組織工学腱及びその生体外構築方法
本発明は、(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び(b) 前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞、を含む組織工学的腱移植物を公開する。前述の移植物は、種細胞を薬学的に許容される生物分解可能な材料と混合し、種細胞-生物材料複合体を得た後、複合体を生物反応器で培養することにより得られる。本発明の移植物は腱欠損の修復に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学及び生物医学工学分野に関し、より具体的に、真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞を利用して生体外で組織工学腱を構築する製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腱は、骨格筋の筋腹と骨とを繋ぐ緻密なコラーゲン線維の結合組織束であり、骨格筋の構成部分である。腱の構造は、筋肉の延長・退化部分と見なしてもよい。新鮮標本の腱は、銀白色で、紐帯状で、質が強靭である。弛緩の状態では、表面に波紋があり、弛緩状態の4%以上引っ張られると、この波紋が消えるが、張力が取り消されたら波紋はまた現れる。筋-腱接合部では、コラーゲン線維が筋内膜に入り、筋線維の筋膜に付着し、腱-骨接合部では、腱束が直接骨と骨膜まで延伸し、そのうちの大多数のコラーゲン線維が骨に入り、シャーピー線維を形成する。腱は筋腹の収縮による力を伝え、骨格を引っ張り、運動させる。腱そのものは収縮能力がないものの、大きな張力に抵抗することができる。
【0003】
腱欠損は、現在、臨床実践でよくある問題であり、腱欠損に対する治療方法は主に、(1)自家腱移植、(2)同種他家腱移植、(3)腱移植の代用物がある。しかし、上述の方法はいずれも欠点があり、自家腱移植には腱のドナー部位が少ないという問題がある。新鮮腱の他家移植はひどい免疫拒否反応を引き起こし、凍結乾燥処理した同種他家腱では保存されるのはコラーゲン線維だけなので、そのさき自家腱細胞に替える必要がある。人工腱代用物は、初期では生物力学強度が優れたが、最終的に分解され、また炎症、線維化や腱粘着などの反応を起こし、ひいては、代用物が体外に排出されることもある。
【0004】
前世紀80年代末期に、組織工学の出現と盛んな発展はこの難題の解決を可能にした。曹誼林らにより、1994年に、ポリグリコール酸(PGA)短繊維でヌードマウスの皮下に組織工学腱様組織を構築したことが初めて報告された。劉永濤らは、健全な免疫機能を有するニワトリの趾屈筋腱の同所に自家腱細胞を利用して組織工学腱の構築に成功したが、組織工学腱の種細胞として自家腱細胞を利用するには、やはり大きな腱組織を切り取ることが必要で、新たな損傷が生じる。そのため、新しい種細胞源を探すことが組織工学腱の発展の主要な問題となる。
【0005】
また、現在、国内外で組織工学腱の研究は主に、動物体内における修復実験、すなわち、生体外で十分な数の種細胞を増殖させ、生物材料と複合化した後、直ちに或は生体外で一〜二週間だけ培養して生体内の欠損部位に移植することに注目している。すこし初歩の成功を得たが、このような細胞を接種した足場材をそのまま生体内に移植して腱を形成する方式はまだ以下の重大な欠陥がある。(1) 移植するのは、腱移植物ではなく、細胞-材料複合体であることによって、種細胞の生存がよくないため、移植が失敗し、安定した高成功率が得られない。(2) 移植する足場は分解されていない材料で、その分解物は酸性であることが多いため、直接炎症性反応、瘢痕形成や腱粘着を引き起こし、腱の修復効果を直接影響することがある。(3) 移植するのは、腱移植物ではないため、材料の分解に従って、細胞-材料複合体の力学性能が大幅に低下し、高張力部位の腱欠損を修復することができない。そのため、腱構築と修復の動物体内実験が多かったが、上述の問題があるので、臨床の応用まではまだ時間がかかる。
【0006】
このように、組織工学技術で腱組織の構築、腱組織の欠損の修復を行い、産業的生産の目的を実現する一つの要点は、大量の正常な機能を持つ腱細胞を得ることである。しかし、腱細胞は数回の継代を経て基質を分泌する能力を失うため、大量の機能活性を持つ腱細胞を得て大きな欠損組織を修復することが困難である。もう一つの要点は、ある程度の力
学性能を持ち、大部分の材料はすでに分解した比較的に成熟した腱組織を構築することである。そのため、より幅広い種細胞源、より最適化した生体外の構築技術を探すのは、組織工学腱の研究の焦点となった。
【0007】
前者の要点について、多くの学者が大量の研究を行い、腱の組織工学の種細胞源を広くし、且つその増殖を促進させようとしている。
【0008】
第一に、代用できる細胞、例えば、骨髄間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell、MSC)、真皮線維芽細胞(Dermal Fibroblast、DF)を探すことである。MSCは一族の多分化能を持つ細胞であり、特定の誘導条件で多種の間葉細胞に分化することができ、AwadらがMSCを分離・培養してコラーゲンと複合化した細胞-コラーゲン複合体を人工的欠損の膝蓋靱帯に移植し、対照群(単なるコラーゲンを使用)と比較したところ、実験群の組織の弾性率、最大張力、硬度などが対照群よりも大きかったが、組織学と形態学において両者は大きな差別がなかったことを見出した。しかしながら、骨髄間葉系幹細胞源には限りがあり、分離が複雑である。陳兵らは、ブタの自家線維芽細胞で組織工学腱を構築して浅趾屈筋腱の欠損を修復することに成功したことにより、真皮線維芽細胞を組織工学腱或は靱帯の構築の種細胞とする可能性が証明された。
【0009】
第二に、種細胞の増殖と基質の合成を促進させることである。成長因子は、細胞間の信号伝達により細胞の活動に影響を与える一類のポリペプチドの因子であり、生体内・外で細胞の増殖を促進・抑制することができる。多くの学者は直接成長因子を使って研究し、その体内・外での腱損傷の修復に対する促進作用が実証された。また、遺伝子組換え技術を利用し、遺伝子情報を細胞に伝達することにより、細胞の機能を変える人もいた。このような技術でターゲット細胞におけるタンパク質(例えば成長因子)の合成と分泌を増加・抑制し、細胞の成長を調節し、組織修復の過程に参与する。この方法の応用に成功すれば、細胞、組織を必要なようにサイトカインを合成・分泌させることによって、その成長を調節することができる。異なる方法で遺伝子を腱に導入することに成功した学者がすでにいたが、LacZ標識遺伝子が膝蓋靱帯に応用された後、発現が6週間も継続し、ニワトリの趾屈筋腱での実験では、Louらは遺伝子組換え技術を利用してLacZ標識遺伝子を腱に導入し、この遺伝子が75日後も検出され、そして、腱損傷後の粘着形成を減少・阻止する方法がいくつか提出された。
【0010】
上述の各種の研究を経たものの、腱の種細胞源が少ないという問題がまだ解決されていない。
【0011】
後者の要点について、生体外で各種の生物材料を使って腱組織の構築を行うことを試みる学者がいた。曹徳君らは、吸収可能な生物材料であるポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)と腱細胞を用いて生体外で組織工学腱を構築し、U型バネで細胞-PGA複合体に継続的に張力を与えてから生体外で培養し、6週間後構造が正常な腱と類似で、ある程度の力学性能を持つ腱様組織が形成されたが、この方法は、加わる張力の大きさや頻度などのパラメーターを正確に定量することができず、構築された組織の力学性能は極めて弱かった。生体外での生体内微環境のシミュレーションは、まださらなる改良と最適化が必要である。
【0012】
そのため、本分野では、新規な種細胞を使用し、且つ生体外で構築されたものであって、優れた力学性能を持つ組織工学的ヒト腱が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の内容
本発明の目的は、組織工学的ヒト腱移植物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、前述の組織工学的腱移植物の生体外製造方法を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、上述組織工学的腱移植物の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一は、
(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び
(b) 前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞、
を含む組織工学的腱移植物を提供する。
【0017】
別の好ましい例において、前述の組織工学的腱移植物の最大張力は、10〜80Nである。
別の好ましい例において、前述の種細胞は、線維芽細胞、或は線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物である。
【0018】
別の好ましい例において、前述の種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlである。
【0019】
別の好ましい例において、前述の生物分解可能な材料は、紐帯状である。
別の好ましい例において、前述の線維芽細胞と脂肪由来細胞は、自家或は同種他家由来である。
【0020】
別の好ましい例において、前述の薬学的に許容される生物分解可能な材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロブチレート、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸、シュードポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キトサン、キチン、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲル、無細胞基質、及びそれらの各種類と割合の混合物からなる群より選ばれる。
