説明

組織固定−脱水−脱脂−含浸装置

【課題】組織の処理および解析に必要な時間を減少させ、実験室設備のサイズ、使用される試薬の容積、およびコストを減少させる、装置を提供する。
【解決手段】装置は(a)(i)組織標本を固定し脱水し、第1の容器中非水性溶液で組織標本から脂肪を除去し、(ii)該組織標本と非水性溶液を該第1の容器中で攪拌し、(iii)該第1の容器中の組織標本と非水性溶液をマイクロ波エネルギーに暴露し、固定・脱水・脂肪を除去した組織標本を作製するマイクロ波プロセッサー;及び該第1の容器と液体的に連結している非水性溶液源、(b)(i)該組織標本を第2の容器中ワックス溶液で含浸し、(ii)該組織標本と該ワックス溶液を該第2の容器中で攪拌し、(iii)該組織標本と該ワックス溶液を真空下で高温に暴露して、固定・脱水・脂肪を除去・含浸した組織標本を作製する含浸ユニット;及び該第2の容器と液体的に連結しているワックス溶液源、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景技術)
(1.技術分野)
本発明は、迅速で、連続的な流れの、顕微鏡検査用の組織の、固定から含浸までの処理のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の記載)
従来の方法では、含浸の前に、固定用にリン酸バッファー10%ホルムアルデヒド、脱水用に1連の濃度を順に増加したエタノールおよび洗浄用にキシレンの、別々の溶液でインキュベーションすることによって、組織学用の組織を調製していた。通常8時間またはそれより長時間、この処理に時間を要するので、これら別々のステップ−固定、脱水、洗浄、および含浸−を完了するには通常、これらの仕事用にデザインされた自動機器で1夜を要している(例えば、米国特許第3,892,197号、第4,141,312号、および第5,049,510号を参照)。典型的な自動組織処理機器(TISSUE−TEK)は、8時間より多くを必要とし、そして以下のように、組織試料のバッチを処理するようにプログラムされている。
【0003】
【表1】

【0004】
そのような従来の方法は、組織標本が手術室、医局またはその他の場所から病理研究室に送られるのに1日;組織標本が調製されるのに1夜;そして病理学者が、早くとも翌日、研究室に標本が配送されてからほとんど24時間後に、組織切片の顕微鏡検査に基いて診断を下す、ということが必要とされる(図1)。病理学者からの報告の恩恵が外科医に与えられるのが、最小限1日遅れるのに加えて、標本のバッチ処理の必要性、機器が終夜運転されていることに伴う安全に関すること、機器の故障のリスクおよび機器をモニターする必要性、および、自動化したときにそのような処理に要する大量の試薬の使用による廃棄物、によって必然的となる、病理研究室における、仕事の流れの妨げに関連した問題がある。更に、このプロセスに使用される試薬に関連した煙霧および毒性物質に対する、実験室員の曝露を防止するに高価な対策が必要とされる。また、従来の方法により産生される大量の廃溶媒やパラフィン屑は、環境を汚染する。
【0005】
従来の固定および処理は、DNA、特にRNAの構造に不可逆的な損傷の原因となり、診断および研究への遺伝子技術の応用を制限している。従って、ほとんどのDNAおよびある種のRNA解析は、例えば新鮮な組織の瞬間冷凍のような、材料の取扱いといった特別な注意を必要とする。なぜなら遡及的遺伝子解析は、従来の組織処理技術により、損なわれるからである。
【0006】
凍結切片の組織学的診断は、パラフィンブロックから調製した切片に比べ、多くの欠点を有している:凍結切片から作成したスライドは、「品質の均一性・・・を有していない」;「検査される同一標本の連続切片を作るには技術的に、より困難である」;「充分に薄い切片を確保し、標本の細部の破損の可能性を避けるために、標本を切削するのに極度の注意を働かせねばならない」;そして全てのスライドは「最初の冷凍状態にある間に」調製されなければならない。なぜなら「もし、組織が溶け、切片とされるのに再凍結されると、ひどく損傷されるからである」(米国特許第3,961,097号)。
【0007】
診断の目的のために、組織の処理および解析を促進するという関心が存在している。更に、最近のヘルスケアの焦点は、組織処理を含め種々の処置のコストを減らすことを目標としてきた。組織処理のコストは、時間、調製および解析に要するスペース、試薬(処理および廃棄取扱いの両方に要する量)、および必要な人数、に関連している。より重要なことは、患者およびその医者は、治療の指針である病理学者による評価および診断に依存している。組織処理を完了するのに必要な時間量を減ずることは、標本を受理し、外科医へ病理学者の報告が配達されるまでの期間中に経験する不安を減じることになる。
【0008】
組織処理に要する時間を短縮する要請が、他の人達によって認識されているが、しかし、彼らは、従来の方法に単に適度な改良を行っただけであった。組織処理を促進するために、米国特許第4,656,047号、第4,839,194号、および第5,244,787号は、マイクロ波エネルギーを使用している;米国特許第3,961,097号および第5,089,288号は、超音波エネルギーを使用している;そして米国特許第5,023,187号は、赤外エネルギーを使用している。米国特許第5,104,640号は、固定剤、安定剤、および可溶化剤の血液スメアー(smear)をスライドに接着させる非水性組成物を開示している。しかしながら、前述の特許は、診断用組織スライドを調製する全プロセスが、固定から開始して含浸で終了する、試料の連続処理(continuous throughput)を、2時間より少ない時間で完了できる、ということを教示または提案していない。本発明は、そのようなプロセスを提供するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の概要)
本発明の目的は、組織の処理および解析に必要な時間を減少させ、そして時間の減少、実験室設備のサイズ、使用される試薬の容積、および必要な人数によるコストを減少させる、組織処理のための組成物、およびそれらを利用するためのシステムを提供するにある。このことにより、手術を受けている患者に対する外科病理の現在の実務を、迅速な応答へと変換することが可能となり、そして手術室に近接した、病理学者による治療時点での診断を可能にするであろう。
【0010】
固形組織の処理および解析に関して、組織切片は、顕微鏡下での検査のためには4から6ミクロンのオーダーでなければならない、切削によって得ることのできる新鮮な組織の最も薄い薄片は約1mmであり、典型的な薄片は3mmのオーダーである。顕微鏡検査用の充分に薄い切片を作るためには、組織を硬くする必要があり、そうすることによってより薄い切片が、例えば、ミクロトームによる切片作成によって、得ることができる。本発明は、組織の硬化過程を大幅に加速し、その結果、従来の1夜の処理を、全部で40分のオーダーの処理に変換するものである。かくして、我々は、組織が病理研究室に受け入れられた時点から2時間より少ない時間で、ミクロトーム切片作成に適した含浸組織ブロックの調製を可能にする、簡単、安全、低コスト、迅速かつ信頼性のある方法を開発した。本方法は、標本の連続的な流れを可能にし、自動化に適応することができ、ホルマリンおよびキシレンの毒性のある煙霧を除き、組織処理の標準化を可能にし、そして従来の方法よりも比較的少量の試薬を必要とするものである。本発明により、新鮮な、または前以て固定された組織のいずれも処理することができる。
【0011】
組織処理に必要な時間の低減に加えて、本発明による組織の迅速な調製は、従来の方法では喪失した組織構造および形態を保存することを可能にする。
【0012】
更に、開示された本発明で処理された組織での研究は、DNAおよび特にRNA抽出が、従来の処理方法よりもよりよく保存されることを示している。それで、病院および他の環境で得られた組織は、研究室に送達後直ぐに組織学および遺伝子研究の両方のために処理することができ、資料としての材料が、将来の研究およびその他の応用に使用し得ることになる。遺伝子材料の取得、資料としての遺伝子材料の安定性、遺伝子材料のサイズおよび完全性、および遺伝子材料の化学的変化の低減が、公知技術に比較して、改善されることが期待され得る。
【0013】
