説明

組織壁脱出症を治療するためのシステムおよび方法

【課題】膣壁脱出症を処置するための改良された装置を提供する。
【解決手段】膣脱出症状の治療のための装置は、少なくとも1本の紐がそこから延在する中央本体部分27を有するグラフト22である。紐は、その端部に取り付けられた弾丸針28aを有し、患者の体内の定着組織に固定可能である。患者にグラフトを留置するように適応された送達デバイスを利用する。治療のための方法は、患者の膣壁に切開口を設けるステップと、膣内および骨盤底領域へのアクセスを得るために切開口を開くステップと、切開口を通して装置を挿入するステップと、装置の紐を患者の定着組織に取り付けるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/782,911号(2006年3月16日出願)、および米国仮特許出願第60/852,932号(2006年10月19日出願)からの優先権を主張し、該仮出願の両方は、その全体が明確に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、脱出症治療分野のシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、複数の構成部品を有する装置、および同装置を使用して組織壁脱出症を外科的に矯正するための方法に関する。特に、本発明の一実施形態は、予めカットされた形状のメッシュグラフトおよびグラフト送達デバイスを有するキットである。
【背景技術】
【0003】
当業者には公知のとおり、膣壁脱出症の治療は、高い失敗率によって妨げられてきた。失敗の理由には、再近置される組織の固有の弱さ、および、上から押さえ付ける腹腔によって加えられる力に耐えるだけの修復能力がないことが含まれる。最近の10年間における修復の1つの進歩は、膣脱出症の修復を強化するためのグラフトの追加である。この技術は受け入れられているが、耐久性および膣口径を最良に維持するためには、どのようにグラフトを膣壁下に固定するか、に関する合意に欠けている。
【0004】
一部の公知の技法は、患者に不快感および/または痛みを与え、グラフトが時間と共に移動される危険がある。さらに、骨盤底筋上の所定位置に標準縫合糸でグラフトが縫合されると、縫合糸エントラップメントから痛みを生じ得る。さらに、縫合糸が薄くて元来弱い組織に設置されるために、縫合糸が引き抜かれやすい。最後に、縫合糸の設置は外科医により異なる。したがって、適切なグラフトの設置を教えることは困難である。
【0005】
新技術の導入にともなって、改善されたデバイスが商業的に入手可能になった。一般的に、これらのシステムは、角部分にウイングを有する医療用メッシュを使用し、メッシュは、メッシュを固定するために骨盤底筋組織および骨盤靭帯を通して引かれ得る。
【0006】
これらのシステムのウイングを固定するための容認されるアクセス点は、閉鎖膜および坐骨直腸窩を通るものである。膣の尖端部が骨盤内深くに位置するために、アクセスは、一般的にこれらの構造を介してなされる。しかしながら、これらの構造を介して尖端部にアクセスすることの問題点は、この解剖学的構造が外科医にとって不慣れなことである。さらに、これらのシステムは、付近に存在する可能性のある目に見えない神経血管構造を有する、これらの不慣れな解剖路を通る鋭い針の長距離の通路を必要とするために、安全性が外科医にとって問題となる。したがって、技術を正確に学ぶために、広範囲なトレーニングと解剖学教育とが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、上に引用した特許および出版物に開示された実施形態は、広範囲のレーニングなしには、それを使用することが困難または危険であるという欠点を有する。また、これらは、脱出症を治療するためには、部分的にしか有効でない。他の欠点は、時間と共に増加するリスクと効果的でない結果とを含む。これらの欠点の故に、脱出症を患う患者は、リスクを伴いかつ高レベルな外科医の技量を必要とするために、治療のために長期間待たなければならないか、または治療を控えなければならない。これはさらに、比較的高いコストを伴う処置へと導く。
【0008】
したがって、膣壁脱出症の治療のための比較的簡単な装置および方法が必要とされている。特に必要とされるものは、患者の不快感を軽減し、容易に反復できかつ長時間にわたり十分に有効な、装置および方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される発明は、膣脱出症状を治療するための装置および方法を含む。装置は、少なくとも1本の紐がそこから延在する、中央本体部分を有するグラフトである。紐はその端部に取り付けられた弾丸針(bullet needle)を有し、患者の体内の定着組織に固定可能である。本発明は、患者にグラフトを留置するように適応された送達デバイスを利用する。本発明の方法は、患者の膣壁に切開口を設けるステップと、膣内および骨盤底領域へのアクセスを得るために切開口を開くステップと、切開口を通して本発明の装置を挿入するステップと、装置の紐を患者の定着組織に取り付けるステップと、を含む。
