説明

経口使用のための副甲状腺ホルモン(PTH)含有医薬組成物

薬局方標準の溶解試験で試験したときにPTHのインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出が始まると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90% w/w、例えば少なくとも95%又は少なくとも99%が最大限2時間以内に放出される、PTHを含む経口投与用医薬組成物。この組成物はまた、カルシウム含有化合物及び/又はビタミンDを含み得る。詳細には、PTHは、骨関連疾患の治療又は予防のために、カルシウム含有化合物との組合わせで投与され、I)有効量のカルシウム含有化合物が内因性PTHの血漿レベルを低下させるために投与され、II)一旦内因性PTHレベルが低下すると、有効量のPTHがPTHのピーク濃度を得るために投与される。これは、骨粗鬆症を含む骨関連障害のための治療的又は予防的療法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、骨再吸収阻害剤が指示される病状(例えば骨粗鬆症を患っているか又はその危険にある対象を含む)の予防及び/又は治療における使用のための、任意に適切なカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物と組み合せて副甲状腺ホルモン(PTH)を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
更に、本発明は、胃腸管(例えば、小腸又は結腸など)の特定部分へPTHのようなタンパク質/ペプチドを送達するに特に適切な新規医薬組成物に関する。この医薬組成物は、2つの原理の組合せ(すなわち、pH制御機構及び/又は時間制御機構の組合せ)により活性物質の放出が遅延されるように設計される。更に、この医薬組成物は、放出遅延後、比較的急速に活性物質を放出して、確実に、活性物質が小腸及び/又は結腸においてGI粘膜を介して吸収される準備が整うように設計される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
最近の数十年にわたって、治療薬剤として利用可能になるペプチド及びタンパク質の数が増大している。不運にも、これら高分子の可能性の全部は認識されていない。なぜなら、これらは、通常、注射による投与を必要とするからである。動物及びヒトにおいてPTH、PTH関連ペプチド又はアナログを用いてなされた研究により、骨形成及び骨再吸収の増大における有用性が証明され、骨粗鬆症及び関連する骨障害の治療のための使用に関心が集まっている。事実、テリパラチド(組換え副甲状腺ホルモン(1-34))は、米国食品医薬品局(FDA)により、閉経後の女性及び特発性又は性機能低下性の骨粗鬆症を有する男性(彼らは骨折の危険が高い)における骨粗鬆症の非経口治療について認可されている。
【0004】
しかし、PTH並びにその誘導体及びアナログのようなペプチドの経口投与及び送達は、胃腸管が食事からのタンパク質又はペプチドの消化のために設計されている(すなわち、胃腸管において優勢な条件はタンパク質及びペプチドを分解し、したがってタンパク質及びペプチドがインタクト(intact)なタンパク質及びペプチドとして吸収されるのを妨げる)という単純な理由で難題である。
【0005】
WO 02/098453 (Novartis-Erfingungen Verwaltungsgesellschaft M.B.H.)は、副甲状腺ホルモン(PTH)及びサケカルシトニンを経口投与する方法に関する。5-CNASが吸収増強剤として使用されている。用いられる組成物は、試験すべき物質のみを含有するカプセルの形態である。すなわち、医薬的に許容される賦形剤は使用されていない。
【0006】
WO 03/015822 (Novartis AG)は、ヒト副甲状腺ホルモンフラグメント(hPTH)用の経口送達剤としての5-CNACに関する。5-CNACは、経口投与後のPTHの吸収を増強すると記載されている。投与される組成物は、hPTHのみからなるか又はhPTHと5-CNACとの組合せのみからなるカプセルの形態である。すなわち、医薬的に許容される賦形剤は使用されていない。
【0007】
しかし、このような組成物は大量生産に適切でない。したがって、大きなバッチサイズで容易に製造可能であり、そして任意に他の治療上及び/又は予防上活性な薬剤と組み合せるPTHのようなペプチドの経口投与に適切である医薬組成物を開発する必要が存在する。この目的のために、適切な組合せの例はPTHとカルシウム塩との組合せである。最近の研究により、PTHとカルシウム及び/又はビタミンDの補助的摂取とのバランスの取れた投薬が、それぞれ、骨粗鬆症を含む骨劣化プロセスの減退に対して好ましい効果を有することが示されている。
【0008】
最近の数十年の間、結腸吸収を受け易い幾つかの活性物質が出現している。したがって、研究開発は、活性物質を結腸に標的付けるために適切な送達システムの開発を目標としている。この目的のために、多くの製剤、例えば、Fujisawa(例えば、EP-B-0210 540を参照)により開発されたいわゆる時間制御破裂システム(TES)が示唆されている。Kingetら(J. Drug Targeting 1998, 6, 129-149)、Leopold(PSTI 1999, 2, 197-204)及びBussemerら(Critical Review in Therapeutic Drug Carrier Systems 2001, 18, 433-455)により、結腸特異的な薬物送達のための剤形について総説がなされている。
【0009】
しかし、結腸送達のための公知の送達システムは、或る遅延時間の後に活性物質の比較的緩慢な放出を生じる。したがって、このようなシステムは、結腸において活性物質が比較的急速に放出されることが望ましい状況では特には適切でない。結腸における活性物質の比較的急速な放出は、活性物質が結腸の上行部においてのみ吸収されるか、又は活性物質がタンパク質溶解活性に感受性であるか、又は活性物質が難溶性であるので吸収前に溶解のために相当量の水/流体を必要とする場合に、特に有利である。別の状況は、活性物質の効果が或る期間に限定される場合、又は結腸からの吸収が小腸からの吸収より貧弱である場合である。
【0010】
更に、幾つかの活性物質の吸収は小腸の特定部分で起こる。すなわち、非常に狭い吸収窓を有している。このような物質にとっては、活性物質の吸収を可能にする胃腸管の特定部分への到達に要する時間に対応する所定の時間で活性物質の急速な放出が生じる送達システムを開発することもまた有利である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の説明
本発明は、薬局方標準の溶解試験で試験したときにPTHのインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出を開始すると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90%w/w、例えば少なくとも95%又は少なくも99%が最大限2時間以内に放出される、PTHを含む経口投与用の医薬組成物に関する。
【0012】
このような組成物は多くの骨関連疾患の治療での使用に適切である。特に、カルシウムの効果は急速である一方でPTHの効果は遅延される様式でのカルシウム含有化合物とこの組成物との投与は、適切な治療レジメンを提供すると考えられる。したがって、特定の観点では、本発明は、
i)有効量のカルシウム含有化合物が内因性PTHの血漿レベルを低下させるために投与され、
ii)一旦内因性PTHレベルが低下すると、有効量のPTHがPTHのピーク濃度を得るために投与される
骨関連疾患の治療用又は予防用の医薬の製造のために、カルシウム含有化合物と組み合せて副甲状腺ホルモン(PTH)を使用することに関する。
【0013】
以下に、本発明に従う組成物における使用に最も重要な治療上及び/又は予防上活性な物質の説明を記載する。これら活性物質は、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物である。特に適切なものは、実質的に同時に投与することを意図され、(比較的急速に、作用開始を達成するため、すなわち内因性PTHの血漿レベルを低下させるために)胃でカルシウムを放出し、続いて、(PTHの吸収を可能にするため及びカルシウム含有化合物が内因性PTH血漿レベルに低下効果を発揮するまで急速な作用開始を延期するために)小腸又は結腸でのPTH放出を遅延するように設計された、PTHとカルシウム含有化合物とを含む組合せである。この様式で最も有益な治療が認識される。
【0014】
副甲状腺ホルモン
副甲状腺ホルモン(PTH)は、甲状腺により合成され分泌される、84アミノ酸からなるポリペプチドである。PTHは、骨成形/同化剤として、単独で又は他の現在利用可能な骨粗鬆症薬(主として更なる骨損失を防止する)と共に使用され得る。
【0015】
本発明に従う組成物は、PTH、そのフラグメント、アナログ又は誘導体を含む(本発明に関して、用語PTHは、他に示さない限り広義で使用される。すなわち、この用語は、フラグメント、アナログ、誘導体、改変体、例えば、1若しくはそれより多いアミノ酸が他のアミノ酸で置換されているか又は1若しくはそれより多いアミノ酸が改変若しくは欠失しているPTH(完全長、1-84)又はそのフラグメントを包含する)。以下から明らかなように、本発明に従う組成物は、PTHのほかに、他の活性物質、例えばカルシウム、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物、ビタミンD(例えばビタミンD3)、骨劣化プロセスの治療での使用に適切なその他の活性物質、又はこれらの組合せを含有してもよい。本発明に従う組成物で使用する活性物質の適切な選択は、本明細書中に提供される。好ましい実施形態において、組成物はPTHを含むか又は組成物はPTHとカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物とを含む。
【0016】
フルオリド、プロスタグランジンE2(PGE2)及び副甲状腺ホルモン(PTH)は、ヒト又は実験動物で骨量の増加を刺激することが示されている化合物である。フルオリドは骨折割合の増大を導くことがあり、PGE2は望ましくない副作用を有し得るが、PTHの作用は骨に比較的特異的であるようである。PTH又はそのアミノ末端(1-34)フラグメントは、骨粗鬆症のヒト、正常なラット及びイヌで骨量を増加させる。PTHは、骨損失期のエストロゲン欠乏ラット及び確立したオステオペニアを伴うエストロゲン欠乏ラットの両方で、骨損失を改善する(Morletetら、Curr Pharm Des 2001; 7:671-87)。
【0017】
PTHは、腎臓、腸及び骨に対する作用による、カルシウムホメオスタシスの主要な調節物質である。腎臓では、PTHは、ネフロンの遠位尿細管部分内で細胞に作用して、皮質部位でのカルシウム再吸収を増強し、近位尿細管でのナトリウム、ホスフェート及びバイカーボネートの再吸収を遮断する。このホルモンはまた、近位尿細管の細胞を刺激して、1-ヒドロキシラーゼ活性を増強することにより1,25-ジヒドロキシビタミンD3を産生する。この強力なビタミンD代謝物が、次いで、腸粘膜における食餌からのカルシウム取り込みを促進する。
【0018】
PTHに対する異なる組織及び器官の直接応答性は、サイクリックアデノシン三リン酸(cAMP)の細胞内産生と連関する細胞表面膜レセプター、骨及び腎臓のジアシルグリセロール様細胞と連関する細胞表面膜レセプター、及び血管平滑筋細胞と連関する細胞表面膜レセプターにより媒介される。これらレセプターは、完全長PTH(1-84)又はそのアミノ末端フラグメントPTH(例えば、PTH 1-34など)に反応するが、中間領域又はカルボキシ末端フラグメントには反応しない。N末端フラグメントは、天然型(native)ホルモンとは活性が異なることもあるが、PTHのC末端領域(古典的PTH-1レセプターとは異なるレセプターを通じて作用する)は種々の異なる生物学的活性を開始する。詳細には、PTHのC末端領域は、骨細胞アポトーシスを促進することにより、これらの細胞におけるテリパラチドの抗アポトーシス効果への対抗に重要であり得、これにより正常な骨細胞代謝回転を維持する(Fox J. Curr Opin Pharmacol. 2002 Jun;2(3):338-44)。PTH(1-84)投与に対する生物学的応答は、より精力的に研究されているアミノ末端PTH(1-34)又は(1-38)で観察されるものと同様であると考えられている。
【0019】
骨では、このホルモンの作用機序はよりずっと複雑である。内因性PTH分泌に対する急性応答はカルシウムの正味の遊離である。このことはまた、継続的なPTH分泌の間、薬理学的レベルのこのホルモンにも当てはまる。PTH又はそのN末端フラグメントのいずれか(例えば、PTH 1-34)は、パルス状(pulsatile)様式又は断続的(例えば、毎日)様式で生理学的レベルを超えて投与されるが、長期効果は骨形成のアップレギュレーションであり、これは新たに無機物化した骨組織の正味の蓄積を生じる。
【0020】
PTHは、骨再吸収及び骨形成の両方を誘導することができ、したがって骨代謝回転を増大させることができる。PTHは、通常、骨に対してその作用を発揮して、骨再構築プロセスとして細胞外液中にカルシウムを遊離し、また血清カルシウム濃度を維持するが、正確な機序は十分には理解されていない。幾つかの状況では、PTHは、骨に対して作用を発揮し得、骨芽細胞増殖及び骨芽細胞機能を刺激することができる。外因性PTH投与の骨代謝回転に対する正味の効果はPTH送達のパターンに依存する。このように、連続注入は骨容量を減少させる一方で、毎日の単回注射は正味の増加を生じる。
【0021】
正常な設定では、循環PTHの70〜95%が、不活性C末端フラグメントとして存在する。インタクトなPTH(1-84)は、この分子の循環形態の僅か5〜30%を構成するにすぎない。生物学的に活性なN末端フラグメントは、インサイチュで迅速に分解され、循環中に感知できる量で絶えず存在している証拠はほとんどない。内因性ヒトPTHは、主に肝臓(60〜70%)及び腎臓(20〜30%)で迅速に代謝される。
【0022】
副甲状腺ホルモン(PTH)、特にインタクトなヒトPTH(hPTH(1-84))及びその種々のフラグメントhPTH(1-31)、(1-34)、(1-36)、(1-38)並びにそれらの改変体は、過去に何十年にもわたって骨粗鬆症の治療での使用について研究されてきた。本発明に関しては、PTHは、PTH、PTHアナログ、PTH誘導体及びPTH活性又は関連する活性を有する物質を包含するがこれらに限定されない。ヒト副甲状腺ホルモンフラグメント(C末端アミノ酸はアミノ酸35〜38、好ましくは37又は38であり、少なくとも最初のN末端アミノ酸は除去されている)並びにそのアナログ及び誘導体は、骨芽細胞活性を刺激し、望ましくないレベルの骨再吸収も、抗体形成も、タキフィラキシーもなく、骨形成を最大にすることが見出されている。このヒト副甲状腺ホルモンフラグメントは、標準的な命名法に従い式(m-n)PTHで表すことができる:(3-38PTH)〜(28-38PTH)、(3-37PTH)〜(28-37PTH)、(2-35PTH)〜(2-38PTH)及び上記のC末端アミド誘導体(ここで、PTHはヒト副甲状腺ホルモン(hPTH)又はその医薬的に許容される塩若しくは加水分解可能なエステルである)。
【0023】
骨粗鬆症の治療で試験されている種々の同化作用物質(anabolic agent)のうち、PTHの断続的注射は、今日までに最も効果的であると証明されている(Seeman E.ら、Trends Endocrinol Metab 2001; 12 (7): 281-3)。しかし、他の投与経路もまた効率的であり得る。
【0024】
慢性の連続的な過剰のPTHは、原発性副甲状腺機能亢進症及び汎発性線維性骨炎の代表例において見られるように、骨再吸収を著しく増大させるが、断続的なPTH投与は、動物で骨形成を刺激することが見出されており、骨粗鬆症の治療薬剤としてのPTHの使用の基礎を提供する。海綿質密度の劇的な増大及び皮質骨密度の持続に加え、PTH投与は骨強度を増大し、骨折割合を減少させる(例えば、40μg/毎日(1-34 PTH)(Neerら、N Engl J Med 2001,10;344(19):1434-41))。抗再吸収作用体(例えばエストロゲン、カルシトニン、ビタミンD及びビスホスホネート)との組合せのPTH投与は、その効果を増強する(例えば、1年間50、75又は100μg/毎日(1-84 PTH)続いて1年間毎日10mgのアレンドロネート(Rittmaster RSら、J Clin Endo Met 2000,85:2129-2134))。
【0025】
全ての患者は、常に、カルシウム及び/又はビタミンD(例えば、1000〜1500mgのカルシウム及び少なくとも400〜800IUのビタミンD)を補充すべきと一般に考えられている。
その骨同化作用のため、PTHは、骨再構築が抑制されている高齢者(抗再吸収作用体に対して好んで応答しないかもしれない)の骨粗鬆症に有効であると期待されている(Fujita T, BioDrugs 2001;15(11):721-8)。
【0026】
要するに、PTHの治療効果を可能にするために、PTHの血漿濃度が変動するか又はピーク濃度に到達することが最も重要なことであるようである。更に、高いピークPTH血漿濃度は、迅速に適切な低レベルまで減少することが重要なようである。これは、継続的に増加したPTH血漿レベルの望まない効果(減少したBMD(骨無機質密度)を導く骨からのカルシウムの遊離であり、減少したBMDは、次いで、骨折及び骨粗鬆症の危険を増大させる)を回避するか又は減少させるために重要である。換言すれば、PTHでの治療は、PTHのプラス効果及びマイナス効果を十分勘案することが必要である。このような治療は、有利には、骨のカルシウム欠乏に対する内因性PTHのマイナス効果に対抗するために、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物の投与で補われる。カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物は、有益なことに、PTHの毎日1回の投与の間、血漿PTHに対する効果を低下させる。
【0027】
このため、本発明者らは、経口投与後PTHが或る期間の後に放出され、更にPTHは十分な治療応答を可能にするため短期間に放出される、PTHを含む医薬組成物を開発した。PTH放出の遅延時間は、胃での放出(又は有意な放出)を回避するために設計される。
【0028】
胃で、タンパク質/ペプチドは、通常、胃の強酸性条件下で非常に不安定である。強酸性条件は、タンパク質分子の加水分解、凝集、及び/又は変性(これらは通常生物学的活性の喪失を生じる)に好ましい。
【0029】
経口投与されたタンパク質/ペプチドは、小腸に到達すると、通常、GI管の領域に豊富なタンパク質分解酵素(分泌型(トリプシン、キモトリプリシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼA及びB)及び膜結合型(エンドペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼ)の両方)により消化される。酵素がタンパク質/ペプチドを消化しない場合、次の障壁は小腸の上皮細胞を通じての吸収である。「典型的な」球状タンパク質分子は、親水性の外面及び疎水性のコアを有する。その高分子量と合せて、タンパク質/ペプチドは、経細胞送達用に設計されないが、傍細胞経路については可能性がある。しかし、分子サイズがこの経路に関する大きな制限となる。
【0030】
しかし、経口投与されたタンパク質/ペプチドが結腸に到達する場合、結腸にはタンパク質分解酵素はあまり豊富でないため、これら酵素にほとんど曝されないことが期待される。上皮細胞を通じての吸収は、上記(小腸)と同じ原理に従う。結腸の内容物(キームス)は、胃腸管の他の部分より高い粘性を有し、したがって大きなタンパク質分子の上皮膜への移動性及び拡散性は、減速され得る。
【0031】
本発明は、主として、胃におけるPTHの放出(又は実質的な放出)を回避することを目的とする。小腸及び結腸におけるPTHの分解に関する問題は、適切な製剤技術を用いることにより克服できる可能性がある。しかし、通常、そのことは、胃腸管内での放出を遅延させる問題を引き起こし得る。同時に、放出の遅延は延長された放出を生じることが多いので、放出は、開始すれば、非常に急速であることを確実にする課題を生じ得る。
