説明

組電池及び車両

【課題】冷媒の流れる面積の低下と圧力損失の増大を抑制することを目的とする。
【解決手段】複数の単電池が配列され、該配列方向において隣接する前記単電池の間に冷媒を導通させる第1の冷媒通路が形成された電池群を有する組電池であって、前記第1の冷媒通路には、複数の第1の突起部が形成されており、前記第1の突起部は、前記第1の冷媒通路の上流側に向かって凸となる第1の孤状部と、前記第1の孤状部の両端部から前記第1の冷媒通路の下流側に向かって延びて、互いに接近する一対の第1のテーパー形状部と、を有することを特徴とする組電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池が配列され、該配列方向において隣接する単電池の間に冷媒通路が形成された電池群を有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を意識した車両として、車両走行用の電動モータを搭載した電気自動車、ハイブリッド自動車などが注目され、実用化されている。電動モータは、充放電可能なバッテリから出力される電力により駆動される。この種のバッテリは、複数の単電池を接続した組電池として構成されている。単電池は、充放電の際に発熱し、発熱温度が高くなると劣化する。
【0003】
単電池の温度上昇を抑制する手段として、特許文献1は、複数の単電池と、これらの単電池が内蔵されて冷却媒体が流通するハウジングと、ハウジングの内側面に形成され、冷却媒体と接触する突起部とを有する二次電池モジュールを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−278332号公報
【特許文献2】特開2005−116342号公報
【特許文献3】特開2007−042637号公報
【特許文献4】特開2010−092723号公報
【特許文献5】特開2002−033137号公報
【特許文献6】特開2000−243461号公報
【特許文献7】特開2001−319697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、突起部が円柱形、或いは半球形により形成されているため、突起部の下流側端部に近接した領域において、冷媒の流れない無駄な領域が発生する。また、突起部に接触することにより分岐した冷媒が一箇所に集中し、圧力損失の増大を招くおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒の流れる面積の低下と圧力損失の増大とを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明に係る組電池は、(1)複数の単電池が配列され、該配列方向において隣接する前記単電池の間に冷媒を導通させる第1の冷媒通路が形成された電池群を有する組電池であって、前記第1の冷媒通路には、複数の第1の突起部が形成されており、前記第1の突起部は、前記第1の冷媒通路の上流側に向かって凸となる第1の孤状部と、前記第1の孤状部の両端部から前記第1の冷媒通路の下流側に向かって延びて、互いに接近する一対の第1のテーパー形状部と、を有することを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、 隣接する前記単電池の間には、前記第1の冷媒通路と隣り合う位置に第2の冷媒通路が形成されており、前記第1の冷媒通路の排出口から排気された冷媒が前記第2の冷媒通路に流入するのを許容する流入開口部を設けることができる。(2)の構成によれば、第1の冷媒通路から排気された冷媒を第2の冷媒通路に流入させることにより、冷媒が再利用されて、冷却性能を向上させることができる。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記第1の冷媒通路及び前記第2の冷媒通路は互いに、冷媒の流れる方向が反対方向であってもよい。(3)の構成によれば、第1の冷媒通路から排気された冷媒を、迂回させることなく、第2の冷媒通路に供給することができる。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、さらに、隣接する前記単電池の間に配置されるスペーサ部材を有し、前記複数の第1の突起部は、前記スペーサ部材に形成されるとともに、前記単電池の外面に接触させることができる。(4)の構成によれば、スペーサ部材と単電池の外面との間に第1の冷媒通路が形成され、この第1の冷媒通路における冷却能力を高めることができる。
【0011】