【0021】
本発明の第二は、
薬学的に許容される生物分解可能な材料に、前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞を混合し、種細胞-生物材料複合体を得る工程、
を含む上述の組織工学的腱移植物を製造する方法を提供する。
【0022】
別の好ましい例において、この方法は、さらに、
種細胞-生物材料複合体を生物反応器で培養し、上述のような組織工学的腱移植物を得る工程を含む。
【0023】
別の好ましい例において、前述の生物反応器は、出願番号200510110037.0に掲示された牽引型腱生物反応器である。
【0024】
別の好ましい例において、移植物における種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlである。
【0025】
別の好ましい例において、生物反応器で、種細胞-生物材料複合体に加わる牽引力は、2〜20Nである。
【0026】
別の好ましい例において、前述の生物分解可能な材料は、紐帯状である。
本発明の第三は、腱欠損を修復する移植物の製造のための上述のような組織工学的腱移植物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0027】
これによって、本発明は、新規な種細胞を使用し、且つ生体外で構築されたとともに、優れた力学性能を持つ組織工学的ヒト腱を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】二代目のヒト皮膚線維芽細胞を示すものである。
【図2】二代目のヒト腱細胞を示すものである。
【図3】初代の脂肪由来細胞を示すものである。
【図4】脂肪由来細胞の各表現型に対する同定結果を示すものである。ここで、AはVimentin+の同定結果を、BはCD106+の同定結果を、CはCD34-の同定結果を、DはCD29+/CD49D+の同定結果を、EはCD44+/CD49D+の同定結果を表す。
【図5】脂肪由来細胞の軟骨形成誘導後のII型コラーゲンの発現の様子を示すものである。
【図6】脂肪由来細胞の脂肪形成誘導後、オイル赤Oで染色し、観察された細胞質内の脂肪滴形成の様子を示すものである。
【図7】脂肪由来細胞の骨形成誘導後のカルシウム結節形成の様子を示すものである。
【図8】脂肪由来細胞の免疫抑制調節機能の検測結果を示すものである。
【図9】予備成形後の束状PGA繊維足場を示すものである。
【図10】予備成形後の束状繊維が「U」型バネに固定されたPGA足場を示すものである。
【図11】生物反応器の外観を示すものである。
【図12】ヒト真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来幹細胞の反応器における腱の構築方法を示すものである。
【図13】種細胞としてヒト真皮線維芽細胞を使用し、静止牽引2週間+動的牽引10週間後の組織工学的腱の組織学検測結果を示すものである。ここで、Aは皮膚線維芽細胞+PGAを、Bは腱細胞+PGAを表す。
【図14】異なる張力における生体外構築の組織工学腱の生物力学検測結果を示すものである。
【図15】種細胞としてヒト脂肪由来幹細胞を使用し、静止牽引2週間+動的牽引5週間後の組織工学的腱の組織学検測結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明者らは幅広く深く研究した結果、ヒトの真皮線維芽細胞、脂肪由来細胞或はこれらの混合物を、組織工学的腱移植物を構築する種細胞とし、種細胞と生物分解可能な材料との混合物を生物反応器で生体外培養することにより、優れた生理力学性能を持つ組織工学的ヒト腱を得ることができることを意外に見出した。
【0030】
用語
用語の「精製・分離された」とは、精製・分離された物質が基本的に他の細胞、タンパク質やポリペプチドを含有しないことを指す。
【0031】
用語の「異種移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)をある種から採取し、別の種の対
象に使用する方法を指す。
【0032】
用語の「自家移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)をある患者から採取し、同患者に使用する方法を指す。
【0033】
用語の「他家移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)を同一種のある個体から採取し、別の患者に使用する方法を指す。
【0034】
ここで用いられるように、用語の「薬学的に許容される生物分解可能な材料」、「医学的に許容される生物分解可能な材料」、「生物分解可能な材料」、「生物材料」及び「材料」は同じ意味であり、いずれも細胞と成長因子に担体を提供でき、細胞や生体組織と優れた生物相容性を有し、且つ組織成長に合う分解速度を有する材料を表す。
【0035】
ここで用いられるように、用語の「組織工学的腱移植物」、「組織工学的腱」及び「組織工学腱」は交換して用いられてもよく、いずれも種細胞-生物材料複合体を含有し、且つ生体内の腱欠損を修復できる移植物であればよい。
【0036】
種細胞
本発明に用いられる腱移植物の種細胞は、線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞で、この二種の細胞は、自家でも他家でもよく、線維芽細胞が自身から採取されることが好ましい。両者の混合物であれば、線維芽細胞と脂肪由来細胞との数量の比は1:10000〜10000:1で、好ましくは1:5〜100:1、より好ましくは1:2〜10:1である。
【0037】
本発明の線維芽細胞源は特に限定されないが、任意の由来の線維芽細胞源でもよく、通常、本発明の線維芽細胞は、自家(例えば、真皮、皮下組織及び他の組織における線維芽細胞)、或は同種他家の線維芽細胞(例えば、ヒト胎児由来の線維芽細胞)である。また、線維芽細胞は、脂肪幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、或は他の幹細胞から誘導される線維芽細胞でもよい。
【0038】
本発明に用いられる線維芽細胞は、人体由来である。
自家の線維芽細胞が好ましいが、他家の線維芽細胞源を使用こともできる。
【0039】
本発明の好ましい例において、前述の種細胞は、ヒト自家真皮線維芽細胞である。
真皮線維芽細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。よく使用される分離方案は、以下の方法を含む。
【0040】
(a) コラーゲナーゼ消化・分離法:無菌条件で、皮膚組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄し、2倍体積の1mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthington、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて4h消化した後、150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で真皮線維芽細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養する。
【0041】
(b) 組織塊培養法:麻酔の無菌条件で皮膚組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄する。組織塊を培養皿の表面に均一に置き、培養皿をインキュベーターに2〜4時間置き、液体が緩慢に組織塊を被覆するように軽く培養液を入れ、細胞の遊離を待つ。
【0042】
真皮線維芽細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方
法は、真皮線維芽細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば線維芽細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0043】
本発明に適合の真皮線維芽細胞は、生体内或は生体外で増殖できることが必要である。一つの好ましい真皮線維芽細胞は、生体外培養の初代〜50代目の細胞で、且つ免疫組織化学染色によりI型コラーゲンの発現が、in situハイブリダイゼーション検測によりI型コラーゲンmRNAの発現が証明されたものである。
【0044】
本発明者らが研究した結果、脂肪組織から得られた脂肪由来細胞(adipose derived cells、ADCs)も間葉系幹細胞の一種であり、BMSCと同様に多分化能を持ち、誘導条件で骨、軟骨、腱などに分化することができる。BMSCと比べたら、ADCは他の利点がある。1.細胞源が豊富で、獲得が容易で、且つ獲得量がBMSCよりも遥かに多いとともに、ADCは細胞増殖能力もBMSCを遥かに超えているため、組織工学的構築に十分の細胞量を提供することができる。2.コラーゲンの分泌能力が高いが、優れた引張強度を維持するため、腱組織には大量のI型コラーゲンが必要なので、ADCはより腱の種細胞に適合で、機能性腱組織が形成しやすい。3.低免疫原性と免疫調節機能を持つため、より同種他家間の移植への応用に適合で、より幅広い臨床応用の将来性がある。
【0045】
そのため、脂肪由来細胞(ADC)は、組織工学腱の種細胞に適するだけではなく、相当の実用価値があるので、関連研究を行うことによって異なる個体に受けられる組織工学腱製品になり、組織工学腱製品の個体的治療の隘路を打開する可能性がある。
【0046】
脂肪由来細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は以下の通りである。
【0047】
