用の合理的な温度であり、3000Kは、分光用途でしばしば使用されるクオーツタングステンハロゲン(QTH)ランプ用の合理的な温度である。図26は、対象となるTruTouch領域の外側の波長で大量の光が放射されて、セラミック光源の光学効率が58%で、QTHがたった18%であるという点で、両方の黒体光源の光学効率が理想的ではないことを示している。
【0121】
光学効率に加えて、黒体光源は電気効率が悪い場合がある。実際の黒体光源は、大量の電力を必要とするが、その全てが放射光に変換される訳ではない。数百のセラミック黒体光源における電気および光学パワー測定は、平均24Wの電力で、平均1.1Wの光学パワー(4.4%の電気効率)を示している。58%の光学効率と組み合わせた場合、セラミック黒体の全体効率は約2.5%である。換言すれば、24Wの電力では、約0.6Wの光学パワーが4000乃至8000cm−1の対象領域で放射される。光源から発せられる全ての光が残りの光学システムによって収集される訳ではないため、更なる損失を受ける。
【0122】
低い電気効率によって示されるように、印加される電力の多くが熱に変換されて、その熱が、所望の電源条件よりも高い条件を越える有害な影響をもたらす。黒体光源によって生じた熱は、分光測定装置の熱的状態および安定性に影響を及ぼす場合がある。このため、ある状況では、装置は、測定を実行する前に電源が投入されて、熱平衡に達することが許容されるものとしなければならない。黒体光源に付随する平衡時間は、数分から数時間にまで及ぶ場合があり、それは、ある状況では不都合となる場合がある。
【0123】
黒体光源は、材料抵抗変化として経年劣化作用を示す。光学的視点から、光源の経年劣化に付随する大きな関連が存在する。先ず、抵抗値が上昇するに連れて、放射される光学パワーの量が減少する。図27は、例証的なセラミック黒体光源について観察された、時間をかけて測定した強度を示し、それは、3500時間で50%のパワーの減少を示している。経時的な強度の低下は、本来、指数関数的である傾向があるとともに、一定間隔での光源の交換を必要とすることがあり、それは、ある展開環境においては不都合となる可能性がある。次に、光源の温度が変化し、それが、波長の関数として光の分布を変化させる。色温度変化の程度に応じて、分光装置の安定性がやがて影響を受ける場合がある。
【0124】
それとは対照的に、LEDおよびその他の固体光源は、その発光プロファイルがより狭く、それにより、4000乃至8000cm−1の対象領域に放射される光を集中させることが可能になる。図28は、幾つかの市販の近赤外線LEDのスペクトル放射プロファイルを示しており、それらは、それぞれの製品データシートから得られたものである。利用可能なLEDの範囲は、望まれる測定で用いられることがないより低いおよび高い波数で光出力を最小化しながらも4000乃至8000cm−1の対象領域に及ぶ光源システムを形成するLEDの組合せの調査を可能にする。このため、得られるシステムは、光学効率の改善を示すこととなる。なお、前述した変調方式を含むその他の実施形態とは対照的に、固体光源のそれら実施形態の目的が、複数の固体光源を使用してより効率的なパッケージで黒体光源の光学特性をまとめて再現することであることに留意されたい。
【0125】
図28は、スペクトル放射プロファイルが4000乃至8000cm−1の対象領域の全体に及ばないため、黒体光源と実行可能に交換できる単一の現在利用可能なLEDが存在しないことを実証している。このため、適当な光源サブシステムを生成するために、複数のLEDを光学的に組合わせることができる。光源サブシステムに組み入れることができるLEDの数は、光学システムの面積および角度の受入れと個々のLEDのサイズおよび角度発散とによって最終的に決定される。LEDの最適な組合せの決定は、光学的および機械的設計および分光分析を含む大きな試みであるが、光学的設計または光子収集効率(それらは黒体およびLED光源について異なる)も、複数のLEDの出力を光学的に結合させるのに必要な設計も引き合いに出すことのない簡素化された手法が図35に示されている。図35の黒体の線は、1300°Kの黒体光源に対応し、この例におけるLEDの組合せについての望ましい目標である。点線は、各タイプのLEDの個々のプロファイルであり、合計線は、光学的結合において損失が生じないと仮定した場合の点線の和である。さらに、この例では、各点線の大きさが、それぞれのLEDに対する入力パワーの変化によって、あるいはその種類のさらに多くのLEDを加えることによって、実際上影響を受けると仮定している。また、対象となる所与のスペクトル領域内では、ある波長が、組織中のアルコール測定のような所与の用途にとって、その他の波長よりも重要になる可能性がある。LEDにより示される狭いプロファイルは、黒体光源と比較して、波長の相対強度の良好な微調整を可能にすることができる。
【0126】
