組織及び細胞富化グラフトを最適化するシステム、方法及び組成物
細胞懸濁液から未処理組織、例えば脂肪組織への細胞の濃縮を行う方法及びシステムが開示される。また、組織の水和を最適化するシステム及び細胞富化グラフトが開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する実施形態は、一般に、脂肪由来の再生力のある細胞の集団(例えば、幹細胞を含む脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団)を持つ脂肪組織及びこれらを持たない脂肪組織を含むグラフト、インプラント又は移植可能調製物を含む組成物並びにこれらを調製し、最適化しそして投与する方法及びシステムに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年5月1日に出願された米国特許仮出願第61/174,860号(発明の名称”SYSTEMS, METHODS AND COMPOSITIONS FOR OPTIMIZING TISSUE AND CELL GRAFTS ”)の優先権主張出願であり、この出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
身体の様々な領域への脂肪組織の導入は、1つの位置からの脂肪組織の採取並びに採取された組織及び処理されることが多い組織の別の位置での再植込みを含む比較的ありふれた美容的手技、治療手技及び構造的手技である(コールマン(Coleman)1995及びコールマン(Coleman)2001参照)。脂肪組織の導入は、大部分は顔のひだ、しわ、痘痕及びくぼみ等の小さな美容的欠点の修復に使用されているが、近年、美容的及び/又は治療的豊胸手術及び乳房再建(バーコル(Bircoll)及びノヴァック(Novack)1987並びにディクソン(Dixon)1988)及び豊尻手術(カルデナス−カマレナ(Cardenas-Camarena),ラクチュール等(Lacouture et al.)1999、デ・ペドロザ(de Pedroza)2000及びペレン(Peren),ゴメス等(Gomez et al.)2000)に使用されている。
【0004】
従来、脂肪組織グラフト及び脂肪組織導入方法は、壊死、身体によるインプラントの吸収、感染(カステロ(Castello),バロス等(Barros et al. )1999、バルダッタ(Valdatta),チオン等(Thione et al. )2001)、石灰化及び瘢痕化(フーフ(Huch)、キュンチ等(Kunz et al. )1998)、一貫性を欠いた移植(エレミア(Eremia)及びニューマン(Newman)2000)、耐久性の欠如並びに血管新生の欠如及び移植組織の壊死から生じる他の問題を含む難点及び副作用が悩みの種であった。脂肪組織導入における最も大きな難題の1つは、導入後の身体によるインプラントの吸収及び脂肪組織グラフトの体積保持である。脂肪組織が採取又は洗浄される場合、採取された脂肪組織の個別片の間の空間は液体(例えば、水、血液、腫脹液、油)によって満たされる。この組織/液体混合物がレシピエント中に植え込まれる場合、液体部分は身体によって急速に吸収され、体積の損失を生じる。液体の量が組織/液体混合物から除去されるプロセスは、「脂肪組織を乾燥させる」、又は「脂肪組織を脱水する」と呼ばれることが多い。脂肪組織グラフト中の赤血球及び白血球並びに同種のものの含有量も、炎症性応答の誘導又は悪化に起因して、グラフト移植後に保持されるグラフトの体積に相当な悪影響を及ぼす場合がある。組織保持のもう一つの観点は、脂肪組織グラフト内の脂質の量に関する。理解されるように、脂肪組織グラフト中の遊離脂質(死脂肪細胞又は損傷脂肪細胞から放出された脂質を意味し、油とも称される)の存在が、実質的な食細胞作用による炎症性応答及び結果として生ずるグラフト体積の損失の誘導又は悪化をもたらす場合がある。
【0005】
未処理の脂肪組織を、脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団と混合することが、上記のような脂肪組織グラフト及び脂肪組織導入と関連する問題の多くを克服することも公知である。具体的には、未処理の脂肪組織に脂肪由来幹細胞を含む脂肪由来細胞の濃縮集団を補充することにより、脂肪の多いグラフトの重量、血管侵入及び保持が増強される。(米国特許第7,390,484号明細書及び同時係属中米国特許出願公開第2005/0025755号明細書を参照されたい。なお、これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。)動物モデルにおいて、脂肪由来幹細胞を含む細胞の濃縮集団が補充され又はこれらと混合された脂肪組織断片は、脂肪組織だけの非補充状態のグラフトと比較した場合、グラフトの血管新生及び灌流の改善を示す。さらに、脂肪由来幹細胞を含む脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪組織グラフトは、補充が行われなかったグラフトと比較した場合、経時的なグラフトの保持及び重量の増加を示す。(米国特許出願公開第2005/0025755号明細書を参照されたい)。さらに、閉鎖滅菌液体経路での脂肪組織の処理は、感染の機会を大幅に減らす。上述の動物モデルにおいて調べられた脂肪組織の自己由来導入の改良は、ヒト臨床研究においても再現された。しかしながら、脂肪由来幹細胞(ADSC)を含む脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団の単離及び精製は、通常、一連の洗浄ステップ、消化ステップ、濾過ステップ及び/又は遠心分離ステップを含み、それらは生存細胞の収率を減少させ、機械設備及び専門医を必要とし且つ/或いはグラフトの品質、外観、寿命、水和若しくは有効性を損なう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,390,484号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0025755号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0025755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脂肪組織グラフト及びインプラントを調製すると共に最適化し、脂肪由来の再生力のある細胞を単離及び/又は濃縮する追加のアプローチが必要であることは明白である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において説明する実施形態は、脂肪組織グラフトを処理する装置並びに脂肪組織グラフト及び脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを調製する方法又はアプローチに関する。
【0009】
本明細書において説明する幾つかの実施形態は、組織を脂肪組織グラフトが得られるよう調製する装置に関する。幾つかの実施形態では、この装置は、第1のチャンバ及び第2のチャンバを備えた柔軟性の押しつぶし可能な袋を有するのが良く、第1のチャンバ及び第2のチャンバは、細孔を備えたフィルタによって画定されている。この装置は、第2のチャンバ内に設けられたセパレータと、柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された1つ又は2つ以上の入口ポート及び出口ポートとを更に有するのが良い。入口ポートは、第1のチャンバ内への脂肪組織の無菌的導入を可能にするよう構成されているのが良く、出口ポートは、第2のチャンバから液体及び細胞を無菌的に取り出すよう構成されているのが良い。
【0010】
幾つかの実施形態では、セパレータは、第2のチャンバ内に設けられた自由浮動多孔質構造体であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、第2のチャンバ内に第3のチャンバを構成する多孔質構造体であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、脂質吸い上げ材料、例えばポリエステルメッシュスクリーン等であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、システムの細孔よりも大きな細孔を有する多孔質構造体であるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、セパレータの細孔は、フィルタの細孔の孔径の約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、39倍、39倍又は40倍以上であるのが良い孔径を有する。幾つかの実施形態では、セパレータの細孔は、約300μm〜2000μmであるのが良い。幾つかの実施形態では、フィルタの孔径は、約30μm以上、例えば約30μm〜約200μmであるのが良い。幾つかの実施形態では、フィルタの孔径は、35μmである。
【0011】
幾つかの実施形態では、入口ポートは、アダプタに解除可能に連結されるよう構成されているのが良く、アダプタは、注射器筒、例えば60又は250ml注射器、トーミー(Toomey)注射器等の先端部に解除可能に連結されるよう構成されているのが良い。幾つかの実施形態では、入口ポートは、物質がポートに入ることができるが、ポートから出ることができないよう構成されているのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、入口ポートは、変形可能なプラスチック弁及び/又は組織接近ポート組立体を有し又はこれらに結合されるよう構成されている。幾つかの実施形態では、入口ポートは、滅菌流体/組織経路を維持した状態でカニューレに取り付けられるよう構成されているのが良い。
【0012】
幾つかの実施形態では、本装置は、第2の装置を更に有するのが良く、第2の装置は、装置に取り付けられた脂肪由来再生細胞単離装置を含む。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞単離装置は、閉鎖経路を維持した状態で脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する第1の装置に取り付け可能である。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞単離装置は、上述の装置であるのが良い。幾つかの実施形態では、第2の装置は、単離された脂肪由来再生細胞を第2の装置から脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置の第1のチャンバに移送するよう構成されるのが良い導管によって脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置に連結可能である。幾つかの実施形態では、導管は、Y形連結具又はYコネクタを含むのが良い。
【0013】
本明細書において提供される幾つかの実施形態は、脂肪組織グラフトを作製する方法に関する。この方法は、未処理脂肪組織の第1の部分を得るステップと、未処理脂肪組織の第1の部分を生理学的溶液ですすぎ洗いするステップと、すすぎ洗いした脂肪組織を脱水に先立って未処理脂肪組織の第1の部分中に存在する水和量よりも少ない水和量まで脱水するステップとを有するのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、すすぎ洗いした脂肪組織は、脱水に先立って未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/2、1/3又は1/4倍(好ましくは約1/3倍)未満の液体含有量まで脱水される。
【0014】
幾つかの実施形態では、生理学的溶液は、乳酸加リンゲル液、リンゲルのアセテート、生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、PLASMALYTE(登録商標)溶液、IV流体入り晶質液、IV流体入りコロイド溶液、5パーセントブドウ糖液(D5W)、ハートマン溶液等であるのが良い。
【0015】
幾つかの実施形態では、この方法は、一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離するステップ、脱水脂肪組織を脂肪由来再生細胞の単離された集団が乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で脂肪由来再生細胞の単離された集団に接触させるステップとを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心作用を受けない。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、第2の装置の第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を、例えば結合組織基質から細胞を遊離させる手段及びコラゲナーゼを含む酵素溶液に、かかる細胞を遊離させる条件下で、接触させることにより上述の装置内で調製されるのが良い。幾つかの実施形態では、細胞を遊離させるかかる条件としては、熱、冷却、機械的消化、超音波又はレーザ支援遊離又は当該技術分野において知られていると共に米国特許第7,390,484号明細書に記載されている他の方法が挙げられ、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの実施形態では、接触ステップは、第1の装置に取り付けられた第2の装置(例えば、第1の装置と同一構造を有する装置)内で実施されるのが良い。
【0016】
幾つかの実施形態は、脂肪組織グラフトを作製する方法であって、未処理脂肪細胞の第1の部分を得るステップと、未処理脂肪組織の第1の部分を上述の第1の装置の第1のチャンバ内に導入するステップと、生理学的洗浄溶液を第1のチャンバに追加することによって未処理脂肪組織の第1の部分をすすぎ洗いするステップと、第1の装置の第2のチャンバから、流体(水、生理学的洗浄溶液、血液、遊離脂質又はこれらの任意の組み合わせ)を除去し、それにより脂肪組織を乾燥させると共に遊離脂質含有量を減少させるステップを有することを特徴とする方法に関する。
【0017】
幾つかの実施形態では、この方法は、一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離するステップ、脱水脂肪組織を脂肪由来再生細胞の単離された集団が乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で脂肪由来再生細胞の単離された集団に接触させるステップとを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心作用を受けない。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、第2の装置の第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を、例えば結合組織基質から細胞を遊離させる手段及びコラゲナーゼを含む酵素溶液に、かかる細胞を遊離させる条件下で、接触させることにより上述の装置内で調製されるのが良い。幾つかの実施形態では、細胞を遊離させるかかる条件としては、熱、冷却、機械的消化、超音波又はレーザ支援遊離又は当該技術分野において知られていると共に米国特許第7,390,484号明細書に記載されている他の方法が挙げられ、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの実施形態では、接触ステップは、第1の装置に取り付けられた第2の装置(例えば、第1の装置と同一構造を有する装置)内で実施されるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書において開示する例示のグラフト補充方法を示す図である。
【図2】柔軟性収集容器のブロック図である。
【図3】脂肪由来再生細胞が補充されるのが良い脂肪組織グラフトを最適化するために用いられる例示のシステムを示す図である。
【図4】システム300のポート及びアダプタを示す図である。
【図5】システム300の外側メンブレン310を示す図である。
【図6】システム300のフィルタ320を示す図である。
【図7】システム300の分離スクリーン330を示す図である。
【図8】システム300の例示のシール311を示す図である。
【図9】ポート及びアダプタ600を備えたシステム300の斜視図である。
【図10】システム300のポートに用いられる組織ポート組立体600の破断図である。
【図11】システム300のポートに用いられる組織ポート組立体600の破断図である。
【図12】組織ポート組立体600に用いられるキャップ610の破断図である。
【図13】脂肪組織グラフトを最適化するために用いられる例示のシステム800の図である。
【図14A】例示の組織濃縮装置の斜視図であり、移植のために脂肪組織を処理する第1のチャンバ及び脂肪組織にリポダイジェステート(lipo-digestate)を補充する第2のチャンバを備えたキャニスタを示す図である。
【図14B】例示の組織濃縮装置の斜視図であり、図14Aに示されたキャニスタの例示のハウジング/プラットホームを示す図である。
【図15】未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)のパーセント水含有量(v/v)の棒グラフ図である。
【図16】未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)のパーセント脂質含有量(v/v)の棒グラフ図である。
【図17】本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト内の組織1グラム中に存在する赤血球含有量に標準化された組織1グラム当たりの赤血球(RBC)の含有量を示す棒グラフ図であり、データは、未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)について示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において開示する実施形態は、単独であるか脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞、内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)が補充され、かかる脂肪由来再生細胞で増強され若しくは強化された脂肪組織グラフト(例えば、「脂肪グラフト」)又は脂肪組織インプラントを作製する方法及びシステムに関する。本明細書において開示する実施形態は、一部が脂肪組織グラフトの迅速な調製及び最適化のため、しかも例えば重力流によって且つ所望ならば遠心分離、高圧又は真空濾過が行われないで一集団をなす脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞から成る細胞集団)で強化又は富化されたグラフト及びインプラントの調製のために使用できる装置又はシステムの発見に基づいている。本明細書において以下に説明するように、本明細書において開示する装置を用いて調製された脂肪組織グラフトは、従来型技術を用いて調製されたグラフトと比較して、流体、血球及び遊離脂質のレベルが減少し又は油含有量が減少した。特に、本明細書において開示する装置を用いて調製された脂肪組織グラフトは、細胞の生存能力の減少及び脂肪組織グラフトの保持力の減少を招く場合のある大きな機械的力を受ける必要がない。本明細書において開示する装置を用いると、予測可能且つ安定性のある脂肪組織インプラントを得ることができる。
【0020】
本明細書において開示する実施形態は又、一部が無傷の脂肪組織フラグメント又は「未処理脂肪組織基質」を用いると、消化され又は部分的に若しくは完全に離解された脂肪組織の溶液又は懸濁液と関連して提供される脂肪由来再生細胞を現場で濾過し、結合し、それにより効果的に濃縮することができるという本出願人の発見に基づいている。幾つかの実施形態では、「乾燥させた脂肪組織」又は「脱水した脂肪組織」を用いると、リポダイジェステート(lipo-digestate)の形態で提供される脂肪由来再生細胞を現場で濾過し、結合し、それにより効果的に濃縮することができる。幾つかの実施形態では、「未処理脂肪組織基質」をリポダイジェステートの追加後に乾燥させ又は脱水することができる。したがって、幾つかの実施形態では、脂肪組織グラフト又は脂肪グラフトの増強、補充又は強化に先立って離解脂肪組織の細胞成分の濃縮はもはや不要であることが認識された。
【0021】
次に、本発明の現時点において好ましい実施形態を参照するが、かかる実施形態の実施例が添付の図面に示されている。可能である限りにおいて、同一又は類似の参照符号が同一又は類似の部分を示すために図面及び明細書において用いられている。図面は単純化された形になっており、正確な縮尺通りではないことは注目されるべきである。本明細書の開示と関連して、説明の便宜上及び分かりやすくする目的で、方向を表す用語、例えば「頂部」、「底部」、「左側」、「右側」、「上」、「下」、「〜の上側」、「〜の上方」、「〜の下側」、「〜の下方」、「後側」及び「前側」は、添付の図面に関して用いられている。かかる方向を表す用語は、本発明の範囲をなんら制限するものではないことは理解されるべきである。
【0022】
本明細書における開示は、或る特定の例示の実施形態に関するが、これら実施形態は、例示として提供されており、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。以下の詳細な説明の意図は、例示の実施形態を説明するものであるが、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲に属する実施形態の全ての改造例、変更例及び均等例を含むものであることは理解されるべきである。本発明の観点は、当該技術分野において従来用いられている種々の細胞又は組織分離技術と関連して実施でき、本発明の理解を提供するのに必要な通常実施されるプロセスステップの大部分が本明細書に含まれているに過ぎない。
【0023】
乾燥又は脱水脂肪組織
本明細書において提供される幾つかの実施形態は、自己由来移植手技、例えば自己由来移植において直接用いることができ又は移植に先立って細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、脂肪由来幹細胞等)、添加剤等で強化できる乾燥又は脱水脂肪組織グラフトを作製する方法に関する。
【0024】
「脂肪組織」という用語は、幾つかの関連性において、脂肪を蓄える結合組織を含む脂肪を意味する場合がある。脂肪組織は、結合組織基質によって結合された多くの種類の再生細胞を含み、かかる再生細胞の種類としては、脂肪由来幹細胞(“ADSC”)、内皮前駆及び先駆細胞、周皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞、リンパ内皮細胞を含むリンパ細胞等が挙げられる。幾つかの実施形態では、一単位の脂肪細胞が脂肪組織グラフトを作るために被験体から取り出される。
【0025】
「脂肪組織の単位」という表現は、単位の重量及び/又は体積を定めることによって測定可能な脂肪組織の離散量又は測定可能な量を意味している。一単位の脂肪組織は、患者から取り出した脂肪組織の量全体又は患者から取り出した脂肪組織の量全体よりも少ない量を意味する場合がある。かくして、一単位の脂肪組織を別の一単位の脂肪組織と組み合わせると、個々の単位の合計である重量又は体積を有する一単位の脂肪組織を形成することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、被験体から脂肪組織の1つ又は2つ以上の単位が取り出される。本明細書において説明する実施形態で用いられる脂肪組織は、当業者に知られている任意の方法により得ることができる。例えば、脂肪組織を患者から吸引支援脂肪形成術、超音波支援脂肪形成術、摘出脂肪組織切除術、レーザ脂肪形成術、ウォータージェット脂肪形成術等により取り出すことができる。加うるに、これら手技は、かかる手技の組み合わせ、例えば摘出脂肪組織切除術と吸引支援脂肪形成術の組み合わせを含む場合がある。好ましくは、脂肪組織は、組織及びその細胞成分の生存能力を保つと共に潜在的に感染性の有機体、例えば細菌及び/又はウイルスによる収集物質の汚染の恐れを最小限に抑える仕方で収集される。かくして、好ましい実施形態では、組織摘出は、例えば閉鎖滅菌流体/組織経路中で汚染を最小限に抑えるよう滅菌又は無菌的に実施される。幾つかの実施形態では、吸引支援脂肪形成術は、脂肪組織を患者から取り出すために用いられ、それにより、他の技術、例えば超音波支援脂肪形成術と関連する場合がある細胞又は組織の損傷の恐れを減少させた状態で組織を収集する低侵襲方法が提供される。
【0027】
吸引支援脂肪形成手技の場合、脂肪組織は、被験体中に存在する脂肪組織貯留槽中に又はその近くへのカニューレの挿入、その次の吸引装置中への脂肪の吸引によって収集される。一実施形態では、小型カニューレを注射器に結合するのが良く、そして手の力を用いて脂肪組織を吸引するのが良い。注射器又は他の類似の器具を用いると、比較的適量の脂肪組織(例えば、0.1ml〜数百ミリリットルの脂肪組織)を採取することができる。比較的小型の器具を用いた手技は、かかる手技を全身麻酔とは対照的に局所麻酔だけで実施できるという利点を有する。この範囲を超える(例えば、数百ミリリットル以上の)多量の脂肪組織では、ドナー及び収集手技を実施する人の判断による全身麻酔が必要な場合がある。多量の脂肪組織を取り出すことが望ましい場合、この手技では比較的大型のカニューレ及び自動化吸引装置を用いるのが良い。
【0028】
摘出脂肪組織切除手技としては、脂肪組織含有組織(例えば、皮膚)を摘出、例えば切除対象の組織の直接又は間接的視覚化下における外科的切離によって取り出される手技が挙げられるが、これには限定されない。或る特定の実施形態では、これは、即ち、手術の主目的が組織(例えば、肥満学的手術又は美容学的手術における皮膚)の除去である場合及び脂肪組織が主要な関心のある組織と一緒に取り出される場合、手技の付随的部分として行われる場合がある。
【0029】
本明細書において開示する方法で用いられる脂肪組織の収集量は、多くの変数で決まり、かかる変数としては、ドナーの体型指数(BMI)、接近可能な脂肪組織採取部位の利用可能性、随伴的且つ既存の投薬法及び条件(例えば、抗凝固薬療法)及び組織が収集される目的が挙げられるが、これらには限定されない。かくして、「多ければ良い」という一般的原理が他の変数によって設定される限度内に適用されると共に実施可能である場合、組織回収では可能な限り多くの組織が収集される可能性がある。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば、乾燥又は脱水脂肪組織が強化又は補充脂肪組織グラフトを作製するために用いられる実施形態では、一単位又はユニットの脂肪組織は、幾つかの部分に分割される。脂肪組織の第1の部分は、消化されず、全く処理されないか或いは本明細書において以下に説明するように乾燥又は脱水脂肪組織を得るためにすすぎ洗いされ若しくは洗浄される。未処理、乾燥又は脱水脂肪組織の第1の部分は、リポダイジェステート中に存在する脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)又は第2の部分からの脂肪由来細胞の濃縮集団が補充されるグラフト基礎部として役立ちうる。一部分を以下に説明するように処理して結合組織基質から脂肪由来再生細胞(例えば、例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を放出し又は遊離させてリポダイジェステート又は再生細胞若しくは幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を得るのが良い。幾つかの実施形態では、例えば被験体の同一若しくは異なる領域又は互いに異なる被験体から脂肪組織の2つの別々な単位を収集する。一方の単位は、リポダイジェステート又は再生細胞若しくは幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を得るよう以下に説明するように処理されるのが良く、他方の単位は、脂肪由来再生細胞(例えば、リポダイジェステート及び/又は脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)が補充された脂肪グラフトの基礎部としての役目を果たすことができる。一実施形態では、脂肪組織の単位の一方又は両方は、本発明の装置又はシステム内に低温保存又は凍結保存されるのが良く、この場合、装置のチャンバは、低温保存、低温貯蔵、解凍及びその後の本明細書において説明する使用プロセス中、機械的及び構造的健全性を保持する材料で作られる。別のかかる実施形態では、リポダイジェステート又は脂肪由来幹細胞を含む再生細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団は、本明細書において説明するようにグラフト又はインプラントの強化における使用に先立って低温保存又は凍結保存されるのが良い。
【0031】
「乾燥した脂肪組織」と関連して用いられる「乾燥」という用語は、同一の部位及び同一の被験体からの未処理脂肪組織と比較して「乾燥脂肪組織」中に存在する液体、例えば水又は他の液体(例えば、腫脹流体)の含有量(例えば、乾燥させた脂肪組織と同一の部位及び同一の被験体から採取した脂肪組織の等価単位(w/w))が少ない脂肪組織の一単位を意味している。「脱水した脂肪組織」と関連して用いられる「脱水」という用語は、同一の部位及び同一の被験体からの未処理脂肪組織と比較して「脱水脂肪組織」中に存在する液体、例えば水又は他の液体(例えば、腫脹流体)の含有量(例えば、脱水した脂肪組織と同一の部位及び同一の被験体から採取した脂肪組織の等価単位(w/w))が少ない脂肪組織の一単位を意味している。
【0032】
本明細書で用いられる「等価単位」という用語は、被験体から得た脂肪組織の等価体積又は重量を意味する場合がある。例えば、等価単位は、被験体から得た脂肪組織の等価体積(又は重量)を意味する場合がある。幾つかの実施形態では、等価単位は、同一の部位(例えば、臀部、腹、大腿、背等)及び同一又は異なる被験体から得た等価体積(又は重量)を意味する場合がある。
【0033】
「未処理脂肪組織」という用語は、部分的又は完全に離解されなかった、即ち、組織に機械的に及び/又は酵素的離解を施すことによっては離解されなかった脂肪組織を意味している。したがって、未処理脂肪組織は、脂肪由来再生細胞に結合された結合組織を含む無傷の組織フラグメントを含む。本明細書で用いられる「脂肪由来再生細胞」という用語は、器官、組織又は生理学的ユニット又はシステムの構造又は機能の完全若しくは部分再生、回復又は置換を生じさせ又はこれに寄与し、それにより治療上、構造上又は美容上の利点をもたらす脂肪組織から得られた任意の細胞を意味している。再生細胞の例としては、脂肪由来幹細胞(“ADSC”)、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、脂肪前駆細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞(及びこれらの子孫)及びリンパ球が挙げられる。
【0034】
幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%(又はこの範囲に含まれる任意のパーセント)の液体含有量(体積及び/又は重量で測定されている)を有する。例えば、乾燥脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位よりもその約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上(又はこの範囲に含まれる任意の倍数以上)少ない液体含有量を有するのが良い。同様に、「脱水脂肪組織」と関連して用いられる「脱水」という用語は、未処理脂肪組織又は未処理脂肪組織の等価単位と比較して、「脱水脂肪組織」中に存在する水の少ない含有量を意味している。幾つかの実施形態では、脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位又は遠心分離若しくは別の従来方式により調製された脂肪組織の等価単位の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%又は95%以上(又はこの範囲に含まれる任意のパーセント)の水含有量を有するのが良い。例えば、乾燥脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位よりもその約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上(又はこの範囲に含まれる任意の倍数以上)少ない液体含有量を有するのが良い。
【0035】
幾つかの実施形態では、本明細書において説明する「乾燥」又は「脱水」脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位と比較して少ない含有量又は割合の脂質及び/又は赤血球若しくは白血球を含むのが良い。幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の白血球を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の白血球の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0036】
幾つかの実施形態では、本明細書において提供される乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の赤血球を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の赤血球の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0037】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示される乾燥又は脱水脂肪組織グラフトは、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の脂質を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の脂質の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0038】
幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、以下に詳細に説明するようにフィルタ及びセパレータを含む装置に未処理脂肪組織を提供することによって得られる。フィルタは、装置を2つの内部チャンバに分割するのが良く、それにより第1のチャンバ又はサブシステム及び第2のチャンバ又はサブシステムが構成される。脂肪組織は、装置の第1のチャンバ又はサブシステム中に導入され、好ましくは、この脂肪組織は、装置の第2のチャンバ内には入らない。フィルタは、液体、例えば水、腫脹流体、洗浄溶液(例えば、乳酸加リンゲル液、生理的食塩水、PLASMALYTE(登録商標)等)、遊離脂質、油、血球、脂肪組織及び血液成分からの溶解細胞の第2のチャンバ内への自由流れを可能にする複数個の細孔を有するが、孔径は、これが非離解脂肪組織及び組織フラグメントを第1のチャンバ内に保持するようなものである。第2のチャンバは、以下に詳細に説明するように脂質吸い上げ及び/又は流体吸い上げ性の材料で作られたセパレータ(例えば、流体を第1のチャンバから引き出す網目構造設計)を有するのが良い。好ましい実施形態では、セパレータは、多孔質材料で作られ、セパレータの細孔は、フィルタの細孔よりも大きい。
【0039】
第1のチャンバ内の未処理脂肪組織は、生理学的洗浄溶液ですすぎ洗いされ又は洗浄される。好ましい実施形態では、生理学的洗浄溶液は、装置中に無菌的に導入される。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第1のチャンバ内に導入される。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第2のチャンバ内に導入され、この洗浄溶液は、フィルタを通って第2のチャンバ内に流入し、それによりこの中に入っている脂肪組織に接触する。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第1のチャンバと第2のチャンバの両方内に導入される。
【0040】
幾つかの実施形態では、脂肪組織及び洗浄溶液は、第1のチャンバ内の脂肪組織からの遊離脂質、赤血球及び白血球並びに腫脹流体のすすぎ洗い及び分離を容易にするために撹拌される(例えば、逆さにすることにより、絞り出すことにより又は装置を穏やかに振盪することによって)。他の実施形態では、第1のチャンバ内の脂肪組織を洗浄溶液に接触させ、洗浄溶液は、撹拌なしで、例えば重力又は吸い上げ力によって装置の第1のチャンバから出て行き又は吸い出される。