【0032】
インタクトなタンパク質/ペプチドの取り込みにマイナスに影響する胃腸管の状態に関連する上記の障害を克服するための代表的なストラテジーは:
A:酵素消化に対する保護
A1:酵素阻害剤(これは標的タンパク質の消化を減速させ、したがって吸収の機会を増加させる)の添加。注記:他のタンパク質の消化もまた減速される。
A2:タンパク質分子の変更、又は幾つかのd-アミノ酸、又は非天然アミノ酸若しくは誘導体の付加。
A3:製剤の設計(例えば、微粒子システム)によるタンパク質のカプセル化又は保護。
B:吸収の増強
B1:脂質側鎖(接合)による又は親水性アミノ酸のより疎水性のアミノ酸での置換によるタンパク質の疎水化(hydrofobization)。
B2:製剤設計、例えば、エマルジョン、粒子システム、粘膜付着システム。
【0033】
本発明に従う組成物は、PTHの放出が主に胃において回避されるように設計される。異なる型の組成物が、以下で、GI(胃腸)を放出標的として記載される。したがって、以下では、i)小腸(上部又は下部)で又はii)結腸で放出されるように設計された組成物が記載される。下記の記載から明らかなように、放出標的のGIに依存して異なるストラテジーが適用される。
【0034】
PTH用量:PTH (1-84)の通常の治療用量は約0.1mg/用量であり、経口製剤のバイオアベイラビリティーを1〜5%と仮定すると、対応する経口用量は約10〜50mgである。
【0035】
PTH及びカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物
上記のように、本発明はまた、治療的に及び/又は予防的に活性なカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物との組合せでPTHを含む医薬組成物を提供する。したがって、特定の実施形態において、本発明は、骨疾患の治療における使用のための別の治療的に活性な物質と共にPTHを含有する医薬組成物を提供する。好ましい観点では、このような物質は、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物(例えば、カルシウム塩及び例えば、コレカルシフェロールのような化合物)である。この点に関して、このような組合せは、PTHが(胃における分解のため)胃で放出されてはならない一方で、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物は、所望の吸収及び治療効果を可能にするために、胃において優勢な酸性環境に付されなければならないので、製剤上の難題である。しかし、本明細書中の実施例に示されるように、本発明者らは、このような2つの活性物質の放出の差異を可能にする組成物を設計した。
【0036】
カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物
本発明に従う組成物に含有されるカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物は、治療的に及び/又は予防的に活性である、生理学的に寛容され得るカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物である。
【0037】
カルシウムは、イオン化カルシウムとしてもカルシウム複合体としても、体内での多くの鍵となる機能に必須である(Campell AK. Clin Sci 1987; 72:1-10)。細胞の挙動及び生育はカルシウムにより調節される。トロポニンと共同して、カルシウムは筋肉の収縮及び弛緩を制御する(Ebashi S. Proc R Soc Lond 1980; 207:259-86)。
【0038】
カルシウム選択性チャンネルは細胞膜の普遍的な特徴であり、神経組織の電気的活動及び神経分泌性顆粒の放出は、細胞内カルシウムレベルと細胞外カルシウムレベルとの間の平衡の働きである(Burgoyne RD. Biochim Biophys Acta 1984;779:201-16)。ホルモンの分泌並びに鍵となる酵素及びタンパク質の活性は、カルシウムに依存する。最後に、リン酸カルシウム複合体としてのカルシウムは、骨格に剛性及び強度を付与する(Boskey AL. Springer, 1988:171-26)。骨は体内カルシウム総量の99%以上を含有するので、骨格カルシウムはまた、主要な長期カルシウム貯蔵庫として働く。
【0039】
カルシウム塩(例えば、炭酸カルシウムのような塩)が、特に骨粗鬆症に罹患しているか又は骨粗鬆症の危険にある患者のための、カルシウム供給源として使用される。更に、炭酸カルシウムは、制酸剤における酸中和剤として使用される。
【0040】
上記のように、カルシウムは、哺乳動物(特にヒト)の身体内で多くの重要な機能を有する。更に、多くの動物モデルにおいて、慢性的な低カルシウム摂取は骨減少症を生じる。骨減少症は、皮質骨より網目状骨に影響し、カルシウム補充では完全には改善し得ない。動物が成長中である場合、減少したカルシウム摂取は成長阻害に至る。未成熟のヒト新生児では、カルシウム摂取量が高ければ高いほど、より多く摂取され、骨格カルシウムの付着成長がより大きく増加する。これは、十分に高い場合、妊娠期カルシウム保持力と等しくあり得る。成長期では、慢性的なカルシウム欠乏はくる病を引き起こす。思春期前及び思春期後の健常な子供において、カルシウムサプリメントは、骨量の増大を導く。青年では、カルシウム摂取が高いほど、カルシウム保持力は大きくなり、最高の保持力は初潮直後に生じる。まとめると、これらのデータは、カルシウムの適切な摂取をしていると考えられる子供及び青年において、ピーク骨量は、食餌にカルシウムを補充することにより最適化できることを示唆している。成長の間に骨格におけるカルシウム沈着の最適化に関与する機序は、未知である。それらは、おそらく、カルシウム供給が高い場合に類骨の最適な石灰化を確実にする無機質化プロセスの生得の性質であろう。カルシウム欠乏の状態での成長阻害を担う因子もまた未知であるが、骨格サイズを調節する成長因子が関与していることは明らかである。
【0041】
成人において、カルシウム補充は、年齢に関連する骨損失の速度を減少させる(Dawson-Hughes B. Am J Clin Nut 1991;54:S274-80)。カルシウムサプリメントは、食物からの最適なカルシウム摂取を達成できないか又は達成しない者にとって重要である。更に、カルシウムサプリメントは、骨粗鬆症などの予防及び治療において重要である。
【0042】
20の閉経後の女性におけるカルシウムについての見込み試験(prospective calcium trial)の検討により、カルシウム補充は、骨損失を平均で年に約1%減少させることが結論付けられる。高齢者でも、カルシウム補充は骨損失を減少させ、通常の食餌摂取が低いほど骨での応答が良好になる。骨格に対するカルシウム摂取の効果は、骨粗鬆症性骨折の数を減少させることであるが、この効果は研究間で一貫していない(Cumming RGら、J Bone Miner Res 1997; 12:1321-9)。カルシウム補充が骨損失を減速させる機序は、おそらく血清PTHの減少による。加齢に伴い、減少したカルシウム摂取及び吸収の組合せ効果並びにビタミンD不足に起因して、血清PTH及び骨代謝回転が増加する。カルシウム補充は、この状況で最も効果的である。例えば非可動化及び急性エストロゲン欠乏のように、PTHが既に抑制されている場合、カルシウム補充が非常に効果的である可能性は少ない。
【0043】
更に、カルシウムは結腸内で抗ガン作用を有し得る。幾つかの予備的研究により、高カルシウム食餌又はカルシウム摂取の補充が結腸直腸ガンの減少と関連していることが示されている。アセチルサリチル酸(ASA)及び他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)と組み合わせたカルシウムが結腸直腸ガンの危険を減少させるという証拠が増えている。
【0044】
最近の研究は、カルシウムが月経前症候群(PMS)を軽減し得ることを示唆する。カルシウム調節の混乱がPMS症候群の発症の基礎をなす要因であると考える研究者もいる。或る研究では、米国全域の閉経前女性466人を3回の月経周期の間追跡し、半数に月経期間に毎日1200mgのカルシウムサプリメントを投与した。最終的な結果は、プラセボを摂取した女性の48%がPMS関連症状を有することを示した。カルシウム錠剤を投与された女性の30%のみがPMS関連症状を有した。
【0045】
カルシウムの動態
西洋風食餌のカルシウム含量は約1g/日である。しかし、食餌カルシウムは、少数のカルシウムリッチな食物にのみ存在し、カルシウム摂取の範囲は、個体内でも個体間でも、広範囲である。ヒトでは、主に十二指腸−空腸からのカルシウムの吸収は、食事に伴い断続的である。内因性分泌としての消化管からのカルシウム損失は、受動的であり、その両は約100mg/日である。他方、カルシウムは能動機構及び受動機構の両方によって吸収される(Miller J. Z.ら、Am Inst Nutr 1990:265-74)。平均すると、若年成人における吸収は、約30%の効率でしかない。
【0046】
ヒトにおけるカルシウム吸収効率の主たる調節因子は血清1,25(OH)2ビタミンDの濃度である。吸収効率はカルシウム摂取が減少するにつれて増大するが、決して100%の効率は達成されない。一旦吸収されると、カルシウムの主たる流れは、骨へ及び腎臓へである。腎臓では、毎日濾過されるカルシウムの約98%が、主に副甲状腺ホルモン(PTH)濃度の調節下で再吸収される。2%の再吸収されないカルシウムは必須のカルシウム損失として尿中に現れる。
【0047】
若年成人の骨では、約500mg/日のカルシウムが骨芽細胞により形成表面に堆積され、同様の量が破骨細胞により再吸収表面で血清に遊離して戻される(Newton-John Hら、Clin Orthop 1970; 71:229-52)。全体で、骨格は無機質平衡が保持される結果となる。しかし、より高齢の成人では、年齢に関連する骨損失が生じ、骨格からのカルシウムの全般的な正味損失がある。子供では、カルシウム輸送の速度は、若年成人より2〜3倍高く、形成が再吸収より多く、その結果、約300mg/日の正味カルシウム保持があり、骨が増量する(Wastney MEら、Am J Physiol 1996; 271:208-16)。
【0048】
胃の酸性度は、標準的な食事の構成要素の溶解を助ける。全てのカルシウム塩は、酸性媒体中で尚更可溶性である。炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムは比較的水に不溶性であり、したがって臨床研究は、これらの塩からのカルシウム吸収は胃酸の生成に依存することを支持している。
【0049】
カルシウムホメオスタシス
ヒトでは、血清中の総カルシウムの正常範囲は、8.8〜10.2mg/100mlに、すなわち平均濃度の約15%以内に維持されている。このカルシウムの約40%がタンパク質に結合し、10%がホスフェート、スルフェート及びシトレートと複合体結合をし、残る50%がイオン性カルシウムとして存在する。血清中のイオン化カルシウムの濃度は、甲状腺からのPTHの分泌及び腎臓からの1,25(OH)2ビタミンDの分泌に対するカルシウムのネガティブフィードバックを通じて密接に調節される。甲状腺では、血清カルシウムの上昇に応答するPTH分泌の減少は、カルシウム感知レセプターの完全性に依存する。腎臓では、PTH分泌の変化は、1,25(OH)2ビタミンD生成の主たる調節因子であるが、血清カルシウム及び血清ホスフェートもまた生成に影響する。更に、血清1,25(OH)2ビタミンDもまた、PTH分泌並びにそれ自身の生成及び異化を調節することにより、ホメオスタシス機序において主たる役割を演じる。
【0050】
本発明に従う使用のためのカルシウム含有化合物は、例えば、ビスグリシノカルシウム(bisglycino calcium)、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、コーン油酸カルシウム塩(calcium cornate)、フッ化カルシウム、グルビオン酸カルシウム(calcium glubionate)、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、乳酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトグルコン酸カルシウム(calcium lactogluconate)、リン酸カルシウム、ピドール酸カルシウム(calcium pidolate)、ステアリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムであり得る。他のカルシウム源は、水溶性カルシウム塩、又は例えばアルギン酸カルシウム、カルシウム-EDTAなどのような複合体、又は例えば有機リン酸カルシウムのようなカルシウム含有有機化合物であり得る。骨無機物、ドロマイト、及び他の未精製カルシウム源の使用は、これらの供給源が鉛及び他の毒性混入物を含有し得るので、推奨されない。しかし、このような供給源は所望の程度に精製されれば該当し得る。
【0051】
特に有益なのは、ビスグリシノカルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、コーン油酸カルシウム塩、フッ化カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、乳酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトグルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピドール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムである。異なるカルシウム含有化合物の混合物もまた使用し得る。本明細書中の実施例より明らかなように、炭酸カルシウムは、カルシウム含有化合物としての使用に特に適切であり、高いカルシウム含量を有している。
【0052】
カルシウムは十二指腸及び空腸において能動的に吸収され、回腸において受動的に吸収される;経口投与された用量の20〜33%のみが吸収される。通常、本発明に従う組成物は、約100〜約1000mgのCa、例えば、約150〜約800mg、約200〜約700mg、約200〜約600mg、又は約200〜約500mgのCaに対応する量のカルシウム含有化合物を含有する。
【0053】
通常、治療目的又は予防目的のためのカルシウムの用量は、毎日約350mg(例えば、新生児)〜約1200mg(授乳中の女性)である。錠剤中のカルシウムの量は、その錠剤が日に1〜4回の、好ましくは日に1回又は2回の投与に適切であるように調整され得る。
【0054】
ビタミンD
機能
カルシウム及び骨格ホメオスタシスに対する作用に加え、ビタミンDは、身体における幾つかの主要な系の調節に関与する。ビタミンDの作用は、腎臓で主に産生される1,25-(OH)2ビタミンDとビタミンDレセプター(VDR)とにより形成される複合体によりゲノムで媒介される。VDRは多くの細胞型に広く分布する。1,25-(OH)2ビタミンD/VDR複合体は、細胞分化及び免疫系において重要な調節的役割を有する。これらの作用の幾つかは、おそらく、腎臓以外の或る種の組織の、局所的に1,25-(OH)2ビタミンDを産生しパラクリンとして作用する能力に依存する(Adams JSら、Endocrinology 1996;137:4514-7)。
【0055】
代謝
ビタミンDの主たる供給源は皮膚であり、そこでビタミンDは、ステロイド前駆体に対する紫外線光の作用により産生される。ビタミンDもまた、カルシウムと同様に、限ぎられた数の食物に存在する。食餌供給源は、太陽光への曝露が減少している状況下では重要であり得るが、ビタミンDは真正のビタミンではない。ビタミンDは、代謝されるまでは生物学的に不活性であるプロステロイドホルモンである(Block G. Am J Epidemiol 1985; 122:13-26)。肝臓で、ビタミンDは25-OHビタミンDに代謝される。25-OHビタミンDは、血中におけるビタミンD結合タンパク質(DBP)に対する高い親和性に起因する長い半減期により主たる貯蔵形態として機能する。腎臓で、25-OHビタミンDは、1α-ヒドロキシラーゼ酵素により、ビタミンDの生物学的効果を担うホルモンである1,25-(OH)2ビタミンDに更に代謝される。1α-ヒドロキシラーゼ酵素の活性は、PTH、カルシウム及びホスフェートの血中レベル並びに1,25-(OH)2ビタミンD自体により厳密に制御される。血清1,25-(OH)2ビタミンDは、25-OHビタミンDより、VDRに対する親和性がずっと高く、DBPに対する親和性がずっと低いので、血清中の25-OHビタミンD濃度が薬理学的濃度である場合を除き、1,25-(OH)2ビタミンDがビタミンDの作用を担っている。これは、ビタミンD又は25-OHビタミンDのいずれかの経口消費に伴って生じ、ビタミンD中毒を導く(Monkawa Tら、Bioche Biophy Res Commu 1997; 239;527-33)。
【0056】
骨格の病態生理
ヒトでは、ビタミンDの欠乏は、子供にくる病を生じ、成人に骨軟化症を生じる。基本的な異常は、骨芽細胞により沈着されたままの類骨の無機質化速度の遅延である(Peacock M. London Livingstone, 1993:83-118)。この遅延が骨芽細胞における1,25-(OH)2ビタミンD依存性機序の不全に起因するのか、又は吸収不良に副次的なカルシウム及びホスフェートの供給減少に起因するのか、又はその両方か明らかでない。無機質化遅延に付随して、カルシウム及びホスフェートの供給減少、低カルシウム血症及び低リン酸塩血症を伴う重篤な続発性副甲状腺亢進症、並びに骨代謝回転増加が現れる。
【0057】
ビタミンD不足(ビタミンD欠乏の前臨床期)もまた、欠乏で見られるより緩やかな程度ではあるが、カルシウム供給減少及び続発性副甲状腺亢進症を引き起こす。この状態が慢性的なままであれば、オステオペニアを生じる。このカルシウム不足状態の基礎をなす生化学的プロセスは、おそらく、その基質25-OHDの減少に起因する1,25-(OH)2ビタミンD不適切なレベルである(Francis RMら、Eur J Clin Invest 1983; 13:391-6)。ビタミンD不足状態は、高齢者で最も一般的に見出される。加齢に伴い、太陽光への曝露の減少及びおそらくは皮膚合成の減少に起因して血清25-OHビタミンDが減少する。更に、高齢者では、この状態は、カルシウム摂取の減少及び逆説的なカルシウム吸収の減少により悪化する。腎の1,25-(OH)2ビタミンD産生の減少を生じる加齢に伴う腎機能低下は一要因であり得る。
【0058】
高齢者における骨損失に対するビタミンD補充の効果についての多くの研究が存在する。カルシウム補充を伴わないものもあれば、カルシウム補充を伴うものもある。ビタミンD補充は欠乏及び不足を改善するために必要であるが、骨格に関する限り、主たる骨格欠陥はカルシウム欠乏であるので、カルシウム補充が尚更重要であることが研究から明らかである。臨床試験に基づく文献では、最近の知見は、高齢患者にはより高用量のビタミンDが必要である傾向を示唆している(Compston JE. BMJ 1998;317:1466-67)。年間150.000〜300.000IU(約400〜800IU/日に対応)のビタミンD注射についての公開の準無作為化研究より、治療した患者で、全体の骨折率には有意な減少が示されたが、腰部骨折の割合は減少しなかった(Heikinheimo RJら、Calcif Tissue Int 1992; 51:105-110)。最近公開された試験から、4ヶ月ごと〜年4回の100.000IU(約800IU/日に対応)の経口ビタミンD補充は骨折を防止し得るが、PTHを適切に減少させないことが結論付けられた。このことは、将来の試験でより頻繁な投薬が考慮され得ることを示唆している。
【0059】
ビタミン中毒の1つの側面は骨再吸収の増加である。25-OHビタミンD及び1,25-(OH)2ビタミンDの両方が高濃度でインビトロ及びインビボで骨再吸収の増加を引き起こす。骨再吸収は抗再吸収剤(例えばエストロゲン及びビスホスホネート)により遮断され得る(Gibbsら、Postgrad Med J.1986;62:937-8)。長期には、過剰のビタミンDはオステオペニアを導く(Adamsら、Annal Intern Med 1997:127; 203-6)。
