説明

組電池を内蔵した電池ブロックおよび蓄電装置

【課題】複数のリチウムイオン電池セルを保持し収容する筐体を共通化して、種々の電池容量の電池ブロックを提供する。
【解決手段】 車載用蓄電装置は、金属製のケーシング110、金属製ケーシング110内に収納された複数本のリチウムイオン電池セル140、および電気エネルギを持たないダミーセル141を有する電池ブロック100a,100bと、電子部品が実装され複数のリチウムイオン電池セル140の物理状態を監視する制御装置900とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池をケーシングに収容して構成される電池ブロックおよび、この電池ブロックと電池セルを監視する制御装置により構成される蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネや環境問題への意識の高まりにより、ハイブリッド自動車や電気自動車が注目されている。ハイブリッド自動車や電気自動車にはバッテリが搭載されており、バッテリから動力を得て自動車を駆動する。
【0003】
例えば、特許文献1記載のパック電池は、複数の電池を、電池ホルダーを介してケース内の定位置に配置しており、電池ホルダーは複数のセルホルダーに分割されている。各々のセルホルダーは複数の電池を平行な姿勢で上下2段に配列して電池コアを形成しており、パック電池は複数の電池コアを同一平面上に配置してケースに固定し、収納している。電池コア内の複数電池は、リード板により直列及び並列に接続されており、電池コア内の電池を直列に接続する個数と並列に接続する個数を変更して出力電圧及び電流容量を変更できる。また、ケース内に収納する電池コアの個数を変更して電池の個数を調節できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−251472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパック電池は、電池コアの個数を調節する際にケースの大きさを電池コアの個数に応じて設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池ブロックは、N個の蓄電セルを収容するN個の収容部を有する筐体と、m(≦N)個の収容部にそれぞれ収容されたm個の蓄電セルと、前記蓄電セルが収容されていないN−m個の収容部にそれぞれ収容され、電気エネルギを持たないN−m個のダミーセルと、収容部に収容された蓄電セルの電圧を検出するために設けられたN個の蓄電セルの電圧検出線とを備えることを特徴とする。
本発明の車載用蓄電装置は、上記電池ブロックと、蓄電セルのセル状態を監視する制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の蓄電セルを保持し収容する筐体を共通化して、種々の電池容量の電池ブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による蓄電装置の一実施形態を用いた車載電機システムの構成を示すブロック図。
【図2】図1の蓄電装置の概観構成を示す斜視図。
【図3】図2の蓄電装置を冷却媒体出口側から見た斜視図。
【図4】図2の蓄電装置における1個の電池ブロックの外観構成を示す斜視図。
【図5】図4に示す低電圧側電池ブロックの分解斜視図。
【図6】図4に示す高電圧側電池ブロックの分解斜視図。
【図7】温度センサの取り付け部分を示す上から見た分解斜視図。
【図8】温度センサの取り付け部分を示す下から見た分解斜視図。
【図9】図2の蓄電装置を構成する制御装置全体の概観構成を示す斜視図。
【図10】図9の制御装置の分解斜視図。
【図11】本発明による1個の電池ブロックで構成した蓄電装置の斜視図。
【図12】本発明による3個の電池ブロックで構成した蓄電装置の斜視図。
【図13】本発明による4個の電池ブロックで構成した蓄電装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による蓄電装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態は、電動車両、とくに電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に本発明を適用した例である。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
【0011】
本明細書では、蓄電装置は、電池モジュールと制御装置で構成され、電池モジュールは、複数の電池ブロックで構成され、複数の電池ブロックのそれぞれは、複数の電池セルを接続した組電池をケーシングに収容して構成されるものとして説明する。
【0012】
図1を参照して、実施の形態の蓄電装置を含む車載電機システム(電動機駆動システム)の構成について説明する。
【0013】
−車載電機システム−
車載電機システムは、モータジェネレータ10、インバータ装置20、車両全体を制御する車両コントローラ30、および車載電源装置を構成する蓄電装置1000等を備える。蓄電装置1000は、複数の蓄電池を備えており、例えば、複数のリチウムイオン電池セルを備えたリチウムイオンバッテリ装置として構成される。
【0014】
実施形態の蓄電装置1000は2つの電池ブロック100a,100bからなる電池モジュール100を備えている。電池ブロック100a,100bは、それぞれ、図5にケーシング110として示す金属製の筐体に直列接続した複数本のリチウムイオン電池セル140を組電池として収容して構成されている。一方の電池ブロック100bには、正規のリチウムイオン電池セル140が16本収容され、他方の電池ブロック100aには正規のリチウムイオン電池セル140が8本、ダミーセル141が8本収容されている。このように2つの電池ブロック100a,100bにそれぞれ収容された組電池を直列接続して所望の電池容量の電池ブロックとしている。電池ブロック100aに正規のリチウムイオン電池セル140を16本収容すれば、より大きい電池容量の電池モジュール100を構成でき、ダミーセル141の本数を増やせば、より小さい電池容量の電池モジュール100を構成することができる。
【0015】
このように本発明は、電池ブロック内に収容する正規なリチウムイオン電池セル140とダミーセル141の本数を調整して、種々の電池容量の電池ブロックあるいは、電池モジュールを構成可能としたものである。
【0016】
なお、直列接続した16本のリチウムイオン電池セル140をケーシング110に収容して構成された電池ブロックを基本電池ブロックとすると、複数個の基本電池ブロックを直列接続した電池モジュールや、複数個の基本電池ブロックを並直列接続した電池容量の電池モジュールを構成することができる。そして、いずれかの電池ブロックは複数本のダミーセル141を収容したブロックとして、種々の電池容量の電池モジュールを構成することができる。
【0017】
(モータジェネレータ)
モータジェネレータ10は、三相交流同期機である。モータジェネレータ10は、車両の力行時および内燃機関であるエンジンを始動する時など、回転動力が必要な運転モードでは、モータ駆動し、発生した回転動力を車輪およびエンジンなどの被駆動体に供給する。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10に、リチウムイオンバッテリ装置1000から電力変換装置であるインバータ装置20を介して、直流電力を三相交流電力に変換して供給する。
【0018】
