組電池
【課題】振動を効果的に抑制することができて信頼性に優れるとともに、各電池に均一な構成圧を効果的にかけることができてハイレート特性に優れる組電池を提供すること。
【解決手段】組電池20において、積層された複数の電池21と、該電池21を両側から挟む加圧板34(外装部材)と、両加圧板34の間に架設され、複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続しながら支持する第1および第2横架部材32A、32Bとを備え、第1および第2横架部材32A、32Bが、両加圧板34に免震構造(弾性部材335の介在、第1および第2横架部材32A、32Bの加圧板34への貫通)をなして支持されている構成とする。
【解決手段】組電池20において、積層された複数の電池21と、該電池21を両側から挟む加圧板34(外装部材)と、両加圧板34の間に架設され、複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続しながら支持する第1および第2横架部材32A、32Bとを備え、第1および第2横架部材32A、32Bが、両加圧板34に免震構造(弾性部材335の介在、第1および第2横架部材32A、32Bの加圧板34への貫通)をなして支持されている構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池よりなる組電池に関し、特に電池に発生する熱を効率よく外部に放熱することができてハイレート特性に優れる大容量の組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばロボット、電動車両や、小型動力のモバイル機器等の電源は、限られた空間に密閉されるものであるため、小型軽量で低コストであること等が要望される。このような要望を満足するものとして、近年、高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池が注目されている。このリチウムイオン電池は、高出力とするため、例えば5、6セル程度ないし10数セル程度の多数の電池を直列または並列に接続して組電池として使用される。
【0003】
上記のような用途に使用される組電池においては、多数のセルを容易かつ確実に接続、支持する構造とすることが要望され、このため従来、例えば以下のような各種の構造が提案されている。
【0004】
特許文献1には、正極端子および負極端子を連結部材により連結することで、隣接する単電池を強固に連結し、大電流を流せるようにした組電池が開示されている。
【0005】
特許文献2には、電極端子に一体型端子を弾性的に押圧して接続することにより、簡単かつ容易に電極端子を接続し得るようにしたパック電池が開示されている。
【0006】
特許文献3には、電極端子を絶縁板によって挟持することによって、振動の入力に対して影響を受け難く、コンパクト化を図るようにした組電池が開示されている。
【0007】
特許文献4には、複数のセルの両端部に位置するエンドプレートにバスバーをインサート成形により一体的に組み込むようにすることで、電池モジュールの支持強度、剛性を向上させるとともに、電池モジュールをケースに誤挿入なしに容易に組み込むことができるようにした構造が開示されている。
【0008】
特許文献5には、複数のセルと連結具との間にスペーサを介在させることにより、セルと連結具との絶縁を容易に確保するとともにセルの間隔を維持し得るようにした二次電池モジュールが開示されている。
【0009】
特許文献6には、各セルの端子片を平行に配置し、該端子片を連結する接続用リード板を、端子片の突出方向と直交する方向に一直線状に配置することにより、コンパクトであって接続用リード板の取り回しが容易でショート等の惧れもない組電池が開示されている。
【0010】
特許文献7には、複数のセルを接続する樹脂製のプレートに金属ブスバを一体成形することにより、セル数の変化に対応でき、安全かつ効率的に組み立てることが可能な組電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−71173号公報
【特許文献2】特開2008−300083号公報
【特許文献3】特開2006−210312号公報
【特許文献4】特開平10−270006号公報
【特許文献5】特開2005−322647号公報
【特許文献6】特開2002−117828号公報
【特許文献7】特開2004−152706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば、積層電極体をラミネートフィルムよりなる外装体に収容した構成を有する電池(以下、「ラミネート積層型電池」と称す)を単電池(セル)として構成された組電池の場合、セルの外装体が金属製である角型電池に比べ、軟らかい構造をしているため加圧や振動によって変形しやすく、電池の位置にずれが生じやすい。そのため正極端子ないし負極端子に応力がかかり、端子間の接続にゆるみが生じたり、端子が破損して接続が外れたりするという問題があった。
【0013】
特許文献3には、前述の通り、振動による影響を受け難くした組電池が開示されているが、この組電池では、電極端子を絶縁板によって挟持することによって振動を抑制するようにしているため、振動の抑制効果には限界があり、特に、絶縁板自体の振動は処理し得ないものと考えられる。
【0014】
また、上記ラミネート積層型電池を単電池(セル)とする組電池の場合、ハイレート特性を得るためには各電池に均一な圧力(構成圧)をかける必要があり、組電池全体を均一に締め付けることで構成圧を得る構造とすることが必要であるが、上記特許文献1ないし特許文献7ではこのような構造については特に記載されていない。
【0015】
したがって、本発明は、振動を効果的に抑制することができて信頼性に優れるとともに、各電池に均一な圧力(構成圧)を効果的にかけることができてハイレート特性に優れる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する為に、本発明に係る組電池は、
積層された複数の電池と、
前記複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材と、
前記両側の外装部材の間に架設され、前記複数の電池の電極端子を直列または並列に接続しながら支持する横架部材と、
を備え、
前記横架部材が、前記両側の外装部材に免震構造をなして支持されていることを特徴とする。
【0017】
本発明において、「複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材」とは、複数の電池の積層方向における両側に配置される部材であれば任意のものを含意するが、例えば、複数の電池を積層方向における両側から挟むように加圧するために配置される加圧板等がこれに該当する。
【0018】
上記構成によれば、複数の電池が横架部材を介して両側の外装部材に支持されるため、各電池が容易かつ確実に位置決めされ、これ以降も振動や自重によって位置ずれ、回転ずれ、脱落等を生じることなく所定位置に確実に支持される。このとき、横架部材が外装部材に免震構造をなして支持されているので、振動がこの免震構造により吸収され、したがって、電極端子に応力が集中することによる端子間の接続のゆるみや端子の破損等が効果的に防止される。
【0019】
また、上記のように横架部材が外装部材に免震構造をなして支持されていることにより、外装部材が横架部材に対して弛みなく堅固に固定されるのではなく遊動可能となっており、したがって外装部材を両側から挟むようにして十分に加圧することができる。
【0020】
前記横架部材に、周囲から電気的に絶縁された導通部が設けられ、該導通部で前記複数の電池の電極端子が直列に接続されていることが望ましい。
【0021】
複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、複数の電池の正極端子および負極端子をそれぞれまとめて接続するようにすればよいので、作業にそれほど手間を要することもないが、複数の電池を直列に接続する場合には、複数の電池の正極端子と負極端子とを交互に(一対ずつ)金具等で接続していく必要があるため、特に電池の積層数が多くなるほど、部品点数も増大し、作業も煩瑣となる。そこで、上記のように周囲から電気的に絶縁された導通部を横架部材に設けておき、該導通部で複数の電池の電極端子を直列に接続する構成とすれば、金具を一つずつ用意して個々に接続する必要もなく、したがって接続作業を手間なく簡便に行うことができる。
【0022】
前記免震構造が、前記横架部材と前記両側の外装部材との間に弾性部材を介在させることにより構成されていることが望ましい。
【0023】
本発明において、「弾性部材」は、弾性を有するものであれば任意の部材を含意し、例えばコイルバネ、板バネ等のバネやゴム等よりなる部材がいずれも含まれる。
【0024】
上記構成によれば、弾性部材の弾性により振動を効果的に吸収することができるとともに、加圧による圧力も効果的に吸収されて外装部材が十分に遊動することができる。また、このように振動や圧力を吸収しながら、弾性部材の本来有する形状によって横架部材を外装部材に対して所定位置に確実にかつ納まりよく保持することが可能な構成とすることができる。
【0025】
前記免震構造が、前記両側の外装部材に前記横架部材を貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されていることが望ましい。
【0026】
上記構成によれば、外装部材に横架部材を貫通させて貫通方向に摺動させることにより振動を効果的に逃がすことができる。このとき、外装部材に横架部材を貫通させていることで、横架部材が外装部材に脱落しないように確実に支持され、またこの貫通構造を利用して電池を外部へ接続することも可能となっている。
【0027】
前記横架部材の少なくとも一部に、熱伝導性を有する伝熱部が形成されていることが望ましい。
【0028】
ハイレート放電時には各電池が発熱するが、密閉空間などでは空気中に放熱が出来ないので温度が上昇し、運転上限温度に達すると電池が放電できなくなる。ロボット、電動車両や、小型動力のモバイル機器の電源は、限られた空間に密閉されており、このためファンなどの強制空冷機構の設置は困難であり、外部へ固体の熱伝導で放熱する必要がある。
【0029】
そこで、上記のように横架部材に伝熱部を形成するようにすれば、電池で発生した熱を電極端子から伝熱部を経て放熱することができて電池の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
前記伝熱部が、前記横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続されていることが望ましい。
【0031】
上記構成によれば、伝熱部に伝達された熱を放熱部材から外部へ放熱することができ、これによりさらに効果的に電池の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
前記両側の外装部材が前記電池に対して断熱性を有することが望ましい。
【0033】
両側の外装部材が熱伝導性を有するものであると、最も両側に配置される単電池から外装部材に直接的に熱が伝達され、これによりこの両端部が過度に冷却されることとなる。これに対し、上記のように外装部材が電池に対して断熱性を有するようにすると、両端部においても中央部と同様に電極端子等を伝熱経路として熱伝達がなされるようになって過度な冷却が抑制されることとなり、これにより組電池全体における温度分布のバランスを良好とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の構成によれば、振動を免震構造に吸収させることにより、電極端子間の接続のゆるみや電極端子の破損等が効果的に防止される。また、免震構造により外装部材が横架部材に対して遊動可能となっていることによって、外装部材を両側から挟むようにして各電池に均一な圧力(構成圧)を十分にかけることができる。したがって、電極端子の接続部の信頼性が高く、かつハイレート特性に優れる組電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の組電池を構成する単電池(セル)の一部を示す図であって、同図(a)は正極の平面図、同図(b)はセパレータの斜視図、同図(c)は正極が内部に配置された袋状セパレータを示す平面図である。
【図2】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる負極板の平面図である。
【図3】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる積層電極体の分解斜視図である。
【図4】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる積層電極体の平面図である。
【図5】正負極タブと正負極集電端子とを溶着した状態を示す平面図である。
【図6】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる外装体に図5の積層電極体を挿入した状態の斜視図である。