【0060】
カルシウム及びビタミンD3の1日当たりの推奨許容量(Recommended Daily Allowance)(RDA)(欧州委員会。欧州共同体における骨粗鬆症に関する報告。予防のための行動。欧州共同体公式出版物出版局、ルクセンブルク、1998 (European Commission. Report on osteoporosis in the European Community. Action for prevention. Office for official Publications of the European Communities, Luxembourg 1998))は以下のとおりである。
【0061】
群 年齢(歳) カルシウム(mg)* ビタミンD3(μg)
新生児 0〜0.5 400 10〜25
0.5〜1.0 360〜400 10〜25

子供 1.0〜3.0 400〜600 10
4.0〜7.0 450〜600 0〜10
8.0〜10 550〜700 0〜10

男性 11〜17 900〜1000 0〜10
18〜24 900〜1000 0〜15
25〜65 700〜800 0〜10
65+ 700〜800 10

女性 11〜17 900〜1000 0〜15
18〜24 900〜1000 0〜10
25〜50 700〜800 0〜10
51〜65 800 0〜10
65+ 700〜800 10

妊婦 700〜900 10

授乳中 1200 10

* カルシウムのRDAは国ごとに異なり、多くの国で再評価中である。
【0062】
一般に、本発明に従う組成物は、以下のインビボ標的及び対応するインビトロ標的溶解プロフィールに基づく。
【0063】
PTH放出のインビボ及びインビトロ標的
胃腸管におけるインビボ標的
PTHについての血漿プロフィールは、用いた特定のPTHに依存する。したがって、PTH 1-84又はPTH 1-34を含む組成物についての血漿プロフィールは、以下のとおりであるべきである:
【0064】
PTH-84に望ましいプロフィール:
PTHのピーク濃度とベース濃度との比(すなわちCmax/Cbasis)は、約2〜約20の範囲、例えば約4〜約18、約6〜約17、又は約8〜約15倍である。
吸収開始後のTmaxは約1時間(幅0.5〜2.5時間)であり、外側限界は0.2〜6時間である。
W50(すなわちその間のPTHの濃度がピーク濃度の50%又はそれより多い期間)は、約0.1〜約6時間の範囲、例えば約1〜約3時間、例えば約1時間である。
【0065】
PTH 1-34に望ましいプロフィール:
PTHのピーク濃度とベース濃度との比(すなわちCmax/Cbasis)は、約1〜約10の範囲、例えば約4〜約9である。
吸収開始後のTmaxは約0.5時間(幅0.2〜1時間)であり、外側限界は0.1〜3時間である。
W50(すなわちその間のPTHの濃度がピーク濃度の50%又はそれより多い期間)は、約0.1〜4時間の範囲、例えば約0.5〜約1.5時間である。
【0066】
PTHの吸収
PTHの吸収は、胃腸管で組成物から放出されたときに始まるべきである。本発明に従う組成物を提供するために用いる異なる製剤技術に起因して、PTHは小腸で放出されてもよいし、又は結腸で放出されてもよい。
【0067】
小腸
空腸でPTHを放出する(すなわち、GI標的が空腸である)ように設計される組成物は、胃内容排出の約0.5〜1.5時間後(このときPTHが急速に放出される)に対応する遅延時間(すなわち、PTHの放出が実質的に回避される投与後の或る期間)を有するように設計される。本発明の特定の実施形態では、小腸でPTHを放出するように設計された組成物は、比較的高い搭載量のPTH安定化剤(すなわち、小腸のこの部分でのPTHの分解を阻害する阻害剤)を有するべきであり、種々の吸収増強剤のいずれの種類をも用い得る。
【0068】
回腸でPTHを放出する(すなわちGI標的が回腸である)ように設計される組成物は、胃内容排出の約2〜4時間後(このときPTHが急速に放出される)に対応する遅延時間を有するように設計される。本発明の特定の実施形態では、このような組成物は、適切な搭載量のPTH安定化剤(阻害剤)を含有する。胆汁酸塩は、(胆汁からの天然胆汁酸塩の胆肝再循環に起因する)この領域における胆汁酸塩の自然吸収を利用するために、吸収増強剤として使用されるべきである。この製剤ストラテジーは、空腸に配置される吸収増強剤(胆汁酸塩)が天然プロセスを模倣するので、非常に有望でありそうである。胃腸管全域での他の型の増強剤の使用は、他の摂取タンパク質の望ましくない吸収を生じ得るので、胆汁酸塩が、回腸送達用の組成物における吸収増強剤として好ましい。
【0069】
結腸
結腸でPTHを放出する(すなわちGI標的が結腸である)ように設計される組成物は、胃内容排出の約3〜6時間後(最も高い可能性は胃内容排出の3〜4時間後)に対応する遅延時間を有するように設計され、患者への製剤の投与後の標的タイミングは、5.5時間であるべきである。本発明者らは、このような組成物が適切な搭載量のPTH安定化剤(阻害剤)を含有することが重要であることを見出した。種々の吸収増強剤もまたその組成物に含まれてもよい。
【0070】
本発明に従う全ての種類の組成物(すなわちPTH放出のGI標的にかかわらず)は、例えば腸溶性ポリマーの使用により、胃における放出を回避するように設計される。更に、(GI管の特定部分で優勢であるか又は確立されている条件下で一旦放出された)PTHの、GI粘膜を通じて全身循環への透過性は、例えば吸収増強剤の存在のため、比較的急速であることが企図される。増強剤及びPTH安定剤に由来する効果が失われると、PTHはGI管における優勢な正常条件に起因して分解されると予測される。すなわち、インタクトのPTHの更なる吸収は期待されない。この問題は、狭いピーク(すなわち、PTH血漿濃度の急速な上昇に続く急速な下降)を得るため、及びPTHの持続的な又は延長された取り込み(骨のカルシウム枯渇に対するマイナス効果のために望ましくないPTH血漿濃度レベルに導く)を回避するために、重要である。
【0071】
インビトロプロフィール − 溶解
原則として、全種類の医薬組成物が使用できる。すなわち、本発明に従う組成物は固体(例えば、錠剤、カプセル、薬袋(sachet)、粉体、顆粒、ビーズ、ペレットなど)であっても、半固体であっても、液状形態(溶液、エマルジョン及び懸濁液を含む)であってもよい。小腸及び/又は結腸への送達に関しては特に、多くの製剤技術が用いられ得る。これらの1つは、本明細書中でより具体的に記載されているが、他の技術も十分に等しく適用され得る。他の技術としては、エマルジョン(例えば、Tarr-BDら、Pharm.Res. 1989; 6(1):40-3を参照)、ヒドロゲル(例えば、Lowmann.AMら、J.Pharm.Sci 1999; 88(9):933-7及びRubinstein-Aら、1995; 41:291-5を参照)、マイクロエマルジョン(例えば、Watnasirichaikul-Sら、Pharm.Res 2000; 17(6):684-9を参照)、微小粒子システム(例えば、Carino-GPら、J.Control.Release 2000; 65(1-2):261-9を参照)、酵素制御薬物送達、例えば、アミロースを有するエチルセルロースのような、結腸において微生物酵素により分解され得る市販の被覆剤、又は、例えば、適切な油に分散させたPTH含有カプセル(例えば、保護被覆剤で被覆した)が挙げられ、これらに限定されない。
【0072】
本発明に従う使用に適切な以下の型の製剤は、説明目的で含まれるのであり、如何なる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。しかし、固体剤形(例えば、錠剤、ペレット及びカプセル)は、良好な患者アクセプタビリティーを有する剤形であり、したがってこれらの型の製剤は、以下で、本発明の一般的原理を説明するために使用される。下記に言及する溶解は、適切な溶解装置及び溶解条件(媒体及び温度)を使用する薬局方標準に従って決定される。当業者は、特定の組成及びGI放出標的に基づいて適切な方法を選択する仕方を知っている。例えば米国薬局方/国民医薬品集又は欧州薬局方に記載される溶解試験は、本発明に関して一般に適用可能である。幾つかの場合、腸溶性ポリマーが本発明の組成物に用いられ得る。この腸溶性ポリマーは、pH6を超えるpHカットオフ(すなわち、その腸溶性ポリマーが37℃の温度で可溶である最も低いpH値)を有する。このような場合、以下の溶解試験は、GI管の特定の区域のインビボ条件を模擬するpH値を有する緩衝液(酸性pHでの最初の試験の後に)を使用して実施されなければならない。当業者は、溶解条件をそれに適合させる仕方を知っている。具体例を本明細書中の実施例2に示す。
【0073】
ペレット、錠剤及びカプセル(全て腸溶性被覆がされているべきである)
・ 空腸、回腸及び結腸での放出用のペレット
・ 空腸での放出用の錠剤
・ 空腸での放出用のカプセル
【0074】
空腸送達(例えば、錠剤、カプセル又はペレット)
0.1N HCl(約pH1.2)での2時間の溶解 薬物放出約0〜1% w/w(0〜10% w/wを限度とする)、
pHをpH6.8に変化
pH6.8での溶解
pH6.8で開始した後の時間
15分 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
60分 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
【0075】
より具体的には:
最初のpH値(例えば、0.1N HCl(約pH1.2))での37℃にて2時間の溶解:組成物に含有されるPTHの最大限約10% w/w、例えばせいぜい約7.5% w/w、例えばせいぜい約5% w/w、せいぜい約2.5% w/w、又はせいぜい約1% w/wが約4.0を下回る最初のpH値で放出される(本発明の特定の実施形態では、この最初のpH値は、約3.5を下回り、例えば約3.0を下回り、約2.5を下回り、約2.0を下回り、約1.5を下回るか、又は0.1N HClのpH値に対応するpH値である);
【0076】
次いで、pHをpH6.8に変化させ、そして
pH6.8での溶解:
15分で: 約0〜50% w/w、例えば0〜40% w/w、0〜35% w/w、0〜30% w/w、5〜50% w/w、5〜40% w/w、5〜35% w/w、5〜30% w/w、10〜50% w/w、10〜40% w/w、10〜35% w/w又は10〜30% w/w、例えば約20% w/w、
30分で: 約25〜100% w/w、例えば25〜95% w/w、25〜90% w/w、25〜85% w/w、30〜100% w/w、30〜95% w/w、30〜90% w/w、30〜85% w/w、35〜100% w/w、35〜95% w/w、35〜90% w/w、35〜85% w/w、40〜100% w/w、40〜95% w/w、40〜90% w/w、40〜85% w/w、45〜100% w/w、45〜95% w/w、45〜90% w/w、45〜85% w/w、50〜100% w/w、50〜95% w/w、50〜90% w/w、50〜85% w/w、55〜100% w/w、55〜95% w/w、55〜90% w/w、55〜85% w/w、60〜100% w/w、60〜95% w/w、60〜90% w/w、60〜85% w/w、65〜100% w/w、65〜95% w/w、65〜90% w/w、65〜85% w/w、70〜100% w/w、70〜95% w/w、70〜90% w/w、70〜85% w/w、例えば約80% w/w、
60分で: 約50〜100% w/w、例えば50〜95% w/w、50〜90% w/w、50〜85% w/w、55〜100% w/w、55〜95% w/w、55〜90% w/w、55〜85% w/w、60〜100% w/w、60〜95% w/w、60〜90% w/w、60〜85% w/w、65〜100% w/w、65〜95% w/w、65〜90% w/w、65〜85% w/w、70〜100% w/w、70〜95% w/w、70〜90% w/w、70〜85% w/w、80〜100% w/w、80〜95% w/w、約95〜100% w/w
【0077】
一旦、所望のインビボ放出に適切に対応する特定溶解プロフィールが決定されると、任意の所定期間での放出の許容される変動は、活性物質の標識された含量の±10%(以下、%点という)、例えば最大限約±7.5%又は最大限約±5%の総差を超えるべきでない(CPMP(欧州医薬品委員会(Committee for proprietary medicinal products)(EU)) EMEA(欧州医薬品審査庁(The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products))により作成されたガイドライン:「Note for Guidance on quality of modified release products: A: oral dosage forms. B: transdermal dosage forms, section I (quality)」, CPMP/QWP/604/96, 29 July 1999を参照)。10%点は、例えば20%の総変動を導き、したがって50+/-10%の要件は40〜60%の容認範囲を意味する。
【0078】
ペレット
回腸送達(遅延時間 胃内容排出の約2時間後)
0.1N HCl(約pH1.2)での2時間の溶解 薬物放出0〜1% w/w (0〜10% w/wを限度とする)、
pHをpH6.8に変化
pH6.8での溶解
pH6.8で開始した後の時間
2時間30分 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
3時間30分 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
4時間30分 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
すなわち、試験期間は上記の空腸送達下のものとは異なるが、その他については、上記と同じ条件及び範囲が回腸(及び結腸送達(下記参照))送達用の本発明に従う組成物にも適用可能である。
【0079】
ペレット
結腸送達 (遅延時間 胃内容排出の約3.5時間後)
0.1N HCl(約pH1.2)での2時間の溶解 薬物放出約0〜1% w/w (0〜10% w/wを限度とする)、
pHをpH6.8に変化
pH6.8での溶解
pH6.8で開始した後の時間
4時間 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
5時間 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
6時間 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
すなわち、試験期間は上記の空腸送達下のものとは異なるが、その他については、上記と同じ条件及び範囲が回腸及び結腸送達用の本発明に従う組成物にも適用可能である。
【0080】
上記のように、遅延時間は約0.5〜約8時間である。特定の実施形態では、遅延時間は、約1.0〜約7時間、例えば約1.5〜約6時間、約2.0〜約5時間、又は約2.5〜約4.5時間、又は約2.5〜約4時間である。医薬組成物が結腸へ活性物質を送達することを意図される場合には、遅延時間は、通常、約2.5〜約4.5時間である。しかし、上記から明らかなように、本発明の医薬組成物はまた、活性物質が小腸の特定部分から吸収される場合の使用に適切である。このような場合、遅延時間は、結腸吸収又は送達が標的である場合より短い。
【0081】
本発明の医薬組成物の重要な特徴は、活性物質が所定の遅延時間の後、比較的急速に放出されることである。更に、医薬組成物は、活性物質の含有量全体を全て又はほとんど放出するように設計されるべきである。
【0082】
したがって、上記の遅延時間後、組成物に含有される活性物質の少なくとも約60% w/w、例えば、少なくとも約70% w/w、少なくとも約75% w/w、少なくとも約80% w/w、少なくとも約85% w/w、少なくとも約90% w/w、少なくとも約95% w/w、又は少なくとも99% w/wが、通常、せいぜい約2時間の第2の期間内に放出される。
【0083】
特定の実施形態では、第2の期間は、せいぜい約90分、例えば、せいぜい約60分、せいぜい約50分、せいぜい約45分、せいぜい約40分、せいぜい約35分、せいぜい約30分、せいぜい約25分、せいぜい約20分、せいぜい約15分、せいぜい約10分、又はせいぜい約5分である。通常、第2の期間は約30〜60分である。
【0084】
PTH並びにカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物を含む医薬組成物
このような組成物は、活性物質を含有する単一組成物の形態であり得、例えば、異なる型のペレット/顆粒、例えば、PTHを含有する一方の型(ペレット)及びカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物を含有する他の型(顆粒)を含有する(そして2つの型のペレット/顆粒はカプセル、薬袋などに含有され得る)ペレット/顆粒の形態であっても、又は一方はPTHを含み他方はカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物を含む2つの別個の構成要素を含むキットの形態であってもよい。
【0085】
更なる構成要素もまた、任意の上記の型の組成物に含まれ得る。詳細には、更なる構成要素は、PTHとカルシウムとの組合せとは別の時間で投与されるべき別の用量のカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物を含有する。
以下に、PTHとカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物との組合せを含む本発明に従う医薬組成物のインビボ及びインビトロ標的を記載する。
【0086】
インビボ場面
本発明に従う組成物は、PTHについての血漿曲線が
i)まず、カルシウム吸収に起因してベースラインより低い血漿レベルを与え、
ii)次いで、組成物からのPTHの吸収に起因してピークを与える
ように設計される。
【0087】
PTH血漿レベルの低下及びピークPTHは、骨成長に有益であると考えられている。組成物からのPTHは、カルシウムが血漿PTHに対する有益な低下効果を与えている間は、吸収されるべきではない。摂取されたカルシウムの血漿PTHに対する効果は、約4時間後に停止するようであり、したがってPTHは、投与の4時間後に製剤から放出されることができる。これは、カルシウムの急速な放出とPTHの遅延された放出(バースト)とを4時間又はそれより長く離して組み合せることができることを意味する。
【0088】
したがって、PTHとカルシウム及び/又はビタミンD含有化合物との組合せを含む本発明に従う組成物は、回腸又は結腸でのPTH放出のためのGI標的に適切である。更に、カルシウムを胃で優勢な酸性環境に付するためにカルシウムが胃で放出されることは非常に重要である。
【0089】
製剤型
上記のように、小腸又は結腸送達に適切な全ての製剤技術が適用可能である。1つの例は、回腸及び結腸での放出用のPTH含有ペレットであり得る。この製剤のPTH部分は、胃での放出を回避するために腸溶性被覆をされ、回腸又は結腸に到達するまでPTHの放出を遅延するに必要な適切な遅延時間を得るように時間制御されるべきである。一方、カルシウムは腸溶性被覆をされるべきではない。カルシウムは、別個の組成物として、又はペレット/顆粒として、又は他の不活性成分及びPTH含有ペレットと混合された粉体として与えられ得る。
【0090】
インビトロプロフィール − 溶解
崩壊
組成物(又は、2つの別個の構成要素が用いられる場合、少なくとも、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物を含む一方)は、15分又はそれより短い崩壊時間(通常は約5〜15分以内)を有するべきである。急速な崩壊時間は、カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物の急速な放出を確実にする。