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
膣壁に切開口を設けるステップと、
上記切開口を通して、弾丸針と連結される少なくとも1つのウイングを有するグラフトを挿入するステップと、
グラフト設置デバイスを使用して、上記ウイングおよび弾丸針を体内組織を通して押入するステップと、
を包含する、骨盤症状を治療する方法。
(項目2)
上記グラフト設置デバイスを使用して、切開口から上記ウイングを引き出すステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記グラフト設置デバイスから、上記弾丸針とウイングとを取り外すステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記切開口を縫合して閉じるステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記切開口を開くステップは、筋肉および筋肉組織を後方に引くことによる膣傍組織の切開を包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記弾丸針の1つをグラフト挿入デバイスに装填するステップであって、その結果として、上記グラフトの残部が上記グラフト挿入デバイスから垂下し、上記弾丸針の上記1つが上記ウイングの1つの終端に取り付けられる、ステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
グラフト設置デバイスを使用して、上記ウイングと弾丸針とを定着組織を通して押入するステップは、一般的に受け入れられているあらゆる尖端および側方の支持構造を通して上記ウイングと弾丸針とを押入するステップを包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
過剰のウイング材料を切除するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記グラフトを引くことによって上記グラフトを調節し、そのそれぞれの区画において上記グラフトを実質的に平坦に配置させるステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記グラフトを少なくとも2つの分離したピースに切断するステップをさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目11)
中央本体部分とそこから延在する少なくとも1つのウイングとを有するグラフトであって、上記ウイングは、定着組織に固定可能であり、かつ端部を有する、グラフトと、
上記端部に取り付けられる弾丸針と、
を備える、骨盤症状の治療のための装置。
(項目12)
上記弾丸針に対して取り外し可能に接続可能であり、かつ上記グラフトを患者に留置するように適応された、送達デバイスをさらに備える、項目11に記載の方法。
(項目13)
上記グラフトは、ポリプロピレンメッシュから作製される、項目11に記載の装置。
(項目14)
上記グラフトは、患者の膣円蓋全体を覆うサイズおよび形状を有する、項目11に記載の装置。
(項目15)
上記ウイングは、患者の仙棘靭帯に対して固定可能なように構成される、項目11に記載の装置。
(項目16)
上記ウイングは、患者の腱弓に対して固定可能なように構成される、項目11に記載の装置。
(項目17)
上記ウイングはある材料で形成され、上記弾丸針は上記ウイングの材料から形成される、項目11に記載の装置。
(項目18)
上記弾丸針は、縫合糸を介して上記ウイングの上記端部に接続される、項目11に記載の装置。
(項目19)
上記グラフトは、不織重合体繊維によって囲まれた複数の開放気孔を有するメッシュを備え、上記中央本体部分の大部分の開放気孔は、上記ウイングの大部分の開放気孔よりも大きい、項目11に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従ったグラフトの上面図を示す。
【図2】図2a、図2bおよび図2cは、本発明の実施形態に従ったグラフトの、様々なウイングおよび弾丸針の上面図を示す。
【図3】図3aおよび図3bは、グラフト設置デバイスの側断面図を示す。
