組織透過性の変調のためのロタウイルス蛋白質、誘導した蛋白質及びペプチドの利用
本発明は、傍細胞経路を通る医薬品の配送を増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、VP8、及びそれらに誘導した融合蛋白質及びペプチドの使用に関する。加えてこれらのロタウイルス蛋白質及び誘導したペプチドは、癌細胞間で、又は手術、損傷、化学療法、疾患、炎症もしくは他の病態の結果正常細胞間で起こり得る望ましくない細胞接着を低下するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、タイトジャンクションシーリング(sealing)を調節する方法、より詳細に述べると細胞接着及び組織透過性バリヤの形成を阻害する蛋白質及びペプチドの使用に関する。
【0002】
発明の背景
タイトジャンクション(TJ)
多細胞生物においては、様々な分子組成の液体(尿、乳汁、胃液、血液など)が、上皮(例えば、腎尿細管)及び内皮(血管)により輪郭を描かれたコンパートメントに含まれている。これらの細胞の層(sheet)が、生物の内部環境とコンパートメントの内容物の間に境界を構成している。従って、血液成分が所定の組織へ侵入するためには、これらは最初に血管管腔から出て、その血管の内皮細胞を通り、横断しなければならない。腸管を通って体に侵入する物質の場合、これらは最初に、腔を区切る上皮細胞で形成されたバリヤを通過しなければならず、及び血液が皮膚を介して侵入するためには、上皮及び内皮の両層を横断しなければならない。
【0003】
細胞-細胞接着は、組織の発達及び生物体内の独立したコンパートメントの維持のために重要であるが、細胞接着の制御された調節が望ましいという条件がある。上皮又は内皮により形成されたバリヤが体内の特定の組織及び腫瘍への薬物配送(delivery)にとって困難を生じる場合に、このような状況に遭遇する。
物質の内皮及び上皮を通る輸送(passage)は、経細胞経路及び傍細胞経路の2種の平行経路を通じて進む。前者において、イオン及び分子は、上皮及び内皮の細胞膜内に位置したそれらの一過性のチャネル、担体及びポンプを利用する。体内の特定組織への薬物の輸送を促進する試みは一般に、このような特定のチャネル又はin vivoにおいて分子を輸送する担体に頼っている。しかしこのような方法は、低い内因輸送速度又は適用された薬物とのそれらの機能不良のために、非常に非効率である。
これらの障害を克服するために、傍細胞(paracellular)経路を通る輸送がアッセイされている。この経路は、隣接細胞間に存在する細胞間隙からなり、及びタイトジャンクション(TJ)により調節される。
【0004】
TJは、頂端膜及び側膜の間の境界線で細胞境界を取り囲む構造である。これは、以下の2種の基礎的役割を果たす:1)傍細胞経路を通るイオン、水及び分子の通過を調節するゲートとして;並びに、2)脂質及び蛋白質の膜の平面内の側方拡散をブロックするフェンスとして。このフェンスは、頂端部細胞膜と側底部細胞膜の間の脂質及び蛋白質の極性のある分布を維持するので、これは重要である(Cereijidoら、1998)。
超薄切片電子顕微鏡写真において、TJは、隣接細胞の膜の外側リーフレットの間の連続融合点「キッシング」として見える。これらのキッシング点において、細胞間隙は完全に消し去られる。凍結-割断レプリカ電子顕微鏡写真において、TJは、外質面(exoplasmic face)(E)上に相補的溝を伴い、原形質面(protoplasmic face)(P)上の連続し及び吻合するフィラメントのネットワークとして、細胞膜に出現する(Gonzalez-Mariscalら、2001)。
【0005】
2種のモデルが、TJの化学的性質を説明すると提唱されている。蛋白質モデルにおいて、TJ鎖は、隣接細胞の並んでいる膜のパートナーと会合している内在性蛋白質により形成される。代わりに脂質モデルにおいては、TJフィラメントは、倒置された円筒状ミセルで形成されると思われている(Kacharら、1982)。二層の脂質内容物は、TJの形成にとって重要であるように見えるが、近年のTJ特異的内在性蛋白質の発見は、TJの蛋白質モデルに強力な裏付けをもたらしている。
TJは、表層蛋白質及び内在性蛋白質の複雑な配置により構成される。前者について、これまで16種の異なる分子が同定されている。一部は、TJの内在性蛋白質をアクチン細胞骨格に連結するスカフォールドとして機能するか(ZO-1、ZO-2、ZO-3及びシングリン) (Citiら、1988;Gonzalez-Mariscalら、2000)、又は膜貫通ジャンクション蛋白質のクロスリンカーとして機能する(MUPP1、MUPP2及びMUPP3) (Hamazakiら、2002)。その他は、TJへの小胞輸送に(Rab13、Rab3b) (Zahraouiら、1994)、キナーゼ(Par3及びPar6) (Izumiら、1998)及びRas(例えばAF6) (Yamamotoら、1997)へのそれらの会合を介した細胞シグナル伝達に、並びに転写因子へのそれらの特異的結合による遺伝子発現(ZO-1及びZO-2) (Baldaら、2000)に関連している。TJで認められたいくつかの他の表層蛋白質の役割は、依然不明である[例えば、Jeap (Nishimuraら、2002)、Pilt (Kawabeら、2001)、Barmotin (Zhongら、1993)及びシンプレキシン(Keonら、1996)]。
【0006】
TJにおいて、オクルディン、クローディン及びJAMの3種の内在性蛋白質が発見された。オクルディンは、最初に同定されたものであった(Furuseら、1993)。特異的抗体による免疫レプリカ電子顕微鏡写真は、TJフィラメント内のその標識を明らかにしたので、これはTJ鎖の成分と考えられている(Saitouら、1997)。更に、TJを欠いているL線維芽細胞へ導入される場合は、TJ鎖に類似した構造が形成された。
オクルディンは、4個の膜貫通領域、同様の大きさの2個の細胞外ループ、並びに1個の細胞内の短いターン、小さいアミノ末端ドメイン及び長いカルボキシ末端領域である、3個の細胞質ドメインを含む。
いくつかの一連の証拠が、オクルディンを、TJでの重要な役割に割当てている。従って上皮細胞におけるこの蛋白質の変異型の過剰発現は、TJのバリヤ及びフェンス機能の変化(Baldaら、1996b;McCarthyら、1996) (Bamforthら、1999)、及び好中球の経上皮移動(Huberら、2000) (Lacaz-Vieiraら、1999). (Medinaら、2000) (Vietorら、2001)につながる。加えて、オクルディンの発現と、経上皮電気抵抗(TER)及び細胞外トレーサーに対する透過性で評価された、上皮のシーリングの度合いの間に、いくつかの組織において相関関係が観察されている。この証拠にもかかわらず、オクルディンの生理的機能は、完全には理解されていない。これに関して、胚細胞及びオクルディン遺伝子のヌル突然変異を保持するマウスは、依然良く発達したTJを形成することができる(Saitouら、1998)が、これらの動物は、いくつかの組織において出生後の生育の遅れ及び組織学的異常を示す(Saitouら、2000)ことが注目されている。
【0007】
より最近になって、クローディン1及びクローディン2と称される別の内在性蛋白質が、TJ構成要素として同定された。データベース検索並びにcDNA及びゲノムクローニングにより、クローディンファミリーは、20種のメンバーに拡大されている(Tsukitaら、2001)。全てのクローディンは、20〜27kDa蛋白質をコードし、これは4個の膜貫通ドメイン;第一のものが第二のものよりも著しく長い、2個の細胞外ループ;及び短いカルボキシ細胞内尾部を伴う。
クローディンが線維芽細胞へトランスフェクションされる場合、これらは、細胞-細胞凝集活性をもたらし、細胞接触点を濃縮し、及びTJ鎖のように見えるフィラメントのネットワークを形成した。更に、免疫レプリカ電子顕微鏡において、異なるクローディンに対する抗体は、上皮のTJフィラメントを選択的に標識した。この証拠は全て、クローディンを、TJ鎖の骨格とみなすものである。
【0008】
様々なクローディン種は、異なる凍結-割断パターンを作成することが可能である。従って、クローディン1又は3は、レプリカの原形質面(P面)上の連続した滑なフィブリル(smooth fibril)を伴うTJを形成する(Furuseら、1999)のに対し、クローディン2又は5は、外質面(E面)に会合した粒子の不連続鎖を伴うジャンクションを作成する(Moritaら、1999b)。代わりにクローディン11は、ほとんど分岐しないP面上に平行なTJ鎖を構成する(Moritaら、1999a)。
異種クローディンは、単独のTJ鎖内で相互作用することができ、それらの特定の組合せは、異なる凍結-割断パターンを生じる。従ってクローディン1及び3で形成された鎖は、連続し、P面に会合されるのに対し、クローディン1及び2又は3及び2により形成された鎖は、E面溝中に均等に散乱された粒子を有する。傍細胞間隙において、隣接する細胞に属する様々な種類のクローディンの細胞外ループも、一部の組合せを除き、相互作用することができる(Furuseら、1999)。
【0009】
上皮及び内皮における様々なクローディンの発現は、個別の組織において示された透過性及び傍細胞イオン選択性における十分な多様性を生じるであろう。様々な管状セグメントに沿って広範なTERを示すネフロン(近位部で6Ωcm2、対、集合管内で870〜2000Ωcm2)は、ほぼ全てのクローディンを発現するが、依然各々は、特定のセグメントに制限されている(Enckら、2001;Kiuchi-Saishinら、2002) (Reyesら、2002):内皮でクローディン5及び15、近位セグメントでクローディン2、10及び11、遠位管でクローディン1、3及び8、並びに集合セグメントでクローディン1、3、4及び8。
【0010】
様々なクローディンの発現の開始は、発達において調節されている。従って、クローディン5は、網膜色素上皮細胞の発達時に一過性に発現され(Kojimaら、2002)、クローディン11は、Y遺伝子の性決定領域の発現のピーク直後に、セルトリ細胞において発現され(Hellaniら、2000)、並びにクローディン6は、上皮となる運命にコミットされた胚性幹細胞において認められる(Turksenら、2001)。
クローディン16は、低マグネシウム血高カルシウム尿症候群(HHS)のヒト患者において変異される(Simonら、1999)。これらの患者は、ヘンレ細管の上行する肢(limb)において傍細胞Mg2+及びCa2+再吸収の選択的欠損を顕在化するが、この部位でNaCl再吸収能は損なわれていない(Blanchardら、2001)。従ってクローディン16は、Mg2+及びCa2+に選択的な傍細胞チャンネルとして機能するように見える(Goodenoughら、1999)。他のクローディンも、イオン選択性であることが証明されている。従ってクローディン4が上皮細胞へトランスフェクションされる場合は、傍細胞コンダクタンスは、Cl-透過性への有意な作用を伴わずに、Na+透過性の選択的減少を通じ減少する(Van Itallieら、2001)。
【0011】
20年以上前に、Claudeは、TERはTJ鎖の数により、一連のレジスタの追加から予想されるように直線方式ではなく、指数関数的に増加することを観察した(Gonzalez-Mariscalら、2001)。この関係を説明するために、TJ鎖内にイオンチャンネル又は孔の存在を示すことが提唱されている(Claude, 1978;Gonzalez-Mariscalら、2001)。現在そのクローディンは特徴付けが開始されており、TJでのイオン選択性は、TJ鎖の孔又はチャンネルを構成する特異的クローディンアイソフォームにより決定されているように思われる。クローディンの細胞外ループを分析する際には、分布の膨大な変動性及び多くの帯電した残基が認められる。例えば、第一のループの等電点は、クローディン16の4.17からクローディン14の10.49までの範囲であり、及び第二の細胞外ループは、クローディン2、7、10及び14の4.05からクローディン13の10.5までである。細胞外ループ配列のpKIを基に、クローディン16は、カチオン孔であり、ヒト患者におけるその変異の観察された作用と一致すると提唱されるのに対し、クローディン4、11及び17はアニオン孔である(Miticら、2001)。
【0012】
TJの密着性の変動は、様々なクローディン種の組合せ及び混合比により決定されるように見える。従って、クローディン1及び4を発現しているMDCK細胞がクローディン4結合ペプチド(ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)腸毒素、CPE)とインキュベーションされる場合、クローディン4は、TJから選択的に取り除かれ、TERの有意な減少を作成する(Sonodaら、1999)。更に、クローディン-2が高抵抗のMDCK細胞(MDCK I)に導入される場合、TJは、漏出性となり及び、通常クローディン2を含む低い抵抗の細胞(MDCK II)において認められるものに形態的に類似している(Furuseら、2001)。
発癌におけるクローディンの役割については、議論の余地がある。クローディン4は、膵臓癌及び消化器腫瘍において過剰発現され、TGFβ又はクローディン4を特異的に標的とする腸毒素であるCPEによる治療は、腫瘍成長の有意な低下につながる(Michlら、2001)。対照的に、他のクローディンは、多くの腫瘍及び癌細胞株において低いか又は検出不能であり続ける。例えば、クローディン1の発現は、そのプロモーター配列又はコード配列における変化を示すことなく、ほとんどのヒト乳癌において喪失され(Hoevelら、2002;Kramerら、2000)、及びクローディン7は、頭頚部扁平上皮細胞癌においてダウンレギュレーションされる(Al Moustafaら、2002)。
【0013】
上皮のゲート機能におけるある種のクローディンの重要な役割は、クローディン1欠損マウスにおいて、表皮はそのバリヤ機能を喪失し、動物の脱水症、皺の多い皮膚、及び生後1日以内の死亡につながるという知見により強調される(Furuseら、2002)。これらのマウスにおいて、オクルディンは層をなす上皮の全ての層において依然発現され、及び残存するクローディン4は、顆粒層の第二及び第三の層において濃縮される。従って、表皮において、クローディン-1は、TJのバリヤ機能の欠くことのできない要素を構成する。
TJの最後の内在性蛋白質はJAM及び3種のJAM様蛋白質である(Palmeriら、2000)。これらは免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、単独の膜貫通セグメントを有し、それらの細胞外部分は、2個のフォールドされた免疫グロブリン様ドメインからなる。JAMの線維芽細胞へのトランスフェクションはフィラメントの出現を生じないので、JAMは、TJ鎖の構成要素ではないように見える。JAMは、オクルディン及びクローディンの架橋、更には単球の経上皮及び経内皮移動において役割を果たす(Martin-Paduraら、1998)。
【0014】
タイトジャンクションの生理学的及び病理学的調節
上皮及び内皮は、TJのシーリングの程度の変化を誘起する多様な生理学的及び病理学的状態に遭遇する。TJ透過性におけるこれらの変動は、カルシウム(Gonzalez-Mariscalら、1990;Martinez-Palomoら、1980)、ホルモン、サイトカイン及び増殖因子、G蛋白質及びホスホリパーゼの活性化、cAMP及びジアシルグリセロールの生成(Baldaら、1991)、並びに様々なキナーゼによるTJ蛋白質のリン酸化(Avila-Floresら、2001;Baldaら、1996a;Sakakibaraら、1997)のような因子の広範なスペクトルにより調節される。
【0015】
近年、腸内病原体(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))及び細菌性毒素のTJに対する作用が認められた(Hecht, 2002)。従ってウェルシュ菌腸毒素(CPE)による治療は、クローディン3及び4をこれらの鎖から特異的に取り除くことにより、TJ及びTERを破壊するのに対し(Sonodaら、1999)、他方でコレラ菌(Vibrio cholera)のヘマグルチニン及びZOT毒素は、それらのオクルディン(Wuら、2000)及びPKC(Fasanoら、1995)に対する各作用のために、上皮透過性を増加する。進化の観点からは、TJの内因性モジュレーターを模倣した(mimicked)毒素に意味がある細菌は、上皮バリヤを横断することにより、これらは新たな環境を得るので、利点であった。これは、コレラ菌の場合に、TJを変調する内因性蛋白質がZOT毒素に対して生じた抗体を用い最近同定されたので明らかである(Fasano、1999;Wangら、2000)。
【0016】
ロタウイルス
ロタウイルスは、2歳未満の小児における胃腸炎により引き起こされる罹患及び死亡の主因である。レオウイルス科のこれらのウイルスは、蛋白質の3個の同心層により取り囲まれた、11個のRNA二本鎖セグメントで構成されるゲノムを有する。最も外側層は、平滑であり、VP7と称される37kDa糖蛋白質により構成される。そこから、VP4と称される88kDa蛋白質で形成された約60個のスパイクが、外側に突き出ている(Estes、1996)。
VP4は、受容体結合及び細胞浸透に参画するので、これは初期ウイルス-細胞相互作用に必須である。実際、ロタウイルスの感染力は、VP4のトリプシンによるペプチドVP5及びVP8への特異的切断により左右される(Almeidaら、1978;Espejoら、1981)。
In vivoにおけるロタウイルス感染は、回腸末端(ileum microvellosities)に制限される(Kapikianら、1996)。広範で多様な腎臓及び小腸の上皮細胞株は、ロタウイルス感染し易いので、in vitro感染は、より制限が少ない(Estesら、1989)。
【0017】
一部のロタウイルスは、シアル酸(SA)を含む細胞-表面受容体に結合する一方、他のもの(例えば、ヒトロタウイルス)は、感染にSAを必要としない(Fukudomeら、1989)。従って、SAへの結合は、ロタウイルス感染にとって必須の工程であるようには見えない。更に二次的SA非依存型受容体への会合は、ある種のロタウイルスのSAとの初期の相互作用を克服することができる。SA依存型アカゲザルロタウイルス(RRV)は、最初にVP8を介し細胞へ結合する(Fioreら、1991;Isaら、1997)のに対し、最早SAの存在に依存しないRRV変異体(例えば、nar3)は、VP5を介して細胞と相互作用する(Zarateら、2000b)。RRV、そのSA非依存型変異体nar3、及びヒトロタウイルス株Waを含む、動物及びヒト起源の多くの株の比較による特徴決定は、ロタウイルスは、インテグリンリガンド配列を含むこと(Coulsonら、1997) (Guerreroら、2000)、並びにα2β1インテグリンは、nar3により、初代細胞受容体として、及びRRVにより、SA含有細胞受容体とのその初期接触後の二次的相互作用において使用されること(Zarateら、2000a)を示している。インテグリンαVβ3は、それらの細胞への初期接着後、3種の全てのロタウイルス株により、共-受容体として使用される(Guerreroら、2000)。インテグリンαXβ2及びα4β1が、ロタウイルス細胞侵入に参画することも示されている(Coulsonら、1997;Hewishら、2000)。
【0018】
ウイルスの細胞受容体としてのインテグリンの機能は別にして、インテグリンは、細胞と細胞外マトリックスの間の相互作用を媒介するαβヘテロ二量体ファミリーを構成する。この相互作用は、細胞増殖、移動及び分化の調節において、重要な役割を果たしている。上皮細胞及び内皮細胞において、インテグリンは、極性のある分布を有し、側底膜に局在化する。従って小腸管腔内又は集密な上皮細胞株の頂端面に含まれるロタウイルスは、傍細胞経路をシーリングしているTJが開いた場合に、側底面のそれらのインテグリン受容体にのみアクセスすることができる。
