説明

組込み型光活性ペプチドおよびその使用

本発明は、既知の構造及び機能の生物活性化合物を元の生物学的活性が保持されるような光活性分子に変換する一般的方法を対象とする。光活性及び生物学的機能の2つの基本的特性の単一分子物質への組込みにより得られる分子を以後、一般的に「組込み型光活性類似体」又は「組込み型光活性類ペプチド若しくは擬似ペプチド」と呼ぶ。組込み型光活性類似体を設計する一般的方法は、主として(a)所望の生物活性ペプチド又は擬似ペプチドを選択する工程、(b)芳香族又は複素芳香族モチーフを含む分子の領域を特定する工程、及び(c)前記モチーフを同様なサイズの光活性官能基で置換する工程又は前記モチーフを修飾してそれを光活性にする工程を含む。他の態様は、光活性類似体化合物並びにその光診断及び光線療法上の使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に光学イメージング、視覚化及び光線療法に関する。特に、本発明は、光活性機能単位の生物活性ターゲティングペプチド又は擬似ペプチドへの構造的組込みに関する。
【背景技術】
【0002】
刊行物は、本明細書を通して括弧内に記載する。各参考文献に対応する完全な引用は、詳細な説明の後に示す。これらの刊行物の開示は、本発明が関係する最新技術を完全かつ明確に記述するためにそれらの全体を参考として本明細書に援用される。
【0003】
可視、近赤外(NIR)又は電磁スペクトルの長波長(UV−A、>300nm)領域の光を吸収、放射又は散乱する分子は、光断層撮影技術、光干渉断層撮影技術、蛍光内視鏡検査法、光音響技術、音波蛍光技術、光散乱技術、レーザー支援ガイド下手術(laser assisted guided surgery)(LAGS)及び光線療法に有用である。蛍光現象に関連する高い感度は、核医学のそれと同様であり、電離放射線の負の影響を伴うことなく臓器及び組織の視覚化を可能にする。フルオロフォア(fluorophore)、光増感剤、放射性核種、常磁性物質などの診断及び治療薬(「ハプテン」、「エフェクター」又は「機能単位」と一般的に呼ばれる)の体内の特定の部位への標的送達は、様々な病変の診断、予後及び治療におけるかなりの需要があり続けている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5)。「生体複合体(bioconjugate)アプローチ」又は「ペンダントデザイン」と呼ばれている従来のターゲティング法は、体内の特定の部位を標的とする生物活性担体へのこれらの薬剤の化学結合を伴う。生体複合体アプローチにおいて、2つの単位が存在し、独立に機能することができ、ターゲティング及びイメージング/療法の機能は独立していてよい。生物活性担体としては、小分子薬物、ホルモン、ペプチド擬似体、酵素阻害薬、受容体バインダー、受容体拮抗薬、受容体作動薬、受容体調節薬、DNAバインダー、転写因子、細胞周期機構の阻害薬、形質導入分子、タンパク質−タンパク質相互作用の阻害薬、タンパク質−生体巨大分子相互作用の阻害薬、高分子タンパク質、多糖、ポリヌクレオチドなどがある。生体複合体アプローチは、過去数十年間にわたって広範に探究され、中型及び大型担体(おおよその分子量>1000ダルトン)を用いる場合に特に腫瘍検出においてそこそこの成功を収めた(非特許文献2及び非特許文献3)。これは、抗体、抗体フラグメント又は大型ペプチドなどの巨大分子担体への色素、薬物、金属錯体又は他のエフェクター分子の結合が生物活性ターゲティング特性をさほど変化させない、すなわち、生体複合体が依然として受容体に効率よく結合できるためである。しかし、このアプローチは、腫瘍細胞への高分子量生体複合体の拡散が、非常に不利であり、充実性腫瘍における正味の陽圧によりさらに複雑になる点でいくつかの重大な制約を有する(Jainら)。さらに、多くの色素は、水性媒体中で蛍光消光につながる凝集体を形成する傾向がある。
【0004】
したがって、生物活性ターゲティング能力も有する小さな光活性分子の必要がある。しかし、小分子生体複合体を設計するに際しての問題は、診断又は治療薬と生物活性ターゲティング担体のサイズが同様である場合に、標的受容体に対する診断又は治療薬の結合が著しく障害を受けることがしばしば認められることである(Hunterら)。したがって、色素又は光増感剤のような大きい機能単位の代わりに小分子薬物、ペプチド、擬似ペプチド(pseudopeptido)又はペプチド模倣物を用いることは、難しい挑戦である。この問題を克服するために、元の薬物と対応する放射性核種模倣物の分子位相幾何学が非常に類似するように放射性核種金属イオンをステロイド又はモルヒネアルカロイド骨格に組み込む方法(「組込みアプローチ」又は「内部2官能性アプローチ(internal bifunctional approach)」と呼ばれる)が実施された(Rajagopalan、特許文献1;Rajagopalan、特許文献2及びHomら)。上述の生体複合体アプローチとは異なり、組込み単位の両機能(例えば、ターゲティング及びイメージング/療法)が非分離的である。組込みアプローチは、抗体、酵素及び受容体が多特異的であり、天然抗原、基質又はリガンドに位相幾何学的に類似しているという原理に基づいている。ステロイド模倣物に関する以前の研究で、金属イオンを天然受容体リガンドに組み込むことは標的組織への診断上及び治療上有用な放射性核種の選択的送達のための実行可能な戦略であることが確認されている(Homら及びSkaddanら)。この組込みデザインは、機能単位の単一原子等配電子置換を分子骨格に組み込む。しかし、色素又は光増感剤のような大きい機能単位の代わりに小分子薬物、ペプチド、擬似ペプチド又はペプチド模倣物を用いることは、難しい挑戦である。ヌクレオシドの蛍光ヌクレオシドへの変換が以前に報告された(Miyataら)が、ピーク電子スペクトル(吸収、励起及び発光)はUV領域に留まっていた。さらに、この変換は、この1つのヌクレオシドの使用に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,330,737号明細書
