説明

経口または経皮送達されたニコチンの有害な影響を低下させる方法

本発明は概して、従来のタバコ使用中断プログラムにおいて、経口または経皮送達されるニコチンの有害な影響を低下させることに関する。より詳細には、幾つかの実施形態は、低量のニコチンおよびタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)を含むタバコ製品を提供することによって、従来のタバコ使用中断プログラムと関係があるニコチン摂取の有害な影響を低下させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、従来のタバコ使用中断プログラムにおいて、経口または経皮送達されるニコチンの有害な影響を低下させることに関する。より詳細には、幾つかの実施形態は、低量のニコチンおよびタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)を含むタバコ製品を提供することによって、従来のタバコ使用中断プログラムと関係があるニコチン摂取の有害な影響を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコ製品の中毒性は、ニコチンの存在および送達系の常習的使用(例えば、喫煙作用と関係がある経口固定、または噛みタバコ、煙の摂取、および風味)に大部分は原因がある。多くのタバコ使用中断プログラムは、タバコを使用する代わりとしてさまざまな量のニコチンを個体に与える、ニコチン補充療法(NRT)の使用を含む。NRTと関係がある幾つかのタイプのタバコ使用中断用製品が、現在入手可能である。例えば、ニコチンパッチ、ガム、カプセル、吸入器、鼻腔スプレー、およびトローチ剤は、従来のNRT製品である。これらの従来のNRT製品は、ニコチン禁断症状を抑制することによってタバコ使用者を助けることができるが、これらはタバコ使用者の送達系の常習的使用に関する熱望を満足させるためにはほとんど働かない。(Dotinga、Study Bursts Nicotine Gum's Bubble、Health-Health Scout News、2002年9月20日)。送達系の常習的使用と関係がある要因は、本明細書では以後「中毒の二次的要因」と呼ぶ。これらの中毒の二次的要因は主に、ニコチンに関する化学的依存性と偶発的関係のみを有する心理的要因である。
【0003】
従来のNRTは中毒の二次的要因をほとんど抑制しないという事実以外に、NRTは、人々がタバコの使用を止めるのを可能にする際に、非常に限られた成功のみしかもたらさなかった。例えば、処方箋無しのNRTガムの使用者の中では、禁断率は6週間で16.1%、6カ月で8.4%であり、一方、処方箋有りのNRTガムの使用者に関しては、禁断率は6週間で7.7%、6カ月で7.7%であった。(Shiffmanら、Addiction 97 : 505〜516、2002)。NRTパッチの使用者は、ごくわずかに良い結果を経た;処方箋無しのパッチの使用者は6週間で19.0%の禁断率、および6カ月で9.2%の禁断率を有すると報告され、一方、処方箋有りのNRTパッチの使用者は6週間で16.0%の禁断率、および6カ月で3.0%の禁断率を経た。パッチまたはガムを用いた喫煙の中断が12カ月で20%の範囲の立証済みの禁断率を示す点で、他者はわずかに良い結果を報告している。(O'Brien Lecture given to medical students at the University of Pensylvania、1995年9月22日)。しかしながら一つの研究は、カリフォルニアの喫煙者の長期の首尾良い中断期間を増大させる際に、NRTは決して有効ではないとまで言っている。(PierceおよびGilpin、Jama、228 : 1260〜1264(2002))。タバコ中毒はニコチン依存と結び付いた心理的要因(すなわち二次的要因)の複合網であり、既存のNRTは大部分が無効であるらしいことは明らかである。
【0004】
計画的に従来のNRTは、タバコ使用者が中毒の二次的要因に関する彼らの熱望を精神的に抑えながら、タバコ使用者に彼らの一日当たりのニコチン摂取を徐々に減らさせることに頼るものである。しかしながら実際は、多くのプログラム参加者は、タバコに関する中毒状態をより一層高価なNRT製品への中毒に置き換えるのみである。幾つかの場合、プログラム参加者は、中毒の二次的要因の達成感の欠如を補うために従来のタバコ使用から彼らが摂取すると思われるニコチンより、はるかに多量のニコチンを摂取する。他の場合、プログラム参加者は、最初のプログラムが終了した後に、長期間NRT製品を使用し続け、最終的にタバコ製品を返する。
【0005】
多量のニコチンの摂取およびNRTの長期の使用によって、重大な健康上の懸念が生じる。幾つかの場合、ニコチンの過剰投与が、NRT製品の熱心すぎる使用によって可能性がある。ニコチンの過剰投与の症状には、悪心および/または嘔吐、増大したよだれ(重度)、腹部または胃の痛み(重度)、下痢(重度)、青白い皮膚、冷や汗、頭痛(重度)、目まい(重度)、聴覚および視覚障害、震え、錯乱状態、衰弱(重度)、過度の疲労、失神、低血圧、呼吸困難(重度)、異常な鼓動、または痙攣(発作)がある。心理的ストレスが長期間NRTを使用する個体において生じる可能性もある。何故ならニコチンが、身体中のストレス応答を刺激するホルモンである、エピネフリンを放出させるからである。ニコチンの心理的影響には刺激反応性、不安、睡眠障害、神経質、憂鬱な気分および気質、頭痛、疲労、悪心、およびタバコに関する長期の熱望がある。
【0006】
さらに近年の調査によって、ニコチンは炎症期中に血管の増大を刺激し、血管形成、アテローム性動脈硬化症および腫瘍の増大を助長することがわかっている。(Heeschenら、Nature Medicine 7 : 833、2001)。ニコチンは、身体の独自の代謝系による4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)などの発癌性物質の内因的形成に関する前駆体である可能性もある。(Hechtら、Proc.Nat.Acad.Sci97 : 12493〜12497、2000)。低量のニコチンおよびTSNAを含むタバコ製品を使用する、ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムに関する必要性が依然として存在する。
【非特許文献1】Dotinga、Study Bursts Nicotine Gum's Bubble、Health-Health Scout News、2002年9月20日
【非特許文献2】Shiffmanら、Addiction 97 : 505〜516、2002
【非特許文献3】O'Brien Lecture given to medical students at the University of Pensylvania、1995年9月22日
【非特許文献4】PierceおよびGilpin、Jama、228 : 1260〜1264 (2002)
【非特許文献5】Heeschenら、Nature Medicine 7 : 833、2001
【非特許文献6】Hechtら、Proc.Nat.Acad.Sci97 : 12493〜12497、2000
【非特許文献7】Modifying Nicotine and Nitrosamine levels in Tobacco
【特許文献1】WO02100199
【特許文献2】米国仮特許出願第60/371635号
【特許文献3】米国特許第6,586,661号
【特許文献4】米国特許第6,423,520号
【特許文献5】PCT/US98/11893
【特許文献6】米国特許出願第09/941,042号
【非特許文献8】Leggら、(1969) J.Hered.60、213〜217
【非特許文献9】Collinsら、((1974) Crop Sci.14、77〜80)
【非特許文献10】LeggおよびCollins (1971) Can.J.Genet.Cytol.13、287〜291
【非特許文献11】SaunderおよびBush (1979) Plant Physiol 64 : 236
【非特許文献12】Lette (1983) In : Alkaloids : Chemical and Biological Perspectives、S.W.Pelletier、ed John Wiley and Sons、pp.85〜152
【非特許文献13】Fethら、Planta、168、pp.402〜07 (1986)
【非特許文献14】Wagnerら、Physiol.Plant.68、pp.667〜72 (1986)
【非特許文献15】WagnerおよびWagner、Planta 165 : 532 (1985)
【非特許文献16】Hibiら、((1994) Plant Cell、6、723〜735)
【特許文献7】米国特許第5,369,023号
【特許文献8】米国特許第5,260,205号
【特許文献9】PCT出願WO94/28142
【特許文献10】PCT出願WO98/56923
【特許文献11】米国特許出願第09/941,042号
【非特許文献17】Cornelissenら、「Both RNA Level and Translation Efficiency are Reduced by Anti-Sense RNA in Transgenic Tobacco」、Nucleic Acid Res.17pp.833〜43 (1989)
【非特許文献18】Rezaianら、「Anti-Sense RNA of Cucumber Mosaic Virus in Transgenic Plants Assessed for Control of the Virus」、Plant Mol.Biol.11pp.463〜71 (1988)
【非特許文献19】Rodermelら、「Nuclear-Organelle Interactions : Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell 55、pp.673〜81 (1988)
【非特許文献20】Smithら、「Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes」、Nature 334 pp.724〜26 (1988)
【非特許文献21】Van der Krolら、「An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation」、Nature 333、pp.866〜69 (1988)
【非特許文献22】Lamら、「Site-Specific Mutations Alter In Vitro Factor Binding and Change Promoter Expression Pattern in Transgenic Plants」、Proc.Nat.Acad Sci. USA 86 pp.7890〜94 (1989)
【非特許文献23】Poulsenら、「Dissection of 5' Upstream Sequences for Selective Expression of the Nicotiana plumbaginifolia rbcS-8B Gene」、Mol.Gen.Genet.214、pp.16〜23 (1988)
【特許文献12】米国特許第5,459,252号
【非特許文献24】Yamamotoら、Plant Cell 3 : 371 (1991)
【特許文献13】米国特許出願SN08/508,786
【特許文献14】PCTWO9705261
【特許文献15】米国特許第4,990,607号
【特許文献16】米国特許第5,223,419号
【特許文献17】米国特許第5,834,236号
【特許文献18】米国特許第6,191,258号
【非特許文献25】Siebertら、Plant Cell 1: 961〜8 (1989)
【非特許文献26】Bustosら、Plant Cell 1: 839〜853 (1989)
【非特許文献27】Wangら、Mol.Cell Biol.12 : 3399〜3406 (1992)
【非特許文献28】Adamら、Plant Mol Biol 29 : 983〜993 (1995)
【非特許文献29】Geffersら、Plant Mol Biol 43 : 11〜21 (2000))
【特許文献19】米国特許第5,792,922号
【非特許文献30】Raumbautsら、Nucleic acids Research 27 : 295〜296 (1999)
【非特許文献31】Higoら、Nucleic acids Research 27 : 297〜300 (1999)
【非特許文献32】Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2d Ed.1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)
【特許文献20】WO00055333
【特許文献21】WO09913085
【特許文献22】米国特許第5599670号
【特許文献23】米国特許第5432081号
【特許文献24】米国特許第5268463号
【特許文献25】米国特許第4,459,355号
【特許文献26】米国特許第4,795,855号
【特許文献27】米国特許第4,940,838号
【特許文献28】米国特許第4,945,050号
【特許文献29】米国特許第5,015,580号
【非特許文献33】Shillitoら、「Direct Gene Transfer to Protoplasts of Dicotyledonous and Monocotyledonous Plants by a Number of Methods、Including Electroporation」、Method Enzymol.153、pp.313〜36 (1987)
【特許文献30】米国特許第4,499,911号
【特許文献31】米国特許第5,685,710号
【特許文献32】米国特許第3,905,123号
【特許文献33】米国特許第3,840,025号
【特許文献34】米国特許第4,192,323号
【非特許文献34】Conklingら、Plant Phys.93、1203 (1990)
【非特許文献35】Leggら、Can.J.Genet.Cytol.13、287〜91 (1971)
【非特許文献36】Leggら、J.Hered.60、213〜217 (1969)
【非特許文献37】Tso、T.C.、1972、Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants.Dowden、Hutchinson、and Ross、Inc.Stroudsbury
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のタバコ使用中断プログラムと関係があるニコチン摂取の有害な影響を低下させる方法に関する。より詳細には、低レベルのタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)を有するタバコ製品を提供する。さらに、これらの低TSNAタバコ製品を作製またはブレンドする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態では、