本説明の冒頭に記したように、ジャンクションの密着性を変調し及び透過性バリヤを超えた薬物配送を改善する化合物が当該技術分野において必要であるので、本発明者らは、ロタウイルス蛋白質のTJシーリングを変調する能力の探索を進めた。本発明は、この必要性を満足し、及びその他の関連した利点を提供する。最近、細胞の悪性転換が、ある種のクローディンの過剰発現と関連付けられた(Michl ら、2001)。従ってジャンクション蛋白質を標的とするロタウイルス蛋白質及び誘導したペプチドも、腫瘍細胞成長の縮小に使用される。
【0019】
本発明において、本発明者らは、アカゲザルロタウイルス(RRV)のVP4分子から誘導した蛋白質及びペプチドについて研究した。ロタウイルスは、多種多様な脊椎動物、例えばトリ、ウマ、ブタ、サル及びヒトなどに感染し、並びにいくつかのウイルス株が、同じ種の異なる個体から単離されている。しかし、VP4のアミノ酸配列は様々なロタウイルス株のほとんどの中で高度の同一性を維持しているので、それらの起源とは無関係に異なる株は、TJに同様の作用を発揮するであろうと予想される。本発明の結果として、本発明者らは更に、それらの起源を特に強調することなく、VP4及びその誘導したペプチドに言及する。
【0020】
発明の概要
本発明は、タイトジャンクションに媒介された細胞-細胞接着及び透過性バリヤの形成を変調する、蛋白質、ペプチド及び方法を提供する。
本発明のひとつの態様は、タイトジャンクションの開放を誘導するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
別の本発明の態様は、上皮及び内皮の傍細胞透過性を増大するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
【0021】
ひとつの重要な本発明の態様は、傍細胞経路を介した治療的物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
本発明のひとつの追加の態様は、小腸、鼻腔内、眼内、膣内及び直腸内上皮を介した治療的物質の輸送を変調する及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
更なる本発明の目的は、皮膚科用物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
【0022】
本発明の別の態様は、血液-脳関門を超える治療的物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
更なる本発明の態様は、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの、腫瘍を有する哺乳類への薬物と併用し投与することを含む、哺乳類の腫瘍への薬物の配送を増強することである。
本発明は更に、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドを、医薬として許容できる担体と組合せて含有する医薬組成物を提供する。このような組織は、更に薬剤を含有してもよい。加えて、あるいは、このような組成物は、a)タイトジャンクション及び/もしくはアドヘレンスジャンクションを変調するペプチド;並びに/又は、b)TJ蛋白質に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片を1種又は複数種含んでもよい。
更なる態様において、本発明は、上皮細胞の悪性転換がタイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連しているような、哺乳類における癌の治療のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれから誘導したペプチドの使用を提唱している。
【0023】
本発明の関連した態様は、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれから誘導したペプチドは、腫瘍成長及び転移の発生の前提条件を構成する新規毛細血管の成長を破壊することにより、癌を治療及び/又は転移を阻害するために、使用することができることである。
本発明の他の関連のある態様において、蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドは、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は細胞の生存能もしくは機能を脅かすその他の状態の結果として、腫瘍細胞間、腫瘍細胞と正常細胞間、又は正常細胞間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下するために使用することができる。
【0024】
本発明のひとつの好ましい形は、配列番号:1を持つ蛋白質VP4の使用からなる。
別の本発明の好ましい形は、配列番号:2を持つポリペプチドVP8の使用からなる。
更に別の好ましい本発明の形は、配列番号:3を持つVP8の断片141〜182の使用を中心としている:
141IDVVKTTQNGSYSQYGPLQSTPKLYGVMKHNGKIYTYNGETP182 。
更に別の本発明の好ましい形は、下記のVP4から誘導したペプチドの1種又は複数種の使用である:
ペプチド配列番号:4:144VVKT147
ペプチド配列番号:5:151SYSQYGPL158
ペプチド配列番号:6:174IYTY177
ペプチド配列番号:7:183NVTT186 。
このようなペプチドは、環状(それらの各末端にCysを含む)又は直線状のいずれかに制限されない。
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照し、明らかとなるであろう。
【0025】
発明の詳細な説明
前述のように、本発明は、上皮及び内皮を通る医薬品の輸送を促進及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4(配列番号:1)及びその機能変異型、更には誘導した蛋白質VP8(配列番号:2)及びVP8141-182 (配列番号:3)並びにそれらから誘導したペプチド(配列番号:4、5、6及び7)の使用に関する。
VP4は、ロタウイルス蛋白質である。そこからVP4が誘導するロタウイルスの具体的な菌株は、本発明においては重要ではない。
本発明は、タイトジャンクションのシーリングを変調する能力を維持している限りは、天然の又は遺伝子操作の結果としてのいずれかの、その起源とは無関係に、いずれかのVP4株、VP4の機能変異型を考慮する。
【0026】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片は、例えばそれらのcDNAを単独で又はヒスチジン又はグルタチオン-s-トランスフェラーゼのような他の遺伝子と融合して過剰発現している、遺伝子操作された大腸菌株から入手し及び精製することができる。
蛋白質VP4、VP8、及びVP8141-182は、当該技術分野において周知の方法(Abrams ら、1986)を用い、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドとしてタイトジャンクションに対し同じ作用を生じるために使用することができる、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体を作成するために使用することができる。
あるいは、蛋白質VP4及びVP8は、融合蛋白質として又は誘導した合成機能ペプチドとして、それらの完全長、短縮型のいずれかを使用することができる。
【0027】
更に別の本発明の態様において、TJの開放を促進又は増強する蛋白質VP4の領域を決定する方法が提唱される。このような方法は、下記の手法を使用する:
A)上皮又は内皮の抽出及び/又は培養、
B)そのような上皮/内皮の経上皮電気抵抗の測定、
C)ロタウイルス蛋白質VP4から誘導したペプチド、断片又は融合蛋白質の、上皮/内皮への添加後に、経上皮電気抵抗が減少するかどうかの決定、
D)任意に、TJが閉鎖された場合に、傍細胞経路を行き来することが不可能である分子又は薬物(例えば、マンニトール、デキストラン)を利用した、傍細胞漏出が、ロタウイルス蛋白質VP4から誘導したペプチド、断片、又は融合蛋白質により誘導されるかどうかの決定。
【0028】
本発明において使用される「経上皮電気抵抗の減少」は、傍細胞経路を通るイオン及び分子の輸送に対するTJによりもたらされる抵抗の減少を意味する。
蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドの生物学的活性を決定するアッセイは、本発明にとっては重要ではない。例えば、このアッセイは、(1)Ussingチャンバーに搭載された回腸の組織抵抗の減少をアッセイすること(Fasanoら、1991);(2)下記実施例1に説明されたような、Ussingチャンバーにおける上皮細胞株の単層の組織抵抗の減少をアッセイすること;又は、(3)米国特許第5,827,534号及び第5,665,389号に開示されたように、小腸又は鼻腔について治療的物質の吸収の増強をアッセイすることに関係している。
本発明の別の態様において、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドは、上皮の悪性転換がタイトジャンクション蛋白質(例えば、クローディン-4)の過剰発現に関連している(Michlら、2001)、膵臓癌のような癌を治療するために利用することができる。
更に、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドは、その形成は腫瘍成長及び転移の発生の前提条件を構成しているような、新規毛細血管のTJを破壊することにより、癌を治療及び/又は転移を阻害するために使用することができる。
【0029】
別の関連する態様において、蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドを使用し、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は細胞の生存もしくは機能を脅かすその他の状態の結果としての、正常細胞間に起こり得る望ましくない細胞接着を減少することができる。
蛋白質VP4及びVP8は、当該技術分野において公知の方法、例えば実施例1に説明された方法により、入手及び精製することができる。
本発明において使用される「機能ペプチド」又は「機能蛋白質」は、経上皮電気抵抗を減少することが可能であり、並びに/又はTJの構造及び/もしくはその分子構成成分の出現を変調することができる、VP4から誘導したポリペプチドを意味する。
【0030】
別の本発明の態様において、医薬組成物は、治療的化合物の配送に関して説明されており、このような組成物は:
A)治療的物質、及び
B)蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、増強するのに有効な量含む。
医薬組成物は、好ましくは、腸内配送のための経口用量組成物、鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物、又は治療的物質の血液-脳関門を通る配送のための静脈内用量組成物である。
【0031】
腸内配送のための経口用量組成物は:
C)治療的物質、及び
D)蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、治療的物質が小腸上皮を通り吸収されることを増強するのに有効な量含む。
回腸配送のための経口用量組成物も当該技術分野において周知である。このような経口用量組成物は、液剤、錠剤又はカプセル剤の形であることができる。
本発明の状況において、経口用量組成物は、水性物質を含有する液体組成物を含む。このような組成物において、本発明の蛋白質及びポリペプチドの安定性による起こり得る問題点を最小化するために、組成物はその投与直前に調製されることが推奨される。
【0032】
治療的物質の鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物は:
A)治療的物質;及び
B)VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、鼻腔内吸収を増強するのに有効な量含有する。
鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物は当該技術分野において周知である。このような鼻腔内用量組成物は一般に、医薬剤形を調製するために広範に使用されている水溶性ポリマーを含有する。具体的な使用される水溶性ポリマーは、本発明にとって重要ではなく、鼻腔内剤形に使用される周知の水溶性ポリマーのいずれかから選択することができる。
治療的物質の血液-脳関門を通る配送のための静脈内用量組成物は:
(A)治療的物質;及び
(B)VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、血液-脳関門の吸収を増強するのに有効な量含有する。
脳への配送のための静脈内用量組成物は、当該技術分野において周知である。このような静脈内用量組成物は一般に、生理的希釈剤、例えば蒸留水、又は0.9%(w/v)NaClを含有する。
【0033】
「鼻腔内」配送組成物は、「小腸内」配送組成物とは異なり、後者は、胃における活性物質(例えば、VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチド並びに治療的物質)の酸による分解を防ぐために、胃抵抗性を有さなければならないのに対し、前者は一般に、粘膜毛様体クリアランスを低下し、及び鼻腔内投与された物質の再現性のあるバイオアベイラビリティを達成するために、水溶性ポリマーを含む。「静脈内」配送組成物は、「鼻腔内」及び「小腸」配送組成物の両方とは異なり、「静脈内」配送組成物は胃抵抗又は水溶性ポリマーの必要がない。
投与様式は、本発明にとって重要ではない。しかし投与様式は、腸内配送組成物については経口;鼻腔内配送組成物については鼻腔内;及び、血液-脳関門を通る配送については、静脈内であることが好ましい。
【0034】
使用される具体的治療的物質は、本発明にとっては重要ではなく、例えば、薬物化合物、生物学的活性ペプチド、ワクチン、又はそうでなければサイズ又は電荷とは無関係に、経細胞経路を通り吸収されないその他の部分であることができる。
本発明において使用される薬物化合物の例は、心血管系に作用する薬物、中枢神経系に作用する薬物、抗腫瘍性薬物及び抗生物質を含む。
本発明において使用することができる心血管系に作用する薬物の例は、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンを含む。
本発明において使用することができる中枢神経系に作用する薬物の例は、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンを含む。
本発明において使用することができる抗腫瘍性薬物の例は、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンを含む。
本発明において使用することができる抗生物質の例は、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セフメタゾール及びアズトレオナムを含む。
【0035】
本発明において使用することができる生物学的活性ペプチドの例は、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンを含む。
本発明において使用することができるホルモンの例は、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、プロゲステロン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンを含む。
本発明において使用することができるリンホカインの例は、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8を含む。
本発明において使用することができるグロブリンの例は、α-グロブリン、β-グロブリン及びγ-グロブリン(免疫グロブリン)を含む。
本発明において使用することができる免疫グロブリンの例は、多価IgG又は特異的IgG、IgA及びIgM、例えば抗-破傷風抗体を含む。
本発明において使用することができるアルブミンの例は、ヒト血清アルブミン及びオボアルブミンを含む。
【0036】
本発明において使用することができるワクチンの例は、ペプチド抗原、弱毒化微生物及びウイルスを含む。
本発明において使用することができるペプチド抗原の例は、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン及びコナダニアレルゲンを含む。
本発明において使用することができる該弱毒化微生物及びウイルスの例は、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、チフス菌(Salmonella typhy)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のものを含む。
【0037】
治療的物質がインスリンである場合、本発明の医薬組成物は、糖尿病の治療に有用である。
使用される治療的物質の量は、本発明にとって重要ではなく、選択された具体的物質、治療される疾患又は状態、更には治療される対象の年齢、体重及び性別によって変動するであろう。
同じく使用されるVP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドの量も、本発明にとって重要ではなく、治療される対象の年齢、体重及び性別により変動するであろう。
使用されるVP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドに対する治療的物質の比は、本発明にとって重要ではなく、選択された期間内に配送されるべき治療的物質の量に応じて変動するであろう。
下記実施例は、例証のために示し、限定するものではない。
【0038】
実施例1
ロタウイルス蛋白質VP8の上皮単層のシーリングの程度に対する作用
本実施例は、ロタウイルス蛋白質の経上皮電気抵抗に対する作用を評価するアッセイを説明している。
A)VP8クローニング
RRV VP8断片(VP4遺伝子ヌクレオチド1-750)を、先に説明されたように(Dowling ら、2000;Isaら、1997)、pGEX-4T-1プラスミド(Pharmacia社)及びpET-6HISプラスミドにおいてクローニングした。
B)VP5クローニング
RRV VP5断片(VP4遺伝子ヌクレオチド749-2347)を、先に説明されたように(Zarateら、2000b)、pGEX-4T-2(Pharmacia社)にクローニングした。
【0039】
C)融合蛋白質の発現、精製、及び投与
融合蛋白質の発現及び精製は、先に説明された標準手法(Frangioniら、1993)に従い行った。これらの実験での使用のために、融合蛋白質VP5及びVP8を、新鮮なダルベッコの最小必須培地(DMEM)に溶解し、0.22μm濾過ユニットを通すことにより滅菌した。
D)細胞培養
MDCK細胞を、先に説明されたように(Gonzalez-Mariscalら、1990)培養し、70-90回継代する間に実験に使用した。
E)経上皮電気抵抗測定
タイトジャンクションのシーリングの程度を、単層を横切る経上皮電気抵抗(TER)を測定することにより評価した。標準手法に従った(Gonzalez-Mariscalら、1990)。簡単に述べると、ミリポアフィルター上で増殖した単層を、露出面積0.23cm2となるよう、2個のLuciteチャンバー間に搭載した。電流を、単層から(form)2.0cmに配置したAg-AgCl電極により流し;誘起された電圧のふれを、膜から1.0mmに配置した第二の電極セットにより測定した。フィルター及び浴液が取り去られた(subtracted)場合の寄与、並びに報告された全ての値は、専ら単層に相当していた。各ディスクは、1回の測定に使用した。