本発明の目的は、連続処理による組織学用の組織の迅速な処理のための方法および装置を提供するものである。「連続処理」は、数分遅れて、追加の試料にシステムをアクセスすることを意味する。それゆえ、任意の与えられた時間で、組織の試料が、処理の異なった段階にある。別の言葉では、我々の方法では、組織処理の種々のステップに沿って、標本の連続処理および流れがある。我々の方法とは対照的に、従来の方法が8時間より長い時間を要するために、バッチ処理が現在必要とされている。試料は、全体の機器のサイクルが完了するまで追加試料にアクセスすることができない、自動機器に置かれる。全てのこれら組織試料は、機器のサイクルの任意に与えられたステップにおいて、同じ処理段階にある。
【0014】
本発明のまた別の目的は、組織学用の組織の迅速、かつ連続流れ処理のための、非水性試薬を提供することにある。
【0015】
本発明の更なる目的は、組織処理におけるホルマリンおよびキシレンのような、毒性物質の必要性を取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1様相においては、組織標本が固定され、脱水され、そして脂肪が除去される。使用される適当な混合物は、固定剤および脱水剤を含む非水性溶液、好ましくはケトンおよびアルコールであり;アルコール対ケトンの容量比は約1:1から約3:1の間である。組織標本は、約25分より少ない時間、好ましくは15分より少ない時間、そして更により好ましくは5分より少ない時間、インキュベーションされる。インキュベーションは、好ましくは約30℃と65℃の間、より好ましくは約40℃と55℃の間、そして最も好ましくは約45℃と50℃の間である。
【0017】
本発明の別の1様相は、組織標本の固定、脱水、脂肪除去、および洗浄である。本発明のこの様相における好ましい溶液は、アルコールおよび洗浄剤である。この処理は約5分より少ない時間で完成する。
【0018】
本発明のまた別の様相において、組織標本は、洗浄剤および含浸剤を含む単一溶液中で洗浄されそして含浸される。好ましくは、この処理は、約5分より短い時間で完成される。切片作成に先立って、含浸された組織標本は含浸剤中に包埋される。
【0019】
固定され、脱水され、そして脱脂された組織標本は、次いで、ワックス溶液中に含浸される。組織標本の脱水に一致して、ワックス溶液の水分含量はできるだけ低いことが好ましい。それゆえ、ワックス溶液は、溶解している水分を蒸発するためワックスを加熱して、および減圧下で脱気して、含浸の前に調製される。組織標本の含浸は、組織標本から溶媒を除去するため、およびワックス溶液を組織標本に引き入れるために、大気圧より低い圧力下、および昇温下で行われる。減圧は、試料中に存在する溶媒の拡散を加速し、蒸発温度を低くすることによって含浸時間を減じる。ワックス溶液は、脱気パラフィンおよび/またはミネラルオイルを含む。組織標本の含浸は、約15分より少ない時間で完了する;好ましくは、約10分より少ない時間で完了する。切片作成の前に、含浸した組織標本は、組織ブロックを形成するため含浸剤に包埋される。
【0020】
本発明の別の実施態様は、1連の溶液中で、固定から含浸まで組織標本を処理することであり、少なくともそのいくつかは、同時に、固定、脱水、脂肪の除去、および含浸、の1つ以上の仕事を実行する混合物である。混合物は、固定剤、脱水剤、および脂肪溶媒(例えば、ケトンおよびアルコール)を含む。別の溶液は、固定剤、脱水剤、脂肪溶媒、および洗浄剤(例えば、アルコールおよびキシレン)を含む。更に別の溶液は、洗浄剤および含浸剤(例えば、キシレンおよびパラフィン)を含む。組織標本は、異なった鎖長(例えば、室温で、液体であるミネラルオイルおよび固体であるパラフィン)の混合物を含むワックス溶液中で含浸される。好ましくは、混合物は少なくとも2つの異なった化学薬品(例えば、アルコール)を含有する。
【0021】
処理時間は、非水性混合物(例えば、固定剤−脱水剤−脂肪溶媒、固定剤−脱水剤−脂肪溶媒−洗浄剤、洗浄剤−含浸剤)、組織標本内を1様に加熱するための熱源としてマイクロ波エネルギー、および減圧源を使って圧力を減じることにより、低減することができる。溶液の組織標本内への拡散および化学薬品の置換は、機械的攪拌、加熱、減圧、あるいはこれらの組み合わせによって促進される。
【0022】
上記のステップは、固定増強剤、界面活性剤、または両者を、処理に使われる溶液に加えることによって加速される。固定増強剤はポリエチレングリコール(PEG)、モノ−およびジメチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、その他であり;使用されるポリマーは約100と約500の間の平均分子量、好ましくは約300の分子量である。界面活性剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、TWEEN−80)、ジメチルスルホコハク酸ナトリウム、中性家庭用洗剤、その他である。
【0023】
固定剤は、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、アルデヒド(例えば、アセチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、酢酸、酢酸鉛およびクエン酸鉛、水銀塩、クロム酸およびその塩、ピクリン酸、四酸化オスミウム、その他である。
【0024】
組織標本は、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、エチルブタノール、ジオキサン、エチレングリコール、アセトン、アミルアルコール、その他で脱水される。
【0025】
脂肪は、組織標本から、例えば、アセトン、クロロホルムまたはキシレンのような有機溶媒と共に除去される。
【0026】
洗浄剤は、キシレン、リモネン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、石油エーテル、二硫化炭素、四塩化炭素、ジオキサン、丁子油、シーダー油、その他である。
【0027】
組織標本は、パラフィン、ミネラルオイル、非水溶性ワックス、セロイジン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、寒天、ゼラチン、ニトロセルロース、メタクリル酸樹脂、エポキシ樹脂、その他のプラスチック媒体、その他に、含浸および/または包埋される。
【0028】
本発明の文脈において、「組織標本」は、ここに開示された方法によって処理される組織片である。また、いかなる生体液(例えば、腹水、血液、胸膜浸出液)からの単一の細胞、あるいは固体臓器の吸引または体腔の洗浄から得た細胞懸濁液を称する。単一細胞は、処理の前に沈降または浮力遠心分離によってペレットにされる。
【0029】
本発明の方法は、細胞−細胞接触、組織構成、臓器構造、あるいはこれらの組合せが保存されねばならないような、組織標本に特に適している。そのような標本は、好ましくは、その最小の寸法で約3mmより小さい、より好ましくは、約2mmより小さい、更により好ましくは、約1.5mmより小さい、そして最も好ましくは、約1mmより小さい、組織薄片である。
【0030】
組織標本は、新鮮なもの、部分的に固定したもの(例えば、10%ホルマリンで2−3時間固定)、または固定したもの(例えば、10%ホルマリンまたはその他の固定化剤で1夜固定)である。上記発明は、固定から含浸までの組織標本の処理が、約2時間より少ない時間、好ましくは約90分間より少ない時間、より好ましくは約1時間より少ない時間、更により好ましくは約45分間より少ない時間、そして最も好ましくは約30分間より少ない時間、処理されることを許容する。組織標本が、固定されまたは部分的に固定されると、それに従って処理時間が短縮される。組織は、手術室から病理研究室に水溶液中で運搬される;そのような運搬液は、ここに記載した、水性バッファーと非水性混合物の等容量からなる。
【0031】
含浸に続いて、組織標本は、ブロックを作るために包埋することができる。組織標本を包埋するのに使用する試薬は、好ましくは、含浸に使用した材料と同じであるが、しかし、異なった含浸剤も、また、使用し得る。ブロックとなった組織標本は、約1ミクロンと約50ミクロンの間、好ましくは約2ミクロンと約10ミクロンの間、の組織切片を作成するためにミクロトームに装着することができる。組織切片は、更に、組織化学染色、抗体結合、in situ核酸ハイブリダイゼーション/増幅、あるいはこれらの組合せのために処理される。次いで、組織標本は、典型的には顕微鏡によって検査される。しかし、細胞の性質を検出するための他の技術も、処理した組織標本を検査するために使用され得る(例えば、自動化サイトメトリー、オートラジオグラフィー、核酸の電気泳動)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
