説明

経口処方組成物

経口投与に適したAP23573を含有する固体薬剤組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次式で示されるラパマイシン43−ジメチルホスフィネートエステル(AP23573)の固体処方組成物に関する。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
in vitroおよびin vivo異種移植モデルにおいて、AP23573は前立腺、子宮内膜、軟部組織および骨肉腫、白血病、リンパ腫および(神経)膠芽腫細胞系をはじめとする多様なヒト腫瘍細胞系の増殖を強力に阻害してきた。
【0004】
AP23573によるヒト臨床研究は、多様ながん患者において、腫瘍の進行または再発の時間的な遅延化の可能性を含む有望な結果を生じている。
AP23573はまたAP23573溶出ステントの開発に向けて研究中である。この分野におけるAP23573の役割は、ステント導入後の再狭窄を阻止することである。
【0005】
他のmTOR阻害剤に対する既知の生物学的活性に部分的に基づいて、AP23573もまた、それらに制限されないが、下記疾患の治療および予防をはじめとする、mTOR阻害剤による治療に感受性のある広範囲の適応症に有用である可能性がある;臓器移植拒絶反応および自己免疫疾患、真菌感染症、多発性硬化症;リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス[例えば、米国特許第5,078,999号を参照]、肺炎[米国特許第5,080,899号]、インスリン依存性糖尿病[米国特許第5,321,009号]、乾癬などの皮膚疾患[米国特許第5,286,730号]、便通障害[米国特許第5,286,731号]、血管損傷後の平滑筋細胞増殖および血管内膜肥厚[米国特許第5,288,711号および5,516,781号]、成人T細胞白血病/リンパ腫[欧州特許出願公開525,960A1]、眼炎[米国特許第5,387,589号]、悪性がん腫[米国特許第5,206,018号]、心臓炎症性疾患[米国特許第5,496,832号]、ならびに貧血[米国特許第5,561,138号]。
【0006】
AP23573の開発および使用の1つの重要なチャレンジは、経口投与に適した貯蔵(保存)安定性のある固体剤形を開発することである。より具体的には、本発明者らは、酸化防止剤の存在下または不存在下、標準な賦形剤および充填剤と共に、非微粉化(non-micronized)AP23573を直接圧縮することにより調製したAP23573錠剤は、これまで、望ましい程度に高い均質性または安定性を示さない、最適とはいえない錠剤となっていたことを見出した。
【発明の概要】
【0007】
我々は、AP23573の分解について詳細な検討を行い、本化合物のトリエン部分の酸化を含む重要な分解経路を確認した。また、我々は、AP23573がラクトン結合の開裂を経た水性分解を受けて開環したセコ(seco-)AP23573を生ずることも見出した。
【0008】
AP23573は、ラパマイシンまたはテムシロリムスのような結晶質物質ではなく、非晶質固体であるので、これらの化合物の処方における報告された経験を直接的に利用することはできず、代わりにAP23573それ自体による経験的な研究に頼った。
【0009】
これらの研究から生まれた本発明は、上述した問題点を克服し、微粉化を必要とせずに製薬用に適したAP23573の妥当な貯蔵安定性のある生物学的利用可能な経口処方組成物を提供する。
【0010】
経口投与に適した本発明の薬剤組成物は、2〜35%のAP23573、0.01〜3%の酸化防止剤および少なくとも1種のセルロースポリマーを含む担体材料70〜97%を含み、場合により1種もしくは2種以上の追加の薬剤に許容される賦形剤を含有する。特に指定しない限り、本書における全ての%は重量/重量基準での%である。適当な担体材料としては、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および乳糖一水和物が挙げられ、これらは一般にそれぞれ20〜55%、2〜15%および15〜70%の量で使用することができる。本組成物に使用するのに現状で好ましい酸化防止剤はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。他の賦形剤としては、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような材料を挙げることができる。
【0011】