【図7】本発明の組電池を構成する単電池(セル)およびセパレータの斜視図である。
【図8】本発明の組電池に使用される第1横架部材の分解斜視図である。
【図9】本発明の組電池に使用される第1横架部材の斜視図である。
【図10】本発明の組電池に使用される第2横架部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の組電池に使用される第2横架部材の斜視図である。
【図12】本発明の組電池の分解斜視図である。
【図13】本発明の組電池の斜視図である。
【図14】本発明の組電池の正面図である。
【図15】本発明の組電池の背面図である。
【図16】本発明の組電池の左前側から視た斜視図である。
【図17】本発明の組電池の左上側から視た斜視図である。
【図18】本発明の組電池に使用される第3横架部材の下面図である。
【図19】本発明の組電池に使用される第3横架部材の正面図である。
【図20】本発明の組電池に使用される第4横架部材の下面図である。
【図21】本発明の組電池に使用される第4横架部材の正面図である。
【図22】第3横架部材の導通部の下面図である。
【図23】本発明の他の実施形態に係る組電池の模式上面図である。
【図24】組電池の外部に放熱部材を設けた例を示す模式上面図である。
【図25】組電池の外部に放熱部材を設けた例を示す模式上面図である。
【図26】第5横架部材の模式下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図面を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明は以下の最良の形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0037】
[第1実施形態]
〔正極の作製〕
正極活物質としてのLiCoO2を90質量%と、導電剤としてのカーボンブラックを5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5質量%と、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混合して正極用スラリーを調製した後、この正極用スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み:15μm)の両面に塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.1mmにまで圧縮した後、図1(a)に示すように、所定の幅および高さを有する矩形状となるように切断して、両面に正極活物質層1aを有する正極板1を作製した。この際、正極板1における一辺の一方端部から、所定の幅および高さを有する矩形状の活物質未塗布部を延出させて正極タブ11とした。
【0038】
〔正極板が内部に配置された袋状セパレータの作製〕
図1(b)に示すように、2枚の方形状のポリプロピレン(PP)製のセパレータ3a(厚み30μm)の間に正極板1を配置した後、図1(c)に示すように、セパレータ3aの周辺部を融着部4で熱溶着して、正極板1が内部に収納・配置された袋状セパレータ3を作製した。
【0039】
〔負極の作製〕
負極活物質としての黒鉛粉末を95質量%と、結着剤としてのポリフッ化ピニリデンを5質量%と、溶剤としてのNMP溶液とを混合して負極用スラリーを調製した後、この負極用スラリーを負極集電体としての銅箔(厚み:10μm)の両面に塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.08mmにまで圧縮した後、図2に示すように、所定の幅および高さを有する矩形状となるように切断して、両面に負極活物質層2aを有する負極板2を作製した。この際、負極板2の一辺において上記正極板1の正極タブ11形成側端部と反対側となる端部から、所定の幅および高さを有する矩形状の活物質未塗布部を延出させて負極タブ12とした。
【0040】
〔積層電極体の作製〕
上記正極板1が内部に配置された袋状セパレータ3を50枚、負極板2を51枚調製し、図3に示すように、該袋状セパレータ3と負極板2とを交互に積層した。その際、両端面部に負極板2が位置するようにした。ついで、図4に示すように、この積層体の両端面を形状保持のための絶縁テープ19で接続して、積層電極体10を得た。
【0041】
〔集電端子の溶接〕
図5に示すように、積層された正極タブ11および負極タブ12のそれぞれの延出端部に、幅15mm、厚み1mmのアルミニウム板よりなる正極集電端子15ならびに幅15mm、厚み1mmの銅板よりなる負極集電端子16を、それぞれ超音波溶接法により接合した。
【0042】
〔外装体への封入〕
図6に示すように、あらかじめ電極体が設置できるように成形した2枚のラミネートフィルム17で構成した外装体18に、上記積層電極体10を挿入し、正極集電端子15および負極集電端子16のみが外装体18より外部に突出するよう正極集電端子15および負極集電端子16がある辺を熱融着するとともに、残りの3辺の内、2辺を熱融着した。
【0043】
〔電解液の封入、密封化〕
上記外装体25の熱溶着していない1辺から、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とが体積比で30:70の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6が1M(モル/リットル)の割合で溶解された電解液を注入し、最後に熱溶着していない1辺を熱溶着することにより、図7に示す電池21を作製した。この電池21の幅L1は100mm、高さL2は110mm(正極タブ11および負極タブ12の延出高さを含めると136mm)、厚みT1は15mmである。電池21の上辺における幅方向両端より10mmだけ内側寄りの位置から、正極集電端子15および負極集電端子16がそれぞれ上方へ突出しており、該正極集電端子15および負極集電端子16の突出高さはラミネートフィルム17の上端から10mmであり、また該正極集電端子15および負極集電端子16の先端部は、それぞれ接続される側へ向けて側面視L字形状となるように折曲し、該折曲片にはボルト挿通孔を穿設した。また、電池21の周縁部には、ラミネートフィルム17の封止部が延出して耳部21Sが形成され、この耳部21Sより内側(中央側)が、内部に積層電極体10が封入されて該耳部21Sより厚さ方向に両側へ膨出する形状となっている。
【0044】
〔スペーサの作製〕
図7に示すように、幅L3=102mm、高さL4=122mm、厚さ0.5mmの金属板(アルミニウム板)22Tを調製し、この金属板22Tの一方面に、断面コ字形状を有し金属(アルミニウム)よりなる長さ101mmのコ字形部材24の中央片を、該金属板22Tの下端縁に揃えるようにして中央に位置するように(即ち金属板22Tの両端との間に0.5mmずつ間隔をおいて)配置し、溶接により接合した。このコ字形部材24における中央片からの両側片の延出幅は、上記電池21の厚さT1の1/2即ち7.5mmよりもやや小となっている。この金属板22Tを2枚用意し、コ字形部材24が互いに背中合わせになるようにして、両金属板22Tの間に、厚さ0.5mmのポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなる断熱シートを挟むように固定して、スペーサ22とした。
【0045】
〔横架部材の作製〕
図8の分解斜視図に示すように、やや厚さを有して短冊形に長く延びる平板状体の両端よりやや内側寄りの位置の間にある中央部が一方面側(図における下面側)へ膨出するようにさらに厚肉となった外形(換言すれば、断面矩形状で長く延びる角棒状体の両端部が同方向から即ち図における下方から切欠かれて薄肉となった外形)となるように、即ち、概略横長に延びる直方体状の本体部321の両端面の上部から平板状の嵌合突起片322がそれぞれ長さ方向に沿って両側へ突出した形状となるように窒化アルミニウムを成形し、該本体部321の両端近傍の位置および中央より両側寄りの位置の計4箇所に、該本体部321の膨出側端面から内側へ断面矩形状に陥入しかつ該本体部321を幅方向に貫通する切欠323をそれぞれ形成し、さらに、各切欠323の内奥面における両端近傍に、本体部321の幅方向に沿って並置するように貫通孔324をそれぞれ穿設した。各切欠323には、該切欠323に対応する寸法を有し上記貫通孔324に対応する位置にボルト挿通孔がそれぞれ穿設された長方形状の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部325とし、また、本体部321の膨出部の両端面(即ち本体部321と両嵌合突起片322との間に形成された入隅部)に、この両端面に対応する寸法を有する長方形状に成形されたゴム板をそれぞれ嵌合固定して免震部326として、図9の斜視図にも示す第1横架部材32Aを得た。なお、上記導通部325のボルト挿通孔は、図では明確に表れていないが、第1横架部材32Aにおける本体部321の長さ方向にわずかに長く延びる長孔となっている。
【0046】
また、図10に示すように、上記第1横架部材32Aの本体部321と同様の外形・寸法を有し両端部に嵌合突起片328がそれぞれ形成された本体部327の中央の位置および中央より両側寄りの位置の計3箇所に、上記第1横架部材32Aの切欠323と同様の形状・寸法を有する切欠329をそれぞれ形成し、さらに、両側の切欠329よりさらに両端寄りの位置に、該切欠329よりやや幅狭の切欠330をそれぞれ形成し、以上計5箇所の切欠329、330のそれぞれに、上記第1横架部材32Aの貫通孔324と同様にして貫通孔331を2ずつ穿設した。上記5箇所の切欠329、330のうちの中央部3箇所の切欠329には上記第1横架部材32Aの金属プレートと同様の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部332とするとともに、両側2箇所の切欠330には、該切欠330に対応する寸法を有し上記貫通孔331に対応する位置に(長孔である)ボルト挿通孔がそれぞれ穿設された長方形状の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部333とし、さらに、この両端部の導通部333の表面(図における下面)には、矩形板状の金属板の端部を溶接により接合して、両導通部333から両側へそれぞれ延出する外部接続端子片334とした。また、本体部327の膨出部の両端面に、上記第1横架部材32Aのゴム板と同様のゴム板をそれぞれ嵌合固定して免震部335として、図11の斜視図にも示す第2横架部材32Bを得た。
【0047】
〔加圧板の作製〕
図12に示すように、上記電池21における耳部21Sより厚さ方向に一方側へ膨出する膨出部をほぼ収容し得る凹部341を一方面側に有し、該凹部341から上方にやや長く延出して該延出部の右上部および左上部に横長の長方形状の嵌合開口342がそれぞれ穿設され、一方(図における右方)の嵌合開口342と上記凹部341との間に横方向に延びる端子挿通スリット343が穿設された構成を有する概略縦長の長方形の板状となるようにポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を成形して、加圧板34とした。上記嵌合開口342は、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの嵌合突起片322、328にそれぞれ対応する寸法を有し、上記端子挿通スリット343は、上記第2横架部材32Bの外部接続端子片334に対応する寸法を有している。この加圧板34は、これと左右対称の構成を有するものを別に1枚作製して、あわせて一対とした。
【0048】
〔組電池の組立〕
単電池(セル)として上記電池21を8個用意し、図7に示すように各電池21の間にスペーサ22を挟むようにして、これら電池21を厚さ方向に積層した。このとき、各電池21は、隣接するスペーサ22のコ字形部材24における上側片の間に下端部の耳部21Sを挿通しながら、膨出部の下端面をコ字形部材24における上側片の上面に密着させるようにした。
【0049】
