説明

組電池およびその充電方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は二次電池からなる素電池を2個以上直列に接続した組電池およびその充電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ビデオカメラなどの電子機器を電池により作動する際、必要な電圧を得るために、二次電池を2個以上直列に接続して組電池にすることが行われている。
【0003】そして、その組電池の充電方法としては、充電電圧がピーク値から一定電圧降下したところで充電を停止する、いわゆる−△V検出制御による充電方法(例えば、特開昭53−43845号公報)や、組電池全体の温度上昇を検出して充電を停止する温度検出制御による充電方法(例えば、特開昭52−91137号公報)などが採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の方法では組電池全体としての情報しか得られないため、充放電を繰り返すことによって劣化が生じ、素電池間に容量のバラツキが生じるようになると、劣化の大きい素電池に対しては過充電することにより、組電池全体としての充放電サイクル特性の低下が早くなってしまうという問題がある。
【0005】本発明は、従来の組電池の充電時に発生する問題点を解決し、充放電の繰り返しによって劣化が生じ、組電池を構成する素電池間に容量のバラツキが生じた場合でも、劣化の大きい素電池の充電末期を正確に検出でき、充放電サイクル特性の低下が少ない組電池およびその充電方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、2個以上の素電池を直列に接続した組電池において、それぞれの素電池に熱を感じて電気抵抗が変化するサーミスタを取り付け、かつそれぞれのサーミスタを直列に接続するか、または、4個以上の素電池を直列に接続した組電池において、隣接する2個の素電池の間に熱を感じて電気抵抗が変化するサーミスタを取り付け、かつそれぞれのサーミスタを直列に接続することにより、それぞれの素電池の表面温度検出を可能にして、上記目的を達成したものである。なお、本発明においては、素電池にサーミスタを取り付け、それぞれのサーミスタを直列に接続し、と表現しているが、これはそのような状態になっていればよいということを意味していて、素電池へのサーミスタの取り付けとサーミスタを直列に接続することの順序を規定するものではなく、素電池にサーミスタを取り付けてからサーミスタを直列に接続してもよいし、また、サーミスタを直列に接続してから素電池にサーミスタを取り付けもよい。
【0007】すなわち、充放電の繰り返しにより劣化(いわゆるサイクル劣化)が生じて素電池間に容量のバラツキが生じた場合でも、サーミスタにより素電池の表面温度を検出することによって、サイクル劣化の大きい素電池の充電末期の検出を正確に行うことができるので、過充電を防止することができ、組電池全体としての充放電サイクル特性の低下を防止することができる。
【0008】素電池にサーミスタを取り付ける態様としては、それぞれの素電池にサーミスタを取り付ける場合と、隣接する2個の素電池の間にサーミスタを取り付ける場合とがある。
【0009】後者による場合、少ない個数のサーミスタで、それぞれの素電池にサーミスタを取り付けた場合と同様の効果をあげることができる。
【0010】すなわち、サーミスタは温度上昇の早い素電池に対応して働くので、隣接する2個の素電池の間にサーミスタを取り付けた場合でも、それぞれの素電池にサーミスタを取り付けた場合と同様の効果をあげることができる。
【0011】また、素電池に取り付けたサーミスタまたは隣接する2個の素電池の間に取り付けたサーミスタを直列に接続することによって、サーミスタの個数にかかわらず、温度検出のための端子を2個にできるという効果がある。
【0012】サーミスタにより素電池の表面温度を検出する際には、通常、サーミスタの出力の絶対値を検出することによって行われるが、サーミスタの出力の変化量を求めることによって行ってもよい。
【0013】
【実施例】つぎに実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0014】実施例1素電池として単2サイズのニッケル−金属水素化物二次電池を用い、このニッケル−金属水素化物二次電池を6個直列に接続して図1に示すような組電池を作製した。
【0015】図1において、1は組電池で、2は素電池(ただし、この実施例では素電池としてニッケル−金属水素化物二次電池が用いられている)であり、6個の素電池2が直列に接続されている。
【0016】3はサーミスタであり、サーミスタ3は3個使用されていて、いずれのサーミスタ3もそれぞれ隣接する2個の素電池2の間に取り付けられ、それら3個のサーミスタ3はリード線4によって直列に接続されている。5は+側の電池端子で、6は−側の電池端子である。
【0017】そして、上記サーミスタ3を直列に接続するためのリード線4のうち両端のリード線4は、それぞれ温度測定端子7および8に接続されている。
【0018】この組電池1に対して、図2に示す回路により充電を行い、その特性を調べた。
【0019】図2において、1は組電池で、2は素電池であり、3はサーミスタである。これらは図1に示すものと同じものであるため、図1の場合と同じ符号が付されている。そして、9は充電回路で、10は電源である。
【0020】上記組電池の充放電初期における2個の素電池の1C充電時の電圧変化と表面温度変化を図3に示す。
【0021】図3において、曲線A−1は一方の素電池の充電時の電圧変化を示すものであり、曲線A−2は該一方の素電池の充電時の表面温度変化を示すものである。
【0022】また、図3において、曲線B−1は他方の素電池の充電時の電圧変化を示すものであり、曲線B−2は該他方の素電池の充電時の表面温度変化を示すものである。
【0023】図3に示すように、A−1とB−1は同じように変化し、A−2とB−2も同じように変化して、A−1とB−1との間およびA−2とB−2との間に実質的な差がない。
【0024】これは、充放電初期では、2個の素電池間にサイクル劣化による容量のバラツキが少ないので、充電した時に、それらの素電池間に電圧、表面温度に関して特性上の差異が生じず、両素電池とも同じような特性を有することを示している。
【0025】しかし、充放電末期になって、サイクル劣化が生じ、素電池間に劣化の大きいものと劣化の小さいものとが生じて、素電池間に容量のバラツキが生じた場合には、それら劣化の小さい素電池と劣化の大きい素電池とでは、図4に示すように、電圧、表面温度とも異なる特性を示すようになる。
