説明

組電池

【課題】複数の電池モジュールを電気的に接続して積層するとともに、その接続部の接続不良を抑制もしくは防止することができる組電池を提供する。
【解決手段】リード端子によって互いに電気的に接続された複数のセルがケースの内部に収容されて構成された複数の電池モジュールを、積層しかつ電気的に接続して構成された組電池において、積層されて互いに隣接する各電池モジュールは、該互いに隣接する一方の電池モジュールと該一方の電池モジュールに積層される他方の電池モジュールとが対向する面に開口しかつ前記リード端子と導通した接続部を備え、前記各電池モジュールにおける各接続部に挿入されて、前記一方の電池モジュールと前記他方の電池モジュールとを導通させ、前記接続部の内法に応じて弾性変形するように構成されたコネクタ2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケースの内部に収納された複数の単電池(セル)同士を接続して構成された電池モジュールを電気的に接続し、かつそれらの電池モジュールを積み重ねて構成された組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平板型などの各種の形状のセルが開発されており、それに伴いセルを単独で使用せずに、複数個をユニット化して取り扱うようになってきている。例えば特許文献1には、平板状もしくはシート状をなす複数のセルを積層して形成されたセルユニットをケースの内部に収容してモジュール化した電池が記載されている。また、特許文献2には、特許文献1に記載されたように構成された電池モジュールの出力端子を外部に露出した状態で電池モジュールを積層することによって、組電池を構成することが記載されている。つまり、電池モジュールが積層されて構成された組電池の側壁面には、複数の出力端子が露出している。
【0003】
そして、特許文献3には、上記特許文献2に記載されたように積層された組電池の側面に、その組電池の側面に露出した複数の出力端子をバスバーによって連結し、短絡を防止するためにそのバスバーを覆う絶縁性のプレートを取り付けた組電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−231267号公報
【特許文献2】特開2010−212165号公報
【特許文献3】特開2008−166008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の組電池は、電池モジュールの出力端子が側壁面に露出して積層されているので、それらの電池モジュールの出力端子同士をバスバーによって連結させている。したがって、バスバーが組電池から突出した状態となってしまい、バスバーを含む組電池全体としての外形寸法が増大してしまう可能性がある。また、電池モジュールを積層した後に、バスバーやそのバスバーを覆うカバーなどを組み付けることとなり、作業工程が増加してしまう可能性がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、複数の電池モジュールを積層して接続することによる組立の作業性を向上させ、またその接続部の接続不良を抑制もしくは防止することができる組電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、リード端子によって互いに電気的に接続された複数のセルがケースの内部に収容されて構成された複数の電池モジュールを、積層しかつ電気的に接続して構成された組電池において、積層されて互いに隣接する各電池モジュールは、該互いに隣接する一方の電池モジュールと該一方の電池モジュールに積層される他方の電池モジュールとが対向する面に開口しかつ前記リード端子と導通した接続部を備え、前記各電池モジュールにおける各接続部に挿入されて、前記一方の電池モジュールと前記他方の電池モジュールとを導通させ、前記接続部の内法に応じて弾性変形するように構成されたコネクタを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記コネクタは、互いに隣接する電池モジュールの一方の電池モジュールにおける前記接続部に挿入される一方の端部と、他方の電池モジュールにおける前記接続部に挿入される他方の端部とのそれぞれが弾性変形可能に構成されていることを特徴とする組電池ある。