モータジェネレータ10は、車両の減速時や制動時などの回生時およびリチウムイオンバッテリ装置1000の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードでは、車輪あるいはエンジンからの駆動力によって駆動し、ジェネレータとして三相交流電力を発生させる。この場合、車載電機システムは、モータジェネレータ10からの三相交流電力をインバータ装置20を介して直流電力に変換し、リチウムイオンバッテリ装置1000に供給する。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000には電力が蓄積される。
【0019】
(インバータ装置20)
インバータ装置20は、前述した電力変換、すなわち直流電力から三相交流電力への変換、および三相交流電力から直流電力への変換をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子回路装置である。インバータ装置20は、パワーモジュール21、ドライバ回路22、モータコントローラ23を備えている。
【0020】
パワーモジュール21は、6つのスイッチング半導体素子を備え、この6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)によって、前述した電力変換を行う電力変換回路である。
【0021】
スイッチング半導体素子には、例えば、金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)あるいは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いる。パワーモジュール21をMOSFETから構成する場合は、寄生ダイオードがドレイン電極とソース電極との間に電気的に逆並列に接続されている。一方、パワーモジュール21をIGBTから構成する場合には、別途、ダイオードをコレクタ電極とエミッタ電極との間に電気的に逆並列に接続する必要がある。
【0022】
パワーモジュール21は、二つ(上アームおよび下アーム)のスイッチング半導体素子を電気的に直列に接続した直列回路(一相分のアーム)を三相分、電気的に並列に接続した三相ブリッジ回路により構成されている。
【0023】
パワーモジュール21には直流正極側モジュール端子(図示省略)および直流負極側モジュール端子(図示省略)が設けられ、各上アームにおける下アームへの接続側の反対側は、直流正極側モジュール端子に、各下アームにおける上アームへの接続側の反対側は直流負極側モジュール端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側モジュール端子および直流負極側モジュール端子は、直流正極側外部端子、直流負極側外部端子にそれぞれ電気的に接続されている。直流正極側外部端子および直流負極側外部端子は、リチウムイオンバッテリ装置1000との間において直流電力を授受するための電源側端子であり、リチウムイオンバッテリ装置1000から延びる正極側電源ケーブル610及び負極側電源ケーブル620が電気的に接続されている。
【0024】
さらに、パワーモジュール21には交流側モジュール端子が設けられ、交流側モジュール端子は交流側外部端子に電気的に接続されている。交流側外部端子は、モータジェネレータ10との間において三相交流電力を授受するための負荷側端子であり、モータジェネレータ10から延びる負荷ケーブルが電気的に接続されている。
【0025】
(モータコントローラ23)
モータコントローラ23は、パワーモジュール21を構成する6つのスイッチング半導体素子のスイッチング動作を制御するための電子回路装置である。モータコントローラ23は、上位制御装置、例えば車両全体を制御する車両コントローラ30から出力されたトルク指令に基づいて、6つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング動作指令信号(例えばPWM(パルス幅変調信号))を生成する。この生成された指令信号はドライバ回路22に出力される。
【0026】
ドライバ回路22は、モータコントローラ23から出力されたスイッチング動作指令信号に基づいて、パワーモジュール21を構成する6個のスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成する。この駆動信号は、パワーモジュール21を構成する六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力される。これにより、パワーモジュール21を構成する六つのスイッチング半導体素子は、ドライバ回路22から出力された駆動信号に基づいてスイッチング(オン・オフ)が制御される。
【0027】
蓄電装置、すなわちリチウムイオンバッテリ装置1000は、電気エネルギーを蓄積および放出(直流電力を充放電)するための電池モジュール100、および電池モジュール100の状態を管理および制御するための制御装置900を備えている。
【0028】
電池モジュール100は、二つの電池ブロック(あるいは電池パック)、すなわち電気的に直列に接続される高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから構成されている。
【0029】
(電池ブロック100a、100b)
図5に示すように、各電池ブロック100a、100bは、ケーシング110と、ケーシング内に収納した組電池120を備える。各組電池120は、複数のリチウムイオン電池セル140を電気的に直列に接続した接続体である。各電池ブロックの構成については後述する。
【0030】
高電位側電池ブロック100aの負極側(低電位側)と低電位側電池ブロック100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられている。SDスイッチ700はリチウムイオンバッテリ装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
【0031】
(制御装置900)
制御装置900は、上位(親)に相当するバッテリコントローラ300および下位(子)に相当するセルコントローラ200から構成されている。
【0032】
バッテリコントローラ300は、リチウムイオンバッテリ装置1000の状態を管理および制御するとともに、上位制御装置である車両コントローラ30やモータコントローラ23にリチウムイオンバッテリ装置1000の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。
【0033】
リチウムイオンバッテリ装置1000の状態の管理および制御には、リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧および電流の計測、リチウムイオンバッテリ装置1000の蓄電状態(SOC:State Of Charge)および劣化状態(SOH:State Of Health)などの演算、各電池ブロックの温度の計測、セルコントローラ200に対する指令(例えば各リチウムイオン電池セルの電圧を計測するための指令、各リチウムイオン電池セルの蓄電量を調整するための指令など)の出力などがある。
【0034】
セルコントローラ200は、バッテリコントローラ300からの指令によって複数のリチウムイオン電池セル140の状態の管理および制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ300の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数のリチウムイオン電池セル140の状態の管理および制御には、各リチウムイオン電池セル140の電圧の計測、各リチウムイオン電池セル140の蓄電量の調整などがある。各集積回路は、対応する複数のリチウムイオン電池セル140が決められており、対応する複数のリチウムイオン電池セル140に対して状態の管理および制御を行う。