LEDは、白熱電球のように全く機能しなくなることはない。その代わりに、それらは時間とともに強度低下を示す。そのため、LEDの寿命は、所与のタイプの平均的なLEDがその元の強度の50%(T50)に達するまでに要する時間の観点から測定される。LEDの寿命は、例えば、50,000時間から100,000時間までの範囲に及ぶ。そのため、LEDは、光源寿命の10Xの改善の潜在力と、それに対応する黒体光源に対する日常的な維持管理の必要性の低減を与える。
【0127】
LED、およびVCSELのような半導体レーザは、半導体ダイ(semiconductor die)自体のサイズによって駆動されるそれらと同等の黒体と比べた場合に、小さな放射領域を有することができる。光子放射は、半導体構造内で生成されるため、ダイの領域の外側に生じることができない。小さいサイズ(一般的な放射領域は、0.3mm×0.3mm平方または0.09mmである)は、その領域内の不均質性が何れも照射システムの出力のサイズ(それは、用途に応じて数mmまたはそれ以上となり得る)に対して僅かになるという点で、有利になり得る。このため、ダイ(または、複数の半導体が用いられる場合には複数のダイ)が物理的に移動しない限りは、空間出力が非常に安定したものとなる。その後、後続の空間のホモジナイザは、照射システム出力の全領域に亘って、ダイによって放射された光を均一に分布させることができる。
【0128】
LEDのような半導体光源の別の利点は、同じ物理的なパッケージに1より多いダイを組み入れる能力である。LEDの出力が一般に黒体光源よりもスペクトル的に狭いため、異なるタイプ(例えば、放射のピーク波長)の複数のLEDを組合わせて照射システムのスペクトル範囲を増加させることが可能である。また、対応波長で光学パワーを高めるために、同一タイプの追加のLEDを含むことができる。そのような手法により、照射システムにより放射される特定の波長および相対強度の双方に亘り高いレベルの制御が可能になる。これは、それほど重要でない波長における出力を低減しながら、アルコールのような対象となる所与の被分析物にとって重要な波長を増強するために使用することができる。LEDのセットがすべて同一タイプであるか混合であるかに関わらず、アルコールのような非侵襲的な被分析物測定での使用と調和する集積光学領域を保持しながらも、最大数百のLEDを同じパッケージに組み入れることができる。
【0129】
半導体光源の別の利点は、電圧または電流および温度を介してその出力を調整すると同様に、どの光源が所与の時間にオンであるのかを選択する能力である。このため、単一の照射システムは、複数の被分析物の測定のために最適化することができる。例えば、組織内のアルコールを測定するときに、LEDの所与のセットを作動させることができる。同様に、コレステロールまたはグルコースのような異なる被分析物を測定するときに、異なるセットを作動させることができる。
【0130】
[空間および角度の均質化の方法]
光学ディフューザ、ライトパイプおよびその他の周波数帯変換器のような光ホモジナイザは、再現性を与え、好ましくは、組織サンプリングサブシステム200の入力の均一な放射輝度を与えるために、照射/変調サブシステム100の幾つかの実施形態に組み入れることができる。均一な放射輝度により、良好な測光精度および組織の均等照射を保証することができる。また、均一な放射輝度により、光源間の製造の違いに付随する誤差を低減することができる。均一な放射輝度は、本発明において、正確で精度の高い測定を達成するために使用することができる。例えば、引用により本明細書に援用される米国特許第6,684,099号を参照されたい。
【0131】
すりガラス板は光学ディフューザの一例である。そのすりガラス表面は、光源およびその伝達光学素子から放出される放射線の角度を効率良くスクランブルする。ライトパイプは、その出力で放射強度が空間的に均一となるように、放射強度を均質化するために、使用することができる。また、二重の曲げを有するライトパイプは、放射の角度をスクランブルすることとなる。均一な空間的強度および角度分布の生成に関しては、ライトパイプの断面は円形とすべきではない。正方形、六角形および八角形の断面が、有効なスクランブル構成である。ライトパイプの出力は、組織サンプラの入力に直接結合させることができ、あるいは組織サンプラに光が送られる前に追加的な伝達光学素子とともに使用することができる。例えば、発明の名称を“Illumination Device and Method for Spectroscopic Analysis”とする米国特許出願第09/832,586号を参照されたい。この出願は引用によって本明細書に援用されるものである。
【0132】
例示的な実施形態では、放射ホモジナイザはライトパイプである。図29は、本発明のライトパイプの透視端面図および詳細平面図を示している。ライトパイプは、一般に、金属、ガラス(非晶質)、結晶、ポリマ、その他の同様の材料、またはそれらの任意の組合せから作製される。ライトパイプは、物理的に、近位端、遠位端およびその間の長さを含む。ライトパイプの長さは、この用途では、このライトパイプの近位端から遠位端に直線を引くことにより測定される。このため、ライトパイプの同じセグメントは、そのセグメントが形成する形状に依存して様々な長さを有する場合がある。セグメントの長さは、ライトパイプの意図した用途に応じて容易に変化する。