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記コネクタは、該コネクタの端部から軸線方向に向けて形成されたスリット部を備えていることを特徴とする組電池である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記スリット部は、前記コネクタの一方の端部から該一方の端部と前記コネクタの他方の端部との間まで形成された第1スリット部と、前記他方の端部から該他方の端部と前記一方の端部との間まで形成され、前記第1スリット部と交差しない第2スリット部とを有していることを特徴とする組電池である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記コネクタは、前記接続部の内法より外径が大きくかつ前記接続部に前記コネクタが挿入された状態で、該接続部の端部を当接させる係止部を更に備えていることを特徴とする組電池である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれかの発明において、前記スリット部は、螺旋状に形成されたスリット部を含むことを特徴とする組電池である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記電池モジュールの表裏両面側のそれぞれに前記接続部が開口して設けられ、一方の接続部が陽極、他方の接続部が負極とされ、積層されて互いに隣接する一方の電池モジュールにおける陽極である接続部と、他方の電池モジュールにおける負極である接続部とが互いに対向するように構成されていることを特徴とする組電池である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の組電池は、リード端子によって互いに電気的に接続された複数のセルがケースの内部に収容されて構成された複数の電池モジュールを、積層しかつ電気的に接続して構成されている。したがって、接続する電池モジュールの数量に応じて組電池の電気容量を変更することができる。また、積層されて互いに隣接する各電池モジュールは、その互いに隣接する一方の電池モジュールとその一方の電池モジュールに積層された他方の電池モジュールとが対向する面に開口したリード端子と導通した接続部を備え、それらの接続部に挿入されて、一方の電池モジュールと他方の電池モジュールとを導通させるコネクタを備えているので、互いに積層される電池モジュール同士をそのコネクタによって電気的に導通させることができるとともに、組電池の外形が大きくなることを抑制もしくは防止することができる。さらに、そのコネクタは、接続部の内法に応じて弾性変形するように構成されているので、接続部やコネクタの寸法精度を緩和することができる。そして、コネクタが接続部に挿入された状態では、コネクタが元の形状に戻るように接続部に力を作用させるので、コネクタが接続部から外れてしまうこと、あるいは接続部とコネクタとの接触不良を抑制もしくは防止することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、コネクタは、一方の電池モジュールにおける接続部に挿入される一方の端部と、他方の電池モジュールにおける接続部に挿入される他方の端部とのそれぞれが弾性変形可能に構成されているので、一方の端部が弾性変形することによって他方の端部の外形寸法が減少したり、他方の端部とその端部が挿入される接続部との嵌合が不十分となったりすること、もしくは他方の端部が接続部から抜けてしまうことを抑制もしくは防止することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、コネクタは、そのコネクタの端部から軸線方向に向けて形成されたスリット部を備えているので、コネクタの外面側から力を受けると、スリット部を狭める方向に弾性変形することができる。その結果、請求項1の効果と同様の効果を奏することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、スリット部は、コネクタの一方の端部からその一方の端部と他方の端部との間まで形成された第1スリット部と、他方の端部からその他方の端部と前記一方の端部との間まで形成され、第1スリット部と交差しない第2スリット部とを有しているので、一方の端部と他方の端部とは相互に独立して弾性変形することができる。つまり、いずれか一方の端部の弾性変形に他方の端部が影響されて変形してしまうことを抑制もしくは防止することができる。