【0040】
図1は、VP5-GSTの4μg/mlではなく、VP8-GST又はVP8-Hisの4μg/mlの添加が、処置の30分後に上皮単層のTERをいかに有意に減少したかを示している。VP8が単層の電気抵抗にいかに作用したかの知見は、時間と共に可逆性であった。この点を更に例証するために、本発明者らは、GST-VP8を培養培地から取り除く別のアッセイを開発した。図2において、これらの単層において、単層のTERがいかに回復したかを示している。
図3は、VP8のTERに対する作用がいかに用量依存性であるかを示している。
【0041】
実施例2
VP8はTJ蛋白質の細胞境界分布を修飾する
本実施例は、TJ蛋白質の分布に対するVP8の作用を評価するための、上皮細胞アッセイを説明している。
A)TJ蛋白質の免疫局在
MDCK細胞を、ガラス製カバーガラス上で培養した。集密培養物を、GST-VP8 4μg/mlに1時間曝露した。その後これらの細胞を、PBS(pH7.4)中2%p-ホルムアルデヒドで30分間固定し、0.2%PBS-TXで3分間透過性を上げた。細胞を、PBSで5回洗浄し、次に1%BSA Ig非含有(Research Organics社1331-a)で30分間ブロックした。単層を、ZO-1(Zymed社61-7300、希釈1:100)、クローディン3(Zymed社34-1700、希釈3μg/ml)又はオクルディン(Zymed社71-1500、希釈1:100、1%Ig-非含有BSA中)に対するウサギポリクローナル抗体と一緒に4℃で一晩インキュベーションした。カバーガラスをPBSで5回洗浄した後、二次抗体(FITC-複合ヤギ抗-ウサギ抗体、カタログ番号65-6111、希釈1:100、Zymed)と共に、室温で1時間インキュベーションした。単層を、PBSで5回洗浄し、その後褪色防止剤Vectashield (Vector Laboratories社)と共に搭載した。単層の蛍光を、共焦点顕微鏡(MRC-600、Bio-Rad社)をクリプトン-アルゴンレーザーと共に使用し、測定した。
【0042】
図4は、対照単層の隣接細胞間の側方膜上のZO-1、クローディン-3及びオクルディンの明白な鮮明なリング様構造(矢頭)を示している。対照条件において、クローディン-3は、細胞質の拡散性の染色も生じる。GST-VP8処理した単層において、ZO-1は、細胞質において強力な免疫反応性を示している(矢印)。ここでクローディン-3の蜂の巣状の組織は、側方染色をほぼ欠いている大きい領域(矢印)の出現により変更され、及びオクルディン標識された単層は、細胞周辺(矢印)に幅広で拡散性の染色を示した。これらの結果は、VP8は、これらのTJ構成成分の分布を変更することを確認した。
【0043】
実施例3
VP8のTJの凍結-割断外観に対する作用
本実施例は、TJフィラメントのパターンがいかにしてVP8により修飾されるかを説明している。
A)TJの凍結-割断分析
MDCK細胞の集密単層を、DMEM中に溶解したGST-VP8 4μg/mlと共に1時間インキュベーションする一方で、対照単層はDMEM中に維持した。単層から得た凍結-割断レプリカを、2.5%グルタルアルデヒドで30分間固定し、グリセロールを濃度20%まで次第に浸透させ、そこで1時間放置した。その後単層を、基板から剥離し、液体窒素中で凍結した。凍結-割断は、-120℃及び2x10-6mmHgで、Balzers装置(BAF400T)を用い行った。白金及び炭素の蒸着後、有機物質を、クロム混合液中で1時間消化した。レプリカを蒸留水で十分に洗浄し、Formvarで被覆したグリッドに搭載した。観察は、電子顕微鏡JEOL 200EXで行った。
【0044】
TJ鎖のパターンの修飾を評価するために、本発明者らは、48nm毎に、ジャンクションの主軸に対し垂直に描かれた鎖を遮っている線の数、更には最上鎖と最下鎖の間の距離を計測した。TJネットワーク59及び54μmを、各々、対照単層及びVP8処理した単層について分析した。
【0045】
先に報告されたように(Gonzalez-Mariscalら、1985)、ジャンクションの量は、下記関数により定義される:
x
TJ量=Σni%i
n=1
ここで、niは、TJセグメント中の鎖の数であり、及び%は、その鎖の数が試料中に存在する割合である。
総ジャンクション幅は下記のように定義される:
x
総ジャンクション幅=Σni%i
n=1
ここでniは、TJセグメント中の最上と最下のフィラメント間の距離であり、及び%iは、その幅が試料中に存在する割合である。
【0046】
図5Aは、MDCK細胞の典型的TJ凍結-割断パターンを示している。TJは、E面の溝に相補的である細胞膜のP面において相互連結しているフィブリルのネットワークとして識別される。VP8による処置は、TJフィブリルのネットワークに垂直な方向を向いたループ末端の出現を誘導している。フィラメントはそれらの相互連結された外観を失っているので、TJ主軸の配置もより単純である。図5Bの画像は、VP8処理した単層において観察されたTJパターンを図示している。
【0047】
図5の下側パネルに存在する形態測定分析は、対照単層とVP8処理した単層の間のジャンクションの総量だけでないTJ鎖の数の分布の変化を示している。しかし、ジャンクション幅の分析において、非常に際だったジャンクション(950〜1800nm)がVP8処理した単層に出現することは明らかである。この変化は、ジャンクションの主軸に対し垂直に走っている緩い末端がVP8処理した単層において頻繁に出現するためである(緩い末端の数/ジャンクションの直線量μm=0.32(VP8処理した単層)、対、=0.17(対照単層))。VP8処理した細胞のTJパターンのこの変化は、これらの単層において観察された減少されたTERを説明することができる。
【0048】
実施例4
VP8のTJアッセンブリに対する作用
本実施例は、TJ形成に対するVP8の作用を評価する上皮アッセイを説明している。
A)TJアッセンブリを評価するカルシウム-スイッチアッセイ
VP8のTJの発達を阻害する能力を、Ca2+スイッチアッセイ(Gonzalez-Mariscalら、1990)を用いて評価した。細胞を、ミリポアフィルター上に集密に播種し、DMEM(正常カルシウム培地、NC;1.8mM Ca2+)中で1時間インキュベーションした。その後、得られる単層を、Ca2+を含まないPBSで3回洗浄し、Ca2+を含まない最小必須培地(低カルシウム培地、LC;1〜5μM Ca2+)に移した。20時間後、実験単層を、LC培地中に溶解したGST-VP8又はGST-VP5を4μg/ml含有するLC培地に移す一方で、対照単層は再度LC培地において培養した。30分後、実験単層を、GST-VP8又はGST-VP5の4μg/mlを含有するNC培地に移した。対照単層は代わりにNC培地を受け取った。単層をNC培地に移した後、異なる時点で、TERを測定した。
図6は、カルシウム-スイッチアッセイにおいて、GST-VP5ではなく、GST-VP8の4μg/mlの添加が、上皮傍細胞バリヤの発達をいかに遅延するかを示している。
【0049】
実施例5
VP8から誘導した蛋白質及びペプチドは組織透過性を変調する
本実施例は、TJの開放を増強又は変調することができるVP8ドメインを選択する方法を説明している。
A)TJ蛋白質オクルディン及びクローディンの細胞外ループに類似したVP8に存在するドメインの同定。本発明者らは、ロタウイルス蛋白質VP8のアミノ酸配列を、オクルディン及びクローディン1〜20の外部ループのそれと比較した。本発明者らは、いくつかのセグメントにおいて≧50%の類似性が存在することを認めた。本発明者らは、この知見を図7Aにおいて影付き配列で図示した。次に本発明者らは、VP8のこれらの配列が、異なる種から誘導したオクルディンの細胞外ループにおいて(図7B)、及び異なるクローディンにおいて(図7C)、いかに保存されているかを示した。
【0050】
B)クローディン及びオクルディンの細胞外ループに類似したいくつかのドメインを含むVP8領域由来のHis融合蛋白質VP8141-182の作成。アミノ酸141-182(配列番号:3)を含むVP8領域は、オクルディン及びクローディンに存在する領域に類似したいくつかのドメインを含むので、これを選択した。ヒスチジン融合蛋白質を、pET-6HISプラスミドを用いて構築し、発現及び精製を標準の手法に従って行った(Dowlingら、2000)。
C)クローディン及びオクルディンの細胞外ループと≧50%の類似性を持つVP8に存在する一部のペプチドの合成。配列番号:4:144VVKTT148、配列番号:5:151SYSQYGPL158、配列番号:6:174IYTY177、並びに配列番号:7:183NVTT186を有するペプチドを、American Peptide Company社が合成し、これらは各ペプチドのアミノ末端及びカルボキシル末端へのシステイン残基の付加によるそれらの環式型で、80%を上回る純度であった。
D)組織透過性に対する融合蛋白質VP8141-182の作用を評価するTERアッセイ。上皮単層を横断するTERの測定は、実施例1に説明したように行った。
【0051】
図8は、VP8141-182(配列番号:3)4μg/mlの添加は、MDCK単層のTERをいかに有意に減少したかを示している。
図9は、VP8141-182(配列番号:3)4μg/mlの添加は、カルシウム-スイッチアッセイにおいて上皮傍細胞バリヤの発達をいかに阻害したかを明らかにしている。
図10は、配列番号:7:183NVTT186のペプチドの添加は、MDCK単層のTERをいかに有意に低下したかを示している。対照的に、配列番号:4:144VVKT147、配列番号:5:151SYSQYGPL158、及び配列番号:6:174IYTY177のペプチドの投与は、単層電気抵抗に作用を示さなかった。
【0052】
実施例6
糖尿病ラットへのインスリン経口投与に対するVP8の作用
本実施例は、VP8の経口投与されたインスリンへの作用を評価するアッセイを説明している。
A)糖尿病ラットの作出
雄のWistarラット(230〜250g)を、PicoLab(商標)Rodent Diet 20で飼育し、放射線照射により不妊化し、動物檻(温度22〜24℃、湿度50〜55%)中で水を自在摂取させた。動物の世話及び取扱いは、国際的に推奨された手法に従い行った。
クエン酸緩衝液0.1M(Sigma社、カタログ番号S4641)(pH4.5)に希釈したストレプトゾシン(75mg/kg体重;Sigma社、カタログ番号S0130)の腹腔内注射により、I型真性糖尿病を誘発した。ストレプトゾシン溶液は、使用直前に調製し、露光から保護した。
【0053】
B)血糖値の決定
ヘパリン処理したキャピラリーチューブ(Chase Scientific Glass社、カタログ番号2501)を用い、ラットの眼窩洞から血液滴を採取した。血糖値を、反応ストリップ(One Touch、LIFESCAN、Johnson & Johnson社)及び市販のグルコメーター(One Touch Basic Plus、LIFESCAN、Johnson & Johnson社)を用い決定した。ブドウ糖濃度は、健常動物において、及び試験前に少なくとも3日間ストレプトゾシン腹腔内注射を受け取った動物において決定した。
図11は、ストレプトゾシン処置が、処置した動物においていかに血糖値を上昇したかを図示している。
【0054】
C)糖尿病ラットへのインスリン投与
インスリン投与により生じた血糖値の変化を試験するために、第一の血液試料を、一晩絶食した糖尿病動物から採取した。動物が餌(Lab Diet 5053)を受け取った直後、及び下記プロトコールに従い処置した30分後に、採取した:1)中間型作用のヒトインスリン(3〜6IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、非経口投与した。2)中間型作用のヒトインスリン(15〜30IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、ラット用食道カニューレ(Fine Science Tools社;カタログ番号18061-75)を用い、400μlのNaHCO3(1.5g/100ml、pH8.3-8.4)溶液中で経口投与し、胃の酸性を中和した。3)ラット用食道カニューレを使用し、100μgのGST-VP8及び中間型作用のヒトインスリン(15〜30IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、400μlのNaHCO3(1.5g/100ml、pH8.3-8.4)溶液中で経口投与した。4)100μgのGST-VP8を、ラット用食道カニューレにより経口投与した。前述の各手技の開始後異なる時点で、血糖値を測定した。
【0055】
図12は、非経口投与されたインスリンとは対照的に、経口投与されたインスリンは、糖尿病ラットの血糖値を低下しないことを図示している。
図13は、インスリンがVP8と共に経口投与された場合に、糖尿病ラットの血糖値が有意に低下したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ウイルス蛋白質VP8は、可逆的方式で、上皮単層(MDCK)のTERを減少する。 TERは、対照MDCK単層(■)及びVP5(□)、GST-VP8(▲)又はHis-VP8(△)の4μg/mlを受け取るものにおいて決定した。この図及び下記図において、実験値は、中央値±標準誤差に対応するように示した。独立した測定値の数を、各実験点に示した。
【図2】VP8を培養培地から取り除いた場合、単層は、それらのTERを回復する。 4μg/ml GST-VP8を受け取る単層は、TERの有意な減少を示している(▲)。しかし、単層が洗浄され、GST-VP8を含まない培地に移される(矢印)場合、これらは、それらのTERを回復する(■=VP8非含有培地で培養した単層)。
【図3】VP8のTERに対する作用は用量依存性である。 GST-VP8の0.4(○)、4(▲)又は10μg/ml(△)と共にインキュベーションしたMDCK単層は、TERの用量依存的減少を示している。
【図4】VP8は、TJ蛋白質ZO-1、オクルディン及びクローディン-3の分布パターンを修飾する。集密MDCK単層を、VP8を4μg/ml含む培地においてインキュベーションした。1時間後、単層を固定し、ZO-1、オクルディン、クローディン-3に対する特異的抗体で免疫蛍光処理した。矢頭は、対照単層の細胞境界におけるZO-1、オクルディン及びクローディン-3の明確な分布を示している。GST-VP8処置した細胞において、ZO-1は、細胞質において強力な免疫反応性(矢印)を示し、クローディン-3細胞境界染色は、単層の広範な領域においてわずかに検出可能であり(矢印)、及びオクルディンの鮮明な染色は、細胞境界で拡散性及び広範な標識と置き換わった(矢印)。 矢頭は、対照単層の細胞境界におけるZO-1、オクルディン及びクローディン-3の明確な分布を示している。矢頭は、VP8処置した単層の細胞境界近傍に出現するZO-1、オクルディン及びクローディン-3の拡散性の染色を示している。
【図5】VP8で処置したMDCK単層中に存在するTJの凍結-割断分析。 VP8 4μg/mlを伴い又は伴わずにインキュベーションした集密MDCK単層を、常法に従い、固定し、凍結-割断処理した。(a)は、対照(A)及びVP8処置した単層(B)の代表的画像を示す。後者において、いくつかの緩い末端(矢頭)が、ネットワークが目立ち及び複雑な領域(アスタリスク)間で認められる。P=原形質面;E=外質面;バー=200nm。(b)は、TJの形態測量分析を示している。1,239及び1,124 TJ部位を、各々、対照(明るいバー)及びVP8処置した単層(暗いバー)について分析した。
【図6】VP8は、上皮単層におけるTERの発達を阻害する。 低カルシウム培地(1-5μM Ca2+)中で培養された集密MDCK単層は、正常カルシウム培地(1.8mM Ca2+)に移した場合に、それらのTERを生じた(■)。単層がVP5 4μg/mlを含有する正常なカルシウム培地に移された場合(□)、抵抗が対照条件のように生じた。代わりに単層を、VP8 4μg/mlを含有する正常なカルシウム培地において培養した場合(▲)、TER発達の明らかな阻害が検出された。
【図7】VP8配列は、それらの外部ループ内に存在するオクルディン及びクローディンセグメントに高度に類似した領域をいくつか含む。 (A)VP8配列の影付きセグメントは、オクルディン又はクローディンの細胞外ループ領域と≧50%同一性を有する。括弧の横に、類似の蛋白質の名称を記している(例えば、cl 2、occlなど)。ペプチドVP8141-182の配列は、枠内に示している。(B)VP8150-159及びVP8174-177の、オクルディン外部ループとの配列比較。(C)多様なVP8セグメントとクローディンの配列比較。影付き文字は、クローディン中に存在するものと同一であるVP8のアミノ酸に対応している。使用した様々なクローディンに関する配列アクセス番号は以下である:クローディン1、ラット、NP113887;クローディン2、イヌ、AAK57433;クローディン3、ラット、NP113888;クローディン4、マウス、NP034033;クローディン5、ラット、AAF73425;クローディン6、マウス、Q9Z262;クローディン7、ラット、CAA09790;クローディン8、マウス、Q9Z260;クローディン9、マウス、NP064689;クローディン10、マウス、Q9Z056;クローディン11、ラット、NP445909;クローディン12、ヒト、XP004591;クローディン13、マウス、Q9Z054;クローディン14、マウス、NP062373;クローディン15、マウス、NP68365;クローディン16、ラット、NP571980;クローディン17、ヒト、P56750;クローディン18、マウス、P56857;クローディン19、マウス、AAF98323;クローディン20、ヒト、P56880。
【図8】図8。ペプチドHis-VP8 141-182の添加は、上皮単層のTER を低下する。 ペプチドHis-VP8 141-182の4μg/mlで処置した集密MDCK単層(▲)は、His溶離緩衝液のみで処置した単層(■)と比べ、TERの有意な低下を示す。
【図9】ペプチドVP8141-182(配列番号:3)の添加は、上皮単層におけるTER発生を阻害する。 低カルシウム培地(1-5μM Ca2+)で培養した集密MDCK単層は、正常カルシウム培地(1.8mM Ca2+)(■)へ移した時点で、それらのTERを発生した。代わりに、単層を4μg/mlのペプチドVP8141-182を含む正常カルシウム培地(▲)に移した場合、TER発生の明確な阻害が検出された。
【図10】ペプチド配列番号:7の添加は、上皮単層のTERを低下する。 集密MDCK単層を、濃度100又は500μg/mlのペプチド配列番号:4、5、6又は7で処理した。ペプチド配列番号:4、5又は6の存在下でインキュベーションした単層は、対照培養(破線)と同様のTERを示したのに対し、ペプチド番号7で処置したものは、有意に低いTERであった(P<0.05、スチューデント-t検定)。
【図11】ストレプトゾトシンはラットの血液中のブドウ糖の濃度を有意に増大する。 血糖値は、雄のWistarラットの眼窩洞から採取した血液試料から決定した。この実験は、ラットがストレプトゾトシン(75mg/kg体重)の腹腔内注射(破線)又は偽注射(実線)を受け取った後、3日間行った。この図及び以下の図において、血液試料は、一晩絶食後(時間=0)、又は動物が食餌を受け取った後の様々な時点で採取した。各線は、1匹の動物から得られた結果に対応している。
【図12】経口投与されたインスリンは、糖尿病ラットの血糖値を低下しない。ストレプトゾトシンで誘導した糖尿病のラットにおいて、非経口投与したインスリン(Humulin、中間型作用、6IU)は、血糖値を低下した(実線)。対して、インスリン(30IU)が経口投与される場合、血糖値は依然高かった(破線)。