【0041】
幾つかの実施形態では、脂肪組織をすすぎ洗いするのに用いられる洗浄溶液の量は、脂肪組織の量よりも大きいのが良い。一例を挙げるに過ぎないが、幾つかの実施形態では、約1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml、500ml、550ml、600ml、650ml、700ml、750ml、800ml、850ml、900ml、950ml、1000ml、1100ml、1500ml、2000ml以上又はこれらの量の範囲に含まれる任意の量の洗浄溶液を用いて未処理脂肪組織をすすぎ洗いするのが良い。
【0042】
洗浄又はすすぎ洗いステップ中、液体、例えば洗浄溶液、遊離脂質、油、血球、脂肪組織及び血液成分からの溶解細胞等は、装置の第1のチャンバと第2のチャンバとの間でフィルタの細孔を通過する。したがって、第2のチャンバは、液体で満たされるようになる。第2のチャンバ内のセパレータは、例えばウィックとして作用して流体を第1のチャンバから引き出してこれを第2のチャンバ内に保持するよう機能することができる。脂肪組織を収容した第1のチャンバからの水、腫脹流体、血液及び遊離脂質の運動により、脂肪組織が乾燥すると共に脱水される。流体は、ポートを通って第2のチャンバから除去される。幾つかの実施形態では、流体は、ポンプ又は真空を利用して第2のチャンバから除去される。幾つかの実施形態では、流体は、ポートを通って第2のチャンバから流出する。
【0043】
図2〜図13を参照して乾燥又は脱水脂肪組織並びに補充又は強化された脂肪組織グラフトを作製する例示の装置について以下に詳細に説明する。
【0044】
幾つかの実施形態では、洗浄溶液を追加するステップ及び内容物を第2のチャンバから取り出すステップは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上繰り返される。
【0045】
乾燥又は脱水脂肪組織を第1のチャンバから取り出して(好ましくは、無菌的に)、被験体に直接投与するのが良い。幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、被験体への投与に先立って、更に処理される(例えば、以下に詳細に説明するように添加剤の追加によって)。
【0046】
補充脂肪組織グラフト
本明細書において、補充され、増強され又は強化された脂肪組織グラフトを作製する方法及びシステムが開示され、例えば、この場合、グラフトは、未処理脂肪組織又は乾燥若しくは脱水脂肪組織である。例えば、本明細書において説明する幾つかの方法では、強化又は補充脂肪組織グラフトに追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞が補充され、例えば、リポダイジェステート又は再生細胞又は幹細胞から成る濃縮脂肪由来細胞集団が補充される。好ましくは、追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞は、同一の被験体から得られる。幾つかの実施形態では、追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞を別の被験体から得ることができる。
【0047】
本明細書において説明する方法のうちの幾つかにより、例えば、消化された脂肪吸引液(「リポダイジェステート(lipo-digestate)」)を未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質に直接塗布し、そして未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質をリポダイジェステート中に存在する成分(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を保持するフィルタ又は篩として用いる。この方法により、やっかいであると共に時間がかかる場合があり、しかも細胞の生存能力に悪影響を及ぼす場合のある追加の精製又は単離ステップなしで、脂肪由来幹細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)で富化され、これが補充され又はこれで強化された脂肪組織グラフト、インプラント又は脂肪グラフトを迅速に調製することができる。本明細書において説明する方法のうちの幾つかにより、例えば、再生細胞又は幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質に直接塗布し、そして未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質をリポダイジェステート中に存在する成分(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を保持するフィルタ又は篩として用いる。
【0048】
脂肪由来再生細胞を単離し、精製し、そして濃縮する既存の手法とは対照的に、本明細書において開示する幾つかの方法は、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織又は脱水脂肪組織の無傷の基質を用いて現場で、即ち、基質それ自体上で脂肪由来再生細胞を穏やかに濾過して濃縮し、そしてそのようにすることによって遠心分離、メンブレン、ゲル又はリポダイジェステートのグラジエント、濾過及び他の機械的操作により生じる細胞の損傷を回避する。加うるに、本明細書において説明する手法は、脂肪組織グラフト全体にわたる外因性脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)の一様な又は実質的に完全な分布を促進する。
【0049】
本明細書において用いられる「再生細胞組成物」又は「リポダイジェステート」という表現は、組織、例えば、脂肪組織を洗浄し、少なくとも部分的に離解させた後の所与の量の液体中に一般的に存在する細胞の成分を意味している。例えば、幾つかの実施形態では、再生細胞組成物又はリポダイジェステートは、脂肪由来再生細胞、例えば幹細胞から成る脂肪由来細胞の集団を含む細胞溶液から成るのが良い。幾つかの実施形態では、再生細胞組成物は、多種多様な再生細胞を含むのが良く、かかる再生細胞としては、ADSC、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、脂肪前駆細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞(及びこれらの子孫)及びリンパ球が挙げられる。幾つかの実施形態では、再生細胞組成物は、たった1種類、2種類だけ、3種類だけ、4種類だけ又は5種類以上の再生細胞を含む。再生細胞組成物及びリポダイジェステートは、幾つかの実施形態では、組織フラグメント中に存在する場合のある1種類又は2種類以上の汚染要因物、例えばコラーゲンを更に含む場合がある。幾つかの実施形態では、リポダイジェステート又は再生細胞溶液には、実質的に無傷の脂肪細胞フラグメントがない。
【0050】
本明細書で用いられる「幹細胞」という用語は、1つ又は2つ以上の特定の機能を実行すると共に自己複製能力を有する種々の他の形式の細胞に分化する可能性を備えた多能性再生細胞を意味している。本明細書において開示する幹細胞の中には、多能性を有するものがある。
【0051】
本明細書において用いられる「前駆細胞」という用語は、2種類以上の細胞に分化する可能性を持つ多能性再生細胞を有している。本明細書で用いられる「前駆細胞」という用語は又、1つ又は2つ以上の特定の機能を実行すると共に自己複製が制限され又は自己複製能力を備えていない唯一の種類の細胞に分化する可能性を持つ単能性再生細胞をも意味する。特に、本明細書で用いられる「内皮前駆細胞」という用語は、血管内皮細胞に分化する可能性を持つ多能性又は単能性細胞を意味している。
【0052】
本明細書で用いられる「先駆細胞」という用語は、1種類の細胞に分化する可能性を持つ単能性再生細胞を意味している。先駆細胞及びこれらの子孫、例えばリンパ球及び内皮細胞は、適当な条件下で増幅することができる広汎増殖能力を保持することができる。
【0053】
本明細書で用いられる「幹細胞数」又は「幹細胞頻度」という表現は、脂肪由来細胞(ADC)を低細胞密度(<10,000細胞/ウェル)で平板培養すると共にMSC成長を支える生育発育培地(例えば、10%牛胎児血清、5%馬血清及び抗生物質/抗真菌剤を補充したDMEM/F12培地)中で成長させるコロニー形成アッセイにおいて観察されるコロニーの数を意味している。細胞を2週間成長させるのが良く、その後培養物をヘマトキシリンで染色するのが良い。50個以上の細胞のコロニーをCFU‐Fとして計数する。幹細胞頻度は、平板培養された100個の有核細胞当たりに換算されるCFU‐Fの数として計算される(例えば、1,000個の有核ADC細胞で開始された平板において計数される10個のコロニーは、1.5%の幹細胞頻度を与える)。幹細胞数は、幹細胞頻度に得られた有核ADC細胞の全数を乗算して得られた数として計算される。ADC細胞から成長したCFU‐Fの高い割合(〜100%)は、細胞表面分子CD105を表し、この細胞表面分子CD105は又、骨髄由来幹細胞によって表される(ベリー等(Barry et al.)1999)。また、CD105は、脂肪細胞由来幹細胞によって表される(ズック等(Zuk et al.)2002)。幾つかの実施形態では、脂肪細胞を本明細書において説明する方法に従って処理してリポダイジェステート及び/又は脂肪由来細胞の濃縮集団を得ることができ、この場合、細胞のうちの少なくとも0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、幹細胞又はリポダイジェステート若しくは濃縮脂肪由来細胞集団の他の種類の再生細胞である。
【0054】
好ましくは、脂肪組織は、外部環境との接触を回避すると共に環境からの汚染の恐れをなくすためにリポダイジェステート又は再生細胞溶液を閉鎖された流体/組織経路を備えた滅菌閉鎖系中で作製するよう処理される。脂肪組織を処理してリポダイジェステートを作製するのに有用な装置が当該技術分野において知られている。好ましい実施形態では、脂肪細胞は、例えば幾つかの実施形態では、米国特許第7,390,484号明細書に記載された装置を用いた完全閉鎖系を維持しながらリポダイジェステートを作製するよう処理される。なお、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの好ましい実施形態では、脂肪組織処理手技では、遠心分離、篩若しくは水ひ又は再生細胞組成物/リポダイジェステート中の再生細胞の生存能力を低下させる又はその可能性を有する脂肪由来再生細胞から成る細胞集団を濃縮する任意他の機械的手法が行われない。
【0055】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを得る方法は、リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞集団を作製するために用いられる脂肪組織の一部分又は単位からの成熟した脂肪含有脂肪細胞成分の組織の除去又は減少を含む。幾つかの実施形態では、脂肪組織は、一連の洗浄及び離解ステップを受け、この場合、組織をまず最初にすすぎ洗いして遊離脂質(壊れた脂肪組織から放出される)及び末梢血要素(組織採取中に切断された血管から放出される)の存在量を減少させる。例えば、幾つかの実施形態では、脂肪組織を等張生理的食塩水、例えばリン酸緩衝生理的食塩水又は他の生理学的溶液(例えば、バクスター・インコーポレイテッド(Baxter Inc.)製のPLASMALYTE(登録商標)、アブトラブズ(Abbott Labs)社製のNORMOSO(登録商標)又は乳酸加リンゲル液)と混合する。次に、洗浄した組織を離解させて無傷の脂肪細胞及び他の細胞集団を結合組織基質から遊離させるのが良い。或る特定の実施形態では、脂肪組織成分全体又は非再生細胞成分を脂肪組織の再生細胞成分から分離する。他の実施形態では、脂肪組織成分のうちの一部分のみ又は幾つかの部分を再生細胞から分離する。無傷の脂肪細胞フラグメントを幾つかの手法により遊離脂質及び細胞から分離するのが良く、かかる手法としては、濾過、デカンテーション又は沈降等が挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、消化された組織には遠心分離又は水ひを施さない。
【0056】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを生じさせるために用いられる脂肪組織を完全に離解させ、他の実施形態では、脂肪組織を部分的にしか離解させない。例えば未処理又は洗浄脂肪組織からの無傷の脂肪組織フラグメントは、任意の従来技術又は方法を用いて離解可能であり、かかる技術又は方法としては、機械的力(刻み又は剪断力)、米国特許第5,952,215号明細書に開示されているような単一又は組み合わせによるタンパク分解酵素、例えばコラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、リベラーゼHI及びペプシン又は機械的方法と酵素による方法の組み合わせが挙げられる。脂肪組織を離解させるために使用可能なコラゲナーゼを用いる追加の方法は、米国特許第5,830,714号明細書及び同第5,952,215号明細書に開示されると共にウィリアムズ,エス・ケー,エス・マッケニー,他(Williams, S.K., S. Mckenney, et al.),「コラゲナーゼ・ロット・セレクション・アンド・ピュリフィケーション・フォア・アディポーズ・ティシュー・ダイジェスチョン(Collagenase lot selection and purification for adipose tissue digestion)」,セル・トランスプラント(Cell Transplant),1995年,4(3),p.281‐9によって開示されている。幾つかの実施形態では、中性プロテアーゼを用いると、トゥエンティーマン,ピー・アール,ジェー・エム・ユハス(Twentyman, P. R. and J. M. Yuhas),「ユース・オブ・バクテリアル・ニュートラル・プロテアーゼ・フォア・ディスアグリゲーション・オブ・マウス・テューマー・アンド・マルチセルラー・テューマー・スフィロイズ(Use of bacterial neutral protease for disaggregation of mouse tumours and multicellular tumor spheroids.)」,キャンサー・レット(Cancer lett),1980年,9(3),p.225‐8に開示されているように、コラゲナーゼに代えて又はこれに加えて組織を離解させることができる。幾つかの実施形態では、脂肪組織をラッセル,エス・ダブリュー,ダブリュー・エフ・ドー,他(Russell, S. W., W. F. Doe, et al.),「インフラマトリー・セルズ・イン・ソリッド・ミューライン・ネオプラズム.テューマー・ディスアグリゲーション・アンド・アイデンティフィケイション・オブ・コンスティテューエント・インフラマトリー・セルズ(Inflammatory cells in solid murine neoplasms. Tumor disaggregation and identification of constituent inflammatory cells.)」,インターナショナル・ジャーナル・キャンサー(Int J Cancer),1976年,18(3),p.322‐30に開示されているように酵素の組み合わせ、例えばコラゲナーゼとトリプシンの組み合わせにより離解させる。幾つかの実施形態では、脂肪組織をエンゲルホルム,エス・エー,エム・スパング‐トムスン,他(Engelholm, S. A., M. Spang-Thomsen, et al.),「ディスアグリゲーション・オブ・ヒューマン・ソリッド・テューマーズ・バイ・コンバインド・メカニカル・アンド・エンジマティック・メソッズ(Disaggregation of human solid tumours by combined mechanical and enzymatic methods.)」,ビーアール・ジャーナル・キャンサー(Br J Cancer),1985年,51(1),p.93‐8に開示されているように、酵素、例えばトリプシンと機械的解離の組み合わせを用いて離解させることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分を完全に離解させて脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞)を成熟した脂肪細胞及び結合組織から分離する。幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分を部分的にしか離解させない。例えば、部分離解は、酵素が脂肪組織の一部分を完全に離解させるよう脂肪組織上に残っている時間の長さに対して脂肪組織の少なくとも一部分から早期に取り出された1つ又は2つ以上の酵素により実施するのが良い。かかる方法は、必要な処理時間が少なくてすむ。
【0058】
幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分又は一単位を滅菌緩衝等張生理的食塩水で洗浄し、そして適度の離解をもたらすのに十分なコラゲナーゼ濃度、温度及び時間をかけてコラゲナーゼで培養する。好ましくは、離解に用いられる酵素は、関連の当局(例えば、米国食品医薬品局)によりヒトへの使用について認可されており、微生物や汚染要因物、例えば菌体内毒素がない。適当なコラゲナーゼ製剤としては、組替え型コラゲナーゼ及び非組換え型コラゲナーゼが挙げられる。非組換え型コラゲナーゼは、インディアナポリス所在のエフ・ホフマン‐ラ・ロッシェ・リミテッド(F. Hoffmann-La Roche Ltd)及び/又はニューヨーク州リンブルック所在のアドバンス・バイオファクターズ・コーポレーション(Advance Biofactures Corp.)から得ることができる。また、組換え型コラゲナーゼは、米国特許第6,475,764号明細書に開示されているように得ることができる。
【0059】
一例を挙げて説明すると、幾つかの実施形態では、脂肪組織を約0.5μg/mlから約100μg/ml、例えば10μg/mlから約50μg/mlのコラゲナーゼを含むコラゲナーゼ溶液で処理し、約20分から約60分かけて約30℃から約38℃の温度で培養する。これらパラメータは、このシステムが所望の細胞集団を適当な時間フレームで抽出するのに有効であることを実証するために、実験研究によって最適化されたコラゲナーゼ酵素の源に従って様々であろう。例えば、幾つかの実施形態では、組織は、コラゲナーゼを含む溶液により10〜15分間、約37℃で培養される。
【0060】
離解に続き、リポダイジェステートを洗浄/すすぎ洗いして添加物及び/又は離解プロセスの副生物、例えばコラゲナーゼ及び/又は他の酵素離解剤並びに新たに放出される遊離脂質を除去するのが良い。
【0061】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートをリポダイジェステートが未処理、乾燥又は脱水脂肪組織に浸透することができる条件下で未処理、乾燥又は脱水脂肪組織の一部分に塗布するのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織又は脱水脂肪組織の一部分上に(又はその下に)再懸濁し、層状化するのが良く、そしてリポダイジェステートを重力の使用により未処理脂肪組織(又は乾燥若しくは脱水脂肪組織)に通して濾過する。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを例えば蠕動ポンプ、真空等の使用により未処理脂肪組織を通ってポンプ送りする。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを未処理脂肪組織に追加して混合物を作り、この混合物を機械的又は手動で撹拌し又は振盪する。リポダイジェステートを未処理脂肪組織に通して濾過し又はこれと混合させると、脂肪由来再生細胞は、結合組織基質によって結合状態になることができ、生理的食塩水及び他の流体は、組織を通って流れ、それにより脂肪由来再生細胞(例えば、幹細胞を含む脂肪由来再生細胞)が補充され又はこれで増強された脂肪グラフト又はインプラントを作製する。幾つかの実施形態では、流通物、例えば生理的食塩水、成熟脂肪細胞、赤血球等を廃棄物容器に移す。補充脂肪組織グラフトを作るためのシステム及び装置について以下に詳細に説明し、この方法の一実施形態が図1に概略的に示されている。
【0062】
図1は、補充脂肪組織グラフトを調製する例示の道筋の略図である。第1ステップでは、一単位の脂肪組織を閉鎖/滅菌容器(例えば、本明細書のどこか他の場所で説明するように押し潰し可能な柔軟性の袋又は硬質の容器)内に入口を介して入れる。脂肪組織をすすぎ洗い/洗浄すると共に本明細書において説明するように閉鎖系を維持した状態で容器内で消化する。図1に示されている実施形態では、第1の容器は、入口及び出口を有する。図1に示されている第1の容器は、単一の入口及び単一の出口を示しているが、当業者であれば理解されるように、本明細書において説明する装置は、多数個の、即ち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の入口及び出口を有することができる。好ましくは、入口及び出口は、第1の容器内への内容物(例えば、組織、添加剤、溶液等)の無菌追加及び/又は取り出しを可能にするよう構成されている。
【0063】
図1に開示されている実施形態では、第2の単位をなす脂肪組織又は第1の単位の脂肪組織の一部分を第2の容器(例えば、本明細書のどこか別の場所で説明するように押し潰し可能な柔軟性の袋又は硬質容器)内に入れる。図1に示された実施形態では、第2の容器は、1つ又は複数個の入口及び1つ又は複数個の出口を有する。第2の容器の入口は、好ましくは閉鎖滅菌流体経路を維持した状態で容器内への内容物(例えば、リポダイジェステート又は脂肪由来細胞の濃縮集団)の追加を可能にするよう構成されている。出口は、第2の容器からの内容物、例えば過剰洗浄溶液、遊離脂質、血液等の取り出しを可能にするよう構成されている。
【0064】
図1に示されている実施形態では、消化に続き、リポダイジェステート及び非離解脂肪組織フラグメント並びに遊離脂質は、第1の容器内に互いに異なる層を形成する。リポダイジェステート層は、閉鎖容器の出口を通って出て(例えば、図1に示されているようにポンプ又は真空を介して)、例えば閉鎖系を維持する導管を通って、未処理又は洗浄済み、乾燥又は脱水脂肪組織の入っている別個の容器内に入るようになる。第1の容器からのリポダイジェステートをリポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞集団中の分離された脂肪由来再生細胞が脂肪組織中に浸透することができるようにする条件下で未処理、乾燥又は脱水脂肪組織と混合させる。図1では、未処理又は乾燥脂肪組織を通って再生細胞をポンプ送りして補充脂肪組織グラフトを作る。
【0065】
幾つかの実施形態では、過剰リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞溶液を、第2の容器中に無菌ループを設けることにより第2の容器内の未処理、乾燥又は脱水脂肪組織を通って再循環させ、過剰再生細胞溶液又はリポダイジェステートは、流出ポート(出口)を通って出て、脂肪組織を収容している容器に設けられている流入ポート(入口)に通る導管中に入る。
【0066】
理解されるように、本明細書において説明する強化又は補充脂肪組織グラフトを作製する際、リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞溶液を作製すると共に脂肪由来再生細胞又はリポダイジェステートが補充された脂肪組織グラフト用のベース又は基礎部として役立つよう用いられる脂肪組織の種々の単位又は部分の量は、互いに等しくても良く、或いは異なっていても良い。例えば、リポダイジェステートを作製するために用いられる脂肪組織の量は、脂肪組織の別の単位の量よりも少なくとも約10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、110%以上、120%以上、130%以上、140%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、200%以上、210%以上、220%以上、230%以上、240%以上、250%以上、260%以上、270%以上、280%以上、290%以上、300%以上、或いはこの範囲に含まれる任意の数値であるのが良い。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを作製するために用いられる脂肪組織の量は、脂肪組織の別の単位の量よりも少なくとも約10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、110%以上、120%以上、130%以上、140%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、200%以上、210%以上、220%以上、230%以上、240%以上、250%以上、260%以上、270%以上、280%以上、290%以上、300%以上又はこの範囲に含まれる任意の数値だけ少ないのが良い。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートとグラフト組織の比は、約0.25:1、0.5:1、0.75:1、1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1又は2:1或いはこの範囲に含まれる任意の数値である。好ましくは、リポダイジェステートとグラフト組織の比は、約1:1よりも小さく、例えば0.5:1又は0.25:1である。
【0067】
幾つかの実施形態では、処理された脂肪組織(例えば、消化された脂肪吸引液又は再生細胞溶液)の一部分及び/又は未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織の一部分及び/又は本明細書において説明した脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを添加剤、例えば他の細胞、組織、組織フラグメント、脱ミネラル骨又は因子若しくは作用剤、例えば脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解させる添加剤との組み合わせ、これらによる強化、これらによる補充、増強又はこれらとの混合を行うのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、処理済み脂肪組織の一部分及び/又は未処理脂肪組織(又は乾燥若しくは脱水脂肪組織)の一部分及び/又は本明細書において説明した脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを成長因子添加剤、例えばインスリン若しくは薬剤、例えばチアグリタゾン(thiaglitazone )族の構成要素、抗生物質、生物学的活性又は不活性配合物、例えば凝固酵素、細胞再凝集抑制剤、再吸収プラスチック支承構造又は集団の送達具合、効能、許容性又は機能を促進するようになった他の添加剤との組み合わせ、これらによる補充又はこれらとの混合を行うのが良い。
【0068】
或る特定の実施形態では、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は補充脂肪組織グラフトに1つ又は2つ以上の細胞分化剤添加剤、例えばサイトカイン及び成長因子を補充するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪組織グラフトを受け入れた被験体に1種類又は2種類以上の細胞分化剤、例えばサイトカイン及び成長因子が別個に、即ち、別の配合状態で、脂肪組織グラフトから与えられる。例えば、幾つかの実施形態では、組成物には血管原性剤又は因子が補充される。幾つかの実施形態では、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は本明細書において説明した補充脂肪組織グラフトには添加剤として血管原性因子が与えられる。本明細書において用いられる「血管原性」という用語は、新たな血管が既存の血管系及び組織から生じるプロセスを意味している(フォークマン(Folkman),1995)。本明細書で用いられる「血管原性因子」又は「血管原性タンパク」という用語は、既存の血管系からの新たな血管の成長(「血管新生」)を促進することができる任意公知のタンパク、ペプチド又は他の作用剤を意味している。本発明において用いられる適当な血管原性因子としては、プラセンタ・グロース・ファクタ(Placenta Growth Factor)(ラタン等(Luttun et al.),2002)、マクロファージ・コロニー・スティムレーティング・ファクタ(Macrophage Colony Stimulating Factor)(アハリネジャド等(Aharinejad et al.),1995)、グラニュロサイト・マクロファージ・コロニー・スティムレーティング・ファクタ(Granulocyte Macrophage Colony Stimulating Factor)(ブッシュマン(Buschmann et al.)、2003)、バスキュラー・エンドシリアル・グロース・ファクタ(Vascular Endothelial Growth Factor)(VEGF)‐A,VEGF‐A,VEGF‐B,VEGF‐C,VEGF‐D,VEGF‐E(ミンツ等(Mints et al.)2002)、ニューロピリン(neuropilin)(ワン等(Wang et al.)2003)、フィブロブラスト・グロース・ファクタ(fibroblast growth factor)(FGF)‐1,FGF‐2(bFGF),FGF‐3,FGF‐4,FGF‐5,FGF‐6(ボタ等(Botta et al.),2000)、アンジェオポイエティン1,アンジェオポイエティン2(Angiopoietin 1, Angiopoietin 2)(サンドバーグ等(Sundberg et al.)2002)、エリトロポイエチン(erythropoietin)(リバティ等(Ribatti et al.)2003)、ビー・エム・ピー‐2,ビー・エム・ピー‐4,ビー・エム・ピー‐7(BMP-2, BMP-4, BMP-7)(カラノ,フィルバロフ(Carano and Filvaroff),2003)、ティー・ジー・エフ‐ベータ(TGF-beta)(ション等(Xiong et al.),2002)、アイ・ジー・エフ‐1(IGF-1)(シゲマツ等(Shigematsu et al.),1999)、オステオポンチン(Osteopontin)(アソウ等(Asou et al.),2001)、プレイオトロピン(Pleiotropin)(ビーケン等(Beecken et al.),2000)、アクチビン(Activin)(ラモイル等(Lamouille et al.),2002)、エンドセリン‐1(Endothelin-1)(バグナト,スピネラ(Bagnato and Spinella),2003)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。血管原性因子は、別個独立に又は互いに組み合わせ状態で働くことができる。血管原性因子は、組み合わせ状態では、相乗的に作用することが可能であり、それにより、これら因子の組み合わせ効果は、別々に採用された個々の因子の効果の合計よりも高い。「血管原性因子」又は「血管原性タンパク」という用語は、かかる因子の機能的類似体をも含む。機能的類似体としては、例えば、これら因子の機能部分が挙げられる。機能的類似体は、因子の受容体に結合し、かくして血管新生を促進する際の因子の活動に似た抗イディオタイプ抗体をも含む。かかる抗イディオタイプ抗体を生じさせる方法は、当該技術分野において周知であると共に例えば国際公開第97/23510号パンフレットに記載されており、この国際公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0069】
本明細書において開示する実施形態で有用な血管原性因子を任意適当な源から生じさせ又は得ることができる。例えば、これら因子は、これらの元々の源から精製可能であり又は合成的に若しくは組換え発現により作製できる。因子を被験体にタンパク組成物として因子をエンコードし又は本明細書において開示する組成物と混合された発現プラスミドの形態で投与できる。適当な発現プラスミドの構成は、周知である。発現プラスミドを構成するのに適したベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、RNAベクター、リポソーム、陽イオン性脂質、レンチウイルスベクター及びトランスポゾンが挙げられる。
【0070】
幾つかの実施形態では又、処理済み脂肪組織、例えばリポダイジェステート又は再生細胞溶液の細胞、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織の細胞又は本明細書において説明した補充脂肪組織グラフトの細胞を、美容的、構造的又は治療的目的の派生目的のため,組成物の機能を変化させ、促進し又は補充する仕方でDNAの挿入又は細胞培地内への配置によって改質することができる。例えば、幹細胞のための遺伝子導入技術は、モスカ,ジェー・ディー,ジェー・ケー・ヘンドリクス等(Mosca, J. D., J. K. Hendricks, et al.)「メセンキマル・ステム・セルズ・アズ・ベヒクルズ・フォア・ジーン・デリバリ(Mesenchymal stem cells as vehicles for gene delivery)」,クリン・オーソプ379増刊(Clin Orthop (379 Suppl)),2000年,S71‐91において開示されているように当業者には知られており、かかる遺伝子導入技術としては、ウイルストランスフェクション技術及び具体的にはウォルター,ダブリュー・アンド・ユー・ステイン(Walther, W. and U.Stein),「ヴィラル・ベクターズ・フォア・ジーン・トランスファー: ア・レビュー・オブ・ゼア・ユース・イン・ザ・トリートメント・オブ・ヒューマン・ディジーズ(Viral vectors for gene transfer: a review of their use in the treatment of human diseases)」,ドラッグス(Drugs),2000年,60(2),p.249‐71及びアサナソポウラス、ティー,エス・ファブ他(Athanasopoulos, T., S. Fabb, et al.)「ジーン・セラピー・ベクターズ・ベイスト・オン・アデノ‐アソシエイテッド・ウイルス: キャラクタリスティックス・アンド・アプリケーションズ・トゥ・アクワイヤード・アンド・インヘリテッド・ディジーズ(レビュー)(Gene therapy vectors based on adeno-associated virus: Characteristics and applications to acquired and inherited diseases (review))インターナショナル・ジャーナル・モレキュラー・メディスン(Int J Mol Med),2000年,6(4),p.363‐75に開示されているようにアデノ関連ウイルス遺伝子導入技術が挙げられる。非ウイルス利用技術は又、ムラマツ,ティ−,エー・ナカムラ他(Muramatsu, T., A. Nkamura, et al.)「イン・ビボ・エレクトロポレイション:ア・パワフル・アンド・コンビニエント・メーンズ・オブ・ノンバイラル・ジーン・トランスファー・トゥ・ティシュー・オブ・リビング・アニマルズ・レビュー(In vivo electroporation: a powerful and convenient means of nonviral gene transfer to tissues of living animals (Review)),インターナショナル・ジャーナル・モレキュラー・メディスン(Int J Mol Med),1998年,1(1),p.55‐62に開示されているように実施可能である。好ましい実施形態では、処理済み組織の細胞は、培養されない。好ましくは、処理済み組織の細胞は、これらの使用まで、例えば、これらが送達器具に装填され、未処理、乾燥又は脱水脂肪組織と組み合わされ、或いは被験者中に直接送り込まれるまで、閉鎖滅菌システム内に維持される。
【0071】