【特許文献2】米国特許第5,602,236号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hassan,M.;Klaunberg,B.A. Biomedical applications of fluorescence imaging in vivo. Comparative Medicine 2004,54(6),635−644
【非特許文献2】Licha,K.;Olbrich,C. Optical imaging in drug discovery and diagnostic applications. Advances in Drug Delivery Reviews 2005,57(8),1087−1108
【非特許文献3】Shah,K.;Weissleder,R. Molecular optical imaging: applications leading to the development of present day therapeutics. NeuroRx 2005,2(2),215−225
【非特許文献4】Vasquez,M.E.ら、6−N,N−Dimethylamino−2,3−naphthalamide: A new environment−sensitive fluorescent probes in δ− and μ−selective opioid peptides. Journal of Medicinal Chemistry 2006,49,3653−3658
【非特許文献5】Solban N.;Ortel,B.;Pogue,B.;Hasan,T. Targeted optical imaging and photodynamic therapy. Ernst Schering Research Foundation Workshop 2005,49,229−258
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の様々な態様のうちの主なものは、ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体、前述のものを製造する方法、並びにその診断及び治療上の使用の提供である。
【0008】
1つの態様において、本発明は、非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体を生成する方法を対象とする。該方法は、非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの非光活性官能基を光活性官能基で置換する工程を含む。
【0009】
他の態様において、本発明は、患者に対する診断手順を実施する方法を対象とする。該方法は、有効な診断量の非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体を患者に投与する工程を含む。
【0010】
他の態様において、本発明は、患者に対する光線治療手順を実施する方法を対象とする。該方法は、治療上有効な量の非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体を患者に投与する工程、及び分子の光フラグメント化を引き起こす波長の光を患者に照射する工程を含む。
【0011】
他の態様において、本発明は、非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体を対象とする。
【0012】
本発明の他の態様及び特徴は、一部は明らかであり、一部は下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの非光活性官能基が同様なサイズ及び分子位相幾何学の光活性部分で置換されている、非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性ペプチド又は擬似ペプチド類似体(以後「組込み型光活性類似体」又は単に「類似体」と呼ぶ)を製造する方法及びその使用に関する。本発明はまた、既知の非光活性ペプチド又は擬似ペプチド配列内で非光活性官能基を光活性部分で置換することにより組込み型光活性類似体を合成する方法に関する。組込み型光活性類似体は、患者に投与し、生体光学診断造影剤及び/又は光線療法剤として用いることができる。1つの実施形態において、組込み型光活性類似体は、生物活性を示し、患者における特定の組織、細胞、受容体などを標的にする。1つの例において、類似体は、患者における罹患した組織、細胞、受容体などを標的にする。
【0014】
本発明の組込み型光活性類似体は、350nm又はそれ以上の近赤外(NIR)又は可視スペクトルにおける吸収、励起及び発光最大波長を有する。可視及びNIR光は生体光学診断及び治療手順に用いる場合に組織を損傷する可能性はより低いので、これは、患者の診断及び治療手順に有用である。これに対して、350nmより短い波長を有する紫外(UV)光は、組織の損傷をもたらし得る。350nm又はそれ以上のより長い波長の光はまた、組織中により深く浸透することができ、それにより、350nmより短い波長によって到達されない問題の組織における診断又は治療手順を行うことを可能にする。1つの実施形態において、組込み型光活性類似体は、約400nmから約900nmまでの吸収、励起及び発光最大波長を有する。
【0015】
構造及び機能部分を単一分子類似体に組み込む2つの一般的アプローチは、(a)既知の生物活性ペプチド又は擬似ぺプチドを組込み型光活性類似体に変換すること、及び(b)光活性部分を生物活性を示す組込み型光活性類似体に変換することを含む。いずれのアプローチにおいても、結果として生ずる分子は、光活性及び生物学的機能の基本的特性を有する。構造及び機能によって、本発明の組込み型光活性類似体は、「組込み型フルオロフォア」、「組込み型発色団」「組込み型光増感剤」などと記述することができる。組込み型光活性類似体を設計する一般的方法は、主として(a)所望の生物活性ペプチド又は擬似ペプチドを選択する工程、(b)置換可能な部分(例えば、芳香族、複素芳香族又は脂肪族)を含むペプチド又は擬似ペプチドの領域を特定する工程、及び(c)前記部分を同様なサイズの光活性官能基で置換する工程又は前記部分を修飾してそれを光活性にする工程を含む。本発明の結果として生ずる組込み型光活性類似体は、診断及び治療適用の両方に有用である。