したがって、請求項2の効果と同様の効果を奏することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、コネクタは、接続部の内法より外径が大きくかつ接続部にコネクタが挿入された状態で、接続部の端部を当接させる係止部を更に備えているので、コネクタが接続部に過剰に挿入されてしまうことを抑制もしくは防止することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、スリット部は、螺旋状に形成されたスリット部を含み、またコネクタの外面の周方向の全面と接続部の内面とが接触するので、コネクタが接続部から外れてしまうこと、あるいは接続部とコネクタとの接触不良を抑制もしくは防止することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、電池モジュールの表裏両面側のそれぞれに接続部が開口して設けられ、一方の接続部が陽極、他方の接続部が負極とされ、積層されて互いに隣接する一方の電池モジュールにおける陽極である接続部と、他方の電池モジュールにおける負極である接続部とが互いに対向するように構成されているので、電池モジュールを積層してかつコネクタによって電気的に導通させることによって、各電池モジュールを直列に接続することができる。したがって、積層する電池モジュールの数量を変更することによって、組電池としての電気容量を変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係る組電池における電池モジュール同士を接続するコネクタの構成を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図2】この発明に利用することのできる電池モジュールが積層された状態を示す斜視図である。
【図3】その電池モジュールの構成の一例を示す分解斜視図である。
【図4】この発明に係る組電池における電池モジュール同士を接続するコネクタの他の構成を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図5】この発明に係る組電池における電池モジュール同士を接続するコネクタの更に他の構成を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図6】この発明に係る組電池における電池モジュール同士を接続するコネクタの更に他の構成を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図7】この発明に係る組電池における電池モジュール同士を接続するコネクタの更に他の構成を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎにこの発明に係る組電池の構成について説明する。この発明に係る組電池は、図2に示すように複数の電池モジュール1がコネクタ2によって電気的に直列に接続され、かつ各電池モジュール1,1を積層して構成されている。ここで、それら電池モジュール1の構成の一例について説明する。図3は、電池モジュール1の構成を説明するための分解斜視図である。図に示す電池モジュール1は、平板状もしくは扁平状(以下、これらを単に平板状という)のセルを容器の内部に収納し、かつコネクタ2を介在させて積層もしくは配列することにより相互に導通できるように構成されている。図3に示す例は、2枚のセル3A,3Bをケースの内部に収納して構成した電池モジュール1の例であり、各セル3A,3Bは矩形もしくは方形の平板状に形成されており、その所定の一つの辺に相当する側縁部に、アルミ、銅などの薄い金属片からなる正極のリード端子4A,4Bおよび負極のリード端子5A,5Bが突出した状態に設けられている。なお、図3における上側のセル3Aにおける各リード端子4A,5Aは、先端部が幾分、図3での下側になるようにクランク状に屈曲しており、また図3における上側のセル3Bにおける4B,5Bは、先端部が幾分、図3での上側になるようにクランク状に屈曲している。
【0023】
上記のセル3A,3Bの間には、これらのセル3A,3Bに挟み込まれた状態に配置されるサポートプレート6が設けられている。サポートプレート6は上記のセル3A,3Bの一方の面とほぼ等しい面積、あるいはそれより広い面積の平板状の部分6Aと、その平板状の部分6Aにおける対向する二辺側に設けられた複数の台座部6B,6C,6Dとを備えている。なお、以下の説明では、これらの台座部6B,6C,6Dを、順に、第一台座部6B、第二台座部6C、第三台座部6Dとする。これらの台座部6B,6C,6Dのうち、セル3A,3Bにおける前記リード端子4A,5A,4B,5Bが形成されている側縁とは反対側の側縁に近い第一台座部6Bは、平板状の部分6Aの一つの側縁の全長に亘って形成され、この第一台座部6Bは、平板状の部分6Aに対してその一方の面側(図3の下面側)にオフセットしている。すなわち、平板状の部分6Aに対してクランク状に折り曲げられている。また、この第一台座部6Bの長手方向の両端部に比較的大径の固定孔7が形成され、これに近接して小径のピン孔8が形成されている。