【0091】
溶解
組成物(例えば、ペレット) PTH+カルシウム及び/又はビタミンD含有化合物
回腸送達用又は結腸送達用のいずれかのPTHペレットと製剤化されるカルシウム含有化合物

0.1N HCl(pH約1.2)でのカルシウム溶解:
15分 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
45分 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
【0092】
より具体的には:
0.1N HCl(約pH1.2)での溶解
15分で: 約0〜50% w/w、例えば0〜40% w/w、0〜35% w/w、0〜30% w/w、5〜50% w/w、5〜40% w/w、5〜35% w/w、5〜30% w/w、10〜50% w/w、10〜40% w/w、10〜35% w/w、又は10〜30% w/w、例えば約20% w/w、
30分で: 約25〜100% w/w、例えば25〜95% w/w、25〜90% w/w、25〜85% w/w、30〜100% w/w、30〜95% w/w、30〜90% w/w、30〜85% w/w、35〜100% w/w、35〜95% w/w、35〜90% w/w、35〜85% w/w、40〜100% w/w、40〜95% w/w、40〜90% w/w、40〜85% w/w、45〜100% w/w、45〜95% w/w、45〜90% w/w、45〜85% w/w、50〜100% w/w、50〜95% w/w、50〜90% w/w、50〜85% w/w、55〜100% w/w、55〜95% w/w、55〜90% w/w、55〜85% w/w、60〜100% w/w、60〜95% w/w、60〜90% w/w、60〜85% w/w、65〜100% w/w、65〜95% w/w、65〜90% w/w、65〜85% w/w、70〜100% w/w、70〜95% w/w、70〜90% w/w、70〜85% w/w、例えば約80% w/w、
60分で: 約50〜100% w/w、例えば 50〜95% w/w、50〜90% w/w、50〜85% w/w、55〜100% w/w、55〜95% w/w、55〜90% w/w、55〜85% w/w、60〜100% w/w、60〜95% w/w、60〜90% w/w、60〜85% w/w、65〜100% w/w、65〜95% w/w、65〜90% w/w、65〜85% w/w、70〜100% w/w、70〜95% w/w、70〜90% w/w、70〜85% w/w、80〜100% w/w、80〜95% w/w、例えば約95〜100% w/w
【0093】
回腸又は結腸送達用PTH含有ペレット
上記と同じ溶解パターンを適用。回腸送達(遅延時間 胃内容排出の約2時間後)及び結腸送達(遅延時間 胃内容排出の約3.5時間後)
【0094】
骨粗鬆症及び治療上の選択 − 本発明に従う組成物の使用
疾患背景
発生
骨粗鬆症は、骨損失及び骨微小構築の劣化が、僅かな外傷で骨折が起こり得る点にまで骨強度を減少させる、全身性の骨障害である。骨粗鬆症は、例えば米国において評価した50歳を超える44百万人の男性及び女性について、公衆衛生上の主要な脅威である。この44百万人は50歳以上の全人口の約55%を含み、患者数は2010年までに52百万人に、2020年までに61百万人に増加すると推定される。女性は、骨量が低いこと及び骨粗鬆症の発症について、男性よりずっと高い危険にある。骨粗鬆症患者の約80%が女性である。世界的に、骨粗鬆症を有する女性の数は、2002年の30百万人から2010年には35百万人に増加し、2020年には41百万人近くまで増加する。骨粗鬆症はしばしば「婦人病]とみなされ、女性は骨粗鬆症をより発症し易いが、男性もまたこの疾患に罹り易い。米国には現在骨粗鬆症を有している男性が2百万人より多く存在すると推定される。症例数は、2010年に3百万近くまで増加すると予測される。
【0095】
骨粗鬆症の結果
骨粗鬆症の最も悲惨な結果は骨折である。年に1.5百万を超える骨折が起こる。700,000が脊椎、300,000が腰、200,000が手首である。脊椎骨折の50%近くが診断されないままである。女性の3人に1人及び男性の8人に1人が、一生涯に骨粗鬆症関連の骨折をする。閉経後の女性は、他のいかなる標本群よりも高い骨折の危険を有している:15%が腰を骨折し、20%が脊椎骨折を持続している。女性では、骨粗鬆症関連の骨折の年間数は、心臓発作、卒中、及び乳ガンを合わせた発生率を超える。一回の骨折はそれ自体悲惨であり得るが、最初の骨折を経験した患者は、引き続いて骨折する危険が5倍近く増大することに留意することは重要である。これら患者は、しばしば「骨折のカスケード」に入ってしまうと考えられる。
【0096】
骨折の罹患率は発生の時点で明白である。しかし、骨折はまた、死亡率の増加に関連する。腰の骨折は、骨粗鬆症の最も重篤な合併症とみなされる。腰の骨折後、患者の20%が死亡し、生存者の50%より多くが長期の在宅看護を必要とする。全ての腰骨折の1/5〜1/3が男性で起こると推定される。男性は、骨粗鬆症を有する可能性は低いが、腰及び背骨の骨折に起因にして、骨粗鬆症の女性より高い死亡率を有する。女性が32%であるのに対し、全男性の17%が90歳までに腰を骨折する。
【0097】
診断
骨粗鬆症の発症には5つの危険因子が存在する。年齢を重ねるにつれて、骨再吸収は増加するか(例えば、閉経初期の女性)、又は安定的であるままであるが、骨形成速度は減少する。このことは低骨量を導き、最終的には骨粗鬆症に至る。女性は、幾つかの肉体的及び遺伝的要因のため骨粗鬆症に罹患し易い。女性は、より低いピーク骨量、より低い筋肉量、及びより小さい骨膜直径を有する。女性はまた、妊娠から授乳の数年間、特に長期の授乳期の間(これは授乳の終了後に改善されるが)に骨を喪失する。平均余命は女性で長い。まとめると、これらの要素は、女性における骨格の脆弱性を増大させる。骨粗鬆症は、より低いピーク骨量のため、白人及びアジア系で有病率が高い。この高い有病率の理由は、完全には理解されていない。遺伝が骨粗鬆症に関連する問題の決定に主要な役割を演じている。ピーク骨量の約50%〜60%が遺伝的に決定される。コラーゲン、ホルモンレセプター及び局所因子の特定遺伝子の差異が骨粗鬆症の危険に寄与する。この危険に個体の実際の体重が影響することがある。アンドロゲンのエストロゲンへの転換(これは脂肪組織で起こる)は痩せ体形(身体的弱さ)の人ではほとんど起きない。反対に、肥満の人は、増大した筋肉量及び多い皮下脂肪を有し、これが骨格により強い保護を与える。減少した筋肉量及びエストロゲンレベルは、潜在的な危険因子と考えられる。重要でない危険因子には、全身ホルモンレベル、局所因子、共存条件、及び社会史が含まれる。
【0098】
骨無機質密度計測は、骨粗鬆症の診断、骨密度の決定、骨折の危険の評価、及び治療法に対する応答のモニターのための唯一の基準法である。骨無機質密度BMD検査は、無痛の非侵襲性で、安全な、直ちに利用できる手順である。伝統的な検査は、脊椎、腰、及び手首の骨密度を評価する。しかし、BMD検査はまた、指、かかと、及び脛骨に対し行うことができる。BMD検査の結果は、「若年−正常」値及び「年齢合致」値と比較される。若年−正常値(T-スコア)は、20歳〜30歳の成人の平均的な適正な密度を表す。年齢合致スコア(Z-スコア)は、検査受診者と同性、同年齢、同体格の人の平均値を表す。米国臨床内分泌医協会(The American Association of Clinical Endocrinologists)は、骨折の病歴を有する65歳以上の全ての女性及び骨折の臨床的危険因子を有するより若い閉経後の女性は骨無機質密度の検査を受けることを推奨している。
【0099】
多くのBMD検査が現在利用可能である。一般に、BMD検査は、全身スキャン(すなわち、腰及び脊椎の骨密度を測定する)又は末梢スキャン(すなわち、指、手首又はかかとの骨密度を測定する)のいずれかである。二重エネルギーx線吸光光度法(Dual-energy x-ray absorptiometry)(DXA)は、BMD検査の最も基準になる検査であると考えられる。DXAは、簡単に実施でき、広く利用可能であるが、小柱骨及び皮質骨の骨無機質密度を別々に定量化できない。しかし、末梢定量的コンピュータ断層撮影法(pQCT)は、小柱骨及び皮質骨の骨無機質密度を定量化できるよりパワフルな技術である。この技術は、四肢の骨無機質密度を三次元で測定し、DXAに伴う多くのアーチファクトを排除する。しかし、これは広範に利用可能ではない。
【0100】
薬物療法
予防的な薬理学的管理(preventive pharmacologic management)は、危険因子を有する全ての患者又はより後の段階で骨粗鬆症の危険にある健常被験者について考えられるべきである。カルシウム及びビタミンDサプリメントは、BMDを増大することが示されており、しばしば他の治療薬剤との組合せで使用される。骨粗鬆症を予防及び治療するために使用される薬物適用は、2つのカテゴリーに属する:抗再吸収作用因子及び同化作用因子。市場には、エストロゲン補充療法(ERT)、ビスホスホネート、選択的エストロゲンレセプターモジュレータ(SERM)、及びカルシトニンを含む幾つかの抗再吸収作用因子が存在する。ERTは、閉経後の女性(閉経初期の女性および外科的に誘導された閉経の女性)に対する標準的な初期治療と考えられている。ERTへのプロゲスチンの追加は、内膜増殖症を防ぎ、子宮悪性腫瘍の危険を減じ、骨損失も防ぐ。女性健康イニシアティブ(Women's Health Initiative)試験の中間報告が乳ガン、心筋梗塞、及び卒中の危険の増大をエストロゲン療法と関連付けた後、近年、エストロゲン療法に関する安全性の懸念が高まっている。この報告以来、骨粗鬆症のためのエストロゲンの使用は減少している。このことは、他の骨粗鬆症治療の選択肢の必要性を強調している。
【0101】
ビスホスホネートは、骨折を既に経験しているか又は高程度の骨損失が起きている患者に対する一次治療と考えられている。これはまた、エストロゲンに禁忌を示す女性に対する選択肢である。ビスホスホネートは、骨量を増加させ骨折の危険を減少させる強力な抗再吸収薬である。アレンドロネート及びリセドロネートの両方が、脊柱及び非脊柱の骨折(腰の骨折を含む)の発生を有意に減少させることが示されている。アレンドロネート及びリセドロネートは、閉経後骨粗鬆症及び男性及び女性におけるグルココルチコイド誘導骨粗鬆症の予防及び治療について指示されている。医師は、患者に対してカルシウム及びビタミンDの適切な補充を確実にするよう奨励されている。アレンドロネートはまた、男性における骨粗鬆症の治療について指示されている。一般に、ビスホスホネートは難吸収性であり(<1%)、食物も他の薬物適用もなしで投与する必要がある。週1回製剤の導入により、厳密に計画された投与の不便さは減少したが、ビスホスホネートは胃腸に対する有害効果を伴う。イバンドロネート、ゾレドロン酸、ミノドロネート及びネリドロネートを含む多くの新たなビスホスホネートが、骨粗鬆症の予防及び治療のために開発中である。これらの薬剤は、より良好に寛容され、より簡便に投与されるビスホスホネート選択肢を提供し得る。
【0102】
SERMは、古典的器官(例えば、胸部)において抗エストロゲン性であるが、骨に対する抗再吸収効果もまた有する。閉経後骨粗鬆症の予防及び治療についてこのクラスで唯一の認可された薬剤は、ラロキシフェンである。これは、婦人科医の間では広く有名である;しかし、その効力データはビスホスホネートのものより説得力がない。BMDの増加は、ビスホスホネートで見られるものより少なく、研究により、非脊椎骨折の有意な減少は証明されていない。これら薬剤の潜在的な利点には、乳ガンの危険の減少及びポジティブな心血管パラメータの減少が含まれる。ラロキシフェンは、一般に、十分に寛容される;しかし、ビスホスホネート療法に伴わない危険(のぼせ、血栓症)がある。バゾドキシフェンドキシフェン(bazodoxifenedoxifene)及びラソフォキシフェン(lasofoxifene)を含む開発中の多くの新たなSERMが存在する。
【0103】
カルシトニンは、抗再吸収剤として使用され、現在、鼻スプレー又は皮下注射として利用可能である。カルシトニンは、骨量の進行性損失を予防するための閉経後骨粗鬆症の管理及びグルココルチコイド誘導骨粗鬆症の治療について指示されているが、骨折を予防するその効力の証拠は、未確定である。一般に、カルシトニンは、ほとんどの臨床医により、あまり効果的でない薬剤と考えられている。
【0104】
同化作用因子は骨形成を刺激する。テリパラチド(PTH 1-34)(現在利用可能な唯一の同化作用因子)は、骨折の危険が高い閉経後の女性(骨粗鬆症の骨折の病歴を有する女性、骨折の危険因子を複数有する女性、及び以前の骨粗鬆症治療に対して寛容でなかったか又は応答しなかった女性を含む)の骨粗鬆症の治療に使用される。これはまた、米国では、性腺機能低下症の男性の骨粗鬆症について指示されているが、欧州では未だである。テリパラチドは組換えPTHのN末端フラグメントである。臨床試験では、テリパラチドは、骨無機質密度を有意に増大させ、脊椎骨折及び幾つかの非脊椎骨折の危険を減少させることが示されている。コントロール群及び/又はプラセボ群の患者を含む全ての患者に、カルシウム及びビタミンD治療を提供した。皮下投与の不便さの他に、テリパラチドは、一般に、十分に寛容される。最も一般的な有害効果は、悪心、頭痛、高カルシウム血症及び低血圧である。この薬物は、開放骨端(すなわち子供、青年)、骨のページェット病、以前の放射線療法(骨格、骨転移又は骨格悪性腫瘍を含む)、骨粗鬆症以外の代謝性骨疾患、又は以前から存在する高カルシウム血症を有する患者で禁忌を示す。
【0105】
全長PTH 1-84は、甲状腺により合成され分泌される内因性の84アミノ酸ヒトPTHと同一であり、同様に、骨粗鬆症の治療について開発されている。全長PTHの開発は骨形成、骨量の構築及び強度に対する1-84の効果によって主として評価されていることが研究により支持される。
【0106】
ラネル酸ストロンチウム(有機部分(ラネル酸)及び安定な非放射性ストロンチウム2原子から構成され、経口摂取される粉体として製剤化される)は、現在、骨粗鬆症の治療について臨床開発中である。第III相臨床試験の結果(全ての患者にカルシウム及びビタミンD治療もまた与えられた)は、ストロンチウムラネレートが、BMDの増大並びに脊椎及び非脊椎の両方の骨粗鬆症の危険の減少に効果的である一方で、一般に、十分に寛容されることを示唆している。
【0107】
医薬組成物
前述のように、任意の適切な原理、例えば、上記のもの、特に、異なる放出パターンを有する2又はそれより多い型のペレット/顆粒の組合せを使用するものが適用され得る。以下に、活性物質を小腸又は結腸に送達するために本発明者らにより開発された特定の適切な技術を示す。下記に示される個々の医薬的に許容される賦形剤はまた、他の型の組成物で適用され得る。当業者は、特定の組成物に依存して、適切な賦形剤を選択する仕方を知っている。特に有益な別の型の組成物は、腸溶性被覆をした組成物、例えば、腸溶性被覆をした錠剤又はカプセルである。
【0108】
本発明は、活性物質が放出される前に、所定の遅延時間を提供する医薬組成物を提供する。得られる遅延時間は、2つの原理の組合せ、すなわちpH依存性放出及び/又はpH非依存性の時間制御放出の組合せに基づく。
多くの公知の結腸送達システムとは対照的に、本発明に従う医薬組成物は、大規模生産に適切であるように企図される。
【0109】
したがって、本発明は、1又はそれより多い第1の型の単位を含み、該第1の型の単位がPTHを含み且つ少なくとも以下の積層構造:
i)内核、
ii)該内核を取り囲む時間制御層、
iii)該時間制御層上に適用されたフィルム被覆(ここで、該フィルム被覆は実質的に水不溶性であるが水性媒体に対して透過性である)、及び
iv)腸溶性被覆の外層
を有する経口使用のためのpH及び/又は時間-制御医薬組成物を提供する。
【0110】
この単位からのPTHの放出は、インビトロで試験されたとき、少なくとも6回の測定の平均として、約4.0を下回る第1のpH値で、せいぜい約10% w/wであり、約5.0〜約8.0の第2のpH値で、該活性物質は、約0.5〜約8時間の遅延時間(この第1の期間中には、該活性物質のせいぜい約10% w/wが放出される)の後に、該単位に含有される該活性物質の少なくとも約50% w/wがせいぜい約2時間の第2の期間内に放出されるような様式で、放出される。
【0111】
医薬組成物は、個々の単位を複数含む複数単位組成物の形態であってもよいし、或いは単一単位組成物の形態であってもよい。複数単位組成物の場合、医薬組成物は、1より多い型の単位を含有し得る。したがって、活性物質の特定の放出パターンを有する組成物を得るために、組成物は、各々が活性物質の特定の放出パターンを有する2又はそれより多い型の単位の混合物を含有していてもよい。
【0112】
活性物質PTHは、単位中で、層i)〜iii)の1又はそれより多く及び/又は内核を取り囲む更なる層v)に含有されていてもよい。本発明の特定の実施形態では、活性物質は更なる層v)に含有され、通常、更なる層v)は層i)と層ii)との間に位置する。
上記のように、本発明に従う医薬組成物は、活性物質が結腸吸収に付され、そして/又は結腸でその効果を発揮する場合、特に適切である。
【0113】
本発明者らは、活性物質の放出の所定の遅延を可能にし、同時に所定の遅延後は活性物質の比較的急速な放出を可能にする医薬組成物を得るためには、活性物質の放出を遅延させるための2つの異なる原理、すなわち、pHが酸性領域にある胃腸管の部分で遅延させる或る1つの原理、及びpHが中性領域及びアルカリ性領域にある胃腸管の部分で遅延させる別の原理を利用することが適切であることを見出した。
【0114】
pHが酸性領域にある胃腸管の部分で用いる原理は、腸溶性被覆原理、すなわち、酸性環境に実質的に不溶であるが、中性環境及びアルカリ性環境には可溶である被覆を提供する可能性に基づく。これは、酸性媒体に不溶であるが、中性媒体及びアルカリ性媒体では可溶である、いわゆる腸溶性ポリマーの使用により達成される。したがって、この放出は、酸性領域から中性/アルカリ性領域へのpHシフトに依存する。
【0115】
したがって、胃内容排出に関する個体内変動及び個体間変動は、本発明に従う医薬組成物が適用される場合、さほど重要ではない。更に、医薬組成物が複数単位組成物の形態である場合、その複数単位の胃通過時間は、通常、患者が絶食状態であるか摂食した状態であるかに比較的非依存性である。これは、単一単位組成物が投与されるときに一般に見られることとは対照的である。
【0116】
本発明の特定の実施形態では、用いられる腸溶性ポリマーは、送達システムが小腸に進入した時点で腸溶性被覆の溶解開始を可能にするpHカットオフを有するポリマーである。本発明に関して、用語「pHカットオフ」は、腸溶性ポリマーが37℃の温度で可溶である最も低いpH値と定義される。胃内の通過時間とは対照的に、小腸内の通過時間は比較的一定(3〜5時間)である。したがって、本発明者らは、胃内通過時間にかかわらず、小腸への進入後の何時の時点で活性物質の放出が起こるかを支配する特性を有する送達システムを設計することが有利であることを見出した。
【0117】
pHが中性/アルカリ性領域にある胃腸管の部分で用いられる原理は、時間制御放出に基づく。胃のpHは、通常、絶食状態では約1.5〜2.0であり、摂食した状態では約3.0〜5.0であるが、小腸のpHは、空腸では約5.0〜6.5であり、回腸では約6.0〜7.5であり、結腸では約6〜8である。腸でのpHの変動は、医薬製剤の観点から使用が困難であるが、比較的一定な小腸内通過時間は、よりずっと好ましいアプローチである。したがって、本発明に従う医薬組成物は、小腸への進入後に腸溶性被覆が比較的急速に溶解して時間制御プロセスが開始し、このことにより単位に含有される時間制御層が、フィルム被覆層の破断を生じるプロセスに制御可能に付されるように設計される。時間制御層が膨潤可能な層である場合、この層は膨潤し始める。或る時点で、この膨潤可能な層は、フィルム被覆層(膨潤可能な層を被覆している)が破断、破裂、或いはそうでなければ破壊される程度まで膨潤する。次いで、単位に含有される活性物質は胃腸管に曝され、直ちに又はその後のいずれかで吸収されるか又はその効果を発揮するかする準備が整う。
【0118】
pH依存性放出 − 腸溶性被覆
上記のように、本発明の医薬組成物に含有される単位は、腸溶性被覆で被覆される。通常、この被覆は単位の最も外側の層である。