【図4】図4aおよび図4bは、図3aのグラフト設置デバイスの一部の断面図である。
【図5】図5a、図5b、図5cおよび図5dは、図3aのグラフト設置デバイスの一部および弾丸針の側面図を示す。
【図6】図6は、図3aのグラフト設置デバイスの一部の側断面図を示す。
【図7】図7a、図7b、図7cおよび図7dは、患者の膣領域の概略図である。
【図8】図8は、本発明の一部の構成部品を所定位置に有する、女性の解剖学的構造の様々な部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面に示される本発明の図解された実施形態の記述の中で、特定の用語が明確化のために使用され得る。しかしながら、本発明が、そこに選択された特定の用語に限定されることは意図されておらず、また、それぞれの特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の方法で作用する全ての技術的均等物を含むことが、理解されるべきである。
【0012】
方法およびデバイスの要素を含む本発明は、膣壁脱出症を治療する新しい方法を表す。本発明は、上述の当該分野の限界を克服する。本発明は、グラフトと、グラフト設置デバイスまたは送達デバイスとの、2つの主要な構成要素を有する。グラフト自体は、様々なサイズおよび形状を有し得、かつ様々な材料から作製され得る。例えば、その全体が参考として援用される、米国特許第6,102,921号および第6,638,284号を参照のこと。一実施形態において、合成ポリプロピレンメッシュグラフトのバージョンが使用される。本発明のグラフトの一実施形態は、膣円蓋全体を覆い、患者の腱弓、仙棘靭帯および/または肛門挙筋への固定を提供するようにデザインされる。
【0013】
複数の公知の方法は、グラフトの設置を補助するために長い針を使用する(導入の妨げとなる)が、開示される装置は、それに取り付けられた弾丸針を含むグラフトを使用する。弾丸針は、坐骨直腸窩または閉鎖膜などの前述の不慣れな経路の通過を必要とせずに、容認される解剖学的構造にグラフトを取り付けるように構成される。したがって、グラフトは、そのデザインの結果として、膣管を通って直接的に所望する取り付け点に到達することができる。
【0014】
グラフトは、設置デバイスまたは送達デバイスを使用して設置され得る。送達デバイスの一実施形態は、Boston Scientific Corporationの「Laurus」または「Capio」デバイスのようなのデバイスであり、それは、本キットの送達デバイス構成部品のための、良好な確定医療用具(predicate device)であり得る。グラフト送達デバイスはまた、縫合糸捕捉デバイスとしても作用するが、開示された本発明において、縫合糸は、紐、腕または脚のようなメッシュウイングであり得る。
【0015】
上述の構成要素を使用することにより、一実施形態において、本発明の方法は次のステップを含む。膣壁に切開口を設ける。膣内および骨盤底へのアクセスを得るために切開口を開く。縫合糸捕捉デバイスを手に取る。縫合糸捕捉デバイスに弾丸針を備えたメッシュウイングを取り付ける。切開口を通して膣内にウイング、針および縫合糸デバイスを挿入する。靭帯または筋肉を通してウイングおよび弾丸針を押入する。縫合糸デバイスを用いて切開口からウイングを引き出す。縫合糸デバイスから弾丸針およびウイングを取り外す。縫合糸捕捉デバイスに別のウイングとその弾丸針を取り付け、膣内または膣を通して別の位置でそのプロセスを反復する。全てのウイングが一般的に容認される尖端および側部の支持構造に取り付けられるまで、他のウイングおよび弾丸針を用いてプロセスを反復する。これらは、一般的に、仙棘靭帯、近位腱弓、および肛門挙筋である。このウイング固定法は、従来の縫合固定では行われない、患者ごとに個別の調節を可能とする。過剰のメッシュウイング材料は、次に切除され、廃棄される。残りのメッシュが固定された後に、切開口が閉じられる。
【0016】
上述のとおり、本発明の一実施形態は、2つの主要な構成要素を有する。第1の構成要素はグラフトである。図1に最もよく示されるとおり、一実施形態において、グラフトはユニークな形状を有する。グラフト22は、図1に示すように形成され得るが、グラフトは任意の適切な形状のものであり得、一般的に中央本体部分、および少なくとも2つの縦方向の側部分、例えば、腕を組み込む。例えば、本発明のグラフトは、グラフトの中央本体部分から外方に延在する腕および脚を備える、実質的に楕円形状または不等辺四辺形状に作製され得る。グラフトは、恥骨頸部筋膜上に配置され、周囲の靭帯および/または筋肉を介して固定され得る。
【0017】