脂肪組織グラフトが細胞及び/又は組織を得た患者以外の患者に投与される実施形態では、1種類又は2種類以上の免疫抑制剤添加剤を、グラフトを受け入れた患者に投与して移植片の拒絶を減少させ、好ましくは阻止するのが良い。本明細書において開示する方法に適した免疫抑制剤の例としては、T細胞/B細胞同時刺激経路を抑制する作用剤、例えば米国特許出願公開第2002/0182211号明細書に開示されているようにCTLA4及びB7経路を介するT細胞とB細胞の結合を妨害する作用剤が挙げられる。他の例としては、シクロスポリン、ミオフェニレートモフェチル、ラパミチン及び抗胸腺細胞グロブリンが挙げられる。
【0072】
本明細書において開示する方法により作製された補充脂肪組織グラフトを被験体に直接投与することができる。本明細書において用いられる「投与」、「導入」、「送達又は送り出し」、「配置」及び「移植」という用語は、本明細書においては区別なく用いられ、これら用語は、結果的に所望部位への移植片又は脂肪グラフトの少なくとも部分的局所化をもたらす方法又はやり方による被験体への本明細書において開示された組成物、例えば補充脂肪グラフトの配置を意味している。幾つかの実施形態では、補充脂肪組織グラフト(例えば、脂肪グラフト補充脂肪由来再生細胞)をシステムから取り出されることなく又は投与に先立ってこれが生じたシステム又は装置の外部環境への暴露なしで被験体に投与することができる。閉鎖系を提供することにより、被験者に投与されるべき物質の汚染の恐れが減少する。かくして、脂肪組織を処理し、補充脂肪組織グラフトを生じさせる一方で、閉鎖系を維持することにより、活性細胞集団が滅菌状態である可能性が多分にあるので、既存の方法と比較して利点が得られる。かかる実施形態では、リポダイジェステート又は補充脂肪組織グラフトが外部環境にさらされ又はシステムから取り出される唯一の時期は、細胞又は補充グラフトが塗布器具内に吸い込まれて患者に投与されている時期である。一実施形態では、塗布器具は、閉鎖系の一部であっても良い。かくして、幾つかの実施形態では、リポダイジェステート又は補充脂肪組織グラフトは、培養のためには処理されず或いは低温保存されない。
【0073】
幾つかの実施形態では、未処理組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は補充脂肪組織グラフトの少なくとも一部分は、後に行われる植込み/還流のために貯蔵される。例えば、本明細書において開示する組成物(例えば、未処理組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート、濃縮脂肪細胞由来細胞集団及び/又は補充脂肪組織グラフト)を2つ以上のアプリコット又は単位に分割するのが良く、その結果、組成物の一部は、後で行われる塗布のために保持され、他方、一部は、即座に患者に塗布されるようになる。
【0074】
処理の終わりに、補充又は強化脂肪組織グラフトを例えば皮下技術によるレシピエント内への配置のために送達器具、例えば注射器、支承構造、吸収可能カプセル又はインプラント中に装填することができる。換言すると、補充、増強又は強化脂肪グラフト又はインプラントを当業者に知られている任意の手段によって患者の体内に配置することができ、例えば、これらを真皮(皮下)、組織間隙若しくは種々の組織(例えば、乳房、臀部等)又は他の場所中に導入することができる。好ましくは、装填は、閉鎖系を維持しながら行われる。好ましい実施形態としては、針、カテーテルによる配置又は添加剤、例えば予備成型基質又は吸収性乳房造形カプセルと関連して行われる直接的な外科的植込みが挙げられる。
【0075】
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物を含む。好ましい実施形態では、被験体は、霊長類である。より好ましい実施形態では、被験体は、ヒトである。
【0076】
乾燥脂肪組織グラフト及び若しくは脱水脂肪組織及び補充若しくは強化補充組織グラフトを作製する装置及び/補充脂肪組織グラフトの作製装置
【0077】
上述したように、本明細書において、乾燥又はシステムが提供される。図2を参照すると、脂肪由来再生細胞の補充に適した脂肪組織グラフトの作製のための例示のシステムが示されている。このシステムは、柔軟性収集容器200、例えば医用収集袋を有し、フィルタメッシュ210の層が袋第1の内部チャンバ280と第2の内部チャンバ290に区切っている。幾つかの実施形態では、フィルタは、第1の内部チャンバから第2の内部チャンバへの内容物、例えば成熟脂肪細胞、赤血球、生理的食塩水等の通過を可能にする複数個の開口部又は細孔を有するのが良い。好ましくは、フィルタの複数個の細孔のサイズ又は孔径は、約30μm以上である。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタの複数個の開口部のサイズは、約30μm、約35μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm、約200μm、約210μm、約220μm、約230μm、約240μm、約250μm、約260μm、約270μm、約280μm、約290μm及び約300μm以上、以下又はこれらに等しく、この範囲に含まれる任意の数値であって良い。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタ210の複数個の開口部のサイズは、約30μm〜約500μmであるのが良い(例えば、約60μm〜300μm、例えば約74μm〜265μmであるのが良い)。
【0078】
幾つかの実施形態では、第1の内部チャンバ280は、2つのポート220,230を有する。幾つかの実施形態では、第2の内部チャンバ290は、1つのポート240を有する。幾つかの実施形態では、柔軟性収集容器200は、洗浄又はすすぎ洗いのための洗浄溶液250を有し、この洗浄容器は、容器250から閉鎖流体経路を介する内部チャンバ280への溶液の通過を可能にするようポート220を介して内部収集チャンバ280に操作可能に結合されている。幾つかの実施形態では、ポート240は、廃棄物袋260に操作可能に結合され、内容物、例えば赤血球、生理的食塩水、成熟脂肪細胞等がポート240を通って内部チャンバ290から取り出される。
【0079】
幾つかの実施形態では、脂肪組織を、ポート220を通って柔軟性収集チャンバ200に追加する。幾つかの実施形態では、すすぎ洗い溶液、例えば乳酸加リンゲル液をポート230を通って第1の内部チャンバに追加する。次に、柔軟性収集容器を例えば機械的ロッカー又は他の撹拌装置で撹拌し又は振盪する。チャンバ280内に存在している組織から赤血球、過剰すすぎ洗い溶液、溶解細胞、成熟脂肪細胞及び脂質を取り出す。
【0080】
幾つかの実施形態では、このシステムは、すすぎ洗いされた脂肪組織を収容した内部チャンバへのリポダイジェステートの無菌追加を可能にするよう構成されている。例えば、柔軟性収集容器200は、内部チャンバ280中への滅菌入口経路を提供する追加のポートを有するのが良く、リポダイジェステートは、このポート中に差し向けることができる。
【0081】
図3〜図13は、最適化された脂肪組織グラフトの作製のための本明細書において開示されるシステムの追加の実施形態を示している。図3及び図4は、例示の形態としてのシステム300を示し、このシステムは、例えば乾燥又は脱水脂肪組織を作るために脂肪組織グラフトの水和を制御する閉鎖滅菌プロセスを利用する。例えば、脂肪組織インプラントの調製と関連したありふれた問題は、入れ込み後におけるグラフト移植組織から体内への流体の再吸収又は吸収に起因してグラフトの挙動が予想不可能になるということである。以下に説明するように、オペレータは、システム300を利用することにより、従来得られた脂肪組織の乾燥状態よりも一層乾燥したグラフトを作ることによりこのばらつきを減少させることができる。さらに、この乾燥した脂肪組織グラフト又はインプラントにオプションとして、リポダイジェステート(又は再生細胞を含む濃縮脂肪由来細胞集団)を補充しても良く又はこれを直接被験体に投与することができる。
【0082】
図3及び図4は、乾燥又は脱水脂肪組織の調製のためのシステム300の一実施形態の構成を示している。システム300は、システム300の外側層を形成するよう互いに封着された第1の外側シェル310及び第2の外側シェル340(本明細書において、これらをまとめて且つ区別なく「一つの又は複数の外側シェル」とよぶ)を有する。図5は、システム300に用いられる例示の外側シェル310(又は340)を示している。以下に説明するように、外側シェル310,340は柔軟性の押し潰し可能な袋を形成するよう互いに取り付けられ、接合され又は封着されるのが良い。図8は、システム300の製造に用いることができる例示のシール311の細部を示している。第1及び第2の外側シェル310,340は、当該技術分野において知られている任意の医用軟質材料、例えば医用USPクラスVI又は医用エチルビニルアセテート(EVA)で作ることができる。幾つかの実施形態では、第1及び第2の外側シェルを形成する軟質材料は、それ自体結合可能な任意の材料で構成されるのが良い。他の実施形態では、第1及び第2の外側シェルを形成する軟質材料は、それ自体結合可能であると共にシステム又はサブシステム中に存在する任意他の材料を捕捉すると共に/或いは密封することができる任意の材料で構成可能である。外側シェルは、低温保存に耐えることができる材料で作られても良い。外側シェルは、透明であり又は着色されたオートクレーブ処理可能な材料、生体適合性材料、体液に対して耐性のある材料及び/又は例えば放射線、酸化エチレン又は乾燥熱で滅菌可能な材料で作られても良い。
【0083】
一例を挙げるに過ぎないが、この材料は、医用EVAであるのが良い。好ましい実施形態では、この材料は、それ自体結合可能であると共に他の材料、例えばシステム内に存在するフィルタを捕捉することができる材料である。結合は、本明細書において別途説明する方法、例えばRF溶接によって達成されるのが良い。或る特定の実施形態では、外側シェルは、図3〜図13に示されたシステム300の場合のように外側シェルの周囲に沿って二重ヒートシールによって互いに封着されるのが良い。外側シェル又はサブシステムのうちの任意のものは、当業者に知られている接着剤を用いて封着されるのが良い。作用の仕組みを含む使用されるべき接着剤の種類を考慮するのが良い。例えば、溶剤がなくなると硬化する接着剤、水がなくなると硬化する接着剤、冷却によって硬化する接着剤、化学反応により硬化する接着剤、硬化しない接着剤、即ち感圧接着剤を用いることができる。仕組み、例えば物理的吸着、化学結合による接着、静電気的付着理論、機械的インターロック、相互拡散による接着、脆弱な境界層及び感圧接着を考慮することができる。また、接合されるべき表面の状態、例えば表面トポグラフィ、表面熱力学的状態及び表面化学分析結果にも取り組む必要がある。また、接合されるべき或る特定の表面は、最適な封止のために特定の予備処理を必要とする場合がある。例えば、金属に特有の予備処理、無機材料のための予備処理、プラスチックのための予備処理、エラストマのための予備処理を考慮することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、形成されるシステム及びサブシステムは、有利には、これらが応力に耐えることができるようにする機械的性質を備える。かくして、接着剤による接合部の大域的応力分析法並びに有限要素分析法を実施する必要がある。接着部の耐久性も又評価しなければならない。例えば、光酸化分解を軽減する添加剤を考慮する必要がある。湿潤周囲環境中における金属に対する構造的接合部の挙動を考慮する必要がある。水及び接着剤、水と接着剤のインターフェイス、他の流体及びティンバージョイント(timber joint)も又考慮する必要がある。幾つかの実施形態では、従来型超音波技術、ボンド試験器、高速走査法及び凝集性測定法を用いて非破壊検査を実施しなければならない場合がある。また、接着接合部の衝撃挙動を評価しなければならない場合がある。例えば、接着剤及び接着接合部の衝撃試験、ハイレートローディング及び応力分布下における接着剤の特性及び衝撃荷重を受けた接着接合部の変化を評価するのが良い。また、接着部の破壊力学、例えば、破損に関するエネルギー基準、応力強度、エネルギー放出速度、熱力学的接着エネルギー、内在的接着エネルギー、実際的接着エネルギー、破壊エネルギーの評価及び耐久性を評価することが望ましい場合がある。評価できる他の要因としては、疲労、振動、減衰、同種及び異種材料の接合及び複合材の結合が挙げられる。
【0085】
特定の実施形態では、システムの外側シェル若しくはサブシステムのうちの幾つか又は任意適当な組み合わせを高周波(RF)溶接の使用により封着することができる。RF溶接は、誘電加熱溶接又はHF溶接ともよばれている。RF溶接は、高周波を利用して材料を一緒に融着させるプロセスである。結果的に得られた溶接物は、元の材料と同じほど強固である場合がある。RF溶接は、迅速交番磁界中に熱の発生を生じさせるために溶接されるべき材料の或る特定の性質を利用する。具体的に説明すると、このプロセスでは、接合されるべき部品に2つの金属バー相互間に印加される高周波(13〜100MHz)電磁界をかけ、それにより、互いに融着されるべき材料を加熱させる。この技術を用いて或る特定の材料だけを溶接することができる。ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリウレタンは、RF溶接法により溶接されるべき最もありふれた熱可塑性樹脂である。ナイロン、PET、EVA及び幾つかのABS樹脂を含む他のポリマーをRF溶接することが可能である。ただし、特定の条件が必要になる場合がある。例えば、RF電力に加えて予熱された状態の溶接バーが用いられた場合、ナイロン及びPETは、溶接可能である。RF溶接は、PTFE、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン又はポリプロピレンには適していない場合がある。しかしながら、RF溶接可能性を有する特定の等級のポリオレフィンが開発された。
【0086】
RF溶接の主要な機能は、2種類又は3種類以上の厚さのシート材料に接合部を形成することにある。溶接面に隣接して切れ刃又は刃先を入れることにより、このプロセスは、材料を溶接すると同時に切断することができる。切れ刃は、過剰のスクラップ材料を引き裂くことができるのに十分高温プラスチックを圧縮し、それ故、このプロセスは、引き裂き‐シール溶接とよばれる場合が多い。また、追加の材料片を製品の表面に溶接することが可能である。
【0087】
幾つかの実施形態では、システム及びサブシステムは、超音波溶接を用いても封着可能である。超音波溶接により材料を結合する場合、必要なエネルギーは、機械的振動の形態で提供される。溶接ツール(ソノトロード)は、溶接されるべき部品に結合し、これを長手方向に動かす。溶接されるべき部品は、静止状態のままである。溶接されるべき部品を同時に互いに押しつける。静的力と動的力の同時作用により、追加の材料を用いる必要なく、部品の融着が生じる。この手順は、本明細書において説明するシステムに使用できるプラスチックと金属の両方を結合するために工業的規模で利用できる。プラスチックの超音波溶接の場合、結合領域の温度上昇は、機械的振動の吸収、連結領域における振動の反射及び部品の表面の摩擦によって生じる。振動は、垂直に導入される。接触領域において摩擦熱が生じ、その結果、材料が局所的に可塑化し、極めて短い期間内で両方の部品相互間の不溶解性の連結部の鍛造が行われる。必要条件は、両方の作動部品がほぼ同じ融点を有することである。超音波溶接における接合品質は、非常に一様である。というのは、エネルギー及び放出内部熱は、一定のままであり、接合領域に限定されるからである。最適結果を得るために、接合領域は、これらを超音波接合又は溶接に適したものにするよう調製される。プラスチックの溶接は別にして、超音波技術は、本明細書において説明したシステムの作動部品をリベット止めし又は必要ならば金属部品をプラスチック中に埋め込むためにも利用可能である。
【0088】
当業者であれば理解されるように、本明細書において開示するシステムを上述の軟質材料以外の材料で作ることができる。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において説明するシステム又はシステムのコンポーネントを金属で作ることができる。かかる実施形態では、超音波金属溶接を利用してシステムコンポーネントを互いに接合し又は取り付けることができる。他のプロセスの場合とは異なり、溶接されるべき部品は、融点まで加熱されることがなく、圧力及び高周波機械的振動を適用することによって連結される。プラスチック溶接とは対照的に、超音波金属溶接中に用いられる機械的振動は、水平に導入される。具体的に説明すると、超音波金属溶接中、静的力、振動剪断力及び溶接領域の適度の温度上昇を含む複雑なプロセスがトリガされる。これら要因の大きさは、加工物の厚さ、これらの表面構造及びこれらの機械的性質で決まる。加工物は、固定機械部品、即ち、アンビルとソノトロードとの間に配置され、ソノトロードは、溶接プロセス中、水平に高い振動数(通常20又は35又は40kHz)で振動する。最も一般的に用いられる振動数(作業振動数)は、20kHzである。この振動数は、ヒトの耳に聞こえる振動数よりも高く、又、かかる振動数は、エネルギーの可能な限り最適の使用を可能にする。ほんの僅かの量のエネルギーしか必要としない溶接プロセスの場合、35又は40kHzの作業振動数を用いることができる。
【0089】
図3〜図13に示されている例示のシステム300は、フィルタ材料又は濾過材320を外側シェル310と外側シェル340との間に挿入することにより作られた第1及び第2のサブシステム又は第1及び第2のチャンバを有する。第1のサブシステム又はチャンバは、外側シェル310と濾過材320との間の領域によって構成され、第2のサブシステム又はチャンバは、濾過材320と外側シェル340との間の領域によって構成される。或る特定の実施形態では、システム300の周囲に沿う二重ヒートシールは、2つの別個独立のサブシステム又はチャンバがシステム300内に形成されるよう濾過材320を捕捉する。濾過材は、理想的には、或る特定の内容物、例えば液体、腫脹流体、赤血球、洗浄溶液(例えば、生理的食塩水、乳酸加リンゲル液等)、細胞デブリの大部分の通過をイネーブルにし又は可能にするが、或る特定の内容物、例えば成熟脂肪細胞、再生細胞、幹細胞、前駆細胞及び結合組織の大部分の保持をイネーブルにし又は可能にする複数個の開口部を有するのが良い。通過する成分及び保持される成分は、濾過材の開口部のサイズで定められ、即ち、一般的に、開口部よりも小さな成分は、通過し、開口部よりも大きな成分は、保持されることになる。したがって、濾過材は、関心のある成分のサイズに基づいて選択されるのが良い。システム内の条件、例えば圧力、空気流量、粘度等に応じて、通過する濾過材の開口部よりも小さな成分の数又は割合と保持される開口部よりも大きな成分の数又は割合が互いに異なる場合のあることは理解されるべきである。
【0090】
濾過材は、好ましくは、サブシステム内又はサブシステム相互間における流体連通を可能にする複数個の細孔を有する。かかる細孔により、1つのシステム内に挿入された組成物(又はその成分)が別のサブシステム中に拡散することができ、或いはこの逆のような関係が成り立つ。細孔は、好ましくは、使用可能なフィルタの表面の大部分の領域に設けられる。例示のフィルタが図6に示されている。
【0091】
過剰の液体、赤血球又は細胞デブリを通過させることができるフィルタであればどのようなフィルタでもシステム300に用いることができる。例えば、脂肪細胞、再生細胞、幹細胞又は結合組織を保持するフィルタであればどのようなフィルタでも用いることができる。幾つかの実施形態では、濾過材320の細孔のサイズが約1ミクロンから約750ミクロンまでの範囲にあるのが良く、例えば、10ミクロン、20ミクロン、30ミクロン、40ミクロン、50ミクロン、60ミクロン、70ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、110ミクロン、120ミクロン、130ミクロン、140ミクロン、150ミクロン、160ミクロン、170ミクロン、180ミクロン、190ミクロン、200ミクロン、210ミクロン、220ミクロン、230ミクロン、240ミクロン、250ミクロン、260ミクロン、270ミクロン、280ミクロン、290ミクロン、300ミクロン、310ミクロン、320ミクロン、330ミクロン、340ミクロン、350ミクロン、360ミクロン、370ミクロン、380ミクロン、390ミクロン、400ミクロン、410ミクロン、420ミクロン、430ミクロン、440ミクロン、450ミクロン、460ミクロン、470ミクロン、480ミクロン、490ミクロン、500ミクロン、510ミクロン、520ミクロン、530ミクロン、540ミクロン、550ミクロン、560ミクロン、570ミクロン、580ミクロン、590ミクロン、600ミクロン、610ミクロン、620ミクロン、630ミクロン、640ミクロン、650ミクロン、660ミクロン、670ミクロン、680ミクロン、690ミクロン、700ミクロン、710ミクロン、720ミクロン、730ミクロン、740ミクロン又は750ミクロンであり、この範囲に含まれる任意の数値であって良いシステム300が提供される。好ましくは、濾過材の複数個の開口部又は細孔のサイズは、40μmを越える。例えば、一実施形態では、濾過材320の複数個の開口部のサイズは、74ミクロンであるのが良い。他の実施形態では、複数個の開口部のサイズは、約73ミクロンから約264ミクロンまでの範囲にあるのが良い。
【0092】
図3〜図13に示されているように、幾つかの実施形態では、第2のサブシステム又はチャンバ、即ち、濾過材320と上述の外側シェル340との間の領域は、2つのサブシステムに更に分割されるのが良く、その結果、第3のサブシステム又はチャンバが形成される。例えば、セパレータ330、例えば、分離スクリーン、メッシュ又はフィルタが濾過材320と外側シェル340との間に挿入されている。分離スクリーンから成る例示のセパレータが図7に示されている。第2及び第3のサブシステム又はチャンバは、第1のサブシステムからの溶液、流出液、廃棄物、デブリ及び他の望ましくない物質を収容するのが良い。或る特定の実施形態では、第2及び第3のサブシステム又はチャンバは、部分的に別個独立なものである。幾つかの実施形態では、第2のサブシステム又はチャンバと第3のサブシステム又はチャンバは、互いに完全に別個独立なものである。例えば、幾つかの実施形態では、セパレータ330、例えば分離スクリーンは、自由度を有し、又は第2のサブシステムから完全に分離されてはいない第3のサブシステムが形成されるよう第2のサブシステム内で完全に自由浮動状態である。他の実施形態では、第2のサブシステムと第3のサブシステムは、セパレータ、例えば分離スクリーン等が当該技術分野において知られており又は本明細書において説明する接合機構体のうちの任意のもの、例えば接着剤による接合、RF溶接又は超音波溶接を用いて外側層310,340相互間に捕捉されているという点において互いに完全に別個独立のものである。当業者であれば容易に理解されるように、システム300の互いに異なる層を取り付けるのに数種類の手法を利用することができ、例えば、第1の外側シェル、第2の外側シェル、フィルタ及びセパレータは最適な封止強度を保証するよう選択されるのが良い。
【0093】
幾つかの実施形態では、セパレータ330(例えば、分離スクリーン)は、濾過材320と外側シェル340との接触状態を最小限に抑えるよう構成されている。最小限の接触は、濾過材320と外側シェル340が組織の処理中(例えば、真空が袋内に生じている場合)互いにくっつくのを阻止する。かくして、分離スクリーン330は、濾過材320と外側シェル340との間に空間を作る。或る特定の実施形態では、セパレータは、外側シェル340とフィルタ320との間に空間を作るリブ、ストラット及び他の特徴部から成るのが良い。他の実施形態では、濾過材320の方に向いた外側シェル340の側部は、所用の空間を作るよう模様付けされているのが良く、それにより別個のセパレータが不要になる。このシステムのフィルタと外側シェルとの間に空間を作ることにより、過剰の流体を脂肪組織から第2及び/又は第3のサブシステム内に引き込み、吸い込み又は吸い上げる力が袋の中に作られる。次に、過剰の流体を廃棄物容器内に差し向けることができる。また、セパレータ、例えば分離スクリーン330により作られる空間及び/又はセパレータを作るために用いられる材料は、好ましくは、脂肪組織中に存在する脂質を吸い上げ、それにより第1のサブシステム又はチャンバ内の組織から脂質及び流体を除去するのに役立ち、そしてこの組織を一段と乾燥させ又は脱水するよう設計され、構成され又は選択される。
【0094】
或る特定の実施形態では、セパレータ330は、多孔質材料で作られると共に/或いは複数個の開口部又は細孔を有する。或る特定の実施形態では、セパレータ330の複数個の細孔のサイズは、約300〜約3000ミクロン又はこの範囲に含まれる任意の数値、例えば約500〜約2000ミクロンであるのが良い。好ましくは、複数個の開口部又は細孔の直径は、約300ミクロン、400ミクロン、500ミクロン、600ミクロン、700ミクロン、800ミクロン、900ミクロン、1000ミクロン、1100ミクロン、1200ミクロン、1300ミクロン、1400ミクロン、1500ミクロン、1600ミクロン、1700ミクロン、1800ミクロン、1900ミクロン、2000ミクロン、2100ミクロン、2200ミクロン、2300ミクロン、2400ミクロン、2500ミクロン、2600ミクロン、2700ミクロン、2800ミクロン、2900ミクロン、3000ミクロン以上であり、又はこの範囲に含まれる任意の数値である直径を有する。一実施形態では、複数個の開口部のサイズは、約1000ミクロンである。幾つかの実施形態では、セパレータは、約10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、35%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、65%以上又はこの範囲に含まれる任意のパーセントである開放領域を有する多孔質材料で作られる。当業者であれば理解されるように、これよりも大きいサイズの細孔は、第1のチャンバから第2のチャンバ内への物質の迅速な移送又は排出を可能にし、セパレータの孔径は、吸い上げ及び/又は排出又は濾過特性のバランスをとるよう調整されるのが良い。幾つかの実施形態では、液体及び脂質は、多孔質セパレータの開放領域に吸着すると共に/或いはこれを満たす。本出願人は、驚くべきことに、幾つかの実施形態では、濾過材の細孔よりも大きな細孔を有するセパレータが脂肪組織からの流体の除去及びシステムの第1のチャンバからの流体の除去を容易にすることを発見した。かくして、幾つかの実施形態では、セパレータ、例えば分離スクリーン330は、多孔質材料であり、細孔は、上述した濾過材320の細孔よりも大きな直径又はサイズを有する。
【0095】
幾つかの実施形態では、セパレータは、脂質及び/又は流体を捕捉し又は吸い上げる生体適合性材料から成る。例えば、セパレータは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、セルロースナイトレート及びセルロースアセテートで作られるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、軟質材料で作られ、幾つかの実施形態では、セパレータは、硬質材料で作られる。好ましくは、セパレータは、例えば孔径が1000ミクロンのポリエステルメッシュで作られる。
【0096】
図3〜図13に示されているように、システム300は、物質をシステム内に通過したりシステムから取り出したりすることができる1つ又は2つ以上のポートを有するのが良い。例えば、図3、図4、図8及び図9に示されているシステム300は、3つの別々のポートを有する。ポート400,500が第1のサブシステム、例えば外側シェル310と濾過材320との間の領域と連通状態にある。ポート600が第2及び/又は第3のサブシステム、例えば濾過材320と分離スクリーン330との間の領域及び/又は分離スクリーン330と外側シェル340との間の領域と連通状態にある。しかしながら、幾つかの実施形態では、システムは、たった1個のポート又はたった2個のポートを有し、例えば1個の入口ポート及び1個の出口ポートを有しても良い。他の実施形態では、システムは、4個以上のポート、例えば4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上のポートを有しても良い。
【0097】
一般に、ポートは、システム又はサブシステムの周囲から内部に延び又はこの逆の関係に延びる少なくとも1つの孔を有する。孔は、ポートの継ぎ目に沿って位置する気密且つ水密シールを有する。以下に更に説明するように、幾つかの実施形態では、ポートは、1つ又は2つ以上のコネクタ、導管、ポート組立体、アダプタ、キャップ又は注射器に結合されるよう構成されている。
【0098】
ポートは、種々の流体、例えば洗浄及びすすぎ洗い流体を挿入したりかかる流体及び流出液を除去するためのアクセスポイントとなることができる。好ましくは、ポートは、封止されるのが良い(例えば、弁を備える)。幾つかの実施形態では、ポートは、手動でクランプにより封止されるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、キャップによって封止されるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、自動封止弁、例えばシステムの内部チャンバ内への流体又は内容物の一方向流れを可能にするが、内部チャンバからの一方向流れを可能にしない変形可能な弁を有する。他の実施形態では、変形可能な弁は、双方向流れをもたらす。変形可能な弁は、当該技術分野において知られている変形可能な材料であればどのような材料でも構成でき、例えば、ゴム、ネオプレン、シリコーン、ポリウレタン等で作られるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、ルアー(luer)作動式弁を有する。幾つかの実施形態では、ポートは、システムが直立に保持されているとき、1つ又は2つ以上のポートが下に位置決めされて流体及び流出液が重力、吸引力又は圧力の助けにより流出するようシステム内に設けられている。また、本発明のシステム300に他のポート、例えば、通気のためのポート、物質又はガスをシステム又はサブシステム等に追加するポートを利用することができる。
【0099】
システム又はサブシステムのポートは、脂肪物質を源となる体から吸引するために用いられる注射器又はカテーテルに直接又は間接的に(即ち、アダプタを介して)相互連結され又は結合されるよう構成されるのが良く、その結果、脂肪組織は、システム中に直接嫌気的に送り込まれるようになる。同様に、カニューレ又は注射器は、精製された組織の嫌気的移植のためのポートに取り付けられるのが良い。したがって、幾つかの実施形態では、システム又はサブシステムのポートは、使い捨て又は再使用可能な注射器に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、これらポートは、1cc注射器、2cc注射器、5cc注射器、10cc注射器、20cc注射器、50cc注射器、60cc注射器、100cc注射器、250cc注射器等に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。幾つかの実施形態では、ポートは、大サイズボア先端部を有する注射器、例えばトーミー注射器に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。
【0100】
幾つかの実施形態では、システム300は、第1のチャンバ又はサブシステムへの内容物(例えば、脂肪組織)の嫌気的送り出し又はこれからの嫌気的取り出しを容易にする組織接近ポート組立体700を有している(例えば図9を参照されたい)。例示の組織接近ポート組立体700は、図10及び図11に詳細に示されている。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、大サイズボア円筒形開口部710を有する。ボア710のサイズが大きいので、第1のチャンバ内への組織の送り込み及び取り出しが容易になる。変形可能なプラスチック弁720は、物質が開口部710を通ってポート730の本体内に入るのを阻止するバリヤとなることができる。変形可能なプラスチック弁720は、開いてボアから組織接近ポートの本体730内への内容物の流れを可能にするよう構成されているのが良く、組織接近ポートは、これへの注射器先端部(図示せず)の挿入によってシステムの第1のチャンバに通じる。変形可能なプラスチック弁720は、弁からの注射器先端部の取り外しの際に閉鎖デフォルト状態に戻り、それにより、ポートが封止され、使用されていない場合、組織接近ポートの本体からの内容物(例えば、組織又は液体)の流れが遮断される。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、ポートが使用されていないとき、組織接近ポートに追加のシールを提供するようキャップ740に連結されるよう構成されている。例示のキャップ740の詳細図は図12に示されている。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、システム300から取り外し可能であるのが良い。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、例えば接着剤、例えばUV接着剤によりシステム300に取り付けられ又は接合される。
【0101】
幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、アダプタ又はコネクタに相互接続されるよう構成されるのが良い。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、注射器先端部をシステムのポートに接合するよう構成されている。上述したように、一例を挙げると、アダプタ、例えば組織ポート組立体は、ポートと一体であっても良く又はこれから取り外し可能であっても良い。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、ルアーコネクタから成る。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、変形可能な弁を備えた取り外し型アダプタから成る。
【0102】
幾つかの実施形態では、システムのポートは、2つ以上の流路向きに設計された組立体、例えばYコネクタ(Y形連結具)等から成っていても良く又はこれに連結されても良い。幾つかの実施形態では、Yコネクタは、所望に応じて、例えば、Yコネクタの個々のルーメン又は流路を締め付けることによって一方又は両方の流路の閉塞を可能にするよう構成されている。幾つかの実施形態では、Yコネクタは、Yコネクタの共通且つ個々の流路の接合部のところに設けられていて、個々の流路の各々、又は一方の流路を通る同時流れを可能にし又は所望に応じて両方の流路を閉塞するよう調節可能なスイッチを有する。
【0103】
幾つかの実施形態では、閉鎖経路を維持しながら1つ又は2つ以上のシステム又はサブシステムに対する流体連通を可能にする導管又は管類に連結されるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、システム300は、オプションとして、廃棄物袋(図示せず)、廃棄物入れ物(図示せず)、廃棄物導管(図示せず)及び/又は廃棄物容器(図示せず)を有するのが良い。これら実施形態のうちの或る特定のものでは、サブシステムは全て、互いに流体連通状態にある。他の実施形態では、互いに流体連通状態にあるサブシステムは存在しない。特定の実施形態では、1つのサブシステムは、他の2つのサブシステムから封止され、この場合、これら2つのサブシステムは、互いに流体連通状態にある。好ましくは、サブシステムを含むシステム全体は、このシステムが任意サイズ又は形状のものであると共に広汎な容積に対応することができるようにするよう可撓性である。変形例として、システム全体、サブシステム及び関連のコンポーネントは、剛性であっても良い。さもなければ、サブシステム及び関連コンポーネントの中には、可撓性のものがあれば、剛性のものもある。
【0104】
図13は、他のシステム及びサブシステムと流体結合状態にあるシステム300‐1を有するシステム800の例示の実施形態を示している。図13に示されているように、ポート400‐1,500‐1は、洗浄溶液源810‐1及び廃棄物袋820‐1にそれぞれ連結可能である。システム300‐1は、閉鎖経路を維持した状態で同様なシステム300‐2に連結可能である。脂肪組織が本明細書において上述したように、例えば、脂肪入口/取り出しポート600‐1,600‐2を通ってそれぞれシステム300‐1,300‐2の第1のチャンバ中に導入される。システム300‐2内の脂肪組織は、上述したように乾燥又は脱水グラフトを作製するために用いられる。システム300‐1内の脂肪組織は、リポダイジェステート又は再生細胞を含む脂肪由来細胞の濃縮集団を作製するために処理される。ポート500‐1又は別のポート(図示せず)が溶液源、例えば溶液源810‐1に連結可能であり、この流体源810‐1は、組織すすぎ洗い及び消化のためにシステム300‐1の第2のチャンバ内への洗浄溶液及び/又は酵素の嫌気的導入を可能にするよう構成されている。ポート400‐1は、廃棄物袋820‐1に連結可能である。第1のチャンバ300‐1内のリポダイジェステートは、閉鎖システムを維持した状態でポート600‐1,600‐2に連結された導管(図示せず)を介してシステム300‐2の第1のチャンバ内の乾燥又は脱水脂肪組織に嫌気的に移送可能である。
