説明

組電池

【課題】 蓋板2bの上面に引出具用ナット7を固着するという簡単な構成により、機械強度の弱いアルミニウム合金等が用いられた正極端子4に負担を与えることなく、非水電解質二次電池1の交換等を容易に行うことができるようになる組電池を提供する。
【解決手段】 正負極の端子4,5が配置された電池ケース2の蓋板2bを上向きに揃えて複数の非水電解質二次電池1を並べ組電池ケースに収納した組電池において、各非水電解質二次電池1の蓋板2bの上面に引出具用ナット7が溶接により固着された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の非水電解質二次電池を並べて組み合わせた組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組電池は、正負極の端子が配置された蓋板を上向きにして複数の電池を容器状の組電池ケース内に並べて収納することが多い。そして、この組電池ケースの上端の開口部で各電池の端子間の接続配線を行うことになる。
【0003】
上記組電池は、交換等のために一部の電池だけを組電池ケースから引き出す場合がある。ただし、各電池は、組電池ケースにほとんど隙間なく収納されているので、特に重量の重い大型の電池の場合に、組電池の設置場所等でこの電池だけを引き出すことは容易ではない。
【0004】
そこで、従来は、組電池ケースの上端開口部に配置される電池の端子に把っ手や係止具を取り付けることにより、この電池を引き出すようにしていた。例えば、電池の正負極の端子に絶縁性の把持部を有する把っ手を取り付けることにより、この把っ手を手で持って電池を持ち上げるようにする提案が従来からあった(例えば、特許文献1参照)。また、特に大型の電池では、これら正負極の端子がもともとボルト状やナット状であることが多いので、これらのボルト状やナット状の端子に把っ手や係止具を螺着し、この把っ手を手で持ち上げたり係止具をクレーン等で引き上げることにより、組電池ケースから電池を引き上げることができる。
【0005】
ところが、非水電解質二次電池は、正極端子の金属材料に、正極電位で電解液に溶解しないアルミニウムやアルミニウム合金を用いるので、この正極端子の強度が弱くなる。このため、特に重量の重い大型の非水電解質二次電池を用いた組電池では、この非水電解質二次電池の端子に把っ手や係止具を取り付けて引き出すと、アルミニウム合金等からなる正極端子を破損するおそれがあるという問題があった。
【特許文献1】実開平5−50656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非水電解質二次電池の正極端子に機械強度の弱いアルミニウム合金等が用いられるために、この端子に把っ手や係止具を取り付けることができないという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、正負極の端子が配置された端子配置板部を同じ向きに揃えて複数の非水電解質二次電池を並べた組電池において、各非水電解質二次電池の端子配置板部に、引出具取付部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、非水電解質二次電池の端子配置板部に設けられた引出具取付部に引出具を取り付けることができるので、この引出具を手で持ったりクレーン等で引っ張ることにより、この非水電解質二次電池だけを容易に組電池から引き出すことができるようになる。しかも、引出具は、非水電解質二次電池の端子配置板部の引出具取付部に取り付けられるので、機械強度の弱い端子に負担を掛けて破損するようなことがなくなる。
【0009】
なお、上記引出具取付部は、金属製の蓋板の表面に溶接により固着されたナットであることが好ましい。このようにナットを用いると、非水電解質二次電池の容量密度を低下させたり、蓋板の端子の配線接続の邪魔になるようなことがなくなる。即ち、この蓋板に凹状の雌ねじ部や係止部を形成した場合には、非水電解質二次電池の内部に向けて無駄な突起が形成されることになるので、容量密度を低下させることになる。また、蓋板に内側から貫通させてボルトを立設した場合にも、同様に非水電解質二次電池の容量密度を低下させることになる。さらに、蓋板の表面にボルトを立設する場合には、このボルトを支持するための台座が必要となるので、この蓋板の上で大きな領域を占有し、端子の配線接続の邪魔になる。しかも、請求項2の発明によれば、金属製の蓋板の表面にナットを溶接するので、容易に固着することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態は、大型大容量の非水電解質二次電池を複数個組み合わせた組電池について説明する。この組電池は、これらの複数個の非水電解質二次電池を組電池ケースに並べて収納し、各非水電解質二次電池の端子間を直並列に接続したものである。また、この組電池は、深海等の高圧の環境下で使用するものであるため、各非水電解質二次電池には均圧装置を取り付けて、この均圧装置のベローズを伸縮させることにより外部圧力との均衡を図るようにしている。