【図13】インスリンがVP8と共に経口投与される場合、血糖値は低下する。ストレプトゾトシンで誘導した糖尿病ラットは、VP8(100μg)(破線)又はVP8(100μg)及びインスリン(30IU)(実線)を経口により受け取った。後者の処置のみが、血糖値を低下した。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、タイトジャンクションシーリング(sealing)を調節する方法、より詳細に述べると細胞接着及び組織透過性バリヤの形成を阻害する蛋白質及びペプチドの使用に関する。
【0002】
発明の背景
タイトジャンクション(TJ)
多細胞生物においては、様々な分子組成の液体(尿、乳汁、胃液、血液など)が、上皮(例えば、腎尿細管)及び内皮(血管)により輪郭を描かれたコンパートメントに含まれている。これらの細胞の層(sheet)が、生物の内部環境とコンパートメントの内容物の間に境界を構成している。従って、血液成分が所定の組織へ侵入するためには、これらは最初に血管管腔から出て、その血管の内皮細胞を通り、横断しなければならない。腸管を通って体に侵入する物質の場合、これらは最初に、腔を区切る上皮細胞で形成されたバリヤを通過しなければならず、及び血液が皮膚を介して侵入するためには、上皮及び内皮の両層を横断しなければならない。
【0003】
細胞-細胞接着は、組織の発達及び生物体内の独立したコンパートメントの維持のために重要であるが、細胞接着の制御された調節が望ましいという条件がある。上皮又は内皮により形成されたバリヤが体内の特定の組織及び腫瘍への薬物配送(delivery)にとって困難を生じる場合に、このような状況に遭遇する。
物質の内皮及び上皮を通る輸送(passage)は、経細胞経路及び傍細胞経路の2種の平行経路を通じて進む。前者において、イオン及び分子は、上皮及び内皮の細胞膜内に位置したそれらの一過性のチャネル、担体及びポンプを利用する。体内の特定組織への薬物の輸送を促進する試みは一般に、このような特定のチャネル又はin vivoにおいて分子を輸送する担体に頼っている。しかしこのような方法は、低い内因輸送速度又は適用された薬物とのそれらの機能不良のために、非常に非効率である。
これらの障害を克服するために、傍細胞(paracellular)経路を通る輸送がアッセイされている。この経路は、隣接細胞間に存在する細胞間隙からなり、及びタイトジャンクション(TJ)により調節される。
【0004】
TJは、頂端膜及び側膜の間の境界線で細胞境界を取り囲む構造である。これは、以下の2種の基礎的役割を果たす:1)傍細胞経路を通るイオン、水及び分子の通過を調節するゲートとして;並びに、2)脂質及び蛋白質の膜の平面内の側方拡散をブロックするフェンスとして。このフェンスは、頂端部細胞膜と側底部細胞膜の間の脂質及び蛋白質の極性のある分布を維持するので、これは重要である(Cereijidoら、1998)。
超薄切片電子顕微鏡写真において、TJは、隣接細胞の膜の外側リーフレットの間の連続融合点「キッシング」として見える。これらのキッシング点において、細胞間隙は完全に消し去られる。凍結-割断レプリカ電子顕微鏡写真において、TJは、外質面(exoplasmic face)(E)上に相補的溝を伴い、原形質面(protoplasmic face)(P)上の連続し及び吻合するフィラメントのネットワークとして、細胞膜に出現する(Gonzalez-Mariscalら、2001)。
【0005】
2種のモデルが、TJの化学的性質を説明すると提唱されている。蛋白質モデルにおいて、TJ鎖は、隣接細胞の並んでいる膜のパートナーと会合している内在性蛋白質により形成される。代わりに脂質モデルにおいては、TJフィラメントは、倒置された円筒状ミセルで形成されると思われている(Kacharら、1982)。二層の脂質内容物は、TJの形成にとって重要であるように見えるが、近年のTJ特異的内在性蛋白質の発見は、TJの蛋白質モデルに強力な裏付けをもたらしている。
TJは、表層蛋白質及び内在性蛋白質の複雑な配置により構成される。前者について、これまで16種の異なる分子が同定されている。一部は、TJの内在性蛋白質をアクチン細胞骨格に連結するスカフォールドとして機能するか(ZO-1、ZO-2、ZO-3及びシングリン) (Citiら、1988;Gonzalez-Mariscalら、2000)、又は膜貫通ジャンクション蛋白質のクロスリンカーとして機能する(MUPP1、MUPP2及びMUPP3) (Hamazakiら、2002)。その他は、TJへの小胞輸送に(Rab13、Rab3b) (Zahraouiら、1994)、キナーゼ(Par3及びPar6) (Izumiら、1998)及びRas(例えばAF6) (Yamamotoら、1997)へのそれらの会合を介した細胞シグナル伝達に、並びに転写因子へのそれらの特異的結合による遺伝子発現(ZO-1及びZO-2) (Baldaら、2000)に関連している。TJで認められたいくつかの他の表層蛋白質の役割は、依然不明である[例えば、Jeap (Nishimuraら、2002)、Pilt (Kawabeら、2001)、Barmotin (Zhongら、1993)及びシンプレキシン(Keonら、1996)]。
【0006】
TJにおいて、オクルディン、クローディン及びJAMの3種の内在性蛋白質が発見された。オクルディンは、最初に同定されたものであった(Furuseら、1993)。特異的抗体による免疫レプリカ電子顕微鏡写真は、TJフィラメント内のその標識を明らかにしたので、これはTJ鎖の成分と考えられている(Saitouら、1997)。更に、TJを欠いているL線維芽細胞へ導入される場合は、TJ鎖に類似した構造が形成された。
オクルディンは、4個の膜貫通領域、同様の大きさの2個の細胞外ループ、並びに1個の細胞内の短いターン、小さいアミノ末端ドメイン及び長いカルボキシ末端領域である、3個の細胞質ドメインを含む。
いくつかの一連の証拠が、オクルディンを、TJでの重要な役割に割当てている。従って上皮細胞におけるこの蛋白質の変異型の過剰発現は、TJのバリヤ及びフェンス機能の変化(Baldaら、1996b;McCarthyら、1996) (Bamforthら、1999)、及び好中球の経上皮移動(Huberら、2000) (Lacaz-Vieiraら、1999). (Medinaら、2000) (Vietorら、2001)につながる。加えて、オクルディンの発現と、経上皮電気抵抗(TER)及び細胞外トレーサーに対する透過性で評価された、上皮のシーリングの度合いの間に、いくつかの組織において相関関係が観察されている。この証拠にもかかわらず、オクルディンの生理的機能は、完全には理解されていない。これに関して、胚細胞及びオクルディン遺伝子のヌル突然変異を保持するマウスは、依然良く発達したTJを形成することができる(Saitouら、1998)が、これらの動物は、いくつかの組織において出生後の生育の遅れ及び組織学的異常を示す(Saitouら、2000)ことが注目されている。
【0007】
より最近になって、クローディン1及びクローディン2と称される別の内在性蛋白質が、TJ構成要素として同定された。データベース検索並びにcDNA及びゲノムクローニングにより、クローディンファミリーは、20種のメンバーに拡大されている(Tsukitaら、2001)。全てのクローディンは、20〜27kDa蛋白質をコードし、これは4個の膜貫通ドメイン;第一のものが第二のものよりも著しく長い、2個の細胞外ループ;及び短いカルボキシ細胞内尾部を伴う。
クローディンが線維芽細胞へトランスフェクションされる場合、これらは、細胞-細胞凝集活性をもたらし、細胞接触点を濃縮し、及びTJ鎖のように見えるフィラメントのネットワークを形成した。更に、免疫レプリカ電子顕微鏡において、異なるクローディンに対する抗体は、上皮のTJフィラメントを選択的に標識した。この証拠は全て、クローディンを、TJ鎖の骨格とみなすものである。
【0008】
様々なクローディン種は、異なる凍結-割断パターンを作成することが可能である。従って、クローディン1又は3は、レプリカの原形質面(P面)上の連続した滑なフィブリル(smooth fibril)を伴うTJを形成する(Furuseら、1999)のに対し、クローディン2又は5は、外質面(E面)に会合した粒子の不連続鎖を伴うジャンクションを作成する(Moritaら、1999b)。代わりにクローディン11は、ほとんど分岐しないP面上に平行なTJ鎖を構成する(Moritaら、1999a)。
異種クローディンは、単独のTJ鎖内で相互作用することができ、それらの特定の組合せは、異なる凍結-割断パターンを生じる。従ってクローディン1及び3で形成された鎖は、連続し、P面に会合されるのに対し、クローディン1及び2又は3及び2により形成された鎖は、E面溝中に均等に散乱された粒子を有する。傍細胞間隙において、隣接する細胞に属する様々な種類のクローディンの細胞外ループも、一部の組合せを除き、相互作用することができる(Furuseら、1999)。
【0009】
上皮及び内皮における様々なクローディンの発現は、個別の組織において示された透過性及び傍細胞イオン選択性における十分な多様性を生じるであろう。様々な管状セグメントに沿って広範なTERを示すネフロン(近位部で6Ωcm2、対、集合管内で870〜2000Ωcm2)は、ほぼ全てのクローディンを発現するが、依然各々は、特定のセグメントに制限されている(Enckら、2001;Kiuchi-Saishinら、2002) (Reyesら、2002):内皮でクローディン5及び15、近位セグメントでクローディン2、10及び11、遠位管でクローディン1、3及び8、並びに集合セグメントでクローディン1、3、4及び8。
【0010】
様々なクローディンの発現の開始は、発達において調節されている。従って、クローディン5は、網膜色素上皮細胞の発達時に一過性に発現され(Kojimaら、2002)、クローディン11は、Y遺伝子の性決定領域の発現のピーク直後に、セルトリ細胞において発現され(Hellaniら、2000)、並びにクローディン6は、上皮となる運命にコミットされた胚性幹細胞において認められる(Turksenら、2001)。
クローディン16は、低マグネシウム血高カルシウム尿症候群(HHS)のヒト患者において変異される(Simonら、1999)。これらの患者は、ヘンレ細管の上行する肢(limb)において傍細胞Mg2+及びCa2+再吸収の選択的欠損を顕在化するが、この部位でNaCl再吸収能は損なわれていない(Blanchardら、2001)。従ってクローディン16は、Mg2+及びCa2+に選択的な傍細胞チャンネルとして機能するように見える(Goodenoughら、1999)。他のクローディンも、イオン選択性であることが証明されている。従ってクローディン4が上皮細胞へトランスフェクションされる場合は、傍細胞コンダクタンスは、Cl-透過性への有意な作用を伴わずに、Na+透過性の選択的減少を通じ減少する(Van Itallieら、2001)。
【0011】
20年以上前に、Claudeは、TERはTJ鎖の数により、一連のレジスタの追加から予想されるように直線方式ではなく、指数関数的に増加することを観察した(Gonzalez-Mariscalら、2001)。この関係を説明するために、TJ鎖内にイオンチャンネル又は孔の存在を示すことが提唱されている(Claude, 1978;Gonzalez-Mariscalら、2001)。現在そのクローディンは特徴付けが開始されており、TJでのイオン選択性は、TJ鎖の孔又はチャンネルを構成する特異的クローディンアイソフォームにより決定されているように思われる。クローディンの細胞外ループを分析する際には、分布の膨大な変動性及び多くの帯電した残基が認められる。例えば、第一のループの等電点は、クローディン16の4.17からクローディン14の10.49までの範囲であり、及び第二の細胞外ループは、クローディン2、7、10及び14の4.05からクローディン13の10.5までである。細胞外ループ配列のpKIを基に、クローディン16は、カチオン孔であり、ヒト患者におけるその変異の観察された作用と一致すると提唱されるのに対し、クローディン4、11及び17はアニオン孔である(Miticら、2001)。
【0012】
TJの密着性の変動は、様々なクローディン種の組合せ及び混合比により決定されるように見える。従って、クローディン1及び4を発現しているMDCK細胞がクローディン4結合ペプチド(ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)腸毒素、CPE)とインキュベーションされる場合、クローディン4は、TJから選択的に取り除かれ、TERの有意な減少を作成する(Sonodaら、1999)。更に、クローディン-2が高抵抗のMDCK細胞(MDCK I)に導入される場合、TJは、漏出性となり及び、通常クローディン2を含む低い抵抗の細胞(MDCK II)において認められるものに形態的に類似している(Furuseら、2001)。
発癌におけるクローディンの役割については、議論の余地がある。クローディン4は、膵臓癌及び消化器腫瘍において過剰発現され、TGFβ又はクローディン4を特異的に標的とする腸毒素であるCPEによる治療は、腫瘍成長の有意な低下につながる(Michlら、2001)。対照的に、他のクローディンは、多くの腫瘍及び癌細胞株において低いか又は検出不能であり続ける。例えば、クローディン1の発現は、そのプロモーター配列又はコード配列における変化を示すことなく、ほとんどのヒト乳癌において喪失され(Hoevelら、2002;Kramerら、2000)、及びクローディン7は、頭頚部扁平上皮細胞癌においてダウンレギュレーションされる(Al Moustafaら、2002)。
【0013】
上皮のゲート機能におけるある種のクローディンの重要な役割は、クローディン1欠損マウスにおいて、表皮はそのバリヤ機能を喪失し、動物の脱水症、皺の多い皮膚、及び生後1日以内の死亡につながるという知見により強調される(Furuseら、2002)。これらのマウスにおいて、オクルディンは層をなす上皮の全ての層において依然発現され、及び残存するクローディン4は、顆粒層の第二及び第三の層において濃縮される。従って、表皮において、クローディン-1は、TJのバリヤ機能の欠くことのできない要素を構成する。
TJの最後の内在性蛋白質はJAM及び3種のJAM様蛋白質である(Palmeriら、2000)。これらは免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、単独の膜貫通セグメントを有し、それらの細胞外部分は、2個のフォールドされた免疫グロブリン様ドメインからなる。JAMの線維芽細胞へのトランスフェクションはフィラメントの出現を生じないので、JAMは、TJ鎖の構成要素ではないように見える。JAMは、オクルディン及びクローディンの架橋、更には単球の経上皮及び経内皮移動において役割を果たす(Martin-Paduraら、1998)。
【0014】
タイトジャンクションの生理学的及び病理学的調節
上皮及び内皮は、TJのシーリングの程度の変化を誘起する多様な生理学的及び病理学的状態に遭遇する。TJ透過性におけるこれらの変動は、カルシウム(Gonzalez-Mariscalら、1990;Martinez-Palomoら、1980)、ホルモン、サイトカイン及び増殖因子、G蛋白質及びホスホリパーゼの活性化、cAMP及びジアシルグリセロールの生成(Baldaら、1991)、並びに様々なキナーゼによるTJ蛋白質のリン酸化(Avila-Floresら、2001;Baldaら、1996a;Sakakibaraら、1997)のような因子の広範なスペクトルにより調節される。
【0015】
近年、腸内病原体(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))及び細菌性毒素のTJに対する作用が認められた(Hecht, 2002)。従ってウェルシュ菌腸毒素(CPE)による治療は、クローディン3及び4をこれらの鎖から特異的に取り除くことにより、TJ及びTERを破壊するのに対し(Sonodaら、1999)、他方でコレラ菌(Vibrio cholera)のヘマグルチニン及びZOT毒素は、それらのオクルディン(Wuら、2000)及びPKC(Fasanoら、1995)に対する各作用のために、上皮透過性を増加する。進化の観点からは、TJの内因性モジュレーターを模倣した(mimicked)毒素に意味がある細菌は、上皮バリヤを横断することにより、これらは新たな環境を得るので、利点であった。これは、コレラ菌の場合に、TJを変調する内因性蛋白質がZOT毒素に対して生じた抗体を用い最近同定されたので明らかである(Fasano、1999;Wangら、2000)。
【0016】
ロタウイルス
ロタウイルスは、2歳未満の小児における胃腸炎により引き起こされる罹患及び死亡の主因である。レオウイルス科のこれらのウイルスは、蛋白質の3個の同心層により取り囲まれた、11個のRNA二本鎖セグメントで構成されるゲノムを有する。最も外側層は、平滑であり、VP7と称される37kDa糖蛋白質により構成される。そこから、VP4と称される88kDa蛋白質で形成された約60個のスパイクが、外側に突き出ている(Estes、1996)。
VP4は、受容体結合及び細胞浸透に参画するので、これは初期ウイルス-細胞相互作用に必須である。実際、ロタウイルスの感染力は、VP4のトリプシンによるペプチドVP5及びVP8への特異的切断により左右される(Almeidaら、1978;Espejoら、1981)。
In vivoにおけるロタウイルス感染は、回腸末端(ileum microvellosities)に制限される(Kapikianら、1996)。広範で多様な腎臓及び小腸の上皮細胞株は、ロタウイルス感染し易いので、in vitro感染は、より制限が少ない(Estesら、1989)。
【0017】
一部のロタウイルスは、シアル酸(SA)を含む細胞-表面受容体に結合する一方、他のもの(例えば、ヒトロタウイルス)は、感染にSAを必要としない(Fukudomeら、1989)。従って、SAへの結合は、ロタウイルス感染にとって必須の工程であるようには見えない。更に二次的SA非依存型受容体への会合は、ある種のロタウイルスのSAとの初期の相互作用を克服することができる。SA依存型アカゲザルロタウイルス(RRV)は、最初にVP8を介し細胞へ結合する(Fioreら、1991;Isaら、1997)のに対し、最早SAの存在に依存しないRRV変異体(例えば、nar3)は、VP5を介して細胞と相互作用する(Zarateら、2000b)。RRV、そのSA非依存型変異体nar3、及びヒトロタウイルス株Waを含む、動物及びヒト起源の多くの株の比較による特徴決定は、ロタウイルスは、インテグリンリガンド配列を含むこと(Coulsonら、1997) (Guerreroら、2000)、並びにα2β1インテグリンは、nar3により、初代細胞受容体として、及びRRVにより、SA含有細胞受容体とのその初期接触後の二次的相互作用において使用されること(Zarateら、2000a)を示している。インテグリンαVβ3は、それらの細胞への初期接着後、3種の全てのロタウイルス株により、共-受容体として使用される(Guerreroら、2000)。インテグリンαXβ2及びα4β1が、ロタウイルス細胞侵入に参画することも示されている(Coulsonら、1997;Hewishら、2000)。
【0018】
ウイルスの細胞受容体としてのインテグリンの機能は別にして、インテグリンは、細胞と細胞外マトリックスの間の相互作用を媒介するαβヘテロ二量体ファミリーを構成する。この相互作用は、細胞増殖、移動及び分化の調節において、重要な役割を果たしている。上皮細胞及び内皮細胞において、インテグリンは、極性のある分布を有し、側底膜に局在化する。従って小腸管腔内又は集密な上皮細胞株の頂端面に含まれるロタウイルスは、傍細胞経路をシーリングしているTJが開いた場合に、側底面のそれらのインテグリン受容体にのみアクセスすることができる。
本説明の冒頭に記したように、ジャンクションの密着性を変調し及び透過性バリヤを超えた薬物配送を改善する化合物が当該技術分野において必要であるので、本発明者らは、ロタウイルス蛋白質のTJシーリングを変調する能力の探索を進めた。本発明は、この必要性を満足し、及びその他の関連した利点を提供する。最近、細胞の悪性転換が、ある種のクローディンの過剰発現と関連付けられた(Michl ら、2001)。従ってジャンクション蛋白質を標的とするロタウイルス蛋白質及び誘導したペプチドも、腫瘍細胞成長の縮小に使用される。