【0105】
本明細書において開示するシステムは、望ましくない物質、例えば赤血球、白血球及び脂質の含有量が、例えば遠心分離及び/又は従来型重力分離のような方法によって処理された同一部位での同一被験体から取った脂肪組織の等価量よりも著しく少ない脂肪組織グラフト及びインプラントを生じさせることができる。幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する白血球よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない白血球を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の白血球の数の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0106】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する赤血球よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない赤血球を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の赤血球の数の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0107】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する脂質よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない脂質を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の脂質の割合の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0108】
望ましくない含有成分が少ない脂肪組織グラフトを作製することができるということに加えて、本明細書において開示するシステムにより作製されるグラフトは又、脂肪由来再生細胞の補充及び/又はインプラントの保持を容易にする水和特性を示すことができる。具体的に説明すると、本明細書において説明されているように調製された脂肪組織グラフトの水和状態は、同一部位で同一被験体から単離されると共に重力分離だけを用いて調製された脂肪組織の等価単位のグラフトよりも水和度が低い。
【0109】
しかしながら、当業者であれば理解されるように、幾つかの実施形態では、システムは、互いに封着された2つの互いに異なる外側シェルで構成されていない柔軟性袋、即ち、正確に言えばシームレス袋を備えた状態で設計されても良い。袋の内部に第1及び第2のサブシステム又はチャンバを構成するようフィルタをシームレス袋内に封着し、接合し又は取り付けるのが良い。
【0110】
本明細書において開示する補充、増強又は強化脂肪グラフト又は脂肪組織インプラントを作製する例示の装置100が図14に示されている。図14Aは、少なくとも2つのチャンバ20,30を含むキャニスタ10の斜視図である。1つのチャンバ20は、未処理組織からリポダイジェステートを作製するよう用いられるのが良い。第2のチャンバ30は、補充脂肪組織グラフトの生成の際に脂肪組織として用いられるべき未処理脂肪組織を受け入れてこれを貯蔵するよう用いられるのが良い。
【0111】
図14に示された実施形態では、各チャンバ20,30は、未処理脂肪組織を受け入れるよう構成された組織入口ポート40,50を有している。しかしながら、理解されるように、幾つかの実施形態では、キャニスタ10は、組織入口ポートを1つだけ有する。幾つかの実施形態では、組織入口ポート40,50は、脂肪吸引液が脂肪吸引中、チャンバ20,30内に直接入るようカニューレ(図示せず)に操作可能に連結されるよう構成されている。例えば、組織入口ポート40,50は、組織取り出しラインを構成する管類によってカニューレ(図示せず)に結合可能である。幾つかの実施形態では、カニューレは、一体型一回使用脂肪吸引カニューレであるのが良く、管類は、フレキシブルチューブであるのが良い。カニューレは、脂肪組織を被験体から取り出すよう被験体の体内に挿入されるよう寸法決めされているのが良い。システムで用いられる管類は、潰れの恐れを減少させるよう吸引力支援脂肪形成術と関連した負圧に耐えることができるのが良い。吸引装置(図示せず)、とりわけ例えば注射器又は電気真空装置がキャニスタ10に結合可能であると共に被験体から組織を吸引するのに十分な負圧をもたらすよう構成されるのが良い。
【0112】
キャニスタ10のチャンバ20,30は、一方のチャンバ20(例えば、リポダイジェステートの入っているチャンバ)の他方のチャンバ30(例えば、脂肪グラフトの入っているチャンバ)内への内容物の流れが制御されるように互いに物理的に分離されるのが良い。幾つかの実施形態では、これらチャンバは、例えば、望ましい場合にのみ一方のチャンバから他方のチャンバへの内容物の流れを保証するよう封止できるポートを介して互いに流体結合関係にある。例えば、幾つかの実施形態では、一方のチャンバ20から別のチャンバ30への内容物の流れは、導管を介して起こる。オプションとしての導管は、システムの種々のコンポーネント相互間の物質の流れを制御するための1つ又は2つ以上のクランプ(図示せず)を有するのが良い。クランプは、システムの種々の領域を効果的に封止することによってシステムの滅菌性を維持するために使用されるのが良い。変形例として、オプションとしての導管は、システムを通る物質の流れを制御する1つ又は2つ以上の弁を有しても良い。これら弁は、電気機械的ピンチ弁、空気圧弁、油圧弁又は機械的弁であって良い。幾つかの実施形態では、弁は、レバーに結合可能な制御システムによって起動化され又は作動されるのが良い。レバーは、手動操作式であっても良く且つ/或いは例えば所定の作動条件で弁を作動させることができる処理装置により自動操作可能であっても良い。或る特定の自動化実施形態では、弁の作動は、部分的に自動化されると共に部分的にユーザの好みを受けるのが良く、その結果、プロセスを最適化することができる。さらに別の実施形態では、弁の中で手動で作動できるものがあれば、処理装置を介して自動的に作動できるものがあっても良い。弁は又、1つ又は2つ以上のポンプ、例えば蠕動ポンプ又は容量形ポンプ(図示せず)と関連して使用できる。導管及び/又は弁は、システムを通って流れる種々の流体成分及び流体レベルを互いに識別することができるセンサ、例えば光学センサ、超音波センサ、圧力センサ等を更に有するのが良い。
【0113】
幾つかの実施形態では、一方又は両方のチャンバは、廃棄物、例えば生理的食塩水、成熟脂肪細胞、赤血球等の除去、例えば洗浄溶液、酵素、細胞等の成分の追加又は空気入口又は出口ベントのための1つ又は2つ以上のポートを有するのが良い。幾つかの実施形態では、チャンバ30は、補充脂肪グラフトの嫌気的除去を可能にするよう構成されたポート又は出口70を有するのが良い。出口70は、組成物(例えば、補充脂肪グラフト)を適当な条件下でチャンバ30から被験体に送るような構造になっているのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、組成物を抜き取るのに注射器を用いるのが良く、出口70は、システム又は組成物の滅菌性を損なわないで注射器の針を受け入れることができる。追加の実施形態では、出口は、組成物を投与するが、組成物を引き抜くことがないよう構成された器具、例えば正圧を及ぼしてカニューレを通って組成物を移動させることによって組成物を投与するカニューレに結合されるのが良い。したがって、出口70は、チャンバ30内に入っている組成物をカニューレ(図示せず)中に移すことができるよう構成されているのが良い。他の実施形態では、出口70は、組成物を投与する器具、例えば正圧を加えることによって組成物を投与する注射器の針又はカニューレを有し又はこれに閉鎖系状態で結合されるのが良い。
【0114】
幾つかの実施形態では、キャニスタ10の一方又は両方のチャンバ20,30は、溶液及び作用剤、例えば洗浄溶液(生理的食塩水等)、離解剤又は他の作用剤若しくは添加剤を嫌気的に受け入れるよう構成されているのが良い。装置としては、内容物を滅菌状態で保持するよう構成された容器、例えば、押し潰し可能な袋、例えば臨床設備で用いられるIV袋が挙げられる。これら容器は、一方又は両方のチャンバ20,30に結合された導管を有するのが良い。例えば、装置は、すすぎ洗い又は洗浄剤(例えば、PBS、PLASMALYTE(登録商標)、NORMOSO(登録商標)又は乳酸加リンゲル液)を入れた容器をチャンバ20及びチャンバ30に嫌気的に送り出すことができるよう構成されているのが良い。幾つかの実施形態では、器具100は、キャニスタ10に結合されている離解剤の入っている容器が離解剤をチャンバ20の内部に送り出すよう構成されているのが良い。溶液及び作用剤を、任意の当該技術分野において公認されている仕方でキャニスタのチャンバ20,30の内部に送り出すことができ、かかる当該技術分野において公認されている仕方としては、容器の外部に加えられる重力又は導管への容量形ポンプの設置が挙げられる。自動化実施形態では、プロセッシング器具は、種々のパラメータ、例えば生理的食塩水の量及び洗浄に必要なサイクルの時間又は回数並びに離解剤の濃度又は量及びユーザにより当初入力される情報(例えば、処理されるべき組織の量)に基づく離解に必要な時間を計算する。変形例として、例えば量、時間は、ユーザにより手動で操作できる。幾つかの実施形態では、器具は、キャニスタの一方又は両方のチャンバを撹拌し又は振盪するよう構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、装置は、離解プロセス中、チャンバ20の内容物を撹拌するよう構成された軌道運動プラットホーム80を有する。
【0115】
キャニスタ10のコンポーネントが、生物学的流体又は組織とは反応せず、しかも生理学的流体及び組織の処理の際に用いられる作用剤とも反応しない材料で作られるのが良い。加うるに、種々のコンポーネントの構成材料は、例えばオートクレーブ処理及びベータ線又はガンマ線を含む(これには限定されない)放射線による滅菌に耐えることができなければならない。幾つかの実施形態では、キャニスタは、使い捨て可能な材料で作られる。幾つかの実施形態では、キャニスタは、2回以上使用できる非使い捨て材料で作られるのが良い。一例を挙げると、管類及びカニューレ取っ手は、任意適当な材料、例えばポリエチレンで構成可能である。カニューレは、ステンレス鋼で構成されるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、キャニスタは、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、エチレンビニルアセテート又はスチレンブタジエンコポリマー(SBC)で作られる。装置の流体経路は、好ましくは、パイロジェンが含まれておらず、即ち、疾患をうつす恐れなく血液を使用するのに適している。幾つかの実施形態では、キャニスタ10は、ユーザがチャンバ内に存在する組織のおおよその量を目で見て確認することができる材料で構成される。
【0116】
幾つかの実施形態では、装置は、システムの1つ又は2つ以上のチャンバ20,30内に入っている材料の温度を調節するよう位置決めされた1つ又は2つ以上の温度制御装置(図示せず)を有する。温度制御装置は、ヒータ、クーラ又はこれら両方であるのが良く、即ち、温度制御装置は、ヒータとクーラとの間で切り替えることができるのが良い。温度制御装置は、装置100を通る材料のうちの任意のものの温度を調節することができ、かかる物質としては、組織、離解剤、再懸濁剤、すすぎ洗い剤、洗浄剤又は添加剤が挙げられる。例えば、脂肪組織の加熱により、離解が容易になり、再生細胞出力の冷却が、生存能力を維持するのに望ましい。また、あらかじめ温められた試薬が最適な組織処理に必要な場合、温度制御装置の役割は、温度を増減するのではなく所定の温度を維持することにある。
【0117】
幾つかの実施形態では、装置100は、自動化されるのが良い。幾つかの実施形態では、装置100は、装置が作動し、ユーザの入力に基づいてプロセスの1つ又は2つ以上のステップを自動化するための制御論理を提供する処理装置(例えば、プロセッサ又はパーソナルコンピュータ)及び関連ソフトウェアプログラムを有するのが良い。或る特定の実施形態では、システムの1つ又は2つ以上の観点は、処理装置内に存在するソフトウェアによりユーザによりプログラム可能であるのが良い。処理装置は、読み取り専用記憶装置(ROM)内の1つ又は2つ以上のあらかじめプログラムされたソフトウェアプログラムを有するのが良い。例えば、処理装置は、血液を処理するために誂えられたあらかじめプログラムされたソフトウェア、少量の再生細胞を得るために脂肪組織を処理する別のプログラム及び多量の再生細胞を得るために脂肪組織を処理する別のプログラムを有するのが良い。処理装置は、関連情報、例えば必要な再生細胞の量及び種々の処理後操作等のユーザの入力に基づいてプロセスを最適化するための適当なパラメータをユーザに与えるあらかじめプログラムされたソフトウェアを更に有するのが良い。
【0118】
幾つかの実施形態では、ソフトウェアは、システムのポンプ及びバルブを制御することによって特定のチューブ経路に沿って流体及び組織の出入りを制御するステップ、正しいシーケンス及び/又は作動方向を制御するステップ、圧力センサによる閉塞の検出ステップ、容積測定機構を用いて特定の経路に沿って動かされる組織及び/又は流体の量を測定する機構を混合するステップ、熱制御装置を用いて種々のコンポーネントの温度を維持するステップ及び離解プロセスをタイミング及びソフトウェア機構と一体化するステップを自動化することができる。
【0119】
以下の例は、この技術を利用することができる特定の状況及び装置を実証するために提供されているが、これらは、この開示内容に含まれる特許請求の範囲の記載及び本発明の範囲を制限するものではない。多くの非特許文献及び特許文献が上記において引用されている。引用した非特許文献及び特許文献の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0120】
以下の実施例は、本明細書において開示したシステムを用いて得られた脂肪組織グラフトの純度及び水和を未処理脂肪組織の等価単位及び重力分離及び遠心分離により作製された脂肪組織グラフトの等価単位と比較している。
【0121】
実施例1
吸引脂肪組織は、10名のヒト被験体(N=10)から、リポサクション(N=5)、レーザ(N=3)又はボディジェット(Body-jet)採取(N=2)のいずれかの方法によって、医院で収集された。吸引した組織サンプルを、以下の4群へと無作為に割り当てた。(1)コントロール、(2)重力分離、(3)遠心分離、及び(4)PUREGRAFT (商標)組織グラフト調製物。コントロールサンプルはそれ以上の操作なしに直接解析した。重力分離群におけるサンプルを別にして60mL注射器中に10分間セットした。サンプルの液体部分を廃棄し、残存する脂肪組織を解析した。遠心分離群については、キャップした10mL注射器にサンプルを充填し、IEC固定角ローター遠心分離機の中へ置き、3000rpm(約1200g)で3分間遠心分離した。遠心後に脂肪組織の上部の遊離脂質を吸引によって除去し、下澄を排出させ、残存するグラフト組織を解析した。PUREGRAFT (商標)群におけるサンプルは、上述のシステム300(PureGraft (商標))中で洗浄した。概要を述べると、組織はシステム300の第1のチャンバの中へ上記のように導入される。組織を150mlの乳酸加リンゲル液により2回洗浄した。過剰な液体及び脂質をシステムの第2のチャンバから排出させるようにする。乾燥した組織を組織のエントリーポートを介して取り出し、結果解析に使用した。
【0122】
グラフトを4つの構成要素(遊離脂質、脂肪組織、液体、ならびに赤血球及び白血球を含む細胞ペレット)に分離するために、続いて、4群の各々からのグラフト組織を三重の15mlのコニカルチューブ中で400gで5分間遠心分離した。脂質層及び液体層の体積を記録し、全グラフト組織のパーセンテージとして計算した。各々のサンプルの脂質層及び液体層の体積を測定し、異なる調製物の液体含量及び脂質含量の計算に使用した。図15において示されるように、本明細書において記載された方法及びシステムを使用して調製した脂肪組織(PureGraft )は、未処理の脂肪組織(コントロール)、又は通常の重力方法によって処理した脂肪組織(重力)と比較した場合、有意に低い水分含量であった。具体的には、本発明のシステムを使用して調製した組織の平均液体含量は9.3±0.9%であった。これは重力分離によって調製した組織(25.1±1.8%)よりも有意に低かった(p<0.001)。図16において示されるように、本明細書において説明した方法及びシステムを使用して調製された脂肪組織(PureGraft )は、未処理の脂肪組織(コントロール)、通常の重力方法によって調製された脂肪組織(重力)、及び通常の遠心分離方法によって調製した脂肪組織(遠心分離)と比較して、有意に低い脂質の%含量(v/v)であった。具体的には、本発明のシステムを使用して調製したサンプルにおける残留遊離脂質レベルは、コントロール(非操作)組織(11.5±1.5%、p<0.001)、重力分離(8.9±1.3%、p<0.001)、及び遠心分離(9.6±1.8%、p<0.001)と比較して、平均で0.8±0.3%の遊離脂質であった。グラフトの最初の調製の間に観察された遊離脂質の除去後に、遠心分離によって調製したグラフトで観察された遊離脂質含量(グラフト体積の平均9.6%)が測定されたことに注目されたい。すなわち、グラフトをその構成要素部分に分離した後に、遊離脂質が新しく放出されることは明らかである。これは、遠心分離によって調製したグラフト材料が、グラフトを4つの構成要素部分に分離するために第2の遠心分離を適用する間に、脂質を放出する損傷脂肪細胞を含有していたことを示す。本発明のシステム内で調製されたグラフトに対して同じ第2の遠心分離ステップを適用することが、著しく少ない遊離脂質を示した(体積の0.8%、9.6%と比較して)という事実は、本発明のシステム内で調製されたグラフトがより少ない損傷脂肪細胞を含有していたことを実証する。
【0123】
グラフトの純度を評価するために、各々の組織グラフトからのサンプルをチューブから取り出し、コールターカウンターで組織1グラム当たりの赤血球及び白血球を計数することによって血液含有量を解析した。データをコントロール群に対して標準化し、未処理のグラフト組織1グラム当たりのRBC又はWBCいずれかの含量の相対百分率として表わした。データは全て平均±標準誤差として表わした。スチューデントt検定を使用して、各々のグラフト調製方法の間の差を比較した。図17において示されるデータは、本明細書において開示された方法及びシステムを使用して調製した脂肪組織(PureGraft)が、未処理の脂肪組織(コントロール)、通常の重力調製方法によって調製した脂肪組織(重力)、及び通常の遠心分離方法によって調製した脂肪組織(遠心分離)と比較して、組織1グラム当たりで有意に少ない赤血球(RBC)を有することを示す。したがって、重力分離及び遠心分離は、47.8±7.0%及び53.2±5.4%の赤血球をそれぞれ除去したが、本発明のシステムを使用する調製は、グラフトから98.1±0.01%の赤血球を除去した。同様に、白血球含量は、重力によって58.7±13.7%、遠心分離によって69.7±5.2%、及び本発明のシステムを使用して96.80±0.01%減少した。
【0124】
水、脂質/成熟脂肪細胞及び血球の存在は、グラフト体積の損失を経時的にもたらし得る。図15〜図17において示されるデータは、本明細書において記載したシステムが、乾燥又は脱水した脂肪組織グラフト又はインプラントの調製に役立つことを実証している。
【0125】
以下の実施例は、本明細書において記載された方法によって脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪組織インプラント又はグラフトの産生を記載する。
【0126】
実施例2
豊胸手術を必要又は所望する患者を同定又は選択する。1単位の脂肪組織を患者から取り出し、好ましくは閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持する脂肪由来幹細胞処理装置に提供した。例えば、カニューレは、滅菌液体/組織経路を維持しながら、脂肪由来幹細胞処理装置の組織収集容器又はチャンバ(例えば柔軟性袋)に連結される。確立された技法によってリポサクションを行って被験体から脂肪組織を取り出し、取り出した未処理の脂肪組織を組織収集容器/チャンバ中に引き込む。実質的に全ての生理的食塩水、赤血球、成熟脂肪細胞が除去されるまで、脂肪組織の第1の部分をPBSによってすすぎ洗いし(例えば、組織がもはや明らかに赤色でなくなるまで、連続して洗浄する)、洗浄排出物(廃液、例えば、生理的食塩水、赤血球、成熟脂肪細胞)は、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、組織収集容器又はチャンバに連結されるポートを介して無菌的に除去される。幾つかの実施形態において、廃液ポートは導管によって廃液収集容器に連結され且つ廃液収集容器は真空源及び導管に接合するように構成され且つ/或いは廃液収集容器は1つ又は複数の弁を含有することができる。次いで、洗浄した脂肪組織の第1の部分はさらなる処理のために組織収集容器/チャンバ中で保存するか、又は貯蔵容器又はチャンバに移すことができる。
【0127】
第2のチャンバにおいて、上記のように、組織がもはや明らかに赤色でなくなるまで、脂肪組織の単位の第2の部分をPBSによってすすぎ洗いする。あるいは、リポサクションによって得られた脂肪組織を上記のようにすすぎ洗い及び洗浄し、その後第1の部分及び第2の部分に分割する。第1の部分は脂肪由来の再生力のある細胞の添加のための基質としての使用のために保持され、第2の部分は脂肪由来の再生力のある細胞の懸濁液を以下のように生成するために使用される。コラゲナーゼを含む酵素溶液を、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、組織の第2の部分に無菌的に添加する。組織を37℃で約1時間振動させながら培養する。リポダイジェステート/脂肪由来の再生力のある細胞溶液が未消化の脂肪組織及び脂質から物理的に分離されるように、混合物を沈降させる。脂肪組織の第2の部分から生成したリポダイジェステートを、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、導管を介して取り出す。
【0128】
次いで、分離したリポダイジェステートを、閉鎖された経路を介して第1のチャンバに連結されている導管を通ってポンプ送りする。リポダイジェステートを第1のチャンバ中の未処理の脂肪組織の第1の部分全体中にポンプ送りする。閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、リポダイジェステートの非細胞構造構成要素を、未処理の脂肪組織の第1の部分を介して廃液容器に流入させる。リポダイジェステートは、重力又は真空源を使用して未処理の脂肪組織の第1の部分を介して濾過可能である。幾つかの実施形態において、リポダイジェステートは未処理の脂肪組織の第1の部分上に成層することができ、リポダイジェステート中に存在する脂肪由来の再生力のある細胞は、遠心分離(例えば、100、200、300、400、500、600、700、又は800gでの高速回転バケット遠心分離)を使用して、未処理の脂肪組織の第1の部分のマトリックス中へ出すことができる。リポダイジェステートの脂肪由来の再生力のある細胞は結合組織断片によって結び付けられ、脂肪由来再生力のある細胞を補充した脂肪の多いグラフトを産生する。次いで、補充又は強化された脂肪の多いグラフトを、ヒト乳房の形状を有する吸収可能なケーシング又はカプセルの材料と共に又はなしで被験体に提供することができる。
【0129】
実施例3
実施例1において記載されるように、脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪の多いグラフトを調製する。脂肪由来再生力のある細胞を補充した脂肪グラフトを、被験体の顔面、臀部、胸部、又はふくらはぎに投与するか、又は任意の軟組織欠陥を補正するように投与する。
【0130】
実施例4
脂肪の多いグラフトを必要又は所望する患者を同定又は選択する。本明細書において記載されるか又は当該技術分野において公知であるように、1単位の脂肪組織を患者から取り出す。グラフトを最適化するために、システム300を配向し、システムに接続した廃液袋(図示せず)を床に降ろす。脂肪組織は、外部環境と第1のサブシステムの内部との間の連通を提供する組織接近ポート600を介して、システム300内に導入される。トーミー(Toomey)又は他の当技術分野で認められている注射器を使用して、ポートを介して脂肪吸引液を注入することができる。所望される量の組織が添加されるまで、第1のサブシステムの最大体積を越えないように注意して、これを反復することができる。いったん脂肪吸引液が添加されたならば、ドレーンチューブ上のピンチクランプ(図示せず)を閉鎖する。乳酸加リンゲル又は生理的食塩水等の洗浄溶液及び/又はすすぎ洗い溶液は、ポートを介するホイールクランプ(図示せず)を開くことによって又は滅菌IVチューブによってシステム300内に導入される。添加される洗浄溶液又はすすぎ洗い溶液の量は変動してもよい。一般的には、大多数の脂肪吸引液又は第1のサブシステムにおける他の組織が浸水するように、十分な洗浄溶液をシステム内に導入する。例えば乳酸加リンゲル液のような洗浄溶液を150ml添加する。次に、ホイールクランプを閉鎖し、システムは短時間(例えば15秒)の間、手作業で撹拌する。撹拌は、反転、回転、振動などの形態であり得る。システムは、振盪プラットホーム、オービタルシェーカなどの外部手段によって撹拌される。組織が完全に洗浄された後(観察又はあらかじめ確立した時間間隔によって決定されるように)、ドレーンピンチ弁(図示せず)又はポートを開き、重力下で、排出物は濾過材320及び分離スクリーン330を通過させる。或る特定の期間(例えば3分間)で排出物を排出させる。このサイクルは何回か繰り返すことができる。サイクルは合計4回洗浄のために反復してもよい。最後の洗浄サイクル後に、廃液を5〜10分間排出させる。一般的には、廃液の最大排出は約10分の排出後に起こる。したがって、機械設備の必要なしに、そして操作の簡単な閉鎖された滅菌システムにおいて、血液、腫脹液及び遊離脂質が実質的にない、より乾燥した洗浄された脂肪の多いグラフトが生成される。さらに、このプロセスはわずか20分で完了することができ、外科医は最終ステップ中のシステムの許容排水時間の変更によって水和の所望レベルを制御することができる。
【0131】
脂肪由来の再生力のある細胞(ADRC)によりシステム300の使用によって得られた脂肪グラフトの濃縮が所望されるならば、本明細書において記載された任意の方法、又は当該技術分野において公知の方法によって(CELUTION(登録商標)システムの使用等によって)得られたADRCを、乳酸加リンゲル液の袋の近くのポートを介して添加し、乳酸加リンゲル液又は他の好適な溶液により5秒間以上、追跡することができる。次いで本明細書において説明されるように、システムを例えば15秒間撹拌し、次いでADRCが増強された脂肪の多いグラフトを必要に応じて患者の体内に注入又は戻すことができる。
【0132】
均等例
当業者であれば、日常行われるに過ぎない実験を用いて、本明細書において説明した本発明の特定の実施形態の多くの均等例を認識し又は想到することができよう。かかる均等例は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明に含まれるものである。
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する実施形態は、一般に、脂肪由来の再生力のある細胞の集団(例えば、幹細胞を含む脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団)を持つ脂肪組織及びこれらを持たない脂肪組織を含むグラフト、インプラント又は移植可能調製物を含む組成物並びにこれらを調製し、最適化しそして投与する方法及びシステムに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年5月1日に出願された米国特許仮出願第61/174,860号(発明の名称”SYSTEMS, METHODS AND COMPOSITIONS FOR OPTIMIZING TISSUE AND CELL GRAFTS ”)の優先権主張出願であり、この出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
身体の様々な領域への脂肪組織の導入は、1つの位置からの脂肪組織の採取並びに採取された組織及び処理されることが多い組織の別の位置での再植込みを含む比較的ありふれた美容的手技、治療手技及び構造的手技である(コールマン(Coleman)1995及びコールマン(Coleman)2001参照)。脂肪組織の導入は、大部分は顔のひだ、しわ、痘痕及びくぼみ等の小さな美容的欠点の修復に使用されているが、近年、美容的及び/又は治療的豊胸手術及び乳房再建(バーコル(Bircoll)及びノヴァック(Novack)1987並びにディクソン(Dixon)1988)及び豊尻手術(カルデナス−カマレナ(Cardenas-Camarena),ラクチュール等(Lacouture et al.)1999、デ・ペドロザ(de Pedroza)2000及びペレン(Peren),ゴメス等(Gomez et al.)2000)に使用されている。
【0004】
従来、脂肪組織グラフト及び脂肪組織導入方法は、壊死、身体によるインプラントの吸収、感染(カステロ(Castello),バロス等(Barros et al. )1999、バルダッタ(Valdatta),チオン等(Thione et al. )2001)、石灰化及び瘢痕化(フーフ(Huch)、キュンチ等(Kunz et al. )1998)、一貫性を欠いた移植(エレミア(Eremia)及びニューマン(Newman)2000)、耐久性の欠如並びに血管新生の欠如及び移植組織の壊死から生じる他の問題を含む難点及び副作用が悩みの種であった。脂肪組織導入における最も大きな難題の1つは、導入後の身体によるインプラントの吸収及び脂肪組織グラフトの体積保持である。脂肪組織が採取又は洗浄される場合、採取された脂肪組織の個別片の間の空間は液体(例えば、水、血液、腫脹液、油)によって満たされる。この組織/液体混合物がレシピエント中に植え込まれる場合、液体部分は身体によって急速に吸収され、体積の損失を生じる。液体の量が組織/液体混合物から除去されるプロセスは、「脂肪組織を乾燥させる」、又は「脂肪組織を脱水する」と呼ばれることが多い。脂肪組織グラフト中の赤血球及び白血球並びに同種のものの含有量も、炎症性応答の誘導又は悪化に起因して、グラフト移植後に保持されるグラフトの体積に相当な悪影響を及ぼす場合がある。組織保持のもう一つの観点は、脂肪組織グラフト内の脂質の量に関する。理解されるように、脂肪組織グラフト中の遊離脂質(死脂肪細胞又は損傷脂肪細胞から放出された脂質を意味し、油とも称される)の存在が、実質的な食細胞作用による炎症性応答及び結果として生ずるグラフト体積の損失の誘導又は悪化をもたらす場合がある。
【0005】
未処理の脂肪組織を、脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団と混合することが、上記のような脂肪組織グラフト及び脂肪組織導入と関連する問題の多くを克服することも公知である。具体的には、未処理の脂肪組織に脂肪由来幹細胞を含む脂肪由来細胞の濃縮集団を補充することにより、脂肪の多いグラフトの重量、血管侵入及び保持が増強される。(米国特許第7,390,484号明細書及び同時係属中米国特許出願公開第2005/0025755号明細書を参照されたい。なお、これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。)動物モデルにおいて、脂肪由来幹細胞を含む細胞の濃縮集団が補充され又はこれらと混合された脂肪組織断片は、脂肪組織だけの非補充状態のグラフトと比較した場合、グラフトの血管新生及び灌流の改善を示す。さらに、脂肪由来幹細胞を含む脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪組織グラフトは、補充が行われなかったグラフトと比較した場合、経時的なグラフトの保持及び重量の増加を示す。(米国特許出願公開第2005/0025755号明細書を参照されたい)。さらに、閉鎖滅菌液体経路での脂肪組織の処理は、感染の機会を大幅に減らす。上述の動物モデルにおいて調べられた脂肪組織の自己由来導入の改良は、ヒト臨床研究においても再現された。しかしながら、脂肪由来幹細胞(ADSC)を含む脂肪由来の再生力のある細胞の濃縮集団の単離及び精製は、通常、一連の洗浄ステップ、消化ステップ、濾過ステップ及び/又は遠心分離ステップを含み、それらは生存細胞の収率を減少させ、機械設備及び専門医を必要とし且つ/或いはグラフトの品質、外観、寿命、水和若しくは有効性を損なう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,390,484号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0025755号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0025755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脂肪組織グラフト及びインプラントを調製すると共に最適化し、脂肪由来の再生力のある細胞を単離及び/又は濃縮する追加のアプローチが必要であることは明白である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において説明する実施形態は、脂肪組織グラフトを処理する装置並びに脂肪組織グラフト及び脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを調製する方法又はアプローチに関する。
【0009】
本明細書において説明する幾つかの実施形態は、組織を脂肪組織グラフトが得られるよう調製する装置に関する。幾つかの実施形態では、この装置は、第1のチャンバ及び第2のチャンバを備えた柔軟性の押しつぶし可能な袋を有するのが良く、第1のチャンバ及び第2のチャンバは、細孔を備えたフィルタによって画定されている。この装置は、第2のチャンバ内に設けられたセパレータと、柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された1つ又は2つ以上の入口ポート及び出口ポートとを更に有するのが良い。入口ポートは、第1のチャンバ内への脂肪組織の無菌的導入を可能にするよう構成されているのが良く、出口ポートは、第2のチャンバから液体及び細胞を無菌的に取り出すよう構成されているのが良い。
【0010】
幾つかの実施形態では、セパレータは、第2のチャンバ内に設けられた自由浮動多孔質構造体であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、第2のチャンバ内に第3のチャンバを構成する多孔質構造体であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、脂質吸い上げ材料、例えばポリエステルメッシュスクリーン等であるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、システムの細孔よりも大きな細孔を有する多孔質構造体であるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、セパレータの細孔は、フィルタの細孔の孔径の約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、39倍、39倍又は40倍以上であるのが良い孔径を有する。幾つかの実施形態では、セパレータの細孔は、約300μm〜2000μmであるのが良い。幾つかの実施形態では、フィルタの孔径は、約30μm以上、例えば約30μm〜約200μmであるのが良い。幾つかの実施形態では、フィルタの孔径は、35μmである。
【0011】