上記のように、用語「pHカットオフ」は、腸溶性ポリマーが37℃の温度にて可溶である最も低いpH値を示すものと意図される。腸溶性ポリマーpHカットオフは、腸溶性被覆が小腸中への医薬組成物の進入後できるだけ素早く溶解することを確実にするために重要である。
【0119】
したがって、本発明における使用のための腸溶性被覆は、最大限約8.0のpHカットオフ、例えば、約4〜約7.5の範囲、約4.5〜約7.0の範囲、約4.9〜約6.9、約5.0〜約6.5、約5.0〜約6.3、約5.0〜約6.0、約5.0〜約5.9、約5.0〜約5.7、約5.0〜約5.6、又は約5.0〜約5.5のpHカットオフを有する腸溶性ポリマーを含む。
【0120】
本発明に従って使用される腸溶性被覆は、腸溶性ポリマーを含む。適切な腸溶性ポリマーは、例えば、以下からなる群より選択される:
酢酸フタル酸アミロース、酢酸フタル酸セルロースCAP (pHカットオフ約6.2)、酢酸コハク酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロースCAT (pHカットオフ約pH5.0)、カルボキシメチルエチルセルロース、ホルマリン処理ゼラチン、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMCAS (pHカットオフ約5.0〜5.5)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC-P (pHカットオフ約5.0〜約5.5)、メタクリル酸コポリマー(Eudragit L)(pHカットオフ約5.5〜約6)、メタクリル酸コポリマー(Eudragit S)(pHカットオフ約7)、メタクリル酸コポリマー(Eudragit FS)(pHカットオフ約7.5)、ポリビニル酢酸フタレートPVAP (sureteric)、シェラック、酢酸フタル酸デンプン、スチレン−マレイン酸コポリマー、ゼイン、及びそれらの混合物。
【0121】
通常、使用する腸溶性ポリマーの濃度は、単位の総重量に基づいて約2〜約60% w/wに対応する範囲である。腸溶性被覆はまた、後記のような添加剤を含有し得る。したがって、例えば、可塑剤などが添加剤として適切であり得る。
【0122】

本発明に従う医薬組成物の内核は、不活性な核であってもよいし、又は活性物質を含有する核であってもよい。これはまた、ペレット、顆粒、粒状体(granulate)、又は錠剤の形態であり得る。後者の場合、医薬組成物は、単一単位組成物の形態で提供される。
本発明に従う使用に適切な核の例は、例えば、アルギン酸カルシウムビーズ、セルロース球、荷電樹脂球、ガラスビーズ、ポリスチレン球、砂状シリカビーズ又は単位、水酸化ナトリウムビーズ、スクロース球、コラーゲンベースのビーズ及び活性物質の結晶である。
一般に、当業者は、製剤の仕方及び個々のプロセス工程の実施の仕方のガイダンス及び助言を、言及されるRemington's Pharmaceutical Handbookに見出すことができる。
【0123】
時間制御放出
送達システムが小腸に進入したとき始まるように意図される時間制御放出は、フィルム被覆層が、或る程度、当該フィルム被覆層が損なわれるまで、活性物質が組成物から放出されるのを本質的に防止するという考えに基づく。フィルム被覆層の性質は、それが水又は水性媒体に本質的に不溶であるが、組成物中への水又は水性媒体の浸透を許容する(しかし、腸溶性被覆が存在する限りは許容しない;腸溶性被覆は水に対して本質的に透過性でない)ことである。そのシステム中に拡散する水又は水性媒体は、フィルム被覆層内又はフィルム被覆層の内側に含有される活性物質のいくらかを溶解してもよいし、活性物質の外側に向けた拡散プロセスが、働いてもよい。しかし、その場合、最終結果は、フィルム被覆を介するそのシステムからの活性物質の輸送は非常に緩慢であり、活性物質の最大限約10% w/wがそのプロセスにより放出されるということでなければならない。
【0124】
時間制御層は、膨潤可能、浸透圧性及び/又は発泡性である物質を含んでいてもよい。特定の実施形態において、時間制御層は膨潤可能な層である。
時間制御層の目的は、その層に水が浸入すると、フィルム被覆膜の破裂又は破断を生じるプロセスが開始することである。このプロセスが働く機構は、膨潤プロセス、浸透圧駆動プロセス及び/又は発泡に基づくプロセスであり得る。これらの機構の組合せもまた働き得る。
【0125】
時間制御層への水の侵入もまた、その時間内に、その層又は別の層に含有される活性物質の溶解プロセスを開始し得る。このことは活性物質が水に容易に可溶でないか又は比較的緩慢な溶解速度を有する場合に有利であり得る。
【0126】
時間制御層(例えば、膨潤可能な層)とフィルム被覆層との組合せの意図は、水又は水性媒体がフィルム被覆を通ってこのシステム中に拡散し始めたときに膨潤可能な層の膨潤プロセスが開始することである。膨潤可能な層は、特定の量の水を吸着/吸収し、サイズを拡大することが可能である。膨潤可能な層が或るサイズになると、フィルム被覆はもはや、分裂に逆らうに十分に可撓性でなくなり、破裂するか、炸裂するか又は破断する。
【0127】
この様式で、所定の遅延時間は、フィルム被覆層が破裂するか又は破壊される程度まで膨潤可能な層が膨潤するに要する時間を制御することにより得ることができる。浸透圧性の活性層(この場合、時間制御層は浸透圧的に活性な物質を優勢に含有する場合)及び発泡性の活性層である場合、最終結果は上記と同様である。すなわち、フィルム被覆層の破裂又は破断である。
【0128】
遅延時間は、i)時間制御層の具体的組成、ii)時間制御層の厚さ又は量、iii)フィルム被覆層の具体的組成、及び/又はiv)フィルム被覆層の厚さの注意深い選択により調整され得る。遅延時間を調整するために、適切な添加剤を時間制御層及び/又はフィルム被覆層に加えてもよい。
【0129】
本発明に従う送達システムにおいて、フィルム被覆は、通常、例えば、以下からなる群より選択される水不溶性ポリマーを含む:
アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RL, Eudragit RS)、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース、吉草酸セルロース、クロスポビドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリレート分散物(Eudragit NE)、ポリジエチルアミノメチルスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニル酢酸、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチリル(polyvinyl butyryl)、ろう、及びそれらの混合物。
【0130】
特定の実施形態において、水不溶性ポリマーは、比較的非可撓性のフィルム被覆を作る。これは、比較的短い鎖長を有するポリマーの適用及び/又は可塑剤を全く用いないか若しくは過剰量の可塑剤を回避することにより得てもよい。
【0131】
更なる実施形態では、フィルム被覆層iii)はエチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含む。上記のように、短鎖長ポリマー、例えば最大限約20cpsの粘度を有するエチルセルロースが使用に適切である。
【0132】
膨潤可能な層が或るサイズを超えると確実にフィルム被覆層が急速に破壊することが望まれる場合、水性媒体への曝露に際してフィルム被覆層の破裂又は破壊を促進する添加剤を更に含むフィルム被覆層iii)を用いることが適切であり得る。
【0133】
適切な添加剤は、例えば、以下からなる群より選択され得る:
アセチル化モノグリセリド、アセチルトリブチル、アセチルトリブチルクエン酸、アセチルトリエチルクエン酸、ベンジル安息香酸、ステアリン酸カルシウム、ひまし油、セタノール、クロロブタノール、コロイド状二酸化ケイ素、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、シュウ酸ジエチル、リンゴ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリントリブチラート、グリセリントリアセタート、グリセリルベヘネート(glyceryl behanate)、モノステアリン酸グリセリン、硬化植物油、レシチン、ロイシン、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、パラフィン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリソルベート、シリコーン、ステアリン酸、タルク、二酸化チタン、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸亜鉛、ろう、飽和脂肪酸及びそれらの混合物。
【0134】
特定の実施形態において、適切な添加物は、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム及び/又はパラフィンである。ポリエチレングリコールは、例えば、PEG 200、300、400、540、600、900、1000、1450、(1500) 1540、2000、3000、3350、4000、4600、6000、8000、20000、又は35000であり得る。約200〜約600の分子量を有するPEGは液体であり、1000以上の分子量を有するPEGは固体である。
【0135】
本発明の医薬組成物の時間制御層ii)は、通常、膨潤剤、浸透圧的に活性な薬剤及び/又は発泡剤を含む。
時間制御層はまた、1又はそれより多い医薬的に許容される賦形剤を含むことができる。
本発明に従う使用のための膨潤剤は、例えば、以下からなる群より選択され得る:
アルギン酸、アルギネート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、ポリアクリル酸、ポリカルボフィル、ポリエチレングリコール、ポリビニル酢酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、プラスドン、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム(sodium starch glycolate)(Explotab)、デンプン、及びそれらの混合物。
【0136】
時間制御層ii)が発泡剤を含む場合には、発泡剤は、代表的には、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、炭酸水素アルカリ土類金属、クエン酸、酒石酸、フマル酸など、及びそれらの混合物から選択される。
時間制御層ii)が浸透圧性薬剤を含む場合、それは、例えば、塩化ナトリウム及び/又はソルビトールである。
通常、時間制御層の重量割合は、単位の総重量に基づいて約25%〜約90% w/wである。
【0137】
活性物質
用語「活性物質」は、任意の適切な形態の活性物質を包含する。したがって、活性物質は、医薬的に許容される塩、複合体、又はそのプロドラッグの形態で存在し得るか、或いは該当する場合には、ラセミ形態又は任意のエナンチオマー形態で存在し得る。更に、活性物質は、固体、半固体、又は溶解した形態で存在していてもよく、例えば微粒子物質の形態で、例えば結晶の形態で存在していてもよいし、又は活性物質は、任意の無定形若しくは多形の形態で存在してもよい。更に、活性物質は、微粉化粉体として又は固体分散体の形態で提供され得る。
【0138】
本発明に従う医薬組成物における使用のための活性物質の例は、一般に、治療上、予防上及び/又は診断上活性である任意の活性物質である。前記のように、PTHは、本発明に従う組成物における必須の活性物質であり、PTHの他に、骨関連障害の予防又は治療に通常使用される他の活性物質が用いられ得る。
【0139】
より具体的には、下記のクラス内の活性物質が、本発明に従う医薬組成物における使用に特に適切である。下記の活性物質の具体例は、単なる例示目的であり、如何なる様式でも本発明を制限するものとして意図されない。これらは、骨関連障害での使用に適切である他の活性物質を例示している。本発明の組成物に他の活性物質を含ませることは可能であり、そのような物質は下記に示す分類の外に見出し得る。
【0140】
スタチン
スタチン(例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン(リバスタチン(rivastatin))、ダルバスタチン(dalvastatin)、ロバスタチン、フルバスタチン、グレンバスタチン、ピタバスタチン(イタバスタチン、ニスバスタチン))、プラバスタチン(エプタスタチン(eptastatin)、エパスタチン(epastatin))、ロスバスタチン、シンバスタチン(エピスタチン(epistatin)、シンビノリン(synvinolin)、ベロスタチン(velostatin))及びテニバスタチン(tenivastatin))は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG CoA)レダクターゼ(特に肝臓において、コレステロール合成に関与する酵素)を競合的に阻害する。これらは、LDL-コレステロールを低下させることにおいて他のクラスの薬物より効果的であるが、トリグリセリドを減少させること及びHDL-コレステロールを上昇させることにおいてはフィブリン酸より効果が少ない。スタチンは、冠血管事象及び全ての心血管事象の重要な減少を生じる。スタチンは増大した危険にある患者において冠血管事象の一次予防に関与する。
【0141】
骨効果
既往調査に基づく実験的証拠は、コレステロール低下薬物であるスタチンが、閉経後の女性において、スタチン摂取に伴う骨無機質密度の有意な増加により示される骨形成を増加し得ることを示唆している(Edwards CJら、Lancet 2000; 355: 2218-2219;Lupattelli Gら、Metabolism. 2004 Jun;53(&): 744-8)。
【0142】
他の効果
スタチンは、長期間にわたってスタチンを摂取する冠血管疾患を有する高齢患者に関して、心理学的状態に対する好ましい影響を有し、精神障害の改善を示すようである。
【0143】
他の例は以下のとおりである:
日ごと、週ごと、3ヶ月ごと、半年ごと、又は1年ごとの基準で投与される抗再吸収作用因子は、例えば、以下のとおりであるが、これらに限定されない:
ビスホスホネート、例えば、イバンドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、ゾレドロン酸、リセドロネート、チルドロネート、エチドロネート、ミノドロネート
選択的エストロゲンレセプターモジュレータ(SERM)、例えば、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゾドキシフェン(Bazodoxifene)、アルゾキシフェン(Arzoxifene)、オスペミフェン(Ospemifene)
ホルモン補充療法 例えば、チボロン
カルシウム調節剤 例えば、カルシトニン
ラネル酸ストロンチウム
カテプシンK阻害剤
グルココルチコイド 例えば、プレドニゾロン、ブデソニド
抗アンドロゲン剤 例えば、フルタミド
有益な他の薬剤は、例えば、葉酸、プラバスタチン、ラニチジン、ダナゾール、ビタミンB12、カルシウム、ビタミンKである。
【0144】
本発明に従う医薬組成物における特定の活性物質の量は、治療すべき状態並びに患者の年齢及び状態に依存する。更に、これは、投薬の頻度に依存する。すなわち、1日、1週間、3ヶ月、半年、又は1年間に1回、2回、3回、4回、5回、又はそれより多くの回数での使用を意図されるシステムに依存する。当業者は、本発明の医薬組成物での正確な投薬量を決定する仕方を知っている。
【0145】
PTHを含有する組成物の場合、当業者は、臨床的に該当するデータに基づいてその組成物に含ませる用量を知る。
同じことが、カルシウム化合物及び/又はビタミンDと組み合せてPTHを含有する組成物の場合にも当てはまる。
【0146】
医薬的に許容される賦形剤及び他の添加剤
本発明に従う医薬組成物は、更に、1又はそれより多い医薬的に許容される賦形剤を含み得る。医薬的に許容される賦形剤の使用は、医薬製剤の分野で周知であり、例えば、製造プロセスを容易し、送達システムの適切な剤形(例えば、カプセル、薬袋など)への充填を容易にするために、用い得る。
【0147】
適切な医薬的に許容される賦形剤は、充填剤、希釈剤、結合剤及び甘味剤からなる群より選択される。
【0148】
具体例としては、以下が挙げられる:
寒天、アルギネート(例えばアルギン酸ナトリウム)、重炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルボキシアルキルセルロース、セルロース、荷電ポリスチレンスルホン酸ナトリウム樹脂、デキストラン、デキストレート、デキストリン、第二リン酸カルシウム(Emcompress)、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グリセリルトリパルミトステアレート、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、加工デンプン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリサッカリド(例えば、デキストラン)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン/ビニル酢酸コポリマー、大豆ポリサッカリド、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、デンプン、デキストロース、フルクトース、グリセリン、グルコース、イソマルト、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、アオルビトール(aorbitol)、スクロース、タガトース、トレハロース、キシリトール、アリテーム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、シクラミン酸、シクラミン酸塩(例えば、シクラミン酸カルシウム、シクラミン酸ナトリウム)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タウマチン、サッカリン、サッカリン塩(例えば、サッカリンアンモニウム、サッカリンカルシウム、サッカリンカリウム、サッカリンナトリウム)、スクラロース、及びそれらの混合物。
【0149】
組成物(又は組成物に含有される活性物質)の安定性、味、貯蔵期間などを改善するため又は活性物質のバイオアベイラビリティー(溶解速度、吸収速度、及び吸収の程度を含む)を改善するために、1又はそれより多い賦形剤がまた添加され得る。この目的のためには増強剤の組込みが適切である。以下に、本発明の組成物における使用に適切な増強剤の多くの例を示す。ペプチドを中心に議論をするが、増強剤は、吸収を改善することが望ましい任意の活性物質に適切に使用され得る。したがって、下記の議論は、如何なる様式でも本発明を制限することを意図していない。増強剤が本発明の組成物に存在する場合、増強剤は、組成物に含有される任意の層に組み込むことができる。通常、増強剤は、吸収が増強されるべきである活性物質を含有する層か又はこれに近接する層に組み込まれる。
【0150】
吸収増強剤及び安定剤(PTH安定剤を含む)
胃腸(GI)管におけるペプチド及びタンパク質の吸収は低い。なぜなら、吸収は種々の重要な因子(GI管でのサイズ、不安定性など)に依存するからである。ペプチド及びタンパク質は、種々のプロテアーゼにより化学的に失活され得る。吸収は酵素阻害剤(これは酵素(プロテアーゼ)の失活を生じ得る)の使用により改善され得る。しかし、酵素阻害剤は吸収され得、幾つかの副作用(全身毒性を含む)を誘引し得る。一般に、低分子量の吸収増強剤は、胃組織の粘膜層を破裂させる。したがって、ペプチド及びタンパク質の吸収の増強は、その増強剤の毒性効果を伴い得る危険がある。経口吸収を改善する別の方法は、化学的修飾によってGI管でのペプチド及びタンパク質の安定性を増大させることである。
【0151】
したがって、接着結合を開放することにより、確実に酵素阻害剤及び吸収増強剤がペプチド又はタンパク質と共に吸収されなくすることが必須である。また、摂取された食事に由来する他のタンパク質は、全身に曝露されたとき、吸収されないか毒性効果を引き起こさないことを確実にすることが重要である。