【0133】
例示的な実施形態においては、図29に示すように、セグメントがS字状のライトパイプを形成する。ライトパイプのS字状の屈曲部は、光がライトパイプを通過したときに、光の角度の均質化を提供する。しかしながら、その他の方法でも角度の均質化を達成できることが認識される。複数の屈曲部または非S字状の屈曲部を使用することも可能である。また、ライトパイプの内面がその長さの少なくとも一部に亘って拡散的に反射するコーティングを含む場合には、直線状のライトパイプを使用することも可能である。コーティングは、光がパイプを通って進むときに、角度の均質化を提供する。代替的には、角度の均質化を達成するために、窪みまたは微小光学ディフューザまたはレンズのような“微細構造”を含むようにライトパイプの内面を変更することもできる。また、ある角度の均質化を提供するために、すりガラスディフューザを使用することも可能である。
【0134】
また、ライトパイプの断面は様々な形状に形成することができる。特に、ライトパイプの断面は、空間の均質化を提供するために、多角形の形状であることが好ましい。多角形断面は、3辺から多くの辺を有するすべての多角形形態を含む。ある多角形断面は、チャネル化された放射線の空間の均質化を改善することが証明されている。例えば、その全長に亘り六角形の断面を有するライトパイプは、同じ長さの円筒断面を有するライトパイプと比較したときに、空間の均質化が改善された。
【0135】
さらに、ライトパイプの長さを通じて断面が変わるものであってもよい。そのため、ライトパイプの長さに沿った1点における任意の断面の形状および直径は、パイプの同じセグメントに沿った別の点で引かれる第2の断面によって変化するものであってもよい。幾つかの実施形態では、ライトパイプは、2端部間の中空構造である。それら実施形態では、少なくとも1のルーメンまたは管路がライトパイプの長さに及ぶものであってもよい。中空ライトパイプのルーメンは、一般に、反射特性を有している。この反射特性は、放射線がパイプの遠位端で放射されるように、ライトパイプの長さを通じてチャネリング輻射を助ける。ルーメンの内径は、円滑面、拡散面またはテクスチャ面の何れかをさらに有するものであってもよい。反射ルーメンまたは管路の表面特性は、放射線がライトパイプの長さを通過するときに、放射線の空間および角度の均質化を助ける。
【0136】
更なる実施形態では、ライトパイプが中実構造となっている。中実のコアは、メッキ、コーティングまたは金属被覆することができる。また、中実構造のライトパイプは一般に内面反射を提供する。この内面反射は、中実ライトパイプの近位端から入射する放射線が、パイプの長さを通じてチャネル化されることを可能にする。その後、チャネル化された放射線は、放射線強度の大きな損失を生じることなく、パイプの遠位端から放射させることができる。内面反射とその結果得られるチャネリングの例示が図30に示されている。
【0137】
切子面のある楕円の反射体は、出力放射線に所望の特性の部分のみを生じさせる本発明の実施形態の一例である。ファセット反射体の場合には、空間の均質化が達成されるが、角度の均質化が達成されない。すりガラスを介して基準システムの出力を通過するようなその他の場合には、角度の均質化が達成されるが、空間の均質化が達成されない。角度または空間の何れかの均質化のみがもたらされる(両方ではないが)それら実施形態のような実施形態においては、分光システムの性能におけるある改善を期待することができる。しかしながら、その改善の程度は、放射線の空間および角度の均質化が同時に達成されるシステムと同程度には期待できないであろう。
【0138】
角度および空間の双方の均質化を生じさせる別の方法は、照射システムにおいて積分球を使用するものである。特に、光を散乱させるサンプルからの光の検出に積分球を使用するのは一般的であるが、被分析物を非侵襲的に測定しようと努力するときに積分球を照射システムの一部として使用することはなされていない。実際に、発光体から出力される放射線は、出口ポートを通る組織の後続の照射により、積分球内に結合させることができる。発光体も積分球内に配置させることが可能であった。積分球は、非常に優れた角度および空間の均質化をもたらすが、このシステムの効率は、前述したその他の実施形態よりも遥かに低くなる。
【0139】
また、光の所望の均質化を遂行するために、ここで開示したシステムにその他の変更を加えることができることも認識される。例えば、反射体の必要性をなくす密封構造でライトパイプの内部に光源を配置することも可能である。また、ライトパイプを積分器で置換することができ、その場合、積分器内に光源が配置される。さらに、実施される分析のタイプに応じて、様々な波長領域において同様の結果を達成するために、本システムを非赤外線のアプリケーションで使用することも可能である。
【0140】
[例示的な実施形態の説明]