幾つかの実施形態では、入口ポートは、アダプタに解除可能に連結されるよう構成されているのが良く、アダプタは、注射器筒、例えば60又は250ml注射器、トーミー(Toomey)注射器等の先端部に解除可能に連結されるよう構成されているのが良い。幾つかの実施形態では、入口ポートは、物質がポートに入ることができるが、ポートから出ることができないよう構成されているのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、入口ポートは、変形可能なプラスチック弁及び/又は組織接近ポート組立体を有し又はこれらに結合されるよう構成されている。幾つかの実施形態では、入口ポートは、滅菌流体/組織経路を維持した状態でカニューレに取り付けられるよう構成されているのが良い。
【0012】
幾つかの実施形態では、本装置は、第2の装置を更に有するのが良く、第2の装置は、装置に取り付けられた脂肪由来再生細胞単離装置を含む。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞単離装置は、閉鎖経路を維持した状態で脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する第1の装置に取り付け可能である。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞単離装置は、上述の装置であるのが良い。幾つかの実施形態では、第2の装置は、単離された脂肪由来再生細胞を第2の装置から脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置の第1のチャンバに移送するよう構成されるのが良い導管によって脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置に連結可能である。幾つかの実施形態では、導管は、Y形連結具又はYコネクタを含むのが良い。
【0013】
本明細書において提供される幾つかの実施形態は、脂肪組織グラフトを作製する方法に関する。この方法は、未処理脂肪組織の第1の部分を得るステップと、未処理脂肪組織の第1の部分を生理学的溶液ですすぎ洗いするステップと、すすぎ洗いした脂肪組織を脱水に先立って未処理脂肪組織の第1の部分中に存在する水和量よりも少ない水和量まで脱水するステップとを有するのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、すすぎ洗いした脂肪組織は、脱水に先立って未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/2、1/3又は1/4倍(好ましくは約1/3倍)未満の液体含有量まで脱水される。
【0014】
幾つかの実施形態では、生理学的溶液は、乳酸加リンゲル液、リンゲルのアセテート、生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、PLASMALYTE(登録商標)溶液、IV流体入り晶質液、IV流体入りコロイド溶液、5パーセントブドウ糖液(D5W)、ハートマン溶液等であるのが良い。
【0015】
幾つかの実施形態では、この方法は、一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離するステップ、脱水脂肪組織を脂肪由来再生細胞の単離された集団が乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で脂肪由来再生細胞の単離された集団に接触させるステップとを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心作用を受けない。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、第2の装置の第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を、例えば結合組織基質から細胞を遊離させる手段及びコラゲナーゼを含む酵素溶液に、かかる細胞を遊離させる条件下で、接触させることにより上述の装置内で調製されるのが良い。幾つかの実施形態では、細胞を遊離させるかかる条件としては、熱、冷却、機械的消化、超音波又はレーザ支援遊離又は当該技術分野において知られていると共に米国特許第7,390,484号明細書に記載されている他の方法が挙げられ、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの実施形態では、接触ステップは、第1の装置に取り付けられた第2の装置(例えば、第1の装置と同一構造を有する装置)内で実施されるのが良い。
【0016】
幾つかの実施形態は、脂肪組織グラフトを作製する方法であって、未処理脂肪細胞の第1の部分を得るステップと、未処理脂肪組織の第1の部分を上述の第1の装置の第1のチャンバ内に導入するステップと、生理学的洗浄溶液を第1のチャンバに追加することによって未処理脂肪組織の第1の部分をすすぎ洗いするステップと、第1の装置の第2のチャンバから、流体(水、生理学的洗浄溶液、血液、遊離脂質又はこれらの任意の組み合わせ)を除去し、それにより脂肪組織を乾燥させると共に遊離脂質含有量を減少させるステップを有することを特徴とする方法に関する。
【0017】
幾つかの実施形態では、この方法は、一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離するステップ、脱水脂肪組織を脂肪由来再生細胞の単離された集団が乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で脂肪由来再生細胞の単離された集団に接触させるステップとを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心作用を受けない。幾つかの実施形態では、脂肪由来再生細胞の単離された集団は、第2の装置の第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を、例えば結合組織基質から細胞を遊離させる手段及びコラゲナーゼを含む酵素溶液に、かかる細胞を遊離させる条件下で、接触させることにより上述の装置内で調製されるのが良い。幾つかの実施形態では、細胞を遊離させるかかる条件としては、熱、冷却、機械的消化、超音波又はレーザ支援遊離又は当該技術分野において知られていると共に米国特許第7,390,484号明細書に記載されている他の方法が挙げられ、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの実施形態では、接触ステップは、第1の装置に取り付けられた第2の装置(例えば、第1の装置と同一構造を有する装置)内で実施されるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書において開示する例示のグラフト補充方法を示す図である。
【図2】柔軟性収集容器のブロック図である。
【図3】脂肪由来再生細胞が補充されるのが良い脂肪組織グラフトを最適化するために用いられる例示のシステムを示す図である。
【図4】システム300のポート及びアダプタを示す図である。
【図5】システム300の外側メンブレン310を示す図である。
【図6】システム300のフィルタ320を示す図である。
【図7】システム300の分離スクリーン330を示す図である。
【図8】システム300の例示のシール311を示す図である。
【図9】ポート及びアダプタ600を備えたシステム300の斜視図である。
【図10】システム300のポートに用いられる組織ポート組立体600の破断図である。
【図11】システム300のポートに用いられる組織ポート組立体600の破断図である。
【図12】組織ポート組立体600に用いられるキャップ610の破断図である。
【図13】脂肪組織グラフトを最適化するために用いられる例示のシステム800の図である。
【図14A】例示の組織濃縮装置の斜視図であり、移植のために脂肪組織を処理する第1のチャンバ及び脂肪組織にリポダイジェステート(lipo-digestate)を補充する第2のチャンバを備えたキャニスタを示す図である。
【図14B】例示の組織濃縮装置の斜視図であり、図14Aに示されたキャニスタの例示のハウジング/プラットホームを示す図である。
【図15】未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)のパーセント水含有量(v/v)の棒グラフ図である。
【図16】未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)のパーセント脂質含有量(v/v)の棒グラフ図である。
【図17】本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト内の組織1グラム中に存在する赤血球含有量に標準化された組織1グラム当たりの赤血球(RBC)の含有量を示す棒グラフ図であり、データは、未処理脂肪組織(コントロール)、重力調製法により調製された脂肪組織(重力)、遠心分離法により調製された脂肪組織(遠心分離)及び本明細書において説明する方法及びシステムに従って調製されたグラフト(ピュアグラフト)について示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において開示する実施形態は、単独であるか脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞、内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)が補充され、かかる脂肪由来再生細胞で増強され若しくは強化された脂肪組織グラフト(例えば、「脂肪グラフト」)又は脂肪組織インプラントを作製する方法及びシステムに関する。本明細書において開示する実施形態は、一部が脂肪組織グラフトの迅速な調製及び最適化のため、しかも例えば重力流によって且つ所望ならば遠心分離、高圧又は真空濾過が行われないで一集団をなす脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞から成る細胞集団)で強化又は富化されたグラフト及びインプラントの調製のために使用できる装置又はシステムの発見に基づいている。本明細書において以下に説明するように、本明細書において開示する装置を用いて調製された脂肪組織グラフトは、従来型技術を用いて調製されたグラフトと比較して、流体、血球及び遊離脂質のレベルが減少し又は油含有量が減少した。特に、本明細書において開示する装置を用いて調製された脂肪組織グラフトは、細胞の生存能力の減少及び脂肪組織グラフトの保持力の減少を招く場合のある大きな機械的力を受ける必要がない。本明細書において開示する装置を用いると、予測可能且つ安定性のある脂肪組織インプラントを得ることができる。
【0020】
本明細書において開示する実施形態は又、一部が無傷の脂肪組織フラグメント又は「未処理脂肪組織基質」を用いると、消化され又は部分的に若しくは完全に離解された脂肪組織の溶液又は懸濁液と関連して提供される脂肪由来再生細胞を現場で濾過し、結合し、それにより効果的に濃縮することができるという本出願人の発見に基づいている。幾つかの実施形態では、「乾燥させた脂肪組織」又は「脱水した脂肪組織」を用いると、リポダイジェステート(lipo-digestate)の形態で提供される脂肪由来再生細胞を現場で濾過し、結合し、それにより効果的に濃縮することができる。幾つかの実施形態では、「未処理脂肪組織基質」をリポダイジェステートの追加後に乾燥させ又は脱水することができる。したがって、幾つかの実施形態では、脂肪組織グラフト又は脂肪グラフトの増強、補充又は強化に先立って離解脂肪組織の細胞成分の濃縮はもはや不要であることが認識された。
【0021】
次に、本発明の現時点において好ましい実施形態を参照するが、かかる実施形態の実施例が添付の図面に示されている。可能である限りにおいて、同一又は類似の参照符号が同一又は類似の部分を示すために図面及び明細書において用いられている。図面は単純化された形になっており、正確な縮尺通りではないことは注目されるべきである。本明細書の開示と関連して、説明の便宜上及び分かりやすくする目的で、方向を表す用語、例えば「頂部」、「底部」、「左側」、「右側」、「上」、「下」、「〜の上側」、「〜の上方」、「〜の下側」、「〜の下方」、「後側」及び「前側」は、添付の図面に関して用いられている。かかる方向を表す用語は、本発明の範囲をなんら制限するものではないことは理解されるべきである。
【0022】
本明細書における開示は、或る特定の例示の実施形態に関するが、これら実施形態は、例示として提供されており、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。以下の詳細な説明の意図は、例示の実施形態を説明するものであるが、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲に属する実施形態の全ての改造例、変更例及び均等例を含むものであることは理解されるべきである。本発明の観点は、当該技術分野において従来用いられている種々の細胞又は組織分離技術と関連して実施でき、本発明の理解を提供するのに必要な通常実施されるプロセスステップの大部分が本明細書に含まれているに過ぎない。
【0023】
乾燥又は脱水脂肪組織
本明細書において提供される幾つかの実施形態は、自己由来移植手技、例えば自己由来移植において直接用いることができ又は移植に先立って細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、脂肪由来幹細胞等)、添加剤等で強化できる乾燥又は脱水脂肪組織グラフトを作製する方法に関する。
【0024】
「脂肪組織」という用語は、幾つかの関連性において、脂肪を蓄える結合組織を含む脂肪を意味する場合がある。脂肪組織は、結合組織基質によって結合された多くの種類の再生細胞を含み、かかる再生細胞の種類としては、脂肪由来幹細胞(“ADSC”)、内皮前駆及び先駆細胞、周皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞、リンパ内皮細胞を含むリンパ細胞等が挙げられる。幾つかの実施形態では、一単位の脂肪細胞が脂肪組織グラフトを作るために被験体から取り出される。
【0025】
「脂肪組織の単位」という表現は、単位の重量及び/又は体積を定めることによって測定可能な脂肪組織の離散量又は測定可能な量を意味している。一単位の脂肪組織は、患者から取り出した脂肪組織の量全体又は患者から取り出した脂肪組織の量全体よりも少ない量を意味する場合がある。かくして、一単位の脂肪組織を別の一単位の脂肪組織と組み合わせると、個々の単位の合計である重量又は体積を有する一単位の脂肪組織を形成することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、被験体から脂肪組織の1つ又は2つ以上の単位が取り出される。本明細書において説明する実施形態で用いられる脂肪組織は、当業者に知られている任意の方法により得ることができる。例えば、脂肪組織を患者から吸引支援脂肪形成術、超音波支援脂肪形成術、摘出脂肪組織切除術、レーザ脂肪形成術、ウォータージェット脂肪形成術等により取り出すことができる。加うるに、これら手技は、かかる手技の組み合わせ、例えば摘出脂肪組織切除術と吸引支援脂肪形成術の組み合わせを含む場合がある。好ましくは、脂肪組織は、組織及びその細胞成分の生存能力を保つと共に潜在的に感染性の有機体、例えば細菌及び/又はウイルスによる収集物質の汚染の恐れを最小限に抑える仕方で収集される。かくして、好ましい実施形態では、組織摘出は、例えば閉鎖滅菌流体/組織経路中で汚染を最小限に抑えるよう滅菌又は無菌的に実施される。幾つかの実施形態では、吸引支援脂肪形成術は、脂肪組織を患者から取り出すために用いられ、それにより、他の技術、例えば超音波支援脂肪形成術と関連する場合がある細胞又は組織の損傷の恐れを減少させた状態で組織を収集する低侵襲方法が提供される。
【0027】
吸引支援脂肪形成手技の場合、脂肪組織は、被験体中に存在する脂肪組織貯留槽中に又はその近くへのカニューレの挿入、その次の吸引装置中への脂肪の吸引によって収集される。一実施形態では、小型カニューレを注射器に結合するのが良く、そして手の力を用いて脂肪組織を吸引するのが良い。注射器又は他の類似の器具を用いると、比較的適量の脂肪組織(例えば、0.1ml〜数百ミリリットルの脂肪組織)を採取することができる。比較的小型の器具を用いた手技は、かかる手技を全身麻酔とは対照的に局所麻酔だけで実施できるという利点を有する。この範囲を超える(例えば、数百ミリリットル以上の)多量の脂肪組織では、ドナー及び収集手技を実施する人の判断による全身麻酔が必要な場合がある。多量の脂肪組織を取り出すことが望ましい場合、この手技では比較的大型のカニューレ及び自動化吸引装置を用いるのが良い。
【0028】
摘出脂肪組織切除手技としては、脂肪組織含有組織(例えば、皮膚)を摘出、例えば切除対象の組織の直接又は間接的視覚化下における外科的切離によって取り出される手技が挙げられるが、これには限定されない。或る特定の実施形態では、これは、即ち、手術の主目的が組織(例えば、肥満学的手術又は美容学的手術における皮膚)の除去である場合及び脂肪組織が主要な関心のある組織と一緒に取り出される場合、手技の付随的部分として行われる場合がある。
【0029】
本明細書において開示する方法で用いられる脂肪組織の収集量は、多くの変数で決まり、かかる変数としては、ドナーの体型指数(BMI)、接近可能な脂肪組織採取部位の利用可能性、随伴的且つ既存の投薬法及び条件(例えば、抗凝固薬療法)及び組織が収集される目的が挙げられるが、これらには限定されない。かくして、「多ければ良い」という一般的原理が他の変数によって設定される限度内に適用されると共に実施可能である場合、組織回収では可能な限り多くの組織が収集される可能性がある。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば、乾燥又は脱水脂肪組織が強化又は補充脂肪組織グラフトを作製するために用いられる実施形態では、一単位又はユニットの脂肪組織は、幾つかの部分に分割される。脂肪組織の第1の部分は、消化されず、全く処理されないか或いは本明細書において以下に説明するように乾燥又は脱水脂肪組織を得るためにすすぎ洗いされ若しくは洗浄される。未処理、乾燥又は脱水脂肪組織の第1の部分は、リポダイジェステート中に存在する脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)又は第2の部分からの脂肪由来細胞の濃縮集団が補充されるグラフト基礎部として役立ちうる。一部分を以下に説明するように処理して結合組織基質から脂肪由来再生細胞(例えば、例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を放出し又は遊離させてリポダイジェステート又は再生細胞若しくは幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を得るのが良い。幾つかの実施形態では、例えば被験体の同一若しくは異なる領域又は互いに異なる被験体から脂肪組織の2つの別々な単位を収集する。一方の単位は、リポダイジェステート又は再生細胞若しくは幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を得るよう以下に説明するように処理されるのが良く、他方の単位は、脂肪由来再生細胞(例えば、リポダイジェステート及び/又は脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)が補充された脂肪グラフトの基礎部としての役目を果たすことができる。一実施形態では、脂肪組織の単位の一方又は両方は、本発明の装置又はシステム内に低温保存又は凍結保存されるのが良く、この場合、装置のチャンバは、低温保存、低温貯蔵、解凍及びその後の本明細書において説明する使用プロセス中、機械的及び構造的健全性を保持する材料で作られる。別のかかる実施形態では、リポダイジェステート又は脂肪由来幹細胞を含む再生細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団は、本明細書において説明するようにグラフト又はインプラントの強化における使用に先立って低温保存又は凍結保存されるのが良い。
【0031】
「乾燥した脂肪組織」と関連して用いられる「乾燥」という用語は、同一の部位及び同一の被験体からの未処理脂肪組織と比較して「乾燥脂肪組織」中に存在する液体、例えば水又は他の液体(例えば、腫脹流体)の含有量(例えば、乾燥させた脂肪組織と同一の部位及び同一の被験体から採取した脂肪組織の等価単位(w/w))が少ない脂肪組織の一単位を意味している。「脱水した脂肪組織」と関連して用いられる「脱水」という用語は、同一の部位及び同一の被験体からの未処理脂肪組織と比較して「脱水脂肪組織」中に存在する液体、例えば水又は他の液体(例えば、腫脹流体)の含有量(例えば、脱水した脂肪組織と同一の部位及び同一の被験体から採取した脂肪組織の等価単位(w/w))が少ない脂肪組織の一単位を意味している。
【0032】
本明細書で用いられる「等価単位」という用語は、被験体から得た脂肪組織の等価体積又は重量を意味する場合がある。例えば、等価単位は、被験体から得た脂肪組織の等価体積(又は重量)を意味する場合がある。幾つかの実施形態では、等価単位は、同一の部位(例えば、臀部、腹、大腿、背等)及び同一又は異なる被験体から得た等価体積(又は重量)を意味する場合がある。
【0033】
「未処理脂肪組織」という用語は、部分的又は完全に離解されなかった、即ち、組織に機械的に及び/又は酵素的離解を施すことによっては離解されなかった脂肪組織を意味している。したがって、未処理脂肪組織は、脂肪由来再生細胞に結合された結合組織を含む無傷の組織フラグメントを含む。本明細書で用いられる「脂肪由来再生細胞」という用語は、器官、組織又は生理学的ユニット又はシステムの構造又は機能の完全若しくは部分再生、回復又は置換を生じさせ又はこれに寄与し、それにより治療上、構造上又は美容上の利点をもたらす脂肪組織から得られた任意の細胞を意味している。再生細胞の例としては、脂肪由来幹細胞(“ADSC”)、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、脂肪前駆細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞(及びこれらの子孫)及びリンパ球が挙げられる。
【0034】
幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%(又はこの範囲に含まれる任意のパーセント)の液体含有量(体積及び/又は重量で測定されている)を有する。例えば、乾燥脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位よりもその約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上(又はこの範囲に含まれる任意の倍数以上)少ない液体含有量を有するのが良い。同様に、「脱水脂肪組織」と関連して用いられる「脱水」という用語は、未処理脂肪組織又は未処理脂肪組織の等価単位と比較して、「脱水脂肪組織」中に存在する水の少ない含有量を意味している。幾つかの実施形態では、脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位又は遠心分離若しくは別の従来方式により調製された脂肪組織の等価単位の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%又は95%以上(又はこの範囲に含まれる任意のパーセント)の水含有量を有するのが良い。例えば、乾燥脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位よりもその約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上(又はこの範囲に含まれる任意の倍数以上)少ない液体含有量を有するのが良い。
【0035】
幾つかの実施形態では、本明細書において説明する「乾燥」又は「脱水」脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位と比較して少ない含有量又は割合の脂質及び/又は赤血球若しくは白血球を含むのが良い。幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の白血球を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の白血球の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0036】
幾つかの実施形態では、本明細書において提供される乾燥又は脱水脂肪組織は、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の赤血球を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の赤血球の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0037】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示される乾燥又は脱水脂肪組織グラフトは、未処理脂肪組織の等価単位及び/又は例えば切除した組織を固定角度遠心分離機内で高速回転させる遠心分離法又は別の従来型調製技術を用いて処理された脂肪組織の等価単位中に約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%又は99%以下(又はこの範囲に含まれる任意%以下)の脂質を含むのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、脂肪組織の等価単位中の脂質の約75%以下、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満以下又はこの範囲に含まれる任意%以下を含むのが良い。
【0038】
幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、以下に詳細に説明するようにフィルタ及びセパレータを含む装置に未処理脂肪組織を提供することによって得られる。フィルタは、装置を2つの内部チャンバに分割するのが良く、それにより第1のチャンバ又はサブシステム及び第2のチャンバ又はサブシステムが構成される。脂肪組織は、装置の第1のチャンバ又はサブシステム中に導入され、好ましくは、この脂肪組織は、装置の第2のチャンバ内には入らない。フィルタは、液体、例えば水、腫脹流体、洗浄溶液(例えば、乳酸加リンゲル液、生理的食塩水、PLASMALYTE(登録商標)等)、遊離脂質、油、血球、脂肪組織及び血液成分からの溶解細胞の第2のチャンバ内への自由流れを可能にする複数個の細孔を有するが、孔径は、これが非離解脂肪組織及び組織フラグメントを第1のチャンバ内に保持するようなものである。第2のチャンバは、以下に詳細に説明するように脂質吸い上げ及び/又は流体吸い上げ性の材料で作られたセパレータ(例えば、流体を第1のチャンバから引き出す網目構造設計)を有するのが良い。好ましい実施形態では、セパレータは、多孔質材料で作られ、セパレータの細孔は、フィルタの細孔よりも大きい。
【0039】
第1のチャンバ内の未処理脂肪組織は、生理学的洗浄溶液ですすぎ洗いされ又は洗浄される。好ましい実施形態では、生理学的洗浄溶液は、装置中に無菌的に導入される。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第1のチャンバ内に導入される。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第2のチャンバ内に導入され、この洗浄溶液は、フィルタを通って第2のチャンバ内に流入し、それによりこの中に入っている脂肪組織に接触する。幾つかの実施形態では、洗浄溶液は、第1のチャンバと第2のチャンバの両方内に導入される。
【0040】
幾つかの実施形態では、脂肪組織及び洗浄溶液は、第1のチャンバ内の脂肪組織からの遊離脂質、赤血球及び白血球並びに腫脹流体のすすぎ洗い及び分離を容易にするために撹拌される(例えば、逆さにすることにより、絞り出すことにより又は装置を穏やかに振盪することによって)。他の実施形態では、第1のチャンバ内の脂肪組織を洗浄溶液に接触させ、洗浄溶液は、撹拌なしで、例えば重力又は吸い上げ力によって装置の第1のチャンバから出て行き又は吸い出される。
【0041】
幾つかの実施形態では、脂肪組織をすすぎ洗いするのに用いられる洗浄溶液の量は、脂肪組織の量よりも大きいのが良い。一例を挙げるに過ぎないが、幾つかの実施形態では、約1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml、500ml、550ml、600ml、650ml、700ml、750ml、800ml、850ml、900ml、950ml、1000ml、1100ml、1500ml、2000ml以上又はこれらの量の範囲に含まれる任意の量の洗浄溶液を用いて未処理脂肪組織をすすぎ洗いするのが良い。
【0042】
洗浄又はすすぎ洗いステップ中、液体、例えば洗浄溶液、遊離脂質、油、血球、脂肪組織及び血液成分からの溶解細胞等は、装置の第1のチャンバと第2のチャンバとの間でフィルタの細孔を通過する。したがって、第2のチャンバは、液体で満たされるようになる。第2のチャンバ内のセパレータは、例えばウィックとして作用して流体を第1のチャンバから引き出してこれを第2のチャンバ内に保持するよう機能することができる。脂肪組織を収容した第1のチャンバからの水、腫脹流体、血液及び遊離脂質の運動により、脂肪組織が乾燥すると共に脱水される。流体は、ポートを通って第2のチャンバから除去される。幾つかの実施形態では、流体は、ポンプ又は真空を利用して第2のチャンバから除去される。幾つかの実施形態では、流体は、ポートを通って第2のチャンバから流出する。
【0043】
図2〜図13を参照して乾燥又は脱水脂肪組織並びに補充又は強化された脂肪組織グラフトを作製する例示の装置について以下に詳細に説明する。
【0044】
幾つかの実施形態では、洗浄溶液を追加するステップ及び内容物を第2のチャンバから取り出すステップは、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上繰り返される。
【0045】
乾燥又は脱水脂肪組織を第1のチャンバから取り出して(好ましくは、無菌的に)、被験体に直接投与するのが良い。幾つかの実施形態では、乾燥又は脱水脂肪組織は、被験体への投与に先立って、更に処理される(例えば、以下に詳細に説明するように添加剤の追加によって)。
【0046】
補充脂肪組織グラフト
本明細書において、補充され、増強され又は強化された脂肪組織グラフトを作製する方法及びシステムが開示され、例えば、この場合、グラフトは、未処理脂肪組織又は乾燥若しくは脱水脂肪組織である。例えば、本明細書において説明する幾つかの方法では、強化又は補充脂肪組織グラフトに追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞が補充され、例えば、リポダイジェステート又は再生細胞又は幹細胞から成る濃縮脂肪由来細胞集団が補充される。好ましくは、追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞は、同一の被験体から得られる。幾つかの実施形態では、追加の脂肪由来再生細胞又は脂肪由来幹細胞を別の被験体から得ることができる。
【0047】
本明細書において説明する方法のうちの幾つかにより、例えば、消化された脂肪吸引液(「リポダイジェステート(lipo-digestate)」)を未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質に直接塗布し、そして未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質をリポダイジェステート中に存在する成分(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を保持するフィルタ又は篩として用いる。この方法により、やっかいであると共に時間がかかる場合があり、しかも細胞の生存能力に悪影響を及ぼす場合のある追加の精製又は単離ステップなしで、脂肪由来幹細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)で富化され、これが補充され又はこれで強化された脂肪組織グラフト、インプラント又は脂肪グラフトを迅速に調製することができる。本明細書において説明する方法のうちの幾つかにより、例えば、再生細胞又は幹細胞から成る脂肪由来細胞の濃縮集団を未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質に直接塗布し、そして未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織又は未処理脂肪組織基質をリポダイジェステート中に存在する成分(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)を保持するフィルタ又は篩として用いる。
【0048】
脂肪由来再生細胞を単離し、精製し、そして濃縮する既存の手法とは対照的に、本明細書において開示する幾つかの方法は、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織又は脱水脂肪組織の無傷の基質を用いて現場で、即ち、基質それ自体上で脂肪由来再生細胞を穏やかに濾過して濃縮し、そしてそのようにすることによって遠心分離、メンブレン、ゲル又はリポダイジェステートのグラジエント、濾過及び他の機械的操作により生じる細胞の損傷を回避する。加うるに、本明細書において説明する手法は、脂肪組織グラフト全体にわたる外因性脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来再生細胞、例えば脂肪由来幹細胞及び/又は内皮細胞及び/又は前駆細胞から成る細胞集団)の一様な又は実質的に完全な分布を促進する。
【0049】
本明細書において用いられる「再生細胞組成物」又は「リポダイジェステート」という表現は、組織、例えば、脂肪組織を洗浄し、少なくとも部分的に離解させた後の所与の量の液体中に一般的に存在する細胞の成分を意味している。例えば、幾つかの実施形態では、再生細胞組成物又はリポダイジェステートは、脂肪由来再生細胞、例えば幹細胞から成る脂肪由来細胞の集団を含む細胞溶液から成るのが良い。幾つかの実施形態では、再生細胞組成物は、多種多様な再生細胞を含むのが良く、かかる再生細胞としては、ADSC、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、脂肪前駆細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、角化細胞、単能性及び多能性前駆及び先駆細胞(及びこれらの子孫)及びリンパ球が挙げられる。幾つかの実施形態では、再生細胞組成物は、たった1種類、2種類だけ、3種類だけ、4種類だけ又は5種類以上の再生細胞を含む。再生細胞組成物及びリポダイジェステートは、幾つかの実施形態では、組織フラグメント中に存在する場合のある1種類又は2種類以上の汚染要因物、例えばコラーゲンを更に含む場合がある。幾つかの実施形態では、リポダイジェステート又は再生細胞溶液には、実質的に無傷の脂肪細胞フラグメントがない。
【0050】
本明細書で用いられる「幹細胞」という用語は、1つ又は2つ以上の特定の機能を実行すると共に自己複製能力を有する種々の他の形式の細胞に分化する可能性を備えた多能性再生細胞を意味している。本明細書において開示する幹細胞の中には、多能性を有するものがある。
【0051】
本明細書において用いられる「前駆細胞」という用語は、2種類以上の細胞に分化する可能性を持つ多能性再生細胞を有している。本明細書で用いられる「前駆細胞」という用語は又、1つ又は2つ以上の特定の機能を実行すると共に自己複製が制限され又は自己複製能力を備えていない唯一の種類の細胞に分化する可能性を持つ単能性再生細胞をも意味する。特に、本明細書で用いられる「内皮前駆細胞」という用語は、血管内皮細胞に分化する可能性を持つ多能性又は単能性細胞を意味している。
【0052】
本明細書で用いられる「先駆細胞」という用語は、1種類の細胞に分化する可能性を持つ単能性再生細胞を意味している。先駆細胞及びこれらの子孫、例えばリンパ球及び内皮細胞は、適当な条件下で増幅することができる広汎増殖能力を保持することができる。
【0053】