本組成物は、各種の物理的形態(カプセル剤、錠剤、カプレット剤など)で製剤することができ、AP23573を10〜60mg、典型的には10〜40mg含有するものが最も興味がある。10mgのAP23573を含有する圧縮錠剤が現時点では最も興味深い。この錠剤は薬剤に許容されるフィルムまたは腸溶コーティングを場合により含んでいてもよい。
【0012】
本組成物はまた、他の点では慣用である混合方法および装置を用いて製剤することができる。現時点で最も興味深いのは、高剪断型造粒器を用いた造粒後に流動床乾燥を行う方法である。
【0013】
本方法において、選択した溶媒、例えば、水性エタノールまたは水溶液(エタノールの代わりに他のアルコールを使用してもよい)中のAP23573溶液を用意する。酸化防止剤を含有していてもよいこの溶液を担体と混合して、湿った塊状物を形成する。これは典型的には造粒器または他の混合装置(例えば、高剪断造粒器)内で行われる。この湿潤塊状物を次いで造粒により混合して、湿潤顆粒を形成する。この湿潤顆粒を次いで、例えば流動床乾燥器内で乾燥して、乾燥顆粒を得る。この顆粒を錠剤に圧縮(打錠)し、所望により被覆(コーティング)することができる。
【0014】
上述したように、AP23573の溶液は酸化防止剤を含有することができる。これに代えて、または加えて、酸化防止剤を、AP23573溶液の添加の前または後に、担体材料と別に混合することもできる。いずれの場合も、酸化防止剤は得られた湿潤塊状物に混入される。他の賦形剤もこの工程において湿潤塊状物に混入するために添加してもよい。賦形剤はまた湿潤または乾燥顆粒に添加することもできる。
【0015】
この方法により製剤された固体薬剤組成物は、ヒトの臨床研究に使用するのに適した貯蔵安定性と生物学的利用能を有することが認められた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明はAP23573、酸化防止剤およびセルロースポリマーを含む単位剤形形態の貯蔵安定性のある固体薬剤組成物を提供する。この組成物はキレート剤、充填剤、結合剤、界面活性剤、崩壊剤、滑剤、pH調整剤などの他の1種または2種以上の薬剤に許容される賦形剤をさらに含有していてもよい。それは、上述した湿潤造粒法を用いて製剤される。
【0017】
AP23573の溶液を調製し、場合によっては造粒(顆粒化)工程でも使用できる適当な溶媒としては、それらに限られないが、水および有機溶媒(例、メタノール、エタノール、イソプロピル、アセトン)の単独または混合物が挙げられる。湿式造粒はアルコール溶媒系で行うことが好ましく、中でもエタノールがアルコールとして現在最も有利である。エタノール水溶液(水性エタノール)は、水とエタノール共に含む混合造粒溶媒系の1例である。
【0018】
本組成物が、重量で1〜45%、2〜35%、5〜25%または8〜15%のAP23573、重量で1〜50%、1〜35%、1〜15%または2〜15%のセルロースポリマー、および重量で0.01〜3%、0.05〜1%または0.05〜0.5%の酸化防止剤を含有することが現時点では特に有利である。しかし、多様な実施形態はこれらの成分をより多量または少量含有しうる。
【0019】
許容できる酸化防止剤としては、それらに制限されないが、クエン酸、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、およびプロピルガレート(没食子酸プロピル)が挙げられる。本発明の処方組成物の酸化防止剤は、錠剤の重量に対して0.01〜3wt/wt%の範囲内の量で使用されよう。
【0020】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩のようなキレート剤、または金属イオンを結合できる他の物質は、AP23573の安定性を高めることができ、任意成分の賦形剤として使用することができる。
【0021】
典型的なセルロースポリマーとしては、それらに制限されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が挙げられる。他の薬剤に許容されるにセルロースポリマーもここに各種の状況で触れられ、多くの他のものが本技術分野で周知である。
【0022】
薬剤に許容されるに賦形剤としては、結合剤、充填剤、崩壊剤、pH調整剤、界面活性剤、および以上の任意の組み合わせが挙げられる。
許容できるpH調整剤としては、それらに制限されないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、およびAP23573を含有する溶液を約4〜約6の範囲内のpHに緩衝化することができ他の温和な酸または塩基が挙げられる。pH調整剤を組成物中に存在させる場合、それは錠剤の重量に対して1重量%までの量とするのが普通である。