【0035】
セルコントローラ200を構成する集積回路の電源には、対応する複数のリチウムイオン電池セル140を用いている。このため、セルコントローラ200と電池モジュール100の両者は接続線800(図1)を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数のリチウムイオン電池セル140の最高電位の電圧が接続線800を介して印加されている。
【0036】
高電位側電池ブロック100aの正極側直流電力入出力端子570a(図6)とインバータ装置20の直流正極側外部端子との両者は正極側電源ケーブル610を介して電気的に接続されている。低電位側電池ブロック100bの負極側直流電力入出力端子570b(図5)とインバータ装置20の直流負極側外部端子との間は負極側電源ケーブル620を介して電気的に接続されている。
【0037】
電源ケーブル610、620の途中にはジャンクションボックス400、負極側メインリレー412が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、正極側メインリレー411およびプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、電池モジュール100とインバータ装置20との間を電気的に導通および遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を導通、車載電機システムの停止時および異常時には電池モジュール100とインバータ装置20との間を遮断する。このように、リチウムイオンバッテリ装置1000とインバータ装置20との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
【0038】
リレー機構はモータコントローラ23により駆動、制御される。モータコントローラ23は、車載電機システムの起動時には、リチウムイオンバッテリ装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ300から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ23は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラからの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
【0039】
正極側メインリレー411は正極側電源ケーブル610の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の正極側とインバータ装置20の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は負極側電源ケーブル620の途中に設けられ、リチウムイオンバッテリ装置1000の負極側とインバータ装置20の負極側との間の電気的な接続を制御する。
【0040】
プリチャージ回路420は、プリチャージリレー421および抵抗422を電気的に直列に接続した直列回路であり、正極側メインリレー411に電気的に並列に接続されている。
【0041】
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、負極側メインリレー412が投入され、この後に、プリチャージリレー421が投入される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から供給された電流が抵抗422によって制限された後、インバータ搭載の平滑コンデンサに供給されて充電される。平滑コンデンサが所定の電圧まで充電された後、正極側メインリレー411が投入され、プリチャージリレー421が開放される。これにより、リチウムイオンバッテリ装置1000から正極側メインリレー411を介してインバータ装置20に主電流が供給される。
【0042】
ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ300に電気的に接続されている。バッテリコントローラ300は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、リチウムイオンバッテリ装置1000からインバータ装置20に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ300からモータコントローラ23や車両コントローラ30などに通知される。
【0043】
電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。また、リチウムイオンバッテリ装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置20側のみならず、正極側メインリレー411の電池モジュール100側であってもよい。
【0044】
なお、ジャンクションボックス400の内部にはリチウムイオンバッテリ装置1000の電圧を検出するための電圧センサを収納してもよい。バッテリコントローラ300は、電圧センサの出力信号に基づいてリチウムイオンバッテリ装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ23や車両コントローラ30に通知される。リチウムイオンバッテリ装置1000の電圧の検出部位は、リレー機構の電池モジュール100側あるいはインバータ装置20側のどちらでもよい。
【0045】
−リチウムイオンバッテリ装置−
次に、図2〜図10を用いて、リチウムイオンバッテリ装置1000の構成について説明する。
【0046】
リチウムイオンバッテリ装置1000は大きく分けて、電池モジュール100および制御装置900の二つのユニットから構成されている。
【0047】
(電池モジュール)
以下、電池モジュール100の構成について説明する。
上述したように、電池モジュール100は、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから構成され、二つの電池ブロック100a、100bは、電気的に直列に接続されている。なお、高電位側電池ブロック100aと低電位側電池ブロック100bは、内部に収納される後述するダミーセル141及びバスバー500を除き、全く同じ構成を有している。
【0048】
このため、図4には、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bを代表して、低電位側電池ブロック100bの外観図のみを示し、高電位側電池ブロック100aの外観図については省略する。図5には、低電位側電池ブロック100bの分解図を示し、図5を用いて電池ブロックの詳細な説明を行う。図6には、高電位側電池ブロック100aの分解図を示し、低電位側電池ブロック100bと異なる部分のみについて詳細な説明を行う。
【0049】
図2および図3に示すように、高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bは、各ブロックの長手方向同士が平行となるように互いに隣接して並列に配置される。高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bは、モジュールベース101上に並置され、ボルトなどの固定手段により固定されている。モジュールベース101は、短手方向に三分割された剛性のある薄肉の金属板(例えば鉄板)により構成され、車両に固定されている。すなわち、モジュールベース101は、短手方向の両端部と中央部に配置された3つの部材から構成されている。