ついで、図12に示すように、上記積層した各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を、直列接続となるように、一方側に隣接する電池21の負極集電端子16および他方側に隣接する電池21の正極集電端子15にそれぞれ重ねた状態で、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの導通部325、332にそれぞれボルト(図示省略)により仮止めした。第2横架部材32Bの一方端部(図における左端部)の導通部333Lには、対応する一方端部(図における左端部)の電池21の正極集電端子15を、他方端部(図における右端部)の導通部333Rには、対応する他方端部(図における右端部)の電池21の負極集電端子16を、それぞれ単独で仮止めした。なお、図12は分解斜視図であるため、各導通部325、332、333L、333Rが第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bから取り外した状態で各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が取り付けられているが、実際には、各導通部325、332、333L、333Rが前述の通り第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに固定された状態で各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が取り付けられるようになっている。またこのとき、ボルトは、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの貫通孔324、331内にそれぞれ頭部ごと挿入され、導通部325、332、333L、333R、正極集電端子15および負極集電端子16のボルト挿通孔に直接的に挿通されて、下方からナットにより締結されるようになっている。
【0050】
ついで、図12に示すように、上記積層した電池21の両側に、加圧板34をそれぞれ配置し、各加圧板34の凹部341に両端の電池21の膨出部をそれぞれ収容するとともに、各加圧板34の嵌合開口342に上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの嵌合突起片322、328を、端子挿通スリット343に上記第2横架部材32Bの外部接続端子片334をそれぞれ挿通して外側へ突出させた。この状態で、両加圧板34を両側から締め付けるように加圧した。
【0051】
ついで、加圧した状態で、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を仮止めしているボルトを本締めして締結固定し、図12ないし図17に示す組電池20を得た。
【0052】
[第1実施形態における組電池の効果]
上記組電池20は、積層された複数すなわち8個の電池21と、上記複数の電池21を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材である加圧板34と、上記両側の加圧板34の間に架設され、複数の電池21の電極端子すなわち正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続しながら支持する第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bと、を備え、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが、両側の加圧板34に免震構造をなして支持されている構成となっているので、複数の電池21が第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを介して両側の加圧板34に支持されるため、各電池が容易かつ確実に位置決めされ、これ以降も振動や自重によって位置ずれ、回転ずれ、ねじれ、脱落等を生じることなく所定位置に確実に支持される。このとき、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に免震構造をなして支持されているので、振動がこの免震構造により吸収され、したがって、電極端子に応力が集中することによる端子間の接続のゆるみや端子の破損等が効果的に防止されるようになっている。
【0053】
また、上記のように第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に免震構造をなして支持されていることにより、加圧板34が第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに対して弛みなく堅固に固定されるのではなく遊動可能となっており、したがって加圧板34を両側から挟むようにして十分に加圧することができる。
【0054】
また、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに、周囲から電気的に絶縁された導通部325、332、333が設けられ、該導通部325、332、333で複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が直列に接続されているので、組電池の組立作業を容易かつ簡便に行うことができる。
複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、複数の電池の正極端子および負極端子をそれぞれまとめて接続するようにすればよいので、作業にそれほど手間を要することもないが、複数の電池を直列に接続する場合には、複数の電池の正極端子と負極端子とを交互に(一対ずつ)金具等で接続していく必要があるため、特に電池の積層数が多くなるほど、部品点数も増大し、作業も煩瑣となる。そこで、上記組電池20のように周囲から電気的に絶縁された導通部325、332、333を第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに設けておき、該導通部325、332、333で複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続する構成となっていれば、金具を一つずつ用意して個々に接続する必要もなく、したがって接続作業を手間なく簡便に行うことができる。
【0055】
また、上記免震構造が、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bと両側の加圧板34との間に、弾性部材であるゴム板よりなる免震部326、335を介在させることにより構成されているので、ゴム板の弾性により振動が効果的に吸収されるとともに、加圧による圧力も効果的に吸収されて加圧板34が十分に遊動し得るようになっている。また、このように弾性により振動や圧力が吸収されながら、ゴム板の本来有する形状によって第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に対して所定位置に確実にかつ納まりよく保持されている。
【0056】
また、上記免震構造が、両側の加圧板34の嵌合開口342に第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されているので、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが貫通方向に摺動することにより振動が効果的に逃げることができるようになっている。このとき、加圧板34に第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを貫通させていることで、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に脱落しないように確実に支持されている。
【0057】
また、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが、熱伝導性を有する窒化アルミニウムよりなる本体部321、327および嵌合突起片322、328と、金属よりなる導通部325、332、333とを有して構成され、したがって(免震部326、335を除く)ほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっているので、電池21で発生した熱を、正極集電端子15および負極集電端子16から、伝熱部である導通部325、332、333、本体部321、327および嵌合突起片322、328を経て放熱することができ、これにより、ファンなどの強制空冷機構の設置が困難な限られた空間に密閉されて設置された場合であっても、ハイレート放電時の発熱を外部への熱伝導により放熱することができて電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0058】
また、両側の加圧板34が、樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなり、したがって電池21に対して断熱性を有するものとなっている。例えば仮に、両側の加圧板が熱伝導性を有するものであると、最も両側に配置される単電池から加圧板に直接的に熱が伝達され、これによりこの両端部が過度に冷却されることとなる。これに対し、上記組電池20においては上述の通り加圧板34が電池21に対して断熱性を有するものとなっているので、両端部においても中央部と同様に正極集電端子15および負極集電端子16から、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの導通部325、332、333、本体部321、327および嵌合突起片322、328を経て熱伝達がなされて過度な冷却が抑制されるようになっており、これにより組電池20全体における温度分布のバランスが良好となっている。
【0059】
[第2実施形態]
〔横架部材の作製〕
図18および図19に示すように、やや厚さを有して短冊形に長く延びる平板状の本体部351の両端中央部から、該本体部351よりも幅狭の嵌合突起部352がそれぞれ延出した形状となるように窒化アルミニウムを成形し、このとき、本体部351の一方面に、長さ方向に沿って等間隔をおいて並置するように4個の金属よりなる導通部353をインサート成形により配設した。各導通部353は、本体部351の長さ方向に沿ってやや長い長方形状であって該本体部351の厚さのおよそ1/2程度の厚さを有するプレート状となっており、表面が本体部351の一方面と面一となるように該本体部351に埋設した。各導通部353の中央には、図22に示すように、該導通部353の長さ方向に沿ってやや長く延びる長孔状のボルト挿通孔353P(1個)を穿設し、本体部351にも、該ボルト挿通孔353Pと連通するようにして、該ボルト挿通孔353Pと同形・同寸法の長孔状のボルト挿通孔をそれぞれ穿設した。図18および図19に示すように、上記両嵌合突起部352の基端部(本体部351に連続する側の端部)には、Oリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材354をそれぞれ嵌着して、第3横架部材35Aとした。
【0060】
また、図20および図21に示すように、上記第3横架部材35Aの本体部351と同様の外形・寸法を有し両端部に嵌合突起部356がそれぞれ形成された本体部355の一方面における中央およびその両側の3箇所に、上記第3横架部材35Aの導通部353と同一構成を有する導通部357を上記と同様の方法によりそれぞれ配設し、さらに、これら3箇所の導通部357の両側に、該導通部357と同幅であって嵌合突起部356の延出端まで長く延びるプレート状の金属よりなる外部接続端子部358を上記と同様の方法によりそれぞれ配設した。上記本体部355、導通部357および外部接続端子部358には、上記第3横架部材35Aの場合と同様にしてボルト挿通孔をそれぞれ穿設し、また両嵌合突起部356の基端部には、上記第3横架部材35Aの場合と同様にOリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材359をそれぞれ嵌着して、第4横架部材35Bとした。
【0061】
〔加圧板の作製および組電池の組立〕
図23の模式上面図に示すように、嵌合開口を上記第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起部352、356にそれぞれ対応する寸法を有するものとし(図示せず)、端子挿通スリットを穿設しないようにした(図示せず)点以外は、第1実施形態における組電池20の加圧板34と同様にして加圧板36を一対作製し、この加圧板36と上記第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bとを用いて、第1実施形態における組電池20の場合と同様にして組電池40を組み立てた。なお、図19および図21では、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16のみを図示してこれらが第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの導通部353、357および外部接続端子部358に接合された状況を示している。
【0062】
[第2実施形態における組電池の特徴]
上記第2実施形態の組電池においては、第4横架部材35Bの外部接続端子部358が嵌合突起部356に一体的に配設されているので、該嵌合突起部356を加圧板36の嵌合開口に貫通させることで同時に外部接続端子部358も外部へ引き出すようにすること、即ち加圧板36に対する嵌合突起部356の貫通構造を利用して電池21を外部へ接続することが可能となっており、加圧板36に端子挿通用の開口を穿設することも不要となっている。
【0063】
〔その他の事項〕