組織の迅速な、連続的組織学的処理の処理方法および装置が開示される。固定、脱水、脂肪除去、および含浸のステップを、約2時間より少ない時間で完遂することができる;このことは、病理学者が、試料を受領後短時間に、多分患者が手術中か回復室にいる間に、評価することを可能にする。病理診断に必要な時間を減じることによって、患者の不安を減らすことができる。組織標本の厚さの低減、混合物を含む非水性溶液の使用、高められた温度および攪拌による溶液交換、マイクロ波放射による組織および溶液の均一な加熱、減圧下での含浸、またはそれらの組合せによって、迅速かつ連続処理が完遂される。
【0033】
固定、脱水、および脂肪の除去が、含浸の前に組織の調製に必要である。これらのステップは、組織を処理する前に適当な大きさにトリミングすることにより、そして、そのような組織ブロックを保持し、固定、脱水、脂肪除去、および含浸するための溶液の間の運搬を容易にするカセットを用いることによって、促進される。
【0034】
固定は、組織標本の硬化で開始され、タンパク質の架橋および細胞分解の停止によって細胞形態が保存される。化学薬品固定がないと、内酵素が細胞を異化し溶解し、そして組織の組織学が変ってしまう。そのような固定剤は、ケトン、アルデヒド、アルコール、酢酸、重金属、クロム酸、ピクリン酸、あるいは四酸化オスミウムである。不適当な固定を示唆するものとして、以下を含み得る:組織構造の解離、組織切片中の気泡、貧弱で不規則な染色、萎縮した細胞、細胞質の凝集、濃縮したはっきりしない核クロマチン、および赤血球の自己融解/溶血。
【0035】
脱水は、組織標本から水分を除去し硬化を促進する。組織標本中の水分を脱水剤で置換することは、また、次に脱水剤を含浸に使用する材料で置換するのを容易にする。この溶液交換は、脱水用揮発性溶媒の使用によって強化される。脱水剤は、低分子アルコール、ケトン、ジオキサン、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールである。標本の脱水に失敗すると、不十分な含浸、切片作成中の貧弱なリボンの形成、組織切片の裂け目、構造の解離、組織切片中の水の結晶、および貧弱な染色、をもたらす。
【0036】
組織標本中の脂肪は、それが洗浄および含浸を損なうので、溶媒と共に除去される。不十分な脂肪除去は、組織切片のアーチファクト(artifacts)の拡散、組織切片のしわ、および貧弱な染色、をもたらす。
【0037】
所望により、組織標本は洗浄される。洗浄剤は組織標本から脱水剤を抽出し、不透明度を減じる。洗浄剤の例は、キシレン、リモネン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、石油エーテル、二硫化炭素、四塩化炭素、ジオキサン、丁子油、またはシダー油を含む。
【0038】
最後に、1度組織標本が好適に固定され、脱水されると、ワックス、セロイジン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、寒天、ゼラチン、ニトロセルロース、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはその他のプラスチックのような、含浸剤によって硬化される。含浸した標本をブロックに置き、ミクロトームナイフで10ミクロンまたはそれより薄い切片を得る前に、細胞形態の適切な保存と共に、組織標本の適切な硬化が必要とされる。好ましい含浸材料は、市販のワックス類、異なった融点のワックスの混合物(例えば、流動ミネラルオイルおよび固形パラフィン)、パラプラスト、バイオロイド、エンベドール、プラスチック、その他である。パラフィンは、安価であり、取り扱いやすく、そしてこの材料によってもたらされる構造の統一性によってリボン切片を得るのが容易になるので、本明細書の実施例の中で使用するのに選ばれている。
【0039】
もし、組織標本の処理が不完全であると、ミクロトームナイフでカットされた切片は、ひび割れたり、または「ばらばら」になる。組織処理は、以下の問題の1つ以上に遭遇するとき、失敗と思われる:包埋した組織ブロックが柔らかすぎるか硬すぎる、切片が包埋剤とは異なった圧縮値となるかあるいは示す、切片が柔らかである、組織リボンが形成できないか曲がってしまう、切片が砕けるあるいは破れる、赤血球が溶血する、細胞質が凝集する、クロマチンの濃縮、核封入体の好塩基性染色、萎縮した細胞、アーチファクトの拡散、および虫食い効果。
【0040】
ガラススライド上のワックス含浸切片について、ワックスは、染色または免疫組織化学の前に融解され、除かれる。組織切片は、復水され、染色または抗体により以下に記載したようにして解析される。染色が完了し、あるいは組織化学反応が展開した後、スライドはカバーグラスをかけ、顕微鏡下で観察される。代りに、染色または抗体付加標本は、サイトメトリー機器で検査される。組織ブロックは、標本保存の目的あるいは遡及的研究用に保存される。
【0041】
本発明は、処理した組織からの、核酸、DNAあるいはRNAの調製にも両立する。それゆえ、臨床病理研究室で日常的に採集された標本に対しても、遺伝子研究が可能である。これらの技術の結合した力は偉大である。組織学的観察は、1つの切片を染色または免疫組織化学によって解析し、そして遺伝子解析用に隣接した切片から核酸を調製することによって、遺伝学との相互関係を明らかにすることができる。例えば、同一切片の死んだ領域と正常領域を遺伝子相異(例えば、突然変異、転写レベル)を検出するために比較することができ、疾病の進行を、いくつかの時間点で試料を採取し、遺伝子相異を比較することによって特徴づけることができ、そして腫瘍の進展を、原発ガンから転移への遺伝子相異の蓄積に従って評価することができる。
【0042】
多くの特色が、本発明を特徴づける:(a)処理する前の組織の薄切り;(b)組織標本の連続投入、およびシステムを通しての連続した流れ;(c)溶液からの水分の除去(即ち、非水性溶液);(d)均一な加熱(例えば、マイクロ波エネルギー)により行われる組織の固定、脱水、脂肪除去、洗浄、および含浸;(e)固定−脱水−脂肪除去、固定−脱水−脂肪除去−洗浄、および洗浄−含浸のための混合溶液;および(f)脱気含浸剤と共に減圧下での組織の含浸。これらの特色は、本発明を簡便で、実用的で、実行容易であり、かつ、自動化にかなうものにする。
【0043】
ヘマトキシリン−エオシン染色は組織学的研究に一般的に使用されており、病理学者による比較の標準と考えられる。更に、本発明は、一般的に文献、例えば、Thompson(組織化学および組織病理学方法抜粋、C.C.Thomas,Springfield,Illinois,1966)、Sheehan and Hrapchak(組織技術の理論および実際、C.V.Mosby,St.Louis,Missouri,1973)、およびBancroft and Stevens(組織学の技術の理論および実際、Churchill Livingstone,New York,1982)、に記載されているような、トリクローム、レチクリン、ムシカルミン、およびエラスチック染色を含む他の染色と両立し得ることが発見された。そのような染色手順は、完成にほんの5分を要するだけのFisher Scientificから得られる急速染色法があるものの、完成には30分から数時間を要する。
【0044】
組織は、解剖、生検(例えば、内視鏡生検)、あるいは外科手術から得られる。ガンの手術については、染色組織切片から病理学的診断を提供する能力があり、患者が手術室から離れる前に使用可能な情報を外科医に提供できる。例えば、ガンが切除組織に限定されているという病理学者からの指摘は、外科医に処置を保存的にし、近隣の健全な組織を保存することを可能にする。代りに、ガンが切除臓器に限定されていないという病理学者による所見は、患者が手術室に未だいる間により侵襲的な外科治療を可能にする。
【0045】