【0016】
組込み型光活性類似体の合成及び使用は、様々な方法で行うことができる。1つの実施形態において、既知又は所望の構造及び機能を有するペプチド又は擬似ペプチドを選択する。例えば、選択される光活性ペプチド又は擬似ペプチドは、患者における問題の特定の組織又は細胞を標的にするものであってよい。ペプチド又は擬似ペプチドの分子構造内の非光活性官能基を特定し、光活性官能基で置換して、組込み型光活性類似体を生成する。得られた組込み型光活性類似体を診断上有効な量で患者に投与して、患者における光活性ペプチド又は擬似ペプチドを検出する。類似体がその標的部位に結合するための時間が経過した後に、患者の全身又は標的組織を350〜1200nmの波長を示す光に曝露させる。1つの実施例において、患者の全身又は標的組織を400〜900nmの範囲の波長を示す光に曝露させる。次いで、組込み型光活性類似体の吸収及び励起の結果として患者から放出される光を検出する。患者から放出される光の位置及び強度を評価することにより、組込み型光活性類似体のターゲティング特性の結果としての診断を行うことができる。
【0017】
組込み型光活性類似体はまた、類似体により標的にされる罹患組織又は細胞(例えば、腫瘍、線維症性組織、白血病細胞など)を示す状態に罹患した患者を治療的に処置するのに用いることができる。組込み型光活性類似体を患者に投与した後、類似体は、問題の組織、細胞、受容体又はタンパク質を標的にし、結合する。組込み型光活性類似体を反応性種に光分解/光励起する適切な波長の光を、結合した類似体が位置する患者の部位に投与する。組込み型光活性類似体の光分解/光励起により生成する反応性種は、結合した類似体の近傍に位置する罹患組織又は細胞を損傷又は殺滅し、それにより、患者の状態を有益に治療する。
【0018】
組込み型光活性類似体の開発には、特定の組織、臓器、病変部、細胞などを標的にする適切な生物活性ペプチド又は擬似ペプチドを選択することを必要とする。これらは、組織、又は脳、心臓、肝臓、肺若しくは腎臓などの臓器、癌性腫瘍、白血病細胞、線維症性上皮、嚢胞性線維症組織、子宮内膜症組織などの罹患組織、テネイシンC受容体又はST受容体などの特定の疾患に関連する受容体、並びに感染又は炎症組織を標的にするペプチド又は擬似ペプチドを含むが、これらに限定されない。結腸癌に関連するST受容体を標的にするペプチドの非限定的な例は、その全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第5,518,888号に開示されている。アミノ酸配列ProLeuAlaGluIleAspGlyIleGluLeuThrTyr(配列番号1)などの他のペプチド又は擬似ペプチドは、嚢胞性線維症、癌の転移及び心筋生存性に関連するテネイシンC受容体に結合することが見いだされた(Schneiderら)。癌、アテローム動脈硬化症、再狭窄、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、慢性関節リウマチ、子宮内膜症及び血管新生に関連する他の状態などの病的障害の診断及び治療に用いることができる生物活性ペプチド又は擬似ペプチドは、その全体として本明細書に組み込まれている、米国公開第20040053828号に開示されている。生物活性ペプチド又は擬似ペプチドの例は、AlaAsnIleLysLeuSerValGlnMetLysLeu(配列番号2)、SerValGlnMetLysLeu(配列番号3)、IleLysLeuSerValGlnMetLysLeu(配列番号4)及びAsnIleLysLeuSerValGlnMetLysLeu(配列番号5)を含むが、これらに限定されない。
【0019】
特定の組織、臓器、受容体等を標的にする点においても生物活性を示すペプチド及び擬似ペプチドのフラグメント及び/又は誘導体も本発明の光活性分子に修飾又は合成することができる。慣例表示法に従って、ペプチド及び擬似ペプチドを定義するために本明細書で用いる名称は、所定のアミノ酸配列においてN末端が左に、C末端が右に出現するように書かれている。
【0020】
生物活性ターゲティングペプチド又は擬似ペプチドを選択したならば、ペプチド又は擬似ペプチドにある非光活性部分を特定し、光活性部分で置換する。置換により、得られる光活性ペプチド又は擬似ペプチドの生物学的活性又は生物活性ターゲティング特性の実質的な喪失がもたらされない限り、ペプチド又は擬似ペプチドのあらゆる部分又は一部は、光活性部分で置換することができる。例えば、特定の組織、受容体等を標的にするペプチド又は擬似ペプチドにおける非光活性部分は、得られる光活性ペプチド又は擬似ペプチドも特定の組織、受容体等を選択的に標的にする限り、光活性部分で置換することができる。
【0021】
1つの実施形態において、非光活性部分は、光活性芳香族又は複素芳香族部分で置換されるペプチド又は擬似ペプチド上にある芳香族又は複素芳香族部分である。1つの例において、非光活性芳香族又は複素芳香族官能基は、ヒドロキシルフェニル基、インドリル基又はフェニル基である。他の例において、ペプチド又は擬似ペプチドは、その側鎖に光活性部分で置換されるチロシン(Tyr/Y)、トリプトファン(Trp、W)、フェニルアラニン(Phe/F)又はヒスチジン(His/H)などの非光活性芳香族又は複素芳香族部分を有する1つ又は複数のアミノ酸残基を含む。他の例において、非光活性芳香族又は複素芳香族部分を、環構造に非光活性部分と同じ原子数を有する芳香族又は複素芳香族部分で置換する。さらに他の例において、非芳香族又は複素芳香族部分を、ピラジン、アズレン又はアザアズレン部分で置換する。
【0022】
他の実施形態において、ペプチド又は擬似ペプチド内の非芳香族又は非複素芳香族アミノ酸残基の非光活性側鎖部分を光活性部分で置換する。1つの例において、非芳香族又は非複素芳香族部分をピラジン、アズレン又はアザアズレン部分で置換する。
【0023】
1つの実施形態において、光活性部分は、以下の式
【0024】
【化1】