第1のタバコ;(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた第2のタバコを用意すること;および
第1のタバコと第2のタバコをブレンドして低ニコチンタバコを得ること
によって、ブレンド低ニコチンタバコを作製する方法を提供する。この方法によって生成されるブレンド低ニコチンタバコを有するタバコ製品も提供する。
【0009】
他の実施形態では、
第1のタバコ;(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた第2のタバコを用意すること;および
第1のタバコと第2のタバコをブレンドして低TSNAタバコを得ること
によって、ブレンド低TSNAタバコを作製する方法を提供する。この方法によって生成されるブレンド低TSNAタバコを有するタバコ製品も提供する。
【0010】
さらに他の実施形態では、
一定量のニコチンを有する第1のタバコ;(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた、一定量のニコチンを有する第2のタバコを用意すること;および
第1のタバコと第2のタバコをブレンドして、所望量のニコチンを有する低ニコチンタバコ製品を生成すること
によって、所望量のニコチンを有する低ニコチンタバコ製品を作製する方法を提供する。低ニコチンタバコ製品は、例えばブレンドシガレットであってよい。ブレンドシガレットは、例えば0.6mg以下のニコチン、0.3mg以下のニコチン、または0.05mg以下のニコチンを含むことができる。これらの方法よって生成されるブレンド低ニコチンタバコを有するタバコ製品も提供する。さらに、これらの方法よって生成されるタバコ製品を有するタバコ使用中断キットを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、
一定量のTSNAを有する第1のタバコ;(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた、一定量のTSNAを有する第2のタバコを用意すること;および
第1のタバコと第2のタバコをブレンドして、所望量のTSNAを有する低TSNAタバコ製品を生成すること
によって、所望量のTSNAを有する低TSNAタバコ製品を作製する方法を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、
(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する第1のタバコ製品;および(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する第2のタバコ製品(ここで、第2のタバコ製品は、第1のタバコ製品より少ないニコチンを有する)をタバコ使用者に提供すること;
(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する追加のタバコ製品をタバコ使用者に提供すること(ここで、追加のタバコ製品は、連続的に減少する量のニコチンを有し、第1または第2のタバコ製品より少量のニコチンを有する含む第3の製品で始める)
によって、タバコ使用者のニコチン消費を低下させる方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態は、
(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する第1のタバコ製品;および(同種の非改変型タバコ植物と比較して)低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する第2のタバコ製品(ここで、第2のタバコ製品は、第1のタバコ製品より少ないTSNAを有する)をタバコ使用者に提供すること;
同種の非改変型タバコ植物と比較して、低レベルのQPTaseを有する改変型タバコ植物から生成させたタバコを有する追加のタバコ製品をタバコ使用者にさらに提供すること(ここで、追加のタバコ製品が連続的に減少する量のTSNAを有し、第1または第2のタバコ製品より少量のTSNAを有する第3の製品で始める)
によって、タバコ使用者のTSNA消費を低下させる方法を提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、選択した量のニコチンを有するブレンドタバコ製品を調製するための、低量のQPTaseを有するタバコ植物から生成させた遺伝的に改変されたタバコの使用を提供する。ブレンドタバコ製品は、例えばブレンドシガレットであってよい。ブレンドタバコ製品は、例えば0.6mg以下のニコチン、0.3mg以下のニコチン、または0.05mg以下のニコチンを有するブレンドシガレットであってよい。
【0015】
本発明の他の実施形態は、選択した量のTSNAを有するブレンドタバコ製品を調製するための、低量のQPTaseを有するタバコ植物から生成させた遺伝的に改変されたタバコの使用を提供する。ブレンドタバコ製品は、例えばブレンドシガレットであってよい。ブレンドタバコ製品は、例えば0.6mg以下のニコチン、0.3mg以下のニコチン、または0.05mg以下のニコチンを有するブレンドシガレットであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、低量のニコチンおよびTSNAを含む改変型タバコ製品の使用を含む、ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムに関する。大部分のタバコ中断プログラムはニコチン補充療法(NRT)に強く頼るものであるが、本明細書に記載する多くの実施形態は、ニコチン補充にはあまり焦点を当てておらず、煙の摂取、経口固定、および風味などの中毒の二次的要因の置き換えに、より焦点を当てている。「Modifying Nicotine and Nitrosamine levels in Tobacco(WO02100199)」という表題の同時係属出願、これは英語で公開され米国に指定され、米国仮特許出願第60/371635号に対する優先権を主張するものであった。関連米国特許第6,586,661号および米国特許第6,423,520号も、その全容が参照により組み込まれている。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態は、従来のタバコ製品とほとんど区別できない燃焼性および嗜好性を有する低ニコチンおよびTSNAのタバコ製品の使用に関する。このような低ニコチンおよび/またはTSNA製品を作製するための多くの方法が存在するが、好ましい方法は植物の遺伝子工学処理における技法を使用して、ニコチン生合成と関係がある酵素を減少させるかあるいは排除する。好ましくは、植物の遺伝子工学処理における技法を使用して、毛根皮質におけるニコチンの生成と関係がある、酵素キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)の量を選択的に減少させる。本明細書に記載する教示および当分野の技術レベルにより、タバコ植物中のQPTaseのレベルを低下させるための多くの方法が存在する可能性があるが、好ましい方法はアンチセンス技術または分子デコイ技術の使用を含む。
【0018】
低量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコおよびタバコ製品を作製するための、幾つかの手法が発見されてきている。興味深いことに、タバコ植物中のTSNA含量は、タバコ植物中のニコチン含量を減少させることによって低下させることができることが発見された。幾つかの実施形態では、アンチセンス技術を使用して、タバコ植物中のニコチンおよびTSNAレベルを低下させる。(PCT/US98/11893を参照)。他の実施形態では、分子デコイ技術を使用して、タバコ植物中のニコチンおよび/またはTSNAレベルを低下させる(米国特許出願第09/941,042号を参照)。
【0019】
一手法によって、例えば、QPTase遺伝子(配列番号1)の少なくとも一部分に対するアンチセンスRNAをコードするDNA構築体を、RNAの相補鎖の転写が内在性キノリン酸ホスホリボシル遺伝子の発現を低下させ、したがってニコチンの量、同時にタバコ植物中のTSNAの量を低下させるように調製する。他の手法によって、5'上流の制御エレメント(例えば、Nic1およびNic2転写因子結合部位)に対応する核酸断片である、QPTase遺伝子に関する転写因子の分子デコイを植物細胞中に挿入する。転写因子は内在性転写因子結合部位ではなくデコイ断片と結合し、QPTaseの転写のレベルの低下が得られる。
【0020】
低量のニコチンおよび/またはTSNAを有するトランスジェニックタバコ植物をひとたび作製した後、そのタバコを従来の方法によって採取し乾燥処理し、さまざまなタバコ製品中に取り込ませる。特定量のニコチンおよび/またはTSNAが特定の製品中で得られるように、トランスジェニックタバコをブレンドすることが好ましい。すなわち、ニコチンおよび/またはTSNAの量がさまざまであるタバコ製品を作製するようにブレンドを行う。この方法において、段階式のタバコ使用中断プログラムを確立することができる。このプログラムにおいては、プログラム参加者は、非常にわずかな少量のニコチンを有するタバコ製品を用いる工程1でプログラムを始め;工程2では、プログラム参加者は工程1で使用した製品より少量のニコチンを有するタバコ製品の使用から始め;工程3では、プログラム参加者は工程2の製品より少量のニコチンを有するタバコ製品の使用から始めるなどの、特定のタバコ使用中断プログラムに関して望む限り多くの工程を行うことができる。最終的に、プログラム参加者によって使用されるタバコ製品は、中毒状態になるのに必要とされるかあるいは中毒状態を維持する量より少ない、ニコチンの量を有することができる。このようにして、プログラム参加者のニコチン摂取を制限するが、煙の摂取、経口固定、および風味(これらだけには限られないが)を含めた中毒の二次的要因を保留する、ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムを提供する。以下の項は、本明細書に記載するタバコ使用中断プログラムと共に使用することができるタバコ製品を記載する。
【0021】
(ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムにおいて使用するためのタバコ製品)
野生型タバコは、その種類およびそれを生育、採取し乾燥処理する方法に応じて、TSNAおよびニコチンの量が著しく変化する。例えば、典型的なバーレー種タバコの葉(Burley tobacco leaf)は、約30,000parts per million(ppm)のニコチンおよび8,000parts per billion(ppb)のTSNAを有することができ;典型的な熱風乾燥したバーレー種タバコの葉(Flue-Cured Burley leaf)は、約20,000ppmのニコチンおよび300ppbのTSNAを有することができ;典型的な東洋風タバコの葉(Oriental cured leaf)は、約10,000ppmのニコチンおよび100ppbのTSNAを有することができる。本発明の態様に関して使用するための、低量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ植物またはその一部分は、検出可能なニコチンおよび/またはTSNAを有していない可能性があり、あるいは幾らかの検出可能な量の1つまたは複数のTSNAおよび/またはニコチンを含む可能性がある、ただしニコチンおよび/またはTSNAの量は同種の対照植物中で見られる量未満であるものとする。
【0022】
すなわち、低量のニコチンを有する本発明のバーレー種タバコの葉の実施形態は、約0と約30,000ppmの間のニコチンおよび約0と約8,000ppbの間のTSNA、望ましくは約0と約20,000ppmの間のニコチンおよび約0と約6,000ppbの間のTSNA、より望ましくは約0と約10,000ppmの間のニコチンおよび約0と約5,000ppbの間のTSNA、好ましくは約0と約5,000ppmの間のニコチンおよび約0と約4,000ppbの間のTSNA、より好ましくは約0と約2,500ppmの間のニコチンおよび約0と約2,000ppbの間のTSNA、さらにより好ましくは、および最も好ましくは約0と約1,000ppmの間のニコチンおよび約0と約1,000ppbの間のTSNAを有する可能性がある。本明細書に記載する方法によって作製したバーレー種の葉の実施形態は、約0と約1,000ppmの間のニコチンおよび約0と約500ppbの間のTSNAを有する可能性もあり、本明細書に記載する方法によって作製したバーレー種の葉の幾つかの実施形態は、ほとんど検出不能な量のニコチンまたはTSNAを有する。
【0023】
同様に、本明細書で開示する方法に関して使用するための熱風乾燥タバコの葉は、約0と約20,000ppmの間のニコチンおよび約0と約300ppbの間のTSNA、望ましくは約0と約15,000ppmの間のニコチンおよび約0と約250ppbの間のTSNA、より望ましくは約0と約10,000ppmの間のニコチンおよび約0と約200ppbの間のTSNA、好ましくは約0と約5,000ppmの間のニコチンおよび約0と約150ppbの間のTSNA、より好ましくは約0と約2,500ppmの間のニコチンおよび約0と約100ppbの間のTSNA、および最も好ましくは約0と約1,000ppmの間のニコチンおよび約0と約50ppbの間のTSNAである低量のニコチンを有する可能性がある。本明細書に記載する方法によって作製した熱風乾燥タバコの実施形態は、約0と約500ppmの間のニコチンおよび約0と約25ppbの間のTSNAを有する可能性もあり、本明細書に記載する方法によって作製した熱風乾燥タバコの幾つかの実施形態は、ほとんど検出不能な量のニコチンまたはTSNAを有する。
【0024】
さらに、本発明の実施形態の方法に関して使用するための東洋風タバコは、低量のニコチンを有する可能性があり、約0と約10,000ppmの間のニコチンおよび約0と約100ppbの間のTSNA、望ましくは約0と約7,000ppmの間のニコチンおよび約0と約75ppbの間のTSNA、より望ましくは約0と約5,000ppmの間のニコチンおよび約0と約50ppbの間のTSNA、好ましくは約0と約3,000ppmの間のニコチンおよび約0と約25ppbの間のTSNA、より好ましくは約0と約1,500ppmの間のニコチンおよび約0と約10ppbの間のTSNA、および最も好ましくは約0と約500ppmの間のニコチンおよびほぼ0のTSNAを有する可能性がある。本明細書に記載する方法によって作製した東洋風タバコの実施形態は、約0と約250ppmの間のニコチンおよびほぼ0のTSNAを有する可能性もあり、本明細書に記載する方法によって作製した東洋風タバコの幾つかの実施形態は、ほとんど検出不能な量のニコチンまたはTSNAを有する。
【0025】