【0050】
このような構成により、モジュールベース101の面を各電池ブロック100a、100bの下面と面一にでき、電池モジュール100の高さ方向の寸法の低減に寄与する。
【0051】
高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bの上部は、後述する制御装置900の筐体910によって固定されている。
【0052】
図2〜図6、とくに図5に示すように、低電位側電池ブロック100bは大きく分けて、ケーシング110(筐体、ハウジングあるいはパッケージと呼ぶ場合もある)および組電池120から構成されている。組電池120はケーシング110の内部に収納されて保持されている。
【0053】
ケーシング110は、略六面体状のブロック筐体であり、具体的には、入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112、出口側案内板113、サイドプレートと呼ばれる二つの側板130、131、および覆い部材160の結合体から構成されている。ケーシング110の内部空間は、組電池120が収納される収納室として機能するとともに、組電池120を冷却するための冷却媒体(冷却空気)が流通する冷却通路として機能する。
【0054】
なお、以下の説明において、ケーシング110の長さが最も長い方向、および、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に至る方向を、長手方向と定義する。また、ケーシング110の長手方向に対向する二つの側面(入口側案内板112および出口側案内板113)とは異なる二つの側面(二つの側板130、131)が対向する方向、リチウムイオン電池セル140の中心軸方向(正極端子および負極端子の二つの電極が対向する方向)、および二つのリチウムイオン電池セル140を電気的に接続する導電部材(バスバー)500a,500bと二つのリチウムイオン電池セル140とが対向する方向を、短手方向と定義する。さらに、入口流路形成板111と出口流路形成板118とが対向する方向を、電池モジュール100の設置方向に関係なく高さ方向と定義する。
【0055】
入口流路形成板111はケーシング110の上面を形成する長方形状の平板である。出口流路形成板118はケーシング110の底面を形成する平板である。入口流路形成板111および出口流路形成板118は互いの長手方向端部の位置が長手方向にずれている。入口流路形成板111および出口流路形成板118は、剛性のある薄肉の金属板から構成されている。
【0056】
入口側案内板112は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の一方側を形成する板状部材である。出口側案内板113は、ケーシング110の長手方向に対向する側面の他方側を形成する板状部材である。入口側案内板112および出口側案内板113は、剛性のある薄肉の金属板から構成されている
【0057】
入口流路形成板111と入口側案内板112との間には、冷却媒体である冷却空気のケーシング110内部への導入口を構成する冷却媒体入口114が形成されている。冷却媒体入口114には、冷却空気を冷却媒体入口114まで導くための冷却媒体入口ダクト116が設けられている。上述したように、入口流路形成板111と出口流路形成板118とは互いにずれて配置されており、ケーシング110の入口側端部はステップ状に形成されている。出口流路形成板118と出口側案内板113との間には、冷却空気のケーシング110内部からの導出口を構成する冷却媒体出口115が形成されている。冷却媒体出口115には、冷却空気を冷却媒体出口115から外部に導くための冷却媒体出口ダクト117が設けられている。
【0058】
冷却媒体入口114および冷却媒体出口115は高さ方向(入口流路形成板111と出口流路形成板118との対向方向)に位置がずれている。すなわち冷却媒体入口114は入口流路形成板111側に位置し、冷却媒体出口115は出口流路形成板118側に位置している。
【0059】
電池ブロックの組立性を考慮して、入口流路形成板111、出口側案内板113、冷却媒体入口114および冷却媒体入口ダクト116は一体に形成され、出口流路形成板118、入口側案内板112、冷却媒体出口115および冷却媒体出口ダクト117は一体に形成されている。
【0060】
一体に形成された入口流路形成版111、出口側案内板113、冷却媒体入口114、冷却媒体入口ダクト116、および、同じく一体に形成された出口流路形成板118、入口側案内板112、冷却媒体出口115、冷却媒体出口ダクト117は、金属を金型鋳造して作られており、板金の曲げ加工により作られる筐体に比べて厚みを有するため、外部からの荷重や衝撃に対してより高い強度を持つと共に、ねじ穴や加工面の寸法精度も板金加工に比べて高いため他の部品との組み立て性もよい。
【0061】
入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112、出口側案内板113、冷却媒体入口114および冷却媒体出口115と、側板130、131との結合はネジあるいはボルト若しくはリベットなどの固定手段(図示省略)により行われる。
【0062】
側板130、131は、ケーシング110の短手方向に対向する二つの側面を形成する平板状部材であり、電気的な絶縁性を有するPBTなどの樹脂からなる成型体である。側板130、131の肉厚は入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112および出口側案内板113の肉厚よりも厚い。側板130、131の詳細な構成については、後述する。
【0063】
側板130、131の外側、すなわち組電池120の収納室と反対側には、サイドカバーと呼ばれる覆い部材160が設けられている。図5には、側板130の外側の覆い部材160のみが図示されているが、側板131の外側にも覆い部材160が設置される。覆い部材160は、ボルトあるいはリベットなどの固定手段(図示省略)によって側板130に固定されている。
【0064】
覆い部材160は、鉄あるいはアルミニウムなどの金属板をプレス加工した平板、またはPBTなどの樹脂を成型して形成した平板であり、側板130の平面形状とほぼ同じ形状に構成されている。覆い部材160は、後述する側板130の貫通孔132に対応する部位を含む領域が側板130とは反対側に一様に膨らんでいる。このため、側板130の外側、すなわち、組電池120の収納室を形成する内壁面とは反対側の外壁面と、覆い部材160の内壁面、すなわち側板130側の面の間には空間が形成される。
【0065】
この空間は、ガス排出空間としても利用されるほか、側板130に装着したバスバーや電圧検出導体が覆い部材160と接触しない空間としても利用される。
【0066】
覆い部材160と側板130、131の間にはシールリング510が配置されている。覆い部材160を側板130、131に固定する際、シールリング510は圧縮されて反力が働く。そのため、覆い部材160と側板130、131との間に形成されるガス排出空間は密閉される。側板130、131には、ガス排出空間を電池ブロック100の外部と繋ぐガス排出穴(図示省略)が設けられており、リチウムイオン電池セル140からガスが排出された場合に、排出するガスはガス排出穴を通り電池ブロック100の外に排出される構造となっている。さらに、ガス排出穴を車両外部と接続することにより排出ガスは車両外部へ排出可能な構造となり、安全性が向上する。
【0067】