を有するピラジン部分を含み、
式中、R〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO、−NO、−COR、−CNR1011、−SOR12及び−SO13からなる群から独立に選択され、Wは、N又は−CR16であり、Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択され、R〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択され、nは0から10まで変化する。
【0025】
他の実施形態において、光活性部分は、以下の式
【0026】
【化2】

を有するアズレン部分を含み、
式中、Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択され、R及びR17〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択され、nは0から10まで変化する。
【0027】
他の実施形態において、光活性部分は、以下の式
【0028】
【化3】

を有するアザアズレン部分を含み、
式中、Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択され、R及びR17〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択され、nは0から10まで変化する。
【0029】
他の実施形態において、組込み型光活性類似体は、以下の式(A)
【0030】
【化4】

に対応する化合物であり、
式中、R21は、光活性官能基を含み、R22は、水素、α−アミノ酸残基、及び2つ又はそれ以上のα−アミノ酸残基の配列からなる群から選択され、R23は、−OH、α−アミノ酸残基及び2つ又はそれ以上のα−アミノ酸残基の配列からなる群から選択される。
【0031】
1つの例において、式(A)の化合物は、以下の構造
【0032】
【化5】

を有するチロシン、トリプトファン、フェニルアラニン又はヒスチジン残基の光活性類似体を含み、
構造中、R21は、側鎖光活性官能基を含む。
【0033】
本発明の光活性部分の非限定的な例は、オレフィン、ベンゼン、ナフタレン、ナフトキノン、フルオレン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、キナジン、キノキサリン、キニジン、プテリジン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピラジン、プリン、ベンゾイミダゾール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、フェナントリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、キサンテン、キサントン、フラボン、アンタシリン、アズレン及びアザアズレン、インドシアニン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クマリン並びにシアニンを含むが、これらに限定されない。これらの光活性部分は、得られる光活性類似体に生物活性又は生物学的ターゲティング特性を保有させるアミノ酸又はペプチド官能基を光活性部分上に付加することにより、生物学的に活性な光活性類似体(例えば、受容体結合剤)に化学的に変換することができる。
【0034】
本発明の光活性部分は、光線療法手順に有用な反応性種(又は中間体)をさらに含む。光線療法部分は、フリーラジカル、カルベン、ニトレン、一重項酸素などを含むが、これらに限定されない。光線療法類似体を合成する目的のためにペプチド又は擬似ペプチドに組み込むことができるI型光活性部分の例は、アジド、アゾ化合物、ジアゾ化合物、スルフェナート、チアジアゾール、ペルオキシド、及び照射により生成するフリーラジカル又は反応性中間体を含むが、これらに限定されない。光線療法類似体を合成する目的のためにペプチド又は擬似ペプチドに組み込むことができるII型光活性部分の例は、フタロシアニン、ポルフィリン、伸長ポルフィリン及びベンゾポルフィリンを含むが、これらに限定されない。これは、フタロシアニン、ポルフィリン、伸長ポルフィリン及び/又はベンゾポルフィリン系を生物学的に活性な物質(例えば、受容体結合剤)に化学的に変換することにより達成されよう。これは、得られるペプチド又は擬似ペプチドに生物活性又は生物学的ターゲティング特性を保有させる官能基を部分上に付加することにより行うことができる。
【0035】
1つの実施形態において、本発明の生物活性ペプチド又は擬似ペプチドは、光活性部分と光反応性部分の両方を含む。
【0036】
組込み型光活性類似体を生成させたならば、類似体を患者に投与する。類似体が患者における標的組織又は細胞などに結合するための適切な時間を与える。本発明の化合物及び組成物の投与は、担当医により適切な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されるであろう。任意の特定の患者に対する個別の有効用量レベルは、治療する障害、障害の重症度、用いる特定の化合物の活性、用いる特定の組成物、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性及び食事を含む様々な因子に依存する。組込み型光活性類似体の検出は、内視鏡、カテーテル、耳クリップ、手バンド、頭部バンド、表面コイル、指プローブなどの侵襲性又は非侵襲性プローブを用いて当技術分野で知られている光学的な蛍光、吸光度又は光散乱法により達成される(Mullerら)。画像化は、当技術分野で知られている平面画像化(planar imaging)、光学的断層撮影(optical tomographic)、光干渉断層撮影(optical coherence tomographic)、内視鏡検査(endoscopic)、光音響技術(photoacoustic)、音波蛍光技術(sonofluorescent)、共焦点顕微鏡又は光散乱装置を用いて達成することができる。
【0037】
上述の診断手順と同様に、組込み型光活性類似体は、治療目的のために患者に投与することができる。組込み型光活性類似体を患者に投与した後に、類似体が患者における標的組織又は細胞などに結合するための適切な時間を与える。上述のように患者を場合によって撮像して、類似体が結合している患者の体内の位置を決定する。類似体が標的部位に結合していることが確認されたならば、患者に組込み型光活性類似体の光分解を引き起こすのに十分な波長及び強度の光を照射する。光分解は、一般的に類似体の均一開裂をもたらし、フリーラジカル中間体の発生をもたらす。発生したフリーラジカルは、次に、組込み型光活性類似体が結合していた標的部位の罹患組織又は細胞を損傷し、それにより、患者の状態を治療的に処置する。
【0038】
1つの実施形態において、非光活性ペプチドは、以下の式1により表されるST(熱感受性バクテリオエンテロトキシン)受容体結合配列(Waldman、米国特許第5,518,888号)である。
【0039】
【化6】