【0012】
図2に上記非水電解質二次電池1の一例を示す。この非水電解質二次電池1は、上下に長い直方体形状の電池ケース2の内部に発電要素を収納すると共に非水電解液を充填して密閉したものである。電池ケース2は、ステンレス鋼板からなり、方形筒体2aの上下の開口端を正方形状の蓋板2bと底板2cとで塞いだものである。そして、この電池ケース2の蓋板2bからは、正極端子4と負極端子5とがそれぞれ上方に向けて突出している。正極端子4は、下端部が蓋板2bを貫通して電池ケース2の内部で発電要素の正極に接続されると共に非水電解液とも接触するので、正極電位でこの非水電解液に溶解することがないようにアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。そして、この正極端子4に用いられるアルミニウム合金等は機械強度が弱いため、配線接続のための接続部材を螺着する以外には、不要な負荷を加えないようにする必要がある。負極端子5は、下端部が蓋板2bを貫通して電池ケース2の内部で発電要素の負極に接続されると共に非水電解液とも接触するので、負極活物質と合金化するようなことのない銅や銅合金等が用いられていて、このために機械強度はある程度の強さを有する。
【0013】
上記電池ケース2の底板2cの下面には、均圧装置3が取り付けられている。均圧装置3は、薄いステンレス鋼板を円筒形の蛇腹状に形成したベローズ3aの下端を塞いだものであり、このベローズ3aが上下方向に伸縮可能となる。この均圧装置3は、ベローズ3aの上端が電池ケース2の底板2cの下面に封止固着され、この底板2cに形成された開口部を通じて電池ケース2の内部と連通している。従って、非水電解質二次電池1は、外部圧力が高くなると、ベローズ3aが収縮することにより均圧装置3の内部の容積を縮小させて電池ケース2の内部の圧力を上昇させ、外部圧力が低下した場合には、ベローズ3aが伸長することにより均圧装置3の内部の容積を拡大させて電池ケース2の内部の圧力を低下させることができ、これにより外部圧力との均衡を図ることができる。
【0014】
ただし、非水電解質二次電池1に上記のような均圧装置3が設けられていると、例えば過充電等により電池ケース2の内部の圧力が異常に上昇した場合に、ベローズ3aが限界まで伸びるので、この非水電解質二次電池1が持ち上げられて組電池ケースに収まり切らなくなって上方に飛び出すおそれがある。そこで、本実施形態で用いる非水電解質二次電池1は、電池ケース2の底板2cの下面に、均圧装置3を囲むようにベローズ脚6を取り付けている。このベローズ脚6は、均圧装置3のベローズ3aが所定長さ以上に伸長するのを制止するために、このベローズ3aの下方に底面を配置したステンレス鋼板からなる枠体である。
【0015】
上記非水電解質二次電池1の電池ケース2の蓋板2bには、上面の四隅に引出具用ナット7が溶接により固着されている。これらの引出具用ナット7は、それぞれ通常の六角ナットからなり、一方の端面を蓋板2bの上面に載置して溶着されているので、他方の端面からねじ穴が上方に向けて開口するようになっている。なお、ここでは引出具用ナット7に六角ナットを用いる場合を示したが、ねじ穴が形成されたものであれば形状は限定されず、例えば単なる方形の金属ブロックにねじ穴を貫通させたものであってもよい。また、ねじ穴は必ずしも貫通している必要はなく、上方に開口する袋ナット状であってもよい。
【0016】
上記構成の非水電解質二次電池1は、蓋板2bを上向きにして複数個が縦横に並べられて図示しない組電池ケースに上方の開口部から挿入される。組電池ケースは、樹脂や金属製等の筐体や枠体等からなり、収納された各非水電解質二次電池1間を絶縁材や絶縁性の隔壁等によって絶縁するようになっている。また、組電池ケースが金属製の場合には、この組電池ケースと各非水電解質二次電池1との間も絶縁材等により絶縁される。これら複数個の非水電解質二次電池1は、組電池ケースの上端の開口部で端子4,5間の配線接続が行われる。