以上のように、ケーシング(筐体)110は、細長い四角筒状の本体部と、本体部の両側面を覆う一対の側板130,131と、一対の側板130,131の外面との間にガス排出流路を形成する覆い部材160とを含んで構成される。一対の側板130,131には、上記収容部として、円筒型電池缶の両端側の周面をそれぞれ保持する貫通孔132がそれぞれ設けられ、円筒型電池缶の両端が前記貫通孔132に接着され、一対の側板130,131の内側に形成された蓄電セル収容室と前記ガス排出流路とを密閉している。
【0068】
(組電池)
組電池120はリチウムイオン電池セル140の集合体(リチウムイオン電池セル群)である。複数のリチウムイオン電池セル140は、ケーシング110の内部に形成された収納室に整列して収納されていると共に、短手方向から側板130、131により挟持され、バスバーと呼ばれる複数の導電部材との接合によって電気的に直列に接続されている。この実施形態では、図5および図6に示すように、第1バスバー500aと第2バスバー500bを使用している。高電位側電池ブロック100aでは、ダミーセル141の本数や配置位置に応じて、バスバー500bの形状は適切に設計する必要があるが、複数本の正規のリチウムイオン電池セル140を直列接続できれば、バスバー500bの形状や構造は限定されない。
【0069】
リチウムイオン電池セル140は、円柱形状の構造体であり、電解液が注入された電池ケースの内部に電池素子および安全弁等の構成部品が収納されて構成されている。具体的には、リチウムイオン電池セル140は、円筒形状の電池缶と、セパレータを介して正極板と負極板とを軸の周囲に捲回して構成した捲回電極群と、電池缶を密閉する封口体と、電池缶内に充填された電解液とを有する。
【0070】
図5に示す低電位電池ブロック100bでは、円筒形のリチウムイオン電池セル140を16個、ケーシング110の内部に整列配置することにより組電池120を構成している。具体的には、リチウムイオン電池セル140の中心軸が短手方向に沿って延在するように横倒しした状態で、8本のリチウムイオン電池セル140を並列に配置して第1電池セル列121を構成する。また、第1電池セル列121と同様に8本のリチウムイオン電池セル140を配置して第2電池セル列122を構成する。組電池120は、第1電池セル列121と第2電池セル列122を高さ方向に積層(段積みあるいは俵積み)することによって構成される。
【0071】
すなわち、低電位電池ブロック100bの組電池120は、リチウムイオン電池セル140を長手方向に8個、高さ方向に二段あるいは二層並べ、直列接続して構成される。
図6に示すように、高電位電池ブロック100aでは、上段に正規のリチウムイオン電池セル140が3個、ダミーセル141が5個、下段に正規のリチウムイオン電池セル140が5個、ダミーセル141が3個並んで配置されている。
【0072】
第1電池セル列121および第2電池セル列122は互いに長手方向にずれている。すなわち第1電池セル列121は、第2電池セル列122よりも入口流路形成板111側であって、冷却媒体入口114側にずれて配置されている。一方、第2電池セル列122は、第1電池セル列121よりも出口流路形成板側であって、冷却媒体出口115側にずれて配置されている。
【0073】
例えば、第1電池セル列121の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸の長手方向の位置が、第2電池セル列122の最も冷却媒体出口115側に位置するリチウムイオン電池セル140の中心軸と、それに隣接するリチウムイオン電池セル140の中心軸との間の中間位置になるように、第1電池セル列121および第2電池セル列122が長手方向にずれて配置されている。
【0074】
第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140は端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140も同様に、端子の向きが交互に逆向きになるように並置されている。
【0075】
ただし、第1電池セル列121を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側への並び順は、第2電池セル列122を構成するリチウムイオン電池セル140の端子の並び順と異なる。すなわち、第1電池セル列121は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって負極端子、正極端子、負極端子、…、正極端子の順に配置されている。一方、第2電池セル列122は、側板130側に面するリチウムイオン電池セル140の端子が、冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側に向かって正極端子、負極端子、正極端子、…、負極端子の順に配置されている。
【0076】
このように、第1電池セル列121と第2電池セル列122とを長手方向にずらして配置することにより、組電池120の高さ方向の寸法を低くでき、低電位側電池ブロック100bを高さ方向に小型化することができる。
【0077】
(側板)
次に、図5を参照して、組電池120を両側から挟持する側板130、131の構成について詳細に説明する。ここでは、理解を容易にするため、一方の側板130の構成のみを説明するが、他方の側板131も基本的には側板130と同様に構成されている。
【0078】
側板130には、組電池120の最高電位側セルの正極に接続された正極側接続端子135と、組電池120の最低電位側セルの負極に接続された負極側接続端子136とが、側板130の上面、すなわち入口流路形成板111側の面に長手方向に並んで設けられている。入口流路形成板111には、電池モジュール100とは別体のターミナルブロック550がボルトあるいはリベット(図示省略)によって固定されている。
【0079】
ターミナルブロック550は、正負極の直流電力入出力端子570a,570bが圧入されたバスバー550a,550bを有している。バスバー550a,550bは樹脂で覆われており、ターミナルブロック550は、入口流路形成板111、出口流路形成板118、入口側案内板112、出口側案内板113、および覆い部材160との絶縁を保ったまま入口流路形成板111に固定されている。
【0080】
正負極側接続端子135,136は、ターミナルブロック550の正負極バスバー550a,550bにTIG溶接され、電気的に接続されている。したがって、正負極の直流電力入出力端子570a,570bを用いて低電位側電池ブロック100bから電力を取り出すことができる。
【0081】
高電位側電池ブロック100aにおいては、正極側の直流電力入出力端子570aに正極側電源ケーブル(図示省略)が接続され、負極側の直流電力入出力端子570bに、SDスイッチ700の一端側に電気的に接続されたケーブル(図示省略)の端子が接続される。低電位側電池ブロック100bにおいては、正極側の直流電力入出力端子570aにSDスイッチ700の他端側に電気的に接続されたケーブル(図示省略)の端子が接続され、直流電力入出力端子570bに負極側電源ケーブル(図示省略)の端子が接続される。
【0082】
ターミナルブロック550はカバー560を有し、上記配線の接続時を除き、カバー560を閉めることで、直流電力入出力端子570a,570bの露出を防ぐことができ、安全性が確保される。
【0083】