本発明の例示的な実施形態(図31に概略的に示されている)では、非侵襲的なアルコール測定システムが、22の離散的な波長を測定するために使用される13のVCSELにより構成されている。表1は、各VCSELの一覧と、測定中に調べられる関連する対象ピーク波長を示している。この実施形態では、各VCSELは一定温度に安定化されている。各VCSELのピーク波長は、図7に示される回路(各VCSELが自身の回路を有している)に基づいて制御され、VCSELをオンおよびオフに切り替えることも可能となっている。測定中の所与の時間における各VCSELの特定の状態(オン/オフ)は、予め定義されたアダマール行列により判定される。固体光源を組み込んだ例示的な実施形態では、アダマール行列が、各VCSELについての時間に対するオン/オフ状態のパターンとなっていて、それが物理的マスクまたはチョッパではなくソフトウェアに格納されている。これにより、ソフトウェアに格納されたオン/オフ状態を、測定中に各VCSELの電子制御回路に伝えることが可能になる。
【表1】

【0141】
表1のVCSELの幾つかが2波長位置に関与するため、すべての波長を組み込んだアダマールスキームを達成するのが難しい場合がある。この場合、走査とアダマール符号化を組み合わせることにより、すべての対象波長を測定することが可能になる。この実施形態では、すべてのVCSELがそれらの第1対象波長(1より多い対象波長を有する場合について)に調節されて、アダマール符号化スキームが関連する複合利益を達成するために使用される。その後、VCSELは、第2対象波長に合わせることができ、第2のアダマール符号化スキームが使用される。対象波長が1のみのVCSELは、グループの一方または両方で測定されるか、あるいはグループ間で分けられる。
【0142】
また、グループは、時間内に交互に配置することができる。例えば、2秒間の測定の場合には、第1グループを前半の1秒、第2グループを後半の1秒で測定することができる。代替的には、その測定は2秒間、0.5秒間隔で交互に行うこともできる。測定時間は、グループ間で対称である必要なない。例えば、一方または他方のグループに対して測定時間に重みを加えることにより、信号対雑音比を最適化することが望ましい場合がある。当業者であれば、本発明の実施形態において、測定時間の多くの置換、グループ数のバランシング、アダマールに対する走査の比率のバランシング、およびインターリービングが可能であり、検討されることを認識するであろう。
【0143】
例示的な実施形態では、各VCSELの出力が組み合わされて、六角形断面のライトパイプを使用して均質化される。幾つかの実施形態では、空間の均質化に加えて角度の均質化を提供するために、ライトパイプが1またはそれ以上の屈曲部を含むことができる。それとは関係なく、ライトパイプの出力では、すべての波長がサンプリングサブシステム200の入力に導入されるときにほぼ等価な空間および角度内容を有するように、すべてのVCSELの放射が空間的および角度的に均質化されることが望ましい。
【0144】
均質化された光は、光学プローブの入力に導入される。例示的な実施形態では、入力は、光ホモジナイザの断面と幾何学的に一致するように配置された225本の0.37NAシリカ−シリカ光ファイバ(照射ファイバと称される)により構成されている。その後、光はサンプルインタフェースに伝えられる。光は、光学プローブから出てサンプルに入り、その光の一部がサンプルと相互に作用して、64本の収集ファイバにより集められる。この例示的な実施形態では、収集ファイバが0.37NAシリカ−シリカファイバである。図32は、サンプルインタフェースにおける照射ファイバと収集ファイバとの間の空間的関係を示している。
【0145】
光学プローブの出力は、ホモジナイザへの導入と幾何学的に一致するように収集ファイバを並べる。例示的な実施形態では、ホモジナイザが六角形ライトパイプである。ホモジナイザは、各収集ファイバの内容が測定される光信号にほぼ均等に寄与するようにする。これは、本来不均一な人間の組織のようなサンプルにとって重要な場合がある。その後、ホモジナイザの出力は、光検出器上に集められる。この例示的な実施形態では、光検出器が、その出力電流が入射光の量に基づいて変化する拡張InGaAsダイオードである。
【0146】
その後、処理サブシステムは、電流をフィルタリングして処理を行った後、それを、2チャネルのデルタシグマADCを使用してデジタル信号に変換する。例示的な実施形態では、処理されたアナログ検出器信号が分割されて、両方のADCチャネルに導入される。例示的な実施形態が2つの測定グループ(例えば、2の対象波長)を有するVCSELを含むため、アダマール変換が、各グループから得られた分光信号に適用され、その後の変換が結合されて強度スペクトルが形成される。その後、強度スペクトルは、その後のアルコール濃度測定の前に、10を底とする対数に変換される。
【0147】