【0023】
界面活性剤も本処方組成物中に存在させることができ、それには、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、胆汁酸類の塩(タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩など)(これはレシチンと混合してもよい)が含まれる。あるいは、クレモホールELのようなエトキシ化植物油、ビタミンE・トコフェロールプロピレングリコールスクシネート(ビタミンE TGPS)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ならびにポロキサマーも使用できる。本組成物中に存在させる場合、界面活性剤は通常は錠剤の重量に対して20重量%まで、例えば1〜15重量%の量とする。
【0024】
しょ糖、乳糖、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、アラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、デキストレート、デキストリン、シクロデキストリン、乳糖、デキストロース、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアレート、およびポリビニルアルコールなどのような結合剤、充填剤および崩壊剤も、本処方組成物中に混入しうる。
【0025】
本発明のどの処方組成物も、各種類の成分剤について2以上の成分を含有しうる。例えば、酸化防止剤を含有する処方組成物は、酸化防止剤成分として1種または2種以上の酸化防止剤を含有しうる。
【0026】
典型的な態様において、湿式造粒法は、混合、湿潤、湿式塊状化、造粒、乾燥および分級(ふるい分け)の各工程を含む。これらの工程について以下により詳しく説明する。
この湿式造粒プロセスは、AP23573と酸化防止剤とを含む溶液を調製することから始まる。適当な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられ、中でもエタノールが特に好ましい。次の工程は、得られた溶液を、「マトリックス形成材料」と1種または2種以上の任意の粒内賦形剤(intragranular excipient)とが入っているミキサー(混合機)に、ミキサーの内容物を撹拌しながら加えることである。その結果、湿潤塊状物が生ずる。この工程は、粉末粒内混合物の湿潤塊状化とも呼ばれる。適当なマトリックス形成材料の例としてはセルロースポリマーが挙げられ、最終製品の溶解増強を促進するために結合剤および充填剤を含有していてもよい。典型的は粒内賦形剤としては、結合剤、充填剤、崩壊剤および以上の任意の組み合わせを挙げることができる。セルロースポリマー/粒内賦形剤の例としては、それらに限られないが、微結晶セルロース、乳糖一水和物、クロスカルメロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースの組み合わせが挙げられる。得られた湿潤塊状物を、次いでミキサー内で粒状化(造粒)して、各種成分の湿潤粒状物(顆粒)の形態の混合物を得る。造粒(即ち、混合/撹拌)は、均一な粒状化が達成されるまで(即ち、顆粒の粒子サイズが所望の均一性に達するまで)続ける。ミキサーは、増強棒(intensifying bar)を備えたブレンダー、低剪断造粒器または高剪断造粒器とすることができる。得られた湿潤粒状物を次いで、例えば45〜55℃の温度の流動床乾燥機内で乾燥する。乾燥した粒状材料を次いで、例えばフィッツミル (Fitz mill) などの適当な粉砕装置を用いて粉砕してもよい。湿式造粒と乾燥は、流動床造粒/乾燥機内で行うこともできる。湿潤粒状物の乾燥はトレイ乾燥オーブンを用いて行うこともできる。この粒状物が乾燥した後、それをさらに、単独でまたは追加の1種もしくは2種以上の賦形剤と一緒にふるいわけ、即ち、乾式分級してもよい。また、所望により、乾燥した粒状物をさらに、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムなどの粒外充填・結合剤と、Vブレンダーのようなブレンダーで混合してもよい。これは典型的には、その後に錠剤に圧縮(打錠)されうる粒状物のより均一な粒子サイズを生じる。
【0027】
別の方法では、AP23573の溶液は酸化防止剤を含有していない。この手法では、酸化防止剤は代わりにミキサーへの装入物中に存在させ、この装入物はさらにセルロースポリマー、粒内賦形剤などを含んでいる。
【0028】