無菌条件で脂肪吸引術後捨てられたヒト脂肪組織を取り、培養瓶に移動し、生理食塩水で洗浄を繰り返し、等体積の0.075%のI型コラーゲナーゼ(Worthington、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、それぞれ1時間後300gを10分間遠心し、高密度の細胞沈殿物を得、上清と浮遊の脂肪組織を捨て、細胞を均一に振とうし、計数後細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養する。
【0048】
脂肪由来細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、脂肪由来細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば脂肪由来細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0049】
本発明に適合の脂肪由来細胞は、生体内或は生体外で増殖できることが必要である。一つの好ましい脂肪由来細胞は、生体外培養の初代〜30代目の細胞である。
【0050】
必要であれば、種細胞に腱細胞及び/又は骨髄間葉系幹細胞を多少加えてもよい。腱細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、パンクレアチン、コラーゲナーゼによる消化で分離するもので、すなわち、無血清DMEM培地(Gibco社)でパンクレアチン或はコラーゲナーゼの濃度を0.1〜5mg/ml(好ましくは約1mg/ml)に調節し、37℃±2℃の恒温振とう機内で4〜20h消化する。
【0051】
腱細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、腱細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば腱細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0052】
本発明において、骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)源は特に限定されないが、一つの好ましい細胞源は自身由来の骨髄である。骨髄間葉系幹細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は以下の通りである。麻酔下骨髄穿刺で自家骨髄を取り、密度勾配遠心法でその中の有核細胞を分離し、適合の培養液(例えば、10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/ml、デキサメタゾン5nM(Sigma)を含有するDMEM(Gibco、Gland Island、NJ、USA)条件培養液)を加え、細胞浮遊液とし、約1×105/cm2の密度で培養皿に接種し、37℃、5%CO2、100%飽和湿度の条件で培養する。48時間後、初回の培養液交換をし、条件培養液を加えて培養を継続し、1日おきに培養液を交換する。細胞成長がコンフルエンスに近づいたら、0.25%トリプシン+0.02%EDTAで消化し、1×104/cm2の密度で接種して細胞継代を行う。
【0053】
生物分解可能な材料
本発明に用いられる組織工学的腱の材料は薬学的に許容される生物分解可能な材料であり、以下の材料を含むが、これらに限定されない。
【0054】
(a) 分解可能な合成高分子材料、例えば、ポリα-ヒドロキシ酸(例えばポリ乳酸PLA、ポリグリコール酸PGA、ポリヒドロブチレートPHB等)、ポリ酸無水物(polyanhydrides)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリアミノ酸(polyamino acid)、シュードポリアミノ酸(pesudo-polyamino acid)、ポリオルトエステル(polyorthoesters)、ポリエステルウレタン(polyesterurethane)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン(polydioxanone)等。
【0055】
(b) 分解可能な天然材料、例えばコラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan,GAGs)、キトサン(chitosan)、キチン(chitin)、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲルなど、各種の無細胞基質。
【0056】
(c) 上述材料の混合物或は複合材料、特に高分子材料と天然材料の複合材料。
なかでも、ポリグリコール酸PGA、ポリ乳酸PLA、或は両者の共織物PGLAなどが好ましい。
【0057】
生物反応器
本発明に適合の生物反応器は特に限定されないが、本発明でよく用いられる各種の生物反応器を使用することができる。好ましい生物反応器は以下の特徴がある。1.大きさ、用量が適合で、細胞或は組織の培養と代謝物の排出に有利で、且つ汚染しにくい。2.生体内の腱の生物力学などの微環境をシミュレーションし、組織工学腱の成長に適する環境を提供することができる。3.引張力、頻度などのパラメーターの制御が可能で、且つ操作が便利である。
【0058】
組織工学腱
本発明は、(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び(b) 前述の生物分解可能な材料にそれぞれ或は混合して接種された真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞、を含む新規な組織工学的ヒト腱移植物を提供する。本発明に提供される組織工学的腱移植物は、優れた力学性能を持ち、本分野の通常の方法でテストすることができ、例えば、Intr
on生物力学測定儀、BOSE生物力学測定儀などで腱移植物の抗引張性能を測定することができるが、これらに限定されない。
【0059】
テストの時、本発明に提供される組織工学的腱移植物は、最大張力が10〜80Nで、より好ましくは40〜80Nであることが好ましい。
【0060】
本発明の組織工学腱は比較的に成熟で、生体外である程度の時間で培養すると、大部分の生物材料が分解するため、体内への早期移植の場合、生物材料の大量の分解物による腱粘着、断裂などの現象を避け、より有効的に腱欠損を修復することができる。
【0061】
本発明の組織工学腱は比較的に成熟で、生体外である程度の時間で培養すると、種細胞が十分なコラーゲンなどの細胞外基質を分泌するため、新生組織工学腱の移植の時すでにある程度の生物力学性能があるようにし、修復の初期に力による腱の断裂などが避けられる。
【0062】
本発明の組織工学腱移植物の形状は特に限定されなく、組織欠損の形状に合わせて任意に成形することができるが、通常、移植物は短冊状である。
【0063】
生体外培養で増殖した種細胞を生物相容性が良好で且つ生体に吸収できる分解可能な生物材料に接種して種細胞-生物材料複合体を形成し、この種細胞-生物材料複合体を生物反応器中に置いてある程度の時間で培養すると、生物材料が分解・吸収されていくとともに、種細胞が継続的に増殖し、且つ基質を分泌し、大部分の生物材料に代えて比較的に成熟な組織工学腱を形成し、欠損部位に移植する場合、腱欠損の修復を実現させることができる。
【0064】
本分野でよく用いられる生物反応器を使用することができるが、細胞-材料複合体の生体外構築に必要な動的牽引力を提供することができればよく、牽引型腱生物反応器が好ましい。腱移植物の長さ、直径を腱欠損の長さと直径によって決め、さらに応力条件(2〜20N)で生体外で1週間培養し、細胞の栄養を保証するように1〜2日おきに液交換を行い、これによって移植に供する腱を形成する。
【0065】
本発明の組織工学腱における種細胞の濃度は、通常、約1×105/ml〜5×108/ml、好ましくは1×106/ml〜1×108/ml、より好ましくは5×106/ml〜5×107/mlである。通常は、培養液で種細胞の濃度を調整し、さらに分解可能な材料と混合する。混合時、培養液と分解可能な材料との比率は特に限定されないが、この材料が吸着できる培養液の最大量が好ましい。
【0066】
また、本発明の組織工学腱移植物に、腱細胞の表現型の保持、腱細胞の成長の促進及び組織工学腱の生体内における血管・神経形成の促進のため、さらに他の各種の細胞、成長因子、各種の遺伝子組換え成分を添加・複合してもよい。
【0067】
本発明の方法で形成される組織工学腱移植物或は腱は、直接生体内の腱欠損部位に移植し、腱欠損を修復することができる。
【0068】
本発明で記述の上述の特徴或は実施例で記述の特徴は任意に組合せることができる。本明細書に掲示されたすべての特徴は任意の組成物様態と併用することができ、明細書に掲示された各特徴は任意の相同、同等或は類似の目的を提供できるもので取り替えられることができる。そのため、特別な説明がない限り、掲示された特徴はいずれも同等或は類似の特徴の一般的な例だけである。
【0069】
本発明の主な利点は、以下の通りである。
(1) 真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞の分布が広く、採取が容易であるため、組織工学的腱の構築の種細胞源が少ないという問題が解決された。
【0070】
(2) 脂肪由来細胞が低免疫原性と免疫調節機能を持つため、同種他家移植修復の免疫拒否の問題を解決することが期待できる。
【0071】
(3) 組織欠損の形状に合わせて任意に成形して形成することが可能な組織は生体内に終生生存することができる。
【0072】
(4) 新型生物反応器により精確で調節可能な単方向牽引力を提供し、腱構築を行い、且つ排除体積効果(excluded volume effect、EVE)で腱の成熟を加速させる。
【0073】
(5) 生体外で腱を形成した後、細胞が自然の細胞外基質に囲まれるため、生体内に移植する場合、細胞の死亡が避けられ、比較的に安定した高成功率が得られる。
【0074】
(6) 生体外で構築された腱を生体内に移植する場合、大部分の足場材料がすでに分解したため、酸性分解物の生成が避けられ、腱の線維化や粘着を防止することができる。
【0075】
(7) 生体外である程度の生物力学性能を持つ組織工学腱を構築し、移植すると、通常の腱移植と同様に早期の機能鍛錬が可能で、腱粘着の防止と機能回復の促進に有利である。