【0019】
本発明において、本発明者らは、アカゲザルロタウイルス(RRV)のVP4分子から誘導した蛋白質及びペプチドについて研究した。ロタウイルスは、多種多様な脊椎動物、例えばトリ、ウマ、ブタ、サル及びヒトなどに感染し、並びにいくつかのウイルス株が、同じ種の異なる個体から単離されている。しかし、VP4のアミノ酸配列は様々なロタウイルス株のほとんどの中で高度の同一性を維持しているので、それらの起源とは無関係に異なる株は、TJに同様の作用を発揮するであろうと予想される。本発明の結果として、本発明者らは更に、それらの起源を特に強調することなく、VP4及びその誘導したペプチドに言及する。
【0020】
発明の概要
本発明は、タイトジャンクションに媒介された細胞-細胞接着及び透過性バリヤの形成を変調する、蛋白質、ペプチド及び方法を提供する。
本発明のひとつの態様は、タイトジャンクションの開放を誘導するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
別の本発明の態様は、上皮及び内皮の傍細胞透過性を増大するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
【0021】
ひとつの重要な本発明の態様は、傍細胞経路を介した治療的物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
本発明のひとつの追加の態様は、小腸、鼻腔内、眼内、膣内及び直腸内上皮を介した治療的物質の輸送を変調する及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
更なる本発明の目的は、皮膚科用物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
【0022】
本発明の別の態様は、血液-脳関門を超える治療的物質の輸送を可能にする及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの使用である。
更なる本発明の態様は、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドの、腫瘍を有する哺乳類への薬物と併用し投与することを含む、哺乳類の腫瘍への薬物の配送を増強することである。
本発明は更に、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドを、医薬として許容できる担体と組合せて含有する医薬組成物を提供する。このような組織は、更に薬剤を含有してもよい。加えて、あるいは、このような組成物は、a)タイトジャンクション及び/もしくはアドヘレンスジャンクションを変調するペプチド;並びに/又は、b)TJ蛋白質に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片を1種又は複数種含んでもよい。
更なる態様において、本発明は、上皮細胞の悪性転換がタイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連しているような、哺乳類における癌の治療のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれから誘導したペプチドの使用を提唱している。
【0023】
本発明の関連した態様は、ロタウイルス蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれから誘導したペプチドは、腫瘍成長及び転移の発生の前提条件を構成する新規毛細血管の成長を破壊することにより、癌を治療及び/又は転移を阻害するために、使用することができることである。
本発明の他の関連のある態様において、蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドは、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は細胞の生存能もしくは機能を脅かすその他の状態の結果として、腫瘍細胞間、腫瘍細胞と正常細胞間、又は正常細胞間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下するために使用することができる。
【0024】
本発明のひとつの好ましい形は、配列番号:1を持つ蛋白質VP4の使用からなる。
別の本発明の好ましい形は、配列番号:2を持つポリペプチドVP8の使用からなる。
更に別の好ましい本発明の形は、配列番号:3を持つVP8の断片141〜182の使用を中心としている:
141IDVVKTTQNGSYSQYGPLQSTPKLYGVMKHNGKIYTYNGETP182 。
更に別の本発明の好ましい形は、下記のVP4から誘導したペプチドの1種又は複数種の使用である:
ペプチド配列番号:4:144VVKT147
ペプチド配列番号:5:151SYSQYGPL158
ペプチド配列番号:6:174IYTY177
ペプチド配列番号:7:183NVTT186 。
このようなペプチドは、環状(それらの各末端にCysを含む)又は直線状のいずれかに制限されない。
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照し、明らかとなるであろう。
【0025】
発明の詳細な説明
前述のように、本発明は、上皮及び内皮を通る医薬品の輸送を促進及び/又は増強するための、ロタウイルス蛋白質VP4(配列番号:1)及びその機能変異型、更には誘導した蛋白質VP8(配列番号:2)及びVP8141-182 (配列番号:3)並びにそれらから誘導したペプチド(配列番号:4、5、6及び7)の使用に関する。
VP4は、ロタウイルス蛋白質である。そこからVP4が誘導するロタウイルスの具体的な菌株は、本発明においては重要ではない。
本発明は、タイトジャンクションのシーリングを変調する能力を維持している限りは、天然の又は遺伝子操作の結果としてのいずれかの、その起源とは無関係に、いずれかのVP4株、VP4の機能変異型を考慮する。
【0026】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片は、例えばそれらのcDNAを単独で又はヒスチジン又はグルタチオン-s-トランスフェラーゼのような他の遺伝子と融合して過剰発現している、遺伝子操作された大腸菌株から入手し及び精製することができる。
蛋白質VP4、VP8、及びVP8141-182は、当該技術分野において周知の方法(Abrams ら、1986)を用い、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドとしてタイトジャンクションに対し同じ作用を生じるために使用することができる、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体を作成するために使用することができる。
あるいは、蛋白質VP4及びVP8は、融合蛋白質として又は誘導した合成機能ペプチドとして、それらの完全長、短縮型のいずれかを使用することができる。
【0027】
更に別の本発明の態様において、TJの開放を促進又は増強する蛋白質VP4の領域を決定する方法が提唱される。このような方法は、下記の手法を使用する:
A)上皮又は内皮の抽出及び/又は培養、
B)そのような上皮/内皮の経上皮電気抵抗の測定、
C)ロタウイルス蛋白質VP4から誘導したペプチド、断片又は融合蛋白質の、上皮/内皮への添加後に、経上皮電気抵抗が減少するかどうかの決定、
D)任意に、TJが閉鎖された場合に、傍細胞経路を行き来することが不可能である分子又は薬物(例えば、マンニトール、デキストラン)を利用した、傍細胞漏出が、ロタウイルス蛋白質VP4から誘導したペプチド、断片、又は融合蛋白質により誘導されるかどうかの決定。
【0028】
本発明において使用される「経上皮電気抵抗の減少」は、傍細胞経路を通るイオン及び分子の輸送に対するTJによりもたらされる抵抗の減少を意味する。
蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドの生物学的活性を決定するアッセイは、本発明にとっては重要ではない。例えば、このアッセイは、(1)Ussingチャンバーに搭載された回腸の組織抵抗の減少をアッセイすること(Fasanoら、1991);(2)下記実施例1に説明されたような、Ussingチャンバーにおける上皮細胞株の単層の組織抵抗の減少をアッセイすること;又は、(3)米国特許第5,827,534号及び第5,665,389号に開示されたように、小腸又は鼻腔について治療的物質の吸収の増強をアッセイすることに関係している。
本発明の別の態様において、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドは、上皮の悪性転換がタイトジャンクション蛋白質(例えば、クローディン-4)の過剰発現に関連している(Michlら、2001)、膵臓癌のような癌を治療するために利用することができる。
更に、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドは、その形成は腫瘍成長及び転移の発生の前提条件を構成しているような、新規毛細血管のTJを破壊することにより、癌を治療及び/又は転移を阻害するために使用することができる。
【0029】
別の関連する態様において、蛋白質VP4、その誘導したポリペプチドVP8、又はそれらから誘導したペプチドを使用し、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は細胞の生存もしくは機能を脅かすその他の状態の結果としての、正常細胞間に起こり得る望ましくない細胞接着を減少することができる。
蛋白質VP4及びVP8は、当該技術分野において公知の方法、例えば実施例1に説明された方法により、入手及び精製することができる。
本発明において使用される「機能ペプチド」又は「機能蛋白質」は、経上皮電気抵抗を減少することが可能であり、並びに/又はTJの構造及び/もしくはその分子構成成分の出現を変調することができる、VP4から誘導したポリペプチドを意味する。
【0030】
別の本発明の態様において、医薬組成物は、治療的化合物の配送に関して説明されており、このような組成物は:
A)治療的物質、及び
B)蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、増強するのに有効な量含む。
医薬組成物は、好ましくは、腸内配送のための経口用量組成物、鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物、又は治療的物質の血液-脳関門を通る配送のための静脈内用量組成物である。
【0031】
腸内配送のための経口用量組成物は:
C)治療的物質、及び
D)蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、治療的物質が小腸上皮を通り吸収されることを増強するのに有効な量含む。
回腸配送のための経口用量組成物も当該技術分野において周知である。このような経口用量組成物は、液剤、錠剤又はカプセル剤の形であることができる。
本発明の状況において、経口用量組成物は、水性物質を含有する液体組成物を含む。このような組成物において、本発明の蛋白質及びポリペプチドの安定性による起こり得る問題点を最小化するために、組成物はその投与直前に調製されることが推奨される。
【0032】
治療的物質の鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物は:
A)治療的物質;及び
B)VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、鼻腔内吸収を増強するのに有効な量含有する。
鼻腔内配送のための鼻腔内用量組成物は当該技術分野において周知である。このような鼻腔内用量組成物は一般に、医薬剤形を調製するために広範に使用されている水溶性ポリマーを含有する。具体的な使用される水溶性ポリマーは、本発明にとって重要ではなく、鼻腔内剤形に使用される周知の水溶性ポリマーのいずれかから選択することができる。
治療的物質の血液-脳関門を通る配送のための静脈内用量組成物は:
(A)治療的物質;及び
(B)VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドを、血液-脳関門の吸収を増強するのに有効な量含有する。
脳への配送のための静脈内用量組成物は、当該技術分野において周知である。このような静脈内用量組成物は一般に、生理的希釈剤、例えば蒸留水、又は0.9%(w/v)NaClを含有する。
【0033】
「鼻腔内」配送組成物は、「小腸内」配送組成物とは異なり、後者は、胃における活性物質(例えば、VP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチド並びに治療的物質)の酸による分解を防ぐために、胃抵抗性を有さなければならないのに対し、前者は一般に、粘膜毛様体クリアランスを低下し、及び鼻腔内投与された物質の再現性のあるバイオアベイラビリティを達成するために、水溶性ポリマーを含む。「静脈内」配送組成物は、「鼻腔内」及び「小腸」配送組成物の両方とは異なり、「静脈内」配送組成物は胃抵抗又は水溶性ポリマーの必要がない。
投与様式は、本発明にとって重要ではない。しかし投与様式は、腸内配送組成物については経口;鼻腔内配送組成物については鼻腔内;及び、血液-脳関門を通る配送については、静脈内であることが好ましい。
【0034】
使用される具体的治療的物質は、本発明にとっては重要ではなく、例えば、薬物化合物、生物学的活性ペプチド、ワクチン、又はそうでなければサイズ又は電荷とは無関係に、経細胞経路を通り吸収されないその他の部分であることができる。
本発明において使用される薬物化合物の例は、心血管系に作用する薬物、中枢神経系に作用する薬物、抗腫瘍性薬物及び抗生物質を含む。
本発明において使用することができる心血管系に作用する薬物の例は、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンを含む。
本発明において使用することができる中枢神経系に作用する薬物の例は、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンを含む。
本発明において使用することができる抗腫瘍性薬物の例は、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンを含む。
本発明において使用することができる抗生物質の例は、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セフメタゾール及びアズトレオナムを含む。
【0035】
本発明において使用することができる生物学的活性ペプチドの例は、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンを含む。
本発明において使用することができるホルモンの例は、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、プロゲステロン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンを含む。
本発明において使用することができるリンホカインの例は、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8を含む。
本発明において使用することができるグロブリンの例は、α-グロブリン、β-グロブリン及びγ-グロブリン(免疫グロブリン)を含む。
本発明において使用することができる免疫グロブリンの例は、多価IgG又は特異的IgG、IgA及びIgM、例えば抗-破傷風抗体を含む。
本発明において使用することができるアルブミンの例は、ヒト血清アルブミン及びオボアルブミンを含む。
【0036】
本発明において使用することができるワクチンの例は、ペプチド抗原、弱毒化微生物及びウイルスを含む。
本発明において使用することができるペプチド抗原の例は、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン及びコナダニアレルゲンを含む。
本発明において使用することができる該弱毒化微生物及びウイルスの例は、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、チフス菌(Salmonella typhy)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のものを含む。
【0037】
治療的物質がインスリンである場合、本発明の医薬組成物は、糖尿病の治療に有用である。
使用される治療的物質の量は、本発明にとって重要ではなく、選択された具体的物質、治療される疾患又は状態、更には治療される対象の年齢、体重及び性別によって変動するであろう。
同じく使用されるVP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドの量も、本発明にとって重要ではなく、治療される対象の年齢、体重及び性別により変動するであろう。
使用されるVP4、VP8又はそれらの誘導した断片及びペプチドに対する治療的物質の比は、本発明にとって重要ではなく、選択された期間内に配送されるべき治療的物質の量に応じて変動するであろう。
下記実施例は、例証のために示し、限定するものではない。
【0038】
実施例1
ロタウイルス蛋白質VP8の上皮単層のシーリングの程度に対する作用
本実施例は、ロタウイルス蛋白質の経上皮電気抵抗に対する作用を評価するアッセイを説明している。
A)VP8クローニング
RRV VP8断片(VP4遺伝子ヌクレオチド1-750)を、先に説明されたように(Dowling ら、2000;Isaら、1997)、pGEX-4T-1プラスミド(Pharmacia社)及びpET-6HISプラスミドにおいてクローニングした。
B)VP5クローニング
RRV VP5断片(VP4遺伝子ヌクレオチド749-2347)を、先に説明されたように(Zarateら、2000b)、pGEX-4T-2(Pharmacia社)にクローニングした。
【0039】
C)融合蛋白質の発現、精製、及び投与
融合蛋白質の発現及び精製は、先に説明された標準手法(Frangioniら、1993)に従い行った。これらの実験での使用のために、融合蛋白質VP5及びVP8を、新鮮なダルベッコの最小必須培地(DMEM)に溶解し、0.22μm濾過ユニットを通すことにより滅菌した。
D)細胞培養
MDCK細胞を、先に説明されたように(Gonzalez-Mariscalら、1990)培養し、70-90回継代する間に実験に使用した。
E)経上皮電気抵抗測定
タイトジャンクションのシーリングの程度を、単層を横切る経上皮電気抵抗(TER)を測定することにより評価した。標準手法に従った(Gonzalez-Mariscalら、1990)。簡単に述べると、ミリポアフィルター上で増殖した単層を、露出面積0.23cm2となるよう、2個のLuciteチャンバー間に搭載した。電流を、単層から(form)2.0cmに配置したAg-AgCl電極により流し;誘起された電圧のふれを、膜から1.0mmに配置した第二の電極セットにより測定した。フィルター及び浴液が取り去られた(subtracted)場合の寄与、並びに報告された全ての値は、専ら単層に相当していた。各ディスクは、1回の測定に使用した。
【0040】
図1は、VP5-GSTの4μg/mlではなく、VP8-GST又はVP8-Hisの4μg/mlの添加が、処置の30分後に上皮単層のTERをいかに有意に減少したかを示している。VP8が単層の電気抵抗にいかに作用したかの知見は、時間と共に可逆性であった。この点を更に例証するために、本発明者らは、GST-VP8を培養培地から取り除く別のアッセイを開発した。図2において、これらの単層において、単層のTERがいかに回復したかを示している。