(5)上記(3)又は(4)の構成において、前記スペーサ部材には、前記単電池の外面に接触することにより前記第1の冷媒通路及び前記第2の冷媒通路を仕切る隔壁が形成されており、前記隔壁の先端部には、前記単電池の外面から離間した位置に位置することにより前記流入開口部を形成するリップ部が形成されており、前記第1の冷媒通路の前記排出口から排気された冷媒を、前記流入開口部を介して、前記第2の冷媒通路に向かわせる第1のガイド部と、前記第1の冷媒通路から流入した冷媒を前記第2の冷媒通路の下流側に向かわせる第2のガイド部とを有する。(5)の構成によれば、第1の冷媒通路から排気された冷媒をより確実に第2の冷媒通路に供給することができる。
【0012】
(6)上記(5)の構成において、前記第1のガイド部は、前記電池群を前記配列方向において拘束する拘束部材を囲む筒状部材の外壁を兼ねており、前記第2のガイド部は、前記単電池を押圧して前記単電池の位置ずれを抑制する抑制部材を兼ねている。(6)の構成によれば、独立した第1のガイド部及び第2のガイド部が不要となるため、部品点数の増加を抑制しながら、冷却性能を向上させることができる。
【0013】
(7)上記(1)〜(6)の構成において、前記複数の第1の突起部は、千鳥状に配列することができる。(7)の構成によれば、冷却効率をより高めることができる。
【0014】
(8)上記(2)〜(7)の構成において、前記第2の冷媒通路には、複数の第2の突起部が形成されており、前記第2の突起部は、前記第2の冷媒通路の上流側に向かって凸となる第2の孤状部と、前記第2の孤状部の両端部から前記第2の冷媒通路の下流側に向かって延びるとともに互いに接近する一対の第2のテーパー形状部とを有する。(8)の構成によれば、第2の冷媒通路を流れる冷媒の冷却面積の低下と圧力損失の増大とを抑制することができる
【0015】
(9)上記(8)の構成において、前記複数の第2の突起部は、千鳥状に配列することができる。(9)の構成によれば、冷却効率をより高めることができる。
【0016】
(10)上記(1)〜(9)のうちいずれか一つに記載の組電池と、
前記組電池から供給される電力により車両を走行させるための動力を発生するモータと、を有する車両。(10)の構成によれば、電池寿命の長い車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷媒の流れる面積の低下と圧力損失の増大とを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】組電池の斜視図である。
【図2】組電池の断面図である。
【図3】スペーサ部材に流れる冷媒の流速分布を模式的に示した模式図である(実施形態)
【図4】スペーサ部材に流れる冷媒の流速分布を模式的に示した模式図である(比較例)
【図5】第1の突起部の拡大図である。
【図6】圧力損失及び冷却能力の評価試験の試験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る組電池の斜視図である。図2は、組電池をY−Z面で切断した断面図であり、一部の要素を透視して図示する。これらの図において、X軸、Y軸及びZ軸は互いに異なる直交する三軸を示している。組電池100は、単電池11及びスペーサ部材2を交互に積層した電池群1、一対のエンドプレート3、および第1〜第4の拘束バンド(拘束部材に相当する)4a〜4dを備える。組電池100は、車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する。車両は、当該モータの動力のみによって車輪を駆動する電気自動車、或いは当該モータの動力とエンジンの動力とを動力源として兼用するハイブリッド自動車であってもよい。また、ハイブリッド自動車は、車両外部に設けられた商用電源により充電可能なプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0020】
電池群1は、電気的に互いに直列に接続された複数の単電池11を備える。これらの単電池11は、X軸方向(配列方向に相当する)に積層されている。単電池11は、単電池11の積層方向において向き合う一対の外面と、Y軸方向において向き合う一対の外面と、Z軸方向において向き合う一対の外面とを有するいわゆる角型電池である。単電池11は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池であってもよい。単電池11は、キャパシタであってもよい。Z軸方向において向き合う一対の外面のうち一方の外面側には、突状の正極端子11a及び負極端子11bがY軸方向に並んで形成されている。
【0021】
図2に図示するように、正極端子11aは、正極接続端子11cを介して、単電池11の内部に位置する不図示の発電要素に接続されている。負極端子11bは、負極接続端子11dを介して、単電池11の内部に位置する不図示の発電要素に接続されている。第1〜第4の拘束バンド4a〜4dはそれぞれ、単電池11の積層方向に延びており、絶縁性の保護枠12により覆われている。保護枠12は、樹脂であってもよい。なお、保護枠12は、筒状部材に相当する。