前に論じたように、TSNAおよびニコチンは、タバコおよびタバコ製品の発癌可能性および中毒性に非常に貢献している。したがって、低量のTSNAおよびニコチンを有するタバコおよびタバコ製品には非常に有用である。タバコ中のニコチンの減少は、TSNAの減少と直接関係があったことが分かった。予想外に、本明細書に記載する方法は低い中毒の可能性を有するタバコを生成するだけではなく、低い発癌可能性を有するタバコを同時に生成する。
【0026】
フレーズ「低量」は、低量のニコチンおよび/またはTSNA用に処理しなかったかあるいはトランスジェニックしなかった、同じ方法で処理した同種のタバコ由来のタバコ植物、タバコ、またはタバコ製品中で見られる量より少ない、処理したまたはトランスジェニックタバコ植物、タバコ、またはタバコ製品中のニコチンおよびまたはTSNAの量を指すことを意図することを強調しなければならない。したがって、幾つかの文脈では、同じ方法で処理した同種の野生型タバコは、ニコチンおよび/またはTSNAの減少が得られたかどうかを測定するための対照として使用する。
【0027】
幾つかの文脈では、フレーズ「低量のニコチンおよび/またはTSNA」は、同じ方法で生育、処理および乾燥処理した同種のタバコより少ないニコチンおよび/またはTSNA重量を有する、本発明のタバコ植物、タバコ、およびタバコ製品を指す。例えば、野生型タバコは、その種類およびそれを生育、採取し乾燥処理した方法に応じて、約1〜4乾燥重量%のニコチンおよび約0.2〜0.8乾燥重量%のTSNAを含むことができる。典型的なシガレットは、11mgのニコチン8μgのTSNAを有する。したがって、本発明のタバコ植物、タバコ、およびタバコ製品は、例えば乾燥重量で0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.1%、0.15%、0.175%、0.2%、0.225%、0.25%、0.275%、0.3%、0.325%、0.35%、0.375%、0.4%、0.425%、0.45%、0.475%、0.5%、0.55%、0,6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%および1.0%未満のニコチン、および0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、および0.08%未満のTSNAを有することができる。
【0028】
あるいはタバコ製品、例えばシガレットは、例えば0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.15mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mg、1.5mg、1.55mg、1.6mg、1.65mg、1.7mg、1.75mg、1.8mg、1.85mg、1.9mg、1.95mg、2.0mg、2.1mg、2.15mg、2.2mg、2.25mg、2.3mg、2.35mg、2.4mg、2.45mg、2.5mg、2.55mg、2.6mg、2.65mg、2.7mg、2.75mg、2.8mg、2.85mg、2.9mg、2.95mg、3.0mg、3.1mg、3.15mg、3.2mg、3.25mg、3.3mg、3.35mg、3.4mg、3.45mg、3.5mg、3.55mg、3.6mg、3.65mg、3.7mg、3.75mg、3.8mg、3.85mg、3.9mg、3.95mg、4.0mg、4.1mg、4.15mg、4.2mg、4.25mg、4.3mg、4.35mg、4.4mg、4.45mg、4.4mg、4.45mg、4.5mg、4.55mg、4.6mg、4.65mg、4.7mg、4.75mg、4.8mg、4.85mg、4.9mg、4.95mg、5.0mg、5.5mg、5.7mg、6.0mg、6.5mg、6.7mg、7.0mg、7.5mg、7.7mg、8.0mg、8.5mg、8.7mg、9.0mg、9.5mg、9.7mg、10.0mg、10.5mg、10.7mgおよび11.0mg未満のニコチン、および0.1マイクログラム、0.15マイクログラム、0.2マイクログラム、0.25マイクログラム、0.3マイクログラム、0.35マイクログラム、0.4マイクログラム、0.45マイクログラム、0.5マイクログラム、0.55マイクログラム、0.6マイクログラム、0.65マイクログラム、0.7マイクログラム、0.75マイクログラム、0.8マイクログラム、0.85マイクログラム、0.9マイクログラム、0.95マイクログラム、1.0マイクログラム、1.1マイクログラム、1.15マイクログラム、1.2マイクログラム、1.25マイクログラム、1.3マイクログラム、1.35マイクログラム、1.4マイクログラム、1.45マイクログラム、1.5マイクログラム、1.55マイクログラム、1.6マイクログラム、1.65マイクログラム、1.7マイクログラム、1.75マイクログラム、1.8マイクログラム、1.85マイクログラム、1.9マイクログラム、1.95マイクログラム、2.0マイクログラム、2.1マイクログラム、2.15マイクログラム、2.2マイクログラム未満のTSNAを有することができる。
【0029】
植物中のニコチンおよびTSNAの内在レベルを低下させるための、幾つかの方法が発見されてきている。これらの手法を使用して、前に記載したタバコ製品を作製することができる。以下の項に記載した方法によって製造したのと同様の、優れたタバコの性質および風味を有する低量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ植物は、具体化したタバコ使用中断プログラムにおいて使用することができる。
【0030】
(低いニコチンおよび/またはTSNAレベルを有するタバコ製品を作製するための手法)
ニコチンは、ニコチン酸と4-メチルアミノブタノールの縮合によってタバコ植物中で生成される。2つの調節遺伝子座(Nic1およびNic2)は、ニコチン生成の共優性調節因子として作用する。この2つの遺伝子座は同一連鎖群に属さず、遺伝子の作用は不完全優性であり主に追加的なものである(Leggら、(1969) J.Hered.60、213〜217)。
【0031】
Nic1およびNic2遺伝子を調べるために、遺伝的分析および酵素分析が使用されている。Collinsら、((1974) Crop Sci.14、77〜80)は、これら4つのアルカイド遺伝子型の倍加半数体タバコ生殖系を作製した。標準的な栽培品種の遺伝子型はNic1/Nic1 Nic2/Nic2であり、低ニコチン系のそれはnic1/nic1 nic2/nic2である。Nic1/Nic1 nic2/nic2は高度な中間体であり、nic1/nic1 Nic2/Nic2は低級な中間体である(LeggおよびCollins (1971) Can.J.Genet.Cytol.13、287〜291)。これらの系は、花が形成される日数、葉の数、葉の大きさ、および植物の高さが同じである。Nicのシングルおよびダブル変異体の根の酵素分析により、2つの酵素、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)およびプトレスシンメチルトランスフェラーゼ(PMTase)の活性は、ニコチン生合成のレベルと正比例することが示された(SaunderおよびBush (1979) Plant Physiol 64 : 236)。Nic1とNic2は両方共に、根のPMTaseおよびQPTase活性に影響を与え、したがってニコチン合成を制御する(Lette (1983) In : Alkaloids : Chemical and Biological Perspectives、S.W.Pelletier、ed John Wiley and Sons、pp.85〜152)。
【0032】
Nicのシングルおよびダブル変異体の根の酵素分析は、QPTaseおよびPMTaseの活性は、ニコチン生合成のレベルと正比例することが示された。ニコチン生合成中の必須工程は、キノリン酸からのニコチン酸の形成であり、この工程はQPTaseによって触媒される。QPTaseは、タバコ中でのニコチン合成用のニコチン酸を供給する経路における律速酵素であるらしい(例えばFethら、Planta、168、pp.402〜07 (1986)およびWagnerら、Physiol.Plant.68、pp.667〜72 (1986)を参照)。タバコ組織(根およびカルス)中の酵素活性とニコチン合成に関する異なる能力の比較により、QPTase活性はニコチン含量と厳密に関係していることが示された(WagnerおよびWagner、Planta 165 : 532 (1985))。実際、SaunderおよびBush(Plant Physiol 64 : 236(1979))は、低ニコチン変異体の根中のQPTaseのレベルは、葉中のニコチンのレベルと比例することを示した。
【0033】
Hibiら、((1994) Plant Cell、6、723〜735)はPMTase、PMTをコードするcDNAを単離し、PMT転写レベルはNic1およびNic2によって調節されることを示した。QPTaseのcDNAおよびゲノムクローン(NtQPT1)も単離されており、NtQPT1の転写レベルもNic1およびNic2によって調節される。したがって、2つの律速酵素、PMTaseおよびQPTaseをコードする遺伝子の転写レベルを調節することによって、Nic遺伝子はニコチン含量を調節するようである。さらに、Nic1およびNic2は、NtQPT1転写の正の調節物質であることが示されてきており、転写開始部位の上流のプロモーター配列は、NtQPT1転写のNic遺伝子産物の活性化に必要なシス作用性配列を含む。QPTaseおよびPMTaseの発現はNic遺伝子産物によって等しく調節されるので、Nic遺伝子産物はPMT遺伝子の転写も直接調節している可能性がある。
【0034】
ニコチンを減少させるための一手法は、ニコチン生成をもたらす生合成経路において必要とされる、酵素(例えばQPTaseおよびPMTase)の量を減少させることを含む。影響を受ける酵素が律速量で自然に存在する場合(その経路で必要とされる他の酵素に対して)、任意のその酵素量の減少が最終産物の生成を低下させるであろう。酵素の量が正常では律速的ではない場合、細胞中のその存在は律速レベルまで減少して、経路の出力が低下するはずである。逆に、自然に存在する酵素の量が律速的である場合、したがって任意のその酵素の活性の増大が、生合成経路の最終産物の増大をもたらすであろう。
【0035】
PMTase発現のアンチセンス制御によるタバコ植物中のニコチンレベルの改変は、NakataniおよびMalikの米国特許第5,369,023号および米国特許第5,260,205号中で提案されている。WahadおよびMalikのPCT出願WO94/28142はPMTをコードするDNA、ならびにセンスおよびアンチセンスPMT構築体の使用を記載している。さらに、ConklingらのPCT出願WO98/56923は植物のQPTase酵素をコードするDNA、このようなDNAを含む構築体、およびQPTaseの発現を変えてタバコ植物中のニコチン生成を増大または低下させる方法を記載している。さらに他には、Conklingの米国特許出願第09/941,042号は、QPTase酵素に関する調節配列をコードするDNAの使用、およびQPTase遺伝子に関する内在性プロモーターと離れた部位で転写因子を封鎖して、それによってタバコ植物中のニコチン生成を低下させるための分子デコイとしての、これらの配列の使用法を記載している。以下の項は、低いニコチンおよび/またはTSNAレベルを有するタバコ製品を作成するための、アンチセンス手法をさらに詳細に記載する。
【0036】
(アンチセンス技術を使用して、低レベルのニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を作製することができる)
アンチセンス技術を使用して、低いニコチンレベルを有するタバコ植物を作製することができる。ニコチンレベルのアンチセンス制御に好ましい酵素は、Nicotina tabacum QPTase(実施例1参照)(配列番号1)をコードするTobRD2遺伝子(Conklingら、Plant Phys.93、1203 (1990)を参照)である。本明細書で提供する技術の説明以外に、この技術の一般的態様はPCT/US98/11893中に記載されている。
【0037】
植物細胞ゲノム中の遺伝子発現の調節は、宿主中で機能性があるプロモーターによる転写制御を受けた異種DNAの組み込みによって実施することができ、この方法においては、異種DNAの転写鎖は、調節する内在性遺伝子から転写されたDNA鎖と相補的である。アンチセンスDNAと呼ばれる導入されるDNAは、自然に生成される(内在性)mRNAと相補的であり内在性mRNAの発現を阻害するRNA配列を与える。アンチセンスの機構は完全に理解されているわけではないが、アンチセンス構築体を使用して、遺伝子発現を調節することができることは知られている。分子の改変によってQPTaseレベルを低下させるための好ましい手法は、実施例2および実施例3中に与える。
【0038】
本発明の幾つかの方法では、アンチセンス生成物は、自然に存在する標的RNAのコードまたは非コード(あるいは両方の)部分と相補的である可能性がある。アンチセンス構築体は任意の適切な方法で植物細胞中に導入することができ、アンチセンス配列の誘導的または構成的転写用に植物ゲノム中に組み込むことができる。次いでタバコ植物を、従来の技法を使用して、形質転換した細胞から再生させることができる。使用するアンチセンス配列は内在性配列と相補的であることが最も好ましいが、しかしながら、外来性および内在性配列のわずかな違いは許容することができる。アンチセンスDNA配列は充分な配列類似性があるものであり、以下に記載する厳しい条件下において、調節される細胞中の内在性配列と結合することができることが好ましい。
【0039】
アンチセンス制御に好ましい酵素はQPTaseであるが、アンチセンス制御に適した他の酵素には、例えばプトレスシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレスシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンセターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ、およびニコチン生合成と関係がある任意の他の酵素がある。
【0040】
アンチセンス技術の使用の一例として、5'から3'方向に、植物細胞中で動作可能なプロモーター、および、ニコチン合成経路中の酵素をコードするDNA配列またはその相補鎖の一部分(例えば配列番号1)を含むDNAを有する外来性DNA構築体に、選択したタバコ種(好ましくはバーレー21)の少なくとも1つのタバコ細胞を曝すことによって作製されるタバコ植物から、低量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコを生成させる。DNAは前記プロモーターと動作可能に結合しており、タバコ細胞はDNA構築体を用いて形質転換する。形質転換する細胞は陰性選択または陽性選択技法を使用して選択し、少なくとも1種のタバコ植物を形質転換した細胞から再生する。再生したタバコ植物またはその一部分を分析して、存在するニコチンおよび/またはTSNAの量を測定することが好ましく、好ましくは同種である対照のタバコ植物またはその一部分中に存在するニコチンおよび/またはTSNAの量と、これらの値を比較することが可能である。