(1)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bのほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっているが、例えば図24ないし図25に示すように、さらにこの伝熱部を、横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続するようにしてもよい。
【0064】
図24は、第2実施形態における組電池40の外部に放熱部材として外部ヒートシンク37を配置した例を示す模式上面図である。該外部ヒートシンク37は、プレート状の基材の一方面に多数のフィン状ないしブロック状の突起が配置形成された構成を有する金属製の放熱部材となっており、組電池40の加圧板36の両側に、該加圧板36に平行となるように突起形成面を外側へ向けて配置され、第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起片352、356の先端に嵌合して接続されている(嵌合構造は図示省略)。図25は、第2実施形態における組電池40の加圧板36に放熱部材としてヒートシンク層38を配設した例を示す模式上面図である。該ヒートシンク層38は、組電池40における両側の加圧板36の外側面に金属板を貼着することによって設けられ、加圧板36の嵌合開口342に連通する開口(図示せず)を穿設して該開口に第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起片352、356を貫通させながら、該嵌合突起片352、356をヒートシンク層38に摺動可能に当接させるようにしている。
【0065】
上記構成によれば、伝熱部である第3横架部材32Aおよび第4横架部材32Bに伝達された熱を放熱部材である外部ヒートシンク37ないしヒートシンク層38から外部へ放熱することができ、これによりさらに効果的に電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0066】
(2)上記第1実施形態および第2実施形態においては、電池21の両側の電極端子の位置に対応して、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bないし第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの2本の横架部材をそれぞれ架設するようにしているが、例えば図26の模式下面図に示すように、1本の横架部材で電池21の両側の電極端子の位置に対応させる構成としてもよい。同図に示す第5横架部材39は、第2実施形態における配置状態での(即ち電池21の両側の電極端子の位置に対応して間隔をおいて並行して架設された状態での)第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bを一体化した構成となっている。即ち、本体部391および嵌合突起部392が、第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの本体部351、355および嵌合突起片352、356の幅とこれらの配置間隔とを合わせた幅となるように幅広に成形され、電池21の両側の電極端子の位置に対応するように、両側縁に沿って導通部393がそれぞれ配設され、両嵌合突起部392の基端部には、Oリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材394が嵌着されている。また、本体部391における両側の導通部393の間の中央部には、該本体部391の長さ方向に沿って長く延びる通気孔395が穿設されている。
【0067】
上記構成によれば、横架部材が1本の第5横架部材39で構成されているため、取扱や組立作業がさらに容易かつ簡便となっている。
【0068】
(3)上記第2実施形態においては、第4横架部材35Bの外部接続端子部358が嵌合突起部356に一体的に配設されているが、例えば、横架部材に長さ方向に延びる通孔、溝等を設け、内部に電圧、温度等を検出する検出線等の配線を挿通する配線通路としてもよく、これによれば、加圧板に対する横架部材(嵌合突起部)の貫通構造を利用して配線を外部へ引き出すようにすることができる(図示省略)。
【0069】
(4)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bの本体部321、327、355および嵌合突起片322、328、356が窒化アルミニウムよりなるものとなっており、これにより電気絶縁性および熱伝導性がいずれも確保されるようになっているが、このように電気絶縁性および熱伝導性のいずれも有する材質としては、望ましくは熱伝導率10W/m以上、比抵抗10^13 Ω・cm以上であるもの、例えば窒化アルミニウム以外にも、窒化ケイ素、アルミナ等が挙げられる。これらの熱伝導率および比抵抗を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
また、導通部を除く横架部材の構成材料としては、熱伝導性を有していなくても、電気絶縁性を有するものであれば任意のものが使用でき、例えば上記窒化アルミニウム等以外にも、電気絶縁性を有する樹脂、セラミック等がいずれも使用できる。あるいはまた、導通部と電気的に絶縁されていれば、横架部材の全体を金属で構成するようにしてもよい。さらにはまた、例えば複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、導通部も含めて横架部材の全体を金属で構成する(換言すれば、横架部材の全体を導通部とする)ようにしてもよい。
【0072】
(5)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bの免震部326、335および免震部材354、359がそれぞれゴム板およびOリング(オーリング)状のゴムで構成されているが、免震構造を構成する弾性部材としては弾性を有するものであればよく、例えばゴム以外にもコイルバネ、板バネ等の各種のバネが使用できる。
【0073】
(6)上記第1実施形態および第2実施形態においては、加圧板が、樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなり、したがって電気絶縁性を有するとともに電池21に対して断熱性を有するものとなっているが、加圧板としては、誤短絡を防止する上で電気絶縁性を有し、かつ、電池を加圧する治具として必要な剛性を有するものであれば任意のものが使用でき、例えば上記ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))以外にも、電気絶縁性を有する樹脂、セラミック等がいずれも使用できる。加圧板の熱伝導率は3W/m以下、比抵抗は10^13 Ω・cm以上であることが望ましい。また、上記ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))のように電池21に対して断熱性を有する加圧板とすることが望ましいが、例えば、加圧板において電池21に対向する表面部にポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等の断熱材よりなる断熱層を形成するようにしてもよく、これによれば、断熱層以外は例えば金属等で構成して放熱性を確保する(換言すれば断熱層以外を放熱部材としても機能させる)ようにすることもできる(図示省略)。この場合、断熱層以外は熱伝導率10W/m以上を有するもの(例えば金属であれば殆どの金属)、断熱層は比抵抗10^13 Ω・cm以上のもの(樹脂等)よりなるものとすることが望ましい。
【0074】
(7)上記第1実施形態および第2実施形態においては、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16がいずれも上方に延出するように形成されて上方で第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bに接続される構成となっているが、例えば各電池の正極集電端子および負極集電端子が上下に延出するように形成されている場合には、少なくとも上方に延出する正極集電端子または負極集電端子を上方で横架部材に接続するようにすればよい。このとき、下方に延出する負極集電端子または正極集電端子は適宜バスバー等の金具で接続するようにしてもよいが、上方と同様に下方にも横架部材を架設し、下方に延出する負極集電端子または正極集電端子を該横架部材に接続するようにしてもよい。
【0075】
(8)上記第1実施形態および第2実施形態においては、上述の通り、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bのほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっていることにより、電池21で発生した熱を効率よく放熱することができるようになっており、限られた空間に密閉されて設置される場合に特に有用なものとなっているが、これとあわせて、ファン等による強制送風機構を設置するようにすると、送風による冷却効果が加わることにより、さらに効果的に温度上昇を抑制することができる。
【0076】
(9)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bに、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を仮止めしてから本締めして接合固定し得るように長孔状のボルト挿通孔が穿設されているが、長孔は、各電池の正極集電端子および負極集電端子に穿設するようにしてもよく、あるいは各電池の正極集電端子および負極集電端子と横架部材との両者に形成するようにしてもよい。
【0077】
(10)また、上記長孔は、電池の加圧に必要な移動距離を確保し得る程度の長さを有していればよく、例えば、幅3.5mm、長さ4.5mm程度の寸法であってもよい。
【0078】
(11)正極活物質としては、上記コバルト酸リチウムに限定されるものではなく、コバルト−ニッケル−マンガン、アルミニウム−ニッケル−マンガン、アルミニウム−ニッケル−コバルト等のコバルト、ニッケル或いはマンガンを含むリチウム複合酸化物や、スピネル型マンガン酸リチウム等でも構わない。
【0079】
(12)負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛以外にも、グラファイト・コークス・酸化スズ・金属リチウム・珪素・及びそれらの混合物等、リチウムイオンを挿入脱離できうるものであれば構わない。
【0080】
(13)電解液としても特に本実施例で示したものに限定されるものではなく、リチウム塩としては例えばLiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2,LiN(SO2C2F5)2,LiPF6―x(CnF2n+1)x[但し、1<x<6、n=1又は2]等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用できる。支持塩の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.8モルが望ましい。また、溶媒種としては上記ECやMEC以外にも、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート系溶媒が好ましく、更に好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートの組合せが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えばロボットや小型動力のモバイル機器等に搭載される動力用などの高出力用途の電源に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
15 正極集電端子(電極端子)
16 負極集電端子(電極端子)
20 組電池
21 単電池
32A 第1横架部材
32B 第2横架部材
335 免震部(弾性部材)
34 加圧板(外装部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池よりなる組電池に関し、特に電池に発生する熱を効率よく外部に放熱することができてハイレート特性に優れる大容量の組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばロボット、電動車両や、小型動力のモバイル機器等の電源は、限られた空間に密閉されるものであるため、小型軽量で低コストであること等が要望される。このような要望を満足するものとして、近年、高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池が注目されている。このリチウムイオン電池は、高出力とするため、例えば5、6セル程度ないし10数セル程度の多数の電池を直列または並列に接続して組電池として使用される。
【0003】
上記のような用途に使用される組電池においては、多数のセルを容易かつ確実に接続、支持する構造とすることが要望され、このため従来、例えば以下のような各種の構造が提案されている。
【0004】