【0022】
一対のエンドプレート3は、電池群1を挟む位置に配置される。一対のエンドプレート3のX軸方向の端面には、第1の拘束バンド4a及びc第3の拘束バンド4cを挟み込んで保持する一対の挟持板33a、33bが形成されている。これらの挟持板33a、33bは、リベット6を介してリベット止めされる。これにより、第1の拘束バンド4a及び第3の拘束バンド4cが強固に固定される。
【0023】
一対のエンドプレート3のX軸方向の端面には、挟持板33a,33bとY軸方向において並ぶ位置に一対の挟持板32a、32bが形成されている。一対の挟持板32a、32bは、第2の拘束バンド4b及び第4の拘束バンド4dを挟み込んで保持する。これらの挟持板32a、32bは、リベット6を介してリベット止めされる。これにより、第2の拘束バンド4b及び第4の拘束バンド4dが強固に固定される。
【0024】
一対のエンドプレート3は、X−Y面方向に沿って延在するフランジ部34を備える(図1参照)。フランジ部34は、貫通穴部34aを備える。貫通穴部34aに対して図示しない締結部材を締結することにより、組電池100を車両の固定部に固定することができる。ここで、車両の固定部は、車両のシートの下に位置するフロアパネル、或いはラゲッジルームの内部であってもよい。
【0025】
図1を参照して、積層方向に隣接する単電池11のうち、一方の単電池11の正極端子11a及び他方の単電池11の負極端子11bは積層方向において向き合っている。これらの正極端子11a及び負極端子11bは、図2に図示するバスバー51を介して電気的及び機械的に接続されている。
【0026】
ここで、バスバー51には、板厚方向(Z軸方向)に貫通する一対の貫通穴部が形成されており、一方の貫通穴部には積層方向に隣接する一方の単電池11における正極端子11aが挿通され、他方の貫通穴部には他方の単電池11における負極端子11bが挿通される。正極端子11a及び負極端子11bの外面にはネジ溝が形成されており、これらのネジ溝に締結ナット61を締結することにより、バスバー51は固定される。ただし、積層方向に隣接する単電池11は、電気的に並列に接続してもよい。なお、図面を簡略化するために、図1にはバスバー51及び締結ナット61が図示されていない。
【0027】
スペーサ部材2は、X軸方向において隣り合う単電池11の間に位置する。図2を参照して、スペーサ部材2のX軸方向の端面には、第1の突起群21と、第2の突起群22とが形成されている。第1の突起群21は、複数の第1の突起部21aから構成されている。第2の突起部22は、複数の第2の突起部22aから構成されている。第1の突起群21及び第2の突起群22は、Z軸方向に延びる隔壁23を挟んでY軸方向において向き合っている。
【0028】
すなわち、第1の突起群21は、Y軸方向において向き合う一対の隔壁23に挟まれた領域に形成されており、第2の突起群22は、隔壁23を挟んで第1の突起群21と向き合う領域に形成されている。
【0029】
ここで、第1の突起群21が位置する領域、つまり、一対の隔壁23に挟まれた領域を第1の冷媒通路31と定義し、第2の突起群22が位置する領域、つまり、第1の冷媒通路31に対して隔壁23を挟んで向き合う領域を第2の冷媒通路32と定義する。白抜きの矢印は、第1の冷媒通路31に流入した冷媒の流れる方向を示している。黒色の矢印は、第2の冷媒通路32に流入した冷媒の流れる方向を示している。タブルトラックの矢印は、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32に流入する冷媒の流れる方向を示している。なお、冷媒とは空気のことである。冷媒は、図示しないブロアを作動させることにより、第1の冷媒通路31に供給される。
【0030】
第1の突起部21aは、第1の孤状部211aと、一対の第1のテーパー形状部211bとを有する、いわゆるティアドロップ型に形成されている。第1の孤状部211aは、第1の冷媒通路31の上流側に向かって凸となる方向に屈曲している。一対の第1のテーパー形状部211bは、第1の孤状部211aの両端部から第1の冷媒通路31の下流側に向かって延びるとともに、互いに接近するテーパー形状に形成されている。これらの第1の突起部21aは、千鳥状に並列されている。ここで、千鳥状とは、Y軸方向において向き合う第1の突起部21aの中間位置からZ軸方向(冷媒の流れる方向)にシフトした位置に別の第1の突起部21aが位置する配列状態を意味する。
【0031】