【0041】
ニコチン合成経路中の酵素をコードするDNA配列の一部分を有するDNA構築体は、酵素の完全なコード配列、この配列の相補鎖、あるいはこれらの任意の部分を有する可能性がある。ニコチン合成経路中の酵素またはその相補鎖をコードするDNA配列の一部分は、少なくとも25、27、30、35、40、45、50、60、75、100、150、250、500、750、1000、1500、2000、2500または5000の塩基、あるいは酵素またはその相補鎖の完全なコード配列(例えば配列番号1)を有する可能性がある。したがって、これらのDNA構築体は、アンチセンスまたは共抑制機構によってニコチン生合成経路中の内在性酵素の生成を乱す能力を有する。アンチセンス、RNAi、および共抑制構築体は、タバコ植物中のニコチンおよび/またはニトロソアミンのレベルを低下させる際に有効であると企図される。
【0042】
本明細書に記載する構築体中で使用する核酸配列には、QPTaseをコードする遺伝子、および例えばQPTaseタンパク質の対立遺伝子の変形を含めた、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と配列類似性を有する配列がある。したがって、QPTaseコード遺伝子のDNAとハイブリダイズし、QPTase、特に植物のQPTase酵素の発現をコードするDNA配列を、本発明を実施する際に使用することもできる。多数の形のタバコQPT酵素が存在する可能性がある。酵素の多数の形態は1つの遺伝子産物の転写後修飾、あるいはNtQPT1遺伝子の多数の形態によるものである可能性がある。
【0043】
本明細書で使用する用語「遺伝子」は、(1)プロモーターを含む上流(5')調節シグナル、(2)遺伝子の産物、タンパク質またはRNAを特定するコード領域、(3)転写停止およびポリアデニル化シグナルを含む下流領域、および(4)有効かつ特異的な発現に必要とされる関連配列が組み込まれたDNA配列を指すことができる。幾つかの文脈では、遺伝子は前述の(2)のみを、あるいは項目(1)、(3)、および(4)と(2)の幾つかの組合せを含むことができる。本発明のDNA配列は、QPTase酵素をコードする配列、あるいはこれらの遺伝子の対立遺伝子または多型変異体を表す同等なヌクレオチド配列、あるいはこれらのコード領域を含むか、あるいは本質的にこれらからなる。本明細書および特許請求の範囲でのフレーズ「実質的な配列類似性」の使用については、本明細書で開示および特許請求する実際の配列とわずかな重要ではない配列の違いを有するDNA、RNAまたはアミノ酸配列は、本発明の配列と同等であると考えられることを意味する。この点において、「わずかな重要でない配列の違い」は、「類似の」配列(すなわち、本明細書で開示および特許請求するDNA、RNA、またはタンパク質と実質的な配列類似性を有する配列)が、本発明において開示および特許請求する配列と機能的に同等であろうことを意味する。機能的に同等な配列は実質的に同じ形式で機能して、本明細書で開示および特許請求する核酸およびアミノ酸組成と実質的に同じ組成を生み出すであろう。
【0044】
一手法によって、植物QPTaseをコードする新規のcDNA配列を使用することができる。QPTase活性はニコチン含量と厳密に関係があるので、(野生型植物中のレベルと比較して)その中のQPTaseレベルが植物根中より低いトランスジェニックタバコ植物の構築は、葉中に低レベルのニコチンを有する植物をもたらす。本発明の幾つかの実施形態は、このようなトランスジェニック植物を生成するための方法および核酸構築体、ならびにトランスジェニック植物そのものを提供する。このような方法はアンチセンスNtQPT1RNAを発現させることを含み、これによってタバコ根中のQPTaseの量を減少させる。
【0045】
本発明の幾つかの態様は、QPTaseまたはQPTaseアンチセンスRNA分子をコードするセンスおよびアンチセンス組換えDNA分子、およびこれらの組換えDNA分子を含むベクター、ならびにこれらのDNA分子およびベクターを用いて形質転換したトランスジェニック植物細胞および植物にも関する。本明細書に記載するトランスジェニックタバコ細胞および植物は、それらが非改変型または対照タバコ細胞および植物と比較して、低量のニコチンおよび/またはTSNAを有する点において特徴付けられる。
【0046】
本発明のアンチセンス構築体と連結されるプロモーターは、構成的活性を示すプロモーターであってよい。植物中で動作可能な多数の構成的活性を示すプロモーターが利用可能である。好ましい例は、大部分の植物組織中で構成的に発現される、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターである。あるいは、以下でさらに詳細に説明するように、プロモーターは根特異的プロモーター、または毛根皮質特異的プロモーターであってよい。
【0047】
カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターを使用して、アンチセンス配列がトランスジェニックタバコ植物中で発現されている。例えばCornelissenら、「Both RNA Level and Translation Efficiency are Reduced by Anti-Sense RNA in Transgenic Tobacco」、Nucleic Acid Res.17pp.833〜43 (1989) ; Rezaianら、「Anti-Sense RNA of Cucumber Mosaic Virus in Transgenic Plants Assessed for Control of the Virus」、Plant Mol.Biol.11pp.463〜71 (1988) ; Rodermelら、「Nuclear-Organelle Interactions : Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell 55、pp.673〜81 (1988) ; Smithら、「Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes」、Nature 334 pp.724〜26 (1988) ; Van der Krolら、「An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation」、Nature 333、pp.866〜69 (1988)を参照のこと。
【0048】
本発明の形質転換タバコ細胞および植物中でアンチセンスQPTase遺伝子を発現させるために、CaMV35Sプロモーターを使用することが好ましい。タバコ根中の他の組換え遺伝子を発現させるためのCaMVプロモーターの使用は充分に記載されている(Lamら、「Site-Specific Mutations Alter In Vitro Factor Binding and Change Promoter Expression Pattern in Transgenic Plants」、Proc.Nat.Acad Sci. USA 86 pp.7890〜94 (1989) ; Poulsenら、「Dissection of 5' Upstream Sequences for Selective Expression of the Nicotiana plumbaginifolia rbcS-8B Gene」、Mol.Gen.Genet.214、pp.16〜23 (1988))。
【0049】
根組織中のみで活性がある他のプロモーター(根特異的プロモーター)も、本発明の方法に非常に適している。例えば、Conklingらの米国特許第5,459,252号; Yamamotoら、Plant Cell 3 : 371 (1991)を参照のこと。TobRD2毛根皮質特異的プロモーターを使用することもできる。例えば、現在Conklingらに付与されている米国特許出願SN08/508,786 ; PCTWO9705261を参照のこと。
【0050】
本明細書に記載する核酸の幾つかは、ニコチン生成のセンス共抑制またはRNAi仲介型抑制の方法において使用することもできる。これらの方法中で使用するセンスDNAは、植物細胞中で発現すと、その植物細胞中で本明細書に記載するように植物QPTaseタンパク質の本来の発現を抑制するほど、充分な長さであることが好ましい。このようなセンスDNAは、QPTase酵素をコードするほぼ完全なゲノムまたは相補的DNA、またはその断片であってよく、このような断片は典型的には少なくとも15、25、27、30、35、40、45、50、60、75、100、150、250、500、750ヌクレオチド長である。細胞中の本来の遺伝子の発現の抑制をもたらすセンスDNAの長さを確かめるための方法は、当業者には利用可能である。
【0051】
他の実施形態では、Nicotiana植物細胞は、「リボザイム」と呼ばれる酵素RNA分子をコードするDNAセグメントを含むDNA構築体を用いて形質転換する。この酵素RNA分子は、本明細書に記載する植物QPTaseをコードするDNAのmRNA転写物をターゲットとして切断する。植物細胞中でのこのような酵素RNA分子の生成、およびQPTaseタンパク質の生成の中断は、すなわち酵素を生成する細胞中のmRNAの翻訳を中断させることによって、アンチセンスRNA分子の生成とほぼ同じ方法で植物細胞中のQPTase活性を低下させる。以下の項は、デコイ核酸断片を使用して、ニコチン生合成と関係がある特定の酵素のレベルを低下させるための、さらに他の方法を記載する。
【0052】
(ニコチンおよび/またはTSNAレベルを低下させるための分子デコイ技術)
遺伝子発現を低下させるために核酸に基づくデコイ断片を使用することを「分子デコイ」と呼ぶ。好ましい例では、「デコイ断片」は、QPTase発現を低下させるために、QPTaseのプロモーター配列上流に対応する。
【0053】
幾つかの実施形態では、少なくとも20〜450の連続ヌクレオチド、望ましくは少なくとも30〜400の連続ヌクレオチド、好ましくは50〜350の連続ヌクレオチド、およびより好ましくは100〜300の連続ヌクレオチド、あるいは最も好ましくは200〜400の連続ヌクレオチドからなる単離核酸、またはその断片は、植物QPTaseおよび/またはプトレスシンメチルトランスフェラーゼPMTaseコード配列(例えば配列番号1)の上流に存在する、少なくとも1つのシス作用性調節エレメントであるか、あるいはそれを含む。他の例は、米国特許第5,459,252号中で開示された配列から得られるNic遺伝子産物応答エレメントである。幾つかの実施形態では、Nic遺伝子産物応答エレメントはNtQPT1プロモーターの-1000bpと-600bpまたは-700bpの間に存在する。したがって、幾つかの実施形態は、米国特許第5,459,252号中で開示されたのと同様に、NtQPT1プロモーターの-1000bpと-600bpまたは-700bpの間の配列に対応する、NtQPT1プロモーターの300〜400ヌクレオチド長の断片に関する。
【0054】
したがって、幾つかの実施形態では、具体的な核酸は、QPTaseおよび/またはPMTaseの転写の開始と関係がある、1つまたは複数の転写因子(例えばNic1およびNic2)との相互作用を促進する構造を有する。したがって、前記核酸は、少なくとも1つの転写因子(例えばNic1およびNic2)結合配列であるか、あるいはそれらを含み、これらは「シス作用性制御エレメント」とも呼ばれる。これらのシス作用性制御エレメントの多数のコピー(例えば、Nic1およびNic2と相互作用する配列)を植物細胞に導入することによって、標的遺伝子(例えば、QPTaseおよび/またはPMTase遺伝子)の転写を開始させる転写因子の能力を、低下させるかあるいは抑制することができる。
【0055】
一手法によって、ニコチン生合成において調節されるQPTaseおよびPMTase(これらだけには限らないが)をコードする遺伝子のプロモーター由来の、過剰のDNA配列(シス作用性エレメント)を用いてタバコ植物を形質転換する。これらのシス作用性エレメントは、次世代への伝達を可能にするように植物ゲノム中に組み込むことが好ましい。好ましい手法は実施例4および実施例5中に与える。典型的には、これらのシス作用性DNA配列と相互作用するNic1およびNic2 DNA結合タンパク質は、細胞中では比較的低いレベルで発現されるので、したがって過剰なトランスジェニックシス作用性エレメントは、利用可能なNic1およびNic2用のQPTaseおよびPMTase(これらだけには限らないが)をコードする遺伝子と関連した内在性エレメントと競合するであろう。したがって、これらのシス作用性DNA配列(および他のシス作用性エレメントの配列)を、本明細書では「デコイ」または「分子デコイ」と呼ぶ。競合はそれらの同系シス作用性エレメントに対するトランス作用性DNA結合タンパク質の占有率を低下させ、それによってニコチン生合成酵素の合成を下方制御する。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態は、QPTaseおよびPMTaseのシス作用性エレメントのDNA分子、およびこれらのDNA分子を含むベクター、ならびにこれらのDNA分子およびベクターを用いて形質転換したトランスジェニック植物細胞および植物も提供する。本発明のトランスジェニックタバコ細胞および植物は、非形質転換型対照タバコ細胞および植物より低量のニコチン含量によって特徴付けられる。
【0057】
任意のさまざまなシス作用性エレメントを、個々の用途に応じて分子デコイ法を実施する際に使用することができる。単独あるいは互いに組み合わせて使用することができ、本発明の実施形態において使用することができる、シス作用性エレメント(および対応する転写因子)の例には、AS-1およびASF-1(米国特許第4,990,607号および米国特許第5,223,419号を参照)、AATT反復エレメントおよびPABF(米国特許第5,834,236号および米国特許第6,191,258号を参照)、ジャガイモ由来の創傷応答シス作用性エレメント(Siebertら、Plant Cell 1: 961〜8 (1989))、マメ由来の胚特異的シス作用性エレメント(Bustosら、Plant Cell 1: 839〜853 (1989))、タバコRB7プロモーター由来の根特異的シス作用性エレメント(米国特許第5,459,252号、およびYamamotoら、Plant Cell 3 : 371〜382 (1991))、陽性ポリ(dA-dT)調節エレメントおよび結合タンパク質および陰性CCCAA反復エレメントおよび結合タンパク質(Wangら、Mol.Cell Biol.12 : 3399〜3406 (1992))、タバコのタバコフィトクロムA1プロモーター由来の根端調節エレメント(Adamら、Plant Mol Biol 29 : 983〜993 (1995))、トウモロコシのグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ4遺伝子由来の嫌気生活エレメント(Geffersら、Plant Mol Biol 43 : 11〜21 (2000))、およびArabidopsin oleosin遺伝子由来の種子特異的調節領域(米国特許第5,792,922号を参照)があるが、これらだけには限られない。