別の態様では、酸化防止剤はやはりセルロースポリマーおよび粒内賦形剤が装入されているミキサー内に存在させ、AP23573を固体として添加した後、粒内賦形剤と混合する。その後に溶媒をミキサーに加えてから造粒工程に進む。他の添加順序も本発明において考えられ、かつ採用可能である。
【0029】
本経口錠剤はAP23573の放出を制御するためにさらにフィルムコートを含んでいてもよい。錠剤は、各種のコーティング溶媒を用いたスプレイ、浸漬または付着(析出)によりフィルムコートでコーティングすることができる。適当なコーティング溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。フィルムコートとしては、コポピドン(即ちポリビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにアクリレートもしくはメタクリレートコポリマーなどのポリマー系皮膜形成性材料が挙げられる。皮膜形成性ポリマーの他に、フィルムコートはさらに可塑剤、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、界面活性剤、例えば、Tween RTM型、消泡剤、例えば、シメチコン、ならびに場合により顔料、例えば、二酸化チタンもしくは酸化鉄をさらに含有していてもよい。フィルムコーティングはさらに、付着防止剤としてタルクを含有していてもよい。フィルムコートの量は通常は剤形の約5重量%未満である。
【0030】
1好適態様において、フィルムコーティング材料はAP23573の急速放出を可能にするコポピドンを含有する。
フィルムコーティングはまた、AP23573の遅延放出のために腸溶性ポリマーを含む腸溶層であってもよい。腸溶層は胃の酸性媒質中では不溶性であるが、小腸内で出会うより高pHでは可溶性である物質(即ち、ポリマー)の皮膜(コーティング)である。このような材料は薬剤の放出を変更するために錠剤のフィルムコーティングとして使用される。適当な腸溶性ポリマーは当業者には周知であり(WO01/051031)、例としては、制限するものではないが、メチルメタクリレートポリマー、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートが挙げられる。腸溶性コートは、さらに前述したような可塑剤、界面活性剤、および消泡剤、ならびに場合により顔料を含有しうる。
【0031】
1好適態様において、腸溶層はメタクリル酸コポリマー、例えば、Eudragit L100、Acryl-EZEなどを含有する。
以下に本発明の処方組成物の代表例を挙げる。AP23573の調製は米国特許第7,091,213号(ここに参考として援用する)に記載されている。以下の例は例示にすぎず、本発明の範囲を制限するものではない。以下の例は本発明の実施方法を示唆することだけを意図する。
【実施例】
【0032】
実施例1:アルコール性造粒
コア錠剤:
次に述べる手順を用いて、以下に列挙した成分を含有する10mgのAP23573を含有する錠剤を製剤した。錠剤は直径が6mmの白またはオフホワイト色の丸い両凸面被覆錠剤である。コア(核)錠剤の組成は次の表に示した。本例では、コア錠剤はフィルムコートされてそのまま使用されうるか、あるいは遅延放出のために腸溶性コーティングされうる。
【0033】
成分 重量%
AP23573 8.00%
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.08%
ヒドロキシプロピルセルロース 8.00%
乳糖一水和物 50.57%
微結晶セルロース 30.85%
クロスカルメロースナトリウム 2.00%
ステアリン酸マグネシウム 0.50%
無水アルコール(エタノール)* −
*処理中に除去される。
【0034】
方法:
ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖一水和物、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムの半量を高剪断造粒機で混合した。AP23573およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を無水アルコールUSP中で45分以上混合して溶解させた。得られたAP23573およびBHTの溶液を前記造粒機に加え、約3分間混合して湿った塊状物にした。
【0035】
造粒された混合物を45〜55℃の流動床乾燥機で60〜90分間乾燥した後、乾燥した粒状材料を、目の大きさが0.045インチ(1.14mm)のスクリーン(篩)を備えた粉砕機に通して、過大サイズの材料を取り除いた。粉砕した造粒材料を次いでVブレンダに投入し、ステアリン酸マグネシウムNFおよびクロスカルメロースNFの残り半量と均一に混ざるまで乾式混合した。