図1に示される実施形態において、グラフト22は、腕、脚、およびウイング(または一般的に複数のウイング)と呼ばれる突起を有する。本発明のグラフト22は、上部23、第1端24、第1ウイング25a、第2ウイング25b、第3ウイング26a、および第4ウイング26bを含む。中央本体部分27、第1腕27a、および第2腕27bもまたグラフト22を構成する。グラフト22は、下部29、第1脚29a、第2脚29b、第3接続セグメント29c、第4接続セグメント29d、および尾29eをさらに含む。一実施形態において、メッシュは、ウイング25aおよび25bを含まない。
【0018】
本発明のウイング、脚および腕は、坐骨棘近くの腱弓を介して、前膣壁、後膣壁の仙棘靭帯、および/または肛門挙筋に取り付けるために使用されることが意図される。これらの解剖学的構造は骨盤の深くにあり、支持のために優れているが、以下により完全に記述されるグラフト送達システムなくしては、アクセスは困難である。ひとたび、このようなデバイスが好適な位置に到達すれば、デバイスは、外科医がグラフトを適所に押込み固定することを補助する。
【0019】
一部の実施形態において、グラフト材料自体は、「POLYFORM」と呼ばれるBoston Scientific Corporationにより製造されるメッシュ材料に類似のものである。他の実施形態において、米国特許出願公開第2005/0261545号に記述されるメッシュ、または米国特許出願公開第2005/0222591号に記述されるメッシュ(この両方の出願はその全体が参考として援用される)が、グラフト用材料として使用される。これもまた参考として援用される、Ethiconに対するPCT/US02/31681号に記載されるメッシュのような、様々な種類の入手可能なメッシュグラフトがまた存在する。メッシュの一実施形態は、不織重合体材料、例えば、モノフィラメント繊維を有するポリプロピレンなどから作製されるストランドにより囲まれた複数の開放気孔を含み、該ストランドの間の接合部は開放隙間がなく、メッシュの開放気孔の大部分は15mm未満の面積を有する。一部の実施形態においては、気孔の大きさは10mm未満の面積を有する。他の実施形態において、メッシュの中央本体部分の気孔の大きさは、縦方向の側部分の気孔の大きさよりも大きい。一部の実施形態において、それらの部分の気孔の大きさの範囲は、幅3mmと8mmとの間にある。本発明の一実施形態によるメッシュは、また、0.0080gcm未満の重量を有し、軽量で非常に柔軟である。材料およびメッシュ配置は、移植後の感染の機会を最小限にするようになされる。
【0020】
骨盤臓器脱出症の治療に現在使用されている任意の既存の補綴材料が、本発明の方法を実行するときに使用され得るが、動物または人のドナー組織、あるいはブタの真皮、ウシの真皮、異系移植片、または皮膚の同種移植片などのような任意のその他の異種移植片などの、同様に使用され得る多くのいわゆるバイオグラフトがある。この新しいシステムおよび方法は、グラフトとしての任意の数の材料の使用を妨げるものではなく、かつ、さらなる材料が使用可能となるときには、それらの材料の使用を受け入れ可能であることに、留意することが重要である。しかしながら、上述の任意の材料が、開示された方法に従って開示された装置を用いて膣壁を補強するために適切ではあるが、合成ポリプロピレンメッシュが好適である。
【0021】
各腕および脚の上に、それぞれ、第1弾丸針28a、第2弾丸針28b、第3弾丸針28c、および第4弾丸針28dがある。一実施形態において、グラフト22は、第1針接続セグメント26cおよび第2針接続セグメント26dをも含む。
【0022】
図2a〜図2cは、弾丸針および脚または腕の様々な実施形態を示す。図2aにおいて、例えば、弾丸針28aは比較的小さく概ね円形であり、糸または非常に細いメッシュのセグメントを介して、例えば、針接続セグメント26cによって、腕26aに接続される。図2bにおいて、弾丸針128aは、より大きく(28aよりも)円形であり、メッシュのセグメントを介して腕126aに接続される。図2cにおいて、例えば、弾丸針228aは、より大きくより平坦で(28aおよび128aよりも)あり、より幅広いメッシュのセグメントを介して腕226aに接続される。一実施形態において、弾丸針はステンレススチールで形成され得る。別の実施形態において、「針」はグラフト材料で形成される。例えば、「針」は、より高密度のグラフト材料で形成され得る。そのような実施形態においては、ステンレススチール針は全体が置き換えられ得る。
【0023】