【0152】
キャリアシステムは、特定期間の送達システムの滞留時間又はGI管の所望の吸収部位へのペプチド又はタンパク質の送達のための送達システムの滞留時間を増大させるために必要である。その間に、ペプチド又はタンパク質は放出され吸収されることができる。これらキャリアシステムは、ペプチド又はタンパク質の物理化学的性質に本質的に影響すべきでない。
【0153】
酵素を阻害するか又はペプチド及びタンパク質の吸収を増強するかのいずれかにより、1又はそれより多い活性物質、特にペプチド及びタンパク質の吸収を改善するために本発明に従う組成物において使用するに適切である種々の型の物質を下記に挙げる。
【0154】
酵素阻害剤、例えば
プロテアーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン、アマスタチン(Amastatin)、カルボキシエステラーゼ、カルボキシメチルセルロース-ボーマン-バーク、カルボキシメチルセルロース-エラスタチナール、ニワトリオボムコイド、キモスタチン、アヒルオボムコイド、乳酸脱水素酵素、ロイペプチン、ベスタチン、α2-マクログロブリン、大豆トリプシン)
【0155】
これらの化合物の有効濃度は化合物に依存して変わり得る。例えば、アプロチニンは高用量濃度0.5mg/ml〜2mg/ml、低濃度0.125mg/mlであり、アマスタチンについて高濃度は0.03mg/mlであり低濃度は0.005mg/mlである。
【0156】
キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、キトサン-EDTA、キトサン-EDTA-アンチパイン、キトサン-EDTA-キモスタチン、キトサン-EDTA-エラスタチナール、キトサン-EDTA-ボーマン‐バーク阻害剤)
【0157】
種々のポリマー(例えば、カルボマー、キトサン、キトサン-アンチパイン、キトサン-キモスタチン、キトサン-エラスタチナール、キトサン-DTPA (DTPA=ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、ポリカルボフィル)
【0158】
上記の酵素阻害剤のうち、キトサン-EDTA、キトサン-EDTA-アンチパイン、キトサン-EDTA-キモスタチン、キトサン-EDTA-エラスタチナール、キトサン-EDTA-ボーマン‐バーク阻害剤、キトサン-アンチパイン、キトサン-キモスタチン、キトサン-エラスタチナール、キトサン-DTPAは特に使用に適切である。なぜなら、低分子量を有する酵素阻害剤(例えばアプロチニン又はEDTA)は、容易に吸収され得、全身毒性のような副作用を引き起こし得るからである。それらの全身吸収を回避し、副作用を排除することは可能である(例えば、酵素阻害剤を吸収不可能な高分子量の親水性マトリクス又は粘膜接着性を有するポリマー(例えば、キトサン)に共有結合させることにより)。更に、このアプローチは管腔濃度を上昇させ得、酵素のより効果的な不活化を生じ得る。
【0159】
吸収増強剤
理想的には、本発明の組成物における使用に適切な吸収増強剤は、以下の性質を有するべきである。A)可能な化学的相互作用(ペプチド及びタンパク質の物理化学的構造及び薬理学的活性を変化させ得る)に関してペプチド及びタンパク質と適合する。B)接着結合の開放に対する迅速な応答。C)全身循環中で治療レベルのペプチド又はタンパク質を与える。D)腸における望ましくない毒性物質の取り込みを回避することにより起こり得る副作用を低減するため、接着結合を閉鎖する迅速な可逆効果。
【0160】
脂肪酸及び界面活性剤は、腸膜のリン酸脂質二重膜と相互作用することにより上皮膜透過性を増大させ、その細胞中で毒性の副作用を引き起こし得る。
【0161】
脂肪酸、脂肪アルコール及び脂肪酸エステル、例えば:
オレイン酸エチル、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸、ラウリン酸メチル、オレイン酸、カプリン酸ナトリウム
【0162】
界面活性剤、例えば:
スルホコハク酸ジオクチルカルシウム、スルホコハク酸ジオクチルカリウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、グリセリルモノオレエート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルテトラデシルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンエーテル(ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル)、ポリソルベート、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ソルビタンエステル。
【0163】
高分子量の選択性吸収増強剤(例えばアニオン性ポリアクリレート及びカチオン性キトサン)は、接着結合を選択的に開放し得る。粘膜に非特異的に結合する粘膜接着性物質の能力に加え、これらはまた、傍細胞透過性を増大させ、タンパク質分解酵素の作用を阻害し得る。増大した傍細胞透過性は、活性物質だけでなく毒性物質もまた全身循環中に吸収されることを可能にし得る。キトサン及びその誘導体(例えば、N-トリメチルキトサンクロリド)は、ペプチド及びタンパク質の潜在的吸収増強剤として知られている。これらは、接着結合を選択的に開放して、傍細胞経路を介するペプチド及びタンパク質の受動的吸収を可能にする。これらは粘膜接着性を示し、腸粘膜との送達システムの相互作用を増大させて、吸収の持続時間を延長する。
【0164】
粘膜接着性ポリマー、例えば:
アルギネート、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、カルボマー、カルボポール(Carbopol)(ポリアクリル酸)、カルボポール-PEG、キチン、キトサン(α(1-4)2-アミノ2デオキシβ-グルカン)、トリメチルキトサン、N-トリメチルキトサンクロリド、ポリ(アクリルアミド)、ポリアクリレート(例えば、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート))、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ-DL-ラクチド-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリ無水物(例えば、ポリ(フマル酸無水物)、ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸無水物))、ポリ(ビニルアルコール)、ポリカルボフィル、ポリカルボフィル-システイン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポビジン(Povidine)-(ポリビニルピロリドン)、デンプン(例えば、アミロース、アミロペクチン)、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、チオール化ポリマー(チオマー(Thiomers)))。キトサンが特に有益である。
【0165】
胆汁酸塩は、腸上皮を横切る内因性及び外因性の脂肪親和性化合物の経膜輸送並びに極性親水性分子の傍細胞輸送を増強する。
胆汁酸塩、例えば:
デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸、コール酸ナトリウム、コール酸、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム
【0166】
細胞接着物質は、レセプター-リガンド様相互作用を介して、上皮細胞の表面に特異的に結合する。これらはシグナルを伝達し得、シグナルは基質特異的小胞輸送プロセスを誘導する。毒性学の観点から、これらの特異輸送プロセスは、幾つかの粘膜接着物質により提供される透過性の全般的な増加より好ましくあり得る。レクチンは、非免疫学的起源のタンパク質又は糖タンパク質であり、これは糖分子を特異的に認識し、したがってグリコシル化膜構成要素に結合し得る。
細胞接着物質、例えば:
レクチン(例えば、トマト(Lycopersicon Esculentum)アグルチニン、コムギ胚芽アグルチニン、ホソバイラクサ(Urtica Dioica)アグルチニン)。
【0167】
N-アシル化アミノ酸に由来する低分子量キャリアの新たなファミリーが開発されており、これもまた本発明に関連して有用である。これらは、ペプチド分子のコンホメーション変化を誘導することにより、粘膜取込みを選択的に増加させると考えられている。このキャリアと非共有結合を形成すると、分子は、部分的にフォールディングを解かれ(unfolding)、形状を弛緩させ内部の脂質親和性残基を曝し、よって経膜通過を促進し得る。伝統的な界面活性剤(surfactant)及び洗剤(detergent)とは異なり、このクラスの吸収増強剤は、ペプチド及びタンパク質並びにポリアミノグリカンに対して或る種の特異性を有し、腸上皮細胞に対する毒性活性が事実上ない。
【0168】
N-アシル化アミノ酸(特に、N-[8-(2-ヒドロキシ-4-メトキシ)ベンゾイル]アミノカプリル酸(4-MOAC)、4-[4-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]酪酸、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]-カプリル酸ナトリウム)
【0169】
種々の他の適切な吸収増強剤を下記に挙げる。
【0170】
ホスホリピド、例えば:
ヘキサデシルホスホコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、1,2-ジ(2,4-オクタデカジエノイル)-sn-グリセロール-3-ホスホリルコリン及びホスファチジルコリン(例えば、ジデカノイル-L-ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン)、リゾホスファチジルコリンが特に有益である。
【0171】
シクロデキストリン、例えば:
β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、メチルシクロデキストリン;特にジメチル-β-シクロデキストリンは特に有益である。
【0172】
フシジン酸誘導体、例えば:
タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、リン酸-ジヒドロフシジン酸ナトリウム;特に、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウムが特に有益である。
【0173】
ミクロスフェア、例えば:
デンプンのミクロスフェア、デキストランのミクロスフェア、ヒアルロン酸エステルのミクロスフェア
【0174】
その他:
例えばグリシルリジン酸、カプリン酸、アルカン(例えば、アザシクロアルカン)、アミン及びアミド(例えば、N-メチル-ピロリドン、アゾン(Azone))、アミノ酸及び修飾アミノ酸化合物(例えば、アセチル-L-システイン)、ポリオール(例えば、プロプレングリコール、ヒドロゲル)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、テルペン(例えば、カルボン)、グリシルリジン酸アンモニウム、ヒアルロン酸、イソプロピルミリステート、n-ラウリル-β-D-マルトピラノシド、サポニン、DL-オクタノイルカルニチンクロリド、パルミトイル-DL-カルニチンクロリド、DL-ステアロイルカルニチンクロリド、アシルカルニチン、エチレンジアミンジヒドロ-クロリド、リン酸-ジヒドロフシジン酸、CAPナトリウム)のナトリウム塩;特に、n-ラウリル-β-D-マルトピラノシドが特に有益であり、α 1000 ペプチド、少なくとも6mol%のアスパラギン酸-及びgグルタミン酸を含むペプチド(MW<1000)、分解ローヤルゼリー、ビタミンD2、ビタミンD3、ヒドロキシ-ビタミンD3、1,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3、スピルリナ、プロテオグリカン、大豆加水分解産物、溶解素、乳酸、ジフルクトース無水物、キシリトールCa-(乳酸)、カゼインの加水分解産物(特にカゼイノグリコマクロペプチド(caseinoglycomacropeptide)、CaCO3の陰イオン化、アセチルサリチル酸、ビタミンK、クレアチン。
【0175】
本発明の他の特定の実施形態
PTHが特定の型の組成物中でインタクトであるか及び/又は吸収特性が適切であるかを試験するため、PTHを、より安価な別のペプチドで置換することが可能である。このようなペプチドとしては、リゾチーム、アプロチニン、デスモプレシン、バソプレシン、インスリン、GLP-1、GLP-1フラグメント7-37、カルシトニンなどが挙げられる。したがって、本発明はまた、(PTHの代わりに)1又はそれより多い上記ペプチドが組み込まれている組成物を包含する。
【0176】
本発明に従う医薬組成物の製造
本発明に従う医薬組成物は任意の簡便な方法の使用により製造し得る(例えば、Remington's Pharmaceutical Handbookを参照)。本発明に従う組成物の製造に現在までに使用された適切な方法を以下の実施例に記載する。
【0177】
本発明の他の観点
本発明はまた、小腸又は結腸へ活性物質を投与する方法に関し、この方法は十分量の本発明に従う医薬組成物を投与することを含む。このような送達システムは、代表的には、送達システムがGI標的(すなわち小腸又は結腸)に到達したとき、比較的急速な放出を可能にするように設計される。本発明の主たる観点について上述した詳細は、適切な変更を加えた上で、これら更なる観点にも該当する。
【0178】
図面の説明
図1は、本発明に従う使用のための第1の単位を概略的に示す。この単位は、活性物質を含有する層に取り囲まれた内核(この例ではセルロース球である)を含む。この層の上部には、水不溶性の膜で被覆された時間制御層(この例では膨潤層である)が存在する。最後に、腸溶性の膜が付加される。
【0179】
一般に、活性物質を含有する層は、第1の単位の約0.5〜約90% w/w、例えば約1% w/w〜約80% w/w、約1.5% w/w〜約70% w/w、約2% w/w〜約60% w/w、約2% w/w〜約50% w/wを構成する。
【0180】
時間制御層は、通常、第1の単位の約10% w/w〜約90% w/w、例えば約20% w/w〜約90% w/w、約30% w/w〜約85% w/wを構成する。
水不溶性の膜は、通常、第1の単位の約4% w/w〜約25% w/wを構成し、腸溶性の膜は、通常、第1の単位の約2% w/w〜約25% w/wを構成する。
【0181】
図2は、本発明に従うPTH含有組成物の経口投与後のヒトにおける血漿濃度 対 時間プロフィールを概略的に示す。
【0182】
図3は、カルシウム含有化合物及びPTHの投与後のPTH濃度の変化を概略的に示す。用いた投与又は組成は、カルシウムは迅速に放出される一方でPTHの放出は遅延されることを確実にする。初期のカルシウム効果は血漿PTHレベルを低下させ、PTH放出により血漿PTHレベルは有意に増加する。カルシウムに関して目的とする効果は、約−50%(−5%〜−100%を限度とする)のPTH血漿レベルの減少であり、一旦放出されたPTHに関しては約650%(10%〜1200%を限度とする)のPTH血漿レベルの変化である。
【0183】
以下に本発明の特定の実施形態を挙げる:
1.薬局方標準の溶解試験で試験したときにPTHのインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出が始まると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90% w/w、例えば少なくとも95%又は少なくとも99%が最大限2時間以内に放出される、PTHを含む経口投与用医薬組成物。
【0184】
2.溶解媒体として37℃で平衡化した0.1N HClを用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、組成物に含有されるPTHの最大限約10% w/w、例えば最大限約7.5% w/w、最大限約5% w/w、最大限約2.5% w/w、最大限約1% w/wが試験開始2時間後に放出される項目1に従う医薬組成物。
【0185】
3.小腸及び/又は結腸へのPTHの送達用の項目1又は2に従う医薬組成物。
4.空腸へのPTHの送達用の先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
5.約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
15分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
60分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる項目4に従う医薬組成物。
6.回腸へのPTHの送達用の項目1〜3のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0186】
7.約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
2時間30分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
3時間30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
4時間30分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる項目6に従う医薬組成物。
【0187】
8.結腸へのPTHの送達用の項目1〜3のいずれか1項に従う医薬組成物。
9.約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
4時間で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
5時間で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
6時間で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる項目8に従う医薬組成物。
【0188】
10.PTHが組換え型か又はヒトを含む哺乳動物起源のものであり、完全長PTH(1-84)又はそのアミノ末端フラグメントPTH(例えばPTH 1-34など)から選択される先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
11.カルシウム含有化合物を更に含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0189】
12.溶解媒体として37℃で平衡化した0.1N HClを用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のカルシウム溶解パターン:
15分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
45分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる項目11に従う医薬組成物。
【0190】
13.カルシウム含有化合物が、ビスグリシノカルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、コーン油酸カルシウム塩、フッ化カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ヒドロキシアパタイトカルシウム、乳酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトグルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピドール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムからなる群より選択される項目11又は12に従う医薬組成物。
【0191】
14.ビタミンD(例えばビタミンD3)を更に含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