特許文献1には、正極端子および負極端子を連結部材により連結することで、隣接する単電池を強固に連結し、大電流を流せるようにした組電池が開示されている。
【0005】
特許文献2には、電極端子に一体型端子を弾性的に押圧して接続することにより、簡単かつ容易に電極端子を接続し得るようにしたパック電池が開示されている。
【0006】
特許文献3には、電極端子を絶縁板によって挟持することによって、振動の入力に対して影響を受け難く、コンパクト化を図るようにした組電池が開示されている。
【0007】
特許文献4には、複数のセルの両端部に位置するエンドプレートにバスバーをインサート成形により一体的に組み込むようにすることで、電池モジュールの支持強度、剛性を向上させるとともに、電池モジュールをケースに誤挿入なしに容易に組み込むことができるようにした構造が開示されている。
【0008】
特許文献5には、複数のセルと連結具との間にスペーサを介在させることにより、セルと連結具との絶縁を容易に確保するとともにセルの間隔を維持し得るようにした二次電池モジュールが開示されている。
【0009】
特許文献6には、各セルの端子片を平行に配置し、該端子片を連結する接続用リード板を、端子片の突出方向と直交する方向に一直線状に配置することにより、コンパクトであって接続用リード板の取り回しが容易でショート等の惧れもない組電池が開示されている。
【0010】
特許文献7には、複数のセルを接続する樹脂製のプレートに金属ブスバを一体成形することにより、セル数の変化に対応でき、安全かつ効率的に組み立てることが可能な組電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−71173号公報
【特許文献2】特開2008−300083号公報
【特許文献3】特開2006−210312号公報
【特許文献4】特開平10−270006号公報
【特許文献5】特開2005−322647号公報
【特許文献6】特開2002−117828号公報
【特許文献7】特開2004−152706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば、積層電極体をラミネートフィルムよりなる外装体に収容した構成を有する電池(以下、「ラミネート積層型電池」と称す)を単電池(セル)として構成された組電池の場合、セルの外装体が金属製である角型電池に比べ、軟らかい構造をしているため加圧や振動によって変形しやすく、電池の位置にずれが生じやすい。そのため正極端子ないし負極端子に応力がかかり、端子間の接続にゆるみが生じたり、端子が破損して接続が外れたりするという問題があった。
【0013】
特許文献3には、前述の通り、振動による影響を受け難くした組電池が開示されているが、この組電池では、電極端子を絶縁板によって挟持することによって振動を抑制するようにしているため、振動の抑制効果には限界があり、特に、絶縁板自体の振動は処理し得ないものと考えられる。
【0014】
また、上記ラミネート積層型電池を単電池(セル)とする組電池の場合、ハイレート特性を得るためには各電池に均一な圧力(構成圧)をかける必要があり、組電池全体を均一に締め付けることで構成圧を得る構造とすることが必要であるが、上記特許文献1ないし特許文献7ではこのような構造については特に記載されていない。
【0015】
したがって、本発明は、振動を効果的に抑制することができて信頼性に優れるとともに、各電池に均一な圧力(構成圧)を効果的にかけることができてハイレート特性に優れる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する為に、本発明に係る組電池は、
積層された複数の電池と、
前記複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材と、
前記両側の外装部材の間に架設され、前記複数の電池の電極端子を直列または並列に接続しながら支持する横架部材と、
を備え、
前記横架部材が、前記両側の外装部材に免震構造をなして支持されていることを特徴とする。
【0017】
本発明において、「複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材」とは、複数の電池の積層方向における両側に配置される部材であれば任意のものを含意するが、例えば、複数の電池を積層方向における両側から挟むように加圧するために配置される加圧板等がこれに該当する。
【0018】
上記構成によれば、複数の電池が横架部材を介して両側の外装部材に支持されるため、各電池が容易かつ確実に位置決めされ、これ以降も振動や自重によって位置ずれ、回転ずれ、脱落等を生じることなく所定位置に確実に支持される。このとき、横架部材が外装部材に免震構造をなして支持されているので、振動がこの免震構造により吸収され、したがって、電極端子に応力が集中することによる端子間の接続のゆるみや端子の破損等が効果的に防止される。
【0019】
また、上記のように横架部材が外装部材に免震構造をなして支持されていることにより、外装部材が横架部材に対して弛みなく堅固に固定されるのではなく遊動可能となっており、したがって外装部材を両側から挟むようにして十分に加圧することができる。
【0020】
前記横架部材に、周囲から電気的に絶縁された導通部が設けられ、該導通部で前記複数の電池の電極端子が直列に接続されていることが望ましい。
【0021】
複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、複数の電池の正極端子および負極端子をそれぞれまとめて接続するようにすればよいので、作業にそれほど手間を要することもないが、複数の電池を直列に接続する場合には、複数の電池の正極端子と負極端子とを交互に(一対ずつ)金具等で接続していく必要があるため、特に電池の積層数が多くなるほど、部品点数も増大し、作業も煩瑣となる。そこで、上記のように周囲から電気的に絶縁された導通部を横架部材に設けておき、該導通部で複数の電池の電極端子を直列に接続する構成とすれば、金具を一つずつ用意して個々に接続する必要もなく、したがって接続作業を手間なく簡便に行うことができる。
【0022】
前記免震構造が、前記横架部材と前記両側の外装部材との間に弾性部材を介在させることにより構成されていることが望ましい。
【0023】
本発明において、「弾性部材」は、弾性を有するものであれば任意の部材を含意し、例えばコイルバネ、板バネ等のバネやゴム等よりなる部材がいずれも含まれる。
【0024】
上記構成によれば、弾性部材の弾性により振動を効果的に吸収することができるとともに、加圧による圧力も効果的に吸収されて外装部材が十分に遊動することができる。また、このように振動や圧力を吸収しながら、弾性部材の本来有する形状によって横架部材を外装部材に対して所定位置に確実にかつ納まりよく保持することが可能な構成とすることができる。
【0025】
前記免震構造が、前記両側の外装部材に前記横架部材を貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されていることが望ましい。
【0026】
上記構成によれば、外装部材に横架部材を貫通させて貫通方向に摺動させることにより振動を効果的に逃がすことができる。このとき、外装部材に横架部材を貫通させていることで、横架部材が外装部材に脱落しないように確実に支持され、またこの貫通構造を利用して電池を外部へ接続することも可能となっている。
【0027】
前記横架部材の少なくとも一部に、熱伝導性を有する伝熱部が形成されていることが望ましい。
【0028】
ハイレート放電時には各電池が発熱するが、密閉空間などでは空気中に放熱が出来ないので温度が上昇し、運転上限温度に達すると電池が放電できなくなる。ロボット、電動車両や、小型動力のモバイル機器の電源は、限られた空間に密閉されており、このためファンなどの強制空冷機構の設置は困難であり、外部へ固体の熱伝導で放熱する必要がある。
【0029】
そこで、上記のように横架部材に伝熱部を形成するようにすれば、電池で発生した熱を電極端子から伝熱部を経て放熱することができて電池の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
前記伝熱部が、前記横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続されていることが望ましい。
【0031】
上記構成によれば、伝熱部に伝達された熱を放熱部材から外部へ放熱することができ、これによりさらに効果的に電池の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
前記両側の外装部材が前記電池に対して断熱性を有することが望ましい。
【0033】
両側の外装部材が熱伝導性を有するものであると、最も両側に配置される単電池から外装部材に直接的に熱が伝達され、これによりこの両端部が過度に冷却されることとなる。これに対し、上記のように外装部材が電池に対して断熱性を有するようにすると、両端部においても中央部と同様に電極端子等を伝熱経路として熱伝達がなされるようになって過度な冷却が抑制されることとなり、これにより組電池全体における温度分布のバランスを良好とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の構成によれば、振動を免震構造に吸収させることにより、電極端子間の接続のゆるみや電極端子の破損等が効果的に防止される。また、免震構造により外装部材が横架部材に対して遊動可能となっていることによって、外装部材を両側から挟むようにして各電池に均一な圧力(構成圧)を十分にかけることができる。したがって、電極端子の接続部の信頼性が高く、かつハイレート特性に優れる組電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の組電池を構成する単電池(セル)の一部を示す図であって、同図(a)は正極の平面図、同図(b)はセパレータの斜視図、同図(c)は正極が内部に配置された袋状セパレータを示す平面図である。
【図2】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる負極板の平面図である。
【図3】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる積層電極体の分解斜視図である。
【図4】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる積層電極体の平面図である。
【図5】正負極タブと正負極集電端子とを溶着した状態を示す平面図である。
【図6】本発明の組電池を構成する単電池(セル)に用いる外装体に図5の積層電極体を挿入した状態の斜視図である。
【図7】本発明の組電池を構成する単電池(セル)およびセパレータの斜視図である。
【図8】本発明の組電池に使用される第1横架部材の分解斜視図である。
【図9】本発明の組電池に使用される第1横架部材の斜視図である。
【図10】本発明の組電池に使用される第2横架部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の組電池に使用される第2横架部材の斜視図である。
【図12】本発明の組電池の分解斜視図である。
【図13】本発明の組電池の斜視図である。
【図14】本発明の組電池の正面図である。
【図15】本発明の組電池の背面図である。
【図16】本発明の組電池の左前側から視た斜視図である。
【図17】本発明の組電池の左上側から視た斜視図である。
【図18】本発明の組電池に使用される第3横架部材の下面図である。
【図19】本発明の組電池に使用される第3横架部材の正面図である。
【図20】本発明の組電池に使用される第4横架部材の下面図である。
【図21】本発明の組電池に使用される第4横架部材の正面図である。
【図22】第3横架部材の導通部の下面図である。
【図23】本発明の他の実施形態に係る組電池の模式上面図である。
【図24】組電池の外部に放熱部材を設けた例を示す模式上面図である。
【図25】組電池の外部に放熱部材を設けた例を示す模式上面図である。
【図26】第5横架部材の模式下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図面を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明は以下の最良の形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0037】
[第1実施形態]
〔正極の作製〕
正極活物質としてのLiCoO2を90質量%と、導電剤としてのカーボンブラックを5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5質量%と、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混合して正極用スラリーを調製した後、この正極用スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み:15μm)の両面に塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.1mmにまで圧縮した後、図1(a)に示すように、所定の幅および高さを有する矩形状となるように切断して、両面に正極活物質層1aを有する正極板1を作製した。この際、正極板1における一辺の一方端部から、所定の幅および高さを有する矩形状の活物質未塗布部を延出させて正極タブ11とした。