一部の実施形態において、本発明のグラフトのウイング、脚または腕は、比較的小さい円形の弾丸針に固定されるが、一部の実施形態においては、ウイング、脚または腕は、組織を通過するその非外傷性通路を可能にし、周囲組織に対する腕または脚のより幅広い部分の握把を促進するために、また先細り形状とされる。さらに、グラフトを取り付けるために針による方法を使用する代わりに、グラフトが他の固定手段によって取り付けられることもまた可能である。そのような固定手段は、医療用接着剤または粘着剤、マイクロ波または無線周波数溶接、ステープル、びょう、およびフックおよびループ型のファスナーを含む。
【0024】
開示された発明の新しい概念の1つは、例えば、米国特許第5,364,408号、第5,540,704号、第5,458,609号、第5,575,800号および第5,662,664号に記述されるような、以前に特許化されたグラフト送達デバイス用の縫合糸貫通デバイスの応用であり、これら特許の全ては、その全体が参考として援用される。また、その全体が参考として援用される、米国特許出願公開第2006/0052801号を参照のこと。一実施形態において、開示された送達デバイスは、部分的に、Boston Scientific Corp.により販売される「Capio」デバイスに基づく。Capioデバイスは、もとはLaurusデバイスとして特許化され、アクセスを制限された空洞部内への縫合通路のために、他の場所で一般的に使用される。該デバイスの実施形態は、曲線状針ガイドによって覆われた套管針(trocar)およびキャッチメカニズムへ達する展開式弾丸針である。デバイスのもう一方の端のプランジャがそれを展開する。
【0025】
開示されたグラフトは、本発明の装置の第2の構成要素である、図3a〜図6に示すグラフト設置デバイスのような、当該グラフト送達デバイスを使用して設置され得る。修正されたこのようなグラフト設置デバイスにより、外科医がこのデバイスを使用して、グラフトのウイング、例えば、腕および脚を、これらの通路を横切ることなしに、直接的に所望する定着構造に通すことが可能となる。さらに、開示されたグラフト設置デバイス自体が、現在脱出症外科手術において使用されるグラフト送達デバイスよりも、使用が容易である。それ故に、開示されたグラフト設置デバイスは、グラフトウイングをそれらの標的位置に送達するための技術をあまり必要としない。
【0026】
グラフト送達デバイスの例示的な実施形態の詳細図が、図3a、図3b、図4a、図4b、図5a〜図5dおよび図6に示され、グラフト送達デバイス30は、つまみ34aおよび34bを有する外側ハウジング32と、留置キャッチ36とを含む。一部の実施形態において、外側ハウジング32は、本明細書に記述される多数の他の構成部品と同じく、ポリカーボネートなどの射出成形プラスチックで作製される。外側ハウジング32の中に摺動可能に配置された留置スリーブ38は、維持キャッチ40を有し、例えば、ステンレススチールで構成されるプッシュロッド42に取り付けられる。駆動シャフト44は、ボタン46を含み、細長い剛性シャフト50aが結合する穴48aを有する。ピアノ線から作製され得る剛性シャフト50aは、外側ハウジングのリブ52a、52bおよび52cを通過し、中空のシリンダ54aの中に摺動可能に配置されて終結する。ステンレスの皮下チューブから作製され得る中空のシリンダ54aおよび54bは、外側ハウジングのリブ52bおよび52cのくぼみに保持される。ポリプロピレンまたは他の適切な材料で作製され得る細長い柔軟な管状部材56aがまた、中空のシリンダ54aの中に摺動可能に配置される。図4bに示す通り、針ガイド58aがまた、ステンレスの皮下チューブから構成され得、外側ハウジングのボス62aおよび62bの中に回動可能に配置された回動ピン60aおよび60bを有する。駆動リンク64aが、リンクピン66によってプッシュロッド42に、そして回動ピン68aによって針ガイド58aに取り付けられ、全体のメカニズムは、好ましくは、生体許容性および作動部材の強度を最大限にするために、ステンレススチールで作製される。
【0027】
再び図3aおよび図3bを参照すると、デバイス30は、外側ハウジング32の中に摺動可能に配置され、剛性シャフト50aおよび50bに固定可能に取り付けられ、プッシュロッド42が摺動可能にそこを通過できる穴72を有する、駆動保持器70を有する。ステンレススチールワイヤを巻いて作られ得る駆動スプリング74が、駆動保持器70と外側ハウジングのリブ52bとの間で圧縮される。同じくステンレススチールワイヤから作製される留置スプリング76が、留置スリーブ38の端77と外側ハウジングのリブ52aとの間で圧縮される。針キャッチ78aが、外側ハウジング32のくぼみ80aの中に収容される。次いで図4bを参照すると、好ましくはケブラー製である引き込み線82aが、柔軟な管状部材56aを摺動可能に通過し、クリンプ86a、または引き込み線82aを持針器84aに結合する他の手段によって、持針器84aに取り付けられる。引き込み線82aの遠位端は、別のクリンプ98aまたは他の手段によって、剛性シャフト50aに取り付けられる。
