説明

経口剤

【課題】 服用性に優れる一方で、室温で長期間安定な、常温で固形状の経口剤を提供する。
【解決手段】 酸化エチレン重合体を含み、常温で固形であり、40℃に静置しても変形しない経口剤は、保存性が高くチョコレート様又はキャンデー様の食感の経口剤として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水なしで服用でき、嗜好性が改善された常温保存可能な経口剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通常の固形製剤をのみ下すこと(嚥下)が困難な患者を対象として種々の製剤工夫が試みられ、そのうちのいくつかは実際に市販または臨床で使用されている。例えば、口の中で速やかにその形状が崩れる口腔内速崩壊錠や、半固形または液状を呈するゼリー状製剤、形態は従来の錠剤または顆粒剤ながら服用時に熱湯あるいは水に溶解させて液剤とする用時溶解型の製剤などがある。また、このような新規な剤型ではないが、口の中で噛み砕くことにより味わって服用するチュアブル錠なども、医薬品製剤の品目として増えてきている。
【0003】
口腔内速崩壊錠、ゼリー状製剤およびチュアブル錠に共通する点は、服用時に必ずしも水を必要としない点であり、したがって必要な時にいつでも当該製剤を服用できる利点を有する。さらに、上記の用時溶解型製剤にも共通する点として、何れの製剤も美味しく服用できる点が特徴的で、それゆえに服用し易い製剤であるともいえる。「良薬口に苦し」といわれる一方で見過ごされてきた、固形製剤を嚥下することが困難な患者に対して、少しでもその苦痛を和らげること(服用性の改善)で服薬履行性(コンプライアンス)を高めようとするのが、近年の薬物療法や製剤学のひとつの潮流であるといえる。
【0004】
チョコレートは嗜好性が高く、口中で咀嚼、または融解させて食することができ、経口剤の基剤として用いた場合、薬効成分の苦味のマスキングや水なしで手軽に服用できるといった利点があるため、チョコレートを利用した薬剤の製造が試みられている(特許文献1〜3参照)。これらは、チョコレートそのものやチョコレートに使用されるカカオ分を基剤として使用しており、食品並みの風味・食感をもたせるためには製造時における調温工程(テンパリング)が必要であり、また、製品を輸送・保管する場合の温度管理(少なくとも品温が34℃を超えない)も重要となる。また、それらの温度管理を製造・流通・販売面で徹底したとしても、それを購入した消費者が同じように管理できるかどうかは不明である(特に日本の夏場や熱帯・亜熱帯地方で携帯した場合)。実際、薬剤としての認可を受けるためには、40℃での加速試験が必要であり、40℃に静置した状態で形を保てないものは常温保存可能な薬剤としては認可されず、冷蔵保存専用の薬剤となってしまう。また、食品のチョコレートの賞味期限は約1年間であるのが一般的で、これはその成分の劣化に加えて、上記温度管理を施したとしても徐々に進行するファットブルーミングを数年間の長きにわたり抑制することは事実上不可能であることも関係する。ファットブルーミングが生じた製剤は風味の低下をまねき、少なくとも美味しく服用することは不可能である。
【0005】
一方、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の酸化エチレン重合体は薬剤を溶解又は分散する基剤として使用され、軟膏等の外用剤の基剤として使用されることが多い。特許文献4〜6には、ポリエチレングリコール等の酸化エチレン重合体を含有した経口剤が開示されている。これらは、液状であったり、チューブ充填物やカプセル剤の内容物であるので、常温で固形状のものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−27819号公報
【特許文献2】特開2001−114668号公報
【特許文献3】特表2004−536792号公報
【特許文献4】特表2002−516849号公報
【特許文献5】特表2005−538191号公報
【特許文献6】特開2005−75804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、チョコレートの風味や食感を利用した経口剤には利点があるが、製造時の温度管理や輸送・保管時の温度管理、さらには消費者が購入後の保存性に難点がある。本発明は、常温で長期保存可能であり、嗜好性、服用性に優れた固形状の経口剤を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来とは全く異なるアプローチにより上記課題を解決するものである。すなわち、本発明は、酸化エチレン重合体を含有した、常温(25℃)で固形であり、40℃に静置しても変形しない経口剤が、保存性が高く食感の良好な経口剤として使用できるとの知見によるものである。本発明は、以下に示す事項を含む。
(1)酸化エチレン重合体を含み、常温で固形であり、40℃に静置した状態で変形しない経口剤。
(2)凝固点が34〜64℃である(1)に記載の経口剤。
(3)酸化エチレン重合体の含有量が、経口剤生地の30〜99.9重量%である(1)又は(2)に記載の経口剤。
(4)酸化エチレン重合体の含有量が、35〜80重量%である(1)〜(3)のいずれかに記載の経口剤。
(5)酸化エチレン重合体が、経口投与可能な医薬品添加物である(1)〜(4)のいずれかに記載の経口剤。
(6)酸化エチレン重合体が、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上である(1)〜(5)のいずれかに記載の経口剤。