式1の非光活性ペプチド配列AsnThrPheTyrCysCysAspLeuCysCysTyrProAlaGluAlaGlyCysAsn(配列番号6)は、その側鎖に非光活性ヒドロキシフェニル部分を含むチロシン残基を含む。チロシン残基のヒドロキシフェニル部分をピラジン(式2)AsnThrPheTyrCysCysAspLeuCysCysXaaProAlaGluAlaGlyCysAsn(配列番号7)、アズレン(式3)AsnThrPheTyrCysCysAspLeuCysCysXaaProAlaGluAlaGlyCysAsn(配列番号8)又はアザアズレン(式4)AsnThrPheTyrCysCysAspLeuCysCysXaaProAlaGluAlaGlyCysAsn(配列番号9)光活性部分のいずれかで置換する。式2〜4の得られる類似体は光活性であり、式中、R〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO10、−NO、−COR11、−CNR1213、−SOR14、−SO15などの独立に電子供与又は電子吸引基である。Wは、−N又は−CR16である。Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択されるスペーサーであり、nは0から10まで変化する。R〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択される。この実施形態の組込み型光活性ペプチドは、大腸直腸癌の診断、予後及び光線療法に有用である。
【0040】
他の実施形態において、非光活性ペプチドは、以下の式5により表されるテネイシンC結合配列(Edelbergら及びSchneiderら)である。
【0041】
【化7】

式5の非光活性ペプチド配列ProLeuAlaGluIleAspGlyIleGluLeuThrTyr(配列番号10)は、その側鎖に非光活性ヒドロキシフェノール部分を含むチロシン残基を含む。非光活性ヒドロキシフェノール部分をピラジン(式6)ProLeuAlaGluIleAspGlyIleGluLeuThrXaa(配列番号11)、アズレン(式7)ProLeuAlaGluIleAspGlyIleGluLeuThrXaa(配列番号12)又はアザアズレン(式8)ProLeuAlaGluIleAspGlyIleGluLeuThrXaa(配列番号13)光活性部分のいずれかで置換する。式6〜8の得られる類似体は光活性であり、式中、R〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO10、−NO、−COR11、−CNR1213、−SOR14、−SO15などの独立に電子供与又は電子吸引基である。Wは、−N又は−CR16である。Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択されるスペーサーであり、nは0から10まで変化する。R〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択される。この実施形態の組込み型光活性ペプチドは、心筋生存性及び嚢胞性線維症の評価に有用である。
【0042】
他の実施形態において、非光活性ペプチドは、子宮内膜症組織を標的にし、以下の式9により表される配列(Nothick及びMayoら)を有する。
【0043】
【化8】

式9の非光活性ペプチド配列AlaAsnIleLysLeuSerValGlnMetLysLeu(配列番号14)は、その側鎖に非光活性脂肪族基を含むグルタミン残基を含む。非光活性脂肪族基をピラジン(式10)AlaAsnIleLysLeuSerValXaaMetLysLeu(配列番号15)、アズレン(式11)AlaAsnIleLysLeuSerValXaaMetLysLeu(配列番号16)又はアザアズレン(式12)AlaAsnIleLysLeuSerValXaaMetLysLeu(配列番号17)光活性部分のいずれかで置換する。式10〜12の得られる類似体は光活性であり、式中、R〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO10、−NO、−COR11、−CNR1213、−SOR14、−SO15などの独立に電子供与又は電子吸引基である。Wは、−N又は−CR16である。Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択されるスペーサーであり、nは0から10まで変化する。R〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択される。この実施形態の組込み型光活性ペプチドは、子宮内膜症の診断、予後及び光線療法に有用である。
【0044】
他の実施形態において、非光活性ペプチドは、白血病細胞を標的にし、以下の式13により表される配列(Jaaloukら)を有する。
【0045】
【化9】