図5に示す低電位電池ブロック100bの側板130は略長方形の平板形状に形成され、側板130には、短手方向に貫通する16個の円形の貫通孔132が形成されている。貫通孔132は、16個のリチウムイオン電池セル140の電極位置に対応して開口するように配置されている。したがって、組電池120がケーシング110内に収納されると、側板130の各貫通孔132は、対応するリチウムイオン電池セル140一端側の端子面で塞がれ、側板131側の貫通孔132は、リチウムイオン電池セル140の他端側の端子面で塞がれる。
【0084】
上述したように、側板130,131と覆い部材160との間には所定の間隔を持ったガス排出通路が形成され、電池セルの開裂弁が開裂した際に噴出されたガスや電解液はガス排出通路から外部に排出される。ガス排出通路には、側板130,131の貫通孔132から電池セル端面が露出する。したがって、側板130,131の貫通孔132の段差部とリチウムイオン電池セル140の端子面とが接着剤にて互いに接着され、側板130,131、入口流路形成板111、および出口流路形成板118により形成されたセル収容部が貫通孔132により外部と連通することがない。換言すると、開裂時のガスや電解液がセル収容部内に流入する惧れがない。このように、側板130と131の貫通孔132でリチウムイオン電池セル140の正極端子側の缶表面と負極端子側の缶表面を保持、接着してリチウムイオン電池セル140をケーシング110内に収容する。このように、ケーシング110内には電池セル収容部が設けられている。
【0085】
低電位側電池ブロック100aでは、リチウムイオン電池セル140の正負極は、側板130,131の貫通孔132と関連して配設された第1バスバー500aにより互いに電気的に接続されている。第1バスバー500aは電池セルの正負極にTIG溶接されている。なお、第1バスバー500aは側板130,131に装着されて(図示省略)位置決めされている。
【0086】
図6に高電位側電池ブロック100aの分解図を示し、低電位側電池ブロック100bと異なる部分についてのみ、説明を行う。高電位側電池ブロック100a内の組電池120は、低電位側電池ブロック100b内のリチウムイオン電池セル140の一部を後述するダミーセル141に置き換えた構成である。
【0087】
ダミーセル141は、正規のリチウムイオン電池セル140と同一の外観形状を有する円筒形状である。たとえば、ダミーセル141は、正規のリチウムイオン二次電池セルと同じ寸法、形状の電池缶と、この電池缶を封止する封口体と、正規のリチウムイオン二次電池セルと同一の重量にすべく電池缶内に充填された充填材とを有する。したがって、ダミーセル141は電気エネルギを持たない。充填材は、絶縁性樹脂を用いることができる。
【0088】
なお、ダミーセル141を、外径形状が同一とされた棒状部材で構成してもよい。
【0089】
ダミーセル141の外観形状を正規のリチウムイオン電池セル140と同一とする理由は、側板130,131で電池セルの両端を保持する箇所には接着剤が塗布され、セル収容部をガス排出流路から密閉する必要があり、ダミーセル141が保持される箇所でも同様に接着剤でセル収容部を密閉する必要があるからである。また、本実施形態では、冷却風で電池セルを冷却し、冷却風により上流から下流までの複数本の電池セルを効率よく冷却するように設計している。そのため、ダミーセル141の外観形状が正規のリチウムイオン電池セル140に比較して大きく異なると、正規のリチウムイオン電池セル140の冷却が均一化されない惧れがある。そこで、この実施形態のように、ダミーセル141の外観形状を正規のリチウムイオン電池セル140と同一の外観形状とすることが好ましい。
【0090】
本実施形態では、ダミーセル141は第1電池セル列121の冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側へ向かって5本目まで、第2電池セル列122の冷却媒体入口114側から冷却媒体出口115側へ向かって3本目まで、並んで配置されている。
【0091】
高電位側電池ブロック100a内のリチウムイオン電池セル140の正負極は、側板130、131の貫通孔132と関連して配設された、第1バスバー500a及び第2バスバー500bにより電気的に直列に接続されている。第1バスバー500a及び第2バスバー500bは電池セルの正負極にTIG溶接されている。なお、第1バスバー500a及び第2バスバー500bは側板130,131に装着されて(図示省略)位置決めされている。
【0092】
第2バスバー500bは、上段組電池121のリチウムイオン二次電池セルの端子間を接続する上段端子間バスバーと、下段組電池122のリチウムイオン二次電池セルの端子間を接続する下段端子間バスバーと、上下の組電池端子間バスバーを接続するバスバー間接続バスバーとを有する。端子間バスバーは、第1バスバー500aと同一の形状、寸法である。
【0093】
第2バスバー500bを構成する上段端子間バスバーと下段端子間バスバーを第1バスバー500aと同一形状とすることにより、電池ブロック100内の第1バスバー500aと同様の溶接条件で、第2バスバー500bをリチウムイオン電池セル140に接続することができる。
【0094】
したがって、第2バスバー500bは、上段端子間バスバー500aと、下段端子間バスバー500aと、それらのバスバー500aを接続するバスバー間接続バスバーとを有する。これらを一体に成形したものでもよいし、上下段端子間バスバー500a間を別体の金属板で接続してもよい。この別体金属板は、上下端子間バスバー500aに溶接やねじ止めで接続することができる。
【0095】
このように、高電位側電池ブロック100a内に収納された8本の正規のリチウムイオン電池セル140は、第1バスバー500aと第2バスバー500bを用いて直列接続することができる。
【0096】
以上の実施形態は、高電位側電池ブロック100a内の8本をダミーセル141に置き換えたが、ダミーセル141の本数は特に限定されず、0本から16本まで置き換えることができる。また、高電位側電池ブロック100a内のリチウムイオン電池セル140が電気的に直列に接続されていればよく、ダミーセル141の配置についても特に限定されない。たとえば、ダミーセル141を1個おきに配置してもよい。この場合、ダミーセル141の配置ピッチに応じた寸法のバスバーを使用すればよい。
【0097】
ダミーセル141はリチウムイオン電池セル140と同様の寸法であり、内部には樹脂等が注入されており、重量もリチウムイオン電池セル140と同様である。ダミーセル141は電圧を持たないため、セル状態を監視する必要がない。
【0098】
図4および図5、図6に示すように、側板130の上面、すなわち入口流路形成板111側の面には、接続端子810が設けられている。接続端子810は、側板130と同じ成形材料によって側板130に一体に成形され、側板130の上面において冷却媒体入口114側に配置されている。図2、図3に示すように、各接続端子810は、制御装置900の電圧検出用コネクタ912から延びる配線(接続線)800と、後述する複数の電圧検出導体(図示省略)とを電気的に接続している。
【0099】
電圧検出用コネクタ912は、制御装置900の短手方向両端部にそれぞれ設置されている。高電位側電池ブロック100aの側板130と131にそれぞれ設けられた2つの接続端子810に接続された接続線800は、高電位側電池ブロック100aの上方に配置された制御装置900のコネクタ912に接続される。一方、低電位側電池ブロック100bの側板130と131にそれぞれ設けられた2つの接続端子810に接続された接続線800は、低電位側電池ブロック100bの上方に配置された制御装置900のコネクタ912に接続される。
【0100】