【0076】
以下具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。特に説明しない限り、すべての%と部は重量基準である。
【0077】
別に定義しない限り、ここで使用された専門・科学用語は全部本分野の熟練者によく知られている意味と同様である。また、記載された内容と類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明の方法に取り入れられる。ここで記述の好適な実施方法及び材料はただ例示のためである。
【実施例1】
【0078】
皮膚線維芽細胞の分離と培養
無菌条件で、手術中捨てられた包皮組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄し、2倍体積の1mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて4h消化した後、150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で真皮線維芽細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/mlを含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、線維芽細胞が2代目まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した(図1)。
【実施例2】
【0079】
腱細胞の分離と培養
無菌条件で、切断術後捨てられた新鮮ヒト腱組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で
2回洗浄し、2倍体積の0.25mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、4、5、7時間後それぞれ150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で腱細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/mlを含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、線維芽細胞が2代目まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した(図2)。
【実施例3】
【0080】
脂肪由来細胞の分離と培養
無菌条件で脂肪吸引術後捨てられたヒト腱組織を取り、培養瓶に移動し、生理食塩水で洗浄を繰り返し、等体積の0.075%のI型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、それぞれ1時間後300gを10分間遠心し、高密度の細胞沈殿物を得、上清と浮遊の脂肪組織を捨て、細胞を均一に振とうし、計数後細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清を含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、37℃、5%CO2、100%飽和湿度の条件で培養し、24時間後、初回の培養液交換をし、浮遊の細胞を除去するようにPBSで洗浄を繰り返し、培養液を加えて、細胞成長がほとんどコンフルエンスになったら、継代を行った(図3)。細胞を必要な代まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した。
【0081】
脂肪由来細胞の同定
初代の脂肪由来細胞をカバーガラスで培養し、70%コンフルエンスになった時点で、4%パラホルムで15分間固定し、各種の測定しようとする表面抗原の抗体を加え、37℃で1時間インキュベートし、PBSで洗浄し、FITC結合二次抗体(DAKO、Carpinteria、U.S.A)を加え、37℃で30分間インキュベートし、再びPBSで洗浄し、Heochest33258(Sigma社(米国)から入手)或はヨウ化プロピジウム(Sigma社(米国)から入手)で核対比染色を行い、レーザー共焦点顕微鏡で細胞の表面抗原の発現を観察した。
【0082】
脂肪由来細胞の多分化能
軟骨形成の誘導
3代目の細胞をマイクロペレット培養法で軟骨形成の誘導を行い、誘導因子の最終濃度は、TGF-β1(R&D社(米国)から入手)10ng/mL、IGF(R&D社(米国)から入手)100ng/mL、Dex(Sigma社(米国)から入手)0.1μmol/L、トランスフェリン(Sigma社(米国)から入手)6.25μg/mLであった。
【0083】
脂肪形成の誘導
3代目の細胞を7日培養した時点で脂肪形成の誘導を行い、誘導液の成分はベース培養液とIBMX(Sigma社(米国)から入手)0.5mmol/L、Dex 1μmol/L、インスリン(Sigma社(米国)から入手)10μmol/L、インドメタシン(Sigma社(米国)から入手)200μmol/Lで、倒立位相差顕微鏡で細胞の形態変化を観察し、誘導から14日後相応の検測を行った。
【0084】
骨形成の誘導
3代目の細胞を7日培養した時点で骨形成の誘導を行い、誘導液の成分はベース培養液にβ-リン酸グリセリン2.16g/L、ビタミンD3 10nmol/Lであった。誘導から20日後石灰化結節に対して骨形成関連の特殊染色を行った。
【実施例4】
【0085】
生物材料足場の製作
材料繊維を束状に予備成形し(図9)、且つ「U」型バネに固定して足場に持続的に静止張力を与え(図10)、さらに75%エタノールに浸漬して1時間消毒した後、PBSで3〜5回洗浄し、紫外線ランプで消毒し、自然乾燥後使用に備えた。
【実施例5】
【0086】
組織工学腱の生体外構築
皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞を2〜4代目まで継代し、0.25%トリプシンで消化して細胞を収集し、2.0×107/mlの細胞浮遊液とした。細胞浮遊液を予め製作されたPGA繊維足場に接種し、まず細胞-材料複合体を二酸化炭素のインキュベーターに4時間置き、さらに10%牛胎児血清を含有するDMEM培養液を約30ml入れ、続いてインキュベーターで培養した。それから、細胞の栄養を保証するように2日に1回培養液を交換した。約2週間後、十分な細胞外基質を分泌したら、さらに牽引型腱生物反応器の細胞培養室内に移動して動的牽引培養を行い、ある程度の時間(好ましくは3〜10週間)で培養した後、腱欠損の修復に使用できる組織工学腱移植物を形成した。生物反応器において種細胞-生物材料複合体に加わった牽引力は2〜20Nで、牽引頻度は毎日1〜12時間で、毎回の牽引は2〜30秒間持続し、間隔は5〜60秒間で、変位は移植物の長さの5〜30%であった。
【0087】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学及び生物医学工学分野に関し、より具体的に、真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞を利用して生体外で組織工学腱を構築する製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腱は、骨格筋の筋腹と骨とを繋ぐ緻密なコラーゲン線維の結合組織束であり、骨格筋の構成部分である。腱の構造は、筋肉の延長・退化部分と見なしてもよい。新鮮標本の腱は、銀白色で、紐帯状で、質が強靭である。弛緩の状態では、表面に波紋があり、弛緩状態の4%以上引っ張られると、この波紋が消えるが、張力が取り消されたら波紋はまた現れる。筋-腱接合部では、コラーゲン線維が筋内膜に入り、筋線維の筋膜に付着し、腱-骨接合部では、腱束が直接骨と骨膜まで延伸し、そのうちの大多数のコラーゲン線維が骨に入り、シャーピー線維を形成する。腱は筋腹の収縮による力を伝え、骨格を引っ張り、運動させる。腱そのものは収縮能力がないものの、大きな張力に抵抗することができる。
【0003】
腱欠損は、現在、臨床実践でよくある問題であり、腱欠損に対する治療方法は主に、(1)自家腱移植、(2)同種他家腱移植、(3)腱移植の代用物がある。しかし、上述の方法はいずれも欠点があり、自家腱移植には腱のドナー部位が少ないという問題がある。新鮮腱の他家移植はひどい免疫拒否反応を引き起こし、凍結乾燥処理した同種他家腱では保存されるのはコラーゲン線維だけなので、そのさき自家腱細胞に替える必要がある。人工腱代用物は、初期では生物力学強度が優れたが、最終的に分解され、また炎症、線維化や腱粘着などの反応を起こし、ひいては、代用物が体外に排出されることもある。
【0004】
前世紀80年代末期に、組織工学の出現と盛んな発展はこの難題の解決を可能にした。曹誼林らにより、1994年に、ポリグリコール酸(PGA)短繊維でヌードマウスの皮下に組織工学腱様組織を構築したことが初めて報告された。劉永濤らは、健全な免疫機能を有するニワトリの趾屈筋腱の同所に自家腱細胞を利用して組織工学腱の構築に成功したが、組織工学腱の種細胞として自家腱細胞を利用するには、やはり大きな腱組織を切り取ることが必要で、新たな損傷が生じる。そのため、新しい種細胞源を探すことが組織工学腱の発展の主要な問題となる。
【0005】
また、現在、国内外で組織工学腱の研究は主に、動物体内における修復実験、すなわち、生体外で十分な数の種細胞を増殖させ、生物材料と複合化した後、直ちに或は生体外で一〜二週間だけ培養して生体内の欠損部位に移植することに注目している。すこし初歩の成功を得たが、このような細胞を接種した足場材をそのまま生体内に移植して腱を形成する方式はまだ以下の重大な欠陥がある。(1) 移植するのは、腱移植物ではなく、細胞-材料複合体であることによって、種細胞の生存がよくないため、移植が失敗し、安定した高成功率が得られない。(2) 移植する足場は分解されていない材料で、その分解物は酸性であることが多いため、直接炎症性反応、瘢痕形成や腱粘着を引き起こし、腱の修復効果を直接影響することがある。(3) 移植するのは、腱移植物ではないため、材料の分解に従って、細胞-材料複合体の力学性能が大幅に低下し、高張力部位の腱欠損を修復することができない。そのため、腱構築と修復の動物体内実験が多かったが、上述の問題があるので、臨床の応用まではまだ時間がかかる。