本発明により、20,000を超える組織検体が、成功裏に処理された。それらは以下を含む:脳、胸部、ガン(例えば、大腸、鼻咽喉、胸部、肺、胃)、軟骨、心、肝、腎、リンパ腫、髄膜種、胎盤、前立腺、胸腺、扁桃、臍帯、および子宮。ミネラル化組織(例えば、骨、歯)は、本発明によって処理する前に脱石灰が必要である。例えば、組織は、Stephens Scientific(Allegiance Healthcare Supply,カタログNo.1209−1A)から得られる塩酸/エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液により、製造者の指示書に従って脱石灰される。
【0046】
本発明により処理される組織切片は、また、免疫組織化学にも使用できる。本発明は、抗原が回収され保存されている組織標本を提供し、固定剤の選択は、特定の抗原の回収および保存のために最適化され得る。非特異的結合部位は、ブロックされ、抗原が特異的抗体により結合され(即ち、1次抗体)、そして非結合抗体は除かれる。もし、プローブまたはシグナル発生部分により標識されていれば、1次抗体は直接検出されるが、しかし、プローブが1次抗体に特異的に結合するタンパク質(例えば、2次抗体)に結合していることが好ましい。2次抗体は、1次抗体の重鎖または軽鎖定常部に対して上昇される。これは、各1次抗体は多くの2次抗体と結合するので、抗原−抗体結合によって発生したシグナルを増幅する。これとは別に、ビオチン−ストレプトアビジンのような、その他の特異的作用を通して増幅が起こり得る。抗体結合は、高価な試薬の使用を減じ、高い結合率を保つため小容量で実行される;この小容量の蒸発は、加湿箱でインキュベーションすることにより減少される。シグナル発生部分は、組織に存在しない酵素が望ましい。例えば、アルカリ性ホスファターゼおよび西洋わさびペルオキシダーゼは2次抗体に結合され、あるいはストレプトアビジンに結合される。可視的に検出できる色素原、蛍光、または発光産物を発生するこれら酵素のための基質は、入手可能である。
【0047】
抗原に対する染色パターンは、対照染色によって表わされた細胞構造に従って抗原の局所発現に使用できる。抗原の発現は、細胞または組織型、発生段階、腫瘍予後マーカー、退化代謝過程、あるいは病原体による感染、を同定できる。
【0048】
抗原−抗体結合は、オートラジオグラフィ、エピ蛍光顕微鏡、または電子顕微鏡により、それぞれ、放射能、蛍光、またはコロイド金属プローブで、可視化される。類似のプローブが、遺伝子突然変異または転写を同定するため、in situハイブリダイゼーションにより、組織切片の核酸を検出するために使用される;別の云い方をすれば、核酸(DNAまたはRNA)は、組織切片から抽出され、そして更に遺伝子解析する前にブロッティング、または増幅により直接解析される。
【0049】
突然変異は生殖系に起こる可能性があり、疾病の遺伝的素質を追跡するのに使われ、あるいは突然変異は、体性的である可能性があり、疾病病因における遺伝子変化を決定するのに使用される。疾病は、代謝または神経的な不全、悪性度、発生上の欠損、あるいは感染原に起因する。本発明は、簡単な手順で室温保存により遺伝子解析用の材料を保存する。
【0050】
本発明は、従来の方法によって処理された組織よりも高い、平均分子量の核酸を大量に与える組織を保存することが想像される。
【0051】
本発明によって提供される、組織処理のための例示的なシステムによれば、連続した組織を処理する場所、例えば、単一組織処理単位または領域、が提供される。非制限的実施例によれば、適当な組織処理装置は、図3に描かれている。
【0052】
組織処理装置または別の所で行われる、処理の第1のステップは、硬化および最終的な検査のための適切な組織試料を調製することである。典型的には、対象となる組織の薄片を調製する。できるだけ薄いスライス、厚さ、約1ないし3mm、好ましくは1ないし2mmのものが得られる。処理時間は、処理される組織試料の大きさに比例する。組織スライスは、組織が次のステップに移る直前までの間収納される組織カセット中に置かれる。次いで、組織カセットは、本発明に従って提供される第1溶液中に置かれる。
【0053】
実施例に従って、カセット10は、中に第1溶液14を有し、好ましくは処理方法が記載されているようにそれ自身が、実質的に連続したものであり、あるいは限定された別の数の、類似した組織カセットと共に、従来のビーカー12内に置かれる。ビーカー12は、図4に記載されているように、シェーカーバス16内に置かれ、ゆっくり攪拌され、同様に加熱される。我々は、この目的のために、LAB−LINE/DUBNOFFインキュベーター−シェーカーバスを使用した。組織試料が曝露され、そして、実際、最終的に脱水されるのに水分を最小限にする目的のため、水よりもむしろ、我々は、シェーカーバス16中の温度伝導液18としてグリセリンを選んだ。グリセリンは、熱エネルギーの効率的な伝同体であり、しかし蒸発しないという有利な点を有している。蒸発は、組織が処理される環境の湿気を望ましくないように増加させ、そして定期的な補充を必要とする。グリセリンは補充も環境に対して湿気を加えることもないので、最も好ましい。処理のこの段階で、組織試料(カセット10の中)を、シェーカーバス18中で約3−15分、第1溶液中で処理する。
【0054】
追加の攪拌が必要ならば、シェーカーバスステップの間に行われる。現在は、外部ポンプ(A)(図3)が、それからチューブが、バブリング用の溶液ビーカー12または他の受容器に挿入されており、その内容を攪拌している。通気拡散ノズルまたはプレートが、より均一な溶液の攪拌が必要と思われるか望ましい場合に行えるように装備されている。
【0055】
組織カセット10および第1溶液を含むビーカー12を直立および所望の配置に保つため、我々は、従来のシェーカーバスを改良して、例えば、4つのワイヤーのような横断索または支索20や、例えば、組織カセットを含むビーカー12が配置されている5つの縦のチャンネルのような境界をこしらえた。かくして、新しい試料をシェーカーバスの左端で加え、充分に処理された試料をその右端から取り去ることによって、例えば、ビーカー12の試料は規則的にシェーカーバス18に加えられ、そして、充分に処理された組織試料がそれから順番に取り去られ、以下に記載するように更に処理が行われる。
【0056】
次に、組織試料カセット10は、同時に攪拌され、マイクロ波照射を受けながら、1連の液に曝露される。目下提案されている実施態様においては、図3に示すように、3つのマイクロ波ユニットがあり、それぞれは、組織試料含有カセットが所定の時間水浸されている、異なった溶液を有している。代りに、単一のマイクロ波エネルギー源を供給することもできる。しかしながら、そのようにすると、組織カセットを受けるために、それぞれの溶液の連続した配置が必要となる。単一の組織試料に対しては、そのような溶液の配置および再配置は、組織処理サイクルの時間を著しくは増加させないが、複数の溶液を受けるのに単一のマイクロ波を使用すると、続く試料に関して処理の連続性を妨げることが認められる。実際、1連のマイクロ波ユニットであると、ある組織試料が1つのマイクロ波ユニットから、次の溶液を有する次のマイクロ波ユニットに移動するに従い、次に続く組織試料を、最初のマイクロ波ユニットで受けることができる。それゆえ、それぞれの溶液の各々に対してユニットを設けることは、次に続く組織試料が、進行中の試料の全てのマイクロ波処理ステップが完了するまで保持される必要がないことを意味する。しかしながら、連続性の顕著な妨害を伴って、図示した3つのマイクロ波ユニットを、2つまたは1つに減ずることもできることが理解されるべきである。同様に、処理の他のステップも、処理の連続性対人手、装置、スペースの必要度の潜在的減少のバランスから、必要があればあるいは望ましいならば、統合したり、部分統合することもできる。そのようなよりコンパクトなユニットの例示は、以下において、図7を参照しつつ、詳細に考察する。
【0057】