【0028】
図3bを参照すると、留置スリーブ38の腕124が押込まれ、その結果として、スリーブが外側ハウジング32の中でスライドし、スプリング76を圧縮し、次いでプッシュロッド42をスライドさせる。図4bに示す通り、プッシュロッド42が外側ハウジング32に対してスライドするときには、それは針ガイド58aを、外側ハウジングのボス62aに保持されるピン60aの回りに強制的に回動させる。
【0029】
図4bを再び参照すると、好ましくはケブラー製である引き込み線82aが、柔軟な管状部材56aを摺動可能に通過し、クリンプ86a、または引き込み線82aを持針器84aに結合する他の手段によって、持針器84aに取り付けられる。引き込み線82aの遠位端は、別のクリンプ98aまたは他の手段によって剛性シャフト50aに取り付けられる。持針器84aは、針ガイド58aの中に摺動可能に配置され、くぼみ90aの中に一般的には外科等級のステンレススチールで構成される針88a(または、例えば、弾丸針28a)を保持し、そのような針は、そこに取り付けられた縫合糸92aを有する。縫合糸材料は、好ましくはポリグリコール酸であるが、ポリプロピレン、ナイロン、絹、腸線、または組織の近置のために体内で使用されその生体適合性および引張強さのために選択される、当該分野において公知の任意の他の材料から作製され得る。縫合糸92aは、溝を通って針ガイド58aから外に出て、外側ハウジング32の中のくぼみ96に保管される。好適な一実施形態においては、縫合糸92aは、例えば図2aに示すような、腕26aに取り付けられる糸26cである。
【0030】
明瞭化のために、本発明のグラフト設置デバイスの実施形態の半分のみが、図5a、図5b、図5c、図5dおよび図6に示されていることが、理解されるべきである。他の半分は、機能および構造において、本明細書で記述した半分と完全に類似する。デバイスの上部は、以前に開示された実施形態の構造および材料に類似し、ここでは反復されない。グラフト設置デバイス196は、ボス200を有する外側ハウジング198を含み、そのボスの中に、ピン202が回転可能に挿入される。ピン202は、持針器206に取り付けられる腕204に固定される。持針器206上のピン208は、リンク212の穴210に回転可能に挿入される。別のピン214が、プッシュロッド216に固定され、リンク212の別の穴218に回転可能に挿入される。プッシュロッド216は、外側ハウジング198の中に摺動可能に配置されるスリーブ220に取り付けられる。図6は、持針器206のくぼみ224の中に保持される針222(弾丸針28aに類似する)の詳細図を示す。糸226は、糸26cのように、針222に取り付けられ、持針器206のスロット228を通される。一部の実施形態において、本メカニズムの全ての構成部品は、生体適合性性および強度のために選択される、外科等級のステンレススチールで構成される。
【0031】
(使用)
簡略的に上述された構成部品を使用して、設置方法は、次のステップを含む。膣壁に切開口を設ける。膣内および骨盤底へのアクセスを得るために切開口を開く。グラフト設置デバイスなどの縫合糸捕捉デバイスを手に取る。グラフト設置デバイスなどの縫合糸捕捉デバイスに、弾丸針を備えたメッシュウイングを取り付ける。切開口を通して膣内にウイング、針および縫合糸デバイスを挿入する。靭帯または筋肉を通してウイングおよび弾丸針を押入する。縫合糸デバイスを用いて切開口からウイングを引き出す。縫合糸デバイスから弾丸針およびウイングを取り外す。縫合糸デバイスに別のウイングとその弾丸針とを取り付け、膣内の別の位置でそのプロセスを反復する。全てのウイングが一般的に容認されている尖端および側部の支持構造のような一部の内部構造に取り付けられるまで、他のウイングおよび弾丸針を用いてプロセスを反復する。これらの支持構造は、一般的に仙棘靭帯、近位腱弓、および肛門挙筋である。このウイング固定は、患者ごとの個別の調節を可能にするが、これは従来の縫合固定では行われないことである。グラフト調節本体が膣の内部頂部壁を覆うように、次にウイングが必要に応じて締められる。過剰のメッシュウイング材料が次いで切除され、破棄される。残りのメッシュが固定された後に、膣切開口が閉口される。
【0032】