【0006】
このように、組織工学技術で腱組織の構築、腱組織の欠損の修復を行い、産業的生産の目的を実現する一つの要点は、大量の正常な機能を持つ腱細胞を得ることである。しかし、腱細胞は数回の継代を経て基質を分泌する能力を失うため、大量の機能活性を持つ腱細胞を得て大きな欠損組織を修復することが困難である。もう一つの要点は、ある程度の力
学性能を持ち、大部分の材料はすでに分解した比較的に成熟した腱組織を構築することである。そのため、より幅広い種細胞源、より最適化した生体外の構築技術を探すのは、組織工学腱の研究の焦点となった。
【0007】
前者の要点について、多くの学者が大量の研究を行い、腱の組織工学の種細胞源を広くし、且つその増殖を促進させようとしている。
【0008】
第一に、代用できる細胞、例えば、骨髄間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell、MSC)、真皮線維芽細胞(Dermal Fibroblast、DF)を探すことである。MSCは一族の多分化能を持つ細胞であり、特定の誘導条件で多種の間葉細胞に分化することができ、AwadらがMSCを分離・培養してコラーゲンと複合化した細胞-コラーゲン複合体を人工的欠損の膝蓋靱帯に移植し、対照群(単なるコラーゲンを使用)と比較したところ、実験群の組織の弾性率、最大張力、硬度などが対照群よりも大きかったが、組織学と形態学において両者は大きな差別がなかったことを見出した。しかしながら、骨髄間葉系幹細胞源には限りがあり、分離が複雑である。陳兵らは、ブタの自家線維芽細胞で組織工学腱を構築して浅趾屈筋腱の欠損を修復することに成功したことにより、真皮線維芽細胞を組織工学腱或は靱帯の構築の種細胞とする可能性が証明された。
【0009】
第二に、種細胞の増殖と基質の合成を促進させることである。成長因子は、細胞間の信号伝達により細胞の活動に影響を与える一類のポリペプチドの因子であり、生体内・外で細胞の増殖を促進・抑制することができる。多くの学者は直接成長因子を使って研究し、その体内・外での腱損傷の修復に対する促進作用が実証された。また、遺伝子組換え技術を利用し、遺伝子情報を細胞に伝達することにより、細胞の機能を変える人もいた。このような技術でターゲット細胞におけるタンパク質(例えば成長因子)の合成と分泌を増加・抑制し、細胞の成長を調節し、組織修復の過程に参与する。この方法の応用に成功すれば、細胞、組織を必要なようにサイトカインを合成・分泌させることによって、その成長を調節することができる。異なる方法で遺伝子を腱に導入することに成功した学者がすでにいたが、LacZ標識遺伝子が膝蓋靱帯に応用された後、発現が6週間も継続し、ニワトリの趾屈筋腱での実験では、Louらは遺伝子組換え技術を利用してLacZ標識遺伝子を腱に導入し、この遺伝子が75日後も検出され、そして、腱損傷後の粘着形成を減少・阻止する方法がいくつか提出された。
【0010】
上述の各種の研究を経たものの、腱の種細胞源が少ないという問題がまだ解決されていない。
【0011】
後者の要点について、生体外で各種の生物材料を使って腱組織の構築を行うことを試みる学者がいた。曹徳君らは、吸収可能な生物材料であるポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)と腱細胞を用いて生体外で組織工学腱を構築し、U型バネで細胞-PGA複合体に継続的に張力を与えてから生体外で培養し、6週間後構造が正常な腱と類似で、ある程度の力学性能を持つ腱様組織が形成されたが、この方法は、加わる張力の大きさや頻度などのパラメーターを正確に定量することができず、構築された組織の力学性能は極めて弱かった。生体外での生体内微環境のシミュレーションは、まださらなる改良と最適化が必要である。
【0012】
そのため、本分野では、新規な種細胞を使用し、且つ生体外で構築されたものであって、優れた力学性能を持つ組織工学的ヒト腱が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の内容
本発明の目的は、組織工学的ヒト腱移植物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、前述の組織工学的腱移植物の生体外製造方法を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、上述組織工学的腱移植物の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一は、
(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び
(b) 前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞、
を含む組織工学的腱移植物を提供する。
【0017】
別の好ましい例において、前述の組織工学的腱移植物の最大張力は、10〜80Nである。
別の好ましい例において、前述の種細胞は、線維芽細胞、或は線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物である。
【0018】
別の好ましい例において、前述の種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlである。
【0019】
別の好ましい例において、前述の生物分解可能な材料は、紐帯状である。
別の好ましい例において、前述の線維芽細胞と脂肪由来細胞は、自家或は同種他家由来である。
【0020】
別の好ましい例において、前述の薬学的に許容される生物分解可能な材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロブチレート、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸、シュードポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キトサン、キチン、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲル、無細胞基質、及びそれらの各種類と割合の混合物からなる群より選ばれる。
【0021】
本発明の第二は、
薬学的に許容される生物分解可能な材料に、前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞を混合し、種細胞-生物材料複合体を得る工程、
を含む上述の組織工学的腱移植物を製造する方法を提供する。
【0022】
別の好ましい例において、この方法は、さらに、
種細胞-生物材料複合体を生物反応器で培養し、上述のような組織工学的腱移植物を得る工程を含む。
【0023】
別の好ましい例において、前述の生物反応器は、出願番号200510110037.0に掲示された牽引型腱生物反応器である。
【0024】
別の好ましい例において、移植物における種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlである。
【0025】
別の好ましい例において、生物反応器で、種細胞-生物材料複合体に加わる牽引力は、2〜20Nである。
【0026】
別の好ましい例において、前述の生物分解可能な材料は、紐帯状である。
本発明の第三は、腱欠損を修復する移植物の製造のための上述のような組織工学的腱移植物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0027】
これによって、本発明は、新規な種細胞を使用し、且つ生体外で構築されたとともに、優れた力学性能を持つ組織工学的ヒト腱を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】二代目のヒト皮膚線維芽細胞を示すものである。
【図2】二代目のヒト腱細胞を示すものである。
【図3】初代の脂肪由来細胞を示すものである。
【図4】脂肪由来細胞の各表現型に対する同定結果を示すものである。ここで、AはVimentin+の同定結果を、BはCD106+の同定結果を、CはCD34-の同定結果を、DはCD29+/CD49D+の同定結果を、EはCD44+/CD49D+の同定結果を表す。
【図5】脂肪由来細胞の軟骨形成誘導後のII型コラーゲンの発現の様子を示すものである。
【図6】脂肪由来細胞の脂肪形成誘導後、オイル赤Oで染色し、観察された細胞質内の脂肪滴形成の様子を示すものである。
【図7】脂肪由来細胞の骨形成誘導後のカルシウム結節形成の様子を示すものである。
【図8】脂肪由来細胞の免疫抑制調節機能の検測結果を示すものである。
【図9】予備成形後の束状PGA繊維足場を示すものである。
【図10】予備成形後の束状繊維が「U」型バネに固定されたPGA足場を示すものである。
【図11】生物反応器の外観を示すものである。
【図12】ヒト真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来幹細胞の反応器における腱の構築方法を示すものである。
【図13】種細胞としてヒト真皮線維芽細胞を使用し、静止牽引2週間+動的牽引10週間後の組織工学的腱の組織学検測結果を示すものである。ここで、Aは皮膚線維芽細胞+PGAを、Bは腱細胞+PGAを表す。
【図14】異なる張力における生体外構築の組織工学腱の生物力学検測結果を示すものである。
【図15】種細胞としてヒト脂肪由来幹細胞を使用し、静止牽引2週間+動的牽引5週間後の組織工学的腱の組織学検測結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明者らは幅広く深く研究した結果、ヒトの真皮線維芽細胞、脂肪由来細胞或はこれらの混合物を、組織工学的腱移植物を構築する種細胞とし、種細胞と生物分解可能な材料との混合物を生物反応器で生体外培養することにより、優れた生理力学性能を持つ組織工学的ヒト腱を得ることができることを意外に見出した。
【0030】
用語