【0038】
〔正極板が内部に配置された袋状セパレータの作製〕
図1(b)に示すように、2枚の方形状のポリプロピレン(PP)製のセパレータ3a(厚み30μm)の間に正極板1を配置した後、図1(c)に示すように、セパレータ3aの周辺部を融着部4で熱溶着して、正極板1が内部に収納・配置された袋状セパレータ3を作製した。
【0039】
〔負極の作製〕
負極活物質としての黒鉛粉末を95質量%と、結着剤としてのポリフッ化ピニリデンを5質量%と、溶剤としてのNMP溶液とを混合して負極用スラリーを調製した後、この負極用スラリーを負極集電体としての銅箔(厚み:10μm)の両面に塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで厚み0.08mmにまで圧縮した後、図2に示すように、所定の幅および高さを有する矩形状となるように切断して、両面に負極活物質層2aを有する負極板2を作製した。この際、負極板2の一辺において上記正極板1の正極タブ11形成側端部と反対側となる端部から、所定の幅および高さを有する矩形状の活物質未塗布部を延出させて負極タブ12とした。
【0040】
〔積層電極体の作製〕
上記正極板1が内部に配置された袋状セパレータ3を50枚、負極板2を51枚調製し、図3に示すように、該袋状セパレータ3と負極板2とを交互に積層した。その際、両端面部に負極板2が位置するようにした。ついで、図4に示すように、この積層体の両端面を形状保持のための絶縁テープ19で接続して、積層電極体10を得た。
【0041】
〔集電端子の溶接〕
図5に示すように、積層された正極タブ11および負極タブ12のそれぞれの延出端部に、幅15mm、厚み1mmのアルミニウム板よりなる正極集電端子15ならびに幅15mm、厚み1mmの銅板よりなる負極集電端子16を、それぞれ超音波溶接法により接合した。
【0042】
〔外装体への封入〕
図6に示すように、あらかじめ電極体が設置できるように成形した2枚のラミネートフィルム17で構成した外装体18に、上記積層電極体10を挿入し、正極集電端子15および負極集電端子16のみが外装体18より外部に突出するよう正極集電端子15および負極集電端子16がある辺を熱融着するとともに、残りの3辺の内、2辺を熱融着した。
【0043】
〔電解液の封入、密封化〕
上記外装体25の熱溶着していない1辺から、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とが体積比で30:70の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6が1M(モル/リットル)の割合で溶解された電解液を注入し、最後に熱溶着していない1辺を熱溶着することにより、図7に示す電池21を作製した。この電池21の幅L1は100mm、高さL2は110mm(正極タブ11および負極タブ12の延出高さを含めると136mm)、厚みT1は15mmである。電池21の上辺における幅方向両端より10mmだけ内側寄りの位置から、正極集電端子15および負極集電端子16がそれぞれ上方へ突出しており、該正極集電端子15および負極集電端子16の突出高さはラミネートフィルム17の上端から10mmであり、また該正極集電端子15および負極集電端子16の先端部は、それぞれ接続される側へ向けて側面視L字形状となるように折曲し、該折曲片にはボルト挿通孔を穿設した。また、電池21の周縁部には、ラミネートフィルム17の封止部が延出して耳部21Sが形成され、この耳部21Sより内側(中央側)が、内部に積層電極体10が封入されて該耳部21Sより厚さ方向に両側へ膨出する形状となっている。
【0044】
〔スペーサの作製〕
図7に示すように、幅L3=102mm、高さL4=122mm、厚さ0.5mmの金属板(アルミニウム板)22Tを調製し、この金属板22Tの一方面に、断面コ字形状を有し金属(アルミニウム)よりなる長さ101mmのコ字形部材24の中央片を、該金属板22Tの下端縁に揃えるようにして中央に位置するように(即ち金属板22Tの両端との間に0.5mmずつ間隔をおいて)配置し、溶接により接合した。このコ字形部材24における中央片からの両側片の延出幅は、上記電池21の厚さT1の1/2即ち7.5mmよりもやや小となっている。この金属板22Tを2枚用意し、コ字形部材24が互いに背中合わせになるようにして、両金属板22Tの間に、厚さ0.5mmのポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなる断熱シートを挟むように固定して、スペーサ22とした。
【0045】
〔横架部材の作製〕
図8の分解斜視図に示すように、やや厚さを有して短冊形に長く延びる平板状体の両端よりやや内側寄りの位置の間にある中央部が一方面側(図における下面側)へ膨出するようにさらに厚肉となった外形(換言すれば、断面矩形状で長く延びる角棒状体の両端部が同方向から即ち図における下方から切欠かれて薄肉となった外形)となるように、即ち、概略横長に延びる直方体状の本体部321の両端面の上部から平板状の嵌合突起片322がそれぞれ長さ方向に沿って両側へ突出した形状となるように窒化アルミニウムを成形し、該本体部321の両端近傍の位置および中央より両側寄りの位置の計4箇所に、該本体部321の膨出側端面から内側へ断面矩形状に陥入しかつ該本体部321を幅方向に貫通する切欠323をそれぞれ形成し、さらに、各切欠323の内奥面における両端近傍に、本体部321の幅方向に沿って並置するように貫通孔324をそれぞれ穿設した。各切欠323には、該切欠323に対応する寸法を有し上記貫通孔324に対応する位置にボルト挿通孔がそれぞれ穿設された長方形状の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部325とし、また、本体部321の膨出部の両端面(即ち本体部321と両嵌合突起片322との間に形成された入隅部)に、この両端面に対応する寸法を有する長方形状に成形されたゴム板をそれぞれ嵌合固定して免震部326として、図9の斜視図にも示す第1横架部材32Aを得た。なお、上記導通部325のボルト挿通孔は、図では明確に表れていないが、第1横架部材32Aにおける本体部321の長さ方向にわずかに長く延びる長孔となっている。
【0046】
また、図10に示すように、上記第1横架部材32Aの本体部321と同様の外形・寸法を有し両端部に嵌合突起片328がそれぞれ形成された本体部327の中央の位置および中央より両側寄りの位置の計3箇所に、上記第1横架部材32Aの切欠323と同様の形状・寸法を有する切欠329をそれぞれ形成し、さらに、両側の切欠329よりさらに両端寄りの位置に、該切欠329よりやや幅狭の切欠330をそれぞれ形成し、以上計5箇所の切欠329、330のそれぞれに、上記第1横架部材32Aの貫通孔324と同様にして貫通孔331を2ずつ穿設した。上記5箇所の切欠329、330のうちの中央部3箇所の切欠329には上記第1横架部材32Aの金属プレートと同様の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部332とするとともに、両側2箇所の切欠330には、該切欠330に対応する寸法を有し上記貫通孔331に対応する位置に(長孔である)ボルト挿通孔がそれぞれ穿設された長方形状の金属プレートをそれぞれ嵌入固定して導通部333とし、さらに、この両端部の導通部333の表面(図における下面)には、矩形板状の金属板の端部を溶接により接合して、両導通部333から両側へそれぞれ延出する外部接続端子片334とした。また、本体部327の膨出部の両端面に、上記第1横架部材32Aのゴム板と同様のゴム板をそれぞれ嵌合固定して免震部335として、図11の斜視図にも示す第2横架部材32Bを得た。
【0047】
〔加圧板の作製〕
図12に示すように、上記電池21における耳部21Sより厚さ方向に一方側へ膨出する膨出部をほぼ収容し得る凹部341を一方面側に有し、該凹部341から上方にやや長く延出して該延出部の右上部および左上部に横長の長方形状の嵌合開口342がそれぞれ穿設され、一方(図における右方)の嵌合開口342と上記凹部341との間に横方向に延びる端子挿通スリット343が穿設された構成を有する概略縦長の長方形の板状となるようにポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を成形して、加圧板34とした。上記嵌合開口342は、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの嵌合突起片322、328にそれぞれ対応する寸法を有し、上記端子挿通スリット343は、上記第2横架部材32Bの外部接続端子片334に対応する寸法を有している。この加圧板34は、これと左右対称の構成を有するものを別に1枚作製して、あわせて一対とした。
【0048】
〔組電池の組立〕
単電池(セル)として上記電池21を8個用意し、図7に示すように各電池21の間にスペーサ22を挟むようにして、これら電池21を厚さ方向に積層した。このとき、各電池21は、隣接するスペーサ22のコ字形部材24における上側片の間に下端部の耳部21Sを挿通しながら、膨出部の下端面をコ字形部材24における上側片の上面に密着させるようにした。
【0049】
ついで、図12に示すように、上記積層した各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を、直列接続となるように、一方側に隣接する電池21の負極集電端子16および他方側に隣接する電池21の正極集電端子15にそれぞれ重ねた状態で、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの導通部325、332にそれぞれボルト(図示省略)により仮止めした。第2横架部材32Bの一方端部(図における左端部)の導通部333Lには、対応する一方端部(図における左端部)の電池21の正極集電端子15を、他方端部(図における右端部)の導通部333Rには、対応する他方端部(図における右端部)の電池21の負極集電端子16を、それぞれ単独で仮止めした。なお、図12は分解斜視図であるため、各導通部325、332、333L、333Rが第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bから取り外した状態で各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が取り付けられているが、実際には、各導通部325、332、333L、333Rが前述の通り第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに固定された状態で各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が取り付けられるようになっている。またこのとき、ボルトは、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの貫通孔324、331内にそれぞれ頭部ごと挿入され、導通部325、332、333L、333R、正極集電端子15および負極集電端子16のボルト挿通孔に直接的に挿通されて、下方からナットにより締結されるようになっている。
【0050】
ついで、図12に示すように、上記積層した電池21の両側に、加圧板34をそれぞれ配置し、各加圧板34の凹部341に両端の電池21の膨出部をそれぞれ収容するとともに、各加圧板34の嵌合開口342に上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの嵌合突起片322、328を、端子挿通スリット343に上記第2横架部材32Bの外部接続端子片334をそれぞれ挿通して外側へ突出させた。この状態で、両加圧板34を両側から締め付けるように加圧した。
【0051】
ついで、加圧した状態で、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を仮止めしているボルトを本締めして締結固定し、図12ないし図17に示す組電池20を得た。
【0052】
[第1実施形態における組電池の効果]