【0024】
平板状の部分6Aの上記の第一台座部6Bとは反対側の側縁における各端部に幅(もしくは長さ)の小さい第二台座部6Cがそれぞれ形成されており、これらの第二台座部6Cには上記の固定孔7およびピン孔8と同様の固定孔7およびピン孔8が形成されている。また、これらの第二台座部6Cは、上記の長い第一台座部6Bと同様に平板状の部分6Aに対してその一方の面側(図3の下面側)にオフセットしている。すなわち、平板状の部分6Aに対してクランク状に折り曲げられている。
【0025】
さらに、平板状の部分の周縁部のうち上記の長短(大小)の第一および第二台座部6B,6Cが形成されていない一対の側縁部は、一方の面側(図3の下側)に折り曲げられている。その折り曲げ幅(深さ)は、セル3A,3Bの厚さ以下であって、セル3A,3Bの側面が引っ掛かる程度である。したがって、サポートプレート6は、上記の各台座部6B,6Cが平板状の部分6Aに対してクランク状に屈曲し、これ以外の側縁部が上記のように折り曲げられていることにより、全体として深さの浅い箱形になっている。その深さは、一つのセル3Bの厚さ程度であって、セル3Bを前後左右に相対的に移動しないようにその箱形の部分に嵌め込むことができるようになっている。また、箱形にすることにより、平板状の部分6Aに対して垂直ないわゆる壁部が形成されるので、サポートプレート6の全体としての剛性が高くなって撓みなどの変形が生じにくくなっている。なお、このような剛性の向上のためには、上記のような箱形に構成する以外に、平板状の部分6Aのいずれかの箇所にビードもしくはリブを形成してよい。
【0026】
上記の一対のいわゆる小さい第二台座部6Cの間に、前記正負のリード端子4A,5A(もしくは4B,5B)の間隔より小さい幅(もしくは長さ)の第三台座部6Dが形成されている。この第三台座部6Dは、平板状の部分6Aに対して屈曲せずに平板状の部分6Aを延長した板状の部分であり、後述するバスバー9A,9Bを固定するための部分である。したがって、この第三台座部6Dには、バスバー9A,9Bを取り付けるための複数の取り付け孔が形成されている。
【0027】
図3に示すこの発明に係る電池モジュールは、マイクロコンピュータやセンサ、それらを接続しているFPC(フレキシブル・プリント・サーキット)やFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)などからなる基板10を備えている。この基板10は、上述した第一台座部6Bの幅と同程度の幅の細長い部材であって、信号を授受するポート部10Aがその中央部に設けられている。また、この基板10を上記のサポートプレート6に取り付けるための基板ホルダ11が設けられている。基板ホルダ11は、前述した第一台座部6Bに載せられて固定されるように、第一台座部6Bと同程度の幅の細長い部材であり、その両端部には中空の円柱部11Aがそれぞれ一体に形成されている。これらの円柱部11Aの間隔は、前述した第一台座部6Bに形成されている二つの固定孔7の間隔と同じであり、また各円柱部11Aの上下両端部は、上記の固定孔7の内径とほぼ等しい外径でかつ第一台座部6Bや後述するケースを形成している金属板の板厚とほぼ等しい高さ(長さ)に突出している。この突出部11Bを固定孔7に嵌合させることにより、基板ホルダ11と第一台座部6Bもしくはケースとを連結し、かつ上下の突出部11Bに嵌合させられている部材の間隔を保持するようになっている。なお、各円柱部11Aの近傍には、前述したピン孔8と位置および径が一致するピン孔11Cが形成されている。さらに、基板ホルダ11の適宜な位置に、基板10を取り付けるためのピン11Dが設けられ、また長手方向の中央部には、基板10を挟み込む一対の板片からなる挟持部11Eが設けられている。
【0028】
ここで、バスバー9A,9Bについて説明すると、各セル3A,3Bのリード端子4A,4B,5A,5Bを外部に導通させるためのものであって、矩形断面の棒状材であり、その表面は絶縁処理され、一方の端部にアルミや銅などからなる導電性の端子12A,12Bが長手方向に突出して設けられている。また、バスバー9A,9Bの中心部には、上記の端子12A,12Bに導通したコネクタ受け部(図示せず)が内部に露出して設けられたコネクタ孔13A,13Bが設けられている。なお、一方のバスバー9Aが正極で、他方のバスバー9Bが負極とされ、したがって一方のバスバー9Aにおける端子12Aが、各セル3A,3Bにおける正側のリード端子4A,4Bに挟み込まれ、他方のバスバー9Bにおける端子12Bが、各セル3A,3Bにおける負側のリード端子5A,5Bに挟み込まれるように構成されている。