【0058】
現況技術は、巨大なデータベースリストがシス作用性調節領域を同定したようなものである(例えば、約1,340項目を有するPlant Cis-acting Regulatory elements、「PLACE」、および約159の植物プロモーターを列挙するPlant Cis-acting Regulatory Elements、「PlantCARE」)。これらのデータベース中に列挙されたシス作用性調節エレメント、およびRaumbautsら、Nucleic acids Research 27 : 295〜296 (1999)、およびHigoら、Nucleic acids Research 27 : 297〜300 (1999)中に与えられているシス作用性調節エレメントは、本発明の実施形態と共に使用することができる。以下の項は、改変型配列を用いてタバコ植物を形質転換して、低いニコチンおよび/またはTSNAレベルを有するタバコ植物を作製するための一般的方法を記載する。
【0059】
(トランスジェニック植物細胞および植物)
本明細書で提供するDNA配列は、さまざまな宿主細胞に形質転換することができる。望ましい増殖性および処理性を有する、さまざまな適切な宿主細胞が当分野において容易に入手可能である。本明細書で使用する「本来のDNA配列」または「天然DNA配列」は、非トランスジェニック細胞または組織から単離することができるDNA配列を意味する。本来のDNA配列は、部位特異的変異誘発などによって人工的に改変されていない配列である。ひとたび本来のDNA配列を同定すれば、本来のDNA配列を有するDNA分子を、化学的に合成、または、当分野で知られているように組換えDNA手順を使用して生成することができる。本来の植物DNA配列は典型的には、非トランスジェニック植物細胞または組織から単離することができる。
【0060】
本発明のDNA構築体、または「転写カセット」は、転写の5'から3'方向に、本明細書で論じるプロモーター、プロモーターと動作可能に結合した本明細書で論じるDNA配列、および場合によってはRNAポリメラーゼの停止シグナルおよびポリアデニラーゼのポリアデニル化シグナルを含む停止配列を含むことができる。本明細書で使用する用語「動作可能に結合した」は、1つの機能がもう一方によって影響を受けるように結合した、1つのDNA分子上のDNA配列を指す。したがって、プロモーターがそのDNAの転写に影響を与えることができるとき、プロモーターはDNAと動作可能に結合している(すなわち、DNAがプロモーターの転写制御下にある)。プロモーターは、DNAから「上流」に存在すると言え、したがってDNAはプロモーターから「下流」に存在すると言える。
【0061】
停止シグナルを使用する本発明の実施形態では、任意の適切な停止シグナルを、本発明を実施する際に使用することができ、その例にはノパリン合成酵素(nos)停止シグナル、オクトピン合成酵素(ocs)停止シグナル、CaMV停止シグナル、または転写開始領域と同じ遺伝子に由来するかあるいは異なる遺伝子に由来する本来の停止シグナルがあるが、これらだけには限られない。例えば、Rezianら(1988)上記、およびRodermelら(1988)上記を参照のこと。あるいは、ニコチンレベルがアンチセンスまたは他の方法によってではなく分子デコイ技術によって低下する場合、他の配列を含むかあるいは含まない分子デコイ断片を、任意の手段によって植物細胞に与えることができる。例えば、分子デコイ断片は、選択マーカーをコードする付随遺伝子、他の適切な遺伝子を有することができ、あるいはプラスミドベクターの一部として存在することができる。分子デコイ断片は、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNA分子からなっていてよい。分子デコイはゲノム中に組み込むことができるか、あるいは細胞中に自由に存在することができる。
【0062】
転写カセットは、少なくとも1つの複製系も有するDNA構築体として提供される。便宜上、例えばColEl、pSC101、pACYC184などの大腸菌中で機能する複製系を有することが一般的である。この方法では、それぞれの操作後のそれぞれの段階で、生成した構築体をクローニング、塩基配列決定することができ、その操作の正確性を決定することができる。さらに、あるいは大腸菌複製系の代わりに、P-1不適合プラスミド、例えばpRK290の複製系などの、広範囲の宿主複製系を使用することができる。複製系以外に、1つまたは複数の宿主において有用である可能性がある少なくとも1つのマーカー、または個々の宿主用の異なるマーカーがたびたび使用される。すなわち、原核生物宿主中での選択用に1つのマーカーを使用することができ、一方他のマーカーを、真核生物宿主、特に植物宿主中での選択用に使用することができる。マーカーは、抗生物質、毒素、重金属などの殺生物剤に対して防御性があるものであってよく、栄養要求性宿主を栄養非要求性とすることによって相補性を与えることができるものであってよく、あるいは植物中での新規な化合物の生成によって目に見える表現型を与えることができるものであってよい。
【0063】
さまざまな構築体、転写カセット、マーカーなどを含むさまざまな断片を、適切な複製系の制限酵素による切断、および特定の構築体または断片の利用可能な部位への挿入によって連続的に導入することができる。連結およびクローニング後、他の操作用にDNA構築体を単離することができる。これらの技法はいずれも、(J.Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2d Ed.1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)によって例示される文献中で詳細に例示されている。
【0064】
本発明の核酸構築体を用いて植物組織を形質転換するために使用することができるベクターには、Agrobacteriumベクターおよびバリスティックベクター、ならびにDNAを介した形質転換に適したベクターがある。用語「プロモーター」は、コード配列の有効な発現に必要なシグナルを組み込んだDNA配列の領域を指す。プロモーターはRNAポリメラーゼが結合する配列を含むことができるが、このような配列だけには限られず、タンパク質翻訳の制御と関係がある領域と共に他の調節タンパク質が結合する領域を含むことができ、かつコード配列を含むことができる。
【0065】
本発明の形質転換型タバコ細胞および植物を生成するために使用する、QPTase組換えDNA分子およびベクターは、優性の選択マーカー遺伝子をさらに含むことができる。タバコ中で使用するのに適した優性の選択マーカーには、特にネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)、およびヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードする抗生物質耐性遺伝子がある。タバコ中で使用するのに適した、他のよく知られている選択マーカーには、メトトレキセート耐性ジヒドロ葉酸リダクターゼをコードする突然変異ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子がある。適切な抗生物質耐性遺伝子、および対応する抗生物質を含むDNAベクターは市販されている。
【0066】
選択した優性の選択マーカー遺伝子産物が耐性を与える適切な濃度の抗生物質(またはタバコ細胞に対して通常毒性である他の化合物)を含む培養培地中に、形質転換型タバコ細胞および他の非形質転換細胞群からなる混合群を置くことによって、周辺の非形質転換細胞群から形質転換型タバコ細胞を選択する。したがって、形質転換されたタバコ細胞のみが生存し増殖するであろう。さらに、Jeffersonによって記載された(例えば、WO00055333 ; WO09913085 ; 米国特許第5599670号 ; 米国特許第5432081号 ; 米国特許第5268463号)陽性選択技法を使用することができる。
【0067】
本発明の組換え植物を作製する方法は概して、再生することができる植物細胞を最初に提供することを含む(植物細胞は典型的には再生することができる組織を有する)。次いで植物細胞は、(本明細書に記載する)本発明の転写カセットを含むDNA構築体を用いて形質転換し、組換え植物を形質転換型植物細胞から再生する。以下で説明するように、形質転換工程は、転写カセットを有するミクロ粒子で植物細胞に衝撃を与えること、転写カセットを有するTiプラスミドを含むAgrobacterium tumefaciensで細胞を感染させること、あるいはトランスジェニック植物の生成に適した任意の他の技法(これらだけには限られないが)を含めた当分野で知られている技法によって行う。
【0068】
本発明を実施する際に有用な多数のAgrobacteriumベクター系が知られている。例えば、米国特許第4,459,355号は、Tiプラスミドを含むAgrobacterium菌株を用いて、双子葉植物を含めた影響を受けやすい植物を形質転換するための方法を開示している。Agrobacteriumベクターを用いる樹木植物の形質転換は、米国特許第4,795,855号中に開示されている。さらに、Schilperoortらの米国特許第4,940,838号は、本発明を実施する際に有用な、バイナリーAgrobacteriumベクター(すなわち、その中でAgrobacteriumが、Tiプラスミドのvir領域は有するがT領域は有さない1つのプラスミド、およびT領域を有しvir領域は有さない第二のプラスミドを含むベクター)を開示している。
【0069】
植物細胞の衝突型形質転換に適した本発明のDNA構築体を有するミクロ粒子も、本発明の形質転換型植物を作製するのに有用である。ミクロ粒子を植物細胞中へ打ち込んで、形質転換型植物細胞を生成させ、植物はその形質転換型植物細胞から再生させる。任意の適切な衝突型細胞形質転換法および装置を、本発明を実施する際に使用することができる。代表的な装置および手順は、SanfordおよびWolf、米国特許第4,945,050号中、およびChristouら、米国特許第5,015,580号中に開示されている。衝突型形質転換手順を使用すると、形質転換する細胞中で複製することができるかあるいはその中に組み込むことができるプラスミド中に、転写カセットを取り込ませることができる。このような系で使用するのに適したミクロ粒子の例には1〜5μmの金球体がある。沈殿などによる任意の適切な技法によって、ミクロ粒子上にDNA構築体を置くことができる。
【0070】
植物細胞プロトプラストのDNAを介した形質転換、および当分野でよく知られている手順に従った形質転換プロトプラストからの植物の再生によって、本発明のDNA構築体を用いて植物種を形質転換することができる。タバコプロトプラストとDNA含有リポソームの融合、エレクトロポレーションによる融合は当分野で知られている。(Shillitoら、「Direct Gene Transfer to Protoplasts of Dicotyledonous and Monocotyledonous Plants by a Number of Methods、Including Electroporation」、Method Enzymol.153、pp.313〜36 (1987))。
【0071】
本明細書で使用する形質転換は、外来性DNAを細胞中に導入して、その外来性DNAで安定して形質転換されたトランスジェニック細胞を生成することを指す。当分野でよく知られているタバコ細胞および組織培養技法を施用することによって、形質転換細胞を誘導して完全なタバコ植物を再生させる。形質転換の方法と適合性があるような植物再生の方法を選択する。トランスジェニックタバコ植物中のQPTase配列の安定した存在および方向は、対照交雑種から生じる子孫に施すDNA分析の標準的な方法によって明らかなように、QPTase配列のメンデル遺伝によって確認することができる。形質転換細胞からトランスジェニックタバコ植物が再生された後、従来の植物品種改良の慣習よって余分な実験なしで、導入したDNA配列を追加のタバコ種に直ちに移す。
【0072】
器官発生または胚発生によって後のクローン増殖が可能な任意の植物組織は、本発明のベクターを用いて形質転換することができる。本明細書で使用する用語「器官発生」は、それによって新芽および根が分裂組織の中心から連続的に発達するプロセスを意味し、本明細書で使用する用語「胚発生」は、それによって新芽および根が、体細胞または生殖細胞から集中した形式で(連続的ではなく)一緒に発達するプロセスを意味する。選択する特定の組織は利用可能なクローン増殖系に応じて変わり、特定の種を形質転換することが最も適している。代表的な組織標的には葉盤、花粉、胚、子葉、胚軸、カルス組織、既存の分裂組織(例えば頂端分裂組織、腋芽、および根端分裂組織)、および誘導型分裂組織(例えば子葉分裂組織および胚軸分裂組織)がある。
【0073】
本発明の植物は、さまざまな形をとることができる。植物は形質転換細胞および非形質転換細胞のキメラであってよく、植物はクローン形質転換体(例えば、全細胞が形質転換されて転写カセットを含む)であってよく、植物は形質転換および非形質転換組織の移植片(例えば、柑橘種の非形質転換若枝と接合した形質転換型根株)を含むことができる。形質転換型植物は、例えばクローン増殖または古典的な品種改良技法などによって、さまざまな手段により生育させることができる。例えば、第一世代(またはT1)形質転換型植物を自己増殖させて、同型の第二世代(またはT2)形質転換型植物を与えることができ、古典的な品種改良技法によってT2植物をさらに生育させることができる。優性の選択マーカー(nptIIなど)を転写カセットと結合させて、品種改良を手助けすることができる。
【0074】
本明細書で使用する作物は、農場で一緒に栽培される本発明および同属の複数の植物を含む。したがって本発明は、同種族および同種の非形質転換型植物の類似の作物と比較して、低いQPTaseおよびPMTase活性を有し、したがって低下したニコチンおよび/またはTSNAレベルを有する植物の作物を生成する方法を提供する。
【0075】
本発明のトランスジェニックタバコ植物中のニコチンのレベルは、標準的なニコチンアッセイによって検出することができる。その中のQPTaseまたはPMTaseのレベルが非形質転換型対照植物と比較して低下している形質転換型植物は、したがって対照と比較して低下したニコチンレベルを有するであろう。
【0076】
本明細書に記載する改変型タバコ植物は、従来の生育および採取技法(例えば、摘芽有りまたは摘芽無し、花の袋がけ有りまたは花の袋がけ無し、肥料が豊富な土壌または肥料無しの土壌中での栽培)に適している。採取したタバコの葉および茎は、乾燥処理およびブレンドなどの従来の処理法に適している。改変型タバコは、葉タバコ、刻みバコ、またはカットタバコを含めた任意の形の、パイプ、葉巻およびシガレットタバコ、および噛みタバコだけには限られないがこれらを含めた、任意の伝統的なタバコ製品における使用に適している。以下の項は、ひとたび採取した後にそれを使用してタバコを調製することができる、典型的な乾燥処理法を記載する。