用語の「精製・分離された」とは、精製・分離された物質が基本的に他の細胞、タンパク質やポリペプチドを含有しないことを指す。
【0031】
用語の「異種移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)をある種から採取し、別の種の対
象に使用する方法を指す。
【0032】
用語の「自家移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)をある患者から採取し、同患者に使用する方法を指す。
【0033】
用語の「他家移植」とは、必要な生物材料(例えば腱)を同一種のある個体から採取し、別の患者に使用する方法を指す。
【0034】
ここで用いられるように、用語の「薬学的に許容される生物分解可能な材料」、「医学的に許容される生物分解可能な材料」、「生物分解可能な材料」、「生物材料」及び「材料」は同じ意味であり、いずれも細胞と成長因子に担体を提供でき、細胞や生体組織と優れた生物相容性を有し、且つ組織成長に合う分解速度を有する材料を表す。
【0035】
ここで用いられるように、用語の「組織工学的腱移植物」、「組織工学的腱」及び「組織工学腱」は交換して用いられてもよく、いずれも種細胞-生物材料複合体を含有し、且つ生体内の腱欠損を修復できる移植物であればよい。
【0036】
種細胞
本発明に用いられる腱移植物の種細胞は、線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞で、この二種の細胞は、自家でも他家でもよく、線維芽細胞が自身から採取されることが好ましい。両者の混合物であれば、線維芽細胞と脂肪由来細胞との数量の比は1:10000〜10000:1で、好ましくは1:5〜100:1、より好ましくは1:2〜10:1である。
【0037】
本発明の線維芽細胞源は特に限定されないが、任意の由来の線維芽細胞源でもよく、通常、本発明の線維芽細胞は、自家(例えば、真皮、皮下組織及び他の組織における線維芽細胞)、或は同種他家の線維芽細胞(例えば、ヒト胎児由来の線維芽細胞)である。また、線維芽細胞は、脂肪幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、或は他の幹細胞から誘導される線維芽細胞でもよい。
【0038】
本発明に用いられる線維芽細胞は、人体由来である。
自家の線維芽細胞が好ましいが、他家の線維芽細胞源を使用こともできる。
【0039】
本発明の好ましい例において、前述の種細胞は、ヒト自家真皮線維芽細胞である。
真皮線維芽細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。よく使用される分離方案は、以下の方法を含む。
【0040】
(a) コラーゲナーゼ消化・分離法:無菌条件で、皮膚組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄し、2倍体積の1mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthington、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて4h消化した後、150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で真皮線維芽細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養する。
【0041】
(b) 組織塊培養法:麻酔の無菌条件で皮膚組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄する。組織塊を培養皿の表面に均一に置き、培養皿をインキュベーターに2〜4時間置き、液体が緩慢に組織塊を被覆するように軽く培養液を入れ、細胞の遊離を待つ。
【0042】
真皮線維芽細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方
法は、真皮線維芽細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば線維芽細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0043】
本発明に適合の真皮線維芽細胞は、生体内或は生体外で増殖できることが必要である。一つの好ましい真皮線維芽細胞は、生体外培養の初代〜50代目の細胞で、且つ免疫組織化学染色によりI型コラーゲンの発現が、in situハイブリダイゼーション検測によりI型コラーゲンmRNAの発現が証明されたものである。
【0044】
本発明者らが研究した結果、脂肪組織から得られた脂肪由来細胞(adipose derived cells、ADCs)も間葉系幹細胞の一種であり、BMSCと同様に多分化能を持ち、誘導条件で骨、軟骨、腱などに分化することができる。BMSCと比べたら、ADCは他の利点がある。1.細胞源が豊富で、獲得が容易で、且つ獲得量がBMSCよりも遥かに多いとともに、ADCは細胞増殖能力もBMSCを遥かに超えているため、組織工学的構築に十分の細胞量を提供することができる。2.コラーゲンの分泌能力が高いが、優れた引張強度を維持するため、腱組織には大量のI型コラーゲンが必要なので、ADCはより腱の種細胞に適合で、機能性腱組織が形成しやすい。3.低免疫原性と免疫調節機能を持つため、より同種他家間の移植への応用に適合で、より幅広い臨床応用の将来性がある。
【0045】
そのため、脂肪由来細胞(ADC)は、組織工学腱の種細胞に適するだけではなく、相当の実用価値があるので、関連研究を行うことによって異なる個体に受けられる組織工学腱製品になり、組織工学腱製品の個体的治療の隘路を打開する可能性がある。
【0046】
脂肪由来細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は以下の通りである。
【0047】
無菌条件で脂肪吸引術後捨てられたヒト脂肪組織を取り、培養瓶に移動し、生理食塩水で洗浄を繰り返し、等体積の0.075%のI型コラーゲナーゼ(Worthington、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、それぞれ1時間後300gを10分間遠心し、高密度の細胞沈殿物を得、上清と浮遊の脂肪組織を捨て、細胞を均一に振とうし、計数後細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養する。
【0048】
脂肪由来細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、脂肪由来細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば脂肪由来細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0049】
本発明に適合の脂肪由来細胞は、生体内或は生体外で増殖できることが必要である。一つの好ましい脂肪由来細胞は、生体外培養の初代〜30代目の細胞である。
【0050】
必要であれば、種細胞に腱細胞及び/又は骨髄間葉系幹細胞を多少加えてもよい。腱細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、パンクレアチン、コラーゲナーゼによる消化で分離するもので、すなわち、無血清DMEM培地(Gibco社)でパンクレアチン或はコラーゲナーゼの濃度を0.1〜5mg/ml(好ましくは約1mg/ml)に調節し、37℃±2℃の恒温振とう機内で4〜20h消化する。
【0051】
腱細胞の培養方法と培養液も本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は、腱細胞を飽和湿度、5%CO2のインキュベーターで培養するものである。適合の培養液は、1)DMEM培地(Gibco社)+10%牛胎児血清、2)DMEM培地+20%仔牛血清、3)DMEM培地+10〜20%自家(他家)ヒト血清を含むが、これらに限定されない。また、上述培養液には、各種の成長因子(例えば腱細胞の成長を促進させるサイトカイン等)、各種の遺伝子組換え成分、各種の細胞成分が添加される。
【0052】
本発明において、骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)源は特に限定されないが、一つの好ましい細胞源は自身由来の骨髄である。骨髄間葉系幹細胞を分離して獲得する方法は、本分野ではよく知られている。一つの好ましい方法は以下の通りである。麻酔下骨髄穿刺で自家骨髄を取り、密度勾配遠心法でその中の有核細胞を分離し、適合の培養液(例えば、10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/ml、デキサメタゾン5nM(Sigma)を含有するDMEM(Gibco、Gland Island、NJ、USA)条件培養液)を加え、細胞浮遊液とし、約1×105/cm2の密度で培養皿に接種し、37℃、5%CO2、100%飽和湿度の条件で培養する。48時間後、初回の培養液交換をし、条件培養液を加えて培養を継続し、1日おきに培養液を交換する。細胞成長がコンフルエンスに近づいたら、0.25%トリプシン+0.02%EDTAで消化し、1×104/cm2の密度で接種して細胞継代を行う。
【0053】
生物分解可能な材料
本発明に用いられる組織工学的腱の材料は薬学的に許容される生物分解可能な材料であり、以下の材料を含むが、これらに限定されない。
【0054】
(a) 分解可能な合成高分子材料、例えば、ポリα-ヒドロキシ酸(例えばポリ乳酸PLA、ポリグリコール酸PGA、ポリヒドロブチレートPHB等)、ポリ酸無水物(polyanhydrides)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリアミノ酸(polyamino acid)、シュードポリアミノ酸(pesudo-polyamino acid)、ポリオルトエステル(polyorthoesters)、ポリエステルウレタン(polyesterurethane)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン(polydioxanone)等。