【0017】
上記組電池に例えば1個の非水電解質二次電池1を交換する必要が生じた場合には、まずこの非水電解質二次電池1の配線接続を外して引き上げ可能にする。ただし、この非水電解質二次電池1は、大型大容量のものであるため重量が極めて重く、電池ケース2を手で持って持ち上げようとしても無理であり、端子4,5に治具等を取り付けて引き上げようとすると、上述のように機械強度の弱い正極端子4が破損するおそれがある。そこで、図1に示すように、この非水電解質二次電池1の電池ケース2の蓋板2bに固着した引出具用ナット7に、引出具8を取り付ける。引出具8は、ステンレス鋼材からなり、丸棒材を「コ」の字形に折り曲げた把っ手部8aと、この把っ手部8aの両端部に固着された取付板8bとからなり、引出具用ボルト9をこれらの取付板8bの貫通孔に通して引出具用ナット7に螺着することにより取り付けられる。従って、この非水電解質二次電池1は、蓋板2bの四隅に固着された4個の引出具用ナット7に2個の引出具8が取り付けられることになり、これら2個の引出具8の把っ手部8aを両手で持って引き上げることにより組電池ケースから引き出すことができる。なお、この組電池ケースに、先に引き出したものとは別の非水電解質二次電池1を収納する場合には、最初に複数個の非水電解質二次電池1を収納する場合と同様に、例えば電池ケース2の方形筒体2aを手やクレーン等で挟持して持ち上げ挿入してもよいが、この非水電解質二次電池1の引出具用ナット7にも引出具8を取り付けて手で持ち上げて挿入することもできる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態の組電池によれば、各非水電解質二次電池1の引出具用ナット7に引出具8が取り付け可能となるので、この引出具8を手で持って引き上げることにより、非水電解質二次電池1を組電池ケースから容易に引き出すことができるようになる。また、引出具8を取り付ける引出具用ナット7は、ステンレス鋼板製の電池ケース2の蓋板2bに固着されるので、機械強度の弱いアルミニウム合金等からなる正極端子4を破損するおそれもなくなる。さらに、引出具用ナット7は、端子4,5とは絶縁されているので、引出具8を導電性のステンレス鋼材で容易に作成することができる。
【0019】
また、引出具用ナット7は、端子4,5が突出する蓋板2bの上面に固着されるので、非水電解質二次電池1の外形をはみ出してサイズが大きくなるようなことがなく、発電要素が収納される電池ケース2の内部側に突出することもないので、この非水電解質二次電池1の容量密度を低下させるようなおそれも生じない。しかも、引出具用ナット7は、ねじ穴が形成されただけの単純な部品であり、引出具8を取り付け支持するだけの機械強度があればよいので、低抵抗で大電流容量の接続を行う端子4,5に比べれば背の低い小さな部品で構成することができ、これらの端子4,5と同じ蓋板2bの上面に固着されていても配線接続の邪魔になるようなおそれが生じない。さらに、この引出具用ナット7は、蓋板2bの上面に溶接されるので、非水電解質二次電池1を組み立てる前の蓋板2bの部品の状態で固着することができ、この作業も容易なものとなる。
【0020】
なお、上記実施形態では、非水電解質二次電池1の電池ケース2が方形筒体2aと蓋板2bと底板2cとで構成されている場合を示したが、この電池ケース2の構成は任意であり、例えば容器状の筐体と蓋板とからなる電池ケース2であってもよく、電池形状も角形に限定されない。また、引出具用ナット7は、端子4,5が配置された電池ケース2上の端子配置板部に固着されるので、必ずしも蓋板2bに固着されるとは限らない。例えば、容器状の筐体の底板部に端子4,5が配置されている場合には、この底板部に引出具用ナット7が固着される。
【0021】
また、上記実施形態では、引出具8が把っ手部8aの「コ」の字形状を有し、両端部の取付板8bをそれぞれ引出具用ボルト9で引出具用ナット7に取り付ける場合を示したが、この引出具8の構成や引出具用ナット7への取り付け構造も任意である。例えば、引出具8は、把っ手部8aに代えて、クレーン等で引っ掛けるためのフック部を有するものであってもよく、端部等を1箇所だけ引出具用ナット7に取り付けたり、3箇所以上の端部等をそれぞれ引出具用ナット7に取り付けるようになっていてもよい。引出具8の端部を1箇所だけ引出具用ナット7に取り付ける場合、他方の端部は「?」記号形状のようなフック部を形成したり、「T」字形状の把持部を形成することができる。
【0022】