【0029】
これらのバスバー9A,9Bが設けられている側でサポートプレート6をケースに対して固定するリードホルダ14が設けられている。リードホルダ14は両端部に中空の円柱部14Aが一体化されている細長い部材であって、その円柱部14Aは前述した基板ホルダ11における円柱部11Aと同様の形状に構成されている。すなわち、円柱部14Aの間隔は、前述した第二台座部6Cに形成されている二つの固定孔7の間隔と同じであり、また各円柱部14Aの上下両端部は、上記の固定孔7の内径とほぼ等しい外径でかつ第二台座部6Cや後述するケースを形成している金属板の板厚とほぼ等しい高さ(長さ)に突出している。この突出部14Bを固定孔7に嵌合させることにより、リードホルダ14と第二台座部6Cもしくはケースとを連結し、かつ上下の突出部14Bに嵌合させられている部材の間隔を保持するようになっている。なお、各円柱部14Aの近傍には、前述したピン孔8と位置および径が一致するピン孔14Cが形成されている。
【0030】
上記のセル3A,3Bやサポートプレート6などを収容するケースは、薄い(浅い)凹断面形状のいわゆる本体部15Aと、その開口端に取り付けられて閉鎖する蓋体15Bとから構成されている。これら本体部15Aと蓋体15Bとは、上記のサポートプレート6の輪郭程度もしくはそれより幾分大きい内法をもった矩形もしくは方形に形成されており、本体部15Aおよび蓋体15Bにおける四つのコーナ部で前記サポートプレート6の第一および第二の台座部6B,6Cにおける各固定孔7に対応する位置に、各固定孔7と同様の固定孔16が形成されている。また、本体部15Aにおけるこれらの固定孔16に隣接する位置で前記サポートプレート6の第一および第二の台座部6B,6Cにおける各ピン孔8に対応する位置に、各ピン孔8と同様のピン孔17が形成されている。さらに、本体部15Aには、前述した一方のバスバー9Bにおけるコネクタ孔13Bに対応してこのコネクタ孔13Bより大径のコネクタ窓孔18Aが形成されている。これと同様にこの蓋体15Bには、前述した他方のバスバー9Aにおけるコネクタ孔13Aに対応してこのコネクタ孔13Aより大径のコネクタ窓孔18Bが形成されている。さらに、本体部15Aおよび蓋体15Bのそれぞれには、前述したポート部10Aを外部に対して開口させるポート孔19A,19Bが、前記ポート部10Aに対応する箇所に形成されている。
【0031】
上記の電池モジュールは、前記本体部15Aにセル3A,3Bやサポートプレート6などを図3に示す順序で配列して収容し、その本体部15Aを蓋体15Bによって閉じることにより構成される。その組み立ての順序は任意であるが、例えばサポートプレート6に他の各部材を取り付け、そのユニット化されたものを本体部15Aに入れて蓋体15Bによって閉じればよい。先ず、サポートプレート6における第三台座部6Dに上下のバスバー9A,9Bを取り付ける。その場合、それぞれの端子12A,12Bが対応する極側のリード端子4A,5A,4B,5B側に延びているように向きを定めて取り付ける。なお、その取付は、上下のバスバー9A,9Bに形成されているピンを第三台座部6Dに貫通孔を通して互いに嵌合させることにより行えば良く、あるいはネジ止めや接着などの方法を採用してもよい。
【0032】
ついで、サポートプレート6の上下のそれぞれにセル3A,3Bを組み付ける。その場合、サポートプレート6が前述したように浅い箱状に構成されているので、図3での下側のセル3Bはその内部に嵌め込まれることになる。このセル3Bは両面テープなどの粘着材を介してサポートプレート6の下面に貼り付けてもよい。また、図3での上側のセル3Aはサポートプレート6の上面に載せられるが、その場合、粘着材を介してサポートプレート6の図3での上面に貼り付けてもよい。サポートプレート6の上下両面にセル3A,3Bを配置することにより、正極のリード端子4A,4Bが正極側のバスバー9Aの端子12Aを挟み付けて電気的に導通し、また負極のリード端子5A,5Bが負極側のバスバー9Bの端子12Bを挟み付けて電気的に導通する。なお、電気的な導通を確実にするためにハンダ付けされていてもよい。
【0033】