例示的な実施形態は、アルコールを乱用物質のようなその他の被分析物の特性と組み合わせた用途と同様に、“登録された”または“ウォークアップ/ユニバーサル”モダリティの何れかに適している。また、これまで述べたモダリティまたは組合せは何れも、独立に検討することも、バイオメトリック特性の測定と組み合わせて検討することもできる。
【0148】
3,245のアルコール測定値が、5つの非侵襲的アルコールシステムで89人から得られた。そのシステムは、“ウォークアップ”モダリティにおいて、22の波長を組み入れたスペクトルを測定した。その測定対象は、幅広い層および環境に及んだ。図33は、研究から得られた近赤外線分光測定値を示している。図34は、図33に示される分光測定から得られた非侵襲アルコール濃度を、同時に行われた毛細血管中アルコール濃度(BAC)アルコールと比較している。
【0149】
別の例示的な実施形態では、50の波長が24のVCSELを使用して測定される。表2はVCSELおよびそれらの対象波長を示している。VCSELの幾つかが、3の対象波長を含むため、3つのグループが存在し、その各々がアダマール符号化スキームを有している。光学プローブ設計、光ホモジナイザ、検出器および処理を含むシステムパラメータの残りは、上述した例示的な実施形態と同一である。
【表2】

【0150】
幾つかの例示的な実施形態では、既知の被分析物特性を有するサンプルの少数の測定値を使用して較正移行を実行することができる。非侵襲的なアルコール測定の場合には、各機器が、アルコールの存在しない個人で実施された少数の測定を持つことができる。機器の任意の非ゼロのアルコール結果は、その機器のその後の測定を補正するために使用できる測定誤差に変換される。補正の推定に使用される測定値の数は、変化する可能性があり、それは、必要とされる補正の精度に依存する。一般的に、このプロセスは、個々に較正される呼気試験器のようなアルコール装置と一致するキャリブレーションに特有の機器と類似している。
【0151】
同様の手法を較正維持管理にも適用することができる。アルコール検査の多くの用途では、大多数の測定が、アルコールが存在しそうもない個人に行なわれる。例えば、従業員がアルコールについて日常的に検査される職場安全においては、従業員が酔っているよりもアルコールを飲んでいない可能性が非常に高い(例えば、殆どの人がアルコールを飲まずに職場に入る)。この場合、真のアルコール濃度はゼロまたは中央値と仮定することができ、あるいは希な真のアルコール事象を除外するその他の手段を、機器補正を推定するために使用することができる。これは、移動中央値フィルタ(running median filter)、移動ウィンドウ(moving window)またはより精緻な多変量アルゴリズムとして、所与の時間における適切な補正を判定するために実施することができる。
【0152】
当業者であれば、本明細書において説明および検討された具体的な実施形態以外の様々な形式で本発明を表すことができることを認識するであろう。よって、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、形式および細部における変更を加えることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの被分析物の特性を測定する装置であって、
a.半導体光源を含む照射サブシステムと、
b.サンプリングサブシステムであって、当該サンプリングサブシステムにより前記照射サブシステムからの光がサンプルに導かれるように前記照射サブシステムが取り付けられるサンプリングサブシステムと、
c.データ収集サブシステムであって、サンプルからの光が前記サンプリングサブシステムから当該データ収集サブシステムに伝達されるように前記サンプリングサブシステムが取り付けられるデータ収集サブシステムと、
d.計算サブシステムであって、当該計算サブシステムが、前記データ収集サブシステムからの情報から被分析物の特性を求めることができるように前記データ収集サブシステムが取り付けられる計算サブシステムとを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記サンプリングサブシステムが、体内の組織に対するインターフェースを備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記体内の組織に対するインターフェースが、人間の手の組織に対するインターフェースを含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記人間の手の組織に対するインターフェースが、指の第一関節と第二関節との間の1またはそれ以上の指の先端の組織に対するインターフェースを含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記照射サブシステムが、複数の半導体光源を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記複数の半導体光源の出力が、サンプルに伝達される前に、光学的に結合されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5に記載の装置において、