高電位側と低電位側のコネクタ912には、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bに収納されている全てのリチウムイオン電池セル140の電圧を検出する複数の電圧検出導体が接続されている。すなわち、電圧検出導体のそれぞれは、リチウムイオン電池セル140を直列に接続するバスバーにそれぞれ接続されている。複数の電圧検出導体は予め樹脂で一体化したサブアッセンブリとして製作したものを側板130、131とインサートモールド成形等により一体成型して構成されている。各電圧検出導体の先端部はバスバーにTIG溶接されている。
【0101】
電池ブロック100aや100bに正規のリチウムイオン電池セル140が16本収容される仕様の場合、コネクタ912から制御装置900に電池セル16本分の電圧信号が入力される。複数本のダミーセル141が収容される場合、正規のリチウムイオン電池セル140の電圧信号が制御装置900に入力されるが、ダミーセル141が収容された箇所からの電圧検出信号は0ボルトの信号である。バッテリコントローラ300には、コネクタ信号ラインのいずれのラインがダミーセル141に対応するかの情報が予め設定されるので、誤った判定を行うことはない。
【0102】
図3に示すコネクタ913には、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bに収納されている複数のリチウムイオン電池セル140及び冷却媒体入口ダクト116の温度を検出する複数の温度センサが接続されている。図7及び図8は温度センサの取り付け位置を説明する図である。図7及び図8において、温度センサ915a,915bは、上流流路形成板111と下流流路形成板118に設けられた貫通穴に差し込まれて固定されている。固定は接着剤やテープ等の手段を用いて行われる。
【0103】
冷却媒体入口ダクト116から導入された冷却風の温度を検出する温度センサ915bは、リチウムイオン電池セル140と離れた位置に固定されており、冷却媒体入口ダクトから導入された冷却風の温度を測定する。リチウムイオン電池セル140の温度を検出する温度センサ915aはリチウムイオン電池セル140に接触する位置もしくは隙間を設けて固定されている。
【0104】
ダミーセル141を使用する本実施形態では、正規のリチウムイオン電池セル140に温度センサ915aのいずれかが接するように、ダミーセル141の配置を考慮する必要がある。通常、冷却風の最下流のリチウムイオン電池セル140の温度が最高温度を示す。本実施形態では、下流流路形成板118の下流側の温度検出セル915aで正規のリチウムイオン電池セル140が接するように、正規のリチウムイオン電池セル140とダミーセル141を収容している。
【0105】
リチウムイオン電池セル140の測定精度を向上するため、リチウムイオン電池セル140と温度センサ915aの間を熱伝導性の良い材料で覆ってもよい。温度を測定するリチウムイオン電池セル140の数はいくつでもよく、測定するリチウムイオン電池セル140の本数を限定する場合には、最高温度のリチウムイオン電池セル140及び最低温度のリチウムイオン電池セル140を含むことが望ましい。
【0106】
−制御装置−
次に、制御装置900の構成について図9及び図10を参照して説明する。 図2、図3に示すように、制御装置900は、電池ブロック100の上に載置されている。具体的には、高電位側電池ブロック100a及び低電位側電池ブロック100bの上に跨って載置されている。制御装置900と電池ブロック100は複数のボルトやねじを用いて固定されている。
【0107】
図9、図10は制御装置900を説明する図である。制御装置900は大きく分けて、筐体910と回路基板950から構成されている。筐体910の内部には、回路基板950が収納されて保持されている。筐体910は、扁平な直方体上の金属製箱体であり、筐体910の上面を形成する筐体カバー920と、筐体910の下面及び側面を形成する筐体ケース930により構成されている。回路基板950上には複数の電子部品(図示省略)や複数の電圧検出用コネクタ912、温度検出用コネクタ913、および外部接続用コネクタ911が半田により接続されており、回路基板950と筐体ケース930は複数のねじにより固定されている。
【0108】
筐体ケース930の短手方向の側面には、コネクタ911、912、913を筐体ケース930の外部に露出させるために、複数の切り込み部が設けられている。電圧検出用コネクタ912には電池モジュール100内のリチウムイオン電池セル140に電気的に接続された接続線800のコネクタが結合され、温度検出用コネクタ913には、電池モジュール100の内部に配置された複数の温度センサ915a,915bの信号線のコネクタが結合される。
【0109】
なお、車載蓄電装置では、電池セルのSOCをバランスするためのバランシング制御が不可欠である。バランシング制御では、各電池セルの電圧を検出するが、ダミーセル141に対応する電圧検出信号ラインには0ボルトの電圧信号が入力される。したがって、上述したように、セルコントローラ200あるいはバッテリコントローラ300に予めダミーセンサ141の位置を設定し、その信号ラインからの電圧信号は制御に使用しないアルゴリズムとすることにより、ダミーセルの本数や配置によらず、設計自由度の高い蓄電装置を提供することができる。
【0110】
すなわち、制御装置900は、全てのリチウムイオン電池セル140の電圧検出線が接続されてリチウムイオン電池セル140の電圧を監視することができるセルコントローラ200を有し、ダミーセル141に対応する8個の電圧検出線のセル状態信号を無効としたり、あるいは無視するようなアルゴリズムを有する。
【0111】
以上の実施形態では、電池モジュール100を2つの電池ブロック100a,100bで構成し、高電位側電池ブロック100a内の8本のリチウムイオン電池セル140をダミーセル141に置き換えた構造とした。本発明は電池ブロック内100のリチウムイオン電池セル140が直列に接続されていれば、リチウムイオン電池セル140をダミーセル141に置き換える本数及び位置は限定されない。またダミーセル141が含まれる電池ブロック100の位置及び個数も限定されず、低電位側電池ブロックのみ、もしくは2つの電池ブロック100a,100bに少なくとも1本のダミーセル141を収容して使用してもよい。
【0112】
以上の実施形態では、二つの電池ブロック100a,100bを使用したが、図11に示すようにひとつの電池ブロック、図12および図13に示すように3以上の電池ブロックを使用して蓄電装置を構成することもできる。
(1)図11は、ダミーセル141が含まれる電池ブロック100のみから構成される蓄電装置1000の外観図である。電池ブロックの電圧をリチウムイオン電池セル140の本数に応じた電圧に調整することができる。制御装置900は16本分の電池状態を監視するセルコントローラ200とバッテリコントローラ300を備えている。バッテリコントローラ300には、ダミーセルに対応する各種信号ラインや信号ポートの番号を予め設定しておく。このようにすることにより、ダミーセル141の本数によらず、部品を共用できる。
【0113】
(2)図12及び図13は、3つ以上の電池ブロック100から成る蓄電装置1000の外観図である。各電池ブロック内のリチウムイオン電池セル140が直列に接続されていれば、各電池ブロック内のリチウムイオン電池セル140をダミーセル141に置き換える本数及び位置も限定はされず、ダミーセル141を含む電池ブロックの個数及び位置も限定されない。この変形例でも、制御装置900内のセルコントローラ200には、全ての電池ブロックに正規のリチウムイオン電池セル140だけが使用されることを想定して、必要な数量のセルコンICを実装する。そして、バッテリコントローラ300には、ダミーセルに対応する電池セル取付部からの各種信号が入力される信号ポートの番号を予め設定しておく。このようにすることにより、ダミーセル141に対応する電池セル取付部から入力される信号値に基づいて誤った判定を行うことがない。したがって、ダミーセル141の本数によらず、部品を共用できる。