【0026】図4について説明すると、図4は上記組電池の充放電末期における2個の素電池の1C充電時の電圧変化と表面温度変化を示す図である。
【0027】図4において、曲線C−1はサイクル劣化の小さい素電池の充電時の電圧変化を示すものであり、曲線C−2は該サイクル劣化の小さい素電池の充電時の表面温度変化を示すものである。
【0028】また、図4において、曲線D−1はサイクル劣化の大きい素電池の充電時の電圧変化を示すものであり、曲線D−2は該サイクル劣化の大きい素電池の充電時の表面温度変化を示すものである。
【0029】この図4中のC−1とD−1とを比較すると、D−1の方がC−1より短い充電時間で電圧が最高点に達し、それ以後は電圧が降下する。
【0030】これは、サイクル劣化の大きい素電池はサイクル劣化の小さい素電池より早く充電末期に到達することを示している。
【0031】したがって、サイクル劣化の小さい素電池が充電末期に達した時にはサイクル劣化の大きい素電池は既に過充電状態になっている。
【0032】表面温度に関してみると、D−2の方がC−2より早く温度が上昇する。これは、サイクル劣化の大きい素電池の方がサイクル劣化の小さい電池より早く温度上昇することを示している。
【0033】そこで、サイクル劣化の大きい素電池の表面温度を測定することにより、その充電末期を知ることができる。
【0034】それ故、サイクル劣化により素電池間に容量のバラツキが生じた場合でも、サーミスタにより素電池の表面温度を検出することによって、最もサイクル劣化の大きい素電池、つまり容量の小さい素電池の電末期を正確に検出することができ、過充電を引き起こすことなく組電池を充電することができる。したがって、過充電に基づく充放電サイクル特性の低下を防止することができる。
【0035】上記組電池を充電電流1Cで1.5時間充電し、放電電流1Cで素電池あたり1.0Vまで放電する充放電を繰り返したときの充放電サイクル特性を後記比較例1の組電池の充放電サイクル特性と併せて図6に示す。
【0036】比較例1素電池として単2サイズのニッケル−金属水素化物二次電池を6個直列に接続して図5に示すような組電池を作製した。
【0037】図5において、1は組電池で、2は素電池(ただし、この比較例1でも、素電池としてニッケル−金属水素化物二次電池が用いられている)であり、6個の素電池2は直列に接続されている。
【0038】3はサーミスタで、サーミスタ3は1個だけが使用されていて、2個の素電池2の間に取り付けられている。
【0039】この比較例1の組電池は従来品に相当するものであり、この比較例1の組電池の場合、たまたまサイクル劣化の大きい素電池が検出対象となっている場合には問題が生じないが、そうでない場合には、サイクル劣化の大きい素電池を過充電することになり、組電池全体としての充放電サイクル特性の低下を促進することになる。
【0040】この比較例1の組電池を実施例1の場合と同条件下で充放電したときの充放電サイクル特性を図6に示す。
【0041】図6において、横軸は充放電サイクル数であり、縦軸は容量保持率である。この縦軸の容量保持率は、各充放電サイクル時の放電容量を測定し、その放電容量の初度の放電容量(第1回目の放電容量)に対する比率で示したものである。
【0042】図6に示すように、実施例1の組電池では充放電サイクル数が1000回近くになってから劣化が生じたが、比較例1の組電池では約400回の充放電サイクルで劣化が生じ、実施例1の組電池に比べて充放電サイクル特性が悪かった。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、サイクル劣化によって素電池間に容量のバラツキが生じた場合でも、サイクル劣化の大きい素電池の充電末期を正確に検出し、過充電を防止して、充放電サイクル特性の低下を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の組電池を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示す組電池を充電する際の充電回路のブロック図である。
【図3】充放電初期における組電池中の2個の素電池の充電時の電圧変化と表面温度変化を示す図である。
【図4】充放電末期における組電池中のサイクル劣化の小さい素電池とサイクル劣化の大きい素電池の充電時の電圧変化と表面温度変化を示す図である。
【図5】比較例1の組電池を概略的に示す平面図である。
【図6】実施例1の組電池と比較例1の組電池の充放電サイクル特性を示す図である。
【符号の説明】
1 組電池
2 素電池
3 サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2個以上の素電池(2)を直列に接続した組電池において、それぞれの素電池(2)熱を感じて電気抵抗が変化するサーミスタ(3)を取り付け、かつそれぞれのサーミスタ(3)を直列に接続したことを特徴とする組電池。
【請求項2】 個以上の素電池(2)を直列に接続した組電池において、隣接する2個の素電池(2)の間に熱を感じて電気抵抗が変化するサーミスタ(3)を取り付け、かつそれぞれのサーミスタ(3)を直列に接続したことを特徴とする組電池。
【請求項3】 素電池(2)ニッケル−金属水素化物二次電池であることを特徴とする請求項1または2記載の組電池。
【請求項4】 サーミスタ(3)により素電池(2)の表面温度を検出することによって充電を制御する請求項1、2または3記載の組電池の充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3109603号(P3109603)
【登録日】平成12年9月14日(2000.9.14)
【発行日】平成12年11月20日(2000.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−81400
【出願日】平成3年3月20日(1991.3.20)
【公開番号】特開平4−292869
【公開日】平成4年10月16日(1992.10.16)
【審査請求日】平成9年12月26日(1997.12.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【参考文献】
【文献】特開 平4−267078(JP,A)
【文献】実開 昭54−79934(JP,U)
【文献】実開 平2−46362(JP,U)