図3は、VP8のTERに対する作用がいかに用量依存性であるかを示している。
【0041】
実施例2
VP8はTJ蛋白質の細胞境界分布を修飾する
本実施例は、TJ蛋白質の分布に対するVP8の作用を評価するための、上皮細胞アッセイを説明している。
A)TJ蛋白質の免疫局在
MDCK細胞を、ガラス製カバーガラス上で培養した。集密培養物を、GST-VP8 4μg/mlに1時間曝露した。その後これらの細胞を、PBS(pH7.4)中2%p-ホルムアルデヒドで30分間固定し、0.2%PBS-TXで3分間透過性を上げた。細胞を、PBSで5回洗浄し、次に1%BSA Ig非含有(Research Organics社1331-a)で30分間ブロックした。単層を、ZO-1(Zymed社61-7300、希釈1:100)、クローディン3(Zymed社34-1700、希釈3μg/ml)又はオクルディン(Zymed社71-1500、希釈1:100、1%Ig-非含有BSA中)に対するウサギポリクローナル抗体と一緒に4℃で一晩インキュベーションした。カバーガラスをPBSで5回洗浄した後、二次抗体(FITC-複合ヤギ抗-ウサギ抗体、カタログ番号65-6111、希釈1:100、Zymed)と共に、室温で1時間インキュベーションした。単層を、PBSで5回洗浄し、その後褪色防止剤Vectashield (Vector Laboratories社)と共に搭載した。単層の蛍光を、共焦点顕微鏡(MRC-600、Bio-Rad社)をクリプトン-アルゴンレーザーと共に使用し、測定した。
【0042】
図4は、対照単層の隣接細胞間の側方膜上のZO-1、クローディン-3及びオクルディンの明白な鮮明なリング様構造(矢頭)を示している。対照条件において、クローディン-3は、細胞質の拡散性の染色も生じる。GST-VP8処理した単層において、ZO-1は、細胞質において強力な免疫反応性を示している(矢印)。ここでクローディン-3の蜂の巣状の組織は、側方染色をほぼ欠いている大きい領域(矢印)の出現により変更され、及びオクルディン標識された単層は、細胞周辺(矢印)に幅広で拡散性の染色を示した。これらの結果は、VP8は、これらのTJ構成成分の分布を変更することを確認した。
【0043】
実施例3
VP8のTJの凍結-割断外観に対する作用
本実施例は、TJフィラメントのパターンがいかにしてVP8により修飾されるかを説明している。
A)TJの凍結-割断分析
MDCK細胞の集密単層を、DMEM中に溶解したGST-VP8 4μg/mlと共に1時間インキュベーションする一方で、対照単層はDMEM中に維持した。単層から得た凍結-割断レプリカを、2.5%グルタルアルデヒドで30分間固定し、グリセロールを濃度20%まで次第に浸透させ、そこで1時間放置した。その後単層を、基板から剥離し、液体窒素中で凍結した。凍結-割断は、-120℃及び2x10-6mmHgで、Balzers装置(BAF400T)を用い行った。白金及び炭素の蒸着後、有機物質を、クロム混合液中で1時間消化した。レプリカを蒸留水で十分に洗浄し、Formvarで被覆したグリッドに搭載した。観察は、電子顕微鏡JEOL 200EXで行った。
【0044】
TJ鎖のパターンの修飾を評価するために、本発明者らは、48nm毎に、ジャンクションの主軸に対し垂直に描かれた鎖を遮っている線の数、更には最上鎖と最下鎖の間の距離を計測した。TJネットワーク59及び54μmを、各々、対照単層及びVP8処理した単層について分析した。
【0045】
先に報告されたように(Gonzalez-Mariscalら、1985)、ジャンクションの量は、下記関数により定義される:
x
TJ量=Σni%i
n=1
ここで、niは、TJセグメント中の鎖の数であり、及び%は、その鎖の数が試料中に存在する割合である。
総ジャンクション幅は下記のように定義される:
x
総ジャンクション幅=Σni%i
n=1
ここでniは、TJセグメント中の最上と最下のフィラメント間の距離であり、及び%iは、その幅が試料中に存在する割合である。
【0046】
図5Aは、MDCK細胞の典型的TJ凍結-割断パターンを示している。TJは、E面の溝に相補的である細胞膜のP面において相互連結しているフィブリルのネットワークとして識別される。VP8による処置は、TJフィブリルのネットワークに垂直な方向を向いたループ末端の出現を誘導している。フィラメントはそれらの相互連結された外観を失っているので、TJ主軸の配置もより単純である。図5Bの画像は、VP8処理した単層において観察されたTJパターンを図示している。
【0047】
図5の下側パネルに存在する形態測定分析は、対照単層とVP8処理した単層の間のジャンクションの総量だけでないTJ鎖の数の分布の変化を示している。しかし、ジャンクション幅の分析において、非常に際だったジャンクション(950〜1800nm)がVP8処理した単層に出現することは明らかである。この変化は、ジャンクションの主軸に対し垂直に走っている緩い末端がVP8処理した単層において頻繁に出現するためである(緩い末端の数/ジャンクションの直線量μm=0.32(VP8処理した単層)、対、=0.17(対照単層))。VP8処理した細胞のTJパターンのこの変化は、これらの単層において観察された減少されたTERを説明することができる。
【0048】
実施例4
VP8のTJアッセンブリに対する作用
本実施例は、TJ形成に対するVP8の作用を評価する上皮アッセイを説明している。
A)TJアッセンブリを評価するカルシウム-スイッチアッセイ
VP8のTJの発達を阻害する能力を、Ca2+スイッチアッセイ(Gonzalez-Mariscalら、1990)を用いて評価した。細胞を、ミリポアフィルター上に集密に播種し、DMEM(正常カルシウム培地、NC;1.8mM Ca2+)中で1時間インキュベーションした。その後、得られる単層を、Ca2+を含まないPBSで3回洗浄し、Ca2+を含まない最小必須培地(低カルシウム培地、LC;1〜5μM Ca2+)に移した。20時間後、実験単層を、LC培地中に溶解したGST-VP8又はGST-VP5を4μg/ml含有するLC培地に移す一方で、対照単層は再度LC培地において培養した。30分後、実験単層を、GST-VP8又はGST-VP5の4μg/mlを含有するNC培地に移した。対照単層は代わりにNC培地を受け取った。単層をNC培地に移した後、異なる時点で、TERを測定した。
図6は、カルシウム-スイッチアッセイにおいて、GST-VP5ではなく、GST-VP8の4μg/mlの添加が、上皮傍細胞バリヤの発達をいかに遅延するかを示している。
【0049】
実施例5
VP8から誘導した蛋白質及びペプチドは組織透過性を変調する
本実施例は、TJの開放を増強又は変調することができるVP8ドメインを選択する方法を説明している。
A)TJ蛋白質オクルディン及びクローディンの細胞外ループに類似したVP8に存在するドメインの同定。本発明者らは、ロタウイルス蛋白質VP8のアミノ酸配列を、オクルディン及びクローディン1〜20の外部ループのそれと比較した。本発明者らは、いくつかのセグメントにおいて≧50%の類似性が存在することを認めた。本発明者らは、この知見を図7Aにおいて影付き配列で図示した。次に本発明者らは、VP8のこれらの配列が、異なる種から誘導したオクルディンの細胞外ループにおいて(図7B)、及び異なるクローディンにおいて(図7C)、いかに保存されているかを示した。
【0050】
B)クローディン及びオクルディンの細胞外ループに類似したいくつかのドメインを含むVP8領域由来のHis融合蛋白質VP8141-182の作成。アミノ酸141-182(配列番号:3)を含むVP8領域は、オクルディン及びクローディンに存在する領域に類似したいくつかのドメインを含むので、これを選択した。ヒスチジン融合蛋白質を、pET-6HISプラスミドを用いて構築し、発現及び精製を標準の手法に従って行った(Dowlingら、2000)。
C)クローディン及びオクルディンの細胞外ループと≧50%の類似性を持つVP8に存在する一部のペプチドの合成。配列番号:4:144VVKTT148、配列番号:5:151SYSQYGPL158、配列番号:6:174IYTY177、並びに配列番号:7:183NVTT186を有するペプチドを、American Peptide Company社が合成し、これらは各ペプチドのアミノ末端及びカルボキシル末端へのシステイン残基の付加によるそれらの環式型で、80%を上回る純度であった。
D)組織透過性に対する融合蛋白質VP8141-182の作用を評価するTERアッセイ。上皮単層を横断するTERの測定は、実施例1に説明したように行った。
【0051】
図8は、VP8141-182(配列番号:3)4μg/mlの添加は、MDCK単層のTERをいかに有意に減少したかを示している。
図9は、VP8141-182(配列番号:3)4μg/mlの添加は、カルシウム-スイッチアッセイにおいて上皮傍細胞バリヤの発達をいかに阻害したかを明らかにしている。
図10は、配列番号:7:183NVTT186のペプチドの添加は、MDCK単層のTERをいかに有意に低下したかを示している。対照的に、配列番号:4:144VVKT147、配列番号:5:151SYSQYGPL158、及び配列番号:6:174IYTY177のペプチドの投与は、単層電気抵抗に作用を示さなかった。
【0052】
実施例6
糖尿病ラットへのインスリン経口投与に対するVP8の作用
本実施例は、VP8の経口投与されたインスリンへの作用を評価するアッセイを説明している。
A)糖尿病ラットの作出
雄のWistarラット(230〜250g)を、PicoLab(商標)Rodent Diet 20で飼育し、放射線照射により不妊化し、動物檻(温度22〜24℃、湿度50〜55%)中で水を自在摂取させた。動物の世話及び取扱いは、国際的に推奨された手法に従い行った。
クエン酸緩衝液0.1M(Sigma社、カタログ番号S4641)(pH4.5)に希釈したストレプトゾシン(75mg/kg体重;Sigma社、カタログ番号S0130)の腹腔内注射により、I型真性糖尿病を誘発した。ストレプトゾシン溶液は、使用直前に調製し、露光から保護した。
【0053】
B)血糖値の決定
ヘパリン処理したキャピラリーチューブ(Chase Scientific Glass社、カタログ番号2501)を用い、ラットの眼窩洞から血液滴を採取した。血糖値を、反応ストリップ(One Touch、LIFESCAN、Johnson & Johnson社)及び市販のグルコメーター(One Touch Basic Plus、LIFESCAN、Johnson & Johnson社)を用い決定した。ブドウ糖濃度は、健常動物において、及び試験前に少なくとも3日間ストレプトゾシン腹腔内注射を受け取った動物において決定した。
図11は、ストレプトゾシン処置が、処置した動物においていかに血糖値を上昇したかを図示している。
【0054】
C)糖尿病ラットへのインスリン投与
インスリン投与により生じた血糖値の変化を試験するために、第一の血液試料を、一晩絶食した糖尿病動物から採取した。動物が餌(Lab Diet 5053)を受け取った直後、及び下記プロトコールに従い処置した30分後に、採取した:1)中間型作用のヒトインスリン(3〜6IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、非経口投与した。2)中間型作用のヒトインスリン(15〜30IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、ラット用食道カニューレ(Fine Science Tools社;カタログ番号18061-75)を用い、400μlのNaHCO3(1.5g/100ml、pH8.3-8.4)溶液中で経口投与し、胃の酸性を中和した。3)ラット用食道カニューレを使用し、100μgのGST-VP8及び中間型作用のヒトインスリン(15〜30IU/ラット;Humulin(商標)N, HI-310, Lilly社)を、400μlのNaHCO3(1.5g/100ml、pH8.3-8.4)溶液中で経口投与した。4)100μgのGST-VP8を、ラット用食道カニューレにより経口投与した。前述の各手技の開始後異なる時点で、血糖値を測定した。
【0055】
図12は、非経口投与されたインスリンとは対照的に、経口投与されたインスリンは、糖尿病ラットの血糖値を低下しないことを図示している。
図13は、インスリンがVP8と共に経口投与された場合に、糖尿病ラットの血糖値が有意に低下したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ウイルス蛋白質VP8は、可逆的方式で、上皮単層(MDCK)のTERを減少する。 TERは、対照MDCK単層(■)及びVP5(□)、GST-VP8(▲)又はHis-VP8(△)の4μg/mlを受け取るものにおいて決定した。この図及び下記図において、実験値は、中央値±標準誤差に対応するように示した。独立した測定値の数を、各実験点に示した。
【図2】VP8を培養培地から取り除いた場合、単層は、それらのTERを回復する。 4μg/ml GST-VP8を受け取る単層は、TERの有意な減少を示している(▲)。しかし、単層が洗浄され、GST-VP8を含まない培地に移される(矢印)場合、これらは、それらのTERを回復する(■=VP8非含有培地で培養した単層)。
【図3】VP8のTERに対する作用は用量依存性である。 GST-VP8の0.4(○)、4(▲)又は10μg/ml(△)と共にインキュベーションしたMDCK単層は、TERの用量依存的減少を示している。
【図4】VP8は、TJ蛋白質ZO-1、オクルディン及びクローディン-3の分布パターンを修飾する。集密MDCK単層を、VP8を4μg/ml含む培地においてインキュベーションした。1時間後、単層を固定し、ZO-1、オクルディン、クローディン-3に対する特異的抗体で免疫蛍光処理した。矢頭は、対照単層の細胞境界におけるZO-1、オクルディン及びクローディン-3の明確な分布を示している。GST-VP8処置した細胞において、ZO-1は、細胞質において強力な免疫反応性(矢印)を示し、クローディン-3細胞境界染色は、単層の広範な領域においてわずかに検出可能であり(矢印)、及びオクルディンの鮮明な染色は、細胞境界で拡散性及び広範な標識と置き換わった(矢印)。 矢頭は、対照単層の細胞境界におけるZO-1、オクルディン及びクローディン-3の明確な分布を示している。矢頭は、VP8処置した単層の細胞境界近傍に出現するZO-1、オクルディン及びクローディン-3の拡散性の染色を示している。
【図5】VP8で処置したMDCK単層中に存在するTJの凍結-割断分析。 VP8 4μg/mlを伴い又は伴わずにインキュベーションした集密MDCK単層を、常法に従い、固定し、凍結-割断処理した。(a)は、対照(A)及びVP8処置した単層(B)の代表的画像を示す。後者において、いくつかの緩い末端(矢頭)が、ネットワークが目立ち及び複雑な領域(アスタリスク)間で認められる。P=原形質面;E=外質面;バー=200nm。(b)は、TJの形態測量分析を示している。1,239及び1,124 TJ部位を、各々、対照(明るいバー)及びVP8処置した単層(暗いバー)について分析した。
【図6】VP8は、上皮単層におけるTERの発達を阻害する。 低カルシウム培地(1-5μM Ca2+)中で培養された集密MDCK単層は、正常カルシウム培地(1.8mM Ca2+)に移した場合に、それらのTERを生じた(■)。単層がVP5 4μg/mlを含有する正常なカルシウム培地に移された場合(□)、抵抗が対照条件のように生じた。代わりに単層を、VP8 4μg/mlを含有する正常なカルシウム培地において培養した場合(▲)、TER発達の明らかな阻害が検出された。
【図7】VP8配列は、それらの外部ループ内に存在するオクルディン及びクローディンセグメントに高度に類似した領域をいくつか含む。 (A)VP8配列の影付きセグメントは、オクルディン又はクローディンの細胞外ループ領域と≧50%同一性を有する。括弧の横に、類似の蛋白質の名称を記している(例えば、cl 2、occlなど)。ペプチドVP8141-182の配列は、枠内に示している。(B)VP8150-159及びVP8174-177の、オクルディン外部ループとの配列比較。(C)多様なVP8セグメントとクローディンの配列比較。影付き文字は、クローディン中に存在するものと同一であるVP8のアミノ酸に対応している。使用した様々なクローディンに関する配列アクセス番号は以下である:クローディン1、ラット、NP113887;クローディン2、イヌ、AAK57433;クローディン3、ラット、NP113888;クローディン4、マウス、NP034033;クローディン5、ラット、AAF73425;クローディン6、マウス、Q9Z262;クローディン7、ラット、CAA09790;クローディン8、マウス、Q9Z260;クローディン9、マウス、NP064689;クローディン10、マウス、Q9Z056;クローディン11、ラット、NP445909;クローディン12、ヒト、XP004591;クローディン13、マウス、Q9Z054;クローディン14、マウス、NP062373;クローディン15、マウス、NP68365;クローディン16、ラット、NP571980;クローディン17、ヒト、P56750;クローディン18、マウス、P56857;クローディン19、マウス、AAF98323;クローディン20、ヒト、P56880。
【図8】図8。ペプチドHis-VP8 141-182の添加は、上皮単層のTER を低下する。 ペプチドHis-VP8 141-182の4μg/mlで処置した集密MDCK単層(▲)は、His溶離緩衝液のみで処置した単層(■)と比べ、TERの有意な低下を示す。
【図9】ペプチドVP8141-182(配列番号:3)の添加は、上皮単層におけるTER発生を阻害する。 低カルシウム培地(1-5μM Ca2+)で培養した集密MDCK単層は、正常カルシウム培地(1.8mM Ca2+)(■)へ移した時点で、それらのTERを発生した。代わりに、単層を4μg/mlのペプチドVP8141-182を含む正常カルシウム培地(▲)に移した場合、TER発生の明確な阻害が検出された。
【図10】ペプチド配列番号:7の添加は、上皮単層のTERを低下する。 集密MDCK単層を、濃度100又は500μg/mlのペプチド配列番号:4、5、6又は7で処理した。ペプチド配列番号:4、5又は6の存在下でインキュベーションした単層は、対照培養(破線)と同様のTERを示したのに対し、ペプチド番号7で処置したものは、有意に低いTERであった(P<0.05、スチューデント-t検定)。
【図11】ストレプトゾトシンはラットの血液中のブドウ糖の濃度を有意に増大する。 血糖値は、雄のWistarラットの眼窩洞から採取した血液試料から決定した。この実験は、ラットがストレプトゾトシン(75mg/kg体重)の腹腔内注射(破線)又は偽注射(実線)を受け取った後、3日間行った。この図及び以下の図において、血液試料は、一晩絶食後(時間=0)、又は動物が食餌を受け取った後の様々な時点で採取した。各線は、1匹の動物から得られた結果に対応している。
【図12】経口投与されたインスリンは、糖尿病ラットの血糖値を低下しない。ストレプトゾトシンで誘導した糖尿病のラットにおいて、非経口投与したインスリン(Humulin、中間型作用、6IU)は、血糖値を低下した(実線)。対して、インスリン(30IU)が経口投与される場合、血糖値は依然高かった(破線)。
【図13】インスリンがVP8と共に経口投与される場合、血糖値は低下する。ストレプトゾトシンで誘導した糖尿病ラットは、VP8(100μg)(破線)又はVP8(100μg)及びインスリン(30IU)(実線)を経口により受け取った。後者の処置のみが、血糖値を低下した。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傍細胞経路を通る医薬品の輸送、又は配送の増強をもたらす医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物の使用。
【請求項2】
蛋白質VP4は配列番号:1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