式13の非光活性ペプチド配列SerPhePheTyrLeuArgSer(配列番号18)は、その側鎖に非光活性ヒドロキシフェニル基を含むチロシン残基を含む。非光活性ヒドロキシフェニル基をピラジン(式14)SerPhePheXaaLeuArgSer(配列番号19)、アズレン(式15)SerPhePheXaaLeuArgSer(配列番号20)又はアザアズレン(式16)SerPhePheXaaLeuArgSer(配列番号21)光活性部分のいずれかで置換する。式14〜16の得られる光活性類似体は光活性であり、式中、R〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO10、−NO、−COR11、−CNR1213、−SOR14、−SO15などの独立に電子供与又は電子吸引基である。Wは、−N又は−CR16である。Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−及び−SON(R20)(CH−からなる群から選択されるスペーサーであり、nは0から10まで変化する。R〜R20は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アルコキシアルキルからなる群から独立に選択される。この実施形態の組込み型光活性ペプチドは、白血病の診断、予後及び光線療法に有用である。
【0046】
光活性誘導体の合成
ピラジン、アズレン及びアザアズレン誘導体並びにそれらから得られる組込み型光活性類似体の合成は、一般的にストレッカー(Strecker)法又は当技術分野で知られている他のアミノ酸合成(Wentroupら、Nozoeら及びSchneiderら)により行うことができる。本発明の組込み型光活性類似体の合成は、当技術分野で知られている溶液相又は自動固相ペプチド合成法(Bodanskyら)により遂行することができる。後述の実施例で詳細に述べる固相法は、市販用ペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems Model 432A SYNERGYペプチド合成装置)において一般的にフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護アミノ酸を用いる。各ペプチドカートリッジは、必要な場合、付加的な側鎖保護基を含むFmoc−アミノ酸を結合させたWang樹脂を含む。
【0047】
製剤
本発明の組込み型光活性薬は、経腸(経口又は直腸)、非経口、局所、経皮又は皮下投与用に調合することができる。局所、経皮及び皮膚送達は、エアゾール剤、クリーム剤、ゲル剤、乳剤、液剤又は懸濁剤も含み得る。皮内及び経皮送達は、既知の方法及び経皮浸透促進剤、例えば、「アゾン」、N−アルキル環状アミド、ジメチルスルホキシド、長鎖脂肪酸(C10)などの薬剤により増大させることができる(Gennaro)。
【0048】
薬剤学的に許容できる製剤を調製する方法は、当技術分野で知られている方法により実現することができる(Gennaro)。製剤は、組込み型光活性薬のいずれか並びに薬剤学的に許容できる緩衝剤、界面活性剤、賦形剤、チキソトロピー剤、矯味矯臭剤、安定化剤又は皮膚浸透促進剤を用いて調製する。本発明の化合物が水溶性である場合、生理食塩水溶液を投与することができる。化合物が水溶性でない場合、化合物を生体適合性油(例えば、ダイズ油、魚油、ビタミンE、亜麻仁油、植物油、グリセリドエステル、長鎖脂肪酸等)に溶解し、界面活性化合物(例えば、植物又は動物リン脂質、レシチン、長鎖脂肪酸塩及びアルコール、ポリエチレングリコールエステル及びエーテル等)を含む水で乳化し、局所クリーム剤、懸濁剤、水/油乳剤又は水/油マイクロエマルションとして投与することができる。
【0049】
組込み型光活性薬は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、シェル架橋ナノ粒子、デンドリマー、デンドロン、マイクロカプセル又は他の組織化微粒子中にカプセル封入し、前述の経路のいずれかにより投与することができる。組込み型光活性薬はまた、組込みフォトニック効果及び多価生物学的効果を同時に達成する目的のためにナノ粒子、シェル架橋ナノ粒子、デンドリマー又はデンドロンに化学的に結合させることができる。これらの製剤は、前記薬物の安定性をin vivoで増大させることができる。カプセル封入法としては、界面活性剤透析法、凍結乾燥法、膜形成法又は注入法などがある(Janoffら)。リポソームを調製し、それらの内部に様々な分子をカプセル封入する方法は、当技術分野でよく知られている(Braun−Falcoら及びLasicら)。
【0050】
用量
本発明の組込み型光活性類似体を含む組成物は、有効な診断及び治療目的を達成するために1回又は複数回投与することができる。投与後、組込み型光活性類似体は標的組織に蓄積するので、選択される標的部位を診断及び/又は治療を達成するのに十分な出力及び強度を有する光に曝露する。そのような用量は、用いる個々の組込み型光活性類似体、検査する臓器又は組織、臨床処置に用いられる装置、達成される治療の有効性等に非常に広く依存し得る。化合物の用量は、約0.1mg/kg体重〜約500mg/kg体重、一般的に約0.5〜約2mg/kg体重であってよい。非経口投与については、無菌液剤又は懸濁剤は、約1nM〜約0.5Mの濃度範囲の組込み型光活性薬を含む。他の例において、無菌液剤又は懸濁剤は、約1μM〜約10mMの濃度範囲の組込み型光活性薬を含む。
【0051】
本発明は小分子の形で有利に用いることができるが、該方法は、大きい又は小さい、あらゆる生物活性分子にも適用できる。本発明は、平面撮影、光断層撮影、光干渉断層撮影、内視鏡検査、光音響技術、音波蛍光技術、光散乱技術、レーザー支援ガイド下手術(LAGS)、共焦点顕微鏡検査、動的臓器機能モニタリング及び光線療法を含むが、これらに限定されない様々な医用光学適用分野に有用である。
【0052】
略語及び定義
本発明の理解を促進するために、以下でいくつかの用語を定義する。
【0053】
遺伝的にコードされた20種のα−アミノ酸の本明細書で用いるアミノ酸の表記は、慣例的なものであり、以下のように略記する。
【0054】
アミノ酸 一文字記号 三文字記号
アラニン A Ala
アルギニン R Arg
アスパラギン N Asn
アスパラギン酸 D Asp
システイン C Cys
グルタミン Q Gln
グルタミン酸 E Glu
グリシン G Gly
ヒスチジン H His
イソロイシン I Ile
ロイシン L Leu
リシン K Lys
メチオニン M Met
フェニルアラニン F Phe
プロリン P Pro
セリン S Ser
トレオニン T Thr
トリプトファン W Trp
チロシン Y Tyr
バリン V Val