【0055】
(b) 分解可能な天然材料、例えばコラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan,GAGs)、キトサン(chitosan)、キチン(chitin)、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲルなど、各種の無細胞基質。
【0056】
(c) 上述材料の混合物或は複合材料、特に高分子材料と天然材料の複合材料。
なかでも、ポリグリコール酸PGA、ポリ乳酸PLA、或は両者の共織物PGLAなどが好ましい。
【0057】
生物反応器
本発明に適合の生物反応器は特に限定されないが、本発明でよく用いられる各種の生物反応器を使用することができる。好ましい生物反応器は以下の特徴がある。1.大きさ、用量が適合で、細胞或は組織の培養と代謝物の排出に有利で、且つ汚染しにくい。2.生体内の腱の生物力学などの微環境をシミュレーションし、組織工学腱の成長に適する環境を提供することができる。3.引張力、頻度などのパラメーターの制御が可能で、且つ操作が便利である。
【0058】
組織工学腱
本発明は、(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び(b) 前述の生物分解可能な材料にそれぞれ或は混合して接種された真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞、を含む新規な組織工学的ヒト腱移植物を提供する。本発明に提供される組織工学的腱移植物は、優れた力学性能を持ち、本分野の通常の方法でテストすることができ、例えば、Intr
on生物力学測定儀、BOSE生物力学測定儀などで腱移植物の抗引張性能を測定することができるが、これらに限定されない。
【0059】
テストの時、本発明に提供される組織工学的腱移植物は、最大張力が10〜80Nで、より好ましくは40〜80Nであることが好ましい。
【0060】
本発明の組織工学腱は比較的に成熟で、生体外である程度の時間で培養すると、大部分の生物材料が分解するため、体内への早期移植の場合、生物材料の大量の分解物による腱粘着、断裂などの現象を避け、より有効的に腱欠損を修復することができる。
【0061】
本発明の組織工学腱は比較的に成熟で、生体外である程度の時間で培養すると、種細胞が十分なコラーゲンなどの細胞外基質を分泌するため、新生組織工学腱の移植の時すでにある程度の生物力学性能があるようにし、修復の初期に力による腱の断裂などが避けられる。
【0062】
本発明の組織工学腱移植物の形状は特に限定されなく、組織欠損の形状に合わせて任意に成形することができるが、通常、移植物は短冊状である。
【0063】
生体外培養で増殖した種細胞を生物相容性が良好で且つ生体に吸収できる分解可能な生物材料に接種して種細胞-生物材料複合体を形成し、この種細胞-生物材料複合体を生物反応器中に置いてある程度の時間で培養すると、生物材料が分解・吸収されていくとともに、種細胞が継続的に増殖し、且つ基質を分泌し、大部分の生物材料に代えて比較的に成熟な組織工学腱を形成し、欠損部位に移植する場合、腱欠損の修復を実現させることができる。
【0064】
本分野でよく用いられる生物反応器を使用することができるが、細胞-材料複合体の生体外構築に必要な動的牽引力を提供することができればよく、牽引型腱生物反応器が好ましい。腱移植物の長さ、直径を腱欠損の長さと直径によって決め、さらに応力条件(2〜20N)で生体外で1週間培養し、細胞の栄養を保証するように1〜2日おきに液交換を行い、これによって移植に供する腱を形成する。
【0065】
本発明の組織工学腱における種細胞の濃度は、通常、約1×105/ml〜5×108/ml、好ましくは1×106/ml〜1×108/ml、より好ましくは5×106/ml〜5×107/mlである。通常は、培養液で種細胞の濃度を調整し、さらに分解可能な材料と混合する。混合時、培養液と分解可能な材料との比率は特に限定されないが、この材料が吸着できる培養液の最大量が好ましい。
【0066】
また、本発明の組織工学腱移植物に、腱細胞の表現型の保持、腱細胞の成長の促進及び組織工学腱の生体内における血管・神経形成の促進のため、さらに他の各種の細胞、成長因子、各種の遺伝子組換え成分を添加・複合してもよい。
【0067】
本発明の方法で形成される組織工学腱移植物或は腱は、直接生体内の腱欠損部位に移植し、腱欠損を修復することができる。
【0068】
本発明で記述の上述の特徴或は実施例で記述の特徴は任意に組合せることができる。本明細書に掲示されたすべての特徴は任意の組成物様態と併用することができ、明細書に掲示された各特徴は任意の相同、同等或は類似の目的を提供できるもので取り替えられることができる。そのため、特別な説明がない限り、掲示された特徴はいずれも同等或は類似の特徴の一般的な例だけである。
【0069】
本発明の主な利点は、以下の通りである。
(1) 真皮線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞の分布が広く、採取が容易であるため、組織工学的腱の構築の種細胞源が少ないという問題が解決された。
【0070】
(2) 脂肪由来細胞が低免疫原性と免疫調節機能を持つため、同種他家移植修復の免疫拒否の問題を解決することが期待できる。
【0071】
(3) 組織欠損の形状に合わせて任意に成形して形成することが可能な組織は生体内に終生生存することができる。
【0072】
(4) 新型生物反応器により精確で調節可能な単方向牽引力を提供し、腱構築を行い、且つ排除体積効果(excluded volume effect、EVE)で腱の成熟を加速させる。
【0073】
(5) 生体外で腱を形成した後、細胞が自然の細胞外基質に囲まれるため、生体内に移植する場合、細胞の死亡が避けられ、比較的に安定した高成功率が得られる。
【0074】
(6) 生体外で構築された腱を生体内に移植する場合、大部分の足場材料がすでに分解したため、酸性分解物の生成が避けられ、腱の線維化や粘着を防止することができる。
【0075】
(7) 生体外である程度の生物力学性能を持つ組織工学腱を構築し、移植すると、通常の腱移植と同様に早期の機能鍛錬が可能で、腱粘着の防止と機能回復の促進に有利である。
【0076】
以下具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。特に説明しない限り、すべての%と部は重量基準である。
【0077】
別に定義しない限り、ここで使用された専門・科学用語は全部本分野の熟練者によく知られている意味と同様である。また、記載された内容と類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明の方法に取り入れられる。ここで記述の好適な実施方法及び材料はただ例示のためである。
【実施例1】
【0078】
皮膚線維芽細胞の分離と培養
無菌条件で、手術中捨てられた包皮組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で2回洗浄し、2倍体積の1mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて4h消化した後、150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で真皮線維芽細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/mlを含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、線維芽細胞が2代目まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した(図1)。
【実施例2】
【0079】
腱細胞の分離と培養
無菌条件で、切断術後捨てられた新鮮ヒト腱組織を取り、2×2×2mm3の大きさの組織塊に切り、リン酸緩衝液(PBS、ペニシリン、ストレプトマイシンをそれぞれ100U/ml含有)で
2回洗浄し、2倍体積の0.25mg/mlのII型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、4、5、7時間後それぞれ150メッシュのナイロン網篩でろ過して遠心し、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄して計数し、トリパンブルー染色で腱細胞の活力を検査し、細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清、L-グルタミン300μg/ml、ビタミンC50μg/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100U/mlを含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、線維芽細胞が2代目まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した(図2)。
【実施例3】
【0080】
脂肪由来細胞の分離と培養
無菌条件で脂肪吸引術後捨てられたヒト腱組織を取り、培養瓶に移動し、生理食塩水で洗浄を繰り返し、等体積の0.075%のI型コラーゲナーゼ(Worthingtonから入手、Freehold、NJ、USA)を加え、37℃の恒温振とう機に置いて消化し、それぞれ1時間後300gを10分間遠心し、高密度の細胞沈殿物を得、上清と浮遊の脂肪組織を捨て、細胞を均一に振とうし、計数後細胞を1×106/皿の密度で(培養皿の直径100mm)培養し、培養液は10%牛胎児血清を含有するDMEM(Gibcoから入手、Gland Island、NJ、USA)で、37℃、5%CO2、100%飽和湿度の条件で培養し、24時間後、初回の培養液交換をし、浮遊の細胞を除去するようにPBSで洗浄を繰り返し、培養液を加えて、細胞成長がほとんどコンフルエンスになったら、継代を行った(図3)。細胞を必要な代まで継代し、0.25%パンクレアチンで消化し、細胞を収集して、実験に供した。