上記組電池20は、積層された複数すなわち8個の電池21と、上記複数の電池21を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材である加圧板34と、上記両側の加圧板34の間に架設され、複数の電池21の電極端子すなわち正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続しながら支持する第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bと、を備え、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが、両側の加圧板34に免震構造をなして支持されている構成となっているので、複数の電池21が第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを介して両側の加圧板34に支持されるため、各電池が容易かつ確実に位置決めされ、これ以降も振動や自重によって位置ずれ、回転ずれ、ねじれ、脱落等を生じることなく所定位置に確実に支持される。このとき、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に免震構造をなして支持されているので、振動がこの免震構造により吸収され、したがって、電極端子に応力が集中することによる端子間の接続のゆるみや端子の破損等が効果的に防止されるようになっている。
【0053】
また、上記のように第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に免震構造をなして支持されていることにより、加圧板34が第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに対して弛みなく堅固に固定されるのではなく遊動可能となっており、したがって加圧板34を両側から挟むようにして十分に加圧することができる。
【0054】
また、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに、周囲から電気的に絶縁された導通部325、332、333が設けられ、該導通部325、332、333で複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16が直列に接続されているので、組電池の組立作業を容易かつ簡便に行うことができる。
複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、複数の電池の正極端子および負極端子をそれぞれまとめて接続するようにすればよいので、作業にそれほど手間を要することもないが、複数の電池を直列に接続する場合には、複数の電池の正極端子と負極端子とを交互に(一対ずつ)金具等で接続していく必要があるため、特に電池の積層数が多くなるほど、部品点数も増大し、作業も煩瑣となる。そこで、上記組電池20のように周囲から電気的に絶縁された導通部325、332、333を第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bに設けておき、該導通部325、332、333で複数の電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を直列に接続する構成となっていれば、金具を一つずつ用意して個々に接続する必要もなく、したがって接続作業を手間なく簡便に行うことができる。
【0055】
また、上記免震構造が、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bと両側の加圧板34との間に、弾性部材であるゴム板よりなる免震部326、335を介在させることにより構成されているので、ゴム板の弾性により振動が効果的に吸収されるとともに、加圧による圧力も効果的に吸収されて加圧板34が十分に遊動し得るようになっている。また、このように弾性により振動や圧力が吸収されながら、ゴム板の本来有する形状によって第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に対して所定位置に確実にかつ納まりよく保持されている。
【0056】
また、上記免震構造が、両側の加圧板34の嵌合開口342に第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されているので、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが貫通方向に摺動することにより振動が効果的に逃げることができるようになっている。このとき、加圧板34に第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bを貫通させていることで、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが加圧板34に脱落しないように確実に支持されている。
【0057】
また、上記第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bが、熱伝導性を有する窒化アルミニウムよりなる本体部321、327および嵌合突起片322、328と、金属よりなる導通部325、332、333とを有して構成され、したがって(免震部326、335を除く)ほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっているので、電池21で発生した熱を、正極集電端子15および負極集電端子16から、伝熱部である導通部325、332、333、本体部321、327および嵌合突起片322、328を経て放熱することができ、これにより、ファンなどの強制空冷機構の設置が困難な限られた空間に密閉されて設置された場合であっても、ハイレート放電時の発熱を外部への熱伝導により放熱することができて電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0058】
また、両側の加圧板34が、樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなり、したがって電池21に対して断熱性を有するものとなっている。例えば仮に、両側の加圧板が熱伝導性を有するものであると、最も両側に配置される単電池から加圧板に直接的に熱が伝達され、これによりこの両端部が過度に冷却されることとなる。これに対し、上記組電池20においては上述の通り加圧板34が電池21に対して断熱性を有するものとなっているので、両端部においても中央部と同様に正極集電端子15および負極集電端子16から、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bの導通部325、332、333、本体部321、327および嵌合突起片322、328を経て熱伝達がなされて過度な冷却が抑制されるようになっており、これにより組電池20全体における温度分布のバランスが良好となっている。
【0059】
[第2実施形態]
〔横架部材の作製〕
図18および図19に示すように、やや厚さを有して短冊形に長く延びる平板状の本体部351の両端中央部から、該本体部351よりも幅狭の嵌合突起部352がそれぞれ延出した形状となるように窒化アルミニウムを成形し、このとき、本体部351の一方面に、長さ方向に沿って等間隔をおいて並置するように4個の金属よりなる導通部353をインサート成形により配設した。各導通部353は、本体部351の長さ方向に沿ってやや長い長方形状であって該本体部351の厚さのおよそ1/2程度の厚さを有するプレート状となっており、表面が本体部351の一方面と面一となるように該本体部351に埋設した。各導通部353の中央には、図22に示すように、該導通部353の長さ方向に沿ってやや長く延びる長孔状のボルト挿通孔353P(1個)を穿設し、本体部351にも、該ボルト挿通孔353Pと連通するようにして、該ボルト挿通孔353Pと同形・同寸法の長孔状のボルト挿通孔をそれぞれ穿設した。図18および図19に示すように、上記両嵌合突起部352の基端部(本体部351に連続する側の端部)には、Oリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材354をそれぞれ嵌着して、第3横架部材35Aとした。
【0060】
また、図20および図21に示すように、上記第3横架部材35Aの本体部351と同様の外形・寸法を有し両端部に嵌合突起部356がそれぞれ形成された本体部355の一方面における中央およびその両側の3箇所に、上記第3横架部材35Aの導通部353と同一構成を有する導通部357を上記と同様の方法によりそれぞれ配設し、さらに、これら3箇所の導通部357の両側に、該導通部357と同幅であって嵌合突起部356の延出端まで長く延びるプレート状の金属よりなる外部接続端子部358を上記と同様の方法によりそれぞれ配設した。上記本体部355、導通部357および外部接続端子部358には、上記第3横架部材35Aの場合と同様にしてボルト挿通孔をそれぞれ穿設し、また両嵌合突起部356の基端部には、上記第3横架部材35Aの場合と同様にOリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材359をそれぞれ嵌着して、第4横架部材35Bとした。
【0061】
〔加圧板の作製および組電池の組立〕
図23の模式上面図に示すように、嵌合開口を上記第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起部352、356にそれぞれ対応する寸法を有するものとし(図示せず)、端子挿通スリットを穿設しないようにした(図示せず)点以外は、第1実施形態における組電池20の加圧板34と同様にして加圧板36を一対作製し、この加圧板36と上記第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bとを用いて、第1実施形態における組電池20の場合と同様にして組電池40を組み立てた。なお、図19および図21では、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16のみを図示してこれらが第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの導通部353、357および外部接続端子部358に接合された状況を示している。
【0062】
[第2実施形態における組電池の特徴]
上記第2実施形態の組電池においては、第4横架部材35Bの外部接続端子部358が嵌合突起部356に一体的に配設されているので、該嵌合突起部356を加圧板36の嵌合開口に貫通させることで同時に外部接続端子部358も外部へ引き出すようにすること、即ち加圧板36に対する嵌合突起部356の貫通構造を利用して電池21を外部へ接続することが可能となっており、加圧板36に端子挿通用の開口を穿設することも不要となっている。
【0063】
〔その他の事項〕
(1)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bのほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっているが、例えば図24ないし図25に示すように、さらにこの伝熱部を、横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続するようにしてもよい。
【0064】
図24は、第2実施形態における組電池40の外部に放熱部材として外部ヒートシンク37を配置した例を示す模式上面図である。該外部ヒートシンク37は、プレート状の基材の一方面に多数のフィン状ないしブロック状の突起が配置形成された構成を有する金属製の放熱部材となっており、組電池40の加圧板36の両側に、該加圧板36に平行となるように突起形成面を外側へ向けて配置され、第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起片352、356の先端に嵌合して接続されている(嵌合構造は図示省略)。図25は、第2実施形態における組電池40の加圧板36に放熱部材としてヒートシンク層38を配設した例を示す模式上面図である。該ヒートシンク層38は、組電池40における両側の加圧板36の外側面に金属板を貼着することによって設けられ、加圧板36の嵌合開口342に連通する開口(図示せず)を穿設して該開口に第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの嵌合突起片352、356を貫通させながら、該嵌合突起片352、356をヒートシンク層38に摺動可能に当接させるようにしている。
【0065】
上記構成によれば、伝熱部である第3横架部材32Aおよび第4横架部材32Bに伝達された熱を放熱部材である外部ヒートシンク37ないしヒートシンク層38から外部へ放熱することができ、これによりさらに効果的に電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0066】