(7)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の経口剤。
(8)酸化エチレン重合体を溶融する工程、溶融した酸化エチレン重合体と粉末原料を混合して経口剤生地を調製する工程、経口剤生地を成形する工程、を含む経口剤の製造方法。
(9)経口剤生地を成形する工程が、モールド成形、押し出し成形、パンコーティング、エンロービング、ドロップ成形、シート成形、ロール成形のいずれかである(8)に記載の経口剤の製造方法。
(10)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを添加することを特徴とする、(8)又は(9)に記載の経口剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、好ましい食感を示しながら常温保存可能である、従来とは異なる全く新しい経口剤を提供することが可能となり、薬剤の服用性の改善に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の経口剤は、酸化エチレン重合体を含み、40℃の雰囲気に静置しても変形せず、口中で咀嚼又は舐めて摂取することができる。また本発明の経口剤は、40℃の雰囲気に静置しても変形しないため、常温では当然固形である。なお本発明においては、常温とは25℃を示す。本発明において酸化エチレン重合体とは、該分子中に酸化エチレン(エチレンオキサイド)が重合している分子構造を含むものである。酸化エチレン重合体としては医薬品添加物として経口投与可能なものを使用でき、中でもステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。
【0011】
ステアリン酸ポリオキシルとは、酸化エチレンの付加重合体のモノステアリン酸エステルであり、H(OCHCHOOCC1735で表される非イオン性界面活性剤である。本発明においては、nが約40であるステアリン酸ポリオキシル40が経口投与可能であるため好ましい。
【0012】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ヒマシ油に水素を添加して得た硬化油に、酸化エチレンを付加重合させて得た非イオン性界面活性剤である。本発明においては酸化エチレンの平均付加モル数が約60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が、経口投与可能量が多いため好ましい。
【0013】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとは、酸化プロピレンを重合して得られるポリプロピレングリコールに酸化エチレンを付加重合させたものである。本発明においては酸化プロピレン及び酸化エチレンの平均付加重合度がそれぞれ約30及び約160であるポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、それぞれ約5及び約105であるポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコールが経口投与可能であるため好ましい。
【0014】
マクロゴールとはポリエチレングリコールとも言い、酸化エチレンと水との付加重合体であり、HOCH(CHOCHCHOHで表される。本発明においては、nが5〜6及び28〜36の等量混合物であるマクロゴール1500(凝固点37〜41℃)、nが59〜84であるマクロゴール4000(凝固点53〜57℃)、nが165〜210であるマクロゴール6000(凝固点56〜61℃)、nが340〜570であるマクロゴール20000(凝固点56〜64℃)が経口投与可能であるため好ましい。
【0015】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとは、ポリエチレングリコールに脂肪酸を付加したものであり、医薬品添加物としては飽和ポリグリコール化グリセリドが使用できる。飽和ポリグリコール化グリセリドは、水素添加したパーム油及びマクロゴール1500による生成物であり、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとして、ジエステルを約43%、モノエステルを約29%含み、また遊離のポリエチレングリコールを約7%含む。
【0016】
本経口剤は、凝固点が34〜64℃、望ましくは34〜54℃であると40℃で変形せず、口中で咀嚼又は舐めて溶解することができるため好ましい。凝固点が40℃を下回る場合でも、静置状態であれば変形しないが、指で押したりして力を加えると変形する。凝固点が40℃以上であれば、力を加えても変形しにくいため好ましい。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、飽和ポリグリコール化グリセリド等の、凝固点が42℃以下の酸化エチレン重合体含有物の合計の含有量が7重量%以上、望ましくは10重量%以上であると、口中で咀嚼できるチョコレート様のスナップ性のある食感となり好ましい。凝固点が42℃以下の酸化エチレン重合体含有物の合計の含有量が7重量%よりも下回る場合は、硬い食感となり咀嚼することが難しいが、唾液により溶解しキャンデー様の食感となる。
【0017】