第2の突起部22aは、第2の孤状部221aと、一対の第2のテーパー形状部221bとを有する、いわゆるティアドロップ型に形成されている。第2の孤状部221aは、第2の冷媒通路32の上流側に向かって凸となる方向に屈曲している。一対の第2のテーパー形状部221bは、第2の孤状部221aの両端部から第2の冷媒通路32の下流側に向かって延びるとともに、互いに接近するテーパー形状に形成されている。これらの第2の突起部22aは、千鳥状に並列されている。千鳥状の意味については、上述したため説明を繰り返さない。
【0032】
スペーサ部材2の下端部には、結露水などの水分をスペーサ部材2の外部に逃がすための排出口2cが形成されている。隔壁23には、排出口2cに向かって延びる水ガイド部2bが形成されている。スペーサ部材2などに付着した結露水などは、水ガイド部2bを介して排出口2cに導かれる。また、本実施形態における排出口2cは、第2の冷媒通路32の排出口として兼用される。
【0033】
隔壁23の先端部には、リップ部23aが形成されている。リップ部23aは、隔壁23よりもY軸方向及びX軸方向の寸法が小さい薄肉形状に形成されている。リップ部23aは、保護枠12の保護枠下面12aに向かって延びている。
【0034】
組電池100の組み立て状態において、第1の突起群21、第2の突起群22及び隔壁23が単電池11の外面(X軸方向の外面)に当接することにより、第1の冷媒通路31及び第2の冷媒通路32が形成される。リップ部23aは、隔壁23よりも薄肉に形成されているため、第1の冷媒通路31から流出した冷媒が第2の冷媒通路32に流入するのを許容する。すなわち、リップ部23aと単電池11の外面との間には、隙間(流入開口部)が形成されており、この隙間を介して、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32に冷媒が流入する。
【0035】
スペーサ部材2には、第2の突起群22に向かって延びる傾斜延出部2aが形成されている。この傾斜延出部2aは、スペーサ部材2から離れる程(第2の突起群22に接近する程)、第1の冷媒通路31に接近する側に傾いている。傾斜延出部2aは、単電池11の上面に当接することにより、単電池11の位置ずれを抑制する。ここで、保護枠12の保護枠下面12aは、第1の冷媒通路31から排気された冷媒の一部を、ダブルトラックの矢印で示すように、第2の冷媒通路32に向かわせる。傾斜延出部2aは、第1の冷媒通路31から流入した冷媒を、黒色の矢印で示すように、第2の冷媒通路32の下流側に向かわせる。なお、保護枠下面12aは第1のガイド部に相当し、傾斜延出部2aは第2のガイド部に相当する。
【0036】
このように、本実施形態の構成によれば、リップ部23aが設けられることにより、第1の冷媒通路31の排出口から排気された冷媒が第2の冷媒通路32に流入するため、冷媒の圧力損失の低下を抑制できる。つまり、本実施形態の構成によれば、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32への冷媒の流入を許容しない構成(つまり、第1の冷媒通路31と第2の冷媒通路32とが隔壁23により遮断された構成)と比べて、冷却風量を増加することができる。
【0037】
また、第1の冷媒通路31の排出口から排気された冷媒を第2の冷媒通路32において再度冷却に用いることができる。これにより、第1の冷媒通路31のみを使用して冷却する構成と比べて、冷却能力を増大することができる。
【0038】
さらに、隔壁23の一部を薄肉に形成するだけで、冷却性能を増加できるため、部品点数の削減による低コスト化を図ることができる。
【0039】
また、保護枠下面12a及び傾斜延出部2aは、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32に冷媒を導くためのガイド部として機能するため、独立したガイド部を設けることなく冷却能力を増大することができる。
【0040】
次に、第1の突起部21aの効果について、比較例を示して詳細に説明する。図3は、本実施形態のスペーサ部材に流れる冷媒の流速分布を模式的に示している。図4は、円柱形の突起部(比較例)が千鳥状に配設されたスペーサ部材に流れる冷媒の流速分布を模式的に示している。黒色でハッチングした領域は、流量が著しく少ない領域(以下、低冷却領域という)を示している。
【0041】
これらの図を参照して、比較例の構成では、円柱形突起部21a´の近傍を流れる冷媒が、円柱形突起部21a´から剥がれるように直進するため、円柱形突起部21a´の下流側により大きな低冷却領域が形成される。これに対して、本実施形態の構成では、第1の突起部21aがいわゆるティアドロップ型に形成されることにより、冷媒が第1のテーパー形状部211bに沿って流れるため、第1の突起部21aの下流側に形成される低冷却領域を少なくすることができる。したがって、本実施形態の構成によれば、比較例の構成よりも、単電池11に対する冷却面積を大きくすることができる。