(2)上記第1実施形態および第2実施形態においては、電池21の両側の電極端子の位置に対応して、第1横架部材32Aおよび第2横架部材32Bないし第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの2本の横架部材をそれぞれ架設するようにしているが、例えば図26の模式下面図に示すように、1本の横架部材で電池21の両側の電極端子の位置に対応させる構成としてもよい。同図に示す第5横架部材39は、第2実施形態における配置状態での(即ち電池21の両側の電極端子の位置に対応して間隔をおいて並行して架設された状態での)第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bを一体化した構成となっている。即ち、本体部391および嵌合突起部392が、第3横架部材35Aおよび第4横架部材35Bの本体部351、355および嵌合突起片352、356の幅とこれらの配置間隔とを合わせた幅となるように幅広に成形され、電池21の両側の電極端子の位置に対応するように、両側縁に沿って導通部393がそれぞれ配設され、両嵌合突起部392の基端部には、Oリング(オーリング)状のゴムよりなる免震部材394が嵌着されている。また、本体部391における両側の導通部393の間の中央部には、該本体部391の長さ方向に沿って長く延びる通気孔395が穿設されている。
【0067】
上記構成によれば、横架部材が1本の第5横架部材39で構成されているため、取扱や組立作業がさらに容易かつ簡便となっている。
【0068】
(3)上記第2実施形態においては、第4横架部材35Bの外部接続端子部358が嵌合突起部356に一体的に配設されているが、例えば、横架部材に長さ方向に延びる通孔、溝等を設け、内部に電圧、温度等を検出する検出線等の配線を挿通する配線通路としてもよく、これによれば、加圧板に対する横架部材(嵌合突起部)の貫通構造を利用して配線を外部へ引き出すようにすることができる(図示省略)。
【0069】
(4)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bの本体部321、327、355および嵌合突起片322、328、356が窒化アルミニウムよりなるものとなっており、これにより電気絶縁性および熱伝導性がいずれも確保されるようになっているが、このように電気絶縁性および熱伝導性のいずれも有する材質としては、望ましくは熱伝導率10W/m以上、比抵抗10^13 Ω・cm以上であるもの、例えば窒化アルミニウム以外にも、窒化ケイ素、アルミナ等が挙げられる。これらの熱伝導率および比抵抗を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
また、導通部を除く横架部材の構成材料としては、熱伝導性を有していなくても、電気絶縁性を有するものであれば任意のものが使用でき、例えば上記窒化アルミニウム等以外にも、電気絶縁性を有する樹脂、セラミック等がいずれも使用できる。あるいはまた、導通部と電気的に絶縁されていれば、横架部材の全体を金属で構成するようにしてもよい。さらにはまた、例えば複数の電池を並列に接続して組電池を構成する場合には、導通部も含めて横架部材の全体を金属で構成する(換言すれば、横架部材の全体を導通部とする)ようにしてもよい。
【0072】
(5)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bの免震部326、335および免震部材354、359がそれぞれゴム板およびOリング(オーリング)状のゴムで構成されているが、免震構造を構成する弾性部材としては弾性を有するものであればよく、例えばゴム以外にもコイルバネ、板バネ等の各種のバネが使用できる。
【0073】
(6)上記第1実施形態および第2実施形態においては、加圧板が、樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))よりなり、したがって電気絶縁性を有するとともに電池21に対して断熱性を有するものとなっているが、加圧板としては、誤短絡を防止する上で電気絶縁性を有し、かつ、電池を加圧する治具として必要な剛性を有するものであれば任意のものが使用でき、例えば上記ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))以外にも、電気絶縁性を有する樹脂、セラミック等がいずれも使用できる。加圧板の熱伝導率は3W/m以下、比抵抗は10^13 Ω・cm以上であることが望ましい。また、上記ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))のように電池21に対して断熱性を有する加圧板とすることが望ましいが、例えば、加圧板において電池21に対向する表面部にポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等の断熱材よりなる断熱層を形成するようにしてもよく、これによれば、断熱層以外は例えば金属等で構成して放熱性を確保する(換言すれば断熱層以外を放熱部材としても機能させる)ようにすることもできる(図示省略)。この場合、断熱層以外は熱伝導率10W/m以上を有するもの(例えば金属であれば殆どの金属)、断熱層は比抵抗10^13 Ω・cm以上のもの(樹脂等)よりなるものとすることが望ましい。
【0074】
(7)上記第1実施形態および第2実施形態においては、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16がいずれも上方に延出するように形成されて上方で第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bに接続される構成となっているが、例えば各電池の正極集電端子および負極集電端子が上下に延出するように形成されている場合には、少なくとも上方に延出する正極集電端子または負極集電端子を上方で横架部材に接続するようにすればよい。このとき、下方に延出する負極集電端子または正極集電端子は適宜バスバー等の金具で接続するようにしてもよいが、上方と同様に下方にも横架部材を架設し、下方に延出する負極集電端子または正極集電端子を該横架部材に接続するようにしてもよい。
【0075】
(8)上記第1実施形態および第2実施形態においては、上述の通り、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bのほぼ全体が熱伝導性を有する伝熱部となっていることにより、電池21で発生した熱を効率よく放熱することができるようになっており、限られた空間に密閉されて設置される場合に特に有用なものとなっているが、これとあわせて、ファン等による強制送風機構を設置するようにすると、送風による冷却効果が加わることにより、さらに効果的に温度上昇を抑制することができる。
【0076】
(9)上記第1実施形態および第2実施形態においては、第1ないし第4横架部材32A、32B、35A、35Bに、各電池21の正極集電端子15および負極集電端子16を仮止めしてから本締めして接合固定し得るように長孔状のボルト挿通孔が穿設されているが、長孔は、各電池の正極集電端子および負極集電端子に穿設するようにしてもよく、あるいは各電池の正極集電端子および負極集電端子と横架部材との両者に形成するようにしてもよい。
【0077】
(10)また、上記長孔は、電池の加圧に必要な移動距離を確保し得る程度の長さを有していればよく、例えば、幅3.5mm、長さ4.5mm程度の寸法であってもよい。
【0078】
(11)正極活物質としては、上記コバルト酸リチウムに限定されるものではなく、コバルト−ニッケル−マンガン、アルミニウム−ニッケル−マンガン、アルミニウム−ニッケル−コバルト等のコバルト、ニッケル或いはマンガンを含むリチウム複合酸化物や、スピネル型マンガン酸リチウム等でも構わない。
【0079】
(12)負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛以外にも、グラファイト・コークス・酸化スズ・金属リチウム・珪素・及びそれらの混合物等、リチウムイオンを挿入脱離できうるものであれば構わない。
【0080】
(13)電解液としても特に本実施例で示したものに限定されるものではなく、リチウム塩としては例えばLiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2,LiN(SO2C2F5)2,LiPF6―x(CnF2n+1)x[但し、1<x<6、n=1又は2]等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用できる。支持塩の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.8モルが望ましい。また、溶媒種としては上記ECやMEC以外にも、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート系溶媒が好ましく、更に好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートの組合せが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えばロボットや小型動力のモバイル機器等に搭載される動力用などの高出力用途の電源に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
15 正極集電端子(電極端子)
16 負極集電端子(電極端子)
20 組電池
21 単電池
32A 第1横架部材
32B 第2横架部材
335 免震部(弾性部材)
34 加圧板(外装部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池と、
前記複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材と、
前記両側の外装部材の間に架設され、前記複数の電池の電極端子を直列または並列に接続しながら支持する横架部材と、
を備え、
前記横架部材が、前記両側の外装部材に免震構造をなして支持されていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記横架部材に、周囲から電気的に絶縁された導通部が設けられ、該導通部で前記複数の電池の電極端子が直列に接続されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記免震構造が、前記横架部材と前記両側の外装部材との間に弾性部材を介在させることにより構成されている、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記免震構造が、前記両側の外装部材に前記横架部材を貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の組電池。
【請求項5】
前記横架部材の少なくとも一部に、熱伝導性を有する伝熱部が形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の組電池。
【請求項6】
前記伝熱部が、前記横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続されている、請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
前記両側の外装部材が前記電池に対して断熱性を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載の組電池。
【請求項1】
積層された複数の電池と、
前記複数の電池を積層方向における両側から挟むようにしてそれぞれ配置された外装部材と、
前記両側の外装部材の間に架設され、前記複数の電池の電極端子を直列または並列に接続しながら支持する横架部材と、
を備え、
前記横架部材が、前記両側の外装部材に免震構造をなして支持されていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記横架部材に、周囲から電気的に絶縁された導通部が設けられ、該導通部で前記複数の電池の電極端子が直列に接続されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記免震構造が、前記横架部材と前記両側の外装部材との間に弾性部材を介在させることにより構成されている、請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記免震構造が、前記両側の外装部材に前記横架部材を貫通させて貫通方向に摺動可能に支持させることにより構成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の組電池。
【請求項5】
前記横架部材の少なくとも一部に、熱伝導性を有する伝熱部が形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の組電池。
【請求項6】
前記伝熱部が、前記横架部材の外部に設けられた放熱部材に熱的に接続されている、請求項5に記載の組電池。
【請求項7】
前記両側の外装部材が前記電池に対して断熱性を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載の組電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−225552(P2010−225552A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74433(P2009−74433)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]