セル3A,3Bおよびバスバー9A,9Bが上記のように組み付けられたサポートプレート6をケースを構成している前記本体部15Aの内部に嵌め込むと、第一台座部6Bおよび第二台座部6Cにそれぞれ形成されている固定孔7が、本体部15Aに形成されている固定孔16に一致し、またピン孔8が本体部15Aに形成されているピン孔17に一致する。この状態で第一台座部6Bの上に基板ホルダ11を載せると、その両端部に形成されている円柱部11Aにおける突出部11Bがサポートプレート6の固定孔7、あるいはこれに加えて本体部15Aの固定孔16に嵌合してこれらが連結される。
【0034】
また同様に、第二台座部6Cの上にリードホルダ14を載せると、その両端部に形成されている円柱部14Aにおける突出部14Bがサポートプレート6の固定孔7、あるいはこれに加えて本体部15Aの固定孔16に嵌合してこれらが連結される。そして、本体部15Aの図3における底面側からピン孔17に固定ピン20を挿入すると、その先端部は各ホルダ11,14におけるピン孔11C,14Cまで到り、したがってその先端部をカシメルなどのことによりサポートプレート6が各ホルダ11,14を介して本体部15Aに固定される。このようにして固定された基板ホルダ11に基板10を載せると、基板ホルダ11におけるピン11Dや挟持部11Eに基板10が係合し、基板10が基板ホルダ11によって保持される。なお、図3における下側のバスバー9Bにおけるコネクタ孔13Bが本体部15Aに形成されているコネクタ窓孔18Aを介して外部に開口する。また同様に、基板10におけるポート部10Aが、本体部15Aに形成されているポート孔19Aを介して外部に開口している。
【0035】
上記のようにして各セル3A,3Bやサポートプレート6などを本体部15Aに納めた状態で、本体部15Aに対する向きを整えた状態で蓋体15Bを本体部15Aの開口端に被せると、蓋体15Bが本体部15Aの開口端に嵌り込むとともに、前述した各円柱部11A,14Aにおける突出部11B,14Bが蓋体15Bに形成されている固定孔16が嵌合し、両者が連結される。また、図3における上側のバスバー9Aにおけるコネクタ孔13Aが蓋体15Bに形成されているコネクタ窓孔18Bを介して外部に開口し、同様に、基板10におけるポート部10Aが、蓋体15Bに形成されているポート孔19Bを介して外部に開口する。
【0036】
上述したように電池モジュール1を構成することによって、本体部15Aと蓋体15Bとからコネクタ孔13A,13Bが開口するので、銅合金などの導電性の材料により構成されたコネクタ2を、それらのコネクタ孔13A,13Bに嵌合させて、電池モジュール1を図2に示すように積層することによって、その積層した電池モジュール1の個数に応じた電気容量の組電池を構成することができる。つまり、多くの電池モジュール1,1を直列に接続して積層することによって大容量電池を構成することができる。
【0037】
また、上記コネクタ2および各コネクタ孔13A,13Bの寸法誤差により、コネクタ2の外径が各コネクタ孔13A,13Bの内径よりも大きくなってしまい、コネクタ2が各コネクタ孔13A,13Bに嵌合しない場合や、コネクタ2の外径が各コネクタ孔13A,13Bの内径より相対的に小さくなってしまい、コネクタ2の嵌合が不完全で、外部から衝撃や振動を受けた際に、各コネクタ孔13A,13Bから外れてしまったり、接続が不完全な状態となってしまったりする可能性がある。したがって、この発明に係る組電池における各電池モジュールを接続するコネクタ2は、弾性変形して外径が収縮するように構成されている。
【0038】
そのコネクタ2の構成について具体的に説明する。図1は、コネクタ2の構成を説明するための図であり、図1の(a)はコネクタ2の斜視図、図1の(b)は側面図を示している。図に示すコネクタ2は、中空状に形成された円筒状の部材であって、そのコネクタ2の軸線方向における中央部には、各コネクタ孔13A,13Bの内径より大きい外径を有する係止部2aが形成されている。この係止部2aは、電池モジュール1を積層したときの各電池モジュール1,1同士の隙間を一定に保つため、あるいはコネクタ2が一方のコネクタ孔13A(13B)に多く挿入されてしまって、他方のコネクタ孔13B(13A)と嵌合する量が少なくなって接続が不完全となることを防止するためのものであり、係止部2aの軸線方向における長さは、電池モジュール1を積層した場合の各電池モジュール1,1同士の隙間に応じて設定されている。
【0039】
また、その係止部2aの両側には、コネクタ孔13A,13Bに挿入されるとともに、コネクタ受け部と接触して導通するように構成された挿入部2b,2cが形成されている。したがって、挿入部2b,2cの外径は、コネクタ孔13A,13Bの内径と同一もしくは若干小さく形成されている。
【0040】