【0081】
脂肪由来細胞の同定
初代の脂肪由来細胞をカバーガラスで培養し、70%コンフルエンスになった時点で、4%パラホルムで15分間固定し、各種の測定しようとする表面抗原の抗体を加え、37℃で1時間インキュベートし、PBSで洗浄し、FITC結合二次抗体(DAKO、Carpinteria、U.S.A)を加え、37℃で30分間インキュベートし、再びPBSで洗浄し、Heochest33258(Sigma社(米国)から入手)或はヨウ化プロピジウム(Sigma社(米国)から入手)で核対比染色を行い、レーザー共焦点顕微鏡で細胞の表面抗原の発現を観察した。
【0082】
脂肪由来細胞の多分化能
軟骨形成の誘導
3代目の細胞をマイクロペレット培養法で軟骨形成の誘導を行い、誘導因子の最終濃度は、TGF-β1(R&D社(米国)から入手)10ng/mL、IGF(R&D社(米国)から入手)100ng/mL、Dex(Sigma社(米国)から入手)0.1μmol/L、トランスフェリン(Sigma社(米国)から入手)6.25μg/mLであった。
【0083】
脂肪形成の誘導
3代目の細胞を7日培養した時点で脂肪形成の誘導を行い、誘導液の成分はベース培養液とIBMX(Sigma社(米国)から入手)0.5mmol/L、Dex 1μmol/L、インスリン(Sigma社(米国)から入手)10μmol/L、インドメタシン(Sigma社(米国)から入手)200μmol/Lで、倒立位相差顕微鏡で細胞の形態変化を観察し、誘導から14日後相応の検測を行った。
【0084】
骨形成の誘導
3代目の細胞を7日培養した時点で骨形成の誘導を行い、誘導液の成分はベース培養液にβ-リン酸グリセリン2.16g/L、ビタミンD3 10nmol/Lであった。誘導から20日後石灰化結節に対して骨形成関連の特殊染色を行った。
【実施例4】
【0085】
生物材料足場の製作
材料繊維を束状に予備成形し(図9)、且つ「U」型バネに固定して足場に持続的に静止張力を与え(図10)、さらに75%エタノールに浸漬して1時間消毒した後、PBSで3〜5回洗浄し、紫外線ランプで消毒し、自然乾燥後使用に備えた。
【実施例5】
【0086】
組織工学腱の生体外構築
皮膚線維芽細胞及び/又は脂肪由来細胞を2〜4代目まで継代し、0.25%トリプシンで消化して細胞を収集し、2.0×107/mlの細胞浮遊液とした。細胞浮遊液を予め製作されたPGA繊維足場に接種し、まず細胞-材料複合体を二酸化炭素のインキュベーターに4時間置き、さらに10%牛胎児血清を含有するDMEM培養液を約30ml入れ、続いてインキュベーターで培養した。それから、細胞の栄養を保証するように2日に1回培養液を交換した。約2週間後、十分な細胞外基質を分泌したら、さらに牽引型腱生物反応器の細胞培養室内に移動して動的牽引培養を行い、ある程度の時間(好ましくは3〜10週間)で培養した後、腱欠損の修復に使用できる組織工学腱移植物を形成した。生物反応器において種細胞-生物材料複合体に加わった牽引力は2〜20Nで、牽引頻度は毎日1〜12時間で、毎回の牽引は2〜30秒間持続し、間隔は5〜60秒間で、変位は移植物の長さの5〜30%であった。
【0087】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び
(b) 前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞、
を含むことを特徴とする、組織工学的腱移植物。
【請求項2】
最大張力は、10〜80Nであることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前述の種細胞は、線維芽細胞、或は線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前述の種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlであることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項5】
前述の生物分解可能な材料は、紐帯状であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前述の線維芽細胞と脂肪由来細胞は、自家或は同種他家由来であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項7】
前述の薬学的に許容される生物分解可能な材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロブチレート、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸、シュードポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キトサン、キチン、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲル、無細胞基質、及びそれらの各種類と割合の混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項8】
請求項1に記載の組織工学的腱移植物を製造する方法であって、
薬学的に許容される生物分解可能な材料に、前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞を混合し、種細胞-生物材料複合体を得る工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
さらに、種細胞-生物材料複合体を生物反応器で培養し、請求項1に記載の組織工学的腱移植物を得る工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
腱欠損を修復する移植物の製造のための請求項1に記載の組織工学的腱移植物の使用。
【請求項1】
(a) 薬学的に許容される生物分解可能な材料、及び
(b) 前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞、
を含むことを特徴とする、組織工学的腱移植物。
【請求項2】
最大張力は、10〜80Nであることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前述の種細胞は、線維芽細胞、或は線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項4】
前述の種細胞の含有量は、1×105個細胞/ml〜5×108個細胞/mlであることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項5】
前述の生物分解可能な材料は、紐帯状であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項6】
前述の線維芽細胞と脂肪由来細胞は、自家或は同種他家由来であることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項7】
前述の薬学的に許容される生物分解可能な材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロブチレート、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸、シュードポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キトサン、キチン、アルギン酸塩、アルギン酸カルシウムゲル、無細胞基質、及びそれらの各種類と割合の混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の移植物。
【請求項8】
請求項1に記載の組織工学的腱移植物を製造する方法であって、
薬学的に許容される生物分解可能な材料に、前述の生物分解可能な材料に接種され、且つ(i) 線維芽細胞、(ii) 脂肪由来細胞、或は(iii) 1:10000〜10000:1の線維芽細胞と脂肪由来細胞との混合物、からなる群より選ばれる種細胞を混合し、種細胞-生物材料複合体を得る工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
さらに、種細胞-生物材料複合体を生物反応器で培養し、請求項1に記載の組織工学的腱移植物を得る工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
腱欠損を修復する移植物の製造のための請求項1に記載の組織工学的腱移植物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図14】
【公表番号】特表2010−531683(P2010−531683A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513625(P2010−513625)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070566
【国際公開番号】WO2009/003375
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004309)上海国睿生命科技有限公司 (1)
【出願人】(510004310)上海交通大学医学院附属第九人民医院 (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070566
【国際公開番号】WO2009/003375
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004309)上海国睿生命科技有限公司 (1)
【出願人】(510004310)上海交通大学医学院附属第九人民医院 (1)
【Fターム(参考)】
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