前記複数の半導体光源の出力が、分光計に伝達される前に、空間的または角度的に、またはその双方において均質化されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項5に記載の装置において、
各半導体光源が、前記複数の半導体光源のうちのその他の半導体光源の中心波長と異なる中心波長を有することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
各半導体光源が、前記複数の半導体光源のうちのその他の半導体光源の変調周波数と異なる変調周波数で変調されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、
前記変調が、フーリエ、アダマール、フィッシャー、Z変換、正弦波、方形波および三角波変調のうちの1またはそれ以上に基づくものであることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置において、
変調周波数に対する半導体光源の対応がランダムであることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9に記載の装置において、
前記変調が、前記半導体光源の駆動電圧の制御、前記半導体光源の駆動電流の制御、前記半導体光源の駆動電力の制御、前記照射サブシステムが取り付けられる機械的マスクの制御、前記照射サブシステムが取り付けられる光学的マスクの制御、前記照射サブシステムが取り付けられるフィルタホイールの制御、前記照射サブシステムが取り付けられるチョッパホイールの制御、前記照射サブシステムが取り付けられる電気的に制御される光学素子の制御、前記照射サブシステムが取り付けられる液晶デバイスの制御、前記照射サブシステムが取り付けられるデジタルミラーデバイスの制御、および前記照射サブシステムが取り付けられる音響光学的可変フィルタの制御のうちの1またはそれ以上により実行されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置において、
前記半導体光源が、VCSEL、ダイオードレーザ、量子カスケードレーザ、量子ドットレーザ、LED、HCSELおよび有機LEDのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置において、
前記半導体光源の駆動電流、駆動電圧、駆動電力および温度のうちの少なくとも一つが安定化されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、
前記半導体光源の放射波長および放射プロファイルの少なくとも一方が、前記半導体光源の駆動電圧、駆動電流、駆動電力または温度のうちの少なくとも一つで制御することにより、調節されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項7に記載の装置において、
前記光が、ライトパイプおよびディフューザの少なくとも一方で均質化されることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置において、
前記被分析物の特性が、1またはそれ以上の被分析物の濃度、1またはそれ以上の被分析物の存在、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化方向、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化速度、および1またはそれ以上のその他の被分析物の測定において誤差を引き起こす傾向のある1またはそれ以上の干渉成分の存在のうちの少なくとも一つであることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項2に記載の装置において、
前記被分析物の特性が、1またはそれ以上の被分析物の濃度、1またはそれ以上の被分析物の存在、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化方向、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化速度、1またはそれ以上のその他の被分析物の測定において誤差を引き起こす傾向のある1またはそれ以上の干渉成分の存在、および組織のバイオメトリック特性のうちの少なくとも一つであることを特徴とする装置。
【請求項19】
人間中の被分析物の特性を測定する方法であって、
a.請求項2乃至18の何れか一項に記載の装置を提供するステップと、
b.前記装置を使用して人間の組織の光学特性を測定するステップと、
c.前記計算サブシステムを使用して前記被分析物の特性を求めるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記計算サブシステムが、前記前記被分析物の特性を求める際に、前記装置との以前の遣り取りによる情報を、前記装置との今回の遣り取りによる情報と組み合わせて使用することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、