そして、コネクタ2の軸線方向に亘ってスリット21が形成されている。図に示す例では、所定の幅のスリット21がコネクタ2の中心軸線に沿って、そのコネクタ2の全長に亘って形成されている。そのため、コネクタ2は半径方向から荷重を受けることによって、そのスリット2の幅が狭まる方向に弾性変形することができる。したがって、コネクタ孔13A,13Bの内径が小さく形成されている場合には、スリット21を狭めるように押圧しながらコネクタ2の挿入部をコネクタ孔13A,13Bに挿入することができる。また、コネクタ2の挿入部2b,2cをコネクタ孔13A,13Bに挿入した状態では、そのコネクタ2が元の外径となるようにコネクタ孔13A,13Bの内壁面に力を作用させるので、コネクタ2がコネクタ孔13A,13Bから抜け難くなる。
【0041】
また、各コネクタ孔13A,13Bの内径が同一に形成されるとは限られないため、上記のようにスリット21を形成すると、相対的に内径が小さい側のコネクタ孔13A(13B)に応じてコネクタ2が弾性変形してしまい、相対的に内径が大きい側のコネクタ孔13B(13A)とコネクタ2との嵌合が不十分となる可能性がある。したがって、コネクタ2の一方の挿入部2b(2c)の弾性変形に影響されて、他方の挿入部2c(2b)が弾性変形してしまうことを抑制することができる、つまり、両側の挿入部2b,2cが独立して弾性変形することができるコネクタ2の他の例を説明する。図4は、コネクタ2の他の構成を説明するための図であり、図4の(a)はそのコネクタ2の斜視図、図4の(b)は側面図を示している。図4に示すコネクタ2は、係止部2aの両側の挿入部2b,2cの端面から軸線方向に沿ってそれぞれスリット22a,23aが形成されており、それらのスリット22a,23aが係止部2aによって二分されている。また、そのスリット22a,23aの係止部2a側の端部から円周方向に所定の長さを有するスリット22b,23bが形成されている。
【0042】
このようにコネクタ2を構成することによって、一方の挿入部2b(2c)がコネクタ孔13A(13B)の内径に応じて弾性変形した場合であっても、他方の挿入部2c(2b)は、挿入部2b(2c)とは独立して弾性変形をすることができるので、それぞれの挿入部2b,2cは、嵌合するコネクタ孔13A,13Bの内径に応じて弾性変形をすることができる。つまり、一方の挿入部2b(2c)の弾性変形に影響されて他方の挿入部2c(2b)が弾性変形してしまうことを抑制することができる。したがって、コネクタ2が抜けたりあるいはコネクタ2とコネクタ受け部とが接続不良になったりすることを抑制もしくは防止することができる。また、円周方向に形成されるスリット22b,23bの方向は、図4の(b)における上側と下側とが反対となるように形成することが好ましい。これは、例えば、電池モジュール1を交換するときなどには、コネクタ2と嵌合した一方の電池モジュール1を回転させながらコネクタ2をコネクタ孔13A(13B)から外すため、他方の電池モジュール1と嵌合している側の挿入部2c(2b)がコネクタ孔13B(13A)の内壁面と干渉してあるいは引っかかって、スリット23a(22a)の幅が大きくなってしまうことなどを抑制もしくは防止するためである。
【0043】
なお、図4に示すコネクタ2のスリット22a,22b,23a,23bは、図5に示すように螺旋状のスリット24a,24bとしてもよい。すなわち、一方の挿入部2bの端部から係止部2aに亘って螺旋状のスリット24aを形成し、他方の挿入部2cの端部から係止部2aに亘って螺旋状のスリット24bを形成するように構成してもよい。また、それら螺旋状のスリット24a,24bは、上記円周方向に形成されたスリット22b,23bと同様の理由により同一回転方向に形成することが好ましい。このようにスリットを螺旋状に形成することによって、挿入部2b,2cの外周面とコネクタ孔13A,13Bの内周面とが、円周方向の全面に亘って接触することができる。
【0044】
さらに、この発明に係る組電池における電池モジュール1,1同士を接続するコネクタ2は、図6や図7に示すように複数のスリットを形成したものであってもよい。また、図に示すようにコネクタ2は、円柱状に形成したものであってもよい。なお、図6および図7に示すコネクタ2は、コネクタ2の円周方向において90度毎にスリット25が形成されており、図6に示すコネクタ2は、一方の挿入部2bに形成されたスリット25と他方の挿入部2cに形成されたスリット26とが45度ずつずらして形成されている。また、それらのスリット25,26が係止部2aの一部まで形成されているが、これはコネクタ2が弾性変形した場合の反力を所定の反力にするためである。つまり、嵌合する力を設定するためである。