図5を参照して、組織処理用の例証的マイクロ波ユニット22を記載する。マイクロ波照射を適用するために、我々は、Energy Beam Sciences Inc.製の実験室用マイクロ波オーブンを一時的に使用した。我々は、2つのマイクロ波処理モデル、H−2800およびH−2500を使用した。類似のシステムのいずれも使用することができる。例示として、Pyrexまたはその他の透明でマイクロ波に使用できる液体受容器24が、3つのマイクロ波ユニットの各々において本発明に従って供給される、それぞれ、2番、3番、および4番溶液を保持するために使用される(図3)。温度プローブ26が、それぞれのバスの温度が所望の範囲内にあることを保証するために溶液内に置かれている。更に、組織処理を加速する、攪拌を行うため、通気が行われる。使用されたマイクロ波ユニットは、通気用チューブ28を有している。単一のチューブがバスに挿入されるが、より均一で完全な攪拌のためには、攪拌用の気泡を拡散するための、ガスチューブ28と協同する、拡散プレートまたはノズルヘッド(詳細には示さない)を、例えば、溶液の全容積を均一に攪拌するための溶液受容器の実質的な直径部分を横断して、設けることが最も好ましい。そのような拡散プレートおよびノズルは周知であり、例えば溶液受容器の基盤に、設けることができる。
【0058】
通常、パラフィンは組織処理方法の1部として脱気される。脱気は、パラフィンから有機溶媒を除く。この処理を強化するため、およびシステム内でパラフィンを再使用するため、我々は、連続脱気を提案する。これは、カバーしたPyrex32を640mmHg以内に減圧を保つことにより達成される。
【0059】
マイクロ波照射をする3連続ステップに次いで、組織試料カセットを、図6に示すように、パラフィンバス中に置く。一時的に、カバーしたPyrex jar32内におかれた3つのパラフィンバスステーション(ビーカー)30を含むパラフィンバスが設けられる。温度制御のために、Pyrex jar32は、例えば、Poly Science印湯浴34、内に置かれる。蓋およびjarの両方のフランジの内部縁にグリースまたは類似品をつけ、蓋とjarの間に気密が保たれるようにし、蓋につけたホースコネクターを通して真空に引くことができる。ModelNo.01−092−25が使用された。Pyrex jar32内を真空にするため、通常の加圧/真空ポンプ38が、コネクター36につながったチューブ40につながれる。適切なそのような電動ポンプはFisher Scientificから入手でき、例えば、100psi maxを有するものである。攪拌は、好ましくは、振動攪拌、超音波、または通気攪拌のいずれかにおいて、パラフィンバスステップ中、行われる。
【0060】
次に、組織試料を包埋しなければならない。そのためには、Miles/Sakuraから市販されている、通常のTissue−Tek包埋コンソールシステム(I)(図3)、例えばModelNo.4708、を使用する。
【0061】
包埋した試料は、ミクロトーム(L)で通常の方法により切って(図3)、そして配置のために浮かせる(M)。我々は、Leitz1512ミクロトーム、およびLipshaw Electric Tissue Float Model375を使用する。
【0062】
切片をスライドの上に配置した後、パラフィンを除くためにスライドを加熱する。我々は、Fisherから入手したIsotemp Oven300シリーズを使用した(図3)。
【0063】
次にスライドを染色する。染色過程を促進するため、人数および必要な時間を節約するため自動染色機(O)(図3)を使用することを推薦する。非連続処理には、バッチでスライドを染色する、Sakura多様染色機DRS−601を使用することができ;代りに連続処理には、Leica自動染色機XLを使用することができ、これは、脱ワックス工程を含んでいるので、オーブンでの別のインキュベーションは省略できる。固定され、染色された組織試料は、例えばTissue−Tekカバーグラス、製造者No.4764(R)(図3)で、カバーされる。
【0064】
上記したように、本発明によって脱水および含浸を行うシステムは、1連の不連続なユニットの連続とすることができる。代りに、上記に記載したように、1つ以上のステップを、単1処理部品またはユニットで行うこともできる。また、上記で考察したように、提供されるユニットの数および各ユニットによって実行されるステップは、処理ユニットの連続性に影響を与える。従って、低容量の環境においては、複数の組織処理ステップを実行するため単1ユニットが有利であり、組織処理の連続性に著しく影響を与えない。高容量のシステム環境においては、2あるいはそれより多いユニットが好ましい。
【0065】
例示的複合ユニット42を図7に図解する。実際、複合ユニット42は2つのサブユニット;マイクロ波プロセッサーユニット44および含浸ユニット46、を含む。マイクロ波プロセッサーユニット44は、処理される組織を連続的に溶液A,溶液B、および溶液Cに浸け、おのおの溶液を攪拌し、マイクロ波エネルギーを組織に照射するために、使われる。このように、図解した実施態様において、容器48は、例えば、1つ以上の組織カッセット10が置かれている1つ以上のトレー50を受けるために使われる。容器48は、組織脱水用の溶液の各々の源と液体でつながっている。それゆえ、組織カセットが受器トレー50に置かれると、溶液Aは容器48に運ばれ、例えば、通気チューブ(図7には図示せず)を経て攪拌しつつ、マイクロ波エネルギーが連続的に与えられる。充分な時間曝露が行われた後、溶液Aは吸引され、そして組織カセットは、好ましくは、溶液Bまたは溶液Aと溶液Bの混合物と共に流され、残余の溶液Aは十分に除かれる。次いで、溶液Bが容器48に供給され、そこで、所定の時間マイクロ波エネルギーおよび攪拌が再び適用される。溶液Bの供給が終わると、溶液Bは、貯蔵容器に戻り、組織試料は、溶液Cまたは溶液Bと溶液Cの混合物で流される。その後、溶液Cが、容器48に供給され、攪拌およびマイクロ波エネルギーが与えられ、そして最終的に溶液Cは吸引される。組織試料は、そこで、含浸のための準備ができることになる。
【0066】
図示した実施態様において、含浸は装置の第2のサブユニット46で実施される。これによって、次の組織試料がマイクロ波エネルギーを受ける間に含浸されることが可能である。もし、単一ユニットが使われるなら、マイクロ波処理に使用される容器を含浸に使用し得るが、しかしマイクロ波エネルギーは、含浸ステップ中は適用できない。
【0067】
提案の含浸方法に従えば、1連のパラフィン溶液、例えば、3または4が、例えば容器54の好適なトレー52に配置された組織カセットに適用され、組織調製処理の採集ステップとして組織試料の含浸を効果ならしめるために、連続パラフィンバスに移される。含浸サブユニット46において、組織試料は、制御され高められた温度で減圧下に置かれる。組織試料は、好ましくは、また、このステップの間、マグネチックスターラー、超音波、また空気泡立てにより攪拌される。
【0068】
スライド調製の残りの包埋、その他は、図3を参照して上記に概説したように行われる。
【0069】
本発明によると、追加の、特別の機器および器具が、一般におよび特に本発明に従って、組織処理を容易にするために開発された。これら特別にデザインされた機器および器具は、以下に記載される。
【0070】
上記したように、固形組織試料の薄片を切削することは困難である。一方、脱水および固定時間の最小化に関しては、脱水処理に先立って、できるだけ薄く組織をスライスすることが望ましい。薄片の作成を容易にするため、我々は病理学者を助ける3つの機器を提案した。図8に図解したように、便宜的に薄切ガイド60と称する1つは、例えば厚さ1ないし2mmのオーダーの薄い金属プレートで、例えば、親指の爪(約1cm2)の巾の切抜き64を有する、形のものである。ストップ66は、切抜きまたはノッチ64の端でナイフまたは刃のストッパーとして作用するものと定義される。平らな表面またはその他の切削表面から薄切ガイド60を取上げるのを容易にするため、リップ68が切断ノッチから離れて金属プレート62の端に装備される。組織の薄切をつくるため、組織のより大きな部分が切抜きまたはノッチ64の上に置かれ、そのためその部分がノッチに配するようになる。組織の露出した表面に圧力がかけられ、そしてそれに対して切削装置が置かれ、組織の残りからノッチ64に配置された組織を切るために薄切ガイドに沿って水平に滑らされる。切削刃と刃ストッパー66の連動で切削処理が完了し、刃の上に配置された、組織の塊は横に置かれる。スロットに配置されている、残りの組織は、次いで、脱水および含浸のために適当なカセットに置くことができる。
【0071】
認識されるように、薄切ガイド60は、更に処理される、一般的には1様な厚さの組織の薄片を作るのを容易にする。
【0072】