【0055】
特に示さない限り、ペプチド配列を一連の一文字及び/又は三文字略語として表す場合、一般的慣例により、配列をアミノからカルボキシの方向に表す。
【0056】
「診断上有効な量」は、患者の大多数において、物質を投与した患者に存在する場合に標的組織又は細胞を検出することができるのに十分な量の物質である問題の物質の量を意味する。「有効な量」という用語はまた、物質がそれを投与した患者において軽度の有害影響を引き起こすか、又は全く引き起こさない量で投与されること、或いは物質の投与対象の疾患の重症度を考慮して医学的及び薬剤学的観点から有害な影響に耐えることができることを意味する。
【0057】
「組込み型非光活性官能基」は、350〜1200nmの範囲内でピーク励起及び発光ピークを示さない生物活性分子内の官能基を意味する。
【0058】
「光活性機能単位」又は「光活性部分」は、350〜1200nmの波長範囲内で吸収、励起及び発光極大を示す官能基又は部分を意味する。そのような官能基又は部分は、フルオロフォア、発色団、光増感剤及び光反応性部分を含むが、これらに限定されず、「フルオロフォア」、「発色団」、「光増感剤」及び「光反応性」部分は、当技術分野で一般的に理解されている意味を有する。
【0059】
「光反応性部分」は、350〜1200nmの波長の光で励起したとき、光化学反応を受けて、組織の損傷を引き起こすことができる反応性種を発生する分子の部分を意味する。
【0060】
「擬似ペプチド」は、ペプチド結合又はアミノ酸側鎖が局所的に修飾されている修飾ペプチド配列である。
【0061】
「治療上有効な量」は、代替療法に一般的に関連する有害副作用を避けると同時に、各薬剤単独の処置により病的状態の重症度及び発生の頻度を改善する目標を達成する各薬剤の量を意味する。
【0062】
「処置」は、方法(process)、作用、適用、治療などを意味し、ヒトを含む対象に、対象の状態を直接又は間接的に改善する、或いは対象における病的状態の進行を遅くする目的で医療援助を提供する。
【0063】
本発明又はその実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」及び「the」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図するものである。「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する」という用語は、含むことを意図するものであり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0064】
以下の実施例では、本発明の特定の実施形態を例示する。当業者には明らかなように、様々な変更及び修正が可能であり、記述した発明の範囲内にあると予想される。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
式2〜4の組込み型光活性ST受容体結合ペプチドの調製
ST受容体に結合する組込み型光活性類似体の合成のために、第1のカートリッジは、カルボキシ末端にFmoc−Asnを結合させたWang樹脂を含んでいる。アミノ酸カートリッジ2〜7は、それぞれFmoc−Cys(Acm)、Fmoc−Gly、Fmoc−Ala、Fmoc−Glu(γ−O−t−Bu)、Fmoc−Ala及びFmoc−Proを含み、カートリッジ9〜18は、それぞれFmoc−Cys(Acm)、Fmoc−Cys(Acm)、Fmoc−Leu、Fmoc−Asp(β−O−t−Bu)、Fmoc−Cys(Acm)、Fmoc−Cys(Acm)、Fmoc−Tyr(O−t−Bu)、Fmoc−Phe、Fmoc−Thr(O−t−Bu)及びFmoc−Asnを含んでいる。第8のカートリッジは、光活性Fmoc保護アミノ酸残基を含んでいる。アミノ酸カートリッジをペプチド合成装置上に置き、ペプチドをC末端位置からN末端位置まで合成する。ヘキサフルオロリン酸2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HBTU)/N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下でカップリング反応を行わせる。Fmoc保護基をジメチルホルムアミド中20%ピペリジンを用いて除去し、トリフルオロ酢酸:水:フェノール:チオアニソール(85:5:5:5)を含む開裂混合物を用いて、生成物を固体支持体から分離する。開裂反応は、完結するのに一般的に約6時間を要する。ペプチドをt−ブチルメチルエーテルで沈殿させ、HPLCにより精製し、凍結乾燥する。
【0066】
(実施例2)
式6〜8の組込み型光活性テネイシンC結合ペプチドの調製
光活性テネイシンC結合ペプチドの合成のために、アミノ酸カートリッジ2〜12は、それぞれFmoc−Thr(O−t−Bu)、Fmoc−Leu、Fmoc−Glu(γ−O−t−Bu)、Fmoc−Ile、Fmoc−Gly、Fmoc−Asp(β−O−t−Bu)、Fmoc−Ile、Fmoc−Glu(γ−O−t−Bu)、Fmoc−Ala、Fmoc−Leu、Fmoc−Proを含んでいる。第1のカートリッジは、光活性Fmoc保護アミノ酸残基を結合させたWang樹脂を含んでいる。ペプチドの合成、開裂及び精製を実施例1で述べたのと同じ方法で行う。
【0067】
(実施例3)
式10〜12の組込み型光活性子宮内膜症ペプチドの調製
光活性子宮内膜症ペプチドの合成のために、第1のカートリッジは、カルボキシ末端にFmoc−Leuを結合させたWang樹脂を含んでいる。アミノ酸カートリッジ2及び3は、それぞれFmoc−Lys(ε−t−Boc)及びFmoc−Metを含み、カートリッジ5〜11は、それぞれFmoc−Val、Fmoc−Ser(O−t−Bu)、Fmoc−Leu、Fmoc−Lys(ε−t−Boc)、Fmoc−Ile及びFmoc−Asn及びFmoc−Alaを含んでいる。第4のカートリッジは、光活性Fmoc保護アミノ酸残基を含んでいる。ペプチドの合成、開裂及び精製を実施例1で述べたのと同じ方法で行う。
【0068】
(実施例4)
式14〜16の組込み型光活性白血病細胞結合ペプチドの調製
光活性白血病細胞結合ペプチドの合成のために、第1のカートリッジは、カルボキシ末端のFmoc−Ser(O−t−Bu)を結合させたWang樹脂を含んでいる。アミノ酸カートリッジ2及び3は、それぞれFmoc−Arg(O−t−Bu)及びFmoc−Leuを含み、カートリッジ5〜7は、それぞれFmoc−Phe、Fmoc−Phe及びFmoc−Ser(O−t−Bu)を含んでいる。第4のカートリッジは、光活性Fmoc保護アミノ酸残基を含んでいる。ペプチドの合成、開裂及び精製を実施例1で述べたのと同じ方法で行う。
【0069】
参考文献
【0070】
【化10】