前記計算サブシステムが、前記前記被分析物の特性を求める際に、前記装置との以前の遣り取りによる情報を、前記装置との今回の遣り取りによる情報と組み合わせて使用しないことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法において、
前記被分析物の特性が、1またはそれ以上の被分析物の濃度、1またはそれ以上の被分析物の存在、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化方向、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化速度、1またはそれ以上のその他の被分析物の測定において誤差を引き起こす傾向のある1またはそれ以上の干渉成分の存在、および組織のバイオメトリック特性のうちの少なくとも一つであることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記被分析物の特性が、1またはそれ以上の被分析物の濃度、1またはそれ以上の被分析物の存在、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化方向、1またはそれ以上の被分析物の濃度の変化速度、1またはそれ以上のその他の被分析物の測定において誤差を引き起こす傾向のある1またはそれ以上の干渉成分の存在、および組織のバイオメトリック特性のうちの少なくとも二つであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
前記被分析物が、アルコール、アルコール副生成物、アルコールマーカおよびアルコール付加物のうちの少なくとも一つであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項19に記載の方法において、
前記被分析物の特性が、被分析物の濃度の測定とバイオメトリック特性の測定の両方を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1に記載の装置のキャリブレーションを維持管理する方法であって、
異なる時間に取得した仮定値により、複数の測定値を使用して前記装置のキャリブレーションを調節するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1に記載されているような第1装置のキャリブレーションを、請求項1に記載されているような第2装置に移行する方法であって、
前記第1装置と第2装置との間のスペクトル応答の差異を求めるステップと、
前記差異に対応するように調節された前記第1装置のキャリブレーションを、前記第2装置に移行するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
差異を求めるステップが、既知の被分析物の特性でサンプルに対する両方の装置の応答を求めるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項1に記載の装置において、
前記半導体光源が、4150乃至4900,5400乃至6800、4150乃至7400、4000乃至8000の範囲のうちの少なくとも一つの範囲において、少なくとも1の波長を有する光を生成することを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項1に記載の装置において、
前記サンプリングサブシステムが、サンプルの複数の特徴的領域で光をサンプルに伝えることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項1に記載の装置において、
前記サンプリングサブシステムが、サンプルの複数の特徴的領域から光を集めることを特徴とする装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2012−515630(P2012−515630A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548162(P2011−548162)
【出願日】平成22年1月23日(2010.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/021898
【国際公開番号】WO2010/085716
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511178865)トゥルータッチ テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TRUTOUCH TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】