誘導した機能ペプチドはVP8(配列番号:2)である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
VP8の誘導した機能ペプチドは配列番号:3である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
VP8の誘導した機能ペプチドは、VVKT(配列番号:4)、SYSQYGPL(配列番号:5)、IYTY(配列番号:6)及びNVTT(配列番号:7)からなる群より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
必要とする対象へ治療的物質を配送するための医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物の使用。
【請求項7】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能性誘導体としての傍細胞バリヤに対する作用を発揮することが可能である、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した機能ペプチドに対する、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体の使用。
【請求項8】
下記を含有する治療的物質の配送のための、医薬組成物:
(A)治療的物質;及び
(B)有効量の蛋白質VP4、VP8、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物;
(C)任意に許容できる医薬用賦形剤。
【請求項9】
前記組成物が、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物であり、及び投与が経口投与である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、鼻腔内投与による投与のための鼻腔内用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、皮膚による投与のための経皮用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、膣による投与のための経膣用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、直腸による投与のための経直腸用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、呼吸系による投与のためのエアロゾル用量組成物の形である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、該治療的物質を血液-脳関門を通り配送するための静脈内用量組成物であり、該投与が静脈内投与による、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項16】
そのサイズ又は電荷を考慮しないと、経細胞経路により適切に吸収されない薬物、生物学的活性を有するペプチド、ワクチン、又は組成物のいずれかである、請求項8記載の利用される治療的物質。
【請求項17】
心血管系、中枢神経系に作用するもの、抗腫瘍性薬物又は抗生物質である、請求項16記載の利用される薬物。
【請求項18】
前記心血管系に作用する薬物が、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記中枢神経系に作用する薬物が、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗腫瘍性薬物が、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗生物質が、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セルメタゾール及びアズトレオナムからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記生物学的活性ペプチドが、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ホルモンが、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記リンホカインが、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8からなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記グロブリンが、α-グロブリン、β-グロブリン及び免疫グロブリンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記グロブリンが、多価IgG、及び特異的IgG、IgA又はIgMからなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記アルブミンが、ヒト血清(seric)アルブミン及びオボアルブミンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記ワクチンが、ウイルスペプチド抗原、弱毒化微生物に加え、RNAレプリコンベースのワクチン、低分子干渉RNA(siRNA)、ウイルス様粒子(VLP)、サブユニットウイルスワクチン、DNA及びRNAワクチンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ペプチド抗原が、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン及びコナダニを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記弱毒化微生物が、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌、チフス菌、ヘリコバクター・ピロリ、ロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス及びカリシウイルスのものを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療的物質が、インスリンである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項32】
糖尿病の対象に、(A)インスリンの治療的有効量;及び、(B)腸内吸収を増強するのに有効量のロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチド、更にはそれらの混合物を含有する、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物を経口投与することを含む、糖尿病の治療法。
【請求項33】
癌の対象へ、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチド、更にはそれらの混合物を、許容できる医薬用賦形剤と共に、いずれかの経路により投与することを含む、癌の治療法。
【請求項34】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、上皮の悪性転換が、タイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連している哺乳類の癌の治療法。
【請求項35】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、新たな毛細血管の成長を破壊することにより、癌治療及び/又は転移阻害する方法。
【請求項36】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は他の病態の結果、腫瘍細胞又は正常細胞の間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下する方法。
【請求項37】
傍細胞経路の開放を増強又は変調する、蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能変異型及び融合蛋白質の領域又は誘導したペプチドを決定する方法であり:
A)上皮又は内皮の培養、抽出又は単離;
B)そのような組織の経上皮電気抵抗(TER)の測定;
C)蛋白質VP4及びVP8のペプチド、断片、融合蛋白質又は機能性誘導体の添加;
D)任意に、シールされた傍細胞経路を超えることができない分子又は化合物の添加;
E)組織のTERを消滅することができる、又は傍細胞トレーサー分子の通過を可能にする、蛋白質VP4及びVP8から誘導した蛋白質及びペプチド、又はそれらの混合物の同定を含む、方法。
【請求項38】
配列番号:3の単離されたペプチド。
【請求項39】
配列番号:4の単離されたペプチド。
【請求項40】
配列番号:5の単離されたペプチド。
【請求項41】
配列番号:6の単離されたペプチド。
【請求項42】
配列番号:7のペプチド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傍細胞経路を通る医薬品の輸送、又は配送の増強をもたらす医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物の使用。
【請求項2】
蛋白質VP4は配列番号:1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
誘導した機能ペプチドはVP8(配列番号:2)である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
VP8の誘導した機能ペプチドは配列番号:3である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
VP8の誘導した機能ペプチドは、VVKT(配列番号:4)、SYSQYGPL(配列番号:5)、IYTY(配列番号:6)及びNVTT(配列番号:7)からなる群より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
必要とする対象へ治療的物質を配送するための医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物の使用。
【請求項7】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能性誘導体としての傍細胞バリヤに対する作用を発揮することが可能である、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した機能ペプチドに対する、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体の使用。
【請求項8】
下記を含有する治療的物質の配送のための、医薬組成物:
(A)治療的物質;及び
(B)有効量の蛋白質VP4、VP8、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物;
(C)任意成分である許容できる医薬用賦形剤。
【請求項9】
前記組成物が、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物であり、及び投与が経口投与である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、鼻腔内投与による投与のための鼻腔内用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、皮膚による投与のための経皮用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、膣による投与のための経膣用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、直腸による投与のための経直腸用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、呼吸系による投与のためのエアロゾル用量組成物の形である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、該治療的物質を血液-脳関門を通り配送するための静脈内用量組成物であり、該投与が静脈内投与による、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項16】
そのサイズ又は電荷を考慮しないと、経細胞経路により適切に吸収されない薬物、生物学的活性を有するペプチド、ワクチン、又は組成物のいずれかである、請求項8記載の利用される治療的物質。
【請求項17】
心血管系、中枢神経系に作用するもの、抗腫瘍性薬物又は抗生物質である、請求項16記載の利用される薬物。
【請求項18】
前記心血管系に作用する薬物が、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記中枢神経系に作用する薬物が、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗腫瘍性薬物が、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗生物質が、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セルメタゾール及びアズトレオナムからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記生物学的活性ペプチドが、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ホルモンが、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記リンホカインが、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8からなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記グロブリンが、α-グロブリン、β-グロブリン及び免疫グロブリンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記グロブリンが、多価IgG、及び特異的IgG、IgA又はIgMからなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記アルブミンが、ヒト血清(seric)アルブミン及びオボアルブミンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記ワクチンが、ウイルスペプチド抗原、弱毒化微生物に加え、RNAレプリコンベースのワクチン、低分子干渉RNA(siRNA)、ウイルス様粒子(VLP)、サブユニットウイルスワクチン、DNA及びRNAワクチンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ペプチド抗原が、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン又はコナダニを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記弱毒化微生物が、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌、チフス菌、ヘリコバクター・ピロリ、ロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス又はカリシウイルスのものを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療的物質が、インスリンである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項32】
(A)インスリンの治療的有効量;及び、(B)腸内吸収を増強するのに有効量のロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含有する、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物からなる糖尿病治療用医薬組成物。
【請求項33】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物、及び許容できる医薬用賦形剤を含有する癌の治療用医薬組成物。
【請求項34】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、上皮の悪性転換が、タイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連している哺乳類の癌の治療用医薬組成物。
【請求項35】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、新たな毛細血管の成長を破壊することによる癌治療及び/又は転移阻害用医薬組成物。
【請求項36】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は他の病態の結果、腫瘍細胞又は正常細胞の間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下させるための医薬組成物。
【請求項37】
傍細胞経路の開放を増強又は変調する、蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能変異型及び融合蛋白質の領域又は誘導したペプチドを決定する方法であり:
A)上皮又は内皮の培養、抽出又は単離;
B)そのような組織の経上皮電気抵抗(TER)の測定;
C)蛋白質VP4及びVP8のペプチド、断片、融合蛋白質又は機能性誘導体の添加;
D)任意に、シールされた傍細胞経路を超えることができない分子又は化合物の添加;
E)組織のTERを消滅することができる、又は傍細胞トレーサー分子の通過を可能にする、蛋白質VP4及びVP8から誘導した蛋白質及びペプチド、又はそれらの混合物の同定を含む、方法。
【請求項38】
配列番号:3の単離されたペプチド。
【請求項39】
配列番号:4の単離されたペプチド。
【請求項40】
配列番号:5の単離されたペプチド。
【請求項41】
配列番号:6の単離されたペプチド。
【請求項42】
配列番号:7のペプチド。
【請求項1】
傍細胞経路を通る医薬品の輸送、又は配送の増強をもたらす医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物の使用。
【請求項2】
蛋白質VP4は配列番号:1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
誘導した機能ペプチドはVP8(配列番号:2)である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
VP8の誘導した機能ペプチドは配列番号:3である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
VP8の誘導した機能ペプチドは、VVKT(配列番号:4)、SYSQYGPL(配列番号:5)、IYTY(配列番号:6)及びNVTT(配列番号:7)からなる群より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
必要とする対象へ治療的物質を配送するための医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物の使用。
【請求項7】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能性誘導体としての傍細胞バリヤに対する作用を発揮することが可能である、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した機能ペプチドに対する、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体の使用。