15.骨関連障害に効果的である更なる治療上及び/又は予防上の活性物質を含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
16.吸収増強剤を更に含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
17.PTH安定剤を更に含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0192】
18.錠剤、カプセル及び薬袋を含む固体剤形の形態の先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
19.複数の同一又は異なるペレット又は顆粒を含む複数単位剤形の形態の先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0193】
20.1又はそれより多い第1の型の単位を含み、第1の型の単位がPTHを含み、第1の型の単位が少なくとも
i)内核、
ii)該内核を取り囲む時間制御層、
iii)実質的に水不溶性であるが水性媒体には透過性である、該時間制御層上に適用されたフィルム被覆、及び
iv)腸溶性被覆の外層
の積層構造を有する先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0194】
21.少なくとも3回の測定の平均としてインビトロで試験したとき、単位からの活性物質の放出が、約4.0を下回る第1のpH値でせいぜい約10% w/wであり、約5.0〜約8.0の第2のpH値で、活性物質が、約0.5〜約8時間の遅延時間(この第1の期間内に活性物質のせいぜい約10% w/wが放出される)の後に、単位に含有される活性物質の少なくとも約50% w/wがせいぜい約2時間の第2の期間内に放出される様式で放出される項目20に従う医薬組成物。
【0195】
22.インビトロで試験したとき、単位からの活性物質の放出が、約4.0を下回る第1のpH値で、せいぜい約7.5% w/w、例えばせいぜい約5% w/w、せいぜい約2.5% w/w又はせいぜい約1% w/wである項目21に従う組成物。
【0196】
23.第1のpH値が、約3.5を下回る、例えば約3.0を下回る、約2.5を下回る、約2.0を下回る、約1.5を下回るか、又は0.1N HClのものに対応するpH値である項目21に従う組成物。
【0197】
24.遅延時間が、約1.0〜約7時間、例えば約1.5〜約6時間、約2.0〜約5時間、又は約2.5〜約4.5時間、又は約2.5〜約4時間である項目20〜23のいずれか1項に従う組成物。
25.遅延時間後、単位に含有される活性物質の少なくとも約60% w/w、例えば少なくとも約70% w/w、少なくとも約75% w/w、少なくとも約80% w/w、少なくとも約85% w/w、少なくとも約90% w/w、少なくとも約95% w/w、又は少なくとも99% w/wがせいぜい約2時間の第2の期間内に放出される項目20〜24のいずれか1項に従う組成物。
【0198】
26.第2の期間が、せいぜい約90分、例えばせいぜい約60分、せいぜい約50分、せいぜい約45分、せいぜい約40分、せいぜい約35分、せいぜい約30分、せいぜい約25分、せいぜい約20分、せいぜい約15分、せいぜい約10分、又はせいぜい約5分である項目21〜25のいずれか1項に従う組成物。
【0199】
27.最大限約8.0、例えば約4.0〜約7.5の範囲、約4.5〜約7.0の範囲、約4.9〜約6.9、約5.0〜約6.5、約5.0〜約6.3、約5.0〜約6.0、約5.0〜約5.9、約5.0〜約5.7、約5.0〜約5.6、又は約5.0〜約5.5のpHカットオフを有する腸溶性ポリマーを含む腸溶性被覆を備える先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0200】
28.内核が医薬的に許容されるビーズ、球、顆粒、粒状体、及びペレットより選択される項目20〜27のいずれか1項に従う医薬組成物。
29.遅延時間が、膨潤可能な層がフィルム被覆層を破裂させるか又は破壊する程度まで膨潤するに要する時間により制御される項目28に従う医薬組成物。
30.遅延時間が時間制御層の厚さ及び/又は組成により制御される項目20〜29のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0201】
31.遅延時間がフィルム被覆層の厚さ及び/又は組成により更に制御される項目20〜30のいずれか1項に従う医薬組成物。
32.フィルム被覆層iii)の破裂又は破壊が実質的にpHと無関係である項目20〜31のいずれか1項に従う医薬組成物。
33.複数単位組成物の形態の先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0202】
34.単一単位組成物の形態の項目1〜32のいずれか1項に従う医薬組成物。
35.i)PTH、ii)カルシウム含有化合物、及びiii)ビタミンDを含む先行する項目のいずれか1項に従う医薬組成物。
36.活性物質として、i)PTH又はそのフラグメント、アナログ若しくは誘導体、及びii)ビタミンDを含む項目1〜34のいずれか1項に従う医薬組成物。
【0203】
37.第1の構成要素及び第2の構成要素を含み、第1の構成要素がPTHを含み、第2の構成要素がカルシウム含有化合物を含み、薬局方標準の溶解試験で試験したときにPTHのインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出が始まると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90% w/w、例えば少なくとも95%又は少なくとも99%が最大限2時間以内に放出される医薬キット。
【0204】
38.PTHを含む第1の構成要素が項目1〜36のいずれか1項に規定される組成物を含む項目37に従う医薬キット。
39.2つの構成要素が同一又は異なる容器に含有されている項目37又は38に従う医薬キット。
40.構成要素の使用についての指示書を更に含む項目37〜39のいずれか1項に従う医薬キット。
【0205】
41.第2の用量のカルシウム含有化合物を含む第3の構成要素を、第1の構成要素及び第2の構成要素の実質的に同時の経口摂取に続いて2時間又はそれより長く後、例えば3時間又はそれより長く後、4時間又はそれより長く後、5時間又はそれより長く後、6時間又はそれより長く後、7時間又はそれより長く後、或いは8時間又はそれより長く後に第3の構成要素を経口摂取することの指示書と共に更に含む項目37〜40のいずれか1項に従う医薬キット。
【0206】
42.ビタミンDを更に含む項目37〜41のいずれか1項に従う医薬キット。
43.ビタミンDが第1の構成要素若しくは第2の構成要素の1つとして又は別個の構成要素として含まれる項目42に従う医薬キット。
【0207】
44.i)有効量のカルシウム含有化合物が内因性PTHの血漿レベルを低下させるために投与され、
ii)一旦内因性PTHレベルが低下すると、有効量のPTHがPTHのピーク濃度を得るために投与される骨関連疾患の治療又は予防用医薬の製造のための、カルシウム含有化合物と組み合せての副甲状腺ホルモン(PTH)の使用。
【0208】
45.カルシウム含有化合物及びPTHが同一又は別個の医薬組成物に含有される項目44に従う使用。
46.カルシウム含有化合物が経口投与される項目44〜45のいずれか1項に従う使用。
47.PTHがカルシウム含有化合物より最大限4時間後に投与される項目46に従う使用。
【0209】
48.PTHがカルシウム含有化合物と実質的に同時に投与される項目44〜47のいずれか1項に従う使用。
49.PTH及びカルシウム含有化合物が項目1〜36のいずれか1項に規定する組成物又は項目37〜43のいずれか1項に規定するキットに含有される項目44〜48のいずれか1項に従う使用。
【0210】
50.項目1〜36のいずれか1項に規定する医薬組成物、項目37〜43のいずれか1項に規定するキット、又は項目44〜49のいずれか1項に規定する医薬の十分量を患者に投与することを含む、小腸又は結腸へ活性物質を投与する方法。
【0211】
51.十分量のPTHを項目1〜36のいずれか1項に規定する医薬組成物、項目37〜43のいずれか1項に規定するキット、又は項目44〜49のいずれか1項に規定する医薬で骨関連障害の治療又は予防の必要のある患者に経口投与することを含む、骨粗鬆症を含む骨関連障害の治療又は予防の方法。
【実施例】
【0212】
本発明を以下の非限定的な実施例で更に説明する。
【0213】
材料及び方法
インビトロ溶解試験法
装置: 欧州薬局方/米国薬局方の溶解装置
溶解媒体1(0〜2時間) 酸性段階(pH4.0まで)
溶解媒体2(2〜10時間) 緩衝段階(pH5.0〜8.0)
媒体交換の時間 2時間
媒体温度 37℃±0.5℃
【0214】
1分当たりの撹拌/流速/浸漬 試験すべき特定の製剤を評価することにより確立。
検出システム 試験すべき特定の製剤を評価することにより確立。
多数の単位/カプセル/錠剤を試験する。活性物質の参照標準を使用することにより試験結果を算出する。試験結果は3回又はそれより多い測定の平均として報告する。
当業者は、本明細書に記載の具体的な医薬製剤について適切な試験法条件を規定することができる。
【0215】
実施例
本明細書中の実施例の幾つかは、空腸及び回腸送達用の腸溶性膜を有する単位、及び、核、薬物、膨潤剤、水不溶性膜及び腸溶性膜を含有する回腸及び結腸送達用の5層までの球状構造を有する単位を説明する。このシステムが経口経路を介して投与された後、システムが胃に存在する限り、腸溶性膜は水がシステム中に進入することを防ぐ。システムがよりアルカリ性の環境中に進入すると、腸溶性膜は素早く溶解し、予めプログラムされた遅延時間が始まる。水は不溶性であるが透過性である膜を通じて浸透し、膨潤剤の水和化を開始する。水和した膨潤剤の膨張による圧迫が水不溶性膜の引っ張り強さを超えると、その膜の破裂が起こる。最後に、薬物放出が開始される(図1を参照)。薬物放出は膜の破壊により誘引され、破壊までの時間が放出の遅延時間を創出する。遅延時間は、膨潤剤及び水不溶性膜の組成及び/又は厚さにより制御され得るが、遅延時間の延長は遅延時間のより大きな変動を起こし、放出速度を減少させる。
【0216】
実施例1
PTHを含有する腸送達(空腸)用錠剤の製造
本実施例は腸送達(空腸)用錠剤の製造を説明する。錠剤の組成を表1に示す。
【0217】
表1
成分 量(g)
PTH(凍結乾燥PTH) 120.0
トリプシン阻害剤1 600.0
ラウリル硫酸ナトリウム 34
微結晶性セルロース 560.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 560.0
ポリビニルピロリドン90 26
ステアリン酸マグネシウム 10.0
タルク 90.0
合計 2000.0

1.有効濃度を約0.5mg/mlと仮定する。腸の最大容積は100cmの腸について約500mlである。20cmの腸をカバーするバースト(burst)としての放出、すなわち必要な有効用量は0.5mg/ml * 500ml * 0.2m = 50mg/用量である。
【0218】
成分を混合し、高剪断ミキサで湿式造粒し、絶対含水量が2%を下回るまで流動床で乾燥した。Fette exacta圧縮機を使用して、造粒化した粉体を打錠した。
Glatt GPCG 3流動床中で、1.2mmスプレーノズル及び2.5バールのスプレー圧を用いて、1.5kgのこれらの錠剤を保護被覆及び腸溶性被覆で被覆した。保護被覆(8% w/w乾燥物)及び腸溶性被覆(22.6% w/w乾燥物)の組成を表2及び3に示す。
【0219】
表2
成分 量(g)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースE5 40.0
タルク 40.0
精製水 920.0
合計 1000.0
【0220】
表3
成分 量(g)
Eudragit L30D 996.4
クエン酸トリエチル 29.89
滑石粉 149.46
精製水 944.25
合計 2120.0
【0221】
被覆プロセスでは、2% w/w保護被覆及び25% w/w腸溶性被覆を適用した。適用した乾燥物の量は、核重量の百分率で算出する。
錠剤を30℃に加熱し、被覆プロセスを通じて、10〜15g/分の幅に液体流速を調整することにより製品温度を実質的に28〜32℃の幅に維持した。入口エアー温度及びプロセスエアーフローをそれぞれ約35℃及び150m3/hに維持した。被覆の適用後、被覆した錠剤を15分間乾燥させた。錠剤の質量は約200mgであった。
【0222】
溶解
0.1N HCl中で2時間、事実上PTHは放出されなかった(0.5%未満)。2時間後、溶解媒体中のpHを6.8に変化させた。pH変化の15分後にPTH用量の35%が放出され、30分後にPTH用量の75%が、60分後にPTH用量の100%が放出された。
【0223】
実施例2
腸送達(回腸)用のPTH含有錠剤の製造
本実施例は腸送達(回腸)用錠剤の製造を説明する。錠剤の組成を表4に示す。
【0224】
表4
成分 量(g)
PTH(凍結乾燥PTH) 120.0
アマスタチン2 31.8
デオキシコール酸ナトリウム3 720.0
微結晶性セルロース 500.1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 500.1
ポリビニルピロリドン90 28
ステアリン酸マグネシウム 10.0
タルク 90.0
合計 2000.0

2.有効濃度を約0.0265mg/ml(50μM)と仮定する。腸の最大容積は100cmの腸について約500mlである。20cmの腸をカバーするバーストとしての放出、すなわち必要な有効用量は0.0053mg/ml * 532ml * 0.2m = 0.56mg/用量である。
3.溶解する形態でない3%の固体剤形として計算する。
【0225】
錠剤を製造し、保護被覆を実施例1に記載のように適用した。
Glatt GPCG 3流動床中で、1.2mmスプレーノズル及び2.5バールのスプレー圧を用いて、1.5kgのこれらの錠剤を腸溶性被覆で被覆した。被覆(27% w/w乾燥物)の組成を表5に示す。
【0226】
表5
成分 量(g)
Eudragit FS30D 2000.0
クエン酸トリエチル 30.0
滑石粉 180.0
精製水 790
合計 3000
【0227】
被覆プロセスでは25% w/w腸溶性被覆を適用した。
錠剤を20〜25℃に加熱し、被覆プロセスを通じて、10〜15g/分の幅に液体流速を調整することにより製品温度を実質的に20〜25℃の幅に維持した。入口エアー温度及びプロセスエアーフローをそれぞれ約35℃及び100m3/hに維持した。被覆した錠剤を40℃にて30分間乾燥させた。錠剤の質量は約200mgであった。
【0228】
溶解
0.1N HCl中で2時間、事実上PTHは放出されなかった(0.5%未満)。2時間後、溶解媒体中のpHを6.8に変化させた。pH変化の4時間後にPTH用量の5%未満が放出された。合計6時間後、溶解媒体中のpHを7.5に変化させた。最後の変化の30分後にPTH用量の100%が放出された。
【0229】
実施例3
結腸送達用のPTH含有核の製造
本実施例は結腸送達用の核の製造を説明する。核の組成を表6に示す。
押出/球状化技術を用いて核を製造した。
【0230】
表6
成分 量(g)
PTH(凍結乾燥PTH) 400.0
アプロチニン4 250.0
EDTA 1000.0
微結晶性セルロース 337.5
ラクトース一水和物 462.5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 50.0
精製水 775 g

4.有効濃度を約0.25mg/mlと仮定する。腸の最大容積は100cmの腸について約500mlである。20cmの腸をカバーするバーストとしての放出、すなわち必要な有効用量は0.25mg/ml * 500ml * 0.2 m = 25mg/用量である。
【0231】
成分を混合し、高剪断ミキサで湿式造粒した。湿潤塊をNica E 140押出機において0.6mm篩サイズで押出成形した。表面が滑らかになり核が球状になるまで、実験室で押出物を球状化した。Glatt GPCG流動床において、核を約30分間50℃にて乾燥した。600μmの低い方の篩及び800μmの高い方の篩を通して篩にかけて、乾燥した核を分画した。
【0232】
実施例4
懸濁液被覆を用いる膨潤層を有する核の製造
実施例3から得られる1kgの核を実施例1に記載の保護被覆で被覆した。更に、ロータリープロセッサーを備えたGlatt GPCG流動床において、核を膨潤剤及び外側被覆で被覆した。ノズルを最低位に配置した。壁からノズル点までの距離は25mmであり、ノズル口サイズは1.2mmであった。スプレー圧は2.5バールであり、ディスク上の回転速度は500rpmであった。製品示差圧(product differential pressure)は約1.5kPaであった。懸濁物被覆(25% w/w乾燥物)及び外側被覆(4.2% w/w乾燥物)の組成を表7及び8に示す。
【0233】
表7
成分 量(g)
L-HPC LH-31 4472
ヒドロキシプロピルセルロースL-/fine 903
エタノール99.9% 16125
合計 21500
【0234】
表8
成分 量(g)
ヒドロキシプロピルセルロース L-/fine 63.0
エタノール99.9% 1437.0
合計 1500.0
【0235】
被覆プロセスでは400% w/w L-HPC及び1% w/w外側被覆を適用した。
核を25℃に加熱し、被覆プロセスを通じて、35〜45g/分の幅に液体流速を調整することにより製品温度を約15℃に維持した。加湿した入口エアー温度及びプロセスエアーフローをそれぞれ約25℃及び100m3/hに維持した。被覆した核を40℃にて約24時間トレイ上で乾燥させた。710μmの低い方の篩及び1000μmの高い方の篩を通して篩にかけて、乾燥した核を分画した。
【0236】
実施例5
3.5時間の遅延時間を得ることを意図した核の製造
Glatt GPCG 3流動床において、実施例4から得られる2kgの核を水不溶性被覆で被覆した。水不溶性被覆(10.9% w/w乾燥物)の組成を表9に示す。
【0237】
表9
成分 量(g)
エチルセルロース20 563.0
ポリエチレングリコール6000 197.0
コロイド状二酸化ケイ素 113.0
エタノール99.9% 7127.0
合計 8000.0
【0238】
被覆プロセスでは42.2% w/w水不溶性被覆を適用した。
核を30℃に加熱し、被覆プロセスを通じて、10〜20g/分の幅に液体流速を調整することにより製品温度を実質的に28〜31℃の幅に維持した。入口エアー温度及びプロセスエアーフローをそれぞれ約35℃及び100m3/hに維持した。被覆した核を15分間乾燥させた。被覆した核を1200μmの篩にかけた。オーバーサイズの物質:<5% w/w。
【0239】
実施例6
結腸送達用の核の製造
Glatt GPCG 3流動床において、実施例5から得られる2kgの核を腸溶性被覆で被覆した。腸溶性被覆(7.5% w/w乾燥物)の組成を表10に示す。
【0240】
表10
成分 量(g)
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース 480.0
クエン酸トリエチル 24.0
コロイド状二酸化ケイ素 96.0
精製水 1110.0
エタノール99.9% 6290.0
合計 8000.0
【0241】
被覆プロセスでは29% w/w腸溶性被覆を適用した。
核を実施例5に記載のように被覆した。被覆した核を1200μmの篩にかけた。オーバーサイズの物質:<5% w/w。
【0242】
溶解
0.1N HCl中で2時間、事実上PTHは放出されなかった(0.5%未満)。2時間後、pHを6.8に変化させ、溶解を更に5時間後続けた。pH6.8の溶解媒体中で3.5時間後にPTHの放出は用量の5%であった。4時間後に用量の30%が放出され、4.5時間後に70%が放出され、5時間後に100%が放出された。
【0243】
実施例7
粉体積層を用いるPTH、4-MOAC及びキトサン-EDTA結合体と混合した膨潤剤を有する核の製造
350〜500μmの粒子サイズを有するセルロース球体1kgを、PTH含有被覆及び実施例1に記載の保護被覆で被覆した。PTH被覆(17.8% w/w乾燥物)の組成を表11に示す。
【0244】
表11
成分 量(g)