【0077】
(乾燥処理)
典型的には約1週間続ける乾燥処理法は、タバコの風味および芳香をもたらす。タバコを乾燥処理するための幾つかの方法を使用することができ、実際多くの方法が以前に開示されている。例えば、Johnsonの米国特許第4,499,911号、Martinez Sagreraの米国特許第5,685,710号、Fowlerの米国特許第3,905,123号、Fowlerの米国特許第3,840,025号、およびHorneの米国特許第4,192,323号は、本発明の幾つかの実施形態用に使用することができる、タバコの乾燥処理法の態様を記載している。従来、タバコが充填される「スティック」はばら荷容器中に置かれ、通気熟成所として知られる熱供給源を有する密閉建物中に置かれる。火管を使用して煙を調節することが多い(したがって用語「熱風乾燥」を得る)。乾燥処理の方法は、幾つかの場合、所望のタバコ使用中断製品の型に依存し(すなわち、かぎタバコ、シガレット、またはパイプタバコは異なる乾燥処理法を使用することができることが好ましい)、好ましい方法は領域毎、および異なる国で変わる可能性がある。幾つかの手法では、葉の柄および静脈を、乾燥処理して高品質の低ニトロソアミンタバコ製品を生成する前に葉から除去する。
【0078】
「熱風乾燥」は、米国のVirginia、North Carolina、and the Coastal Plains regionsのタバコを乾燥処理するための一般的な方法である。この方法がシガレットの製造において主に使用される。熱風乾燥には、換気システムおよび熱供給源を備える密閉建物が必要である。加熱は直接的または間接的であってよい(例えば放射熱)。熱および湿度を調節すると、葉の色の変化、湿気が急速に無くなり、葉および茎は乾燥する。加熱および湿度を注意深く監視することによって、ニトロソアミンの蓄積を低下させることができる。
【0079】
他の乾燥処理法は、「空気乾燥処理」と呼ばれる。この方法では、葉のスティック(または植物全体)が風と日光の両方から保護されるように吊るされているオープンフレームワークを作製する。葉および茎がゆっくりと乾燥すると、葉の色は緑色から黄色に変化する。
【0080】
「火力乾燥処理」は、熱風乾燥用に使用したのと類似の密閉型通気熟成所を使用する。煙を多く含む雰囲気中で葉が乾燥するように、タバコを低温の火の上に吊るす。この方法は低温を使用するので、この方法は約6〜8日を要する熱風乾燥とは対照的に、1カ月まで要する可能性がある。
【0081】
「日光乾燥処理」と呼ばれる他の乾燥処理法は、日光中でタバコの葉の非被覆状態のスティックまたは糸を乾燥させることである。最も知られている日光乾燥処理タバコは、トルコ、ギリシア、ユーゴスラビアおよび近隣諸国のいわゆる東洋風タバコである。
【0082】
乾燥処理法、および最も詳細には熱風乾燥法は、以下の4つの段階に概略的に分けられる:
A)着火:この工程中、タバコの葉は明るいレモンオレンジ色になる。これは温度を徐々に増大させることによって行われる。
B)葉の黄化:この工程では、いかなる湿気も除去される。これによってタバコの「黄化」が生じる。この工程は、次の工程で乾燥させるためのタバコも作製する。
C)葉の乾燥:葉の乾燥、乾燥処理法中の重要な工程は、タバコをきちんと乾燥させるために一層の時間を必要とする。さらに、空気流をこの工程で増大させて、乾燥プロセスを容易にする。
D)柄の乾燥:この乾燥プロセスを続け、タバコの葉の柄は乾燥状態になる。
【0083】
乾燥処理したタバコは、次いで追加のタバコまたは他の物質とブレンドさせて、タバコ使用中断法に使用するための製品を作製することができる。以下の項は、典型的なタバコ製品のブレンド法および作製法を記載する。
【0084】
(タバコのブレンド)
さまざまなニコチンレベルのタバコをブレンドして、所望レベルのニコチンを有する中断用製品を作製することが望ましい可能性がある。このブレンドプロセスは、典型的には乾燥処理プロセスの後に行い、従来の方法によって行うことができる。好ましいタバコブレンド手法は、実施例6および7に与える。幾つかの実施形態では、トランスジェニックタバコのブレンドを行って、それが特定の製品中に特定量のニコチンおよび/またはTSNAを含むようにタバコを作製する。さまざまな量のニコチンおよび/またはTSNAのタバコ製品が特定の製品中で作製されるように、ブレンドを行うことが好ましい。
【0085】
異なる型のタバコを含む混合物は、風味またはニコチンレベルの望ましくない変動を避けるために、全体で実質的に均質であるであることが望ましい。典型的には、ブレンドするタバコは30%と75%の間の含水率を有することができる。一例として、タバコを最初に切断し、あるいは適切な大きさに裁断し、次いで回転ドラムまたはブレンドボックスなどのブレンド装置中で混合させる。1つのこうした知られている混合装置は、混合パドルを囲う回転ハウジングを典型的には含むタンブリング装置であり、混合パドルはそれと結合しており、したがってハウジングと共に回転して、ドラム回転時のタンブリング作用中にタバコ成分を一緒に攪拌する。
【0086】
所望のタバコを完全に混合させた後、生成したタバコブレンド品を混合装置から除去して、増大させて連続的な、概して均一な量のタバコブレンド品を与える。次いでタバコを次の操作を行うまでの必要な時間の間、比較的平静な状態にする(「増大工程」と呼ぶ)。増大工程は典型的には30分以下の時間を要し、コンベヤーベルト上で行うことができる。コンベヤーベルトは、混合段階から膨張段階までのプロセス中タバコブレンド品を連続的に動かしながら、ブレンドタバコを平静状態の増大形に保つことができる。
【0087】
タバコブレンド品は典型的には、蒸気を施すことによって膨張させる。タバコ混合物は典型的には、ブレンドタバコ1ポンド当たり大気条件で少なくとも0.25ポンドの飽和蒸気に施して、少なくとも2重量パーセントの水分の増大をタバコブレンド品にもたらす。タバコブレンド品を膨張させた後、それを乾燥させる。典型的な乾燥装置は加熱空気または過熱蒸気を使用してタバコを乾燥させる、何故なら、1つの乾燥チャンバーまたは一連の乾燥チャンバーによって、加熱空気または過熱蒸気がタバコに伝わるからである。一般に、乾燥空気の湿球温度は華氏約150度から華氏約211度であってよい。タバコブレンド品は典型的には、約60パーセントから約5パーセントの含水率まで乾燥させる。乾燥、膨張させたタバコブレンド品は次いで適切な形式で、以下に記載するようにタバコ使用中断用製品に加工する。
【0088】
(ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムの方法)
本明細書に記載する低ニコチンおよび/またはTSNAタバコを、従来のタバコを用いて処理しブレンドさせて、さまざまな量のニコチンおよび/またはニトロソアミンを有する、広範囲のタバコ製品を作製することができることも意図される。これらのブレンドタバコ製品をニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラム中で使用して、高ニコチンおよびTSNA製品から低ニコチンおよびTSNA製品に消費者を移行させることができる。
【0089】
本発明の幾つかの実施形態では、段階的なニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムを、前に記載した低ニコチン低TSNA製品を使用して確立することができる。一例として、プログラム参加者は、彼または彼女の現在のニコチン摂取のレベルを最初に決定する。次いでプログラム参加者は、工程1、プログラムの開始前に使用したタバコ製品と比較して低量のニコチンを有するタバコ製品でプログラムを始める。一定時間の後、プログラム参加者は、工程1で使用した製品より少ないニコチンを有するタバコ製品を使用する工程2に進む。プログラム参加者は、さらなる期間の後に、プログラム参加者が工程2などの製品より少ないニコチンを有するタバコ製品を使用することで始める工程3に達する。最終的にプログラム参加者は、中毒状態になるかあるいは中毒状態を保つのに充分な量より少ない量のニコチンを有するタバコ製品を使用する。したがって、ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムは、プログラム参加者のニコチン摂取を制限し、同時に、ニコチンの有害な影響を制限するが、煙の摂取、経口固定、および風味(これらだけには限られないが)を含めた中毒の二次的要因は依然として有する。
【0090】
例えば喫煙者は、5mgのニコチンおよび1.5μgのニトロソアミンを有するブレンドシガレットを吸うことでプログラムを始め、3mgのニコチンおよび1μgのニトロソアミンを有するシガレット、次に1mgのニコチンおよび0.5μgのニトロソアミンを有するシガレット、次に0.5mgのニコチンおよび0.25μgのニトロソアミンを有するシガレット、次に0.1mg未満のニコチンおよび0.1μg未満のTSNAを吸うことに徐々に移行することができ、その後消費者はほぼゼロのニコチンおよびニトロソアミンを有するシガレットのみを吸うこと、あるいは完全に喫煙を止めることを決める。0.6mgのニコチンおよび2μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程1;0.3mgのニコチンおよび1μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程2;および0.1mgのニコチンおよび0.7μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程3の、3工程のプログラムを続けることが好ましい。0.6mgのニコチンおよび2μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程1;0.3mgのニコチンおよび1μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程2;および0.05mgのニコチンおよび0.7μg/g未満のTSNAを含むシガレットを使用する工程3の、3工程のプログラムを続けることがより好ましい。したがって、本明細書に記載するブレンドシガレットは、段階式にヒトにおける発癌可能性を低下させるための手法の基盤をもたらす。
【0091】
本明細書に記載する方法は、消費される中毒ニコチンレベルを徐々に低下させながら、煙の摂取、経口固定、および風味などの中毒の二次的要因を個人に保持させることによって、タバコ使用の中断を容易にする。ニコチンに関する中毒の存在が、前述の二次的要因への依存性を個人に維持させながら徐々に減少するから、最終的には完全な中断が可能になる。
【0092】
例えば幾つかの実施形態は、さまざまな量のニコチンを用いて調製される、タバコ製品の段階的ブレンドを含む。これらの段階的ブレンドは、低レベルのTSNAおよびさまざまな量のニコチンを有するように作製する。一例として、例えばシガレットは、シガレット当たり5mg、4、3、2、1、0.5、0.1、または0mgのニコチンを含むことができる。ブレンドシガレットは、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、および0.6%未満のニコチンを含むことがより好ましい。
【0093】
本発明の他の態様では、さまざまなレベルのニコチンのシガレットをパッケージ化して存在するニコチンのレベルを明確に示し、喫煙中断プログラム品として市場に出す。ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラム用の製品を生成するための好ましい手法は実施例8中に与える。シガレット当たりのニコチンの段階的レベルを飛ばすことによって、あるいは次のレベルに進む用意ができるまで幾つかの工程に留まることによって、個人はプログラムをステップアップすることを望むことができる。有意なことに、本発明の幾つかの態様は、本明細書に記載する個々のタバコ製品を選択することによって、摂取するニコチンの量を消費者が個別に選択することを可能にする。さらに中毒の二次的要因が保たれるので、ニコチンへの依存性を早急に低下させることができる。
【0094】
ニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムは、中毒の二次的要因を保ちながらニコチンへのプログラム参加者の摂取を制限する。これらの二次的要因には煙の摂取、経口固定、および風味があるが、これらだけには限られない。二次的要因が依然として存在するので、このプログラム参加者は、プログラム参加者にニコチンは供給するが前述の二次的要因は除去することに頼るプログラムよりも、このニコチン減少および/またはタバコ使用中断プログラムにおいてさらに高い確率で成功する可能性がある。最終的にプログラム参加者は、中毒状態になるのに充分な量より少ない量のニコチン量を有するタバコ製品を使用する。
【0095】
本発明の他の態様では、シガレット当たり0.05mg未満のニコチンを有するシガレットのみを得るために、個人は選択を行うと思われる。何人かの個人、早急にニコチン摂取を止めることを必要とする個人(例えば医学的状態を有する個人、またはニコチンと相互作用する薬剤を使用する個人)などは、この方法が有用であることを発見することができる。何人かの個人に関しては、口の中の単なるシガレットの存在が、ニコチン中毒から容易に離脱するのに充分である可能性がある。段階的に、喫煙の中毒性が低下する可能性がある、何故ならこれらのシガレット中にはニコチンが存在しないからである。したがってこれらの個人は、完全に喫煙を止めることができる。
【0096】
本発明の他の態様では、段階的なニコチンレベルを含むシガレットのパックを「喫煙中断キット」として与える。喫煙を止めることを望む個人は、プログラムの初めにシガレットの完全なキットを購入することができる。したがって、シガレットの販売カウンターでシガレットを購入しながら生じる可能性がある任意の誘惑は回避される。したがって、この方法の成功は何人かの個人に関して高い確率で可能性がある。このようなキットの好ましい例は実施例9中に与える。
【実施例】
【0097】
以下の実施例は本発明を例示するために述べ、本発明を制限するものとして解釈すべきではない。
【0098】
(実施例1)
〈単離および塩基配列決定〉
TobRD2cDNA(Conklingら、Plant Phys.93、1203 (1990))はQPTaseをコードしており、これはサイトゾルタンパク質であると予想される。NtQPT1のアミノ酸配列とGenBankのデータベースを比較することによって、幾つかの細菌および他のタンパク質との限られた配列類似性が明らかになり、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)活性をS.typhimurium、大腸菌およびN.tabacum遺伝子に関して実証した。QPTaseをコードするNtQPT1は、Arabidopsis QPTase遺伝子の一部分を表す可能性がある、Arabidopsis EST(発現配列タグ)配列(GenBank受託番号F20096)によってコードされている、推定ペプチド断片と類似性を有している。