薄い組織片を作るための別の代替法として、我々は、図9に模式的に図示した別の通常の鉗子72の端に平坦なプレートまたはブロック70をつけることを提案した。ブロックは、鉗子の端に永久または1時的に固定されている。切断される組織は、締め付けているブロック70の間に置かれ、鋭い刃が締め付けたブロックの間を組織を薄切するように通過する。2つの大体平面の平らな表面74の1つに近接して切るために、大体均一な厚さの薄い組織片を得ることができる。平行したむしろ大きな平らな表面は、切削処理の間組織をその位置に保つことで均一な圧力分布を与え、組織の完全さを好適に保つ均一な切削を確実にする。
【0073】
切削中に組織を保持するため、我々は、また、図10に図示した3つの齒のホーク様器具92を提案した。図解した実施態様において、齒94は互いにおよそ1センチメーター間隔を占め、各々は、最小の破損で組織を容易に貫くように鋭い、とがった先端96を有している。器具92の歯94で組織をカッティングボードに保持することによって、組織の好適な薄片を、歯に平行にあるいは間を切ることにより得ることができる。図示した実施態様において、器具92は、歯が種々の標本に合わせて5−10cmのオーダーの長さを有し、約8センチメーターの長さのハンドルが歯から2−4センチメーターの間隔であって、切削中の装置の操作と正確な把持を容易にする、ということで特徴付けられる。我々は、ホーク様器具92は、腸や胆嚢のような臓器から切片標本を得るために特に有利であることを見出した。実際、そのような標本を歯94で確保すると切削処理中相互のすべりから組織の種々の層を保護する。
【0074】
我々は、また、組織、特に組織の非常に小さな断片、例えば針生検によって得られた断片の運搬を容易にするため、手術室で使用される組織受容ユニットおよびカセットを作ることを提案した。針生検したような組織が直接、例えば、適当な溶液のジャーに入れられると、研究室の技術者にとって、ジャーから小さい組織試料を回収することは、そして特に、全ての生検組織を確実に回収するのは、しばしば困難となり得る。それゆえ、図11および12に図示したように、我々は、そのような小さな組織試料を直ちに受け取るための、手術室向けの組織カセット10′を作ることを提案した。
【0075】
組織カセット内のそのような組織試料を収納するために、我々は、開放された空間のプラスチックフォームである、バイオプシースポンジの薄いシートで、少なくともその1部に局部的な深さの凹部82で、その中に他のバイオプシースポンジと共に、生検組織を受け入れる区画を設けたものを提供した。このようにして、手術室で生検組織を、バイオプシースポンジ80の1つの凹部80に、直ちに配列し、そして組織カセット10を閉じることができる。処理する実験室に運ぶのに組織の安全を維持するため、組織カセット10′は適切な溶液のジャーの中に置かれる。カセットの回収が容易なように、そして溶液の中に完全に浸されているように、我々は、蓋90から突き出ている柱状支持体88を有し、そして組織カセット10′上の補完構造物84に結合するための、蓋90の先端に構造を有する標本ジャー86を用意した。図12は、頂部表面に接合状態の組織カセット10′を示す。しかし、カセットの底面あるいは蝶番側のような、代りの接合点も可能である。さらに、2つ以上のカセットが柱状支持体88に接合することもできる。
【0076】
かくして、中に生検組織が入った組織カセット10′を、柱状支持体88の末端に1時的に確保でき、そして運搬に適した溶液に入れることができる。組織処理実験室では、蓋90はジャー86から外され、組織カセット10′は柱88から外される。どのような適当なファスナー、例えば、ベルクロタイプファスナー、プラスチックスナップロック、あり組み(dove tail)スライドコネクターあるいはその他の協同連結構造も、組織カセット10′を支持柱88に接合することができる。標本ジャー86内の溶液は、運搬(水性)溶液あるいは第1(非水性)溶液であり得る。ジャーの外側に結合したカセットと共に、手術室に標本ジャーを届け、組織がカセット内に入れられた後に、蓋を逆さにして、カセットがジャーの中の溶液に浸されるようにすることが便利である。
【0077】
本発明は、病理学、患者ケア、生物医学的研究、および教育の実務の領域における従来の方法を超えた多くの進歩性を有している。
【0078】
受領後、約40分ないし約2時間以内に組織試料の顕微鏡診断が得られることは、外科介入と病理学的評価の間の迅速、あるいはむしろリアルタイム、臨床関係を可能にする。このことは、疾病の診断、予後、および治療計画を待つ間の、最小の患者の不安を除くあるいは減じることによる、患者ケアの顕著な改善をもたらす。
【0079】
従って、病理学研究室における仕事の流れの劇的な再整理ができる。臨床試験室のスペース、病理学の専門技術、ならびに事務および技術の人員をより効率的に利用できる。連続した仕事の流れは、標本を処理し評価する病理学者の経験および責任を改善し、標本の処理および評価に要した病理学者の数を減らし、そして、また、医学教育、特に専門医学実習プログラムの経験および責任を改善する。
【0080】
試薬が少量であることは、コストの節約になる。ホルムアルデヒドおよびキシレンの除去、および減少した他の有害な化学物質の必要性は、研究室の環境および安全性の改善に有益である。
【0081】
組織固定および処理方法の標準化は、別の研究室からの標本の比較を容易にする。ホルムアルデヒドの使用、および/または、長時間の処理による組織学上のアーチファクトは除かれる;それゆえ、正常および疾病組織の顕微鏡形態のより精密な評価が可能になる。同様に、抗原の検索および染色が改善される。遺伝子解析のためには、ホルムアルデヒド誘導DNA突然変異が除かれ、保存参考材料からの核酸抽出が高められる。貯蔵されていた、固定パラフィン包埋組織からのRNA研究の可能性は、診断および研究への応用に対し、無限の道を開くことになる。
【0082】
本明細書に引用された全ての図書、標題、出願、および特許は、それら全体として、参照することによって、ここにとり入れられる。
【0083】
以下の実施例は、本発明の例示として意味される;しかし、発明の実務は、それらによっていずれにせよ限定されず、あるいは制限されるものではない。
【0084】
(実施例)
実施例1
新鮮または既に固定した組織の2mm厚あるいは薄片を組織カセットに保持し、以下の組成の非水性第1溶液中に置いた:
40%イソプロピルアルコール、
40%アセトン、
20%ポリエチレングリコール(平均分子量300)、および
1%ジメチルスルホキシド(DMSO)(即ち、上記混合物の10ml/l)。
【0085】
組織試料を、温度45℃と50℃の間のグリセリンバスに15分間インキュベートした。固定用の400ml溶液を、水浴シェーカー中の500mlビーカーに置いた(5cm/秒の直線的変換)。固定溶液の追加攪拌はエアーポンプでのバブリングで行った。
【0086】
固定、脱水、脂肪除去、洗浄、および含浸は、3つの異なった溶液(上記した、第2、第3および第4溶液)に、組織標本を、Energy Beam Sciencesの3つのマイクロ波オーブンの各々の1つに、連続的に曝露することによって達成される。1500mlビーカー中の70%イソプロピルアルコールおよび30%ポリエチレングリコール(平均分子量300)の1リッター溶液を第1オーブン(model−H2800)内に置き、第2オーブン内の溶液は、1500mlのビーカー中70%イソプロピルアルコールおよび30%キシレンの1リッターからなり、そして第3オーブン(model−H2500)は1500mlのビーカー中キシレン1000mlおよびパラフィン300mgの溶液を含有している。DMSOの10ml/lをこれら3つの溶液に加える。マイクロ波照射による60℃に加熱を、第1オーブンに15分間行い、そして第2および第3オーブンの各々に5分間行う(2秒サイクルで75%出力設定)。
【0087】
マイクロ波照射ステップの完了後パラフィン含浸を続けるため、組織切片標本を、パラフィンを満たした大型デシケーター内に置かれた溶融パラフィンの4つの500mlバス中で、そして75℃で2つのグリセリンバスに静置してインキュベーションした。組織切片標本は、1つのパラフィンバスから次のバスに、全部の含浸時間を12分とし、3分間隔で移した。各3分間隔は、圧力の読みが約640mmHgである時間から測られた。このステップでは、攪拌は行わなかった。
【0088】
実施例2
新鮮あるいは固定組織切片標本、約1mm厚、の固定、脱水、脂肪除去、およびパラフィン含浸、はこれら組織切片標本を、以下の継続したステップに曝露することによって40分間で完了した。
【0089】
ステップ1.