本明細書で用いられる「幹細胞数」又は「幹細胞頻度」という表現は、脂肪由来細胞(ADC)を低細胞密度(<10,000細胞/ウェル)で平板培養すると共にMSC成長を支える生育発育培地(例えば、10%牛胎児血清、5%馬血清及び抗生物質/抗真菌剤を補充したDMEM/F12培地)中で成長させるコロニー形成アッセイにおいて観察されるコロニーの数を意味している。細胞を2週間成長させるのが良く、その後培養物をヘマトキシリンで染色するのが良い。50個以上の細胞のコロニーをCFU‐Fとして計数する。幹細胞頻度は、平板培養された100個の有核細胞当たりに換算されるCFU‐Fの数として計算される(例えば、1,000個の有核ADC細胞で開始された平板において計数される10個のコロニーは、1.5%の幹細胞頻度を与える)。幹細胞数は、幹細胞頻度に得られた有核ADC細胞の全数を乗算して得られた数として計算される。ADC細胞から成長したCFU‐Fの高い割合(〜100%)は、細胞表面分子CD105を表し、この細胞表面分子CD105は又、骨髄由来幹細胞によって表される(ベリー等(Barry et al.)1999)。また、CD105は、脂肪細胞由来幹細胞によって表される(ズック等(Zuk et al.)2002)。幾つかの実施形態では、脂肪細胞を本明細書において説明する方法に従って処理してリポダイジェステート及び/又は脂肪由来細胞の濃縮集団を得ることができ、この場合、細胞のうちの少なくとも0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、幹細胞又はリポダイジェステート若しくは濃縮脂肪由来細胞集団の他の種類の再生細胞である。
【0054】
好ましくは、脂肪組織は、外部環境との接触を回避すると共に環境からの汚染の恐れをなくすためにリポダイジェステート又は再生細胞溶液を閉鎖された流体/組織経路を備えた滅菌閉鎖系中で作製するよう処理される。脂肪組織を処理してリポダイジェステートを作製するのに有用な装置が当該技術分野において知られている。好ましい実施形態では、脂肪細胞は、例えば幾つかの実施形態では、米国特許第7,390,484号明細書に記載された装置を用いた完全閉鎖系を維持しながらリポダイジェステートを作製するよう処理される。なお、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。幾つかの好ましい実施形態では、脂肪組織処理手技では、遠心分離、篩若しくは水ひ又は再生細胞組成物/リポダイジェステート中の再生細胞の生存能力を低下させる又はその可能性を有する脂肪由来再生細胞から成る細胞集団を濃縮する任意他の機械的手法が行われない。
【0055】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを得る方法は、リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞集団を作製するために用いられる脂肪組織の一部分又は単位からの成熟した脂肪含有脂肪細胞成分の組織の除去又は減少を含む。幾つかの実施形態では、脂肪組織は、一連の洗浄及び離解ステップを受け、この場合、組織をまず最初にすすぎ洗いして遊離脂質(壊れた脂肪組織から放出される)及び末梢血要素(組織採取中に切断された血管から放出される)の存在量を減少させる。例えば、幾つかの実施形態では、脂肪組織を等張生理的食塩水、例えばリン酸緩衝生理的食塩水又は他の生理学的溶液(例えば、バクスター・インコーポレイテッド(Baxter Inc.)製のPLASMALYTE(登録商標)、アブトラブズ(Abbott Labs)社製のNORMOSO(登録商標)又は乳酸加リンゲル液)と混合する。次に、洗浄した組織を離解させて無傷の脂肪細胞及び他の細胞集団を結合組織基質から遊離させるのが良い。或る特定の実施形態では、脂肪組織成分全体又は非再生細胞成分を脂肪組織の再生細胞成分から分離する。他の実施形態では、脂肪組織成分のうちの一部分のみ又は幾つかの部分を再生細胞から分離する。無傷の脂肪細胞フラグメントを幾つかの手法により遊離脂質及び細胞から分離するのが良く、かかる手法としては、濾過、デカンテーション又は沈降等が挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、消化された組織には遠心分離又は水ひを施さない。
【0056】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを生じさせるために用いられる脂肪組織を完全に離解させ、他の実施形態では、脂肪組織を部分的にしか離解させない。例えば未処理又は洗浄脂肪組織からの無傷の脂肪組織フラグメントは、任意の従来技術又は方法を用いて離解可能であり、かかる技術又は方法としては、機械的力(刻み又は剪断力)、米国特許第5,952,215号明細書に開示されているような単一又は組み合わせによるタンパク分解酵素、例えばコラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、リベラーゼHI及びペプシン又は機械的方法と酵素による方法の組み合わせが挙げられる。脂肪組織を離解させるために使用可能なコラゲナーゼを用いる追加の方法は、米国特許第5,830,714号明細書及び同第5,952,215号明細書に開示されると共にウィリアムズ,エス・ケー,エス・マッケニー,他(Williams, S.K., S. Mckenney, et al.),「コラゲナーゼ・ロット・セレクション・アンド・ピュリフィケーション・フォア・アディポーズ・ティシュー・ダイジェスチョン(Collagenase lot selection and purification for adipose tissue digestion)」,セル・トランスプラント(Cell Transplant),1995年,4(3),p.281‐9によって開示されている。幾つかの実施形態では、中性プロテアーゼを用いると、トゥエンティーマン,ピー・アール,ジェー・エム・ユハス(Twentyman, P. R. and J. M. Yuhas),「ユース・オブ・バクテリアル・ニュートラル・プロテアーゼ・フォア・ディスアグリゲーション・オブ・マウス・テューマー・アンド・マルチセルラー・テューマー・スフィロイズ(Use of bacterial neutral protease for disaggregation of mouse tumours and multicellular tumor spheroids.)」,キャンサー・レット(Cancer lett),1980年,9(3),p.225‐8に開示されているように、コラゲナーゼに代えて又はこれに加えて組織を離解させることができる。幾つかの実施形態では、脂肪組織をラッセル,エス・ダブリュー,ダブリュー・エフ・ドー,他(Russell, S. W., W. F. Doe, et al.),「インフラマトリー・セルズ・イン・ソリッド・ミューライン・ネオプラズム.テューマー・ディスアグリゲーション・アンド・アイデンティフィケイション・オブ・コンスティテューエント・インフラマトリー・セルズ(Inflammatory cells in solid murine neoplasms. Tumor disaggregation and identification of constituent inflammatory cells.)」,インターナショナル・ジャーナル・キャンサー(Int J Cancer),1976年,18(3),p.322‐30に開示されているように酵素の組み合わせ、例えばコラゲナーゼとトリプシンの組み合わせにより離解させる。幾つかの実施形態では、脂肪組織をエンゲルホルム,エス・エー,エム・スパング‐トムスン,他(Engelholm, S. A., M. Spang-Thomsen, et al.),「ディスアグリゲーション・オブ・ヒューマン・ソリッド・テューマーズ・バイ・コンバインド・メカニカル・アンド・エンジマティック・メソッズ(Disaggregation of human solid tumours by combined mechanical and enzymatic methods.)」,ビーアール・ジャーナル・キャンサー(Br J Cancer),1985年,51(1),p.93‐8に開示されているように、酵素、例えばトリプシンと機械的解離の組み合わせを用いて離解させることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分を完全に離解させて脂肪由来再生細胞(例えば、脂肪由来幹細胞)を成熟した脂肪細胞及び結合組織から分離する。幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分を部分的にしか離解させない。例えば、部分離解は、酵素が脂肪組織の一部分を完全に離解させるよう脂肪組織上に残っている時間の長さに対して脂肪組織の少なくとも一部分から早期に取り出された1つ又は2つ以上の酵素により実施するのが良い。かかる方法は、必要な処理時間が少なくてすむ。
【0058】
幾つかの実施形態では、脂肪組織の一部分又は一単位を滅菌緩衝等張生理的食塩水で洗浄し、そして適度の離解をもたらすのに十分なコラゲナーゼ濃度、温度及び時間をかけてコラゲナーゼで培養する。好ましくは、離解に用いられる酵素は、関連の当局(例えば、米国食品医薬品局)によりヒトへの使用について認可されており、微生物や汚染要因物、例えば菌体内毒素がない。適当なコラゲナーゼ製剤としては、組替え型コラゲナーゼ及び非組換え型コラゲナーゼが挙げられる。非組換え型コラゲナーゼは、インディアナポリス所在のエフ・ホフマン‐ラ・ロッシェ・リミテッド(F. Hoffmann-La Roche Ltd)及び/又はニューヨーク州リンブルック所在のアドバンス・バイオファクターズ・コーポレーション(Advance Biofactures Corp.)から得ることができる。また、組換え型コラゲナーゼは、米国特許第6,475,764号明細書に開示されているように得ることができる。
【0059】
一例を挙げて説明すると、幾つかの実施形態では、脂肪組織を約0.5μg/mlから約100μg/ml、例えば10μg/mlから約50μg/mlのコラゲナーゼを含むコラゲナーゼ溶液で処理し、約20分から約60分かけて約30℃から約38℃の温度で培養する。これらパラメータは、このシステムが所望の細胞集団を適当な時間フレームで抽出するのに有効であることを実証するために、実験研究によって最適化されたコラゲナーゼ酵素の源に従って様々であろう。例えば、幾つかの実施形態では、組織は、コラゲナーゼを含む溶液により10〜15分間、約37℃で培養される。
【0060】
離解に続き、リポダイジェステートを洗浄/すすぎ洗いして添加物及び/又は離解プロセスの副生物、例えばコラゲナーゼ及び/又は他の酵素離解剤並びに新たに放出される遊離脂質を除去するのが良い。
【0061】
幾つかの実施形態では、リポダイジェステートをリポダイジェステートが未処理、乾燥又は脱水脂肪組織に浸透することができる条件下で未処理、乾燥又は脱水脂肪組織の一部分に塗布するのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織又は脱水脂肪組織の一部分上に(又はその下に)再懸濁し、層状化するのが良く、そしてリポダイジェステートを重力の使用により未処理脂肪組織(又は乾燥若しくは脱水脂肪組織)に通して濾過する。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを例えば蠕動ポンプ、真空等の使用により未処理脂肪組織を通ってポンプ送りする。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを未処理脂肪組織に追加して混合物を作り、この混合物を機械的又は手動で撹拌し又は振盪する。リポダイジェステートを未処理脂肪組織に通して濾過し又はこれと混合させると、脂肪由来再生細胞は、結合組織基質によって結合状態になることができ、生理的食塩水及び他の流体は、組織を通って流れ、それにより脂肪由来再生細胞(例えば、幹細胞を含む脂肪由来再生細胞)が補充され又はこれで増強された脂肪グラフト又はインプラントを作製する。幾つかの実施形態では、流通物、例えば生理的食塩水、成熟脂肪細胞、赤血球等を廃棄物容器に移す。補充脂肪組織グラフトを作るためのシステム及び装置について以下に詳細に説明し、この方法の一実施形態が図1に概略的に示されている。
【0062】
図1は、補充脂肪組織グラフトを調製する例示の道筋の略図である。第1ステップでは、一単位の脂肪組織を閉鎖/滅菌容器(例えば、本明細書のどこか他の場所で説明するように押し潰し可能な柔軟性の袋又は硬質の容器)内に入口を介して入れる。脂肪組織をすすぎ洗い/洗浄すると共に本明細書において説明するように閉鎖系を維持した状態で容器内で消化する。図1に示されている実施形態では、第1の容器は、入口及び出口を有する。図1に示されている第1の容器は、単一の入口及び単一の出口を示しているが、当業者であれば理解されるように、本明細書において説明する装置は、多数個の、即ち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の入口及び出口を有することができる。好ましくは、入口及び出口は、第1の容器内への内容物(例えば、組織、添加剤、溶液等)の無菌追加及び/又は取り出しを可能にするよう構成されている。
【0063】
図1に開示されている実施形態では、第2の単位をなす脂肪組織又は第1の単位の脂肪組織の一部分を第2の容器(例えば、本明細書のどこか別の場所で説明するように押し潰し可能な柔軟性の袋又は硬質容器)内に入れる。図1に示された実施形態では、第2の容器は、1つ又は複数個の入口及び1つ又は複数個の出口を有する。第2の容器の入口は、好ましくは閉鎖滅菌流体経路を維持した状態で容器内への内容物(例えば、リポダイジェステート又は脂肪由来細胞の濃縮集団)の追加を可能にするよう構成されている。出口は、第2の容器からの内容物、例えば過剰洗浄溶液、遊離脂質、血液等の取り出しを可能にするよう構成されている。
【0064】
図1に示されている実施形態では、消化に続き、リポダイジェステート及び非離解脂肪組織フラグメント並びに遊離脂質は、第1の容器内に互いに異なる層を形成する。リポダイジェステート層は、閉鎖容器の出口を通って出て(例えば、図1に示されているようにポンプ又は真空を介して)、例えば閉鎖系を維持する導管を通って、未処理又は洗浄済み、乾燥又は脱水脂肪組織の入っている別個の容器内に入るようになる。第1の容器からのリポダイジェステートをリポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞集団中の分離された脂肪由来再生細胞が脂肪組織中に浸透することができるようにする条件下で未処理、乾燥又は脱水脂肪組織と混合させる。図1では、未処理又は乾燥脂肪組織を通って再生細胞をポンプ送りして補充脂肪組織グラフトを作る。
【0065】
幾つかの実施形態では、過剰リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞溶液を、第2の容器中に無菌ループを設けることにより第2の容器内の未処理、乾燥又は脱水脂肪組織を通って再循環させ、過剰再生細胞溶液又はリポダイジェステートは、流出ポート(出口)を通って出て、脂肪組織を収容している容器に設けられている流入ポート(入口)に通る導管中に入る。
【0066】
理解されるように、本明細書において説明する強化又は補充脂肪組織グラフトを作製する際、リポダイジェステート又は濃縮脂肪由来細胞溶液を作製すると共に脂肪由来再生細胞又はリポダイジェステートが補充された脂肪組織グラフト用のベース又は基礎部として役立つよう用いられる脂肪組織の種々の単位又は部分の量は、互いに等しくても良く、或いは異なっていても良い。例えば、リポダイジェステートを作製するために用いられる脂肪組織の量は、脂肪組織の別の単位の量よりも少なくとも約10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、110%以上、120%以上、130%以上、140%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、200%以上、210%以上、220%以上、230%以上、240%以上、250%以上、260%以上、270%以上、280%以上、290%以上、300%以上、或いはこの範囲に含まれる任意の数値であるのが良い。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートを作製するために用いられる脂肪組織の量は、脂肪組織の別の単位の量よりも少なくとも約10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、110%以上、120%以上、130%以上、140%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、200%以上、210%以上、220%以上、230%以上、240%以上、250%以上、260%以上、270%以上、280%以上、290%以上、300%以上又はこの範囲に含まれる任意の数値だけ少ないのが良い。幾つかの実施形態では、リポダイジェステートとグラフト組織の比は、約0.25:1、0.5:1、0.75:1、1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1又は2:1或いはこの範囲に含まれる任意の数値である。好ましくは、リポダイジェステートとグラフト組織の比は、約1:1よりも小さく、例えば0.5:1又は0.25:1である。
【0067】
幾つかの実施形態では、処理された脂肪組織(例えば、消化された脂肪吸引液又は再生細胞溶液)の一部分及び/又は未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織の一部分及び/又は本明細書において説明した脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを添加剤、例えば他の細胞、組織、組織フラグメント、脱ミネラル骨又は因子若しくは作用剤、例えば脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解させる添加剤との組み合わせ、これらによる強化、これらによる補充、増強又はこれらとの混合を行うのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、処理済み脂肪組織の一部分及び/又は未処理脂肪組織(又は乾燥若しくは脱水脂肪組織)の一部分及び/又は本明細書において説明した脂肪由来再生細胞が補充された脂肪組織グラフトを成長因子添加剤、例えばインスリン若しくは薬剤、例えばチアグリタゾン(thiaglitazone )族の構成要素、抗生物質、生物学的活性又は不活性配合物、例えば凝固酵素、細胞再凝集抑制剤、再吸収プラスチック支承構造又は集団の送達具合、効能、許容性又は機能を促進するようになった他の添加剤との組み合わせ、これらによる補充又はこれらとの混合を行うのが良い。
【0068】
或る特定の実施形態では、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は補充脂肪組織グラフトに1つ又は2つ以上の細胞分化剤添加剤、例えばサイトカイン及び成長因子を補充するのが良い。幾つかの実施形態では、脂肪組織グラフトを受け入れた被験体に1種類又は2種類以上の細胞分化剤、例えばサイトカイン及び成長因子が別個に、即ち、別の配合状態で、脂肪組織グラフトから与えられる。例えば、幾つかの実施形態では、組成物には血管原性剤又は因子が補充される。幾つかの実施形態では、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は本明細書において説明した補充脂肪組織グラフトには添加剤として血管原性因子が与えられる。本明細書において用いられる「血管原性」という用語は、新たな血管が既存の血管系及び組織から生じるプロセスを意味している(フォークマン(Folkman),1995)。本明細書で用いられる「血管原性因子」又は「血管原性タンパク」という用語は、既存の血管系からの新たな血管の成長(「血管新生」)を促進することができる任意公知のタンパク、ペプチド又は他の作用剤を意味している。本発明において用いられる適当な血管原性因子としては、プラセンタ・グロース・ファクタ(Placenta Growth Factor)(ラタン等(Luttun et al.),2002)、マクロファージ・コロニー・スティムレーティング・ファクタ(Macrophage Colony Stimulating Factor)(アハリネジャド等(Aharinejad et al.),1995)、グラニュロサイト・マクロファージ・コロニー・スティムレーティング・ファクタ(Granulocyte Macrophage Colony Stimulating Factor)(ブッシュマン(Buschmann et al.)、2003)、バスキュラー・エンドシリアル・グロース・ファクタ(Vascular Endothelial Growth Factor)(VEGF)‐A,VEGF‐A,VEGF‐B,VEGF‐C,VEGF‐D,VEGF‐E(ミンツ等(Mints et al.)2002)、ニューロピリン(neuropilin)(ワン等(Wang et al.)2003)、フィブロブラスト・グロース・ファクタ(fibroblast growth factor)(FGF)‐1,FGF‐2(bFGF),FGF‐3,FGF‐4,FGF‐5,FGF‐6(ボタ等(Botta et al.),2000)、アンジェオポイエティン1,アンジェオポイエティン2(Angiopoietin 1, Angiopoietin 2)(サンドバーグ等(Sundberg et al.)2002)、エリトロポイエチン(erythropoietin)(リバティ等(Ribatti et al.)2003)、ビー・エム・ピー‐2,ビー・エム・ピー‐4,ビー・エム・ピー‐7(BMP-2, BMP-4, BMP-7)(カラノ,フィルバロフ(Carano and Filvaroff),2003)、ティー・ジー・エフ‐ベータ(TGF-beta)(ション等(Xiong et al.),2002)、アイ・ジー・エフ‐1(IGF-1)(シゲマツ等(Shigematsu et al.),1999)、オステオポンチン(Osteopontin)(アソウ等(Asou et al.),2001)、プレイオトロピン(Pleiotropin)(ビーケン等(Beecken et al.),2000)、アクチビン(Activin)(ラモイル等(Lamouille et al.),2002)、エンドセリン‐1(Endothelin-1)(バグナト,スピネラ(Bagnato and Spinella),2003)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。血管原性因子は、別個独立に又は互いに組み合わせ状態で働くことができる。血管原性因子は、組み合わせ状態では、相乗的に作用することが可能であり、それにより、これら因子の組み合わせ効果は、別々に採用された個々の因子の効果の合計よりも高い。「血管原性因子」又は「血管原性タンパク」という用語は、かかる因子の機能的類似体をも含む。機能的類似体としては、例えば、これら因子の機能部分が挙げられる。機能的類似体は、因子の受容体に結合し、かくして血管新生を促進する際の因子の活動に似た抗イディオタイプ抗体をも含む。かかる抗イディオタイプ抗体を生じさせる方法は、当該技術分野において周知であると共に例えば国際公開第97/23510号パンフレットに記載されており、この国際公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0069】
本明細書において開示する実施形態で有用な血管原性因子を任意適当な源から生じさせ又は得ることができる。例えば、これら因子は、これらの元々の源から精製可能であり又は合成的に若しくは組換え発現により作製できる。因子を被験体にタンパク組成物として因子をエンコードし又は本明細書において開示する組成物と混合された発現プラスミドの形態で投与できる。適当な発現プラスミドの構成は、周知である。発現プラスミドを構成するのに適したベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、RNAベクター、リポソーム、陽イオン性脂質、レンチウイルスベクター及びトランスポゾンが挙げられる。
【0070】
幾つかの実施形態では又、処理済み脂肪組織、例えばリポダイジェステート又は再生細胞溶液の細胞、未処理脂肪組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織の細胞又は本明細書において説明した補充脂肪組織グラフトの細胞を、美容的、構造的又は治療的目的の派生目的のため,組成物の機能を変化させ、促進し又は補充する仕方でDNAの挿入又は細胞培地内への配置によって改質することができる。例えば、幹細胞のための遺伝子導入技術は、モスカ,ジェー・ディー,ジェー・ケー・ヘンドリクス等(Mosca, J. D., J. K. Hendricks, et al.)「メセンキマル・ステム・セルズ・アズ・ベヒクルズ・フォア・ジーン・デリバリ(Mesenchymal stem cells as vehicles for gene delivery)」,クリン・オーソプ379増刊(Clin Orthop (379 Suppl)),2000年,S71‐91において開示されているように当業者には知られており、かかる遺伝子導入技術としては、ウイルストランスフェクション技術及び具体的にはウォルター,ダブリュー・アンド・ユー・ステイン(Walther, W. and U.Stein),「ヴィラル・ベクターズ・フォア・ジーン・トランスファー: ア・レビュー・オブ・ゼア・ユース・イン・ザ・トリートメント・オブ・ヒューマン・ディジーズ(Viral vectors for gene transfer: a review of their use in the treatment of human diseases)」,ドラッグス(Drugs),2000年,60(2),p.249‐71及びアサナソポウラス、ティー,エス・ファブ他(Athanasopoulos, T., S. Fabb, et al.)「ジーン・セラピー・ベクターズ・ベイスト・オン・アデノ‐アソシエイテッド・ウイルス: キャラクタリスティックス・アンド・アプリケーションズ・トゥ・アクワイヤード・アンド・インヘリテッド・ディジーズ(レビュー)(Gene therapy vectors based on adeno-associated virus: Characteristics and applications to acquired and inherited diseases (review))インターナショナル・ジャーナル・モレキュラー・メディスン(Int J Mol Med),2000年,6(4),p.363‐75に開示されているようにアデノ関連ウイルス遺伝子導入技術が挙げられる。非ウイルス利用技術は又、ムラマツ,ティ−,エー・ナカムラ他(Muramatsu, T., A. Nkamura, et al.)「イン・ビボ・エレクトロポレイション:ア・パワフル・アンド・コンビニエント・メーンズ・オブ・ノンバイラル・ジーン・トランスファー・トゥ・ティシュー・オブ・リビング・アニマルズ・レビュー(In vivo electroporation: a powerful and convenient means of nonviral gene transfer to tissues of living animals (Review)),インターナショナル・ジャーナル・モレキュラー・メディスン(Int J Mol Med),1998年,1(1),p.55‐62に開示されているように実施可能である。好ましい実施形態では、処理済み組織の細胞は、培養されない。好ましくは、処理済み組織の細胞は、これらの使用まで、例えば、これらが送達器具に装填され、未処理、乾燥又は脱水脂肪組織と組み合わされ、或いは被験者中に直接送り込まれるまで、閉鎖滅菌システム内に維持される。
【0071】
脂肪組織グラフトが細胞及び/又は組織を得た患者以外の患者に投与される実施形態では、1種類又は2種類以上の免疫抑制剤添加剤を、グラフトを受け入れた患者に投与して移植片の拒絶を減少させ、好ましくは阻止するのが良い。本明細書において開示する方法に適した免疫抑制剤の例としては、T細胞/B細胞同時刺激経路を抑制する作用剤、例えば米国特許出願公開第2002/0182211号明細書に開示されているようにCTLA4及びB7経路を介するT細胞とB細胞の結合を妨害する作用剤が挙げられる。他の例としては、シクロスポリン、ミオフェニレートモフェチル、ラパミチン及び抗胸腺細胞グロブリンが挙げられる。
【0072】
本明細書において開示する方法により作製された補充脂肪組織グラフトを被験体に直接投与することができる。本明細書において用いられる「投与」、「導入」、「送達又は送り出し」、「配置」及び「移植」という用語は、本明細書においては区別なく用いられ、これら用語は、結果的に所望部位への移植片又は脂肪グラフトの少なくとも部分的局所化をもたらす方法又はやり方による被験体への本明細書において開示された組成物、例えば補充脂肪グラフトの配置を意味している。幾つかの実施形態では、補充脂肪組織グラフト(例えば、脂肪グラフト補充脂肪由来再生細胞)をシステムから取り出されることなく又は投与に先立ってこれが生じたシステム又は装置の外部環境への暴露なしで被験体に投与することができる。閉鎖系を提供することにより、被験者に投与されるべき物質の汚染の恐れが減少する。かくして、脂肪組織を処理し、補充脂肪組織グラフトを生じさせる一方で、閉鎖系を維持することにより、活性細胞集団が滅菌状態である可能性が多分にあるので、既存の方法と比較して利点が得られる。かかる実施形態では、リポダイジェステート又は補充脂肪組織グラフトが外部環境にさらされ又はシステムから取り出される唯一の時期は、細胞又は補充グラフトが塗布器具内に吸い込まれて患者に投与されている時期である。一実施形態では、塗布器具は、閉鎖系の一部であっても良い。かくして、幾つかの実施形態では、リポダイジェステート又は補充脂肪組織グラフトは、培養のためには処理されず或いは低温保存されない。
【0073】
幾つかの実施形態では、未処理組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート及び/又は補充脂肪組織グラフトの少なくとも一部分は、後に行われる植込み/還流のために貯蔵される。例えば、本明細書において開示する組成物(例えば、未処理組織、乾燥脂肪組織、脱水脂肪組織、リポダイジェステート、濃縮脂肪細胞由来細胞集団及び/又は補充脂肪組織グラフト)を2つ以上のアプリコット又は単位に分割するのが良く、その結果、組成物の一部は、後で行われる塗布のために保持され、他方、一部は、即座に患者に塗布されるようになる。
【0074】
処理の終わりに、補充又は強化脂肪組織グラフトを例えば皮下技術によるレシピエント内への配置のために送達器具、例えば注射器、支承構造、吸収可能カプセル又はインプラント中に装填することができる。換言すると、補充、増強又は強化脂肪グラフト又はインプラントを当業者に知られている任意の手段によって患者の体内に配置することができ、例えば、これらを真皮(皮下)、組織間隙若しくは種々の組織(例えば、乳房、臀部等)又は他の場所中に導入することができる。好ましくは、装填は、閉鎖系を維持しながら行われる。好ましい実施形態としては、針、カテーテルによる配置又は添加剤、例えば予備成型基質又は吸収性乳房造形カプセルと関連して行われる直接的な外科的植込みが挙げられる。
【0075】
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物を含む。好ましい実施形態では、被験体は、霊長類である。より好ましい実施形態では、被験体は、ヒトである。
【0076】
乾燥脂肪組織グラフト及び若しくは脱水脂肪組織及び補充若しくは強化補充組織グラフトを作製する装置及び/補充脂肪組織グラフトの作製装置
【0077】
上述したように、本明細書において、乾燥又はシステムが提供される。図2を参照すると、脂肪由来再生細胞の補充に適した脂肪組織グラフトの作製のための例示のシステムが示されている。このシステムは、柔軟性収集容器200、例えば医用収集袋を有し、フィルタメッシュ210の層が袋第1の内部チャンバ280と第2の内部チャンバ290に区切っている。幾つかの実施形態では、フィルタは、第1の内部チャンバから第2の内部チャンバへの内容物、例えば成熟脂肪細胞、赤血球、生理的食塩水等の通過を可能にする複数個の開口部又は細孔を有するのが良い。好ましくは、フィルタの複数個の細孔のサイズ又は孔径は、約30μm以上である。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタの複数個の開口部のサイズは、約30μm、約35μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm、約200μm、約210μm、約220μm、約230μm、約240μm、約250μm、約260μm、約270μm、約280μm、約290μm及び約300μm以上、以下又はこれらに等しく、この範囲に含まれる任意の数値であって良い。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタ210の複数個の開口部のサイズは、約30μm〜約500μmであるのが良い(例えば、約60μm〜300μm、例えば約74μm〜265μmであるのが良い)。
【0078】
幾つかの実施形態では、第1の内部チャンバ280は、2つのポート220,230を有する。幾つかの実施形態では、第2の内部チャンバ290は、1つのポート240を有する。幾つかの実施形態では、柔軟性収集容器200は、洗浄又はすすぎ洗いのための洗浄溶液250を有し、この洗浄容器は、容器250から閉鎖流体経路を介する内部チャンバ280への溶液の通過を可能にするようポート220を介して内部収集チャンバ280に操作可能に結合されている。幾つかの実施形態では、ポート240は、廃棄物袋260に操作可能に結合され、内容物、例えば赤血球、生理的食塩水、成熟脂肪細胞等がポート240を通って内部チャンバ290から取り出される。
【0079】
幾つかの実施形態では、脂肪組織を、ポート220を通って柔軟性収集チャンバ200に追加する。幾つかの実施形態では、すすぎ洗い溶液、例えば乳酸加リンゲル液をポート230を通って第1の内部チャンバに追加する。次に、柔軟性収集容器を例えば機械的ロッカー又は他の撹拌装置で撹拌し又は振盪する。チャンバ280内に存在している組織から赤血球、過剰すすぎ洗い溶液、溶解細胞、成熟脂肪細胞及び脂質を取り出す。
【0080】
幾つかの実施形態では、このシステムは、すすぎ洗いされた脂肪組織を収容した内部チャンバへのリポダイジェステートの無菌追加を可能にするよう構成されている。例えば、柔軟性収集容器200は、内部チャンバ280中への滅菌入口経路を提供する追加のポートを有するのが良く、リポダイジェステートは、このポート中に差し向けることができる。
【0081】
図3〜図13は、最適化された脂肪組織グラフトの作製のための本明細書において開示されるシステムの追加の実施形態を示している。図3及び図4は、例示の形態としてのシステム300を示し、このシステムは、例えば乾燥又は脱水脂肪組織を作るために脂肪組織グラフトの水和を制御する閉鎖滅菌プロセスを利用する。例えば、脂肪組織インプラントの調製と関連したありふれた問題は、入れ込み後におけるグラフト移植組織から体内への流体の再吸収又は吸収に起因してグラフトの挙動が予想不可能になるということである。以下に説明するように、オペレータは、システム300を利用することにより、従来得られた脂肪組織の乾燥状態よりも一層乾燥したグラフトを作ることによりこのばらつきを減少させることができる。さらに、この乾燥した脂肪組織グラフト又はインプラントにオプションとして、リポダイジェステート(又は再生細胞を含む濃縮脂肪由来細胞集団)を補充しても良く又はこれを直接被験体に投与することができる。
【0082】
図3及び図4は、乾燥又は脱水脂肪組織の調製のためのシステム300の一実施形態の構成を示している。システム300は、システム300の外側層を形成するよう互いに封着された第1の外側シェル310及び第2の外側シェル340(本明細書において、これらをまとめて且つ区別なく「一つの又は複数の外側シェル」とよぶ)を有する。図5は、システム300に用いられる例示の外側シェル310(又は340)を示している。以下に説明するように、外側シェル310,340は柔軟性の押し潰し可能な袋を形成するよう互いに取り付けられ、接合され又は封着されるのが良い。図8は、システム300の製造に用いることができる例示のシール311の細部を示している。第1及び第2の外側シェル310,340は、当該技術分野において知られている任意の医用軟質材料、例えば医用USPクラスVI又は医用エチルビニルアセテート(EVA)で作ることができる。幾つかの実施形態では、第1及び第2の外側シェルを形成する軟質材料は、それ自体結合可能な任意の材料で構成されるのが良い。他の実施形態では、第1及び第2の外側シェルを形成する軟質材料は、それ自体結合可能であると共にシステム又はサブシステム中に存在する任意他の材料を捕捉すると共に/或いは密封することができる任意の材料で構成可能である。外側シェルは、低温保存に耐えることができる材料で作られても良い。外側シェルは、透明であり又は着色されたオートクレーブ処理可能な材料、生体適合性材料、体液に対して耐性のある材料及び/又は例えば放射線、酸化エチレン又は乾燥熱で滅菌可能な材料で作られても良い。