【0036】
この造粒された材料を、6mmの丸い凸状の成形型をセットした打錠機を用いて錠剤に打錠した。打錠機は目標錠剤重量125.0mg、硬さ5.5kp、破砕性1%以下、および崩壊時間10分未満となるように、必要に応じて調整した。
【0037】
フィルムコーティング:
フィルムコーティング(被覆)は、下記成分を用いて次に述べる手順に従って調製された。
【0038】
フィルムコーティング 溶液中%
コポピドン 20.00%
無水アルコール(エタノール)* 80.00%
*処理中に除去される。
【0039】
錠剤をコーティングパンに投入し、無水アルコールUSP中のコポピドン溶液で、20〜35℃の製品温度を保持しながら5%の重量増加が達成されるまでコーティングした。その後、パンを冷却し、フィルムコーティングされた錠剤を乾燥させた。フィルム被覆錠剤はそのままパッケージしてもよく、あるいは腸溶性コーティングしてもよい。
【0040】
腸溶性コーティング:
腸溶性コーティングは下記成分を用いて次に述べる手順に従って調製した。
フィルムコーティング 懸濁液中%
メタクリル酸コポリマー 11.03%
クエン酸トリエチル 2.16%
タルク 2.81%
無水アルコール(エタノール)* 84.00%
*処理中に除去される。
【0041】
腸溶性コーティングのために、錠剤をコーティングパンに投入し、無水アルコールUSP中のメタクリル酸コポリマーNF、クエン酸トリエチルNFおよびタルクの懸濁液で、20〜35℃の製品温度を保持しながら8%の重量増加が達成されるまでコーティングした。その後、パンを冷却し、腸溶性コーティングされた錠剤を乾燥させた。
【0042】
実施例2:水性造粒
コア錠剤:
次に述べる手順を用いて、以下に列挙した成分を含有する50mgのAP23573を含有する錠剤を製剤した。コア(核)錠剤の組成は次の表に示した。コア錠剤はフィルムコートされてそのまま使用してもよく、あるいは腸溶性コーティングしてもよい。
【0043】
成分 重量%
AP23573 25.00%
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.20%
ヒドロキシプロピルセルロース 4.00%
乳糖一水和物 23.75%
微結晶セルロース 43.55%
クロスカルメロースナトリウム 3.00%
ステアリン酸マグネシウム 0.50%
脱イオン水* −
*処理中に除去される。
【0044】
方法:
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、0.010スクリーン(篩)を取り付けた粉砕機に通し、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロースの半量、およびクロスカルメロースナトリウムの1/3量とを高剪断造粒機で混合した。次にAP23573をこの造粒機に加え、5分間混合した。その後、造粒液体(脱イオン水)を5分間かけて加えながら造粒操作を開始させた。AP23573、BHTおよび賦形剤を約2分間混合して、湿った塊状物にした。
【0045】
造粒された混合物を45〜55℃の流動床乾燥機で60〜90分間乾燥した後、乾燥した粒状材料を、目の大きさが0.065インチ(1.65mm)の篩を備えた粉砕機に通して、過大サイズの材料を取り除いた。粉砕した造粒材料を次いで、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウムの残り2/3量、および微結晶セルロースの残り半量と乾式混合した。
【0046】
この造粒された混合物を、6mmの丸い凸状の成形型をセットした打錠機を用いて錠剤に打錠した。打錠機は目標錠剤重量200.0mg、硬さ8.5kp、破砕性1%以下、および崩壊時間10分未満となるように、必要に応じて調整した。
【0047】
フィルムコーティング:
フィルムコーティング(被覆)は、下記成分を用いて次に述べる手順に従って調製された。
【0048】
フィルムコーティング 溶液中%
コポピドン 7.00%
脱イオン水* 93.00%
*処理中に除去される。
【0049】
錠剤をコーティングパンに投入し、脱イオン水中のコポピドン溶液で、27〜31℃の製品温度を保持しながら2%の重量増加が達成されるまでコーティングした。その後、パンを冷却し、フィルムコーティングされた錠剤を乾燥させた。フィルム被覆錠剤はそのままパッケージしてもよく、あるいは腸溶性コーティングしてもよい。
【0050】
腸溶性コーティング:
腸溶性コーティングは下記成分を用いて次に述べる手順に従って調製した。
フィルムコーティング 懸濁液中%
メタクリル酸コポリマー 9.94%