本実施例において、第1溶液は以下からなっている:
60%イソプロピルアルコール、
10%アセトン、
30%ポリエチレングリコール(平均分子量300)、および
ジメチルスルホキシド(DMSO)を総容量の約1%の濃度に加える。この溶液1リッターは、組織カセットに保持された60試料を固定するのに充分である。試料を、第1溶液を含有する1連の3つのバスで、各々5分間市販のマイクロ波処理装置(H2500またはH2800、Energy Beam Sciences)で、55℃にて、インキュベーションした(総インキュベーション15分間);溶液の攪拌は溶液交換を加速するためバブリングによった。
【0090】
ステップ2.
試料を、70%イソプロピルアルコール、30%アセトン、およびDMSOを約1%濃度に加えた溶液中で、60℃でインキュベーションした。試料を、溶液を含有する2つのビーカー中で、各々5分間市販の組織マイクロ波処理装置(H2800、Energy Beam Sciences)で加熱し(総インキュベーション10分間)、バブリングによって攪拌した。
【0091】
ステップ3.
マイクロ波照射に続いて、60℃または70℃のグリセリンバス中に静置した、大型デシケーター中に置かれた25%ミネラルオイルおよび75%溶融パラフィンのワックス溶液中で、約200mmHgの減圧下、5分間、インキュベーションすることによって、含浸を開始した。パラフィンは、実施例1に記載したように、使用前脱気した。
【0092】
ステップ4.
含浸は、グリセリンバス中に静置した大型デシケーター内に置かれた溶融パラフィンの4つのバス中で、75℃にてインキュベーションすることによって、完了した。組織切片標本は、1つのパラフィンバスから、次のバスに、3分間隔で、総含浸時間12分間かけて、運搬された。各3分間間隔は、圧力の読みが約640mmHgである時間で測った。
【0093】
本実験において、発色指示薬の保存溶液(イソプロピルアルコール1000ml中メチレンブルー10g)6mlを、イソプロピルアルコールおよびアセトンの溶液の各々に加えた。組織標本は、含浸および取り扱い中に、標本の取扱いを容易にする青色を獲得する;組織標本の浸透は、また、組織標本全体にわたって均一な青色の観察によってモニターすることもできる。
【0094】
実施例3
約1ないし2mm厚までの、新鮮な、あるいは固定した組織切片標本の、固定、脱水、脂肪除去、およびパラフィン含浸は、これら組織切片標本を、以下のようにして、65分間で完了することができる。
【0095】
ステップ1.
本実施例において、第1溶液は以下からなっている:
40%イソプロピルアルコール、
40%アセトン、
20%ポリエチレングリコール(平均分子量300)、
総容量の約0.5%の濃度に加えた氷酢酸、および
総容量の約1%の濃度に加えたジメチルスルホキシド(DMSO)。
この溶液1リッターは、組織カセットに保持された60試料を固定するのに充分である。試料を、第1溶液を含有する1500mビーカー中で、15分間市販のマイクロ波処理装置(H2500またはH2800、Energy Beam Sciences)で、65℃にて、インキュベーションする;溶液の攪拌は、溶液交換を加速するためバブリングによる。
【0096】
ステップ2.
試料を、55%イソプロピルアルコール、25%アセトン、10%ポリエチレングリコール(平均分子量300)、10%低粘度ミネラルオイル、総容量の約0.5%の濃度に加えた氷酢酸、および約1%の濃度に加えたDMSOの溶液中で、インキュベーションする。試料を、溶液を含有する1500mlビーカー中で、15分間、市販の組織マイクロ波処理装置(H2800、Energy Beam Sciences)で、65℃にて加熱し、バブリングによって攪拌する。
【0097】
ステップ3.
試料を、55%イソプロピルアルコール、25%アセトン、20%低粘度ミネラルオイル、総容量の約0.5%の濃度に加えた氷酢酸、および約1%の濃度に加えたDMSOの溶液中で、インキュベーションする。試料を、溶液を含有する1500mlビーカー中で、5分間、市販の組織マイクロ波処理装置(H2800、Energy Beam Sciences)で、65℃にて加熱し、バブリングによって攪拌する。
【0098】
ステップ4.
マイクロ波照射に続いて、60℃のグリセリンバス中に静置した、大型デシケーター中に置かれた、70%溶融パラフィンのワックス溶液の2つのバス中で、約640mmHgの減圧下、5分間、各バス中でインキュベーションすることによって、含浸を開始する。
【0099】
ステップ5.
含浸は、グリセリンバス中に静置した大型デシケーター内に置かれた溶融パラフィンの4つのバス中で、約75℃ないし80℃、および約640mmHgの減圧にて、おのおの5分間、インキュベーションすることによって完了する。組織切片標本は、1つのパラフィンバスから、次のバスに、5分間隔で、総含浸時間20分間かけて、運搬された。各5分間隔は、圧力の読みが約640mmHgである時間で測った。
【0100】
実施例4:組織切片標本の抗原検出
パラフィン切片標本を3ミクロンの厚さにミクロトームで切削し、水浴に置き、そしてガラススライドの上に浮かせる。パラフィンを、58℃のオーブン、あるいは好ましくは37℃のオーブン中で約18時間または1夜、スライドを置くことによって融解した。次いで、キシレンバス中で10分間脱ワックスした。スライドを、各1分間エタノール分を減らしていった溶液(無水アルコールで2バス、95%で2バス、90%で1バス)で再水和した。そして流水中に浸すことによって、2分間リンスした。
【0101】
内因性ペルオキシダーゼを、6%過酸化水素(H)およびメタノール、または6%H35mlと140mlのメタノール、の溶液で、15分間インキュベーションして、阻害した。スライドを流水中に浸すことによって2分間、およびPBSに2分間リンスし、そして乾燥した。
【0102】
スライドを加湿箱に移し、正常ウマ血清(NHS)を加え、10分間ブロックした。過剰の正常ウマ血清はスライドから傾斜し、特異的1次抗体を、組織切片標本上で、加湿箱中、室温にて、30分間インキュベーションした。スライドを、圧搾瓶を使用して前後に動かしてPBSで洗い、2分間PBSバス中に浸し、そして過剰のPBSを各スライドについて乾燥した。結合溶液(2次抗体、またはビオチン化抗ウサギまたは抗マウス、として知られている)を、各組識切片標本に加え、そして加湿箱中で、25分間インキュベーションした。スライドを、圧搾瓶を使用してPBSで洗い、PBSバス中に2分間浸し、そして過剰のPBSを各スライドについて乾燥した。
【0103】
シグナルを、製造者の指示書(Vector Laboratories)に従って展開した。ABC溶液を組織切片標本に加え、加湿箱中で25分間インキュベーションした。スライドを、圧搾瓶中でPBSで洗い、PBSバス中にラックで2分間浸した。ラックをDABクロモゲンのバスに6分間浸し、流水中に浸してゆるやかに4分間洗浄した。組織切片標本を、ヘマトキシリン(染色時間は、ヘマトキシリンの経時数による)で15秒から90秒対比染色を行った。スライドを過剰の対比染色を除くため3分間流水下で洗浄し、アルコールバス中で(各々約10秒間)85%から100%まで脱水し、キシレンで洗滌し、カバーグラスをかぶせた。
【0104】
多分よりよい抗原の保存性のゆえに、より良好な抗原反応性が、プロゲステロンレセプター、第VIII因子関連抗原、CD−31、CD−68、サイトケラチン−7、クロモグラニン、および平滑筋抗原について示された。
【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
実施例5:処理組織切片標本からDNAの抽出
2つの6ミクロン組織切片標本を1.5ml微量遠心チューブに入れ、800μlキシレンを加え、そして振り混ぜて混合し、400μl無水エタノールを加え、振り混ぜて混合し、チューブを高速微量遠心器で5分間遠心分離し、そして、上清を捨てた。ペレットに800μl無水エタノールを加え、振り混ぜて混合した。
【0113】