【0083】
一例を挙げるに過ぎないが、この材料は、医用EVAであるのが良い。好ましい実施形態では、この材料は、それ自体結合可能であると共に他の材料、例えばシステム内に存在するフィルタを捕捉することができる材料である。結合は、本明細書において別途説明する方法、例えばRF溶接によって達成されるのが良い。或る特定の実施形態では、外側シェルは、図3〜図13に示されたシステム300の場合のように外側シェルの周囲に沿って二重ヒートシールによって互いに封着されるのが良い。外側シェル又はサブシステムのうちの任意のものは、当業者に知られている接着剤を用いて封着されるのが良い。作用の仕組みを含む使用されるべき接着剤の種類を考慮するのが良い。例えば、溶剤がなくなると硬化する接着剤、水がなくなると硬化する接着剤、冷却によって硬化する接着剤、化学反応により硬化する接着剤、硬化しない接着剤、即ち感圧接着剤を用いることができる。仕組み、例えば物理的吸着、化学結合による接着、静電気的付着理論、機械的インターロック、相互拡散による接着、脆弱な境界層及び感圧接着を考慮することができる。また、接合されるべき表面の状態、例えば表面トポグラフィ、表面熱力学的状態及び表面化学分析結果にも取り組む必要がある。また、接合されるべき或る特定の表面は、最適な封止のために特定の予備処理を必要とする場合がある。例えば、金属に特有の予備処理、無機材料のための予備処理、プラスチックのための予備処理、エラストマのための予備処理を考慮することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、形成されるシステム及びサブシステムは、有利には、これらが応力に耐えることができるようにする機械的性質を備える。かくして、接着剤による接合部の大域的応力分析法並びに有限要素分析法を実施する必要がある。接着部の耐久性も又評価しなければならない。例えば、光酸化分解を軽減する添加剤を考慮する必要がある。湿潤周囲環境中における金属に対する構造的接合部の挙動を考慮する必要がある。水及び接着剤、水と接着剤のインターフェイス、他の流体及びティンバージョイント(timber joint)も又考慮する必要がある。幾つかの実施形態では、従来型超音波技術、ボンド試験器、高速走査法及び凝集性測定法を用いて非破壊検査を実施しなければならない場合がある。また、接着接合部の衝撃挙動を評価しなければならない場合がある。例えば、接着剤及び接着接合部の衝撃試験、ハイレートローディング及び応力分布下における接着剤の特性及び衝撃荷重を受けた接着接合部の変化を評価するのが良い。また、接着部の破壊力学、例えば、破損に関するエネルギー基準、応力強度、エネルギー放出速度、熱力学的接着エネルギー、内在的接着エネルギー、実際的接着エネルギー、破壊エネルギーの評価及び耐久性を評価することが望ましい場合がある。評価できる他の要因としては、疲労、振動、減衰、同種及び異種材料の接合及び複合材の結合が挙げられる。
【0085】
特定の実施形態では、システムの外側シェル若しくはサブシステムのうちの幾つか又は任意適当な組み合わせを高周波(RF)溶接の使用により封着することができる。RF溶接は、誘電加熱溶接又はHF溶接ともよばれている。RF溶接は、高周波を利用して材料を一緒に融着させるプロセスである。結果的に得られた溶接物は、元の材料と同じほど強固である場合がある。RF溶接は、迅速交番磁界中に熱の発生を生じさせるために溶接されるべき材料の或る特定の性質を利用する。具体的に説明すると、このプロセスでは、接合されるべき部品に2つの金属バー相互間に印加される高周波(13〜100MHz)電磁界をかけ、それにより、互いに融着されるべき材料を加熱させる。この技術を用いて或る特定の材料だけを溶接することができる。ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリウレタンは、RF溶接法により溶接されるべき最もありふれた熱可塑性樹脂である。ナイロン、PET、EVA及び幾つかのABS樹脂を含む他のポリマーをRF溶接することが可能である。ただし、特定の条件が必要になる場合がある。例えば、RF電力に加えて予熱された状態の溶接バーが用いられた場合、ナイロン及びPETは、溶接可能である。RF溶接は、PTFE、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン又はポリプロピレンには適していない場合がある。しかしながら、RF溶接可能性を有する特定の等級のポリオレフィンが開発された。
【0086】
RF溶接の主要な機能は、2種類又は3種類以上の厚さのシート材料に接合部を形成することにある。溶接面に隣接して切れ刃又は刃先を入れることにより、このプロセスは、材料を溶接すると同時に切断することができる。切れ刃は、過剰のスクラップ材料を引き裂くことができるのに十分高温プラスチックを圧縮し、それ故、このプロセスは、引き裂き‐シール溶接とよばれる場合が多い。また、追加の材料片を製品の表面に溶接することが可能である。
【0087】
幾つかの実施形態では、システム及びサブシステムは、超音波溶接を用いても封着可能である。超音波溶接により材料を結合する場合、必要なエネルギーは、機械的振動の形態で提供される。溶接ツール(ソノトロード)は、溶接されるべき部品に結合し、これを長手方向に動かす。溶接されるべき部品は、静止状態のままである。溶接されるべき部品を同時に互いに押しつける。静的力と動的力の同時作用により、追加の材料を用いる必要なく、部品の融着が生じる。この手順は、本明細書において説明するシステムに使用できるプラスチックと金属の両方を結合するために工業的規模で利用できる。プラスチックの超音波溶接の場合、結合領域の温度上昇は、機械的振動の吸収、連結領域における振動の反射及び部品の表面の摩擦によって生じる。振動は、垂直に導入される。接触領域において摩擦熱が生じ、その結果、材料が局所的に可塑化し、極めて短い期間内で両方の部品相互間の不溶解性の連結部の鍛造が行われる。必要条件は、両方の作動部品がほぼ同じ融点を有することである。超音波溶接における接合品質は、非常に一様である。というのは、エネルギー及び放出内部熱は、一定のままであり、接合領域に限定されるからである。最適結果を得るために、接合領域は、これらを超音波接合又は溶接に適したものにするよう調製される。プラスチックの溶接は別にして、超音波技術は、本明細書において説明したシステムの作動部品をリベット止めし又は必要ならば金属部品をプラスチック中に埋め込むためにも利用可能である。
【0088】
当業者であれば理解されるように、本明細書において開示するシステムを上述の軟質材料以外の材料で作ることができる。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において説明するシステム又はシステムのコンポーネントを金属で作ることができる。かかる実施形態では、超音波金属溶接を利用してシステムコンポーネントを互いに接合し又は取り付けることができる。他のプロセスの場合とは異なり、溶接されるべき部品は、融点まで加熱されることがなく、圧力及び高周波機械的振動を適用することによって連結される。プラスチック溶接とは対照的に、超音波金属溶接中に用いられる機械的振動は、水平に導入される。具体的に説明すると、超音波金属溶接中、静的力、振動剪断力及び溶接領域の適度の温度上昇を含む複雑なプロセスがトリガされる。これら要因の大きさは、加工物の厚さ、これらの表面構造及びこれらの機械的性質で決まる。加工物は、固定機械部品、即ち、アンビルとソノトロードとの間に配置され、ソノトロードは、溶接プロセス中、水平に高い振動数(通常20又は35又は40kHz)で振動する。最も一般的に用いられる振動数(作業振動数)は、20kHzである。この振動数は、ヒトの耳に聞こえる振動数よりも高く、又、かかる振動数は、エネルギーの可能な限り最適の使用を可能にする。ほんの僅かの量のエネルギーしか必要としない溶接プロセスの場合、35又は40kHzの作業振動数を用いることができる。
【0089】
図3〜図13に示されている例示のシステム300は、フィルタ材料又は濾過材320を外側シェル310と外側シェル340との間に挿入することにより作られた第1及び第2のサブシステム又は第1及び第2のチャンバを有する。第1のサブシステム又はチャンバは、外側シェル310と濾過材320との間の領域によって構成され、第2のサブシステム又はチャンバは、濾過材320と外側シェル340との間の領域によって構成される。或る特定の実施形態では、システム300の周囲に沿う二重ヒートシールは、2つの別個独立のサブシステム又はチャンバがシステム300内に形成されるよう濾過材320を捕捉する。濾過材は、理想的には、或る特定の内容物、例えば液体、腫脹流体、赤血球、洗浄溶液(例えば、生理的食塩水、乳酸加リンゲル液等)、細胞デブリの大部分の通過をイネーブルにし又は可能にするが、或る特定の内容物、例えば成熟脂肪細胞、再生細胞、幹細胞、前駆細胞及び結合組織の大部分の保持をイネーブルにし又は可能にする複数個の開口部を有するのが良い。通過する成分及び保持される成分は、濾過材の開口部のサイズで定められ、即ち、一般的に、開口部よりも小さな成分は、通過し、開口部よりも大きな成分は、保持されることになる。したがって、濾過材は、関心のある成分のサイズに基づいて選択されるのが良い。システム内の条件、例えば圧力、空気流量、粘度等に応じて、通過する濾過材の開口部よりも小さな成分の数又は割合と保持される開口部よりも大きな成分の数又は割合が互いに異なる場合のあることは理解されるべきである。
【0090】
濾過材は、好ましくは、サブシステム内又はサブシステム相互間における流体連通を可能にする複数個の細孔を有する。かかる細孔により、1つのシステム内に挿入された組成物(又はその成分)が別のサブシステム中に拡散することができ、或いはこの逆のような関係が成り立つ。細孔は、好ましくは、使用可能なフィルタの表面の大部分の領域に設けられる。例示のフィルタが図6に示されている。
【0091】
過剰の液体、赤血球又は細胞デブリを通過させることができるフィルタであればどのようなフィルタでもシステム300に用いることができる。例えば、脂肪細胞、再生細胞、幹細胞又は結合組織を保持するフィルタであればどのようなフィルタでも用いることができる。幾つかの実施形態では、濾過材320の細孔のサイズが約1ミクロンから約750ミクロンまでの範囲にあるのが良く、例えば、10ミクロン、20ミクロン、30ミクロン、40ミクロン、50ミクロン、60ミクロン、70ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、110ミクロン、120ミクロン、130ミクロン、140ミクロン、150ミクロン、160ミクロン、170ミクロン、180ミクロン、190ミクロン、200ミクロン、210ミクロン、220ミクロン、230ミクロン、240ミクロン、250ミクロン、260ミクロン、270ミクロン、280ミクロン、290ミクロン、300ミクロン、310ミクロン、320ミクロン、330ミクロン、340ミクロン、350ミクロン、360ミクロン、370ミクロン、380ミクロン、390ミクロン、400ミクロン、410ミクロン、420ミクロン、430ミクロン、440ミクロン、450ミクロン、460ミクロン、470ミクロン、480ミクロン、490ミクロン、500ミクロン、510ミクロン、520ミクロン、530ミクロン、540ミクロン、550ミクロン、560ミクロン、570ミクロン、580ミクロン、590ミクロン、600ミクロン、610ミクロン、620ミクロン、630ミクロン、640ミクロン、650ミクロン、660ミクロン、670ミクロン、680ミクロン、690ミクロン、700ミクロン、710ミクロン、720ミクロン、730ミクロン、740ミクロン又は750ミクロンであり、この範囲に含まれる任意の数値であって良いシステム300が提供される。好ましくは、濾過材の複数個の開口部又は細孔のサイズは、40μmを越える。例えば、一実施形態では、濾過材320の複数個の開口部のサイズは、74ミクロンであるのが良い。他の実施形態では、複数個の開口部のサイズは、約73ミクロンから約264ミクロンまでの範囲にあるのが良い。
【0092】
図3〜図13に示されているように、幾つかの実施形態では、第2のサブシステム又はチャンバ、即ち、濾過材320と上述の外側シェル340との間の領域は、2つのサブシステムに更に分割されるのが良く、その結果、第3のサブシステム又はチャンバが形成される。例えば、セパレータ330、例えば、分離スクリーン、メッシュ又はフィルタが濾過材320と外側シェル340との間に挿入されている。分離スクリーンから成る例示のセパレータが図7に示されている。第2及び第3のサブシステム又はチャンバは、第1のサブシステムからの溶液、流出液、廃棄物、デブリ及び他の望ましくない物質を収容するのが良い。或る特定の実施形態では、第2及び第3のサブシステム又はチャンバは、部分的に別個独立なものである。幾つかの実施形態では、第2のサブシステム又はチャンバと第3のサブシステム又はチャンバは、互いに完全に別個独立なものである。例えば、幾つかの実施形態では、セパレータ330、例えば分離スクリーンは、自由度を有し、又は第2のサブシステムから完全に分離されてはいない第3のサブシステムが形成されるよう第2のサブシステム内で完全に自由浮動状態である。他の実施形態では、第2のサブシステムと第3のサブシステムは、セパレータ、例えば分離スクリーン等が当該技術分野において知られており又は本明細書において説明する接合機構体のうちの任意のもの、例えば接着剤による接合、RF溶接又は超音波溶接を用いて外側層310,340相互間に捕捉されているという点において互いに完全に別個独立のものである。当業者であれば容易に理解されるように、システム300の互いに異なる層を取り付けるのに数種類の手法を利用することができ、例えば、第1の外側シェル、第2の外側シェル、フィルタ及びセパレータは最適な封止強度を保証するよう選択されるのが良い。
【0093】
幾つかの実施形態では、セパレータ330(例えば、分離スクリーン)は、濾過材320と外側シェル340との接触状態を最小限に抑えるよう構成されている。最小限の接触は、濾過材320と外側シェル340が組織の処理中(例えば、真空が袋内に生じている場合)互いにくっつくのを阻止する。かくして、分離スクリーン330は、濾過材320と外側シェル340との間に空間を作る。或る特定の実施形態では、セパレータは、外側シェル340とフィルタ320との間に空間を作るリブ、ストラット及び他の特徴部から成るのが良い。他の実施形態では、濾過材320の方に向いた外側シェル340の側部は、所用の空間を作るよう模様付けされているのが良く、それにより別個のセパレータが不要になる。このシステムのフィルタと外側シェルとの間に空間を作ることにより、過剰の流体を脂肪組織から第2及び/又は第3のサブシステム内に引き込み、吸い込み又は吸い上げる力が袋の中に作られる。次に、過剰の流体を廃棄物容器内に差し向けることができる。また、セパレータ、例えば分離スクリーン330により作られる空間及び/又はセパレータを作るために用いられる材料は、好ましくは、脂肪組織中に存在する脂質を吸い上げ、それにより第1のサブシステム又はチャンバ内の組織から脂質及び流体を除去するのに役立ち、そしてこの組織を一段と乾燥させ又は脱水するよう設計され、構成され又は選択される。
【0094】
或る特定の実施形態では、セパレータ330は、多孔質材料で作られると共に/或いは複数個の開口部又は細孔を有する。或る特定の実施形態では、セパレータ330の複数個の細孔のサイズは、約300〜約3000ミクロン又はこの範囲に含まれる任意の数値、例えば約500〜約2000ミクロンであるのが良い。好ましくは、複数個の開口部又は細孔の直径は、約300ミクロン、400ミクロン、500ミクロン、600ミクロン、700ミクロン、800ミクロン、900ミクロン、1000ミクロン、1100ミクロン、1200ミクロン、1300ミクロン、1400ミクロン、1500ミクロン、1600ミクロン、1700ミクロン、1800ミクロン、1900ミクロン、2000ミクロン、2100ミクロン、2200ミクロン、2300ミクロン、2400ミクロン、2500ミクロン、2600ミクロン、2700ミクロン、2800ミクロン、2900ミクロン、3000ミクロン以上であり、又はこの範囲に含まれる任意の数値である直径を有する。一実施形態では、複数個の開口部のサイズは、約1000ミクロンである。幾つかの実施形態では、セパレータは、約10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、35%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、65%以上又はこの範囲に含まれる任意のパーセントである開放領域を有する多孔質材料で作られる。当業者であれば理解されるように、これよりも大きいサイズの細孔は、第1のチャンバから第2のチャンバ内への物質の迅速な移送又は排出を可能にし、セパレータの孔径は、吸い上げ及び/又は排出又は濾過特性のバランスをとるよう調整されるのが良い。幾つかの実施形態では、液体及び脂質は、多孔質セパレータの開放領域に吸着すると共に/或いはこれを満たす。本出願人は、驚くべきことに、幾つかの実施形態では、濾過材の細孔よりも大きな細孔を有するセパレータが脂肪組織からの流体の除去及びシステムの第1のチャンバからの流体の除去を容易にすることを発見した。かくして、幾つかの実施形態では、セパレータ、例えば分離スクリーン330は、多孔質材料であり、細孔は、上述した濾過材320の細孔よりも大きな直径又はサイズを有する。
【0095】
幾つかの実施形態では、セパレータは、脂質及び/又は流体を捕捉し又は吸い上げる生体適合性材料から成る。例えば、セパレータは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、セルロースナイトレート及びセルロースアセテートで作られるのが良い。幾つかの実施形態では、セパレータは、軟質材料で作られ、幾つかの実施形態では、セパレータは、硬質材料で作られる。好ましくは、セパレータは、例えば孔径が1000ミクロンのポリエステルメッシュで作られる。
【0096】
図3〜図13に示されているように、システム300は、物質をシステム内に通過したりシステムから取り出したりすることができる1つ又は2つ以上のポートを有するのが良い。例えば、図3、図4、図8及び図9に示されているシステム300は、3つの別々のポートを有する。ポート400,500が第1のサブシステム、例えば外側シェル310と濾過材320との間の領域と連通状態にある。ポート600が第2及び/又は第3のサブシステム、例えば濾過材320と分離スクリーン330との間の領域及び/又は分離スクリーン330と外側シェル340との間の領域と連通状態にある。しかしながら、幾つかの実施形態では、システムは、たった1個のポート又はたった2個のポートを有し、例えば1個の入口ポート及び1個の出口ポートを有しても良い。他の実施形態では、システムは、4個以上のポート、例えば4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上のポートを有しても良い。
【0097】
一般に、ポートは、システム又はサブシステムの周囲から内部に延び又はこの逆の関係に延びる少なくとも1つの孔を有する。孔は、ポートの継ぎ目に沿って位置する気密且つ水密シールを有する。以下に更に説明するように、幾つかの実施形態では、ポートは、1つ又は2つ以上のコネクタ、導管、ポート組立体、アダプタ、キャップ又は注射器に結合されるよう構成されている。
【0098】
ポートは、種々の流体、例えば洗浄及びすすぎ洗い流体を挿入したりかかる流体及び流出液を除去するためのアクセスポイントとなることができる。好ましくは、ポートは、封止されるのが良い(例えば、弁を備える)。幾つかの実施形態では、ポートは、手動でクランプにより封止されるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、キャップによって封止されるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、自動封止弁、例えばシステムの内部チャンバ内への流体又は内容物の一方向流れを可能にするが、内部チャンバからの一方向流れを可能にしない変形可能な弁を有する。他の実施形態では、変形可能な弁は、双方向流れをもたらす。変形可能な弁は、当該技術分野において知られている変形可能な材料であればどのような材料でも構成でき、例えば、ゴム、ネオプレン、シリコーン、ポリウレタン等で作られるのが良い。幾つかの実施形態では、ポートは、ルアー(luer)作動式弁を有する。幾つかの実施形態では、ポートは、システムが直立に保持されているとき、1つ又は2つ以上のポートが下に位置決めされて流体及び流出液が重力、吸引力又は圧力の助けにより流出するようシステム内に設けられている。また、本発明のシステム300に他のポート、例えば、通気のためのポート、物質又はガスをシステム又はサブシステム等に追加するポートを利用することができる。
【0099】
システム又はサブシステムのポートは、脂肪物質を源となる体から吸引するために用いられる注射器又はカテーテルに直接又は間接的に(即ち、アダプタを介して)相互連結され又は結合されるよう構成されるのが良く、その結果、脂肪組織は、システム中に直接嫌気的に送り込まれるようになる。同様に、カニューレ又は注射器は、精製された組織の嫌気的移植のためのポートに取り付けられるのが良い。したがって、幾つかの実施形態では、システム又はサブシステムのポートは、使い捨て又は再使用可能な注射器に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、これらポートは、1cc注射器、2cc注射器、5cc注射器、10cc注射器、20cc注射器、50cc注射器、60cc注射器、100cc注射器、250cc注射器等に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。幾つかの実施形態では、ポートは、大サイズボア先端部を有する注射器、例えばトーミー注射器に直接又は間接的に結合されるよう構成されている。
【0100】
幾つかの実施形態では、システム300は、第1のチャンバ又はサブシステムへの内容物(例えば、脂肪組織)の嫌気的送り出し又はこれからの嫌気的取り出しを容易にする組織接近ポート組立体700を有している(例えば図9を参照されたい)。例示の組織接近ポート組立体700は、図10及び図11に詳細に示されている。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、大サイズボア円筒形開口部710を有する。ボア710のサイズが大きいので、第1のチャンバ内への組織の送り込み及び取り出しが容易になる。変形可能なプラスチック弁720は、物質が開口部710を通ってポート730の本体内に入るのを阻止するバリヤとなることができる。変形可能なプラスチック弁720は、開いてボアから組織接近ポートの本体730内への内容物の流れを可能にするよう構成されているのが良く、組織接近ポートは、これへの注射器先端部(図示せず)の挿入によってシステムの第1のチャンバに通じる。変形可能なプラスチック弁720は、弁からの注射器先端部の取り外しの際に閉鎖デフォルト状態に戻り、それにより、ポートが封止され、使用されていない場合、組織接近ポートの本体からの内容物(例えば、組織又は液体)の流れが遮断される。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、ポートが使用されていないとき、組織接近ポートに追加のシールを提供するようキャップ740に連結されるよう構成されている。例示のキャップ740の詳細図は図12に示されている。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、システム300から取り外し可能であるのが良い。幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、例えば接着剤、例えばUV接着剤によりシステム300に取り付けられ又は接合される。
【0101】
幾つかの実施形態では、組織接近ポート組立体は、アダプタ又はコネクタに相互接続されるよう構成されるのが良い。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、注射器先端部をシステムのポートに接合するよう構成されている。上述したように、一例を挙げると、アダプタ、例えば組織ポート組立体は、ポートと一体であっても良く又はこれから取り外し可能であっても良い。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、ルアーコネクタから成る。幾つかの実施形態では、アダプタ又はコネクタは、変形可能な弁を備えた取り外し型アダプタから成る。
【0102】
幾つかの実施形態では、システムのポートは、2つ以上の流路向きに設計された組立体、例えばYコネクタ(Y形連結具)等から成っていても良く又はこれに連結されても良い。幾つかの実施形態では、Yコネクタは、所望に応じて、例えば、Yコネクタの個々のルーメン又は流路を締め付けることによって一方又は両方の流路の閉塞を可能にするよう構成されている。幾つかの実施形態では、Yコネクタは、Yコネクタの共通且つ個々の流路の接合部のところに設けられていて、個々の流路の各々、又は一方の流路を通る同時流れを可能にし又は所望に応じて両方の流路を閉塞するよう調節可能なスイッチを有する。
【0103】
幾つかの実施形態では、閉鎖経路を維持しながら1つ又は2つ以上のシステム又はサブシステムに対する流体連通を可能にする導管又は管類に連結されるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、システム300は、オプションとして、廃棄物袋(図示せず)、廃棄物入れ物(図示せず)、廃棄物導管(図示せず)及び/又は廃棄物容器(図示せず)を有するのが良い。これら実施形態のうちの或る特定のものでは、サブシステムは全て、互いに流体連通状態にある。他の実施形態では、互いに流体連通状態にあるサブシステムは存在しない。特定の実施形態では、1つのサブシステムは、他の2つのサブシステムから封止され、この場合、これら2つのサブシステムは、互いに流体連通状態にある。好ましくは、サブシステムを含むシステム全体は、このシステムが任意サイズ又は形状のものであると共に広汎な容積に対応することができるようにするよう可撓性である。変形例として、システム全体、サブシステム及び関連のコンポーネントは、剛性であっても良い。さもなければ、サブシステム及び関連コンポーネントの中には、可撓性のものがあれば、剛性のものもある。
【0104】
図13は、他のシステム及びサブシステムと流体結合状態にあるシステム300‐1を有するシステム800の例示の実施形態を示している。図13に示されているように、ポート400‐1,500‐1は、洗浄溶液源810‐1及び廃棄物袋820‐1にそれぞれ連結可能である。システム300‐1は、閉鎖経路を維持した状態で同様なシステム300‐2に連結可能である。脂肪組織が本明細書において上述したように、例えば、脂肪入口/取り出しポート600‐1,600‐2を通ってそれぞれシステム300‐1,300‐2の第1のチャンバ中に導入される。システム300‐2内の脂肪組織は、上述したように乾燥又は脱水グラフトを作製するために用いられる。システム300‐1内の脂肪組織は、リポダイジェステート又は再生細胞を含む脂肪由来細胞の濃縮集団を作製するために処理される。ポート500‐1又は別のポート(図示せず)が溶液源、例えば溶液源810‐1に連結可能であり、この流体源810‐1は、組織すすぎ洗い及び消化のためにシステム300‐1の第2のチャンバ内への洗浄溶液及び/又は酵素の嫌気的導入を可能にするよう構成されている。ポート400‐1は、廃棄物袋820‐1に連結可能である。第1のチャンバ300‐1内のリポダイジェステートは、閉鎖システムを維持した状態でポート600‐1,600‐2に連結された導管(図示せず)を介してシステム300‐2の第1のチャンバ内の乾燥又は脱水脂肪組織に嫌気的に移送可能である。
【0105】
本明細書において開示するシステムは、望ましくない物質、例えば赤血球、白血球及び脂質の含有量が、例えば遠心分離及び/又は従来型重力分離のような方法によって処理された同一部位での同一被験体から取った脂肪組織の等価量よりも著しく少ない脂肪組織グラフト及びインプラントを生じさせることができる。幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する白血球よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない白血球を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の白血球の数の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0106】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する赤血球よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない赤血球を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の赤血球の数の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0107】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムを用いて作製された脂肪組織グラフトは、同一部位での同一被験体から取り出されると共に、例えば取り出した組織を一定の固定角度遠心分離機で高速回転する遠心分離法を用いて調製された脂肪組織の等価単位中に存在する脂質よりも少なくとも約1X(倍)、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10X(又はこれらの範囲に含まれる任意の倍数)少ない脂質を有する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書において開示するシステムで作製された脂肪組織グラフトは、同一の個人からの脂肪組織の等価単位中の脂質の割合の75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満又はこれらの範囲に含まれる任意%を含む。
【0108】
望ましくない含有成分が少ない脂肪組織グラフトを作製することができるということに加えて、本明細書において開示するシステムにより作製されるグラフトは又、脂肪由来再生細胞の補充及び/又はインプラントの保持を容易にする水和特性を示すことができる。具体的に説明すると、本明細書において説明されているように調製された脂肪組織グラフトの水和状態は、同一部位で同一被験体から単離されると共に重力分離だけを用いて調製された脂肪組織の等価単位のグラフトよりも水和度が低い。
【0109】
しかしながら、当業者であれば理解されるように、幾つかの実施形態では、システムは、互いに封着された2つの互いに異なる外側シェルで構成されていない柔軟性袋、即ち、正確に言えばシームレス袋を備えた状態で設計されても良い。袋の内部に第1及び第2のサブシステム又はチャンバを構成するようフィルタをシームレス袋内に封着し、接合し又は取り付けるのが良い。
【0110】
本明細書において開示する補充、増強又は強化脂肪グラフト又は脂肪組織インプラントを作製する例示の装置100が図14に示されている。図14Aは、少なくとも2つのチャンバ20,30を含むキャニスタ10の斜視図である。1つのチャンバ20は、未処理組織からリポダイジェステートを作製するよう用いられるのが良い。第2のチャンバ30は、補充脂肪組織グラフトの生成の際に脂肪組織として用いられるべき未処理脂肪組織を受け入れてこれを貯蔵するよう用いられるのが良い。
【0111】
図14に示された実施形態では、各チャンバ20,30は、未処理脂肪組織を受け入れるよう構成された組織入口ポート40,50を有している。しかしながら、理解されるように、幾つかの実施形態では、キャニスタ10は、組織入口ポートを1つだけ有する。幾つかの実施形態では、組織入口ポート40,50は、脂肪吸引液が脂肪吸引中、チャンバ20,30内に直接入るようカニューレ(図示せず)に操作可能に連結されるよう構成されている。例えば、組織入口ポート40,50は、組織取り出しラインを構成する管類によってカニューレ(図示せず)に結合可能である。幾つかの実施形態では、カニューレは、一体型一回使用脂肪吸引カニューレであるのが良く、管類は、フレキシブルチューブであるのが良い。カニューレは、脂肪組織を被験体から取り出すよう被験体の体内に挿入されるよう寸法決めされているのが良い。システムで用いられる管類は、潰れの恐れを減少させるよう吸引力支援脂肪形成術と関連した負圧に耐えることができるのが良い。吸引装置(図示せず)、とりわけ例えば注射器又は電気真空装置がキャニスタ10に結合可能であると共に被験体から組織を吸引するのに十分な負圧をもたらすよう構成されるのが良い。
【0112】
キャニスタ10のチャンバ20,30は、一方のチャンバ20(例えば、リポダイジェステートの入っているチャンバ)の他方のチャンバ30(例えば、脂肪グラフトの入っているチャンバ)内への内容物の流れが制御されるように互いに物理的に分離されるのが良い。幾つかの実施形態では、これらチャンバは、例えば、望ましい場合にのみ一方のチャンバから他方のチャンバへの内容物の流れを保証するよう封止できるポートを介して互いに流体結合関係にある。例えば、幾つかの実施形態では、一方のチャンバ20から別のチャンバ30への内容物の流れは、導管を介して起こる。オプションとしての導管は、システムの種々のコンポーネント相互間の物質の流れを制御するための1つ又は2つ以上のクランプ(図示せず)を有するのが良い。クランプは、システムの種々の領域を効果的に封止することによってシステムの滅菌性を維持するために使用されるのが良い。変形例として、オプションとしての導管は、システムを通る物質の流れを制御する1つ又は2つ以上の弁を有しても良い。これら弁は、電気機械的ピンチ弁、空気圧弁、油圧弁又は機械的弁であって良い。幾つかの実施形態では、弁は、レバーに結合可能な制御システムによって起動化され又は作動されるのが良い。レバーは、手動操作式であっても良く且つ/或いは例えば所定の作動条件で弁を作動させることができる処理装置により自動操作可能であっても良い。或る特定の自動化実施形態では、弁の作動は、部分的に自動化されると共に部分的にユーザの好みを受けるのが良く、その結果、プロセスを最適化することができる。さらに別の実施形態では、弁の中で手動で作動できるものがあれば、処理装置を介して自動的に作動できるものがあっても良い。弁は又、1つ又は2つ以上のポンプ、例えば蠕動ポンプ又は容量形ポンプ(図示せず)と関連して使用できる。導管及び/又は弁は、システムを通って流れる種々の流体成分及び流体レベルを互いに識別することができるセンサ、例えば光学センサ、超音波センサ、圧力センサ等を更に有するのが良い。
【0113】
幾つかの実施形態では、一方又は両方のチャンバは、廃棄物、例えば生理的食塩水、成熟脂肪細胞、赤血球等の除去、例えば洗浄溶液、酵素、細胞等の成分の追加又は空気入口又は出口ベントのための1つ又は2つ以上のポートを有するのが良い。幾つかの実施形態では、チャンバ30は、補充脂肪グラフトの嫌気的除去を可能にするよう構成されたポート又は出口70を有するのが良い。出口70は、組成物(例えば、補充脂肪グラフト)を適当な条件下でチャンバ30から被験体に送るような構造になっているのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、組成物を抜き取るのに注射器を用いるのが良く、出口70は、システム又は組成物の滅菌性を損なわないで注射器の針を受け入れることができる。追加の実施形態では、出口は、組成物を投与するが、組成物を引き抜くことがないよう構成された器具、例えば正圧を及ぼしてカニューレを通って組成物を移動させることによって組成物を投与するカニューレに結合されるのが良い。したがって、出口70は、チャンバ30内に入っている組成物をカニューレ(図示せず)中に移すことができるよう構成されているのが良い。他の実施形態では、出口70は、組成物を投与する器具、例えば正圧を加えることによって組成物を投与する注射器の針又はカニューレを有し又はこれに閉鎖系状態で結合されるのが良い。
【0114】