本発明の経口剤は以下の方法により製造することができる。まず酸化エチレン重合体を好ましくは50〜80℃程度に加熱して溶融し、溶融した酸化エチレン重合体に、粉末状の薬効成分や粉末状の医薬品添加物等の粉末原料を添加混合して経口剤生地を調製する。液状の薬効成分や油脂、乳化剤等の、常温で液状もしくは加熱により液状となる原料がある場合は、当該液状原料が少量であれば粉末原料と混合して、溶融した酸化エチレン重合体に添加混合してもよいが、酸化エチレン重合体と当該液状原料を先に混合し、その後粉末原料を添加混合してもよい。経口剤生地はそのまま成形工程に供してもよいが、レファイナー、ボールミル等を使用して粉砕し、粒度を細かくしてもよい。また、粉砕後にコンチングを行ったり、酸化エチレン重合体を加えて粘度を調整してもよい。なお、本発明において経口剤生地とは、薬効成分及び各種医薬品添加物を含み、成形することで経口剤とすることができる原料混合物を示す。また、コンチングとは通常チョコレートの製造工程において、レファイナー等で粉砕してフレーク状となった原料を練り上げて液化する工程をいい、本発明においても、粉砕してフレーク状となった経口剤生地を練り上げて液化する工程をいう。
【0018】
経口剤生地にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを添加すると生地の粘度を低下することができる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを0.6重量%添加することで、酸化エチレン重合体の配合量を10重量%程度少なくしてもほぼ同等の粘度となる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの使用により、砂糖等の比較的安価な原料を多く配合することができ、コストダウンになる他、成形工程における加工適性も向上するため有利である。
【0019】
得られた経口剤生地は、冷却固化することで成型することができ、チョコレートを成形する方法を用いて成形することができる。例えば、成形用の型を準備し、型に溶融した経口剤生地を流し込んで、冷却固化する方法(モールド成形)、押し出し成形機を用いて経口剤生地を押し出して、冷却固化する方法(押し出し成形)、回転釜を用いて、錠剤等の可食物センターに経口剤生地を掛けて冷却しながら被覆していく方法(パンコーティング)、溶融した経口剤生地をカーテン状に流し、可食物がその中を通過することで経口剤生地を被覆して冷却固化する方法(エンロービング)、コンベア等の上に経口剤生地を滴下し、そのまま冷却固化して粒状に成形する方法(ドロップ成形)、堰を設けたコンベア等の上に経口剤生地を大量に流し、一定の厚みとして冷却固化し、シート状とした経口剤生地を切断する方法(シート成形)、冷却した状態の、勘合するように型を掘り込んだ2つの回転ロール間に経口剤生地を流し込み、2つの回転ロールの型が勘合したときにできる隙間に生地が入り込んで冷却固化され成形する方法(ロール成形)等により成形することができる。また、このようにして成形された経口剤生地に、さらにシェラック掛けや糖衣掛け等の加工を行なってもよい。
【0020】
酸化エチレン重合体の含有量は、経口剤生地の30〜99.9重量%とすることが好ましい。酸化エチレン重合体が30重量%を下回ると成形するのが困難である。一方、全量を酸化エチレン重合体としても成形は可能であるが、医薬品とするには薬効成分が必須であるため、薬効成分以外の全量(例えば99.9重量%)を酸化エチレン重合体とすることもできる。酸化エチレン重合体の含有量が経口剤生地の38重量%以上であると、どのような成形方法を用いても成形することができる。
【0021】
本発明の経口剤は、食感、嗜好性のバランスを考えた場合、酸化エチレン重合体を35〜80重量%、甘味剤や矯味剤、香料等の酸化エチレン重合体以外の添加物や薬効成分の総量を20〜65重量%程度とすることで、なめらかな食感となり、好ましい風味とすることができる。
【0022】
本発明の経口剤は、経口投与可能な薬効成分を含有することができ、例えば風邪薬、解熱鎮痛薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮静薬、ヒスタミンH受容体拮抗剤含有薬、制酸薬、健胃薬、整腸薬、消化薬、胃腸鎮痛鎮けい薬、止寫薬、寫下薬、浣腸薬、駆虫薬、強心薬、動脈硬化用薬、貧血用薬、鎮咳去痰薬、含嗽薬、内用痔疾用薬、ビタミン主薬製剤、ビタミン含有保健薬、カルシウム主薬製剤、タンパク・アミノ酸主薬製剤、生薬主薬製剤、婦人薬、避妊薬、抗ヒスタミン薬主薬製剤、口腔咽喉薬、口内炎用薬、歯痛・歯槽膿漏薬等の薬剤として使用できる。
【0023】
薬効成分と酸化エチレン重合体以外には、医薬品添加物としての安定化剤、坑酸化剤、着色剤、分散剤、可塑剤、乳化剤、可溶化剤、還元剤、甘味剤、保存剤、清涼化剤、摂食促進剤、矯味剤、咀嚼剤、賦形剤、香料、増強剤等が使用できる。具体的には、粉糖、白糖、黒砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖水和物、マルトース水和物、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ステビアエキス、アミノ酸、カゼイン、脱脂粉乳、カカオ末、カカオ脂、タウリン、カンゾウ末、乾燥クロレラ、乾燥酵母、ウイキョウ、オレンジ、カラメル、レモンパウダー、緑茶末、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、トウガラシ、ローヤルゼリー、スペアミント油、バニリン、ハッカ油、レモン油、ペパーミントパウダー、メチルセルロース、塩化ナトリウム、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸、アスコルビン酸、トコフェロール、大豆レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、タルク、サフラン、二酸化ケイ素等を使用できる。これら以外でも、粉末状の原料で経口投与可能なものであれば使用に制限はないが、油脂や水溶液等の液状、ペースト状のものであっても、成形性や40℃における変形性に問題がない限りにおいて使用できる。