【0071】
【化11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの組込み型光活性類似体を生成する方法であって、該非光活性ペプチド又は擬似ペプチドの非光活性官能基を光活性官能基で置換する工程を含む方法。
【請求項2】
前記光活性官能基が、オレフィン、ベンゼン、ナフタレン、ナフトキノン、フルオレン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、キナジン、キノキサリン、キニジン、プテリジン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピラジン、プリン、ベンゾイミダゾール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、フェナントリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、キサンテン、キサントン、フラボン、アンタシリン、アズレン及びアザアズレン、インドシアニン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、コリン、クマリン並びにシアニンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光活性官能基が、アジド、アゾ、ジアゾ、スルフェナート、チアジアゾール、ペルオキシド、フタロシアニン、ポルフィリン、伸長ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、及びフリーラジカル又はその反応性中間体生成基から選択される光反応性部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非光活性官能基が芳香族又は複素芳香族である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記非光活性官能基が、ヒドロキシフェニル、インドリル又はフェニルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非光活性官能基が、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン又はヒスチジン残基の側鎖部分である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記光活性官能基が以下:
【化12】

の式の部分から選択され、ここで、
〜Rは、水素、アルキル、アリール、−OR、−SR、−NR、−CN、−CO、−NO、−COR、−CNR1011、−SOR12又は−SO13であり、
WはN又は−CR16であり、
Xは、−(CH−、−N(R17)CO(CH−、−CON(R18)(CH−、−N(R19)SO(CH−、−NHCONH(CH−、−O(CH−、−CO(CH−、−S(CH−、−SO(CH−、−SO(CH−又は−SON(R20)(CH−であり、
〜R20は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル又はC1〜C6アルコキシアルキルであり、
nは0から10まで変化する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組込み型光活性類似体が以下:
【化13】

の式を有し、ここで、
21は光活性官能基であり、
22は、水素、α−アミノ酸残基、或いは2つ又はそれ以上のα−アミノ酸残基の配列であり、
23は、−OH、α−アミノ酸残基及び2つ又はそれ以上のα−アミノ酸残基の配列である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
【化14】

が、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン又はヒスチジン残基の光活性類似体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組込み型光活性類似体が、罹患組織、細胞又は受容体を標的にするペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記罹患組織又は細胞が、癌性組織、白血病細胞、線維症性上皮、嚢胞性線維症組織及び子宮内膜症性組織から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基がST受容体ターゲティング基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が、配列番号7、配列番号8及び配列番号9から選択される配列である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基がテネイシンCターゲティング基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が、配列番号11、配列番号12及び配列番号13から選択される配列である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が子宮内膜症ターゲティング基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が、配列番号15、配列番号16及び配列番号17から選択される配列である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が白血病細胞ターゲティング基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチド又は擬似ペプチドターゲティング基が、配列番号19、配列番号20及び配列番号21から選択される配列である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
医療診断手順に使用するための、請求項1から19のいずれか一項に記載の組込み型光活性類似体。
【請求項21】
前記診断手順が約350nmから約1200nmまでの波長を有する光に患者を曝露する工程を含む、請求項20に記載の類似体。
【請求項22】
前記診断手順が約400nmから約900nmまでの波長を有する光に患者を曝露する工程を含む、請求項20に記載の類似体。
【請求項23】
前記診断手順が患者から放射される光を観測する工程を含む、請求項20から22のいずれかに記載の類似体。
【請求項24】
医学的光線療法手順に使用するための、請求項1から23のいずれかに記載の組込み型光活性類似体。
【請求項25】
前記光線療法手順が、癌性組織、白血病細胞、線維症性上皮、嚢胞性線維症組織及び子宮内膜症性組織から選択される罹患組織又は細胞の治療手順である、請求項24に記載の類似体。

【公表番号】特表2010−519338(P2010−519338A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551994(P2009−551994)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/002463
【国際公開番号】WO2008/108941
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(503102685)マリンクロット インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】