【0042】
また、比較例の構成では、点線の円で示すように、円柱形突起部21a´の外縁部近傍に冷媒の流れが集中するため、圧力損失が増大する。これに対して、本実施形態の構成では、点線の楕円で示すように、隣り合う第1の突起部21aの間に形成された隙間全体に冷媒が分散するため、圧力損失の低下を抑制できる。
【0043】
図5を参照して、冷媒が流れる方向に対する第1のテーパー形状部211bの角度をθとしたときに、好ましくは、θ≦23°である。角度θが前記条件を満足することにより、
冷媒が第1の突起部21aから剥離するのを十分に抑制、つまり、冷媒を第1のテーパー形状部211bに沿って進ませることができる。上述の効果は、第2の突起部22aにおいても得ることができる。
【0044】
また、第1の突起部21a(実施例)及び円柱形突起部21a´(比較例)の単電池11に対する接触面積を互いに等しくして、圧力損失及び冷却能力に関する試験を行った。具体的には、隣接する単電池11の間に冷媒を導通させたときの圧力損失及び単電池11の外面の温度を計測することにより、試験を行った。なお、単電池11のケースには、アルミニウムを使用した。その結果を図6に示す。
【0045】
同図において、実施例2は、実施例1よりも第1の突起部21aのサイズが小さく設定されており(つまり、第1の突起部21aの個数が多い)、実施例3は、実施例2よりも第1の突起部21aのサイズが小さく設定されている。これらの実施例1乃至3、比較例1は全て単電池11に対する接触面積を互いに等しくしており、単電池11に対する接触圧が同一である。ここで、単電池11がリチウムイオン電池である場合、拘束圧が変化することにより出力が変動する。したがって、単電池11に対する接触面積を互いに同一にした状態で試験を行うことにより、圧力損失及び冷却能力に関するより正確な評価(比較)を行うことができる。
【0046】
図6に示すように、実施例1は圧力損失が10.5Pa、発熱温度が45.0℃であった。実施例2は圧力損失が11.9Pa、発熱温度が44.4℃であった。実施例3は圧力損失が13.6Pa、発熱温度が44.3℃であった。比較例1は圧力損失が20.7Pa、発熱温度が44.4℃であった。
【0047】
実施例1は、比較例1よりも、単電池11を冷却する冷却能力に劣るものの、圧力損失を大幅に低減することができた。実施例2及び3は、比較例1よりも、冷却能力に優れ(若しくは同等)、圧力損失を大幅に低減することができた。実施例1乃至3を比較参照して、第1の突起部21aのサイズを変更することにより、圧力損失を優先したり、冷却能力を増加させるなど、様々な設計変更を簡易に行うことができるということがわかった。すなわち、本実施例によれば、単電池11に対する接触圧を維持しながら、冷却能力を向上させることができる。
【0048】
(変形例1)
上述の実施形態では、第1の突起群21及び第2の突起群22をスペーサ部材2に形成したが、本発明はこれに限られるものではない。第1の突起群21及び第2の突起群22は、単電池11の外面に形成してもよい。この場合、スペーサ部材2は、省略することができる。
【0049】
(変形例2)
上述の実施形態では、リップ部23aを設けることにより、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32への冷媒の流入を許容したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の構成であってもよい。当該他の構成は、隔壁23を延長した延長部に第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32への冷媒の流入を許容する複数の開口部(流入開口部に相当する)を形成し、これらの開口部を介して、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32への冷媒の流入を許容する構成であってもよい。当該他の構成は、リップ部23aを省略した構成であってもよい。この場合、隔壁23及び保護枠下面12aに挟まれた領域に流入開口部が形成され、この流入開口部を介して、第1の冷媒通路31から第2の冷媒通路32に冷媒が流入する。
【0050】
(変形例3)
上述の実施形態では、単電池11の下側から上側に向かって冷媒が流れるように第1の冷媒通路31を形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、単電池11の上側から下側に向かって冷媒が流れるように第1の冷媒通路31を形成してもよい。この場合、第2の冷媒通路32に導通する冷媒は、単電池11の下側から上側に向かって流れる。また、冷媒は、単電池11の側方から(図1におけるY軸方向)電池群1の内部に導入する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電池群 2 スペーサ部材 2a 傾斜延出部 2b 水ガイド部