また、上記実施形態では、引出具用ナット7が端子配置板部(蓋板2b)の上面の四隅に固着される場合を示したが、これらの引出具用ナット7の配置位置や個数も、引出具8の構成や取り付け構造に応じて適宜変更することができる。例えば、端子配置板部の中央に引出具用ナット7を1個だけ固着して、ここにフック状の引出具8の下端のボルト部を螺着するようにしてもよく、端子配置板部の対角線上の両端部に引出具用ナット7を1個ずつ固着して、ここに上記実施形態で示したような「コ」の字形状の把っ手部8aを有する引出具8を取り付けるようにしてもよい。
【0023】
また上記実施形態では、引出具用ナット7を固着する端子配置板部(蓋板2b)が電池ケース2の上面にある場合を示したが、この端子配置板部は、電池ケース2の側面や底面等の任意の位置にあってよい。例えば横向きに開口する組電池ケースに非水電解質二次電池1を横置きにして収納する場合、端子4,5が配置される端子配置板部も横向きとなる。さらに、上記実施形態では、正負極の端子4,5がボルト状に1本ずつ突出する場合を示したが、これらの端子4,5の本数や構成も任意である。従って、例えばナット状の端子4,5やテーパ軸状の端子4,5を有する非水電解質二次電池1にも、本発明は同様に実施可能である。
【0024】
また、上記実施形態では、電池ケース2の端子配置板部(蓋板2b)に引出具用ナット7を固着する場合を示したが、引出具8を取り付け可能な引出具取付部であれば、他の構成のものを用いることもできる。例えば、上記実施形態の端子4,5と同様に、ボルト状に突出したものや、引出具8を係止して取り付けるようなものであってもよい。例えば、引出具8の端部を引出具取付部に挿入することにより、返り部分が弾性体を押し退けて挿入されて係止されるようにしたり、上記実施形態のような「コ」の字形状の引出具8の場合には、2箇所の引出具取付部の間にこの引出具8の両端部を両側から圧迫した状態で嵌め込むことにより、把っ手部8aの弾性によって係止されるように取り付けることもできる。
【0025】
また、上記実施形態では、均圧装置3を備えた大型の非水電解質二次電池1を用いた場合を示したが、均圧装置3を備えていない非水電解質二次電池1にも同様に実施可能であり、電池の大きさも限定されない。さらに、上記実施形態では、複数個の非水電解質二次電池1を組電池ケースに収納した組電池について説明したが、複数個の非水電解質二次電池1を並べて組み合わせた組電池であれば、組電池ケースの有無は問わない。例えば、複数個の非水電解質二次電池1をベルト等で縛って固定しただけのものでもよく、組電池の設置部自体が組電池ケースの機能を有し、ここにそれぞれ複数個の非水電解質二次電池1を収納することにより組電池が構成されるようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
蓋板の上面等に引出具用ナット等を取り付けるという簡単な構成により、機械強度の弱いアルミニウム合金等が用いられた正極端子に負担を与えることなく、非水電解質二次電池の交換等を容易に行うことができるようになるという顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、非水電解質二次電池の電池ケースの蓋板に固着した引出具用ナットとこれらの引出具用ナットに取り付ける引出具を示す部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、非水電解質二次電池の上下方向の中央部を省略した全体斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 非水電解質二次電池
2 電池ケース
2b 蓋板
4 正極端子
5 負極端子
7 引出具用ナット
8 引出具
8a 把っ手部
8b 取付板
9 引出具用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負極の端子が配置された端子配置板部を同じ向きに揃えて複数の非水電解質二次電池を並べた組電池において、各非水電解質二次電池の端子配置板部に、引出具取付部が設けられたことを特徴とする組電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−18751(P2007−18751A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196214(P2005−196214)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】