シメチコン 0.06%
脱イオン水 90.00%
*処理中に除去される。
【0051】
腸溶性コーティングのために、錠剤をコーティングパンに投入した。シメチコンを脱イオン水中に激しい混合を用いて分散させ、10%の最終コーティング液を調製した。次いで、メタクリル酸コポリマーを添加してシメチコン/水混合物に混合した。コーティングパンと錠剤を30〜33℃の製品温度に加温した。次いで、上記コーティング液を、10%の重量増加が達成されるまで錠剤に噴霧した。その後、パンを冷却し、腸溶性コーティングされた錠剤を乾燥させた。
【0052】
本明細書中で引用した文書はここに参考のために援用される。以上の発明の説明および実施例に述べた方法および材料の微細な変更および改変は当業者には自明であり、本発明の範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・2〜35重量%のAP23573、
・0.01〜3重量%の酸化防止剤、および
・少なくとも1種のセルロースポリマーを含む担体材料70〜97重量%、
を含有し、場合により1種もしくは2種以上の追加の薬剤に許容される賦形剤をさらに含有する、経口投与に適した固体薬剤組成物。
【請求項2】
前記担体材料が微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および乳糖一水和物を含む、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンである、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項4】
任意賦形剤として、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムの一方または両方を含有する、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項5】
薬剤に許容されるフィルムまたは腸溶性コーティングをさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の固体組成物。
【請求項6】
AP23573を10〜40mg含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の固体組成物。
【請求項7】
下記工程:
(a)選択した溶媒中のAP23573の溶液を用意し、
(b)該溶液を担体材料と混合して湿った塊状物を形成し、
(c)該湿った塊状物を造粒して湿潤造粒物を調製し、
(d)該湿潤造粒物を乾燥して乾燥造粒物を調製し、
(e)該乾燥造粒物を圧縮して錠剤にし、
(f)場合により得られた錠剤をフィルムコーティングポリマーでコーティングする、
を含む請求項1に記載の固体薬剤組成物の製造方法であって、工程(a)における溶液が酸化防止剤をさらに含むか、または工程(b)における担体材料がAP23573の溶液と混合される前に酸化防止剤と混合されていることを特徴とする方法。
【請求項8】
工程(b)において1種または2種以上の追加の賦形剤が混合され、それが湿った塊状物中に混入される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1種または2種以上の追加の賦形剤が工程(d)の乾燥の前または後に造粒物中に添加される、請求項7および8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記1種または2種以上の追加の賦形剤が、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムの一方または両方を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の方法により製造された固体薬剤組成物。
【請求項12】
10〜40mgのAP23573を含有する、請求項11に記載の固体薬剤組成物。

【公表番号】特表2010−509400(P2010−509400A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537189(P2009−537189)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/023862
【国際公開番号】WO2008/060546
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(500430383)アリアド・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】