上清を上記のようにして遠心分離後傾斜し、そして界面活性剤/プロテイナーゼK溶液(1%NP40またはトリトンX−100、2.5mg/mlプロテイナーゼk2.4μl)をペレットに加え、そして55℃にて1時間インキュベーションした。プロテイナーゼKを、95℃にて10分間インキュベーションすることにより不活化した。微量遠心器で5分間遠心分離した後、DNAを含む上清を保存する。この材料は、直ぐにPCRに使用し得る。もし、サザンブロット法を計画しているなら、更に、沈殿および/または抽出を行うべきである。制限酵素による解析用に、充分なDNAを得るためには、より多くの切片標本が必要である。
【0114】
図13Aは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の定量および定性を示す、増幅DNAは、本発明に従って調製した試料(実施例1)と従来の組織調製処理(Tissue−Tek VIP 組織処理機、Miles−Sakura,製造者の指示書に従って使用した)の間で比較できる。
【0115】
実施例6:処理組織切片標本からのRNA抽出
パラフィンブロックの10切片標本(各々7μm)をディスポーザブル刃を使用して切削した;ブロックは本発明に従って調製され、従来の組織処理は実施例5に記載により調製された。それらを、50mlFalconチューブに置き、キシレン20mlで脱パラフィン化し、残余の組織を無水アルコールで、30分間、2回洗滌した。組織は、4Mグアニジンチオシアネート、25mMクエン酸ナトリウムpH7.0、0.5%N−ラウリルザルコシン、および0.1M−2−メルカプトエタノールを含有する溶液に0.5g/ml懸濁した。溶液は、かき混ぜて混合し、DNAは18ないし22ゲージの注射針を通して、剪断した。
【0116】
RNA含有溶液を、いくつかの5ml遠心チューブ(Sorvall)内の5.7M−CsClの2.8ml上に注意深く重層した、そしてRNAを、Beckman L8−53超遠心分離器で35,000rpm、18℃、14時間、SW55T1ローターで、遠心分離により沈殿させた。頂上のフラクションは、注意深く除いて、チューブの底のRNAペレットを残した。ペレットをリボヌクレアーゼを含まない水に再懸濁し、エッペンドルフチューブを14,000rpmで10分間、遠心した。RNA含有上清を保存し、UV吸収を測定した:吸光係数1OD280/cmは40μg/mlRNAであり、OD260/OD280比は約1.8と約2.0の間でなければならない。総量45μgのRNAが、本発明に従って調製した組織標本から抽出された、これに対し、従来により処理された組織標本からは、RNAは検出されなかった(図13B)。
【0117】
本発明は、何が現在、実用的であるか、そして好適な実施態様であるかと、考えられているかに関して記載されたものであるが、本発明は、開示された実施態様に限定されたり、あるいは制限されたりするものではなく、反対に、付随する特許請求の範囲の精神および範囲内に包含される、種々の変形例および均等な組合せを保護することを意図していることが理解される。
【0118】
それゆえ、記載された発明の変形は、本発明の新規な観点から離れることなく当業者に自明であり、そしてそのような変形は、特許請求の範囲内に来ることが意図されていることが、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、組織標本が外科医によって得られた時と、病理学者が組織の切片の顕微鏡検査から準備することができることによる診断の時、の間にほとんど24時間が過ぎることを示すフローチャートである;
【図2】図2は、本発明によって、病理学者による診断を、組織標本を提供した外科医が、2時間より少ない時間で利用することができることを示すフローチャートである;
【図3】図3は、本発明によって提供される組織処理装置の概略平面図である;
【図4】図4は、本発明の機器およびシステムの1部として提供される、例示のシェーカーバスを示す;
【図5】図5は、本発明の機器およびシステムの1部として使用される、例示のマイクロ波オーブンを示す;
【図6】図6は、本発明の機器およびシステムの1部として提供される、例示のパラフィンーバスを示す;
【図7】図7は、本発明の変形例の実施態様に従って提供される、マイクロ波/含浸ユニットの模式図解である;
【図8】図8は、本発明の更なる例示の実施態様に従って提供される、切削ガイドの模式図解である;
【図9】図9は、本発明の更なる実施態様に従って提供される、組織鉗子および切削組立品の切断図である;
【図10】図10は、本発明の更なる実施態様に従って提供される、組織保持器の模式図解である;
【図11】図11は、小組識試料を受け取る、本発明に従って提供される、組織カセットの模式図解である;
【図12】図12は、本発明の実施態様に従った、組織カセット付き組織受器および運搬ジャーを示す;そして
【図13】図13A−13Bは、処理した組織標本から調製したDNAおよびRNA、それぞれの、アガロースゲル電気泳動を示す。図13Aにおいて、レーン1は分子量標準を含み、レーン2は本発明に従って処理した組織標本からの稀釈試料を含み、レーン3−4は本発明に従って処理した組織標本からのDNA試料を含み、そしてレーン5−6は従来の方法に従って処理した組織標本からのDNA試料を含む。図13Bにおいて:レーン1、4および6はブランク、レーン2−3は、従来の方法に従って処理した組織標本からの試料であり、レーン5は、本発明に従って処理した組織標本からのRNA試料を含み、そしてレーン7は対照RNAを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的処理による組織標本の迅速処理のための装置であって、該装置は
(a)(i)組織標本を固定し、脱水し、第1の容器中非水性溶液で組織標本から脂肪を除去し、(ii)該組織標本と非水性溶液を該第1の容器中で攪拌し、(iii)該第1の容器中の組織標本と非水性溶液をマイクロ波エネルギーに暴露し、固定し、脱水し、脂肪を除去した組織標本を作製するマイクロ波プロセッサー;
及び該第1の容器と液体的に連結している非水性溶液源、
(b)(i)該固定し、脱水し、脂肪を除去した組織標本を第2の容器中ワックス溶液で含浸し、(ii)該固定し脱水し、脂肪を除去した組織標本と該ワックス溶液を該第2の容器中で攪拌し、(iii)該固定し、脱水し、脂肪を除去した組織標本と該ワックス溶液を真空下で高温に暴露して、固定し、脱水し、脂肪を除去し、含浸した組織標本を作製する含浸ユニット;
及び該第2の容器と液体的に連結しているワックス溶液源、
を含み、
組織標本は連続的に第1の容器に、次いで第2の容器に移送される、上記装置。
【請求項2】
前記非水性溶液は、アルコールとケトンを1と3の間のアルコール対ケトンの容量比で含んでなる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記非水性溶液がさらに100から500の平均分子量のポリマーを含んでなる、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記非水性溶液が、アセトン、イソプロピルアルコール、およびポリエチレングリコールを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項記載の装置。
【請求項5】
前記ワックス溶液がパラフィンを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記ワックス溶液が、異なる融点のワックスを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項記載の装置。
【請求項7】
前記ワックス溶液は鉱物油とパラフィンを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−281573(P2008−281573A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141794(P2008−141794)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【分割の表示】特願2000−510006(P2000−510006)の分割
【原出願日】平成10年8月19日(1998.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(500132878)ザユニバーシティー オブ マイアミ (5)
【出願人】(500132890)
【出願人】(500132904)
【Fターム(参考)】