【0099】
(実施例2)
〈タバコ植物の形質転換〉
QPTase遺伝子のDNAは、アンチセンス方向で、植物プロモーター(CaMV35SまたはTobRD2毛根皮質特異的プロモーター)と動作可能に連結して、2つの異なるDNAカセット:CaMV35Sプロモーター/アンチセンスQPTaseコード遺伝子およびTobRD2プロモーター/アンチセンスQPTaseコード遺伝子を生成する。
【0100】
野生型タバコ系および低ニコチンタバコ系、例えば野生型バーレー21タバコ(Nic1+/Mic2+)および同型Nic1-/Nic2-バーレー21を形質転換用に選択する。それぞれの系由来の複数のタバコ植物細胞を、それぞれのDNAカセットを使用して形質転換する。Agrobacteriumベクター、例えばTi-ボーダー配列およびnptII遺伝子(nosプロモーター(nptII)の制御下でカナマイシンに対する耐性を与える)を有するAgrobacterium-バイナリーベクターを使用して形質転換を行う。
【0101】
形質転換細胞を選択して、R0と呼ばれるトランスジェニックタバコ植物中に再生させる。このR0植物を成熟期まで成長させ、ニコチンのレベルに関して試験し、形質転換タバコ植物のサブセットは、非形質転換対照植物と比較してニコチンの有意に低いレベルを示す。
【0102】
次いでR0植物を自己増殖させ、トランス遺伝子の分離を次世代、R1子孫で分析する。R1子孫は成熟期まで成長させ自己増殖させ、R2子孫中のトランス遺伝子の分離は、どのR1植物がそのトランス遺伝子と同型であるかを示す。
【0103】
(実施例3)
〈低いニコチンレベルを有するタバコ〉
バーレー21LA種のタバコを、低ニコチンタバコ種を生成するためのバイナリーAgrobacteriumベクターpYTY32、ベクター21〜41を用いて形質転換した。バイナリーベクターpYTY32は、NtQPT1のcDNAのアンチセンス発現を誘導する2.0kbのNtQPT1毛根皮質特異的プロモーター、および、Agrobacterium tumefaciensのT-DNA由来のノパリン合成酵素(nos)ターミネーター配列を有していた。この構築体の選択マーカーは、カナマイシンに対する耐性を与える大腸菌Tn5由来のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)であり、nptIIの発現はAgrobacterium tumefaciensのT-DNA由来のnosプロモーターによって誘導された。形質転換細胞、組織、および実生は、300μg/mlのカナマイシンを含むMurashige-Skoog(MS)培地上で生育するそれらの能力によって選択した。バーレー21LAは、バーレー21と比較して実質的に低下したレベルのニコチンを有するバーレー21の一種である(すなわち、バーレー21LAはバーレー21の8%のニコチンレベルを有する、Leggら、Can.J.Genet.Cytol.13、287〜91 (1971) ; Leggら、J.Hered.60、213〜217 (1969)を参照)。
【0104】
バーレー21LA(T0)の100の独立したpYTY32形質転換体を自己増殖させた。自己増殖させた植物の子孫(T1)はカナマイシンを含む培地上で発芽させ、カナマイシン耐性の分離を記録した。形質転換体から一箇所の遺伝子座において3:1に分離するT1子孫が生じ、これらをさらなる分析に施した。
【0105】
3:1に分離するT1子孫のニコチンレベルは、マイクロアッセイ技法を使用して定性的に測定した。約200mgまでの新たなタバコの葉を回収し、1mlの抽出溶液(抽出溶液:1ml酢酸、100mlのH2O)中で粉砕した。ホモジェネートを14,000×gで5分間遠心分離にかけ、上清をクリーンチューブに移し、それに以下の試薬:100μLのNH4OAC(5g/100mlのH2O+50μLのBrij35);500μLの臭化シアン(SigmaC-6388、0.5g/100mlのH2O+50μLのBrij35);400μLのアニリン(0.3ml緩衝アニリン、100mlのNH4OAC+50μLのBrij35中)を加えた。抽出溶液に溶かした10mg/mlのニコチン標準ストック溶液を調製し、これを希釈して検量用の標準系を作製した。460nmにおける吸光度を読み取り、試験サンプルのニコチン含量は標準検量曲線を使用して測定した。
【0106】
バーレー21LAの親のニコチンレベルの10%未満を有していたT1子孫を自己増殖させて、T2子孫を生成した。同型T2子孫は、カナマイシンを含む培地上で種子を発芽させること、および子孫の100%がカナマイシンに耐性があった(すなわち4:0に分離した;異型子孫は3:1に分離すると思われる)クローンを選択することによって同定した。同型および異型T2子孫中のニコチンレベルは、マイクロアッセイ技法を使用して定性的に測定し、バーレー21LAの親の10%未満のレベルを再度示した。同型T2子孫の葉サンプルは、ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出(GC/FID)を使用するニコチンレベルの定量分析用にWilson、NCのSouthern Research and Testing Laboratoryに送った。形質転換体#41の同型T2子孫が最も低いニコチンレベル(70ppmまで)を与え、この形質転換体を「ベクター21〜41」として表した。
【0107】
ベクター21〜41植物を自己交配させ、T3子孫を生成させた。T3子孫を生育させ、ニコチンレベルを定性的および定量的にアッセイした。T3子孫を自己交配させ、T4子孫を生成させた。T4子孫の大量の種子のサンプルを生育させ、ニコチンレベルを試験した。
【0108】
一般にベクター21〜41は、アルカロイド含量および全体の還元糖(例えばニコチンおよびノルニコチン)以外は、全ての評価した性質においてバーレー21LAと同等である。ベクター21〜41は、その実質的に低下したニコチン、ノルニコチンおよび合計アルカロイド含量によって、親のバーレー21LAと区別することができる。以下に示すように、ベクター21〜41中の合計アルカロイド濃度は、親のバーレー21LA中のレベルと比較してほぼ有意に低下しており、ニコチンおよびノルニコチン濃度は、バーレー21LAと比較してベクター21〜41中では劇的な低下を示す。ベクター21〜41は、バーレー21LAと比較して有意に高いレベルの還元糖も有する。
【0109】
ベクター21〜41T4子孫の実地試験をCentral Crops Research station(Clayton、NC)において行い、バーレー21LAの親と比較した。その設計は3つの処理物質(ベクター21〜41、NtQPT1プロモーターのみで形質転換したバーレー21LA[プロモーター対照]、および非形質転換バーレー21LA[野生型])、15の複製、1複製当たり10の植物であった。以下の農学的性質:移植から開花までの日数、開花時の高さ、開花時の葉数、収率、ニコチンの割合、ノルニコチンの割合、合計窒素の割合、および還元糖の割合を測定し比較した。
【0110】
ベクター21〜41は、5つの州(ペンシルベニア、ミシシッピ、ルイジアナ、アイオワ、およびイリノイ)で600を超える農民によって約5000エーカーでも生育させた。米国農務省、農業販売促進局(UADA-AMS)は、これらの農場から採取した2,701のサンプルのFTC法を使用して、ニコチンレベルを定量化した(乾燥重量当たりのニコチンの割合として表した)。ニコチンレベルは0.01%〜0.57%の範囲であった。これら全てのサンプルに関するニコチンレベルの平均の割合は0.09%であり、中央値は0.07%であった。バーレータバコ栽培品種は典型的には、乾燥重量で2%と4%の間のニコチンレベルを有する(Tso、T.C.、1972、Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants.Dowden、Hutchinson、and Ross、Inc.Stroudsbury)。
【0111】
(実施例4)
〈分子デコイを使用するNtQPT1遺伝子の発現の調節〉
NtQPT1プロモーターの-1000bpと-600bpまたは-700bpの間に位置するヌクレオチド配列を、タンデムアレイで植物Agrobacteriumシャトルベクター中に挿入し、当業者に知られている方法によってタバコに後に形質転換する。前記ベクターを用いて安定的に形質転換した植物は、NtQPT1の発現のレベルならびにニコチンおよび/またはTSNA含量を評価する。これらの実験は、Nic遺伝子産物と相互作用する分子デコイを用いて形質転換したタバコは、NtQPT1の低い発現レベルを示すことを実証する。
【0112】
(実施例5)
〈分子デコイを使用して作製した、低いニコチンおよび/またはTSNAレベルを有するタバコ〉
NtQPT1プロモーターの約300または400ヌクレオチド長断片の多数のコピー(例えば、NtQPT1プロモーターの-1000bpと-600bpまたは-700bpの間に位置するヌクレオチド配列を含む)を、植物細胞の衝突型形質転換に適したミクロ粒子(例えば、1〜5μmの金球体)に固定させる(例えば、沈殿によって)。任意の適切な衝突型細胞形質転換法を使用して、ミクロ粒子をタバコ植物細胞(例えば、バーレー21LA)中に打ち込んで、形質転換型植物細胞を生成させる。植物はその形質転換型植物細胞から次いで再生させる。バーレー21LAは、バーレー21と比較して実質的に低下したレベルのニコチンを有するバーレー21の一種である(すなわち、バーレー21LAはバーレー21の8%のニコチンレベルを有する、Leggら、Can.J.Genet.Cytol.13、287〜91 (1971) ; Leggら、J.Hered.60、213〜217 (1969)を参照)。
【0113】
形質転換細胞、組織、および実生は、選択マーカーを使用したかどうかに応じて選択化合物、例えば抗生物質を含むかあるいは含まないMurashige-Skoog(MS)培地上で生育させる。バーレー21LA(T0)の100の独立した形質転換体を自己増殖させる。自己増殖させた植物の子孫(T1)を発芽させる。T1子孫のニコチンレベルは、マイクロアッセイ技法を使用して定性的に測定する。約200mgまでの新たなタバコの葉を回収し、1mlの抽出溶液中で粉砕する(抽出溶液:1ml酢酸、100mlのH2O)。ホモジェネートを14,000×gで5分間遠心分離にかけ、上清をクリーンチューブに移し、それに以下の試薬:100μLのNH4OAC(5g/100mlのH2O+50μLのBrij35);500μLの臭化シアン(SigmaC-6388、0.5g/100mlのH2O+50μLのBrij35);400μLのアニリン(0.3ml緩衝アニリン、100mlのNH4OAC+50μLのBrij35中)を加える。抽出溶液に溶かした10mg/mlのニコチン標準ストック溶液を調製し、これを希釈して検量用の標準系を作製する。460nmにおける吸光度を読み取り、試験サンプルのニコチン含量は標準検量曲線を使用して測定する。
【0114】
バーレー21LAの親のニコチンレベルの10%未満を有するT1子孫を自己増殖させて、T2子孫を生成させる。同型T2子孫を次いで同定する。同型および異型T2子孫中のニコチンレベルも、マイクロアッセイ技法を使用して定性的に測定する。同型T2子孫の葉サンプルは、ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出(GC/FID)を使用するニコチンレベルの定量分析用にWilson、NCのSouthern Research and Testing Laboratoryに送ることもできる。同型T2子孫は、非形質転換タバコと比較して実質的に低いニコチンレベル(70ppmまで)を有するであろう。このような植物中のニコチンレベルは実質的に低下しているので、これらの植物中のTSNAレベルは同時に低下する。
【0115】
これらの実験は、Nic遺伝子産物と相互作用する分子デコイを用いて形質転換したタバコは、低量のニコチンおよび/またはTSNAを示すことを実証する。低いNtQPT1発現レベルおよび低いニコチン/TSNAレベルを有する分子デコイの、多数のタンデム挿入体を有する植物を使用して、商業的価値があるタバコ製品を生成させる。
【0116】
(実施例6)
〈低ニコチンおよびニトロソアミンブレンドタバコ〉
以下の実施例は、ブレンドによって特定量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を作製するための幾つかの方法を記載する。幾つかのブレンド手法は、非常に低量のニコチンおよび/またはTSNAを有する種から作製したタバコで始める。(例えば、検出不能なレベルのニコチンおよび/またはTSNAの)低量ニコチン/TSNA種から作製したタバコと、従来のタバコ(例えば、30,000parts per million(ppm)のニコチンおよび8,000parts per billion(ppb)のTSNAを有するバーレー種、20,000ppmのニコチンおよび300ppbのTSNAを有する熱風乾燥タバコ、および10,000ppmのニコチンおよび100ppbのTSNAを有する東洋風タバコ)をブレンドすることによって、ほぼあらゆる所望量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を製造することができる。他の手法は、低量ニコチン/TSNAタバコのみをブレンドする(例えば低量のニコチンおよび/またはTSNAを含む、遺伝的に改変されたバーレー種、遺伝的に改変されたバージニア乾燥種、および遺伝的に改変された東洋風タバコ)。さまざまな量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を、タバコ使用中断キットおよびプログラム中に取り込ませて、タバコ使用者が彼らのニコチンに対する依存性を低下させるかあるいは無くすこと、および発癌可能性を低下させることを手助けすることができる。
【0117】
一手法により、工程1のタバコ製品は約25%の低量ニコチン/TSNAタバコおよび75%の従来のタバコからなり、工程2のタバコ製品は約50%の低量ニコチン/TSNAタバコおよび50%の従来のタバコからなっていてよく、工程3のタバコ製品は約75%の低量ニコチン/TSNAタバコおよび25%の従来のタバコからなっていてよく、工程4のタバコ製品は約100%の低量ニコチン/TSNAタバコおよび0%の従来のタバコからなっていてよい。タバコ使用中断キットは、1カ月プログラム用の消費者を満足させるための、それぞれの前述の配合物由来の一定量のタバコ製品を含むことができる。すなわち、例えば消費者が1日当たり1パックの喫煙者である場合、例えば1カ月キットはそれぞれの工程から7パック、合計28パックのシガレットを与えると思われる。それぞれのタバコ使用中断キットは、工程毎のプロセスによって消費者を詳細に手助けする一組の教示書を含むと思われる。当然ながら、特定量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品(例えばボックスの葉巻、パックのシガレット、缶詰の嗅ぎタバコ、および噛みタバコのポーチまたはひねりタバコ)が好都合な大きさの量で利用可能であると思われ、消費者は彼らが個人的に望む量のニコチンおよび/またはTSNAを選択することができると思われる。本明細書に記載する教示を使用して、さまざまな低ニコチン/低TSNAブレンドタバコを得るための多くの方法が存在し、以下は当業者を一つの考えられる手法に導くことを単に目的とする。