【請求項8】
下記を含有する治療的物質の配送のための、医薬組成物:
(A)治療的物質;及び
(B)有効量の蛋白質VP4、VP8、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物;
(C)任意に許容できる医薬用賦形剤。
【請求項9】
前記組成物が、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物であり、及び投与が経口投与である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、鼻腔内投与による投与のための鼻腔内用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、皮膚による投与のための経皮用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、膣による投与のための経膣用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、直腸による投与のための経直腸用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、呼吸系による投与のためのエアロゾル用量組成物の形である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、該治療的物質を血液-脳関門を通り配送するための静脈内用量組成物であり、該投与が静脈内投与による、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項16】
そのサイズ又は電荷を考慮しないと、経細胞経路により適切に吸収されない薬物、生物学的活性を有するペプチド、ワクチン、又は組成物のいずれかである、請求項8記載の利用される治療的物質。
【請求項17】
心血管系、中枢神経系に作用するもの、抗腫瘍性薬物又は抗生物質である、請求項16記載の利用される薬物。
【請求項18】
前記心血管系に作用する薬物が、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記中枢神経系に作用する薬物が、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗腫瘍性薬物が、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗生物質が、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セルメタゾール及びアズトレオナムからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記生物学的活性ペプチドが、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ホルモンが、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記リンホカインが、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8からなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記グロブリンが、α-グロブリン、β-グロブリン及び免疫グロブリンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記グロブリンが、多価IgG、及び特異的IgG、IgA又はIgMからなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記アルブミンが、ヒト血清(seric)アルブミン及びオボアルブミンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記ワクチンが、ウイルスペプチド抗原、弱毒化微生物に加え、RNAレプリコンベースのワクチン、低分子干渉RNA(siRNA)、ウイルス様粒子(VLP)、サブユニットウイルスワクチン、DNA及びRNAワクチンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ペプチド抗原が、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン及びコナダニを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記弱毒化微生物が、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌、チフス菌、ヘリコバクター・ピロリ、ロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス及びカリシウイルスのものを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療的物質が、インスリンである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項32】
糖尿病の対象に、(A)インスリンの治療的有効量;及び、(B)腸内吸収を増強するのに有効量のロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチド、更にはそれらの混合物を含有する、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物を経口投与することを含む、糖尿病の治療法。
【請求項33】
癌の対象へ、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチド、更にはそれらの混合物を、許容できる医薬用賦形剤と共に、いずれかの経路により投与することを含む、癌の治療法。
【請求項34】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、上皮の悪性転換が、タイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連している哺乳類の癌の治療法。
【請求項35】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、新たな毛細血管の成長を破壊することにより、癌治療及び/又は転移阻害する方法。
【請求項36】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質及びそれらから誘導した機能ペプチドに加え、それらの混合物をいずれかの経路により投与することを含む、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は他の病態の結果、腫瘍細胞又は正常細胞の間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下する方法。
【請求項37】
傍細胞経路の開放を増強又は変調する、蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能変異型及び融合蛋白質の領域又は誘導したペプチドを決定する方法であり:
A)上皮又は内皮の培養、抽出又は単離;
B)そのような組織の経上皮電気抵抗(TER)の測定;
C)蛋白質VP4及びVP8のペプチド、断片、融合蛋白質又は機能性誘導体の添加;
D)任意に、シールされた傍細胞経路を超えることができない分子又は化合物の添加;
E)組織のTERを消滅することができる、又は傍細胞トレーサー分子の通過を可能にする、蛋白質VP4及びVP8から誘導した蛋白質及びペプチド、又はそれらの混合物の同定を含む、方法。
【請求項38】
配列番号:3の単離されたペプチド。
【請求項39】
配列番号:4の単離されたペプチド。
【請求項40】
配列番号:5の単離されたペプチド。
【請求項41】
配列番号:6の単離されたペプチド。
【請求項42】
配列番号:7のペプチド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傍細胞経路を通る医薬品の輸送、又は配送の増強をもたらす医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物の使用。
【請求項2】
蛋白質VP4は配列番号:1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
誘導した機能ペプチドはVP8(配列番号:2)である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
VP8の誘導した機能ペプチドは配列番号:3である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
VP8の誘導した機能ペプチドは、VVKT(配列番号:4)、SYSQYGPL(配列番号:5)、IYTY(配列番号:6)及びNVTT(配列番号:7)からなる群より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項6】
必要とする対象へ治療的物質を配送するための医薬組成物の調製のための、ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物の使用。
【請求項7】
蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能性誘導体としての傍細胞バリヤに対する作用を発揮することが可能である、蛋白質VP4、VP8又はそれらの誘導した機能ペプチドに対する、モノクローナル性又はポリクローナル性のいずれかの抗体の使用。
【請求項8】
下記を含有する治療的物質の配送のための、医薬組成物:
(A)治療的物質;及び
(B)有効量の蛋白質VP4、VP8、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物;
(C)任意成分である許容できる医薬用賦形剤。
【請求項9】
前記組成物が、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物であり、及び投与が経口投与である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、鼻腔内投与による投与のための鼻腔内用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、皮膚による投与のための経皮用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、膣による投与のための経膣用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、直腸による投与のための経直腸用量組成物である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、呼吸系による投与のためのエアロゾル用量組成物の形である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、該治療的物質を血液-脳関門を通り配送するための静脈内用量組成物であり、該投与が静脈内投与による、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項16】
そのサイズ又は電荷を考慮しないと、経細胞経路により適切に吸収されない薬物、生物学的活性を有するペプチド、ワクチン、又は組成物のいずれかである、請求項8記載の利用される治療的物質。
【請求項17】
心血管系、中枢神経系に作用するもの、抗腫瘍性薬物又は抗生物質である、請求項16記載の利用される薬物。
【請求項18】
前記心血管系に作用する薬物が、リドカイン、アデノシン、ドブタミン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びフェントラミンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記中枢神経系に作用する薬物が、ドキサプラム、アルフェンタニル、デゾシン、ナルブフィン、ブプレノルフィン、ナロキソン、ケトロラック、ミダゾラム、プロポフォール、メタクリン(metacurine)、ミバクリウム(mivacurium)及びスクシニルコリンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗腫瘍性薬物が、シタラビン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びビンブラスチンからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗生物質が、メチシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セフォキシチン(cetoxitin)、セフォニシド、セルメタゾール及びアズトレオナムからなる群より選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記生物学的活性ペプチドが、ホルモン、リンホカイン、グロブリン及びアルブミンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ホルモンが、テストステロン、ナンドロロン(nandrolene)、メノトロピン、インスリン及び尿性卵胞性刺激ホルモンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記リンホカインが、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-4及びインターロイキン-8からなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記グロブリンが、α-グロブリン、β-グロブリン及び免疫グロブリンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記グロブリンが、多価IgG、及び特異的IgG、IgA又はIgMからなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記アルブミンが、ヒト血清(seric)アルブミン及びオボアルブミンからなる群より選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記ワクチンが、ウイルスペプチド抗原、弱毒化微生物に加え、RNAレプリコンベースのワクチン、低分子干渉RNA(siRNA)、ウイルス様粒子(VLP)、サブユニットウイルスワクチン、DNA及びRNAワクチンからなる群より選択される、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ペプチド抗原が、腸管毒素原性大腸菌の熱感受性腸毒素のBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、腸内病原体の莢膜抗原、腸管病原体の線毛及びピリ、HIV表面抗原、ダストアレルゲン又はコナダニを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記弱毒化微生物が、腸管毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、コレラ菌、フレクスナー赤痢菌、チフス菌、ヘリコバクター・ピロリ、ロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス又はカリシウイルスのものを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療的物質が、インスリンである、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項32】
(A)インスリンの治療的有効量;及び、(B)腸内吸収を増強するのに有効量のロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含有する、治療的物質の腸内配送のための経口用量組成物からなる糖尿病治療用医薬組成物。
【請求項33】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物、及び許容できる医薬用賦形剤を含有する癌の治療用医薬組成物。
【請求項34】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、上皮の悪性転換が、タイトジャンクション蛋白質の過剰発現に関連している哺乳類の癌の治療用医薬組成物。
【請求項35】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、新たな毛細血管の成長を破壊することによる癌治療及び/又は転移阻害用医薬組成物。
【請求項36】
ロタウイルス蛋白質VP4、その機能変異型、誘導した蛋白質、誘導した融合蛋白質、それらから誘導した機能ペプチド、又はそれらの混合物を含む、手術、損傷、化学療法、疾患、炎症又は他の病態の結果、腫瘍細胞又は正常細胞の間で生じ得る望ましくない細胞接着を低下させるための医薬組成物。
【請求項37】
傍細胞経路の開放を増強又は変調する、蛋白質VP4、VP8又はそれらの機能変異型及び融合蛋白質の領域又は誘導したペプチドを決定する方法であり:
A)上皮又は内皮の培養、抽出又は単離;
B)そのような組織の経上皮電気抵抗(TER)の測定;
C)蛋白質VP4及びVP8のペプチド、断片、融合蛋白質又は機能性誘導体の添加;
D)任意に、シールされた傍細胞経路を超えることができない分子又は化合物の添加;
E)組織のTERを消滅することができる、又は傍細胞トレーサー分子の通過を可能にする、蛋白質VP4及びVP8から誘導した蛋白質及びペプチド、又はそれらの混合物の同定を含む、方法。
【請求項38】
配列番号:3の単離されたペプチド。
【請求項39】
配列番号:4の単離されたペプチド。
【請求項40】
配列番号:5の単離されたペプチド。
【請求項41】
配列番号:6の単離されたペプチド。
【請求項42】
配列番号:7のペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5B】
【図6】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5B】
【図6】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−513133(P2006−513133A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−506531(P2004−506531)
【出願日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際出願番号】PCT/IB2003/000280
【国際公開番号】WO2003/098991
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(505260408)セントロ デ インヴェスティガチオン イ デ エステュディオス アヴァンザドス デル インスティテュート ポリテクニコ ナチオナル (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際出願番号】PCT/IB2003/000280
【国際公開番号】WO2003/098991
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(505260408)セントロ デ インヴェスティガチオン イ デ エステュディオス アヴァンザドス デル インスティテュート ポリテクニコ ナチオナル (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]