【0114】
(3)以上では、リチウムイオン電池セル140を使用した蓄電装置について説明したが、ニッケル水素二次電池セルなど他の二次電池セルを使用した蓄電装置にも本発明を適用できる。また、キャパシタなどの蓄電器セルを使用した蓄電装置にも本発明を適用可能である。本明細書では、二次電池セル、蓄電器セルを総称して蓄電セルと呼ぶ。なお、便宜上、複数のキャパシタセルを接続した蓄電器も組電池と呼ぶ。
【0115】
本発明は以上説明した実施形態や変形例に限定されない。したがって、正規の二次電池とダミーセルを混在させた電池ブロック、全て正規の二次電池を収容した電池ブロックに共通の部品を使用することが可能であれば、ケーシングの形状、その他の構成部材の形状、配置は問わない。
【0116】
したがって、本発明による電池ブロック100は、N個のリチウムイオン二次電池セルで代表される蓄電セルを収容するN個の収容部を有する筐体110と、m(≦N)個の収容部にそれぞれ収容されたm個の蓄電セルと、蓄電セルが収容されていないN−m個の収容部にそれぞれ収容され、電気エネルギを持たないN−m個のダミーセル141と、収容部に収容された蓄電セルの電圧を検出するために設けられたN個の蓄電セルの電圧検出線とを備えるものである。
【符号の説明】
【0117】
10:モータジェネレータ
20:インバータ装置
21:パワーモジュール
22:ドライバ回路
23:モータコントローラ
30:車両コントローラ
100:電池モジュール
100a:高電位側電池ブロック
100b:低電位側電池ブロック
101:モジュールベース
110:ケーシング
111:入口流路形成板
112:入口側案内板
113:出口側案内板
114:冷却媒体入口
115:冷却媒体出口
116:冷却媒体入口ダクト
117:冷却媒体出口ダクト
118:出口流路形成板
120:組電池
121:第1電池セル列
122:第2電池セル列
130、131:側板
132:貫通孔
135:正極側接続端子
136:負極側接続端子
140:リチウムイオン電池セル
141:ダミーセル
160:覆い部材(サイドカバー)
200:セルコントローラ
300:バッテリコントローラ
400:ジャンクションボックス
411:正極側メインリレー
412:負極側メインリレー
420:プリチャージ回路
421:プリチャージリレー
422:抵抗
430:電流センサ
500a:第1バスバー
500b:第2バスバー
510:シールリング
550:ターミナルブロック
550a:正極バスバー
550b:負極バスバー
560:カバー
570:正負極の直流電力入出力端子
610:正極側電源ケーブル
620:負極側電源ケーブル
700:SDスイッチ
800:接続線(配線)
810:接続端子
900:制御装置
910:筐体
911:外部接続用コネクタ
912:電圧検出用コネクタ
913:温度検出用コネクタ
915:温度センサ
920:筐体カバー
930:筐体ケース
950:回路基板
1000:リチウムイオンバッテリ装置(蓄電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の蓄電セルを収容するN個の収容部を有する筐体と、
m(≦N)個の収容部にそれぞれ収容されたm個の蓄電セルと、
前記蓄電セルが収容されていないN−m個の収容部にそれぞれ収容され、電気エネルギを持たないN−m個のダミーセルと、
前記収容部に収容された蓄電セルの電圧を検出するために設けられたN個の蓄電セルの電圧検出線とを備えることを特徴とする電池ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ブロックにおいて、
前記ダミーセルの寸法、重量が前記蓄電セルと同一であることを特徴とする電池ブロック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池ブロックにおいて、
前記蓄電セルは、円筒形状の電池缶と、セパレータを介して正極板と負極板とを軸の周囲に捲回して構成した捲回電極群と、前記電池缶を密閉する封口体と、前記電池缶内に充填された電解液とを有するリチウムイオン二次電池であることを特徴とする電池ブロック。
【請求項4】
請求項1に記載の電池ブロックにおいて、
前記蓄電セルは、円筒形状の電池缶と、セパレータを介して正極板と負極板とを軸の周囲に捲回して構成した捲回電極群と、前記電池缶を密閉する封口体と、前記電池缶内に充填された電解液とを有し、
前記ダミーセルは、前記蓄電セルと同一の電池缶と、前記蓄電セルと同一の電池缶を封止する封口体と、前記電池缶内に充填された充填材とを有することを特徴とする電池ブロック。
【請求項5】
請求項1に記載の電池ブロックにおいて、
前記蓄電セルとダミーセルは円筒型であり、前記ダミーセルの円筒径及び円筒高さは円筒形蓄電セルと同一であることを特徴とする電池ブロック。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の電池ブロックにおいて、
前記筐体は、細長い四角筒状の本体部と、本体部の両側面を覆う一対の側板と、前記一対の側板の外面との間にガス排出流路を形成する覆い部材とを含み、
前記一対の側板には、前記収容部として、前記円筒型蓄電セルおよびダミーセルの両端側の周面をそれぞれ保持する貫通孔がそれぞれ設けられ、前記円筒型蓄電セルおよびダミーセルの両端が前記貫通孔に接着され、前記一対の側板の内側に形成された蓄電セル収容室と前記ガス排出流路とを密閉していることを特徴とする電池ブロック。
【請求項7】
請求項6記載の電池ブロックにおいて、
前記一対の側板の前記貫通孔の周辺には、前記筐体内で隣接する前記蓄電セルの正負極同士を接続する導体部材が設けられ、前記導体部材は前記蓄電セルの正負極端子と溶接されていることを特徴とする電池ブロック。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の電池ブロックと、
前記蓄電セルのセル状態を監視する制御装置とを備えることを特徴とする車載用蓄電装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車載用蓄電装置において、
前記N個の電圧検出線が前記制御装置に接続されていることを特徴とする車載用蓄電装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車載用蓄電装置において、
前記制御装置は、前記N個の蓄電セルのセル状態を監視するため、前記N個の電圧検出線が接続されたセルコントローラを有し、前記N個の電圧検出線のうち、前記ダミーセルに対応する前記収容部からセルコントローラに入力される電圧検出線のセル状態信号を無効とすることを特徴とする車載用蓄電装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の車載用蓄電装置において、
前記電池ブロックをJ個設けるとともに、
前記セルコントローラは、J×N個の蓄電セルのセル状態を監視することを特徴とする車載用蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−221844(P2012−221844A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88432(P2011−88432)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】