【0045】
上述したように構成されたコネクタ2を、積層する各電池モジュール1,1の各コネクタ孔13A,13Bに嵌合させ、ボルトやシャフトを固定孔16に挿入して、最下位の電池モジュール1と、最上位の電池モジュール1とを挟持することによって、その積層された電池モジュール1の数量に応じた電気容量の組電池を構成することができる。
【0046】
なお、この発明に係る組電池は、上述したように構成された電池モジュールに限られず、要はセルの端子と導通したコネクタ孔が積層される各電池モジュールの対向する面に形成され、そのコネクタ孔に挿入される弾性変形することができるコネクタを備えていればよい。また、そのコネクタは、円筒状もしくは円柱状のものに限らず、例えば、断面が方形のものであってもよい。さらに、コネクタの端面やコネクタ孔の端面に面取りなどを施してコネクタがコネクタ孔に挿入されやすくするなどしてあってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…電池モジュール、 2…コネクタ、 2a…係止部、 2b,2c…挿入部、 3A,3B…セル、 4A,4B…正極のリード端子、 5A,5B…負極のリード端子、 13A,13B…コネクタ孔、21,22a,23a,25,26…スリット(軸線方向)、 22b,23b…スリット(円周方向)、 24a,24b…螺旋状のスリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード端子によって互いに電気的に接続された複数のセルがケースの内部に収容されて構成された複数の電池モジュールを、積層しかつ電気的に接続して構成された組電池において、
積層されて互いに隣接する各電池モジュールは、該互いに隣接する一方の電池モジュールと該一方の電池モジュールに積層される他方の電池モジュールとが対向する面に開口しかつ前記リード端子と導通した接続部を備え、
前記各電池モジュールにおける各接続部に挿入されて、前記一方の電池モジュールと前記他方の電池モジュールとを導通させ、前記接続部の内法に応じて弾性変形するように構成されたコネクタを備えていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記コネクタは、前記一方の電池モジュールにおける前記接続部に挿入される一方の端部と、前記他方の電池モジュールにおける前記接続部に挿入される他方の端部とのそれぞれが弾性変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記コネクタは、該コネクタの端部から軸線方向に向けて形成されたスリット部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の組電池。
【請求項4】
前記スリット部は、前記コネクタの一方の端部から該一方の端部と前記コネクタの他方の端部との間まで形成された第1スリット部と、前記他方の端部から該他方の端部と前記一方の端部との間まで形成され、前記第1スリット部と交差しない第2スリット部とを有していることを特徴とする請求項3に記載の組電池。
【請求項5】
前記コネクタは、前記接続部の内法より外径が大きくかつ前記接続部に前記コネクタが挿入された状態で、該接続部の端部を当接させる係止部を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の組電池。
【請求項6】
前記スリット部は、螺旋状に形成されたスリット部を含むことを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の組電池。
【請求項7】
前記電池モジュールの表裏両面側のそれぞれに前記接続部が開口して設けられ、一方の接続部が陽極、他方の接続部が負極とされ、積層されて互いに隣接する一方の電池モジュールにおける陽極である接続部と、他方の電池モジュールにおける負極である接続部とが互いに対向するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41774(P2013−41774A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178903(P2011−178903)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【出願人】(000145183)株式会社七星科学研究所 (14)
【Fターム(参考)】