幾つかの実施形態では、キャニスタ10の一方又は両方のチャンバ20,30は、溶液及び作用剤、例えば洗浄溶液(生理的食塩水等)、離解剤又は他の作用剤若しくは添加剤を嫌気的に受け入れるよう構成されているのが良い。装置としては、内容物を滅菌状態で保持するよう構成された容器、例えば、押し潰し可能な袋、例えば臨床設備で用いられるIV袋が挙げられる。これら容器は、一方又は両方のチャンバ20,30に結合された導管を有するのが良い。例えば、装置は、すすぎ洗い又は洗浄剤(例えば、PBS、PLASMALYTE(登録商標)、NORMOSO(登録商標)又は乳酸加リンゲル液)を入れた容器をチャンバ20及びチャンバ30に嫌気的に送り出すことができるよう構成されているのが良い。幾つかの実施形態では、器具100は、キャニスタ10に結合されている離解剤の入っている容器が離解剤をチャンバ20の内部に送り出すよう構成されているのが良い。溶液及び作用剤を、任意の当該技術分野において公認されている仕方でキャニスタのチャンバ20,30の内部に送り出すことができ、かかる当該技術分野において公認されている仕方としては、容器の外部に加えられる重力又は導管への容量形ポンプの設置が挙げられる。自動化実施形態では、プロセッシング器具は、種々のパラメータ、例えば生理的食塩水の量及び洗浄に必要なサイクルの時間又は回数並びに離解剤の濃度又は量及びユーザにより当初入力される情報(例えば、処理されるべき組織の量)に基づく離解に必要な時間を計算する。変形例として、例えば量、時間は、ユーザにより手動で操作できる。幾つかの実施形態では、器具は、キャニスタの一方又は両方のチャンバを撹拌し又は振盪するよう構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、装置は、離解プロセス中、チャンバ20の内容物を撹拌するよう構成された軌道運動プラットホーム80を有する。
【0115】
キャニスタ10のコンポーネントが、生物学的流体又は組織とは反応せず、しかも生理学的流体及び組織の処理の際に用いられる作用剤とも反応しない材料で作られるのが良い。加うるに、種々のコンポーネントの構成材料は、例えばオートクレーブ処理及びベータ線又はガンマ線を含む(これには限定されない)放射線による滅菌に耐えることができなければならない。幾つかの実施形態では、キャニスタは、使い捨て可能な材料で作られる。幾つかの実施形態では、キャニスタは、2回以上使用できる非使い捨て材料で作られるのが良い。一例を挙げると、管類及びカニューレ取っ手は、任意適当な材料、例えばポリエチレンで構成可能である。カニューレは、ステンレス鋼で構成されるのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、キャニスタは、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、エチレンビニルアセテート又はスチレンブタジエンコポリマー(SBC)で作られる。装置の流体経路は、好ましくは、パイロジェンが含まれておらず、即ち、疾患をうつす恐れなく血液を使用するのに適している。幾つかの実施形態では、キャニスタ10は、ユーザがチャンバ内に存在する組織のおおよその量を目で見て確認することができる材料で構成される。
【0116】
幾つかの実施形態では、装置は、システムの1つ又は2つ以上のチャンバ20,30内に入っている材料の温度を調節するよう位置決めされた1つ又は2つ以上の温度制御装置(図示せず)を有する。温度制御装置は、ヒータ、クーラ又はこれら両方であるのが良く、即ち、温度制御装置は、ヒータとクーラとの間で切り替えることができるのが良い。温度制御装置は、装置100を通る材料のうちの任意のものの温度を調節することができ、かかる物質としては、組織、離解剤、再懸濁剤、すすぎ洗い剤、洗浄剤又は添加剤が挙げられる。例えば、脂肪組織の加熱により、離解が容易になり、再生細胞出力の冷却が、生存能力を維持するのに望ましい。また、あらかじめ温められた試薬が最適な組織処理に必要な場合、温度制御装置の役割は、温度を増減するのではなく所定の温度を維持することにある。
【0117】
幾つかの実施形態では、装置100は、自動化されるのが良い。幾つかの実施形態では、装置100は、装置が作動し、ユーザの入力に基づいてプロセスの1つ又は2つ以上のステップを自動化するための制御論理を提供する処理装置(例えば、プロセッサ又はパーソナルコンピュータ)及び関連ソフトウェアプログラムを有するのが良い。或る特定の実施形態では、システムの1つ又は2つ以上の観点は、処理装置内に存在するソフトウェアによりユーザによりプログラム可能であるのが良い。処理装置は、読み取り専用記憶装置(ROM)内の1つ又は2つ以上のあらかじめプログラムされたソフトウェアプログラムを有するのが良い。例えば、処理装置は、血液を処理するために誂えられたあらかじめプログラムされたソフトウェア、少量の再生細胞を得るために脂肪組織を処理する別のプログラム及び多量の再生細胞を得るために脂肪組織を処理する別のプログラムを有するのが良い。処理装置は、関連情報、例えば必要な再生細胞の量及び種々の処理後操作等のユーザの入力に基づいてプロセスを最適化するための適当なパラメータをユーザに与えるあらかじめプログラムされたソフトウェアを更に有するのが良い。
【0118】
幾つかの実施形態では、ソフトウェアは、システムのポンプ及びバルブを制御することによって特定のチューブ経路に沿って流体及び組織の出入りを制御するステップ、正しいシーケンス及び/又は作動方向を制御するステップ、圧力センサによる閉塞の検出ステップ、容積測定機構を用いて特定の経路に沿って動かされる組織及び/又は流体の量を測定する機構を混合するステップ、熱制御装置を用いて種々のコンポーネントの温度を維持するステップ及び離解プロセスをタイミング及びソフトウェア機構と一体化するステップを自動化することができる。
【0119】
以下の例は、この技術を利用することができる特定の状況及び装置を実証するために提供されているが、これらは、この開示内容に含まれる特許請求の範囲の記載及び本発明の範囲を制限するものではない。多くの非特許文献及び特許文献が上記において引用されている。引用した非特許文献及び特許文献の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0120】
以下の実施例は、本明細書において開示したシステムを用いて得られた脂肪組織グラフトの純度及び水和を未処理脂肪組織の等価単位及び重力分離及び遠心分離により作製された脂肪組織グラフトの等価単位と比較している。
【0121】
実施例1
吸引脂肪組織は、10名のヒト被験体(N=10)から、リポサクション(N=5)、レーザ(N=3)又はボディジェット(Body-jet)採取(N=2)のいずれかの方法によって、医院で収集された。吸引した組織サンプルを、以下の4群へと無作為に割り当てた。(1)コントロール、(2)重力分離、(3)遠心分離、及び(4)PUREGRAFT (商標)組織グラフト調製物。コントロールサンプルはそれ以上の操作なしに直接解析した。重力分離群におけるサンプルを別にして60mL注射器中に10分間セットした。サンプルの液体部分を廃棄し、残存する脂肪組織を解析した。遠心分離群については、キャップした10mL注射器にサンプルを充填し、IEC固定角ローター遠心分離機の中へ置き、3000rpm(約1200g)で3分間遠心分離した。遠心後に脂肪組織の上部の遊離脂質を吸引によって除去し、下澄を排出させ、残存するグラフト組織を解析した。PUREGRAFT (商標)群におけるサンプルは、上述のシステム300(PureGraft (商標))中で洗浄した。概要を述べると、組織はシステム300の第1のチャンバの中へ上記のように導入される。組織を150mlの乳酸加リンゲル液により2回洗浄した。過剰な液体及び脂質をシステムの第2のチャンバから排出させるようにする。乾燥した組織を組織のエントリーポートを介して取り出し、結果解析に使用した。
【0122】
グラフトを4つの構成要素(遊離脂質、脂肪組織、液体、ならびに赤血球及び白血球を含む細胞ペレット)に分離するために、続いて、4群の各々からのグラフト組織を三重の15mlのコニカルチューブ中で400gで5分間遠心分離した。脂質層及び液体層の体積を記録し、全グラフト組織のパーセンテージとして計算した。各々のサンプルの脂質層及び液体層の体積を測定し、異なる調製物の液体含量及び脂質含量の計算に使用した。図15において示されるように、本明細書において記載された方法及びシステムを使用して調製した脂肪組織(PureGraft )は、未処理の脂肪組織(コントロール)、又は通常の重力方法によって処理した脂肪組織(重力)と比較した場合、有意に低い水分含量であった。具体的には、本発明のシステムを使用して調製した組織の平均液体含量は9.3±0.9%であった。これは重力分離によって調製した組織(25.1±1.8%)よりも有意に低かった(p<0.001)。図16において示されるように、本明細書において説明した方法及びシステムを使用して調製された脂肪組織(PureGraft )は、未処理の脂肪組織(コントロール)、通常の重力方法によって調製された脂肪組織(重力)、及び通常の遠心分離方法によって調製した脂肪組織(遠心分離)と比較して、有意に低い脂質の%含量(v/v)であった。具体的には、本発明のシステムを使用して調製したサンプルにおける残留遊離脂質レベルは、コントロール(非操作)組織(11.5±1.5%、p<0.001)、重力分離(8.9±1.3%、p<0.001)、及び遠心分離(9.6±1.8%、p<0.001)と比較して、平均で0.8±0.3%の遊離脂質であった。グラフトの最初の調製の間に観察された遊離脂質の除去後に、遠心分離によって調製したグラフトで観察された遊離脂質含量(グラフト体積の平均9.6%)が測定されたことに注目されたい。すなわち、グラフトをその構成要素部分に分離した後に、遊離脂質が新しく放出されることは明らかである。これは、遠心分離によって調製したグラフト材料が、グラフトを4つの構成要素部分に分離するために第2の遠心分離を適用する間に、脂質を放出する損傷脂肪細胞を含有していたことを示す。本発明のシステム内で調製されたグラフトに対して同じ第2の遠心分離ステップを適用することが、著しく少ない遊離脂質を示した(体積の0.8%、9.6%と比較して)という事実は、本発明のシステム内で調製されたグラフトがより少ない損傷脂肪細胞を含有していたことを実証する。
【0123】
グラフトの純度を評価するために、各々の組織グラフトからのサンプルをチューブから取り出し、コールターカウンターで組織1グラム当たりの赤血球及び白血球を計数することによって血液含有量を解析した。データをコントロール群に対して標準化し、未処理のグラフト組織1グラム当たりのRBC又はWBCいずれかの含量の相対百分率として表わした。データは全て平均±標準誤差として表わした。スチューデントt検定を使用して、各々のグラフト調製方法の間の差を比較した。図17において示されるデータは、本明細書において開示された方法及びシステムを使用して調製した脂肪組織(PureGraft)が、未処理の脂肪組織(コントロール)、通常の重力調製方法によって調製した脂肪組織(重力)、及び通常の遠心分離方法によって調製した脂肪組織(遠心分離)と比較して、組織1グラム当たりで有意に少ない赤血球(RBC)を有することを示す。したがって、重力分離及び遠心分離は、47.8±7.0%及び53.2±5.4%の赤血球をそれぞれ除去したが、本発明のシステムを使用する調製は、グラフトから98.1±0.01%の赤血球を除去した。同様に、白血球含量は、重力によって58.7±13.7%、遠心分離によって69.7±5.2%、及び本発明のシステムを使用して96.80±0.01%減少した。
【0124】
水、脂質/成熟脂肪細胞及び血球の存在は、グラフト体積の損失を経時的にもたらし得る。図15〜図17において示されるデータは、本明細書において記載したシステムが、乾燥又は脱水した脂肪組織グラフト又はインプラントの調製に役立つことを実証している。
【0125】
以下の実施例は、本明細書において記載された方法によって脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪組織インプラント又はグラフトの産生を記載する。
【0126】
実施例2
豊胸手術を必要又は所望する患者を同定又は選択する。1単位の脂肪組織を患者から取り出し、好ましくは閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持する脂肪由来幹細胞処理装置に提供した。例えば、カニューレは、滅菌液体/組織経路を維持しながら、脂肪由来幹細胞処理装置の組織収集容器又はチャンバ(例えば柔軟性袋)に連結される。確立された技法によってリポサクションを行って被験体から脂肪組織を取り出し、取り出した未処理の脂肪組織を組織収集容器/チャンバ中に引き込む。実質的に全ての生理的食塩水、赤血球、成熟脂肪細胞が除去されるまで、脂肪組織の第1の部分をPBSによってすすぎ洗いし(例えば、組織がもはや明らかに赤色でなくなるまで、連続して洗浄する)、洗浄排出物(廃液、例えば、生理的食塩水、赤血球、成熟脂肪細胞)は、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、組織収集容器又はチャンバに連結されるポートを介して無菌的に除去される。幾つかの実施形態において、廃液ポートは導管によって廃液収集容器に連結され且つ廃液収集容器は真空源及び導管に接合するように構成され且つ/或いは廃液収集容器は1つ又は複数の弁を含有することができる。次いで、洗浄した脂肪組織の第1の部分はさらなる処理のために組織収集容器/チャンバ中で保存するか、又は貯蔵容器又はチャンバに移すことができる。
【0127】
第2のチャンバにおいて、上記のように、組織がもはや明らかに赤色でなくなるまで、脂肪組織の単位の第2の部分をPBSによってすすぎ洗いする。あるいは、リポサクションによって得られた脂肪組織を上記のようにすすぎ洗い及び洗浄し、その後第1の部分及び第2の部分に分割する。第1の部分は脂肪由来の再生力のある細胞の添加のための基質としての使用のために保持され、第2の部分は脂肪由来の再生力のある細胞の懸濁液を以下のように生成するために使用される。コラゲナーゼを含む酵素溶液を、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、組織の第2の部分に無菌的に添加する。組織を37℃で約1時間振動させながら培養する。リポダイジェステート/脂肪由来の再生力のある細胞溶液が未消化の脂肪組織及び脂質から物理的に分離されるように、混合物を沈降させる。脂肪組織の第2の部分から生成したリポダイジェステートを、閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、導管を介して取り出す。
【0128】
次いで、分離したリポダイジェステートを、閉鎖された経路を介して第1のチャンバに連結されている導管を通ってポンプ送りする。リポダイジェステートを第1のチャンバ中の未処理の脂肪組織の第1の部分全体中にポンプ送りする。閉鎖された滅菌液体/組織経路を維持しながら、リポダイジェステートの非細胞構造構成要素を、未処理の脂肪組織の第1の部分を介して廃液容器に流入させる。リポダイジェステートは、重力又は真空源を使用して未処理の脂肪組織の第1の部分を介して濾過可能である。幾つかの実施形態において、リポダイジェステートは未処理の脂肪組織の第1の部分上に成層することができ、リポダイジェステート中に存在する脂肪由来の再生力のある細胞は、遠心分離(例えば、100、200、300、400、500、600、700、又は800gでの高速回転バケット遠心分離)を使用して、未処理の脂肪組織の第1の部分のマトリックス中へ出すことができる。リポダイジェステートの脂肪由来の再生力のある細胞は結合組織断片によって結び付けられ、脂肪由来再生力のある細胞を補充した脂肪の多いグラフトを産生する。次いで、補充又は強化された脂肪の多いグラフトを、ヒト乳房の形状を有する吸収可能なケーシング又はカプセルの材料と共に又はなしで被験体に提供することができる。
【0129】
実施例3
実施例1において記載されるように、脂肪由来の再生力のある細胞を補充した脂肪の多いグラフトを調製する。脂肪由来再生力のある細胞を補充した脂肪グラフトを、被験体の顔面、臀部、胸部、又はふくらはぎに投与するか、又は任意の軟組織欠陥を補正するように投与する。
【0130】
実施例4
脂肪の多いグラフトを必要又は所望する患者を同定又は選択する。本明細書において記載されるか又は当該技術分野において公知であるように、1単位の脂肪組織を患者から取り出す。グラフトを最適化するために、システム300を配向し、システムに接続した廃液袋(図示せず)を床に降ろす。脂肪組織は、外部環境と第1のサブシステムの内部との間の連通を提供する組織接近ポート600を介して、システム300内に導入される。トーミー(Toomey)又は他の当技術分野で認められている注射器を使用して、ポートを介して脂肪吸引液を注入することができる。所望される量の組織が添加されるまで、第1のサブシステムの最大体積を越えないように注意して、これを反復することができる。いったん脂肪吸引液が添加されたならば、ドレーンチューブ上のピンチクランプ(図示せず)を閉鎖する。乳酸加リンゲル又は生理的食塩水等の洗浄溶液及び/又はすすぎ洗い溶液は、ポートを介するホイールクランプ(図示せず)を開くことによって又は滅菌IVチューブによってシステム300内に導入される。添加される洗浄溶液又はすすぎ洗い溶液の量は変動してもよい。一般的には、大多数の脂肪吸引液又は第1のサブシステムにおける他の組織が浸水するように、十分な洗浄溶液をシステム内に導入する。例えば乳酸加リンゲル液のような洗浄溶液を150ml添加する。次に、ホイールクランプを閉鎖し、システムは短時間(例えば15秒)の間、手作業で撹拌する。撹拌は、反転、回転、振動などの形態であり得る。システムは、振盪プラットホーム、オービタルシェーカなどの外部手段によって撹拌される。組織が完全に洗浄された後(観察又はあらかじめ確立した時間間隔によって決定されるように)、ドレーンピンチ弁(図示せず)又はポートを開き、重力下で、排出物は濾過材320及び分離スクリーン330を通過させる。或る特定の期間(例えば3分間)で排出物を排出させる。このサイクルは何回か繰り返すことができる。サイクルは合計4回洗浄のために反復してもよい。最後の洗浄サイクル後に、廃液を5〜10分間排出させる。一般的には、廃液の最大排出は約10分の排出後に起こる。したがって、機械設備の必要なしに、そして操作の簡単な閉鎖された滅菌システムにおいて、血液、腫脹液及び遊離脂質が実質的にない、より乾燥した洗浄された脂肪の多いグラフトが生成される。さらに、このプロセスはわずか20分で完了することができ、外科医は最終ステップ中のシステムの許容排水時間の変更によって水和の所望レベルを制御することができる。
【0131】
脂肪由来の再生力のある細胞(ADRC)によりシステム300の使用によって得られた脂肪グラフトの濃縮が所望されるならば、本明細書において記載された任意の方法、又は当該技術分野において公知の方法によって(CELUTION(登録商標)システムの使用等によって)得られたADRCを、乳酸加リンゲル液の袋の近くのポートを介して添加し、乳酸加リンゲル液又は他の好適な溶液により5秒間以上、追跡することができる。次いで本明細書において説明されるように、システムを例えば15秒間撹拌し、次いでADRCが増強された脂肪の多いグラフトを必要に応じて患者の体内に注入又は戻すことができる。
【0132】
均等例
当業者であれば、日常行われるに過ぎない実験を用いて、本明細書において説明した本発明の特定の実施形態の多くの均等例を認識し又は想到することができよう。かかる均等例は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明に含まれるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置であって、
第1のチャンバ及び第2のチャンバを備えた柔軟性の押しつぶし可能な袋を有し、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバは、細孔を備えたフィルタによって画定され、
前記第2のチャンバ内に設けられたセパレータを有し、
前記柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された入口ポートを有し、前記入口ポートは、前記第1のチャンバ内への脂肪組織の無菌的導入を可能にするよう構成されており、
前記柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された出口ポートを有し、前記出口ポートは、前記第2のチャンバから液体及び細胞を無菌的に取り出すよう構成されている、装置。
【請求項2】
前記セパレータは、前記第2のチャンバ内に設けられた自由浮動多孔質構造体である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記セパレータは、前記第2のチャンバ内に第3のチャンバを構成する多孔質構造体である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記袋は、二重ヒートシールによって互いに接合された第1の外側シェルと第2の外側シェルを有する、請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
前記フィルタは、二重ヒートシールによって前記第1の外側シェル及び前記第2の外側シェルに接合されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記セパレータは、脂質吸い上げ材料から成る、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項7】
前記脂質吸い上げ材料は、ポリエステルメッシュスクリーンである、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記セパレータは、前記フィルタの細孔よりも大きな複数個の細孔を有する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のフィルタの孔径は、前記フィルタの前記孔径よりも大きく、或いはその約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記フィルタの前記孔径は、約30μm以上である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項11】
前記フィルタの前記孔径は、約30μm〜約200μmである、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項12】
前記セパレータは、細孔を有し、前記セパレータの細孔は、約300μm〜2000μmである、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項13】
前記入口ポートは、アダプタに解除可能に連結されるよう構成され、前記アダプタは、注射器筒の先端部に解除可能に連結されるよう構成されている、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項14】
前記入口ポートは、物質が前記ポートに入ることができるが、前記ポートから出ることができないよう構成されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記入口ポートは、変形可能なプラスチック弁を備えている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記注射器筒は、60mlカテーテル注射器筒である、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記入口ポートは、滅菌流体/組織経路を維持した状態でカニューレに取り付けられるよう構成されている、請求項1〜16のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項18】
第2の装置を更に有し、前記第2の装置は、前記装置に取り付けられた脂肪由来再生細胞単離装置を含む、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の装置は、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置を含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記第2の装置は、単離された脂肪由来再生細胞を前記第2の装置から請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置の前記第1のチャンバに移送するよう構成された導管によって請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置に連結されている、請求項18記載の装置。
【請求項21】
前記導管は、Yコネクタを有する、請求項20記載の装置。
【請求項22】
脂肪組織グラフトを作製する方法であって、
(a)未処理脂肪細胞の第1の部分を得るステップと、
(b)前記未処理脂肪組織の第1の部分を請求項1〜17のうちいずれか一に記載の第1の装置の前記第1のチャンバ内に導入するステップと、
(c)生理学的洗浄溶液を前記第1のチャンバに追加することによって前記未処理脂肪組織の第1の部分をすすぎ洗いするステップと、
(d)前記第1の装置の前記第2のチャンバから、水、生理学的洗浄溶液、血液、遊離脂質又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された流体を除去し、それにより前記脂肪組織を乾燥させるステップを有する、方法。
【請求項23】
前記生理学的溶液は、乳酸加リンゲル液、ハートマン溶液、生理的食塩水及びPLASMALYTE(登録商標)溶液から成る群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ステップ(c)の前記乾燥脂肪組織は、前記導入ステップに先立って、前記未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/2、1/3又は1/4倍以下である液体含有量まで脱水する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ステップ(c)の前記乾燥脂肪組織は、前記導入ステップに先立って、前記未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/3倍以下である液体含有量まで脱水する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離し、ステップ(d)の前記脱水脂肪組織を前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団がステップ(d)の前記乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団に接触させるステップを更に有する、請求項22〜25のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項27】
前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団は、ステップ(c)の前記脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心分離作用を受けない、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団は、前記第2の装置の前記第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を前記脂肪由来再生細胞を遊離させる条件下でコラゲナーゼに接触させることにより請求項1〜17のうちいずれか一に記載の第2の装置内で調製される、請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
前記接触ステップは、前記第1の装置に取り付けられた請求項1〜17のうちいずれか一に記載の前記第2の装置内で実施される、請求項28記載の方法。
【請求項1】
脂肪組織グラフトが得られるよう組織を調製する装置であって、
第1のチャンバ及び第2のチャンバを備えた柔軟性の押しつぶし可能な袋を有し、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバは、細孔を備えたフィルタによって画定され、
前記第2のチャンバ内に設けられたセパレータを有し、
前記柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された入口ポートを有し、前記入口ポートは、前記第1のチャンバ内への脂肪組織の無菌的導入を可能にするよう構成されており、
前記柔軟性の押しつぶし可能な袋に連結された出口ポートを有し、前記出口ポートは、前記第2のチャンバから液体及び細胞を無菌的に取り出すよう構成されている、装置。
【請求項2】
前記セパレータは、前記第2のチャンバ内に設けられた自由浮動多孔質構造体である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記セパレータは、前記第2のチャンバ内に第3のチャンバを構成する多孔質構造体である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記袋は、二重ヒートシールによって互いに接合された第1の外側シェルと第2の外側シェルを有する、請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
前記フィルタは、二重ヒートシールによって前記第1の外側シェル及び前記第2の外側シェルに接合されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記セパレータは、脂質吸い上げ材料から成る、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項7】
前記脂質吸い上げ材料は、ポリエステルメッシュスクリーンである、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記セパレータは、前記フィルタの細孔よりも大きな複数個の細孔を有する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のフィルタの孔径は、前記フィルタの前記孔径よりも大きく、或いはその約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍以上である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記フィルタの前記孔径は、約30μm以上である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項11】
前記フィルタの前記孔径は、約30μm〜約200μmである、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項12】
前記セパレータは、細孔を有し、前記セパレータの細孔は、約300μm〜2000μmである、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項13】
前記入口ポートは、アダプタに解除可能に連結されるよう構成され、前記アダプタは、注射器筒の先端部に解除可能に連結されるよう構成されている、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項14】
前記入口ポートは、物質が前記ポートに入ることができるが、前記ポートから出ることができないよう構成されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記入口ポートは、変形可能なプラスチック弁を備えている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記注射器筒は、60mlカテーテル注射器筒である、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記入口ポートは、滅菌流体/組織経路を維持した状態でカニューレに取り付けられるよう構成されている、請求項1〜16のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項18】
第2の装置を更に有し、前記第2の装置は、前記装置に取り付けられた脂肪由来再生細胞単離装置を含む、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の装置は、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置を含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記第2の装置は、単離された脂肪由来再生細胞を前記第2の装置から請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置の前記第1のチャンバに移送するよう構成された導管によって請求項1〜17のうちいずれか一に記載の装置に連結されている、請求項18記載の装置。
【請求項21】
前記導管は、Yコネクタを有する、請求項20記載の装置。
【請求項22】
脂肪組織グラフトを作製する方法であって、
(a)未処理脂肪細胞の第1の部分を得るステップと、
(b)前記未処理脂肪組織の第1の部分を請求項1〜17のうちいずれか一に記載の第1の装置の前記第1のチャンバ内に導入するステップと、
(c)生理学的洗浄溶液を前記第1のチャンバに追加することによって前記未処理脂肪組織の第1の部分をすすぎ洗いするステップと、
(d)前記第1の装置の前記第2のチャンバから、水、生理学的洗浄溶液、血液、遊離脂質又はこれらの任意の組み合わせから成る群から選択された流体を除去し、それにより前記脂肪組織を乾燥させるステップを有する、方法。
【請求項23】
前記生理学的溶液は、乳酸加リンゲル液、ハートマン溶液、生理的食塩水及びPLASMALYTE(登録商標)溶液から成る群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ステップ(c)の前記乾燥脂肪組織は、前記導入ステップに先立って、前記未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/2、1/3又は1/4倍以下である液体含有量まで脱水する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ステップ(c)の前記乾燥脂肪組織は、前記導入ステップに先立って、前記未処理脂肪組織の第1の部分の液体含有量の約1/3倍以下である液体含有量まで脱水する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
一集団をなす脂肪由来再生細胞を脂肪組織の第2の部分から単離し、ステップ(d)の前記脱水脂肪組織を前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団がステップ(d)の前記乾燥脂肪組織に浸透することができる条件下で前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団に接触させるステップを更に有する、請求項22〜25のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項27】
前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団は、ステップ(c)の前記脱水脂肪組織を接触させるステップに先立って、遠心分離作用を受けない、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記脂肪由来再生細胞の前記単離された集団は、前記第2の装置の前記第1のチャンバ内に存在する脂肪組織を前記脂肪由来再生細胞を遊離させる条件下でコラゲナーゼに接触させることにより請求項1〜17のうちいずれか一に記載の第2の装置内で調製される、請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
前記接触ステップは、前記第1の装置に取り付けられた請求項1〜17のうちいずれか一に記載の前記第2の装置内で実施される、請求項28記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−525157(P2012−525157A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508801(P2012−508801)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033283
【国際公開番号】WO2010/127310
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(503077877)サイトリ セラピューティクス インコーポレイテッド (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033283
【国際公開番号】WO2010/127310
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(503077877)サイトリ セラピューティクス インコーポレイテッド (32)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]