【実施例】
【0024】
試験例1
各種酸化エチレン重合体を70〜80℃で加熱溶融して液状とした。液状となった酸化エチレン重合体に、表1に示される基本原料を加え、温度を保ちながら攪拌混合して、経口剤生地を調製した。なお、以降の表中の原料配合に係る数値は、特に指定の無い限り重量%を示す。
【0025】
【表1】


経口剤生地を、底面の直径15mmの円形の型に充填し、10℃で30〜40分間冷却固化し、型から剥離して、重さ1.5gの経口剤を製造した。得られた経口剤は常温で固形であった。
得られた経口剤を40℃の雰囲気に2時間静置し変形性を調べた。また、日本薬局方一般試験法により凝固点を測定した。さらに、摂取したときの食感を調べた。結果を表2、表3に示す。
なお、表中のユニオックスHC−60は日本油脂社のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000、マクロゴール6000は日本油脂社製であり、プロノン188Pは日本油脂社のポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、PEP−101はフロイント産業社のポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、MYS−40MVは日光ケミカルズ社のステアリン酸ポリオキシル40、Gelucire 50/13はCBC社の飽和ポリグリコール化グリセリド、DKエステルF−160は第一工業製薬の親水性(HLB16)のショ糖脂肪酸エステルを示す。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
酸化エチレン重合体に粉末原料を分散して固化したものは、チョコレート様又はキャンデー様の食感となった。また、凝固点が34℃以上の場合は、40℃で静置しても変形しなかった。一方ショ糖脂肪酸エステルに粉末原料を分散して成型しようとしたが、強い粘り気を生じ、流動性が無く型に充填することが困難であったため成形することができず、凝固点、40℃における変形性、食感を調べることができなかった(比較例3)。
【0029】
実施例12
実施例8の配合の経口剤生地100重量部に対して白糖11重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(商品名:サンソフト No.818R 太陽化学製)0.6重量部を加えよく混合した。得られた経口剤生地は、実施例8の配合の経口剤生地とほぼ同等の粘性流動性を示した。また、該経口剤生地を使用して、試験例1と同様にして重さ1.5gの経口剤を製造した。得られた経口剤はチョコレート様の食感を示し、40℃の雰囲気に2時間静置しても変形しなかった。
【0030】
試験例2
ユニオックスHC−60を43重量部、マクロゴール4000を29重量部、プロノン188Pを16重量部、PEP101を12重量部混合し加熱溶融して、酸化エチレン重合体混合物とした。前記酸化エチレン重合体混合物と表1に示される基本原料を各種比率で混合し、経口剤生地を調製した。前記経口剤生地を用いて各種成形を行った場合に成形が可能であるかどうかの評価を行った。結果を表4に示す。
【0031】
【表4】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化エチレン重合体を含み、常温で固形であり、40℃に静置した状態で変形しない経口剤。
【請求項2】
凝固点が34〜64℃である請求項1に記載の経口剤。
【請求項3】
酸化エチレン重合体の含有量が、経口剤生地の30〜99.9重量%である請求項1又は2に記載の経口剤。
【請求項4】
酸化エチレン重合体の含有量が、35〜80重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項5】
酸化エチレン重合体が、経口投与可能な医薬品添加物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項6】
酸化エチレン重合体が、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項7】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項8】
酸化エチレン重合体を溶融する工程、溶融した酸化エチレン重合体と粉末原料を混合して経口剤生地を調製する工程、経口剤生地を固化して成形する工程、を含む経口剤の製造方法。
【請求項9】
経口剤生地を固化して成形する工程が、モールド成形、押し出し成形、パンコーティング、エンロービング、ドロップ成形、シート成形、ロール成形のいずれかである請求項8
に記載の経口剤の製造方法。
【請求項10】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを添加することを特徴とする、請求項8又は9に記載の経口剤の製造方法。




【公開番号】特開2012−106936(P2012−106936A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254871(P2010−254871)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】