PTH(凍結乾燥PTH) 250.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロースE5 63.9
タルク 42.6
精製水 1643.5
合計 2000.0
【0245】
被覆プロセスでは35.6% w/w PTH被覆及び2% w/w保護被覆を適用した。
更に、ロータリープロセッサーを備えたGlatt GPCG流動床(実施例4を参照)において結合剤溶液を同時にスプレーしながら積層することにより、600gの4-MOACと540gのキトサン-EDTAと3.74kgのL-HPC LH-31との予め篩にかけた混合物で核を被覆した。結合剤溶液(5% w/w乾燥物)の組成を表12に与える。
【0246】
表12
成分 量(g)
ヒドロキシプロピルセルロースL-/fine 100.0
エタノール99.9% 1900.0
合計 2000.0
【0247】
被覆プロセスでは10% w/w 4-MOAC、9% w/wキトサン-EDTA、374% w/w L-HPC及び1% w/w外側被覆を適用した(核の重量を基準とする)。結合剤溶液もまた外側被覆として使用した。
核を25℃に加熱し、被覆プロセスを通じて、35〜45g/分の幅に液体流速を調整することにより製品温度を約25℃に維持した。入口エアー温度及びプロセスエアーフローをそれぞれ約35℃及び100m3/hに維持した。2% w/wを下回る含水量まで被覆した核をトレイ上で30℃にて乾燥させた。750μmの低い方の篩及び1000μmの高い方の篩を通して篩にかけて、乾燥した核を分画した。PTHの含量は少なくとも95% w/wであった。
【0248】
実施例8
結腸送達用のPTH、4-MOAC及びキトサン-EDTA結合体を含有する核の製造
実施例5及び6に記載のように、Glatt GPCG 3流動床において、実施例7からの2kgの核を水不溶性被覆(40% w/wを適用)及び腸溶性被覆(20% w/wを適用)で被覆した。被覆した核を1.2mmの篩にかけた。オーバーサイズの物質:<5%。
【0249】
溶解
0.1N HCl中で2時間、事実上PTHは放出されなかった(0.5%未満)。pHをpH6.8に変化させ、溶解を更に5時間後続けた。pH6.8の溶解媒体中で3.5時間後にPTHの放出は用量の5%であった。4時間後に用量の25%が放出され、4.5時間後に60%が、5時間後に100%が放出された。
【0250】
実施例9
複数単位を含有するカプセルの形態に作られる副甲状腺ホルモン(PTH)改変放出経口組成物の製造
1000〜1500mgのカルシウム及び400〜1200IU又はそれより高い用量のビタミンD3(例えば1-3 Calcichew-D3錠剤)のサプリメントに加えて摂取する1日1回経口PTH製品(10mg)。実施例6又は8から得られる核を硬カプセル中に充填することにより改変放出PTH製品を製造した。カプセルの質量は約400mgであった。カルシウムサプリメントは日中の食事と共に摂取すべきであり、PTH製品は、就寝までの夜間に、夕食と共にか又は就寝の直前のいずれかに摂取すべきである。PTHの放出は、約3.5〜6時間(胃のpH及び胃内容排出に依存する)遅延され、そのことによりカルシウムサプリメントから得られる有益な効果と干渉しない。このPTH治療の可能性のある何らかの有害効果は患者が就寝中に起こる。
【0251】
実施例10
炭酸カルシウム及びビタミンD3を含有する流状体の製造
実施例1に記載のように粒状体を製造した。組成を表13に示す。
【0252】
表13
成分 量(g)
コレカルシフェロール 50
微結晶性セルロース 375
カルボキシメチルセルロースナトリウム 50
炭酸カルシウム 2000
ポリビニルピロリドン90 25
【0253】
実施例11
顆粒及び複数単位を含有する薬袋の形態での、炭酸カルシウム、ビタミンD3及びPTHを含有する組合せ製品の製造
500mgのカルシウム、400〜1200IU又はそれより高い用量のビタミンD3及び10mgのPTHを含有する1日1回製品。実施例10の顆粒及び実施例6又は8から得られる核を混合して薬袋中に入れることによりこの製品を製造した。薬袋の質量は約1900mgであった。
【0254】
この製品は、就寝までの夜間に摂取すべきである。PTHの放出は約3.5〜6時間(胃のpH及び胃内容排出に依存する)遅延され、そのことによりカルシウムサプリメントから得られる有益な効果と干渉しない。このPTH治療の可能性のある何らかの有害効果は患者が就寝中に起こる。患者は、日中に、カルシウム及びビタミンD3(例えば、1-2 Calcichew-D3錠剤)の追加のサプリメントを摂取するように助言されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明に従う使用のための第1の単位を概略的に示す。
【図2】本発明に従うPTH含有組成物の経口投与後のヒトにおける血漿濃度 対 時間プロフィールを概略的に示す。
【図3】カルシウム含有化合物及びPTHの投与後のPTH濃度の変化を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬局方標準の溶解試験で試験したときに副甲状腺ホルモン(PTH)のインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出が始まると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90% w/w、例えば少なくとも95%又は少なくとも99%が最大限2時間以内に放出される、PTHを含む経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
溶解媒体として37℃で平衡化した0.1N HClを用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、組成物に含有されるPTHの最大限約10% w/w、例えば最大限約7.5% w/w、最大限約5% w/w、最大限約2.5% w/w、最大限約1% w/wが試験開始2時間後に放出される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
小腸及び/又は結腸へのPTHの送達用の請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
空腸へのPTH送達用の請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
15分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
60分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
回腸へのPTH送達用の請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
2時間30分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
3時間30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
4時間30分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
結腸へのPTH送達用の請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
約6.8のpH及び約37℃の温度を有する溶解媒体を用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のPTH溶解パターン(pH6.8で開始後):
4時間で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
5時間で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
6時間で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
PTHが組換え型か又はヒトを含む哺乳動物起源のものであり、完全長PTH(1-84)又はそのアミノ末端フラグメントPTH(例えばPTH 1-34など)から選択される請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
カルシウム含有化合物を更に含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
溶解媒体として37℃で平衡化した0.1N HClを用いるインビトロ溶解試験で試験したとき、以下のカルシウム溶解パターン:
15分で 約20% w/w (0〜50% w/wを限度とする)
30分で 約80% w/w (25〜100% w/wを限度とする)
45分で 約100% w/w (50〜100% w/wを限度とする)
が得られる請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
カルシウム含有化合物が、ビスグリシノカルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、コーン油酸カルシウム塩、フッ化カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、乳酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトグルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピドール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムからなる群より選択される請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ビタミンD(例えばビタミンD3)を更に含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
骨関連障害に効果的である更なる治療上及び/又は予防上の活性物質を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
吸収増強剤を更に含む請求項1〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
PTH安定剤を更に含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
錠剤、カプセル及び薬袋を含む固体剤形の形態の請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
複数の同一又は異なるペレット又は顆粒を含む複数単位剤形の形態の請求項1〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
1又はそれより多い第1の型の単位を含み、第1の型の単位がPTHを含み、第1の型の単位が少なくとも
i)内核、
ii)該内核を取り囲む時間制御層、
iii)実質的に水不溶性であるが水性媒体には透過性である、該時間制御層上に適用されたフィルム被覆、及び
iv)腸溶性被覆の外層
の積層構造を有する請求項1〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
少なくとも3回の測定の平均としてインビトロで試験したとき、単位からの活性物質の放出が、約4.0を下回る第1のpH値でせいぜい約10% w/wであり、約5.0〜約8.0の第2のpH値で、活性物質が、約0.5〜約8時間の遅延時間(この第1の期間内に活性物質のせいぜい約10% w/wが放出される)の後に、単位に含有される活性物質の少なくとも約50% w/wがせいぜい約2時間の第2の期間内に放出される様式で放出される請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
インビトロで試験したとき、単位からの活性物質の放出が、約4.0を下回る第1のpH値で、せいぜい約7.5% w/w、例えばせいぜい約5% w/w、せいぜい約2.5% w/w又はせいぜい約1% w/wである請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
第1のpH値が、約3.5を下回る、例えば約3.0を下回る、約2.5を下回る、約2.0を下回る、約1.5を下回るか、又は0.1N HClのものに対応するpH値である請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
遅延時間が、約1.0〜約7時間、例えば約1.5〜約6時間、約2.0〜約5時間、又は約2.5〜約4.5時間、又は約2.5〜約4時間である請求項20〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
遅延時間後、単位に含有される活性物質の少なくとも約60% w/w、例えば少なくとも約70% w/w、少なくとも約75% w/w、少なくとも約80% w/w、少なくとも約85% w/w、少なくとも約90% w/w、少なくとも約95% w/w、又は少なくとも99% w/wがせいぜい約2時間の第2の期間内に放出される請求項20〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
第2の期間が、せいぜい約90分、例えばせいぜい約60分、せいぜい約50分、せいぜい約45分、せいぜい約40分、せいぜい約35分、せいぜい約30分、せいぜい約25分、せいぜい約20分、せいぜい約15分、せいぜい約10分、又はせいぜい約5分である請求項21〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
最大限約8.0、例えば約4.0〜約7.5の範囲、約4.5〜約7.0の範囲、約4.9〜約6.9、約5.0〜約6.5、約5.0〜約6.3、約5.0〜約6.0、約5.0〜約5.9、約5.0〜約5.7、約5.0〜約5.6、又は約5.0〜約5.5のpHカットオフを有する腸溶性ポリマーを含む腸溶性被覆を備える請求項1〜26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
内核が医薬的に許容されるビーズ、球、顆粒、粒状体、及びペレットより選択される請求項20〜27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
遅延時間が、膨潤可能な層がフィルム被覆層を破裂させるか又は破壊する程度まで膨潤するに要する時間により制御される請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
遅延時間が時間制御層の厚さ及び/又は組成により制御される請求項20〜29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
遅延時間がフィルム被覆層の厚さ及び/又は組成により更に制御される請求項20〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
フィルム被覆層iii)の破裂又は破壊が実質的にpHと無関係である請求項20〜31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
複数単位組成物の形態の請求項1〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
単一単位組成物の形態の請求項1〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
i)PTH、ii)カルシウム含有化合物、及びiii)ビタミンDを含む請求項1〜34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
活性物質として、i)PTH又はそのフラグメント、アナログ若しくは誘導体、及びii)ビタミンDを含む請求項1〜34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
第1の構成要素及び第2の構成要素を含み、第1の構成要素がPTHを含み、第2の構成要素がカルシウム含有化合物を含み、薬局方標準の溶解試験で試験したときにPTHのインビトロ放出が少なくとも2時間遅延し、一旦放出が始まると組成物に含有される全てのPTHの少なくとも90% w/w、例えば少なくとも95%又は少なくとも99%が最大限2時間以内に放出される医薬キット。
【請求項38】
PTHを含む第1の構成要素が請求項1〜36のいずれか1項に規定される組成物を含む請求項37に記載の医薬キット。
【請求項39】
2つの構成要素が同一又は異なる容器に含有されている請求項37又は38に記載の医薬キット。
【請求項40】
構成要素の使用についての指示書を更に含む請求項37〜39のいずれか1項に記載の医薬キット。
【請求項41】
第2の用量のカルシウム含有化合物を含む第3の構成要素を、第1の構成要素及び第2の構成要素の実質的に同時の経口摂取に続いて2時間又はそれより長く後、例えば3時間又はそれより長く後、4時間又はそれより長く後、5時間又はそれより長く後、6時間又はそれより長く後、7時間又はそれより長く後、或いは8時間又はそれより長く後に第3の構成要素を経口摂取することの指示書と共に更に含む請求項37〜40のいずれか1項に記載の医薬キット。
【請求項42】
ビタミンDを更に含む請求項37〜41のいずれか1項に記載の医薬キット。
【請求項43】
ビタミンDが第1の構成要素若しくは第2の構成要素の1つとして又は別個の構成要素として含まれる請求項42に記載の医薬キット。
【請求項44】
i)有効量のカルシウム含有化合物が内因性PTHの血漿レベルを低下させるために投与され、
ii)一旦内因性PTHレベルが低下すると、有効量のPTHがPTHのピーク濃度を得るために投与される骨関連疾患の治療又は予防用医薬の製造のための、カルシウム含有化合物と組み合せての副甲状腺ホルモン(PTH)の使用。
【請求項45】
カルシウム含有化合物及びPTHが同一又は別個の医薬組成物に含有される請求項44に記載の使用。
【請求項46】
カルシウム含有化合物が経口投与される請求項44〜45のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
PTHがカルシウム含有化合物より最大限4時間後に投与される請求項46に記載の使用。
【請求項48】
PTHがカルシウム含有化合物と実質的に同時に投与される請求項44〜47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
PTH及びカルシウム含有化合物が請求項1〜36のいずれか1項に規定する組成物又は請求項37〜43のいずれか1項に規定するキットに含有される請求項44〜48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
請求項1〜36のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項37〜43のいずれか1項に記載のキット、又は請求項44〜49のいずれか1項に記載の医薬の十分量を患者に投与することを含む、小腸又は結腸へ活性物質を投与する方法。
【請求項51】
十分量のPTHを請求項1〜36のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項37〜43のいずれか1項に記載のキット、又は請求項44〜49のいずれか1項に記載の医薬で骨関連障害の治療又は予防の必要のある患者に経口投与することを含む、骨粗鬆症を含む骨関連障害の治療又は予防の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−525472(P2007−525472A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517970(P2006−517970)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000482
【国際公開番号】WO2005/002549
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505164003)
【氏名又は名称原語表記】NYCOMED DANMARK APS
【住所又は居所原語表記】Langebjerg 1,DK−4000 Roskilde,DENMARK
【Fターム(参考)】