2c 排出口 3 エンドプレート 4a〜4d 第1〜第4の拘束バンド
6 リベット 11 単電池 11a 正極端子 11b 負極端子
12 保護枠 12a 保護枠下面 21 第1の突起群 21a 第1の突起部22 第2の突起群 22a 第2の突起部 23 隔壁 23a リップ部
100 組電池 211a 第1の孤状部 211b 第1のテーパー形状部
221a 第2の孤状部 221b 第2のテーパー形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池が配列され、該配列方向において隣接する前記単電池の間に冷媒を導通させる第1の冷媒通路が形成された電池群を有する組電池であって、
前記第1の冷媒通路には、複数の第1の突起部が形成されており、
前記第1の突起部は、前記第1の冷媒通路の上流側に向かって凸となる第1の孤状部と、前記第1の孤状部の両端部から前記第1の冷媒通路の下流側に向かって延びて、互いに
接近する一対の第1のテーパー形状部と、
を有することを特徴とする組電池。
【請求項2】
隣接する前記単電池の間には、前記第1の冷媒通路と隣り合う位置に第2の冷媒通路が形成されており、
前記第1の冷媒通路の排出口から排気された冷媒が前記第2の冷媒通路に流入するのを許容する流入開口部を有することを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記第1の冷媒通路及び前記第2の冷媒通路は互いに、冷媒の流れる方向が反対方向であることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
さらに、隣接する前記単電池の間に配置されるスペーサ部材を有し、
前記複数の第1の突起部は、前記スペーサ部材に形成されるとともに、前記単電池の外面に接触していることを特徴とする請求項2又は3に記載の組電池。
【請求項5】
前記スペーサ部材には、前記単電池の外面に接触することにより前記第1の冷媒通路及び前記第2の冷媒通路を仕切る隔壁が形成されており、前記隔壁の先端部には、前記単電池の外面から離間した位置に位置することにより前記流入開口部を形成するリップ部が形成されており、
前記第1の冷媒通路の前記排出口から排気された冷媒を、前記流入開口部を介して、前記第2の冷媒通路に向かわせる第1のガイド部と、
前記第1の冷媒通路から流入した冷媒を前記第2の冷媒通路の下流側に向かわせる第2のガイド部と、
を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の組電池。
【請求項6】
前記第1のガイド部は、前記電池群を前記配列方向において拘束する拘束部材を囲む筒状部材の外壁を兼ねており、
前記第2のガイド部は、前記単電池を押圧して前記単電池の位置ずれを抑制する抑制部材を兼ねていることを特徴とする請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
前記複数の第1の突起部は、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の組電池。
【請求項8】
前記第2の冷媒通路には、複数の第2の突起部が形成されており、
前記第2の突起部は、前記第2の冷媒通路の上流側に向かって凸となる第2の孤状部と、前記第2の孤状部の両端部から前記第2の冷媒通路の下流側に向かって延びるとともに互いに接近する一対の第2のテーパー形状部と、を有することを特徴とする請求項2乃至7のうちいずれか一つに記載の組電池。
【請求項9】
前記複数の第2の突起部は、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項8に記載の組電池。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか一つに記載の組電池と、
前記組電池から供給される電力により車両を走行させるための動力を発生するモータと、を有する車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93224(P2013−93224A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234935(P2011−234935)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】