【0118】
25%の低量ニコチン/TSNAブレンドである工程1のタバコ製品を得るために、約0ppmのニコチン/TSNAタバコから作製したタバコを、従来のバーレー種、熱風乾燥、または東洋風タバコとそれぞれ25%/75%の比率で混合して、22,500ppmのニコチンおよび6,000ppbのTSNAを有するバーレー種タバコ製品、15,000ppmのニコチンおよび225ppbのTSNAを有する熱風乾燥タバコ製品、および7,500ppmのニコチンおよび75ppbのTSNAを有する東洋風タバコ製品を得ることができる。同様に、50%の低量ニコチン/TSNAブレンドである工程2の製品を得るために、約0ppmのニコチン/TSNAタバコから作製したタバコを、従来のバーレー種、熱風乾燥、または東洋風タバコとそれぞれ50%/50%の比率で混合して、15,000ppmのニコチンおよび4,000ppbのTSNAを有するバーレー種タバコ製品、10,000ppmのニコチンおよび150ppbのTSNAを有する熱風乾燥タバコ製品、および5000ppmのニコチンおよび50ppbのTSNAを有する東洋風タバコ製品を得ることができる。さらに、75%/25%の低量ニコチン/TSNAブレンドである工程3の製品を得るために、約0ppmのニコチン/TSNAタバコから作製したタバコを、従来のバーレー種、熱風乾燥、または東洋風タバコとそれぞれ75%/25%の比率で混合して、7,500ppmのニコチンおよび2,000ppbのTSNAを有するバーレー種タバコ製品、5,000ppmのニコチンおよび75ppbのTSNAを有する熱風乾燥タバコ製品、および2,500ppmのニコチンおよび25ppbのTSNAを有する東洋風タバコ製品を得ることができる。
【0119】
タバコ製品は、さまざまな栽培条件下において世界の多くの異なる地域で栽培された、多くの異なる型のタバコのブレンドであることが多いことは理解されるはずである。結果として、ニコチンおよびTSNAの量は作物毎に異なるであろう。しかしながら、従来の技法を使用することによって、使用する作物当たりのニコチンおよびTSNAの平均量を容易に測定して、所望のブレンド品を作製することができる。ブレンド品を構成するそれぞれの型のタバコの量を調節することによって、当業者は、ニコチンおよび/またはTSNAの量と外見、風味、および喫煙性など他の考慮事項のバランスを保つことができる。このようにして、さまざまなレベルのニコチンおよび/またはニトロソアミン、ならびに外見、風味、および喫煙性を有する、さまざまな型のタバコ製品を作製することができる。
【0120】
(実施例7)
〈低ニコチンおよびニトロソアミンブレンドタバコ〉
好ましい方法によって、従来のバージニア熱風乾燥タバコを遺伝的に改変されたバーレー種(すなわち、有意に低下した量の低ニコチンおよびニトロソアミンを含むバーレー種)とブレンドさせて、3レベルの低ニコチンシガレット:0.6mgのニコチンを含む工程1のシガレット、0.3mgのニコチンを含む工程2のシガレット、および0.05mg未満のニコチンを含む工程3のシガレットに取り込まれたブレンドタバコを生成した。合計TSNAの量は、ほぼ0.17μg/gと0.6μg/gの間の範囲であることが分かった。
【0121】
幾つかのシガレットでは、ブレンドの約28%はバージニア乾燥タバコであり、ブレンドの約29%は遺伝的に改変されており(すなわち低ニコチンバーレー種)、ブレンドの約14%は東洋風であり、ブレンドの約17%は膨張熱風乾燥させた柄であり、約12%は標準的な市販の復元タバコであった。このブレンドを含むシガレット中の合計TSNAの量は約1.5μg/gであった。
【0122】
(実施例8)
〈低ニコチンおよびニトロソアミンレベルを含む、ニコチン減少および/または喫煙中断プログラム〉
以下の実施例は、本発明の低ニコチン低TSNAタバコ製品を使用する、ニコチン減少および/または喫煙中断プログラムを記載する。非常に低レベルのTSNAおよびほぼゼロのニコチンを含む改変型タバコを、知られている量のニコチンを有するタバコと混合させて、シガレット当たり特定の段階的レベルのニコチンを生成させる。一例として、バージニア乾燥タバコを遺伝的に改変されたバーレー種(すなわち有意に低下した量のニコチンおよびニトロソアミンを含むバーレー種)とブレンドさせて、3レベルの低ニコチンシガレット:0.6mgのニコチンを含む工程1のシガレット、0.3mgのニコチンを含む工程2のシガレット、および0.05mg未満のニコチンを含む工程3のシガレットに取り込まれたブレンドタバコを生成した。段階的なシガレットパックはそれらのニコチン含量に関して明確に記録し、段階的なニコチン減少プログラムの工程もパッケージに関して明確に記録する。使用者は毎週、次に低いレベルのニコチンを有するシガレットを含むパックを購入するが、以前に消費したシガレットを超えない1日当たりのシガレットに自制する。使用者は、a)1日当たりに吸うシガレットの数、b)最初のニコチンレベル、c)毎週のシガレット当たりのニコチンレベルの変化、およびd)1日当たりに消費されるニコチンの最終レベルを選択することによって個人の必要性に従い、彼/彼女独自のニコチン減少および/または喫煙中断の割合を定義することができる。プログラムのより良い形跡を保つために、個人は全体的なニコチン摂取、および1日当たりに消費するシガレットの数の日々の記録をつける。最終的に個人は、ほぼゼロのニコチンを含むタバコ製品を消費する。最終工程のニコチンを含まないタバコ製品は非中毒性であるので、したがって完全にタバコ製品の使用を止めることはさらに容易であるはずである。
【0123】
(実施例9)
〈TSNAレベルが低くニコチンレベルが段階的に低下したシガレットパックを含む、ニコチン減少および/または喫煙中断キット〉
重度、中度、または軽度の喫煙者に合わせて、さまざまなニコチン減少および/または喫煙中断キットを作製する。これらのキットは、キットに応じて2週間の期間(速)、1カ月の期間(中)または2カ月の期間(遅)いずれかで喫煙を止めるのに必要とされる全ての物質を与える。それぞれのキットは、0.6mgのニコチンを含む工程1のシガレット、0.3mgのニコチンを含む工程2のシガレット、および0.05mg未満のニコチンを含む工程3のシガレットのいずれかを含む、本発明に従い改変した一定数のシガレットパックを含む。例えば、1日1パックの喫煙者は、それぞれのパックがそれぞれのシガレット当たり前述の量のニコチンを含む、7個のシガレットパックを得ると思われる。0.05mg未満のニコチン/シガレットを含む数週間分の他のシガレットも、ニコチンシガレットを吸わないことに消費者を慣れさせるために、キット中に与えられると思われる。このキットは日々のニコチン摂取の形跡を記録するための日記、中断プログラムに個人が興味を持ち続けるための動機を与える文献、喫煙中断の利点に関する健康情報、およびチャットグループ、ミーティング、ニュースレター、最近の刊行物、および他の関連リンクなどの、他のアンチスモーキング情報を見つけるためのウエブサイトアドレスも含むと思われる。
【0124】
実施形態および実施例を参照しながら本発明を記載してきたが、さまざまな変更形態を本発明の精神から逸脱せずに作製することができることは理解されるはずである。したがって本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレンド低ニコチンタバコを作製する方法であって、
第1のタバコを用意すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して、低レベルのQPTaseを含む遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた第2のタバコを用意すること、および
前記第1のタバコと前記第2のタバコをブレンドして前記低ニコチンタバコを得ること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって生成されたブレンド低ニコチンタバコを含むタバコ製品。
【請求項3】
ブレンド低TSNAタバコを作製する方法であって、
第1のタバコを用意すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して、低レベルのQPTaseを含む遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた第2のタバコを用意すること、および
前記第1のタバコと前記第2のタバコをブレンドして前記低TSNAタバコを得ること、
を含む方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法によって生成されたブレンド低TSNAタバコを含むタバコ製品。
【請求項5】
所望量のニコチンを有する低ニコチンタバコ製品を作製する方法であって、
一定量のニコチンを有する第1のタバコを用意すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して、低レベルのQPTaseを含む遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた、一定量のニコチンを有する第2のタバコを用意すること、および
前記第1のタバコと前記第2のタバコをブレンドして、所望量のニコチンを有する低ニコチンタバコ製品を生成すること、
を含む方法。
【請求項6】
前記低ニコチンタバコ製品がブレンドシガレットである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレンドシガレットが0.6mg以下のニコチンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレンドシガレットが0.3mg以下のニコチンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレンドシガレットが0.05mg以下のニコチンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか一項に記載の方法によって生成されたブレンド低ニコチンタバコを含むタバコ製品。
【請求項11】
請求項2、4または10に記載のタバコ製品から選択されるタバコ製品を含むタバコ使用中断キット。
【請求項12】
所望量のTSNAを有する低TSNAタバコ製品を作製する方法であって、
一定量のTSNAを有する第1のタバコを用意すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して、低レベルのQPTaseを含む遺伝的に改変されたタバコ植物から生成させた、一定量のTSNAを有する第2のタバコを用意すること、および
前記第1のタバコと前記第2のタバコをブレンドして、所望量のTSNAを有する低TSNAタバコ製品を生成すること、
を含む方法。
【請求項13】
タバコ使用者のニコチン消費を低下させる方法であって、
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む第1のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む第2のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供することであって、前記第2のタバコ製品が前記第1のタバコ製品より少ないニコチンを含むこと、および
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む追加のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供することであって、前記追加のタバコ製品が連続的に減少する量のニコチンを含み、前記第1または第2のタバコ製品より少量のニコチンを含む第3の製品により始めること、
を含む方法。
【請求項14】
タバコ使用者のTSNA消費を低下させる方法であって、
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む第1のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供すること、
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む第2のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供することであって、前記第2のタバコ製品が前記第1のタバコ製品より少ないTSNAを含むこと、および
同種の非改変型タバコ植物と比較して低レベルのQPTaseを含む改変型タバコ植物から生成させたタバコを含む追加のタバコ製品を、前記タバコ使用者に提供することであって、前記追加のタバコ製品が連続的に減少する量のTSNAを含み、前記第1または第2のタバコ製品より少量のTSNAを含む第3の製品により始めること、
を含む方法。
【請求項15】
選択した量のニコチンを含むブレンドタバコ製品を調製するための、低量のQPTaseを含むタバコ植物から生成した遺伝的に改変されたタバコの使用。
【請求項16】
選択した量のTSNAを含むブレンドタバコ製品を調製するための、低量のQPTaseを含むタバコ植物から生成した遺伝的に改変されたタバコの使用。
【請求項17】
前記ブレンドタバコ製品がブレンドシガレットである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記ブレンドタバコ製品が0.6mg以下のニコチンを含むブレンドシガレットである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項19】
前記ブレンドタバコ製品が0.3mg以下のニコチンを含むブレンドシガレットである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項20】
前記ブレンドタバコ製品が0.05mg以下のニコチンを含むブレンドシガレットである、請求項15または16に記載の使用。

【公表番号】特表2007−528204(P2007−528204A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515013(P2006−515013)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016958
【国際公開番号】WO2005/000352
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(502108422)ベクター、タバコ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VECTOR TOBACCO LTD.
【Fターム(参考)】