開示されたグラフト設置デバイスの使用および操作が、図5aの参照を手始めとして説明される。デバイス196が、腹に導入される。スリーブ220が、ハウジング198の中で矢印で示される方向にスライドする。図5bに示すように、スリーブ220が移動すると、それはプッシュロッド216を押し、それはリンク212を動かし、持針器206を針222および糸226と共に、ピン202によって定義される軸の回りに回転させる。図5cを参照すると、針222は、外側ハウジング198の開口部232を通ってキャッチ230の中に駆動されることがわかる。したがって、図5dを参照して、プッシュロッド216が引き戻されると、リンク212もまた引き戻されて、持針器206が回動ピン202の回りに回転し、開口部232を通って外側ハウジング198の中に、図5aに示されるものと同じ位置に戻ることがわかる。
【0033】
代替的な実施形態のメッシュ送達デバイスは、参考として援用される米国特許第6,936,952号において開示される、デバイスに類似し得る。上述の通り、骨盤の深部に、一般的にグラフト固定に使用される特定の解剖学的構造があり、それは、有利な位置および変位に対する抵抗力のために選択される。しかしながら、これらの構造はアクセスが困難であるために、膣壁に切開口を設けることが必要となる。例えば、図7aおよび図7bを参照のこと。いったん切開口が設けられると、グラフト設置デバイスなどの送達デバイスが、グラフトを所定位置に設置するために使用される。設置デバイスは針を使用し、それはインプラントのメッシュの腕および脚の各1つに対して固定され得る。針およびグラフトは、送達デバイス上に配置された針ガイドに装填される。本発明の方法の一部の実施形態において、ひとたびグラフトおよび針がグラフト設置デバイスに装填されると、残りの腕および脚を備えたグラフトの本体の残部は針から垂下する。膣傍組織の適切な切開がなされ、定着構造の位置が決定されあらゆる結合組織を除去された後に、グラフト設置デバイスが、所望の構造の上の所定位置に移動される。次いでプランジャが圧縮されて、針が展開される。ひとたび針およびメッシュが所望の定着構造を通過すると、デバイス全体が、徐々に膣から引き出される。これはグラフトの腕または脚を、定着点を緩やかに取り囲むように残留させる。次に、送達デバイスは再度所定位置に保持され、各ウイングを通過する残りの各針からの後続の針を、それぞれの定着点の周りに係合する。グラフトは、単一のピ−スとして送達され得、または膣の前壁または後壁に別々に送達するために2つの分離したピースに切断され得る。次いで、腕または脚が調節され得る。これは、必要に応じて、先端としてグラフトを引くことによって行われ、グラフトがそれぞれの区画に平坦に配置されるようにする。次いで各腕または脚の端が切断されて、針を切り離す。過剰のメッシュおよび針は次いで処理される。
【0034】
図7aに戻ると、後膣壁213が、所定位置にある後膣壁の上皮214と共に示されている。本発明の方法の一実施形態においては、下にある筋膜215から上皮214を移動するために、縦方向の切開が実施される。切開は、各側の肛門挙筋に対して横方向に実施される。膣の上部において、切開は、各側の仙棘靭帯に向かって、両側の直腸柱を通過して横および頭部方向に継続される。これは、そこを通過してデバイスを留置するための安全なスペースを作り出し、後膣壁切開から各仙棘靭帯への両方向性トンネルを形成する。直腸−膣隔壁の筋膜は、ひだ状であり得る(示されていない)。図7cに示すように、グラフト、例えば後膣壁修復用にデザインされたグラフト216は、直腸−膣隔壁の筋膜215上に設置され、延在する各腕217、218は、後膣壁切開から仙棘靭帯までに延在するトンネルの中に配置される。残りのメッシュが固定された後に、膣切開口は、図7dに示すように閉口される。グラフト216の配置は図8に示され、この図は仙棘靭帯233、直腸234および膣235に対するその関係位置を示す。別の実施形態においては、肛門挙筋へアクセスしグラフトを取り付けるために、類似の方法が使用され得る。
【0035】
本明細書に記述されるデバイスおよび方法は、また、子宮保存手技のような他の手技と併せて実行されるように、他の修正を加えて実施され得る。
【0036】
本発明を使用する好適な実施形態および最良のモードが上に開示されたが、他の変形もまた可能である。例えば、構成部品の材料、形状および大きさは変更され得る。様々な代替案が、本発明として認められる主題を特に示し、かつ明確に主張する請求項の範囲内として考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115701(P2012−115701A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−28740(P2012−28740)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2009−500607(P2009−500607)の分割
【原出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】